第11期科学技術・学術審議会 国際戦略委員会(第3回)議事録

1.日時

令和3年6月9日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省15階会議室1

3.議題

  1. 国際頭脳循環の推進について
  2. 科学技術の国際展開の戦略的推進方策に関する報告(案)について
  3. その他

4.出席者

委員

岸本委員(主査)、相田委員、飯塚委員、石原委員、磯田委員、小川委員、狩野委員(主査代理)、須藤委員、武田委員、林委員、松本委員

文部科学省

松尾文部科学審議官、梶原大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、有賀文部科学戦略官(国際科学技術担当)久永参事官(国際戦略担当)付企画官、生方参事官補佐、津久井参事官(国際戦略担当)付戦略第一係長

5.議事録

第11期科学技術・学術審議会 国際戦略委員会(第3回)

令和3年6月9日



【岸本主査】 それでは、定刻を少し過ぎましたけれども、第11期科学技術・学術審議会国際戦略委員会、第3回を開催いたします。
私は、主査を務めております岸本でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、委員の皆様におかれましてはオンラインにて御参加いただいております。今回も皆さん、スケジュールを合わせていただきまして、全員の方が御出席いただいております。御多忙のところ、誠にありがとうございます。
それでは、初めに、開催に当たっての留意事項を、事務局から御説明をお願いいたします。

【生方補佐】 それでは、事務局より、会議開催に当たっての留意事項を御説明いたします。まず、本委員会はペーパーレス会議になります。配付資料につきましては、事前に事務局から送付しましたファイルを御覧ください。座席表、議事次第、資料1-1から資料4及び参考資料1から参考資料4-2の2つのファイルとなっております。資料はそれぞれ1つのPDFにまとめており、しおり機能で各資料をすぐに開けるようにしておりますので、御活用ください。
なお、本日は参考資料といたしまして、「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の成果検証について」をお送りいたしました。当日の送付となり、皆さんに御迷惑をおかけし、大変失礼いたしました。現在、議事次第にはこの資料は反映できておりませんけれども、後日ホームページにアップする際、所要の修正を加えた上でまとめて上げたいと思います。
委員の皆様におかれましては、別途、机上配付資料といたしましてファイルもお送りしております。こちらは、狩野委員にいただいた情報を基に作成した資料となってございます。
ファイルの不備に関してのお尋ねなどがございましたら、事前に送付しておりますWebex events注意事項に記載の事務局連絡先まで御連絡ください。
次に、御発言いただく際の留意事項です。オンラインで御出席の皆様におかれましては、御自身でマイクのミュート設定、ミュート解除設定の操作をお願いいたします。御発言されないときには、マイクの設定はミュートいただきますようお願いいたします。
御発言がある際は、Webexの挙手ボタンを押していただきますようお願いいたします。
主査からの指名がありましたら、御自身でミュートを解除いただき、御発言をお願します。御発言の際は、各参加者にも分かりやすいよう、最初に御自身のお名前から御発言いただけますようお願いいたします。また、御発言の後は挙手ボタンを消していただきますようお願いいたします。
最後に、本日の委員会は公開で開催させていただいております。

【岸本主査】 御説明ありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと思います。まず、議題1の「国際頭脳循環の推進について」に入ります。最初に、事務局から国際頭脳循環関係データや文部科学省の施策について、資料1-1と1-2に基づき、御説明をお願いいたします。それでは、まず、資料1-1についてから御説明をお願いいたします。

【生方補佐】 それでは、資料1-1、国際頭脳循環の推進について、御説明させていただきます。私、科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)付の参事官補佐をしております生方でございます。
それでは、資料を1枚おめくりください。現状と課題について、まず御説明いたします。この次のスライドでございます。こちらは、第6期基本計画における国際頭脳循環に係る主な記載についてのまとめでございます。以前にも御案内しているものでございますので、簡単に御説明さしあげます。
先般、閣議決定されました第6期基本計画の中で、国際共同研究・国際頭脳循環の推進について記載がございます。この中で、米国、EU等の高い科学技術水準の先進国との間で国際共同研究を行うとともに、新興国及び途上国とのSDGsを軸とした科学技術協力を進め、こうしたことを通じて科学技術の発展、人材育成、地球規模課題解決等に貢献する。また、我が国の学生や若手研究者等の海外研さん・海外経験の機会の拡充、諸外国からの優秀な研究者の招へい、外国人研究者等の雇用促進に向け、支援策と環境整備を含む科学技術の国際展開に関する戦略を2021年度までに策定する。また、国際共同研究や、魅力ある研究拠点の形成、学生・研究者等の国際交流等の国際化を戦略的に進める、こうした内容について盛り込まれているところでございます。
次のスライドでございます。ここから幾つか現状について御説明さしあげます。
まずは、日本から海外に出る留学生の状況でございます。左側にございます図のとおり、我が国を出身国とする留学生の方というのは世界全体の留学生の中で0.7%ということでして、諸外国に比べて低調な状況ということになってございます。また、受入れ側としましては、日本で受け入れている留学生は3.4%ということで、これも大きくはないシェアという形になってございます。
また、右上のグラフでございます。大学間交流協定に基づく日本人留学者数でございますけれども、こちらは1か月未満の短期留学生、緑色の線でございますが、こちらが2009年との比較で非常に大きく増加しているというところでございます。また、1か月以上1年未満の紫色のライン、それから1年以上のオレンジ色のラインでございます。こちらも2009年からの比較というところでは着実に増加しているという状況でございます。
また、その下にございます海外大学等に在籍する日本人の留学生数でございます。こちらは2000年前後のピーク時には8万人程度いらっしゃいましたけれども、その後は減少という形になってございまして、近年でおよそ6万人弱といったところで推移しているという状況になってございます。
次のスライドでございます。こちらは日本における研究者の国際流動性ということでございまして、OECDでまとめられておりますデータを御紹介させていただきます。
上の表でございます。こちらは科学論文著者の二国間の移動を、2006年から2016年の間の移動ということで集計を取ったものになってございます。こちらでは、日本でこの期間移動があった研究者としては5万7,700名程度、一方で米国は60万人、英国では22万7,000人、またドイツ、フランスなどの欧州では16万人から12万人程度という形になってございまして、日本よりも欧米諸国のほうが非常に高い流入・流出の値を取っているということでございます。この中で、日本の移動に占めるシェアについては2.6%と非常に小さな値になっているということでございます。
また、その下のグラフでございます。こちらは科学論文著者の国際流動性について、2016年に出た論文と、その直近に出された論文の間で論文を書いた国が違っているというものについて移動の値を取ったものでございます。こちらのほうで見ましても、日本についてはシェアとしては相当低い形になっているということでございます。
かねてから日本の研究者の国際流動性が低いということが指摘されてございますけれども、こうしたデータの中でもそうしたことを裏づけるようなものが出てきている、こういった状況でございます。
次のページでございます。こちらは、我が国出身者の海外での博士号取得者数の減少について、データをまとめたものでございます。今回は米国での博士号取得者数というケースでまとめてございます。
左側にございますとおり、中国の出身者の方で米国で博士号を取得されている方というのが近年、非常に大きく伸びているということでございます。2010年時点では4,000人を下回る程度でしたものが、直近の数字では6,000人を上回るということで大きく増加してございます。また、これに次ぐ数値としてインド、韓国、こういった国が2,000人程度、1,000人程度といったところで推移してきてございます。
日本につきましては1,000人未満のグループの形になってございまして、真ん中のほうにこのところを拡大したグラフをお示ししてございます。この1,000人未満の中で一番伸びているのが黄色のイラン、それから次に薄水色のサウジアラビア、こういった国が非常に高い伸び率を示しているということでございます。
日本につきましては赤線のグラフで示してございますとおり、大体200人程度2010年にあったものが近年は減少をたどっており、2019年では100人を超える程度ということになってございます。おおよそ近しい値の国といたしましてタイがございまして、こちらは2010年時点では日本を少し下回る程度だったものが、日本のほうが減少してきたことにより、結果的に2019年では逆転しているということになってございます。
右側に2010年から2019年の間の博士号取得者数の対比、それからその増減数と増減率を示してございます。特にこの中でも日本については増減率が▲45%ということで、非常に高い値になってございます。
またその下、参考といたしまして主要国の博士号取得者数の推移ということを示してございます。特に米国と中国の伸びが顕著になっている、こういった状況でございます。
次のスライドでございます。こちらは、研究分野ごとの我が国の論文数の世界ランクをお示ししたものになってございます。
グラフのほうが論文数の全体、それからTop10%論文、Top1%論文についてまとめたものになってございます。こちらが2005年から2007年の3年間の平均と、2015年から2017年の平均値、この2つの間のランクの違いを赤い矢印で比較しているというものになってございます。上の段が整数カウント、下の段が分数カウントということになってございますけれども、いずれの分析におきましても全ての分野でランクが大きく落ちているという状況でございます。
また、その右側の上のグラフでございます。こちらは分野ごとの世界の国際共著論文数割合の推移でございまして、全ての分野におきまして、過去30年間程度の間で国際共著論文の割合は増加してきている状況でございます。
一方で、その下のグラフでございます。分野ごとの日本の国際共著論文数割合でございますけれども、コンピューター科学、工学、医学といった分野で若干国際共著論文の割合が低くなっているといった状況でございます。こちらの国際共著論文率が低い分野と、左側の対比表のほうでランクの落ちが大きい分野といったものが、およそ符合するような形で見えているというようなものでございます。
続きまして、こちらは国際研究ネットワークにおける日本ということで、科学論文への関与についてのデータを御紹介さしあげるものでございます。
基になっているデータは、クラリベイト社のPublons及び『ScholarOne Web of Science』のデータを基に集計されている報告書でございまして、その中から関連するデータを御紹介さしあげてございます。
左側のほうが論文のエディター数と査読数について、各国の比較を取ったものでございます。まず、エディター数でございますけれども、一番多いのが米国、次いで英国、オーストラリアという形になってございまして、英語圏の国が非常に多いという形になってございます。一方で、日本につきましてはイタリア、ドイツに及ばず、スペイン、オランダ、中国などと同等の水準という形になってございます。
また、査読数でございます。こちらは青いグラフになってございますけれども、こちらの1番が米国、次いで中国、英国の順番になってございます。日本については、これらに次ぐ4番目に現在位置しているという状況でございます。
ただ、一方で右側のグラフでございます。こちらは科学論文の査読数について、国・地域ごとに2013年との比較をお示ししたものでございます。特に2016年、2017年などにつきまして、中国・新興国などの国が非常に高い伸び率を見せているという状況でございます。
次のスライドでございます。国内の状況といたしまして、大学教員の雇用状況と職務内容についてまとめたものでございます。
まず、Aのグラフでございます。大学の助教につきましては、なかなか有期雇用の方ですと、長期の海外渡航をためらいがちなのではないかというようなこともございます。こういった職務に就かれている方が助教の中の過半数を占めているという状況でございます。これは、その上の職務の教授ですとか准教授と比較しましても、圧倒的に高い割合ということになってございます。
また、その下のBのグラフでございます。こちらは任期の有無別の教員の職務活動時間割合を比較したものでございます。中でも、国際交流を行うに当たって制約条件になり得るような教育、社会サービス、学内事務といった他律的な職務、研究以外の職務にかかる時間が任期無し助教状況で約64%、任期有り助教でも約55%ということで、職務の大半を占めているという状況でございます。
次のスライドでございます。こちらは、現在文部科学省で行っております国際頭脳循環の支援スキームについてまとめた表になってございます。縦軸が対象の範囲、小さいほうが研究者単位ないしは学生単位、それから大きいほうは組織単位という形。それから、右側の軸のほうに目的を挙げてございまして、人材育成・ネットワークを主目的とするものであるか、研究成果を主目的とするものであるか。また、対象によって学生であるのか、研究者であるのかという形で整理してございます。
まず、学生向けの施策といたしましては、小さい単位向けの施策として留学生への支援でございますとか、国際青少年サイエンス交流事業といった事業で支援を行ってきてございます。また、組織単位につきましても、スーパーグローバル大学創成支援事業、大学の世界展開力強化事業といった事業をこれまで実施してきているということでございます。
一方で、研究者向けの施策でございます。ネットワーク構築に関しましては、海外特別研究員事業、外国人研究者招へい事業といった事業をこれまで実施してきてございます。また、同じく研究者単位の施策といたしまして、研究成果の創出につきましては科研費の各種のメニュー、それからSICORP、SATREPSといった事業によってこれまで支援を行ってきてございます。
一方、研究者向けの組織単位の事業ということになりますと、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)でこれまで支援を行ってきておりますけれども、これに続く施策が現在ではないのかなということで認識してございます。
その次のスライドでございます。本日御議論いただく内容といたしまして、現状と課題ということでまとめてございます。
まず、現状1でございます。日本の研究者の国際流動性が相対的に低いということが様々な指摘、あるいはデータによって示されてきているところでございます。
これに対して、論点1といたしまして、国際頭脳循環の目的は何かといったものを設定してございます。
また、現状2、現状3といたしまして、高被引用論文ランキングの低下が著しい分野では、国際共著割合が相対的に低いといったようなデータが見られたこと、また国際的な科学論文における我が国のエディター数とレビュー数は現状では検討しているというような見方もできるものの、新興国等の伸びによりまして今後低下していくおそれがある、こういった現状がございます。
このため、論点2といたしまして、国際的な研究ネットワークにおける日本の地位が相対的に低下している中、どのような形態の国際頭脳循環を推進すべきか、といったものを設定させていただいてございます。
また、現状4でございます。大学における他律的な職務の多さ、また過去存在しておりました在外研究員などの制度的な長期的な海外渡航機会の減少、こういったものが海外渡航をためらう原因となっている可能性があると考えてございます。
このため、論点3といたしまして、こういった機会の減少ないしは職務内容の状況といったものに対して、大学・研究機関あるいは国のほうでどういった対応をすべきかといったものを設定してございます。
最後に現状5でございます。文部科学省が行っております施策につきまして、個人ないしは小さい単位向けの支援につきましては比較的メニューが充実してございますけれども、特に研究者単位の組織的な人材交流といったところへの支援に乏しいと考えてございます。
このため、論点4といたしまして、組織的な支援を行う場合にどういった内容の支援が求められるのか。また、論点5として、WPIに代表される拠点形成事業の経験を踏まえ、さらに改善していくべき点は何かと、こういった点について御議論いただければと思ってございます。
資料1-1の説明は以上でございます。

【岸本主査】 ありがとうございました。
それでは、続いて資料1-2について説明をお願いいたします。

【渡邉課長】 基礎研究振興課長の渡邉でございます。本日はよろしくお願いいたします。私のほうからは、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)について説明したいと思います。
では、21ページを御覧いただきたいと思います。このWPIでございますけれども、こちらは国際的な頭脳循環、そういう競争の中で優れた研究人材が世界中から集うような国際頭脳循環のハブをつくっていこうということで2007年からスタートした事業でございまして、これまで10年以上やってきたわけですが、この実施によりまして、世界トップ機関と並ぶような卓越した研究力、国際化を達成する拠点ができてきているのではないかと考えてございます。
そして、最近ではこの循環をさらに深化させるために、新たなミッションというものを策定して進めていっているという状況でございます。
そして、今ミッションの話をいたしましたけれども、令和3年度予算のポイントというのが左側の四角にございますが、ここに従来のミッションの話がございます。従来のミッションですとサイエンス、リフォーム、グローバリゼーション、フュージョン、こういう4つを柱に今まで事業を進めてまいりましたが、これを今年度から新ミッション、3つにまとめてございます。これだけですと中身がよく分かりづらいので、あとで詳しい資料がついてございます。さらには今までに比べてアウトリーチであったり、人材育成についてもプログラムの中で重視して進めていこうということを考えている状況でございます。
ちなみに、この拠点はどのような状況で育成しているかということで、右上なんですけれども、大体総勢70名から100名程度の拠点。世界トップレベルのPI、主任研究者レベルが7人から10人程度、それ以上を目指していると。そして、国際の観点ですけど、研究者のうち30%以上は外国からの研究者をということになっておりまして、そのために事務や研究支援体制まで全て英語標準の環境を整えて推進しているというものでございます。
そして、その事業スキームでございますけども、基本的には基礎研究分野の研究拠点を育成するということにしてございまして、予算は最大7億円を10年間支援すると。実は昔、2007年、2010年採択は、倍の規模の拠点だったんですけれども、今は年間7億円ということで進めてございます。
そして、事業評価につきましては、ノーベル賞受賞者、また外国人招へい研究者などで構成されるプログラム委員会というのを組織しておりまして、その委員会と、あとPD・POというのを指名させていただいておりますので、それらの方々による進捗管理を実施しているという状況でございます。
そして、支援対象経費なんですけれども、人件費、事業推進費、旅費、設備備品費ということで、逆に研究費はここから支出していないということで、大学もしくは外部資金によって研究を進めているという姿によって拠点運営がなされております。この点は公募要領にも記載しておりまして、補助金額である7億円と同等程度をホスト機関、基本的には大学のほうからリソースを拠出して運営するということをお願いしているという状況でございます。
そして、これまでの成果といたしましては、まさに世界トップレベルの研究成果、例えば論文でありますと、Top10%論文の割合も20から25%というような水準を維持しておりますし、アンダーワンルーフ型の研究環境というのを生かしまして、分野融合研究の成果の創出であったり、そういった分野横断的な領域の開拓に非常に貢献してきていると思っております。
また、外国人研究者が3割以上所属するということで、そういった高度に国際化された研究環境を日本の中につくっているという事業でございます。そして、その成果として民間企業や財団などから寄附金や支援金などを頂いている拠点も実際に出てきているという状況でございます。
そして、次に22ページ目を御覧いただきたいと思うんですが、特に国際的な環境の実現について少し詳しく御説明したいと思います。
実際に事務体制の国際化を図って、大体外国人研究者は40%前後で推移しているという状況でございます。そのための取組でございますが、例えば国際公募では『Science』誌や『Nature』誌などで公募したり、もしくは海外の研究者が汎用するウェブサイトを使った公募システムをやっていると。日本の大学のホームページはなかなか見ないので、海外の研究者、ポスドクなどが見るところをちゃんと考え公募すると。そして、先ほども申し上げたとおり英語の公用語化ということで、事務職員もバイリンガルの職員を配置したり、実際ホスト機関の本部から来る通知などもちゃんと英訳して提供するということをやっております。
そして、外国人研究者雇用促進のための工夫といたしましては、処遇がよくないとなかなか研究者を獲得できないということで、給与やポジションなどで十分な待遇の措置を図ったり、実際に1.3倍の給与を提示したりしているというような工夫をしているところがございます。
また、海外機関とのネットワークという意味では、毎年1か月から3か月程度は海外機関への武者修行を義務化している例でございましたり、あと海外の優秀な若手研究者を招へいして、ウインタースクール、サマースクールなどを実施しているところもございます。
また、研究者のみならず、家族への支援というのが非常に重要でございまして、例えば日常生活、行政手続、不動産、光熱水費の手続、あと学校に係る支援などについても要望があれば対応したりとか、配偶者も就職できるように支援したりすると。
また、高度外国人材ポイント制対象事業へ登録して、実際に来やすくしたりするとか、子供さんの教育、子女教育に当たっても教育費の支給をしたりする例、また、研究者の家族も参加できる日本語教室の開催などをやっているところもございます。
このページの右側、国際化に係る横展開のためにフォーラムであったりとか、研究大学コンソーシアムとの連携なども進めているという状況でございます。
23ページを御覧ください。こういったWPIなんですけども、今後といたしましてどういうことを考えているかということでございますが、第6期のイノベーション基本計画においては、博士後期課程学生を含む研究者育成であったり、人文社会科学と自然科学の連携、また大学改革の促進といったことが記載されてございますので、こういうことにぜひとも貢献していきたいと考えてございます。
ここで、今後のWPIの方向性を記載してございますけども、今は8拠点、トータルで13拠点を今まで支援してきているわけなんですけども、常に一定数の拠点形成が推進されるように計画的・継続的に拠点を採択していきたいと考えておりますし、こうすることで、地方の大学を含めて、我が国全体で研究拠点の改革が恒常的に起こる仕組みを構築でき、また、先ほども述べました、大学改革であるとか、若手研究者支援といったことを促していけるのではと考えているところです。私からの説明は以上でございます。

【岸本主査】 次のページに進んでいただけますか。事務局のほうでお願いできますか。

【生方補佐】 失礼しました。今、事務局のほう、通信が悪くて一部音声が聞こえてございませんでした。松本先生のプレゼンから始める形でよろしかったでしょうか。

【岸本主査】 はい、そうです。次のページへ進んでいただけますでしょうか。

【生方補佐】 では、こちらのスライドからお願いできますでしょうか。

【岸本主査】 まだ切り替わっていないですね。WPIのままになっていて、その次のページです。

【生方補佐】 すみません、恐らくこちらの通信がちょっと悪くて、切り替えたページがまだ反映されていないようです。

【岸本主査】 そうですか。皆様、御手元に資料を御覧になれるようでしたらば、御覧になっていただければ、25ページですか、そこから松本委員のほうで御説明いただければと思いますが。

【松本委員】 分かりました。
では、御手元の資料を御覧ください。最初に25ページでよろしいですね。ではITbMの国際連携についてご紹介したいと思いますが、まずITbMがどのような研究所であるか説明したほうがご理解いただけると思うので、最初に研究所の紹介をさせていただきます。ITbMでは生命を知る、視る、動かす分子の開発を目指しています。このような研究はヒトをターゲットとした創薬では広く行われていますが、ITbMでは動植物を主なターゲットとしており、このような分野で化学と本気で協働することで、いろいろな分野融合を国際・国内含めて進めています。化学と動植物学が連携した国際拠点は世界でもほとんど例がありません。一点強調したいのは、社会課題にインスパイアされた、ここはちょっとITbMのこだわりで、社会課題オリエンテッドではなくて、あくまで研究者の知的好奇心に基づいた基礎研究をやっていると点です。
次のページですけども、ITbMの主任研究者の一覧があります。これはWPIの取組のおかげもありまして、強制的にというか、外国人のPIを入れなさいというプログラムになっていますので、そういった意味もあって外国人が入っています。名大から8名、海外から5名ということで全部で13名のPI、これ以外にポスドクとか若手研究者を含めて66名、外国人30%という形で、学生まで入れると総勢200名ぐらいの体制でやっています。
ITbMは、国際連携も含めた異分野融合というのをWPIとしても求められていますし、これを徹底してやろうというのがミックスラボコンセプトです。
いわゆる研究室ごとのスペースは一切存在しない状況で、次の29ページにフロアマップ、ちょっとした図が描いてありますけど、真ん中辺にMix Officeという青い部分がドンとあって、この中で若手教員とポスドク、技術補佐員さん、学生、これらが本当に研究室に関係なく、あえて違うグループ同士を隣に並べるということによって、外国人も日本人も交じるとようにしています。
次の30ページで、例えばどんな研究をやってきているかというと、気孔を制御する分子、これは気孔の研究をやっている生物学の人と、その人が化学者を巻き込んで、葉っぱの表面にある気孔を開閉させるような分子を開発しています。実際に例えば気孔を閉じさせる分子を作用させると、水をやらなくても植物は枯れなくなると、こんなこともできるようになっています。
それ以外にも、ミックスラボを造ったおかげで、PIが考えたのとは全く違う若手のボトムアップ融合研究もたくさん進んでいまして、この代表例がストライガ研究です。
31ページから32ページになります。あまり御存じないかもしれないんですが、ピンク色の花を咲かせているのがストライガという植物で、非常にきれいなんですが寄生植物で、アフリカで非常に大きな問題になっています。アフリカの耕作地の3分の2がこれに侵されていまして、国連も食糧安全保障の非常に大きな脅威であると警鐘を鳴らしています。これを、我々の分子の力によって、ストライガに侵食されてピンクになってしまった大地を元の緑に戻したいということで若手が始めた研究です。
細かい話はちょっと飛ばしますけれども、最終的に33ページでSPL7と書いてある右側の分子がストライガ撲滅に非常に有効であるということが実験室レベルでわかりました。SPL7はフェムトモル濃度でストライガの種の発芽を誘発します。ストライガは、発芽したときに寄生相手の植物がいなければ栄養が取れず死んでしまうので、そういった効果を狙って開発した分子がSPL7です。
フェムトモルという濃度がどれくらいかというと、スプーン1杯を琵琶湖に溶かしたぐらい、それぐらいの濃度で効果を出すというとんでもない分子です。これを1日も早くケニア、アフリカに持っていきたいということで、国際連携が必要となりました。いろいろなつてをたどった結果、回り回って結局名古屋大学にキーになる人を見つけました。ずいぶん遠回りになってしまって、これは大学の課題だと思っていますが、とにかくSATREPSをやっていたイネの研究をケニアでやっている方が、槇原さんという方が名大にいて、彼が一緒にやっているケニアの国立農業研究所であるKALROと一緒に研究できることになり、そこからネットワークの構築を始めました。
文部科学省のこちらの担当課に非常にお世話になりまして、当時いらっしゃった方に35ページに載せたいろいろな機関とつないでもらって、国際連携を構築しました。
折よく、次の36ページにあるTICAD7の開催がよいきっかけとなり、いろいろな機関とネットワークを構築することができました。狩野先生も関わっておられる科学技術外交推進会議、こちらのTICADに向けた提言の中にも、重要な科学技術外交の1つとして取り上げられていただきましたし、文科省のこちらの課で主催した公式サイドイベントにも呼んでいただきました。ケニアの大臣からもサポートについてある程度言質を取り付けましたので、これで後は結果さえ出れば社会実装に持っていけるだろうというところまで来ているということです。
37ページはまた興味のあるときに見ていただければと思います。お話した以外にもいろいろな分子を開発してきている紹介です。
38ページはこれまでの成果指標のまとめですが、国際協調の話と関連するものとしては国際共著論文が4割弱程度であること、また海外PIも非常にたくさんの外部資金を取っており、その獲得のサポートをしている点が挙げられます。
39ページのITbMの国際頭脳循環、国際連携の施策ですけども、海外PIグループのスタートアップ支援をしています。海外PIは、すぐに日本で外部資金を取れるようにはならないので、その間はWPIのおかげでスタートアップという形で支援して順調に研究がスタートできた、これはWPIの強みだと思います。
それからCo-PI制度がITbMの特徴的な取組です。これは40ページを先に見ていただけると良いのですが、海外PIはほぼ海外の自らの所属機関にいます。ITbMに来るのは年に一、二か月程度だけなので、彼らと一緒にやる准教授とか助教を名大にフルタイムでCo-PIとして雇い、海外PIグループを運営するという仕組みです。海外PIとCo-PIは常にオンラインでつながっており、非常にうまくいっています。特にこのコロナ禍では、結果論ですけども、このCo-PI制度のおかげで海外PIグループは全く影響を受けずに、研究が順調に進んでいるという状況が生まれています。
ちょっとスライドを戻していただきまして、さっきのスライドのCo-PI制度ですが、特に実験系の研究室の場合は、短期的に偉い教授を呼んでくるというわけにいきません。いったん連れてきたら、多分そのまま10年、20年いるということを覚悟することになるので、そういった人を呼んでくるにはこのCo-PI制度しかないと我々は今も思っています。限られた予算の中、世界トップの海外のPIに参画してもらえる仕組みです。ただし、本気で参画してもらうというところは大事です。名前だけにならないように。
あとはポスドクに外国人を雇用する取組みで、ここを外国人でぐるぐる回して循環をつくっています。
それから、国際賞・国際シンポジウムの主催。これによって海外からの招へい者にITbMを知ってもらって、サポーターになってもらうということです。実は、ITbMの海外PIの中の1人は、国際シンポジウムに来てITbMを知って、これはすごいね、一緒にやりたいと言って、途中からPIになった人もいますので、これはかなり効果的です。
外国人研究者のサポート体制に関してはその下に載せてありますが、これは先ほどのWPI全体の説明と重複するので省略させていただきます。
あと、実績数も載せてありますけれども、まあまあ、このぐらいの感じです。一番下にありますが、日本人研究者・大学院生が、就職先として海外のアカデミアを選ぶ率はやはり低いので、ここは課題だと思っています。
40ページ、41ページ、これは実際にこんな国際賞を主催していて、これをきっかけに外国人にITbMを知ってもらっていますという話と、42ページについては、海外パートナーは戦略的に連携している機関が幾つかがあって、アメリカのCCHFの例と、43ページの台湾アカデミアシニカの例、ここではITbMの伊丹拠点長のラボが2020年からスタートしており、これによって国際連携も進んでいます。
あと、ITbM本体の話ではないのですが、44ページにあるように、ITbMをコアにした卓越大学院GTRがスタートしました。ITbMだと13グループしかないわけですけど、これによってITbMと関係する分野の50研究室ぐらいが、このITbMのやり方に倣って同じように他との連携をやってみませんかという呼びかけに呼応してくれて、GTRをスタートさせました。
45ページ中段にあるように、GTRではこれまで95件の融合研究、つまり95人の大学院生が融合研究をやっていて、そのうち10%、9人ぐらいが海外の拠点を連携先に選んで一緒にやっているという状況にあります。
ただ、コロナでどうしても海外に行けないという状況があって、そこは非常に困っているところです。代わりに46ページにある各種イベントを企画して、国際連携を継続しています。
ITbMの国際連携の成功のカギはということで、47ページにざっとまとめました。基本的にはITbMにPIを集めたときに、一緒にやりたい、国際連携も大事だと思っている人たちをこの指とまれ方式で集めたので、非常にうまくいっています。
それから、世界でもほとんどないという分野や取組み、ITbMだと化学と動植物の連携は世界でもあまり例がないので、ここを目指して一緒にやってくれないかと海外から人が来ますので、海外から一緒にやりたいと思ってもらえるようなものをつくる必要があると思います。
それから、あとは大学の支援が非常に大事です。例えば、組織上ITbMには大学院生はいませんので、部局に手伝ってもらって大学院生の受入れ、あるいは送り出しというのをやっています。
そして、他との連携の基礎になっているのは、実はこれが一番のカギかなと思うんですけど、長年の国内外の人間関係です。もしこのコロナの間に、二、三年ぐらいだったらいいんですけど、もっと長い間海外に行かないという人ができてしまって、その人たちがPIになったりすると国際連携はさらに難しくなります。基礎研究の我々のような分野では、必ずしも国際連携しなくてもそれなりに成立してしまうので。しかし、海外に行ったことがある人というのは、国際連携によってさらに研究が進むことを知っているので、国際連携をやらない世代のブランクをつくらないこと、そして、将来に向けて国際的な人間関係をつくっていくということが非常に重要であることを認識してもらう必要があると思っています。
以上です。ちょっと駆け足になりました。

【岸本主査】 どうもありがとうございました。すばらしい取組について御紹介いただきまして、ありがとうございます。
それでは、これまでの説明を踏まえまして、御意見、御質問を頂戴したいと思います。
事務局のほうの資料で12ページだったですか、国際頭脳循環に関する論点ということで整理されていますけども、こういったところを御覧になっていただいて、この報告書の中に国際頭脳循環の内容を盛り込むということで、いろいろな観点で皆様から御指摘いただいて、なかなか短時間なのでディスカッションする時間はあまり取れないかもしれませんけども、どの論点でも結構ですので御発言いただいて、事務局のほうでそれを後で整理してもらうという形を取りたいと思いますので、この12ページを御覧になっていただきながら、自由に考えを御発言いただければと思います。どなたからでも結構ですので、お手を挙げるボタン押していただければ御指名させていただきます。いかがでしょうか。
では、まず、狩野委員からお願いします。

【狩野主査代理】 ありがとうございます。
示しておられた論点が5つありました。それぞれについて、「送り出す」話と「受け入れる」話に分けて考えたことを申し上げます。
まず、1つ目の論点です。まず「送り出す」ほうですが、ほかの文化を知ったことによって自分の強みが何かが分かる、つまり自分の魅力を高められる人材というのを育てていくのが目的であろうと私は思います。それから、「受け入れる」ほうに関しては、我が国のファンを増やして必要なときに支えていただけるようにするということなのではないかと、これも私見ですが思います。
続いて、論点2について、どんな推進があるかということですけど、当然研究を推進していく人たちに関する議論が今まで進められていて、これは重要なことだと思います。もう一つ、最近ちょっと思い始めたのは研究のマネジメントをする人たち、つまり研究者に方向を示唆するとか、あるいは科学技術に関連した政策をつくるとか、産学連携を進めるとか、ルールを決めていくとか、そういうような人材についてもこうした循環が必要ではないかということを思い始めました。皆様の御手元の机上配付という内容は、そのような内容になっていると思います。具体的にはURAのかたに関する国際的な交流という内容です。URA活動があると、研究だけやっていてもし視野が専門外や国外といったところに十分には向かってなくても、マネジメントしてくださる方と御一緒することによって、より他国のある状況に対して目が開かれていくというような場合も増えるのではないかということを期待したいという意味でございます。
日本の魅力をどういうところに求めるかということについては、日本の内外双方を経験した方々は多分よいことも悪いこともよく分かって、だから日本はこううまくやったらいいということをおっしゃることができる方が増えると思います。ここをもしかするとヒアリング調査などをしてリストアップしていくのもいいかなということも思います。その際に、観点として日本の方法がいいのか、日本の社会規範がいいのか、あるいは日本の持っているフィールドや材料ですね、これがいいのかと、もちろんあとは処遇がいいのかとかいろいろ言えることはあると思います。その辺りについて、現状はどうで、将来どういうものが増えたらいいかということを聞き取るというのも一つではないでしょうか。
論点3に関して。まず「送り出し」についてですが、やっぱり若手の教員とかマネジメント人材に対して仕事の配慮、あるいは遠くでやっても構わないというようなことを開発していかないと、これはうまくいかないような気がいたします。というのも、人数は全体に減っていて、仕事量は減らないようなことがよくあるわけですけれども、それをどうやって職場に張りつかないでもできるか、ということを考えていかないと送り出しができないんじゃないかということを考えたりいたします。
「受入れる」ほうに関してですけれども、これもWPIの例などを紹介していただくと、どうしても原資が限られてきたので仕方がないところはあるにせよ、今、既に実績のはっきりしているいわば出来上がっている方々を呼ぶ、という発想が結構たくさん見受けられる気がするのです。ですが、それに加えて、これから伸びる人たちにしっかり投資をしていかないと、そういう方々のうちのどの人が将来相手の国で重要な立ち位置を占めるかというのは分からないわけですから、もちろんそれに対して人選をうまくして可能性を高めるということはできたとしても、若手に対する投資というのは重要かなと思っております。
ちょっと長いんですが、4点、5点目まで行っていいでしょうか、すみません。

【岸本主査】 はい。

【狩野主査代理】 恐縮です。
4点目に関して、「送り出し」ですけれども、海外に行くと楽しいというか、いろいろな視野が開かれるという経験を、結構大学に入る前からしておかないとまずいというか、うまく開かれないんじゃないかという感覚もしております。例えば、科学技術に関する取組のときに、国際的なものが加わるような何か政策的な誘導というのがあってもよいかもしれないと思います。例えば、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)です。
それから、「受け入れる」ほうです。こちらはいろいろの手当てが必要な中で、例えば自治体のほうに引っ越してきた人たちは行かないといけないのですが、そこで英語が全く対応されていないみたいなことも結構あったりいたします。そういうことを大学が一緒になって変革していくようなことにも、もしかするとインセンティブをつける必要があるのかもしれません。これが1つです。
もう一つ、学内等の研究成果を国際的に広報するということも、サポートができるかもしれません。大学によっては広報、特に国外に向けたところに余りノウハウがないこともありえます。例えば大学から出る研究成果自体は悪くないのだけれども、国際広報がうまくいっていないのであまり国際的に存在を知られていない、ということもあると思いますので、こういうところに対しても政策的な支援というのはあってもよいかなというふうに思います。もちろん広報は一般向けだけの広報ではなくて、読みやすい英語論文を作るということへの支援も、あればまさにそれ自体が広報への支援ということになると思います。
5点目、最後になりますが、ここは総数をやっぱり増やす努力はどうしてもしないといけないのではないかと思っておりまして、それゆえに、さっき申し上げた若い方々へということを言いたいと思います。ドイツの例です。私がもうちょっと若い頃にグローバル・ヤング・アカデミー(GYA)というのに入っていました。これは、そこは入る時点で40歳までの若手の人たちを世界中に募って、自分たちが選んで、将来活躍しそうな人たちが毎年常に200人になるように選ばれていく、60か国ぐらいからメンバーがいる、という集団なのですけど、設立以来今ドイツ政府がずっと事務局機能の人件費を受け持ってくれています。こういう場で出会う人たちは大変良い国際的つながりになっていますが、そういう活動のインフラを支援してくれる国には、ありがたく思い、ファンになってしまいます。それで、日本政府も、やはり有能な若い人たちに上手に日本に関わっておいてもらうと、後でよいことがあるのではないかということは申し上げてみたいと思います。
最後に1点だけ、WPIでいろいろな工夫をされていますけども、例えばシンガポールなどもたくさんの投資を有能な研究者に対してしようとしています。例えばアジア域外からアジアのどこに来ようかと考える人の視点に立ってみると、こういう国と比較したときに日本の優位は何なのか、それが説明できるようでないとなかなか人は来てくれないこともあるかなということを思います。こういうことを明確にしていくのも大事じゃないかということを思いました。
すみません、長くなりましたが以上です。

【岸本主査】 ありがとうございます。
それでは、続いて石原委員、お願いいたします。

【石原委員】 まず、論点1の目的ですけれども、こちらは国際共同研究と同じテーマで、やはり広い視野、インプットによる現在の研究成果、論文の質の向上、将来の研究力の向上は国際頭脳循環が目的とするものだと思います。そしてもちろんネットワークを育てて、若手研究者の、若手に限らないですけれども国際性、協調性、競争力を育てるためには頭脳循環は必須というのが私の印象です。
具体的には、先ほど狩野先生もおっしゃっられていたのですが、やはり送り出す側と受け入れる側の両方を確実に進めていくということが必要だと思います。私も海外に出て博士号を取りましたので、だんだん数が少なくなってきているのは寂しいことではありますが、現在大学に勤めておりますと、大学として受け入れる側の不備をより強く感じます。
具体例として、国際公募を行って外国籍の助教を採用したときに、まだ初めは日本語が堪能でないということが多いので、大学の業務、例えば入試関連ですとか、そういった委員会とかそういうものが、助教を採ってもできないとなりますと、その分の負担がほかの先生方の業務に回ってしまうということで、人間性も高い、研究成果もあるという方が、日本に来ようというモチベーションを持って受けてくださったのに間接的な周りの反対というか、そういうものがあるということを感じます。ですので、サポートするときには、単に今日本人の方が占めているポジションを、海外の方に置き換えればこれだけ予算的に優遇しますよということだけではなく、その上で、ほかの方に負担が行かないような措置が必要であると、国際的な頭脳の流入の流れができていかないのかなというのがちょっと感じるところです。
また、海外へ行って博士を取る方が減っているという話ですが、根本的には日本の大学院も含めて博士号を取る方自体が減っているというのが現実に感じるところです。日本人の博士号取得者という母数が減っているのに海外に行って取得する人だけが増えるというのはちょっと考えづらいので、まずは母数を増やす、つまり日本でも博士号をちゃんと取るというモチベーションを高める必要があるなというのを感じています。特に20代の人口が今減っているわけですから、学生人口に対する博士号取得者の割合をそのままの比率でよしとしていれば確実に今後も博士号取得人口は減っていくだろうと思っています。また、それは国際的研究競争力の低下につながります。
日本で博士研究を行う学生が少ない状況では、海外に学生をハッピーに送り出す研究室は増えていかないのではないかな、と思います。学生が海外に留学するときには、送り出す側の応援と、海外で受け入れる方の何らかのサポートが合致すれば、若い方々はモチベーションを持って行くところはあると思います。ですので学生を囲い込まない、そのような環境の形成はもうちょっと根本的な問題かなというのを感じています。
あとは、WPIを踏まえての今後の発展という観点ですが、WPIは成果をたくさん出していて、ノウハウを蓄積したというところですので、すごく重要な成果だと考えております。今後としては、100人規模の研究所をつくるというのはかなり限られた大学・機関でしか可能ではないと思いますので、せめて3分の1とか4分の1ぐらいの規模でもそのノウハウが生かせるような国際的な研究機関をつくっていくことが必要かと思います。
つまり、少なくとも英語が基本であるとか、30%以上の海外の研究者とか、公募は全て国際公募とか、そういったものはキープしつつ、小規模でも国際的な共同研究が進められるような研究所をサポートしていく。そうすると、もちろん予算規模もその分小さくなります。そのときに、博士号のお話もありましたけれども、研究者だけではなく海外からの博士、優秀な学生も採れるようなシステムも構築します。海外から受けたいというアメリカとかヨーロッパからの学生もいるんですけれど、やはり何といってもネックになるのは、日本では給料がヨーロッパやアメリカほど学生に払えないという点です。海外の学生は博士号ですと皆さんお給料を普通にもらって研究していますので、そこのところは根本的に改善しないと競争力を高めていく、特に博士レベルでの競争力が高まっていかないのではないかなというふうに感じました。しかし学生の給料は研究者よりも安く、長い関係が築ける可能性が高く、また切磋琢磨して研究することで日本人の学生の国際性・研究力も高められますので、小規模国際研究機関でコストパフォーマンスよく国際頭脳循環率を高めていく手であると考えております。その場合もう一つ変更が必要になるのは入試のシステムです。入試のほうも海外並みに成績、推薦状、面接等でを基準にして、一発の紙試験でやるというようなことではなく、国際標準にそろえる、そういうところが必要かなというのが私からの意見です。

【岸本主査】 ありがとうございました。
それでは、続いて飯塚委員、相田委員なんですけども、時間の関係で、すみません、御発言は二、三分でお願いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、飯塚委員、お願いします。

【飯塚委員】 ありがとうございます。先ほどのお二方の御意見と重複するところがございますので、なるべく手短にさせていただきたいと思います。
狩野委員がおっしゃっておられたファンをつくるというのはすごく重要だなと私も思っておりまして、もうお一方の委員の意見もございましたけど、要するに受け入れる際に当たってどういう好条件をオファーできるかということがすごく重要になる、それにはやはりお給料とか、それからあと人件費、例えばJSPSで得るお金には人件費が入っていないので、そういう場合、学生もそうですし、または海外の研究者と一緒にやる際に当たってもなかなか一緒にやってというふうにいかない場合がある。というのは、海外の場合は人件費というのが科研費のような形で出るので、そこの違いがあるのがちょっと大きいのではないかなと思います。
あともう一つなんですが、いわゆる国際頭脳循環ということになりますと、そこの研究者になる前の段階の博士課程の学生のときに一体どういう経験をしたかということになると思うんですが、そこでもらっている、例えば日本で頂いている国家の奨学金がどういう形で学生を扱っているというか、対応しているかということなんですけど、いろいろルールがあって、そのルールがかなり硬直的で、もう少し柔軟な運用ができるといいなと思ったりします。ちょっと具体的な例を差し上げますと、例えば妊娠した場合、産休が取れないとか、それから、あと今はコロナ禍でフィールドができなくて右往左往している学生もいますけど、そういった学生に対する対応をどうするかで、行ったまま帰れなくなって、でも一月に1回レポートしないともらえないとか、いろいろすごく厳しいルールがあって、そういうところをもう少し考慮していただけると、よりいい印象を持ってPh.D.を終わらせて、それ後、しばらくたって、またもう一回一緒に共同研究したいなというような関係が結べるのではないかなと思います。
それからあと、科学論文における我が国のエディター数とレビュー数と、この件についてなんですが、これは最近ちょっと個人的にそういう場に行ってお話を聞くことがあってなんですが、新しいジャーナルとかでインパクトファクターを上げようとするとエディターの力というのがすごく重要になってきて、そんなエディターの力というのはやはりネットワーク、今まで培ったネットワークを使ってどれぐらいいい人に論文を書いていただいて、それをジャーナルでインパクトファクターにしていくかとか、また、あとレビューの方のいかにレビューアがいるかとか、そういうのはみんなアナリティクスに出ていますので、そういうのを駆使してやっているということで、例えばエディターになるとか、またはレビューアになるということは、大学の業務は忙しいですけど結構重要であり、なおかつこれは専門分野における貢献になるので、そういった意味で何かそれについてのサポートというのがあるのかというようなことも重要になってくるのかなと思いました。
今のところ、お二方でおっしゃっておられていないことで私が思いついたことは以上でございます。

【岸本主査】 ありがとうございます。
それでは、続いて相田委員、お願いいたします。

【相田委員】 すみません、私からは少し質問だけさせていただきたいと思ったんですけれども、最初の頃に事務の方から御説明いただいた米国での博士号取得者云々という話の資料の7ページ目です。
ここのところが、右側の表で米国3万1,000が3万5,000で12%増とか、計が4万8,000が5万5,000で16%増とあるんですけど、その真下のところのグラフを見ると、アメリカは大体8万とか9万ですよね、何か数字合わないんですけど、これは私の表の見方が間違っているのかなと思うので、この表の見方を教えていただきたいなと思うのが一番の願いなんですが、なぜこういうことが気になるかといいますと、例えば日本の年間、日本の国内で学位を出しているのが1万5,000人なわけです。けども、そのうちおおよそ9,000人が社会人で、おおよそ外国人が4,000人で、日本人は5,000人ぐらいです。つまり1万5,000人に学位を出しているけども、そのうちの日本人が5,000人ぐらいです。アメリカの場合は、あそこは留学生も多いから実態はどうなんだろうなとずっと私は関心を持っていたんですけど、このグラフで、ああ、分かるのかと思ったんですが、どうも上の表と下のグラフの数字が合っていないので、どうやって見ればいいのかなというのが分からないので、教えていただければと思いました。
つまり問題は、国際化も大事だし、日本人の学生さんがそもそもドクターに行かなくなっているので、このまま一部の人たちだけが国際に行ってもサステイナブルではなくなっていくので、しっかりと次世代を育成しつつ、若い人たちがちゃんと海外に行くような環境をつくりつつ、いろいろな取組をしなきゃいけないですよね。そのために、まず実態として何人ぐらいの人がドクターを取っていて、何人ぐらいの人が海外に行っているんだろうということをちゃんと把握しなきゃいけないと思ったんです。それが、実数がよく分からなくて、物を考えるのに基本的な数字がよく分からないなと思ったので伺っています。

【岸本主査】 ありがとうございます。
事務局のほうで、どうでしょうか。これは、調べられたらまたお願いしたいところもありますけれども、まず、上の数字と下の数字の数が違うということについて、いかがでしょう。

【有賀戦略官】 事務局の有賀でございます。
御指摘の点、確かに今我々も見て、データのもともとの出典元が違いますので、恐らく定義によるところなのかなと思いますけれども、正確なところはお調べして、また皆様にお知らせしたいと思います。よろしいでしょうか。

【岸本主査】 ありがとうございます。
あと、もし調べられるとすると、文系、理系と分けるのができるかどうか分からないんですけども、そういうところのデータもあると、どういう分野がどうなっているのかというのも分かるかもと思いますので、お願いいたします。ありがとうございます。
それでは、小川委員、お願いいたします。

【小川委員】 ありがとうございます。
私は研究の現場にいるわけではないので、細かい支援の必要性などは研究者の先生方にお譲りし、日頃企業と接している立場から気づいたことを申し上げたいと思います。必ずしも論点に沿っておりませんけれども、お許しいただければと思います。
最近、ここ10年ぐらいでしょうか、グローバルな大企業を中心とする会員企業に接していまして、非常にキャリアのグローバル化が進んできており、特に幹部級に上がっていかれる方々が、ほぼ必ずといっていいほどグローバルな経験を積んでいらっしゃるということが顕著に見えているような気がしております。それに比べて、今回研究者の国際頭脳循環、特に日本から出ていくほうの現状を伺って、非常にギャップがあるような気がいたしました。
特に若い方々が目の前のキャリア、ポストを得るために海外渡航を躊躇されるというのは、もちろん積極的に外に出ていこうという気概、やる気が重要なのは言うまでもありませんけれども、やはり自分の重要なキャリアを考えたときに、今後のキャリアに国際経験が生かされる、評価されるという実感がなければどうしても躊躇されるのは仕方がないことだろうと思います。ですので、個々人に対する支援を幾らしても、それが研究者のキャリアに役立たない、評価されないということであると、この状況はなかなか変わりにくいのかなと思います。
企業において人材を育てていくときにグローバルなキャリアが重要だときちんと組織、経営陣が認識して、そういったキャリア形成を行わせているのと同じように、大学や研究機関も、運営する側がそういうことが重要だということを認識し、それを研究者にも発信し、行かねばならぬ、行ったほうがいいという状態にすることが必要なのではないかと思います。
日本の大企業はどうして日本の大学や研究機関と共同研究をせずに海外の大学・研究機関とばかりするのかということをよく御指摘いただきますが、そこで企業側が挙げる原因として研究の水準やテーマがグローバルレベルについていっていないとか、ずれているといったような指摘をされるところがございます。そうしたところともこの問題は関係するのかなと思いまして、単に若い一人一人の研究者の循環ということで捉えるのではなくて、やはり大学・研究機関の自らのグローバル化というところにまで遡って考えないと、なかなか根本的な解決は難しいのかなという感じがいたしました。
以上でございます。

【岸本主査】 ありがとうございます。
それでは、続いて林委員、お願いいたします。

【林委員】 ありがとうございます。
12ページと、その前の11ページを見ながら一つお願いしたいというか、意見させていただきたいと思います。論点の3や4、5と関わります。
特に海外への送り出し支援に関しまして、組織単位の支援が欠けているという実感がありましたが、ああ、こういうことだったんだということが、11ページの図を見ながら本当によく分かりました。
それで、今後大学として送り出すチームを組み、支援策に応援していきたいわけですけれども、WPIのような大規模なものを考えた場合、人文社会系で1つの大学で大きなチームを組むというのは本当に難しいという現状があります。人文系は個人研究の集合体のような状況だからです。ですので、先ほど御意見がありましたようにより少し規模の小さい、小さいけれども大学で案配ができるような形でのプロジェクト、あるいは公募ということが進んでいくことを切に希望いたします。
そういう場合に、人社系のものでも出せるような規模の支援が必要ですし、あるいは文理融合を義務化するような形、あるいは大学のほうで案配して個人に配分できるような形などを考慮いただければなと思いました。
以上です。よろしくお願いいたします。

【岸本主査】 ありがとうございます。
それでは、礒田委員、お願いいたします。

【礒田委員】 ありがとうございます。
国際頭脳循環の目的については、先生方からいろいろ御意見ありました。、私が一つ気がつきますことは、最近、目的基礎研究が結構多くなってきているということがありまして、その中では、やはり気づきを得る場というのも非常に重要なのではないかと思います。気づきというのは、国際的な研究の動向など研究を推進している環境の中での気づきということもあると思いますので、そういう観点でも非常に重要だと思っております。
それから、エディター数とレビュー数がこういった国際頭脳循環に貢献するファクターなのかどうか、ちょっとそこはどうなのかなと思うんですけれども、もしそれがファクターとして重要なのであれば、エディターをするとか、レビューをするということについてはあまり評価されていない現状がありますので、それを評価のファクターとして加えていくということが必要なことかなと思いました。
あと、海外に行くことが少ないということなんですが、昔、私がアメリカで一緒に働いたポスドクは今、台湾の国立大学の教授になっていまして、台湾は教授になると7年ごとにサバティカルを取るという制度があるそうです。1年間、家族と一緒に海外で研究するという制度が7年ごとに定着しているということなので、そういう事例があるということを紹介したいと思います。日本でもそのようなシステムが出てくると、どうしても行かざるを得ない状況にになるのかなというのはございます。
それから、あとは現状の5の論点なんですけれども、先ほどの松本先生の御説明は非常に感銘を受けるところがありまして、本当に工夫されて運営されているなと思いました。が、その中でフォーカスしてお話ししたかったのが、やはり融合研究というのが非常に評価されてきているということです。、しかし、一方で、融合研究についてそれを評価する、大きく評価される機会があまりないのではないかと感じていまして、どうしても人文社会とか、生物系とか、理工系とか、そういう分野ごとで評価されてきていることが多々ありますので、異分野融合、融合研究を評価される体制というものも重要かと思いました。
以上です。

【岸本主査】 ありがとうございます。
まだ御意見はあるかもしれませんが、次の議題の中でもまた御議論していただく時間が取れると思いますので、ありがとうございました。
私のほうからは、もう皆さんにおっしゃっていただいたんですけども、頭脳循環を考えたときに、今、日本人がというのが多かったんですけども、日本に来た人たちがまた国に戻るとか、他の国に行って、そちらから日本の方を呼んでくれるとかというような、日本人だけ見ていないで、もう少し広く日本に関わった人たちがどうなっていくかというのも見つつやっていくのが頭脳循環を考える上で必要な観点かなということです。
もう一つは、産業界も海外連携をされているんですけども、産学連携の中に頭脳循環を組み入れていくというのでしょうか、今は学術のところは学術のところでという形になっているんですけども、国のお金だけでは多分こういうのって回っていかないので、産業界も含めた形で頭脳循環を考えるのも必要じゃないかかということです。
あと、若い人が海外に出ないというのは、いろいろな原因があると思いますけども、一つにはいろいろなプロジェクトで採用されている若い方が結構多くて、その人たちがプロジェクトへの専念義務があって、それ以外のことができないというのが1つの大きな制約になっていることがあるように思われます。例えば、国のプロジェクトの中で、必ず関連したところで海外に、1か月ではないけどももっと長く行けるようなものも加えた形での国のプロジェクトをやっていくというようなことをしていくことによって、ある程度強制的になるかもしれませんけども海外に行かせるというのもできるのではないかなと思います。これは一例ですけども、何か制約条件があれば、そういった制約条件を、できるだけ海外に行けないようになっているところを外していくというのも必要じゃないかなと思います。
まだまだ観点はあるかもしれませんけども、お気づきのところがあれば、また後で事務局のほうにお伝えいただけるとありがたいなと思います。
それでは、時間のことがありますので次に移りたいと思います。次は、議題2の「科学技術の国際展開の戦略的推進方策に関する報告(案)について」に移ります。事務局より、報告(案)について御説明をお願いいたします。

【久永企画官】 よろしくお願いいたします。それでは、事務局の久永から資料3について報告させていただきます。49ページの「科学技術の国際展開の戦略的推進方策に関する報告(案)」を御覧ください。
次の50ページを御覧ください。本報告の前提となる現状認識をここでは示しております。冒頭の段落では、STIの推進において世界的な競争が激化しているという現状を述べております。あと、オープンサイエンスの考え方がここでは基本ですが、世界秩序の再編においてSTIの戦略的価値が高まっていると、そういった中で戦略的自律性と不可欠性の観点も念頭に、どのように国際交流・協力を進めていくべきか問われているということを述べています。
また、一国では解決困難な問題であるグローバル・アジェンダの顕在化について、その克服のためには志を同じくする国・地域とともに、産学官を挙げて具体的に取り組むことが求められているということです。
新型コロナについても、STIを取り巻く環境に大きな変化をもたらしており、オンラインの一層の活用と、オンラインでは代替できない対面の価値が再認識されているということをここでは述べております。
次の51ページを御覧ください。我が国の現状については、近年、国際共著論文数の伸びが相対的に低くなり、国際的な研究コミュニティにおける存在感も低下していること。その中で、我が国は国際社会の期待に応え存在感を発揮すること、そのためにも科学技術を戦略的に国際展開していくことが重要になっています。
その次の段落では、これらの問題意識が、第6期基本計画の指摘とも一致しているということを書いております。その上で、本報告の策定は、第6期基本計画における国際展開に関する戦略の策定と、その記載を踏まえたものになります。
以上で述べてきた社会の変化を受けまして、国際交流・協力の目的と考慮すべき観点について整理することが必要であるとし、次の2ポツにつないでおります。
次の52ページを御覧ください。2ポツの(1)国際交流・協力の目的です。時間の関係で説明は割愛しますが、そのポイントは、第6期が目指すSociety5.0の実現に向けてということで、次の53ページを御覧ください。
「以上の認識に基づき」というところの段落で、科学技術における国際交流・協力の目的について、まず第一には研究力の強化、第二に新たな価値の創造や社会課題の解決、第三に科学技術外交、この3つの観点から整理したということにしています。
具体的には枠で囲った部分になります。A1には良質な研究成果の創出、戦略的な技術の確保等、B1には国際的な公共財の創出、地球規模課題や持続可能な開発目標課題の解決等、C1には未来社会像の共有、価値を共有する国との関係深化等、そういったことを目的として挙げております。
その下の段落では、STIにおける国際交流・協力の視点は、STIに携わる全てのステークホルダーが持つべき視点であって、それぞれの役割に応じてこれらの目的を意識して取組を実施するということが求められているとしております。
次の54ページを御覧ください。初めの3つの段落のほうでは、国際交流・協力は、STIの効果を高めるための手段であるということを強調しております。本来の目的に照らしてその手段として有用性を最大化しまして、積極的に活用されることを期待する旨を記載しております。
続いて、(2)の国際交流・協力に当たって考慮すべき観点です。これは、いかなる研究、交流であっても、基礎研究なのか応用・開発なのか、あとは研究の特性とか抱えている課題や価値観といった連携相手の特性、そういったものに応じて必要な観点を見極めなければならないとしております。
あと、ポストコロナについて、オンラインと対面を適切に組み合わせることが期待されるとした上で、オンラインのメリットとして研究ネットワークの維持や研究活動、共同研究における頻繁なやり取り、幅広く研究結果を共有できるなどを挙げております。
一方で、対面のメリットとしては異なる文化の中での研究経験、新たなネットワーキング、現地試験等を挙げております。
次の55ページを御覧ください。ポストコロナに向けた国際場裡での議論への参画、その議論を踏まえた国際交流・協力の在り方の見直しの重要性をここでは指摘しております。こういった観点も含めて、これまでの委員会で皆様に御議論いただいた観点について、国際交流・協力の目的、それぞれに対応する形で枠に囲った部分に整理しております。
A2、研究力強化の観点、ここでは1つ目ポツの、我が国の研究力にとってどのような価値を有するか、その観点から適切な内容になっているか、あと、5つ目の研究インテグリティや技術流出防止の観点から手続が取られているか等を記載しております。
次のB2では4つ目のポツ、研究成果の普遍性が理解され、横展開の可能性が検討される仕組みがあるかとか、あと8つ目の知財管理、標準化、データ管理等について事前の取決めが可能か等を記載しております。
次の56ページへ行っていただいて、C2では、1つ目の我が国の魅力を高めるようなものとなっているか、4つ目の科学技術の発展、人材育成等、相手国にも裨益する価値が創造されるか等をそれぞれ記載しております。
加えて、ポストコロナの観点では、さきに述べたオンラインと対面のメリットを踏まえて適切な手段を組み合せたものとなっているか。
さらにその他の観点としましては、1つ目のポツのように目的や対象を軸としてマッピングで整理した場合、既存の事業に不足や重複がないか、4つ目にありますように組織内での国際活動のためのサポート体制が適切に構築されることを促すものとなっているか等を記載しております。
次の57ページを御覧ください。3ポツの国際交流・協力のための取組の方向性です。ここでは、国際交流・協力を進めていく上での重要な国際頭脳循環と国際共同研究について、その取組の方向性を記載しております。
(1)の国際頭脳循環につきましては、先ほどの御議論を踏まえまして事務局において今後記載して、追って照会させていただきたいと思います。
(2)の国際共同研究につきましては、前回の委員会での御議論を踏まえまして記載しております。国際共同研究事業等における成果が事業期間終了とともに忘れ去られ、十分に活用されていない場合があるのではないかというような御指摘がありました。
そして、その次の段落では、政府や資金配分機関に求められる取組を記載しています。必要十分な事業期間の設定ですとか、目的に応じた適切な指標を設けるなどによる成果の可視化、あと研究の進展に応じた目的の見直しといったことですとか、社会実装を目標とする場合は、研究成果を他府省庁や企業等に接続し発展すること、そういった重要性を記載しております。
58ページを御覧ください。その次の段落におきましては、研究の不確実性の事情も踏まえまして、着実な進展が認められるプロジェクトであれば、事業の枠を超えて組織的に目標達成までフォローすべきであるとしております。
さらに、人社系や産業界を含む共同研究チームの構成も重要であること、また、将来の事業効果の測定に向けた事業の蓄積と発信の必要性も指摘しております。
最後に59ページになります。4ポツの「終わりに」を御覧ください。STIにおける国際的な取組をしっかりと進めていくという決意を新たにしなければならないことを強調して、本報告書を活用して国際交流・協力の効力を最大化し、積極的に活用するということを期待してこの戦略を結んでおります。
資料3の説明は以上になります。

【岸本主査】 御説明ありがとうございました。
この報告(案)について、残りの時間で御議論したいと思いますけども、その前に、事前に資料を御提出いただいている武田委員から御発言をお願いしたいと思いますので、武田委員から資料4の説明をお願いしたいと思います。

【武田委員】 ありがとうございます。
今御説明いただいた今回の我々委員会の報告書の、一番新鮮な主張点は、国際交流の目的を3つに分けて目的別にもっときめ細かく評価していこうということだと思います。それを今回さらにA2からC2という格好でブレークダウンいただきました。それは非常に大事ですので、その項目の過不足を検証するたに、この表を書かせていただきました。
Aの研究力の強化は、テーマは日本の将来に重要な科学技術であるか、相手国はその分野で世界最先端の国であるか、よってKPIは国際共著論文であり、国際頭脳循環であり、博士の数やレベルであり、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議などと連携してやっていくのが主体だと思います。Bは社会課題解決で、これは一番経済が伸びている新興国が中心となるように思いますが、テーマは日本の現在の産業分野であって、相手国というのはその市場開拓や拡大につながる国であるかで、KPIは経済リターンがどのぐらい期待できるのか、あるいは知財・国際標準化がどうなっているのか、人脈構築がどうなっているのかというようなことで、これは経済産業省や産業界との連携が中心になる分野だと思います。
Cは科学技術外交で、日本のシンパになって頂ける国の数を増やしていくということが大きな目的のものです。それは途上国などの皆さまにとって魅力ある技術なのか、それから日本の外交強化にとって重要な国なのか、KPIは外交のいろいろな指標で、そういうことで外務省との連携のSATREPSを拡大するなどが重要な戦略になると思います。
それから、今書かれなくて検討の余地があると思いましたのは、重要なリスクの検討がきちんとなされているかという点です。これは今でいうと環境とか、最近にわかに大きな問題になっている人権とか、それから、これが非軍需であったり、安全保障を侵すようなもんじゃないとか、それから日本産業の現在/将来に大きな損失にならないかということです。日本の法人税もこの研究費を払っているわけですから、そこがシュリンクしていくような研究をやったら元も子もないということです。以上のような基本原則を1つ作り上げた上で、それからそれを文書に起こしていくという、そういう項目過不足の検証をやられたらどうかなというのが、私の報告書に対する提案になります。
以上に加えて今日の主題である頭脳循環について主張点を二、三枚持ってきました。次をめくっていただけますでしょうか。
日本のポスドクの専門分野というのは、これは、実はポスドクとかドクターを企業がもっともっと採用すべきだということをその頃文科省さんなどから随分言われまして、それに対する答えとして私が以前調べたときのものなので、少し古くて申し訳ありませんが、その時はライフサイエンス38%、情報通信7%という、ポスドクですからドクターとは少し違うのかもしれないんですが、こういうことになっていました。
次をお願いします。今度は日本の産業の雇用を見てみますと、ここにある新卒採用を1年に何百人とやっている上位の何10社かをみてみますと、情報分野のドクターであればニーズはいくらでもあると思いますし、実際ほとんどの就職希望のドクターは就職できているのではないかと思いますところがバイオのほうは、ここのどこを見てもバイオの方に求人を出す会社というのはなかなか見当たらない、このアンマッチというのは何とかしていかなければいけないと思います。
何を言っているかというと、頭脳循環の話を今日の冒頭に文部科学省から御説明いただいたんですが、私は流動は結構しているんじゃないかと、流入も流出も、もっと少ないと思っていたんですが、そもそも日本人は研究者に限らず流動していないと思われますので、特にヨーロッパみたいに鉄道に乗っていれば隣の国へ行けてしまう、あるいは帰ってこれるような地域と比較にならないんじゃないかと思います。だからそれは大きな問題ではないように思います。
ところがショックだったのは、アメリカで博士を取る方が10年で半分になってしまったとのことで、これは大問題かと思いました。それは、最初に石原先生でしたか、おっしゃったようにもともと日本で博士を取る方が減ってしまっていることが根源的問題だということが非常に説得力がありました。だったら日本の博士をどうやって増やすというと、博士がどんどん産業界で活躍しているという姿にどんどん持っていくというのが一番基本的な方針かなというふうに思いました。この博士の分野と産業界のニーズのアンマッチの問題を、頭脳循環の不活性問題のためにも一度議論をきちんとしたほうがいいんじゃないかという思いでこれを出させていただきました。
以上です。

【岸本主査】 ありがとうございます。
この後、御意見をお伺いしたいと思いますが、事務局とも相談したいところなんですけども、今回、この報告書のまとめというのを進めているところなんですけども、1つは、6月めどでまとめということになろうかと思うんですが、これをこの委員会からの、皆さんでこれまで御議論いただいた中での最終まとめとするか、ある種これまでの議論のところを総括したということで、例えばこの報告というのがまた次でバージョンアップされる機会があるのかどうかによって、皆さんの御発言を集約型にするのかによって大分変わると思うんですけども、まず、その辺りの考え方はいかがでしょうか。大分議論しなきゃいけないところがたくさん出てきているようにも思うところなんですけども、いかがでしょう。

【有賀戦略官】 事務局の有賀でございます。御意見と御質問、ありがとうございます。非常に盛り上がっていて、確かにまとめるのがどうなのかというのは、おっしゃるとおりあるかと思います。
私どもとしては、様々な事情で6月に一区切りをつけたいというふうに思っております。その上で、その後に確かに継続した議論というのも考えられます。その場合に、この報告書をさらにアップデートする形もあり得ますし、またさらに細かく分けてやっていくという位置づけもあり得るかと思いますので、その辺は、取りあえずのまとめはまとめという形を取らせていただいた上で進められればというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。

【岸本主査】 そういう意味では、報告というのが今のお話で最終報告で、とにかく皆さんの意見を集約して全部が盛り込めるというところまでは少し時間がかかる、要るかなということで、タイトルに「中間まとめ」みたいに入れられると、それはそれで一つあるんですけども、この報告というのは第1次報告みたいな、そうであってもこれまで議論したのはきちんとまとめたというところのニュアンスがうまく出るようなタイトルを考えていただけるとありがたいなと。

【有賀戦略官】 承知いたしました。検討いたします。

【岸本主査】 そういうことも踏まえて、今日皆さんから出てきた意見を集約というよりは、残された時間で、皆さんからまたいろいろな観点からお話があると思いますのでお伺いしたいと思います。まず、飯塚委員、お願いいたします。

【飯塚委員】 ありがとうございます。武田委員の御意見、すごく網羅的に今までの観点をまとめていらっしゃって、大変分かりやすかったです。
その中で一つ思ったことがございまして、それとあとは、先ほどお伺いしたITbMの例で、もし御示唆いただけるんであればいただきたいなと思っている点がございます。それは、環境とか制度の問題です。ストライガのケースというのは、非常に興味深く私は見ているんですが、ああいったものというのは、例えば現地で実験する際に当たって、制度的な問題によって非常に大きな制約があると思うんです。そういうものをどういう形で乗り越えていらっしゃって、それで実証実験されていらっしゃると思うんですけど、その壁というのか、その際に当たっては、例えばこれは外交的なルートというのは使われたのか、それとあと標準化とか、そういうものにつなげられるようなものであるのかどうか。
と申しますのも、あちらで、TICAD7のときの発表を拝見したときには、たしか製薬会社さんの参入というのがあったと思うんですが、その際に商品化につながっていくのかどうかとかそういうことを、すごく具体例が非常によい例としてありますので、その際に当たって例えばどういうところが大変であって、どういった形での支援があるとよかったのか、またはどういうふうにそれを乗り越えていらっしゃったのかというのを教えていただければと思いました。
以上です。すみません。

【岸本主査】 ありがとうございます。
武田委員、もしコメントがあればということなんですが、いかがでしょう。

【武田委員】 フィードバック、ありがとうございます。いただいて、大変うれしく思います。ご質問部分は、私ではなくて松本先生に対してではなかったかと思います。

【岸本主査】 すみません。じゃあ、松本委員から手が挙がっているので、お願いします。

【松本委員】 一言で言うのはなかなか難しいんですけど、結局アフリカは何のルールも無いに近いんです。例えば日本みたいに農薬の規制があるわけでもなく、しかもフランスが宗主国だった所とイギリスだった所とか、そこも難しくて、アフリカの中でも調整ができなくて、いろいろな方に意見を聞いたのですが、まずケニアに持っていかないとケニアのプライドが傷つくとかいろいろ注意しないといけない難しい話がいっぱいあります。結局自分がどうしたかというと、文部科学省につないでもらった人をつてにケニアに乗り込んでいって、本当に腹を割って話をしました。規則がない一方で、理屈が通っていれば何とかしてやろうと思ってくれますし、政府に近い人であれば、何とかしようと思えばできてしまうので、いろいろ大変でしたけど、結果的には何とか道筋をつくることができたということです。
またサポートしてくれる企業ですが、日本の企業はアフリカに乗り込んでいこうとするんだけど、なかなか乗り込んでいけない状況があるようです。農薬企業など、ある程度実績はあるのですが、日本の商社とかもっといろいろな企業が乗り込んでいけるような状況になると、産業界にも大きなメリットになるという話はあって、こういったストライガ対策のような科学技術外交シーズがきっかけになるとよいという意見もいただいています。今はコロナの影響で圃場実験が止まってしまっていますが、基本的には継続して支援すると言っていただけている企業もありますので、前に進めていきたいと思っています。
この化合物をケニアで使う際の規制にですが、どこかの国、例えばフランスなりイギリスの国で安全性が担保できることを示して持っていく、また規制自体が存在しないなら、一緒につくったらどうかという意見もいただいています。アフリカで電子マネーなんかがすごく進んだという状況がありますが、あれも規制が何もなかったので、乗り込んでいったところがすべてやったという状況のようです。だから技術を規制ごと持ち込むぐらいのことをやるのがよいだろうと。参考になれば。
それから、ついでにコメントさせていただきたいんですけど、よろしいですか。

【岸本主査】 どうぞ。

【松本委員】 武田先生の出していただいた表は非常に分かりやすくて、飯塚先生が言われたように網羅されていると思うのですが、ちょっと1点だけ気になるのは、これは多分応用研究的な分野にフォーカスしている考え方かなというところはちょっとリマインドしたいなと思います。いわゆる本当の基礎研究で、まだ何の役に立つか分からないものも、国際連携でいろいろ幅広く裾野を広げるという意味で重要と思います。このAの中でもそういう 研究もたくさんあると思います。また、本文の中でも(2)の国際交流・協力に当たって考慮すべき観点で、ある程度当初の文書から修正いただいていたようですが、基礎と応用は一概に分けられませんが、それでも基本的なスタンスとして基礎研究では、幅広にどんな国際連携でもいいからやった方が良いという観点は入れたほうがよいので、リマインドさせていただきました。
以上です。

【岸本主査】 どうもありがとうございました。
7人の方が手を挙げられていて、残り時間で議論できるのが、時間が限られていて15分ですので、恐縮ですけど2分ぐらいでまとめていただくような、ポイントだけおっしゃっていただいて、あとまたメールでいただくようなこともしたいと思いますので、お願いいたします。それでは、次、須藤委員、お願いします。

【須藤委員】 ありがとうございました。
私は、武田さんのまとめは非常に分かりやすいなと思って見ていたんですけど、ちょっと私の頭の中と武田さんの頭の中が違うのかなと思って、後で時間があれば武田さんに答えていただきたいんですけど、A、B、Cが先進国とか新興国とか途上国とか分かれているんですけども、私の頭の中ではBの新たな価値の創造とか社会課題解決と、これはもう先進国でもどこでも当てはまる言葉なので完全に分けられないかなと。それからCについても、科学技術外交と、最近量子化学の問題とか、あるいはカーボンニュートラルの問題とか、非常に国際間で問題になっている課題があるので、これも必ずしも途上国とかに分けられないかなという気がしたので、ちょっと私の頭と武田さんの頭、恐らく何か違うような気がするんで、時間があればぜひ教えてほしいなと思います。
その中で特にBについては、やっぱり話題が出ましたけど、大学とか企業とかいろいろな組織としてのちゃんとしたビジョンを持って、展望を持って進めないといけないのかなということを感じています。
それからCについても、いろいろなエマージングテクノロジーとかが出てきますので、これはもうこの場でも何度も話題になっている科学技術の戦略、これが重要かなと思っていますし、一番上の研究力強化というのは、私はBとCをやるためには自然と研究力を強化しなきゃいけないと思っていますので、松本先生が言われた基盤技術を忘れているんじゃないかって、若干私も忘れていますけども、BとCをやるためには、応用としても研究力強化をしなきゃいけないというので、必ずしもうまく分かれないんですけども、どこの分野も先進国、途上国というふうに分けるのは難しいかなと思っています。
以上です。

【岸本主査】 ありがとうございます。
それでは、続いて皆さんの御意見を伺うということで進めたいと思います。次は、小川委員、お願いいたします。

【小川委員】 ありがとうございます。手短に申し上げます。
提言、報告書の内容につきましては、私も含め、皆様の御意見をよく取り入れていただいていると評価しております。こうした提言につきものの課題ですけれども、ただ紙にしただけでは多分何も変わらないと思います。これをいかに実行していくかというところがより重要ではないかと思っております。もちろん文部科学省の予算取り含め、施策に反映されるということが第一にあるのだと思いますけれども、あらゆるステークホルダーに関する非常に重要な課題が書かれていると思いますので、ぜひそうした多様なステークホルダーに対する働きかけ、啓蒙、そういった活動にも力を入れていただければと思っております。
以上でございます。

【岸本主査】 ありがとうございます。
続いて、相田委員、狩野委員、礒田委員の順番でお願いしたいと思います。それでは、相田委員、お願いいたします。

【相田委員】 ありがとうございます。
まとめていただいたところの中の良質な研究成果とか、そういうところを具体的に考えると、何を示しているのかなと思ってちょっと発言させていただきたいんですけれども、NISTEPが出しているサイエンスマップ2018の解析の中で、世界で902の参画領域があって、その中で日本は274しか参画してないんだけれども、コンチネント型、非常に大きな領域は日本もほかの国もほとんどそんなに変わらない、でもほかの国と差があるのはすごい小さな、まだ芽が出たばっかりとおぼしきところが日本の参画が少ない。なので、つまり、例えばTop1%とかTop10%の論文の数ばかり増やすことだけを強調してしまうと、結局今世界で活発に進めているところに、たとえば、名前を入れてもらえればと、そういうようになってしまうと思うんですね。そうじゃなくて、やっぱり自分たちが大事だと思うことをやるということが、結果的に10年、20年たったときにしっかりした日本になっているということがあると思うので、そういうようなものがしっかり入り込んだような文書にしないといけないなと思いました。
すみません、以上です。

【岸本主査】 ありがとうございます。
続いて、狩野委員、お願いいたします。

【狩野主査代理】 ありがとうございます。
ほかの方々に先に話をしていただこうと思ったら、自分の言いたいこともみんなカバーしていただいてしまっていますが、特にまず、武田委員からあったリスクの認識が大変大事だなと思ったこと。それから、あと博士号を持つことで、博士号を取得したその専門だけではなく、ほかの分野にも関わる利点というのを考えていく必要があろうかと思って伺っておりました。例えば、科学的思考力、自分のアイディアを完成させていく力、などでしょうか。
それから、とりわけ小川委員のおっしゃったことを後で伺おうと思います。
それから、相田委員のおっしゃったことは全くそのとおりで、それを私としては魅力と称してきました。「ほかと違う」ことによって魅力が出せるという、そういう意味です。
お伺いしたいことは、事務局の皆様が今までの議論を大変簡潔にまとめてくださって、よくぞここまで書いていただいたと思っておりましたけれども、これを次に政策として落とすときにどこから手をつけていけそうか、そしてまたそこに私どもが何かお力になれることがあったら教えていただきたいという、この質問を伺いたいと思いました。お願いします。
お答えは後でも結構です。

【岸本主査】 一当たり御意見をいただいてから、事務局にお伺いしたいと思います。
それでは、続いて礒田委員、お願いいたします。

【礒田委員】 ありがとうございます。
企業における博士人材の登用のことなんですが、最近、私のいる大学では社会人早期修了プログラムというのを結構活発にやっていまして、分野によって業績評価の基準はありますけれども、業績がきちっとある方については最短1年間で博士分が取得できるというような制度も出てきております。修士を出て企業に就職する技術系の方がかなり多い中で、企業で3年、4年、5年といろいろな研究を重ねて、それで論文などを書く機会が出てくるということで、その後に大学で短い期間で博士を取るという制度が出てきていますので、企業のほうもどんどん人を送っていただくような動きがあるといいのかなと思いました。
それから、米国では1990年代で既に、Ph.D.だけじゃなくてMBAも取りましょうというような動きがありました。経営が分かる博士という人材というのは、アメリカでは非常に成功しているかと思いますので、日本でもやはり経営が分かるような博士人材の育成について取り組んでいくのも一つと思います。
以上です。

【岸本主査】 ありがとうございます。
ほかに手を挙げられている方はいらっしゃいますでしょうか。まだ御発言がある方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、事務局のほうから、先ほどの狩野先生の政策にどう生かしていくかの点についてコメントがあればお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

【有賀戦略官】 お答えします。
まだ武田先生は残っていらっしゃるようですので、後でまた御指名いただければと思います。
御質問をいただいたこの後の使い方でございますが、おっしゃるように、まず我々としてはここの頭脳循環と、特に共同研究のところの方向性がはっきり出ますので、それに基づいて予算という形で検討したいと思いますし、それから、施策の展開のときにも我々自身がしっかりと使っていくということを省内でもしたいと思います。
そから、この戦略自体は基本計画に基づいて、ある意味内閣府からも言われているというところがありますので、内閣府のほうにも共有したいと思います。
その上で、小川委員からもありましたけれども、いろいろなステークホルダーたちにも啓蒙活動も必要ということがございました。これで我々も機会をできるだけ持って、皆さんにお知らせしたいと思いますし、もし委員の方々でもそういう機会がありましたら教えていただくか、それか委員の方々、皆様から御発言いただくというところもお願いできればというふうに考えております。
ひとまず以上でございます。

【岸本主査】 ありがとうございます。
それでは、武田委員から手が挙がりましたでしょうか、お願いいたします。

【武田委員】 須藤さんから頭の中が違うんじゃないかというようなお話があって、それで、違うかもしれないし、同じかもしれないんですが、大事なお話かもしれませんので、この場の短い時間ではなくて、須藤さんと1回個別に議論をさせていただければと思います。

【岸本主査】 私も議論したいなと思っています。

【武田委員】 よろしくお願いします。

【岸本主査】 そういう意味で、先ほど事務局とお話ししたのは、このまとめはこのまとめとして、いろいろ御提案いただいたことについて、さらにこの委員会として深掘りしていくところについては、また改めてその準備もしてということですので、武田委員と須藤委員が議論されたら、またこちらにフィードバックしていただくとかで、この委員会でもっといろいろなことを提言したりすることができればいいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
それでは、一当たり御意見をいただいた形になりましたけども、机上資料の中でURAの国際的な活動に関する現状というのが含まれています。これについて、何か事務局のほうから補足はございますか。

【有賀戦略官】 事務局の有賀でございます。
先ほど狩野先生から一言触れていただきましたので、先生方で御覧いただければと思います。何か狩野先生のほうから、補足的にさらにございますでしょうか。

【狩野主査代理】 先ほど触れたとおりでございまして、研究人材という中には、自分で研究を進める方々もおられるけれども、一緒に方向性を考えていく方々もおられようと、そういう方々同士もつながっていっていただけると非常により展開がうまくいくこともあろうかという、そういう内容と理解してお送りしております。
この資料のことでよろしかったですかね。

【岸本主査】 結構です。そういった意味で、このURAのことと、今日は博士人材のことだとか、そういった人材が育っていく中での、国際交流の中で育っていくということが議論になったというふうに思いますけども、その辺りで、今までの観点整理の中にそういったところが必ずしも明示的に書かれていなかったかもしれないので、その他の観点になるかもしれませんけども、この活用というふうになっているんですけども、実はURAだとかが育っていなきゃいけないんですよね。そういったところの仕組みというんでしょうか、そういった人材を育てていく、あるいは博士人材も国際交流をしながら育てていくという観点をもう少し入れられたら入れられるといいかなと私は思いましたので、事務局のほうでも御検討いただけるとありがたいかなと思います。ありがとうございます。
あと、私のほうから、非常に細かいところなんですけども、というか、いろいろと観点を書き出して、先ほど御意見の中では、重要なものもあれば、そうでないものもあるので整理が必要かもしれないなというようなお話もあったわけですけども、今回のところは、それぞれこの中からまた抜き出して、それぞれのところで活用していくということなので、項目の順番のことはあるかもしれませんけども、一応考えられる観点についてはできるだけここに盛り込んでおくということなので、委員の皆様で見ていただいて、こういう観点が抜けているとかということがあれば、ぜひ後でも御指摘いただいて、ここのところをボリューム感として増やしていくのがいいのかなというふうに思うところです。
それで、もう一つ言いたかったことは、この表の上のこの観点を考えるのに、文章的にはSTIに携わる者がこういうのを踏まえなさいと言っているんですけども、この観点を踏まえるのは実際にSTIをする人だけじゃなくて、関係するステークホルダー、後ろのほうにはそう書いてあるんですけども、全ての人にとってそういう観点があって、この観点が全部を一つ一つのプロジェクトで網羅するんじゃなくて、これらを適切に踏まえながらいろいろなことを実施していく、全体でいろいろなプロジェクトを見るとこれらの観点が全てカバーしている、そういうための観点整理だというのがもう少し前に出ていると、この報告書の位置づけが明確になるのかなと思いましたので、そのようなことを事務局で工夫していただけると、私のほうからはありがたいなと思ったところです。
限られた時間の中でしたけれども皆様方から重要な御指摘をいただきまして、ありがとうございました。それでは、そろそろ予定の時刻になりますので、本日の御議論はこの程度とさせていただきたいと思います。
それで、本日いただきました御意見も踏まえてこの報告(案)をさらに修正いたしまして、本委員会の6月でのまとめという形とさせていただければと思います。事務局のほうで修正案を作成してくださって、それをまた皆さんに見ていただくということがありますので、そこで見ていただいてコメントを頂戴したいと思いますが、もしよろしければこの案のまとめについて、最終的には主査である私にお任せいただければと思いますけども、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【岸本主査】 ありがとうございます。
それで、先ほどもお話ししましたが、今回の中で御発言いただいたこともありますけども、またこれを御覧になって気がつかれたところがありましたら、ちょっと時間的に厳しいかもしれませんけれども今週中に事務局のほうに、非常に短い文章でも結構ですので、「こんな観点が抜けている」とか御指摘いただければと思います。よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。
それでは、これにて議事を終了したいと思います。
最後に事務局より、何かございましたらよろしくお願いいたします。

【生方補佐】 岸本先生、ありがとうございました。
科学技術の国際展開の戦略的推進方策に関する報告(案)につきましては、今回委員の皆様からいただいた御議論を踏まえ、修正について事務局にて検討させていただきます。
また、主査からもお話がありましたとおり、修正した報告(案)につきましては、改めて委員の皆様に御確認いただいた上で、主査一任ということで主査に御確認をいただき、進めていきたいと思います。
また、次回の委員会につきましては、現時点で特段定まったものはございませんけれども、適切なタイミングで主査とも相談いたしまして、また改めて御相談させていただければと思います。
以上でございます。

【岸本主査】 ありがとうございました。
それでは、本日の委員会はこれで終了したいと思います。お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。どうもありがとうございました。

── 了 ──
 

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