令和6年11月28日(木曜日)16時00分~18時00分
オンライン開催
網塚部会長、高橋部会長代理、雨宮委員、江端委員、岡田委員、岡部委員、上西委員、上村委員、田中委員、鳴瀧委員、宮下委員
(事務局)科学技術・学術政策局 研究環境課 課長 野田浩絵、専門職 田邉彩乃
【網塚部会長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまより、第27回科学技術・学術審議会研究開発基盤部会を開催いたします。お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
まず、事務局から、本日の出欠と資料の確認などをお願いいたします。
【田邉専門職】 研究環境課の田邉でございます。本日も、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
御出欠ですが、伊藤委員が御欠席となっておりまして、その他12名の委員の皆様には御出席いただいております。また、御都合により、高橋委員、岡部委員が途中退席の御予定と伺っております。
また、本日は、先端研究設備プラットフォームプログラムにて採択しております、NMRプラットフォームの代表者である、理化学研究所の木川様にも議題の関係で御参加いただいております。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。配付資料につきましては、議事次第、資料1から3、参考資料を、PDFにて委員の皆様にお届けしております。説明の際、画面上に投映いたしますが、見えにくい場合はお手元の資料を御覧いただければと思います。
また、留意事項ですが、御発言されるとき以外はミュートでお願いいたします。また、御発言の際は、「手を挙げる」をクリックいただき、部会長の指名があり次第、ミュート解除にて御発言をお願いいたします。また、その際には、お名前を言ってから御発言いただければと思います。
不具合等、トラブルが発生した場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号まで、御電話いただければと思います。
事務局からは、以上です。
【網塚部会長】 ありがとうございます。
それでは、議事に入ります。議題(1)、先端研究設備・機器の共用推進についてです。本日は、まず初めに、関係機関ヒアリングとして、2件の御発表をいただく予定です。1件目は、プラットフォームのこれまでの取組と、そこから見えてきた課題等について、NMRプラットフォーム代表者であります、理化学研究所の木川先生から、2件目は、機器メーカーからの御意見等についてということで、本部会の飯田委員から、それぞれ御発表をいただきます。
それでは、早速、資料1に基づいて、理化学研究所、木川先生から御説明をお願いいたします。
木川先生、よろしくお願いいたします。
【理化学研究所(木川)】 よろしくお願いいたします。理研の木川です。
実は、今、学会で福岡に来ておりまして、ホテルからなので、もしかして、Wi-Fiの調子とか悪くなったら、申し訳ございません。
それでは、始めさせていただきます。理研の木川です。NMRプラットフォームの代表をさせていただいています。
次のスライドをお願いします。
現在の先端研究設備プラットフォームプログラムの紹介スライド、これは文部科学省のホームページから取ってきたものですけど、こういった状況で、次のスライドをお願いします。
プラットフォームという概念はいつ出てきたのかということを振り返りますと、字が小さくて申し訳ありませんが、「先端研究設備基盤共用・プラットフォーム形成事業」というのが、平成25年4月からスタートしたんです。これの公募要領のところに、右のほうで「共用プラットフォームの形成」というのがありまして、複数機関によるチームをプラットフォームというふうに定義したということでありまして、そういう意味では、複数機関内というか、複数施設のチームで共用に取り組む、ないしはいろいろな高度化に取り組むところをプラットフォームという定義というふうに認識いたします。
次のスライドをお願いします。
プラットフォームという事業の変遷を簡単に絵にしてみました。2013年から、先ほど紹介した事業では、我々のNMRプラットフォームと、このときは共用プラットフォームと言っていましたが、はかに、光ビームプラットフォーム、放射光施設とレーザー施設のプラットフォームが活動していました。次に、2016年からの事業においては、さらに四つのプラットフォームが加わり、2021年からの現事業では、NMRプラットフォームのほかに、今までのプラットフォーム以外に三つが加わったんですが、実は、顕微イメージングソリューションプラットフォームというのは、前事業における原子・分子の顕微イメージング、アトミックスケール電磁場解析、このプラットフォーム二つが手を組んだもので、ちょっと差はあるかもしれませんが、そういった形になっています。
次のスライドをお願いします。
NMRのプラットフォームはどう変遷してきたかということですけど、当初の事業では、理研、横浜市立大学、大阪大学、三つの機関が手を組んでいましたが、その次の事業ではそこに北海道大学が加わり、さらに現事業では、東北大学、東京大学、自然科学研究機構、広島大学が加わったということで、現在、47台のNMR装置を共用しているという形です。加わった機関は、法人形式もいろいろですし、それから、他の共用取組に参加している、AMED-BINDSとか、共同利用・共同研究拠点、そういったものに参加している機関もあるということで、そういう意味では様々な形態の機関ないしは施設が加わっているということです。
次のスライドをお願いします。
これは現在の状態です。いわゆる分散型、ネットワーク型の研究基盤を形成し、実施機関が八つ、四つの協力機関が加わっています。協力機関は、具体的にはNMR装置の二大メーカーであります、日本電子、ブルカー、それから、冷媒や低温、安定といった標識技術を売りにしている太陽日酸、それから、NMRの試料管で、これはデファクトスタンダード、特に生命系ではデファクトスタンダードなっている、Shigemi tubeというのを開発・販売しているシゲミ、この四つが加わっています。共用装置は47台。特に高磁場のNMR装置、800メガヘルツ以上14台をワンストップサービスの下に展開しています。日本に導入されている800メガヘルツ以上の約50%が、このワンストップに入っています。それから、EU圏に次ぐ規模を誇っていますし、見ていただくと全国に展開していますので、広範な地域からの対応・アクセスが可能。それから、それぞれの施設はそもそも生命系のアプリケーションから始まっていますけれども、現在では非常に多様な分野、材料開発とか、ケミストリーの分野とか、いろいろ対応するような利用になっています。それから、様々な施策、特に共用の施策と機器開発の施策とも連携を取っているということであります。
次のスライドをお願いします。
ちょっと細かくて、それぞれ見えないと思いますけど、多様な、いろんな特徴のある設備・技術をそれぞれの施設が提供しています。
次のスライドをお願いします。
利用制度に関しては、それぞれの機関が、そもそも独自の利用制度を持っています。機関内の利用から、成果公開・非公開型、それから、他の共用取組に加わっているところではそれに対応する利用制度がありますが、それに加えて、プラットフォーム全体で一丸となって運営する利用枠というものも設定しています。先端研究課題というものと、連携・人材育成というものです。特にこれらのプラットフォームで運用しているものに関しては、14名から構成される課題選定委員会、有識者から成る課題選定委員会が採択から中間・最終評価まで丁寧にフォローアップ・レビューをしまして、進捗状況、問題点を把握するとともに、方向性や実施内容に対して助言をフィードバックするということをやっています。これは、利用者は必ずしもNMRの専門家ではなかったり、特に高性能のNMRはあまり経験がない方というのもいますので、特に方向性や実施内容に対して有識者がフィードバックするというのが非常によく利いているというところであります。
次のスライドをお願いします。
他の成果としては、民間活力の導入や、国際的ネットワークやコミュニティへの参画や、特にOECDのグローバル・サウスフォーラム、サイエンス・ヨーロッパのワークショップのNational RIというものでは、グッドプラクティスで取り上げられたこともあります。それから、人材育成・人材流通というのも様々な施策、特に民間とプラットフォームの間で人材の行ったり来たりというのも結構頻繁に行われています。これは後での話にもつながるので、NMRの担当技術職員のネットワーク、NMRクラブというのがあるんですが、この方々が特に、プラットフォームの高性能装置を経験し、また、特に、新規の分野の手法を学ぶ機会を提供するという、利用枠をやります。これは今でも続いているんですけれども、ここにあるような大学の技術職員の方が参加して、我々の装置を経験し、今まで使ってなかった分野を勉強するという中で、新規利用課題の創出、彼らが抱えている課題が高性能なNMRを使うと飛躍的に進む可能性があるものがいろいろ見つかってきたということがありました。新規課題の発掘ができたというのはあるんですが、もう一つ、我々としては、プラットフォームの中にいる人と外にいる人でかなり知識・技術・経験にギャップがあるなということを実感したということもあります。それから、設備は買った装置をただ並べているだけではなくて、それそのものの開発、周辺技術の開発、利用技術の開発、様々な面でいろいろな機関がいろいろな開発も進めております。
次のスライドをお願いします。
ここには、それの1例を挙げています。今回、細かく説明しませんけれども、いろいろな面で、装置からアプリケーション、そして、そのデータ解析まで、いろんなものを開発しています。
次のスライドをお願いします。
また、ネットワーク、分散型ということをやったことによって、研究の持続可能性にも貢献することができました。具体的には、北海道の胆振東部地震、これ皆さん、よく覚えていると思いますけど、北海道の電源が全部ブラックアウトしてしまった災害ですけれども、このとき北大のNMR装置も稼働ができなくなってしまいました。特に北大の共用施設として、教育や研究、そして様々な利用者に共用を進めていたわけですけど、これができなくなったということで、当時、プラットフォームを組んでいた3機関でそれを手助けするということをやりまして、北大のこういった活動のダメージを最小限にとどめたということがあります。それから、ヘリウム危機への対応とか、働き方改革への対応というのもできています。
次のスライドをお願いします。
そういったように進んできたんですが、最近のNMR研究基盤、特に日本のNMRの研究基盤を取り巻く状況は結構厳しくなってきまして、一つは、液体ヘリウム、冷媒の高騰はすごく深刻です。右側に、ちょっと小さい字ですみませんが、これは価格の推移ですけれども、2021年ぐらいから急激に上がってきていまして、今でも上がり続けています。今年度の価格よりも、多分、来年度はさらに1.何倍になるということで、そもそも施設の運用というのはかなり厳しくなっていくので、拠点形成やコミュニティ共有というのは、世界的にもそうですし、日本でもこういった大きな流れにあります。また、今、急激にNMRの最高磁場は上がっています。真ん中の図をちょっと見ていただくと、ここ数年で急激に磁場強度が上がってきて、最新の装置が出てきたと。ブルカー社の1.2ギガヘルツというのは2020年度から導入開始されましたが、世界で12台、さらにイギリスに2台入ると言われていますけども、入っています。その下のクラスでもこういうふうに入っているんですが、これを見ると分かるとおり、ヨーロッパに非常に集中的に整備されている。アジア圏では、韓国に1台、日本に1台ぐらいしか入っていない。日本に1ギガが1台、1.2ギガは韓国に1台ってしか入ってないということがあります。開発プロジェクト自体は、今、未来社会事業で1.3ギガを日本でやっていますし、それから、ブルカ―社が先日、1.3ギガのプロトタイプを動かすことに成功したと発表しています。また、アメリカではもうちょっとハイブリッド型のプロトタイプが動いています。これはいわゆるNMRとして使うには厳しいんですけれども、そこら辺の磁場の強度も出ているということです。アメリカはこのようにヨーロッパに対して非常に遅れているので、今、NSFがMid-scale Research Infrastructureプログラムというので、20億から100億でそういう施設をサポートしようという中でNMRの整備も進みつつあります。
次のスライドをお願いします。
この夏にはナショナルアカデミーのリポートがありまして、The Current Status and Future Direction of High-Magnetic Field Science and Technology in United Statesと言っていまして、この中でも1ギガから1.2ギガのクラスのものをきっちりと導入していこうと。さらに、超電導で言えば、40テスラのマグネットもちゃんと開発しようというようなことを報告・提言しています。
次のスライドをお願いします。
というような状況でNMRプラットフォームを活動してきたということであります。様々な情報は、このポータルサイトを通じて、ワンストップサービスを含めて行っています。ちょっと宣伝になりますけれども、12月16日に秋葉原でNMRプラットフォームのアニュアルなシンポジウムを行いますが、ここの中でも、「プラットフォームの将来像」ということで、議論・討論するセッションを設けました。江端先生にも御登壇いただいて話題提供していただきますし、それから、ブルカ―社の方、JST、理研で1.3ギガの開発の責任者をされている小野先生からも超高磁場装置の開発の状況についてお話しいただきますし、第一三共製薬の半沢さん、この方、第一三共というよりは、創薬コンソーシアムという、製薬会社のコンソーシアムの代表として、ユーザー、特に成果を出したいユーザーから見てどういうことが必要かというのを話題提供いただくということになっております。もしよろしかったら、ぜひ御参加ください。
次のスライドをお願いします。
というわけで、我々、NMRプラットフォームで活動してきましたが、我々も含めてプラットフォームとしてどういう成果が出たかということを、私の視点からまとめさせていただきます。
一つは、国内有数の先端的な研究施設・設備というものが、ネットワークが構築されて、それぞれが連携し出したと。その結果、利用支援体制が強化されて、ワンストップサービス化もしてきた。特に高度利用では、遠隔利用・自動化が進展したことによって、ユーザーも使いやすくなってきたし、専門スタッフの育成も進んできました。それに併せて、利用が促進され、各機関の収入も増えました。それから、機器と技術の高度化。これは、プラットフォームというか、機器分析って非常に重要なんですけれども、こういったところの連携も少しずつ進み出したし、プラットフォームによってはデータ活用基盤の整備というのも進みましたということで、広範な専門性や課題対応能力を備えた持続可能性のある研究基盤、ネットワーク型ですけど、できてきたということです。ずっと長い間やってきた私の実感ですけれども、非常に大きな研究基盤に匹敵するではないですけど、やっとクリティカルマスを超えて認知度が向上して、市民権を得ることがやっとできたのかなあと。やっと、何か装置を使いたいならプラットフォームに行きましょうみたいな雰囲気がコミュニティに出てきたのかなというふうに感じているところであります。
次のスライドをお願いします。
とはいえ、いろいろと課題を感じてきました。まず、分散型の研究基盤、SPring-8とか、NanoTerasuとか、J-PARCとか、そういった一つの非常に大きな機関ではないというところの辛さみたいなものはあるかなと思っています。特に、いわゆる3C構造の真ん中に位置するわけですが、そういう意味では、共用促進法の適用施設は非常に優遇されていますし、それから、コアファシリティは、これは法人としての単位なので非常に活動がある意味しやすいだろうなというのに比べて、法人格を有しない、ただの手をつないだネットワークであるというところは非常につらい部分があります。例えば、一括契約ができないので、調達とか、知財・秘密保持の部分、これは要するに法人で管理するんですね。それから、安全管理ないしは高度化の契約・連携みたいなものも、特に産業界の関係で一括契約できないというのはちょっとドローバックだなと思っていますし、統一された人材育成や確保がしにくいと、施策が持ちにくいと。それぞれのこういった施策はどうしても法人単位で行われてしまうものなので、きっちりとしたキャリアパスを設けにくいなと。コアファシリティは法人なので、非常にきれいにキャリアパスを形成されているなという実感があります。あと、運用効率が悪い部分がありますね。
国際的な連携も、相手が法人だと、法人と契約したいと言い出すので、その点でも厳しいなということがあります。それから、先ほどの技術職員の話で言うと、プラットフォームに関わっている技術職員にはかなり隅々まで最先端の技術が行ってますけど、それを外れたところの人たちはどうしても、このノウハウとか、いろんなものが伝わりにくいし、それが地域の活性化まで結びつきにくいなと。それから、機器更新は所属機関頼みだということがあります。それから、これは別にプラットフォームの問題というよりは、プラットフォームに参加した機関の中でも、共共拠点でない部分のところは旅費や宿泊費が支給できないとかということがあります。もう一つは、これはいろいろと指摘も受けていますけど、他の手法もカバーした総合的な技術相談窓口を設けることができていないというのがあります。
次のスライドをお願いします。
そういう中で少し参考になるなというのは、やはりEU圏。EU圏の研究基盤といのは非常に先を進んでいまして、その成功例として構造生物学の研究基盤であるInstruct-ERICというものをちょっと紹介させていただきます。これは、ここに挙げましたとおり、いわゆる分散型の研究基盤ですが、構造生物学に特化しているものです。このERICというのは、欧州研究基盤コンソーシアムの登録機関と言ったらいいんでしょうかね。JSTのCRDSの記述を抜粋したところに書きますけど、要するに認定された法人になっていることで、特にEU諸国で求める法的能力を持っているところが強いというところです。ただ、実態は、イギリスのオックスフォードに事務所があって、参加する17のメンバーの国・組織に所属する施設が、サービス、技術、教育を提供し、ここの所属研究者はそういったものを享受することができるということです。それから、五つの関係国や六つの国際パートナー国もありますけれども、こういったことで、真ん中に法人がいて、その残りの国の施設がそういう活動に参加しているということです。
一つ付け加えますと、このInstructに参加した各施設は、別にInstructだけの活動しているわけじゃなくて、所属国では、所属の自治体の活動も、共用活動もしていますので、Instructでは構造生物学に特化したサービスをしているけども、所属国では別にそれに限らず、例えば、材料系のサービスをするとか、そういったことをしている施設もあるということを付け加えさせていただきます。これを参考として、次のスライドをお願いします。
NMRはどういうあるべきかという、これは一つの私案ですけれども、先ほどの集中型と分散型のハイブリッドに、EU圏を参考にしながら構成してもいいんじゃないかと思います。具体的には、一つは、真ん中に法人格を持つ統括組織を持って、これが契約一括化とかワンストップサービスを担う。一方、これまでのメンバー施設に関しては、少し性格づけを分けた、二つないしは三つのカテゴリーに分ける。特に、地域に根差すような施設に関しては、今までだけじゃなくて、さらにいろいろな施設ありますから、これまでにも加わってもらった、こういった形、こっちにちょっとしたポンチ絵を描きましたけど、こういった、いろいろなカテゴリーに合わせた性格づけをしたような組織を形成する。具体的に、例えば教育であれば、地域施設は、初学者、博士前期課程ぐらいをカバーし、コア施設は博士後期課程やポスドクの初期、アドバンスト施設はポスドクの後期やスタッフサイエンティストないしはシニアや再学習の人たちを対応する。こういったような形の分担をしていくというのはどうだろうかということです。統括組織があることによって、産業界との密接な関係の構築も可能ですし、海外のそういった法人格を有するところとの本格連携も可能になるだろうと。それから、地域施設までメンバーに入れることによって、技術・ノウハウを速やかに隅々まで普及することが可能だし、統括組織が一括して人材を束ねることによれば、キャリアパス形成にもより統一的なプログラムが導入できる。また、フラッグシップ装置、1.3ギガや1.2ギガクラスを真ん中のアドバンスト施設などに導入していく。こういうようなことも次の方向性として少し考えられていくんじゃないかということを考えています。
ただ、さらにですね、次のスライド、これは最後のスライドになりますけれども、その先にはこういった大型のNMRや上位レベルの分析、NMRだけじゃなくて、質量分析とか、そういったものも含めて、現行共用法対象外の大型機器を集積するような、先端的な計測・分析技術の統合的な拠点を国に設けるのも一案じゃないかというふうに思っております。これは別に1か所じゃなくて、例えば関東と関西ないしは最近すごく経済活動が活発化している中部地域、3拠点とか、2拠点とか、それをさらに広げて、4、5拠点というのもいいんだと思いますけど、そういったところに多種多様な先端機器を集積して、効率的に維持・共用する。これによって、効率的・高度な総合的分析も可能ですし、系統的な人材育成も可能になるでしょうと。さらに、ここにはメーカーも参加して、このメーカーがデモラボとしても機能する。ここで使う機器は今までよりも早いサイクルで更新していくけれども、そこで使われた機器は国・地域の連携大学へリースするとか、何とかすることで、どんどん活用していく。企業人材もここに来れば、学生ないしはポスドクと企業人材が、人的ネットワーク構築や、より実務的な教育もできるだろうということ。もちろんこれはプラットフォームや共用法対象施設とも連携していくというような形はどうかというふうな提案であります。場所は、私は関東の人間なので関東しか地域勘ないんですけど、例えば、羽田空港の近くとか、東京とか、品川とか、そういうような大型な駅の近く。多分、一般的な企業ですとこういうところにデモラボを置くのは大変ですけど、国が動くことによって、コスト的に難しい場所でも、ユーザー利便性が非常に高い場所にこういったものを置いて、運営体制は、企業連合、大学連合、国研、地方の自治体、国、そして、例えば分析機器工業会のような関連団体も加わって運営していくというのは、その先に検討してもいいんじゃないかなということで、ここでは提案をさせていただきます。ただし、これは私個人の意見であって、組織や取組の意見を代表するものではありませんし、関係機関との調整は一切していませんので、私の私案だということで御容赦ください。
というわけで、お時間いただき、ありがとうございました。私のプレゼンは、これで以上で終わらせていただきます。
【網塚部会長】 木川先生、どうもありがとうございました。プラットフォームの変遷から、NMRプラットフォームのこれまでの成果と課題、さらには、具体的な提案、EUの状況などを踏まえた具体的な今後の方針等のアイデアを詳しくお話ししていただきました。
この段階で、皆様から何か御意見などございますでしょうか。
江端委員、お願いします。
【江端委員】 1点だけ、確認させてください。全体像が非常によく分かって、今後の方向性も示していただきましたので、非常に議論を参考になる資料、本当にありがとうございました。
次の方向性としていろいろお示しいただいたところで、その前にEUの取組のお話でオックスフォードに事務所があるというような構造のお話をいただきましたけども、EUの仕組み自体の全体の年間予算とか、先生、御存じですかね。
【理化学研究所(木川)】 すみません。今すぐは分からないんですけど、調べれば分かると思います。ERICのほうのサイトに文書に載っています。ERICというのは、実際には法人が幾つも束ねられたものですけども、ここにたしか予算の情報が載っていたと思います。EUのHorizonか何かのところに行けば…Instruct全体のあれは、今すぐは把握していません。申し訳ありません。
【江端委員】 多分、数億円とかじゃなくて、10億円とか、数十億円……。
【理化学研究所(木川)】 10億円くらいだったような気がするんですけど、実は非常に構造が複雑でして、この下にさらに創薬のプログラムとか生命系のプログラムとかがぶら下がっていて、すぐにどれくらいの規模感かというのは読み取りにくい構造ではあります。調べれば分かります。
【江端委員】 ありがとうございます。
【網塚部会長】 上村委員、お願いします。
【上村委員】 どうも、木川先生、ありがとうございました。幾つか質問があって、答えられる範囲でお願いしたいのですが、一つは液体ヘリウムの価格が非常に上がっているということで、サーキュレーションするようなシステムも多分できていると思うんですけれども、これを組むことによって、拠点とネットワーク、先生がお考えになっているような組織ができたときには、液体ヘリウムの量は大幅にセーブされることはあるんですかね。
【理化学研究所(木川)】 多分、小規模なところは特に、今、空気放出しているところは多いと思って、それを改修することによって使用量はかなり減らすことは可能かなと。ただ、それには、我々が持っているような液化施設、ないしは、それ以外にも液化機能を提供しているところ、しようとしているところもありますので、そことの連携関係・協力は非常に大事というふうに思っています。
【上村委員】 いまだにサーキュレーションシステムを持ってないところも結構多いということですか。
【理化学研究所(木川)】 多いですね。
【上村委員】 分かりました。あと、1.5ギガのところなんですけど、ハイブリッド型って、どういうことの……。
【理化学研究所(木川)】 普通、我々が研究に使っているのは完全に超電導なのですが、これは、超電導の磁石の内側に、いわゆる電磁石、電気を入れて電磁石を供給しているという形のマグネットがハイブリッド型と言います。なので、強い磁場を達成することはより簡単なんですが、物すごい量の電気を必要とすること。それから、電力は意外と不安定なので磁場が揺れてしまうというようなことがあるので、いわゆる僕らが研究に使っているものはほぼ完全に超電導型なのでそれは安定していて、非常に性能がいいというところです。ただ、開発の段階というのは、こういったハイブリッド型というのはよく使われています。
【上村委員】 分かりました。
それからもう一つ、最後に結構重要なことなんですけども、ERICの組織というのは結構、構造生物学ということで統合的なインテグレーテッド・ストラクチュラル・バイオロジーをやられていると思うんですが、これは結局、一つとしては、箱物は多分できると思うんですけど、ソフトウエアといいますか、中身がちょっと心配で、私なんかも、今、BINDSをやっていてね、こういうときはどうしたらいいかという、よろず相談窓口というのを設けて、一番アプロプリエートな戦略のプレスビューはこちらから言うんですね。確認するんですけど、そういうものを今の拠点でやっちゃうと、例えば東と西に両方置かなきゃいけないということになると非常に非効率なので、一つに統合するような形でやるほうがいいんじゃないかなというふうに、個人的に思うんですね。知財とかもそうですし、拠点が増えると3か所分に置くというのもちょっと難しいので、そこはもうちょっと、箱物的なものとプラス統合的な一つの組織ですよね。そこに関してはもうちょっと具体的なものを提案していただけると、もうちょっとイメージが湧くといいますか、多分、そういう形で統合されているんだと思うんですけど、そうすると、法人化というのはすごくリーズナブルだし、すごく効率がいいように思いますので、今の木川先生の私案にプラスアルファして、それらをもうちょっと統合的に見れるような、インテグレートした形の運用のところをつくっていただけるといいのかなというふうに思ったりもします。コメントです。
【理化学研究所(木川)】 どうもありがとうございます。EUは、事務所はいわゆる事務機能で、サイエンティストとしてのアドバイザーは17メンバー国から参加して、多分、バーチャルな世界でやっているというふうに聞いております。そこら辺は、非常に上手にオーガナイズしているのは、何人かのキーパーソンがいるというふうに聞いております。
【上村委員】 そうだと思います。そこがやっぱり組織づくりの、箱という形のやつじゃなくて、特に大事なので、その辺が御提案いただけると、もっと具体性が……。
【理化学研究所(木川)】 そういう意味では、今、課題選定委員会というのが、そこまでじゃないにしても、そういう機能で、実際に参加している人は、大阪だったり、東京だったり、北海道だったりしていまして、その中である程度やるのはできていますが、それをさらに充実した形に展開するのかなあと思っていますが……。
【上村委員】 そうですね。結構、めちゃくちゃ言ってくるので、その辺のいわゆる戦略を立ててあげるというのって相当なエキスパートじゃないとできないので、そこのところはキーパーソンが必要かと思いました。
【理化学研究所(木川)】 そういう意味では、人的なインペンデントになりますけど、そういうキーパーソンが非常に大事かなと思っています。アドバイス、どうもありがとうございます。
【上村委員】 以上です。
【網塚部会長】 ありがとうございました。
それでは、次に参りたいと思います。資料2に基づいて、飯田委員から御説明をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
【飯田委員】 ありがとうございます。島津製作所の飯田でございます。本日は、このような貴重な機会をいただき、関係者の皆様に御礼申し上げます。「世界と戦える最先端を追求する機器の開発、導入、共用化~共用研究設備・機器の整備・運用と開発の観点から大学等研究機関と機器メーカー等企業との組織的な連携に関して~」と題して、機器メーカーの立場から、お話しさせていただきます。なお、このタイトルは、前回10月31日の部会資料から引用させていただいております。
次のスライド(P23)、お願いいたします。
本日はまず、日本の最先端機器開発現状に対する危機感について述べ、さきの「JST先端計測機器開発事業」での島津製作所の事例を二つ御紹介し、成功の定義について少し考えたいと思います。次に、日本分析機器工業会(JAIMA)や自社で検討いたしました「企業からみた先端研究機器開発に関わる課題」を基に、世界最先端の基礎研究力強化を計測分析機器が支える仕組みづくりについての提言として、「人・情報・モノが集まる最先端機器開発につながる研究拠点」についての1案、私案を述べたいと思います。
次のスライド(P24)、お願いします。
日本の最先端機器開発現状に対する危機感につきまして、スライドの冒頭は、日本分析機器工業会ホームページから引用したものです。「過去のノーベル物理学賞、化学賞、医学生理学賞の約20%が分析の原理の発見や装置・技術の開発に対して与えられていること」から、科学の発展によって実現された多くのイノベーションを分析技術が支えてきた。サイエンスにおける先端研究は機器開発と一体であると言っても過言ではないと思います。しかしながら、現在、日本では海外製計測機器に日本の研究者が頼らざるを得ない現状で、このスライドに示しますような、いろいろな不都合が生じています。その結果、「科学の発展により実現されるイノベーション力の低下」に対する強い危機感がございます。
次のスライド(P25)、お願いします。
先端機器を大学の研究者と機器メーカーが開発する取組として、さきの「JST先端計測機器開発事業」で島津製作所が取り組んだ例を二つお示しします。
まず、一つ目がSFC(超臨界流体クロマトグラフィー)です。これは世界初の超臨界流体での抽出と分離を一体化した分析システムで、大学の開発研究者、九大馬場教授は、今年度、文部科学大臣賞「科学技術賞(研究部門)」を「超臨界流体を用いた新たな代謝物分析技術の開発に関する研究」で受賞されております。SFCは島津製作所の製品としましても、例えば、米国の大手製薬企業のドアオープナーになるなど、成功しています。この成功の要因として、馬場教授がSFCの最先端の研究者であること、また、開発チームに、システムを使うユーザー2者も参画し、応用オリエンテッドな開発であったこと、また、馬場研で、バラック機すなわち構想実証機、α機、β機、製品候補機まで全て評価いただき、製品発売後も馬場教授が企業と密な連携を続け、機能強化・改善を継続してきたということがあると思います。
次のスライド(P26)、お願いいたします。
二つ目の事例は、イメージング質量顕微鏡です。開発に、I期、II期、合計8年かけておりまして、瀬藤教授の「顕微鏡とMSイメージングを同時に観測し、重ねて解析できれば医学研究に大きく貢献する」という思いから、プロジェクトがスタートいたしました。そして、世界オンリーワン、ナンバーワンの装置として製品化され、世界で販売いたしました。本製品は、サイエンス及び世界での日本の最先端機器のプレゼンスを示すという視点で一定以上の成功を収めたと言えます。島津研究所としても共同研究のため、かなりの台数の装置貸与やデモ機提供もいたしましたが、個社での最先端分野でのアプリケーション開発力と普及力の限界というものもあり、その結果、性能・機能強化を継続的に行えなかったということがございます。
この二つの開発は、当該事業の成功事例と言っていただいております。2例とも世界初となる製品をグローバルに販売し、機器メーカーである島津製作所におきましても、新規事業として販売実績を上げました。ただ、本部会での議論の視点で見てみますと、違う景色も見えるように思います。SFCの場合、開発者である馬場先生がずっと島津製作所と動き、時間をかけて国際的な認知度が高まり販売も伸びておりますが、競合がひしめく最先端の用途ではなく先生お一人の力で何とかなってきたという面もあるのではないかと思います。
サイエンスの最先端で使われる機器で、欧米を中心とする海外メーカーがしのぎを削る分野の機器に該当しますイメージング質量顕微鏡は、発売時、世界Only One、No.1として、学会発表、論文発表もいろいろな研究チームから行いましたが、現状、日本の最先端研究者が海外勢の機器を導入する状況になっています。
この部会の議論である、世界で戦える最先端を追求する機器を開発し、サイエンスとして成果を上げ、その成果で社会に貢献するためには、開発した最先端の機器の有用性を世界に迅速に発信し、認知度を上げ、改良を続けるための仕組みづくりが大切であると考えています。
次のスライド(P27)、お願いします。
日本分析機器工業会(JAIMA)や自社で検討いたしました、先端研究機器開発に関わる課題をまとめました。まず1点目は、表現が難しいですが、研究者(アカデミア)と機器メーカーの立ち位置の違いです。昨今はサイエンスで社会課題の解決に貢献するという意識を持たれる研究者が大変増えていると感じておりますが、一般論といたしましてはインパクトファクターが高いジャーナルに論文を出すことに研究者の意識が向く傾向があると言われ、これに対し、機器メーカー、企業は、製品化し、それがどれだけ社会に受け入れられるか、すなわち売れるかということが重要で、ギャップがある、このブリッジ機能が必要という点です。
2点目は、サイエンスに貢献する世界最高・最先端の機器を開発するためには、世界最高を熟知していて、かつ、機器メーカーに協力いただけるパートナー研究者が重要という点です。
3点目は、サイエンスの最先端で研究に使える機器は、現在、欧米中心に海外メーカーが海外のトップ研究者と組んで開発・普及をどんどん進めている状況の下、日本の機器メーカーは、エッジが利いた革新的な機器の開発や、その応用開発、共同研究に充当できるリソースや人的ネットワークに限界があるという課題がございます。
最後、4点目は、大学に限らず、ユーザー企業においてもですが、機器メーカーの開発者と肩を並べるエキスパート人材の減少です。
次のスライド(P28)、お願いします。
このような現状を鑑み、本部会での検討を踏まえ、世界最先端の基礎研究力強化を計測・分析機器が支える仕組みづくりについての提言として、「人・情報・モノ(機器)が集まる最先端機器開発につながる研究拠点事業」について、御提案したいと思います。なお、この提案は、飯田の私案でございまして、所属する組織の取組を代表するものではございません。また、関係各所との調整も行っていない旨、お断りさせていただきます。
日本の研究力を底上げし、世界トップジャーナルに論文発表する研究者を増やし、日本発の機器が世界トップ企業と伍して世界で使われ、機器メーカーの開発技術者と同等以上の実力を持つスーパーエキスパート並びに機器メーカー認定の高いスキルを持つ人材を育成、社会での活躍を支援することにより、日本の研究力向上を図り、科学的な研究成果を上げ、社会課題の解決に資することを目的とするものです。
次のスライド(P29)、お願いします。
研究拠点の概要について、説明させていただきます。世界トップクラスと認められている機器を開発製造する機器メーカー、例えば5社程度が、世界トップを目指す次世代の機器の開発でパートナーになってくれる、その機器を使い、その機器が研究に重要である分野、例えばライフサイエンスで世界に認められる研究者、以後、パートナー研究者と呼ばせていただきますが、そのパートナー研究者が所属する大学に研究拠点をつくります。
研究拠点には、機器メーカーの最先端・最高性能の装置、例えば1台2億円程度のイメージで、それを5台程度なり複数台設置し、この研究拠点が優秀なテクニカルスタッフを1台に1名確保し、この優秀なテクニカルスタッフに機器メーカーがさらにアドバンストな、スーパーエキスパートトレーニングを提供し、運営のために運営長を置くというイメージです。
機器は、機器メーカーから保守並びに後進モデル発売時は新モデルに置き換えるという契約で購入ということを想定しています。世界最先端の研究に使われる機器は比較的短い間隔でモデルチェンジしていきますので、このような条件にすることで、この研究拠点には常に最新モデルが在るという状況をつくります。想定している世界トップに伍す機種として、例えば、クライオ電顕、電顕、また、質量分析計と書いております。質量分析計はコモディティーに非常に広く使われているタイプもありますが、バイオ高分子などで、今まで測定できなかったことが測定できるような新しい技術に基づく製品というのも次々出ておりますので、こういう高分解能質量分析計を想定しています。また、超分解能光学顕微鏡など、このような機種についての拠点を考えてみました。
研究拠点は、パートナー研究者の研究分野を中心に拠点を形成し、その分野の世界トップであるパートナー研究者との議論や、優秀なテクニカルスタッフが測定する高品質のデータを得るために大学・企業が有償でサンプルの測定依頼に集まるという仕組みができないかと思います。
次のスライド(P30)、お願いします。
その期間ですが、先ほどイメージング質量顕微鏡の例で8年間と申し上げましたが、非常に革新的な機器の要素技術開発には相応の時間が必要で、なかなか2年、3年で開発できるものではないということを踏まえ、仮にここでは1期5年で2期としております。
まず、I期目は、機器メーカーは人や情報が集積する研究拠点のクローズな場所に、現在開発中のエッジが利いた、今まで取れなかったデータが取れるような、機械のβ機を設置します。研究拠点に集まった多くの大学や企業の中から、一定の条件を満たす研究グループと秘密保持契約を締結し、β機でデータを測定する、そして、β機のデータを得た研究者は、そのデータを使った成果を早期に論文発表するという形です。
第Ⅱ期は、この研究拠点設置後、速やかにといいますか、できるだけ早くといいますか、パートナー研究者を中心に研究拠点に集まるユーザーから機器メーカーに対して、次に開発する機器に対する要望等をインプットし、要素技術開発を行う。この要素技術に基づく革新的な装置・機器のβ機を、第Ⅱ期でこの研究拠点に置き、β機データを使った論文を、望むらくはトップジャーナルで発表するという流れです。
次(P31)、お願いします。
そして、この研究拠点を人材育成と活躍の場として活用し、この研究開発基盤部会の共用事業の成果を生かし、さらにそれを進め、DX・自動化を活用して、研究拠点は物理的にどこかの大学に置きますが、そこを日本全土で活用するという形ができると思います。人材育成に関しては、研究拠点に最先端の装置を導入し、それをうまく使う人、すなわちエキスパートを雇用し、さらにそのエキスパートを機器メーカーがスーパーエキスパートに育成することを考えています。開発中の最先端機器のβ機というのは誰でもが使えるような形になっておりませんので、通常は開発技術者自身が使います。このβ機を研究拠点に置いて、高品質のデータを出すためには、機器メーカーの開発技術者が、もともとエキスパートだった人をさらにアドバンスなトレーニングを行い、学んでいただき、β機での論文発表用の分析・解析はそのスーパーエキスパートが主に担当するという形になれば、この人たちは論文のCo-authorになるでしょうし、これによりその人たちのキャリアというのもまたキャリアアップにつながると考えます。
また、機器のハイレベルなスキルの修得希望者(ポスドクを含む)は特任研究員のように経歴に研究期間として記載可能な待遇で、研究拠点にて機器測定の最先端スキルをOJTで修得し、給与も得る。このOJTとは、研究拠点で行われる有償の分析を、その分野で世界トップクラスのパートナー研究者のチームとディスカッション等も含めながら、スーパーエキスパートの指導の下、担当することでスキルアップを図って頂く。そして、現在、分析科学に関する資格に、ハンズオンスキルを評価する資格がございませんので、企業認定の資格を企業がつくって、1年後なり一定の期間にその人たちの修得技術レベルをしっかりと可視化し、頑張ればさらに上のレベルになり、就職にも資する形にできないかと思います。研究拠点をスキル修得の場として使い、日本のテクニカル人材全体のレベルアップに資する形にしたいと考えてます。
次のスライド(P32)、お願いします。
これが最後のスライドです。今、御説明させていただいた内容をポンチ絵で描いてみました。もともとパートナー研究者はラボをお持ちで、そこには競合メーカーのトップ機器も入っています。研究拠点には、機器メーカーとパートナー研究者がいて、機器メーカーのトップ機器を5台なら5台置き、また、β機も置く。そして、最先端機器1台に1人という形で想定したエキスパートを機器メーカーの開発技術者がトレーニングして、β機で良いデータが取れるようにする。その下のテクニカルスタッフの人がOJTでスキルを磨いていく。この薄いグレーの丸は拠点を有償利用するユーザー、濃いグレーの丸は、その中でβ機を使い、今まで測れなかったものが測れるということで、望むらくはトップジャーナルに論文を発表していただく研究機関。○○○研究拠点の○○○のところは、パートナー研究者の専門分野、ライフサイエンスならライフサイエンスの拠点という形で考えています。世界で戦える最先端を追求する機器の開発、導入、共用化に関し、先端ユーザーのニーズを迅速に取り込み、開発した機器を様々な研究機関が活用し、科学的な成果を上げ、イノベーションによる社会貢献をするために、人が集まり、情報が交わされる、オープンイノべーションの場をつくり、人々を巻き込む仕組みが創設できれば、と考えております。
私の発表は、以上です。御清聴、ありがとうございました。
【網塚部会長】 飯田委員、ありがとうございました。機器メーカーの視点から、最先端機器の開発、そして研究拠点の構築、さらに、そこから共用化を図っていくという、非常に具体的なアイデアを御紹介いただきました。ありがとうございました。
皆様から、ただいまの御説明につきまして、何か、御質問、御意見など、ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、事務局から、資料3に基づいて、主な論点等について御説明をお願いしたいと思うのですが、高橋委員が間もなく退席になられますでしょうか。
【高橋部会長代理】 はい。すみません、そろそろ退席させていただきます。
【網塚部会長】 御退席まであと数分あるんですけれども、ここまでのところでもし御意見などございましたら御発言いただけたらと思うんですが、突然ですが。
【高橋部会長代理】 非常に分かりやすくて、助かりました。二つの話をお伺いしていて、共通するのはどういう人材を巻き込んでいくかというところかなと思っていまして、今の飯田委員からの話ですと、メーカーを巻き込んで、そのメーカーのトレーニングも活用してということだったので、そういうところが非常に重要になってくるんだなというふうに思いましたし、一つ目の話では、法人格というような具体的な形をつくっていくときに、そこにどういう人を巻き込んでいくのかというところが課題になりそうだなというふうに思いまして、その辺り、海外のうまくいっている事例でどういうふうに人材を確保あるいは育てているのかというところは、もう少し情報があればうれしいなというふうには感じました。非常に有意義なお話をいただき、ありがとうございます。
【網塚部会長】 どうもありがとうございました。追加で何か御意見などございましたら、後でメールを事務局のほうにお送りいただけたらと思います。お忙しいところをありがとうございました。
【高橋部会長代理】 ありがとうございます。
【網塚部会長】 ほかに、皆様から何か、飯田委員からの御説明につきまして、御質問などございますでしょうか。
特にないようでしたら、続きまして、資料3の主な論点等について、事務局から御説明をお願いいたします。
【野田課長】 研究環境課、野田です。資料3-1と3―2につきまして、私のほうから御説明いたします。
まず、資料3-1でございますけれども、前回御議論いただいた内容を反映して更新しましたので、その部分につきまして御説明させていただきます。
38ページまで飛んでいただきまして、赤字で記載をしております。まず、全体の見える化というところにつきましては、前回、この前提として、見える化の取組によってオールジャパンで情報をシェアできるような仕組みとして構築することが重要であるという御意見をいただきましたので、それを反映しています。
次に、最先端・国内有数の設備の共用でございますけれども、「分野・装置毎のネットワーク化により」ということで限定的に記載しておりましたけれども、必ずしもこういったネットワーク化・プラットフォーム化に限らないのではないかといった御意見がございましたので、「等」をつけてございます。また、技術開発の観点でのグループ化というのも考えられるという御意見も反映をしております。最先端の高度化・開発というところにつきましては、技術開発に携わることができる人材、これには、研究者、技術者、双方入るということでございますけれども、その把握、見える化が必要ではないかという御意見がございましたので、反映をしているところです。
続いて、基盤的設備のところですけれども、ここは、まず、冒頭のところを分かりやすく、「共用化が進んでいる研究大学等」というところで補足しております。また、前回、そのような大学が中心になるとして、インセンティブの検討が必要だという御意見を頂戴しておりますので、反映いたしております。次の研究成果・研究ニーズの創出等というところでございますけれども、技術専門人材につきましても、前回、様々御意見いただきましたが、そもそもの数やポストが圧倒的に足りないという御意見もございましたので、「その拡充に向けた」というところで補足しております。加えて、海外の事例も踏まえて、教職員との適正な人数バランスがあるのではないかということがございましたので、そこも追記をいたしました。さらに、大学院生等の教育という面、アカデミアに残るのは僅かであって、研究と教育は分けて、共用機器等を使える人材を企業に出していくといったところも考えるべきといった御意見もいただいておりましたので、そのことを明記してございます。データの利活用に関しても前回様々御意見をいただきましたけれども、分野によっても状況は異なるということがございまして、ARIMなどの各分野の先行する取組のノウハウを反映させていくことが必要であるというところを欄外に記載してございます。それから、最後に➀の共用のネットワークの構築というところですけれども、ネットワークというのを考える際には、様々なトップサイエンスを目指すのか、そうではないのかといったようなことも含めて、階層構造を設けることも検討が必要ではないかという御意見を反映してございます。
続きまして、39ページでございます。こちらは大学等研究機関と機器メーカー等民間企業との組織的な連携に関する論点でございますけれども、まず、最先端・国内有数の設備というところにつきましては、前回、「アーリーアダプタ」という言葉・概念で御説明いただきましたので、それをこちらにも反映させていただきまして、明確化しています。加えて、そういった1号機等をいち早く共用の場に導入をした上で、利用技術の共同開発などによって、多様な分野であったり、汎用化を進めて、いずれ共用に結びつけていくという視点が重要であるといった御意見がございましたので、補足で追記してございます。
基盤的設備に関しましては、人材のところで、ソフトとハード、両面の人材が必要というところを追記いたしました。
さらに、先進事例のところでございますけれども、今日も「オープンイノベーション」といった言葉も少し出ましたけれども、これまでの研究基盤というキーワードだけではなく、オープンイノベーションといったところも前面に出して企業等を巻き込んでいくことが重要といった御意見がございましたので、こちらを反映しています。加えて、マネジメントに関しては、機関の枠を超えて考えていくことが必要ではないかといった御意見がございましたので、こちらを反映いたしました。さらに、最後の点ですけれども、前回、契約の工夫といったところだけ記載しておりましたが、さらに明確化のため、「契約・会計手続きや資産管理の新たな考え方」、例示として「ㇾンタルリース」といったところも追記しております。
論点につきましては以上でございまして、続いて、資料3-2、進め方でございます。こちらも前回御説明をしているところでございますけれども、41ページでございます。本日、関係機関のヒアリングということで、2件、ヒアリングをさせていただいておりますけれども、次回12月23日に、前回も御説明しました、個別の研究大学の事例について現状分析等を行う検討会での議論の状況についても御報告をさせていただいて、御議論いただきたいと考えております。その上で、最終回になりますけども、2月3日に取りまとめ案の御審議をいただきたいと考えてございます。
御説明、以上でございます。
【網塚部会長】 野田課長、どうもありがとうございました。
それでは、これまでの御説明を踏まえた議論に入りたいと思います。当面5年間に必要な共用推進に係る取組について論点をおまとめいただきましたけれども、これらと、それから、本日、二つの御発表をいただきましたが、それらに関して、感想でも構いませんので、御意見をいただけたらと思います。
それでは、いつものようにお一人ずつお願いしたいと思いますけれども、岡部委員が間もなく退席されるということで、まず、岡部先生からお話をお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか。
【岡部委員】 今日、お話を聞いて、やっぱり体系的にやらないといけないんだなあということを勉強させていただきました。今日はたまたま機械学会で島根に来ているんですけど、どの機器でどういう計測をしているんだという話が結構学会の中でもあって、SPring-8を使っているんだとか、NMRを使っているんだというのがあって、やはり若い人たちが研究を考えるときのきっかけになるんだなあというのを改めて認識したなというふうに思っています。今日、研究環境課さんから出されていただいた提案に関しては、なるほどなあと思いました。
雑駁な意見というか、コメントなってしまいましたけども、以上になります。
【網塚部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、雨宮委員、お願いできますでしょうか。
【雨宮委員】 どうもありがとうございます。雨宮です。
今日は二つの話を聞かせていただきまして、いずれも、とても感銘を受けたというか、非常に参考になったんですけれども、特に飯田委員がお話しされたことに関連して、分析機器というか、分析手法というか、開発といったものは、私は大学共同利用機関におりますので、現場でたくさんのそういった開発を、我々自身もですし、大学等の先生たちがしているところも見ているんですけれども、それで非常に感じるのは、皆さん、本当に面白いアイデア、いいアイデアをお持ちで、どんどんトライするんですね。その結果、うまくいくこともあるんですが、うまくいかないことも結構あって、その一つの理由は、技術力が付随してないというんですか、アイデアはいいんだけど、それを実現する技術が必ずしもない場合があって、やっぱり、アイデアだけではなくて、当然、技術力というのも絶対必要だと。次に、その二つがうまくマッチして、めでたく成功しました、世界で初めての測定ができましたと行くんです。それはすばらしいんですけれども、それが普及しないんですね、今度は。それが、一つには、先ほどの話にも出てきましたけど、例えばトップジャーナルにそれが出ていく、どんどん出ていく、そういうことがあると普及していくと思うんですけれども、すごくいい分析手法だけど、それが世に出ないということも結構たくさん見てきているので、先ほどお話しくださったように、パートナー研究者という名前でしたか、新しく開発したものを使って、トップジャーナルなり何なり、どんどん世に出していける、そういう人も絶対必要なんだなというのを強く感じました。なので、アイデアと、技術力と、さらにそれを普及させる力、その三つがそろうというのがとても大切なんだなというふうに感じた次第です。どうもありがとうございます。
【網塚部会長】 ありがとうございます。
ただいまの御発言につきまして、何かコメント等ございますでしょうか。
よろしいですか。
次、順番だと飯田委員なんですけど、先ほど御発表いただきましたので、皆さんの意見を伺った後、最後にまたコメントをいただければと思います。
木川先生にも回しますので、御準備、よろしくお願いします。
それでは、続きまして、江端委員、お願いします。
【江端委員】 私、次だと思ってなかったので、今、準備してなかったんですけど、ちょっと切り替えます。
まず、本日、飯田委員から御説明いただいたJSTの先端計測の成功事例、あの二つは私もよく存じておりまして、研究者と企業さんがしっかりと連携してできた、本当にいい事例だというふうに思っております。あの事例が、ほかにどれだけ、どこにどれだけあるのかというところは、以前の部会でもちょっとお話ししたかもしれないですけども、きちんとどこまでフォローできてたのかなというところは、非常に気になるところです。逆に言うと、失敗したとか、ここがうまくいかなかったというところの問題点をしっかりと洗い出した上での次なる展開というところを検討いただくというところも非常に重要かなと思っています。そういった意味で、パートナー研究者というような言い方をされていましたけども、そういった研究者の方が、いざこういう研究開発に臨もうと、意欲的にチャレンジしようというふうに思う環境ってどうつくるのかなというところは非常に重要だと思っておりまして、研究者を育てる環境について、今回のまとめの資料の中には少しなかったかなあというような気がしております。そういった意味で、例えば最先端・国内有数の設備というふうに書いてあるところには必ずそういった研究者の方々はいらっしゃると思いますので、その研究者の先生方に対するインセンティブ設計をどうするのかというところが非常にポイントだと思っています。
加えて、38ページの最先端・国内有数の設備というふうに書いてあるところに整理されるところで、国際的な視点というところが今回の資料にはどこにも入ってないかなと、私、一見したらなかったなあと思いまして、この点につきましては木川先生からもお話がありましたけども、こういった国際連携を推進するための仕組みというところをこのエコシステムの中に組み込んでいくというところは非常に重要かなというふうに思っております。我が国の研究力強化に資する研究基盤という視点から、ぜひ、国際競争力を上げるための研究者のための環境整備と、国際連携を推進するための仕組みづくりというところは、ぜひご検討いただきながら、どう加えるかというのは改めて御相談できればと思いますけども、その2点、ぜひ御検討いただければと思っております。よろしくお願いします。
【網塚部会長】 ありがとうございます。
ただいまの御意見について、何かコメントなどございますでしょうか。
特にないようでしたら、続きまして、岡田委員お願いいたします。
【岡田委員】 まず、たしか前回の会のときにアーリーアダプタという言葉を出したのは私だと思うので、それを早速取り上げていただいて、今回、かなり中心的な論点にしていただいて、ありがとうございます。
基本的に、今回の木川さんのお話も、飯田さんのお話も、木川さんのお話は、アーリーアダプタに相当するような最先端のトップのものからコモディティーまでうまくネットワークにしていくことが重要であるというお話だったと思います。そういう意味でも、アーリーアダプタに相当するような、世界で初めて上市されるような機械をいち早く導入して、それの利用技術をいかに育てていくか。木川さんの話でも強調されていたと思うんですけど、そういう最先端の機械を置くことで、それを使う人材というのはそこで育成されて、そこで利用技術が広まって、さらにそれが落下傘のようにコモディティーにより近いほうに技術がスプレッドしていくと。そういう人材のネットワークと循環をつくっていくのが大事だというのを実際の事例を含めて成功例としてお話しいただいたと思うんですけど、それはすごく重要な論点で、お金を出してモノを買うというのも大事だと思うんですが、これまでも何回か指摘させていただいていると思うんですけど、こういう共通機器みたいな話をするときには常に、それをいかにうまく使う人がいるかというのが重要で、しかも、いわゆる技術者というか、テクニシャンとして装置を使うというよりは、研究のプロジェクトの中の非常に重要な一角を担うメンバーとして、本当に最先端のものを使う、非常に優れた能力を持つ人というのが必要であると。それを育てていく場にもなるという意味で、非常に重要な御指摘だったと思います。
それを国内のメーカーさんの観点から、いかに国内で、そういうメーカーと、アカデミアと、さらにそこにメーカーとアカデミアの枠を超えた人材育成の場をつくっていくというのを御提案いただいたのが飯田さんの拠点の話だというふうに理解していまして、そういう意味では、非常にうまく回ればいいなというふうに思っています。
前回も少しお話しさせていただいたかもしれないですが、最先端の機器を自ら導入したり開発したりして研究している、先ほどのトップ研究者みたいな方は、それぞれマインドセットが違う方々がそれぞれだと思うんですけれども、でも、個人的な経験からすると、どちらかというと、みんなと協力してというよりも、独り自分のサイエンスができればいいというタイプの方ももちろんいらっしゃるんですが、その一方で、技術のスプレッドにすごく興味と関心を持っておられて、例えば、自らつくったような新しい技術であるとか、そういうものをみんなに使ってもらいたいけど、でも、個人ではできることが限られているから、いろんな人に協力してもらいたいというマインドセットを持っておられる先生方もたくさんおられると思いまして、先ほどの飯田さんの馬場先生の成功例なんかもその典型的な例だと思うんですけれども、そういういいパートナー研究者の方々をうまくサポートして、日本のある意味、こういう話をしていく上で鍵になる、宝となるような人材ですので、そういう人たちに中心になってもらって活躍していただく場をつくっていくという意味で、成功例も含めて非常に具体的な御提案だったので、うまくこの成功例を発展させて、どう具体化させていくか。また、国際的という部分もありましたけど、これはすごく難しくて、例えば、海外のメーカーがそこに入ってきたらどうするんだとかっていう話になると、最悪の場合、日本のそういうすばらしい研究者の知恵とかノウハウが海外のメーカーに全部吸い取られて、何だったんだろうということになってしまいかねないですので、その辺、どういうフェーズでどういう形で国際連携するかとかいうのは、また別のレベルの話として議論が必要かなと思いました。
取りあえず、以上です。
【網塚部会長】 どうもありがとうございました。
ただいまの御発言について、何かコメントなどございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、続きまして、上西委員、お願いいたします。
【上西委員】 上西です。今日は、二つの事例をお話しいただきまして、大変勉強になりました。ありがとうございました。
研究基盤エコシステムを構築していく上で、先ほどから人が大事だという話が出ていましたが、技術的にスキルの高い人材が必要だというのは言うまでもないですけれども、エコシステムとか、ネットワークとか、グループとか、プラットフォームとか、そういう言葉が出てくるステージになってくると、ステークホルダーがたくさんいるので、マネジメント能力というのが相当重要になってくるんだろうなあというのがあって、キーになる人というのは、そういうマネジメント能力が高い必要があると思いました。恐らく、ヨーロッパの機関がうまくいっているのも、相当マネジメント能力の高い人がいて、そういう人らが引っ張っていっているのではないかなあと思いました。そういう意味で、例えば知財に詳しいような人も要るでしょうし、それから、ユーザーのニーズをしっかり受け止めるような、マーケティングに詳しいような人も要るでしょうし、いろいろなマネジャー、マネジメント能力が求められてくるようなステージに研究基盤もなってきていると思います。活用が広がっていけば広がっていくほど、マネジメント能力というのが問われてくると思うので、研究機器にも詳しいし、マネジメントにもたけた、そういう人を育てていくというのが、今後、研究基盤を発展させていくためにも必要なんじゃないかなと思いました。
以上です。
【網塚部会長】 どうもありがとうございます。
何か、皆様からコメントはございますでしょうか。
特にないようでしたら、続きまして、上村委員、お願いいたします。
【上村委員】 今、皆さんがおっしゃったとおりで、全て同意なんですけど、私はJSTの未来創造の共通基盤領域のほうもやっているんですけど、やはり、すごく発想はよくても製品にするところが弱いというのがあったりして、そうすると結局、先ほど岡田先生がおっしゃったみたいにアイデアだけ取られて、欧米だけじゃなくて、中国も物すごく、みんなウミガメで、向こうで教育を受けた人が帰っていますので。企業もそういう意味では生き馬の目を抜くようなところがございまして、そこを我が国がどうやって勝っていくかというところというのは、今まで、いいアイデアがあっても市場に出せなかったとか、トップジャーナルにやったけど、結局、なんて言うんですかね、皆さんに使っていただくところまで行かなかったとか、そういうのって、いろんなところがちょっと貧弱だったんじゃないかなというふうに思うんですよね。ですから、そういうところを国の方針として、国家方針として、リンケージした形でちゃんといいアイデアを育て、飯田委員がおっしゃったみたいな、パートナー研究者とか、エキスパート人材とか、スーパーエキスパートとか、そういうところも含めまして、ちゃんと製品にして、しかもマーケットを取っていくような戦略を全体的に考える必要があるという意味で、この拠点というか、プラットフォーム事業というのは非常に、今までいわゆる貧弱だった部分を補完して強くするというようなところに、元年としてやっていけるというか、スタートアップできるというような形をぜひつくっていければ、すごくいいんじゃないかなと思いました。本当に全てアイデアと人なので、その辺のところはやはり非常に重要なところではないかと思います。
以上です。
【網塚部会長】 ありがとうございました。
ただいまの御発言につきまして、皆様から何か御意見ございますでしょうか。
よろしいですか。
それでは、続きまして、田中委員、お願いいたします。
【田中委員】 本日は貴重なお話を聞かせていただきまして、2人の先生、ありがとうございました。特に最初のプラットフォーム事業のほうですね、私はARIMを担当しているので、複数の機関で進めていくことの難しさというのはやはりあまり変わらなくて、法人格を有しないからそういう活動ができないというところは、とても深くうなずくところでした。
大体の御意見はもう出てしまったのであれなんですけれども、人材育成というのは、非常に大変だなあと、難しいことだと考えていますし、その確保も難しいと。NMRのプラットフォームということなんですけども、我々のARIMのほうにもNMRはあり、それを共用していて、例えば、NIMSには溶液もあれば固体もあって、固体は500と800を運用しているというような状況なんですけど、あまりなんというか、リサーチインフラ側とプラットフォーム側で情報交換するような場はあまりないなということをちょっと思った次第で、そこでも交流があれば、さらに人材の育成ですとか流動性が広がるんじゃないかなというふうに思いました。顕微イメージングソリューションのほうでは、一部の先生が両方を兼ねられていて、ARIMに入っている先生もおられるので、そこはうまくコラボしたような企画をやられているようなので、もしそういうことが可能だったらば、それ以外のプラットフォームはあまり重なるところはないのかもしれないですけれども、それ以外にも、コアファシリティのほうでとか、各事業の中だけではなくて、もっといろいろ連携することで少し解決できるようなことがあるのかもしれないなと思いながら、聞かせていただきました。
私からは、以上です。
【網塚部会長】 ありがとうございます。
皆様から、何かコメントはございますでしょうか。
よろしいですか。
それでは、鳴瀧委員、お願いいたします。
【鳴瀧委員】 ありがとうございます。鳴瀧です。
まず、今日、2人の先生方の話を聞かせていただきまして、大変感銘を受けました。木川さんのお話では、拠点を選んでトップレベルの研究成果を出しつつ、例えばリース等を活用して地域の研究力も底上げしていくような仕組みは非常に面白いと思いましたし、あとは、飯田委員からありました、誰と組むか、トップ研究者と組んで成果を上げていくという進め方も非常に参考になりました。
一方で、お二方が課題として挙げられたところも印象に残りまして、例えば、木川先生からありました、NMRに関しての技術相談というのはかなりしっかりできているけれども、例えば、ほかの先端機器と組み合わせて、さらによい研究にするようなところの技術相談が難しいということや、あと、皆様からもありましたが、飯田委員からの、良いものができても、なかなかユーザーが増えなくて普及しないという辺りです。要は、どうやって広報活動するか、普及活動していくかという戦略についての議論を、もっと深めていく必要があるのかなと思いました。
例えば、私は高分子化学分野の研究者ですが、普段、学会へ行ったり、論文を読んだりしていても、なかなか、例えば今日御紹介いただいたような超臨界分析といった技術に触れる機会がなかったのですが、今日、お話を聞いて、ちょっと興味が湧いたんですね。なので、どうやって異分野の研究者に興味を持ってもらって対話する機会をつくるかといった辺りの仕組みづくりを、今後、議論していけると良いと感じました。
以上です。
【網塚部会長】 どうもありがとうございます。
皆様から、何か御意見ございますでしょうか。
よろしいですか。
それでは、宮下委員、お願いいたします。
【宮下委員】 宮下でございます。本日は、大変興味深い御講演をありがとうございました。非常に参考になりました。
課題は、この体制づくりであるとか、どういうふうに継続的にやっていくとかというところもございますし、一番の本質的なところは予算なんでしょうね。予算があれば何でもできますので、予算をどういうふうに獲得するかです。私の私見になりますが、予算化には一般人の感覚に合っているか、社会にいる誰もがそれに共感できるかというところが非常に大切と思います。例としましては、例えばiPS細胞だったら、それ自体は私も含めて素人が初めて聞いたら何が何だか分からないですけど、不老不死は社会の誰もが理解できます。また、いかにも世の中に役立たないようなもの、私も関係していますけど、電波天文についても世の中の人はちゃんと理解します。人類の夢というか、宇宙にかける夢としてです。国の方針は、今、いろんなものが示されています。そういうところとも整合していれば、自動的に、人が寄ってくるといいますか、予算はついてくると思います。先ほど上西先生がおっしゃいましたけど、キーはマネジメントというか、それをハンドルしてくれる人ですね。やっていることは、計測器の世界でしたら非常に緻密で専門性が高いものですけど、最終的なアウトプットというか、誰もが共感できるものというのはこれだというのをしっかり言ってやれば、予算は付くし、組織もできるかなと思いました。どういうふうに国としてそれを支援できるかを議論してもいいかなと思いました。
私からは、以上です。
【網塚部会長】 どうもありがとうございます。
ただいまの御意見につきまして、何か皆様からコメントはございますでしょうか。
私からも先にコメントを述べさせていただきますと、まず、お話、どうもありがとうございました。木川先生のお話をお伺いしていて、NMRはそうか、もう12年の継続支援になるのかというふうに思いまして、非常に知名度が上がってきたところでワンストップの窓口もできて、利用成果も出ていて、あと、技術連携ですとか、NMRクラブでしたっけ、それらのスタッフの人材育成機能も生まれて、非常に充実しているなあと思いました。最初の頃から存じ上げておりますけど、もしもプラットフォームがなかったとしたらと想像すると、非常に、存在のありがたみといいますか、重要度が分かるなあと思いました。お話の中にもありましたけれども、列挙されてた課題というのは、NMRだけに限ったことではなくて、分散型研究基盤であることによる課題であるということで、大変参考になりました。法人格を持った統括組織があると、確かにいいなと思いました。非常にいいアイディアだと思いました。ただ、公共事業とかだったらいいんですけれども、国がそこに投資して主導していくというのはちょっと難しいのかなとも思って、お伺いしておりました。それこそ、プラットフォームの事業のアウトプットの一つとして、自発的に構築される、EUのような産学連携のコンソーシアムを構築されると、それは非常にいいのではないかなというふうに、率直に思いました。
あと、飯田委員のお話は非常に具体的で、企業と大学が共同で機器を開発していくときの本質的な課題を挙げていただいていて、非常にもっともだなと、納得できる思いをいたしました。多分、個々の大学では、一つの大学と特定の企業が共同で産業を創出していくような取組というのは、今、一生懸命進めているんだと思うんですけれども、複数の企業が連動するような形というのはあまりないので、そういう形で御提案いただいた拠点の構想というのは非常に意義深いものだと思いました。研究成果が生み出されつつ機器も高度化していくというそういう好循環が生まれるような、相乗効果が期待できる拠点形成になっていて、そういった仕組み、取組が実現すれば、非常に理想的だなというふうに思いました。ただ、私もあまり経験がないので分からなかったのは、かなり大々的な研究拠点をどんとつくる、共同開発拠点をどんとつくるような形になっていて、果たしてそのように一気に進めることのリスクを企業の方はどんなふうに考えるのか。身の回りで起きていることは、ベンチャーから始めて、ひそひそと始めて、ある程度のところまでいったら、どんと大きくしていく、あるいはNEDO等の国の事業の支援を受けて成長させていくというようなパターンはよくあることかなと思うんですけれども、御提案いただいた研究拠点というのは割と最初からどんと構想を立ててつくっていくようにお見受けしたので、その辺りはどういうふうに進めていくのがベストなのかなというふうに、ちょっと思いました。
私からは、ちょっと雑駁ですけれども、以上となります。
それでは、いろいろいただいた御意見を受けまして、改めて木川先生から御意見をいただきたいと思うのですが、御発言いただきたいんですけど、よろしいでしょうか。
【理化学研究所(木川)】 いろいろと、ありがとうございます。
まず、飯田委員からの話と僕の話、別に口裏を合わせるわけじゃないのに、ある意味で少し似たような方向性を提案していたのは、私自身もびっくりしました。いいものをつくれば売れる、いいものをつくれば普及するという、そのいいものは何かという定義は、そろそろ意識変革をする時期に来ているんじゃないか。それは、別に計測機器だけじゃなくて、日本の産業界の製品はあまねくそうだと。そこはもう少し考える必要があるかな。というのは、ユーザーとして我々もいろんな装置を使っています。別にNMRだけじゃないです。いろんな分析機器もそうですし、分子のエピプロとかも使っていますけれども、そういう中で、少し日本として考え直さなきゃいけない、その部分が必要かなと思います。
というのは、例えば、そのアーリーアダプタの下にアーリーマジョリティーがあると。今、ググって調べたんですね。アーリーマジョリティーをいかに早く呼び込んで、そこに使わせるかというところまで、機器を最初に設計するときに考えるって、多分、非常に大事なんじゃないかというのがあります。NMRはあまりいい例にならなかったんですけど、上村先生、よく御存じのクライオ電顕は、FEIというか、今のサーモフィッシャーと日本電子、ほぼ同じ性質性能のものがあります。ですが、確実にチューニングをすれば日本電子のほうは非常にいい性能が出ますけど、普通にぱっと使ったら、明らかサーモフィッシャーのほうがすぐに性能が出るので、多くのユーザー、特に産業界のユーザーはサーモフィッシャーを好んでしまいます。これは明らかに、そこら辺のつくり込みですね。基本性能じゃなくて、つくり込みの部分が全く違うというところで、そこら辺が多分、日本の製品を使う上で考え直さなきゃいけないところで、そこまでいかに最初からデザインできるかということは非常に大事じゃないかと思って、その点が非常に大事かなと。そういう点でですね、共用施設として考えた場合、単に、アーリーアダプタまでじゃなくて、アーリーマジョリティーのもっと下のコモンな人たちも、いかに早く性能を出せるかとかは多分非常に大事なので、その点では非常に大事だなと。そういう意味では、あんまり日本の企業さんはやらないんですけど、海外製品もきっちりと並べて、そこの良さ悪さをきっちり知るというようなことができる場所というのも非常に、少なくともここ数年、5年ぐらいというのは大事になってくるんじゃないかというふうに思いました。多分、そこは非常に大事で、いい性能の装置でいいデータをどれだけ多くの人たちが生み出すかということが大事だと思います。
特に、今の若い人は時間がないんですね。産業界の人であれば残業しちゃいかんよと言われるだろうし、若いアカデミアの人も、最近はほぼ共働きなので、子育てに物すごく時間が取られて、そんなに長い時間、機器とにらめっこしてない人、非常に多いんです。私、現場で見ていると、すみません、子供が熱を出したので帰りますって。そういう人たちが短時間でいかにいいデータにたどり着けるかというのは、多分、これから非常に大事になってくるので、その視点は、研究開発、機器開発にも持っていただきたいということも思います。
あと、宮下先生に指摘された、ストーリーですよね。ここは私も非常に悩んでおりまして、そこについてはこれからもいろいろと御指導いただければというふうに思います。
というところでしょうか。いろいろと御意見いただき、ありがとうございます。これからもぜひ、よろしくお願いします。
【網塚部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、飯田委員、お願いしてもよろしいでしょうか。
【飯田委員】 ありがとうございます。委員の先生方、木川先生、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。
、直前の木川先生のお話で、競合、世界のトップメーカーの製品をよく知っておくというのは非常に重要で、私のポンチ絵にも、パートナー研究者や、競合や世界の最先端の動きをよく知った人がいろいろと意見をインプットいただくことがベースにあります。また、ご提案したコミュニティができると、そこに行けばパートナー研究者という、よく知っている世界トップレベルの研究者がおられ、そこでディスカッションができるので人が集まるわけですが、この人たちの所有機器も競合の製品であったりします。。人が集まることで様々な情報が入る環境ができたらいいなと思います。世界トップを知らないと世界トップの装置は造れないというのは、まさに思うところです。ありがとうございました。
各先生方にいただいたコメントは大変有難く各々にコメントさせていただきたいところでありますが、時間も限られていますので、割愛させていただきますが、引き続きしっかり考えてまいりたいと思います。
本部会の委員になりましてから、業界団体の日本分析機器工業会と意見交換を重ねてまいりました。そこで、非常に感じますのは大変強い危機感です。その危機感は、業界団体としてというよりも、科学のボトムラインを支えている分析・計測機器がこのままで大丈夫だろうかという危機感です。
P24の「サイエンスにおける先端研究は機器開発と一体」というのは、新しい発券があっても、それが証明できないと認められず証明するための機器は大事であるということです。今日いただきました人材の件や、パートナー研究者とどうやって一緒に組むのか等、考慮すべき点がいろいろあると思います。少しでも良い形にできるように一緒に進めさせいただけると非常に有難いと思っております。
雑駁ですが、まずお礼と、今後、ぜひ具体化できればという思いを述べさせていただきました。どうもありがとうございました。
【網塚部会長】 ありがとうございました。
今まさにここに書かれている、「海外メーカーに依存する結果、日本の研究者のアイディア実装に時間がかかる」というところは、私自身の分野で身をもって経験しておりますね。そして、海外メーカーの装置が共用化されていて、多くのユーザーがそれを頼っている。非常に便利な装置なんですけれども、壊れる、故障すると、多くの研究者の研究がストップしてしまい、代替機を日本のメーカーが持っているかというと、持っていないというようなことが起きたりしております。
木川先生、飯田委員、どうもありがとうございました。
皆様から改めまして、全体を通じて何か御発言ございますでしょうか。
岡田委員、お願いします。
【岡田委員】 先ほどの木川さんの日本電子とFEIのお話って、全くそのとおりで、どちらかというと日本電子の装置は、達人が使うにはいいんだけれども、素人が使うとむしろ壊しちゃうみたいなところがあって、逆にFEIの装置は、バカチョンと言うとあれですが、ほぼ自動化されていて、マウスでクリックするだけできちゃうという、そういう使い勝手のよさみたいなところがあるのが大きな違いだというお話だと思うんですけど、実は、そのもっと前の話で、まだ日本電子が電子顕微鏡業界で後発だったときに、アメリカでシェアを逆転して、ほとんどのメーカーを潰したぐらいに日本電子がシェアを取ったというのがその前の1980年代ぐらいに起こっているんですが、そのときには何があったかというと、人なんですね。日本電子はサポートがすごくよくて、何かあったら技術者がすぐに飛んできていろんなサポートをしてくれる。そういう非常に手厚いサポートを売りにしてマーケットを取っていったという成功例が実際にあるので、装置のつくり込みと、それから、それをいかに活用できる人材をサポートできるかというのが車の両輪として必要なのかなということを思いました。
もう一つは、飯田さんのところで海外のメーカーの機器との比較みたいな話がありましたけど、実は、メーカーさんと話をしていると、意外にメーカーさんは他社の最新製品はカタログスペックしか知らなくて、実機を触ったこととかはないんですね。そうすると、例えば、うちなんかに来ると、いろんなメーカーの最新の顕微鏡とか並んでいて、よだれを垂らしながら見ているんですね。実際、木川さんのところみたいにブルカーと日本電子の機器が両方並んでいるなんていうことは、ブルカーの中では起こらないし、日本電子の中でも起こらないので、そういう意味で、メーカーにとって他社の最先端のものを直接見たり、そのノウハウをインダイレクトにすることができるというのはメリットなんだろうなということを、実際、メーカーの方からも伺っているということをコメントさせていただきます。
以上です。
【網塚部会長】 どうもありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。
よろしいですか。
特にないようでしたら、本日いただきました様々な意見、議論を踏まえまして、今後の論点については、また事務局にまとめていただきまして、次回以降の部会で御報告いただければと思います。
それでは、本日の議事は以上となりますけれども、最後に改めまして何か御発言などございましたら、お願いいたします。
特にないようでしたら、最後に、事務局から連絡事項等ございましたら、お願いいたします。
【田邉専門職】 事務局でございます。本日も、様々な御意見いただきまして、ありがとうございました。
次回の研究開発基盤部会の日程につきましては、先ほどの御説明の中でも申し上げましたとおり、12月23日を予定しております。日程が近くなりましたら正式に開催案内をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
また、議事録は、部会の運営規則に基づき、資料と共に公開することになっておりますので、後日、またメールにて御確認をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
事務局からは、以上となります。
【網塚部会長】 ありがとうございます。
それでは、以上をもちまして、第27回研究開発基盤部会を閉会いたします。本日は、お忙しいところをありがとうございました。
―― 了 ――
科学技術・学術政策局 研究環境課