第11期科学技術・学術審議会 国際戦略委員会(第4回)議事録

1.日時

令和4年3月18日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 科学技術の国際展開に関する戦略の策定について
  2. その他

4.出席者

委員

岸本委員(主査)、相田委員、飯塚委員、石原委員、磯田委員、小川委員、狩野委員(主査代理)、須藤委員、武田委員、林委員、松本委員

文部科学省

寺門科学技術・学術総括官、上田科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)、生方科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)付参事官補佐、塩野谷高等教育局高等教育国際戦略プロジェクトチーム総括補佐

5.議事録

第11期科学技術・学術審議会 国際戦略委員会(第4回)

令和4年3月18日

 

【岸本主査】  それでは、おはようございます。第11期科学技術・学術審議会国際戦略委員会第4回を開催いたします。
第11期科学技術・学術審議会国際戦略委員会の主査を務めております岸本でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、委員の皆様におかれましてはオンラインにて御参加いただいております。今回も全員の委員の皆様に御出席いただいております。御多忙のところ、御出席いただきまして、感謝申し上げます。
初めに、開催に当たっての留意事項を事務局から御説明をお願いいたします。
【生方補佐】  通信の安定性確保のために一旦ビデオを切らせていただきます。
事務局より会議開催に当たっての留意事項のを、御説明いたします。まず、本委員会はペーパーレス会議になっております。配付資料につきましては、事前に事務局から送付しましたファイルを御覧ください。議事次第、資料1-1から資料1-3及び参考資料1から参考資料4-3の2つのファイルとなっております。資料はそれぞれ1つのPDFにまとめており、しおり機能で各資料をすぐに開けるようにしておりますので、御活用ください。
ファイルの不備に関してのお尋ねなどがございましたら、事前に送付しておりますWebex Events注意事項に記載の事務局連絡先まで御連絡ください。
次に、発言いただく際の留意事項です。オンラインで御出席の皆様におかれましては、御自身でマイクのミュート設定、ミュート解除設定の操作をお願いいたします。
御発言されないときは、マイクの設定はミュートでお願いいたします。
御発言がある場合は、Webexの挙手ボタンを押していただきますようお願いいたします。
主査からの指名がありましたら、御自身でミュートを解除いただき、御発言をお願いいたします。
御発言の際は、各参加者にも分かりやすいよう、最初に御自身のお名前から御発言いただきますようお願いいたします。
また、御発言の後は挙手ボタンを消していただきますようお願いします。
なお、本日の委員会は公開で開催させていただいております。
以上でございます。
【岸本主査】  御説明ありがとうございました。
続いて前回の委員会の開催後、事務局に人事異動があったとのことですので、御紹介をお願いいたします。
【事務局】 事務局より人事異動について御報告申し上げます。昨年7月1日付で、科学技術・学術政策局長といたしまして、千原由幸科学技術・学術政策局長が着任しております。本日は欠席でございます。
1月1日付、科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官といたしまして寺門成真科学技術・学術総括官が着任しております。
昨年7月1日付、科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)といたしまして、上田光幸参事官が着任しております。
以上でございます。
【岸本主査】  ありがとうございました。
それでは、本日の委員会の開催に当たりまして、文部科学省を代表して寺門総括官より一言御挨拶をお願いいたします。
【寺門総括官】  御紹介いただきました科学技術・学術総括官の寺門でございます。
本日は特に年度末のお忙しい中、御出席賜りまして、誠にありがとうございます。
冒頭で御挨拶すべき局長、千原に代わりまして、よんどころない事情につき、私から一言御挨拶申し上げます。
まず、一昨日、深夜の福島県沖を震源とする地震によりお亡くなりになられました方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
また、本委員会にも関係する国際情勢といたしましては、ロシアによるウクライナ侵攻、こちらにつきましては、岸田総理大臣からも、力による一方的な現状変更の試みであり、決して許すことのできないものであると見解が表明されております。当省といたしましても、現地情勢を注視しながら、関係省庁と連携の上、適切に対応してまいりたいと存じます。
さて、本委員会の皆様におかれましては、昨年来、集中的に御審議を賜りまして、今後我が国が取り組むべき科学技術の国際展開の方向性をまとめた「科学技術の国際展開の戦略的推進に向けて」を、主査の岸本先生をはじめ、御尽力賜りまして、おまとめいただきました。改めて感謝申し上げます。
文科省といたしましては、頂戴いたしました報告を踏まえまして、特に今後取り組むべき施策のさらなる具体化について検討を進めてまいりました。本日は、こうした検討結果を踏まえまして、科学技術の国際展開に関する戦略として取り組むべき施策についてお示しをし、先生方から忌憚のない御議論を賜れましたらと存じます。
御案内のとおり、昨年閣議決定されました第6期の科学技術・イノベーション基本計画におきましては、我が国の国際競争力の維持・強化に資するために、また、国際頭脳循環を通じて我が国が世界の研究ネットワークの主要な一角に位置づけられ、国際社会における存在感を発揮するために、科学技術の国際展開に関する戦略を2021年度内、すなわち今年度内に策定し、順次施策に取り組むこととされております。
お取りまとめいただきました報告、また、本日の御議論も踏まえまして、この計画に定められた戦略として成案を得たいと考えているところでございます。
何とぞ本日は、活発な御議論を頂戴いたしまして、進めたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
ありがとうございます。
【岸本主査】  ありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと思います。まず、議題1の「科学技術の国際展開に関する戦略の策定について」に入ります。最初に事務局から「科学技術の国際展開に関する戦略」(案)について、資料1-1及び資料1-2に基づき御説明をお願いいたします。
それでは、御説明のほう、よろしくお願いいたします。
【生方補佐】  ありがとうございます。それでは、改めまして、科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)付の参事官補佐をしております生方から御説明差し上げます。
まず、資料1-1をお開きください。ページを1枚おめくりいただきたいと思います。こちら、今投影しておりますスライドは、昨年6月、本委員会でお取りまとめいただきました「科学技術の国際展開の戦略的推進に向けて」の報告概要でございます。
冒頭、世界秩序の再編、グローバル・アジェンダの顕在化、新型コロナウイルスの感染拡大など、世界的に大きく状況が変化し、我が国の国際的な研究コミュニティーにおける存在感が低下する中、科学技術を戦略的に国際展開していくことが重要であるとの現状認識の下、中ほどにございますように、研究力の強化、新たな価値創造・社会課題解決、科学技術外交といった「国際交流・協力の目的と考慮すべき観点」について整理をいただきました。
また、「国際交流・協力のための取組の方向性」といたしまして、大きく国際頭脳循環、国際共同研究について留意すべき観点や大きな方向性について御報告をお取りまとめいただいたところでございます。この報告を踏まえ、事務局にて国際頭脳循環、国際共同研究施策等の具体化について検討を進めてまいりました。
ページをおめくりください。こちらのスライドでは、学生から研究者までを通じた国際関係施策の主な現状をまとめてございます。
一番上の欄が大学学部、修士、博士からポスドク、大学教員までの在籍者数について、統計等の数字をまとめたものです。四角の囲みが各段階での在籍者総数、青い矢印が1年間の進学者数、就職者数を表しています。
在籍者数の単位で見ますと、学部の数百万名から始まり、修士で十数万名、博士で7万名から8万名程度といった形で推移をしております。
非常に大きな在籍者数でございますが、年度の進学者数等の単位で見ると、修士以降、研究者になる層の人的な移動としては、およそ数千名単位の流動があることになります。
続きまして、文部科学省が実施しております主な関係施策を中段に整理してございます。主に大学、大学院を対象とする施策といたしましては、ジョイント・ディグリーの推進や留学制度による海外留学支援など、面的な取組を進めてきております。
続いて、博士、ポスドク、大学教員など、いわゆる研究者の段階になりますと、研究者の派遣受入れとして、海外特別研究員制度、外国人特別研究員制度を実施してきており、また、国際的な研究拠点形成といたしまして、世界トップレベル研究拠点形成プログラム、WPIを実施してきております。
また、国際共同研究事業といたしましては、こちらで例示をしておりますとおり、JSTのSICORP、SATREPSといった事業、また、こちらに明記はしておりませんが、JSPS、AMEDなどの資金配分機関でも国際共同研究事業を実施してきてございます。
また、こちらに加えまして、令和3年度補正予算で、科研費新種目の「国際先導研究」という新たな種目を創設してございます。これらの全体像を踏まえつつ、今後行うべき施策として、ポンチ絵の一番下の部分、「具体策の方向性」ということで①番から⑤番まで整理してございます。
①番と②番が国際頭脳循環の関係の施策、特に①番が研究者の派遣の関係、②番が研究者の受入れ、国内研究環境の国際化の観点になります。また③番が国際共同研究の拡充、そして④番がジョイント・ディグリーの推進、⑤番が博士課程学生支援における国際化への貢献、こういった方向性となってございます。
以降のスライドでそれぞれについて簡単に御説明差し上げます。ページをおめくりください。
まず、国際頭脳循環の中でも、研究者の派遣、アウトバウンド向けの施策でございます。
一番上の「現状」にございますとおり、従来文部科学省で実施をしてきてございます海外特別研究員事業などのフェローシップ型の事業は、中長期の海外派遣の基盤となる取組と考えてございまして、今後も充実を図っていくことが重要と考えております。
一方で、こうしたフェローシップ型の事業は、措置できた予算の多寡によって派遣者数も決まってくるものとなってございまして、財源上の制約もどうしても受けることにならざるを得ない、というところに留意が必要なものと考えてございます。
このことを踏まえまして、「対応」といたしましてポンチ絵の下のほうに整理してございます。フェローシップ型の渡航、これは基盤として着実に充実を図っていく。これに加えまして、米国を中心に行われております、海外研究者の下で給与を得ながら研究、学位取得を行う移籍型の新たな流動モードといった形のものを促進していきたいと考えております。
右側に米国の研究博士取得者の一次支援元の表を付記させていただいております。一時ビザ保有者、つまり米国で学位取得をする外国人の方につきまして、7割近い方が、TA、あるいはRAといった形で生活費を稼ぎながら学位を取得しているというデータがございます。
このように、米国の研究者の下で給与を得ながら海外経験を積む、こうした渡航形態を確立していきたいというのが本施策の考え方でございます。
これに向けまして、令和4年度予算案におきまして、JST事業に試行的な新事業のための経費を確保してございます。本試行事業におきましては、若手研究者、学生の数週間から数か月程度の中期渡航を支援し、この中で渡航先の海外研究者とのコネクションづくり、共同研究計画の策定、ポスドク公募に向けた機会獲得など、長期渡航に向けた準備を行っていただき、将来的な長期渡航につなげていくこと、また、こうしたノウハウを蓄積し、移籍型渡航のロールモデルの形成、確立を目指すこととしております。
本事業につきましては、今後公募により募集することになりますが、現時点では数十名程度の派遣を予定してございます。
また、新たな流動モードの促進に加えまして、令和3年度補正予算で創設した科研費「国際先導研究」におきましても、大規模・長期間の国際共同研究の支援の中で、ポスドク・大学院生の長期間の海外派遣を組み込むことを想定してございます。
こうした取組を通じまして、フェローシップ型と移籍型、両方併せて促進していきたいと考えております。
ページをおめくりください。次に、研究者の受入れ、国内研究環境の国際化といったアウトバウンド向けの施策でございます。文部科学省では世界トップレベル研究拠点形成プログラム(WPI)におきまして、国際的な研究拠点形成を進めてきており、世界的にも高い評価を得る拠点が形成されてきてございます。これらの拠点につきましては国内の先進事例として、その取組の学内・他大学への水平展開が期待されてきたところでございます。
WPI拠点におきましても、シンポジウムの開催、ホームページでの成果の発信など、取り組んできていただいておりますが、水平展開の具体化というところではまだ課題も多いというのが実態と考えてございます。
このため、対応といたしまして、WPIで得られたノウハウを整理し、一層の水平展開の促進を進めていきたいと考えております。WPIでは、研究力の強化のため様々な取組が行われておりますが、各拠点へのヒアリングを通じ、国際化に当たっては、ポンチ絵中ほどに青字でまとめております5つのポイントが特に共通的に重要なポイントとして抽出をしてきてございます。
まずは英語による対応が可能な事務体制の整備。また、一定数、これは数人ということではなく、より大きい単位の一定数でございます、その数の外国人を常に受け入れること。そしてガバナンスの観点といたしまして、研究現場のことを理解した事務部門長を配置いただくこと。そして、学長以下、学内各種制度の柔軟な運用を可能とするガバナンス体制を取っていただくこと。そして最後に、英語による生活・研究環境に係る情報提供等の支援を行うことになってございます。
一般的にはWPIの取組は敷居が高いと捉えられるような向きもございますが、国際化のコツについて、こうしたWPIの取組を基に5つのポイントに絞って示していくことで、国際化に関心を持つ大学の動きを促していきたいと考えております。
これに当たりましては、大学全体で国際化を進めていただくというよりも、ポンチ絵の最後のポツにまとめてございますとおり、学科・専攻、あるいは附置研・研究拠点など、拠点単位で進めていくことが非常に実効性としては高いものと考えてございます。
したがいまして、こうした拠点単位に対して、これらのポイントを示しながら、横展開の基盤としていきたいと考えております。併せて今後の展開といたしまして、自らの取組をほかの組織と比較、あるいは達成状況を自ら測れる指標も今後検討していくことによってさらなる取組を促していきたいと考えております。
なお、最後に注釈を付記してございます。これらの取組を行うに当たっては、どうしても財源の安定的な確保といったところも併せて課題として上げられてくるところでございますが、この点につきましては今後検討が必要な事項という形で考えてございます。
ページをおめくりください。次に国際共同研究でございます。「現状」にございますとおり、近年の国際情勢の変化も受けまして、我が国への共同研究の引き合いは年々強くなってきていると感じているところでございます。
他方で、こうした強い引き合いに応えられるような、いわゆる第3階層の、国際共同公募による国際共同研究予算につきましては、文部科学省関係予算では近年それほど伸びていないというところが現状でございます。従前から日本におきましては、国際共同研究について、決定が遅い、決定しても予算が小さいということで、「too little、too late」という評判がついて回ってきておりますけれども、なかなかこちらの評判については変えられていないというのが近年の状況でございます。
こちらの部分につきまして、「対応」にございますとおり今後の対応を考えております。例えばEUなどでは、ホライゾンヨーロッパの大部分が3か国以上の国際共同公募による国際共同研究予算に充てられるなど、非常に大きいファンドを持って活発な国際共同研究が行われてございます。
文部科学省といたしましても、こうした海外との連携を一層強化していくため、国際共同公募による国際共同研究事業の拡充を進め、高いレベルの共同研究を推進する基盤を整えることが重要と考えてございます。
併せて、戦略的創造研究推進事業など国内向け研究費の「開国」についても引き続き進めていくことにより、全体として国際共同研究への転換・拡大を進めていきたいと考えてございます。
また、こちらのスライドのほうの下のほうに2つ注釈を付記してございます。共同公募という形ではございませんけれども、科研費におきましても、さきに申し上げました国際先導研究の創設をはじめ、国際化に資する改革が現在検討を進められてございます。また、科学技術におけるODA活用など、途上国支援とも連携した取組についても引き続きしっかり進めていくことが重要と考えてございます。
ページをおめくりください。ジョイント・ディグリーの推進について、でございます。ジョイント・ディグリー制度につきましては、平成26年度に制度が創設され、これまで国内12大学26プログラムが創設されてきてございます。こちらは大学間協定に基づき、国内大学、外国大学間で国際連携教育課程を編成し、単一の学位を授与する枠組みとなります。
一方で、当該課程を設置するためには、全て設置認可の対象になってきたところでございまして、大学設置・学校法人審議会での審議が必要となるなど、事務的な手続の負担も指摘されてきてございます。
ページをおめくりください。本制度につきましては、制度開設当初、国内初の制度ということもありまして、慎重な制度設計となっていたこと、また制度創設から7年が経過し、実績が蓄積されてきたことから、今般、所要の改正が行われることとなってございます。既に中央教育審議会大学分科会のほうでこの改正について議論が行われたところでございます。先ほど申し上げました設置認可につきましても、一定の要件を満たす場合には、届出での設置を可能とするなど、大幅な制度の改善が見込まれてございます。
今後、8月1日の施行が予定をされてございまして、文部科学省といたしましても、ジョイント・ディグリーの一層の推進に取り組んでまいりたいと考えてございます。
ページをおめくりください。最後に、博士課程学生支援の推進と、これによる国際化への貢献です。博士課程学生支援につきましては、若手研究者育成パッケージ等を踏まえ、文部科学省としても、博士課程学生への経済的支援の抜本的拡充を通じ、生活費相当額を受給する博士課程学生の倍増、RAの処遇改正に向けたガイドラインの策定など、政策的に進めてきたところでございます。
こうした博士課程学生支援を通じまして、アウトバウンド向けの効果といたしまして、次世代研究者挑戦的研究プログラム等におきまして、採択大学の学生が海外経験を希望する場合には、その機会を提供することを推奨してございます。
また、インバウンドといたしまして、経済的支援の拡充やRA経費の適正支給等を通じ、博士学生への適切な処遇環境を整備することで、国内の優秀な学生の博士課程進学につなげることはもちろんでございますし、海外からの留学生が学位取得・研究環境として日本を選択していただける、こうした好影響を期待しているものでございます。
以上御説明申し上げました5つの柱につきまして、科学技術の国際展開に関する戦略として考えているところでございます。
以降のスライドのほうは参考資料でございますので、適宜御参考いただければと思います。
また、配付資料1-2でございます。こちらにつきましては、ただいま申し上げました5つの柱についてまとめた概要資料でございます。
併せて参考資料1-3でございます。本日の審議事項についてということで、論点メモの1番といたしまして、国際展開に関する戦略案、ただいま申し上げました御説明の内容について御意見をいただきたいというところとともに、2番といたしまして、国際展開に関する戦略に沿った取組の推進に当たって留意すべき点などについて、先生方からぜひ御意見頂戴できればと考えてございます。
事務局からの説明は以上でございます。
【岸本主査】  御説明ありがとうございました。
それでは、これまでの説明を踏まえまして、およそ11時45分を目標に質疑応答の時間にしたいと思います。皆様に御議論いただきたいポイントは、最後に資料としてお出しいただきました資料1-3に記載しております。1番としては、科学技術の国際展開に関する戦略案の内容について、2番目は、それに沿った取組の推進に当たって留意すべき点について御意見承りたいと思いますけども、最初の1ラウンドは、委員の皆様から順番にコメントをいただいて、それが終わったところで自由に御発言いただくという形を取らせていただきたいと考えますが、よろしいでしょうか。
一つ、議論に入る前の確認ですが、科学技術の国際展開に関する戦略案を御説明いただいたのですけれども、改めて、戦略案は、どのような形で資料として最終的に取りまとめる予定になっているのか、事務局から補足説明をお願いしてもよろしいでしょうか。
【生方補佐】  事務局でございます。今回、6月に報告を取りまとめいただきまして、この前段としてございましたのが昨年3月に閣議決定をされました第6期科学技術・イノベーション基本計画になってございます。こちらの科技イノベ基本計画には、科学技術の国際展開に向けた戦略について、2021年度中に策定し、順次施策に取り組むことという形で記載されてございます。
6月の取りまとめに関しましては、科学技術の国際展開の戦略について大きな方向性をいただいたということで考えてございます。
今回お示しをしております国際展開の戦略案でございますけれども、お取りまとめいただいた報告を踏まえまして、具体的な施策という形で事務局のほうで少し検討させていただいたものでございます。
形式といたしましては、今お示しをしてございますポンチ絵式の資料をまさに戦略としてまとめていきたいということを考えてございますけれども、実際のところは6月にまとめていただいた報告書本体資料を補足するものということでございまして、併せて1つの戦略という形で最終的に見せていくような形にしていきたいと考えてございます。
以上でございます。
【岸本主査】  そうしますと、6月30日につくったときには、文章で取りまとめたところなのですけども、今回の戦略は、ここに示されているような29ページを概要にして、その後に今日説明いただいた1から5までを具体案として付記してまとめると、そういう方向性だと理解すればよろしいでしょうか。
【生方補佐】  恐らく実態としては、ホームページに載せるときに、報告書部分と今回の戦略の部分という形で2つ並べてお示しするような形になるかなと思ってございますけれども、基本的には2つを1つのものとして扱っていくという形で考えてございます。
【岸本主査】  ありがとうございました。それでは、今のことも含めてそれぞれの御意見を賜ればと思います。恐縮ですけども、名簿順にお願いするということでよろしいでしょうか。
それでは、相田委員からまずお願いできますでしょうか。
【相田委員】  資料全体については、今すべきことが端的にまとめられているのでいいと思うのですけども、2点、ちょっと気がついたことを申し上げます。
1つは、この資料をまとめたのが去年の夏から秋にかけてだと思うので、本当にCOVID-19のパンデミックのことしか頭にないときにまとめたものだと思うのですね。なので、今現在の世界の状況を見ると、あまり詳しく書く必要はないけれども、それに関することも冒頭のほうに何か1行ぐらいないとそぐわないのじゃないのかなという感じがいたします。
それが1点ともう一つは、若い方々に海外に積極的に行ってもらって、また海外からも若い方々に日本に入っていただくということ、そのための戦略というのはいいのですけれども、今は、本当に日本の中でのポストがなかなか得られないので、とにかくまずポストを確保しようかという発想になっていることも海外に行くことをちゅうちょさせる原因の1つだと思うんです。
なので、ポストの人事選考の中で、海外の経験を人事選考の1項目として入れるように仕向けるということも戦略的に入れておかないとなかなか動きが取れないということもあるのじゃないのかなと感じます。
今の段階では以上です。
【岸本主査】  ありがとうございます。それでは、続いて、飯塚委員、お願いいたします。
【飯塚委員】  おはようございます。ありがとうございます。私も相田先生と同様で、非常にこちらの戦略、各項目、きちっとまとめられていると思いました。その中で、幾つか、細かいことにはなるのかなと思うのですが、意見を述べさせていただきます。
1つは、インバウンドのほうで、日本の博士課程の学生になるべく海外に行くチャンスを与えるということはすごくよろしいことだと思うのですが、例えば海外から日本で学んでいる学生にもそういったチャンスを何らかの形であげることができるといいのではないかと思いました。
具体的な例なのですけど、例えば、私、今ジャパンリードの国際共同研究を実施しているのですが、そちらで求められているのは、日本のポスドクの学生に海外に行く機会を与えるようにというのがあり、それはそれでいいのですが、何となく対外的に、日本の学生にだけ限られている、国籍を限っているのは、何となく国際的な流れに反しているのではないかなと思ったりします。現に、ほかにも留学生がいるにもかかわらず、日本の学生だけというふうなところは、もしかしたらちょっと考えてもいいのではないかなという点がございました。
あと、もう一つ、やはりインバウンドのところかもしれませんが、英語による生活へのサポートが必要という点、これ、まさしくそのとおりじゃないかと思っているのですが、例えば、これは研究者だけではなく、家族にもその辺りのサポートをしないと、やはりなかなか来てくれないのではないかと、また居着いてくれないのではないかという気がいたします。
例えば、配偶者の労働をどういうふうにしていくのかと、労働許可を得られるようにしていくのかとか、または、子供の教育について、英語なり、もしくはそうじゃないにしても、言葉の状況とかをサポートできるようなシステムを何らかの形で日本にできるような形にしておかないと、やはりどっちを選ぶかと。そういった研究者の方が、日本で研究する拠点を選ぶ際にどちらを選ぶかというところで、そういうところが問題になって来られないところがあるのではないのかなと思いました。
ですから、そちらに言われているポイントというのは、まさしくそのとおりであって、私としては細かいところを申し上げたということでございます。
以上でございます。
【岸本主査】  ありがとうございます。それでは、続きまして、石原委員、お願いいたします。
【石原委員】  この資料に関しましては、私のほうも、要点がまとまっていると思いまして、非常にいいまとめになっていると思います。
細かい点ではありますが、アウトバウンドのときに、大学院生から給料を取ってこられるような大学に送り出すというのは非常に重要だと思うのですけれども、送り出す側の心構えが、まだ今囲い込み的な研究室の体制がある中で、優秀な学生がいたときに、海外の大学院に行っておいでという研究室がどれぐらいあるのかなというのが気になった点です。そこが変わらなかったら、教授が例えばフェローシップを取ってきたとしても、学生が本当に行けないのではないかなという点が、懸案だと思いました。
インバウンドのサポートというのは非常に重要で、WPIは外から見ればやはりハードルが高いように見えるので、このようにパッケージ化し、いかに敷居を低くみせ、ほかの大学でもやりやすいようにするかという点は考える必要があると思います。これをいかに多くの大学のスタンダードとしていけるかが鍵となると思いますので、最低でもこの程度のスタンダードには達していないとこの先展開する上でやっぱり困りますよということを納得してもらい多くの大学で海外の研究者が不自由なく生活研究ができるサポートをしていくというのが流れであろうと感じぜひ進めていってほしいと思っています。あんまり初めからスタンダードを高くすると尻込みをしてしまいますので、最低限各大学でできるだけ広く海外の方を受け入れられる土壌をつくってほしいと思います。
共同研究のところで気になったのは、人材育成と共同研究の予算で、お互いの先進研究をちゃんと組み合わせて高い結果を出すというのと、人材育成とが予算のカテゴリーが分かれているような気がする点です。いかに先進の国際共同研究を目指すかという点が重要であり、いい共同研究案がないと、学生だけ送り出しても、研究自体が盛り上がることにはならないと思います。ですので、最先端の研究グループ同士がうまく合致したとき、学生をその中に無理なく入れ込むというものができるといいなという、抽象的になってしまうのですけど、印象を持ちました。まず有望な国際共同研究を選択した上で、そこに学生や若手の国際育成費を追加配分するというイメージです。
ジョイント・ディグリーに関しましては、これまでの経緯とかを把握していないところがありまして、せっかく7年分のデータがたまったのであれば、ぜひそれを、よかった点と悪かった点を共有していただいて、一度総括をしてみたいという印象を持ちました。
博士課程については、最近いろいろ改善が見えていますので、引き続き進めていただきたいと思っております。私からは以上となります。
【岸本主査】  ありがとうございました。
それでは、続けてお願いしたいと思いますけども、礒田委員、お願いいたします。
【礒田委員】  御説明ありがとうございました。まず国際頭脳循環ですが、先生方からも御意見ありましたが、最近、大学の公募が、国際公募が一般的になっておりまして、日本人だけではなく、海外にいる日本人の方や海外の外国籍の方も応募してくる中で、日本人の方を中心に考えているような頭脳循環の仕組みのように思います。でも、その場合には日本にきちんと裨益があることが必要ということだと思います。足場を日本に持たないで、海外に行って研究をして、優れた成果を挙げても、日本にまたポジションを得て定着できるかどうかというところがなかなか難しいと、過去の事例を見てもそのように思いますので、その辺り、やはり日本に足場をつくりながら、効率的に循環できるような仕組みというのが必要なのかなと思います。
それから、インバウンドのことについては、WPIのことが出ていますが、ほかの拠点事業などは対象にならないのかなという点を教えていただきたいと思います。
それから、国際共同研究の拡大というところですが、これは本当にこのとおりだと思います。相手国側からのニーズをきちんと分析して、それでマッチングが重要です、国内のどの研究者、ラボがそれに合うかどうか、その辺りもうまく加速して支援も含めて進めると、より良い国際共同研究ができるかと思います。もちろん予算の規模も少ないということは改善する必要があると思います。ポストSATREPSなどの後継の事業も重要と考えます。
それから、ジョイント・ディグリーですが、私自身もこのプログラムを担当したことがありまして、以前の、非常に制約があった部分がかなり改善されたような気がします。学部のときから、ジョイント・ディグリーというのが推進されると非常によいかと思います。今、たくさんの留学生も日本に来て学んでいる中で、なぜかプレゼンのスキルとかが、日本人の学生があまり得意ではない傾向が見られまして、やはり早いうちからこういう素養を身につけるということは非常に重要かと思いました。
あと、言わずもがなですが、博士課程の学生支援額を上げて支援していくことも必要と思います。博士課程に進みたいという希望があっても、経済的な理由でできないということも多々ございますので、重要と思います。
あと、企業の方が、例えば修士を取得した後に企業で研究されて、その後、博士取得のためにリカレント教育を受けることも最近増えているように見えますので、その支援もできるような仕組みもあるとよいと思いました。
施策についていろいろと述べさせていただきました。よろしくお願いいたします。
【岸本主査】  どうもありがとうございました。それでは、続いて、小川委員、お願いいたします。
【小川委員】  小川でございます。今御提示いただいております資料、非常によく整理されていて、分かりやすく、私も頭の整理ができました。
拝見していて思ったのが、私は、実はイノベーション・科学技術担当とともにスタートアップも担当しておりまして、つい先日、スタートアップ躍進ビジョンという提言を取りまとめて公表したばかりです。メディアでも話題になっていましたので御覧いただいた方もいらっしゃるかと思いますが、その議論とこちらの議論がほぼシンクロしていまして、研究者をスタートアップに言い換えると、ほぼそのまま通用するという状況になっています。これは実は偶然ではなくて、関係ない話ではなくて、つながっているのだろうと思っております。スタートアップの中でも、IT系のスタートアップは非常に潤沢に資金をもらえて発展しているのですが、これは英語圏の技術やサービスを日本語に置き換えて成長しているというところがあって、独自のもので大きく化けるかというと、なかなか限界があるというところが、語弊を恐れずに言えばあります。やはり日本でこれから大勝ちするスタートアップを生み出すには、独自の日本の技術を核にして発展していく、特にディープテック領域ですとか、バイオですとか、そういったところが期待されていますので、学術研究とスタートアップ振興は、切っても切れないと思っています。
また、研究者さんたちにとっても、キャリアの多様化という面で、よく博士課程まで行った人材を大企業で受け入れてくださいということをずっと言われているのですが、今はもう産業界のキャリアも大企業に入ることだけではないのです。欧米では、よく研究者さんが、起業をして、そこで資金を得て、またそれを元手に次の研究をしてというようなことを普通にやっていらっしゃって、キャリアの多様化、それも日本の研究者さんだけではなくて、海外から日本にインバウンドで来られた研究者さんのキャリアという意味でも、日本で研究をして、そこから起業するというようなことが当然あっていいと思っています。
そういう意味で、こちらの研究環境のほうの国際化の議論と、今、岸田総理の下でスタートアップ振興の議論をされていますが、ぜひ政府内でも連動させて一緒にやっていただくといいのかなと思います。それぞれの施策でそれぞれに予算を取るとどうしても限りがあると思いますし、重複、無駄な部分が出ると思いますので、ぜひそこを連動させて他部局とも一緒にやっていただけるといいと思いました。
各論につきまして、アウトバウンドについては、本当にそのとおりで、スタートアップもやはりドメスティックな視点に陥りがちです。もっと世界に向けて目を開くためには、やはり実際に海外に行ってみることが重要と言われていますが、より若い段階で短期間でもいいから行ったほうがいいのではないかという話を私たちもしております。
ですので、大学院まで行ったところの人材の努力ももちろん必要ですが、高校生、学部生あたりをもっと外に出すというところ、また別の部局の取組になるかもしれませんけれども、そこともぜひ連携してやっていただければと思います。
それから、インバウンドについては、最近、経団連の会長、副会長レベルが、北陸で金沢大学、それから九州大学のカーボンニュートラルの拠点という、たまたまWPIの拠点2か所を視察させていただきまして、私も同行しました。経済界のハイレベルが行くということで非常に気合の入ったプレゼンをしていただいたということもあると思いますが、経済界のトップの方々が非常に感銘を受けられまして、いい取組だという認識を新たにされたように思っております。
口々に言われましたのが、こうしたことがどうしても都市部の大学に集中していて、なかなか地方では、金沢、九州はあるのですが、ほかにももっと広がるといいのにねというようなお話がありました。各大学の努力に委ねていて進むのかどうか、そこは分からないのですが、ここを拡充する具体的な方針について何かお考えがあればお伺いしたいと思いました。
あと、生活環境とか、その辺りは本当に先ほどから御指摘があるとおりだと思っています。スタートアップの提言でも、教育環境、特に外国の高度な人材の方々にとっては、インターナショナルスクールがそもそも少ない。そしてインターナショナルスクールを出た後に、日本の大学を受けられない。受けるとしても日本語でないと受けられないといったことで、結局高度人材の子女の方々が本国に帰ってしまう。これも実は重要な人材を流出させているのではないかというような御指摘もあって、提言をさせていただいております。この辺りもぜひ一緒に御検討いただければよろしいのではないかと思っております。
私からは以上でございます。
【岸本主査】  どうもありがとうございました。
それでは、続いて狩野委員からお願いできますでしょうか。
【狩野主査代理】  ありがとうございます。
既にたくさんの先生方から極めて皆同意するところを述べていただきました。私なりの言い方で似たようなこと及び少し違うことも申し上げてみたいと思います。
1つ目が、まず予算確保をどうするかという点です。予算確保が、これを実現するに当たっては特に重要ではないかということを思っております。その際にどのように国際共同予算の重要性を訴えていくのか、というところがあるかと思います。
その際に、例えば文部科学省の施策としてこれを打っていくということもちろん大事ではあるでしょう。けれども、それとともに政府全体として進めるということも非常に重要な観点かなと思っています。とりわけCSTIもこの方面に関してはご関心がおありだと思います。そことどうやって組んでいくのか。それから、あるいは外務省方面もご関心があろうかと思います。それらとどういうふうに上手に分担をしながら確保していくかということはあるかなと思います。
その際に、例えば研究の発展という意味でいうと、基礎を深めていく、抽象化された方面の基礎を深めていくということが1つの方向性としてあろうと思います。この場合は、例えば、欧州、あるいは米国やカナダ方面辺りとやっていくということを深めていく可能性があるでしょう。それから、実地のことを深めていくとか、あるいは応用方面を深めるという意味ではもしかすると近隣のアジア諸国とやっていくということはあるかもしれません。こういった整理をしながら、どういうふうにお金を確保していくかということはあるだろうと思います。
さっき小川委員がおっしゃったように、加えてスタートアップの件も新しいことにチャレンジしていくという意味では、関連していると思います。ここも上手に整理ができたらいいなと思って伺っておりました。
この際、joint callの類いにしないとうまくいかないだろうという観点があり得ると思っております。というのは、お互いウィン・ウィンである必要があるだろうと思うからです。両方のカウンターパートが必要だと思っている内容にしないとお金がなかなか集まらないかと思います。ですので、どういうふうにjoint call、先ほどもおっしゃっていた第3階層ですね、これに近づけていくかということは考えていくべきだろうと思って伺っておりました。これがお金に関することでしょうか。
次の観点は、その使い方です。そのときに、「話す」と「聞く」という2つに分けて申し上げてみたいと思います。
1つ目が「話す」ほう、広報です。これはインバウンドを考えるに当たってもアウトバウンドを考えるに当たっても、まず我が国にどんな魅力があるから来てほしいと言っていくのかということは、情報を集めた上でどういう発信をするかということも考えないといけないわけだと思います。これもやっぱり元手がないとなかなか進みが悪いというところもありましょう。国際関係予算の中にそういう使い道というのももしかして要るのではないか、ということを一つ思います。
そのときに広報というと、どうしてもホームページ作ればいいだとか、そういう話になりがちなのですけど、やっぱりコンテンツが問題で、あるいはその発信の仕方も問題で、ビデオ化を上手にするということもあるでしょう。また、そもそも、どんなところを魅力として取り出すかという辺りをぜひ、次に申し上げる「聞く」ということと一緒にやっていく必要があるのじゃないかと思います。
もう一つ、広報においては、先ほどからお話があったように、やっぱりロールモデルになるような人たちの具体的な姿が見えないと自信が持てないという面があろうかと思います。例えば、日本に来た結果としてどんなうれしい思いをしている人がいるというのを出せるか。あるいは、海外に行ってどういうことを思ったのかということをうまく表現してくれる人がいるか。そういうことをうまくつかまえてきて、この人たちと波長が合えば、ぜひ御自身も試してくださいというような言い方が要るのじゃないかなと思っています。こういうことに対する予算的手当てもこの政策の中に入っていくことがもしかすると大事ではないかなということを思ったところがあります。
続きまして、声を「聞く」というほうです。そういう意味でも、目的としてこういうことを進めていくに当たって、国内外に日本の味方になってくる人を増やしていくということが、もし日本に定着しなくても重要かなというふうに国際情勢を見ながらも思うわけです。味方になってくれるためには、多分嫌いと好きをてんびんにかけたときに好きのほうが強くなってくれないと困ると思います。そういうときにポテンシャルとして好きになってくれる可能性があったのに嫌いになっちゃう可能性についてどうやって手当てができるかというのも大変大事なことかと思っています。このためにも、実際に経験している人たちから、どうやって声を聞いて、うまくそれを生かしていくかというシステムが要るかなと思います。
これが今は当事者になる人たちに注目をしてお話を申し上げました。ほかに、科学技術アタッシェという役割の方々がおられます。日本から在外に送り出している方々もいるし、それから、東京に、例えば在外公館におられて科学技術に関するその情報交換をしている人たちもいるわけです。例えばこれの在京のほうはネットワークがありまして、ちょうど先日もその会議に出て意見交換をしたところがありました。例えばその中で言われたこととしては、しばらく日本に滞在をして、こういう貢献をしているのだけれども、昔に比べて最近のほうがなお内向きになっている印象があると。そのときに、大学に対する改革は次々見聞きするのだけれども、ここにおられる方は違うと思いますが、企業の皆さんで勇気を持って外に行った人とか、最近は院生になった人とかの受入れがもっと進むともっといいのじゃないでしょうか、そういうところの変化も要るのじゃないですかみたいな意見を某国の方が言ってくださっておりました。そういう意見というのをちゃんと聞いてうまく力にできているかということを考えたときに、もう少し試みていく余地もあるのではないかなということも思った次第でございます。
とりわけそういうことでいうと、新しいことを始めるというのはそうした方面があるように思っています。ピーター・ティールという投資家の人が、「今は認める人が少なくても多くの人にとって真理をあなたは見出しているか」という質問をして、それが納得のいく答えが来れば投資していますということを本に書いています。これの内容というのは、産業だけじゃなくて、科学でも重要なことだと思っております。そういうような声がしっかり聞けて、しかも、発信といいますか、広報というか、話すほうにもつながっていくことによって、この国は面白いことがあるのだなということを例えば魅力として出せる可能性もあるのではないでしょうか。また、そういうような循環をつくるのにこうしたお金を活用するというような方面も考えていく必要があるのではないかと思ったところがあります。
あと、もう一つ、私が今回のこの委員メンバーの中では地方大学にいる1人なのですけど、そういうところで具体を見てまいりますと、先ほどまとめていただいたWPIの知恵は、あれぐらい一般化されれば非常に使えるわけですが、多分あれの裏に潜んでいる景色が大分大学によって違う可能性があるかと思います。そのときに、よりたくさんの人にこういうものに関わっていただくということを進めていくためには、あれの裏側にどんな景色があるので、どういう手当てが具体的に必要なのかというのはもう少し調べていくこともできると大変よくなるかなと思って伺っておりました。
いずれにせよ、前回までの委員会で意見があったように、政策に関して非常にきれいに、マッピングをしていただきました。おかげさまで、よりたくさんのことが言えるようになって、よりたくさんの仕事がまた皆様に発生して申し訳ないのですけども、でも、その結果としてよりよい国際戦略が立っていくといいなとお伺いいたした次第でございます。
以上です。ありがとうございました。
【岸本主査】  どうもありがとうございました。それでは、続いて須藤委員、お願いいたします。
【須藤委員】  5つの施策を、今、スライドに出ていますけども、これをまとめていただいて、確かに分かりやすいかなと思いました。ちょっと気になったのは、昨年6月の委員会報告のスライドについて、大きな柱に研究力強化、それから新たな価値の創造や社会課題の解決、それから科学技術外交と、これが3本柱であるのですけども、この施策がその3本柱のどれに寄与するのかということが、多分文章にすれば少しは出てくると思うのですけども、どうも左側の研究力強化だけについて、狭い範囲のことを言っているように取られがちだと思うのですよね。中身はちゃんと社会課題の解決とか科学技術外交ということ含んでいると思うのですけども、もう少しそこのところを強調しないと、狭い範囲の研究力強化のための5つの施策と取られかねないなという気がしましたので、そこは少し検討されたほうがいいのかなと思います。
それから、もう1点は、これは文部科学省の担当の方に一度事前に話したときに言ったのですけども、対象が大学に限られているような印象を受けます。本来研究力強化だけじゃないのでしょうけど、研究力で国際戦略をやるといって一番大事なのは、むしろ国研、国の研究機関があるのじゃないかなと。理化学研究所とか、JAXA、NIMSとか、いろいろ文科省関係でもあると思うのですけども、こういうところの研究者が本当に国際的にちゃんと戦略を持ってやっているのかどうかとか、そういったことをもう少しこの中で、国際戦略の文章ですので、入れないとまずいかなという気がします。
ちょっとその話したとき、文科省のほうで、文化省所管の国研でどの程度の人が海外行って、どういうことやっているかというのをまとめていただいて、私のところに資料を送ってもらったのですけども、かなり少ない。理化学研究所とかでも長期で行っている人は100人に足らない。そういう状況なので、もう少し、大学は当然ですけど、国の研究機関の研究者が長期にわたって海外に行って活躍する、あるいは長期にわたって研究者を受け入れるというようなことを本気でやらないと国際戦略としてまずいのじゃないかなという気がしますので、少しこの中にもそういった視点を入れてもらえるといいかなという気がしました。
以上です。
【岸本主査】  どうもありがとうございました。それでは、続いて武田委員、お願いいたします。
【武田委員】  武田です。3点。第1にアウトバウンド、第2にインバウンド、それから、第3に国際共同研究について手短にコメントさせていただきます。
まず、最初のアウトバウンドですが、日立でもアメリカの大学でドクター取られた方が結構おられまして、皆、顕著な活躍されています。日本社会全体でもそういうことなのだなと思っています。ですから、その母数がこの10年で日本人だけは激減しているという数字は大変ショックなものです。
これを解決するために予算を増やしていきますというのが本日の戦略なわけですが、そのためには、やっぱり財務省や国民に対して、その減少が日本の国力のいかに低下につながっているのかというのを、根拠を持ってしっかり示すことが必要なんじゃないかなと思っています。
それは大変難しい課題なのですが、まずは日本のドクターの方々が日本の社会でどのような活躍をされているのかというのを、学位を授与された日本の大学に追跡調査をしてもらいまして、それは各大学にとっても大いに意義あることのはずですし、それから企業的にいえば、送り出したものが社会でどう役に立っているかというのを追跡調査するというのは当たり前のことですから、何とかやっていただいて、文科省がそれを集約して、それで日本の大学の博士課程強化の具体国策というのはここからスタートするというのをやっていただいたらどうかと思う次第です。
さらに難しそうなのが、アメリカの大学でドクターを取られた日本の方の追跡調査ということなのですが、これもアメリカの文科省なんかにも協力してもらって、何とか、サンプル的でもいいですから、トライいただけないかなと思います。
それから、第2のインバウンドのほうですが、企業から見まして、今日のお話の中にはあまりなかったのですが、日本の大学への留学生の質・量を高めるということは大きな関心事です。日立も外国籍の方の採用をどんどん増やしていまして、それは多くは、日本の大学に留学に来られた方を、卒業後に日本の大学から採用させていただいているというものです。
ですから、この対策のほうは、受益者である産業界も巻き込んだ産官学連携の重要プロジェクトにでもしていただくようなアクションを文科省に音頭を取ってやっていただけないかと思う次第です。そのプロジェクトが起これば、私もよろしければ喜んでぜひ参加させていただきますので、どうぞ御検討お願いします。
それから第3に国際共同研究の話なのですが、ちょうど昨日、私、核融合のボード会議に出席していまして、これは日本が中心にいる国際共同研究の最大のもので、そこにロシアも入っているわけである提案をしてきました。文科省の幹部の方もおられましたので、本日は内容には触れないのですが、今一人一人何かできることがないのかというのを考えることと緊急にそういうことを議論するということをあらゆる場面で最優先にすべきように思います。本日のお題であります科学技術の国際展開の戦略という、このお題についても、ぜひこの議論を一度緊急にやるべきではないかと思います。
以上です。
【岸本主査】  ありがとうございました。それでは、林委員、お願いいたします。
【林委員】  ありがとうございます。3点ほどまとめさせていただきたいと思います。相田委員、それから須藤委員、また今の武田委員の御報告にありましたように、今、国際戦略といったときに、今の国際情勢の問題と切り離していくというのは若干不足を感じる事態になってきていると思います。恐らく武田委員とはちょっとニュアンスが違うかもしれないのですけれども、今、ロシアとの共同研究等を打ち切ってほしいといった要請がウクライナなどから来ているわけでして、そういう問題に巻き込まれていく私たちのスタンスといいましょうか、足場の確定というのは非常に重要なところかなと思っております。今武田先生からございましたように、場合によってはそれについて何らかのことをこの中にも加えていく必要があるのではないかと思う次第です。
2点目としては、インバウンド、アウトバウンドについてです。きれいにまとめていただいて大変ありがたく思います。もし不足があるとすると、こういう形で、科学技術で、分野ごとの狙いを定めた交流というのはこういう形でしていくと思うのですけれども、人文系とか人文社会系などの事例を考えますと、やっぱり広く薄くという点も非常に重要だと思っておりまして、それについては、現在の仕組みでは、JASSOの協定派遣とか、学位取得型といったところが主たる対応策になっているのかと思います。
ただ、それらが大学院にはなかなか適応しにくい現実があります。学位取得型は別ですけど、協定派遣型という我が国の留学支援の一番大きな部分については、やはり学部とかが中心になりがちであり、かつ、大学院、修士のように2年間というところで運用するには難しい、使いにくい面がございます。研究テーマを定めた交流とは別に、そもそも基盤を高めていくという意味で、広い地域への様々な学生自身のテーマに応じた交流というものの実現の仕方について少し踏み込んでいけたらさらにいいかなと思いました。
第三に、ジョイント・ディグリーにつきましては、今回の施策で改善がされたことは大変ありがたいと思っておりますが、人文社会系の場合ですと、依然、やりにくい面があります。というのが、特に人文系の場合は、同じテーマをやっている日本と海外の研究室というよりは、例えば文学研究でしたら、ドイツ文学の研究をするところと日本文学を研究するところがそれぞれ学生を交換してジョイント・ディグリーになるといった仕組みが望ましいと思うからです。そういった形でのジョイント・ディグリーにはなかなかまだまだ難しいところがあるように思っておりまして、そういった点に鑑みて、今回の施策は、さらに使いやすいものになっていく上で、さらなる改善が望まれるかなと思っているところでございます。
以上です。どうもありがとうございました。
【岸本主査】  どうもありがとうございました。それでは、最後になりますけども、松本委員からお願いできますでしょうか。
【松本委員】  WPIの拠点を運営しているという観点からも幾つかコメントさせていただきます。まずインバウンドに関して、WPIで一般化して、ある程度指標化して、方向性を一般化して目標を立ててくれたということを狩野委員も言われていました。結果的には、ある程度WPIという形で強制されて、お金を出してもらってやれと言われて、最初うーんと思いながら始めたところもありますが、でもやってみると非常に良い効果が出て、その重要性を実感できているので、ある程度強制的でもよいので、大学に取りあえずやってみろと言うというのも大事なように感じます。
やっぱり保守的に日本人だけでやっているほうが運営も楽ですし、優秀な日本人の候補者がいるにもかかわらず、あまり優秀でない外国人をどうしても入れなければいけないのかという議論はあると思うのですが、でもやはりそれでもまずやってみる必要があるのではないかと感じています。
それとも関係するのですけれども、最近よく言われていますけども、給与面が、日本では圧倒的に給与が低いので、競争すると負けるのですよね。ここは非常に大きな問題で、優秀な人はわざわざ日本を選ばないという状況が生まれつつあると思います。以前は、それでも日本でやりたいという人たちもたくさんいましたけども、それだけでは補えないほど給与の差が出てきており、深刻に考えなくてはならない問題だと思います。
それから、ロシアの話が幾つか出ていましたけども、実は地道な問題として、韓国との関係もいまだ問題です。今後状況が変わればいいのですけれども、韓国から全く研究者が来なくなっているというような話も、先日WPIの事務部門長で集まった際に話題に出ていました。
アウトバウンドに関しては、最初に相田委員からも話がありましたが、ここに書かれているのはコロナ感染拡大が収束し、海外との行き来が正常化した場合の内容になっていると思うのですが、一方で、意外とオンラインでシンポジウムを行うことのプラスの効果があって、特に学生さんにとっていい効果があります。オンラインの場合、海外の著名な研究者に講演をお願いしやすいこと。学生にとっては、大きな会場で対面のシンポジウムをやると、教授たちを差し置いて質問することはなかなか勇気がいるので限定的になりがちですが、オンラインだと割と気にせずにそれができるので、そこで話をすることができたことをきっかけに、海外のそのラボに行ってみようと思う学生もいて、むしろ対面でやるよりも効果的ではないかと思う面もあります。従って、せっかくコロナ感染拡大がきっかけになってつくられたオンラインという仕組みを、正常化しても積極的に活用していくということも、学生を海外に行かせるきっかけづくりとして非常にいいのじゃないかということを実感として非常に感じているということです。
以上です。ありがとうございます。
【岸本主査】  どうもありがとうございました。委員の皆様から御意見いただきまして、本当に様々な観点から有益なコメントをいただいたのかなと思います。
それで、私から1つコメントさせていただいた後に、事務局のほうから何かこの時点でお考えがあればお聞かせいただいて、その後また皆さんから御議論いただくということにしたいと思いますけども、よろしいでしょうか。
私のほうからは、29ページがまとめの形になっているのですけども、その中で須藤委員も御指摘されていたところなのですけども、国際展開の戦略的推進に向けてということで、私たちの委員会で3つの観点を出したわけですけども、この観点を達成するために今回の施策があるのだとすると、それぞれの1から5まで提示されているものが、これをやることによって3つの観点にどう関係しているのかというのを整理するというのがやっぱり必要かなと思いました。ここでは現状が書いてあって、それに対して対応するということなので、これ手当てをするところまでで、これをやることでさらに1から3の観点についてどう発展できるのか。そのためには、それぞれファンディングをしていくと思うのですけども、そのファンディングの中身を、いろんな形でさらに工夫が要ると思うのですね。そういったところにつながるような整理ができると、実際にやる5本柱がさっきの3つの観点とどう関係しているというのが整理できるのかなということで、今日、委員の皆様からも、いろんな、それぞれについて御指摘もいただいたので、それも踏まえてそういう整理ができるといいのかなと思いました。
あともう1点は、これは施策で、実際に今度はプロジェクトを動かしていくわけですけども、それぞれについてどういうふうに実際の成果が上がってきているのかとか、あともっとこういうところには力を入れてやらなきゃいけないかというのをずっと経時的に見ていかなきゃいけないのじゃないかなと思ったときに、今までだと1については、1について評価する委員会をつくってなんていうような形をすると思うのですけども、これ全体をウオッチするような仕組みをつくって、本当に全体としてうまくいっているかどうかというのを見る必要があるのかなと。
ということで、施策を推進するに当たって、評価だとか、アドバイスだとか、そういうようなところをどういうことで今後やっていったらいいかというのも観点としてあるのじゃないかなと思います。
また、この施策の中だけではできないようなところが今日の御指摘にもあったと思いますけども、その辺りをどういうふうに進めていくかということについても何らかのことをしていかなきゃいけないのじゃないかなと思いました。
最後ですけども、今回は文科省の関係者の方でいろいろ調べていただいたということもあると思うのですけども、例えば海外のファンディングがどういう状況になっていて、それと日本のファンディングをどういうふうに組み合わせたらいいかとか、それぞれパートナーとなる相手国が何しているかとか、そういったところについての調査がきちんとできるような体制、それをどこでやるのかということもあると思いますけども、国の中だけ見てなくて、やっぱり海外が何をしているのかというのもきちんとウォッチするようなこともこれと併せて進めていく必要があるのかなと思った次第です。
以上、皆さんのお話聞きながら気がついたところを私のほうから指摘させていただきました。以上でひとわたりになりますけども、ここまでのところで事務局のほうから何かコメントございますか。
【生方補佐】  ありがとうございます。生方でございます。
【岸本主査】  お願いいたします。
【生方補佐】  先生のコメントに今この場でお返しするのは難しいところもございますけれども、少し関係性の整理でございますとか、そういうところは、資料上の補足をさせていただきたいと思っております。
1点、ロシア情勢との関係につきましては、なかなかどうしても事態が流動的というところもございまして、文部科学省もいろいろ状況を見ながら、今後の対応については適切に判断していくところかなと思っておりますけれども、ちょっとこれがどこまで資料の中で触れられるかというところは、少し慎重な検討がやはり必要かなと思ってございまして、またその点につきましては、よく御相談させていただければと思います。
【岸本主査】  ありがとうございます。よろしいですか、事務局のほうはこれで。
それでは、皆様から御意見いただいた上で、またそれも踏まえてさらに御意見ある方もいらっしゃると思いますので、ここからは手を挙げるボタンを押していただいて御意見のある方に御発言いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
時間も限られているので、できるだけ御発言、コンパクトにいただけるとありがたいなと思いますけども、いかがでしょうか。言い残したこととか、さらに加えてということがありましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
それでは、まず狩野委員からお願いできますでしょうか。
【狩野主査代理】  幾つかの点に関して追加をしてみたいと思います。1つ目の軸としては、個別と全体というか、トップダウンとボトムアップといいますか、その辺りです。どうしても政策においては、トップダウン的、あるいは全体を見て統計的にというところが主になりがちかと思います。ですが、この案件については、特に個別がどういう事情があり得て、そこにどういう手当てをしたらもっと進むかということが非常に重要な観点かなと思っています。
その際に、昨今の流行の手法でいうとペルソナを設定するという言い方があると思います。どんなタイプの人にどういう手を打つ必要があるかというところの幾つかの類型がもしできたらいいかな、ということを思います。例として、例えば先進国の家族がもういる人とか、いない人とか、幾つぐらいの人とか。こうした方が日本に行きたいと思ったときにどういうことが必要だとか、あるいはそれが東京に来たときはどうだけれども、地方に行くとしたらどうだとか。こうしたパターンがあったら、より個別的な手当ての可能性について分かりやすくなるかなと思ったところがあります。
その中に例えばリカレント教育で、先ほど一番初めのまとめていただいた中に、ステップ・バイ・ステップでどんな施策があるかというのを出してくださったのがありました。例えば大学院生に関してこれからリカレントの人を増やすということがもしあるのであれば、リカレントの人がもし海外に行ってみたくなったらどういう手当てができるかということも、もしかして必要かもしれない気がします。
それから、それと関連して申し上げると、武田委員がおっしゃっていましたけれども、インダストリーというか、産業界の皆さんとの連携が大変必要だと思うことが幾つかあります。家族の教育、労働、あるいは本人の労働の今か、そういう辺りの整理をインダストリーの人とできたらいいと思います。加えて、例えば地方に行ったときに海外から来た方々への行政サービスをどういうふうにスタートさせられるか、日本語しかないということがきっとあるのも問題があるでしょうし、あるいは健康について心配なときにどうしたらいいかという問題もあるでしょう。そういう辺りの手当てなどもないと、結局のところ、インバウンド等は具体的に増えていかないということがあるかと思います。ぜひこういう考え方も今後お願いできたらと思いました。
以上です。
【岸本主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
【上田参事官】  よろしいでしょうか。
【岸本主査】  はい。お願いいたします。
【上田参事官】  参事官の上田でございます。事務局の一員として、先ほどの生方の説明にちょっと補足して、2点、私から申し上げようと思います。
1つは、様々御意見いただいたもの、本戦略の文書なりに反映をするということをしていきたいと思いますが、予算、資源に関して御指摘なりコメントを幾つかいただいたと思います。
1つは、小川委員からWPIの拡充の方針という話が具体にありましたので、そちらをお話し申し上げます。現在、WPI、毎年60億円規模で支援が続けられています。担当部局も、WPI自身は広めていきたいというふうな感覚、当然持ち合わせていまして、財政当局との折衝等を続けていくこと、これはしていくと思うのですけども、やはり資源的な制約は必ずどこかにあると私ども考えまして、WPIはフラッグシップ的なプログラムとして存在するのですけども、WPIのコツを今回5つお示しして、WPI補助金を受託していない拠点でも何らかの取組を開始することが重要ではないか、それこそがWPIのノウハウの横展開につながるのじゃないかという思いで今回5つのコツをまとめさせてもらったということがWPIとの関係でございます。
また、御指摘の1つとして、アウトバウンドのときに、海外に学生を送り出すときに、新たな流動モードということに関して、予算が要るかどうかといったことをちょっと補足したいのですが、これ、フェローシップ型で送るときは、予算、確実に必要です。海外特別研究員は毎年20億円の予算を措置しています。こちらも予算の拡充努力はしてまいりますが、いずれどこかには限界があろうとは思います。
一方で、今回の新たな流動モードというのは、海外のPIが海外の政府からもらっている研究費の中からRA経費が支出される。そこを目指して、各国、例えば、インドの方々、中国人の留学生の方々、いろんな国の方々が米国には集まるという状況があろうかと思います。ここにもう少し日本人、あるいは日本からの研究者、若手も参加すればどうかということで、これ増えることがあったとしても、そこは日本政府側の財政が必要ということには必ずしもなりません。なので、こちら補足したいと思います。
あと、岸本先生、よろしければ、もう1点、お時間いただいて、ロシア関係、もう少し。
【岸本主査】  お願いします。
【上田参事官】  この戦略そのものにどうするかというのは、先ほど生方が申し上げたとおりなのですけども、一般論として、国際戦略委員会でございますので、こういった場でも多少御議論いただいてもよろしいのじゃないかと私は思いますが、それに当たってベースとなる情報は皆さんと共有した上でのほうが生産的だと思いましたので、ちょっと数分いただいて、私どもが把握している現在の研究協力、各国のロシアとの研究協力の状況について、かいつまんで、数分いただきまして、お伝えしたいと思います。
私どもが入手している情報に関して言うと、やっぱり欧州の各国がロシアとの研究協力の停止というような大ざっぱな言い方でくくられるような取組をされているところと思います。
ただ、これ、中身をよく見ますと、例えばEU自体はどういう形になっているかというと、ロシアとの新たな協力プロジェクトを開始しないことを決定しているということと、ホライゾンヨーロッパの中で現在準備を進めていたものが、ロシア研究機関が入っているものがあるので、その準備を停止したということと、あと、ロシア側にEU側から支払いがあるものについては停止するというようなことを言っています。
ちなみに、文部科学省の国際共同研究支援事業でロシア側に資金を拠出するといったものは現在しておりません。
また、ヨーロッパの中でいうと、ドイツが、私どもの感じで申しますと、ひとつ、研究協力停止に関しては、一番先頭、突出している感じがします。ドイツのDFGについては、継続中のプロジェクトについても凍結するという言い方をしています。
ただし、これも中身をよく分析しますと、ロシア側に資金を拠出しているものについては、その資金拠出は止めますが、ドイツ側の研究者への資金は止めてないということが分析できます。
また、データの交換ですとかジョイントイベントをするといったことは今見合わせていますけど、私どもの分析する限り、ロシア側の科学者、研究者とコミュニケーションをしてはならないというようなところまでは踏み込んでないということが分かります。
なので、ヨーロッパについては、全体としてそういった報道もなされていますが、一つ一つ見ると、解像度の高い議論がなされているように感じます。
ちなみにアメリカですけども、アメリカにつきましては、こういった政府側の発表に私ども現時点で接してございません。唯一私が知っていますのは、大学側から発表があって、それはハーバード大学ですとかMITなのですけども、これも交流の停止まではうたっていませんで、ロシアとの関係の深い学内の研究機関、これについては、戦争への賛同しているようなロシアの研究機関との関係があるので、関係をサスペンドするというようなことを、ある意味、ある部局に限っては声明を出したりしています。
また、日本国内の状況も踏まえてこういったものを考えなきゃいけないと思いますが、国内の大学研究機関、多くの大学の学長メッセージなどでロシアによるウクライナ侵攻については非難メッセージが出ています。
一方で、じゃあ、自分の大学なり自分の研究者はロシアとの交流をやめるかといったことについての声明、そういったことを取り上げているのは私どもとしては見当たりません。そこまで踏み込まれているのは見当たっていません。
ですので、申し上げたいのは、今のような概況がまずあるということを申し上げたいということと、私どもとしての意思決定なり情勢を見極めながらしていくことは大事だと思うのですが、世界からどう映るかといった観点も見ながら考えていかなきゃいけないということで、ちょっと基盤情報を申し上げました。
以上です。岸本先生、お返しいたします。
【岸本主査】  どうもありがとうございました。大事な情報をお知らせいただきまして、ありがとうございます。
ただいまのことについて何か御発言があれば承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
それでは、狩野委員、お願いいたします。
【狩野主査代理】  ありがとうございます。国の関係でございますけれども、国の全体としてはもちろんそういう方針になろうかと思います。他方で、一科学者同士ということを考えますと、国の方針とは違う考え方をしている個々人もおられようかということもあります。そういったことも念頭に置きながら上手に対応していくことが必要かなというふうには一科学者としては考えています。
どうしても我が国の歴史を振り返っても、いつか来た道の部分がないわけではなく、そういうことを考えても、お互いの一科学者同士としてはどうするかという点もぜひ考えながら進められたらいいかな、ということはございます。
以上です。
【岸本主査】  ありがとうございます。国際的な学協会についても、私が関係しているところでも、どういう形で声明出すとか、科学者同士の交流というのもある中で、なかなか難しい対応ではあるのですけども、きちんと声明を出すということの方向でいろいろ動かれていることかなと思います。学術会議のほうでも声明を出されたともお伺いしていますし、そういう形で進みながら、本当に共同研究どうするのとかということについては慎重に考えていくということかなと思います。
御意見あれば承りたいと思いますけども、文部科学省におかれましても慎重に今考えられているということなので、そういう形で進めていただければなというふうにはこの委員会としては思うところです。
【林委員】  よろしいでしょうか。
【岸本主査】  林委員、お願いいたします。
【林委員】  今の御説明、もっともだと思っておりますし、それより踏み込んだことをと思っているわけではありません。むしろ私どもはロシアとの交流を維持していくことが平和のためになると思うところなのですけども、例えば概要の科学技術外交の3つ目の柱のところに具体的なことが書かれている中で、明示的でなくて、国際情勢に応じた判断力を養っていく基盤が大事だというような文言が、今の情勢に応じ一言、書き込んでいただけたらいいのかなと思う次第です。それも1つの案として考えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
【岸本主査】  ありがとうございます。ほかに御発言をされたい方はいらっしゃいますか。相田委員でいらっしゃいますか、お願いいたします。
【相田委員】  大変重要な問題だと思っているのですけれども、多分80年ぐらい前のいつか来た道のときと違うのは、今は本当にいろんなネット環境といいましょうか、情報の流れがとても速いし、どれが本当でどれがそうかも分からないほどの情報が流れているということが非常に大きな違いだと思うのです。
なおかつデータも、単に物がある物理的なデータだけではなく、それが電子媒体に載ると、どこでどう改ざんされてどうなるかも分からないという、私たちの知識だけではいかんともしがたい状態になってしまっていることも少なくとも私たちは意識して、それも踏まえた上で、個人の勝手だというレベルではないことが多分問題だと思うので、それを、かといって全部それこそ80年前みたいに統制すればいいという問題ではないので、どうすればよいのかということを、ちゃんと知識のある人が議論していただけるといいなと思っています。
【岸本主査】  ありがとうございます。それでは、武田委員が手を挙げられているかと思います。お願いいたします。
【武田委員】  武田です。文科省の方が随分突っ込んで御説明いただいたので、私も昨日の核融合の話、核融合のボードミーティングで話した内容を少しだけ御紹介させていただきたいのですが、映っていますか。
【岸本主査】  ちょっと音声の調子が悪いところでもありますので、画面切っていただいて発言していただいたほうがよろしいかもしれません。
ちょっと通信状態が悪いようですので、お戻りになられたら御発言いただく形にしたいと思います。
それまでで、ほかの委員の方々、ございますか。
あと、残りの時間も少なくなってきたところですけども、今、一つ、ロシア、ウクライナの件で非常に大事な御議論かと思いますけども、議題としての内容についてですけども、まとめに当たっては、先ほど私のほうからまとめさせていただいたところでもありますけども、今日いただいた意見を事務局のほうでまとめていただいて、それを、たくさん御議論が出ているので、私のほうで受け取ってということもあるかと思いますけども、事務局のほうでまとめた段階で委員の方々にももう一度意見を聞いてまとめていくという方向のほうがよろしいかなと思いますけども、どうでしょうか、まとめ方について事務局のほうからお考えがあればお聞かせいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
【生方補佐】  本日いろいろ御意見をいただいたと思ってございまして、一度事務局のほうで意見集約と資料を修正した上で、改めてまた委員の皆様に資料を送らせていただくというのがよろしいかなと思っております。
【岸本主査】  その上で、皆様からいただいた意見をもう一度盛り込んでという形のまとめ方ということで。はい、ありがとうございます。
それでは、ほかの委員の方々からこれまでの議論を踏まえて御発言あればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
それでは、須藤委員、お願いいたします。
【須藤委員】  最後に岸本委員長が言われた5つの施策をフォローする仕組みを何か考えたほうがいいって、私も同感でして、報告書をまとめるのはいいのですけど、それの進捗をトータルでフォローするようなことの仕組みも少し考えたほうがいいかなと思います。
以上です。
【岸本主査】  ありがとうございます。あと、相田委員、お手が挙がっていらっしゃいますでしょうか。
【相田委員】  今日の資料の4枚目なのですけれども、学生から研究者までを通じた国際関係施策の現状ということで数字を並べていただいているのですけども、これ、数字としては正しいと思うのですが、問題は、この中に男女のバランスが悪過ぎるということも意識したほうがいいのじゃないかと思うのです。
つまり、今の大学への進学は、男女ともども学部進学はほぼほぼ50%なので、大学の学生数260万のうち恐らく男女半々だと思うのです。しかし、国立大学への入学者は男性と女性が2対1なのです。つまり、3分の2が男性で3分の1が女性です。なおかつ理工系はほぼほぼ男性です。
WPIとか、いろいろな、国からこういう重点的にお金が出るプロジェクトは、ほぼほぼ国立大学に入りますし、その対象も結構理工系がやはり多いわけです。そうすると、その中で育てられる人は結果的に男性が多くなる。もちろん男性も女性も、やはり適材適所にみんながちゃんと機会均等でなきゃいけないと思うのです。でも、今、仕組みが、結果的に機会均等になってないことがここにも表れていると思うのですね。大学院生の数はまたどんどん女性のほうが減っていますし、恐らく割合として高いのはポスドクだけかもしれない。ポストを得られないところに女の人が多いみたいなことが結構多い。なので、このような資料は、男女別に数字も見たいところだなと思いました。
この過去何年間か、10年、20年、いろんな数字がどんどん日本は落ちるばっかりですけども、この国際関係もそうですけども、その中にいろんな原因があると思いますが、いろんな原因の中に、いつまでたっても日本社会の均一性がなくならない、ということがあります。均一性の中の一因は、一部の男の人たちだけが国を動かしているということがここにも表れているのじゃないかという数字だなと思います。
以上です。
【岸本主査】  ありがとうございます。実際に施策でプロジェクトやるときにそういった観点も踏まえた上でいろいろ採択を考えていくとか推進を考えていくというところに織り込んでいったほうがいいという御意見だと思いました。ありがとうございます。
ほかに御発言の委員の方いらっしゃいますでしょうか。
それでは、上田参事官、お手を挙げていらっしゃいますでしょうか。お願いいたします。
【上田参事官】  改めて上田です。須藤委員御指摘の施策のフォローアップですけども、私ども、しっかりとやってまいりたいと思います。
施策のフォローアップに加えて、実は第6期基本計画からいただいている宿題は、今回こういった戦略をまとめるということ以外に、次年度ですけども、こういった国際活動、特に国際頭脳循環の部分について、指標を検討するという宿題がございます。こちらについても、主査、主査代理と相談しながら、新年度、本委員会でどう取り扱っていくか、御相談させてもらいたいと思いますので、親和性の高いところだと思いますので、検討してまいります。
また、相田委員から今いただきました男女のバランスみたいなのは、これは男女だけではなくて、例えば分野によっても違うという状況もあったりするので、今回非常にマクロな感じで人材の流動をお示ししていますが、私ども事務局としては、ブレークダウンした議論、分野を考えた議論ですとか、あるいはジェンダーを考えた議論というのもあり得るかと思いますので、よくよく検討してまいりたいと思います。ありがとうございます。
【岸本主査】  ありがとうございます。そろそろ時間になってきておりますが、もし何かコメントあれば、お一人ぐらいでしたらお受けできると思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
今回の議論の中で、皆さん御発言いただいたと思いますけども、改めて思いつかれたような意見等ございましたら、3月24日をめどに事務局まで御連絡いただきたいということと、また、今日の御意見を踏まえて事務局のほうで案をつくられるということですけども、その中で御意見いただくという形でもよろしいかなと思います。
武田委員から御発言があるところでちょうど切れてしまいましたけども、全体の会議の時間のこともありますので、今間に合うようであればお願いしたいと思いますけども、また次回のときでもお伺いするということで御容赦いただくということでよろしいでしょうか。
それでは、終了までに戻られたら御発言いただく機会が取れれば取りたいと思いますけども、本戦略案の対応については、今事務局とも御相談したところでありますけども、改めて、委員の先生方に、この対応、これからの進捗についてお知らせするという形で進めていただきたいと思います。ありがとうございました。
それでは、これにて議事を終了したいと思います。
最後に事務局より何かございましたらよろしくお願いいたします。
【生方補佐】  事務局でございます。本日は御議論のほう、ありがとうございました。
今回お示しいただきしました科学技術の国際展開に関する戦略案につきましては、今回いただいた御意見も踏まえまして、事務局で修正を検討の上、追って委員の皆様にも改めてお送りさせていただきたいと思ってございます。
また、次回の委員会につきましては、現時点で特段決まってございませんけれども、また必要に応じて来年度以降も、主査とも御相談の上、改めて御連絡させていただきたいと思います。
以上でございます。
【岸本主査】  それでは、ありがとうございました。
本日は、皆様から活発な御意見いただきまして、ありがとうございました。
それでは、本日の委員会はこれで散会にさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
 


── 了 ──

お問合せ先

科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)付

(科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)付)