研究開発基盤部会(第9回)議事録

1.日時

令和3年2月4日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン(Cisco Webex)会議にて開催

3.議題

  1. 研究基盤EXPO2021の開催結果について
  2. 今後の課題・検討事項について
  3. その他

4.出席者

委員

岸本部会長、網塚委員、飯島委員、市川委員、江端委員、江龍委員、金澤委員、木川委員、菊池委員、佐藤委員、杉沢委員、高橋委員、田沼委員、中村委員、西島委員、野村委員、波多野委員、原田委員、横山委員

文部科学省

科学技術・学術政策局 研究開発基盤課長 仙波秀志、課長補佐 下須賀雅壽

5.議事録

【岸本部会長】 ただいまより、第9回科学技術・学術審議会 研究開発基盤部会を開催いたします。
前回に引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、オンライン会議で開催することとしております。
本日の議題は、議事次第にありますように、(1)研究基盤EXPO2021の開催結果について、(2)今後の課題・検討事項について、となっております。
また、今回の研究開発基盤部会が、今期最後の開催となります。後半、2番目の議題になりますけれども、委員の皆様から、この2年間を振り返って御発言をいただく時間を設けたいと思っております。
それでは、議題に入ります。まず議題(1)研究基盤EXPO2021の開催結果についてです。
先月22日から29日の1週間にかけて、このイベントが開催されました。本イベントについて御報告いただければと思います。実行委員長であられました江端委員よりお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
【江端委員】 東京工業大学の江端です。
本部会で度々報告をさせていただいて、先生方からも御助言をいただきました、研究基盤EXPO2021について、本日御報告させていただきたいと思います。
表紙に書かれておりますとおり、名前には重複もありますが、文部科学省の方を含め、多くの大学の関係者が研究基盤EXPO2021の実行委員として、開催準備・運営に尽力していただきました。さらに、研究基盤イノベーション分科会の幹事の皆様にも、いろいろな形で協力していただきました。
4ページのパンフレットは、以前の部会でも御紹介したものになります。先ほど岸本先生から御紹介いただきましたとおり、2021年1月22日から29日という1週間丸々、研究基盤に関わるイベントを開催してまいりました。連日、文部科学省の皆様にも様々な形で御参加いただき、そして、多くの方々に御講演いただいたということになります。
次のページは今回の参加者の内訳になります。速報値ということで、正確には報告書として後日公表したいと思いますが、おおよそ延べ1,500名程度の方々に御参加いただき、40%ぐらいが技術職員の皆様です。それ以外は教員、事務職員、URA、そしてそのほか民間企業を含め、多くのステークホルダーの方々に御参加いただいたということになります。
御講演・御挨拶ということで、文部科学省より科学技術・学術政策局の板倉局長はじめ、多くの方々に御講演、御挨拶をいただきまして、更に大学の執行部からも、各大学の理事・副学長の方々に御参加いただきました。そして、本部会からは岸本部会長に御講演いただき、本部会での議論を中心に御紹介いただきました。
「参加者の声より」ということで、今回の開催にあたって終了時から非常に多くの反響がありまして、その一部になりますが、本部会で御紹介させていただきたいと思います。
1点目ですが、やはり本部会でも多くの指摘があったとおり、現場の声というものが非常に多く届いてきた一方で、それを大学の執行部にしっかりと伝えるべきではないかということに関連した声になります。今回のイベントの中で、大学の理事の方々に本音でしっかりと方針を示していただいたということに関しては、大変感銘を受けたと、更にこういった議論の場を継続して続けてほしいといった声がありました。
さらに、今回は技術職員の方々に多く御参加いただいたわけですが、やはりこういった諸問題につきましては、以前より技術職員の皆様の中にも問題意識があり、何とかしようとしてきたところだったが、今回のイベントに参加して振り返ってみると、技術職員自身の問題もあったのではないかと、新たに気がついたということで、更に前向きに頑張っていきたいというようなコメントもいただきました。
今回、若手の文科省の職員と技術職員の方々が対話をするというイベントも行いまして、今までそういった若手の方々が集まる機会というのを持てなかったわけですが、このイベントによって新たなネットワークができました。それによって若手からもしっかりと声が上げられるような場を形成できたというのは、大変良かったというような声を頂いております。
1月28日午前中には、コアファシリティ構築支援プログラムを中心としたシンポジウムを開催しましたが、その際のパネルディスカッションからは、大学間の横の連携は非常に重要であり、このコアファシリティ事業採択校がしっかりとアライアンスを組んで、事業を進めていく必要があるのではないかといったコメントがありました。さらに、このコアファシリティ事業が大変重要な事業であるということに、他大学の取組を聞いて、改めてその責任を痛感した。そして、第2期校とともにこれらの事業を積極的に進めていき、例えば技術職員の方々のキャリアパス、スキルの標準化等を行っていきたいというようなコメントを頂いております。
また、閉会時には板倉局長から、コアファシリティ事業の採択機関には、率先して、大学の経営戦略と一体的な組織全体としての研究基盤戦略の立案・実施に取り組み、パイオニアとして全国の大学を引っ張っていくことを期待していますと御挨拶いただきました。
ということで、この一連のシンポジウムの中で、コアファシリティ構築支援事業採択校の皆様の役割、そして今後新たに採択される事業関係者にとって、同じ方向を向いてと言ったら言い過ぎなのかもしれないですが、そういった意味で議論をしながら、より良く、この日本の研究基盤を進化させていこうということで、ある程度コンセンサスができたのかなというふうに思っております。
最後に、1月29日のグランドフィナーレで、仙波課長から「今回の流れの中で、「研究基盤協議会」というものが設立されたことは大変意義深い。文部科学省としても、「研究基盤協議会」と密に連携し、研究の最前線で取り組まれている皆様とともに、これからの研究基盤を考えていきます。」という御挨拶をいただきました。今回の研究基盤EXPO全体を通じて、多くの方々に多様な視点での議論をお届けできたのではないかなと考えております。
次に、研究基盤協議会ですが、設立趣旨としましては、「研究基盤イノベーション分科会(IRIS)が主催する「文部科学省事業採択校の有志」を中心にして、様々なステークホルダーが議論する新たな協議の場の形成」ということで、設立させていただきました。IRIS主査である私が代表を兼ねることとなり、現時点において更に9名の幹事の方を中心に構成しております。事務局は研究基盤イノベーション分科会(IRIS)です。
サポーターと書いてありますが、これはそれこそイベントの中で、コアファシリティ構築支援事業採択校の理事・副学長の皆様からアライアンスを組んでやっていこうということと、有志として研究基盤を盛り上げていくと御協力いただけるということで、サポートしていただくことになります。先ほどの仙波課長の御挨拶も含めて、文科省の皆様にも御協力いただきながら、日本全体での研究基盤に関わる諸問題を解決すべく、対話の場を継続していきたいと考えております。
今後、研究基盤協議会では、今回の研究基盤EXPOのような形で、総合的なシンポジウムを年に1回は必ず行っていくということと、この部会でも度々議論になります、例えば、技術職員の方々のエビデンス、更に研究基盤に関わる分析結果、KPI等々、そういった分析も行っていくような場になるのではないかと考えています。それを踏まえて、戦略的経営に資する研究基盤のあり方を検討する部会、さらに研究基盤共用システム(研究基盤IRを含む)という形で、その在り方を検討する部会、研究基盤に関わる人材育成、特に技術職員等のあり方を検討する部会というものを立ち上げて、それぞれ議論を深めていきたいと考えております。
さらに、イベントの中でありました研究基盤に関わる若手の方々のネットワークも、こちらのほうで更に活発に議論を進めていきたいということで、実はもう既に、若手の人たちはかなり動きが速くて、次、何する?という話をされておりまして、大変私としても頼もしく思っておりますし、ほかの部会とともに、ぜひ有機的な連携を持って議論を進めていくような形にしたいと考えています。
これらの議論のノウハウや資料等はIRISのサイトにアーカイブしていき、これまでの科学技術政策の中でも研究基盤に関わる政策の歴史というものを、一覧で見られるような形にしていきたいと考えております。さらに、これらの部会、若手のネットワークを通じて提言をまとめて、それを関係各所に提案をしていきたいと考えております。喫緊の課題という意味では、文部科学省で2021年度にまとめられる予定のガイドライン/ガイドブックの作成をサポートしていく予定です。これは新共用事業連絡協議会で、これまで議論されて件ですが、それを引き継いで更に具体的なものにしていきたいと考えているところです。
以降、参考資料として各イベントの最終版のチラシを7ページから10ページまでつけております。チラシは随時更新されておりましたので、以前配付させていただいた資料から、中身も変わっております。ぜひ、御興味がありましたら振返りも含めて改めて御覧いただければと思います。
11ページに関しましては、研究基盤協議会プレイベントということで、3つの新たな企画を開催しましたのでその御紹介です。
1つ目は若手のネットワーキング、先ほどから御説明させていただいたものです。
2つ目はステークホルダーでの徹底対話を中心に、今回はこれからの研究基盤運営のポイントということで、遠隔操作、自動化等の実態について、金沢大学の事例を用いて御説明があり、研究基盤の共用化のKPIについてどういったものが考えられるのかといった議論もありました。
3つ目は新たなメディア連携ということで、今回はScienceTalksTVというYouTube番組と連携をしまして、ライブ形式で対話をさせていただきました。日本学術会議の若手アカデミーの方々お2人に司会をしていただいて、その方々と、私と江龍先生、北海道大学の技術職員の岡さん、そして民間企業の方を含めて、これまでと違った形での議論を行うことができました。
研究基盤協議会プレイベントは、これまで我々がやってきたイベントとはかなり違った形で行いましたので、この最終日がかなり面白かったという御感想もいただいています。プレイベントの登壇者は、これまで登場のなかった多様な方々にも登壇いただいておりまして、鳥取大学をはじめ各大学、海洋研究開発機構の方も御登壇いただいています。そして、文部科学省からは、科学技術系の部署だけではなく、スポーツ庁の方、大臣官房政策課の方、様々な若手の皆さんにも御参加いただいて、こういった科学技術政策の中でも研究機関の重要性というものを、多くの方に周知できたのではないかと考えております。
最後のページは研究基盤協議会の現時点でのメンバーの御紹介となりますが、これはあくまでもまだスタートをした段階ですので、更に有志を集めて、今後も教員、そして技術職員の方々、事務職員やURAの方々含め、多くの方々でこの協議会を推進したいと考えているところです。
最後になりますが、この研究開発基盤部会の委員の先生方にも、今回の研究基盤EXPOの中で多数、参加いただきました。改めて御礼申し上げます。そして、研究基盤EXPOに御参加いただいた各組織の皆様、新共用事業連絡協議会、北海道大学、国立大学法人機器・分析センター協議会、大学技術職員組織研究会、文部科学省の皆様、研究開発基盤課の皆様、設備サポートセンター整備事業の採択校の皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。
私から以上になります。どうもありがとうございました。
【岸本部会長】 御説明ありがとうございました。
事務局から補足がありましたら、お願いいたします。
【下須賀課長補佐】 ありがとうございます。江端委員から御説明いただいたので、特段ないですけれども、一言だけ申し上げるとすれば、研究基盤EXPOについては、江端委員をはじめ、先ほど当部会の先生方にも御出席いただいてというようなお話をされていましたけれども、本当に多くの方に参加いただき、そのおかげですごく盛況な形で、言い方が難しいのですが、私自身すごく楽しませていただきました。文部科学省の立場として申し上げれば、これからこの研究基盤協議会という形で主導していく形になりますので、12ページにメッセージが書いてありますけれども、経営者の想いを、政策立案現場の想いを、研究現場に届ける、そういう対話の場にしていければと思っていま。僕らの想いであるとか、研究基盤を支える皆さん自身がどういうことを考えているのかということを聞きながら、政策の場に、そしてこの研究開発基盤部会の場につなげていければと思っています。
私からは以上です。
【岸本部会長】 ありがとうございました。私も一部ですけれども出席させていただきまして、多くの皆様がこういう形で集っているということは、非常に有意義なことだなと思いました。それと、研究基盤協議会というのがこういう形でスタートできたということは、江端委員をはじめ皆さんの御尽力のおかげだと思っております。これからの良い活動に結びついていけると、本当に良いのではないかなと思います。
それで、委員の皆様から、このイベントに参加された方もいらっしゃるかと思いますので、感想でも結構ですけれども、何か御発言があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
網塚委員、お願いいたします。
【網塚委員】 北海道大学の網塚です。江端委員、研究基盤協議会の幹事の皆様、どうもありがとうございました。それから北海道大学オープンファシリティシンポジウムに、下須賀さんも、江端委員も参加していただいて、ありがとうございました。
やはり大学の理事、執行部のレベルで意見交換を行うことができたというのは、非常に注目度が違ったのではないかと思います。今までも理事には、最初や最後の御挨拶をお願いすることは多かったわけですけれども、講演するとか、パネルディスカッションにも出るとなりますと、やはり教員も、何を話すのだろうと注目しますし、技術職員や事務職員の方もまた非常に気にしていたところだと思います。北大の場合ですと、理事が参加させていただきましたけれども、最近、御承知のように執行部が刷新されましたので、理事にプロジェクトのことを説明する機会を何度も持つことができました。理事も発表するとなるとより一層真剣になりますので、執行部とのコミュニケーションを深めることになったのは非常に有り難いいことでした。
あと、イベントを1週間に固めたということで、宣伝効果が非常に大きかったのではないかと思います。北大は初日に前座を務めさせていただいたわけですけれども、恐らくほかのイベントから研究基盤EXPOの文科省のページに行き、そこから北大のほうに参加されたという方もいらっしゃったと思いますし、逆もしかりで、そういった相互のリンクを張れたということは、非常に良かったのではないかと思います。
御世話になり、本当にありがとうございました。
【岸本部会長】 ありがとうございます。
ほかの委員の方から御発言はございますでしょうか。佐藤委員、どうぞ。
【佐藤委員】 大阪大学の佐藤です。江端委員、関係者を含めて、本当に御苦労様でした。私は、いろいろ文科省から御仕事があったので、僅かしか出られなかったのですけれども、一部の話を聞いていても大変有意義だったなと思いました。関係した皆さん、本当に御苦労様でした。
それで、江端委員に質問したいのですけれども、こういう研究基盤協議会というのをつくって、現場の声から上層部に至るまでいろいろ意見を、あるいは思いを集約して、新たな研究基盤環境を構築していくというのは非常に良いなと思ったのですけれども、これを進めていく上で、江端委員から見て、大きな課題というか、モチベーションの強い人と、ほとんどモチベーションがないような人たちと、議論の中にもそういうことが出ていたと思いますけれども、そういうことを含めて、全体的なものにしていくということではなかなか難しそうだなという思いも感じたものですから、江端委員にとっての課題というものは何かなというのを聞きたいのですけれども、いかがでしょうか。
【江端委員】 佐藤委員、ありがとうございます。本当におっしゃるとおり、今お話しいただいた課題がまさに1丁目1番地だと考えております。モチベーションの差や格差といったキーワードが、シンポジウムでも多く出てきましたが、それをどのようになくしていくのか、あるいは、格差はある中でも違った形でどのように解決していくのかというところについては、ぜひこの協議会の中で議論を進めていきたいと考えております。
私の一番の問題意識として、各ステークホルダーの方々の情報量の違いというのが、一番大きな課題だと思っています。例えば、技術職員の方々、事務職員の方々、教員の方々、それぞれ持っている情報量が違います。こういったイベントを通じて、本部会でどういった議論がなされているのか、文部科学省の方々がどういった考えを持って政策をつくっているのか、そういったことも含めて、まとめて共有できるというのが非常に大きかったと思っています。
さらに、このEXPOという形で1週間丸々続けてきたというのは、一部同じような話もあったかもしれないですが、それを何度も何度も繰返し聞くことによって、多くの人たちの情報量のレベルが合ってきたのではないかなと思いました。そういった意味で、今回の参加者の方々の反響がかなり大きかったというのが、あったのではないかと思います。
最後にもう一つ付け加えるとすると、大学の経営陣の皆さんです。大学の経営陣の皆さんとこういった同じ情報をしっかりと共有した上で、経営者が何を考えて、各職員にいろいろなオーダーを出しているのか、そういったことも含めて、この場で伝えられたのではないかなと思います。したがって、経営陣の人たちの声、その認識というのが非常に重要なのだなというのは、逆にこのイベントを通じて改めて思ったところですので、今後、まず最初にクリアすべき課題という意味では、経営陣の人たちにどれだけここにコミットしていただいて、発信していただくか、更にコアファシリティの第2期採択校の方々も含めて、いろいろな形での議論を通じて多くの情報を発信していただきたい。そういったことで、まず最初の課題はクリアできるのではないかなと考えています。
以上です。
【佐藤委員】 なるほど。一言だけお願いは、最終的には皆さんやはり良い形の出口を多分求めるでしょうから、科学的に、あるいはデジタルをうまく駆使して、何が一番必要で、何を進めていけば良いかということを分析・解析しながら、ぜひ進めてほしいと思います。それは希望であり、お願いです。
【江端委員】 ありがとうございます。本部会でも佐藤委員からは常々、世界の最先端を見るべしというコメントをいただいておりまして、この研究基盤の業界そのものが、そこを目指すにはまだまだ足りない部分がたくさんあるのかなと思っています。そういった意味で、こういった協議会の活動を通じて、世界の研究インフラの状況であったり、そういったものも分析・調査をするということも含めて、やっていけたらなと考えております。
【佐藤委員】 そうですね。
【江端委員】 はい。また御助言等いただければと思います。ありがとうございます。
【岸本部会長】 ありがとうございました。
ほかの委員の方々からはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
議題2のところで皆様から御意見を伺いますので、そのときにでも、このことについて御発言がありましたらお願いいたします。
それでは、議題1についてはこれで終了させていただきたいと思います。江端委員、本当にどうもありがとうございました。
それでは議題2、今後の課題・検討事項に進みたいと思います。
事務局より御説明をお願いいたします。
【下須賀課長補佐】 配布資料に基づきまして説明させていただきます。
まず、14ページは第10期研究開発基盤部会の活動状況(全体まとめ)として、左側に第6期科学技術基本計画に向けた重要課題、右側に、実際、進展した取組というのをまとめています。
令和元年6月に、第6期科学技術基本計画に向けた重要課題ということで、目指すべき方向性と特に取り組むべき事項というのを、中間取りまとめという形でまとめていただきました。目指すべき方向性としては、全ての研究者に開かれた研究設備・機器等により、より自由に研究に打ち込める環境を実現していくこと、研究基盤をハード(機器)とソフト(人材・システム)と捉え、組織・分野で最適な基盤を構築していくこと、また長期的ビジョンに立ち、我が国の研究基盤の全体像を俯瞰していくことという話があった上で、具体的にどういうこと行っていくのかということで、特に取り組むべき事項として、ここに書いてあるもの4つが掲げられています。
1つが、大学・研究機関の「基幹的機能」として研究基盤を整備・共用していく。ラボ単位でやっていたことを、更に組織のところに広げていくというのが一つ。1つ目の丸に書いてあるように、トップマネジメントにより、研究機関全体として戦略的に機器の整備・共用を推進していく。緑の1つ目になりますけれども、これは国内有数の先端的な研究設備を中長期的な計画に基づき整備・更新していく。青の1つ目が、それぞれの研究室で持っているような研究設備を指すとすれば、緑のところは国内有数の、国内に幾つかしかないようなものについて、中長期的な計画に基づいて整備・更新していくという話があります。国全体の研究設備を俯瞰し、中長期的な視点から全体最適化した整備をしていくという話です。
2つ目は、設備・人材・システム等全体の戦略的配置、機関連携による地域協調的な整備の話です。
3つ目はグレーのところになりますけれども、研究基盤の運営の要である技術職員の活躍を推進していく。専門性を生かしつつチームとして機能し、キャリアアップを実現できるよう、組織化の話が書いてあります。
また4つ目はオレンジのところになりますけれども、世界をリードする戦える新技術を開発していく。研究開発の初期段階から製品化段階までバランスよく支援していくというものです。
これらの話が、中間まとめの全体の中で掲げられているところです。
進展した取組は、右側のところになりますけれども、まず一つ前提として大きな話であったのは、現場の声が政府方針に反映されるというのが、大きなところだったと思っています。議題1にも関係しますけれども、「研究基盤」全体の重要性の認識の共有ということです。
左側の令和元年6月から、実際政府の方針へという流れの中では、令和2年1月に、研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ、これは参考資料の中に入れていますけれども、こういうものの中で、研究基盤がいかに重要なものであるかという話がうたわれるようになっています。この前提としては、新共用事業連絡協議会や、技術職員の有志の会から、こういうことが必要なのではないかという話があって、先ほど左側で申し上げた令和元年6月の中間取りまとめにつながって、それが政府方針のほうに反映されてきた。この後少し御紹介しますけれども、科学技術・イノベーション基本計画(令和3年度~)の中でも、大きくその基盤みたいなところがうたわれる形になっています。
その下にあるように、学会としての研究イノベーション分科会(令和元年12月~)の立上げであるとか、研究基盤協議会、研究基盤EXPOの開催(令和3年1月)のようなところが、まず前提として一つ大きな流れだったと思っています。
2つ目の段落は左側の青色のところに対応する部分になりますけれども、「ラボから組織へ」ということで、「新たな共用システム導入支援プログラム」というのを、平成28年から行っていたところですけれども、当部会の話を受けて、「コアファシリティ構築支援プログラム」の創設・開始(令和2年度~)をしています。これはラボ単位や学科単位でやっていたものから、組織全体のものに変えていこうという流れを受けたプログラムになっていて、組織全体でどうやってコアファシリティを運営していくのか、整備していくのかというところをやっていこうと支援を開始したという形になります。
あと、令和元年のところでは、研究機器相互利用ネットワーク導入実証プログラム(SHARE)という新しいプログラムを立ち上げていて、このプログラムの成果があったからこそ、今回コロナの話がありましたけれども、遠隔化・自動化のための環境整備ということで、今年度の第二次補正予算、第三次補正予算につながったというのが、一つの流れとしてあります。さらに、研究設備・機器の共用化のための「ガイドライン/ガイドブック」の作成というのも開始しています。
左側の緑のところに対応しますのが、「共用プラットフォーム形成支援プログラム」というものをやってきたところですけれども、前回、前々回の当部会において議論していただいたところではありますが、「先端研究設備プラットフォームプログラム」という新しいプログラムを来年度から開始するために、具体的な制度設計をこの場で話し合っていただいたというのもあります。これは再掲になりますけれども、遠隔化・自動化のための環境整備もやっているところになります。
左側のグレーのところについては、文部科学大臣表彰「研究支援賞」の創設というのを新しくやっています。今年度については今まさに対応中ではありますけれども、これまで研究支援者という方にスポットライトが必ずしも当たっていなかった中で、こういう大臣表彰を新しく設けて、技術職員であるとか研究支援者がいかに大事であるかということを、これまで推進してきているというのが、今の状況になっています。あと、コアファシリティ構築支援プログラムの中でも、実際に技術職員がどういう形であればキャリアアップが図られていくのかといったところを実施機関において進めていただいています。
最後の左側のオレンジのところについては、「JST未来社会創造事業(共通基盤領域)」の中での実施であるとか、「共用プラットフォーム形成支援プログラム」、これからの話になりますけれども、「先端研究設備プラットフォームプログラム」の制度設計の中で対応していくことだと思っています。
あと、一番下に書いてありますけれども、このほかのところで国際的な活動、OECD/GSFの話もありましたけれども、グローバルサイエンスフォーラムですけれども、「国際研究インフラの運用と利用の最適化」ということで、実際この場にいらっしゃる方々にも関わっていただいて、国際的な活動の中に話を持ち込んでいって提言としてまとめたりであるとか、JST・CRDSになりますけれども、「環境・エネルギー分野における非連続的なイノベーションを支える工学研究基盤」(令和2年7月公開)といったところを、実際この中に取り込んでいって検討の場に生かしてきたというのが、一つ大きな流れだったかなと思っています。
次のページの科学技術・イノベーション基本計画について(答申素案)(概要)は前回も少し説明したところになりますので、簡単に御説明するだけにとどめますが、第6期の科学技術・イノベーション基本計画が今動いていまして、現在パブリックコメント、意見公募ということで、こういう形で世の中に出して、どういうことを考えるかというのを、今出している形になっています。
具体的な研究基盤関係の記載は次の16ページになっていまして、「2.知のフロンティアを開拓し、価値創造の源泉となる研究力の強化」という項目の中で、「(b)あるべき姿とその実現に向けた方向性」「(c)具体的な取組」のところで、今まさに議論していただいたような話が書いてあります。研究DXを支えるインフラ整備等と高付加価値な研究の加速ということで、共用の話であるとか、組織的なマネジメントの話といったところが、この中で大きくうたわれている形になっています。次のページに行って、「大学等において若手研究者が活躍できる環境の整備」というところの中で、人材ということが大きく掲げられる形になっています。
18ページ目については、研究基盤政策(事業)の変遷を少しまとめています。中間取りまとめが令和元年6月にあって、進展した取組としては、先ほど14ページで説明した形になりますけれども、このページではもう少し簡単な形でまとめています。
水色のところですが、2016年から新たな共用システムの導入ということで取組を進めてきて、2020年からコアファシリティ構築ということで、新たな取組を、機関全体の共用体制構築ということで変わってきたという流れが、一つあります。
もう一つは緑色のところで、2016年から国内有数施設・設備のプラットフォーム化ということでやっていたところでありますが、来年度から、当部会の場でまさに制度設計を少し議論していただいて、来年度から遠隔化・自動化、ワンストップサービスを含めたような先端設備プラットフォームというのをやっていこうと考えています。
2019年から、ネットワーク構築ということでSHAREプログラムがあって、こういう遠隔化・自動化のところの話を前提にして、補正予算の中で、赤いところになりますけれども、研究施設・設備等のリモート化・スマート化、共用を前提とした遠隔化・自動化みたいなところが、設備整備として今進められている形になっています。
次ページに移りまして、こうした状況を受けて、事務局として考える次期部会における課題・検討事項ですが、一番上に書いてありますように、今期の研究開発基盤部会の政策の好循環、実際、研究現場の声からこういう部会の場を通じて、政府方針につながっていくというところを更に発展させて、その研究基盤を担う大学・研究機関・民間の現場とともに、この下に書いてあるような取組を進めることが必要ではないかということを書いてあります。実際、反映されてきたということがある中で、これを具体化していく上で本当に双方向になると思いますけれども、研究現場から、もしくは経営層からということかもしれませんが、あとは我々のほうで、実際に取組をやっていくということだと思っています。
1つ目が水色のところ、大学・研究機関の「基幹的機能」として研究基盤を整備・共用(「ラボから組織へ」)という話、コアファシリティの話であるとか、高等教育関連施策等とも連携した、各大学等の組織内外への共用方針・体制の確立、基盤整備の取組の評価。ここの3つ目に書いてあるのは、「ガイドライン/ガイドブック」を策定し、全国の大学等の共用を促進していくというのが一つ。
2つ目は緑色のところになりますけれども、国内有数のインフラに対しては、引き続きの部分もありますけれども、先端研究設備プラットフォームプログラムにおいて、デジタル・トランスフォーメーションの計画的な推進とともに、以下のようなことを考えていったらどうか。これは前回の議論を3つにまとめたものですけれども、施設・設備のさらなる連携の更なる推進(課題に対するコンサルティング機能の確立、設備・人材・システム等全体の戦略的配置、国内有数の研究施設・設備としてのロードマップ等)、遠隔地からの利用・実験の自動化に係るノウハウデータの共有(相互遠隔利用システムの構築等)、専門スタッフの配置・育成の強化(設備・人材・システム等全体の戦略的配置等)。
グレーのところは、研究基盤の要である技術職員の活躍を促進ということで、コアファシリティの中でのキャリアパス構築に関するモデル構築と横展開、文部科学大臣表彰について引き続きその周知を図るという話と、どういうふうにスポットライトを当てていくかというところで、更なる改善を図っていくこと、また組織や分野を超えた高度な技術職員の育成・確保と、その処遇の改善に関する各機関の取組があるのではないかと考えています。
4つ目のオレンジのところは、世界をリードする戦える新技術の開発ということで、先端研究設備プラットフォームプログラムとの連携、JST未来社会創造事業(共通基盤領域)の実施により取組を推進していく。
考え方としては、水色、緑色、グレー、オレンジのところで、それぞれ今話し合っていただいているようなことを更に具体化する、そのために実際、研究現場であるとか経営層であるとか、あと我々施策の立場として、対話を促進しながら具体化を図っていくというのが、一つ大きなところなのではないかと、事務局としては思っています。
すみません。ちょっと長くなりましたけれども、事務局の説明は以上です。
【岸本部会長】 どうもありがとうございました。今期の部会において取組が進んだことを踏まえまして、特に19ページのところでしょうか、次期部会における課題・検討事項についてまとめていただきました。
あと残された時間は、委員の皆様から、例えばこの19ページであるとか、その前のページを御参考にしていただきまして、今期の部会を振り返って御発言いただきたいと思います。課題の指摘でも結構ですし、これからのことについてお考えを頂ければと思います。
それでは、五十音順になりますけれども、まず網塚委員からお願いできますでしょうか。
【網塚委員】 今期の部会を振り返ってということで、部会の委員と言いながら皆さんの活発な御議論から勉強させていただくばかりで、大変有り難く思っております。
それで新共用、コアファシリティ事業、それから補正予算の事業等、北海道大学でも、この部会で挙げられたそれぞれの課題にどう取り組んでいくかということを真剣に考えて、また新たな取組を進めることにつながっておりますけれども、そういう現場の経験とか試行錯誤の状況を、少しでもフィードバックさせていただければと思って、努めてまいりました。その意味で、特に補正予算事業の際に行った学内調査の結果から思うところは、やはりこれからはリモート化、スマート化を図って、先ほど出ていましたけれどオープンサイエンス環境を整えていくということは、コロナ禍に関わらず必要なのではないかと思います。そうであるということを、コロナ禍から学んだと言ったほうが良いのかもしれません。
それで、全ての研究がそういうふうにできるとは思いませんけれども、研究手法としてリモート化、スマート化できるものはもう徹底的に進めて、効率化したほうが良いのではないかなと思っています。そのときに大事なのは、もう物理的な距離を気にしなくてよくなりますから、各大学での環境整備と並行して、大学をどんどん超えて国内、国外とも連携して、効率化していくということだと思います。
以前、何回目かの部会でお話ししましたけれども、そのときに学術分野で組織を超えて連携して、体制を整備していくというのは非常に有益で、効果的ではないかなと思います。私は物性物理学の磁性とか超伝導とかの研究分野に属していますけれども、大学の中ですとせいぜい数十人ぐらいの人数が同業者ですけれども、日本国内に広げればもう数百人規模になりますので、そこで効率化するということの効果が一体どのぐらいになるのか、幾つかの汎用装置を効率化したとき、どのぐらいの生産性が上がるのかというのを、一回きちんと試算してみたいなと思っているところです。
あともう一つ、そういうことを突き詰めていくと結局、受託分析とか受託実験、受託測定の需要が大きくなって、そちらのほうに収束していくのではないかと考えられます。
そういうときに、現場の研究者の負担を増やさないようにするためには、そのようなスキルを持った技術スタッフの育成を行い、また、効果的な人員配置をしていくことが大事ではないのかと思います。それも各大学でやるだけではなくて、コミュニティーで財源をうまく確保して、そういう人材を適切な大学とか研究組織に配置していくというふうに、コミュニティーでも人材を育てて共有するというような意識改革とか仕組みづくりが必要になってくるのではないかなというふうに考えております。
私からは以上です。ありがとうございました。
【岸本部会長】 どうもありがとうございました。
それでは続きまして飯島委員、お願いいたします。
【飯島委員】 私からは感想を申し上げたいのですけれども、19ページに示していただいている4つの大きな課題、これを大きくアピールできたのは、非常に大きな成果だと感じております。今まで全てがラボ単位で行われていたのが組織へ、それからネットワークへと広がる、そういう視点を新たに提案できているということと、重要であるけれども今まであまり光の当たらなかった設備の更新とか長期的なプランとか、あるいは技術職員のキャリアパスの話。非常に地味で、重要であるにもかかわらず、なかなか認めていただけなかったのが、今回のシンポジウムも含めて大きくアピールできて、それが政策のほうにも影響を与えたということであれば、非常に大きな成果だと理解しております。
世界をリードする技術というのは、もともと皆さんが目指しているところなので、ただ、これを導くためにやはり上の3つの視点、観点が大きく影響すると信じております。
ただ、これは課題として非常に明らかになり、アピールもできたけれども、仕組みとして好循環でずっと継続するというためには、更なる努力が必要なのかなと思っております。次期部会で頑張っていただきたいと思います。
以上です。
【岸本部会長】 ありがとうございました。
それでは続いて市川委員、お願いできますでしょうか。
【市川委員】 よろしくお願いします。私も網塚委員と同じで、この部会に参加しまして皆様からいろいろなことを勉強させていただいたということが、大きな収穫になっております。
まず、このラボから組織へというところですけれども、大学の中のラボでやっていたことをこういった形に広めることで、普遍的な流れになる、それは大きな成果だと感じております。その中でちょっとお願いというか、より良いものにするために、やはり江端委員が研究基盤EXPOなどでも、経営陣の方のこの共用化に関しての取組で理解を得ることが、非常に肝要だとおっしゃっていましたが、共用化をすることによってどのようなメリットがあるのかというのを、やはりもう少し見える化というか、これを評価する仕組みというものも必要ではないかと思いました。
あと、評価という意味でも、技術職員の方のキャリアパスなどに関して、特に大臣賞を創設されたことは非常に大きな前進だと思いまして、必ずそこには大きなストーリーが、何か人の心を動かすものがあると思いますので、ぜひマスコミの一人としても、この賞の受賞に関しては取材させていただきたいと思いますし、そのときは多分、こういったテーマは、恐らくエディターの方も協力していると思いますけれども、ネットメディアは非常に興味があることだと思いますので、そういった方々にも声をかけるなどして、広くアピールというのでしょうか、周知していただければ、広がる一助になるかと思います。
それで、大きな流れ、全体としての感想を申し上げますと、今後デジタル化ということで、行政のほうのデジタル化が始まって、次は教育の分野、医療のデジタル化が進むということで、教育の部分でつながるデジタルということが更に進むと思いますので、この共用化に関しましても、デジタル化することで、デジタル化とコロナ禍のこういった共用施設の利用に関して、どのようなメリットがあって、研究者の研究を促進していく、幅広い層でそれを活用できるということを、民間も含めて活用できるように、ぜひ取組を広げていただければと思います。
「富岳」は、たしかコロナの研究で大きな成果を上げたと思いますので、こういった国民の皆さんも、その大きな投資をして、投資というか税金を使って購入したものが、どのような成果を上げるのか、非常に興味を持っていますでしょうし、その成果については関心があって、誇りに思うことが多いと思いますので、ぜひこれを評価する人も併せてつくっていただければ、より共感を得られて、予算獲得などにも良いのではないかと思います。
以上、その辺りをお願いします。
【岸本部会長】 どうもありがとうございました。
それでは続きまして江端委員、お願いできますか。
【江端委員】 ありがとうございます。私からは最初の議題のところでいろいろお話しさせていただきましたので、簡潔にお話ししたいと思います。
まず、今期の本部会の成果が、まさに19ページに全て集約されているのかなと思っています。ただ、最初の成果として私が最も重要だなと思うのは、中間取りまとめの第6期科学技術基本計画に向けた重要課題ということで、この部会の最初の成果として、立ち上がってすぐの段階で、これをまとめたこと、そして、その中でシステム基盤というものを、ハード(機器)だけではなくてソフト的なもの、人財やシステム、そういったところに焦点を当てたというのは、非常に大きなことだったと考えています。
今後の課題として、この後多くの委員の先生方からも御指摘があるかと思いますが、私からは2点、ここで挙げたいと思っています。1つ目は、こちらの19ページに書かれてありますとおり、やはりラボから組織へということで、組織的にこれに取り組まなければいけないということを強く強調したいと思いますし、さらに、私の前に先生方がお話しされたとおり、それは一つの組織だけではなくて、多くの組織が絡んだコミュニティー、ネットワーク等で、課題解決を進めていかなければいけないのではないかと思っています。そういった意味で、私としてもそのための活動を積極的に行っていきたいと思いますし、現在は東工大に所属しておりますが、やはり東工大だけではなくて、日本全体の研究基盤を盛り上げられるようにしていきたいと考えております。
もう一点が、先ほどの人財の話は、技術職員の方々含めて十分に議論がなされるようになってきまして、注目度も上がってきて、多くのところでの皆さんの意識改革が進んだと思いますが、やはりお金のところになります。先ほど、この共用化のメリットの見える化が必要だということで、市川委員から御指摘があったかと思いますが、やはり共用を進めることによって、どのような得があるのか、特に経営陣からすると、経営資源としてのお金の問題というのはかなり大きなところがありまして、その辺の財務的な視点というのは、一度この部会で公認会計士の先生から情報提供していただきましたけれども、次期部会においても、更にそこを突っ込んで議論できるようにしていただきたいと思います。特にガイドライン/ガイドブックのところのルールの整備、規定の整備、そういった細かいところまで言及できるようなものにできれば良いのではないかなと思います。
今、19ページに示されているものの中に、キーワードとして今は入っておりませんけれども、そういった財務の部分というのは、実はこの共用化を進めるためにかなり重要なポイントになりますので、次期部会においても検討していただきたいなと思っております。
私からは以上です。ありがとうございました。
【岸本部会長】 どうもありがとうございました。
それでは続いて江龍委員、お願いできますでしょうか。
【江龍委員】 ありがとうございます。名古屋工業大学の江龍でございます。
この19ページのネタでずっと来ているわけですけれども、一番下に「研究開発」という文字が、容易に使われてしまっていますが、私は研究と開発というものは、まるで違うフェーズのものだと思っています。私はここで学ばせていただいたことの非常に大きなものが、研究の生産性向上であったと思いますし、我々は開発というもの、もちろん企業の皆様はそちらに注力していただければよろしいわけですけれども、その基になる研究、その生産性も向上しなければならない。だからコアファシリティが重要なのだというようなものを、この部会を通じて学ばせていただいたと思っています。
そして、その研究の生産性というものを振り返ってみると、一体何かと思うと、それは大学の存在意義、研究機関の存在意義そのものを高めるものだと感じているところです。研究者の皆様が世界と交流してコミュニティーをつくっていくことをアシストする役割ということだと思うわけですけれども、ここでの御議論を通じて、人とモノと、今、江端委員がおっしゃいましたけれども、お金の脱私物化。組織としてその脱私物化という意味は、皆が笑顔になるだけではなくて、大学の外と交流をして通用するような研究者を育てないといけない。今、理事をさせていただいているわけですけれども、経営資源として、人もモノもお金も当然見ていくわけです。そういったものを、この大学内に仕組みとして根づかせることが、ここでの学びを通じてさせていただいたかなと思いますし、今回の研究基盤EXPOでも、少なからずコメントができたかなと思っています。
それで、これから、やはり研究の生産性向上という点において、一つの大学だけ、一つの研究機関だけではもうどうしようもない。共用という言葉が出ています。それはデータの共用ということでもありますし、人の共用、人の持っている知恵の共用だと思っています。それを広げていくことで、次の世代の博士学生をどう増やしていくか、そういった教育のプラットフォームということにおいても、このコアファシリティというのは非常に強いものを持っているというふうに意識しています。ですので、ここではその人を育てるという意味、特に技術職員を育てるというような視点が強調されてきましたけれども、ネクストの人たちもやはり同時に育てていかないといけない。そういったものが、更に盛り込まれていくと良いのかなということで、それは次期部会の皆様にお願いしたいということでございます。
以上です。
【岸本部会長】 どうもありがとうございました。
それでは続いて金澤委員、お願いできますでしょうか。
【金澤委員】 金澤でございます。私は大学の教員という立場と、それから現在、日本分析化学会の会長をしておりますので、学会の立場でお話しさせていただきます。
まず、大学の教員という立場ですと、私ども慶應義塾大学では、分析機器の整備、共用というのは非常に進んでいると実感しております。薬学部は比較的小さいキャンパスですけれども、薬学部所有の機器も共用化が進んで、ほかの学部からもウェブで予約ができるようにもなっておりますし、非常に良い方向に進んでいると思いますけれども、これが全ての大学に行き渡っているのかということが少し心配です。先ほどお話がありましたように、例えば大学間で情報共有していくためには、各大学で整備が進んでいる必要があるのではないかと思っています。今後の課題として、どれぐらいの規模で共用化が進んでいくかというところです。
それから、やはり皆さんがおっしゃるように、技術スタッフの人材育成ということが非常に重要視されるようになり、今回も大きく進んできたということを実感しております。国立大の機器センターの技術スタッフとなった卒業生からも、とても働きやすいというような話を聞いております。今後は、更にポジションや、業績がつくれるように、大学として取り組んでいかなければいけないと思います。例えば、高度な技術が必要であるような研究の場合、その研究をサポートした技術スタッフが論文の共著者ともなるようなこと等、全ての大学において推進していくようなことが必要です。そして、技術職員も、大学院を卒業した学生、ドクターを持っている方も雇用できるような、そういう魅力あるポジションになるように、良いキャリアパスを大学としてつくっていく必要があると思います。また、今回文科省で表彰制度もつくっていただいたということで、技術スタッフのモチベーションが大変上がると思っております。
また、日本分析化学会など学会の立場としては、先端研究の設備、共用プラットフォームが非常に充実し、整備されてきたと実感しております。今後は、更なる広報を行い、多くの方に知ってもらうことが重要であり、そのために活用事例を紹介していただくことで利用促進を図るということも積極的に行っていくことが必要です。その際に、学会等を利用していただきたいと思いますし、学会も何か協力させていただきたいと思っております。また、先ほど学術分野でまとまる必要性があるというお話もありましたので、学会のような学術団体と協力することによって、ニーズの集約もできるのではないかと
考えております。
以上でございます。
【岸本部会長】 ありがとうございました。
それでは続いて木川委員、お願いできますでしょうか。
【木川委員】 私は、共用プラットフォームの実際に実施している側の立場からということで、いろいろと部会で意見を言わせてもらいまして、そういう意味で先端研究設備プラットフォームプログラムというのが次にも立ち上がるということは、非常に有り難いいことであると思っています。ただ、文科省がちょうど3C構造ということで、共用促進法で支援されている大型のインターナショナル・リサーチ・インフラストラクチャーと言ったら良いですか、そういうクラスのもの、それに対して真ん中がナショナル、国の研究基盤、それで一番外側が今、大学ですね、学内共用、コアファシリティとかSHAREとか、そういうところを置いたという形であると、真ん中の我々の共用プラットフォーム、ナショナル・リサーチ・インフラストラクチャーはやはり、日本の中ではまだまだ十分な支援を受けていないかなという印象は、ずっと活動してきて持っていまして、そこら辺の充実は今後もっと大事になるので、自分たちも努力しないといけないのですが、よりいろいろな形で、支援というか活躍していく場をつくっていかないといけないなと思います。
というのは、私は先ほどありましたOECDの議論に直接参加してきましたけれども、やはりヨーロッパ諸国とかアメリカ、それから韓国、こちらはインフラストラクチャーをいろいろな形で置いて、それを全体的にどう整備していくかという全体像を、きちんと国が把握して、国がそのロードマップを戦略的につくってということをやっているので、そういうのがまだ日本は十分足りてないと思っています。共用促進法の施設は国レベルでやっていますけれども、共用プラットフォームとか大学のあれは、どちらかといえばボトムアップ的な部分が強いかなということで、国全体の司令塔みたいなものをつくっていかないと、国力をこれから上げていくのはつらいというのは、他国はそういうことをやっているのでというふうに感じています。
あと、大学の皆さんはちょうどこれから、機関間でもきちんと連携していこうという意見も出てきましたけれども、そういう意味では我々共用プラットフォームはもともと、機関を超えた連携が進んでいるわけで、我々チームの先端的な活動が、いろいろと皆さんの活動にも役立っていくのではないかと思っています。
そういう意味で、先ほどの研究基盤協議会というのが、メンバーを見ていますとどちらかといえば大学の、いわゆるその3Cの一番外側の人たちだけで構成されているというのは、研究基盤というふうに大きく言いますと、これは本当にインターナショナルな、それこそ共用促進法の部分も、我々共用プラットフォームも含めて議論していく場になって発展していかないと、真の意味での研究基盤という形にはなっていかないので、そこら辺の充実は必要かなと感じました。
以上であります。
【岸本部会長】 どうもありがとうございました。
それでは次、菊池委員からお願いできますでしょうか。
【菊池委員】 よろしくお願いします。恐らく私の役割は、産業界からの声を皆様にお届けすることと、また皆様のいろいろな活動、そしてお考えを産業界のほうに伝えることというふうに理解して、この部会に参加させていただきました。とはいえ、この部会を通じて、学ぶことのほうが多かったです。岸本部会長はじめ部会委員の先生方から、研究インフラのありようをいろいろな形で示されまして、民間のほうがもっともっと皆さんの活動を学んで、民間の研究機関もやはり、皆様が進めている3C構造のような形をしっかりと取って、またそういったものをどう受け取るかということを考えて進めていく必要があるなと、本当に今回思い知りました。
そういう意味で、こういう部会の活動に関して、民間のほうがなかなか十分に知る機会が少なかったのかなと思いまして、何か自分自身、もっともっと民間の人たちに、皆様の活動をどう伝えていくかということを、真剣に取り組まなければいけないなと、今回、そのように思いました。民間のほうは、真ん中の、本当にSPring-8などの超大型の先端施設のことは、ある程度皆さん知っているかと思いますが、間の緑の部分、また外側の青の部分に関しては、ほとんど知らないのではないかと思っております。そういう意味で、民間の中で産業競争力懇談会(COCN)とか、そういうようなものがありますので、何とか皆様の活動をそういう中に紹介していくことができないのかなと思った次第です。
また、皆さんからも指摘があったかと思いますが、今もう共用化が進められて、またSINETのようなネットワークを使ったら、バーチャルな箱物、この共用プラットフォームの箱物をつくることができるのではないか。民間のほうはどちらかと言いますと、箱物の形で示されたときに初めて、こういう設備があるなら使ってみたいなということが起こるのではないかと思っております。物理的な箱物をつくるのはあまりにも費用がかかります。しかし、今はバーチャルな箱物をつくることができるのではないかと思っておりまして、そういうのが各地区にあったら、民間活用がもっともっと進んで、民間からの資金が流れ込む可能性が高くなるのではないかと思いました。
また、最後ですが、技術職員に関しましては、これまで民間のほうは研究者、先生方を代表する研究者、もしくはURAのところまではクロスアポイントメント的に、もしくは人のやり取りがあったわけですが、今回皆様の活動をお聞きしまして、技術職員のクロスアポイントメントのようなこと、もしくはそのやり取りを、特に年配の方々の技術職員のやり取りを含めて考えていくことも重要かなと思っておりまして、民間の研究機関もしくは民間の会社さんとも、こういう視点をこれから議論していきたいと思っております。
以上です。ありがとうございました。
【岸本部会長】 どうもありがとうございました。
それでは続いて佐藤委員、お願いできますでしょうか。
【佐藤委員】 大阪大学の佐藤です。私は、今回の部会の感想は、前の先端計測事業の主査をやっていたこともあって、それから今、JSTの未来社会創造事業(共通基盤領域)のところも少しやっていることを考えると、本当に感謝したい思いです。それは、以前にいろいろ取り組んできた事業の中で、文科省の基盤関係の予算がなかなか取れないということが続いていたものですから、それに対して、そんな予算ではできないよという話を盛んに言ってきたわけですけれども、それをうまくこういう形でまとめて、発展させて、いかに研究基盤が新しいイノベーション、あるいは新しい世界をリードする研究インフラとして非常に重要なのだということを理解していただいて、第二次、第三次補正の予算を獲得してくれたことに、本当に感謝したいなと思います。
その上で、今後どうしていかなくてはいけないかということを、第6期の科学技術・イノベーション基本計画を考慮しながら、以下にお話しします。まず、ここに掲げられた4つの課題というのは、それはそれで進めていかないといけないし、今後も多分いけるだろうな、と期待しています。一方、欧米のデジタル化、バーチャル化に対して、本質的な理解が不十分であったため、非常に遅れてしまったと思っています。それは結局、いろいろなデータ、あるいは研究開発したもの、あるいは計測したものを、最終的にデジタルを使ってバーチャルなモデルにもっていく、それは形のあるもの、あるいは数値のモデルも含めてモデルに持っていって、バーチャルの空間で非常に優れたソリューションを生み出していこうというのが、欧米が20年、30年ぐらい近くかけて進めてきたことだったのです。日本はその本質的な捉え方が甘かった、十分捉えられていなかった。そこに、研究基盤の成果もいかにして結びつけていくかということを考えていかないと、多分、最終的な成果、最終的な出口は、やはり今までと同じようなことになってしまう。
だからそこのところを、例えば、私は企業と大学、両方経験してきましたから分かりますけれども、企業で言えば、ものづくりだったらプロダクト・ライフサイクル・マネジメントみたいなものにデジタルで全部集約して、最適なバーチャルソリューションを継続的に生み出すということをやろうとしています。同じように、研究の現場、あるいは開発の現場でも、リサーチ・ライフサイクル・マネジメントというものを同じように進めていって、そこでいろいろな先端的なデータが取られて、それが利用されて、バーチャルなモデルにもって行き、そこから新しいものをどんどん生み出す、ソリューションズDXみたいなことをやっていかないと、やれるようにしていかないと多分駄目なので、その辺を次期の部会に期待して、それを最後の私からのお願いとして話を終わります。
以上です。
【岸本部会長】 ありがとうございます。
それでは続いて杉沢委員、お願いできますでしょうか。
【杉沢委員】 はい、杉沢です。皆さん御苦労さまでした。私も佐藤委員と同じく先端計測のころからずっとこの研究基盤に関わってきたのですが、その頃から、実はこの19ページに出ている4つの課題については、いろいろな形でずっと言われ続けてきたことだったわけですね。その解決策というのがなかなかきれいに見いだせないなとずっと思ってきましたけれども、ここ1年ぐらいですか、この部会での審議あるいは皆様の御努力で、具体的にどう解決するかという道筋が見えてきたというのを、感触として率直に思っております。この方向で更に進めていけば、日本の研究開発基盤がより良くなってくるのだろうなという確信を最近持ちつつあり、今後も非常に期待しているところでございます。
今後ですが、私の役割としては、研究基盤を支える産業、分析機器工業会ですけれども、その代表としてより積極的に貢献してまいりたいと考えております。これまでもそういった形で、できるだけ協力できるような形で御意見を申し上げてきたのですが、今後はぜひ我々の業界と、こういった研究開発基盤を進める官や学の方々とのコラボレーションを進めるような方向で、何かできないかと思っております。
特に考えられるのが、人材の交流や技術の交流ですが、我々の業界と大学さんや公的研究機関さんとのコラボレーションをより深くして、加速度的にこういった4つの課題を解決するための活動ができないかなと考えておりまして、次の部会ではそういったところに協力していきたいと考えているところでございます。
以上です。
【岸本部会長】 ありがとうございました。
それでは高橋委員、お願いします。
【高橋委員】 高橋でございます。2点ほど、14ページと19ページに関連して、申し上げたいことがございます。
1点目は14ページ、これは中間報告と取りまとめですけれども、中間報告の取りまとめを受けて、実際に新たな、組織を超えたような共用基盤というのが推進されつつあるということを、皆さん、人材育成も含めて意識が高まって、その方向に行っているということは非常に喜ばしいというか、それを進めなくてはいけないという気がいたします。ですので、ぜひ19ページのほうでもそれを推し進めていただくというのが非常に大事であると私も思いますので、このようなまとめをしていただいてありがとうございましたというふうに感謝申し上げたいと思います。
加えて、共用の基盤というハードウエアがあっても、それを使う方々をやはり大事にしないといけないということがあります。それを使う人が何になれるかというと、それは成果そのものにつながることでございますので、世界をリードすると書いてございますけれども、ほかのプロジェクトとの関連性、例えば未来社会創造事業を含め、ほかにも大型のプロジェクトはございますから、ぜひそういうところでも積極的に利用していただくような仕組みというのも考えていただけると、より有り難いかなと思いました。
もう1点は、今、先生方にも御指摘いただきましたけれども、中間報告の取りまとめより19ページのほうでは、産業界との連携の仕方というのが、トーンとしては弱くなっているのかなという気がいたします。産業界との連携の仕方というのはいろいろあると思いますし、また課題を継続して検討していかなくてはならないと思いますので、ぜひ19ページのほうでも産業界との関係性を、どういうふうに発展させていくのか、あるいは問題を克服していくのかということをどこかに明言していただけると、更に発展が期待できるのではないかと思いました。
以上でございます。ありがとうございました。
【岸本部会長】 どうもありがとうございます。
それでは続きまして田沼委員、お願いいたします。
【田沼委員】 田沼です。今日は感想的なことをお話しします。私はもともと物質・材料研究機構の共用部門が長かったので、装置の共用という観点から見ますと、この2年間、お話を聞いていて、やはり変わってきたのは、装置の共用の状況と環境です。物質・材料研究機構は昔から随分と装置共用を盛んにやっていました。それに比べると大学は少し遅れている気がしていたのですけれども、非常に変わってきたと思いました。それは何が変わったかというと、一番変わったのは装置共用に対する意識だと思います。結局、装置共用が当たり前だという意識が普通にできてきたことが印象的です。実際に、それで何が変わったかというと、装置は保有していなくても必要に応じて共用装置を研究に使えるし、これにより研究以外の時間、いわゆる装置メンテナンス等の負担が研究者にとってはすごく少なくなってきていると思います。
しかし、問題は、ここにも出てきましたけれども、共用装置を定期的にどうやってリプレースするか、先端性をどう維持するのかです。そのときの費用負担をどうするかというのは、まだ、完全にはクリアになっていない問題だと思います。
それから高度支援人材。ここでも随分、研究基盤の要だということでお話しがありました。処遇も上げるべき、キャリアパスを明確にすべきということがあったわけですけれども、その費用負担をどうするかというのは、ものすごく難しい問題だと思います。
あと、今後起こるであろうデータ共用、すなわちデータ・トランスフォーメーションは非常に難しい問題です。私は去年の4月から、物質・材料研究機構内で情報基盤部門に移りました。その部門で問題になるのは、普通に研究者が思っている以上に、データの蓄積・運用に関する安全性、認証とかいうのは、すごく費用がかかると言うことです。さらに、単にデータは集めるのでは使い物にならなくて、その集めた、更に集めるべきデータをどう構造化するかが問題です。これにはどうしても結構なお金がかかる。特に人件費がかかります。これらの問題がある。
さらに、ハードとしての情報基盤ということを考えると、大きな問題は、今やほとんどクラウドが前提となると考えられますが、そのクラウドを支える業者、ここで業者の話をするのは良くないですけれども、ほとんど外国です。例えば、御承知のように、アマゾンとかグーグル、そういうところを抜きにしてはクラウドは語れなくなって来ています。すべて国産で構築したいと考えても、一番根っこになるところを日本国内で作ることが難しい状況になってきている。これは、将来的には問題があるのではないかという気がしました。そういうところが私の考えた雑駁な感想です。
以上です。
【岸本部会長】 どうもありがとうございました。
それでは中村委員、お願いいたします。
【中村委員】 中村でございます。私からは感想ということで述べさせていただきます。
今期は特に、多彩な角度から共用に関わる施策が図られたという点で、非常に印象的に残っております。一つの組織で持てない技術を核とした共用化である共用プラットフォーム、組織の壁を超えるSHAREプログラム、あるいはコアファシリティ、遠隔化・自動化と、実にいろいろな角度から施策がなされました。そのおかげで、共用化の考え方が一部だけでなくて非常に浸透していった時期であると感じています。大きな進歩がなされたのではないかと思っております。
今後の期待になりますけれども、今回いろいろつくってきた基盤というものを、これから揺るぎないものにしていくためには、更なる共用化の浸透を図ることはもちろん大事で、これまで考えてきた仕組みを回していくことで、システムがより良いほうへ更新されていくことを期待したいと思っております。
そのポイントの一つとして、私は民間におりますので感じることは、先ほど菊池委員がおっしゃったように、民間の活用といった視点もあるかと思っております。先ほどもお話がありましたけれども、どうしても3Cの真ん中に目が行ってしまいますけれども、一番外側のCのところですと、この先生はよく存じ上げているからなどの理由で連携を組むとかになりがちでありまして、新たな良い方向でのマッチングが得られる形になるためには、一つは見える化も必要でしょうし、効果的な宣伝といったところも必要かとは思っています。その辺りも、次期部会で御議論いただければと思っております。
また、将来に向けては、これらを基にしまして世界に突出した学術の進化や、あるいは差異化した技術が生まれてくることが期待されるわけですけれども、そのためには、例えば共通基盤の高度化といった視点も、より重要になってくるだろうと思っております。
以上です。どうもありがとうございました。
【岸本部会長】 どうもありがとうございます。
それでは続いて西島委員、お願いいたします。
【西島委員】 西島ですけれども、企業という立場で2点、お話ししたいと思います。一点は、2000年前後から、私はこういった国の施設を使うことに関わってきましたけれども、20年前に比べると、私たち企業が保有する先端機器というのもかなり限られていて、先端機器とか人材というのは、できるだけ公的なものを使っていこうという方向に動いています。ですから、そういう意味では、今のこういった共用化というのは大変良い方向なので、先ほど誰かから出ましたけれども、産学連携による産業利用というのをもう少し意識したほうが良いかなと思いました。
それに関係しますけれども、もう一点はコアファシリティというのがありまして、この後、コアファシリティをどこまで増やせるかですけれども、絵に描いたように皆さん立派ですね。実際に動いてはいるわけですけれども、一番感じる点は、先ほど別の委員からも指摘された財務的な計画の甘さですね。つまり企業からいうと、5年後の運営体制・資金計画とか、そういった物の考え方が少し甘いと思うわけです。
したがって、これからは、企業から単発的に利用料金を取るのではなくて、例えば、企業の測定に関わる専用スタッフの長期的な人件費を、企業のコンソーシアムに負担してもらうとか、そういうような形で安定的な人材・資金が確保されれば、魅力ある高度専門技術と共に最先端機器施設があれば、私は企業がお金を払うと思います。20年前に自分たちの専用施設を持ったとか、大きな機器を抱えた経験を経て、現在であれば、やはり共用施設の機器・スタッフ維持費の一部を企業が払うということについては、私は今ならできると思うわけです。そういうことを盛り込んだような形での戦略的な次期部会での検討が、これから望まれると思います。次期のメンバーにはぜひそういうところを考えていただきたいなと思います。
以上です。
【岸本部会長】 ありがとうございます。
続いて野村委員、お願いいたします。
【野村委員】 野村です。大体のことを皆さんに言われてしまった感もありますけれども、機器の共用というのは随分進んできたなと思います。そういう意味で、我々大学共同利用機関の検討が、本当に以前の形で良いのかどうかというのも、これから考えなくてはいけない時期ではないかなと、思い始めています。
この間、機器の共用というところで、割と研究室で抱えていた機器をオープンにしましょうとか、そういうスタンスで来ていたわけですけれども、その機器の共用だけじゃなくて、ある意味で人の持っているノウハウとか知恵、知識の共有と言うのですかね、それを単にサービスではなくて、どううまく共有するかという仕組みを、どなたかもおっしゃられていたと思いますけれども、考えていかないといけないかなと思っています。
あとは同じようになりますけれども、これまでは、いかに利用効率を上げるかという視点がかなり強くきていたと思いますけれども、大学共同利用機関ですと、良い課題を選抜してということで、これまでやってきていて、こちらのほうが逆にスピードが追いつかないという問題もあって、どういう共用のシステムをつくっていったとき、日本全体として見たとき最大のアウトプットをつくれるかというのは、少し考え直す時期かなと思っています。
その辺に関わって、多分そういう共用施設を担う職員のミッション定義といいますか、これまで割と技術職員ということが中心に議論されていたわけですけれども、必ずしも技術職員だけではなくて、いわゆる研究者を含めて、どういうミッションでやっていくべきかということ、これも20年前、30年前のままで良いのかどうかというのは、考える時期かなと思っています。
あとは、どなたかもおっしゃっていましたけれど、いろいろな大学、研究所が機器の共用をやっているわけですが、なかなか見つけにくいといいますか、やはりうまく一元的に探せるものというのは、もっともっと整備していく必要があるだろうと思います。
大体そのようなところです。以上です。
【岸本部会長】 ありがとうございました。
それでは波多野委員、お願いいたします。
【波多野委員】 波多野でございます。ありがとうございました。本部会で共用プラットフォームのことを多く学ばせていただきました。また、いろいろな立場の多様な委員の構成であったことが、この部会の成功を導いたのではないかと感じています。
ニューノーマルで、もともと点と点ではつながっていたものが、面でつながって、江端委員から本日研究基盤EXPOの御紹介がございましたように、現場から組織に、そして拠点間の連携が開始したことは、すばらしい成果と感じています。
更に申し上げますと、既に御意見がありましたが、国としての全体最適化というのがますます重要になってくると思います。高橋委員の御意見と同様で、省内だけでなく省庁間の研究や人材育成、特に博士人材などのプログラムなどとも効率よくリンクすることが必要と思います。そして、持続性、すなわちサステナブル、かつエコシステムが機能した共用基盤、プラットフォームはどうあるべきか、どのように構築するか、などが今後は更に課題になると考えています。
さらに、世界状況が急速に変化し、社会的な課題が複雑化していますので、どのように対応していくかというところの議論は、更に進める必要があると思っています。菊池委員の御意見もございましたように、私も企業にいた経験がありますが、民間企業との理解を進めていき、産官学、そして国際的な議論に基づいて、基盤プラットフォームのハード、更にソフト、ソフトにはデータと人材が含まれますが、そして財務的の中長期的なロードマップを策定し、示議論していくことが必要だと考えます。
以上です。
【岸本部会長】 ありがとうございます。
それでは原田委員、お願いいたします。
【原田委員】 大阪大学の原田です。最初に、実際、大阪大学が採択された新共用で整備された、研究設備・機器共通予約システムというのがあるのですけれども、それを実際に使わせていただいて、完璧ではないですけれども、機器の共用が自分自身、非常に助かって、できていることをお知らせしたいと思います。
それと、いつも言っていますけれども、やはりもともと江端委員とかと大分前に技術職員の問題ということを最初に、非常に問題意識を持って、いろいろな調査を始めたというところからこの委員会にも関わってきたわけですけれども、実際に研究支援賞というのが立ち上がって、それが今後もっと、1年目は非常に応募者が多かったのですけれども、ともすると、どんどん応募者が少なくなるということがないように、そしてせっかく設けた研究支援賞というのが、技術職員の人たちのためのモチベーションになったとかいうことを、実際、受賞された方とか現場の方の御意見も伺えたら良いかなと、今思っています。
あと、皆さんおっしゃっていましたけれども、民間企業と大学とか研究機関の、もっと協力というか情報交換とかいうのは、技術職員のことについてもそういうことが重要だなと思っていて、例えば今この委員の中でも、もともと民間企業に勤めていらっしゃって大学の教員になったり、国研の研究員になったりという人事交流みたいものもありますけれども、技術職員のレベルにも、リタイアした後でも良いですけれども、そういうものがもっともっと広がっていったらいいのかなと、思っています。
以上です。
【岸本部会長】 ありがとうございます。
それでは、最後になりましたけれども、横山委員、お願いいたします。
【横山委員】 横山です。最後で、いつも大体皆さんがおっしゃっていることをもう1回言うことになるのですけれども、まず大学等の共用促進に関しましては、大学の執行部も含めて、事務職員の方、あるいは技術職員の方、役員、皆さんが、田沼委員がおっしゃったように、意識も非常に前向きになってきた2年間だったかなと感じております。そういう意味では、この審議会は、皆さん、非常に良い方向で共用を促進していきましょうという流れになってきたと思います。
それから、やはり野村委員がおっしゃっていたとおり、今後は単なる機器の共用というよりは、ノウハウや専門的な知識、そういうものも含めた、そういう共有を含めた共用ですか、そういうふうな方向にどんどん発展していくべきかと思います。
それから、今年度はコロナもあって、スマート化、リモート化が進んで、予算的にも二次補正と三次補正で約100億円の予算がついたかと思います。この点に関しましては、文科省の御尽力に感謝したいと思います。
今後は、委員がおっしゃっていたとおりですけれども、データベースを構築するということで、DXを利活用して解析を進める。そういうふうな方向で、例えば先端研究設備プラットフォーム等が見えてくれば良いのではないかなと考えております。
それから技術職員ですけれども、江端委員らが最初に訴えられた対応改善で、特にこれは分子科学研究所の話ですけれども、分子研で実は次の4月から技術課が、内部措置で技術推進部というふうに格上げになりまして、この点、この部会にも、私としても非常に感謝するところです。
それから研究支援賞の表彰ができまして、技術職員のモチベーションがだんだん上がってきている状況にも、非常に感謝しております。
2年間、お世話になりました。ありがとうございます。
以上です。
【岸本部会長】 どうもありがとうございます。委員の皆様から一通り、御意見やコメントいただきました。本当にどうもありがとうございます。この研究基盤を整備し、共用化していくというその方向性、考え方について、この2年間で大分、大学のほうにも定着してきたのかなと思いました。
それと、この部会では、委員の皆さんからいろいろな形で建設的な御意見をいただきまして、またそれを事務局で受けていただいて、実際に予算につながり、具体的な成果として出せたということで、この2年間、委員の皆様も御指摘がありましたように、大分進展したのかなと私自身も感じております。事務局の方々も含めて、本当に感謝したいと思います。それとともに、本日皆様からいろいろ御指摘いただいた点については、ぜひ次期部会で議論し、更に発展していければ良いのかなと思います。
その中で、方向性としてはこういうことを目指すということは非常に大切だということで、共通認識ができてきているわけですけれども、いかに良い仕組みでこれを進めていくかについては、産学連携のことだとか、データの取扱いだとか、まだまだ工夫をしていかなければいけないところが多いと思いますし、そこには新しいアイデアも要るのではないかということで、いろいろな皆様のアイデアをうまく集約して、もっとステップアップできれば良いのかなと感じた次第であります。
最後、19ページに出ていて、それぞれは来期において大切なことだと思いますけれども、最後の「世界をリードする戦える新技術を開発」というのが、文言的にこういうので良いのかなということです。何人かの委員の方も御指摘されたと思いますけれども、この基盤整備というのにつなげるのだとすると、例えば、世界をリードする戦える新技術を備えた研究基盤の構築とか、やはり研究のインフラとしてどうしていくかという議論につなげていくこととともに、既存の装置だけではなく、新しい装置を開発しながら、それを研究基盤にしていくという、そういったところをどうつくっていくかも大きな課題なのかなと思っています。
まだまだ課題も多いと思いますけれども、今日頂いた意見も事務局のほうでも御整理いただいて、次期が始まったときに、目指すべき方向性というのを今期のように定めて、そこから議論を積み上げていけるようになれば良いのかなと思った次第であります。
本当に2年間、皆様の御協力に感謝したいと思います。
それでは本日の議題は以上ということで、終了させていただきたいと思います。事務局のほうから連絡事項等はございますでしょうか。
【仙波課長】 研究開発基盤課長の仙波です。冒頭、岸本部会長からもありましたとおり、本日の部会が今期部会の最後となります。2年間のうち、私自身が関わらせていただいたのは最後の半年でございまして、ただ、その半年関わらせていただいただけでも、皆様方がどれだけ精力的に御活躍されてきたかというのが、すごく感じられる半年間でございました。研究基盤EXPOもはじめ、パブコメ中の科学技術・イノベーション基本計画の中にこれほど書かれている、また先生方の御発言の中でもありましたけれども、研究支援賞など新しいものの立上げ、補正予算の確保、また研究基盤協議会も立ち上がり、国立大学協会などもここにすごく関心を持っていただいているという状況を見ると、先生方がどれだけこのことについて真剣に御議論をし、広めてきたのかというのを感じられる半年でございました。
2年間、本当にありがとうございました。
【下須賀課長補佐】 私のほうから連絡事項のみさせていただきます。
本日の議事録は、部会の運営規則に基づきまして、後日公表することになっております。案ができ次第、委員の皆様に確認させていただきますので、どうぞよろしくお願いします。
私自身、今日頂いたお話も含めて、次期部会にしっかり引き継いでいければと思っていますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【岸本部会長】 それでは、以上をもちまして、第9回研究開発基盤部会を閉会いたします。本日も本当に、先生方、どうもありがとうございました。また、この2年間、どうもありがとうございました。これで終了したいと思います。
それでは、皆さん、またどこかでお会いできることを楽しみにしております。

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