令和6年10月31日(木曜日)13時00分~15時00分
オンライン開催
網塚部会長、高橋部会長代理、雨宮委員、伊藤委員、江端委員、岡田委員、岡部委員、上西委員、上村委員、田中委員、鳴瀧委員、宮下委員
(事務局)科学技術・学術政策局 局長 井上諭一、研究環境課 課長 野田浩絵、専門職 田邉彩乃
【網塚部会長】 それでは定刻となりましたので、ただいまから第26回の科学技術・学術審議会研究開発基盤部会を開催いたします。お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。
まず、事務局から本日の出欠と資料の確認など御説明をお願いいたします。
【田邉専門職】 ありがとうございます。研究環境課の田邉でございます。
本日の御出欠ですけれども、飯田委員が御欠席となっておりまして、その他12名の委員の先生方が御出席予定ですけれども、上村先生と上西先生がまだ入られていないということで、遅れて参加という形になります。
また、事務局に異動がございましたので御紹介いたします。7月より科学技術・学術政策局長として井上、また研究環境課長として野田が着任しております。よろしくお願いいたします。まず、局長の井上より御挨拶させていただければと思います。
【井上局長】 井上です。
先生方におかれては日頃よりこの研究基盤の強化に御尽力いただきましてありがとうございます。我が国の研究力の低下が言われて久しいですけれども、その大きな原因の一つには人材も含めた研究基盤の弱体化があると思っておりまして、これをいかに強化していくのかというところが非常に重要と思っています。
そのために先生方に今年の7月にまとめていただきました論点整理、あそこに書かれていることを我々としてもしっかりこれから具体化していくことが重要だと思っております。私どもとしても、そのためにしっかり汗をかいて知恵も出していきたいと思っておりますところ、先生方におかれても、どうぞよろしくお願いいたします。
【田邉専門職】 続きまして、資料の確認をさせていただきます。配付資料につきましては議事次第、資料の1から3、参考資料1、2をPDFにて委員の皆様にお届けしております。御説明の際にはZoomの画面上に投映するようにいたしますが、見えにくい場合は適宜お手元の資料を御覧いただければと思います。
御発言されるとき以外はマイクをミュートの状態でお願いいたします。また、御発言される際には「手を挙げる」をクリックしていただき、部会長の指名をお待ちください。指名があり次第、ミュート解除にて御発言をお願いいたします。また、議事録作成のため速記者を入れておりますので、御発言の際にはお名前をおっしゃっていただいてから御発言いただけるようお願いいたします。また、会議中の不具合・トラブルに関しましては、事前にお知らせしております事務局の電話番号までお電話いただければと思います。
以上です。
【網塚部会長】 ありがとうございます。
それでは、早速議事に入りたいと思います。議題1「先端研究設備・機器の共用推進について」です。まず資料1の研究設備・機器に係る関連事業につきまして、それから資料2の諸外国の状況につきまして、事務局から御説明いただきます。よろしくお願いします。
【田邉専門職】 ありがとうございます。私から説明させていただきます。
まず資料1につきまして、研究設備・機器に係る関連事業の状況についてということでして、4ページを御覧いただければと思います。本部会の主な議論のスコープといたしましては、こちらの「研究施設・設備・機器の整備・共用」の特に緑とブルーのところ、国内有数の大型研究施設・設備のプラットフォーム化であるとか、ブルーのところのコアファシリティ化というところ、あとは②の研究設備・機器の開発というようなところが対象となっておりますけれども、これらの令和7年度の概算要求の状況ですとか、あとは今後の議論の御参考としてその他の関連事業について簡単に御紹介させていただければと思います。
次の5ページ目です。まず、先端研究基盤共用促進事業の概算要求の状況につきましてですが、コアファシリティ構築支援プログラムにつきましては、R2年度の採択機関の支援は令和6年度で終了となっておりますので、R3年度採択機関の最終年度の支援を引き続き実施していくということ。また、グリーンのほうのプラットフォームプログラムですけれども、こちらにつきましてもR7年度が最終年度ということですので、こちらの支援を引き続き行っていくことに加えまして、令和7年度としては、先ほど局長からも申し上げましたような論点整理を取りまとめていただいたところですけれども、こちらを踏まえて、「共用システムの見える化」が右のところにあると思うんですが、そちらを新規の項目として要求しているところです。
この中では全国の共用システムを見える化していき、その中で共用機器であるとか技術人材も含め見える化していくとともに、好事例を分析するであるとか、そういったことを行っていき、また、各機関への助言とかアドバイスを行うアドバイザリーボードの設置等も行いながら、全体の研究設備・機器の利用環境の向上と最適化を図るようなことに向けた取組を行っていければと考えております。
次のページをお願いします。また、共用施設も含めたそういった研究設備・機器や施設設備・機器の整備・共用のR7要求の全体像について、がこちらのページになっております。NanoTerasuですとかSpring-8、SACLA、J-PARC、富岳について、引き続き安定的に運転を行うための必要経費を要求していますとともに、新たにSpring-8-IIの整備であるとか、富岳の次世代機の開発・整備に関する新規要求を行っている状況になっております。
次のページをお願いします。続いて関連事業についての御紹介です。まず、分野ごとに設備のプラットフォームが構築されている状況でして、まず、今お示ししているものがライフ分野における研究支援のワンストップサービスの構築に関する取組ということで、BINDSという事業が実施されておりまして、これについてもR7年度以降も実施していく状況になっています。
次のページですけれども、こちらがマテリアル分野の同様の取組になっております。一つは、データ創出のところにマテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)というものがございますけれども、先端設備の全国的な共用体制を整備して、創出されたデータを全国で利活用可能な形式で収集・蓄積して共用する取組が行われているところです。また、②のデータ統合・管理ということで、NIMSにおけるデータ中核拠点の形成ということで、ARIM等で創出されたデータをセキュアな環境で蓄積・共用し、AI解析可能なシステムを実現するための取組などが実施されているところです。
次のページがARIMの詳細になっております。事業内容に書いてありますとおり、7つの重要技術領域ごとに強みを持つ先端設備を有するハブと特徴的な装置・技術を持つスポークによる設備の全国的な共用体制が整備されており、先端設備の利用支援を支える専門技術人材を配置しているところです。こういった専門技術人材等にノウハウを蓄積し、より高度な設備共用基盤を提供するとともに、先ほど御紹介したような形で創出されるデータをデータ中核拠点であるNIMSに収集・蓄積するとともに、令和7年度からはデータ共用・利活用に係る本格運用に向けた取組を推進する予定となっております。
また、次のページですけれども、このARIMで培ってきた知見等を最大限活用しつつ、半導体分野の研究開発の基盤となる半導体基盤プラットフォームの構築というものがR7年度に新規の要求で出されているところです。
次のページをお願いします。続きまして、共同利用・共同研究拠点の関係で御紹介させていただきます。こちらについては大学の研究ポテンシャルを活用して、研究者が共同で研究を行う体制を整備することを目的として、共同利用・共同研究拠点の認定制度が行われているところです。この拠点に対する活動経費の支援等をはじめ、次の12ページに国立大学の運営費交付金等の概算要求の状況をお示しする資料をつけているんですけれども、国立大学の研究力強化に向けては、先ほどの共同利用・共同研究拠点の強化と、あとは関連してですけれども、汎用性の高い中規模研究設備の整備といったものが国立大学の運営費交付金等において要求されている状況になっております。
次のページですけれども、さらにその共同利用・共同研究拠点に関連しては、先ほどの国立大学に関しては運営費交付金の中で活動経費の支援が行われているところですけれども、公立私立の活動経費の支援につきましてはこちらの事業の中で行われているということで、②のところでそういった支援が行われているところです。また、併せて①のところで学際的な取組に関する支援も行われているところです。加えて、令和7年度に関しましては③のところですけれども、世界最先端の研究成果を生み出す源泉となる中規模研究設備のうち、新規技術・設備開発要素が含まれる最先端の中規模研究設備を整備することに関する支援が、新規の要求で20億円規模で現在打ち出されているところになっております。
続きまして14ページ、こちらはデータ関係の事業の御紹介になります。AI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業というものがございまして、こちらの中で、下の部分の必要な取組のところに書かれておりますけれども、全国的な研究データの基盤をNIIに構築しておりまして、その中で研究データの利活用が促進されるよう、管理データの取捨選択であるとかメタデータの付与、データの出どころとか修正履歴の管理、あとは研究データ管理に係る関係者の作業負担を軽減するための様々な機能の開発なんかも行われておりまして、そういった機能を使いながらデータをNIIに集約化していくような取組が行われております。
続きまして15ページですけれども、それにまた関連しまして、こちらはR5年度の補正予算の事業ではあるんですけれども、オープンアクセス加速化事業というものがございまして、この中で、真ん中辺りに書いてある事業内容のところにあるものですけれども、大学における研究成果の管理・利活用システムの開発・高度化に係る開発経費であるとか、研究成果の管理・利活用システムの運用・体制強化に係る経費の支援、こういったものが現在行われているところです。
次の16ページです。また、データの関係ということで、ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの運営ということで、富岳を中核として国内の大学等のシステムやストレージを高速ネットワークで結び、全国の利用者が統一的な申請窓口を通じて多用なシステムを利用できる制度を運営しているところです。こちらで計算したデータの共有や共同での分析を実施できるシステムを構築していくような取組が行われているところです。
最後に、続きまして17ページですけれども、計測・分析技術の研究開発に関する事業につきましてです。一つはこちらの未来社会創造事業というJSTの事業がございますけれども、こちらの中で共通基盤領域の中でそういった計測・分析技術に関する研究開発が現在行われてきているところです。新規採択のほうはもう終わってしまっている状況ですけれども、一つはそういった中でそういった技術開発の研究開発が行われてきているところです。
もう一つが18ページになりますけれども、こちらは戦略的創造研究推進事業、CRESTであるとかさきがけ、こういったところで、次のページですけれども、令和4年度に「社会課題解決を志向した計測・解析プロセスの革新」という戦略目標が立っておりまして、この戦略目標に基づき、現在CRESTとさきがけの中でそういった研究の支援が行われている状況になっております。
関連事業につきましての説明は以上となります。
続きまして資料2です。諸外国の状況について御説明させていただければと思います。先日の部会ですとか論点整理の中でも、諸外国の状況についても踏まえながら議論を進めていくべきであるというような御指摘を頂いていたところですので、今回、CRDSであるとかNISTEPの報告書、また部会の委員の先生方にも御存じの事例があればということで御照会をかけさせていただきまして、そういったところの情報を次のページ以降に、国ごとの政策等がどうなっているのか、あるいは機関としてどういう取組があるのかといったところを取りまとめておりますので、簡単に御紹介させていただきます。
21ページです。まずは国ごとにどういった取組が行われているかというところです。例えば英国では、機器・施設の支援の方針として、利用規模と機器の性質の2軸マップで機器と施設を分類し、価値があると判断した中型から大型施設の設置・維持に対して戦略的な投資・支援を行っているようなこと。あとは、技術職員とは別に専門技能を有する人材の雇用を行っていて、英国機械学会認定の資格というものがあって、高いステータスとして社会に認められているような人材の雇用が行われているところです。
続きましてドイツです。例えばドイツにおいては「新しい研究機器プログラム」というプログラムがございまして、この中で、基礎研究で利用する新しい研究機器の開発の支援が行われているところです。また、このプログラムでの開発に加え、そのプログラムで開発された機器などの利用促進のためのファンディングを複数実施されている状況のようです。
続きましてフランスです。フランスにおきましては、高度な研究を推進するために必要となる中規模設備を対象とした資金配分を行うプログラムがあるとか、このプログラムの中では、国のロードマップとか国際的な枠組みの対象ではなく、かつ、公的研究機関の通常予算では負担できないような規模の研究設備を対象として資金配分がなされるようなプログラムが実施されているようです。こちらによって運用されている研究のプラットフォームでは、地域の全ての研究者がアクセスでき、産業界にも開かれているような状況となっているようです。
続きましてオーストラリアですけれども、こちらでは研究設備・機器を導入するスキームにおいて、申請時点で複数の研究機関との共同申請が推奨されているところです。こちらのスキームで導入される設備・機器が重複しないような考慮もなされていることと、導入された機器については中小企業等に有償で貸し出すであるとか、コンサルティングサービスの提供を通じて収益を得て運用費用に充てるような取組がなされているところです。
続きの米国ですけれども、米国では、よく言われておりますとおりNSFで設備・機器に関する整備のためのサポートが実施されているところですが、開発と利用の両面からの促進が行われているところです。
最後に中国ですけれども、中国においては国家重点プロジェクトとして科学機器の開発に取り組み、研究開発機器に関しては産業政策として強化するような方針が出されている状況となっているようです。
国ごとの政策に関しては以上です。
次のページが、今度は機関ごとにどういった取組があるのかという事例をまとめております。
1つ目ですけれども、例えばスタンフォード大学のライフサイエンス系においては、先端研究機器を集約した4つの共用施設がありまして、こちらの施設の予算の9割が研究機器の使用料で賄われていると。その予算については機器の購入であるとか技術職員の給料に活用されていると。また、利用の9割が学内で、1割が学外、企業等の利用になっているようです。
次の事例もスタンフォード大学の材料科学工学科のものですけれども、こちらの場合は、研究機器の維持管理の費用はNIHやNSFのファンドや企業からの支援、機器の使用料で賄われていると。技術職員は終身雇用であり、技術職員も研究することが可能であるが、その場合、必ず教授と連名で実施するような状況になっているとのことです。
次がカリフォルニア州立大学サンタバーバラ校の事例ですけれども、こちらでは8つの共用施設があるということで、ここの研究機器に関しては大半はNSFの資金で購入されたものとなっているが、研究機器の所有権は大学になっているところと、あとは、こちらの常勤技術職員の大半は博士号保持者になっているような事例があるところです。
少し飛ばしますが、サウサンプトン大学では、先ほどのイギリスの取組としてそうだという話ではあるんですけれども、技術職員とは別に、専門技能を有する人材を雇用していて、教職員を減らしてでもそういった人材が必要だというような判断をしている状況がある事例がございました。
あと、その下はドイツにおける産学連携を強化するための機関の事例になりますが、最後に、最先端の設備の導入の事例として、一つ、カーネギーメロン大学の事例があります。こちらでは民間のバイオ系スタートアップとともに、全自動・リモート化された生命科学系研究設備・機器をAI主導で24時間365日稼働させているということで、180以上の設備・機器を用いて、研究の設計からデータ取得・分析までそちらで行うことができると。基本は学内利用が対象ですけれども、産学連携等による学外利用も可能となっているということで、こういった大規模な設備が導入されているような最新の事例もあるところです。
続きまして、こちらはNISTEPの調査で、日本とイギリス、ドイツの状況の比較というところで、研究者のインタビュー調査の結果をまとめたものがございますので、そちらについても簡単に御紹介させていただきます。
日本については、設備・機器の共用は進みつつあるけれども、共用に当たっての課題があるという声が多く聞かれているということです。小規模な研究室で機器を研究室単位で購入していることが多く、あまりテクニシャンが充実していない。学生が研究機器のメンテナンスに取り組んでいるであるとか、大学院生は全て自分で行わなければいけない雰囲気があり、ラボのルーチンワークに多くの時間を費やしていたというような声が聞かれたところです。
イギリスについてです。こちらについては機器・設備の多くの場合は共用、それが組織レベルでの更新を可能にしており効率的だということです。大きな設備を導入した際には外部の人にも使ってもらいたいという意識が一般的であると。また、テクニシャンに関しては多くの場合大学で雇用されており、競争的研究費がテクニシャンの人件費の原資になっているような情報があります。
続きましてドイツです。ドイツについては多くの場合は共用であるが、場合によっては研究室単位で購入することもあるということで、大型機器は大学の共用施設のものを使っていて、そこにはメンテナンススタッフがいると。もう少しテクニカルな機器については研究室で購入しているケースがあるということです。基本的には大学の共用のものを使うので、人気の施設は利用待ちがあるということのようです。また、ドイツのグラントでは研究費に設備が含まれていないため、大がかりな調整が必要になるようなこともあるようです。また、テクニシャンについては多くの場合高い専門性を持つとともに大学で雇用されていて、競争的研究費の応募時にはテクニシャンの人件費相当分も申請するということです。一般的にはドイツの大学では技官が充実していて、実験機器・設備の維持を任せることができると。共用研究設備を構築する際には、大学が設備の永続的な運営にコミットするような状況であるという声が聞かれている状況のようです。
最後に24ページですけれども、こちらは委員の先生方に何か御存じの事例があればということで照会をかけさせていただいて、宮下委員と鳴瀧委員から御紹介いただいた事例を掲載させていただきました。
カナダではこういった衛星搭載機器の電気、耐環境試験に関する共用施設があるということで、こちらが政府・研究機関の研究者だけでなく、民間であるとか海外の研究者・企業にも利用されているもののようです。
もう一つがスウェーデンの事例ですけれども、王立の研究所であるとか大学を中心とした40の施設が実施機関となっていて、ライフサイエンスの研究者がアクセスできる共用機器群があるということで、この中ではデータドリブンサイエンスの状況のところにも記載がございますけれども、様々な分野のライフサイエンスデータのハブとしても機能するような取組が行われているということのようです。
私からの説明は以上ですけれども、すいません、ここで少し江端委員から関連した情報について情報提供を頂けると聞いておりますので、江端委員から御説明をお願いできればと思います。江端委員、よろしいでしょうか。
【江端委員】 江端です。声が聞き取りづらいところがあるかと思いますが、御了承いただければと思います。
こちらは海外レポートという形で論文にしたものです。「研究基盤を活かす人財」というタイトルでテクニシャンやエンジニアと呼ばれる方々にフォーカスした、JST CRDSの永野さんとの共著の論文になります。
490ページでは、OECDでの議論の話をまとめさせていただいています。欧米の主要研究機関においては、研究インフラに代表されるような研究設備の共同利用が徹底して行われている状況にあります。個々の研究室・研究ユニットにおいては、試験管、試薬などの消耗品、さらには顕微鏡等の分析機器、加工機器、制御機器、遠心分離機、シーケンサーなど、共同で利用される設備が専用の共用スペースに置かれていることが一般的になっています。また、共同で利用するようなほとんどの設備の管理は専門の技術職員が担っているということで、常にメンテナンスが行われ、故障してもすぐに修理を行う体制が整っているような状況です。
具体的には、マックス・プランク協会で取りまとめている情報、フランスの国立科学研究センターの情報、米国のNNCI、特にコーネル大学での情報等、個別の事例として紹介させていただいています。
例えば、マックス・プランクの科学振興協会には、当時84か所のセンター、研究者が1万4,000人に対して技術者が3,800人配置されているという状況でした。テクニシャンの位置づけ、キャリアパスを踏まえ、専門性を磨いたり実践を通じて複数の技術を身につけたりするような段階と、国家資格でもあったりしますが、それ相応の資格がきちんとある点が非常に特徴的です。
次のページのフランスの国立科学研究センターでは、化学、生態学・環境、物理学、素粒子物理学等々の10の研究部門において、その傘下に1,143の研究ユニットがあり、各々のユニットには部門長と部門長代理が配置されており、組織としての指揮命令系統が明確になっています。人員の配分としては、研究者、エンジニア、テクニシャンとなっており、技術者もエンジニアという立場とテクニシャンという立場で分けられている状況です。研究者は1万5,000人に対して、技術者等の研究支援者も1万5,000人ぐらいいるということで、ほぼ1対1の関係でサポート体制がしっかりと整えられております。本論文ではさらに各テクニシャンの位置づけやキャリア等も記載させていただいていますが、詳細は割愛させていただきます。
続いてNNCIの件ですが、先ほども御紹介はあったかもしれませんが、コーネル大学にはCNFという共用設備の拠点があります。そこには約30人の職員がおりますが、そのうち25名が専門の技術職員ということで、共用施設を利用するユーザーの支援に徹しております。この中には20年以上勤務している方もいて、技術者としての専門性が非常に高い方々がそろっているのと合わせて、ユーザーの技術的需要の変化に応じて、新技術の習得あるいは技術開発についてもミッションとして推進されており、非常に特徴的です。
2.4で国際議論における技術職員の位置づけをまとめております。かいつまんでお話ししますと、諸外国の大学や研究所では技術職員が各組織で明確に位置づけられて配置されています。研究室やユニット単位では最低1名ずつ、加えて共用施設にも専属の技術職員が配置されています。おおむね研究者10人に対して4人から5人という比率で共用設備群の技術職員が配置されている状況です。
また、共用施設に対しての技術職員の役割は、研究者を技術的にサポートする業務ももちろんありますが、それ以上に、最先端の技術開発が必要とされています。こういった各共用拠点の責任者は第一線の研究者が務め、所属する技術職員の多くは研究経験のある博士号取得者であるところも特徴的です。ルーチンワークは博士号を持たない職員が担当することも多いということではありますが、研究能力を持つ方は新技術開発や新たな装置開発等にも活用されています。
そのほかスタンフォード大学の各共用施設に関して、現地でのヒアリング調査結果をまとめています。スタンフォード大学のStanford Nanofabrication Facility(SNF)は、パーマネント雇用というようなイメージよりは定期的にレイオフが行われるような、人材が循環するような仕組みになっています。実際にはパーマネントといいつつも、人が解雇されて次の新しい人財が入ってくるような、一定の技術の研鑽が行われているところも含めて、人財のエコシステムが構築され好循環を生んでいることが大きな特徴でした。
米国においては企業の技術者ではワーク・ライフ・バランスが取りづらい環境にあるため、大学の技術者になったというような方もいて、そういった方々に対するエンジニアとしてのキャリアパスも、それぞれの施設で検討されているということでした。Ph.D.を持ち、アカデミアで技術職員としてキャリアを築いてきたようなベテランの方々もいたということです。
ここまでご紹介ました通り、日本の状況とは大きく異なる点が多数あったことについて明記をさせていただき、2020年当時の論文をまとめさせていただきました。海外調査を論文という形でまとめたものはあまりほかにはありませんでしたので、文科省の皆さんに確認して紹介させていただきました。
以上です。ありがとうございます。
【田邉専門職】 江端先生、ありがとうございました。資料2に関しては以上となります。
【網塚部会長】 ありがとうございました。御質問、御意見等につきましては次の説明の後にまとめてお受けしたいと思います。
それでは、続きまして資料3の「今後の主な論点」「議論の進め方」について事務局から御説明をお願いいたします。
【野田課長】 研究環境課の野田でございます。私から資料3-1、3-2につきまして御説明申し上げます。
26ページでございますけれども、今後の主な論点として、7月に取りまとめていただきました論点整理の中で、目指すべき方向性として、エコシステムの形成、それから全体の見える化やネットワーク化といった現場課題の解決と全体を底上げする仕組みの構築という、大きく2つまとめていただきましたので、それらを具現化していくに当たって当面5年程度、すなわち来年度を含めて次の第7期の科学技術・イノベーション基本計画につながるような、必要な取組の検討に必要な論点に重点を置いて御議論いただきたいと考えております。
主な論点につきましてはここに項目を記載しておりますけれども、次のページ以降で、事務局としての考え方の例としての提案も含めた形で御説明させていただきたいと思います。
では27ページでございます。論点整理におきまして、「世界と戦える最先端を追求すべき設備・機器の開発、導入及び共用化」ということについては、「組織における汎用性のある機器の共用化」とは分けて議論を深めていくべきといった御指摘がございましたので、今後の検討の前提として、それぞれどのように概念整理すべきかということを一つ論点として挙げさせていただいております。
考え方の例でございますけれども、最先端・国内有数の設備としましては、これまでプラットフォームプログラムでも進めてきたところでございますけれども、例えば先端的な大型設備等であって導入コストが大きい、そして、それゆえに限られた各機関の強み・特色に応じて整備される設備、また、最先端研究の中で開発された新しい計測・分析技術に基づいて、使いながらさらに進化や普及をさせていくような次世代装置であったり、自動実験のようなデータ駆動型サイエンスを牽引するような次世代の装置といったことが考えられるのではないかと思います。
そして、汎用性のある設備・機器、基盤的設備に関しましては、これまでコアファシリティプログラムで主に進めてきておりますけれども、これらは研究者がいつでも使えるように各機関で整備されるべき機器、これには地域のネットワークを介して使えるようにすることも含まれているということではないかということで挙げさせていただいております。
続きまして28ページでございます。論点整理の目指すべき方向性の一つとしての「現場課題の解決と全体を底上げする仕組みの構築」の中では、全体の見える化というところが一つポイントになっておりましたけれども、それを担う組織が持つべき機能は何かということ。それから、それについて全体の見える化といってもどのような項目から重点的に見える化なり助言等を行い、当面の目標をどこに置くのかということがあろうかと思います。
また、これについては米印で記載しておりますけれども、文科省で検討会を別途設置しまして、個別の研究大学について少し深掘りをして、現状分析をして、モデルケースとして目指すべき姿について集中的に検討したいと考えております。この結果についてはこの部会にもフィードバックし御議論いただきたいと考えております。それからエコシステムの形成に関しても、必要な機能・取組が具体的にどのようなものかということがあろうかと思います。
考え方・取組の例として下にまとめて記載しております。まず、全体の見える化につきましては、来年度の概算要求にも盛り込んでいるところになりますけれども、まず情報収集・調査分析として、共用機器や専門人材の配置などのシステムの構築状況を集約することや、その情報を基に現状分析をして改善提案するようなことがあるのではないか。
また2つ目ですけれども、各機関への助言・コンサルテーションやネットワーク形成の推進ということで、それぞれの大学でコアファシリティ化のノウハウに差があるわけですけれども、ノウハウが不足しているような大学からの相談対応や、先導的大学の実務者によってそういったところへの助言・コンサルテーション、地域や分野ごとでの機関間のネットワーク形成の推進といったことがあるのではないかということです。
それから、情報集約サイトとして、集めた情報を一元化して、全国の共用機器の一覧、技術専門人材マップ、また事例カタログといったことを集約して周知していくようなところも求められているのではないかということです。
次に、研究基盤エコシステムすけれども、まずその要素として、左側に①共用、②整備、③高度化・開発と分けて記載させていただきました。さらに共用は共用ネットワークの構築と、その共用による成果・研究ニーズの創出と2つに分けております。それぞれについて最先端・国内有数の設備と基盤的設備について分けて考えております。
まず最先端・国内有数の設備につきましては、こちらは論点整理でもまだ部会で議論を深める必要があるという御指摘がございました。
まずネットワークの構築に関しましては、引き続き分野であったり装置ごとにネットワーク化して、全国からのアクセス、ユーザビリティーを高めて、プラットフォームとしての機能を強化していくことは必要ではないか。ただ、その時に国として次のフェーズとしてはどのような支援が必要なのかというところには御意見を頂きたいと考えております。
それから研究成果・研究ニーズの創出については、産学官の研究者による利用の促進によって、新しい計測・分析技術の普及であったり、また研究者・技術者による交流の促進の場となるようなところですとか、また、先端的な自動化や遠隔化の技術を導入することで、さらなる利便性、研究効率の向上であったり、また最先端の機器等ですので、産業界を含め、幅広く利用していただくために技術コンサル等の技術専門人材の育成・配置といったところが必要ではないかということでございます。
それから整備については、先ほどの繰り返しにもなりますけれども、大学・研究機関等の特色に応じた最先端設備の継続的な整備というところ。
高度化・開発に関しましては、ユーザーの先端研究ニーズの把握ですとか、基盤技術の高度化の場としての機能が求められるのではないかということでございます。
続いて基盤的設備ですけれども、こちらについて、まず共用ネットワークに関しては、研究大学、20から30程度と書かせていただきましたけれども、例えば国際卓越大学であったりJ-PEAKSに選ばれるような研究を中心とする大学を中心に、地域性であったり、また遠隔利用などを踏まえてネットワーク化して、全国どこにいても意欲のある研究者が研究に着手できるような研究環境を整備することが必要ではないかということでございます。
それから次の、成果・ニーズの創出については、やはり運営の要となる技術職員等の専門人材に関して、人材育成プログラムの体系的な実施などによる継続的な育成・配置が必要ではないか。また、さらに効率的かつ質の高い研究が実施できるような拠点として発展させていくことが必要ではないかということでございます。
それから整備につきましては、研究者にとって十分な研究設備・機器群の継続的な整備が必要というところでございます。
高度化・開発に関しては、こちらは汎用機器でございますので、共用設備・機器の利用データであったり、また現場で使うことによるその高機能化、どちらかというとバージョンアップのような形の高機能化や高性能化といったユーザーニーズの把握といったことがあるのではないかということです。
さらに29ページですけれども、エコシステムの形成というところでは、一つ、産業界をどう取り込んでいくのか、大学等研究機関と機器メーカー等民間企業との組織的な連携をどのようにつくっていくのかということが大きな論点と考えております。
取組の例としましては、最先端・国内有数の設備につきましては、最先端設備のプロトタイプ、実証機ですとか1号機のいち早い共用の場への導入、また、それを使うことによって新しい計測・分析技術の普及でしたり、またそれを使うことによってハイインパクトな研究成果を創出して論文化し、それによって国際プレゼンスの獲得に貢献するようなこと。また、産学連携によってその分野の先端技術分野に携わる研究者や専門人材の確保・育成ということがあるのではないかということでございます。
それから基盤的設備につきましては、先ほどもありましたような利用データであったり研究現場でのニーズを活用したバージョンアップ等に係る共同研究、これには解析ソフトウエア開発というようなものもあろうかと思います。そういった使いやすさ、効率向上といったことも含めた共同研究であったり、また、時代に即してDX化を促進する上での協調領域として、機器メーカーの壁を越えたような装置のインターフェース統一化といった技術開発の促進が必要ではないかということでございます。
さらに、こちらについても産学連携によって技術専門人材の持続的な確保・育成といったことが考えられるのではないかということでございます。
それから最後ですけれども、これまでの好事例や科学技術の進展等を踏まえて、この先さらにどのような先進事例の創出を政策的に求めていく必要があるのかということでございます。これについては、例えば次の予算であったり、またガイドラインに盛り込むことといった意味でどういった先進事例が必要なのかということでございます。考え方の例として3つ書いておりますけれども、一つが、最先端設備の第一人者との密な連携によってハイインパクトな研究成果を創出して、国際プレゼンスを獲得していくような事例であったり、また、先ほどの海外動向でもありましたけれども、これまでにないような自動化とかリモート技術を大胆に導入した先進事例であったり、また、継続的に機器をリプレースなり導入していく観点からは契約の工夫など、こういった点も重要と考えますので、そういう契約の工夫などによる計画的な設備・機器の保守・更新等の実現の先進事例といったことが考えられるのではないかということでございます。
論点につきましては以上でございまして、次の31ページ、今後の議論の進め方について引き続いて御説明させていただきます。本日、今後の主な論点と議論の進め方について取り上げさせていただいておりますけれども、次回11月28日には関係機関のヒアリングとして、今事務局で考えておりますのは、例えばプラットフォームプログラムの関係者であったり、また研究の自動化等、先進事例について何かあればといったところを考えております。さらにその後12月から1月頃に2回程度を考えておりますけれども、2回程度をかけて、先ほどの個別の研究大学の深掘りの検討会での議論の状況についても報告させていただいた上で、取りまとめについて御審議いただきたいと考えております。
検討会のスケジュールについては、参考として下に書いておりますけれども、11月上旬に設置して、今年中に結果を取りまとめて御報告できるようにしたいと考えております。
私からの説明は以上でございます。
【網塚部会長】 詳しい御説明をどうもありがとうございました。また、江端委員もどうもありがとうございました。また、非常に分かりやすく論点を整理していただきましてありがとうございました。
それでは議論に入りたいと思いますけれども、まず、ここまでの御説明に対して何か質問などございましたらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。特にないようでしたら御意見を頂きたいのですけれども、どのポイントでも構いませんし、どのような観点からでも構いませんので、お一人ずつまた御意見を頂けたらと思います。それでいつもどおり最初になって申し訳ございませんが、名簿順で参りまして、雨宮先生からお願いしたいと思いますが、よろしくお願いします。
【雨宮委員】 ありがとうございます。雨宮です。
今たくさんお話を伺いまして、もちろんそれぞれのポイントにつきましてそのとおりだよねと思うところがたくさんあったわけですけれども、その中で一番気になったところというか、そこをぜひ進めたいなと思ったところはネットワーク化というところでありました。いろんな意味でのネットワーク化があると思うんですけれども、今例えば複数の大学間でのネットワーク化を想定しますと、多分一つの方向性はもちろん情報共有的なもので、一つ何か進んでいるところがあったら、それをネットワーク化してほかのところにも導入していくということ。それはもちろんとても有効なことだと思ったんですね。
ただ、そこから一歩進んで、やっぱり大学ってみんな違うんですよね。大学に限らず。だから同じことをできるわけじゃないと思うんですね。どこかでうまくいっていたとしても。となったときに、多少今度は考え方を変えて、やっぱり共用をすごく進めている大学にぶら下がってしまおうという考え方もあるだろうと感じたんです。もううちでは装置をそれぞれの研究室で持つのはやめるという、もちろん共用ってそういうものなのですが、さらに大学として共用することすらちょっと、全部じゃないですよ、ある一定の機器に対してはだと思うんですが、諦めて、もうそれは別のすごく進んでいる大学さんに任せてしまおうというようなネットワーク化もあると思うんですよね。
それをやるとなると、今度不公平感みたいなものが生まれてはもちろんいけなくて、何でうちばっかり苦労するんだみたいなことになって、あちらは使うばかりかなんてことになっても、もちろんそこは利用料のことであったり、いろいろなことで全体がうまく回るような設定が必要になってくると思うんですけれども。そういう方向に一つ進めていくのも必要なんじゃないかなと、お話を伺っていて感じたところです。
私からはそんなところです。
【網塚部会長】 どうもありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。皆様から何か、雨宮委員の御発言について御質問、重ねての御意見などございますか。よろしいですか。
それでは、取りあえず一通り御意見を皆様から頂きたいと思います。続きまして伊藤委員、お願いします。
【伊藤委員】 伊藤でございます。
御説明ありがとうございました。グローバルな状況もよく把握させていただくことができたので、大変ありがたく思います。
私もちょっとどこをお話ししようかなと思って今考えていたんですけれども、ネットワークといった観点で、オープンアクセスにしていくのは非常に我々企業にとっても、もしそこにアクセスができるようになるのであればありがたいななんていうこともちょっと、企業の立場として考えていたりもしましたけれども。
そのネットワークがオープンにアクセスできるようになったときに、このデータの取扱いをどうするのかとか、あと、データそのものの取扱いといった観点で、NIMSに集められるというようなお話もあったかと思うんですけれども、それをどういった形で利活用していくのかということと、そこのセキュリティーをどうしていくのかというような問題。
今回ハード側の整備はかなり整ってきたような気がするんですけれども、やっぱりサイバー側の整備というものだったり、あるいはそちらのサイバー側における技術補助員みたいな形の方のメンテナンスしていく方みたいなところも、今後デジタルツインとして管理していくに当たって両方とも重要になってくるんではなかろうかなともちょっと考えておりまして。その辺りも論点のポイントとして挙げてもいいのかなと思いましたので、お話しさせていただいた次第でございます。
以上でございます。
【網塚部会長】 どうもありがとうございました。皆様から何か御意見はございますか。
全くおっしゃるとおりだと思います。ARIMでかなりデータの利活用のノウハウの蓄積が進んでいるので、きっとそれを今後はコアファシリティなりプラットフォームなり、個々に反映させていくことになるのかなと思います。まだ直ちにできるということではないと思うのですけれども、今構築されつつあるARIMでの体制が横展開されていくようになっていくように思います。
パラレルにオープンアクセスのことも絡んでいて、今、劇的に状況が動いているのかなと各大学でも注視しているところだと思います。皆さん、次に進んでもよろしいでしょうか。
それでは、江端委員、よろしくお願いいたします。
【江端委員】 ありがとうございます。声がなかなか出ない状況で聞きづらいかもしれまんがすいません。
論点をきれいに整理していただきましてありがとうございました。私からは産学連携が関係する点につきましてコメントさせていただきたいと思います。
28ページの取組の例で、大学等の研究機関と機器メーカーの組織的な連携という話がありますが、どのような形で組織的な連携を進めていくのかということは、設備機器を通じたものであっても通常の産学連携であっても、大きな論点としてあると思います。こういった
研究基盤、設備機器を通じそれをきっかけにして進む産学連携は非常に目的やリソース等が分かりやすく、そこに携わる人がどのような人材か明確になれば、間違いなく連携は進むと思っております。実際に具体的な連携ができる研究者や技術者のスキルがどのぐらいにあるのかという点は、多くの方がまだ見えていないところかと思っております。
まずは、そういった研究者の方々がどこにどれだけいるのかを全体で把握していく必要があるかと思っておりまして、例えば、以前JSTの先端計測機器開発プログラムという、私も助教として関わっていたプログラムがありますが、結果としてどういった装置開発をどこまで、どういう形で進めることができたのか、製品化まで進められたのか、あるいはそこで何か障害があった場合、どのようなことが起きたのか等、少し遡って流れを捉えていくことが必要ではないかと思っております。
加えて、未来社会創造事業でも計測分野の開発のプログラムがありますので、オールジャパンで高度な技術開発、あるいは装置開発ができるような、ソフトではなくてハード的な部分で活躍できる研究者が我が国にどの程度存在しているのか。さらに発展しますと、海外の研究者、あるいは海外のメーカーと共同開発等をしている研究者がどれだけいるのかという情報は、非常に重要なデータ、エビデンスになると思っております。
加えて、そういった研究開発に携わっている技術者が本当にいるのかどうか。先ほど海外レポートの紹介をさせていただきましたが、研究者と技術者が一体となって機器開発をしており、我が国ではどのような状況にあるのか何らかの形で追っていくことが必要でないかと思っております。
そういったことを踏まえてこのような調査を実施できれば、共用拠点の新たな役割にもなりますし、先ほど雨宮委員からもありました、中心となるような大学にぶら下がっていく上で、機器開発のグループもあってもいいのではと思いますので、ぜひ何らかの形で見える化できれば良いと思います。
私からは以上です。ありがとうございます。
【網塚部会長】 どうもありがとうございます。皆様から何か御発言はございますでしょうか。よろしいですかね。
後で言おうかなと思ったんですけれども、今、江端委員がおっしゃったので、ここで少し私の意見を挟ませていただきますと、やはりそのようなことをするにも、技術職員のポストといいますか、大学における技術者の数に余裕がないと思うんですよね。海外事例の御説明の中にもありましたけれども、ルーチンワークをするような技術職員の方、すなわちテクニシャンとエンジニアを分けているとか、通常の技術職員に加えてもう一つ異なるカテゴリーの技術職のポストを用意しているとかというような海外の事例がございました。そういう事例に比べて、今の日本の大学にはもうその余裕がありません。
ただ、技術職員の方々の雇用形態がなかなか時代に即して変われていない部分もあるので、そこは改革していって、現在雇用されている技術職員の方々に最大限活躍していただく体制をつくっていくことは大事です。それでもやはり、そもそも全体的にポストが少ないところがあります。今お話にありましたように、計測装置の開発等に携わってドクターを取った方がその後どのようなキャリアパスを歩まれているのかというところは非常に興味がありますし、そういった方々が引き続き大学で技術開発に携われるぐらいにポストに余裕があるとよいと思う次第です。
皆様から何か御発言はございますでしょうか。よろしいですか。
それでは、続きまして岡田委員、お願いいたします。
【岡田委員】 私もほかの先生方と同じで、非常にたくさんの論点があったので、なかなか要領よくはまとめてコメントするのが難しいですが。
ちょうど今出ているこのページやその少し前のページの辺りの話と絡めて言うと、例えば27ページぐらいの話とかと絡めて考えると、いわゆる共通機器みたいな話では、全く新しい技術を開発して新しい機器を開発するものと、それからいわゆるアーリーアダプター的なもの、最新の機種とかあるいは最新の機器のさらに発売される前のベータ機みたいなものをいち早く導入してそれを使うというようなアーリーアダプターみたいなものと、それから、そのさらに1周遅れぐらいでキャッチアップみたいな、まだ先端機器だけれども、本当の最先端ではないけれども世界中で普及し始めていてという、そういうキャッチアップ的な先端機器と、それからいわゆるコモディティー的な機器というように階層が分けられるんじゃないかと思うんですね。
新しい技術や機器を開発するという部分については既にいろんなファンディングが施策としてなされていると思うんですけれども、一方で、アーリーアダプター的なところについての施策が割と手薄な気がするんですね。キャッチアップ的なものは例えば先ほどのライフの例でいうとAMEDのBINDSの事業なんかはまさにキャッチアップ的な要素が強くて、例えばクライオEMもたくさんいろんな拠点に導入してキャッチアップしましょうみたいなことが実際行われていると思いますので、キャッチアップ的なものは意外にいろんなところで行われていると思うんですが、アーリーアダプター的なものに対する、それを例えばターゲットにしたような施策、明確にこれから出てきているエマージングなテクノロジーや機器について、それをいち早く導入する拠点を日本に何個かつくって、そこで利用技術などを開発して、いち早く国内に共用していくといった、そういうことを目的にした施策があるといいんじゃないかなと。
しかも、こういうものは研究者としてその分野を世界的にリードしているような研究者だけでは駄目で、それだと多分そのラボだけがその機器をいち早く使って結果を享受するで終わってしまうので、その後、共用に供することを考えると、その後それを実際に共用を行う、担当するような、それが技術員と呼ぶのか研究者と呼ぶのかは微妙ですけれども、そういう非常に研究者に近いような、そういう技術共用を行う担当の人とセットで多分かなう必要があって。しかもそういう人というのは必ずしも技術開発の専門家である必要はなくて、むしろそれを利用したサイエンスをやる利用者としての目線が強い人のほうが支援とかには向いていると思うんですね。だからそういうタイプの人をうまく組み合わせるような形の、アーリーアダプター用のサポートのファンディングというか施策が一つ新しい話になるのかなと思っています。
あと、幾つか出たお話でネットワークについていうと、ネットワークはすごく大事で、特にリモートで使えるようにするのは特にキャッチアップだとかコモディティーに相当するような機械の利用を促進するのには非常に重要だと思うんですが、一方で、リモートだからといって使う人とリモートの機器があればいいかというと、それじゃなくて、多分リモートの場合、両側にオペレーターが必要になるんですね。だからその両側のオペレーターを確保するのが、多分ネットワークを整備するとか機器の自動化とかって以前のところで非常に重要になってきて、そういう意味で先ほど御発言いただいたとおり、やはりいかにして人材を確保するかというか、人材の枠を確保するかということがすごく重要なのかなと思っております。
以上です。
【網塚部会長】 どうもありがとうございました。皆様から何か御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは岡部委員、お願いいたします。
【岡部委員】 論点整理をありがとうございます。ちょっといっぱいあったので、どれに対してコメントすればいいのかあまりまとめていないかもしれないですが。
まず、雨宮委員がおっしゃっていたグループ化はそうなんだろうなと非常に思います。とはいえ、このグループ化はサイエンス、エンジニアリングとなっていったときに、ちょっと今、理学を中心に考えますけれども、かなりブロードだし、本当に世界のトップ研究をやっている人たちのところにぶら下がったときに、全員がそのトップ研究が必要かどうかということもなかなか難しかったりするケースもあると思うので、かなりグループ化は丁寧にやらないと無用の長物になってしまう可能性があるので、そこはちゃんと階層を組み立ててやる必要があるのかなと思いました。
ただ、やっぱりグループ化は必要で、選択と集中って、この委員会では必ず言っている私のワードですけれども、限られた資源を有効に使うにはやっぱり選択と集中が必要だけれども、そこにはちゃんとかなり丁寧なケアをする必要があるなと思いました。
設備・機器という話ですけれども、やはり設備・機器で先ほど伊藤委員が言っていたデータのソフト面も非常に私もそうだなと思うんですが、もう一歩踏み込むと、設備・機器、それによるデータでは実は何の問題も課題も解決できないわけで、やはり課題解決のツールまでがセットになって初めて機器の強みが出るのではないかなと思います。先端機器で計測してデータを取ったら論文が書けるかというとそんなことはないので、そこに対する解釈なりモデルなり理論がないと論文にはならないので、やはり課題解決に至るまでのアセットというんでしょうか、全体をグループの中で知識財産として共有することが極めて重要だなと思います。
最後ですけれども、これも毎回言っているんですが、やはり機器に関して大学は使命があって、8割から85%の子たちがアカデミアにはならないで企業に出ていくので、やはり教育という側面は切っても切れない部分だと思います。一方で、日本の産業競争力をちゃんと維持するためには大学が先端研究をするのも重要な点で、やはり教育と研究をきっちり切り分けないと、ぐしゃぐしゃにしてしまうと日本の国力を損なうことにならないかなと思っていまして、教育と研究をきっちり切り分けることも大事な側面ではないかなと思います。
以上です。
【網塚部会長】 どうもありがとうございます。皆様から何か御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
共共拠点でお世話してくださる方などは、データを出すことの支援だけではなくて、そこから論文に至る段階までのケアを結構してくださっていて、まさにそういうことなのかなと思います。普通の大学で共用機器についてそこまでできるかというと、なかなか難しいので、その辺は確かに手厚くしていくことが重要かと思います。ありがとうございました。よろしいでしょうか。
それでは上西委員、お願いいたします。
【上西委員】 私からは研究基盤のエコシステムについて少しコメントさせていただきたいと思います。先ほどからエコシステムの形成には産業界、民間の方々の力が必要だという話があったかと思います。江端委員からも機器メーカーさんとの連携の話もありましたが、機器メーカーさん以外の様々な業種の民間の企業さんの参入が、エコシステムを強固にするためにはすごく大事だと思います。
そういう観点で考えてみると、例えばオープンイノベーションとかオープンサイエンスとかに関連するようなイベントに出ると、産業界の方からは、欧米は研究機器は大学が保有してオープンになっているから産業界は使いやすいけれども、日本では研究者個人が持っているのでなかなか民間は使えないとかという話が出てきます。
それは何でかなと思うと、日本でもかなりオープンイノベーションが進んできて、そのオープンイノベーションを推進する部署の人たちは最適なアカデミアとのアライアンスを考えておられるので、その時に研究者とのアライアンスももちろんありますが、研究機器はどういうところにどういうものがあって、どういうふうに使えるかということも、そういう部署の人たちがよく考えているし調査もしているようです。
エコシステムをしっかりつくるために民間の方々に参入していただくのは重要で、そのためには、研究基盤というキーワードだけではなくて、オープンイノベーションとかオープンサイエンスとか、そういう切り口で民間の企業の方々にアピールして、現状をしっかり理解していただくのが非常に大事だと思いました。
そういう意味でまだ民間の企業の方々からすると日本の大学の機器は使いにくいというイメージは相当強いので、マイナスのイメージである現状を認識した上で、しっかり民間企業さんにメリットのあるような形でエコシステムをつくる必要があるなと思いました。
私からは以上です。
【網塚部会長】 どうもありがとうございました。何か皆さん、御発言はございますでしょうか。よろしいですか。
上村委員は後ほど文書で御意見を頂けるということですので、先に進めさせていただきまして、高橋委員、お願いいたします。
【高橋部会長代理】 高橋です。
特に資料の14ページ、15ページにあるところで、研究データエコシステムの構築事業ですとか、あと、伊藤委員もおっしゃっていましたけれども、オープンアクセス加速化事業のところで、やはり開けた知へのアクセスというところを進めていくのは非常に賛成でして、データのエコシステムもオープンサイエンスを進めるところで非常に重要なところだと思っています。
特に国内もそうですし、国外も含めて進めていくべきだと思っているんですけれども、総会でもちょっと話題になっていた、やはり国際的なセキュリティーとの兼ね合いですとかそれを進めていくのはみんな賛成だと思うんですけれども、いかにリスクになるところをという認識を共有してそこを対策しながら進めていくかというところが、まだまだ議論され尽くしていないところかなと思っておりまして。どんどんオープンアクセスは進めていっていただきたいところはあるんですけれども、じゃあ何がリスクで、それをどう対処するのかというところの議論ですね。特に国際的なことを考えると、データセキュリティーのみではなく国際政治的なところも絡んでくると思いますので、その辺り、どういうふうにリスクを見て回避していくのかというところについてはもう少し議論を進めてもいいのかなと思っております。
以上となります。
【網塚部会長】 どうもありがとうございます。皆様から何か御質問、御意見はございますでしょうか。
【岡部委員】 一点いいですか。
【網塚部会長】 どうぞ。
【岡部委員】 ここに書いてある今の話で私もすごく重要だと思うんですが、結局データを幾ら共有しても、データのクオリティーまでコントロールできない限り、私はデータサイエンスをやっているので分かるんですが、結構使えないんですよね。
最も重要なことは、ここにメタデータと書いてある、データを取ったことで得られた、さっきの話と同じになるかもしれないけれども、ソリューション提案につながるようなメタ化した知識しか多分使いものにならないと僕は思っていて。そのデータそのものって結構、どういう状況で取られたかによっても全然違っちゃうので、むしろそのデータからどういう課題解決につながったのかというメタ化の部分が、日本はもっと力を入れていったほうがいいのではないのかなという。
ちょっと難しいですけれども、そこをしないと、ただデータを膨大にやってもデータ爆発を起こすだけなので、そこのメタ化が重要ではないかなと。そうすればオープンイノベーションというか、オープンデータは必ずしもデータそのものだけじゃない世界が出せるんじゃないかなとちょっと思ったので、すいません、ちょっと余計なお世話だったんですけれども、コメントしました。
【網塚部会長】 いえいえ、ありがとうございます。きっと分野によるのでしょうね。データベース化できるような類いのデータと、活用のノウハウや、そこから何が得られるかというある程度のメタデータ情報が必要なデータの種類とがあるように想像いたします。天体望遠鏡や素粒子実験から得られるデータの場合には、それを多くの研究者が共有して、それぞれが解析して必要な情報を導き出すので、素に近いデータで良いのかもしれません。しかし、全てそうとは限らず、確かに一まとめにできる話ではないんだろうなと思います。
ほか、皆さん、よろしいでしょうか。
【岡部委員】 もう一点。だとすると、もしその場合だと、やっぱり認証と同じく、いわゆるASTMとかASMEとか僕らの分野だったらあるんですけれども、そういう規格をちゃんとそろえたデータセットにしなくちゃいけないので。単なるデータを全部集めてもほとんど使いものにならなくて、おっしゃっている部分は多分皆さんが共通で取られているデータセットなのでそのまま使える。そうでない場合はメタ化したデータを使うことになるのかなとちょっと思いました。
【網塚部会長】 ありがとうございます。その辺は多分ARIMで、分野がナノテク関係や物質材料に限られていますけれども、データの構造化と活用で非常に苦労されている話はお伺いしています。その辺をこの部会で詳しくお伺いするのもよいかと思いました。ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、続きまして田中委員、お願いいたします。
【田中委員】 田中です。まさにARIMをやっておりますので、そのデータのところで今の現状のようなものをお話しさせていただければいいかなとちょうど思いました。
ARIMでは今、事業の4年目で、データは大分たまってきたところで、来年度から利活用として一般の方、申込みをされた方にオープンにしていくフェーズに入ろうとしているところです。おっしゃったようにメタデータは非常に重要なところで、ファイルの形式をそろえていくのもまた必要なので、装置メーカーによってやっぱりファイルの形式は全然違うのをそろえるという、これはデータそのものに対しての構造化は進んでおります。
メタデータにつきましても、装置由来のものとサンプル由来のものの二種類があります。装置由来のメタデータに関して、装置から取得できないものについては、25機関の参画機関の各先生方、それぞれの装置の専門家の方がそろって、こういう測定条件を書けばメタデータとして十分だろうということを議論しまして、装置の種類ごとに絶対これは入れておこうというような、それからこれはもしあればいいなというもの、というものを入力できるようにはしております。
もう一つのサンプル由来のメタデータについては、サンプルそのものがどういうものかという、ちょっと企業さんなどの場合は開示できないところもあるんですけれども、またそれをどのように処理して入れているかという条件。こちらのほうがまだ装置のメタデータよりは統一化されていないようなところがありまして、最低限のところからもう少し増やしていっているようなところです。
なので、全くただの装置から取得したデータだけをためているような状況ではないんですけれども、メタデータの一部はかなりきちんとさせており、それからサンプル由来のメタデータのほうも少しずつそろえていっているようなフェーズです。特にもう論文に発表したようなデータでこれは活用していいですよというようなデータも入れていまして、そちらにはデータカタログとしてのDOIを付与することを最近始めて、それでデータの信憑性が十分高いようなデータとして利活用されていきやすいのかなと考えております。ARIMの状況としてはそのような形で行っているところです。
それから、それ以外の点についてお話しさせていただきますと、先ほどから話題に上がっています技術スタッフの方がなかなか足りていないような状況であると。そういうポスト、枠を確保しようという話なんですけれども。
ARIMをやっていますと、データを皆さんに使っていただくとか、あるいは一般のユーザーさんを受け入れるようなところでいろんな事務処理が必要になってきますけれども、そういう事務処理ができる方もなかなか見つからなくなってきていると。もっと一番大事な、データを整えてデータを利活用するユーザーに繋ぐ人も見つからなくなっていると。どこも人材不足でなかなか大変ということで、そういう人たちは民間とかやっぱりお給料のいいところに流れやすいので、ポストも大事なんですけれども、サラリーも大分色をつけられるようなシステムがあれば、もっと苦労せずに人が集まるのかなという印象は受けています。
私からは以上です。
【網塚部会長】 どうもありがとうございました。皆様から何か御質問、御発言はございますでしょうか。なるほど、実情がよく分かりました。ありがとうございます。
それでは、続きまして鳴瀧委員、お願いいたします。
【鳴瀧委員】 ありがとうございます。私もいろいろ論点があってなかなか大局的な意見は述べられませんが、一研究者として現場で感じていることを少しお話しできればと思います。
まずは基盤的整備のほうです。機器共用のシステムについて、私は、この4月に名古屋大学から東京医科歯科大学、今は東京科学大へ移ってまいりましたけれども、各大学の仕組みを比較して感じることがあります。ただ総じて、異動してからかなりスムーズに医科歯科大学の機器共用のシステムにまずアクセスして、どんな機器があるのかということが検索しやすく、すぐに担当の方に連絡が取れて講習も受けられて、あまりブランクなく共用設備を使い始めることができましたので、非常によいシステムが各大学で出来上がりつつあるなと、恩恵を受けて非常にありがたく思っています。
一方で、料金体系などは結構大学によって違うなと。あちらの大学では高かったのがこちらでは安かったりとか。あとは、例えば名古屋大学では各装置に1時間幾らという利用料金が設定されていたのに対して、医科歯科大学ではまず共用機器システムのサービスを受けるために一律の料金がかかり、その上で各装置でまた料金がかかるといった2段階の設定になっていたりしました。
基盤的設備に関しては研究大学ではうまく回っている印象を持っていますので、今後見える化の取組も進められるということですが、全国に波及していくようにぜひ進めていただければと感じております。
あと一点は、先ほど田中委員からもありましたが、私も一研究者としてマテリアルDXの京大拠点に所属しており、あとは名古屋大学のARIMにも多少関わっていたということで、やはり苦労したなという話になってしまうんですけれども。こちらは、最先端の設備をトップダウンの形で、先端的研究をしている研究者に使ってもらい、しかもデータを集めて活用していくという道筋が求められているかと思いますが、ARIMの場合は各ハブ拠点があって、例えば名古屋大学ですとバイオマテリアル拠点であり、どの装置を目玉として選定するのか、誰を人員として配置するのか、最先端の研究者ないしいろんな研究者に使ってもらうためにどう料金設定すればいいのかということを、モデルがない中で話し合いました。
あと、やはりデータですね。例えばオミックスの装置ですと、1つサンプルを測定しただけで膨大なデータ量となるので、そのままNIMSのRDEには入れられず、データをどう構造化して入れるかについて、NIMSの担当者の方とも相談しながら手探りで進めている状態です。何か指針があるともう少しスピードアップできるんだろうなという印象を持ちながらこの3年くらいやっておりました。
今では大分情報も集積されてきているかと思いますので、指針の策定や体系化がより進むことを期待しています。
以上となります。
【網塚部会長】 どうもありがとうございます。皆さんから何か御発言はございますか。
オープンサイエンスということでデータを提供できる段階までに至っていらっしゃるということですけれども、田中委員にお伺いしたほうがいいのかもしれないですが、ARIMではデータを利活用した場合、そのデータに対して対価を支払って、最終的にそのデータを提供した研究者が収入を得ることができるような仕組みになるんでしょうか。ちょっと教えてください。
【田中委員】 データ提供された研究者の方に対して、データ利用料収入を還元される仕組みとはなっておりませんが、共用設備の利用の際にデータ提供いただく場合とデータ提供されない場合で利用料金体系を変えております。それにより、データ登録を前提として共用設備を利用いただく方には、利用料金という点でインセンティブとなっているところです。なお、データの利用料につきましては、今年度は試験的に運用をしており一部の方に無料で活用いただいておりますが、来年度からの本格運用にあたっては利用料金を設定するよう調整しているところです。具体的には、個人、グループ、組織単位で、それぞれ料金設定を考えています。その金額設定にあたっては、諸外国との比較や他の商用データベース等を参考にしております。それで、契約方式としてはサブスク方式とし、定額にてダウンロードが可能な仕組みを今は検討しているところです。
それで、その集まったお金は運営するほうに使いまして、元の研究者あるいは元の機関には返還されないということで、NIMSでそのRDEというシステムを維持し、また守っていくために使っていく予定です。
【網塚部会長】 なるほど、ありがとうございます。皆様から何か御発言はございますでしょうか。ありがとうございます。
それでは宮下委員、お願いいたします。
【宮下委員】 宮下でございます。
産学連携のところ、22ページの田邉さんに報告していただいたものが私には印象的でした。これを拝見しますと、やっぱりスタンフォードとかカーネギーメロンとか、アメリカの私立大学は持っているお金の量が違うなということが明確にありまして。やっぱりそこが日本の大学との最も大きい違いですね。
そもそも何でそうなったかということは、私立大学であることと、先ほどから上西先生のお話にもあったとおり、それを推進するスタッフが存在します。これは大学というよりも、もしかしたら国の政策にしたらいいのかもしれないですけれども、ちゃんと大学ごとに、国立大学法人といえども民間からお金を呼び込むようにするためにスタッフを雇う予算をつけるというような施策が必要かなと私は非常に思います。
スタンフォードとかカーネギーメロンとか、ここら辺の大学と日本の民間企業でも連携することがございまして、日本の大学とも当然連携させていただきますけれども、日本の大学ですと先生方が非常に紳士でして、ちょっと共同研究をさせてくださいと言うと、ああいいですよと比較的にリーズナブルな費用が提示されます。
でも、例えばスタンフォードクラスと連携しようとしますとちゃんとオプションが決まっていまして、留学でしたら授業料を払いますからこの程度、それで研究員を送り出すのであればこの程度、それも何千万円になりますけれどもね、その代わり1年間研究員として雇いますと。それで機器も使えますし、世界の先端の仲間と人脈もつくれますと、はっきりしているんですね。要するに、アメリカの大学はイノベーションハブとして世界中の研究者が集って、その中の教授の先生がキーマンといいますか、そういうふうになっていて、しっかりお金が集まる仕組みがもうできていると思っております。
それで、ではその海外の先生が優れているかというと、恐らくここの委員会に出ていらっしゃる先生方がそこに行っても同じ役割はできるはずなんです。日本の先生方の能力は日本は全く劣っているとは私は思っておりません。やはりお金を呼び込む仕組みを国としてちゃんと予算を与えてやっていくのが必要かなと思われました。
私からの意見は以上でございます。
【網塚部会長】 どうもありがとうございます。それはやはり国としてやるんですかね。スタンフォード大学はスタンフォード大学の努力としてやっているのですかね。それとも文化なんですかね。
【宮下委員】 アメリカは、イノベーションに自動的にお金が集まってくるのか、それともスタンフォードを出た人がちゃんと出資してくれるとか、そういうことがあるんじゃないですか。国はしっかりいろんなプログラムを、日本とは規模が違う大きさのプログラムを持っていますし、そこからファンドすることもありますし、民間企業もファンドします。
例えばITの巨人なんかを見ていますと、オープンAIに幾らファンドしていますか。日本でそんなことをやる企業ってソフトバンクぐらいしかないんですけれども、アメリカにはいっぱいありますよね。特定の名前、ソフトバンクを出したのはちょっとまずかったかもしれませんけれども、企業は日本の大学にファンドすることも可能で、お金はやっぱりその仕組みがあれば自動的に集まってくると私は思っております。
以上です。
【網塚部会長】 どうもありがとうございました。皆様から何か御質問、御発言等ございますでしょうか。よろしいですか。
一通り御意見を頂きました。私もちょこちょこ口を挟みましたので、大体思っていたことは既に発言いたしましたけれども、幾つか蛇足になるかもしれませんが付け加えさせていただきます。
一つには、最先端を追求すべき設備・機器の開発・導入及び共用化というテーマと、それから汎用性のある機器の主に組織内での共用化という、2つのカテゴリー分けを今回していただいて、それぞれの定義についてはこの考え方例示されている内容が適当だと思いました。加えて、今日新しく岡田委員からアーリーアダプターのカテゴリーの視点も頂きました。
それで、最先端の設備のほうは、これまでの事業の流れでいきますと、やはりプラットフォームの新規開拓と強化ということになろうかと思います。ですが、特に次期の事業ではそのプラットフォームという点をそれほど強調しなくてもいいように思いました。むしろ世界と戦える、最先端を追求すべき設備・機器の開発・投入を前面に出して、先ほどの装置のカテゴライズで事業をつくっていくのがいいんじゃないかと思いました。つまり、必ずしも複数機関でプラットフォームを組まなくても最先端を追求すべき設備・機器になっているのであれば、1機関が中心になって実施する事業でもいいように思いました。もちろん、最終的にそれでプラットフォームのスタイルになってしまうのかもしれませんけれども、そのような視点で事業をつくっていくのもよいのではないかと思いました。
ただ、ミッションといいますか、最終的なゴールはやはり共用化に置くことは譲れない点かと思いますし、ほかの様々な事業との差別化において、そこは重要なポイントとして残るのではないかと思いました。
汎用性のある機器の共用化については、コアファシリティの拡充ということになっていくと思うんですけれども、それらについてはここにまとめられておりますとおり、組織間、地域でネットワーク化していくとか、各分野で組織間に横串を刺していくなどの形でコアファシリティ採択校等がハブとなって全体をまとめていくことが次の方向性として必要なことのように思います。
もう一つには、全体の底上げやエコシステムを構築していく上で重要となるのは、先ほどから御議論いただいておりますように、技術支援スタッフの絶対的な拡充であろうと思います。増員できれば一番いいんですけれども、その方策を練っていく必要があるように思います。海外事例の中には、どこの国でしたか、教職員を減らしてでも技術職員を増やすべきであるという判断をしている例がございました。両者間の適正なバランスをやはり日本の大学は考えていく必要があるのではないかと思います。
一時期の政策で、教職員を極力維持して、技術職員や事務スタッフを減らして大学は構造改革をしてきたと思ういます。そのしわ寄せが今かなり来ているように思います。いま一度そこの部分も考えていく必要があると思います。もちろん純増できれば一番よいのですが、なかなかそうはならないでしょう。ですが、本当に必要なことであれば、予算要求していく必要があるのではないかと思いました。
加えて、人もそうですけれども、設備に関してはマネジメントをしっかり行うことが大切です。コアファシリティ事業の中では設備や研究基盤のIRを進めて、大学執行部が戦略的に設備・機器を分析して、投資を検討できる体制をつくってまいりましたけれども、これからその発展型を構想していく上では、機関を超えてそういったことを行っていかなければいけないだろうと思います。究極には、海外事例にありましたように、国がインフラの分析をしっかり行い、無駄がないように投資していくことが重要と思いますけれども、全てを行うのは無理だと思うので、このような事業を通じてネットワーク化した基盤ができたときには、その中で最適化していく。マネジメント体制を、1機関ではなくて複数機関でどう運営していくかということを検討していく段階に入ったように思いました。
私からは以上ですけれども、全体を通じて皆様から改めて何か御発言がございましたらお願いいたします。
【岡田委員】 ではよろしいでしょうか。
【網塚部会長】 どうぞよろしくお願いいたします。
【岡田委員】 先ほどアーリーアダプターの件について非常に的確にまとめていただき、ありがとうございます。それに関連して少し補足として、多分、プラットフォームとして複数拠点が組む必要はないんじゃないかと、全くそのとおりだと思うんですけれども、逆にこういう、まだ例えば市場に出ていないようなベータ機とか開発中のものとかをということは結局メーカーとの連携という形になるので、そういう意味で、産学連携的なもの、国内メーカー、国外メーカー含めて、そういう形で行うという。だから日本の中で複数の拠点というよりは、むしろ非常に日本の中でその分野で進んだ1か所とその分野の最先端機器を開発しているメーカーとのペアみたいな感じの話になるのかなと。
実際そういうお話は幾つか頂いていて、ただ日本でそういう枠組みがないので、どうしようかなという話でなかなか進まなかったりするんですが、メーカーの側からも、機械を作ってもそのアプリケーションとかそれをサポートする人が育たないと結局商売にならないというので、そういう意味で企業のほうからも人を出して、そういう拠点で教育とアプリケーションの開発をやりたいというニーズはあるみたいなので、そういう意味で産学連携との絡みでもここは入るのかなと思っております。
以上です。
【網塚部会長】 どうもありがとうございます。ほか、皆さんから何か言い足りてないところがございましたら。江端委員、お願いします。
【江端委員】 ありがとうございます。今、岡田委員からお話があった、産学連携については本当に重要なので、それをしっかりと形にしていく、どのような方向性で国として支援していくのかを、しっかりと見える形にしていただければと思います。ありがとうございます。
もう一点、網塚先生から話があったように、研究基盤IRや研究基盤マネジメントの体制を整えていく上でのマネジメントの在り方、特にエビデンスベースのマネジメントをするためには、以前から申し上げておりますとおり現状把握をしっかりしなければいけないと思います。各々の大学で努力はされているかと思いますが、大学の中でそういったデータを集めたり、それを皆さんに共有したりすることは実際大変困難で、大きな課題です。資料にある「現場の課題解決と全体を底上げする仕組みの構築」においても、設備・機器の各大学における設置状況やそれが設置されてどのぐらいの年月が経っているのか、実際にどの程度使用されているのか等、しっかりとしたエビデンスが必要だと思います。技術者も同じで、どこにどのような人がいるのか、モノだけでなくヒトも重要ですので、これらの見える化は非常に重要だと思っております。
そのため、各大学では戦略的に必要なので各々で実施する部分もありますが、国全体として現状を把握する仕組みの構築は必要だと思いますので、これが大学の中に閉じたものではなく、オールジャパンでシェアできるような仕組みづくりについて、ぜひ御検討をよろしくお願いいたします。
以上です。
【網塚部会長】 ありがとうございます。岡部委員、手が挙がっております。お願いします。
【岡部委員】 部会長の御説明、すごくよく分かって大変感銘しました。なるほどなと。
その上で、先ほど言った話の延長に実はなってしまうのかもしれないですけれども、私は基盤的共用設備の部分も極めて重要だと思っておりまして。というのは、産学連携という切り口においても、きちんとした共用的な装置を使ってきちんとしたデータを取れる人材を産業界に出すことは、日本の国力にとって極めて重要な側面があると思うんですね。最先端の研究は最先端の研究で研究側面があり、基盤的設備のほうは教育的側面で極めて重要だと思っていて、もし可能であれば環境課さんには、ここのワードで一個も「教育」というワードがないですけれども、これ、大学は教育機関なので、教育という側面を、産学連携という切り口でもその教育は極めて重要だと思うので、入れていただけるとありがたいなと思いました。
以上です。
【網塚部会長】 どうもありがとうございます。まだ少しお時間はございますが、皆さんいかがでしょうか。よろしいですかね。
何か言おうとして忘れていたのですけれども、研究者と企業の技術者の方あるいは研究者の方が共同で新技術を開発していくことももちろん重要で、それが最終的にはエコシステムにつながっていくのはもっともなんですが、大学独自に研究者と技術者が協力して新技術を開発していく仕組みがまだまだ日本は弱い感じがしています。
今、私、実は高エネ研で実験していて出張先からなんですけれども、ビッグサイエンスの現場では研究者と技術者が共同開発して巨大施設をつくっていく、見えないものを見る新しい計測機器をつくっていくのは当たり前です。しかしながら、大学ではまだそこが弱く、その一つの要因が、技術職員の方にも研究者にも余力がないことにあると思われます。ぜひ今後は、新しい技術スタッフのポジションを少しつくるなどして、研究者と技術者が共同でイノベーションを起こしていく仕組みをエンカレッジしていくのがよいと感じます。
ほか、皆さんいかがでしょうか。よろしいですか、皆さん。
それでは、追加の御意見等はないようですので、本日頂きました意見・議論を踏まえて、今後の論点については、またちょっと大変ですけれども事務局でまとめていただきまして、次回以降の部会で御報告いただければと思います。
それでは、本日の議事は以上となりますけれども、最後に改めまして何か御発言のある方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいですか。
それでは、事務局から連絡事項等ございましたらお願いいたします。
【田邉専門職】 事務局でございます。
本日も様々な御意見を頂きまして誠にありがとうございました。頂きました御意見を踏まえまして、また本日の論点について事務局でまとめながら、引き続き御議論を頂ければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
次回の部会につきましては11月28日、木曜日を予定しております。日程が近くなりましたら正式に開催案内を送付させていただきますので、よろしくお願いいたします。
また、本日の議事録につきましては、部会運営の規則に基づきまして、資料とともに公表することとなっておりますので、議事録は後日メールにてお送りいたしますので、そちらの御確認もどうぞよろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
【網塚部会長】 ありがとうございます。
それでは、以上をもちまして第26回研究開発基盤部会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
―― 了 ――
科学技術・学術政策局 研究環境課