令和7年9月5日(金曜日)10時00分~12時00分
オンライン開催
佐伯部会長、合田部会長代理、有馬委員、加藤委員、小泉委員、小板橋委員、齊藤委員、原委員、品田委員、前田委員、畑中委員、松尾先生、髙野委員
研究振興局長 淵上孝、研究振興局基礎・基盤研究課長 中澤恵太、研究振興局基礎・基盤研究課 融合領域研究推進官 葛谷暢重、研究振興局 学術研究推進課長 板倉寛、科学技術・学術政策局 研究開発戦略課 戦略研究推進室長 神部匡毅
【佐伯部会長】 それでは定刻となりましたので、ただいまより第19回科学技術・学術審議会基礎研究振興部会を開催いたします。
本日の会議ですけれども、本部会運営規則に基づき公開の扱いといたしますので御承知おき願います。
まず事務局より、本日の出席者と議題の説明などをお願いいたします。
【葛谷推進官】 本部会の事務局を担当しております文部科学省基礎基盤研究課の葛谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、本日の委員の出席状況についてお伝えいたします。
現時点14名中12名の委員の方に御出席いただいておりまして、定足数を満たしております。1名、斎藤委員はちょっと遅れての参加になると思いますので、最終的には13名の参加となります。なお、上杉委員におかれましては本日御欠席の御連絡を頂いております。
次に配付資料の確認をさせていただきます。
資料は議事次第の配付資料の一覧にある資料を事前にメールにて送付しておりますが、欠落等がございましたら、画面越しで手を挙げ、お申し出いただければと思います。よろしいでしょうか。資料の欠落等はございませんですね。
続きまして、事務局において人事異動がありましたので、お知らせいたします。
7月15日付で研究振興局長に淵上局長が着任しております。局長より一言御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【淵上局長】 おはようございます。文部科学省研究振興局長の淵上と申します。7月15日付で着任をいたしました。一言御挨拶を申し上げます。
まず、委員の先生方におかれまして、お忙しいところを本部会に御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
皆様御存じのとおり、知の蓄積こそが社会発展の基盤となるものでございまして、特に地球規模で複雑困難な課題が数多く生じている中、あらゆる知の源泉となる基礎研究の振興の重要性はますます高まっていると考えております。
他方、論文の定量的な指標だけで研究力を測定できるものではございませんけれども、近年、我が国では論文の質量双方の観点で国際的な地位の低下傾向が見られて、研究力の相対的な低下が課題となっていると。こういうふうに認識をしてございます。こうした中で来年度から始まります次期の科学技術イノベーション基本計画の策定に向けた検討において、研究力の抜本的強化による科学の再興が重要な論点の一つとなっております。
また、本基礎研究振興部会におきましては、10年から20年先を見据えた基礎研究の振興や、AI for Scienceなど研究DXの推進などを中心に議論いただいていると承知をしてございます。本日は昨年度、本部会で御議論いただきましたAIロボットの研究開発について、内閣府が中心となって進めている取組、そして前回に引き続き、基礎研究の振興に向けた御議論をいただく予定でございます。
先生方には基礎研究の振興に向けまして多様な観点から忌憚のない御意見を賜りますようお願い申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。
続きまして、本日の議題について御説明いただきます。事務局の中澤課長からよろしくお願いいたします。
【中澤課長】 基礎研究振興部会に御出席いただきまして、ありがとうございます。
本日、議題を3つ御用意させていただきました。
1つ目がムーンショット型研究開発事業目標3の見直しでございます。ムーンショット事業自体は内閣府、CSTIで取りまとめて行われているものではございますけれども、10年事業の5年目の中間評価が内閣府で行われているところでございます。ムーンショットの目標3はAIロボットに関するものでございますので、文部科学省でも、この基礎研究振興部会、これまでもフィジカル・インテリジェンス、AIといったようなところについて、この部会でも御議論いただいたところがございますので、文科省でも、この中間評価の状況について御説明させていただいた上で、御自由にいろいろな御意見を頂ければなと考えてございます。
2つ目、議題2でございますが、英国における研究環境についてでございます。前回、基礎研究振興部会の中でも、研究者の研究環境といったようなところを事務局から話題提供というか御説明させていただきましたところでございますが、今回、髙野委員から、今、英国ではどういうような形で研究のファンディングだとか評価が行われているかということで御紹介いただく予定になってございます。いかに日本として学ぶべきところがあるかとかについて、各委員から、これも御自由に御意見を頂ければなと考えております。
3つ目は創発的研究支援事業でございます。いわゆる創発事業につきましては、これまでも過去何年間にわたり、この基礎研究振興部会で、その状況については御説明しつつ、一方で次の展開について御意見を頂いてきたところでございます。こちらについても最新の状況を御説明させていただいて、今後の進め方について幅広く御意見を頂ければというところでございます。
よろしくお願いいたします。
【葛谷推進官】 ありがとうございました。
事務局からの説明は以上でございます。
【佐伯部会長】 ありがとうございました。
それでは議事に入りたいと思います。
学術政策局研究戦略課の神部室長より発表いただきます。御発表後、委員の皆様より御意見を頂戴できればと思います。
それでは、神部室長より御説明をお願いいたします。
【神部室長】 ただいま紹介にあずかりました戦略研究推進室長の神部と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
まず議題1としまして、ムーンショット目標3の進捗状況について御説明をさせていただきます。
まず今回の説明の背景趣旨について御説明させていただきたいと思います。スライド2から8を使って説明させていただきます。
まずスライド2を御覧ください。こちらはムーンショット型研究開発制度の概要です。本制度は超高齢化社会や地球温暖化など、重要な社会課題に対して野心的な目標を国が設定し、それを達成するための挑戦的な研究開発を推進するものでございます。
現在、この左下にございますように10の目標が設定されておりまして、最長10年間の研究開発期間で、前半5年の終了時に後半5年間の継続・終了が判断されます。この目標の決定や事業の継続・終了の判断を行うのはCSTIとなっておりまして、各省庁は目標に基づく研究開発構想を策定します。
さらに、この研究開発構想に基づく具体的な研究開発を研究開発推進法人が進めます。文科省は目標1、2、3、6、8、9、10の7つを担当し、JSTが研究開発推進法人を担当しております。今回御説明するのは目標3となっております。
スライド3で目標3の概要を説明いたします。スライド3をお願いします。
目標3はAIとロボットの共進化により、自ら学習行動し、人と共生するロボットの実現を目指しております。その上で3つのターゲット、人生に寄り添うAIロボット、科学探求を行うAIロボット、難環境で活動するAIロボットを掲げ、研究開発を進めてきました。
各ターゲットのこれまでの進捗状況を御説明します。スライド4を御覧ください。
まずターゲット1についてでございますが、2025年のマイルストーンとして、一定のルール、特定の環境条件下で人がロボットと一緒に行動して、人が違和感を感じないロボットを開発するという目標を掲げております。具体的には家事や重量物運搬、人との接触を伴う介助などを1台のロボットで実現する、そのようなスマートロボットの開発を進めてきました。
右の写真にございますのは早稲田大学の菅野先生の成果でございますが、AIロボット(Dry-AIREC)が状態変化推定により臨機応変な動作生成と対話生成を実現し、さらに、少ない学習で動作生成をする、そういったことを実証しました。また右下の写真でございますが、こちらは東北大の平野先生の成果です。やわらかさとしなやかさを実現する形状可変・合成可変のロボット(Nimbus)の開発を進めました。実際に介護の現場などを想定したリビングラボでの実証を行いました。
次のスライドをお願いいたします。こちらはターゲット2、3の成果でございます。
ターゲット2におきましては、科学的原理・解法の発見のプロセスの自動化達成を目指したプロジェクトになっております。仮説の生成、データの解析等の科学実験を一連のループで回すことに注力し、例えば新しい農薬や培地の候補を効率よく発見する成果を出しております。
ターゲット3は、限られた状況で人間の監督下で一部の人の介在で動作するAIロボットの開発をマイルストーンとしております。こちらは月面を模擬したフィールドでの統合試験によりまして、作業に応じた形状変化により、太陽光パネルを設置する。こういった実証を行うことに成功しております。
続きまして、スライド6を御覧ください。こちらは各目標のスケジュールとなっています。
目標3の研究開発につきましては、下のスケジュールを御覧いただければと思いますが、令和2年12月から研究開発を開始しております。今年度が5年目に当たることから、CSTIにおいて目標に対する進捗状況や今後の達成見通しを評価し、後半5年間の継続終了の判断を行うこととなっております。現在、CSTIの評価が進んでいるところで、まだ決定はしておりませんが、既に評価の案は示されておりまして、目標3の後半5年間を継続する場合には方向性を変更することが必要だといった指摘をされております。こちらの内容を次のスライドで御説明させていただきます。
スライド7を御覧ください。こちらがCSTIの評価で今示されている評価の案の抜粋となっております。
赤字で記載されているところを御覧いただければと思いますが、ロボット技術に優位性を持つ我が国がAI分野の研究者とロボット分野の研究者の協働により、実世界で通用するAI開発に注力し、社会実装を主導していくことが必要であること。また実世界にある物体、道具、環境などは人が取り扱う前提で設定されており、破壊的イノベーションを目指す観点からは、AIロボットが完全に人の環境に適応できるよう、人型ロボットを研究開発対象とすることが肝要であること。その上で、活用領域として本プログラムが切り開いてきた科学研究や、災害現場など人が活動することが難しい環境における活用についても引き続き可能性を探ることが望まれるといったことが述べられております。
最後の段落でございますが、これらを総合的に加味し、今後のムーンショット目標の達成に向けては、汎用自律人型AIロボットの開発に重点を置いた上で、2030年に大きな民間投資を呼び込める技術開発を目指すべく、ターゲット、研究開発体制、ポートフォリオなどを刷新することが必要であるといったことが示されております。
この評価案を踏まえまして2030年のターゲット案の変更もCSTIにより示されております。こちらはスライド8を御覧ください。スライド8がターゲットの変更案となっております。
2050年のターゲットは変更ございませんが、2030年のターゲットについては、こちらに記載されておりますように、汎用自律人型AIロボットのプロトタイプを開発することが主な目標としてターゲットとして書かれているところでございます。
以上のようなCSTIの評価案の指摘を踏まえまして、文科省及びJSTにおいて、今後どういうふうに取り組んでいくべきかの検討を今進めているところでございます。
スライド9、10で御説明させていただきますが、こちらはまだ検討を進めているところでございまして、ぜひ委員の皆様から、今後どういったことに留意すべきか、研究開発としてこういったことを考えていくべきではないかなどなど、様々な観点で御意見を頂けますと、今後の検討をさらに進めていけると考えているところでございます。
スライド9でございますが、まず研究開発体制の刷新が必要という指摘を受けまして、後半5年間に向けては新しいPDの選定を進めたいと考えております。これはCSTI評価の指摘にあるように、汎用人型AIロボットの開発に重点を置いたプロジェクトを進めていくと。そのために適切な新しいPDを選定し、リーダーシップを発揮していただきたいと考えております。
さらにこの新しいPDの下、プロジェクトの再公募を行い、研究開発の体制全体の再構築も進めたいと考えております。再公募に当たっては、主に3つの研究開発課題を念頭に置きたいと考えております。こちらが左下にございます1, 2, 3となっております。
1つ目がロボットの身体に関するところでございまして、人の身体構造や動作の本質を理解した上で、身体と知能が有機的に融合した安全で効率のよい構造を持つロボットの開発を進めること。
2つ目が知能に関するものでございますが、人の教示や自らの試行錯誤から短期間でやるべきことを学び、現場の状況に対応しながら一連のタスクを自律で達成できる知能の研究開発となっております。
3つ目、こちらも知能に関することでございますが、2つ目とは少し方向性が違っておりまして、人の感情や思考、周囲の環境や社会を継続的に学び、その場の状況や倫理面を考慮した行動を生成できる知能の開発となっております。
こちらの3つを含めた公募が今後重要ではないかと考えております。
また実際に研究開発を進めていくに当たっては、右図にございますような、AIコントロール、アクチュエーション、センシングといった3つの技術領域を一体的に進めていくことが必要でございまして、AIやロボティクスに限らず多様な分野の研究者を巻き込んでいくことが重要と考えております。
スライド10を御覧ください。こちらは最後のスライドになっておりますが、研究開発の進め方の方向性の案です。
左の矢印にございますように、要素技術の研究開発を進めていくことも大事ですが、これらを右にございますように統合して、汎用自律人型AIロボットに構築していくインテグレーションを進めていきたいと思っております。さらに、現場でのPoC、実証を行い、そのフィードバックを繰り返しながら、最終的に2030年度に一つのプロトタイプを達成していきたいと思っております。
さらにその先、このプロジェクトが終わった後でございますが、これらの成果を多くの現場に導入していくこと。さらには2050年には、人ができることは基本的に何でもできるような、そういった自律人型AIロボットの開発を実現したいと思っております。
説明は以上となります。どうぞよろしくお願いします。
【佐伯部会長】 どうもありがとうございました。
では、以上の説明に関しまして委員の先生方から御質問等はございますでしょうか。挙手ボタンを押した上で御発言をお願いします。いかがでしょうか。
有馬委員、お願いいたします。
【有馬委員】 御説明ありがとうございました。
まず確認したいんですけども、なぜ人型にこだわる方向になったのかが私は半分理解できないところがあります。つまり、人は動物から進化してきて、4足歩行だったのを手を使いたいから2足歩行にして、2足歩行は歩く上では得とは思えない。あと、目とかも2つあるのがどうかとか、いろいろなところで、動物の進化という意味で人が出てきたと思っているんですけど、それと同じような形をロボットに求める。そこの理屈がまだ分からないので。つまり、こだわらなければ、もっといいものできるはずだと思っているんですけど、なぜこだわるのかを教えていただきたいんですけど。
【神部室長】 ありがとうございます。
お示しさせていただいているCSTIの評価案でございますが、まず議論の中であったと我々が理解しておりますのは、1段落目の中段にございますように、実世界にロボットを導入していくときには、やはり社会の全体の構造が人が生活することが前提となっておりますので、人型のロボットで汎用性を高めることによって、今の社会の構造を前提にロボットが多様な場面で導入できるのではないかといったことがまず一つ理由としては挙げられていると理解しております。
2つ目としましては、今、海外で人型のAIロボット、ヒューマノイドロボットがかなり研究開発が進んでいると思っておりますが、一方で、そちらの研究開発は、いろいろなパフォーマンスなどのアピールはすごい上手――言い方がちょっとよくなかったかもしれませんが――にされているんですが。
【有馬委員】 いえいえ、むしろそうだと思います。アピールするために人型という感じだと思うんですよね。
【神部室長】 はい。そういった中で、やはり特定のタスクに特化した、ある意味、LLMなどを活用して、いろいろな動作ができるように見えるんですが、多分、その動作もある程度のタスクに限定されたようなところに研究開発が進んでいると思っております。そういったときに先ほどの実社会での応用を考えたときに、我々としては汎用性というものをさらに高めていくことによって、いろいろなタスクに、この技術を応用する、そういった基盤をつくっていくことで競争性を高めることができるのではないかと考えたところで、今回、人型AIロボットというふうなのが示されたと理解しております。
ただ、一つ、ちょっとエクスキューズ的になってしまうんですが、この人型AIロボットの概念も、完全な2足歩行がベストなのかどうかとか、2つの手がベストなのかどうかとか、この人型というのもある程度幅広い概念で考えていくことが重要ではないかと思っております。完全な2足歩行の我々と同じような形をそのまま目指すのとはまた、そこは幅広く見ていくことが大事ではないかとは考えております。
【有馬委員】 なるほど。今ので安心しました。
汎用と自律はよく分かるんですよ。人型はどこまで人に似せてもあまり意味はないなと思っていたんで、今おっしゃったのは要するに人が活動できるような場で活動できる範囲、むしろ汎用性と自律性という意味であれば大変理解できて、そういう意味であれば、いいと思うんです。つまり、これをやるときに人型というのは必ずしも本当の人を模しているというよりは、むしろ汎用性と自律性、それから社会でいろいろな場面で活躍できると。そういう説明ならよく分かるかと思います。
どうもありがとうございました。
【佐伯部会長】 ありがとうございました。
それでは、小板橋委員、お願いいたします。
【小板橋委員】 ありがとうございます。2点ございます。
プロジェクトの前のほうで「農薬に代わる薬」という表現があって、これがどういう意味なのか。農薬として使ったら、もう農薬なんですよね。農薬に皆さんはあまりいいイメージをお持ちではないかもしれませんけど、農薬という分類の中には生物学的なものを使っていたり、そもそも今市販されている農薬は全部、生分解性が高いので環境の中に蓄積することもありませんし、安全性は非常に高いものが市場に出ていて、そういう状況下ですので「農薬に代わる薬」という表現が非常に漠としているなと思ったので、これはどういう意味かをまず教えてください。
【神部室長】 すみません。これは書き方が大変悪かったかもしれません。大変恐縮でございます。
同じ薬なんですが、新しい薬を開発する候補を効率的に見つけることができたことで、既存の薬に代わる農薬の新しい候補を見つけたと。そういう趣旨の記載でございます。
【小板橋委員】 分かりました。ありがとうございます。
【神部室長】 すみません。書き方が申し訳ありませんでした。恐縮でございます。
【小板橋委員】 農業に使う薬は全部、農薬ですからねというところです。
あと、先ほど有馬委員の質問で大分私も腑に落ちたんですけど、人型にあまりこだわる必要はないのではないかなと思っておりました。
あと、AIをつないでしまうことの必要性も正直、まだ私は、腑に落ちないです。オリィのような遠隔操作型のロボットがこれだけ使われているように、高齢で体が動きにくい方が在宅にいながら操作できれば、それでいいのではないのかという気もしてしまうんですけれども、完全にロボットの中にAIを積み込んで全部やることが本当に必要なのかと。遠隔操作型として、様々な制約があるような方々も仕事というか、社会とつながれるというコンセプトがあると思うんです。
また、完全AIのとなるとまた電力をすごく食うのではないかと。これだけ気候変動が激しい中で、原発も動かしにくい日本において電力は大丈夫なのかという気もすごくしてしまいました。
もう一つだけお伺いしたかったんですが、今忘れちゃったので、以上です。
【神部室長】 ありがとうございます。
スライド2を御覧いただいてもよろしいでしょうか。今おっしゃられたようなことは実は左下にございますが、目標1で、人が身体の空間・時間の制約から解放された社会を実現するという目標の中で、いわゆるサイバネティック・アバターという言い方を我々しておりますが、まさに今御指摘いただいたような、体が不自由な方が社会に参画できるようなアバターの研究開発も進めております。こちらは実際に体の不自由な方がアバターを使って数百キロ離れた場所から人が実際にガイド、道案内とか、そういったことをやるだとか、あと接客をやるだとか、そういった実証が実際に成功しているところでございます。
このムーンショットの中では、そういった研究活動を進めているところでございまして、おっしゃられるように、ロボットが完全に全てを自律できる。そういった世界もあり得るんですが、一方で、それだけの世界観で研究開発を進めるのもまた違うと思っておりまして、このムーンショットの中で目標1と3という両方を今、連携させながら研究開発を進めているところでございまして、ある意味、将来、本当にどういう世界になるかは、まだ我々誰にも分からないところでございますが、この両方の研究開発の可能性を視野に入れながら、お互い連携できるところを連携して、つまり、開発したロボットがアバターとしてまたさらに機能的に動いていく。要するにAIと人がうまく協働しながらアバターで動いていくと。そういった世界もあると思っておりますので、そういったところをお互い連携しながら進めていくことが大事かと考えております。
【小板橋委員】 ありがとうございます。
電力に関してはいかがお考えですか。
【神部室長】 電力は、そうですね、非常に難しい問題だと思っております。
これはなかなかムーンショットの中では、そういったところまでフォローはできてないんですが、やはり電力の問題は例えばAIや半導体、あと計算機、こういったところが今、一体的に研究開発しながら、いかに省エネ、例えばエッジでコンピューティング処理することによって電力をさらに省エネ化していく技術だったりとか、あと半導体そのものが省エネ化していくだったりとか、いろいろな観点で、おっしゃられる問題はクリアしていかなければいけないと思っております。
そういった単純な技術でやっていくところもありますし、トータルの社会システムとしてのパッケージも重要だと思っておりますが、そういったところで実はムーンショットのいいところとしては、倫理面とか社会面も併せて研究開発を進めていくときに検討するチームをつくることができますので、そういったところも含めて体制も考えていけたらいいかなと思います。ありがとうございます。
【小板橋委員】 ありがとうございます。
ごめんなさい。忘れちゃったと言った1点、もう一つだけお願いします。
10ページの「阿吽の呼吸」という表現をされているんですけれど、ここで危険だと私は思っています。日本人は阿吽の呼吸、行間を読むとかが好きですけど、これは人によって本当は違うわけですよね、何を求めているかは。本人に聞かずに、そうであろうと押しつけること自体が下手したらハラスメントになるので、人それぞれ嗜好が違うことを考えると、きっとそうだろうといってやってしまうのは、今後、あまり推奨しないほうがいいと思っています。人もいろいろ多様化している時代ですので、阿吽の呼吸ではなく、ちゃんとコミュニケーションを取った上で行動できるほうが私はこれからの時代には求められるのではないかなと思います。
以上です。
【神部室長】 ありがとうございます。御指摘、大変勉強になります。ありがとうございます。
【佐伯部会長】 ありがとうございました。
3人の手が挙がっていますので、続けてお願いいたします。
松尾委員、よろしくお願いします。
【松尾委員】 ありがとうございます。
それでは、私からはコメントになるのですけれども、3点ほど申し上げます。
このたび、ムーンショットの目標の見直しをするということで、こういう国の大きな予算が投じられる目標において、見直しをアジャイルに行っていくことは非常に大事かなと思っています。科学技術のR&Dの計画を作り込む段階と実際にそれを行う段階になったときの、社会的な状況だったり、技術的な状況はやはり変わると思いますし、AIにおいては、これだけ生成AIだとか、いろいろな状況が目覚ましく変わってきている状況の中で、今行われている技術動向を適切に評価した上で、変更が必要ということであれば、そういった変更をアジャイルにやっていくことは重要なのではないかなと思いました、というのが1点です。
それから2点目としましては、今まで特定のことにフォーカスしてきたところから汎用性を大きく打ち出していくような方向性に変えていくとのことですけれども、特定領域と汎用性はリンクしている部分もありますし、バランスの問題もあるのかなと思います。集中と選択というのはもちろんあると思うのですけれども、今までやってきた特定を目指したところで得られた蓄積が、汎用性のほうにもうまく移行できるものがあるのであれば、もう一度公募するとのことですので、そういった今までの蓄積が無駄にならないような形で設計していくことも大事になってくるのではないかなとも思いました。
それから3点目といたしましては、今回、研究課題の中でも新たに3つ掲げるということで、9ページのところだと思うのですけれども、汎用自律人型AIロボットの研究課題という中でも、とりわけ3点目は、人の感情・思考・周囲環境、社会を継続的に学ぶものの開発をするとなると、常時センシングなり、あらゆる技術で人のデータを感情等も含めて取っていくことになるのかと思いますので、そういった場合は、やはりELSIとかRRIというところがきちんと徹底してやられていくことを――もちろんムーンショットはELSIを設計段階から入れていく話にはなっておりますけれども、そこのところはきちんとやっていってほしいと思いますし、グッドプラクティスが出てきた際には様々な形で、それを社会発信していくことが必要になってくるのではないかなと思っております。
以上、コメントになります。
【佐伯部会長】 コメントをありがとうございました。
では続きまして、品田委員からお願いいたします。
【品田委員】 ありがとうございます。私からは質問ですね。
民間投資対象となり得るという文言が8ページの変更案に加えられていて、一言で言うと、これだけの短い文章の目標の中に、こういう文言が入ることは少々違和感を覚えたんです。それはなぜかというと、当然、このプロジェクトであれば、民間投資対象が出口の一つであるのは明らかなんですけれども、研究の目標に、あえて上位の目標がこれだけの短い文章の中に加えられたのがどういう背景があるのかなと。例えば、もうとにかく実用化をもっと早めなくてはいけないと。当初、ムーンショットが設計されたときより、実用化をもっと早めなくてはいけないと。そういう動きがあるのかとか。そのぐらいしか私は想像できないんですけれども。あえてこういう文言を入れた背景、理由を。もちろんこれは当然重要な目標ではあるんですけども、研究内容の目標にこれが入ることに対してはちょっと違和感を覚えたのが感想です。その辺についてコメントいただけたらと思います。
【神部室長】 ありがとうございます。御指摘ありがとうございます。
おっしゃるとおり、この文言について入れるか入れないかは実はいろいろ意見もあったと私も記憶しております。
これが入った背景でございますが、今、問題意識に少しあったのと共通するところなんですが、海外では今、中国、米国を中心とした研究開発がかなり民間中心の投資により進んでいること。あと、さらにその金額も非常に大きいことがやはり競争力の源泉になっていると認識しております。こういったことを踏まえた上で、今回、ムーンショットで研究開発投資はするのですが、やはり民間からの多額の投資を引っ張ってこれるような、そういった形にしないと日本の研究開発力としても勝てないだろうと。将来的に見ても長い目で見ても勝てないだろうと。そういった危機意識が非常に強かったことで、ちょっと違和感がある文章だと感じられるのは重々承知しておりますが、あえて民間との連携、さらに民間の投資を引っ張っていくことの重要性を強調する上で、今回、このターゲットのところにも記載したというふうな背景と認識しております。
【品田委員】 非常によく分かりました。補足資料など、そういうところにもう少しかみ砕いて、そういう背景が理解できるようなものがあるといいなと思いました。
ありがとうございます。
【佐伯部会長】 ありがとうございました。
幾つかほかにも質問がございますが、まず畑中委員からチャットに質問が来ておりますが、こちらは、すみませんが、チャットでお返しいただければと思います。時間の関係ですみません。
あと、髙野委員から手が挙がっておりますが、短めにお願いいたします。
【髙野委員】 分かりました。
2つあったんですけど、一つだけ、お聞きしたいことがあります。質問です。
初めに3つターゲットがありましたが、それを最終的に1つ、人型AIロボットに絞るということだったんですが、どうして2つ、ターゲット1、ターゲット2を採用されなかったのかをお聞きしたかったんですが。
【神部室長】 もともとターゲットは3つございまして、やはり研究開発投資を今、ターゲット1、2、3という形で進めてくる中で、繰り返しなりますが、今、競争が激しくなってくる中で、強い技術を1つに集中的に投資して、日本としての基盤をつくっていくことが競争力の観点では大事ではないのかといった議論がございました。
そのときに、それぞれのターゲットは重要であって、2050年のターゲットはそのまま設定をしているところなんですが、共通的にこれらのターゲットに発展できるようなところは何かを考えた上で、今回の汎用人型に目標を設定したといった背景と認識しております。
【髙野委員】 分かりました。ありがとうございます。
もう一つだけ。さっきコメントがあった民間の投資ということだったんですけど、これはすごく私は重要だと思います。本当に社会で使えるようになるんだったら、企業さんを取り込まないと絶対使えないと思うので、早いうちから、どういう民間の投資があるか、どういう企業さんが興味を持っているかを見るのは重要ではないかなと私は思いました。
どうもありがとうございます。
【佐伯部会長】 どうもありがとうございました。
そうしましたら、ほかにも御意見はございますかもしれませんが、申し訳ありません。ほかにも議題がございますので、次に移らせていただきます。
それでは議題2、英国における研究環境についてに移らさせていただきます。
議題2につきましては、当部会の委員でいらっしゃいます髙野委員より御発表をお願いいたします。発表後、委員の皆様より御意見を頂戴できればと思います。
それでは、髙野委員、よろしくお願いいたします。
【髙野委員】 ありがとうございます。
今回、こうやって私の経験、研究環境について話す機会を与えていただいて本当にありがとうございます。
引用文献は、ほとんどがJSTのCRDSが作成した『研究開発の俯瞰報告書 主要国地域の科学技術イノベーション政策動向(2024年)』のものです。あとはUKRIの関係は全部、ウェブサイトから引用させていただいています。
では、次のスライドをお願いします。まず初めに研究環境についてです。次のスライドをお願いします。
英国の動向として、研究費が大体同じような感じで行っています。でも、インフレーションを考えると実を言うと少し減っているのではないかと考えてもいいぐらいではないかと思います。2020年にBrexitがありましたけども、それによってEU Commissionから入ってくるお金がまたもっと減りまして、かなりの危機感がその当時、2021年、22年にありました。GDPをここで比較をしているんですが、2.91%ということで、日本よりは減っていますが、大体皆ほかの先進国と同じようではないかということです。研究者数も微量に増えていますが、ほとんどあまり変わってないような形になっています。
ちょっと補足なんですけど、Horizon EuropeというEUのプロジェクトがもちろん立ち上がっていますけども、Brexit後、ガバメント(政府)が代わりまして、Labor governmentに代わりまして、それによってHorizon Europeに去年1月から参加できるようになりました。これはどうなったかというと、この提供によって英国を拠点としている研究者や組織はEUの加盟国と同様の条件で試験を申請して、プロジェクトを主導することができるということです。でも、お金は英国政府から出ていることなので、実を言うと、お金のポットとしては減っているということなんですよね。要するにEUに参加している分も英国から出なければいけないし、もともと国内の政府の資金も出さなければいけない。ということは、全体的に考えると投資金額は少し減っているのではないかという感じがあります。
ちなみに日本は今、正式な交渉をしていまして、去年11月に開催していますが、EUのHorizon Europeに参加ができるようにということで交渉していまして、うまくすると最終年度に正式パートナーとして日本の研究者も参加できるのではないかということであります。
それで、そういう背景の中で、2023年にScience and Technology Frameworkというのが成果を上げています。これはpriority topicを見ようということで、お金をそういうところに投資をしようという考えがあります。こういった背景の中で、新しくDSIT(Department of Science Innovation and Technology)が立ち上げられています。
次のスライドをお願いします。そうすると、見ると分かりますが、赤丸で3つありますが、左側を見ていただくと分かりますようにDSITが新しくつくられまして、その門下にUKRIとARIAというfunding bodyが出てきます。これはまた後ほど説明いたします。
あと、大学を一般的にHigher Education Institutes (HEI)と言っているんですが、Department of Educationの下にあります。右側の丸を見ていただくと分かるんですが、Ministry Department of Educationの門下と、あと地方にも少し関係があります。
次のスライドをお願いします。大学についてもう少し詳しく説明したいと思います。日本とちょっと違いますので。
106以上の大学がありまして、昔はcollegeとpolytechnicとかという話もあったんですが、全部、これが廃止になって、全て大学(university)という名前に変わっています。それでsubsidyは大体、政府から授業料の補助金も頂いています。exampleとしては、いろいろ有名な大学もありますが、その中で、右側の図がありますが、24の大学がself-selected、何かcriteriaがあるわけではなくて、Russell Groupというものをつくっています。で、このRussell Groupには大体、イギリスのトップ24の大学が参加していると考えていいと思います。右側の図を見ても分かりますように、ジオグラフィック的にも北南、それからNorthern Irlandの大学も含まれています。
こういう大学は、要するに英国は国立の大学だと考えていいと思います。地方自治体は大学の運営自身には資金を出していません。地域開発とかコミュニティーの特定のニーズに注視したパートナーシップとかプロジェクトには資金や援助が出ていますが、その運営費用は出てないので、公立の大学は存在しないと考えてオーケーだと思います。全て国立です。私立(private)の大学は、私が調べたところ、5つぐらいしかなくて、ほとんどありません。
それで国立の大学は大体、Research Excellence Framework (REF)に参加しています。どうして参加するかというと、REFに参加することによってQuality-Related Fundingというのが政府から出ているんですが、そのランキングによって、このfundingのamountがかなり重要視されるので、それでResearch Excellence Frameworkに参加することが多いです。
次のスライドをお願いします。大学以外に研究所(research centre)があります。国立のresearch centreです。要するに政府からお金を直接頂いているresearch centreです。それがどうやってやっているかというと、3つのResearch Councils(MRC、BBSRC、NERC)の門下にresearch centreが各所属されています。fundingはDSITからMRCとかのResearch Councilに行き、Research Councilから直接、research centreに運営費が賄うようになっています。これは本当にセンターの運営費だけであって、センターにいる各リサーチャーたちは各自独立して、そのgrant call、これから説明しますfundingや何かに自分たちで応募することもできます。要するに本当に運営費、それとリサーチャーとしてresearch centreに入っていると少しはお金はもらえるんですが、大まかなものはもう自分たちでgrantを取ってこなければいけない形を取っています。
次のスライドをお願いします。それでは、そのScience fundingで、どうやってfundingをしているかなんですが、デュアル・サポートシステムといいまして、ブロック・グラントと競争的な研究資金の2つありますので、そのブロック・グラントは、さっき言いましたようにResearch Excellence Frameworkに基づいて決定されています。
最後のREFが2021年にありまして、その評価目標の比重が研究成果が60%だったんです。もう大体が全部、研究成果が占めていた。で、impactが25%で、環境が15%だった。実は2028年にまたREFが行われるんですが、このREFに基づいて比重がかなり変わってきています。研究成果が60%だったのが50%に下げられています。そして研究環境が25%までに上げてあるということなんです。ということは、impactと研究環境をすごく重視することが2028年のREFでの大きな違いです。しかも、何と言うか、個人の業績というよりも健全的な、動的な、包括的な研究、組織分野の貢献を重視すると。全体的に研究を見るほうが重視されているということです。
それでは、次にプロジェクトについて、競争的研究費についてお話しします。次のスライドをお願いします。
さっき言いましたようにDSIT(Department of Science Innovation and Technology)が2023年に設立されました。その門下にARIAと、それから9つのUK Research Councilsが下にあります。実を言うと、この9つのResearch Councilsは全く独立したエンティティーだったんですが、2018年に全部まとまってUKRIという1つの法人組織になりました。1つの法人組織になるのにかなりの議論がありまして、やるべきかやらないべきかと。Research Councilが独立に個人個人というか、組織自身の自由をもたらしたほうがいいのではないかという話もありましたが、現在の最先端の研究は複数の分野にまたがるプロジェクトが非常に多い。この9つのResearch Councilはトピック別に分かれているんです。そうすると例えばリサーチャーとしてcross disciplineのプロジェクトがあったら、どこに一体アプリケーションを出せばいいのか、どうやって一緒に研究をしたらいいのかが非常に難しくなってきていることを考えたときに、やっぱりResearch Councilを1つのUKRIというアンブレラの下に入れたほうがいいのではないかという考え方が非常に多くありました。
annual reportを下に青で書いてあります。これはリンクが入っていますから、もしもよければ、2024年から25年のannual reportも御覧になれますので見てみてください。
この9つのUK Research Councilの中でトピック別だと言いましたが、上の3つはもうはっきりしていると思うんですよね。医学、それから生物、それからエンジニアリングのCouncilで、2つ目が環境、その次、Economic and Social Research CouncilとArtsは要するに文科系のResearch Councilと。で、下の3つがちょっと面白くて、Innovate UKというのが、要するに企業とかスタートアップにいかにfundingをするか、援助するかというResearch Councilです。それから、真ん中のResearch England、今度はHigher Education、要するに大学とか、大学だけではなくてeducation providerと言うんですけど、要するにHigher Educationの教員をしている方々にどうやってサポートできるか。それと最後のTechnology Facilityは各分野において大きなfacilityがあるんですよね。national facilityがあります。それをいかにサポートするかというResearch Councilになっています。
では、次のスライドをお願いします。それでは、どうやってfundingが行われているかなんですが、各Research Councilによってやり方がかなり違うんです。これをもちろんUKRIのアンブレラの下に入れたので全部統一しようという動きにはなっているんですが、かなり時間がかかっています。ですので、1つのResearch Councilについて例を挙げてみたいと思います。
BBSRCです。BBSRCは植物、微生物、人間も含めた動物、それからTools and Technologyを包括してサポートしています。そのBBSRCの中にはかなりいろいろなfundingの機構がありまして、一番大きいというか、皆さんが使うのがStandard Research grantというやつなんです。BBSRC Standard Research grantと。これは大体5年以内、それで最高額で2ミリオンポンドまで出すということです。でも、大体平均的に皆さん、3年でハーフ・ア・ミリオンから1ミリオンぐらいのgrantを普通はアプリケーションで出しています。
一つだけ、grantについてなんですけど、ここに書いてありますようにBBSRC、Research Councilは80%しか出しません。20%は大学、各institutionがサポートするような形を取っています。要するに、どうしてこういうのをやっているかというと、大学自身がこのアプリケーションへ大学自身もやりたいんだというサポートを示すということで、20%は大学自身が出す制度を取っています。
Standard Research grant以外にFollow-on Funding、これは面白いもので、企業とのブリッジングをやっています。例えばスタートアップをBBSRCのStandard Research grantから、すごくいい結果が出て、それをスタートアップにしたいと思ったときに、例えばFollow-on Fundingを使うことによって、もうちょっとプッシュできるように、違うベンチャーとかにも行くようにする。次のステップまで行くようなfundingです。
ほかにはCall grantがありまして、特定のトピックとか分野を政府が推したい場合に、例えばBBSRCが代わって助成金の申請を整理をしています。例えば例を挙げたのがTransdisciplinary research to tackle antimicrobial resistanceを挙げましたが、これはfundingとしてはDepartment of Environment, Food and Rural Affairs、要するに環境庁ですね。それとNational Institute for Health and Care Research、要するに医学系のdepartmentがfundingをしているものです。そのほかに例えば国際科学パートナーシップ(ISPS)ですけど、日本とも、かなり2か国でやっていますが、そういうのも、これはDSITが直接お金を出しています。ということは、BBSRCがもともとDSITからもらっているお金ではなく、外枠から、政府からもらったお金で、こういうcallが出ていることもあります。で、それを何しろ、申請を整理、サポートする働きもしています。
もう一つのfundingとしてはpersonal Fellowshipも大きくありまして、EUはいろいろなERCといったような3つの段階のFellowshipがありますが、BBSRC自身も例えば若手の方(early career researcher)、それから中間の方(futurey leadership fellowship)、それからseniorの方ということで、Fellowshipもfundingをしています。
では、次のスライドをお願いします。それでは、どうやってfundingをするかということで、またBBSRCのStandard Research grantのプロセスを御紹介したいと思います。
まず、今まではBBSRCはデッドラインがあります。これまでに出さないと申請は見られない。でも、これをまた変えようとしまして、いつアプリケーションを出してもいいような形に変えようとしています。これは多分、リサーチャー自身たちがデッドラインよりも、いつでも出せるほうがいいという考え方から、そういうふうにデッドラインなしのResearch grantのアプリケーションが始まっています。
まずアプリケーションが来た場合に、外部のエキスパートたちにアプリケーションが行きます。大体2人から4人ぐらいのエキスパートが見まして、コメントを出します。そのコメントが集まったところで、それをまた申請者に戻します。申請者自身がそのレビュアーたちのコメントに対して反論する機会があって、それがリバトルとなります。これはすごく重要で、例えばエキスパートが、そのアプリケーションの概要がよく分からなかったとか、質問があった場合に、この場をもってリバトルできるということです。
そのエキスパート・リサーチャーのコメントとリバトル自身が今度はpanelというところに行きます。panelとはエキスパート・レビュアーたちがメンバーとしていまして、大体20人から多いときは30人ぐらいいるときがあります。このpanelは5つに分かれていまして、トピック別に分かれています。このpanelの中で何をやるか。もう外部のレビュアーのコメントをもらっているので、このpanelで何をやるかというと、専門家のレビュアーが本当に公正なのか、それで適切なのか、それからリバトルがうまくされているのかどうかを確認する場です。
それを確認するとともにスコアをつけます。例えばレビュアーもスコアもつけるんですが、レビュアーは人によってスコアがすごく離れている場合があるんですよね。そうすると、そのスコアが本当にどのスコアがいいのか。平均を取ることはあまりしません。各レビュアーのコメントを見て、本当にいいスコアを出すことをします。ということで、panel自身が最終的なアプリケーションの評価のスコアを出します。
そこでスコアを出したところで、全部のアプリケーションのランクづけが行われます。例えばスコアが全く同じだったりなんかしますよね、偶然的に。そうすると、panel内で、どっちのアプリケーションがいいか悪いかもやっぱり全部ランキングをします。
最終的な資金提供の決定はpanelにはありません。ランキングするだけがpanelの仕事です。最終的な資金提供は全てResearch Councilによって行われますし、最終的な決定をResearch Councilが取るようになっています。
このpanelのランキングづけなんですけど、場合によっては、ランクをブーストすると言うんですか、ポイントをもうちょっと上げる場合があります。一つは、early career researcherが本当に初めてアプリケーションする場合に、ちょっとランクが上がるようにしています。それはどうしてかというと、初めてこういうところに出すアプリケーションで、もっといいearly career researcherにサポートしたいと考えて、ちょっとランクを上げることがあります。あと企業から、in kindでなくて現金のサポートをもらえた場合、それも少しプッシュアップされます。そうすると、ちょっとランクが高くなってくることがあります。
では、次のスライドをお願いします。それでは、そうやってプロジェクトがお金を取れて、3年なら3年やりますよね。どうやってレポートをするかなんです。実はオンラインのResearchfishというものを使っていまして、これによってimpactの評価、それから透明、責任を持つこと。それから、結果とかimpactの分析ができるようにしています。
そんなResearchfish、何だこれはという感じなので、私のResearchfishのウェブサイトをシェアしたいと思います。次のページをお願いします。
これは私のResearchfishのオンラインの入ったところなんですけど、まずMy Awardsといって、私の今まで取れたプロジェクト全部が一覧表に出てきます。しかも、左側に見えますように、私は結構、違うResearch Councilから、いろいろお金を頂いていまして、そういうResearch Councilのどこから来たかも見れます。
それで、右側にGo Awardとありますけど、それをクリックしますと、次のスライドをお願いします。こういう画面になります。次のスライドをお願いします。こういう感じの画面になります。左の上の青い部分に番号がいろいろありますが、一番上がちょっと切れちゃっていますが、Publicationだの、Award Recognitionというのはプレゼンテーション、どういうところでプレゼンテーションしているかとか、どういう人とコラボレーションしているかと。そういうディテールをここにどんどん入れていきます。
下のチェックが入っている緑のところに、Funderが、この場合はNERC自身が、こういうことを知りたいんだよと言って聞いてくるクエスチョンなんです。主にどういうことが分かったのか、impactがどうなのかとか、そういうことでボックスとして200字、300ワードぐらいのインプットをしなければいけません。
このResearchfishは毎年毎年アップデートするように言われています。これをアップデートしないとお金がもらえなくなります。かなり厳しく罰せられますので、annualでアップデートするようにしています。
それとプロジェクトが終わっても、例えばPublicationとかは変わる、後になって出てくることもありますので、プロジェクトが終わってからでも、これはオープンになってアップデートするようになっています。
次のスライドをお願いします。それからもう一つの国からのgrant funding、ARIA(Advanced Research & Invention Agency)についてなんですが、これは全く新しいAgencyです。実は私はここからお金はまだもらってはいませんが。2023年に成立されて、5年間で8億ポンドを出すということです。これは今まで説明したUKRIとどう違うかというと、全く政府とか省庁に指示を受けていないことです。独立採算で技術専門であるproject director、右側に一覧を出しましたが、そのproject directorたちの全て判断に任せて、トピックも変わってきます。ということで、アメリカのDARPAがあるんですけど、それに近いようなfundingです。どっちかというとblue sky researchといって、とてもtargeted research fundingという形になっています。これは2023年に始まったばかりなので、このfundingのやり方が本当にいいのかどうかは、まだこれからではないかなと思います。
次のスライドをお願いします。今まで政府からのお金のfundingの話をしましたけども、それ以外にも実はfundingのルートがあります。イギリスの場合、非常に多いのがAcademies and Charitiesの場合なんです。Academiesは少しexampleを挙げましたが、こういうAcademiesがあります。Academy自身はあまりお金を持ってないので、これらにもちろんアプリケーションできますが、あまり金額としては多くありません。
もう一つはWellcome Trustです。これはものすごく大きいcharityで、かなりの額の医薬系の研究にアプリケーションを出してfoundationでfundをしています。Wellcome Trustは全部、今まで話した国から来るfundingと同じようなものを全てWellcome Chatで出しています。
ほかのMajor Charitiesとしては、イギリスに一番特有なのがBritish Heart Foundation、Cancer Research UK、それからLeverhulme Trustを入れるのを忘れてしまったんですけど、それもあります。イギリスは、そういうCharitiesが結構ありまして、額も結構、Wellcomeなんかは物すごい額を出しています。政府と同じぐらいの金額をfundingしています。もちろんほかにGates Foundation、 Bezos Earth Fund、 Chan Zuckerberg Initiateもあると思います。これは日本でも同じではないかと思います。
あともう一つ、重要なのは企業なんです。企業は特別には私は書きませんでしたが、企業さんとの研究は非常に重要視しています。fundingも企業から出てくるのがかなりありまして、政府もそれをサポートしています。政府が少し出して、20%ぐらい出して、あと80%は企業から出すとか、半々のマッチングファンドで出すとか、いろいろそういう制度はあります。これはまた別個に、もし機会があったらお話しできればと思います。
次のスライドをお願いします。最後に基礎研究の振興ということでお話ししようかと思ったんですが、次のスライドをお願いします。
振興といいましても、やっぱり大学の機構がちょっと違うんで、それで考え方もちょっと違うのかなという気がしました。それで、UKの大学はどういうacademic staffがいるのかを紹介します。
まず3つに分けられまして、本当にTeaching only、授業のほう、practicalもそうなんですけど、Teachingしかしない人もいます。それからresearchしかしない。これはものすごく少ないんですが、そういう方もいます。特に大きなFellowshipを取っている方はTeachingできないといって、Research onlyになっちゃうときもあります。大体の方がTeachingとResearch両方ともやることになります。
ですので、grantを獲得するというんですか、basic researchをやるのは、applied researchもそうなんですけど、grantを獲得するのはもう初めからやらなければいけないことという感じになっています。そうしないとお金が入ってこないんですよ。ほかにお金がないんで、grantが取れないとresearchできないのがまず基本です。もしも例えばそういうgrantがあまり取れてないスタッフがいたとしますよね。そうすると、ほかのよくgrantが取れているスタッフがメンタリングをしたり、それでなかったら、Co-PIとしてgrantのアプリケーションの中に入れたりといって、そういうサポートシステムを設けています。Teaching and Researchだったんだけど、Researchがどうしてもうまくいかないといった場合はTeaching onlyのスタッフに変更になります。
それで、もう一つ重要だなと思ったのは、grantはpublicationがないと取れない。publicationを取るためには、やっぱりドクターの学生やポスドクが必要で、やっぱりTeachingも関与してくるということで、この3つのgrant funding、Publication、Teachingは多分切っても切れないものなのではないかと私は思いました。
一つ、PhD studentshipのことで、ドクターの学生のことについて上がったので、ちょっと日本と違うということで強調しようかと思います。PhDのポジションは完全にUKRIか大学からtuition feeとliving costを払っています。もちろんself-fundingの学生もいますが、これはものすごく少ないです。ほとんどの学生というか、ほとんど全部がUKRIか大学からお金をもらっています。それと同時に、プロジェクトごとに募集されるというか、コンペティションで競争を通じてプロジェクトがapproveされたり、PhDのcandidateがアポイントされます。要するに全部、競争性になっています。特にUKRIとか大学からお金を頂いている場合はそうです。self-fundingの場合はもちろん競争ということはなくて、学生たちが自分たちでお金を動かしていますから、そのままになっています。
そして、UKRIがfundしているドクターのポジションは大きなtraining grantを出しているんです。そのtraining grantは各大学、トピック別で、また幾つか取れることもありますし、幾つかの大学、3つとか4つの大学と一緒に共同でtraining grantにアプリケーションすることもあります。ということで、個人にお金を出すことはUKRIは絶対していません。大学院生が1年に10人か20人ぐらいのポジションとしてtraining grantとしてお金を出しています。大学から出すお金は学生一人一人にお金を出すことはあります。ということで、お金を出すgrant funding、tuition feeとかliving costを出すやり方がUKRIまたは大学からということで、シチュエーションによってかなり変わってくるということです。
次のスライドをよろしくお願いいたします。一応、こうやっていろいろやってきたところを見まして、サマリーなんですが、一応、日本とイギリスと比べた場合に、researchのスケールやアウトプットはかなり似ているのではないかと思いました。それから、論文のクオリティー、それからサイテーションやなんかもかなり似ているのではないかなという気がします。
fundingについては少し違うのかなと。特にドクターの学生へのfundingはかなりコンペティティブでかなり違う。それとともにresearch environment、環境ということなんですが、イギリスはどんどんどんどんcollaborative, multidisciplinary researchにemphasisを取っています。2028年のREFにも分かりますように、個人がどうのこうのというよりも、本当にresearchの環境がどうなのか、よりやりやすい環境なのか、みんなが一緒に1つの目標に向かって動いているのかを本当に重視し始めています。これはpublicationにもちょっと見れると思うんですが、international co-authorshipのpublicationがかなり多いです。日本が少ないと言ったほうがいいのかもしれませんが、ドイツやアメリカもイギリスと同じぐらい、そうやってinternational co-partnershipのjournal submissionsが多いです。
この後、2つぐらいスライドがありますが、そちらに詳しいナンバーが入っていますので、そちらを見ていただくといいと思います。
これをまとめているときに私、ふと思ったんですけど、よい研究とは何なのか。これは日本だろうが英国だろうが、どこだろうが、本当によい研究とは何なのか。impact factorの高いpublicationがいっぱいあるものか。Nobel Prizeの受賞者を多くするのか。それとも学部生だろうがドクターの学生の数を多くするのか。それとも産業界を通じて、または産業界と連結して国家経済と環境への影響や解決策を提供する研究をするのがいいのか。それとも社会的な責任を果たして将来を見据えた研究がいいのか。ここら辺は考えることが重要なのではないかなと思いました。
以上で発表を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【佐伯部会長】 どうも大変詳しい説明をありがとうございました。
以上の説明に関しまして、委員の先生方から御質問等はございますでしょうか。
それでは、小泉委員、お願いいたします。
【小泉委員】 小泉です。
先生、すばらしくよく分かりやすく、またプラクティカルな御発表を頂いて、大変勉強になりまして、ありがとうございます。全体像はかなりオーバービューさせていただき、かつ実践的なところまでお話しいただいて本当に勉強になりました。ありがとうございます。
その上で、2028のREFでresearchとimpactとenvironmentのパーセンテージが変わるというところで、なるほどと思ったところなんですが、それ以外に2028のREFで、ここに注目だよという点は、先生、ございますか、というところが質問です。
【髙野委員】 ありがとうございます。
2028は別にそれ以外はないのではないかなと思います。要するに2021年からimpactが非常に重要視されているのは分かっていたんですけど、それがもっとimpact、それから研究環境が同じパーセント、25%、25%なんですよね。それがすごく重要視されているということです。ほかに別に注目することは今のところはないのではないかなという気がします。
どうもありがとうございました。
【小泉委員】 ありがとうございます。
【佐伯部会長】 それでは、合田委員、お願いいたします。
【合田部会長代理】 髙野先生、貴重な大変詳しい御説明をありがとうございました。
最後の教育面に触れることですけれども、特に日本とイギリスと研究者のサイズ規模が似ている点ですけれども、イギリスでの海外からの学生あるいは研究者の受入れ状況の動向についてコメントいただければと思います。
【髙野委員】 どうもありがとうございます。言いそびれてしまいました。すごくいいポイントだと思います。
一応、イギリスの大学は、こうやってgrantを取りますが、おおまかな資金源は学部生とマスターの学生たちのtuition feeから成り立っています。home studentの数はほとんど横ばいになっていまして、ほとんどお金がもうからないと言ったら変な言い方なんですけど、賄えていない。政府からのお金もほとんど横ばいになっていて、ほとんど上がってない。それでは、どうしたらいいのかということで、おっしゃったとおり、海外からの学部生、マスターの学生を取ることによって資金を賄っています。
外部の学生は今のところ、かなり多いです。パーセントとしてマンチェスターの場合、どのぐらい行っているのか、数としてははっきり言えませんけど、4分の1ぐらいは行っているのではないかと思います。tuition feeが全然違います、Home studentと比べて。10倍は行かなくても、4倍、5倍ぐらい払わなければいけない状態です。
そういった状態の中で、大学としては、もちろん海外から来られる学生をすごい重要視していますが、御存じのとおり、政府はimmigrationにcapをつけようとしています。これがすごい問題になっていまして、capをつけられてしまうと、海外から来る学生の数が限られてくるということで、かなり大学は危機感を持っています。特にRussell Groupにない大学なんかは、もうbankruptになってしまうのではないかと思うぐらい危機感を持っています。immigrationのcapはまだ決まってないので議論されるのではないかと思っていますが、これは動向は見てみないと分からないと思います。
リサーチャーに関しては、Labor governmentになってからちょっと緩和し始めています。でも、やっぱりimmigrationにはかなりきついことがあります。
実は教員、リサーチャーなんかに関してはあまり問題ないんですよね。初任給が結構高いので、政府がcapをつけているのは初任給が幾らぐらいサラリーが入るかによって来れる来れないを決めているんですよ。イギリスのリサーチャーたちの初任給が高いほうなので、そこは引っかからないということで、結構そこら辺は大丈夫だと。海外からのリサーチャーは結構早めにビザも取れるようになっています。first trackみたいなのがありまして、すぐ取れるようになってはいます。
そんなところです。だから、かなり危機感があります。
マンチェスターの場合は、中国からの学生が物すごく多いです。でも、これは動向が変わるのではないかといううわさではないですが、世界情勢を見ましても分かりますように。イギリス政府は初め中国との動向をいろいろ見ていましたが、最近、やっぱりLabor governmentになりまして、中国とももっと一緒に共同研究をしよう。一緒に企業ともいろいろとサポートしようという働きが出てきまして、緩和されています。ですので、中国からの学生さんは人数がそんなに減るとは思わないんですが、そこら辺も将来性を見てみないといけないのではないかと思っています。
そういう意味で、アジア、東南アジア、それから中東、中近東、インドとかからどんどん海外の学生さんを連れてくるというんですか、ほかの大学との共同研究というんですか。2+2というのがあって、そちらのホーム大学と例えばマンチェスターと両方とも学部のcertificateが取れると。そういう協定とかもかなり結んでいます。各大学全部やっていると思います、そういうことは。いろいろなところで。
【佐伯部会長】 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
そうしましたら続きまして、加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】 加藤でございます。非常に丁寧な説明をどうもありがとうございました。
私から1点質問させていただきたいんですけれども、7ページのREFの評価項目の研究のimpactのことなんですけれども、これはなかなかどうやって評価しているか。その共通評価指標のようなものはなかなか設定が難しいと思っているんですけれども、どうやって評価をしているのかについて教えていただきたいんですが、よろしくお願いいたします。
【髙野委員】 ありがとうございます。
私も実を言うと評価のポイントは、ちょっと私も……。私は評価委員をやったことないので、ちょっと分からないんですが、たしか、これはどこかに出ていると思います。どうやって評価しているかは。
ただ一つだけ、impactは面白いんですが、どうやってimpactがあるかを示す。それがimpactのstoryなんですよ。各大学で、そのimpact storyを4つとか5つ出すのが、その研究のimpactなんです。小さいimpact、例えばpublicationで『Nature』に出たとか、そういうimpactではなくて、もっと大きな社会的にimpactがあったというstoryでないと駄目なんです。例えば新薬が見つかって、それでスタートアップをやって、しかも、その新薬で何人、こういう人たちがキュアされてどうのこうのとか、それでスタートアップが何個つくれてどうなったとか、そういう感じのstoryでないといけないということなんです。すごく難しいです、研究のimpactを探すのは。
先ほども言った2021年で、うちのDepartmentなんですけど、impactがあまりよくなって、そういうimpactのある研究をしなければいけない。初めから考えていかなければけない。すごく難しいと思います。
【加藤委員】 どうもありがとうございます。
storyをつくらなければならないのは確かにそう思います。
どうもありがとうございました。
【佐伯部会長】 ありがとうございました。
続きまして、小板橋委員、お願いいたします。
【小板橋委員】 貴重なお話をどうもありがとうございました。
お伺いした内容は産業界で言われていることに近しいと感じました。multidisciplinary research、産業界でもDE&Iを推進することで、本当のinnovationなんてできないから、できるだけ分野が違うところをつなぐことでinnovationに持っていくんだというのがすごく言われているんです。
あともう一つ、欧州で特に盛んだと思うんですけれども、企業さんの情報開示として、double materialityという概念で、株が上がればいいものではなく、社会環境へのimpactもしっかり示して、企業としての存在として示すことが求められています。特に欧州ではそれが強いんですけれども、その動きへの類似性を感じ、同じ方向に動いているのではないかという印象を持ちまして、先生、そのあたり、産業界の流れと学術がどうなっているかは何かあればぜひお聞かせください。
【髙野委員】 ありがとうございます。
企業がそういう流れに行っているのはおかしくないのではないかなと。まさしくこちら大学が――今まで大学がすごくクローズドだったんですが、大学は学生を教育すればいいんだみたいな感じだったのが、そうではなくて、本当に国に貢献する、教育だけではない、ほかの貢献、リサーチによっての貢献をしなければいけないんだという考え方ですよね。本当に企業さんも、何と言うか、利益を上げればいいだけではなくて、本当にかなりの企業が共同研究しましょうと来るんですよ。もちろん、企業さんが今やっている仕事とは全く違うことであっても。学生を教育する意味での貢献、それとともに新しい技術を学びたいこともありまして、やっぱり企業さんも大学ももっと大きく見ると言うんですか、そっちに変わってきているのではないかなという気がします。
それも評価の仕方はすごく難しいんですよね、こういうのは。狭く見たほうが数を数えればいいだけであって、すごく簡単なんですけども、もっともっと視野を広げていったほうがいいのではないかなという気がします。
ありがとうございます。
【小板橋委員】 ありがとうございます。
【佐伯部会長】 ありがとうございました。
それでは、松尾委員の手が挙がっております。よろしくお願いします。
【松尾委員】 ありがとうございます。
髙野先生、英国の状況、grantの仕組みを非常に分かりやすく説明していただきまして、どうもありがとうございました。
最後のほう、本当に本質的な問題だなと思って、よい研究とは何なのかですね。結局、それが研究評価と表裏一体のことなのではないかなとすごく思いました。
既にほかの委員の先生方からも出てきている質問にもちょっとかぶるのですけれども、2点ほどお伺いしたいことがございます。
まず1点目は、加藤先生からもお話がありましたけれども、impact評価をどういうふうにするのかはstoryで、というふうなことだったのですけれども、具体的にどういうことがなされているのか、もし今後教えていただけるか、何か分かることがございましたら教えていただきたいなと思ったのと、評価が個人から全体に移っていくことをトレンドとしておっしゃっておられましたけれども、そうした場合に、今度、全体にシフトした際に個々人の研究者の評価は一体どういうふうになっていくのだろうかということが疑問としてあり、もし先生のほうでお考えがありましたら教えていただきたいなと思っております。
もう一つが、全体に移行するトレンドとともに、multidisciplinaryに移行していくのは本当に我々も身をもって感じているところではあります。社会課題解決と研究開発がすごくリンクするようになってきているので、multidisciplinaryなcollaborationはどうしても必要となってくると。そうした際に英国では、研究者間のdisciplineを超えたネットワークをさせるような取組がもしあるのであれば教えていただきたいなと思いました。
忘れないうちに最後に、16ページのfunding sourceのところで、今回はindustryのことはお話しになられないということでしたけれども、そういうsourceをどうアカデミアの研究活動にうまくつないでいくかは日本でも非常に参考になるところになってくるのかなと思うので、また機会がございましたら、ぜひ話題提供いただければと思いました。
なので2点、質問いたします。
【髙野委員】 ありがとうございます。
まず初めにimpactでしたっけ。impactの具体例はまた後ほど、後日ということでよろしいですか。いっぱいあります。
【松尾委員】 はい。それで個人の評価をどうしていくかはいかがでしょうか。
【髙野委員】 REFは、どっちかというと大学全体の評価ということでやられているので、それで、皆さん、環境を見ています。でも、リサーチャー個人個人については、もちろん大学内でassessmentがあります。これは話はしませんでしたけども、毎年毎年、そうやって、どうやっているんだと、どれだけpublicationが出ているか。さっきも言いましたようにpublicationがgrantにつながりますから、publicationがあればgrantを持てる。grantがいっぱい取れてくるとpublicationも増えると。そういう意味で、grantが取れれば取れるだけ、リサーチャーとしての評価も上がってきます。
要するに、大学内での評価、コミュニティーでの評価は、やっぱりどういうgrantとかpublicationとか、そういうことで見られているのではないかなと私は思います。
ただ、あまりそういうh-indexとか、そういうのを使わないようにしようという動きがかなりありますが、でもやっぱり、最終的にはインデックスは見なかったとしても、publicationの数やどういうjournalに出しているかはやっぱり見るようになるのではないかなと私は思います。
あともう一つ、何でしたっけ。
【松尾委員】 multidisciplinaryなcollaborationで何か取組があればお願いします。
【髙野委員】 はい、あります。
実を言うとBBRCもそうなんですが、ほかのUKRIのResearch Councilもそうなんですが、ネットワーキングのfundingがあります。そのネットワークはトピック別にfundingをしていまして、もちろん応募するんですけども、例えばプラント系のsynthetic biologyをやりたいんだというと、そういうネットワークをつくりますので、お金を下さいと。そのネットワークは、本当に小さいproject fundingを出してcollaborationを始める。初めてcollaborationしたい方たちと一緒にやる。それからmeeting、学会をやる。それから、そういうトピック別で全部やって、例えばAI関係もあれば、それからlawとかのarts系やなんかでもやっています。そういうnetwork fundingというんですか、そういうのをUKRIで出しています。
あとは、ここでは話さなかったんですけど、何て言うんですか、日本語で言うと各学会の学術委員と言ったらいいんですか。そういうのも、やっぱりネットワーキングの場所として使われています。ですので、そういうネットワークのfundingもかなりあります。
あと大学内でも、別に個別に政府からではなくて大学内のnetworking fundingもあります。結構、うちの大学のように結構大きいと、AIをやっている人もいれば、physics、chemistry、biology、そういう人たちを「皆さん、こういうトピックでこういうことをやりたいんだけど集まりませんか」と。そういうfundingもあります。小さいfunding grantで始めてcollaborationをやろうと。それが大きなfundingにつなげようとするのはかなりあります。
【松尾委員】 ありがとうございます。
【佐伯部会長】 髙野先生をはじめ、どうも皆様、ありがとうございました。
時間が押してまいりましたので、次の議題に移らさせていただきます。
議題3、創発的研究支援事業についてになります。説明をお願いいたします。
【板倉課長】 文部科学省研究振興局学術研究推進課長の板倉と申します。
本日はお時間を頂戴しまして誠にありがとうございます。
少し時間も押しているということでございますので、少し速めに短めに御説明させていただければと思っております。
私からは、創発的研究支援事業についての今の進捗状況と今後の予定等々について御説明させていただければと思います。
ページをめくっていただいて、まず1ページ目でございますが、こちらは創発支援事業の概要でございますが、創発支援事業はこれまでは基本的に補正予算を中心に事業に充てておりまして、最長10年、基本は7年という安定した研究資金で研究に専念できる環境を一体的に提供してまいります。対象として考えておりますのは、独立前後の研究者の方々ということで、破壊的イノベーションにつながるような成果の創出を目指した形でやっております。
これまでは毎年250名前後を採用させていただいているところでございまして、現在も令和7年7月から第6回の公募を開始して、200件から300件程度の採択予定でございます。これまで5期を採ってきているところでございます。
次のページをお願いいたします。予算措置の状況でございますが、これまで補正予算を中心と申し上げましたが、令和元年度補正と特に令和4年の2次補正を中心に獲ってきておりまして、それぞれ3期分を7年以上の予算額ということで獲ってきている流れになっておりますが、第7期以降に関しましては予算の措置がございませんので、予算確保が課題となっているところでございます。
続いて本日のトピックということで、次のページをお願いいたします。本日は新規課題の公募の採択状況とこれまでの成果について御説明させていただければと思います。
まず新規課題の公募採択の状況についてでございます。
まず第5期の採択者の決定でございますが、毎年、大体このぐらいのパーセンテージでございますけれども、10%前後で採択があるということでございまして、平均年齢が大体30代後半でございます。独立前後の助教、准教授クラスの研究者を多く採択させていただいているところでございます。
都道府県別でも、既に第1回から第5回の公募で45都道府県から採択ということで、第5回の公募でも31都道府県から研究者を採択しているところでございます。
次をお願いいたします。大学を御覧いただければ、かなり国立大学、私立大学、公立大学、研究開発法人、あるいは研究所等々から採用させていただいているところでございます。
次をお願いいたします。次が現状のデータでございますけども、大体申し上げましたとおり、毎年10%前後の採択率となっておりまして、平均年齢も右上にありますように大体38歳程度です。そして女性研究者の割合は前後しておりますが、現在16%でございます。RU11に所属する採択者の割合は6割程度でございます。
次をお願いいたします。創発的研究支援事業の特徴としましては、日本の研究機関で研究する者であれば、申請時点で海外の研究機関に所属する研究者も国籍を問わず応募することが可能ということで、研究開始を最大2年間留保することも可能となっておるところでございます。これまで第1回から第5回の公募によりまして、申請時に海外研究機関に在籍していた採択研究者は12名となっております。現在、内閣府が令和7年6月に取りまとめました国際頭脳循環の取組強化に向けたイニシアティブ、J-RISEを動かしているところでございますけれども、その関連施策としても位置づけていただいておりまして、ホームページでも紹介させていただいているところでございます。
次をお願いいたします。今後のスケジュールでございますが、7月に応募を開始しまして、ここに書いてあるようなスケジュールで来年8月以降に研究開始ということで、採択予定件数は200件から300件程度で考えているところでございます。
次をお願いいたします。これまでの成果について、創発的研究支援事業の論文実績でございますけれども、トップ10パーセント論文の割合の数値をつけてございます。令和5年度で21.1%となってございます。こちらに関しましては、7年から10年の長期間、腰を据えて研究に取り込むことを支援する事業でございますので、研究開始1年から3年程度で輩出されている論文はあくまで途中経過でございますが、こういう成果が出ているところでございます。
次をお願いいたします。創発的研究支援事業の一つの特徴としましては、共同研究を促しているところもございます。そういった意味で、多様な個人や学問の融合を促すことを考えた制度設計になっているところでございますが、普段の研究活動では出会うことのないような方々との議論、交流を通じることも非常に大事だろうということでございまして、融合の場あるいは創発の場を開催いただいて行っているところでございます。
創発研究者同士の共同研究も6割程度の方が実施しているというアンケートを頂いているところでございまして、融合の場をはじめとした場をきっかけに、かなりそういったことが広がってきているかと考えているところでございます。融合の場自体も高い評価を頂いているところでございます。
次をお願いいたします。また創発支援事業の特徴としましては、先ほどから申し上げておりますように7年から10年の安定的な研究資金ということでございますけれども、研究環境整備支援として1機関当たり最大5,000万/審査年度、間接経費を含むフェーズ2期間総額の追加的な支援を実施しているところでございます。その中で、もともと採択されたときに、講師や助教の方が多くいらっしゃるところでございますけれども、49%の創発研究者が昇進昇格を経験しているといったデータもございます。また39%の方が新たに定年制ポストを獲得したところでございます。また今、日本の研究者の研究環境の課題といたしまして、研究活動の時間割合が低いことがございますが、こちらに関しましても61%と他と比較して高い数値が出ているところでございます。今のところ、理想どおりに研究時間を確保できた者の割合は高いと認識しているところでございます。
次をお願いいたします。この研究環境整備支援の審査でございますが、64機関中59機関に対して支援を実施しているところでございまして、おおむね支援総額は10億円強で予定しているところでございます。どういったことを支援しているかと申しますと、ポスト支援であるとか、スペースの確保、研究時間の確保、研究加速に向けた支援といったことを行っているところでございます。
次に事例でございますが、15ページをお願いします。名古屋大学は、5期生では20名強の創発採択者がいらっしゃいます。こちらに関しましては、全学からの包括的支援と所属部局からの個別的支援の2つの支援体制を取っていただいて、研究時間を確保することをかなり考えていただいておりまして、創発研究者全員を高等研究院への兼務としていただいているとのことでございます。主な支援例も書いてございますが、様々な支援を頂いていることが分かるかと思います。
次のページをお願いいたします。高知工科大学でございます。こちらは5期生の創発採択者は1名でございますけれども、地方大学も少数の研究者のために創発的研究センターを設置するなど、かなり手厚い支援をしていただいております。ポストも御覧いただいたとおり昇任をさせていただいたり、いろいろな工夫をしていただいたりするところでございます。
次のページをお願いいたします。創発に関しましては、NISTEPの定点調査におきましても、自由記述回答でも非常に、御覧いただければと思うのですが、前向きな評価を多く頂いているのが、このページとその次の抜粋2にもなっているところでございます。
その次のページをお願いいたします。こちらは来年度の概算要求でございますが、科研費と同じ紙になってございます。創発的研究支援事業に関しましても、来年度の概算要求で、まず来年度の研究に必要な金額を確保しているところでございまして、また今年度の補正予算等でも議論になってくると考えているところでございます。
次をお願いいたします。残りは参考になりますが、基金シートにおける点検・評価ですとか、あるいは基金全体の点検・見直しの実施について書いてございます。基金ルール3年というものがかかっておりまして、こういったことも考えながら、今後、概算要求、補正予算で議論してまいりたいと思っているところでございます。
私からは大変急ぎでございましたが、説明は以上とさせていただきます。
ありがとうございました。
【佐伯部会長】 どうもありがとうございました。
そうしましたら、以上の説明に関しまして委員の先生方から御質問等はございますでしょうか。
小泉委員、お願いいたします。
【小泉委員】 ありがとうございます。小泉です。
創発については、以前、立ち上げのときに中澤課長もかなり御尽力されたのを覚えております。創発はすばらしい取組で、このように続いていることはいいと思いますし、また科研費と創発で一体的改革ということでも概算要求されているところもぜひ頑張っていただければと思っています。
創発の何がすばらしいかというと、やはり日本の大学の場合、ファーストティア、セカンドトティアの大学だけではなくて、すばらしい研究者がサードティア、フォースティアとか、地方と言ってはあれかもしれませんけど、広く日本全国にいらっしゃる研究者、そういった人たちを創発で広くカバーしていくことができるのは本当に日本の特徴をとらまえた上での政策だと思っておりますので、ぜひ頑張っていただければと思います。
その上で、やはり環境改善も重要だと思います。それで、質問というより意見が2つなんですけども、一つは、環境改善に絡んで、今回、例えば科政局からEPOCHというような新たなコアファシリティーの全国的な連携みたいなところがあります。一つ一つの大学の環境改善も重要なんですけど、日本全体として研究環境改善をしていくというような、そういったEPOCHのような取組も含めて、そういったところをうまくアクセスしながらできるような、一つ一つの大学だけではないような、そういった相乗効果で、文科省政策も他局の政策との相乗効果でうまく、創発に選ばれた研究者が、より研究力を高めていけるようなことができればなと思ったところです。それが1点目です。
それから2点目は、創発の研究者は、たしか内閣府のオープンアクセスポリシーの中で、オープンアクセスのマンデトリーに引っかかっていると思っているんですが、違ったらごめんなさい。ただ、大きな大学は転換契約等を通じてオープンアクセスができるようになっているところもありますけれども、地方大学で転換契約等がなかなか進んでない大学もあると思います。そういったオープンアクセスが、グリーンオープンアクセスのほうはいいんですけれども、ゴールドのほうで、例えば『Nature』には通ったけども、200万も払えないよみたいな研究者もいらっしゃると思うので、そういった研究者をいかに、大きな大学であればできるかもしれないけど、小さな大学だとなかなかできないオープンアクセスの取組みたいなものを何かうまくサポートできるような仕組みがあればいいなと思いました。解決策はないんですけれども、今のところ。そういった仕組みがあればいいなと思ったところでした。
すみません。意見というか、とにかく頑張ってくださいと。それだけです。
よろしくお願いいたします。
【佐伯部会長】 どうもありがとうございました。
続きまして、前田委員、お願いいたします。
【前田委員】 私も創発はすごくいいと思っていて、私自身もアドバイザーをやらせていただいているんですけども、若手同士、すごく相乗効果も出ていますし、それぞれの若手がすごくビジビリティーも上がって、分野の中でも見える存在になっていますし、あと環境改善がされるところは、すごく若手にとってはいいことで、ほかのグラントとかでもたくさん重要な研究に関して、何か環境改善につながる動きがさらに広がったらいいなと思うくらい、いいなと思っているところです。
一つ思っていることとしては、そのパネルの中の人数が今はすごく多くて、全員の内容とかを把握し切れないというか。あと、パネルが結構、どのパネルが今立っているかによって出しにくい人も結構いたりする状況も聞いていたりもするので、もう少しパネルを細分化して、いろいろな人がもう少し出しやすくするのと、あとパネルの中で全員の顔が分かるというか、そういう状況をつくれたら、もっといろいろな相乗効果とかがあるのではないかなと思っているんですけども、そういったことはあり得るかどうかを少し教えてほしいんですけども、お願いします。
【板倉課長】 前田先生、ありがとうございます。
パネルにおいてかなり担当される方の人数が多くなってきているとのことでございますが、こちらに関しましては大変大事な御指摘だと思いますので、我々としてもしっかり受け止めて検討していきたいと思っております。
また小泉先生もありがとうございます。創発に関しましても、先生から頂いたような御意見を踏まえ日本全体の研究環境改善につなげられるように我々としてもしっかり努めていきたいと思います。ありがとうございます。
【佐伯部会長】 ありがとうございました。
続きまして、有馬委員、お願いいたします。
【有馬委員】 有馬です。
まず、創発は、私もアドバイザーをやっていますけど、すばらしい試みだと思います。
それで、ただいまの前田委員のおっしゃったことは一理ある一方で、小さくするときに、もちろん小さくすると分野とかのことが広がりがなくなる可能性があるので、そこはそういう副作用が出にくい方法で、どういうサイズにしても多分最適はないと思うんですけども、いろいろ考えていただければと思います。
それでパブリケーションフィーの話も出ていましたけども、パブリケーションに限らず、幾つか創発の中で少し自由に使えるお金を持っておいて、特にパブリケーションで、これは重要だというものが、例えばパネルの総括が、それがいいと認めた人には、そういうパブリケーションフィーを出す、補助するとか、そういうようなやり方。つまり初めから決まったお金の分があるんだけど、プラス、後で付加的に使えるようなお金を持っているというふうな言い方をするのも、何と言うんですか、それぞれの個々の研究者のいわゆるポットの自由度が増えていいのではないかなと思いますので、なかなか文科省さんだけで決められることではないこともいろいろあるんですけども、予算の制約の中で、ぎりぎり頑張って、そういう自由度があるようなシステムに、そして、ますますよい制度にしていただければと思っています。
以上、とにかく頑張った制度だとはよく分かっているので、今後も予算獲得を頑張っていただければと思います。以上です。
【佐伯部会長】 ありがとうございました。
私からも一つコメントをさせていただければと思います。
創発事業は非常にうまくいっていて、若手の方を元気づける非常にいい制度だと思っております。
それで、海外の研究機関からの参画についても既に12名を採択しているということで非常にいいと思うんですけれども、一方で、創発的研究事業に採択された人たち同士の出会いの場も用意されているようですが、それだけではなくて、海外の研究者ですかね。そういった人たちと積極的に交流できるような何かしらのインセンティブを与えるのがいいのではないかなとも思いました。
例えば国際共同研究は最近非常に重要視されていて、先ほどもそういう話もございましたし、日本は多少少ないという話もございます。そういった中で、海外との共同研究をしっかり創発的研究をやっているような方に積極的にやっていただくことは非常に重要なことだと思うので、それぞれの採択された研究者が海外に出やすくするとか、あるいは海外に出る際には資金的な援助を少し増やすとか、何かしらそういったインセンティブを与えるのもいいのではないかなと個人的には思った次第です。
続きまして、手が挙がっておりますので、小板橋委員、よろしくお願いいたします。
【小板橋委員】 ありがとうございます。手短に。
女性の採択者数がちょっと少ないように感じたのでお伺いしたいんですけれど、応募件数の中での女性比率はどれくらいなんでしょうか。
【板倉課長】 応募比率で言いますと5期合計で女性比率は14%でございました。なので、採られた数のほうが高くはなっているところでございます。
【小板橋委員】 ありがとうございます。
【佐伯部会長】 ありがとうございました。
ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。それでは本日の議題は以上となります。
基礎研究振興部会運営規則第7条に基づきまして、本部会の議事録を作成し、資料とともに公表することになっております。本日の議事録につきましては、後日、メールにてお送りいたしますので、御確認のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは以上をもちまして、第19回基礎研究振興部会を閉会いたします。
本日は皆様、どうもありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局基礎・基盤研究課