第11期科学技術・学術審議会 国際戦略委員会(第1回)議事録

1.日時

令和3年3月26日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省5階会議室1

3.議題

  1. 国際戦略委員会運営規則について
  2. 我が国の国際的な科学技術・イノベーション活動等の現状と課題
  3. その他

4.出席者

委員

岸本委員(主査)、相田委員、飯塚委員、磯田委員、小川委員、狩野委員(主査代理)、須藤委員、武田委員、林委員、松本委員

文部科学省

松尾文部科学審議官、板倉科学技術・学術政策局長、梶原大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、有賀科学技術・学術戦略官(国際担当)兼国際戦略室長、久永科学技術・学術戦略官(国際担当)付企画官、生方国際戦略室長補佐、津久井科学技術・学術戦略官(国際担当)付戦略第一係長

5.議事録

第11期科学技術・学術審議会 国際戦略委員会(第1回)

令和3年3月26日



【生方補佐】 それでは定刻となりましたので、第11期科学技術・学術審議会国際戦略委員会を開催いたします。
文部科学省科学技術・学術戦略官(国際担当)付の生方でございます。よろしくお願いいたします。

本日は、第11期科学技術・学術審議会における最初の国際戦略委員会でございます。委員の皆様におかれましては、本委員会の委員をお引受けいただき誠にありがとうございます。また、御多忙のところ御出席いただきまして、重ねて感謝申し上げます。
初めに、開催に当たっての留意事項を申し上げます。本委員会はペーパーレス会議になります。配付資料につきましては、会場に御出席の委員の皆様は、お手元にありますサーフェスを御覧ください。また、オンラインで御出席の皆様は、事前に事務局から送付しましたファイルを御覧ください。ファイルは、座席表、議事次第、資料1から資料6、及び参考資料1から参考資料8を格納しております。資料はそれぞれ一つのPDFにまとめておりますので、しおり機能で各資料をすぐに開けるようにしております。こちらのほう御活用いただければと思います。ファイルの不備や操作方法に関してのお尋ねなどがございましたら、事務局までお知らせください。

次に、発言される際の留意事項です。御発言がある場合は、会場に御出席の委員におかれましては挙手を、オンラインで御出席の委員におかれてはWebexの挙手ボタンを押していただきますようお願いいたします。対面で御出席の皆様は、マイクを利用して御発言をお願いいたします。こちら御発言の際、御発言者の下に職員がお持ちいたします。オンラインで御出席の皆様は、事務局にてミュート設定を管理しております。発言の指名がありましたらミュートを解除いたしますので、その際御発言いただければと思います。また、御発言の際は、オンライン参加者にも分かりやすいよう、最初に御自身のお名前から御発言いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
なお、本日の委員会は公開で開催させていただいておりますこと、申し添えいたします。

続きまして、本委員会の委員の皆様を御紹介申し上げます。資料1の委員名簿を御覧いただきたいと思います。資料の2ページ目を御覧ください。
それでは、私から、名簿順に御紹介させていただきます。
相田委員でございます。本日はオンラインでの御出席になります。
飯塚委員でございます。本日はオンラインでの御出席になります。
石原委員でございます。本日は、所用のため御欠席となっております。
礒田委員でございます。本日はオンラインでの御出席になります。
小川委員でございます。
狩野委員でございます。
岸本委員でございます。
須藤委員でございます。
武田委員でございます。
林委員でございます。本日はオンラインでの御出席になります。
松本委員でございます。

続きまして、文部科学省の出席者を紹介させていただきます。
松尾文部科学審議官でございます。
【松尾文部科学審議官】 松尾でございます。よろしくお願いします。
【生方補佐】 板倉科学技術・学術政策局長でございます。
【板倉局長】 板倉でございます。よろしくお願いします。
【生方補佐】 梶原大臣官房審議官でございます。
【梶原審議官】 梶原でございます。よろしくお願いします。
【生方補佐】 有賀科学技術・学術戦略官でございます。
【有賀戦略官】 有賀でございます。よろしくお願いします。
【生方補佐】 久永企画官でございます。
【久永企画官】 久永でございます。よろしくお願いいたします。

【生方補佐】 本委員会は、科学技術・学術審議会の決定により設置されているものであり、主査は科学技術・学術審議会会長より指名されることとされております。審議会の濱口会長より、岸本委員が本委員会の主査として指名されております。また、主査代理につきましては、岸本主査より狩野委員が指名されております。
それでは、今回の議事については岸本主査に進行をお願いいたします。

【岸本主査】 皆さん、改めて、おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。ただいまから第11期科学技術・学術審議会国際戦略委員会を開催させていただきたいと思います。本日は第1回目の委員会でありますので、簡単に御挨拶させていただきたいと思います。
私自身は大学に長年勤め、その後、定年退官して、例えば海外の大学、台湾だとかインドネシアで教鞭を執るなど、海外の人たちといろんな交流ということをしてきております。そんな中で、大学の教員時代は、国際化というのは仕組みづくりが非常に大切だと思いまして、学生交流のことだとか研究交流、産学連携も国際化ということで、いろいろ文科省の支援もいただいて活動をしてまいりました。ただ、なかなかその仕組みを継続させるというのが非常に難しくて、ファンディングが切れるとまた元の状態に戻ってしまうということを繰り返してきたような気がしていまして、それはかなりの反省材料ですけれども、今回、国際戦略をきちんと立てて、しっかりした形で日本の学術展開を国際的に進められればということで、この委員会の目的としてはそういうところにあるというふうにお聞きしています。
まさに科学技術・イノベーション基本計画が4月からスタートするということで、そのスタートする時点で、改めてこれまでの課題も洗い直して、皆さんと一緒に、議論をし、いい戦略を立てて、それに基づいていろんなファンディングが行われて、日本の学術研究が活性化するとともに、今激化している国際競争の中で日本が生き生きと、生き延びていく、そういう姿が描けるようになればと思います。そのための青写真をつくる仕事かなと私自身思っております。皆さんと一緒にそういうところに向けてまとめができていけば良いと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは続きまして、文科省を代表いたしまして、板倉科学技術・学術政策局長より一言御挨拶をお願いしたいと思います。

【板倉局長】 科学技術・学術政策局長の板倉でございます。よろしくお願いいたします。すみません、着座にて御挨拶をしたいと思います。
まず今回、第11期の科学技術・学術審議会国際戦略委員会の最初の会合ということで、御挨拶をさせていただければと思います。今、主査からも言及がありましたが、ちょうど今朝、科学技術・イノベーション基本計画、第6期の計画が閣議決定されました。これは今後5年間の政府の、あるいは民間も含めて、科学技術政策の基本となる計画でございますが、今回の基本計画は、国際状況につきまして、ちょっと今までとは違う状況が生じているということがまず言及されておりまして、それはもう先生方も御承知のとおり、最先端の技術が、国の経済あるいは安全保障にも関わってくるという認識が急速に広まってきておりまして、米中摩擦、貿易摩擦の問題というものも、本当に最先端技術をどうするかというところに起因しているというところもございます。
また、別の観点では、これはアメリカのGAFAをはじめとして、今やその最先端技術も民間企業が推進し、あるいは独占をしてしまうというような状況もございます。これは本当に、今まで以上に、科学技術協力をどうしていくかということに戦略性を求められるところがございまして、これはアメリカ自身も、昨年10月に公表されたアメリカのエマージング技術の戦略につきましても、もはや国だけでエマージング技術を育成している時代ではないというような認識も記載されておりまして、そういった点にも配慮が必要ではないかなと思っております。
また3点目に、今も終息しておりませんが、新型コロナの流行によりまして、これも研究の現場、あるいは国際交流にも非常に大きな影響を与えておりまして、これはまたコロナ終息後も、我々の研究開発あるいは国際交流にも影響及ぼすのではないかといったような問題点も指摘されているところでございます。
また、振り返りまして、我が国の研究力について顧みてみますと、なかなか論文数、あるいはTop10%論文でも伸び悩んでいる中で、海外、特に米中などは論文数も伸ばしているところでもありまして、そういう中でなかなか私どもの日本の研究力の国際的な地位が相対的に下がってきていると。その要因分析をしてみますと、一つには、国際共著論文が本当に、欧米は、あるいは中国はどんどん伸びているのに、日本が伸びていないといったような問題がございまして、そういった頭脳循環の問題ということも考えていかなければいけないかなというふうに考えております。
このような、本当に社会環境が変わっている中で、私ども、どう科学技術国際戦略を立てていくべきなのかということにつきましては、また従来とは違った考え方が必要かなというふうに考えておりますので、ぜひ先生方には、この点につきまして、忌憚のない御議論を賜ればというふうに考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
【岸本主査】 板倉局長、ありがとうございました。
それでは、議事に入ります。まず、国際戦略委員会の運営について議題といたします。
本委員会の運営については、本委員会が定めることとされております。まず、案について事務局より御説明をお願いいたします。

【生方補佐】 それでは、資料2-1、2-2に基づきまして、科学技術・学術審議会国際戦略委員会運営規則(案)及び本運営規則に基づき定める科学技術・学術審議会国際戦略委員会の公開の手続について(案)について説明させていただきます。
まずは、運営規則案についてです。資料3ページの資料2-1を御覧ください。こちらは第10期から続きまして定めるものになってございます。
第1条が規則の趣旨について、第2条は、本委員会の下に設置する作業部会について、第3条は、委員や臨時委員の過半数が出席しなければ会議が成立しないことについて、第4条は書面による議決について、第5条は会議の公開について、第6条は議事録の公表について、それぞれ定めております。また第7条は、今回新たに追加させていただいたものでございまして、ウェブ会議システムの利用について定めてございます。第8条では、この運営規則で定めるもののほか、運営に関し必要な事項は、主査が委員会等に諮って定めることとしております。
次に、公開の手続案について説明いたします。資料5ページの資料2-2を御覧ください。
科学技術・学術審議会令第11条及び科学技術・学術審議会国際戦略委員会運営規則案第8条の規定に基づき、本委員会の公開の手続について定めることとしております。1として、会議の開催に関する公表日について、2として傍聴について、3として関係者の陪席人数について定めております。
以上でございます。
【岸本主査】 ただいま事務局から御説明がありました運営規則案及び公開の手続案について、御異議はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【岸本主査】 それでは、案のとおりと定めたいと思います。ありがとうございます。

【岸本主査】それでは、次の議題、我が国の国際的な科学技術・イノベーション活動の現状と課題についてへ移ります。まず、我が国の国際的な科学技術・イノベーション活動の現状、また、事務局がこれまで行いました有識者へのインタビュー結果について、資料3-1、3-2、資料4を基に事務局より御説明いただきたいと思います。一通り御説明をいただいた後に皆様から、今日は時間をたっぷり――たっぷりというふうになるかどうか分かりませんけれども、取っていただきましたので、御発言をお願いしたいと思いますので、まず事務局から説明のほう、よろしくお願いいたします。

【久永企画官】 よろしくお願いします。それでは、6ページの資料3-1を御覧ください。
1ページめくっていただきまして7ページ、本日閣議決定されました第6期科学技術・イノベーション基本計画の概要になります。この中から、現状認識及び国際関係の記載について主な内容を、次のページと次のページにまとめております。
8ページ目を御覧ください。これが現状認識でございます。特筆すべき社会の変化としましては、世界秩序の再編、現実の脅威となったグローバルアジェンダ、Society 4.0の限界の露呈が挙げられております。これらの変化を新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが加速させているというふうにされております。
次の9ページ目を御覧ください。これらは国際に係る主な記載となります。本日より御議論いただきたい国際戦略につきましては、一番下の丸、下から2行目の科学技術の国際展開に関する戦略を2021年度までに策定するとされたことを受けたものになります。つきましては、第6期基本計画の現状認識、これを念頭に置いて御議論いただきますよう、よろしくお願いいたします。
次の10ページ目を御覧ください。これは高等教育レベルでの国際流動性を表したものです。左の図が2013年、右が2016年になります。世界に占める日本のシェア、僅か3年で、日本から海外に行く学生の数が1.0%から0.7%、来日する学生は4.2%から3.4%に急落しております。
次の11ページ目を御覧ください。ここでは日本の現状を詳しく示しております。左の図が日本から外国に行く学生の数ですが、3年間で4.5%減っております。大きく減少しているのは青色の米国で、17.6%減と見てとれます。真ん中の図は日本に来る留学生の数ですが、中国、韓国の減少が顕著である一方、その他のアジアが急進しています。
次の12ページを御覧ください。日本から海外に派遣された研究者の数です。30日以下の短期の派遣の増加は2013年頃から頭打ちとなっており、31日以上の中・長期の派遣は2000年代前半に急落し、近年は4,000人台前半で推移しているという状況です。
次の13ページ目を御覧ください。中・長期の派遣の増減について、要因となった可能性のある経済等の変化を示しております。これはまた後で御議論に使用できればというふうに思います。
次の14ページ目を御覧ください。これは海外からの研究者の受入れの状況を表しております。左側の図、中・長期の受入れを御覧いただきますと、過去20年間大きな変化はないという状況で、右側の図は受け入れた研究者の国・地域の内訳を表しております。
次、15ページ目を御覧ください。話題が変わりまして、今度は論文の動向になります。円の大きさが論文の数、線の太さが国際共著論文の数となります。日本の伸びが主要国と比べて小さく、国際研究ネットワークへの関与は相対的に日本が低下していると言えます。
次の16ページ目を御覧ください。これも国際共著の広がりを表しております。緑色の欧州では、中堅国も含め、幅広く国際共著が広がっております。アジアでも、紫色のとおり広がってきていますが、中国の存在感が際立っております。青色のように地域を越えた連携も広がっております。
次の17ページを御覧ください。これは整数カウントでの論文の国際共著率を表したものです。右側の国際共著率を御覧いただきますと、EUのプログラム等の影響がある英、独、仏の国際共著率は極めて高くなっておりますが、日本は33.9%です。世界平均との差を着実に広げており、中韓を逆転しております。また、増加率を見れば過去30年間で約4倍と、欧米主要諸国と比べても遜色ない状況です。
次の18ページ目を御覧ください。インパクトの高い論文の状況です。左の図は全論文に占めるTop10%論文の割合、2013年を境に韓国を下回り、主要国中最低となっております。
次の19ページ目を御覧ください。日本の分野ごとの世界ランキングを表しています。ほぼ全ての分野で低下しておりますが、論文生産への関与を示す整数カウントと、貢献度を示す分数カウントを比較すると、整数カウントのランキングの低下のほうが大きく、論文生産への関与の低下のほうがより大きな課題ではないかと言えます。
次の20ページ目を御覧ください。これは論文生産の貢献度の課題もあるのではないかということです。一番左下が日本の貢献度を表しておりますが、黒い線が全論文の世界シェアで、赤がTop10%論文の世界シェアです。赤が黒よりも非常に小さいと、つまり日本が貢献した研究からはインパクトの高い論文が出てきにくいという課題が見てとれます。
次の21ページ目を御覧ください。これは国際的に注目を集めておる研究領域についての説明です。左下は研究領域数の伸びを表したもので、世界全体の領域数はおおむね右肩上がりに伸ばす中、日本の領域参画数の伸びは極めて鈍く、参画割合は減少しております。右上は、研究領域を構成するTop1%であるコアペーパー、そのコアペーパーにおける主要国の国際共著率を表し、右下は生産に関与したコアペーパーにおける外国の貢献率を表しております。いずれの国も大きく増えておりまして、国の枠を超えた複数の研究機関が協力関係を深めているという情勢が見てとれます。
次の22ページ目を御覧ください。これは論文の言語を示したものです。左上の薄い色は他国ジャーナルへの掲載割合を示しておりまして、日本は7割程度で、残りの3割が国内ジャーナルへの掲載というふうになります。ここで左下の図を御覧いただくと、日本は国内ジャーナルでも濃い色で示した英語の論文の割合が、他の非英語圏の国と比べて高くなっております。
次の23ページ目を御覧ください。これは話題変わりまして、特許における国際共同の状況です。ここでは発明数とほぼ同じ、パテントファミリーの数を用いております。左上の図を御覧いただきますと、国際共同のパテントファミリーの率は伸びが停滞しており、論文のようには伸びておりません。右下の図を御覧いただくと、米、英、独、仏、中では2割から4割強のパテントファミリーが国際共同となっておりますが、一方、日本は3.8%にすぎず、国際共同は非常に遅れているという状況です。
次の24ページ目を御覧ください。日本の大学における企業からの資金受入れの状況です。緑色で示した海外からの研究費の受入実績、これは、左の図のように国内企業と比較しても、また右図のように他国と比較しても、極めて小さいという状況です。内閣府の調査ではありますが、外国企業と大学等にそれぞれヒアリングしたところ、下に示しますように、組織的、人材的、契約面での課題が指摘されているところです。
次の25ページ目を御覧ください。これは昨年6月の研究者等へのアンケートの結果です。COVID-19の影響をまとめたものです。国際連携に与えた影響としましては、対面交流の機会が失われたことによる、研究情報の共有ですとか関係構築への影響、あるいは海外調査や、外出規制に伴う国際共同研究への影響、留学生や研究者の受入れや派遣ができなくなり、新たな共同研究の立ち上げができなくなるといった影響、フィールドワークができなくなっているという影響、こういったものがネガティブな影響として見られました。他方で、オンライン化によって、渡航面での時間や費用といった課題がなくなり、国際会議参加へのハードルが下がったり、オンライン打合せの活用が進む等により、よい影響があったとする意見もございました。
資料3は以上になります。

【久永企画官】 続きまして、資料4を御覧ください。29ページになります。これは科学技術・イノベーションにおける国際交流・協力に関するインタビューの結果についての報告となります。
次の30ページ目を御覧ください。これは外部有識者へのインタビューの実施の概要を示したものです。1ポツに示しましたように、こういった主なインタビュー項目につきまして、外部の有識者、大学等の研究者、大学等マネジメント、民間企業研究者、研究資金配分機関、こういった方を対象にインタビューを実施しました。2ポツにありますように、有識者インタビューで得られた主な意見、こういったものを、(1)から(5)の順で以下説明してまいります。
次、31ページ目を御覧ください。これは、まず国際化を推進する目的について得られた意見です。国際共同研究の目的は研究分野や相手国によって様々であって、例えば先進国との最先端分野における共同研究、新興国・途上国との国際共同研究による外交的科学技術協力、ほかに、企業の参画によるビジネスの展開の地ならしとしてのネットワーク形成に分けられるのではないかといった意見。国際頭脳循環というのは、国際人材の裾野を拡大するために重要である。国際化の指標とされる国際共著論文は、研究の国際化の活動によって後からついてくる結果であって、それそのものを引き上げること自体を目的としてはいけないのではないかといった意見がありました。
次、32ページを御覧ください。今度は国際共同研究についてです。国際共同研究の公募が相手国や研究分野など事前情報なしに開始されると、研究者が締切りまでに十分な時間をかけて計画を策定することができないといったことや、異分野融合領域を設定し支援するような取組が十分にできていない。国際共同研究で創出された研究成果を切れ目なく社会実装、実用化につなげるためには、国際産学連携を推進するのが有効ではないかとの意見があり、ただ、創出した知財ですとか秘密事項の取扱いについて、大学の研究者だけでは十分な対応が困難ではないかといった意見。あとは、自然科学・工学と人文学・社会科学との共同というのは不可欠であるが、その実現のためには、国際協力における両者の連携の在り方についても検討する必要があるといった意見がありました。
次の33ページを御覧ください。引き続き国際共同研究についてですが、これは主にSATREPSのプログラムを想定した意見となります。社会実装を目指すSATREPSでは、採択課題ごとに、その特性――特性というのは、社会実装の種類ですとか、想定するイノベーションインパクトの範囲、研究開発のフェーズなど――が異なるため、研究成果活用の整理が必要ではないかといったこと。あとは、関連し合う課題同士のシナジーを発揮させた成果を包括的に取り扱う取組が不十分ではないか、研究課題の支援を通じて相手国に投資した研究資産が、終了後に十分に活用されていないのではないかといった意見がありました。
次の34ページ目を御覧ください。国際頭脳循環についてです。日本人研究者の内向き志向というのが継続しているのではないか、あと日本人研究者の海外への戦略的な人材の送り出しができていない、日本は海外先進国にとって研究人材を送り出す意義、魅力が薄れているのではないかといった意見がありました。
(4)大学・研究機関・ファンディングエージェンシーの国際化ということで、国内向けのプログラム、例えばJSTの戦略的創造研究推進事業などの、より一層の国際化が望まれるのではないかといった意見がありました。
次の35ページ、最後になります。コロナ禍における研究協力についての意見です。国際的な人の往来が止まっておりまして、日本人研究者による海外フィールドを使用した現地試験の実施が困難となっていて、その中で、実験設備の遠隔利用などによって共同研究が滞らないような工夫をしていること、あと研究成果の情報交換や共有をオンライン上で効率よく進めているといった意見がありました。一方で、対面活動による偶然の出会いといった副次的な効果が損失し、新たな人的ネットワークの拡大が困難になっているといった意見もありました。
資料4は以上です。
私からの説明は以上になります。ありがとうございます。
【岸本主査】 御説明ありがとうございました。御質問もあろうかと思いますけれども、御質問につきましては、この後の意見交換の中で併せてさせていただければと思います。
それでは続きまして、国際戦略の策定に向けた議論のポイントについて、資料5を基に事務局より御説明をお願いしたいと思います。

【有賀戦略官】 科学技術・学術戦略官の有賀です。36ページ目を御覧ください。資料5は、国際戦略の策定に向けて、本日御議論いただきたいポイントをお示ししたものです。
冒頭には、第6期基本計画で指摘された現状認識について整理してございます。先ほどの局長の御挨拶、それから資料3-1でもございましたけれども、科学技術・イノベーションの領域が、激化する国家間の覇権争いの中核になってきているという点、そして技術流出問題等も顕在化しており、各国ともこれを防ぐ取組を強化してきております。また、気候変動や生物多様性の劣化、交流人口拡大によるパンデミックのリスクなど、世界全体が直面している様々な問題、グローバルアジェンダが現実の脅威となって、我々の社会に警告を与えております。それから、ITプラットフォーマーは、従来とは違った形でビジネスモデルをつくって、非常に大きくなりまして、情報寡占、それから自由競争を制約するというところまで、そういった大きな懸念を持つところまで来ております。それから、COVID-19の拡大は、国際的なサプライチェーンのもろさと危うさを露呈しましたし、各国に自国経済の持続性と強靭性、こういったものの見直しも迫っていると。こういった世界的な情勢の変化がある中で、一方で、さきの資料にありましたように、我が国の研究力、それから世界の研究ネットワークの中での地位は低下しているのではないかというところも見られるかと思います。
こうした現状認識は、科学技術・イノベーションの持つ戦略的意義が変わりつつあることを示唆しているというふうに考えられまして、こうした中、ここで、今後の国際交流・協力をどのように進めるべきか、原点に立ち返って検討をするために、次の2点について御議論いただければというふうに考えております。
論点1は、科学技術・イノベーションにおける国際交流・協力を意義は何なのかという点でございます。国際交流・協力は手段でございまして、その目的は様々であります。例えば研究力の強化の観点では、良質な研究成果を生み出すというところがございますし、また、我が国にはない技術を取り入れるといった点、それから科学技術外交の観点や、社会課題解決の観点、それぞれにおいて個別の意義があるのではないかというふうに考えております。
論点2については2つございまして、一つ目は、国の科学技術力や国際交流・協力の持つ戦略的な意義が変わりつつある中で、どのような観点に考慮して国際交流・協力を進めるべきかという点でございます。例えば、特定の科学技術分野の戦略的重要性というものは、AI技術や量子技術と、防災技術、環境技術では異なる意味を持つのではないかというふうに考えられます。また、特定の研究について、世界的に競争的な状態または協調の状態にあるかといった観点なども、国際交流・協力の具体的な施策を進める上で、つくり込む際に検討が必要な点だというふうに考えております。最後の一つは少々観点が異なりますけれども、コロナ禍の経験を踏まえた国際交流・協力の在り方とはという点でございます。コロナ禍で国際交流・協力が困難な部分も多かったのでございますけれども、資料3にもありましたように、オンラインという新たなツールを入手できたということで、これを活用したいという前向きな意見もございます。この点について深掘りした御議論をいただければというふうに思います。
こうした点について御議論いただきまして、今後の文部科学省の科学技術・イノベーション分野における国際交流・協力施策の在り方の方向性として、戦略の基本的考え方の整理につなげられればというふうに考えております。
私の説明は以上です。
【岸本主査】 御説明どうもありがとうございました。

【岸本主査】 それでは、質疑応答、意見交換のほうに移りたいと思います。
先ほど御説明がありましたように、国際戦略をこれからきちんとつくっていくというところですけれども、本日は、そのために参考になるような論点が2つ示されています。そのことに関していろいろ皆様から御意見いただくということで、特に本日はどこが結論かということではなく、いろいろな観点から御意見いただきまして、それをまた事務局のほうでまとめて、戦略のほうにインプットするという形になろうかと思いますので、御自由に御発言いただきたいというふうに考えております。といっても、対面とウェブの方がいらっしゃいますので、まず最初は、恐縮ですけど、名簿順に御発言をお願いするという形で進めて、一巡したところでディスカッションというふうにしていきたいと思います。
それで、後ほどのことになりますけれども、Webexでお入りの方は手を挙げるボタンを押していただくか、画面で手を挙げていただければ、御発言をお願いするということになります。あと、会場の方はマイクを使って発言していただくということになりますので、御発言の順番になりましたら事務局の方がマイクをお持ちしますので、そこから発言していただくということで、ちょっとタイムラグがあると思いますけれども、よろしく御協力いただきたいと思います。

【岸本主査】 それでは、資料への御質問があれば御発言のときにしていただくということも含めて、論点1、論点2というのも掲げておりますけれども、まず、この国際戦略をつくるに当たって、先生方や委員の方々が御活動されていることだとか、そういうことも含めて御発言をお願いできればと思います。ご発言は2~3分でお願いできればと思います。
名簿順になりますけれども、それでは、相田先生から、まずお願いできますでしょうか。
【相田委員】 非常に議論の幅が広いので、まず私が一番気になっているところだけ申し上げさせていただこうかと思います。
論点1に関係するのかなと思いますけれども、研究力の強化、STIにおける国際交流・協力を行う意義は何かという点ですけれども、まずやっぱり国際戦略を立てるといったときに、何をもって成功とするかという、何を目指すかということの明確化が重要だと思います。いろいろ御説明いただいて、例えば被引用数のTop10%がどのくらいだとか、国際共同の論文の数の割合がどのくらいだとか、研究力の強化をはかるのがそれしかないというのがまず問題だと思っていて、そういうものではかる分野もあるかもしれないけれども、そういうものでははかれない分野もあるので、まずは何をもってその強化を、強化というのは何をもってはかるのかということは、すごく明確にすべきではないかと思います。
それから、今回のこのコロナの影響で非常に私たち、皆さん、思い知らされたことは、やはり自分のところの独自性というのが大事だということだと思います。国際共同研究とか、いろんなことはもちろん大事で、何でそれが大事かというと、例えば何か一つのことを新しくつくろうとしたときに、いろんな多様な意見があって、いろんな考え方があって、ああ、そうか、なるほど、それならこうだということがいろいろ生まれてくるというところが私は国際共同研究のいいところだと思っています。相手方と同等に国際共同研究するためには、自分のところでしっかりしたものがあって、だからこそ相手も真剣に付き合ってくれるわけで、相手のところに、ただ何かを教わりにいこう、学びにいこうというのは、若い人はそれでいいけれども、まともな国際共同研究はそこからは生まれてこないと思うので、やっぱり自分のところでしっかりしたものがある、そういう人を育てるのが大事だと思います。
いろんな論文の数とか、そういうのがどんどん減っているというのは、もういろいろな解析をしても、そもそも何でそうなのかということを考えたときに、研究者の数がどんどん減っている、あるいは研究者が本当に研究をできなくなるような、そういうような状況に陥らざるを得なくなっている、だから結果としてそうなるのは明らかなので、本当の戦略というのは、研究者が研究をするような環境を整えるというか、私はそれが一番の戦略ではないかというふうに思っています。
すみません。以上です。
【岸本主査】 ありがとうございました。
それでは続きまして、飯塚先生、お願いいたします。

【飯塚委員】 ありがとうございます。私は、確かにいろいろな幅広いエリアを今回カバーするということで、社会課題解決について申し上げたいと思います。社会課題解決、今回コロナのことでもいろいろございましたけど、これから多分考えていかなければいけないと思うのは、それも国際戦略というところで考えていかなければいけないということは、地球公共財についてどういうふうに貢献していくかと、それから、その地球公共財とか、そこに生まれた知財というのをどういうふうに管理していくかということを協力していかなければいけないのではないかなと思います。その際に当たっては、やはり交流するというか、それから共同研究する意義というのは非常に重要なのかなと。それとあと、今、ICTとかございますけど、基準標準化に歩調を合わせていくということに関しても、やはりそういった地道な協力が行われるということが非常に重要なのではないかと思います。
あと、先ほどちょっとGAFAのことなどが出ていたのですが、GAFAのこと、もちろんあそこまで大きくなってしまうと、ちょっと問題になるかと思いますが、ただアジアのほうでも、GAFAまではいかなくても、ゴジェックとかグラブとか、そういうところがいろいろ展開をして、それなりの大きさになってきているところがあると思うんですね。ですから、それはそれで利便性、存在していない社会インフラを代替していくという点ではいいですが、ただ、データの活用方法について、やはりちょっと注意して見ながら、じゃあ日本としてどういうふうに関わっていくのかということも考えたほうがいいのかなと思いました。
今のところそれぐらいです。ありがとうございます。
【岸本主査】 ありがとうございます。
それでは続いて、礒田先生、お願いいたします。

【礒田委員】 私は、自分のことで恐縮ですが、SATREPSを2回ほどやっておりまして、科学技術外交について少しお話しできればと思います。
私、北アフリカのマグレブ地域のSATREPSの案件を、5年を2回ということでやっておりましたけれども、今回の資料4にあったインタビューの結果で、なるほどと思ったことがありまして、それは、やはり研究成果活用の整理が必要というのは非常に必要だと思います。というのは、社会実装の種類というのが対象国の産業化につながるような研究ということが今すごく望まれている中で、対象としている領域がそれに本当に合致しているのかというとで、そうでもないかも知れません、もうちょっと、もし社会実装ということを本当に打ち出すのであれば、その辺りからもきちんと枠組みを見直してやっていくというのも必要かと思いました。
それから、当然新興国を対象とすることもありまして、技術移転とか人材育成についてなどいろいろありますけれども、JSTとJICAの事業ですので、ODAの枠組みを使ったやり方ということで、奨学金として人材育成の形で博士の学生を受け入れることができるとか、すごく国内の大学にはメリットもありますけれども、一方で、機材の投入などに非常に時間がかかって、始まってから3年ぐらいかかるということもあったりします。それは多分、当初はJICAがODAとして機材の投入などをやってくださったんですが、開始して間もなく、大学のほうが全部担当するようになったことも実はあって、なかなか慣れない事務作業もあって遅れていると。遅れているその分、技術移転も遅くなりますし、研究成果が、例えば国際共著論文など、研究成果が出てくるのが遅くなったということもあったかもしれません。
恐らく5年という期間も短くて、10年くらいすると共著論文もたくさん出てくるようになりますし、あとは、そういう活動をしていると、マグレブ地域でしたので、フランスのCIRADとかCNRSとか、そういったところとの連携のラボとかもできましたし、またオックスフォードなどとも連携ができたということで、意外と、日本からすごく遠くてなじみのない地域ですけれども、実はヨーロッパとの関わりが非常に強いところなんかはトライアングルの関係も構築できたということがございました。
ですので、やはり科学技術外交としては非常に、日本の印象も現地ではとてもいいということも身にしみて感じていまして、日本のプレゼンスを高めるという意味では非常にSATREPSは大きな役割をしていると思うんですが、やはり実際やっていくといろんな問題があって、ただ、その成果の活用ということでは、整理をしていくというのは本当に必要ではないかと思っております。
ちょっとまとまりがないお話ですが、これで終わります。
【岸本主査】 どうもありがとうございました。
それでは続いて、小川さんからお願いしたいと思います。事務局がマイクをお持ちしますので。

【小川委員】 ありがとうございます。経団連の小川でございます。
国際交流の目的は、一方通行ではなくて、双方向であって、まず我が国の研究力、国際競争力を強化するために、グローバルな多様性を取り込むということが一つではないかと思います。そしてもう一つ、我が国の優れた技術、研究成果をグローバル市場に展開して、それによってグローバルな社会課題の解決につなげていくという目的があり、その双方向がうまく回るといいと思います。
そのときのやり方ですが、私は、外交というのは、したたかさと優雅さが重要かと思っております。我が国が幾ら水準の高い技術を持っていて善意で世界に広げようと思っても、それがそのまま受け入れられる時代ではありません。先ほど、せっかく持っていった技術が、期間が終わった後でうまく現地で生かされていないのではないかといったお話もございました。公的な資金の切れ目で終わってしまうというのでは、全く社会課題の解決につながっていきません。
ですので、技術を展開するときには、必ずその後、自走するように、しっかりビジネスモデルを構築するということ。また、それだけではなく、例えば日本の技術は非常にいいのだけれども、もっと安価な中国のもののほうがいいということで、結局マーケットを取られるということもあります。そこで、しっかりマーケットを日本が取っていけるようなルール形成も併せて行う必要があります。
こういったことを総合的に行うためには、やはりルール形成にしてもビジネスモデルの構築にしても、産学が緊密に連携して、研究から社会実装まで切れ目なくやっていくということが重要になってくると思います。
ただ、そうやってごりごりと押すだけでは、なかなかうまくいかないのも事実でありまして、もう少し優雅にというところはヨーロッパが非常に得意とするところかと思います。サーキュラーエコノミーなどはその代表例ですが、自分が展開したい技術やビジネスモデルを、より高次の大義名分、正義あるいはビジョンといったようなものを打ち出すことによって、より円滑に展開していくということを、日本もそろそろやったほうがいいのではないかと思います。
そういう意味で、第5期科学技術基本計画で初めて提唱されたSociety 5.0というのは、日本として初めて打ち出したビジョンだったのではないかと思っております。Society 5.0は人間中心の未来社会とされています。人間中心の意味するところは、その後、ウェル・ビーイング経団連でも改めて議論して技術を活用してウェル・ビーイングを高めるウェル・ビーイングということだと理解しております。、すなわち健康だけではなくて、経済的なウェル・ビーイング、社会的なウェル・ビーイング、環境との共生、その他いろいろなものを含むウェル・ビーイングを高めるということを提唱した、グローバルに受け入れられやすいビジョンだと思います。
日本がSociety 5.0をしっかり打ち出す。す。その際には、個々の企業や個々の研究者というよりは、国全体で、外交力も使ってしっかり打ち出して、そのアンブレラの下で個別のいろいろな研究成果の展開を図っていくということが重要ではないかと思っております。
私からは以上です。
【岸本主査】 ありがとうございました。
それでは続きまして、狩野先生、お願いいたします。

【狩野主査代理】 ありがとうございます。今までたくさんの御意見が出たところですが、多少それのまとめになるのかもしれません。内容を申し上げます。
まず1個目のレイヤーは、目指すところと、それから相手は誰かと、進め方はどうするかです。まず目指すところに関して。私が科学外交の仕事もいただいてから、外交って何かなと思ってあちこち調べました。一般論ですが、1つ目に経済を回すこと、いろいろな意味で安全を保つことが2つ目、3つ目が相互の魅力を高めることという説明がありました。通商・安全・価値です。そうすると、これらの目指すところそれぞれに対して何ができるかというのが一つ目の軸だと思います。
次に、相手は誰かということ。まずサイエンスの世界の同業他者他者に対するものとして、論文とかいろいろありますね。それ以外はどうかというと、学生の人たち、それから産業界の方々、最近では機密保持が必要な方々、そしてそれ以外、という相手の分類がありうると思います。こうしたうちだれを相手にした内容か。これがもう一つの軸です。
進め方はどうか。これに関しては、既存政策に関して一体どこまでできているか、これについて、見取図があるといいかなという気持ちがしております。先ほど申し上げた通商・安全・価値の3方面掛けるどの相手というようなマトリックスの中に、既存の政策がどのように配備されているのかというのは一つのマッピングの在り方ではないでしょうか。さらに、政策だけではなくて、産業界、財団などの政府以外の方々もいろんな努力があると思いますので、そういうことも、もし調べて、一覧になっていると見やすいのではと思います。その中で何があと必要か、何は重なっているか、というのを考えるのがいいかなと思います。
それから、今後のやり方に関して、ですけれども、これは社会の規範をどこまで変えようとするのかということが、非常に外国との中では大事なこと、観点かなと思っています。規範というのはどういうことかというと、私どもの社会はずっと、「同じ」の割合が高くて、「違う」割合は小さいというやり方をしてきたわけですけど、科学は「違う」の割合が大きくて、「同じ」の割合が小さめという、そういう文化から来ています。この中でどこまで変えようとするのか。
それからもう一つは、していいことと、してはいけないことの割合、これも規範によって違います。我々の社会はどちらかというと、していいことの割合が小さめで、してはいけないことの割合が大きめかなと思います。一方、科学が生まれてきた規範では、してはいけないことは最低限明確にしておいたうえで、それ以外は何をやっていいという規範かと思います。これをどこまで変える気なのかということを考えながら進める必要があると思います。
もうちょっとだけ深掘りをします。外交において価値つまりつまり魅力を高めることはどうやってできるのかということです。これも我々の社会規範では、今までは、手段が同じで、突っ込み方、効率が高いということをより価値があることだという決め方を規範としてきたと思うのです。しかし、最近、SDGsも含めた、西側的考え方かもしれませんが、求めることやルールが同じ中で、手段や展開が独自なものの価値が高いという考え方もあると思います。これはこれで我が国の、ガラパゴス的と表現される状況を、逆手に取った活用ができ得る可能性かなということも思います。ここはぜひ考える必要がある。
それから、規範のことについて言うと、そうは言いながら、やはり国内で多数の人はなかなか変われない可能性が高いと思うところです。学生さんに違う規範のありようを説明して、場合に応じて切り替えましょうと言っても、なかなか難しいというところはあります。じゃあそれを逆手に取るとすれば、どうしたらよいか。先ほど申し上げたような、「目指すところは同じなんだけど、方法が日本独自で、すてきでしょう」という言い方を、両方の規範に対応できる能力のある人たち人たちが一生懸命見つけて、別の規範の集団に向けて伝えていくということが必要かもしれないということを思います。
さらに、伝え方に関して言うと、伝えるといっても、こっちが一方的に話しても大体聞いてもらえないというのはよくあることです。相手の必要としていることをよく聞いて、つまり情報をうまく集めて、その上で、それにはまるような物語で伝えないと多分いけないわけです。そういうときに、文部科学省のみならず、他省庁の活用の仕方もあるでしょうしということを思っているところでございます。
そもそも論ばっかり申しました。すみません、あとは具体をつけていきたいと思います。よろしくお願いします。
【岸本主査】 どうもありがとうございます。
それでは続いて、須藤委員、お願いいたします。

【須藤委員】 須藤です。私は産業競争力懇談会というところに属していますので、そこでこのような議論をしたことがあるんですけれども、まずいろんな経済の状況を考慮しなければいけないということで、従来は地政学的ないろんな問題という言葉を使ったんですけど、三菱ケミカルの小林会長が、やはり地経学的な問題として捉えないといけないと。地理的な差と、それから経済の状況、両方を含めて国際展開を考えなければいけないんじゃないかというようなことを言っておりますので、今そういった方面で我々は議論しています。
具体的に、先ほど板倉局長でしたか、エマージングテクノロジーの話が出たんですけど、やはり米国は具体的に出していますよね、これがエマージングテクノロジーだというのを。じゃあ日本はどうするのだということがありまして、日本としても、これとこれとこれはエマージングテクノロジーとして、国として絶対にやっていかなきゃいけないというのを決めるべきではないかなと。特定のところを決めるというのは、いろんな研究をやっている方から批判も出る可能性あるんですけど、やはり国としてある程度、エマージングテクノロジーを特定すべきではないかと。特定した結果、そのエマージングテクノロジー個々に対して、どうやって展開するか、全方位的に協調するのか、特定の国と協調するのか、物によって全然違うと思いますので、そういったことをはっきりと特定しながら展開にかかるということをそろそろ日本としてやっていかないと、海外とうまくやっていけなくなるのではないかなということを、ちょっと今、議論しているところです。
内閣府のほうでいろんな戦略、量子戦略とかバイオ戦略とかAI戦略とか、多分これがある意味エマージングテクノロジーだと日本で言っているのだと思いますが、そうすると、あれだけでいいのかと。もっともっと、20とは言わなくても、ある程度、日本として注力すべきテクノロジーを明確にやったほうがいいのではないかなということが第1点目です。
それからもう1点、共同研究の話で組織対組織という話が出て、これはもう随分前から言われていますので、日本も相当改善されてきていると思いますので、このままやっていけばいいのではないかなと思うんですけど、以前、今の松尾文部科学審議官の下で、内閣府でいろいろと、SIPとかムーンショットとかやっていまして、今でも見ていますけれども、具体的にSIPとかムーンショットって国際展開しなきゃいけないよねといって進めているんですけど、なかなかうまくできていないというのが現状です。特にムーンショットは、もう国際的な知見を全部集めてやろうということで華々しくスタートしていますけど、実際のメンバーを見るとまだまだほとんど日本人でやっているという状況で、やっぱりこれ、国のシステムの問題なのか、何か分からないんですけど、もう一皮むけないと、なかなか国際的に一緒にやっていけないというのがあるので、ここはぜひ、この委員会等を通して打破していきたいなと思っています。
ただ、SIPとかやっていて一番国際展開がいいのは、社会実装は、日本はいろんな規制があってなかなかできない。自動運転とか、AIを使った医療とか遠隔医療とか、こういうのがなかなかうまくできないんですが、これは海外で使うとすぐ社会実装ができるというので、今、SIPなんかでは、むしろ海外をうまく使って実装して、それを日本に逆輸入しようかというような動きしているんですけど、こういった意味で、海外をうまく活用する、共同研究をうまくやるというのでは、海外の活用というのは、社会実装というのを考えると有効ではないかなと思っています。
【岸本主査】 ありがとうございました。
それでは続きまして、武田委員、お願いいたします。

【武田委員】 武田でございます。論点1の科学技術イノベーションの国際交流の意義ですが、今日御説明頂いた有識者意見のトップに、私が申し上げたことを挙げていただいているので、私がお話したときの背景と意図を少し補足させていただきます。
国際共同研究の目的については、先進国などとのものと、途上国などとのものとに、最低2つに分けて考えないといけないのではないかと思います。それらは大きな目的が違いますからKPIも違い、よってこれらを一緒に考えると、戦略も漠然としたものになってしまうからです。
まず先進国との方の話ですが、こちらは冒頭、板倉局長からもお話ありましたように、今や最先端科学技術が、AIのように、直近の、国の経済力にも完全に直結してしまう異次元の時代に突入しているわけです。その中でそのような、国にとっての直近の重大分野での先進諸国との共著論文がどんどん減っているというのが、非常に由々しき事態だとまず捉えるべきだと思います。国際共著論文の全体が減っているのが問題とするところからではなくて、直近の国力と直結している技術領域とそこをリードする先進国との共著論文が減ってしまっているのがまず問題だというところから議論を出発させるべきだと思います。そのような技術領域で、そこでの論文数や、その領域をリードする先進国との国際共著論文数をKPIにして、それを何とか上げる努力をすることが最重要な戦略になるのではないかと思います。
それではどうやってそのKPIの数字を上げていけるかということで、一つのアイディアをお話させて頂きます。私、来週の初めに結構大きな経済の国際会合で基調的な講演をさせて頂く予定でして、それは経済のルール、国際ルールの会合で、主に世界の法律家の皆さまの集まりなのですが、その場で主張しようとしているのは、AI×ポスト6Gみたいなことに関してなのですが、とかく自国への利益誘導の討論になりがちな場で、サイエンティスト・技術者が1つのパネルをつくって、各国が絶対合意できるサイエンスモデルをつくるところから始めてはどうかということを提案しようとしています。科学で議論すれば真理は1つのはずですから、国際ルールの文言討論と科学のアクティビティーを両輪で走らせたらどうかということを提唱しようと思っています。それは外務省や経産省にもすごく喜んでいただいています。科学が強いとされる日本からの世界的に発するとてもユニークな独自提案としてです。
AI×ポスト6Gは直近の国力を左右するテーマだと思います。ただAI、というだけだと、今、日本がそこで世界をリードするようになれるというムードではなかなかないと思うのですが、AIと何かの組合せで日本の国力を左右する分野で日本がリードする分野をつくっていくのは論点2も含めた戦略になると思います。そのような分野で産官学協調して国際論文をどんどん作れば、必然的に被引用数も国際共同論文も加速度的にふえると、かつて日本の論文が世界をリードしていた半導体分野のアナロジーで、思います。
途上国との国際協力の方は、今回の文科省の論点では触れられていなかったのですが、こちらは長期の視点で、同等に大変重要なので、申し添えさせていただきます。それは、私JSTから外務省から、国連本部や国連の機関などにも行ってお話をさせていただく機会をいただいて、そういうところで日本の科学技術の特殊性を随分聞いてきました。それは、ODAの中に占める科学技術ファクターの予算割合が先進諸国に比べて極端に低い、桁違いで低いということです。先進諸国は日本のSATREPSの何倍もの投資をしているそうです。
それのどこが問題かというと、アカデミア不在で民間企業だけでODAで何かを支援すると、企業がいってハードを納入して、そこで終わりになってしまいがちです。ところがアカデミアの協力が連動していると、アカデミアどうしの先進国と途上国のお付き合いというのは末永く、予算が途切れた後もずっと続く傾向にあります。同じ国際会議で毎年会うなどして。特に日本の先生方はそういうことを大切にされていると思います。そういうアカデミア間の人的ネットワークが、あるとき産業界にとってすごく貴重であったという例がたくさんあります。だから、それを海外の先進諸国がやっていて、日本はやっていないとすると、科学技術の戦略として悪い方に特殊ということになります。このような途上国との国際協力は、SDGsブームみたいな今、強化の絶好のチャンスと思います。ODAの全体予算はふえない、むしろ減少傾向だとしても、その中でSATREPSみたいなアカデミアどうしの交流を伴うものの割合を5倍10倍と増やしていくのが、日本のとるべき戦略ではないかと思う次第です。
本日ご説明頂いた有識者コメントでは、SATREPSはあまり役に立っていないみたいな批判的なものが散見されました。しかしそれは、共同開発技術が社会実装されたかという指標においてだと思いますが、途上国と人的なネットワークを学がつくって頂き、長年キープしていて頂いたがゆえに、産業界に大きなメリットをもたらしたという例を集め、その事例からそれを測るKPIを作って、SATREPSの異次元の将来の巨大な経済価値を主張していくべきと思います。
【岸本主査】 ありがとうございます。
それでは続きまして、林先生、お願いできますでしょうか。

【林委員】 よろしくお願いいたします。私自身は人文系の研究者なので、人文社会系の立場からこういう問題を考えるということで参加させていただいております。
基本的に人文社会系から見ると、こういう議論をどういうふうに協力、参画できるのかなというふうに悩むところであります。2点ほど考えました。国際交流・協力を行う意義ということを考える際に、やはり出発点として、日本のためにやる国際交流、日本のためにやる協力というのは、志というか、スタート地点でどこかずれがあるような気がします。やはり最終的には、青臭い言い方ですけれども、世界のため、人類のためだというところが重要で、日本がやらなきゃいけない、やらなくても、ほかがやっても最終的に人類が幸せになればそれでいいという心を持ってやらないと、やはりうまくいかないのではないかなというふうに感じた次第です。
そういう点で、先進国、途上国という別は今の段階ではありますけれども、10年後、20年後には全てが組み替わっていくかもしれない世界の中に生きている私たちとしては、そういう、世界のために考える、日本のためではなく世界のために考えているというところを原点に置くことが議論の中でも欲しいなというふうに思います。
それから2点目としては、国際交流をして研究をするのは人間なので、やはり人や社会に対する理解というのを抜きに付き合うことはできないのだろうなというふうに思いました。ある種、科学技術の世界でデータと数字で語り合うという場面もあるのだと思いますけれども、やはり長続きさせていく、スムーズに運営する、あるいはそれを社会実装していくという点では、人と社会への理解ということをきっちり組み込んだ国際交流、科学技術の国際交流というのは必要なんじゃないかなと思いました。少し遠回りになるかもしれないけれども、長い目で見たときには、相手国をよく理解し、人や文化を理解した上で共同研究するといったことが結果につながるのではないかなというふうに思います。
COVID、コロナの関係で言うと、幾つかアンケートの結果の中にありましたように、人と人とのつながりというのがなければ何かを生み出さないということも実感されてきているところです。具体的な政策的なものとしては、やはり日本の研究者が外に行ける、そうやって人間的つながりができていれば、インバウンドのほうも進んでいくのではないかなと、少し能天気なことですけれども、思いました。
【岸本主査】 ありがとうございます。
それでは、最後になりますけれども、松本先生、お願いいたします。

【松本委員】 松本です。本当にいろんな観点があって、何をお話ししたらいいかと迷いますけれども、一つ大事な話は、やっぱり人材の問題。2つあって、一つは、もう既にお話に出ましたけれども、これからの国際連携を担っていくような若手の強化ですよね。今フェローシップ事業なんかも始まって、大学としてそういう若手の教員ポストをサポートしていくという、そういうことはぜひ続けていただきたい。大学としては、やはり常にお金がないということを執行部は言い続けていて、プラスアルファでこういう人がいたらいいと思っても、雇うだけのお金がない状況がずっと続いていますよね。徐々にポイント制なんかも導入されて、総長が吸い上げて、それを適切に配分するようなことも進んでいますけど、5年、10年かかってしまう。日本のようなかたちで雇用が守られている状況で、大きなばんとした改革はできないので、少なくとも10年ぐらいの間、何か特別な措置が欲しいということがある。
もう一つは、もうちょっとシニアのほうになると思いますけど、その国際連携を実際にやっていくときにやはり、これは前にもお話ししましたけれども、どうやっていいか相談する人がいないんですね。恐らく産業界は海外にも拠点たくさんありますし、国際連携をやられていると思うんですけど、大学の人がこれをいざやろうと思ったときに、本当に困るんですよ。どうしていいかまず分からないし、どこに聞いていいか分からない。それをやれるような産業界の方が大学に来てもらえるといいのかもしれない、そのような戦略は大学独自の問題かもしれませんが、そういったところに産業界から協力いただくことが大切だという実感があります。
それから、海外派遣の問題ですけれども、米国はもう明らかにかじを切って、自国のためにやっている。これはトランプ前大統領の影響もありましたけど、結局それはきっかけでしかなくて、全体的に今もその状況が続いていると思います。近くで起こった例としては、アメリカの大きなファンディング財団であるハワード・ヒューズがありますけど、あそこがポリシーを最近、去年変えました。我々のところにも海外PIという形で加わってもらっているハワード・ヒューズ雇用の人たちがいて、その人たちは日本でラボをつくって、科研費とかを取って研究をやっている。しかしそういったラボを全部もう閉じなさいという指令が出ている。はっきりした理由は分からないんですけど、日本で雇用した人がやった成果は日本の大学の成果になってしまうので、知財の管理の観点からではないかと個人的には思っています。そういったことが起きている状況で、一体日本はどうするべきなのかというのは非常に悩ましい。それと同じことをやってしまっていいのかというのは非常に悩むんですね。我々もアカデミアシニカ、中国語では中央研究院、日本でいうと理研みたいな組織だと思うんですが、そこに我々のITbMのラボを今つくろうとしているんですけど、そういったことも一体どうすべきなのか、その知財の観点で。
それに付随して言うと、基礎科学の研究者は知財のことをそれほど気にしていない。トップの研究者は連携したくてしようがないというひとが多く、あるいは逆に、連携がうまくできていない人たちは、連携の大事さがあまり分かっていない。トップのレベルで研究をやっている人たちは、やはり次へ進むためには何か連携しないと駄目だなと、本当に実感を持っている。だから連携は進むんですけど、一方で、アメリカの話を聞いてみると、意外と基礎研究レベルでは連携していないんですね。我々のITbMを見て、何で生物と化学の人が一緒にできているのというのは非常に興味を持って、うちでも生物に相談してみたんだけど誰もやってくれないんだよ、みたいな話を聞きます。なので、意外と基礎研究では、日本は融合が進んでいるのかもしれないと思います。アメリカから我々のところに、一緒にやりませんかという話が来たりするので。
一方で、応用研究に関しては、先ほどやはり知財の問題とか、国際連携のときにどう考えるべきか判断に困ることが多く、そこを指南してくれるような方が大学に必要であるというのは痛感します。

【岸本主査】 どうもありがとうございました。一当たり先生方、委員の方々に御意見いただきまして、多様な視点のコメントが出たんじゃないかなと思います。
それで、私も一言御意見申し上げたいと思います。まず論点に絞って言いますと、STIにおける国際交流・協力を行う意義はと、こういう論点になっているんですけれども、そもそも論から考えたときに、STIを通じて国際交流・協力を行う日本にとっての意義は,という観点もあるんじゃないかと思います。日本は、江戸時代は世界から孤立して生活して、特有の文化をつくりましたけれども、今の時代で日本が孤立して独自に何か、自分たちだけでやる国にしていくというのは、そういう想定もあるかもしれませんけれども、これだけ日本のこういう生活を保っていくには、国際的にいろんな流通なりしていかなければいけないと思います。その中で、皆さんもおっしゃっていたと思いますけれども、やはり海外の多様性を知るとか、海外の人たちとうまくやりながら独自性を出すという、そういう場をちゃんと経験して、日本がしっかり生きていかなければいけないと思います。
そのときに、今、日本は、サイエンスとテクノロジーは、いろんな指標が低くなってきていますけれども、やっぱり強い分野で、尊敬はされていると。そういう日本が世界で生きていくための一つの手段としてサイエンスとテクノロジーがあるとすると、やっぱりそれをきちんと使って外交していくことが必要じゃないかと。そういうことからすると、研究力の強化に役立つとか、科学技術外交と言っていると、それはそれで一つの観点なんですが、もっと、広い観点からの外交の手段として捉えて、いろんな手立てが打てればいいかなと思います。
そう考えると、いろんな今、海外のプロジェクト、先ほどSATREPSの話も出ましたけれども、ある対象に特化した個別断片的なプロジェクトがいっぱい立っていて、日本全体で、じゃあ本当にあることを実現としたときの整理がついているのかなと。産業界の考え方もあるだろうし、そういった整理をちゃんとしてみる。ファンディングのほうも、いろんなファンディングがされていると思いますけれども、全体像をつかんでいる人が,大学にいてもいろいろなファンディングを探してきますけど、なかなか実際、現場にいる人たちはそれで非常に苦労していると思うので、そういった整理もした上で、その意義にかなうようなことをしていくのが必要じゃないかなというふうに思っています。
次に、論点2ですけれども、どのような観点に考慮してということですけれども、ほかの委員の方もおっしゃっていたかもしれませんが、ある種、短期的、5年から10年ぐらいで成果をちゃんと出すようなもの。具体的に論文ができるとかいうのもその短期的に入るかもしれませんけれども、そういった短期的な目標と、もう一つは、やはり人文社会科学も含めて、もっと10年、20年、ある場合には100年ぐらい日本がいろんな形で世界と交流していく、そのための戦略ということで、KPIどうするかという話もさっきありましたけれども、いろんなプロジェクトって、結果が短期的なことばかり書いてあって、それに含まれる、特に海外とやる分については、人材の話もさっきありましたけれども、長期的な視点というのがなかなか入ってきにくくて、そのために、例えば大学のほうでも、それに対応するような部署をきちんと持って、戦略立てて、それが代々継承していくとか、そういうのがなかなか今ないので、そういう意味で、大学は今、その中でいろんな仕組みをつくっていかなければいけないと思います。しかし,国際連携を、学生交流と研究交流と産学連携を全部を統括的に大学の中に仕組みをつくって進めていくって、文化交流も含めてということになるかと思いますが、それは,現状なかなか難題ではないかなと思います。
ということなので、むしろこの戦略をつくったらば、そういった、実際に国際交流を長期的にしていく、大学にそういう組織とか、そういうことができる専門の人たちとかいうことも、そこの人材が非常に必要だと思いますので、産業界の方に来ていただくのもそうですし、そういったことが、この戦略をつくった後にできるといいのかなというふうに思いました。そういうのができていると、ポストコロナで、世界との交流が途絶えたということもありますけれども、しっかりした特徴を持っている先生方とか、研究されていてネットワークを持っている先生方は日々、海外とは打合せをしながら研究を続けているということなので、むしろ日本がコアになっていれば、わざわざ日本に来なくても研究ができるので、やはり自分たちがいいものを持っていれば、こういうところで別に人が動かなくても研究が続けられると思いますので、やっぱりそういうところを大切にするんじゃないかなということかと思います。文科省でも研究基盤のほうで、ポストコロナを考えて、いろんな、リモートで実験ができるとか、来なくても実験ができるとか、そういう設備をどんどん入れていこうとしていますので、テーマさえあれば、きちんとこういうところでも国際交流・協力ができるんじゃないかなというふうに思いました。
ということで、皆さんの御発言の中を取ったような形になっていますけれども、私のほうからの意見は以上になります。
そういうことで、一通り御意見いただきましたけれども、事務局のほうから何か、今までのことで、先生方、委員の方々に、こういう観点でもう少し突っ込んでコメントいただきたいとかいうことがあればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

【有賀戦略官】 非常に幅広い観点の御意見いただきましてありがとうございます。しかもそれぞれ視点が広くて、どう消化していいのかというのが正直分からないところもございます。
その中で、それぞれに、やはりお立場によっても違う観点があるのかなというところは分かりましたし、研究分野によっても違うところがあると。我々が指標としてお示ししたものは、悪いという感じの御説明が多かったんですけれども、実はそこが強みかもしれないというのもあるかもしれないという御説明もいただきました。
すみません、今の段階でここを深掘りというのはすぐに思いつかないんですけれども、続けて議論いただければというふうに思っております。
【岸本主査】 ありがとうございます。
ほか、よろしいですか。局長から。

【板倉局長】 すみません。最近の、何といいますか、技術摩擦というか、そのものについてもう少し御説明したいと思うんですけど、今、先生方からもお話がありましたけど、アメリカも含めて、日本はもっとかもしれませんけど、様々なエマージング技術に関する取組については試行錯誤しているというのが現状ではないかと思います。もともと米中の技術貿易管理の最初の発端となったと言われているのは、中国が製造技術2025という、これも20分野ぐらい、中国が2025年に世界のトップになる技術というものを列挙して、それに対して力を入れていくんだという戦略を出しまして、それに対してアメリカのほうが、これはまずいという感覚を持ち、最初は貿易管理の枠組みで、技術規制のような形で幾つかのエージング技術を指定するという動きもあったんですけど、そこはアメリカ自身も、彼らは日本以上に国際社会から人を集めることによって、大学もそうですし、産業界もそうですけど、彼らは技術的優位性を保っていると。そことの整合性をどうつけるかというのが、なかなかパブリックコメントなんかをやっても様々な議論が出て、難しい状況になったと。
それで、昨年の10月頃にホワイトハウス主導で出したペーパーでは、やはりエマージング技術の育成と、それから管理を、同盟国も交えながらやっていきたいという大きな方針が出されていまして、多分これからいろいろと国際的な動きの中で、日本も含めて、そのエマージング技術の育成と管理というのをどうしていくかということが議論になっていくんだろうと思っています。日本でも、昨年の統合イノベーション戦略の中でも、そういった問題、しっかり考えるということが計画の中にも入りましたし、我々自身でも検討すべき課題だと思っておりますが、なかなかアメリカも悩んでいるというようなことを聞いておりまして、そういった中で、我々も出遅れることなく、しかしながら、何といいますか、そういう動きは避けられないと思いますので、どう対応していくかということも検討していかなきゃいけないかなというふうに思っております。
あと、そういった大きな課題のほかに、先ほど来御議論ありましたけど、本当に研究力をどうするかというのが、今、文科省で抱えている非常に大きな政策課題でありまして、確かに国際共同研究を増やせば本当に研究力が上がるのかどうかというのは、分野ごとの違いはあるのかもしれませんけれど、そういう研究力の強化、若手の活用ですとか、あるいは、本当にやっぱり新しい分野を切り開くためには、様々な、多様な人と交流しなければいけないというところもあるのかなと。そういったところも含めて、これは国際だけというよりも、文科省で抱えている非常に大きな問題ということでありまして、まず学生の支援ということでフェローシップも開始しましたが、そういう関連施策については引き続き行っていきたいというような状況であるということで、ちょっと補足説明をさせていただきました。
【岸本主査】 ありがとうございます。1点は、国際的な共同研究をしていくときのエマージングテクノロジーについて、どういうスタンスを持って取り組むかということです。例えば大学ごとにそれを考えなさいというのは非常に難しいというか、大学としてはそういうものができるわけではないような気がするんですね。やはり国として、あるスタンスを決めて、大学とのいろいろな相談もあると思いますけれども、その辺りは深い議論が要るのかなと思います。あと、産業界がその技術をどう使うかということにも関連すると思います。企業も多国籍化して、いろんな国の技術を使いながらやっていますから、日本だけで囲っていても日本の産業は伸びていかないと。非常に難しい課題だと思いますけれども、分類とかカテゴリー分けをしてみて議論していくのかなと。多分、白黒じゃなくて、いろんなレベルを整理して、どのレベルだったらいいとか、どのレベルだったら気をつけましょうとかというようなものをつくっていく必要があるのかなという気がいたします。
まず、その辺りで御意見どうでしょうか。
どうぞ、狩野先生。

【狩野主査代理】 すみません、「その辺り」になるかどうかちょっと分からないですけど、今お伺いしていて、申し上げてみたくなったことです。
それはやっぱり、この分野にはどんな必要要素があるのか、まず俯瞰をしないといけなさそうだということです。その必要要素の間でバランスを取り直すのだったら取り直すということを考えないといけない。バランスというのはどういう意味かというと、資金面のバランスもあるでしょうし、それから国と国以外の分担のバランスもあるでしょうし、それから時間軸で何をやっていくかというバランスもあるし、この辺だと思います。
岸本主査がお話しになった内容の最後のところで、ちょっと一つ、要素として申し上げてみようと思ったのは、科学技術外交の3要素です。外交への科学技術助言が一つの要素、それから外交を促すための科学という要素がある。それから、科学を促すための外交というのもあると。以上3つです。この中で、文科省のこの委員会としてはどれをやりたいのかということは、少しフォーカシングが要るかなと思います。あるいは、やることの中のどういう要素をやるのかというのはあると思います。
それから次に、特に武田委員がおっしゃったことで非常に感銘を受けたことがあります。ります。それは、やはり外交って、外から見て自分を見つめ直すという意味があると思いますが、それを国内同士ですが別セクターとして実感したということです。科学界の中にいると、さっきおっしゃった教育研究活動に関わる人が、中長期的な人のつながりをつくるという意義というのを、当たり前にとらえすぎてらえすぎて見逃しがちだったなと思いあたりました。これを産業界におられる武田委員からお話がいただけたのは、すごい指摘だったなと思いました。
あと、リターンの話を林委員からいただきましたけど、ここに在外公館の活用の方法も、あるいは科学技術アタッシェの皆さんの活用の方法もあるかなと思って聞いておりました。やはり現地にいないと分からないニーズみたいのがあると思います。こういう面を、アタッシェとして結構文部科学省の皆さんが在外公館へお越しになっていますので、役割としてお示しになってもいいかなということも思いました。
あとは、何を抑えて、何を促すかですね。知財、機密の制限なき流通は抑えたいけれど、人のつながりは促したいわけで、ここをうまくどうやってやれるかということを、議論が必要だなと思いました。
【岸本主査】 ありがとうございます。
ほかに御意見はございますでしょうか。あと残りの時間は自由に御発言いただければと思いますけれども。
それでは、武田委員、お願いいたします。

【武田委員】 せっかく褒めていただいたので、追加で言ってしまうのですが、例えばアフリカの特定の国と、日本のこの先生が何十年付き合っていたみたいな話です。それは、その2人だけの関係に全然留まらなくて、先方はその研究室にいた学生さんたちがどんどん社会に巣立っていって、政府の高官になっていたり、産業界のトップになっていたりというケースが多いわけです。だからそのような効果を含めて、先ほど申し上げた指標を絶対に科学の国際協力のKPIに入れるべきだと私は思います。以上です。
【岸本主査】 ありがとうございます。
ウェブで入られている方、もし御意見あれば。飯塚先生、お願いいたします。

【飯塚委員】1点、SATREPSのお話を伺っていたことと、それからあと産業界のお話を伺ったときにちょっと思ったんですが、確かに資金の流れというものの俯瞰的な見方というのは、前の先生がお話ししたように、理解する必要があるではないかなと。多分今SATREPSでやろうとしていることは、SATREPSはどちらかというとシーズ、もちろん研究に近いことをやりつつ、今実装に近いことに力を入れようとしていらっしゃるんだろうかなと思うんですが、その間をつなぐ資金というのが欠けていて、特に、もし実装につながるのであれば、ぜひ民間の力というか、民の資金というのも、もう少し積極的に導入してはどうかなと思います。先ほどの御発表の中で、SATREPSいいから、もっとどんどんODAを増やしてということがあったんですが、そういうわけには、多分今の経済情勢、いかないと思いますので、その場合はやはり民の力をもう少し借りる。じゃあそれとどういうふうに具体的に合わせていけるのかというようなことを考えるというのは、これから日本が科学技術の上で、また産業の上でプレゼンスを持っていくには非常に重要なのかなと思いました。
それと、やはりエマージングテクノロジーの件というのは、少しつながっているところがあると思うんです。エマージングテクノロジーはもちろん、先ほど狩野先生もおっしゃっておられましたけど、守っていかなきゃいけないところもあるんですが、人に使ってもらわないと結局インパクトがないと。インパクトがないとプレゼンスがないので、その辺はやはり前の段階から、研究の段階から国際的な協力を行って、裾野を広げていきながら成長していくという戦略もあり得るのではないか。特に今、コネクティビティーというのがすごく重要になっていますし、コネクティビティーの中にプラットフォームとしていろいろな波及技術というのがどんどん積み重なっていくという、そういう形態の技術になっていますので、一つががいいからいいというわけではなく、一つがよくて、それとこれがつながるから、より受け入れられるという感じになるのではないかと。そういった意味で余計に、国際交流、研究のところからと、それからあと産業とのつながりがすごく重要になるんじゃないかなと思います。
以上です。すいません。
【岸本主査】 ありがとうございます。
続いて、相田先生、お願いいたします。

【相田委員】 ありがとうございます。先ほど委員長がおっしゃったと思うんですけれども、これまでのいろいろなプロジェクト、多くのやられていたものの整理が必要だ、俯瞰し直すことが必要だという御指摘だったと思うんですけど、私は、それがすごく重要だと思っていて、もう随分長い間いろんなプロジェクトを、いろいろ考えてやってきていると思うんです。それが何年かやったときに、やっぱりこういうところは具合がよかったとか悪かったとか、もっとこうすべきだったという、そういう思いがいっぱいあってというのだと思いますけれども、同じ人がずっとやっていればいいけれども、だんだんやっぱり途切れてしまうので、客観的に俯瞰する、検証することが必要だと思います。そうすれば、こういうところをもうちょっとやればもっとよくなるというのが、多分分かっていらっしゃる方いらっしゃると思いますけれども、なかなかそういうのが客観的に見えないので、ぜひそういうのを見せていただけたらいいなと思います。
【岸本主査】 ありがとうございます。
それでは、須藤委員、お願いします。

【須藤委員】 先ほど飯塚先生が言われたこと、私もそのとおりだと思います。技術によって国際展開の仕方は全部変わってくると思いますので、やっぱりその技術に応じた国際展開の在り方というのをしっかりと考えてつくっていかなければいけないというふうに思います。特にエマージングテクノロジーについては、そうしなければいけないのかなと思っています。
それから、そういうことをやる上で、技術をどう守るかとか、どう展開するかというときに、特許という話がよく出てきて、これはもうJSTとか、いろんなところでそれなりの対応をしていると思います。もう一つ考えなければいけないのは、データをこれからどうするのか。どんどんデータ連携が進んできています。例えば文科省関連で言うと、材料、NIMSを中心にマテリアルインフォマティクスとか、データを全部集めようとかやっていますけど、こういった動きが当然いろいろ出てくるときに、そのデータをどこまで開放して協力して、どこまで自分たちで守るかという、多分知財以上にこれから大きな問題になってくるのかなという気がしますので、やっぱり国際展開を考える上で、データをどう取り扱うかということが重要になってくると思います。
【岸本主査】 須藤委員、今のお話の中で考えると、日本にデータが共同研究によって集まってくる仕組みをつくるのが大切ですよね。
【須藤委員】 海外から集まってくるのが一番いいですよね、もちろん。
【岸本主査】 はい。だから日本でいろんなプロジェクトをやったときに、それを通じて日本にいろんな海外のいろんなデータが自然に集まってくる仕組みをちゃんとつくっていくという、そういうテーマの設定をうまくプロジェクトでしていくというのは大切かなと感じているんですけど。
【須藤委員】 多分それも、先ほど飯塚先生が言ったように、テーマによって、そういうやり方がいいのか、違ったやり方をしなければいけないのか、全部個々に違ってくるので、やっぱりテーマを少し明確にする必要があるんじゃないかなという気がします。
【岸本主査】 そうですね。だから今までとちょっとファンディングのやり方も変わってくるかもしれないですね。国際共同研究で、ただいいからやりますというよりは、テーマの設定のところから、そういうところも仕込んだ形でやっていくというのが。この分野はこういうふうにやりましょうとか考えながらやっていくというのが必要なんでしょうね。
【須藤委員】 そうですね。
【岸本主査】 どうぞ、松本先生。

【松本委員】 エマージングテクノロジーと、あと最近始まったムーンショットの関係というのがあまりはっきり見えていなくて、ムーンショット、非常にテーマとしては大きいんですけど、実際に集めている人たちというのは結構狭かったりするんですよね。もっといろいろなテーマから多面的に取り組めるような基礎科学、特に基礎の部分をあんまり取り込んでないような気がして、特に、例えば農業に関して言えば、もう本当に実装できそうなところの人ばかりを。多分選んでいる人の考え方もあるのだと思いますけど、ちょっとそこが気になっています。
多分その理由の一つは、ちゃんとゲート審査があって、そこまでに実際に成果を出さなきゃいけないという、実装につながるような成果を出さなきゃいけないという、そこが一つハードルになっているので、これは本当に実用に近いところだけ取り上げたプロジェクトだというふうな理解で今はいるんですけど、そういう意味で、エマージングテクノロジーという意味では幅広なものを取り込んで、もう少し大きな枠組みでつくっていただくという、別の形、ムーンショットをも含んだ大きい枠組みを何か考えていただく必要があるんだろうなという気がしています。
【岸本主査】 ありがとうございます。ほかの委員は。
小川委員、お願いいたします。

【小川委員】 ありがとうございます。エマージングテクノロジーの議論は当然産業界でもしておりますが、なかなか公開の場で申し上げるのが難しい話題かと思います。より突っ込んだ議論は恐らくクローズドでないと無理かなと思いますが、一つだけ、つい最近、3月16日に経団連が「自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向けて緊密な協調を求める」という提言を出しております。ウェブサイトでも御覧いただけますが、自由で開かれたといいながら、一番最後の項目として、機微技術はしっかり国際協調して守るべし、流出防止すべしという項目が入っています。先ほど局長からもお話がありましたが、明らかに考え方が変わってきているということは言えるかなと。
話題が全く違いますが、先ほど狩野主査代理から在外公館のお話が出ていまして、私も科学技術外交の会合でいつも申し上げて、今やっていますと言われるのですが、大変重要なことだと思っています。個人的に、飯塚さんと御一緒させていただいたシンポジウムでも、在京の海外の大使館の科学技術アタッシェの方々が非常に熱心に情報収集に来られていて、関心も持ってくださって、そして彼らの間、いろいろな国のアタッシェの間のコミュニティーができているというのがすごく印象的でした。そういうところで知り合うと、今度、本国から科学技術の担当大臣が来ているので、意見交換しませんかと突然言われて、何かすごい少人数な意見交換に呼ばれるみたいなこともあったりして、純粋にそこでディスカッションをして、多様な意見を交わし合って、お互い知見を持ち帰りましょうみたいな、すごくいい流れをつくっていらっしゃるのが印象的でした。
そのコミュニティーの中に、もっと日本政府や日本の産業界のプレゼンスがあるといいとも言われたことがありまして、在京のコミュニティーにおいても、もっとプレゼンスを高めていただきたいというか、私たちも頑張りたいなと思いますし、同じような活動を在外の日本の公館のアタッシェの方々もどんどんやっていただけたらいいのかなと思います。私自身もジュネーブの代表部にいたことがありますが、そういうところの活動はアタッシェ個人の能力にかかっているところもあろうかと思います。なかなか短期間で交代する中でコミュニティーに入っていくのは難しいのですが、そういうところに、もちろん霞が関の方々が行かれるというのも重要ですけれども、例えば研究者の方々も短期的にアタッシェとして行かれて、より専門的な知見をもってそういうコミュニティーで交流されることもあってもいいのかなと思います。
以上です。
【岸本主査】 ありがとうございます。せっかく海外の人たちが日本にたくさん来て、科学アタッシェの人たちとの対話って、ものすごく私も大切なだと思いますので、やはりこの戦略を立てるときに、そういう方々との対話もしながら、海外はどういう戦略になっているのかというのを、そういう中を通じていろいろ学びながら日本も戦略を立てるのも大切かなと感じました。ありがとうございました。
ほかに御意見いかがでしょうか。ポストコロナのことについてはあまり御意見なかったように思いますけれども、よろしいでしょうか。何かそれに関してございませんか。

【狩野主査代理】 また口火切り役をします。先ほどから、テーマを明確にして議論という話がありました。そのときに、すぐに分かるのか、すぐに分からないのかという2つの要素は両方重要であって、そこのバランスどうするかということにやはりなる気が致します。というのは、コロナの話で言えば、感染症に対して近年投資が減っていたわけです。もう感染症対策は要らないだろうといって。その必要は、この危機が起こる前は、同意が得られなかった。だけど、この危機が起こって、初めてみんな必要が分かったわけですね。でも、やはりそこへの投資へのが少なかったからこそ、という影響もいろいろあったかと思います。
あともう一つは、すぐに使えそうか、あるいは今は何に使えるか分からないという、この対比も重要だと思っています。後者の、発見当初は何に使えるか分からないの歴史的な例としては、電気とか、大陸移動説とか、あるいは進化論とか、きわめていろいろあるわけです。ただ、それらのおかげでもって重要な存在感を示している例は枚挙にいとまがないと思うので、こうした、すぐには何に使えるかわからないという内容を、どういうふうに大事にできるかという視点も非常に重要かと思っております。
ちなみに、そういうことで言えば、じゃあバランスの設定はどうしたらいいかという問題があるわけです。そのときに外交として使えることは、先ほどのアタッシェの方々からの情報の収集も含めて、参照基準としての外国の活用というのがあると思っています。ある国では、こういうバランスで設定すると、その後何が出てきたのか、あるいは別の国では、こういうバランスで設定したらその後はどうなったのかという例を集め学びながら、我が国はどうするかということを考えていくというのも一つの考え方と思います。
すみません、コロナに関係はしているけど、そんなには、という内容で失礼いたしました。
【岸本主査】 ありがとうございます。ほかにも、いかがでしょうか。

【岸本主査】 林先生、私のほうから聞いてもよろしいでしょうか。今、コロナの中で、学生交流だとか、いろんな形で大学は大変だと思いますけれども、そんなところも含めて、ウイズコロナ、ポストコロナにおける国際交流・協力の在り方について何か御意見があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
【林委員】 そうですね、先ほどから出ていますように、結局コロナになって感じることは、もともとの付き合いがあるところとは深い付き合いができると、新しい付き合いは広がらないということで、学生の留学などについても、途中で帰ってきた学生は引き続きオンライン留学を続けられましたけど、新たな留学にオンラインで行くという学生はやはり少ないんですね。そこはやはり、人間というものはそういうものだなと思います。世界を知るというのは現地体験が伴わなければうまくいかない、あるいは人と知り合ってからでないとオンラインではうまくいかないということが今回分かったと感じております。ただ、コロナが開いた扉というのは、もう閉じることはないと思います。オンラインで交流することが一つのベースになって、いざというときには、あるいは必要なときにはリアルに動くという体制が今後の交流の基本になるんじゃないのかなというふうに感じます。
すみません、雑駁ですけど、そのようなところです。
【岸本主査】 どうもありがとうございます。ほかの委員の方々からはいかがでしょうか。
梶原審議官、お願いします。

【梶原審議官】 すみません。委員の皆様方、いろいろと広範囲にわたる御意見いただきましてありがとうございます。私なりに、今日聞いたところの中で、いろいろ考えさせられるところがあったのですが、一つ、相田先生のほうからありました、この国際というのをどう評価するかと、評価の多様性というお話だったと思うんですね。昨今はやはり国際についても、例えば国際共著論文が何だとか、またTop10%論文が何だということだけになっていますが、例えば隣の国とかは、そこを操作するために国ごと動いているような、要するにオンラインジャーナルを自分たちで作ったりとかしています。よって、それだけで評価をしているというのはやはり、ここの話ではないのかもしれないですが、ちょっと片手落ちというか、しっかりと評価ができない。そういった意味では、先ほど言われた大使館とかのアタッシェの活動を通して現地でどう評価されているか。そういったものも、その国際ということでの評価の一つになると思うんですね。そういった意味で、国際戦略に基づき、サイエンスやテクノロジーを実施することについてどう評価するか、評価の多様性についても、今後先生方で御議論いただければ、そこが発端となって評価全体ということも少し変わってくるかもしれないなと思いましたので、ぜひともそういったところも御議論いただければと思います。
すみません、ちょっと一言だけ。
【岸本主査】 非常に評価のことは大切ですね。どちらかというと、今までKPIが評価の目的というか、達成の目的になっていて、本来何を目指すのかということが抜け落ちてきて、結局、数値は高めたけれども本来の目的が達成されないというのは皆さん感じているところがあるので、そういった中で、うまく自分たちがどの時点にいるのかというのが正しく認識できて、どこを改善したら、本来の目的に向かえるのか。それはまさに今回の科学技術基本計画の中での評価についても同じようなことが言われているので、国際活動についてどこが本来目指すところなのかと、そこから始めていくというのは本当に大切だなと思います。
はい、どうぞ。
【松本委員】 その観点で言うと、ちょっと手前味噌なところもありますけど、WPIというプログラムは非常にうまく機能していて、あまり数値だけで評価しないんですね。あまりに論文が少なかったりすると何か言われるかもしれませんけど、基本的には数値で評価するのではないというスタンスをずっと貫いている。もちろん、もともとの最初の採択のところで非常にハードルが高い、非常に優れた研究所でなければ選ばれないわけですが、毎年必ずフォローアップされて、全体的な、包括的な評価が行われるという、これは非常にいい仕組みだなと思います。WPI拠点側としては、最初の頃は大変だなと思いましたけど、今では非常に効果的に機能していると感じています。
それから、WPIも、先ほどの在京の大使館の科学技術アタッシェたちとのミーティングというのも始めて、今年の1月にWPI拠点との意見交換の場を設け、WPI拠点の研究状況を伝えて、向こうに興味を持ってもらうようなことをやっています。意外と彼らも、例えばさっきのハワード・ヒューズが日本にラボを置いてはいけないと言っているという話も、アメリカ大使館の人が、えっ、そうなのみたいな感じで、知らなかったりするので、必ずしも全部の情報を持っているかどうか分からないですけど、非常に大事な取組だというふうには思っています。
【岸本主査】 ありがとうございます。

【岸本主査】そろそろ予定の時刻に近づいてきたので、今お手が挙がっている飯塚先生を一応、今日の、意見いただく最後にしたいと思いますので、飯塚先生、よろしくお願いします。
【飯塚委員】 恐れ入ります。先ほどの大使館の方の活用の仕方という点についてなんですが、私は長い間、海外の研究所で勤務しておりました。そこで思ったのは、ほかの国の方と比べて大使館との接点が薄いなということです。例えば、同僚だった中国人の同僚と比べると、中国の在外の大使館というのは、現地の大学・研究機関に留学・勤務している学生・研究者に密にコンタクト取っていて、そこから情報を得ようとしている。そうすると、そこから新しい、そこでやっている研究なりの情報も仕入れていけるといった活用の仕方というのは、もしかしてあまり日本では効果的にされていないのかもしれない。私の個人的な経験談ですので、全体のことはちょっとよく分からないんですが、在外日本大使館の科学技術アタッシェのそういう活用の仕方もあるのではないかなと思いました。
一言だけ、すみません。
【岸本主査】 どうもありがとうございました。まだまだ御議論あるかと思いますけれども、本日は、時間の関係もございまして、この辺りにさせていただきたいと思います。本当に多くの御意見いただきまして、ありがとうございます。
それでは最後に、事務局より今後のスケジュール等を御説明いただきたいと思います。お願いいたします。

【生方補佐】 今後のスケジュールにつきましては、資料6のほうにございます。次回、第2回は令和3年4月23日の15時から17時の開催を予定してございます。また、その後、第3回については、令和3年5月下旬から6月上旬頃を予定してございます。また詳細につきましては改めて御連絡差し上げますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【岸本主査】 ありがとうございました。本日いただいた意見については事務局のほうでまとめてくださるということですので、整理いただいた上で、次回は国際戦略の策定に向けて議論を進めてまいりたいと思いますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
それでは、本日の委員会はこれで終了いたしたいと思います。本日はありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)付
電話番号:03-5253-4111(内線:3992)

(科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)付)