研究開発基盤部会(第3回) 議事録

1.日時

令和元年10月3日(木曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 15階 科学技術・学術政策局 会議室1

3.議題

  1. 令和2年度概算要求について
  2. 第6期科学技術基本計画に向けた検討状況について
  3. 部会の中間取りまとめに基づき検討を深めるべき事項

4.出席者

委員

岸本委員長、網塚委員、飯島委員、江端委員、長我部委員、木川委員、菊池委員、佐藤委員、杉沢委員、高橋委員、田沼委員、中村委員、西島委員、野村委員、波多野委員、原田委員、横山委員

文部科学省

科学技術・学術政策局長 菱山豊、科学技術・学術総括官 角田喜彦、研究開発基盤課長 渡邉淳、研究開発基盤課 課長補佐 黒川典俊

5.議事録

【岸本部会長】  それでは、皆さんおそろいになりましたので、これから第3回科学技術・学術審議会研究開発基盤部会を開催いたします。

 本日は、議事次第にありますように、三つの議題が挙げられております。最初が「令和2年度概算要求について」、2番目が「第6期科学技術基本計画に向けた検討状況について」、3番目が「部会の中間取りまとめに基づき検討を深めるべき事項」となっております。議題の1番と2番は、これまでの報告等も含めて、お話を聞くという形になりますが、3番のところで委員の方々から御意見いただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、事務局から本日の出席者と資料の確認をお願いいたします。

―事務局より資料の説明―

【岸本部会長】  それでは、議事に入りたいと思います。最初が「令和2年度概算要求について」ということで、8月末に公開されました来年度の概算要求について、事務局から説明をお願いいたします。

【黒川課長補佐】  2020年度の概算要求について、2ページ目ですけれども、まず、大型研究施設の整備・利活用の促進ということで、ここのページに記載しておりますのは、3Cのところの真ん中の、最先端の大型研究施設に関する概算要求でございます。左上のスーパーコンピューターについては、ポスト「京」の「富岳」で119億円の要求、右上ですけれども、次世代放射光施設の推進で55億の概算要求をしておりまして、更に、既存の共用の4施設につきましては、「SPring-8」が98億、「SACLA」が72億、HPCIの運営で159億円、「J-PARC」が112億円という概算要求をさせていただいているところでございます。

 3ページ目です。主にこの部会でメインに御議論いただいております先端研究基盤共用促進事業でございますけれども、右肩、前年度の予算額13.5億円から、令和2年度は16.2億円ということで要求をさせていただいてございます。事業の概要ですけれども、緑の共用プラットフォーム形成支援プログラム、青の左側、新たな共用システム導入支援プログラム、オレンジの研究機器相互利用ネットワーク導入プログラム(SHARE)につきましては、いずれも2020年度で一旦事業の節目を迎えます。共用プラットフォームについては約3.6億円、前年同ということでございます。それから、新たな共用システムについては約3.7億円ということでございます。SHAREについても、約2億弱ということで要求をさせていただいてございます。

 新しい取組みとしまして、真ん中、右側ですけれども、コアファシリティ構築支援プログラムというものを要求してございます。6月の部会でも少し御議論いただきましたけれども、新共用の取組みを踏まえまして、大学・研究機関全体の統括部局の機能を強化する、それから、機関全体の研究基盤として研究設備・機器群を戦略的に導入・更新・共用する仕組みを構築することを支援していくプログラムです。これは2020年からの5年間ということで概算要求をさせていただきまして、額としては約6.8億円ということになってございます。

 4ページ目ですけれども、これが6月の部会での御議論も踏まえて、今、財政当局と調整を進めているものでございます。コアファシリティ構築支援プログラム、真ん中ですけれども、新共用の成果を発展させて、大学・研究機関が組織として継続的に優れた研究設備・機器を戦略的に整備・活用できるようにする、それから、全ての研究者がより研究に打ち込める環境を実現するということで、概要のところですけれども、研究機関全体の研究基盤として戦略的に導入・更新・共用する仕組みを強化(コアファシリティ化)するということで概算要求をさせていただいてございます。事業スキームについては、右下のところですけれども、大体事業規模については、年間約6,000万円×10拠点ということで要求をさせていただいてございます。

 なお、財政当局との折衝におきましては、方向性については同じ方向を向いているわけですけれども、大学の本来業務ではないかとか、支援額は新共用のときには2,000万程度だったものが、6,000万程度の予算が必要なのか、あるいは、統括部局の機能強化のためには一体どういう要件を取り入れていくのがいいのか、産学連携との関係で、オープンイノベーション機構など、大学の経営層のリーダーシップの下での組織化というのがいろいろ進んでいるわけで、そういうところと何らか連携ができないのかと、こういった指摘もあり、いろいろ議論を進めているところでございます。先生方からも、このように議論を進めていったらいいのではないかということで御知見がありましたら、是非お借りできれば有り難いと思ってございます。

 5ページ目でございますけれども、未来社会創造事業ということで、平成29年度からハイリスク・ハイインパクトな研究開発の推進ということで立ち上げたものでございます。いろいろな事業を束ねながらやっているということで、前年度予算額65億円を、来年度の

概算要求110.5億円ということで要求をしております。真ん中記載の、事業スキームのところに、探索加速型と大規模プロジェクト型の二つがございます。探索加速型につきましては、五つの領域を立てて、それぞれチャレンジングな課題を3年程度、年間2,000万円程度でスモールスタートで始めまして、良いものを本格研究ということで伸ばしていくというものでございます。この部会で特に見ていただいておりますのは、探索加速型の赤で囲っております共通基盤領域ということで、先端計測分析・機器等の研究開発を支援するというものでございます。

 6ページ目、共通基盤領域の概要でございます。平成30年度から立上げており、我が国の基礎科学力を支えて持続的な科学技術イノベーションの創出に貢献する、基盤技術の事業化により我が国の競争力強化に寄与するということで、三つの重点項目を掲げて研究開発を進めてございます。ハイリスク・ハイインパクトで先端的な計測分析技術・機器等の開発、データ解析・処理技術等のアプリケーション開発やシステム化、研究開発現場の生産性向上等に資する技術ということでございます。

 7ページ目、研究開発マネジメント体制でございます。まず、長我部委員に運営統括に御就任いただいておりまして、その下でテーママネジャーとして、ライフ、物質・材料、数理の先生方にプロジェクトを御牽引いただいてございます。さらに、研究開発運営会議の委員としまして、本部会の佐藤先生と杉沢先生にも御参画をいただいているところでございます。

 8ページ目、共通基盤領域の重点公募テーマとしまして、革新的な知や製品を創出する共通基盤システム・装置の実現ということで公募をいたしました。応募は226件いただきまして、その中から、かなりの倍率ですけれども、13件の課題を採択いただいて、2年半の探索研究を実際行っていただいているところでございます。その13件を、便宜上、ライフ、物質・材料、数理という形で事務局の方で仕分けしてみますと、こういった課題について、今、研究が進んでいるという状況でございます。

 9ページ目、今、2年度目の令和元年度の公募というのも進んでおりまして、それにつきましては、30年度は、この真ん中、グレーのところのサブテーマというのを10個立てまして公募いただいたわけですけれども、それを継承しつつ、更に優先的に提案を求める課題ということで、上にありますY01、それからY02というものを挙げて、今、公募を締め切って、採択審査を進めていただいているという状況でございます。

 概算要求の状況と、研究開発の進捗については、以上でございます。

【岸本部会長】  それでは、ただいまの説明に関しまして、御質問あるいはコメントがありましたら、お願いしたいと思います。その中で、今、二つのお話をいただいたわけですけれども、一つは、概算要求していただいていますコアファシリティ構築支援プログラムについて、財政当局とのやり取りの中で、いろいろなアイデアをもう少し先生方の方からインプットしていただきたいということと、二つ目は、未来社会創造事業の中で、共通基盤領域の概要についてお話しいただいたというところであります。

 後半の方ですけれども、運営統括に長我部委員が関わっているということで、もしよろしければ、少し補足説明いただけると有り難いです。

【長我部委員】  御説明ありがとうございました。基盤領域では先端計測分析技術・機器開発プログラムが長期間運営されてきましたが、一定の成果を出して終了ということで、その後で基盤領域のプログラムをどう立てるか関係者が御苦労されて、本プログラムに結実したのだと思っています。計測関係では、雨宮先生と北川先生が、CREST・さきがけ領域で計測と情報の融合を推進されていますが、未来社会創造事業の共通基盤は「基盤」と銘打った大切なプログラムだと思っています。

 未来社会創造事業という大きな枠組みの中で、最初は若干の違和感がありました。というのは他の領域が「超スマート」「安心・安全」など、直接社会に実装し価値が還元される領域であるのに対して、共通基盤領域の目的は研究開発力を支え、伸張させることだからです。しかし科学技術立国を標榜する日本で未来社会を支えるのは研究開発ですし、人口とお金で勝る超大国に勝るには、研究のやり方を工夫するのが日本の得意なやり方ではないかということで、非常に貴重なプログラムだと思っています。従って予算確保の方は是非よろしくお願いします。

 先ほど御説明ありましたように、プログラムの制度として、スモールスタートして、ステージゲートで審査され、本格研究として年間2億円ぐらい×5年というかなり大きなプロジェクトに進む仕掛けになっています。本格研究ではプルーフ・オブ・コンセプト(PoC)、この場合ですと、実際の研究現場で開発したものを使って、本当にサイエンティフィックな素晴らしい結果が出るか、あるいは産業的な開発で成果が挙がるか、それをチェックするという仕組みになっていまして、それが結構狭き門です。去年は、226件も応募がありまして、最終的には毎年1件ぐらいしか本格研究に進めないということで、この辺をどうやって育成していくか、若い方もたくさん応募してくださって、きらりと光るテーマはありますけれども、二、三年やってもなかなか10億円のお金は付けられないが、しかし期待が高いものを、次にどうやって育成していくかが課題です。本プログラムでは、本格研究に進む良いテーマがでてくることが大きな財務当局、納税者へのインパクトになると思うんですけれども、それだけではなく、ここで活躍する若手をどうやって育成するかという点で、皆さんの御知恵を借りていきたいと思っております。以上です。

【岸本部会長】  ありがとうございます。佐藤委員、杉沢委員の方からも、何かコメントいただければと思いますけれども。

【杉沢委員】  長我部委員の方から総括的なお話をされたので、私の方からは、私の思っているところを少しだけ話させていただきます。「共通基盤領域」の重点項目として、6ページに三つ挙げられています。(1)(2)は、本制度の基本的な目標であり、広範な課題を対象としております。それに対して、(3)項目に挙げられている研究開発現場の生産性向上を果たすための共通基盤技術という考え方は、この制度に特徴的な項目であり、重要な考え方です。今、日本の重要な課題と言われている研究力の向上を実現するには、実際に研究が行われている研究現場の力の向上こそが重要だと思います。研究力を向上させる一つの重要な要素として、現場の生産性の向上が挙げられます。本制度では、その生産性を飛躍的に改善することができる新しいアイデアと技術の提案を求めています。そのための要素技術、あるいはシステム、アイデアを、是非ここで育てていきたいと思っております。

 生産性向上の手法は大きくは二つあると思っています。一つは、実験検証プロセス全体の、ある意味、ルーチンワーク的な作業の生産性を向上するということです。つまり、無駄を省き、より効率的に作業できるようにということです。もう一つは、革新的な情報を得られるようにするということです。これまで測ることができなかった、あるいは得られなかった情報を得たり、全く新しい情報を生み出したりするということです。その情報によって、これまで沢山の実験と検証が必要だった作業が不要になったり新しいアイデアが生まれたりすることで、飛躍的に生産性が向上するからです。その二つに関しまして、この領域では、バランス良く採択されていると思います。

 とりわけ数理解析分野が入っていることは、いつも見ていて感心いたします。数理解析分野は、生産性を上げる、あるいはクリエイティビティを上げる場合のベースになる共通技術と言えますが、広範な研究分野に適用できるような共通技術が提案されています。この数理解析技術をベースにして、ライフサイエンスとマテリアルサイエンスの三つの領域にわたる技術を見ていくという、このシステムは非常にすばらしいと思っていますので、是非この制度を更に強化させていただきたいと思っております。以上です。

【佐藤委員】  先ほど言われたように、先端計測分析技術・機器開発プログラムの発展形みたいなことを考えて、かなりその前に議論したのですね。その結果として、こういう形に持っていこうということで始まっていますけれども、その中で、先端計測のときに、今のままで先端計測やっても、もう駄目じゃないのと。だから、世界に通用するオンリーワン・ナンバーワンと、それからフラッグシップ機みたいなものにシステムアップできないと、いくら戦っても勝てない。そういうことが切り出せるような事業展開に持っていったらどうかということで、それで長我部さんのリーダーシップもあって、非常にいい三つの重点項目を挙げてシステムアップできるような仕組みを作って、今、我々もなかなか分からなかった若い人が育ってきているというか、出てきているので、非常に期待できるという気はしています。

 ただ、とにかく予算が少ない。ステージゲートを越えて次のステップに行くのに、かなりシステムアップするという意味では相当お金が要る話なので、予算を今の2倍とか3倍ぐらいを考えてもらわないと、なかなか長我部さんも苦労するのではないかという気がしますので、是非皆さんの協力とともに文科省の努力をお願いしますということです。

【岸本部会長】  ありがとうございました。委員の方々からコメントをお願い致します。

【西島委員】  大変いいシステムで、探索研究の部分は、是非このまま頑張ってほしいと思います。予算が少ないと思うんですけれども、それは言ってもしょうがないので、僕の感じでは、増えようがないんじゃないかと。

 そこで、一つの考えですけれども、探索研究から本格研究に行くときに、探索研究の中でいい研究を磨くというより、いい研究で、なおかつ、企業に導出可能とか、企業のマッチングファンドを取れるような、そういうストーリー作りをするというのがここで重要であって、国からのお金で本格研究をやって増えていくというよりは、本格研究に入るものについては、それ以前に、企業に渡す、場合によったら、探索研究を卒業して企業に持っていかれてしまったというような実績を作っていかないと、これは単純に探索研究を本格研究に育てるというストーリー作りでは無理かという印象を持ったんですが、その辺はいかがですか。

【長我部委員】  大変良い御意見、ありがとうございます。私もそのとおりだと思っております。イグジットの仕方が本格研究だけでは足りないので、おっしゃるように、企業主体の開発にイグジットするとか、ほかのプログラムにイグジットするとか、そこは考えていこうと思っています。また、マッチングの考え方も非常に重要だと思います。このプログラム、非常にフレキシビリティがあるのでマッチングファンドも可能になるはずです。多くのプロジェクトは企業が参加しているので、本気度をチェックして本格に進みたいなら同額以上出していただけるように経営陣とお話しようと思っています。まさに西島委員が御指摘の点をやらないと、このプログラムは完結しないと思っています。そこは強力にやりたいですね。

【西島委員】  文科省も、そこを大分期待しているはずですよね。

【佐藤委員】  だから、そこが弱いのは、要するに企業側も含めてだけれども、ビジネスモデルがちゃんと描けないと駄目なので、いくらいい技術だとしても、世界の共通的になるような、だからフラッグシップ技術、盛んに言っているのですけれども、ビジネスモデルが立てられるようなことを、ステージゲートを越えてやっていかないといかんという気は思っています。どこまで期待してもらえばいいのか分からんけれども、そういう方向に持っていけばいいのではないかという気がしています。

【杉沢委員】  今、おっしゃった、ステージゲートで本格研究に持っていくときに、その技術を市場に展開する企業からの投資を求めることも一つの条件にはなり得るとは思いますが、共通基盤技術という性格を考えますと、他の選択肢も残しておくべきと考えています。出口が最終マーケットとなる技術の場合は、マッチングファンド等の企業投資を条件とするのが合理的だと考えられます。一方で、共通基盤技術の場合は、本部会で議論されておりますコアファシリティや様々な研究機関において、研究生産性を向上させるための基盤として活用されるケースが想定されますが、このような技術の場合、大変重要な技術でありながら、それを製品化してその利益の一部を開発投資に回すというスキームでは投資が進まない恐れもあると思います。市場規模が限定的だからです。そのような共通基盤となる技術に関しては、それを製品化する企業からの投資を条件とするのではなく、利用する側であるコアファシリティ等を通じてファンディングするような仕組みが必要なのではないかと思っております。以上です。

【岸本部会長】  探索研究が3年で、このスキームだと、本格研究に進めないものは、そこで全てが解散してしまう。それは非常にもったいないというか、その中でも、探索研究を少し続けてからの方がいいとか、ここのところの裕度がもっとあった方が、せっかく探索をやってきたものがなくならないというか、次に伸ばせるというので、あるなしではないようなこと入れていくことが必要かと思います。だから、本格研究の方の予算がどうなるかにもよりますけれども、もう少し続けてやってもらいたいものは、続けてやってもらったというのができるといいですけれどもね。

【長我部委員】  先ほど西島委員がおっしゃったように、予算の大きな拡大は難しいので、このプログラムの外の制度をいかに利用してつなげていくか、あるいは、このプログラムでやったことを核に企業との共同研究に持っていくとか、あるいは科研費という手もあるかもしれなくて、そういう出口をしっかり一人一人ちゃんと設計して考えてあげるというところかと思います。またイグジットも、先ほど杉沢委員がおっしゃったように、企業と製品化するのもあるけれども、国の施設を活用して共用サービスとして実装されるのもあると思います。研究力向上に資するような形であればいいので、出口に関してはフレキシブルに考えていきたいと思います。このプログラムは、全体として制度設計されているので、制度を画期的に変えるのは、結構難しい気がしています。

【岸本部会長】  この中だけでやろうとするとですね。ありがとうございます。

 また、いろいろな形で御報告いただいて議論していければと思いますが、もう一つの方のコアファシリティ構築支援プログラム、正に概算要求をして、いろいろな議論が始まっているというところですけれども、これに対して、ここに書かれていること、あるいは、もう少しこういう観点があった方がいいんじゃないかというようなことについてコメントを頂ければと思います。

【西島委員】  3ページを見ると、新たな共用システム導入支援プログラムがコアファシリティ構築に移行するという形になっていて、新たな共用システム導入支援プログラムで採択したところというのは40ぐらいあるんですよね。ということは、次のコアファシリティの構築の方に行くのが10個ぐらいになると、言葉悪いけれども、セレクトされたということですかね。そのときに、新たな共用システムで育てた人材が、コアファシリティの構築の方に十分生かすような人材育成という視点での規模感というか、育て方という、そういうことを多分見込んでいると思うんですが、文科省として人材育成という視点から、拠点を10個に絞ったときに、これまで育った人材を十分に吸収してモチベーションを高めるのでしょうか。

【渡邉課長】  今まで新共用で、学部やセンターぐらいの研究組織レベルで実施していたものを、コアファシリティにおいて機関全体に広げていきたいというイメージで設計をしています。そういう意味では、今まで新共用で培ってきたノウハウなり、そういうものは是非生かしていただきたいと思います。しかし、そこに選ばれなかったところについての御心配も非常にあるのかと思いますし、そこのところは確かに財政面で支援というのはでき

なくなってしまうのもあるとは思うんですけれども、やっていることについては非常に重要なことだと思うので、何らか情報を提供・共有なり、そういうことはしていきながら、つながりというのは引き続き重要視して考えていきたいとは思っております。

【岸本部会長】  今までのやってきたものをもう少し大くくり化して、数というよりは、10のグループにするというような観点なので、これまでのものが全然続けられなくなるというよりは、その中にいろいろな形で入っていただくような方がいいのかと思います。だから、この10拠点の選び方だとかというところに、そのところをどう反映するかですね。大学の中で閉じてやるのか、もう少し大学連携まで含めた拠点化みたいなことで大くくり化していくみたいなところが要るのかと思いました。

【西島委員】  公募がそういう形も書けるといいんじゃないかと思います。

【岸本部会長】  大学一つで閉じないような、グループで出すようなことを、これから見ていったらどうかと思います。

【菊池委員】  それに関して質問してよろしいですか。本当に拠点を作っていくというときに、その前の段階で採択されなかったところの、例えば技術員とかそういう人たちが、この新しく選ばれる十のところに少なくとも移ることができる可能性を作っているかどうか。そうでないと、採択されなければ、もうそれでおしまい。そんなもったいないことないんじゃないんですかねと、単純にそう思うんですね。

 そういうような意味では、岸本先生、また西島先生がおっしゃるように、一つの大学に閉じることない形を取れば、採択されなかったほかの大学の有能な技術員を、だったら移したらいいじゃないですかという、少なくとも移せるような可能性があれば、人材育成に関しても、採択されなかったところで培った非常にプラスのものを新しい拠点のところにも移せるという、そんな可能性も出てくるんじゃないかと思っています。採択されなかった人たちの中で有能な人たちをどうするかという議論をこういうものに持ち込んでくれば、継続的な人材育成も可能になるんじゃないかと感じました。

【岸本部会長】  技術職員の人たちのクロスアポイントメントみたいな形で、拠点大学の方に軸足を置いていただきながらホームの方の大学で技術職員として働くみたいな、もう少し、拠点大学になったところは、そういう意味で、自分の大学だけじゃなくて、周りの大学の全体の拠点みたいなイメージのものを持っていくと、今までよりは一段進んだ形であって、大学の本来の事業だというのが、今は本来の事業というのは、大学の中で閉じている事業が本来で、それよりもっと広がりを持った形のものだというので、少し財務省との交渉というのはできないでしょうかね。というのが一つのアイデアですけれども、それがいいかどうかは分かりませんが、一つの観点は、そういうところがあるかと思いました。

【渡邉課長】  そういう意味では、技術職員の育成とか、そういうところも重要な観点だと思っています。また、今までの議論の中でも、一つの大学では賄いきれないというか、技術職員の育成ができない、難しいという話も聞いておりますので、周辺の大学と連携して、有能な方から学ぶ場なり、逆に外に提供する場というものを考えていくことは、非常にいいことだと思っております。

【網塚委員】  今、渡邉課長がおっしゃったように、技術人材の育成は、学内でも持っている技術が多岐にわたりますので、一大学の中だけで人事交流を図るとかはなかなか難しいので、必ず複数の大学間、機関間の間での連携は必須になると思うんです。また、一方で、一つの大学の中でも、こういう統括部局を作っていくのが大変なことがあって、そこに大部分の予算を掛けなければならないこともあります。グループで申請することもできれば、一大学で申請して、もちろん、その中にはいろいろな大学との連携を含むという形で出せるように、いろいろな可能性を取り入れた形の要項にするといいのではないかと思います。

【佐藤委員】  前の方の制度をやってきた人間として、余り言えないのですけれども、言いたいことを言うと、3Cがありますよね。今、40ぐらいでやっているものをうまく次のコアファシリティに生かしていくということも、それも非常に重要で、多分やらなきゃいかんだろうと思うのですけれども、もう少し上位概念で考えて、3Cの中のコア、中の方の「SPring-8」だとか、そういう大物、それから共用のプラットフォームね。あれは大体、制度として確実に成果が挙がってきていっているよねというのが、大体財務省は認めて、多分、行けているのだと思うんですよ。

 それで、大学にそれぞれポテンシャルのあるものを組合わせて、新たな共用システムを作ろうということでやってきたのだけれども、それが継続的な形で日本の大学あるいは公的機関も含めた研究力向上につなげる仕組みとして作れるのかと。そのビジョンを描いて、そこに持っていくためにコアファシリティがまず必要だろうというような、そういう描き方をしないと、多分、コアファシリティ終わったら、次どうするのと。その次、終わったらどうするのという話になっちゃうから、何かそれが要るのだろうと思うのですよ。

 それで、ここで言っているのは、恐らくワンストップサービスみたいな、プラットフォーム化みたいなことを、予算的に見て、そんなにできないですよね。だから、そういう関連するところをうまく組合わせて、非常に研究開発効率を上げることをやろうということに、

これは見えるのです。その中に、40とやってきたことの非常に大きな成果が、それぞれ出てきているはずで、それをうまく組合わせて、更にそういうものを日本のトップ技術として共通基盤として支えていく形に制度設計しないと、なかなか先行きが難しいという気がするので、その辺を是非考えてほしいという要望です。

【岸本部会長】  ありがとうございました。まだ御意見あるかもしれませんけれども、後でまたいろいろな形で戻れると思いますので、次の議題に進みたいと思います。

 次の議題は、「第6期科学技術基本計画に向けた検討状況について」でございます。それでは、事務局の方から御説明をお願いしたいと思います。

【黒川課長補佐】  資料2「第6期基本計画に向けた検討状況」の1ページ目ですけれども、全体のスケジュールを記載させていただいてございます。左側が文科省(総合政策特別委員会)でございますけれども、4月から総合政策特別委員会の中で検討が進んでございます。この部会から菊池委員にも御参画いただきまして、進んでいるわけですけれども、上のところの枠囲みのところですね、「研究力向上に向けたシステム改革について関係部会等における検討結果」というところがございます。ここが6月の部会までで御議論いただきました中間取りまとめに当たるものでございまして、これが6月27日の木曜日のところで、親会の方に無事報告をされました。その後、6月、7月、8月、9月と、月1ペースで議論が行われまして、9月27日、先週ですけれども、中間取りまとめが行われました。後ほど御紹介をさせていただきます。その後ですけれども、更に10月までに、研究開発の各縦割りの分野について部会で検討が行われて、それが報告をされて、更に11月、12月、1月と議論がされて、文科省としましては、来年の3月頃に最終取りまとめを目指しているという状況でございます。

 それから、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の方ですけれども、基本計画専門調査会が8月に立ち上がりまして、今年度内を目途に、まず、第5期科学技術基本計画のレビューを取りまとめまして、その後、来年の6月頃までに中間取りまとめ、その後、来年度いっぱいで答申案を取りまとめまして、2021年4月から第6期科学技術基本計画を開始していくと、こういう全体のスケジュールで、今、動いている状況でございます。

 次のページが先週の総合政策特別委員会で取りまとめられた中間取りまとめの概要でございます。現状認識としまして、デジタル革命によって知識集約型社会への大転換が加速をしていると。それから、競争力の源泉が資本から知や情報・データに移行する中で、どういったことをやっていかないといけないかということで、真ん中のところ、Society5.0の

実現に向けてということで、大きく三つの柱を掲げてございます。

 一つが、知識集約型の価値創造システムの構築ということで、知が流通・循環をして、それに対して活発な投資が行われることによって最大価値化されて、新たなイノベーションや高付加価値なビジネスが創出されるシステムを作っていこうというものです。左下ですけれども、我が国の社会課題の解決と世界の持続的な発展への貢献をしていこうということで、課題先進国として、最先端の科学技術を活用して、持続可能な社会システムやビジネスモデルを構築していこうというものです。右の方ですけれども、人間中心のインクルーシブ社会の実現をしていこうということで、人々が分け隔てなく知へのアクセスや発信、それから社会活動への参加が可能となるような、誰一人取り残さない社会の実現を目指す、それから、ELSIへの対応に先送りすることなく取組みをするということが掲げられてございます。

 それをしていく上で、真ん中、下の方ですけれども、早急に求められる科学技術イノベーションへの集中投資とシステム改革ということで、次の科学技術基本計画は2021年度から2025年度ということですけれども、少子高齢化を前に、知識集約型社会への転換を我が国が主導できるかどうかの決断と実行の分水嶺ということで、官民挙げて科学技術イノベーションに集中投資、あらゆる人材・資源を総動員していくということで、社会システムの早急な変革をしていこうということでございます。

 その下に書かれた内容が具体策ですけれども、次のページをおめくりいただきまして、基本的な方向性と具体的施策ということで、2章から6章ということになってございますけれども、私ども研究開発基盤部会で御議論いただいた内容は、主に2章と、それから5章のところに盛込まれてございます。この概要の中では、まず、2章のところの主な具体的な施策で、研究設備・機器の戦略的な整備、集約・共用の促進(ラボから組織へ)と技術職員の活躍促進等というところと、5章のところで、研究システムのデジタル転換と、そのための情報基盤の充実強化、それから、データの適切かつ効率的な取得と利活用のルール整備等々書いてございますけれども、次のページから、中間取りまとめの本文の中でも、かなりの部分を、部会での議論を取入れていただいたということを、少し御紹介でございます。

 まず、目次が書いてございますけれども、2章のところに、若手研究者の自立促進・キャリアパスの安定、3ポツに世界最高水準の研究環境の実現、5章のところで、研究システムのデジタル転換と情報基盤の充実・強化、データの適切かつ効率的な取得・利活用のための環境整備ということになってございます。具体的な文章は、その次のページからになって

ございまして、ところどころマーカーさせていただいています。3ページ、左下のところで、研究職以外の、教育を主たる業務とする教員、URA等のマネジメント人材、技術職員、データ人材をはじめとする、多様なキャリアや場での活躍促進も必要ということで書いてあるのと、次の右側、3.世界最高水準の研究環境の実現、ここからが部会での議論が主に入れられているところでございます。基本的な方向性、それから具体的な取組ということで、かいつまみますと、丸1 で、最先端の研究施設・設備、研究支援体制を整えた研究拠点の中長期的・戦略的整備、それから、丸2 で、組織全体での戦略的な研究設備・機器の集約・共用、コアファシリティ化の促進。

 次のページをめくっていただきまして、これはかなりの部分、部会での議論をそのまま入れていただいている状況ですけれども、更に右上の方で、技術職員の育成・活躍促進やキャリアパス構築ということもしっかり書いていただいてございます。4のところで少し、研究施設の機能向上というところも入ってきてございます。

 次のページをめくっていただきまして、第5章のデジタル革命の進展に対応した新たな研究システムの構築ということで、右側、(2)具体的な取組の中でも、スマートラボの促進ですとか、改めて研究施設設備・機器の高度化と技術職員の育成・確保について、デジタル革命との対応についても記載があります。こういった状況でございまして、部会で御議論いただいたコアの内容というのは、今、総合政策特別委員会の方にも届いているという状況で、御紹介をさせていただきます。

【岸本部会長】  どうもありがとうございました。6月のときにいろいろ御議論いただいた内容が、総合政策特別委員会の方の議論の中に入ってきていて、それで中間取りまとめということで、参考資料2の方が全文になる中で、こちらの部会からいろいろインプットしたものが、かなりのボリュームとして取り上げられているという御報告でございました。

 この後の進め方は、資料2のところの最初のページにありますように、個別分野ということで、それぞれの研究分野ごとに、この内容を精査していって、3月に最終取りまとめ、直接的には、こちらの部会の方にすぐ戻ってくるというわけではないですが、動いているという状況であります。

 ただ、第6期の科学技術基本計画の中にどう取入れていくかについては、また来年度になっても議論が続いていくということと、後の議題になりますけれども、来年度の概算要求ということも視野に入れながら、この部会としてもいろいろ検討を続けていきたいということでございます。

 今までの御説明に対して、何か御質問ございますか。あるいは菊池委員の方から、総合政策特別委員会に御出席されていたときの御印象とかコメントございましたら、お願いしたいと思います。

【菊池委員】  この特別委員会に参加させていただいて、今、説明がありましたように、この部会からの意見はかなり反映されていると思っています。その中で非常に印象的だったのは、言葉の使い方のところで五神先生が「値付け」という言葉を使われまして、なぜこういうのが出てきたかというのを少しだけ説明させていただきます。

 イノベーションを起こすということになってきますと、今の時代のイノベーションは、本当に基礎力も、それから応用力も、そしてまた、それを支える設備・施設も、全てが整って初めて可能になるという認識を非常に強く持たれております。どこかのところが基礎科学を担います、どこかのところは応用をやります、どこかに設備を集めましたと、そのような形でイノベーションは生じない。そういうような意味では、大学・国研が知識集約型の新しい価値を創造していくイノベーションを起こすためには、本当にそこがコアにならなきゃいけません。そのようなところで、大学や国研が持つ総合的な力ですね、それに対して、もう少しちゃんと、この社会のほかの皆さんにも理解してもらう必要があります。

 そういうような意味で、大学や国研が持つ、それが単にばらばらの基礎力を持っているとか、ばらばらの技術員を持っているとか、ばらばらの施設を持っているわけじゃないという、それが統合化されて初めて、インテグレートされて初めてイノベーションが起こるんだというので、そのようなところで大学や国研のもつ総合性に対しての社会的な価値をもう少し理解してもらう必要があるということで、「値付け」という言葉を出されまして、もう少し値付けされて、ちゃんとどこかでイノベーションが起こるための共通基盤ですね、本当にただ設備だけじゃなくて、基礎力も含めて、それから、それを支える技術員もみんなありますよという形で提示していく必要があるんじゃないかと。それを進めるためには、拠点化というか、重点化が必要だという認識を、それぞれの参加されている委員の皆さんが持っていたかと思います。

 また、そのときに、地域性というか、それも忘れてもらっては困るということで、全部東大型の総合的なものじゃなくて、それぞれの地域で特徴がある、それをちゃんとその地域で固めた形で持っていかないと、イノベーションが起こりませんという形の議論がかなり先行していたかと思います。

【岸本部会長】  ありがとうございます。「根付け」というのは、根っこが付いているということでしょうか。

【菊池委員】  いや、価値の値付け。「値付け」です。大学に対する値付けとか、国研の値付けというか。バリューです。

【岸本部会長】  バリューの方ですね。

【菊池委員】  私見ですが、私、ずっとアメリカの大学で研究しておったんですが、各大学が間接費というインダイレクトコストというのを持っています。そのインダイレクトコストは、単純にその大学でその研究を推進するための事務的な費用を賄うための費用だけではなくて、間接費の半分ぐらいは、かなりその大学の特徴を出すための施策に使うという形で、事務的な経費にはインダイレクトコストの半分ぐらいしか使っていないんです。あとの半分は、どちらかというと、本当に基盤を整備するための基金に使ったりして、全学で使うもの、各学部に返すもの、各学科に返すものという形で進めていましたので、インダイレクトコストがダイレクトコストに対して、私がミシガン大学でやっていた当時は68%でした。その中で事務費に使うのは20%ぐらいです。あとの残りの約50%は、全学に半分、残りは学部と学科に返すという形で、基盤を整備するためのものです。

 また大学ごとにインダイレクトコストの割合は違っておりまして、MITなんか、たしか80%近かったと思いますし、そういうのを「値付け」と言われたのかな。どちらかというと、各大学がどのような形で自分たちの大学を評価してくださいということも含めて、単にあるアイテムの研究開発の資金、それに投入する直接費だけではなくて、その大学が持っている価値に対して民間企業もお金はちゃんと払っていました、そういう仕組みです。もう少し日本もそのように現実的に考えて、五神先生がおっしゃるような、各大学の値付けで、ある地方大学の方のインダイレクトコストが、ずっと旧帝大よりも高いということを各民間が認めるということになったら、非常に面白い日本の進展の仕方じゃないかとも勝手に想像しながら、五神先生の値付けの話を聞いておりました。

【岸本部会長】  どうもありがとうございます。この議論、大分できるかもしれませんけれども、次で、この部会としての議論を少ししたいので、菊池先生、御紹介ありがとうございました。

 特に事務局からの説明に関して、何か分かりにくかったところとかありましたら、御質問いただきたいと思いますが、議論は次でしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 それでは、続いて「部会の中間取りまとめに基づき検討を深めるべき事項」ということで、少し時間を取って議論したいと思いますので、まず、事務局の方から論点と幾つかの話題

提供をお願いしたいと思います。

【黒川課長補佐】  資料3「御議論いただきたい事項」の1枚目ですけれども、これは6月にこの部会で取りまとめていただきました中間取りまとめの概要そのものでございます。本日は、その中で、下の方ですけれども、第6期科学技術基本計画に向けて目指すべき方向性/特に取り組むべき事項ということで、青、緑、それからグレー、オレンジで囲っております。取組むべき事項として掲げていただいた個別の内容も含めまして、本日、更に議論を深めていただけると有り難いということでございます。幾つか関連の話題の提供と、それから、少し事務局の悩みも含めて御紹介をさせていただきたいと思います。

 まず、2ページ目です。これは「先端研究基盤共用促進事業シンポジウム2019」ということで、先月の9月5日ですけれども、JASISコンファレンスプログラムの中で、幕張メッセで開催をさせていただきました。この部会の委員の先生方にもかなりお世話になりまして、また、出席につきましても、今年は165名ということで、右下に写真が付いておりますけれども、朝から晩まで席は全て埋まっている大盛況の状況でございました。本当にありがとうございました。

 中身ですけれども、研究力向上の原動力である研究基盤の充実に向けてということで、大学機関の先進的な取組の紹介ですとか、あるいは今後のことを少し考えていこうということで、左にありますようなプログラムで開催をさせていただきました。午前中は、共用プラットフォームの取組みと成果、午後が、新共用プログラムを基にした研究基盤の強化、新たに立ち上がりましたSHAREの各機関の取組紹介、研究力向上の原動力である研究基盤の充実に向けてということで、幾つかの話題提供と、パネルディスカッションということでございます。資料と概要については、右側に記載のURLに既に公表しています。

次、3ページ目、少しパネルディスカッションで御議論いただいた内容を御紹介させていただきたいと思います。このパネルディスカッションは、モデレーターを江端先生にお願いさせていただきまして、パネリストとして、本日御欠席ですけれども、江龍先生、網塚先生にも御出席を頂きました。ここでは大きく分けて、丸1 持続的な研究基盤の構築ということと、丸2 技術職員の活躍促進ということで、1時間以上、御議論いただいたわけですけれども、ここに書かせていただいたような御意見がございました。

 まず、1)のところは、研究基盤の維持についてということですけれども、研究や機器が進化していっているわけで、既存の機器の更新というのが不可欠だけれども、全てを維持することはなかなか大変です。大学として、どういう機器を持つべきか見定めていかないといけないとか、あるいは、共用が進んできて、いい効果が生まれているんだけれども、更新予算の確保が課題なので、部局でできること、大学全体にサポートしていくことのバランスが重要です。それから、先ほど予算の議論でも少し出ましたけれども、各部局の共用体制が整いつつある中で、複数大学で分野ごとの連携を深めていくということもあるのではないかですとか、異分野の研究者がチームを組んで、それから、設備・機器だけでなく、人の共有もしていく必要があるのではないかという御議論がありました。

 二つ目、部局で管理しきれなくなった機器の整理ということで、全てを維持して更新していくというのはなかなか難しい中で、部局で管理を終えるものについては、例えば若手・中堅からの希望があれば優先的に移管をして、有効活用とか改造をしてもらってもいいよとしているのですとか、学内で売買する仕組みだとか、リユースの仕組みなんかも取組みが進み始めているという議論もありました。

 三つ目、大学の原状を踏まえた課題と対応ということで、人口減少と機器の高額化の中で、持続可能な研究基盤の在り方をどう考えていくかですとか、利用料につきまして、今までコストベースで算出をされているわけですけれども、提供価値ベースに変えていくことが要るのではないかとか、あるいは、大学の目的積立金をもっと柔軟に活用できるようになって、機器の更新をしていく必要があるのではないか、また、海外では研究機器のポートフォリオマネジメントとかユーザーベースの最適化なんかが論点になっている中では、どのようなことをしているかというような議論もございました。

 技術職員の活躍促進については、スペシャルの技術を持つことの重要性、いろいろな人が主役になることが必要。分かりやすい「見える化」された組織を作っていくことで、安定した研究環境の提供につながるのだけれども、その際には、トップダウン、ボトムアップのバランスを取りながら組織化を進める必要がある。ただ、部局の壁はありますね。あとは、各大学で技術職員に求められるものや在り方はいろいろなので、各大学で組織の作り方というのはいろいろあるのではないか。こういった御議論を頂いたところでございます。

4ページ目です。先ほど新共用で培ったノウハウということで話がございましたけれども、今月の末に、また新共用事業の担当者連絡会ということで、以前、この部会の前身であります研究基盤整備・高度化委員会にも、一度、幹事校の皆様にお越しいただきました。そこでは、新共用で培ったノウハウをどう最終的にまとめて外に展開をしていくかということで御知恵をお借りしていまして、その中で、各大学で共用システムを入れていく中で悩まれたこと、あるいは大学の経営層を説得する上で必要だったことというのを少しまとめてみてはどうかというお話も頂いておりました。事務局の方で、例えば大学等における研究基盤の整備・共用に関するガイドラインなるものを、連絡会の皆様に御協力いただきながら作ってみてはどうかということで、少し検討を始めているところでございます。

 趣旨としましては、主に大学の事務レベルの方々を読者に想定して、共用システムを今後入れていく上で、過去、こういう課題があっただとか、あるいは、このようにしたら解決できたよということを少しまとめていってはどうかということでございます。その際に、経営層や本部などに対して理解を得る際にも事例集として使えるような形で、いろいろなコンテンツを盛込んでいけないかと考えております。柱立てとしましては、現状認識・基本的考え方を書いた上で、共用システムの導入によるメリット、共用システムの全体構成、これまで各大学にて作ってこられたルールとしています。その上で、好事例としまして、経営面で、経営戦略ですとか組織体制、財源の確保と、このような取組みがありますとか、機器の保守・管理・更新については、このような特徴的な事例がありますとか、更には、技術職員の育成・活躍促進については、このような取組みがあるということを、分かりやすくまとめてみてはどうかと思っています。

 あとは、なかなか関係する規程というのがいろいろなところにある中で、一つ、これを見ればバイブルだというものを含めて入っていると、後々の人が先行事例を踏まえて共用システムを作る上で参考になるのではないかと思います。また、その際には、コラム等の形式で、共用システム導入に当たっての苦労や課題、失敗例なんかも含めると役に立つのではないかということで、少し意見交換を始めさせていただいています。もし、この部会の先生方でも、過去、プロジェクトに携わっていただいていく中で、こういうことをまとめていってはどうかとか、あるいは、こういうことを整理してはどうかということを、お知恵がありましたら、是非いただければ有り難いと思ってございます。

 最後、5ページ目でございますけれども、これが事務局としまして本日御議論いただけると有り難いという、若干悩みも入った紙でございます。この3Cの各図の中で、色の付いているところが中間取りまとめでまとめていただいたわけです。まず、青の部分の、新共用としてこれまで取組んできたところの今後ということで、上の丸のところには、大学・研究機関全体としての取組、基幹的な機能、それから、共用化のためのガイドラインを作ってはどうかとかいうことで御議論いただいたわけです。更に、今の財政当局との議論の中で、統括部局との機能強化・トップマネジメントを促進する上で、大学・研究機関にどのようなことを要件として求めていく必要があるのかどうか。

 二つ目ですけれども、新共用のノウハウの展開、あるいは経営陣の啓発という観点で、共用化のためのガイドラインということを作るとすれば、どういったことを盛込むべきか、あるいは、策定に当たってどういうことに気を付けた方がいいかということを、御知恵をいただければ有り難いと思ってございます。

 三つ目です。これは特に第6期の科学技術基本計画などの議論の中でもよく出てくる話ですけれども、国として、各大学・研究機関の取組みをどう把握・評価をすべきかということです。これまでですと、新共用で70の研究組織でしっかり新たな研究共用システムを作っていくということが目標として掲げられてきました。これは無事に達成させていただいたわけですけれども、プログラムも一旦区切りを迎える中で、次、どういう目標を立てていくのか。あるいは、採択されている機関が、今、中心として評価されてきたわけですけれども、それ以外のところも含めて、どう把握して、頑張っているところを評価していくかというところは、私どももなかなか悩んでいるところでございます。

 真ん中、緑のところの、共用プラットフォームレベルのところにつきましては、部会では、かなり中長期的な視点から全体最適化した整備が必要ではないか。あるいは、戦略的な配置ですとか地域協調的な整備ということで御議論いただいたわけですけれども、下の矢印のところですけれども、国内有数の先端的な研究施設・設備が、より多くのユーザーに利用されて成果創出が図られるためには、共用プラットフォーム形成支援プログラムの取組みを踏まえて、今後、どのような取組みを強化すべきかを少し御議論いただけると有り難いと思ってございます。

 これは予算のときにも少し御紹介させていただきましたけれども、共用プラットフォームにつきましても、予算上は2020年度をもって一旦事業の区切りを迎えるということでございます。その次、2021年度の概算要求をしていくということですと、来年の夏ぐらいまでに、特にこういった切り口で行ってはどうかということを少しまとめていく必要がございますので、御知恵をいただけると有り難いと思ってございます。

 さらに、次ですけれども、他方で、なかなか予算全体が増えない中というのもあり、限られた予算の中で、中長期的視点から全体最適化、研究設備の整備・共用を進めるためには、どのようなことで取組んでいくべきか、あるいは、どういったことを整理して調べていくのがいいかというところも含めて、アイデアがございましたら、是非いただければ有り難いと思ってございます。以上でございます。

【岸本部会長】  ありがとうございました。それでは、この後、いろいろな形で自由討議をさせていただきたいと思います。きょうのこれからの御議論の目的は、今日何か結論を出すというよりは、いろいろな形でいろいろな見方をインプットいただければと思いますので、思い付かれたことでも結構ですので、御意見をいただきたいと思います。

 進めるに当たりまして、先ほどのシンポジウムのお話がありましたので、そちらのモデレーターをされた江端委員、それと、網塚委員がいらっしゃっていましたので、今の事務局の説明に加えて何かございましたら、まずコメントいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

【江端委員】  ありがとうございます。パネルディスカッションの内容に関しましては、先ほど御説明いただいたように、議論がこのような形で収束してきているというところは、こちらの部会でも議論していることでもありますし、その他の様々なイベントで議論されてきたことが、ある程度のところまで集約されてきたのかと感じております。

 今回、出席者が165名ということで、非常に多くの方に参加していただきましたが、その内訳としてどのような職種の方々が参加されたか、というところが非常に重要だったと思っています。壇上から拝見しましたところ、もちろん研究者の先生方もいらっしゃる、この事業に関わる方々も参加されていたのですが、それ以外の、例えば共用事業に興味のある研究者の先生方、あるいは技術職員や事務職員の方々が全国から集まってきたり、民間企業の方々も含め共用事業に関わるステークホルダーがほぼ集まっているという印象を受けました。今回のシンポジウムが非常に意義深いものだったのではないかと思うとともに、部会で御議論されて、様々な形で広がってきた政策自体が、現場にまで浸透していることがよく分かりました。大変良いシンポジウムだったと思います。

【岸本部会長】  きょうの最後のページのところで、これから議論していただきたい事項というのが並んでいるわけですけれども、こちらに対するコメントもいただけたら有り難いのですが、いかがでしょうか。

【江端委員】  ここに記載されている課題は難題が多いと思いますが、私が最も難しいと考えているのは、いかに評価するかというところです。新共用事業自体がそもそもどのように評価されているのか、現時点ではよく分かりませんが、例えばこれを評価する上で、研究基盤の共用がどう進んだのかについて、どのようなKPIを立てるべきなのか、本当に共用率だけで測るべきものなのかなどということも含めて、もう少し具体的な指標に目標を定めることが必要ではないかと思っています。

 それを踏まえて、結果として、統括部局の機能強化や、トップマネジメントをどのように実現するかという話につながっていくものと思いますので、先ほどのコアファシリティの話のように、新共用事業がそもそもどう評価されているのか、事業を推進した結果に対してどういう改善点があるかなど、先ほどストーリーというお話もありましたが、そういったつながりを考えていくべきだと思います。

【岸本部会長】  例えば大学の機関別評価の中に、そういう項目は直接的に入っていないのではないかと思いますけれども、むしろ積極的にそういうものを入れていくとかいうことが、多分、私たちが言うことかと思います。そう言ったときに、意味のないものを入れてもいけないので、非常に意味のあるものとして機関別評価の中に入れていくべしというのが提案として出てくるといいかと思うんです。そのときのKPIの立て方というのは、またうまくしないといけないんですけれども、その辺りはどうでしょうか。

【江端委員】  本当に様々なKPIがあると思いますが、まず、大学現場の現状を考えますと、古いものから新しいものまでそもそも装置自体が数多く設置されています。そのような状況で、機関が所有する全装置の何割ぐらいが共用化されているかというと、各大学でまちまちですが、10%~20%くらいではないかと思います。戦略的な研究基盤の活用を考える上では、各大学に設置されている全装置の把握とともに、共用化されている装置がどのぐらいの割合あるかは、ありきたりではありますが一つの重要な指標になるかと思います。

 一方で、人財の共用化という観点で考えたときに、技術職員の方々がどのような形で研究基盤に関わっていただいているのかを見える形にするという意味で、共用設備に関わっている方の中に技術職員の方がどれぐらいいらっしゃるかや、そのマネジメント体制等、適切かどうか分かりませんが、少なくともそれが直接大学に響くような形、例えば中期目標・中期計画のような形で明記していただくことは必要かと思っています。

【岸本部会長】  ありがとうございます。網塚委員から、シンポジウムのコメントと、よろしければ、議論するポイントのところに関してコメントいただけると有り難いです。

【網塚委員】  まず、シンポジウムですけれども、私もパネラーとして出席させていただきまして、非常に自分自身、勉強になって、参考になりました。それで、フロアからも結構質問等が出て、なかなか活況なシンポジウムだったと思います。

 今、江端さんがおっしゃったことで大体尽きているんですけれども、一つ目の話題は持続的な研究基盤ということでありましたが、少し議論すると、すぐに持続的な財政基盤の話になってしまって、いつも同じようなことを繰返し議論することになるんです。今回、新共用の事業をベースに、名古屋工業大学の江龍先生と、それから宮崎大学の水光先生の御講演がその前にあった形で、それを受けた形で議論をしたということであります。どちらの大学も、トップマネジメントで結構組織改革も行って、財政基盤を建て直すということをされていて、非常に努力されている事例を御紹介いただいて、参考になりました。

 その上で、ここにリストアップされていますように、かなり具体的な課題をパネルディスカッションで議論することができて、最終的にクリアカットな答えはないんですけれども、また一段、具体例についてフロアの方々と一緒に議論できたのは、良かったのではないかと思います。

 それから、もう一つは、技術職員の活躍促進ということで、人材育成のことだったんですけれども、こちらは、同じくパネリストで来ていらっしゃいました名古屋大学の古賀さんから、技術職員の職階を改革する、あるいは評価制度ですか、それを改革するといった、人事改革のお話をいただいておりましたので、それについて、またディスカッションをしました。私がすごく印象的だったのは、名古屋大学のような大きな規模の大学で、そういう技術職員の人事改革を進めることができているということでありまして、非常に参考になりました。北大でやろうとすると、結構部局の壁があったりして、そういうことをどのように打破するのかということで、好事例をいただいたということですね。それで、おっしゃっていましたけれども、PDCAではなく、まずDoから始めてDCAPで、とにかく小さなところから始めて、それで改革していくのが大きな大学でも重要だとおっしゃっていたのが、非常に印象的でした。

 シンポジウム、非常に盛況で、先ほど江端委員がおっしゃったように、ここに参加されている方々が重要だということでしたけれども、あとの問題とも絡んで、こういうところに、もっと大学の理事とか総長が参加してもらえるようになると、話は早いのかと思いました。

【岸本部会長】  どうもありがとうございます。大学の執行部に出てきていただくには、何かこういうことをやっていくことが非常に大学として大切だというところを理解してもらうというのが一つでしょうかね。

【網塚委員】  そうですね。

【岸本部会長】  最後のページについて、何かございませんか。

【網塚委員】  いろいろあるんですけれども、一つ、下から二つ目の黒い太字のところ、共用プラットフォームの形成支援プログラムの取組みを踏まえ、今後どのような取組みを強化すべきか。「より多くのユーザーに利用され」というところがあるんですけれども、私、個人的に少しやろうかと思っていますのは、新共用事業によって、それから設備サポート

センター整備事業等もあって、各大学の中の機器共用のシステムというのはかなりできてきて、そういう拠点が全国に多数に及んでいる状況になっています。そこで、そこに横串を刺す一つの方策として、原点に回帰して、もともと機器共用というのは、ある特定のサイエンスの分野とかそういう人たちが、お互いに装置のやりくりをしようと言って始めたところがありますので、ここでもう一度原点に回帰して、狭い分野で全国に横串を刺すような活動をしていくのも面白いのではないかと思っています。もともと分子科学研究所でやっていらっしゃる全国の大学連携研究設備ネットワークは、化学分野からスタートされていると思うんですけれども、それでいろいろなところに分野横断、分野融合ということで、その後、拡充されていったと思うんです。ここでまた一旦、割と狭い分野で全国でネットワークを作るようなことをすると、非常に機器共用の母体が強化されるのではないかと思っています。

 具体的には、私は物性物理学の実験分野が専門なので、全国に今作っている物性委員会というのがあるんですけれども、そこに集まる物性実験の人たちで、例えば名工大の方、金沢大の方もいて、そういうところで、まず分野で横串を刺すことをすると、かなりこのネットワークを強化することができるんじゃないかと思うので、そういうことをやってみようかと思っているところです。

【岸本部会長】  その場合はあれですかね、ベースになるのは、一つは学会とかですか。

【網塚委員】  そうです。物性委員会というのも物理学会の中に作っているものでありまして、例えば具体的なことを一つ申し上げると、名工大の方で液体ヘリウムがくめなくなってしまって実験が立ち行かない。それで今、北大の装置をオープンファシリティで使ってもらって実験をするということを行っていて、そういうコミュニケーションというのは分野間では割と容易にできているし、学会で顔が見えているので、ネットワークを作ろうと思うと、割と容易なわけですよね。ただ、料金をどうするとか何とかという面倒くさいオーダーがあるので、共同研究としてやってしまっていたんですけれども、今、各大学でこういう基盤が整備されたので、ここでもう一度、そういうシステムを使った上で、分野の中でネットワークを図るというのも非常に有効かと思います。

【岸本部会長】  そういうときに、大学が縦糸で、横糸的に学協会があって、その分野といったときに、そういうところを基盤に見ていくというのが大事かということですね。

【網塚委員】  ええ。そういう見直しがあってもいいし、今まで機器共用について余り知らなかった人も、それで知るようになるので、こういった取組が更に発展するのかと思っております。

【岸本部会長】  ありがとうございます。話題提供ということで、一渡りお話しいただいたところですけれども、あとは各委員の方々からということですけれども、どうしましょうか。一言ずつ、皆さんおっしゃりたいことがあるのかと思いますので、まだ御意見いただいていない方から、最後のページのところにコメントいただけると有り難いですけれども、こちらからでいいですか。波多野先生からでお願い致します。

【波多野委員】  ありがとうございます。トップマネジメントの方がこのシンポジウムに参加されていないのは大変残念です。トップマネジメントへの教育も必要と思います。技術職員、既にある設備のメンテを間接費で、というのは容易ではないと思います。また間接費も日本は30%ですが、菊池委員が御紹介されたミシガンは多分高いと思うんですね。

 その中で、私は現場の立場から実感したことがございます。ちょうど2週間前に、デルフト工科大学で量子技術の会議がございました。実は、日本で活躍していた研究者に、研究実績がかなり高い方なのですが、3年ほど前にデルフトの技術職員のポジションを紹介しました。彼に会って話をしたら、とても幸せだと。専門知識も活かせる、何よりも待遇がよくポジションも高い、リスペクトされる仕事である、と。さらに、分野を越えた横断型の技術を構築するチャンスもある、と活き活きとしていました。つまり、グローバルにみて、技術職員がどのように待遇されていて、育成され、期待され、研究力や経済的に貢献しているか、そして何を強化すべきか、をもっと具体的に示せるといいかと思いました。すなわち技術職員、さらには共同施設の国際的な比較、また日本の特徴など、定量性も含めた調査と議論も必要と思います。

 また材料・物性分野は比較的分かりやすいですが、新たな価値につながるシステムやイノベーションに展開するためのソフト、情報、データの共有化、などなどを支える人材が日本は不足していると思います。デルフトでは、例えば量子技術に関わるソフトウエアの技術職員が大活躍しています。その結果、量子コンピュータ、量子センサ、量子通信・ネットワーク、すべてのプラットフォームを構築できております。それには、先ほどの長我部委員の御紹介にもございましたように、未来社会創造事業で数理が入っているということはとても重要で、その分野のポテンシャルを上げていかないと、要素技術は日本が強いけれども、イノベーションにつなげるのが難しい、ということになりかねません。しかし日本では、その分野は論文につながりにくく、研究者としての評価が難しい領域でもあります。それを変えないと、とは思いますが、技術職員も担ってくださると強力です。以上、最近私が感じていますことをお伝えしました。

【木川委員】  言い出すといろいろあるんですけれども、まず、新共用に関して言いますと、すごくいろいろな良い取組みも出ているんですが、その取りまとめに当たって、幾つもシンポジウムを聞いていて、欠けている視点が二つあると思っています。一つは、部外者の意見というもの、例えばパネリストに少し新共用ではない人たちからの意見を取入れる仕組みがないので、どうしても外から見たときの良さが引き出されない。どうしても、自分たちがこんないいことをやっています、こんなことがつらいです、だけになっているので、その視点が、特に次のプログラムをいいものにするために、非常に大事ではないかと思いました。

 それから、もう一つは、人材教育という中で、特に技術職員の人材教育ばかりを議論しているんですけれども、大学本来の業務の一つとしては、若い人たちというか、学生さんをどうやって育てていくかということがあって、それに対して、この仕組みがどれだけ役に立つかという議論が、この前聞いていたら、誰も話されませんでした。皆さん、すごく研究、研究となっていたんですけれども、多分、その手前に人材が大事で、その人材がいずれ、一部の人たちは社会に出ていくし、一部の人たちは次の基盤を担うし、研究を担うしという形で、人材教育というところの学生教育に関して、もっとよく考えてやると、事業の価値がもっと高くなるのではないかと思いました。というところが非常に大事なのかと思います。

 それから、次第6期科学技術基本計画では、ちゃんと施設を共用しながら、どんどん研究を高めていこうということが書かれているということは、文化としてどうやって浸透していくか。これはJSTの永野さんが、何か違った言い方で言われていましたけれども、正に文化というものをどうやって浸透させていくかというのが非常に大事で、これはKPIとかでなかなか測れないものです。ヨーロッパでいろいろな議論を聞いていると、彼らは基本的にそういう文化を持っていて、その上でいろいろな制度を作り、人を交流させてとやっているんですけれども、多分、日本には、まだそこが欠けているのではないのかと思います。それは島国であるがゆえの話だろうと思うんですけれども、そういう意味で、文化としてどうやってそれをちゃんとやって、それを使うのが当たり前だとやっていくのをどうすべきかと。これは僕らも同じことを担っているんですけれども、そこが非常に重要なのではないかと感じました。以上です。

【杉沢委員】  研究基盤を強化していく、しかもいかに効率的に強化していくかというところで、本部会で大きく考えられていることは、共用施設のコアファシリティ化という考え方と、そのコアファシリティを運営するに当たって、共通のガイドラインを設定して、より効果的に整備していくという考え方だろうと理解しております。

 その共通ガイドラインについて、ここに骨子案が示されておりまして、非常に的確にポイントを整理されております。これに付け加えることはないと思いながら見ておりました。その中で一つコメントさせていただきたいことがございました。

コアファシリティは同じものが幾つもあっても国全体として見た場合、非効率になりますから、それぞれの大学あるいは研究機関が、ある種の特徴・強みを持ったコアファシリティを建てるべきと考えられます。そうは言いながらも、例えば予約管理システムや利用料の設定の仕組み、中古機器の売却・転用の仕組みなど、共通性の高い部分についてはそれぞれのコアファシリティが独立に検討し構築することは、ガイドラインを作るにしても、効率的ではないと思います。コアファシリティの独自性を追及すべきところと、共通化すべきところは、しっかりと区別していただき、共通化すべきところはガイドラインとは言わずに、本当に統一するような考え方、あるいは施策を導入していただきたいと思いました。共通的な事務作業のような部分は全国で統一して、徹底して省力化を進め、コアファシリティには自分たちの強みをより強くする、より生産性を高くする、創造力を高くするところに集中していただくという考え方で施策を進めていただけると有り難いと思いました。以上です。

【横山委員】  分子研、横山ですけれども、私も大体同じような意見で、網塚先生と杉沢先生がおっしゃったように、コアファシリティにしても新共用にしても、それぞれが独立にやっている印象がどうしても出てしまうので、それに横串を刺すのを、多分、新共用の場合、文科省さんだけでやっておられるようなイメージを受けるんですけれども、そこを少し実施者側が、もう少しある程度強制力のあるよう横串が刺さった方が、ガイドラインを作るのもそうですし、必要かと思いました。新共用の方は、もうこれで終わりかもしれませんが、コアファシリティの方は、これからやるのであれば、完全に独立ではなくて、全体でまとまる何かを持っておいた方がいいように思いました。

 それから、もう一つ、先ほど江端委員がおっしゃったとおりですけれども、評価というのが、どうしてもその事業が終わってから評価になってしまいますので、終わってからだと、お金を評価できないという、みんな済んだことでということになってしまうので、そこは次の事業の申請のときに、何かの過去の業績を評価できるようなシステムをしないと、どうしても競争資金で3年ごとに予算申請になると、実際に事業が成功したかどうかというのは、終わってからしか分からないというのがあります。そこは例えば今回のコアファシリティだと、これまでの成果をちゃんと何か客観的に見られるようなものを出していただいた方がいいような気がいたします。以上です。

【中村委員】  先日、所属学会の学術講演会がありまして、先生方に共用につきまして話をお伺いしたんですけれども、共用のプログラムが走っているときはいいのですが、終わった途端に装置のトラブルが突発的に起こったときに修理費が出ないなど、現場では、プログラムのオンオフが、そのまま共用の促進のオンオフにつながっているという話を何件かお伺いしました。これは非常に悲しい話であるわけで、もちろん、予算が潤沢にあれば、カバーできる話ではあるかもしれませんけれども、ここのところを、次のコアファシリティなどの今後のプログラムでカバーしていける仕組みが構築され、効率的な維持管理につながる話につながればと思っております。

【高橋委員】  私どもが関係しているところは、3Cの真ん中のグリーンのところですけれども、この規模での装置とか、それから基盤の技術というものが、個々の組織にあり、皆さん、かなりの危機感を持っておられるというのは事実です。いろいろなところで、今、目に見えないような連携だったり、目に見えるような連携も含めて、草の根的な連携も進んできているんですが、その辺りの掘り起こしを是非していただければと常々考えております。

 というのは、予算の基盤がないがために、連携をして、連携が最大化するような仕組みを考えたいと思っていても、なかなか大学等の中、ある組織の中だけで予算が取れないとか、協力をすることによって、バイファケーションがどのようなものかということを掘り起こす明示的な場がないとか、そういったいろいろなところがあります。多分、先生方にお聞きすると、あそことあそこを組ませたらよろしいのではないかとか、あそことあそこが面白そうだというのは、恐らくあるのではないかと、私を含めてあるので、そういうところを掘り起こすというのが、一つ大きなことになる、共用プラットフォームの更なる次の一歩というのがあり得るのではないかというのが1点でございます。

 それと、もう一つは、先ほど来、先生方がおっしゃっていた技術者のお話ですけれども、技術者の育成のときに、組織の中にいると固定化してしまうんですね。専門知識があるからこそ固定化されなければならない部分がある一方で、人材の流動性というのが非常に大事になってまいりますので、そこのところは、大学間あるいは組織間の流動性というのをどのように確保するのかというのを、プロジェクトを進める中でも具体的にさせていただく、あるいは仕組みを作っていただくということになると、更なる活性化ができるのではないかと考えます。この2点でございます。

【野村委員】  主に三つありまして、一つは、ガイドラインという言葉はやめた方がいいのではないかと思います。何となく大学の人たちは、ガイドラインと書かれると、従わないといけないみたいになるので、もっとノウハウ集とか何かにした方がいいかと。一つは、いろいろな大学とか研究機関の中で、そういう整備とか、そういうことに対する企画・計画作りというのを求められているんだろうと思うんですね。新共用にしてもプラットフォームにしても、これまで、あるものをどう共用するかで行ったわけですけれども、次は日本全体、若しくは大学の中で、何をどう整備していくのかをプランニングする、多分、新共用については、それがコアファシリティがかなり機能する部分になるのかと思っています。

 そういう意味で、多分、文科省も非常に大きな役割を果たすことになると思うんです。これまでいろいろな予算で、余り全体像を見ずに、科研費で整備したけれども、あとのランニングコストがないとか、大きなプロジェクトがあるときにドンと買ったけれども、あと液体ヘリウムが買えないとか、そういうのがいっぱい出ているのは、これは非常に無駄なので、もっとプランニングをうまくやっていかないといけないかと感じています。そういう機会になっていけばいいかと思います。

 もう一つは、技術職員ということで、前回もお話ししたかもしれないんですけれども、技術職員の定義、いろいろな職員がいて、シンポジウムで永野さんが話された中でもあって、テクニシャン的なものを考えるのか、エンジニアなのか。あとは、放射光の分野ですと、最近、リサーチエンジニアとかエンジニアリングサイエンティストという言葉が海外でも使われていて、そういう、どういう人を本当に必要としていくのか、そういう人たちを研究者コミュニティがどう評価していくのかということを含めて考えなくてはいけないだろうと。あとは特に、研究自体が多くなってくると、ボトムアップだけではいかなくて、もっとエンジニアリング的というか、組織的にやらなくてはいけない。そういうマネジメントというのは、これまで大学の研究者は非常に弱くて、そういうところを含めて考えていかなければいけないかと思っています。

 そういう意味では、技術職員の場合、職人技から、いかに自分の開発したものをほかの人にトランスファーできるかという、悪い属人化をどうやって防ぐかというのがあって、そういうことを含めて、本当のプロの技術職員になっていただく必要があるのかと思います。

【飯島委員】  もう大方お話が出ているという気がいたしますけれども、それでも私の感覚といたしましては、持続的な基盤作りと言いながらも、期限付きの支援で行われていて、例えば基盤作りに対する外部評価が非常に下がった場合には、これがいきなり切れてしまうという恐怖感があります。

 どうしても今までのプログラムというのは、結局は大学本位で、大学同士が協力する、あるいは大学の中で協力するという構造だと思うので、先ほどから横串という御意見がたくさん出ているんですけれども、もう少し広いシステム化ができないと、本当の意味での持続性というか、永続性を確保できないんじゃないかと思います。

 特に技術員をどうするかというのは、大学任せでは難しいんじゃないのかと思わざるを得ないので、これからは、機械に詳しいだけじゃなくて、機械に必要なソフトを書換えながら適用させていくような、そういう技術者がきっと求められていて、それは簡単には、御自分の研究のことに非常に没頭していらっしゃる研究者が、そういう人たちを育てるということは、ほぼ不可能に近いんじゃないかと思います。そこのところも、どういう仕組みを作っていくかということを、ここでは話し合っていかないと、結局、資金が切れたところで終わってしまうということになる可能性があると思います。どうやって永続的な仕組みとして、あるいは技術員の評価もそうだし、例えば共用するプロジェクトを、今はこういう組織で選んでやっているわけですけれども、そういう形で応募したところにはお金が行くとかいうような、もう一つあるのは、機器を購入するときに、先々の更新の費用も含めて計画しない場合には予算が付かないとか、そういうことも含めて、いろいろな仕組みがあると思うんですね。それを作らないと、結局は、あとは任せきりで、大学が興味がなくなったらうまくいかない、お金が付いても、さっきから出ていますトップマネジメントが変わったら、いきなりお金が付かなくなるとかいうことにならないように、仕組み作りを考えていただきたいと思います。

【原田委員】  先ほど野村先生がおっしゃった、昨今の様々な装置が高額になっているので、これから購入するときに、ある程度戦略的に、この装置はこの大学で整備しておくけれども、こっちの装置はこちらの大学とかということを、ある程度地域レベルで、文科省さんか何かが主導して、そういう機器の配置って、例えば今でいうと、SPring-8とか、大きな放射光の施設みたいなのは、全国でマネジメント、ある程度されているのかもしれないんですけれども、もうちょっと小さな装置になると、何か買いたい人がワーッと行ってお金を取ってきて買ってということに、今、なっていると思うんです。それをもうちょっと戦略的に、全国の人が使いやすいようにやっていくという、そういう戦略が必要なのかと思います。

 それから、あと、私の認識の間違いだったら申し訳ないんですけれども、まだまだ隅々の人まで共用という意識が行っていなくて、情報がまだ伝わっていない部分があると思うんです。これまで小さな組織からだんだん新共用になって、ある程度、複数の大学の地域レベルとかでグループで共用を進めていこうとだんだん広がっていったんですけれども、結局、最終的には、日本全国レベルで、例えばどこかのホームページみたいな、ここに調べに行ったら情報が入手できて、ここの大学のここのところにアクセスしたら、こういう装置が使えますみたいなことがもしできて、そういう情報が全ての人に伝わったら、もうちょっといろいろ使いやすくなるのかと思いました。ただ、それをどのようにするかというのは具体的によく分からないし、先ほどどなたかがおっしゃったように、学会とかの研究領域だと、割と全国的な情報がパッとコミュニティで手に入るということがあるので、そういうのをもっと広げられたらいいのかと思いました。

【田沼委員】  ほとんど皆さんの意見と一緒ですけれども、若干認識が違うのは、私、物材機構と、ナノプラの関係なので、私としては、逆に、研究基盤としての装置の整備・共用は、結構達成しつつあるのではないかと考えています。文化としても、ほぼなってきているような気がします。

 そこを基本にして考えると、何が問題かというと、研究力の向上と、研究成果の最大化は全く違うんです。確かに装置を共用すれば、研究力はユーザーのところでは向上はします。しかし、成果が最大化するかというと、そう単純ではないんです。

 例えば、共用のために買った装置、例えば「SPring-8」とか、そういうでかいのは別にして、電子顕微鏡レベルの1億から10億円程度のものですけれども、これが問題なのは、これを欲しくて買った人ですね。結局、買った研究者とかグループに、どれだけ共用させるか。これ、結構大事なことです。それを例えば、今はそういう目標が全くなくても、買った装置は全部共用というのが一般的ですが、そこに例えば10人来たら、10人で割ったら、たった10%です。10%で研究やっていけるのかといったら、それははっきり言って無理ですよ。

 あと、もう一つは、ナノプラもそうですけれども、物材も、稼働率を上げろ上げろというわけですよ。稼働率が3割、4割では低いというわけです。しかし研究者から見たら、稼働率が3割というのはほとんどマックスです。結局、3割ということは、要するに、一人の人が装置を使いに来たら、3回に1回は使えないんです。だから、50%を超えたら、自分が使いたいとき、半分は使えない。だから、そういう、共用率は、自分で買った装置は何%にすべきだとか、稼働率の何%はどう考えるべきか、そういう具体的なところが全く欠けています。それがすごく問題だと思います。

 あと、もう一つは、人材育成についても、皆さん、教育と言っているけれども、一番問題なのは教育ではなくて、その前の雇用というか、採用です。このまま行ったら日本から支援の人材がいなくなっちゃう。どちらかといえば魅力ある職場ではないので、いかに給料を上げるか。そこが一番の問題で、最低限でも研究職と一緒の給与体系でなければ、多分、将来、人が来なくなりますよ。こういうことを危惧しています。以上です。

【岸本部会長】  ありがとうございました。一渡り、皆さんから御意見いただいたかと思いますけれども、もう少し時間がありますので、ディスカッションしたいと思います。皆さんの御意見を伺って、私の方から一言、二言、先に言わせていただいて、皆さんの御意見と思いますけれども、最初、ガイドラインのところ、読者が事務レベルの人なのかと。むしろ管理部局の人たちに読んでもらうような、ガイドラインというよりもガイドブックみたいな、要するに共用化というのが必要だということを分かっていただいて、やる上ではどういうことがあるかというようなたたずまいの方がいいかと。特に大学の中で共用化を管理するようなところの人たちに見てもらいたいと思いました。

 次に、議論いただいた事項の中で、皆さんからいろいろ御意見いただいた中で、技術職員のところが大分あったわけですけれども、文科省の中に人材政策課がありますよね。そこのところとあまり議論されていないと思うんですよね。特にこの技術職員の方々、企業の中でもテクニシャンの方々はたくさんいらっしゃるので、そういった人たちも含めて、人材育成だとか人材確保をどうするかというのを、もうちょっと広い観点からやっていった方がいいかと感じました。

 あと、上の方のトップマネジメントとかそういうことですけれども、これ、大学の評価の中に直接的に何らかの形で入れていく、例えば大学改革支援・学位授与機構の中で、大学のいろいろな調査をしていますけれども、その中にダイレクトに評価項目で、大学の方のいい取組みとして書かせるように誘導して、いろいろなデータをそちらで集めて持ってくるというのも一つあるかと思うので、ここで評価するよりも、いろいろなところに必要性を言って、大学評価の中に入れていただくというのもあるかと思います。

 あと、もう一つの共用プラットフォームについては、ここではあまり議論にならなかったんですけれども、これからのオープンサイエンスの中で、こういった機器をどうするか、データをみんなで共用しながら次の研究をしていこうというときに、ただデータだけ集めるのではなくて、共用された形でのデータというのが一番信頼性の高いデータだと。要するに、データに対する信頼性というところを考えたときに、一つの研究室でやっているデータではなくて、共用化された中で取られているデータの方が信頼性が高いとかいった意味から、オープンサイエンスをやっていく中で、非常にこういったところが大切だというのを訴えていくんですけれども、大学として、ほとんどその仕組みは今、日本はできていないですよね。データリポジトリの話にしても、そういったところを推進できるといいので、モノだけではないところをやっていくのが必要かと思いました。

 それと、あと、細かいことですけれども、世界をリードする戦える新技術の開発が、IT技術になっていますよね。もうそろそろICTという言い方の方がいいのではないですかね。要するに情報伝達や活用の要素も含めてもっと広くデータのことを捉えていくという形で持っていったらどうかということです。新技術の開発と、そこから出てきたデータをどう大切にしていくかということで、装置だけではなくて、出てくるデータに価値があるわけで、その辺を見せていくというのが必要かもしれないというのが、皆さんの意見を聞きながら僕が考えたところです。

【佐藤委員】  将来的に第6期の科学技術基本計画の中に盛込んでいかなくてはいけないということですよね。何人かの先生が言われた、成果の最大化を求めなくてはいけない。それはそうですよね。共用化をいくらやったって、成果が最大化できなかったら、何やっているのという話になるだけですね。それから、波多野先生だったか、情報系が弱いと言われていました。もう全くそこは日本は抜けているのですよ。

 これはこれでかなりの成果を挙げてきているので、それぞれの専門分野の先生方のものをうまく共用化して成果を挙げていくという意味では、かなりの成果を挙げてきていると思います。これをどのようにやっていくかということを考えていけばいいと思うのです。もっとイノベーションを起こそうと思ったら、世界をリードする新技術の開発というところに、情報系を含めた、どういうシステムであればいいのということを考えないと、多分、難しいだろうと思います。この委員会の場でそれを出せと言われても、なかなか出ないので、私がお願いしたいのは、シンクタンク的な機能で、何がこういうシステムの中で本当に成果を最大にしていくのだとか、あるいは社会実装して、それがソリューションにつながるよということを、情報系の観点から、どのように捉えて、どのようにやっていけばいいのかというのを議論して検討するのを進めてほしいと思うんですね。

 今、アメリカとかで起こっていることは、グーグルとかが作ってきた世界システム自体が、もう10年か20年したら変わるよと。もうなくなっちゃうかもしれないということまで議論されていて、それで、あんなフェイクニュースまで含めて、どんどんビッグデータが出てくるような、そんなシステムは、いずれ消えるでしょうというぐらいのことを言われているのですよ。このような話が議論されていて、それで新しい取組み方が、今のアメリカの大学の中からは、なかなかイノベーション的な考え方が出てこないということで、ファンディングするのに、大学を退職するとか、あるいは要するに大学から飛び出すという条件で、10万ドルとか、20万ドルのファンディングとするとか、そういうことまで起こっている。だから、大学教育を含めたら、なかなか大きなイノベーションを起こせないのではないかということを考えている人もいる。それがいいかどうかは僕も分からないのですけれども、そのぐらいのダイナミックな動きがアメリカでは起きていて、それで新しいことをやろうとしている。その中のキーワードは、ブロックチェーンだったり、それからバーチャルリアリティみたいなものだったり、それが今言った情報とコンピューターサイエンスと結び付いて、今の1,000倍ぐらいの計算能力がないとうまくいかないということをどうするのだということを含めて、それを案として出そうみたいなことが、新しい世界システムを作るために、アメリカはリーダーシップを発揮しなくてはいけないということは議論されてきているのですよね。

 こういう話は、学会に行ったって、共用のシステムの中の先生方と議論したって出てこないですよね。だから、そういうことをもうちょっと文科省としては、そこをリードして、このせっかく作ってきた非常に優秀な共用システムを、どうやって本当の価値の最大化に持っていくかということを考えるために、何が本当に必要だということを、もう1回、考えてみる必要があるのではないかという、これは要望です。シンクタンク的なことをやらなくてはいけないのではないかと思う。第6期に向けてはですね。そう思いました。以上です。

【岸本部会長】  ありがとうございます。具体的には、何か検討チームを作るとか、どこかに委託するとか。

【佐藤委員】  先端計測のときは、ある課題に対して、それのある程度知識がある人たちに集まってもらって検討するとかいうことを何回か繰り返して、次のフラッグシップに対してどういうことをやっていくべきだと、結構やったのですね。そういうことをやらなくてはいけないだろうと。

【岸本部会長】  今おっしゃられたように、共用システムの現状の理解と将来像みたいなことについて、少し調査も含めた作業部会を作って、検討をすべきと。

【佐藤委員】  そうすると、情報系も出るかもしれません。そっちが抜けているような気がするので、やる必要があるのではないかと思う。

【岸本部会長】  検討チーム作ってやるというのが一つのアイデアかということでしょうか。

【佐藤委員】  はい。

【岸本部会長】  事務局の方とも相談しながら考えていけるといいと思いますけれども、なかなかそういうことを日本の中で検討しているところが、表立ってないのではないかと思いますけれどもね。非常に必要だと感じます。

【長我部委員】  まさに佐藤先生がおっしゃったことは、基本計画の中でもデジタル革命の進展への対応があって、社会とか海外に学ぶのもあるんですが、アカデミアでも、例えば素粒子・核物理は、ここがすばらしく進んでいるのではないかと思っています。、もともとインターネットも、このコミュニティから出て来たコンセプトです。多拠点データ集約では、天文学ですね。共用の中にも「J-PARC」とか、近いようなコンセプトで動かしています。社会に学ぶものはありますが、アカデミアの中に知恵があって、それを有効に活用していく事が重要だと思います。

 別の論点として仕組みができても、人は必要ですが、さきほどから議論があるように、サラリーがあまりに低いと、モチベーションもない。しかし、予算は大幅に増やすのは難しいですから、数は増やせない。すると、流動性というか、一つの大学にいるのではなくて、複数大学に跨った一つの職能組合みたいな事も考える必要があると思います。そういう意味では、波多野先生がおっしゃったように、海外の技術職員の在り方などとも比較して、大学がそれぞれ単独で雇うという考え方を変えていかないといけない。

【菊池委員】  何か10個ぐらいのコアファシリティ拠点を作るとなっているんですが、その10拠点が、それぞれ狙っているターゲットがあるわけでしょ。ある拠点は生命科学のところに、若しくは分子生命科学のところに焦点を当ててやりますよということを考えているのか、それとも、ただ単に、全学のものをただ集めるよという、それで統括していくつもりなのか、コアといっても、そのコアの中身を何にするかということを明快に出して、そのコアのところを、どのぐらいの期間、それを続けるのかどうかという、そこのところのロードマップがない限り、いくら拠点化をしたところで、結局は、そのプログラムが終わった時点でおしまいとなってしまうような気がしてならないんです。

【岸本部会長】  拠点の選び方については、そういった観点からの工夫が必要だと感じますけれども、何か事務局の方からありますか。

【渡邉課長】  そのような幾つかレイヤーの話が、今、混じっている感じがします。今度のコアファシリティという点で言うと、全学的な、要するに、ある研究機関なり大学の中での機器の有効活用なり体制ということを考えています。今、菊池委員からお話があった、どちらかというと共用プラットフォームみたいな、ある種の先端的、非常に能力のある、ある分野の研究機関なり装置を中心としたものを連携してやっていこうという話と、ここまでは両方の議論は確かにしてはいます。今、なかなか難しいのは、そういう特色を持った先端的なセンターなりをどう育成するかみたいなところは、議論が追い付いていないところがありますが、非常に重要な議論だと思います。それは先ほど原田委員から話のあった、どういうところに機器を置いて、それを連携させるというのも、我が国にとって重要な課題になろうとは思います。これも検討課題と思ってございます。

【岸本部会長】  先端的というよりは、基盤的な共用化プラットフォームですよね。だから、最先端の機械だけを置いてというよりは、その分野の研究をきちんとやるために必要な機器を、それぞれのコミュニティとして、網塚先生がおっしゃったように、各協会とも通じながら、この機器はここの大学にあって、みんなで整備しているような、そういった意味での拠点になるということになると、拠点のコアになるところは、何でも機器をそろえるというよりは、あるテーマを設定した上で、そのところを強化するのは、ここの拠点がやります。ほかの分野についてはほかのということで、ただ、そこの大学の機器を共用化するだけではない視点でやっていった方が、10拠点がいい形でできるのではないかという、私もそのように受け取ったので、大学10個選んでやってくださいよりは、もう一つ進んだ形になるのかと思いました。

【菊池委員】  はい。

【佐藤委員】  これ、どちらかというとあれですか、僕の理解は、ある意味ではトップマネジメントの教育でしょうか。

【渡邉課長】  重要な観点として私は考えています。

【佐藤委員】  もっと真面目に、あちこちあるものをちゃんと効率良く考えて、それをコアというか、まとめて、どのように運営していくかをやって欲しいと、いうことですよね。新しい生命科学の拠点を作りましょうとか、そのようなことは出来ないですよね。

【渡邉課長】  そういう意味では、今、佐藤委員のおっしゃるところはごもっともですが、もしも応募してくる中に、うちはこういう分野が非常に強い、そういう特色を持って更に展開していきたいという提案があれば、それは前向きに受けたいと思います。

【岸本部会長】  むしろその方を強めていっても、各大学、今、いろいろな特色を出そうとしているので、既にお持ちになっている機器は、それぞれのところに、この分野が強いと主張できると思うんです。それをほかの大学と一緒にやるときには、それがないと、ほかの大学と協働しながらネットワークを作りますというのは言いにくいので、ある程度、分野を考えながら、拠点化というのを見ていった方が、このプログラムとしては、コアというのはよく出ていくのではないかと思いました。

【菊池委員】  もしトップマネジメントの教育であれば、それぞれの機器を、それぞれの先生方が提案して得てきたもので、トップマネジメントしようがないんですね。

 ということで、例えば自分のような研究所を束ねている者だったら、予算を私が全部持っていますから、結局、共用化、これはしろと言えばする話であって、そういうような意味で、何かここで全学の機器の共用化をトップマネジメントの人にちゃんと理解してくださいと言ったところで、これ、俺のお金でないもんと。少なくとも、それを保守する金は各学長に担保されているということであれば、真面目に学長も考えると思うんですけれども、そこら辺り、何か少し乖離しているのではないかと思うのです。

【佐藤委員】  総長に裁量権はあるでしょう。どれを今度更新していくかとか、新しいものを入れるかとかということをいろいろ議論するときに、やるでしょう。

【菊池委員】  それはほとんど無理ではないですか。

【渡邉課長】  そういう意味では、菊池先生がなかなか難しいとおっしゃられたところについて、やりたいと事務局としては思っています。今まで資金が潤沢にあれば、自動的に機器が入ってきて、誰かが何かいいもの持っているなで済んでいたと思いますが、なかなか難しくなってきています。そのため、最低限、大学としてはこういうものを持っていたいというような計画や意思を持って、継続的かつ長期的に更新や保守とかを、外部資金や間接経費とかも含めて、どう回していくかということを、是非問題意識として持っていただきたいと思います。それが、今回の施策の重要なポイントであります。なかなか容易ではないと思っていますが、名工大の江龍先生や、宮崎大学の水光先生のお話を聞くと、努力してやろうとしている方はいらっしゃるので、そういう取組を是非広げていきたいという思いはございます。

【菊池委員】  そうであれば、そこの大学、若しくはその大学と連携する大学や研究所が、どういう分野のターゲットを持っているかという特徴を出すことを推し進めない限り、それは、ただ意識を高めてくださいと言ったところで、それは無理だと思いますよ。

【佐藤委員】  だから、そういうことを出してもらおうと思ったわけでしょう。

【岸本部会長】  むしろ、大学の売りになるような形で共用化といったときに、バリューを付けるためには、何でもあります的ではなくて、ある専門分野にすばらしいものがあるということを大学としてやっていくことによって、大学の価値も高まるということをマネジメントしてもらいたいという。だから、お金だけじゃなくて、セールスとかということも含めたトップマネジメントを、この共用化の中で進められるといいのかということでしょうか。

 なので、是非、ただ仕組み作ってくださいというよりは、大学としての特色だとか、あとは地域連携だとか、いろいろなことも含めた形で、広がりがある形でやりますという方が、先ほど財務省との話になったときにいいのではないかということで、もう少し広がりを持って進めていったらどうかということだと思います。

 時間になっておりますが、次回は2月か3月ぐらいですけれども、それまでの間に何かしていただきたいということで、皆さんの方から何か注文があればお願いいたします。

 それでは、本日の議題は以上になりますけれども、事務局の方から連絡事項、あるいは何かコメントございますか。

【黒川課長補佐】  事務局からですけれども、まず1点、人事異動がありまして、本日途中から出席させていただいておりますが、この夏に、科学技術・学術政策局長に菱山が着任をしておりますので、御紹介させていただきます。

【菱山局長】  どうぞよろしくお願いいたします。

【黒川課長補佐】  それから、次回の研究開発基盤部会の日程につきましては、後日、またメールにて調整させていただきます。先ほど岸本部会長からお話しいただいたとおり、年明けを事務局としては考えてございます。

 本日の議事録につきましては、部会の運営規則に基づいて、後日、公表するということになってございますので、案が出来次第、委員の皆様に御確認を頂きます。以上でございます。

【岸本部会長】  それでは、以上をもちまして閉会としたいと思います。活発な御議論をどうもありがとうございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究開発基盤課

(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課)