基礎研究振興部会(第18回) 議事録

1.日時

令和7年7月7日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 部会長の選任等について(非公開)
  2. 部会の議事運営について
  3. 基礎研究振興部会での審議内容について
  4. AI for Scienceの取組について
  5. 基礎研究の振興について

4.出席者

委員

佐伯部会長、合田部会長代理、上杉委員、小泉委員、小板橋委員、齊藤委員、原委員、品田委員、前田委員、畑中委員、松尾先生、髙野委員

文部科学省

研究振興局長 塩見みづ枝、研究振興局基礎・基盤研究課長 中澤恵太、研究振興局基礎・基盤研究課 融合領域研究推進官 葛谷暢重

5.議事録

(議題(1)部会長の選任等について(非公開))
 
【佐伯部会長】  それでは、始めさせていただきます。部会長の佐伯でございます。第18回基礎研究振興部会について、これより公開で議事を進めてまいります。委員の皆様におかれましては、これから約2年間、御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
 部会長を拝命いたしましたので、一言御挨拶申し上げます。この基礎研究振興部会では、事業としての創発的研究支援事業、あるいはWPI事業、あるいは研究DXの推進、知的アセットの価値化といった大事な審議事項もございますけれども、最近、話題を集めている生成AI、あるいは量子コンピュータなどをはじめ、今後の社会を大きく変えていく可能性のある基礎研究推進の方向性を模索していく必要がございます。そのため、本部会においても活発な意見交換ができればと思っておりますので、皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、部会長代理は合田委員にお願いすることになりましたので、一言御挨拶をお願いいたします。
【合田部会長代理】  合田裕紀子です。基礎研究のサポートシステムの構築というのは非常に重要であり、未熟な点も多々ございますが、精いっぱい尽力してまいりたいと思います。勉強も兼ねて頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。
【佐伯部会長】  ありがとうございました。
 では、続きまして、文部科学省より局長から御挨拶をお願いいたします。
【塩見局長】  文部科学省研究振興局長の塩見でございます。先生方には、お忙しい中、第13期の基礎研究振興部会のこの委員をお引受けくださいまして、誠にありがとうございます。
 この基礎研究、この部会の名前に冠しております基礎研究、先ほど部会長、また、部会長代理からもお話がございましたけれども、これからの新たな知的、文化的な価値を創造し、ひいてはイノベーションの源泉ともなっていくような、我が国の社会の発展の基盤となる、そんな存在だと考えておりますし、日本が科学技術立国ということで、これからしっかりと歩んでいく上で、その多様性、また、厚みというものをさらに増していかなければならないということと考えております。この重要性、特に先ほども御言及がありましたけれども、国際情勢、アメリカを中心とする国際情勢などを見るときにも、この重要性を改めて認識しなければいけない、今、そんなタイミングではないかと思っております。
 また、昨年、AI研究がノーベル物理学賞、それから、化学賞を受賞するなど、AIが科学の多様な分野で革新の原動力となってきております。こうした中で、AI技術を科学研究に活用するというAI for Science、これは科学研究の革新をもたらす極めて重要な取組と考えております。現在、政府におきましては、来年度から始まります第7期の科学技術・イノベーション基本計画の策定に向けまして検討を進めておりますけれども、この検討の中でも、この基礎研究振興部会でかねて御議論いただいておりますような基礎研究の振興、また、AI for Scienceといった点が重要な論点となってきております。
 こうした中で、本日はAI for Scienceの取組に関しまして、理化学研究所から御発表いただくことになっておりますし、また、本日、資料5に少々刺激的な資料名を冠しておりますけれども――すみません。資料名は直したということですけれども、研究者の皆様のその研究業績をどのように評価していくことができるのか、どうあるべきかということについての御議論もいただこうと考えているところでございます。ぜひ皆様方には、この基礎研究のこれからに向けての重要性に鑑みまして、忌憚のない御意見を頂戴いたしまして、活発な御議論をいただきますようにお願い申し上げたいと存じております。どうぞよろしくお願いいたします。
【佐伯部会長】  どうもありがとうございました。
 では、続きまして本日の議題について事務局より御説明をお願いいたします。
【中澤課長】  改めまして、文部科学省の研究振興局の基礎・基盤研究課長の中澤でございます。よろしくお願いいたします。
 今日、この後、議事を4つ予定しております。1つ目は、今、画面共有いただいておりますが、部会の議事運営について、それから、基礎研究振興部会での審議内容について、それから、AI for Science、それから、基礎研究の振興について、4つ予定してございます。2点目の審議内容についてということについては、これから2年間、どういったことを検討していくのかというような内容でございますが、また、日々政策の状況というのは変わっていくところがあるので、必ずしもこれに全部とらわれるということではございませんが、一定、基礎研究に向けて全体の検討内容について、本日、お話、御意見をいただければなと思います。
 それから、残り2点については、具体的な案件として2つ、本日、御議論いただきたいなと思っております。AI for Scienceについては前部会、前期の部会の際に研究DXという観点でいろいろな御意見をいただいたものがございます。そういったところを踏まえて、今、理化学研究所のほうでAI for Scienceを進めてきた部分の最近の状況ということを御報告いただければなと。いただきながら、皆様から御意見、御質問をいただければなと思っております。(5)は基礎研究の振興についてというタイトルではございますが、様々な研究をしていく中で、日々研究者に対し、ある種のバイアスのようなものがかかる点というところがありますので、そういったところを忌憚なく御意見いただければなと思っております。
 以上です。
【佐伯部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、議事を進めさせていただきます。議題2、部会の議事運営についてですが、基礎研究振興部会の運営規則(案)及び公開の手続(案)につきまして、事務局から御説明願います。
【葛谷推進官】  資料2-1と2-2に基づいて御説明いたします。こちらは研究振興部会運営規則の案でございまして、こちらは第12期と同じ内容でございます。簡単に内容について御説明いたします。
 まず第2条に書面による議決がございます。部会長は、やむを得ない理由により会議を開く余裕がない場合においては、事案の概要を記載した書面により会議を構成する委員に送付し、その結果をもって部会の議決とすることができるとございます。
 続いて、第3条に委員会及び作業部会の規定がございまして、部会は委員会、作業を置くことができるといった規定がございます。
 第4条、下のほうでございますけれども、過半数が出席しなければ、会議を開き、議決することができないというところがございます。
 続いて、次のページ、下のほうをお願いします。第6条、会議の公開でございます。部会の会議及び会議資料については、次に掲げる場合を除き、公開ということで、本日、議題1にございました部会長の選任、人事に関する案件については非公開となっております。
 続いて第7条、議事録の公表でございます。こちらについては、部会長は部会の会議の議事録を作成し、公表するものとするとしております。
 そして第8条、こちらは本日、開催している会議形式、オンライン会議についての規定がございます。
 最後、第9条、雑則にございます。この雑則に基づいて資料2-2でございますけれども、振興部会の公開の手続についてということで、開催案内や傍聴者などについての内容がまとめられております。
 説明は以上でございます。
【佐伯部会長】  どうもありがとうございました。
 基礎研究振興部会の運営規則及び公開の手続につきまして、案のとおり決定してもよろしいでしょうか。もし何か御意見等ございましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは、運営規則及び公開の手続を決定させていただきます。
 それでは、次の議題に移ります。引き続き議題の3、研究振興部会における審議内容について、事務局より説明をお願いいたします。
【葛谷推進官】  それでは、資料3に基づいて科学技術・学術審議会基礎研究振興部会での審議内容について、こちらは具体例ということで御説明させていただきます。
 審議内容については、大きく3つございまして、基本的には前期、第12期の内容とほとんど同じでございます。まず1つ目、基礎研究の振興についてでございます。我が国の基礎研究を10年、20年先を見据えた施策から発展させるために、基礎研究の振興に関する内容を幅広く取扱い、議論を行うとしております。その中では、個別事業、前期の中でも御議論させていただきましたけれども、創発的研究支援事業や戦略的創造研究推進事業、これはいわゆるCREST、さきがけといったものでございます。WPIや数学・数理科学と諸科学、産業・社会を協働するプラットフォーム組織・体制の構築の整備といったものでございます。
 続いて、基礎研究の更なる発展に向けた研究DXの推進についてということで、基礎研究に求められる役割・機能が変容し、その重要性が増大する中で、研究の取組方についても変革が求められているところでございます。新たな価値創造を目指したAI for ScienceなどのAIやデジタル技術とデータ活用による研究活動の変革、研究DXに関する内容について議論を行うとしております。その中では、個別事業として、例えば上から2つ目の量子コンピュータ・スーパーコンピュータの組合せによる研究DX基盤の高度化と、これは理化学研究所の事業のTRIP事業でございます。また、生成AIをはじめとするAIの研究開発力強化ということで、本日、理化学研究所からも御説明がございますけれども、科学研究向け基盤モデルの開発・共用、いわゆるTRIP-AGISといったものもございます。
 続いて3ポツ目でございます。基礎研究の社会的意義・価値についてでございます。基礎科学の知的アセットを適切に価値化し、よりよい社会の実現に向け、社会との間で好循環を形成することが必要だと思っております。基礎研究の共通認識(基礎研究の役割、国内外の動向等)を確認し、基礎研究の社会的意義・価値及びそれらを適切に評価するための方策について議論を行うとしております。
 以上3点が基礎研究振興部会での主な審議内容ということで、まとめさせていただいております。説明は以上でございます。
【佐伯部会長】  御説明、ありがとうございました。
 以上の説明に関しまして委員の先生方から御質問等ございますでしょうか。もし何かございましたら、挙手ボタンなどを押すなどして御発言いただければと思います。よろしいでしょうか。特に御質問等ございませんでしょうか。ありがとうございました。
 そうしましたら、次の議題に移らせていただきます。議題の4、AI for Scienceの取組についてでございます。本プログラムは、約2年前の本部会におきまして生成AIの研究開発という議題の中で御議論いただいたもので、昨年度より理化学研究所におきまして本格的に開始しております。資料4について理化学研究所の泰地先生から御発表をお願いいたしたく思います。御発表後、委員の先生方より御意見等を頂戴できればと思います。
 それでは、泰地先生より御説明をお願いいたします。
【泰地プログラムディレクター】  理化学研究所の泰地でございます。本日は、このような機会をいただき、ありがとうございます。早速ですけれども、私どものほうで昨年度より進めております科学研究基盤モデル開発プログラム(AGIS)と、現在の国内外の状況につきまして御説明差し上げたいと思います。
 次のページをお願いします。これは皆様、重々御承知かと思うのですけれども、科学技術でなぜAIが大事なのかということでございます。科学や工学の対象が非常に複雑になってきておりまして、ライフサイエンスをはじめ、気象ですとか、あるいは人工物などにおきましても、計算機自体等も非常に複雑になってきています。こういう非線形で複雑なものを紙と鉛筆で理解することはできなくて、これまではシミュレーションを使って、複雑なものを予測するようにできるようにしようということが多々行われてきたのですけれども、近年のこのAIの発展で、AIの適用範囲というのが急速に拡大してきました。複雑なものを機械学習を使ってモデル化して予測できるということが、急速に実現できるようになってきたということがございます。
 次、お願いします。これも皆様、重々御承知かと思うのですけれども、現在、AIによりまして、知的労働の自動化ということが進みつつあります。第4次産業革命とも言われておりますけれども、研究開発は、そうした知的労働の最たるものでありまして、ここをAIによって加速することで大きなイノベーションにつながるだろうと考えてございます。既に、大規模言語モデルは非常に汎用性を持ちますので、科学研究においても有用だろうということでAIエージェントによる研究支援なども進んでおります。それに比べまして、科学のドメイン固有の基盤モデルも非常に重要だと考えておりまして、既にAlphaFoldなどのタンパクモデルやゲノムモデルなどで成果が出てきております。
 大規模データから生成した基盤モデルは非常に汎用性が高く、いろいろな研究開発に適用可能です。既にAlphaFoldなどは、こういった形で創薬等にも利用されているわけですけれども、こういうような形でサイエンスから出てきたデータをモデルにして提供することで、非常に利用範囲が広まるということで、我々のプログラムで、今、サイエンスのデータをモデルにして提供することを非常に重視して行っております。
 次、お願いします。これはもう皆様も、また御存じの内容で、AlphaFoldは昨年度、ノーベル化学賞を取ったわけですけれども、これはタンパク質のアミノ酸配列からの立体構造予測を可能にするものです。このアミノ酸配列は、最近、次世代シーケンサ等でパッと読めるようになってきているわけですが、立体構造はこれまで実験で決めるには、いろいろ電子顕微鏡等の技術は進んではいますけれども、まだまだ大変というところが、このAlphaFoldなどを使ってパッとできるようになったということで、私もこのタンパク質の立体構造に関連する分野におりますけれども、このAlphaFoldができた、そのできた瞬間に研究者が一斉に使い始めるというような状況でして、科学技術において、やはりちゃんとしたAIができると、いかに大きなインパクトがあるということを示した結果だったかと思います。
 次、お願いします。このAlphaFoldの成功例をよく見ますと、AlphaFoldは単純にこのデータをAIに学習させるだけでできているというわけではなくて、この最初の部分でタンパク質のシーケンスを並べて比較するプロセスとか、あと、立体構造を予測するためにはどういうふうな部分に注目して機械学習を行ったらいいかというようなところで、相当、タンパク質科学の知識が反映されています。ノーベル賞を取った、このノーベル賞を取った2名の方も、このDemis HassabisはAIの専門家で、このJohn Jumperはもともとタンパク質科学の専門家ということで、こういった2名の体制が密接に含んでうまくできている、大きな成果につながったということがございます。この最先端のAIとサイエンスの知識と、あとは大規模な計算という、この三者が密接に連携する体制が重要と考えております。我々のこの理研TRIPでも、このAIとサイエンスと、この計算の密接な連携を推進しまして、こういったグランドチャレンジ問題に挑戦していきたいということで、本プログラムを立ち上げたということになってございます。
 次、お願いします。現在、このAI開発はアメリカ等におきましても、アカデミアというよりは、どちらかというと産業側、Big Techが主導しているというような状況でございます。その中でもGoogle/DeepMindのほうは、AlphaFoldを筆頭に様々な科学向けのAIモデル開発、AIエージェントの開発で最先端を走ってございます。物性分野のGNoMEや気象やAlphaEvolveなどのプログラミングAI、つい先日もAlphagenomeなどが発表されたところでございます。OpenAIのほうは、大規模言語モデルをベースに開発をしていまして、生命科学向けのGPT-4b microなどの発表を行っているところです。Microsoft researchは、MatterGenとかAuroraなどの開発を活発に推進していまして、こちらもやはりサイエンスのドメインに特化したようなモデルを強力に推進しております。
 Anthropicはプログラミング自動化向けのエージェント、Claude Codeが非常に今幅広く使われるようになってきています。AnthropicもAI for Science向けのプログラムというのを持っておりまして、サイエンティストに彼らのAIを幅広く使わせるというようなことで推進しています。Metaはタンパク質言語モデルESMの開発などを推進していまして、あと、Metaと直接の関連ではないかもしれないですけれども、Chan Zuckerberg Initiativeのほうではバーチャルセル、仮想細胞モデルを開発しようということで、西海岸のいろいろなアカデミアの人を巻き込んで強力に推進しているところでございます。
 NVIDIAのほうは、AI for Scienceは彼らのGPUの有効な活用対象として重視しておりまして、AIモデルのチューニングや利用容易化などを推進するということで、様々なアカデミアとつながって活動しています。この中でEvo2、今年発表された大規模なゲノム言語モデルですけれども、そこにも計算資源やサイエンス面での協力を行っているところです。あと、そこに書いていないですけれども、NVIDIAはハードウエア設計等のAI開発なども行っております。
 次、お願いします。昨年度の4月にこの科学研究基盤モデル開発プログラム、AGISを立ち上げたところです。こちらはやはり先ほどからお話ししているように、理研の総合力、サイエンスの力と、AI、それから、計算の力ということを活用して、それらの連携によって科学向けのAI開発と、それらの応用を推進しようというプログラムでございます。現在、ターゲットの領域としては、ライフサイエンスとマテリアルサイエンス、この2領域を選定しておりまして、AIは私がプログラムリーダーとして活動しておりまして、マテリアルサイエンスのほうは統計数理研究所の吉田先生に招聘PIとして参加していただき、プロジェクトを担っていただいております。
 計算機のほうは、大規模な計算基盤の整備ということで、R-CCSの松岡先生が行っておりまして、共通基盤としては、実験の自動化と、、科学向けの大規模言語モデルの開発ということで、こちらは理研BDRの高橋恒一さんにプロジェクトリーダーとして活動していただいてございます。こちらは現在、理研の9つのセンターが加わっておりまして、理研内での横断的な性格を持ったプログラムとなってございます。
 次、お願いします。我々のこのプログラムの狙いとしましては、まず1点目はやはりScalingへの対応で、AIがここ数年、規模を大きくするということで性能が上がってきたという現実がございます。これに我々やはり若干遅れておりますので、そこに対してデータの量・質を上げ、モデルと計算規模を拡大していくということで、きちんとキャッチアップしていこうというところでございます。
 2番目としては、サイエンス向けの基盤モデルの開発と活用ということで、こちらでは特にマルチモダリティということで、複数のモードを同時に学習させるようなモデルを重視して進めております。
 3番目は、AIを使ってサイエンスの研究プロセス全体を自動化しようということで、実験やシミュレーション及び解析の自動化を行うことで、この3点を重要なポイントとして進めております。もちろん、これらの結果としてサイエンスの成果を創出するということが最終的な目標になります。
 なお、我々の取組は、サイエンティストを中心にデータ取得までを含めて行うようなAI for Scienceの取組としては、先駆的なものだったかなと思っておりまして、米国では、アカデミア等でも中心的に行っていたのは計算とかAI系の人が行っているのですけれども、がっつりサイエンティストを取り込んで進めるようなプログラムというのは、今に至ってもそこまで多くないというような状況だと考えてございます。
 次、お願いします。マルチモーダルを重視していくことをお話ししましたけれども、やはりこの大規模言語モデルだけだと、言語にとらえられた知識だけなので、これまでの人間の活動から大きく逸脱しないと思っておりますが、これに加えて人間が苦手とするような、計算や数値処理といったところをうまく取り込んで、人間を超えるような知性というものを実現可能かと考えております。もちろんこれは様々に現場のデータ処理でも活用できると、やはり細かい画像処理とほかのものを合わせて判断する、これは人間はなかなか難しいところですので、新しいAIによっていろいろなイノベーションにもつながると考えております。
 次、お願いします。例として、我々が今進めようと考えております細胞応答の基盤モデルで、こちらは科学大と兼務している二階堂さんと岡田さん、岩崎さんで進めているものですけれども、まずは大規模なデータを取得しようということで、細胞の応答に対して大規模なデータを取得しようと。具体的にはiPS細胞に刺激を与えて分化するプロセスをまずはデータとして取得しようということで、刺激の種類や細胞種、それから、時間と合わせて250万点以上のデータをまず取ろうと。データとしてはトランスクリプトーム、転写と、あとはリボソームプロファイリングで翻訳制御の部分、それから、細胞の動画、これは無染色で取っていこうということで、これらのデータを基にほかの機関、あるいは我々が開発するトランスクリプトームの基盤モデルも活用しつつ、細胞の外部刺激に対する応答を予測できるような基盤モデルを開発しようということで、マルチモダリティと、ダイナミクスというところが非常に特徴的なモデルになると考えてございます。
 次、お願いします。こうしたモデル開発のために現在、大規模な計算資源の導入を進めております。現在、パイロット版が入ってはいるのですけれども、最新GPUを用いたAIスパコンを神戸に今年度末に導入するという予定になっております。こちらは大体、ABCI3.0の3分の2程度の性能となる見込みでありまして、国内でも有数の計算資源になってくると考えてございます。これを国内のAI for Science研究に幅広く活用していただけるように体制を整えてまいりたいと考えてございます。もちろん、こちらは富岳の横に設置しまして、富岳でのシミュレーションとAIの融合研究なども推進したいと考えています。
 次、お願いします。AIにとっては、データというのは石油みたいなものでありまして、このデータがないとAI開発というのは回らないというのが現状です。言語データにおきましては、もうすぐこのデータを使い切ってしまうと考えられておりまして、大体3年後ぐらいに、今、我々が持ち得るデータ量、言語のデータ量は学習に全て使い切ってしまうだろうと考えられています。言語データは、その後、少しずつできていくのですけれども、そのスピードはそんなに速くないということがあります。一方で、サイエンスのデータのほうは無尽蔵で、しかも、足りないので、そのサイエンスのデータをどういうふうに採掘を加速していくかということが非常に重要なポイントとなってきます。特にこの中では、AIが必要とするような、AIをどうやって賢くしていけるかというようなデータ戦略が非常に重要になってくると考えております。
 次、お願いします。そのために我々は、まずは実験のほうでは、実験の自動化を行うことでデータ取得を加速しようということで準備を進めております。Natureの今年の7つの注目技術で自律駆動ラボみたいのが入ってきていますけれども、我々のほうでは10年ぐらい前からこういったロボットを使った自律駆動ラボの研究を進めておりましてロボットの開発も含めて行っており、こういうものを大規模に導入することで自動化を進めようということで、まずは先ほどお話しした二階堂さんの細胞応答のモデル計測のためのラインを、ロボットを使って自動化するというところから進めているところです。
 次、お願いします。こういった実験に加えてシミュレーションを使ってデータを出すということも一部のモデルではできると考えておりまして、既に統数研の吉田さんのほうでは、富岳等を用いた大規模シミュレーションでデータを生成し、それを機械学習で学習させるということを行っております。自動的なシミュレーションシステムの開発なども彼のほうで行っておりまして、こちらをさらにこのAGISのプログラムの中で拡大していただくことになってございます。また実験についても、化学系の自動実験等も進める計画になっております。シミュレーションデータは、気象分野などでは非常にモデル開発の上で重要な位置を占めています。今後防災など、実験が難しいような分野でも非常に重要になってくると考えてございます。
 次、お願いします。今年度から、AIエージェント開発のほうに少し力を入れようと考えて、要求等をさせていただいているところでございます。このAIエージェント、昨年度の後半ぐらいから、特に今年度に入ってからAIのほうで注目されておりまして、AIエージェントが自律的、あるいは我々の指示に基づいて半自律的に処理を行うようなものでございます。一番進んでいるのはプログラミング分野で、Claude Codeなのですけれども、もう少し研究プロセス全体を行うようなAI科学者みたいなものも一部開発が進んでいるところです。理研としましては、こういった情報科学分野だけではなくて、実験も含めたような部分、あるいはあと解析等も含めた部分とか、そういう部分で自律性を向上させて、研究者の支援を行う。長期的にはもう少し研究プロセス全体をAIで行うようなことも視野に入れつつ、当面はまず研究者の支援を行うようなAIエージェントを開発していきたいと考えており、こちらの開発を強化しているところでございます。
 次、お願いします。国際協力としましては、まずは米国、DOE傘下のArgonne国立研究所とのMoUを締結しまして進めております。彼らのところは、このTrillion Parameter Consortiumというコンソーシアムを作っておりまして、そこの中での活動等も進めております。最初は非常に大きなモデルを作ろうというコンソーシアムだったのですが、だんだんやはりサイエンス全体においてAIを活用していくにはどうすればいいかというのが主眼のコンソーシアムになっておりまして、こちらでいろいろなハッカソン等を開発したりというような活動をしております。あと、これ通じていろいろ海外企業との連携が可能になってきておりまして、AnthropicやオープンAI、Google等と話をさせていただきますと、このAI for Scienceというのは彼らのBig Techから見てもアカデミアへの期待が大きい分野となっておりまして、今後やはりこういうBig Techと一部連携をしながら進めるということも視野に入れながら活動を進めていきたいと考えてございます。
 次、お願いします。こちらが最後になりますけれども、このような形で、我々のプロジェクトはサイエンス向けのAIの開発を実験・シミュレーション自動化とマルチモーダルなAI向けのデータ取得を融合させて進めるような、割と先駆的な取組になっているかなと自負してございます。今後この科学向けのAIの活用は、ほぼ全ての科学者にとって必須なものになってくると思っておりまして、エージェント開発等も進めていきたいと考えております。また、ライフ向けには、ライフ課のほうではいろいろこういうものを全国的に展開したいということも考えておりまして、こういうところにもいろいろな活動で貢献していきたいと考えております。
 今後、AI開発に関しては、いろいろなものを連携して進める。国際的な連携等も含めて進める必要がありまして、その上ではやはりほかにないデータ、モデルを出したりとか、あとはやっぱりサイエンティストがどういうふうにこのAIにコミットしていくかというところが非常に重要でして、そういうところをプロモーションするような活動を進めていければと考えてございます。
 御説明は以上になります。少し延びて申し訳ありませんでした。
【佐伯部会長】  詳しい説明、どうもありがとうございました。
 以上の説明に関しまして委員の先生方から御質問等はございますでしょうか。どうぞ、御質問がある方は挙手ボタンを押していただければと思います。
【葛谷推進官】  髙野先生が手を挙げていらっしゃいます。齊藤先生も。
【佐伯部会長】  髙野先生ですか。
【髙野委員】  よろしいですか。
【佐伯部会長】  よろしくお願いいたします。
【髙野委員】  よろしくお願いします。説明、どうもありがとうございました。AGISですよね、プロジェクトの名前。ビッグデータの数が少ない。それで、ロボティクスを使って247でデータを出すというお話だったのですけれども、今まであるデータをどうそちらのプロジェクトでインコーポレートするというか、見るというような予定はあるのでしょうか。
【泰地プログラムディレクター】  この今日の御説明には含めませんでしたけれども、例えばライフサイエンスにおきましては、様々な既存データも使ってモデル開発しようというチームがございます。そちらにおきましては、いろいろな既存データを知識グラフの形に変換しまして、知識グラフを文章のようにしていくことでトランスフォーマー、基盤モデルを開発しようということを進めております。そのほか、東北大学の田宮先生が理研AIPも兼務されておりますけれども、東北メディカルメガバンクの大規模なコホートデータがございますけれども、ゲノムコホートなども活用してモデルを開発していこうという計画になってございます。
【髙野委員】  ありがとうございます。それで、そういう既存のデータを使う場合に、よくディスカッションに出てくるのは、スタンダードがない。基盤とする、基礎とするアンダースタンディングがない。どうやってそれをコレクションするというんですか、考え方としてどうなんでしょう。
【泰地プログラムディレクター】  そこは非常に難しいところで、モデルを開発しながら進めていくしかないのかなというのが正直な答えになってきます。我々、このデータ取得をAIのトレーニングをターゲットに進めなければいけないというふうに考えている理由の1つはその辺の問題でありまして、やはり今の細胞の転写のモデル等も様々出ているんですけれども、やっぱり今の段階ではなかなか精度が上がらないと。今取られているデータはかなり偏っているので、精度が上がらないということも指摘されており、そういうところを何かAIのために、ある意味、無心にデータを取るようなところが必要なのかなと思っておりまして、データ取得というところを非常に重要視して進めているところです。
【髙野委員】  分かりました。ありがとうございます。
 もう一つだけコメントとして入れたかったのは、247でも無心にデータを取るという話があったんですけれども、データの質と言ったらいいんですかね。ターゲット、どういうデータを取りたいかと考えるのもすごく重要だと思うんですね。幾らでもデータを取ろうと思ったら、幾らでもデータは取れるけれども、重要なデータ、いかに意味を持たせるデータを取る、いかに数多く取れるか、それも結構重要なのではないかなと、私、一瞬思いました。どうもありがとうございます。
【泰地プログラムディレクター】  はい。ここもやはりプロジェクト内部では、このAIが欲しいデータというところをちゃんと取っていくと、AIの性能を上げるためのデータをちゃんとしてあげるようにするということが非常に重要だという議論をしておりまして、そのために実験データの質自体はもちろん重要なのですけれども、これまでは人間が欲しいデータを取ってきて、それをAIに食べさせていたのですが、これからはAIの好奇心みたいなところをどううまく定義していくかというところが重要なのかなというような議論などを行っています。まだ、そこにちゃんとした答えはないのですけれども、もちろんAIの性能をゲインさせるようなデータ領域はどうかというのは、恐らく定義できるので、非常に研究要素が多分にありますけれども、それらのところを研究しながら進めていきたいと考えております。
【髙野委員】  はい。分かりました。ありがとうございます。人間のほうの考え方も取り入れていただけるようお願いいたします。AIだけではなくて。
【泰地プログラムディレクター】  承知いたしました。
【佐伯部会長】  ありがとうございました。
 ほかに御質問等ございますでしょうか。
【小板橋委員】  よろしいでしょうか。
【佐伯部会長】  はい。どうぞ。
【小板橋委員】  日経BPの小板橋と申します。大変分かりやすい説明、ありがとうございました。今いろいろな困難もあるとは思うのですけれども、これが進むとかなり科学者にとってはいい基盤になっていくのだろうなと感じました。さらに言うと、ここで科学者が大分、科学者の数が少なくてもよくなる時代が訪れるのかどうなのか。その辺りも含めて、というのも日本の人口、100年後には3分の1になるという推計が出されているように、子供の数も減っていて、将来、科学者になるポテンシャルの母数そのものが減っているかと思います。そのような現状も鑑みて、今後こういう形が進むことで何を目指していらっしゃるのかというのをお伺いさせていただきたいと思います。
【泰地プログラムディレクター】  非常に難しい御質問だと思っておりまして、これ、どうしてもやはり科学者を、まあ、AI全体がそうなのですけれども、やはり人間をAIで置き換えていくというような、そういう要素は多分にあるとは思ってございます。一方で、こういったAIによる研究支援や、あるいはこのロボットによる実験というのができるようになってくると、この研究に対する、ハードルを下げるという面も多分にあるのかなと思っておりまして、今はライフサイエンス研究とかだと非常に大きなラボで大勢がその研究に関わって1つの研究を推進するという、そういう形態がどうしても中心になってきていますけれども、もう少し個人の興味に従って、このAI、この自動化実験等を使ってそれなりに大きな仕事みたいなのができるようになってくるということもあり得るのかなと思っておりまして、AIが全部やってしまうという可能性もあるのですけれども、もしかしたら人間の数の多さみたいなものを生かして多様な好奇心をより実際の研究につなげられるという可能性もあるのかなと思っております。本当にそういうシナリオが実現すると、より楽しくなるのだろうとは思っているのですけれども、正直、全部AIにやられるというシナリオもあり得るかなとも考えてはいるところです。
【小板橋委員】  率直なところ、ありがとうございます。
【松尾委員】  よろしいでしょうか。
【佐伯部会長】  はい。どうぞ。松尾委員、どうぞ。
【松尾委員】  私、よろしいですか。ありがとうございます。東京大学の松尾と申します。貴重な御発表、どうもありがとうございました。私は、科学技術政策等の推進に関する社会科学的なところから分析をしている者になります。中でもバイオの領域をいろいろと見ておりまして、実際やはり今回、AlphaFoldが、ノーベル賞を取ったということで、かなりAI、バイオ、それから、オートメーション化していくということで、AI×バイオ×ロボティクス、それから、AI×バイオ×自動化みたいな何かそういうキーワードで、かなり各国で政策であったりだとか、国際会議での議論というのが進展しているところになります。私が関与しているOECDの関連でも、そういうワークショップをして、非常に関心が高まっているところだと思っております。
 泰地先生にお伺いしたいのが、そういう異なる要素間、AIとバイオとロボティクスであったり、オートメーションであったり、機械分野であったりだとか、今回の御発表では計算についておっしゃっておられましたけれども、そういう異なる要素間をつないで全国展開していく、国際展開していくといったときに、その「つなぐ」に当たってどういうふうなことがこれから課題になっていくのか。そういったところをお伺いしたいなと思っております。よろしくお願いいたします。
【泰地プログラムディレクター】  ありがとうございます。まさにそこがこのプロジェクトの肝だと思っておりまして、理化学研究所も構造生物学の強いアクティビティがあって、富岳みたいなスパコンも持っていて、AIPという大きなAI研究をするセンターがあって、本当はこの3つをうまく組み合わせるとAlphaFoldみたいなものを開発できていたはずなのになというふうに思っております。それがやっぱりできなかったというところは、こういう大きな目標を決めて、これに向かってそれぞれの専門家が協力して、集中してやろうという、そういう体制があってやっぱり成功したと考えております。
 重要なことというのは、ある程度のこのゴール感をいかに共有して、それで、そのゴールに向けて進めることが重要だと。実は、これはなかなか、特にライフサイエンス等の研究者は比較的苦手なところでありまして、一時期、やはりゲノムプロジェクトとかは、そういうふうな形でやっていたんですけれども、ある意味で自分がファーストオーサになって書くような論文につながらないような仕事を結構優秀な科学者が加わってやってもらわなきゃいけない。恐らくAlphaFoldなんかも、John Jumperのほかにもすごい優秀な人がいっぱいいたと思うのですけれども、ある程度やはり大きな目標のためにみんなで協力してやろうという、そういう体制が非常に重要だと考えております。その辺少し研究者の意識改革等も含めて進めないといけないとは思っているところです。
【松尾委員】  どうもありがとうございます。日本の中に今、つながなければいけないもののポートフォリオにどのようなものがあり、誰がどういうふうに持っていて、どこにどういうふうにあるのかということを把握し、それからやはり、ディシプリンが異なると言語も結構違ったりだとか、認識も違ったりだとかするので、そこは先ほど髙野先生からデータのスタンダダイゼーション(標準化)や共通理解についての質問もありましたけれども、ある程度の共通認識の構築みたいなのも何か必要になってくるのかなと思いながらお話を拝聴させていただきました。どうもありがとうございました。
【佐伯部会長】  それでは、小泉委員、よろしくお願いします。
【小泉委員】  ありがとうございます。私でよろしいでしょうか。今日のお話を聞いて、理研のそうそうたるPIの先生たちが関わって、すばらしい取組だなと思いました。その一方で、決定的に足りないと思うことが3つあると思いました。これは泰地先生のせいとか、そういうわけではなくて、そもそも文科省自体または国として考えなければいけないことかなと思っているところです。
 1つ目は人材育成です。今日の御説明だと、どうしてもPI同士の共同研究の域を越えていないような、そんなイメージを持ってしまいました。名だたるPIが立ってやられている研究ではあるけれども、何か学術変革をちょっと大きくしたような、CRESTをちょっと大きくしたような、そんなイメージで進めていらっしゃるような気がします。これはもう国として、国家プロジェクトとしてやっていくということであれば、次の世代をどう育てていくのか。人材育成、どうしていくのか。新しい人たちがどうやって参入してこれるのか。そういったところも含めて考えていかないと、単なる共同研究または研究で終わってしまっては、もったいないと思います。
 もう一つは、Big Techとの共同ということ、連携ということも言われていましたけれども、この分野、やはり新しい人材が、そしてスタートアップを立てていく、新しい発想で若い人たちがベンチャーを立ててスタートアップを立てていって、そういった発想、新しいイノベーション、応用というところを考えていく、こういった元気のある産業活力というところにも結びつけていかなければいけない。また、そういったところがまた学術界、アカデミアにも、インダストリーにも裨益していく、そういったエコシステムを作っていかなければいけない。単なる研究で終わらせていては、もったいない。そういったところで、いかにスタートアップを育てていくのか。また、新しいイノベーションをどうやって興していくのか。そういった産業界にとっての裨益というか、そういったものを考えていかないといけないと思いました。
 もう一つ、3つ目としてはELSIです。AI for Scienceというのを進めていく上で、やはり今もう既にいろいろとポチョムキン効果があるとか何とか、いろいろと話が出てきていますけれども、AIといったものに関するリスク、そして、そういったものを使うときのELSIといったもの、そういったところをしっかりと同時進行で考えていかないといけないと思っているところです。この3つに関しては、早い時点で、これは国として、文科省として制度設計の中に組み込んでいかないと、単なる研究で終わってしまっては、もったいない。せっかくこれだけのPIが参加していただいている事業ですので、単なる研究で終わらせてしまっては、もったいないと思ったところです。
 以上です。
【泰地プログラムディレクター】  ありがとうございます。貴重な御指摘、ありがとうございます。まさに人材育成は非常に重要なポイントだと思っておりまして、このプロジェクトをやっていると、正直言うと、もう若手の人のほうが、研究員クラスの人のほうがどんどん、こういうことをやろうみたいな形で動いて、ちょっと年寄りのPIクラスは何となく今の研究の延長上みたいなところも見えたりして、そういう若手の人をどういうふうに盛り立てていくかというところのほうが非常に重要なポイントになってきているとは、私としても感じております。
 理化学研究所はやはり大学生とか持てないので、本当にここについては大学の先生には、大学のほうで、AI for Scienceの学科とか研究科ができてもおかしくないから何とかしてくれないかとか言っているところ、我々も協力しますからみたいな話はしているところなので、ぜひ大学等とはその辺を進めていきたいと考えてございます。産業界についても、本当におっしゃるとおりでありまして、ここは何とか、ここにも書いておりますけれども、ベンチャー化についてはどうしても大きくしていく上では必須だと思っておりまして、まだ我々のところ、まだ初期開発の段階なので、これが出てきた段階で我々としては、とにかく積極的にそういうベンチャー化にも支援していきたいと考えてはございます。
 それから、3点目は何でしたっけ。
【小泉委員】  ELSIです。
【泰地プログラムディレクター】  ELSI関係ですね。理研では、AIガバナンス委員会というのが立ち上がっておりまして、そこでAIガバナンスに関する議論をしているところでございます。あとは、ここについては、国のほうではAISIが立ち上がっておりますので、AISIの活動に協力していくという形かなと思っております。我々のこのプロジェクトの中で、ここを専門的に扱うかどうかというところは、少し議論があったところなのですけれども、現時点では、このステークホルダーとして自分の中でそういう検討をするよりは、外の方に検討してもらったほうがいいのかなとも判断しております。そこは、非常に重要なポイントだとは思っております。プロジェクトの中では、高橋恒一さんはAIアライメントに関する協会を立ち上げたりとか、様々に意識を持って活動していただいているところではございます。
 私からの御返答としては以上になります。
【佐伯部会長】  よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 そうしましたら、続きまして齊藤委員、よろしくお願いいたします。
【齊藤委員】  齊藤でございます。理研ならではのいろいろな分野、研究から産業界まで含めて様々なステークホルダーがいる。この問題は、先ほど御指摘がありましたように、将来は人間すら、研究者すら不要になってしまうような状況を作るという可能性もあるというものだと考えておりますが、その中で経済安全保障ですとか、研究インテグリティの問題をどのように考えていらっしゃるのかということをお聞かせいただけませんでしょうか。その生成モデルができると、情報が人ではなくてネットワーク全体にまかれるという状況になり、そうすると情報というのはローカライズしていないという状況になりますので、経済安全保障的な管理の難易度が増すと考えます。その辺に関する御見解も伺えればと考えております。よろしくお願いいたします。
【泰地プログラムディレクター】  今後、我々が開発するようなモデルにつきましては、オープンクローズ戦略でいきますよということは文科省様とはお話しさせていただいているところではあります。そのときにやはりこのオープンデータを使って開発されたモデルというところは、オープンにしていくという形で、これはほかのサイエンスの分野、ほかで開発している大規模なモデルについても、そういう流れになってきていると思います。一方で、我々が独自に取ったデータというところについては、何らかのインターフェースを使って公開していくということは、どうしても必要だと思うのですけれども、モデルのウエートにはデータ自身を公開していくかどうかというところは、やはりセキュリティ的な、安全保障的な観点も入れつつ検討していく。もちろん、その経済的な問題もあると思いますけれども、セキュリティ問題も十分に配慮しつつ、決めていくというふうに考えてございます。
 今の段階の御返事としては以上になります。
【齊藤委員】  ありがとうございます。重要な問題だと思います。
【佐伯部会長】  ありがとうございました。
 では、続きまして品田委員からよろしくお願いいたします。
【品田委員】  ありがとうございます。今日の御説明は主に生命科学分野のほうの視点が重く語られたように私は感じたのですけれども、必ずしもそれに限るものでは材料などもターゲットだと私は受け取りましたけれども、その流れでAIが1つ、データ取得戦略が重要というのは、まさにそのとおりだと思っていまして、あと材料分野ですと、文科省様のマテリアルリサーチインフラとか、あとマテリアルインフォマティクスという言葉で随分前からいろいろ取り組んでいるNIMSとか、そういうところとの連携とか、データ取得戦略の1つとしてあるのかと思うのですけれども、その辺はどういうふうな進展というか、お考えなのでしょうか。
【泰地プログラムディレクター】  例えば高分子の分野におきましては、吉田先生のほうで、もう既にNIMSさんとの、いろいろ連携が進んでおりまして、NIMSの内藤先生に例外的に客員として理研に入っていただいたりとか、NIMSの高分子データも、今後、活用していくという流れで進んでおります。そのほかは、NIMSの先生にいろいろ御講演等いただいて、今後データのほうでどういうふうに連携していくかというところの御相談をさせていただいているところです。そのような形で国内に蓄積されておりますいろいろなデータを活用しようということで、様々に準備を進めさせていただいているところでございます。
【品田委員】  ありがとうございます。もう一つ、現実は装置の共用とか、効率的なアセットの活用というほうが重きを置かれてしまっているような嫌いもなきにしもあらずなのですけれども、マテリアル先端リサーチインフラというのは、そういうデータをたくさん集めて共有できるような仕組みにしようというのが大きな目的だと思うので、そちらのほうもぜひ連携していただけたらと思います。その辺はまだこれからということでございますか。
【泰地プログラムディレクター】  そうですね。何か名前が出てこなくなってしまったのですが、活動については承知しております。
【品田委員】  分かりました。なかなか長くて覚えにくいので、ARIMと言っています。
【泰地プログラムディレクター】  ARIMですね。
【品田委員】  はい。よろしくお願いします。ありがとうございました。
【佐伯部会長】  ありがとうございました。
 続きまして、前田委員、お願いいたします。
【前田委員】  北海道大学の前田です。どうもありがとうございました。人材のこと、途中で何回かお話にも出ていたのですけれども、AlphaFoldとかの論文を見ると、40人くらいとか著者がついていて、第1著者とか責任著者以外の人のコントリビューションというのが、多分、物すごくでかいと思っているんですけれども、さっき、そういった議論の中で、研究者のマインドセットを変えて、そういったところにもコントリビュートしてもらえるようにというようなお話を先生、されていたと思うのですけれども、それって、我々もAI for Scienceをやっているので、そこが結構悩みの種の1つではあって、若手にそこの部分をさせるというのは、結構、人材育成の観点では逆にマイナスなのかなという、そういったことも思っていて、なかなか若手の優秀な人に、僕らがメインになってやっている研究の、その論文の真ん中辺に著者が来るようなところのコントリビューションってすごいさせにくいなと思っていて、そこのところをどうお考えなのか。
 あと、多分、ソリューション、AlphaFold、ディープマインドみたいな、会社であれば、そういう人材ってパーマネントで雇っていると思うので、それでいっぱい確保がちゃんとできて、そういった人たちのその後の、アカデミアではない分野での、その後のキャリアパスというのもちゃんとしっかりしていると思うので、そういうことをやってもらえると思うんですけれども、なので、個人的にはそういった何か、ベンチャーとか企業と組むとか、そういうことがソリューションなのかなと思っているんですけれども、そういったところをどうお考えなのかというのと、もしそういったところで何か既に取り組まれていることがあるようであれば教えていただけると、と思います。よろしくお願いします。
【泰地プログラムディレクター】  ありがとうございます。まず実際に、キャリアの確保というところで取り組んでいるということは正直言うと、ないということになろうかなとは思います。理研の中ではいろいろリサーチプログラミングとか、そういうリサーチの、半研究的にやれる職位というところが、情報系ではいろいろ重要なのではないかという意見は述べてはいるところですけれども、まだ何か実現しているという状態ではありません。
 そうは言っても、今後のサイエンスの流れを考えていくと、かなりいろいろなものをAIでやるというふうな流れになってくると、むしろ、我々みたいなこのPIの価値というのはだんだんなくなってくるのかなとも思ってきていて、そうするとPIの組織力というところは、このAI開発の上では非常に重要なのだけれども、ある意味、そういうマネジメント的な部分というところと実際のリサーチの興味というところがだんだん分かれてくるのかなとも思ってきておりまして、長期的には割とこういう形でnon PIだけれども、かなり自律的に研究ができるというのが割と研究者の中では増えていくのかなとも、勝手には想像しているところですかね。そういうところに向けて少し研究組織の在り方の変化についても議論させていただければと思っています。
 今は、やはりAlphaFoldを開発するには40人、確かに生っちょろいと言うかもしれないけれども、もし今やるのだったらば、結構、AIに任せられるところも増えてきて、もっと少ない人数でできるかもしれないんですよね。そういうこともにらみつつ、考えていければと思っているところです。すみません、何か答えになっていないような感じなんですけれども、本当にこの後、研究社会は相当変わってくるかなとも思っていまして、コロコロ意見が変わりつつあるんですけれども、申し訳ないです。
【前田委員】  ありがとうございます。我々もすごく悩んでいるところですので、引き続きいい例を見せていただけるとありがたいと思っております。ありがとうございます。
【佐伯部会長】  ありがとうございました。
 すみません、次の議題も控えておりますので、手短にお願いいたします。上杉委員、よろしくお願いします。
【上杉委員】  京大の上杉です。では、次の議題に関係しそうな内容で質問させていただきます。先日、ビズリーチ博士というのができたのですけれども、それに実際、私、入ってみました。検索してみますと、本当にAI関連の求人が多いんですね。すごく求められている分野だと思うんですね。生産性を上げていくために求められている分野だと思います。それで、今回、泰地先生、お話しされたのは、ライフサイエンス、マテリアル、気候、防災分野でのAIの活用というのが言われていましたけれども、ほかにもいろいろな分野でAIと組み合わせるということができると思うんですね。そのような組み合わせがどんどんすすめば、AIを分かった上で何かの研究をしている人の人口が日本で膨大に増えて、その方々が産業で仕事を持って活躍します。その状態になるのが日本にとっていいと、私は信じています。
 それで、泰地先生にお伺いしたいのですが、文科省ができること、もしくは国ができること中で、この方向を推し進める政策としてどういうふうなものがあればいいなと思われますか。
【泰地プログラムディレクター】  ありがとうございます。我々のプロジェクトの役割というのは、やっぱりどっちかというと先導的に今後AIを使った成果を見せていくというところかと思うのですけれども、上杉先生がおっしゃったように、これをいろいろな領域で同時に進めていかないとまずい状況なのかなというふうにも思っております。
 特に本当に全ての研究科というか、全ての学部で、もうAIに取り組まなければいけないような時代になってきていると思っておりまして、そういうところをプロモートできるような何か仕掛けがあるといいのかなと思っています。そこはむしろ、AIの専門家を入れろというわけでは必ずしもなくて、今いる若い人は、それなりにちゃんとAIとか使えますので、そういう人に少し役割を与えて何か、教育等も含めてプロモートできるような仕掛けというのがあるかなというふうにも思ってはおります。
【上杉委員】  ほかにも、例えば次の話題にありますような科研費の中に何らかの仕組みを加える方法はないでしょうか。AIを使うと研究費が付加されるとかです。いろいろなやり方が、海外を見ているとあると思うんですね。ぜひ文部科学省の方々も考えていただいて、それを泰地先生と御相談して、ぜひ実際にAIの多彩な分野への組み込みが起こるような仕組みになってほしいなと思います。ありがとうございます。
【佐伯部会長】  ありがとうございました。
 続きまして、合田委員、よろしくお願いします。
【合田部会長代理】  泰地先生、ありがとうございました。すみません、時間をとってしまって。端的にお伺いさせてください。今回はライフ系のトピックに着目されていたという印象を受けたのですけれども、ライフ系のものとしては、どうやってライフ系がつながっているのかよく見えませんでした。特に材料とかロボティクスとかの対象となる組織は限られるかなとは思います。このプロジェクトにおいて、ライフ系を横につなぐ試みを何かされているのかコメントをお聞かせいただければと思います。
【泰地プログラムディレクター】  ありがとうございます。今回、まだライフ系の部分は、まだライフの場合は階層が少しございますので、やはりその階層に分かれて、とりあえずは進めているというような状況です。分子レベルのところから細胞レベル、それから、もう少し大きな組織ぐらいのところ、その上に個体コードのモデル、もちろん医療系とか、そういうような形で、今のところは、階層的に分けて進んでいるところです。
 ただ、これを長期的には、中期的ぐらいですか、大規模言語モデル等を媒介に様々なモデルをつないでいくということができると思っていまして、そこでどういうものが生まれるかというところは、やってみないと分からないのですけれども、もっと多くのモーダル全体をつないだモデルというのも作っていけるだろうと思っています。そうすると、すごくいろいろなことに詳しいAIができてきて、それがどういうふうに使えるかどうかは、やってみないと分からないですけどということになりますかね。
【佐伯部会長】  よろしいでしょうか。皆さん、活発な御質問、どうもありがとうございました。それだけAGISに対する期待が非常に大きいのではないかと思います。泰地先生、どうもありがとうございました。
【泰地プログラムディレクター】  ありがとうございました。失礼いたします。
【佐伯部会長】  では、引き続きまして議題の5、基礎研究の振興についてに移ります。議題5につきましては、資料5について文部科学省より御発表をお願いいたします。御発表後、委員より御意見等を頂戴できればと思います。
 では、御説明、事務局よりよろしくお願いいたします。
【葛谷推進官】  それでは、資料5に基づいて御説明いたします。この資料については、様々な有識者との意見交換などから出てきた基礎研究の振興に向けた仮説の1つとして取りまとめたものでございまして、今回、評価の視点からといったところでまとめております。
 次のページをお願いします。最初に表題のところで少し、表現としては端的な表現ですけれども、単刀直入に書いておりますけれども、研究者が測られやすい方向へ誘導される構造、こういったものが現在生まれていないかというところで、仮説としてこの3つの点でまとめております。まず1つ目が研究者の業績評価でございます。過度な競争的な環境における業績の評価、選任等において、例えば外部資金の獲得額とか、論文数、インパクトファクターとか、いわゆる過去の定量的な数値が参考にされていないか。研究者は定量的な指標を追求することで短期的な結果が出やすいような研究に誘導されてしまう可能性がないかというところを考えております。
 2つ目が研究費の申請・審査でございます。先鋭的な研究とかハイリスクな研究、こういったものはピアレビューが機能しにくいのではないか。また、申請段階においては、審査が通りやすいような、容易または達成可能性が高く見えるような研究テーマの選好が起きてしまっていないかといったような問題を挙げております。その結果、挑戦的な研究動機を阻害してしまう可能性はないか。
 3点目が審査・評価の重量化・複雑化でございます。審査・評価が多様な過程で評価制度が過度に重量化・複雑化することで、評価のための体制・実験・研究・ストーリーなどを生み出してしまうのではないか、審査コストも増大していないかといったようなことでございます。その結果、価値のある成果創出のための純粋な研究時間が失われている可能性があるのではないかということをまとめております。
 続いて、次のページをお願いします。それ以降は、今回のこの仮説に関連するようなデータとか、あといただいた御意見等をまとめたものでございます。まず、研究者・大学関係者の皆様の声ということで、15名の先生方からいただいた御意見のうち、本件に関係するようなものを抜粋しております。1つ目が評価制度に関する意見でございます。一番上でございますけれども、全く新しいことや自分と違うことをやっている人間をシニアがピアレビューすることは非常に難しいといった御意見や、その3つ目でございますけれども、サイテーションが多い論文を書くほうが人事的に得だというような若手の人たちの考えもあるといったような意見もあります。
 続いて、制度運用に関する声でございますけれども、一番上でございまして、研究費を獲得しても事務手続の手間が大きく、研究費が十分に生かされていないといった意見、続いて資源配分に関する声でございますけれども、2つ目のポツで、評価指標として重要なのは論文ではなくてシナリオである。科研費は従来の評価指標で言えば、JST系の補助金では社会が何を求めているか、技術より何が実現するのかといったシナリオが大事であるといったような御意見もいただいております。
 次のページをお願いします。次は関連するデータとして、日本の研究者が置かれている環境をまとめたデータでございます。これは国立大学の任期付教員割合でございまして、左が若手、右が中堅~シニアでございます。若手40歳未満につきましては、平成19年には、任期付は約4割でございますけれども、R5年度、約7割というふうに増加しておりまして、全体としても右側にございますけれども、任期付が24.5%、全体で38%ということで増加している傾向でございます。
 次、お願いします。続いて日本の研究を取り巻く諸状況ということで、こちらはNISTEPの定点調査、いわゆる科学技術の状況に関する総合意識調査でございますけれども、その中で挑戦的な研究を行う環境への不十分感というデータがございますので御紹介させていただきます。こちらはNISTEPの定点調査のQの301というところで、我が国の研究者が内発的な動機に基づき、新たな課題の探索・挑戦的な研究を行うための環境は十分に整備されていると思いますかといった問いに対して、こちら、大学グループです。NISTEPが論文ごとで分けている1から4グループとか、あと分野などにおいても大体3から3.5ということで、10点満点中、かなり厳しいデータとして出ております。十分度を下げた理由として右側でございますけれども、探索的でない課題選好型の偏重が起こっているとか、あと、下のほうでうまくいくか分からないこと、業績につながらない可能性があることに挑戦するのが年々難しくなっていると感じているといったような御意見もいただいております。
 次、お願いします。次は国際的に注目を集めている領域を示すサイエンスマップというNISTEPの報告書でございますけれども、その中のデータを見てみると、新たな研究の芽となる研究環境領域の参画が停滞といったようなものがございます。
具体的には、このサイエンスマップにおいては、スモールアイランド型の研究ということで、下のほうに、左下、少し御説明がございますけれども、入れ替わりの活発なもので新たな研究の芽となる可能性のある研究領域と言われているところでございますけれども、こういった領域について、真ん中の世界全体の領域では626から919ということで2004年、2020年で300領域ぐらい増えておりまして、その中でかなりのウエートを占めておりますこのスモールアイランド型の研究領域でございますけれども、2004年において日本は約70ぐらいございますけれども、その後、世界、上のほうを見てもらえると、かなり増えておりますけれども、日本は数が増えていないといったようなところでございます。一方、コンチネント型ということで、継続性がある規模が大きい研究領域、右側でございますけれども、こちらについては、日本は世界と同じような形で伸びているといったようなデータもございます。
 次、お願いします。続いて、日本の取り巻く諸状況ということで、こちらはアンケート調査やアカデミア側からの提言、そういったものをまとめたものでございます。まず1つ目が評価疲れのアンケートということで、平成6年に内閣府にて行われたものの結果の抜粋でございます。主な意見として上から1つ目です。現行制度では申請書の作成、審査に負担がかかり過ぎるといった御意見がございます。ただ、一方で下の真ん中の米印で、科研費については改善されているという声が大きかったといったところもございます。
 続いて、下の日本学術会議若手アカデミーの提言でございますけれども、提案者も審査員も審査に多大なエフォートを割き、双方に評価疲れとも呼ばれる過大なコストを強いている。例えばということで、その下のポツでございますけれども、明らかに不適当な課題をスクリーニングした上で残った提案からランダムに選択するスクリーニング&ランダムといった方式を導入するのもどうかといったような御意見もございます。
 次、お願いします。続いて研究評価改革に向けた世界の潮流でございます。まず1つ目が、皆様、御存じの2012年のDORAでございますけれども、この中ではインパクトファクター、個々の科学者の貢献を査定する際に代替方法としてインパクトファクターのようなジャーナルベースの数量的指標を用いないことといったような御意見がございますし、2015年、ライデン声明においても定量的な評価は専門家による定性的な評価の支援に用いるべきだといったような御意見がございます。また、2015年、2022年のそれぞれの提言においても、同じようなことが言われているところでございます。
 次、お願いします。続いてファンディングに関するアカデミア有志の提案ということで、こちらは2025年2月に138名の研究者の共著としてNatureに投稿された記事でございます。この中で研究ファンディングに関して意見が述べられておりまして、一部抜粋ということで、まず1つ目が研究プロジェクトではなく人に投資するべきではないか。2つ目がハイリスク、ハイインパクトな研究資金モデルを採用すべしではないか。あと、3つ目が研究資金を改善すべきということで、こちらは寄附や資産管理を通じて独自の資金調達をする必要があるといったような御意見がございます。あと、最後に単年度主義を見直すべきではないかといったような御意見が出ているところでございます。
 次、お願いします。次は公募・審査段階におけるバイアスを排除する実験的ファンディング、これは海外で行われている紹介でございます。先ほど学術会議の中での若手の提案がございましたけれども、それと似たような取組としてブリティッシュアカデミー、イギリスにおいて若手向けの少額ファンドでございますけれども、上位10%、下位34%の提案を、上位は採択で下位は排除した上で、それ以外の中間層の提案については無作為抽出の採択といったようなのが行われておりまして、結果、多くの応募者は公平な採択手段であると評価したといったような御意見もございます。
 次、お願いします。最後のページでございます。本日御議論いただきたい点を3つまとめております。1つ目が外部資金の獲得額やh-indexの定量的な数値というのは、研究業績に関係するものの、基礎研究の科学的成果を短期的かつ定量的に測定するのは難しいと思っております。その中で研究者の将来のポテンシャルを測定する観点で、挑戦的な研究構想など長期的な視点も考慮し、研究者の業績をどのように評価すべきかといった点、2つ目が研究プロジェクト評価において数値に頼った評価が行き過ぎると、研究者がその数値を追求するような構造が生まれる可能性がございます。一方、評価の多様化が行き過ぎると評価の重量化・複雑化が生まれてしまいます。こういった中、研究プロジェクト評価において最も重視すべき点は、どのような点かといった点。
 そして、最後でございます。審査効率の向上や審査バイアスの排除のため、日本においても、例えばでございますけれども、抽選によるファンディングとか、そういったような特殊な審査・評価形式を検討すべきかといった3点を挙げております。これはあくまで例示として挙げておりまして、これ以外の点についても御意見があればいただければと思います。
 事務局からの説明は以上でございます。
【佐伯部会長】  どうもありがとうございました。
 皆様方からたくさんの意見をいただきたいと思いますが、時間が限られておりますので、短めにお願いしたいと思います。質問のある方は挙手ボタンをお願いいたします。
 では、齊藤委員、よろしくお願いいたします。
【齊藤委員】  評価、とても重要なことなのですが、重要な論点が1つ、出発点として十分には明示されていないと思いました。研究力には全く別の2つの研究力の要素があって、1つは今の研究業界の状況を知って、そこに対してどう貢献していくかという種類のフォロー型の力と、それとは逆に今までにないようなものをボンと作る。そういう不連続な力があります。前半のフォロー型の研究は、h-indexとか、そういうものと非常によく関係していることがよく分かっているので、h-indexが全く無益というわけではなくて、こういう指標がないと評価する側というのは大変で大変でしようがないということになってきます。それだけで全て測れるわけではないというのはそのとおりで、じゃあ、その代わりにいい指標があるかというと、それは非常に難しい問題で、分野依存します。
 全ての分野に統一的な指標を作るというのは、ほぼ不可能なことなので、ローカルな分野ごとの細かい情報が絶対必要になってきます。日本の場合、これが非常に上手に働いていないのは、額が増えれば増えるほど広い分野での研究者で、みんなで審査するという仕組みになっているものが多いかと思う。多分、例外はERATOぐらいなのではないかと思いますが、科研費でも予算規模が増えれば増えるほど、いろいろな分野の人によいと言ってもらわないと通らない。結果的にそこはやっぱり人気投票になっています。評価を1個の尺度としてまとめようとしているところが非常に、出発点としてまずいのではないかと考えています。
 全く異なる2つの研究力があって、1つは研究メトリックが非常によい指標、もう一つは全くよくない領域で、そこは研究分野ごとの評価がむしろ重要になっていくというような構造になっている点がミソです。この辺ちょっとまたどこかで深い御議論をしていただく必要があるのではないかと考えています。
 以上になります。
【佐伯部会長】  齊藤委員、どうもありがとうございました。
 続きまして、髙野委員、よろしくお願いいたします。
【髙野委員】  ありがとうございます。私、イギリスのBBSRC、UKRIという国の、政府のそういうファンディングエージェンシーにアドバイザーとして関わっていまして、確かにイギリスも1つパワーポイントのスライドであったのですけれども、上10%、下10%、20%、もうちょっと30%以上を取り除いて、真ん中のその部分、20-30%ですか、中部のところを実は最近、その抽選にしようじゃないかという話がもう出てきています。これはやっぱりフェア、いかにフェアに皆さんファンディングが取れるかとともに、その評価が難しいということ、2つ取り入れて、そういう方向に向いています。そして、日本でそれが一番いいのかどうかは、今のところ、私としては言えないと思うのですが、トライアルとしてやってみるのもいいのかなという気がします。
 評価については、まさしくかなりの方々がおっしゃっていましたけれども、評価をいかに与えるための、ファンディングを与えるための評価、それとともに、そのプロジェクトが終わったところでその評価というのをいかに簡単にするかというのは、すごく重要だと思います。今、そうやって紙にいろいろ書き過ぎているのではないか。イギリスではオンラインシステムになって、書かないように、なるべく書かないようにする。もうボタンを押せば済むような感じで評価をするということもしています。ファンディングを与えるための評価ではなくて、プロジェクトが終わったときに、本当にうまくいったのか、いかなかったかという評価ですね。それをいかに簡単にするか。
 あともう一つ言っておきたかったのは、サイエンスですから、うまくいかないことのほうが多いんですよ、実を言うと。それを今の日本のリサーチャーは、どっちかというと恐れているのではないかという気がするんです。もちろんペーパーや何かにもつながりますし、いいデータが出ればいいペーパーが出て、それでうまくいく。でも、もしかしたらプロジェクトで、こう行きたかったのが全く違う方向に行って、それが物すごくいいペーパーになるということもあり得るわけじゃないですか。だから、そのリスク、それから、failureを怖がらないで、いかに応募、ファンディングが出せるかというのも重要なのではないかなという気がしました。どうもありがとうございます。
【佐伯部会長】  御意見、どうもありがとうございました。
 では、続きまして松尾委員、お願いいたします。
【松尾委員】  どうもありがとうございます。齊藤委員がおっしゃったことがまさにそのとおりだなと思っておりまして、やはり分野ごとに評価は異なると思うのですね。この部会で申し上げますと、暗黙の前提として何か基礎研究か自然科学研究が前提とされているような気がいたしますが、私自身は、社会科学系ですので、今後社会科学的な観点も少し考慮の念頭にしていっていただければなと思っております。
 御発表の中で、もっと多様な指標、評価基準が許容される一方で、審査の負担とか、そういった疲れとか、そういうのにも配慮しなければいけないというのは、ごもっともだなと思うのですけれども、全体のトレンドとしてやはり社会的なインパクトを研究で与えていくということも重視されている方向性なのだろうなと思っておりまして、少し思い出したのが、英国で教鞭を振るっている友人から数年前に聞いた話では、英国では研究成果の社会インパクトを結構重視していて、かつ、何年かに一度に行われる大学の評価にも、そういったものが活用されるというふうなことを聞いておりまして、インパクトも学術成果の狭い領域の貢献を超えて社会とか、経済とか、個人とか、組織とか、国家とか、そういったところに貢献していく側面もあり、それから、政策的なものへの貢献、人のビヘイビアへの貢献、何かいろいろなものへの貢献があり得るというふうなことを、学部生のときから、そういった意識づけのための研修みたいなのも行っているということでした。それを聞いて、やはりそういう社会インパクト、結構、重視しているのだなというのを感じました。そのResearch Excellence Frameworkというのが何かあるようで、社会インパクトを持つ研究の事例のデータベースなんかも備えているというふうなのを聞いたことがあります。
 翻って、日本のほうでも科学技術政策は、最近のムーンショットに代表されるように、Mission oriented innovation policyの方向性が、すごく強まっており、そういうのはミッションから遡って研究を考えるというふうなところがあるので、やっぱりそういう社会インパクトをどう考えるのかというのも、その評価に入っていくというところが必要になってくるのだと思うのですけれども、そこが何かまだ十分にelaborateされていないというところがあるかと思うので、そこら辺少し考えていく必要性があるのかなと思っています。そういう多面的な評価を許容しつつ、でも、疲れない。髙野先生がおっしゃっていたみたいに疲れないという、何か容易にできる評価、そのバランスをどうとっていくのかというのがすごく大事なのではないかなと思っております。
 以上です。
【佐伯部会長】  ありがとうございました。
 では、続きまして小板橋委員、よろしくお願いいたします。
【小板橋委員】  ありがとうございます。この領域を文科省がやろうと言ってくれたこと自体、大変ありがたいなと、思いました。やはり研究者は、髙野先生がおっしゃっていたように失敗していい環境にいるべき存在ですので、評価、評価となってしまうこと自体が、正直、評価って評価する側のイマジネーションを超えたものは評価できないと思うんですよね。なので、今後、チャレンジして、本当に簡単に申請できて、逆にできるだけ与えるための評価だったり、あとはうまくいくための評価、うまくいくためにどういうふうにやったらいいというアドバイス機能がついているというのが本来あるべき方向性なのではないかなと。産業界でもそういう方向になってきていますので、感じました。
 なので、ぜひ進めていただきたいなとは思ったのですけれども、資料の中で2点御質問がございます。スモールアイランドでしたっけ、研究の中でスモールアイランドとコンチネンタル型研究、日本がスモールアイランドが遅れているというか、伸びていないって、これ、科研費の配分と比較して見ていただけないですかね。研究費の配分がスモールアイランドをあまり重視しない方向、コンチネンタル型にばかり比重が行っていないか。だから、コンチに流れざるを得ない研究者も存在し得るのではないかと私は少し危惧しておりまして、研究費の配分、それがもう研究者のビヘイビアに、もしかしたら直結しているかもしれませんので、その辺りの調査もしていただけたらなと思いました。
 あともう1点です。任期付の研究員が増えているというお話もありましたが、これはなぜなのでしょうか。大学のことは分からないのですけれども、なぜ増えているのかを教えていただきたいです。
 以上です。
【佐伯部会長】  御質問、ありがとうございました。
 では、文科省のほうからもし何かございましたら。
【葛谷推進官】  1点目につきましては、コンチネント型の研究が増えているというのは、主に、あくまで明確な分析はないのですけれども、課題解決型の研究費、ムーンショットとか、そういったようなもの、内閣府側の予算とか大型予算というものが増えているというところも1つ挙げられているところでございます。他方で、科研費とかの配分というところについては、中でも議論していきたいと思います。ありがとうございます。
 2つ目の任期付研究員については、これは第2期ぐらいですか、科学技術基本計画の辺りからも強く言われているところでございますけれども、研究者というのは、若いうちは流動性、様々なところの研究の場で研鑽して、それによって研究力を高めていく。そういうことをしながら若手は研究力を高めていくといったようなところの政策もございまして、若手については、どこまでの割合がいいかといった辺りについては、明確には、その当時、出しておりませんけれども、任期付研究を若い頃はして、いろいろな場を、いろいろな機関とか、そういうところを回って、研究をしながら、やがてテニュアになっていくといったような1つのキャリアパスといったものがございます。こういったところもあって、今、こういう状況になっていると考えております。
 以上でございます。
【小板橋委員】  ありがとうございます。そうしますと、これは施策が成功したという形でお見せいただいたんですかね。どういう位置づけでお見せいただいたのか。
【葛谷推進官】  ありがとうございます。これは成功したというよりは、これ、明確に評価したものではないのですけれども、行き過ぎているところもあるのではないかといったような御意見もあって、若手の方々が挑戦的な研究をするというところでは、任期があると次のポスト、そういったもの、先ほど、1枚目のところのスライドでもお示ししていますけれども、研究業績ですか、評価というところで、いろいろなところで採用審査というか、いろいろな場で研究評価を見られていきますので、短期的な成果を求め挑戦的な研究を阻害している環境を生み出している可能性があるのではないかということで、がこの任期付研究員のデータから見ても少し進み過ぎているのではないかといったところもあって、本日は資料として出しております。
【小板橋委員】  ありがとうございます。あと、もう1点だけ、手短にお伺いさせてください。この同じ図で、若手研究員の数が減ってきているかと思います。私、ずっと前から大学院における学生さんの待遇がとても気になっておりまして、昨今、奨学金とかもらって続けられている方も多いのかもしれないのですけれども、やっぱり収入がない状態が20代、続くというのは非常に若い子にとってはきつい状況ではないかと思っていて、現状として大学院生の待遇に対して、いつか教えていただけたらと思います。
【佐伯部会長】  どうもありがとうございました。
 では、続きまして小泉委員、よろしくお願いいたします。
【葛谷推進官】  すみません。
【佐伯部会長】  今のですか。はい。
【葛谷推進官】  1つ補足がございます。
【中澤課長】  すみません、先ほどの任期付のところのデータなのですけれども、過去はやはり政策的に若手の流動性というところは強調していた時代もありますが、今の中では、非常に人件費が圧迫されている。これは若手のということではなくて、シニアも含めた全体の人件費が圧迫されている中で、大学というか、組織としてやっぱり安定的に後年度も含めた見通しのある予算というものをしっかり確保していく必要がある。
 そういった中で、なかなかそこが、例えば複数年度の予算、財源ということだとパーマネントな人件費の確保というところが厳しくなっているというところがあるので、その辺りは各大学、現場というようなところで、どういった取組ができるか。例えば人件費改革というようなところを組織としてもしていただいているのかなと。何とかして、そういった形で若手についてもしっかりとした、安定した財源の確保というところを取り組んでいただいているというような状況でございます。
【佐伯部会長】  ありがとうございました。
 小板橋委員、よろしいでしょうか。
【小板橋委員】  財源の確保をしているから任期付が増えているということですか。御説明の意味が分からなかったので。
【中澤課長】  失礼いたしました。財源の確保をしようと努力をしている。ただ、そこも限られた財源の中での対応ということなので、十分にそこが図られていない。これは大学現場の問題もありますし、我々の予算の配分の仕方、例えば基盤的な経費だとか、あるいは競争的資金を使いながらも、そこを安定的な財源として与えられるような仕組みだとか、そういったところは、これから検討していかなければいけない部分ではあると思っております。
【小板橋委員】  ごめんなさい。しつこいんですけれども、となると、財源の確保が難しいから、苦肉の策として任期付を選んでいる大学がとても増えているということですか。言い過ぎかもしれませんけれども。
【中澤課長】  そういった側面、残念ながらあるかもとも思っておりますが。
【小板橋委員】  分かりました。ありがとうございます。
【佐伯部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、小泉委員、よろしくお願いいたします。
【小泉委員】  ありがとうございます。文科省の問題意識、それから、これは本当に中澤課長をはじめの問題意識と、それから、一番初めに齊藤先生がおっしゃったことも全く同感ですし、これ、今回に限らず、深く議論していくべきことなのではないかなと思っているところです。
 その上で、コメントベースで2つありまして、1つは研究評価のところ、まず1つは大学とか組織としての研究評価と個々の研究者を評価するという評価軸というのを分けて考える必要があると常日頃思っていまして、それがごちゃごちゃになっているところがまた1つ問題なのかなと思っています。どうしても組織で見る、組織として見なければいけない評価軸、それから、個々の研究者のアクティビティ、挑戦的なことをやっている若手研究者を例えばどうやって評価するとか、それが何かごちゃごちゃになっているというところをちゃんと分けて考える必要があると思います。
 それからもう一つ、REFの話が出ていましたが、Research Excellence Framework、どこから話せばいいか分からないのですけれども、今日の資料の中で評価疲れという話が出ていましたけれども、REFに比べて評価疲れって何言ってんねんとすごく思います。例えばREFで、REFは本当に論文指標をある程度取りつつも抑えつつ、例えば社会インパクトを見る。Researchfishというデータベースを作ってやっている。僕自身もResearchfishでREFがやっているのと同じようにResearchfishに自分自身の社会インパクトを十何項目に分けて書いていかなければいけない。あれに比べれば、あれは本当、大変ですよ。
 やるほうも、データベースに入れていくほうも大変だし、そのデータベースを見て評価していくほうもすごい大変だし、それだけの、何か日本のこの状況に比べて、多分、REFがやっている労力ってめちゃくちゃすごくて、評価疲れというのは、日本のレベルに比べて本当に、UKは本当に真剣に評価しようとしている。それだけ時間とコストもかなりかけてやっているというところ、だから、日本の状況で評価疲れというとまだまだ甘いやって、すごく思います。逆にUKの連中に聞くと、そのResearchfishのことを悪く言ってはまずいのであれかもしれないですけれども、そういった仕組みに関して、いや、みんな嫌いだよ。これはもう大変だから嫌いなんだよ、ヘイツみたいなことを言うんですけれども、でも、彼らは研究者としてやらなきゃいけない。使命感がめちゃくちゃあります。
 評価をそんな論文指標でパッパッパッと、はい、何点、何点で終わりにしてというところではない、ちゃんと評価をしましょうということに対して、かなりの労力をかけてもやらなきゃいけないということの使命感をむしろ研究者が持っていて、そういったところの何か、この程度の評価疲れって言うなよってすごく、いや、UK、本当に大変なことを何年もかけて設計してやっているというところ、研究者そのもの研究のそういったところに対するコントリビューションへの覚悟というのも必要なのではないかなと思って聞いていました。コメントベースです。今後、いろいろディスカッションさせていただければと思います。
 以上です。
【佐伯部会長】  どうもありがとうございました。
 すみません、私からも少し個人的な意見を言わせていただきたいと思います。今回、文科省の方からいただいた資料、非常によくできていて、今後、どのようにしていったらいいのか、これはもう簡単には全然結論を出すのは難しいということですので、これからも引き続き議論を続けていっていただければと思います。その中でも、途中にも質問もありましたが、スモールアイランド型の研究は日本が非常にうまくいっていないというところもございました。これに関しては、私も以前のこの部会の中でも意見を言ったかもしれないのですけれども、裾野を広げるということが非常に大事なのだと思います。
 私、専門が数理科学なのですが、こういったあまり資金を必要としない分野、そういったところには少額でいいので多くの人に資金を配分する。そういったところから挑戦的な研究も掘り起こしていく、こういったことが非常に有効ではないかと思います。ただ、これはもちろん分野依存ですので、齊藤委員もおっしゃっていましたように、それぞれの分野で全然やり方が違うと思いますので、そういったところに気をつけながら今後とも、こういったことの議論を続けていっていただければと思います。
 ほとんど最後の時間なのですが、髙野委員、手が挙がっておりますが、何か御意見等ございますでしょうか。
【髙野委員】  簡単にREFのこと、私、イギリスで仕事をしていますので、少しREFについて。REFは大変です。物すごい大変です。Researchfishも大変です。でも、今、Researchfishをどんどん簡単にさせています。しかも、REFは全員が全員やらなきゃいけないというわけではなくて、チームがありまして、コミュニティ、そういう組織があって、その組織の人たちが各学部、学科内でやっているので、普通のリサーチャーにとっては、そんなに負担はかかっていないはずです。でも、その1つ1つのプロジェクトの評価というのは、また別だと思うんですよ。このREFは大学の評価ですかね。ちょっと話が別になってきて、プロジェクトの評価というのをどんどん簡単にしようとしています。もちろん、リスポンシビリティはありますから、お金をいただいたということで。
 でも、それをいかに簡単、しかも、そのインパクト、ソサエティに対するインパクトも与えている。そういうことをいかに簡単に評価できるかというのを考えて、今、皆さん変えようとしています。どんどん変えようとしています。それが必要なのではないかなと思うんですよね。そういうふうに、そのリサーチャーたち、一般のコミュニティに対してこういう希望が出たときに、どうその政府側というか、ファンディングを与える側がどう対応していくか。そのアジャイルに簡単ではなくて、どんどん簡素にしていくかという感じが一番重要なのではないかなという気がしました。すみません、簡単に。もっともっとこのことについてディスカッションできればいいのではないかなと思います。よろしくお願いします。
【佐伯部会長】  髙野委員、どうもありがとうございました。
 では、この議題に関しましては、皆さんいろいろ御意見、コメント等をお持ちだと思いますので、もしこの本日の部会の中で御意見等、機会がなかった委員におかれましては、終了後に追加コメントを事務局までメールで送っていただくことも可能でございますので、その辺りもお考えいただければと思います。時間が参りましたので、これにてこの議題に関しては、本日は終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 では、本日の議題は以上となります。基礎研究振興部会運営規則第7条に基づき、本部会の議事録を作成し、資料とともに公表することになっております。それでは、以上をもちまして第18回基礎研究振興部会を閉会いたします。本日は、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

研究振興局基礎・基盤研究課