基礎研究振興部会(第17回) 議事録

1.日時

令和7年1月31日(金曜日)9時00分~11時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 基礎科学力の強化に向けた今後の方向性
  2. 令和7年度政府予算案及び令和6年度補正予算について(基礎科学関係)

4.出席者

委員

観山部会長、佐伯部会長代理、有馬委員、上杉委員、小泉委員、齊藤委員、品田委員、城山委員、辻委員、長谷山先生、前田委員

文部科学省

研究振興局長 塩見みづ枝、大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当) 松浦重和、研究振興局 振興企画課長 生田知子、研究振興局基礎・基盤研究課長 中澤恵太、研究振興局学術研究推進課企画室長 松本昌三、科学技術・学術政策局研究開発戦略課戦略研究推進室長 神部匡毅、研究振興局基礎・基盤研究課 素粒子・原子核研究推進室 村松哲行、研究振興局基礎・基盤研究課 課長補佐 相川美紗、研究振興局基礎・基盤研究課 融合領域研究推進官 葛谷暢重

5.議事録

【観山部会長】  定刻となりましたので、ただいまより第17回科学技術・学術審議会基礎研究振興部会を開催いたします。
 本日の会議ですが、本部会運営規則に基づき公開の扱いといたしますので、御承知おき、お願いいたします。
 まず事務局より、本日の出席者と議題の説明などをお願いいたします。

【葛谷推進官】  本日の事務局を担当しております、文部科学省基礎・基盤研究課の葛谷でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、本日の委員の出欠状況でございまして、現時点では13名中11名の委員の方に御出席いただいております。合田委員、美濃島委員におかれましては、本日、御欠席の御連絡をいただいております。
 続きまして、配付資料を確認いたします。資料、議事次第の配付資料一覧のとおり、事前にメールにてお送りしておりますが、欠落等ございましたら、画面越しで手を挙げてお申し出いただければと思います。
よろしいでしょうか。御確認、ありがとうございます。
 続きまして、本日の議題について御説明いたします。事務局の中澤課長より、よろしくお願いいたします。

【中澤課長】  委員の皆様方、おはようございます。基礎・基盤研究課長の中澤でございます。本日、よろしくお願いいたします。
 本日の議題は、2件ございます。はじめに議事次第の2つ目の議題、「議題(2)令和7年度政府予算案及び令和6年度補正予算について」ですが、これまで基礎研究振興部会で昨年の夏の概算要求に際して御意見いただいた部分、あるいは基礎研究振興という観点で関連の深い予算の幾つかの事業について、状況を御報告をさせていただきたいと思っております。令和6年度補正予算は既に政府として、それから、国会を通して決定されているものでして、また、令和7年度予算も政府予算案としては決定しているものではございます。今回の国会で審議されるものではございますが、今後の運用、あるいは再来年度、来年度に向けた予算に対してという観点でも御意見、あるいは御質問いただければということで考えてございます。それが議題(2)でございます。
 先にさせていただく議題(1)は、将来に向けての話でございます。基礎科学力の強化に向けた今後の方向性ということで、こちらは再来年度、2026年度から科学技術・イノベーション基本計画の第7期が始まりますので、これから1年間かけて、政府としてこの5年間の科学技術・イノベーション基本計画について議論していくことになります。今回は、学術研究あるいは基礎研究等を担っている研究振興局として、今考えていることの粗々の話でございますが、御説明させていただいて、皆様方、先生方から闊達な御議論、御意見いただければと考えてございます。
 私からの説明は以上です。

【葛谷推進官】  ありがとうございました。
 事務局からの説明は以上でございます。観山部会長、続いて議題1、よろしくお願いいたします。

【観山部会長】  それでは、議事に入りたいと思います。まず、議題1、基礎科学力の強化に向けた今後の方向性でございます。まず、文部科学省より御説明をお願いします。この発表の後に委員の皆様から御意見をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、お願いします。

【生田課長】  振興企画課の生田でございます。おはようございます。資料1に基づきまして、先ほど事務局の中澤課長からありましたように、7期に向けた振興局内での検討状況を取りまとめた資料につきまして、簡単に説明させていただければと思います。
 なお、同じ資料を、実は2日前に開催されました学術分科会、及び科学技術・学術審議会の総会でも出しておりまして、観山部会長もまさにそうなのですけれども、既に聞かれている委員の方もいらっしゃるかと思います。その場合、少し重複するところもあると思うのですけれども、お許しいただければと思います。
 それでは、早速ですけれども、中身に入らせていただきます。2ページ目をまず御覧いただければと思いますが、こちらにつきましては、昨年の夏、学術分科会といたしまして、7期に向けた意見としてまとめていただいていたものとなっております。下半分、3つの柱に分かれておりまして、(1)として、研究者、個人に対する支援の在り方、そして(2)としては、大学等組織のマネジメントの改革に係る内容、(3)といたしましては、研究大学群ということで、その全体としてネットワークをどうしていくのか、そういう形での柱立ての御意見を頂戴していたところでございます。
 また、次の3ページ目でございますけれども、こちらはこの基礎研究振興部会で同じく夏に7期に向けた意見として頂戴していたもののおさらいでございますけれども、基礎研究の価値ですとか、その社会的意義・価値化、そして基礎研究の更なる進展に向けた研究DXの推進、このような御意見を頂戴していたというものでございます。我々としては、このような御意見を踏まえながら、少し省内で議論して取りまとめたものを、この後説明させていただければと思います。
 5ページ目以降、少し科学技術・イノベーション政策を取り巻く現状として数値などを見ていきたいと思っております。5ページ目は論文指標、この論文指標についても様々な箇所で論文だけが研究の成果ではないのではないかというような御指摘をいただいておりますが、1つの指標としてその状況、我が国はどうなのかというのを振り返っているものでございます。5ページ目は、あくまで絶対値として論文数及びTop10%論文数、そして右端がTop1%の補正論文数の経年変化を各国別に記載したものでございます。御覧のとおり、実はこれ、左の軸と右の軸でスケールが違っていて、中国、アメリカはより一層大きいというものが見えるのですけれども、その中でも日本も一応、全体の絶対値としては、論文数は増やしてきていると。
 ただ、Top10%、いわゆる質が高いと言われるような論文数については、上がり方が停滞気味で、一時期下がっていたけれども、最近は下げ止まりが見えるというような傾向かと思っております。一方で、今度は相対的な位置づけを見たのが次の6ページ目でございまして、こちらのほうは各国の順位を表したものでございます。言うまでもなく、論文数はもちろんでございますが、その下半分、Top10%の補正論文数の順位が、日本は4位から13位へとかなり落ちてきてしまっている。これがよく言われる相対的な研究力の低下と言われる原因かと思っております。
 今度は、その論文数だけではなくて、7ページ目以降で、新しい研究領域を日本として生み出すことができているかどうかといったものの1つの参考になるものではございます。7ページ目、サイエンスマップは科学技術政策研究所というNISTEPが出しているものでございますけれども、その最新のデータを提示しております。サイエンスマップは、簡単に申し上げて、この左のように4つの領域に分けております。いわゆる研究領域をペニンシュラ型、スモールアイランド型、アイランド型、コンチネント型という形で4つに分けておりまして、右のグラフのスモールアイランド型、これがいわゆる新たな研究の芽となる可能性のある研究領域。一方で、下の茶色のところ、コンチネント型、継続性があり規模も大きい研究領域というような傾向が言われているものでございます。
 次の8ページ目を見ていただきますと、では、そのスモールアイランド型及びコンチネント型等々の領域の割合が経年変化でどのように各国と比較して変化しているのかというものが表したものでございます。左のほうが2004年で、右のほうが2020年のものでございますが、全体を比較するのもそうなのですけれども、一番右端の中国及びその隣の日本を見ていただきますと、見た目がそこまでという感じではないのですけれども、中国の場合は、下の茶色のところのコンチネント型、この割合が減っているのに対して一番上のブルーのところ、スモールアイランド型が増えている。これに対して日本は逆の傾向を示していて、スモールアイランド型がこの20年間の間で割合として減っていて、一方で、コンチネント型が増えているというような相対的状況というのが明らかなところだと思っております。これだけで言えるかどうかというのはありますが、各国の比較で見たときに、新しい研究領域、研究の芽となるようなものを相対的に日本がなかなか生み出せていないのではないかと思っております。
 同じようなデータといたしまして次の9ページ目、こちらは東京大学の坂田先生及び浅谷先生の研究室が研究として行われているデータをこちらで拝借しているものでございます。こちらも、いわゆるTOP100の成長クラスタ、これはScopusの論文データベースを使っておりますけれども、その中でいわゆる成長領域、論文数が急激に増えている領域というものがTOP100の成長クラスタと定義されております。
 そのTOP100の成長クラスタに含まれる論文の数が多いか少ないか、その論文数順位の上位を日本がどれだけ占められているかというものを2001年から2021年に経時的に見ているものでございまして、ざっと見ていただきますと、このブルーの棒グラフ、これがTOP100の成長クラスタをどれだけ日本が占めているかというものでございますが、見ていただくと、2001年から2021年に向けて、2001年はTOP3にそれなりに色の棒グラフがついている。一方で、一番下になってくると、それが如実に右側にシフトし、TOP3までの間にはランクインできていないというような状況が見て取れます。これに対して中国は、まさに逆の傾向を示しておりまして、昨今の2021年度は多くの領域で1位の座を獲得できている。これはいわゆる成長領域と言われるところに日本がなかなか参画していけていないというような状況が見て取れるのではないかと思っております。
 続いて10ページ目、11ページ目、この辺りからは大学の状況を見たものでございます。10ページ目は、こちらはよく見られたことのあるグラフだと思いますけれども、日、独、英のTop10%の論文数、これを大学との比較をしたものでございます。これを見てみると、日本は丸で、英国が四角、ドイツが三角でございますけれども、トップ層の大学、これは明らかにイギリスと大きな差がある。それに続けて、いわゆる上位に続く層と言われますけれども、その大学についてはイギリス、ドイツ、どちらと比較してもある意味、一番下に位置づけられている。だから、トップ層の大学をいかに引き上げるかと同時に、上位に続く層の大学をどのように引き上げていくか、この両側面で我々課題を抱えていると認識しているものでございます。
 これを、もう少し細分化したものが11ページ目でございます。一番左端に大学分類と書いてございますが、これはNISTEPの分類によるものでございまして、論文の数をたくさん出している割合の高い大学を第1、その順番に第2、第3というふうに位置づけているものでございます。第1グループが4大学含まれておりますが、逆に4大学だけにもかかわらず、この上の赤いところで囲ってある部分でございますけれども、運交金全体に占める割合が2割以上、さらに皆様、御承知のように国際卓越研究大学、さらにはJ-PEAKS及びWPI拠点等々の拠点支援事業というのが主にこの第1、第2グループの大学に支援が行っているという状況が見て取れます。
 一方で、個人の研究者を見てみますと、右端2つのところに科研費及び創発的研究支援事業というものを並べておりますけれども、第3グループ、第4グループにいらっしゃる研究者が結構な割合でこの科研費等々を獲得しているという状況も見て取れます。いわゆる先ほどの話ではございませんが、トップの大学だけではなくて、ある意味、この第3、第4グループに所属しているこの研究者でもかなりそのポテンシャルがあるというのが、この結果から見て取れると思っております。
 次の12ページ目のグラフも同様のデータでございますが、日本、イギリス、ドイツを比較したときに、左下の表にある通り、相対として大学の数は日本がかなり多いという状況があるものの、日本の場合は第1、第2、第3、第4グループとグループ別の色分けされたグラフでございますけれども、同程度の論文の産出量の規模を持っている。これに対してイギリス、ドイツは、ある意味、第1、第2にかなり偏った形である。この状況を踏まえながら、我々政策としてどういくかというのを考えなければいけないと思っております。
 一方で、現状の現場はどうかというのが13ページ目でございます。13ページ目は、大学の教員レベルで見た研究開発費の時系列変化を表したものでございます。グラフがたくさんありますが、上半分が1人当たりの均等配分、下半分が対数正規分布を用いたものでございます。似たようなものでございますが、どちらを見ても20年以上前から、今に至るまでの間でかなり1人当たりの自己資金は減ってきてしまっている。この右側のグラフのブルーの線グラフがいわゆる自己資金が50万円未満の教員の割合を表したものでございますが、こちらは逆にかなり増えてきてしまっているということが状況として見て取れます。
 一方、全体の研究活動の状況はどうかというのが14ページ目でございまして、こちらは1920年から2012年の時系列、少し古いのでございますけれども、論文を1本書くに当たって、どれだけの共著者がいらっしゃるかというものを表したものでございます。昔は、論文は1人で書く個人型研究が主流であったのに対して、2012年には5.3人となっており、現状はさらに多いかもしれませんし、また領域によっても違うかもしれませんが、一般的にチーム型研究というのが主流になってきているというのが現状だと思っております。
 さらに、研究動向をめぐる動向としまして、この先ほど御紹介した夏の基礎部会でもDXの影響を御議論いただいたかと思いますけれども、研究手法が大分変わってきているというのが見て取れます。こちら、特に材料開発の事例を持ってきておりますけれども、研究サイクルの加速ですとか、新発見の加速といった状況にあり、これは別に材料開発に限らないと思っております。下半分、いわゆるデータ駆動型の材料研究開発の状況、左が論文数、右が研究者数、これを時系列に見たものでございます。見ていただきますと、中国、アメリカが左側のグラフを見てもデータ駆動型の材料研究開発においてかなりリードをしている。これに対して日本はなかなか追いつけていない。また、右側は研究者の層を見たものでございますけれども、アメリカ、中国が圧倒的にデータ駆動型の材料開発に従事する研究者を増やしているのに対して、日本はそこそこといったような状況が見て取れるかと思います。
 ここまでが現状認識としまして、我々は、このようなことを踏まえて次の第7期にどのようなことを打ち出していくべきかということを考えたものを17ページ目以降に提示しております。まず、17ページ目以降、7期を考えるに当たりまして、これまでを少し振り返っております。第5期、これは御案内のとおり、このときから初めて我が国が目指す社会像として、Society5.0というものが提唱されました。続く第6期におきましては、その具体化を目指すということに続いてきております。それでは、次の第7期はどうかというところでございますが、続いて18ページ目を見ていただきますと、言うまでもなく、その実現は道半ばではないかと。さらに加えてという形になると思うのですが、足元では国際情勢とか、社会構造の変化の加速によって、1人1人将来に対する漠とした不安というものが高まってきているのではないかと認識しております。
 さらに国際競争というものを見てみます。18ページの下半分に2つのグラフを載せております。今後の経済社会活動の主役となるような先端技術の具体例としてAIで提示しておりますけれども、左側がその研究領域、2016年は43だったものが、2020年には約3倍の121に盛り上がっていることに加え、右側は、その研究成果の社会実装ではないですけれども、その市場、生成AI市場の伸び率というものを見たものでございますけれども、将来的に2027年には1,200億ドルにまで達するのではないかといった形で、各国とも熾烈な研究開発競争が繰り広げられ、さらに市場の競争というものも同時に起こっているということがここで見て取れるかと思います。
 そのような中で、19ページ目でございますけれども、我が国が国際社会でプレゼンスを発揮して、国民の誰もが安心して豊かに暮らせる社会、これを実現するためには、こういった先端技術における優位性、これをしっかり獲得して、さらにそれを技術だけにとどめず、イノベーション及び社会につなげていく、それが必要不可欠ではないか。昨今言われているような戦略的自律性・不可欠性、そういうものの確保を通じて揺るがない頑強な国の力を蓄積していくということがまず1つとして重要ではないかと思っております。
 さらに、それだけではなくて、2つ目のところでございますけれども、現在、予見されているものに限らない、予期せぬ事態―自然災害、感染症の蔓延―これももちろんそうですし、ほかにもあると思います。また、社会の不連続な変化、こういったものにアジャイルに対応して、変化への対応というのを日本がリードしていく、そのためには将来の競争力の源泉への先行投資をどれだけ行えるかというのが重要ではないか。これをイメージとして図式化したのが、この下半分の図でございますけれども、円柱の縦軸、揺るがない国の力を蓄積する。これが赤いところ。一方で、それだけではなくて、この横軸、アジャイルに対応できるようなフレキシブル、いろいろなものを携えておく、この両軸をしっかり日本という国を経営していかなければいけない、そのように思っております。
 この右側に丸が書いてあって、上赤、下青で書いてございますが、これも同じことを申し上げておりまして、上のほうは、いわゆる世界各国の競争にもしっかり勝ち取っていく、一方で、それだけではなくて、次の種というものをしっかり蓄積していく先行投資が必要だというものを表したものでございます。
 では、そんな中で20ページ目、日本のアカデミアに何が求められるかというところでございます。まず、研究と社会・ビジネスの距離、これが本当に近接してきております。そのような状況も踏まえれば、当然と言えば当然なのですけれども、社会からの要請を意識した研究ですとか、研究成果をしっかり社会実装していくといったことに対して、大学ですとか研究者、アカデミア総体としてしっかり関わっていくこと、これはこれで期待されると思っております。
 ただ、当然、それだけではなくて、この下にイノベーションのピラミッド、こちら、東大の合田教授のプレゼン資料を基に書いているものでございますが、いわゆる科学の上に技術、技術の上にイノベーションというものが乗っかっている。つまり、ゼロイチをしっかり生み出すということも必要だと。それができるのはアカデミアの中核、知的好奇心にほかならないのではないかと思っております。ですので、日本のアカデミアが日本のみならず、世界、そしてアカデミアのみならず産業界をも先導する知のハブとして科学研究における革新的な発見を生み出す、これが重要ではないか。それによって日本全体の発展、これにつながっていくと考えているものでございます。
 なお、このイノベーションのピラミッドの図でございますけれども、ともすると、この直線で科学があって、技術があって、イノベーションというようなふうだけに思われるのですけれども、当然、そうではなくて、この間は行ったり来たりがあるというのは承知しております。ただ、結局、この科学のところへの投資というものが欠けてしまうと、この右下にあるように全体としてのひずみが出てきて、イノベーション力も実態としては減ってしまうのではないか、そのようなイメージを表しているものでございます。
 続いて21ページ目、もう少し政策レベルに落としたときに、目指す姿は何なのかというところでございますが、アカデミアが、開かれたハブとなることで多様な人材、これは研究者のみならずというような意図を込めておりますけれども、多様な人材が組織や分野を超えてチームで協働し、新たな知を創出する。それと社会的価値の顕在化を図る。この好循環を実現していくことが必要ではないかと目指す姿を規定しております。その上で、大学という組織のポテンシャルと、個々人のヒトというポテンシャル、これを相乗的に発揮させる研究活動の血液となるアクションとして下3つに分けておりますが、1点目は新しいサイエンスを生み出す機能をいかに強化するか。2点目は、日本全国各地にいらっしゃる意欲・能力のある人材のポテンシャルを引き出す。それによって日本全体としての研究の質・量を最大化させる。この観点が必要ではないか。3つ目、こちらも昔からよく異分野融合と言われているのですけれども、真の異分野融合ですとか、あと様々な壁を超える、セクターを超える、その協働の促進で複雑化・高度化するような社会課題へもしっかりと応えていく、このようなことが求められるのではないかと整理しております。
 続いて22ページ目が、もう少し落とし込んだ内容になっております。今後の検討の方向性として、3つの軸に分けておりまして、こちらの3つの軸は冒頭申し上げた学術分科会の3本の柱から出てきているものと同様でございます。1本目は新たな知・社会的価値が創出される大学の実現、大学組織に対するもの。最後の3点目は、新たな知を創出するヒトへの投資、これが個人の研究者に対するもの。そして2番目の柱、組織・分野・セクターの枠を超えた研究ネットワークの構築、これがいかにその横軸全体としてつなげて日本の研究力を上げていくかというもの。この3つに整理しております。
 最初の1点目は、昨今、国際卓越ですとか、J-PEAKS、そういったものを国としても先導してまいりました。その研究大学の研究・経営システム改革というものは引き続き伸ばしていくことが必要ではないかと考えております。それに加える形で、競争的研究費を獲得している意欲・能力のある研究者がしっかりとその研究に専念できるようにしていく、そういう大学のマネジメントを支援していくことも必要ではないかと考えております。現在、創発事業では、そのような制度設計になっておりますが、こういったものをより拡大できないかということを念頭に考えているものでございます。
 2点目としては、組織・分野を超えた研究ネットワークの構築ということで、高度な研究環境、研究環境というのはファシリティのみならず、研究支援、研究コンサル、そういったものを提供している大学共同利用機関、これを中心とした組織・分野を超えた研究ですとか、人材流動の中核、そういったことになるための共同利用・共同研究システムのハブ機能というものを強化していくことが必要ではないか。さらに、設備共用事業は、昨今、分野別にも行われておりますが、そういった基盤を充実するということが、ある意味、投資のレバレッジを効かせるということにもつながるのではないかと思っております。
 また、意欲・能力がある研究者は、先ほどのデータにもありましたがいろいろな大学に点在しているといったことを踏まえまして、こういったハブ機関を結節点としてセクターを超えた研究活動を促進する新たなファンディングの仕組み、個人に対する研究支援と、そういうハブ機関に対する研究支援、そういったものをマッチングさせる形で新たな仕組みというものができないかということを念頭に置いております。
 3点目としては、これは個人への投資でございまして、従来の科研費、これについては言うまでもなく、質的・量的な充実を図るということが重要だと認識しております。それに加え、競争的研究費自体の質を向上させるために、先ほど、如何に新しいサイエンスをどう生み出すかということが課題だと申し上げましたが、そういった方向へ審査の仕組みですとか、工夫をしていかなければいけない。さらには負担というものをいかに軽減していくか、これも重要だと認識しております。
 好奇心に基づく研究活動に対する社会からの投資拡大、こちらについては、昨今、産学連携とかで出口に近いものに対して産業界からお金を取ってこようという流れはかなり進んでいるかと思います。ただ、それに限らず、いわゆるキュリオシティ・ドリブンに基づくような研究、これについてももっともっと社会から関心を集め、社会と対話しながら、しっかりお金を取ってくる。取ってくるという言い方はあれですけれども、社会とエンゲージメントしながら投資を入れ込んでいく、そういったことも必要ではないかと考えているものでございます。
 以上が、我々がこれまで中で検討した内容でございまして、23、24は今申し上げたことを少し概念図にしたもので、さらにその先は参考資料でございますので、説明は割愛させていただきます。以上でございます。

【観山部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、少し時間がありますので、この説明を踏まえて先生方から御質問や御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。有馬先生、どうぞ。

【有馬委員】  幾つか考えるところがあって、まず、いろいろ見せていただいたデータの中で、割と衝撃的なのは、新しい分野の中でTOP3に入っている分野は、日本はもうほとんどないということで、結局、それは新しいことにマスとしてチャレンジしている人がいない。人ではないのかな、グループがいないということだと思うんですね。それには多分幾つか原因があるとは思いますけれども、例えば、そのときにサイテーションが多い論文を書くほうが人事的に得だという若手の人たちの考えなどもありますし、それから大学に限って言うと、専攻などは認可制なので、事業の内容などを変えることはなかなか難しいというところもあり、さらにそこに基づいて人事が行われたりする。どのように変えるのかということは、手は幾つかありますけれども、それが1つ思うことです。
 それから、いろいろな装置など、高額なものが増えてきたということが2番目の共同利用・共同研究システムだと思います。これに関しては科研費の話がありましたけれども、今までは科研費で個人研究に関する装置を買って、その人の装置になるというスタイルだったのですけれども、ちょっと違うスタイルで考えて、例えば科研費を取った人が、その組織のそういう装置を買うお金の一部として出すことが可能になる、あるいは今でもできるのですけれども、その組織の何人かが共通で欲しいものを、科研費を合わせることで高額のものが買えて、共同利用できる。あるいはその共同利用を支える人の人件費に回せる。何人かが同じような装置を使いたいということであれば、共同利用がうまく進むということなので、何人かが科研費を出して、維持に回る、あるいは装置の更新に回るみたいなスタイルが可能なシステムを作れないかなということが2点目です。
 まだまだ幾つかあるのですけれども、私ばっかりしゃべるのもあれなので、まず2点、お話ししたいと思います。御提案というか、検討してみたらということでお話ししました。以上です。

【観山部会長】  事務局、いかがでしょうか。

【生田課長】  ありがとうございます。まさに有馬先生がおっしゃったように、1点目について、まず新しい分野が生まれない理由が、多分、幾つか構造的な問題があると思っておりまして、学内の問題及び制度上の問題もしくは文科省側の制度の問題、いろいろなところのレイヤーで考えて、同時に変えていかないと進まないというふうに我々も承知しております。ぜひその現場の声もいただきながら、何ができるか、やれることから進めていきたいなとは思っております。
 2点目についての機器の共用も、まさにおっしゃるとおりでございまして、言っているだけでは多分進まないので、こういったものを競争的研究費の資金改革、そういったものと連動させながらでないと、多分進まないと思っております。科研費については、研究費部会のほうでもまさにいろいろ議論されておりますので、少しずつ理想的な形に近づくように進めていきたいと思っております。

【観山部会長】  小泉委員、お願いいたします。

【小泉委員】  ありがとうございます。朝から生田課長の熱弁をお聞きしてすごく元気になったところです。ありがとうございます。元気にはなっていないですね。危機感というものをすごく共有させていただいたところです。
 僕からも幾つかあるのですが、まずは2つほど、まずは現状の認識のところなのですけれども、ドイツとイギリスと日本を比べて、セカンドティアのところが全然厚みが違うというお話がありましたが、実はこれ、僕の認識だとそのとおりなのですけれども、日本はロングテールについては、ドイツや、イギリスよりも良いのだと思います。これは、40大学ぐらいまでしか載っていないので、もう少し先まで見ると日本のほうがよくなる。おっしゃるとおり、例えば創発の研究者などが全国に散らばっているわけですね。だから、そのロングテールのところにいる研究者、ちゃんと力を持っている人たちがそこにいるということは、日本のある種、宝になっている。
 ここに見えていない部分のロングテールに、しっかりと良い研究者がいるというところが日本の力になっているべきところなので、そこをいかに支えるかということがすごく重要なのだと思います。生田課長が御指摘のように、例えば、大学共同利用機関が本来のミッションである共同利用をサービスとしてしっかり提供していくということや、また、コンサルテーションをしっかり行っていくことなどによって、全国に散らばっている、そういったポテンシャルを持った研究者をしっかりと支えていく仕組みというのがあれば良いのかなと。そこをきちんと努めていくことが良いかなと思っています。それが1点。
 それから、先ほど有馬先生のお話にもあった、中国は今、トレンドの一番ホットなところにたくさん集中しているということなのですが、これはトレンドというより、僕の見方だと、トレンドに乗れているかいないかではなくて、トレンドを作り出せているか作り出せていないかだと思うんですね。マッチポンプ的な部分があって、自分でトレンドを作り出して、そこにたくさん集中しているから乗っているように見えるというか、自分で作り出したところに自分で乗っているだけという、自分でトレンドを作り出せているか、作り出せていないかという部分なのだと思います。既に存在しているトレンドに乗るか。だから、結局、日本は、先ほども話があったかもしれませんが、トレンドのフォロワーになってしまっていて、どなたかの研究でもありましたけれども、「アメリカで流行っているものの2年後を追いかけている日本」みたいな形になってしまっているんですね。
 いや、そうではない。トレンドを作り出して、そこがトレンドになれば、我々が一番になれるわけで、そういったトレンドを作り出す能力といったものがなかなか難しくなっているのかなと。そういった中で、今回の御提案の中で少し気になるのは、日本がだんだん世界的な研究ネットワークの中からは見えなくなってきているようなところがあったり、世界的な頭脳循環の中から日本が取り残されてしまっているのではないか。そういった、世界的なネットワークの中で存在感を示し、トレンドを作り出していくというところに日本は入り込むことができなくなっているように思います。
 なので、国内でとにかく頑張ってトレンドを作り出す、新しい分野を作り出そうということもそうなのですが、ここはもう世界的なネットワークの中で、我々がストラテジックにリードして、トレンドを作り出すことを国際的な中でしっかりやっていかないといけないのかなと思ったところです。まずはその2点、御指摘させていただきます。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 何か事務局からコメントありますか。

【生田課長】  ありがとうございます。まさに1点目は、そのとおりで、この裾野が広いという日本の特徴を生かした施策をどうすべきかというのを我々は考えていきたいと思っています。
 2点目の国際という点も、おっしゃるとおりでして、個人への研究費支援の在り方でも、例えば科研費では来年度から国際という観点をしっかり入れていこうということですとか、あと今後やっぱり国際ネットワークの中にいる日本人というものをしっかり引き上げていくということ、そういったこともやっていきたいと思っていますし、もしくは組織としても、これまでもWPIとか、そういったものをやってきておりますが、あと共共拠点も国際共同利用・共同研究拠点という形で進めてきております。組織、個人、両者の支援の在り方から国際頭脳循環の中に日本がしっかり入っていけるようにというようなものを展開していければと考えてございます。ありがとうございます。

【観山部会長】  それでは、城山委員、それから、次に齊藤委員、お願いします。城山委員。

【城山委員】  どうもありがとうございます。大きな位置づけの話について確認をさせていただきたいのですが、16ページ以降のところで、これまでの議論としてSociety5.0があり、それを進化させてWell-beingだとか、セーフティなどを行っていますよというのが第6期までの総括としてあって、それに対して今後どうなのかということが、17、18ページ辺りの位置づけだと思うのですが、1つは先端技術領域で競争が激しくなっていますよという理解でよろしいでしょうか。
 そういう意味で言うと、社会課題というのもあるのだけれども、要するに基盤となるような先端技術の話をもう1度ちゃんと見なければいけないんですよというのが17ページのメッセージで、18ページのほうは、ある種、これは社会課題の延長なのかもしれませんが、予期せざる事態みたいなことにも対応できる。つまり、個別のWell-beingとかセーフティとかいう話だけではなくて、もう少し多様な課題にアジャイルに対応する必要がありますねという、17と18ページは、そういうメッセージかなと読んだのですけれども、この2つがどういうふうに関わってくるのかという辺りについて、お考えがあれば聞きたいというのが1つです。
 それからもう一つは、今の有馬先生と小泉先生の話を伺いながら思ったのですけれども、そういう話を端的に総括すると、新しい領域が開拓できていないとか、そのトレンドを作る能力ということを言われたと思うのですが、確かに両先生御指摘のように、今回の資料の15ページ以前の部分においては、すごくインプレッシブな部分だと思うのですけれども、この話が大きな問題意識の中にうまく入り込めるといいのかなという感じがしました。
 そういう意味で言うと、17ページ辺りの書き方は、AI等である種の物量作戦というか、競争が激しいですよと。それに対応しなければいけないというニュアンスの書き方なのですが、もちろんそれは、否定はしないにしろ、もうそれだけではなくて、むしろ、将来の新しい領域みたいなところを開拓していくということをきちんと行うことが、少なくとも中長期的に日本にとってはかなりクリティカルなんですよという。基礎研究振興部会であることも含めて考えると、何かそういう側面をもう少し強調していただいたほうが大きなストーリーとしていいのかなという感じがしました。2つ目は意見です。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございました。非常に重要な指摘だと思います。
それでは、齊藤委員、お願いします。

【齊藤委員】  まず質問なのですが、10ページのデータは、これはファーストオーサーの、これは何でしたっけ。これは筆頭著者なんですか、それとも論文に1つでも名前があればという図なのでしょうか。
【有馬委員】  これは分数カウントです。私、他の議論の際に聞きましたので。
【齊藤委員】  そうなんですね。
【齊藤委員】  基本的に研究力をどう測るかの議論で基礎データを使うとき、慎重にならなければならないのは、普通に論文をたくさん出しましょうということだけを考えると、基本的にはリソース量に必ず影響されるので、経済状況に非常にリンクしているので、日本の論文量はしようがない面がある一方で、論文として世界共同研究というのがかなり増えているので、共同研究することによって1つの論文であちこちにカウントされるという状況になっているわけです。それと研究力はまた直接には関係ないというのもあるのですが、そこに日本が、それほど組み込んでいない。これは多分、地政学的な理由がどうしてもあって、これを頑張りましょうというのは、もしかしたら変な方向に誘導する可能性もありますし、でも、もう少しはやったほうがいいという状況なのだと思います。
 それと同時に、新しいイノベーションを起こすというのは、経済的なもの、ただの論文量とは関係ない面もある程度あるので、それは日本全体の問題ですよね。この話題は学術だけではなくて、スタートアップとか、あちこちで同じ視点なので、何か日本人のメンタリティとして、例えば研究者だったら研究者道みたいのを考えて、ずっと同じことをすることがよいとか、そういう何かメンタル的なしがらみがあるので、いまいちスピードに乗り切れていないのだと感じます。それはうちに来ている留学生と比較しても、新しいものに対してすぐ応答するかどうかというのは、もう国民性みたいな差をどうしても感じてしまって、日本はある意味、最初、静観しておいて、様子を見る。パッと食いつくのはちょっとはしたないぐらいの感覚を持っている若者が多い気がしています。
 だから、そこはしようがないとしても、新しいものを作っていけるかどうかということは重要ですので、さっき城山先生が御指摘されたことですけれども、鷹揚に考えるということがすごく重要だと思います。有馬先生がさっき御指摘されたように、若い人はサイテーションですとか、いろいろなものに無意識に縛られるので、新しいことをやってみようと、自分のアイディアを使って新しい領域を作っていこうということにモチベーションを得る機会とがあまりないのではないかと思います。それよりもサイテーションを稼ぐ、乗りやすい領域に乗っていったほうがいいので、そうするとアメリカの半年遅れ、1年遅れというステータスになってしまうということで、若者にあまりいろいろと、こうやれ、こうやれということを言わない領域を、ある程度作ってあげないと、こういうことは解消しないのではないかと思っています。
 というわけで、今、2点で、全体の研究の量としては、経済にリンクしているので、仕方ない要素もある。それに対して新しい分野に入っていく若者が、もう少し増えたほうが良く、それにはもう少し若者のメンタルをしがらみからちょっと外してあげるほうが良いと考えている次第でございます。
 以上になります。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 先ほどの城山委員、今の齊藤委員の御意見に何か、文科省事務局、コメントありますか。

【生田課長】  ありがとうございます。まさに新しい領域を日本が作り出せていない理由の1つとして、日本の国民性もあるのではないかという話があったかと思うのですけれども、まさにそれがスタートアップの現状にも同じことが言えると。
 それ自体を一気に変えるというのはなかなか難しいということもありますので、確かにその方向に向くようなモチベーションづけを、どのような行動的問題を解決していくかということと合わせて行うということと、あとは1つあるかなと思いますのは、途中で申し上げましたように融合というか、いろいろなものを合わせていく、それによって新しい気づきを得るみたいなところもあるのかなと思っておりまして、今まで接点のない人同士が会うことによって新しいものを生み出すみたいな、何かそういうようなムーブメントというのも必要なのかなと感じた次第でございます。

【齊藤委員】  おっしゃるとおりなんですね。重要なのはやっぱり共同研究を増やしましょうって、皆さん共同研究論文を単純に増やすことを考えるので、とにかく好きにやりなさいということが重要なのではないかという感じがします。

【観山部会長】  私からも数点、まず問題を切り分けたほうがいいと思うのですけれども、今、齊藤委員もおっしゃいましたが、日本の置かれている国際的な状況、例えば為替レートがこれだけ離れているという状況だとか、諸外国との給与差だとか、そういうものに関連していますけれども、なかなか厳しい状況にあります。1990年から経済もほとんどのびていないという状況もあります。これと平行して日本の研究力も横ばいの状況です。これが1つです。それから2番目、大学も国立大学が法人化しましたので、各大学が考えていくという部分と、国として、政策として支援していくという部分があります。3番目が、この基礎研究振興部会としてどの様な活動ができるかとか、文部科学省としてどうやっていくのかということで言うことです。研究力に関しては、中国などではすごい論文生産性みたいものがあります。これには引用度の高い論文に発表すると給与が高くなるなどの動機付けがあるように思います。けれども、日本の大学のほうで言うと、国立大学はある意味で独立したわけですけれども、やはり多くの大学で、例えば処遇に関しては昔のままのある種の経験年数に対して何号俸とかいう感じです。蓄積というか、経験年数に加えて行っている状況がどうしても続いていて、成果を上げて何かするということがなかなかシステムの中に取り入れられていないと思います。
 その大学は独立しましたので、今は大学の中で可能ですけれども、成果に基づいた給与に関する部分があまり進んでいないという状況があります。中国などはものすごくサイテーションの多い論文に書けば褒美を出すとかがありますが、これは問題があってやらなくてもいいと思うのです。研究にもいろいろな評価軸はあると思います。研究時間が足らないとか、いろいろな理由はありますけれども、その中で評価の状況に基づいて、モチベーションをあげることをすこし取り入れて、もっともっと研究そのものにインセンティブを上げるような形をとらないと、なかなか進んでいかないのではないかなと思います。
 それから、先ほどの一番目の観点からは、日本の産業全体や、日本の経済全体を上げようと思うのは、なかなか難しいわけですけれども、大学の研究費を増やすことは、全体からマクロに考えると、そんなに多くの資金は必要ないので。是非研究費を増やしてほしいですけれどもね。3番目の、国として、文科省として、この基礎研究振興としてどう進めるのかということですが、やっぱりある種、ここにも書かれていましたけれども、研究のネットワークだとか、そういう部分に重点配分していくことが必要ではないかと思います。もちろん、J-PEAKSだとか国際卓越だとかって、非常にピークのところをどんどん支援することは重要なのです。一方で、やっぱり大学間とか、いろいろなネットワーク、これは企業も含めてネットワークを構築するということをもっともっとやっていくということが政策的にできるところではないかと思っております。
 以上です。
 ほかにいかがですか。佐伯先生、どうぞよろしくお願いします。

【佐伯部会長代理】  どうもありがとうございます。観山先生のおっしゃること、私も同意いたします。特にネットワーク、共共拠点を中心にいろいろな研究分野でハブ機関をつくって、そこを中心にいろいろやっていっていますけれども、それが非常にうまくいっていますし、これからも大きくしていくべきだと思います。
 特に日本の場合は第1、第2グループの大学群もそうですし、第3、第4グループの小さな大学にも多くの研究者がおられるということもありましたので、そういった人たちをそのネットワークの中でしっかり支援していって、裾野を広げていくということが大事だと思います。もちろん、大きな大学で大きな研究をやっていくというコンチネント型のような研究ももちろん大事なのですけれども、スモールアイランドが日本は足りないということもありましたので、そういった小さな分野、そういったものもいろいろと支援していく、裾野を広げるというのですか、そういった活動が今後日本として求められていくのではないかなというふうにも思いました。
 あと、それからもう一つ、それと少し関連するのですけれども、新しいことをやっていくスモールアイランド型のような研究をやっていく、そういったことで言えば、例えば科研費、挑戦的研究というのがありまして、あれは非常にいいと思うのですね。要するにこれから、もしかしたら大きな研究分野に育っていくかもしれない。でも、育たないかもしれない。でも、やってみましょうという、そういう挑戦的な研究というのをもう少しエンカレッジするようなシステムがあってもいいかなと感じています。成果をどうしても求めがちになりますので、成果が出なくても頑張ってやってくださいというものが、小さなファンドでもいいと思うのですね、そういったものが多く出て、裾野のほうの活躍される研究者の方々、そういった方を支援していくということも非常に重要ではないかなと思いました。
 今後、日本が、先ほども少し話がありましたけれども、トレンドに乗っていくのではなくて、トレンドを作り出していくという方向が、やはり私もいいと思います。そうしないと、世界のトップを追いかけていくという立場にどうしてもなってしまって、そうなるとなかなか米国、中国、そういったところには太刀打ちできないと思われますので、日本から率先して何か新しいものを作り出して、日本ならではのもの、なかなか難しいですけれども、そういったものを、裾野を広げる中から拾い上げていく、そういったことに注力していくべきかなと個人的には思っております。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございます。
 ほかの委員の先生、手が挙がっていますでしょうか。長谷山先生。

【長谷山委員】  長谷山です。私も今まで発言なさった委員の皆さんとほとんど同じ意見です。私はAIやデータ分析の、特に画像処理の研究者なので、その分野に重点をおいた発言になってしまうかもしれませんが、ご理解いただきたいと思います。中国はトレンドを作り出して大きくなっていると小泉委員がおっしゃっていました。私も同感です。ただ、彼らは世界を見て、その中からトレンドとなるものを選び出していて、最初を生みだしているのではないかもしれません。トレンドを作り出しているというのは、大きくしているという意味では、そうなのだと思いますが、新しいものを生み出しているかについては疑問に思っています。
 そして、その「大きくしている」というのは、サイテーションのテクニックが効いているのではないかと思っています。皆さんも感じていると思うのですが、Top10%論文という指標を用いるとなれば、順位を上げるテクニックが存在します。今回の資料もそうですが、Top10%論文という指標で測らざるを得ないというところが非常に残念です。それは文科省の資料が残念なのではなくて、研究者としてそれに代わる納得できる指標を提示することが出来ないことが、大変に残念だと思っています。ほかに良い指標がなく、この指標を使い続けてしまったことが、融合研究がなかなか進まず、観山部会長がおっしゃる日本の悪い状況を生み出した一つの原因なのではないかと思います。
 この融合研究というのも、皆様で使っている言葉にいろいろな差があると私は思っています。同じ研究領域で高め合いながら尖っていく、深堀していく融合研究と、新しい領域を作っていくという融合研究というのは、方法が違っていてもいいわけですし、違っていて当然かと思います。例えば社会の課題解決、それも社会創造型の企業との共同研究は、社会を変えるという意味において、新しい研究を作り出さなければなりません。生田課長の説明の中にあったように、もう少し社会を取り込んで資金を獲得する方法を考えなければならないと思います。今まで蓄積された研究者の共同研究のデータなどから、グッドプラクティスを提示して理解を広げていくのが良いかもしれません。
 最後に、私が申し上げた2つの問題がこのまま続けば、既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的・融合的で多様な研究を支援する創発的研究支援事業の若手の活躍を、結局、支援期間終了後に潰してしまうのではないかと危惧しています。支援後に、まだ、Top10%論文というような指標で測られる社会が続いていれば、Top10%論文を書きやすい分野に流れ、引用される研究をすれば良い方向に進んでしまいます。少なくとも若手を決してTop10%論文で測らない研究戦略を日本自身が持たなければならないと思います。世界では、そのような考えで動いていると聞いております。是非、その点も考えていただきたいと思います。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 文科省、いかがでしょうか。

【生田課長】  ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりでございまして、結局、例えばお金を出すときに、新しい分野に挑戦するもの、そちらに向き出したとしても、例えばその結果を学内で評価するときに、それが評価されないと、元も子もないというふうに感じておりまして、多分、この辺のところは、国と大学の中の人事マネジメントとをセットで変えていかないと、最終的に本人のインセンティブにつながらないことになるのではないかと思います。そういったところで、ぜひここは国全体としても文科省及び大学の現場の皆様方とどういう形が一番いいのかというのを、これも完成形を待っているとなかなか進まないので、やれることから1個ずつ積み重ねて、日本のシステムを変えていくというところに挑戦していきたいなと思っております。ありがとうございます。

【中澤課長】  すみません、基礎・基盤研究課長の中澤ですけれども、私からも一言よろしいでしょうか。

【観山部会長】  はい。どうぞ。

【中澤課長】  今の議論、非常に大事な議論だったと思うので、せっかくですので、委員の先生方にお伺いしたいのですが、今、生田課長からお話のあった、新しいもののトレンドを作る、新しいものを評価していくというところで、これはファンディングの部分も大事だと思うのですけれども、学内の中でまだ分からないもの、どこも何か、粗削りなものというもので、うまくいくかどうか分からないものを例えば人事で採用する際だとか、あるいは若手の研究者がそういう話を研究室内でするときに、処遇していくということが難しいのでしょうか。どのような難しさがあるか、それが難しいから、今、そこができていないのかなというところなのですが、その辺りというのは難しいのでしょうか。あるいは、いやいや、全然できるよという話なのでしょうか。大学のマネジメントの中で、後ほど前田先生、あるいは上杉先生、WPIの話などもちょっとお伺いしたいのですが、それ以外の話でもどうでしょうか。

【観山部会長】  では、長谷山先生、お願いします。

【長谷山委員】  私がお話ししたことに対してのご質問と思いますので、最初に発言させていただきます。WPIについては、私の発言の後、前田委員や関係する委員に聞いていただきたいと思います。WPIは他の事業と一緒にして語れない特別な事業ですので。私がお話ししたいのは、一般に言う大学の部局、学部、研究院で、どのようなことを行ってきたかということで、一つの例をご紹介したいと思います。私ですが、昨年度まで4年間、情報科学研究院長を務めておりました。任期中、若手教員を採用するときに、Top10%論文数は参考にしかしないこととし、通常の選考ポイント以外に、融合研究領域にどれだけ着手したかの指標や、他大学や企業との共同研究の、マネジメントへの参画経験なども選考基準にしました。詳細は申し上げることが出来ませんが、このような数値を加味した人事選考の方法を導入することで、大学も努力しております。

【中澤課長】  長谷山先生、すみません、融合研究をしている度合いを何か見ている指標があるというか、何かそこをちゃんと定性的にも見るという趣旨ですよね。

【長谷山委員】  はい。そのとおりです。応募者もどのように主張するかお困りになりますので、融合研究を行っていることをどのように主張できるのか、数値で表す方法を例示しております。教員、研究者であれば誰でも利用できるデータベースにアクセスして得られる数値です。応募者には、自身の基礎研究と融合研究の両方を行っていることを主張して頂くことで選考しました。

【観山部会長】  それでは、齊藤委員、お願いします。

【齊藤委員】  ありがとうございます。1件1件個々の研究に関して、これが新しい分野をつくる可能性があるかどうかというのを大学や人事で判断するのは不可能だと思います。それは不可能だからこそ、新しい分野をなのであって、こういう分野がつくられそうだねとみなが思うようなものは、もうかなり成熟したものか、当たり前のストーリーに乗っかっているものの1つなわけですね。1個1個の検討は不可能なわけですけれども、その研究者がそういうキャラクターを持った方なのかどうかというのは、とても重要で、それはポートフォリオとしていろいろな方が大学にいたほうがよいですので、新しい領域をつくりそうなキャラクターを持った人が一定数来てほしいと思っている大学は多いのではないかと思います。
 また、そういう研究者が処遇されているということを若手に見せることが重要で、若手が新しいものを作っていくというのが研究者として評価されるのだというふうに感じてもらえると、良い再生産がされるのではないかなと思います。指標があるかどうか、なかなか難しいと思うのですが、基本的に感覚としては、共同研究をしなさいといったときの共同研究は、形式上、論文上共同研究をした形になっているものが多いのではないか。そこからあんまり新しいものが出ない可能性もあるなという感覚は持っています。その辺ちょっと難しい問題だと感じております。
 以上でございます。

【観山部会長】  続いて上杉委員、お願いします。

【上杉委員】  上杉です。WPIの御指名があったので御意見しようと思ったのですが、WPIではなくて京都大学として御意見申し上げます。今御説明していただいたのは全部分かります。しかし、解決策としてあまりいいアイディアが出ないので、御意見を申し上げなかったのです。先ほどの人事の件について、京都大学の御意見を申し上げます。
 京都大学は、尖った人事をしたいと思ってきたし、歴史的にそうやってきたと思います。いまだにアイランド型も多いと思います。ただし、失われつつあります。ぐんぐん失われつつある。昔だったら、我々が京都大学に着任したときなどは、新しい教授が着任すると昔の教授が来て、「それは誰々がやっているのとよく似ているのじゃないの」と嫌味を言われるんですよ、京都大学は。そのぐらい何か変わった人を採ってこようという意識があったのです。でも、失われつつあります。
 例えばh-indexというのがありますよね。人事のときにh-index、多分、見られる方も多いと思うんです。アイランド型を始めたような人たち、特徴のある人たちは、h-index、そんなに高くないんです。だから、h-indexを見て決めるのは止めたほうがいいんじゃないのという話はありました。サイテーションが少ないんですよ。いいジャーナルに論文が載っているんですよ。化学だったらJACSに論文が載ってるのだけれども、サイテーションはあまり来ない。なぜなら、そこの分野に人が少ないからです。h-indexを重要視するのは止めようと言ったことがあります。
 人事の全体として大きな問題の1つは、それはどこの大学でも一緒だと思うのですけれども、ステークホルダーがいないんですね。例えば僕が京都大学の株式をたくさん持っているとしましょう。そうすれば京都大学の成長にとっていい人事をしなければいけないとなります。ステークホルダーがいないので、京都大学の成長について何とも思っていない京大の先生方もおられるんです。安易な人事をされる方もいると思います。というわけで、あんまり解決策としていいアイディアはないのです。尖った人が選ばれれば何か得があるような、もしくは尖ったことをしていると科研費で得なことがあるような、インセンティブがあればとおもいます。「尖った研究をしましょう」と言うだけではなくて、何らかの実際のインセンティブがある仕組みを作るべきではないかなと思いました。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 では、手が挙がっている前田先生、お願いします。

【前田委員】  WPIということで御指名いただきましたが、人事、採用するところではないのですけれども、我々の拠点では内部で毎年教員とか研究員を評価するというところを、かなり時間をかけて、全員面談して成果を聞くようにしていて、そのときに個人でNatureとか、Scienceとかに出したというよりは、その拠点の中できちんと融合研究をした、そこでリーダーシップを発揮したという人を評価して、拠点の裁量の範囲でインセンティブを与えるというようなことを活動として行っています。
 とても一生懸命話を聞かないといけないので、シニアな先生方は時間を使うということにはなるのですけれども、そういうことをやっていますということと、あと、私自身は京大の白眉プロジェクトで見いだしていただいたということがすごく契機になっていて、この間、白眉プロジェクト15周年ということで、京大でイベントがあって参加させていただいたのですけれども、その白眉プロジェクト、私の分野ってすごくインパクトファクターが低くて、インパクトファクター2とか3の論文をいっぱい出すみたいな、NatureとかScienceだと20分の1とか、30分の1くらいの論文しか出ないという、そういう分野なのですけれども、伯楽という審査の先生方がいらっしゃって、そういった先生方の同じ分野の方がまずレビューして、その後でその伯楽会議というので、資料もない、プレゼンテーションも何もしない、資料も何もない状態で真ん中に座らされて質問攻めにあうというような、何かそういうので人柄まで含めて判断してというので、それもすごく伯楽の先生方、時間と労力を使うとおっしゃっていました。
 なので、そういう形ですごく頑張って評価するしかないのかなと思う一方で、シニアの先生方にとってはすごい時間も労力も使うので、それを全ての場合に行うと、多分、シニアの先生方は死んでしまうと思うので、そういったところ、難しい問題だなというふうに思いますが、そういうやり方で私自身は見いだしていただきましたし、ICReDD、WPIの中では、そういうことも少し頑張ってさせていただいていますというところです。

【観山部会長】  ありがとうございます。
 WPIは評価の指針の中にフュージョンというか、学際研究をどれだけ展開しているかというものが評価の指針になっているんですよね。一方で、大学の中で、もちろん先ほどの京都大学だとか、長谷山先生がおっしゃるところで個別にはいろいろありますけれども、フュージョンというか、新しい方向を作っていったというところに評価の指針がまだまだ少ないように思います。ですから、そこら辺を取り入れていくということが今後重要ではないかなと思います。先ほどのサイエンスマップにおいても、非常に大きなところでどれだけ成果を上げたというか、研究室でもその中でどれだけやったというのが評価の指針に結構大きいと思います。新しい分野への展開に努力することを、政策的にどうやっていくのかというのが今後の課題ではないかなと思いますけどね。
 また議論していきたいのですけれども、2番目の議題もありますので、それが終わったところでまた振り返ってみたいと思いますが、今、手、挙がっていませんよね。
 

【観山部会長】 それでは、令和7年度政府予算案及び令和6年度補正予算案についてお願いします。資料2-1から2-6でございますが、また後で議論の時間を取りたいと思いますので、手短に続けていただければと思います。まず、資料2-1について説明をお願いいたします。

【相川補佐】  資料2-1について、基礎・基盤研究課のほうから御説明をさせていただきます。先ほども少し話題になっておりましたが、WPIプログラムのほうになります。こちら、予算額(案)については、昨年度と同程度の72億円という形になっております。掲げております3つのミッションに向けて、各拠点が3つのミッションを達成するべく引き続きの支援をしていくために措置をさせていただきたいと考えております。引き続き、この支援を行うとともに、WPI事業全体についてのこの世界的なビジビリティといいますか、レピテーションも上げていくような取組も考えているところでございます。
 非常に端的ではございますが、WPIについては以上になります。

【観山部会長】  続いて資料2-2についてお願いいたします。

【村松室長】  素粒子・原子核研究推進室の村松と申します。
 続いて、Fundamental Quantum Science Program――FQSPについて説明させていただきます。このプログラムは、量子科学技術の幅広い応用に向けて量子の基礎学理の解明を目指し、理化学研究所が来年度から新規に開始する事業です。そのための予算として令和7年度予算案に7億円、令和6年度補正予算に10億円、合わせて17億円を計上しました。本部会にも報告しましたが、参考資料2-1、2-2として配布している昨年7月に取りまとめられた「EIC計画及びこれに関連する原子核物理学の新たな展開に関する中間報告」の中で、米国が進めている原子核物理学の大型計画であるEIC計画への我が国の大学及び研究機関の参加と、原子核物理学の新たな展開を進めるため、文科省が理研や大学の取組を積極的に支援すべきとの提言をいただいています。
 これを踏まえ、本事業では原子核物理学を起点として様々な学問を融合して量子科学技術の基礎学理の解明に向けて4つのテーマを実施するとともに、EIC計画に参画して、その成果も活用して将来の量子技術の発展に向けた強固な基礎を確立することを目指します。なお、こちらには記載はありませんが、東京大学と大阪大学においても、量子の根源的な学理の解明を目指す国際量子物理ネットワーク型拠点を立ち上げており、その中でEIC計画の中核的組織を大学間連携で形成することにしており、そのための予算をそれぞれの大学の令和7年度予算案に計上していると聞いています。これらの取組を着実に進めていくため、文科省としても引き続き必要な支援を行ってまいります。
 以上でございます。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 続いて資料2-3、科研費について御説明をお願いします。

【松本室長】  それでは、科研費についてでございます。令和6年度補正予算において52億、令和7年度予算案において2,379億円を計上し、数年ぶりにわずかではございますが、当初予算においては増額案を計上しています。今回のポイントとしましては、資料の中ほどに記載のとおり、高い国際競争力を有する研究の質的・量的充実を図る観点から、基盤研究のA・B・Cの審査において国際性の評価基準を導入し、国際性の評価が高い課題への研究費の重点配分を行い、また、基盤研究B、Cにおきまして、若手研究者が国際性の高い研究に取り組む機会を拡大するため、国際・若手支援強化枠を創設するという内容を盛り込んでいます。
 2ページ目をお願いします。今回の科研費制度改革のポイントです。3つございます。1つは審査において国際性の評価基準を導入し、採択課題のみならず応募課題も含めた研究の質の転換・向上を図りたいということ。それから、2つ目、繰り返しますけれども、国際性の高い研究課題に対して研究費を重点配分するということ。3つ目が国際・若手支援強化枠を創設するということでございます。
 今回、国際性の評価基準を導入するというのは、科研費の評価基準に新しい評価基準を導入するということで、これまでやってこなかったことですけれども、今回、導入するに当たって、国際性というものの捉え方とか定義につきまして、各分野でかなり意見が異なりますので、日本学術振興会の学術システム研究センターにおいて相当時間を費やして議論をしていただき、この資料の真ん中辺りの米印のところに記載していますけれども、国際性の評価においては、国際共同研究を行うものだけに限らず、将来的に世界の研究を牽引する先導性ですとか、協同を通じて世界の研究の発展に貢献する協同性、それから、我が国独自の研究として高い価値を創出する稀少性など、そういった観点を持って審査をするということにしてございます。
 今回、初めてこういう基準を入れて、現在審査を行っているところです。今回の審査の状況を検証しつつ、今後も引き続き改善に努めてまいりたいと考えています。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 それでは、資料2-4について、戦略創造ですね。よろしくお願いします。

【神部室長】  JSTの戦略的創造研究推進事業の令和7年度の予算案について説明させていただきます。
 2ページ目をお願いします。予算額、予算案につきましては右上にございますとおり、438億円、令和6年度に比べて1億円の増となっております。こちらの事業、御存じだと思いますが、簡単におさらいさせていただきますと、国が定めました戦略目標の下、時限的な研究体制を構築しまして、基礎研究を推進するものです。プログラムとしましては、チーム型研究のCREST、若手登竜門となっている「さきがけ」、卓越したリーダーによるERATO等のプログラムで構成しております。このようなプログラムの中で研究者同士の交流により異分野融合を促進するとともに、研究総括の柔軟なマネジメントにより成果の最大化を図っております。
 中段のところの左に戦略目標の例を挙げておりますが、こちらは令和6年度の例になっております。令和7年度につきましては、検討を進めているところでございますが、2月末をめどに公表したいと考えております。各プログラム、CRESTなどの内容につきましては、中段の下の四角のところに研究期間や研究費、採択予定の数を記載しております。こちらは、基本的には例年と同じ規模、同じ予算の規模、同じ採択数を想定しております。
 3ページ目を御覧ください。研究成果の例を御説明させていただきます。論文につきまして、先ほどTop10%論文、Top1%論文の使い方の問題、指摘されたところですが、これまで10年間でTop10%、Top1%の論文を日本の平均よりも2倍に近い割合で創出しているところでございます。また、自然科学系でノーベル賞の候補と注目されるクラリベイト・アナリティクスの引用栄誉賞を受賞した日本人36人のうち、15名が本事業に携わった方々となっております。
 5ページを御覧ください。個別の例を、この機会に御紹介させてください。下の国立情報学研究所の山岸先生の研究成果です。山岸先生は平成30年度からCRESTで音声の合成技術の高度化とセキュリティの研究を推進されました。先生は音声生成、合成のモデリング技術にとどまらず、“なりすまし攻撃”の防御、セキュリティに関するアルゴリズム開発に必要となる大規模なデータベースを構築し、さらにそれを公開されています。また、コンピュータが合成した音声と人間の声を見極める国際コンペも開催し、その国際的な研究コミュニティを育成することにも貢献していただきました。
 先生の技術は社会実装を着実に進められているとともに、令和6年度、Kプロの偽情報分析に係る技術開発にも採択されまして、このCRESTで研究した成果というものを着実に社会につなげている事例となっております。ディープフェイクに代表されるこのような問題は、非常に社会的にも重要な問題となっておりますが、引き続きこのCREST等の研究成果を通じて基礎研究を推進し、社会に貢献する成果を創出していきたいと考えております。
 以上でございます。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 では、続きまして資料2-5、生成AIについてお願いします。

【相川補佐】  生成AIをはじめとするAI開発力の強化ということで、こちら、幾つかの事業をパッケージ化した形になっておりまして、総額で令和7年度予算案が138億円となっております。個別に少しだけ御説明させていただきますと、まず生成AIの開発力強化と人材育成の推進という枠組みの中で3つ、AI For Society、AI For Science、Cross AI Talent Developmentという形で3つの事業を推進しているところでございます。一番左のAI For Societyのほうは、生成AIモデルの透明性ですとか信頼性の確保に向けた研究開発拠点を形成して、NIIを中心に研究開発を行っているものでございます。こちらの令和7年度の予算案が8億円と前年度と比較してプラス1億円。プラス補正予算額として42億円を措置しているものでございます。
 また、真ん中のAI For Scienceのものは、こちらは理化学研究所を中心として取り組まれているものでして、特定の科学分野、材料・物性科学分野ですとか、生命・医科学分野を中心にAIを科学研究に使うという形で、そのAI基盤モデルの構築を目指して研究開発を進めているものでございます。また、一番右側のほうは、人材育成のものになりまして、国際戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成という形で、緊急性の高い国家戦略分野として次世代AI分野、AI×バイオですとか、AI×材料などを設定して若手研究者の支援、また、博士学生の支援を行っているものになります。こちらは基金措置をしたものになります。
 また、一番下のところになりますが、これら基本的な研究開発を進めるという形で、理化学研究所のAIPセンターを中心として研究開発を進めるとともに、先ほど説明がございました戦略的創造研究推進事業の中でもAIをテーマにしているものがございますので、これらの一体的な推進に取り組んでいるところでございます。
 こちらの御説明、以上になります。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 最後に資料2-6、フィジカル・インテリジェンスについてお願いいたします。

【葛谷推進官】  基礎課の葛谷より御説明いたします。
 まず、参考資料3-1のほうをお願いしたいのですけれども、こちらは前回、8月の基礎研究振興部会で御議論いただいた資料でございまして、2ページ目をお願いいたします。このときはフィジカル・インテリジェンスということで真ん中にございますとおり、エッジの知能化によってAIと機械が高度に融合することで実現するAIが物理的動作を行うシステム、いわゆるAIが物理的身体機能を獲得することによって、AIの利活用がデジタルから、これまで不可能だった物理世界へ拡大していく。こういった動きの中で日本が進めていく技術開発として、9ページをお願いしていいですか。こちらにお示ししています3つの点、1つ目が革新的な知能コアシステム開発ということで、能動的に学習・進化する知能システム開発や、2つ目が知能と身体機能システムの融合、そして3つ目がハードウェア関係、AIロボット開発、こういったものを一体的に研究開発をしていく、こういったプロジェクトの御検討に当たりまして、皆様方から御意見をいただいたところでございます。
 これを踏まえまして次、参考資料3-2をお願いいたします。この事業につきましては、この事業自体はAIの利用拡大のみならず、半導体、エッジのAI半導体の利活用、ユースケースといった側面もございます。こういった観点がございまして、基礎研究振興部会終了後、省内で検討いたしまして、こちらにお示ししますような次世代半導体の研究開発、基盤、人材育成施策、このパッケージの中で概算要求を進めております。水色のところに次世代エッジAI半導体・フィジカル・インテリジェンスというところがございますとおり、エッジAI半導体そのものの開発とユースケースであります基礎部会で御議論いただきましたフィジカル・インテリジェンスの統合的研究開発、これを併せて実施するプロジェクトとして要求していくという形をとらせていただきました。
 続いて、資料2-6をお願いいたします。その後、こちらにお示ししておりますけれども、概算要求、予算折衝の過程の中で、この次世代エッジAI半導体とフィジカル・インテリジェンスというのは、経産省のほうでラピダスをはじめとした半導体施策を進めておりまして、半導体、エッジAI半導体開発とか、併せてそのユースケースがロボット開発、こういったものは産業化を見据えてやっていく必要があるのではないか。いわゆる経産省と連携してやっていく必要はないかということの御議論になりまして、こちら、水色の中の参考というところに書いてございますけれども、経済産業省予算というところで、文科省予算ではなくて経済産業省と連携する形でやっていくという形で、本事業を進めていくことになっております。
 私からの説明は以上でございます。

【観山部会長】  どうもありがとうございました。
 以上の説明に関して、先生方からの御質問、御意見をいただきたいと思いますけれども、今日はこの今期の部会の最後になりますので、全員の方からと思いますので、よろしければ品田委員、辻委員からもお話をいただきたいと思います。
 では、まず、辻委員、お願いします。

【辻委員】  ありがとうございます。辻です。科研費に関連して質問です。科研費で国際性を重視するということですが、素人として考えると、サイエンスはもともと国際的であり、普遍的な評価が重視されてきたのではないかと思います。改めて国際性と言われると、逆にこれまで何をやっていたのだということにもなりそうな気がしました。 先導性、稀少性、協同性とありますが、これも当然ではないかと、素朴な疑問を抱きました。どうなのでしょうか。

【観山部会長】  いかがでしょうか。

【松本室長】  辻先生、ありがとうございます。先生のおっしゃるとおりでして、今、資料の中の中段右側のところの研究課題の学術的重要性と、これまでそういったところに内包されていたということで、当然、国際性もここに入って評価をされていたわけですけれども、我々としては、それを明示的に外出しし、分かりやすくさせていただいて、これまで予算の状況によって、応募額を尊重した配分というのがなかなかできないところを、こういった形の評価基準を見える化し、重点的に配分する研究課題、この部分の評価が高い研究課題に応募額を尊重した額を配分していきたいということを考え、このような形にしています。基本的な考え方は、先生のおっしゃるとおり、もともとの評価基準にも内包されていたものでございます。
 以上です。

【観山部会長】  よろしいでしょうか。

【辻委員】  予算面での工夫ということで理解しました。そうすると、やはり科研費を抜本的に増やすことが、さきほどの議論とも関連して大変重要だと思いますので、よろしくお願いいたします。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 それでは、品田委員、お願いします。

【品田委員】  ありがとうございます。後半の議題に関しては、特に、ぜひ進めてくださいというだけなのですが、1点、御説明から少し外れたところで、資料2-6に半導体研究基盤の整備という緑の部分、設備を整備するなどと書いてあるのですが、予算、半導体関係の設備はかなり高額だと思うので、多分、もちろんこの額だけではなくて、いろいろな経済産業省の予算なども含めて考えると思うのですが、そこが予算規模的にはどうなのかなと思ったところがあります。
 設備共用というのに関連して、1個目の議題のところで、コメントをし損なってしまったのですけれども、まとめの資料で22ページでしたか、共用をもっと推進するというまとめがあったと思います。実は私、先端研究基盤プラットフォーム(先端研究基盤共用促進事業)に参画しているところもあって、文科省の研究開発基盤課、あとARIM(マテリアル先端リサーチインフラ)もそうですけれども、非常に設備の共用ということを頑張ってされていて、特に大学のコアファシリティ構築支援プログラムというのか、そういう辺りでも随分されているので、さらにそれを推進すればいいということで何をすればいいのかなという、それに加えてどういうことをやるのかなというのもちょっと思っていたところで、実は一昨日、ナノテク展でパネルの説明なども少し参加したのですけれども、いまだにこういうものの存在をまだよく分かっていらっしゃらない大学の先生がちらほらいらっしゃるという事実を知って、そういう意味ではまだまだ足りないんだなというのを感じたところなんですよね。
 今、先ほどの御説明で科研費と何か紐づけして行うとかいう話もあったと思うのですが、広報活動をもっと推進すると同時に、強制的と言うと言い方が悪いですけれども、それを利用することで非常にポジティブなインセンティブがあるみたいなことを進めるという話があって、非常にいいなと思いました。そういう理解でよろしいんでしょうかね。研究開発基盤課が随分長い時間をかけて、共用を進めているのだけれども、まだまだ道半ばであるという、そういう認識でいらっしゃるということでよろしいんでしょうか。

【観山部会長】  どうぞ。

【生田課長】  振興企画課の生田です。ありがとうございます。まさにこの共用の件につきましては、研究開発基盤課のほうでやっているプラットフォーム事業ですとか、また、あと分野別のARIMとかBINDS(創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム)とかありますし、さらにそちらのほうは、どちらかというと、今、現状どうなっているかといいますと、いわゆる競争的研究費で買った設備、そのマシンタイムをなるべく100%に稼働率を上げていこうと。その隙間の部分をいかに共用に進めていくかという流れだと思っています。一方で、大学共同利用機関のほうについては、そもそもが共用するために設備を整備しているというような仕組みもございまして、その2つをうまく連動させながら、日本全体としての、いわゆるインフラ基盤、それは先ほど申し上げましたように設備のみならず、その設備に携わるような人材ですとか、もしくは研究データの基盤ですとか、そういったものとセットで、我々はその研究基盤というものを強固にしていきたいと思っているものでございます。

【品田委員】  ありがとうございます。それとあと、広報は、これはそれほど費用や労力がかかるものではないかもしれないのですけれども、少し語弊があるとあれなのですけれども、第3グループ、第4グループに属するような大学の先生方は、まだそれを十分理解されていないというか、利用されていないということを肌感覚で感じているんですね。
 そういう意味で、あと第3グループ、第4グループというのがございましたけれども、非常に日本はそこのグループに属する大学の数が多い。でも、イギリス、ドイツより人口が少しは多い。小さい大学がばらばらにあり過ぎるのかな、それで情報が行き渡らないのかなというようなのも、いや、間違っているかもしれないのですけれども、そういう感覚も少し持っているので、それは大学全体の改革になるので大変なことになると思うのですけれども、私としてそういう感想を持っております。それでどうのという話ではございませんけれども。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございます。
 共用についてですが、分野によって言葉とかいろいろあって、共共拠点とか大学共同利用機関を中心とした共同利用・共同研究の仕組みと、それから、大型で言うとSpring-8だとか、J-PARCだとかという共用設備があります。そこら辺の言葉というか、役割も違う部分もありますし、また非常に共通した部分もありますので、そこら辺のアピールというか、認識も今後考えていただいたほうがいいかもしれません。どちらも非常に重要な仕組みで、ある分野では共同利用・共同研究という部分が非常によくなじみでもあるし、一方、違う分野では共用設備というもので非常に展開しているというのもあると思うんですね。よろしくお願いします。
 上杉先生、お願いします。

【上杉委員】  科研費についてです。科研費とJST戦略事業についてなのですけれども、予算が微増ですよね。できれば物価よりも上がってほしいと思うのです。これだけの微増だと、物価が上がっているので、実質的には下がっていることになります。我が国の科学が危機的な状態なのに科研費の総額が下がる事態になっていっているんです。どうやれば上げられるのかなと考えています。多分、お役所のほうでも考えていただいていると思うんですよね。1つは、先ほど辻委員がおっしゃられた国際性のところ、ああいうところも関連してくると思うんですよ。国際性、先導性があるというのは当たり前の評価なのですけれども、はっきりさせたという意味で大変いいことだと思いました。
 でも、できれば、こういう国際性の先導性があれば予算を減らさないという決断ではなくて、逆に増やしてほしいんです。何かいいことをしてると予算配分が増額されるようにしてほしいのです。例えば女性の研究者、女性の学生がいると増えるというぐあいです。そうすることによって、こういう微増ではなくて、もう少し最終的に増えた形になるのではないかなと思います。いかがでしょう。どういうふうにすれば科研費の総額を増やすことができますか。事務局の御意見を伺いたいんです。我々がどうしたらいいのかというのも教えていただければいいと思います。

【松本室長】  では、よろしいでしょうか。

【観山部会長】  はい。どうぞ。

【松本室長】  なかなかお答えしにくい問題ではありますが、今回、この国際性の評価を導入して、応募額を尊重した配分というのをまず突破口だと考えています。科研費の量的拡充については、今期の研究費部会でもかなり多くの厳しい御意見をいただいておりまして、第13期、次期の研究費部会でも議論を引き続きやっていくということにしてございますので、直接的なお答えになっていないとは思いますけれども、学会連合からの御要望とか、経団連とかの御提言とかも踏まえて、かなり強い期待というか、委員の方々の御意見もいただいていますので、引き続き13期の研究費部会で議論するということにしています。みんなで知恵を絞っていかないといけないなと思っているところです。
 以上です。

【観山部会長】  物価が今までずっと変わっていなかったのであれなのですけれども、このベンチマークとして前年度予算ということもありますが、物価上昇率を考えると、今、2%、3%に近づくような状況なので、そこら辺も、これで見ると実質的な目減りになっていますので、ぜひよろしくお願いします。
 小泉委員、お願いします。

【小泉委員】  ありがとうございます。僕のほうから、一番初めの議題のところにも少し書かれていた中規模研究設備についてお話をできればと思っています。研究振興局の皆様にも大分頑張っていただいて、今回、高等局のほうと、それから、振興局のほうから中規模研究設備に関する予算要求をしていただきましたけれども、なかなか財務省が厳しくて、なかなか難しいという状況なのだと思いますが、これは多分、研究現場に近いところからすると切迫した問題だと思っています。本予算の中には、補正予算では措置されましたけれども、本予算のほうでは入っていなかったので、ぜひ引き続きお願いしたいと思います。
 財務省のほうから、中規模研究設備、何が問題かというと、いろいろなものが、最先端の機器が、今までは10億円以下で買えたもの、5億円で買えたもの、2億円で買えたものが10億円を超えるような規模になってきてしまっている。また、最先端の、例えばNMRとか、1.2ギガヘルツを超えるようなNMRは、もう20億円、30億円という金額になっている。そういったものを買う予算スキームがとにかく存在しないというのが最大の問題で、しかも、今回、財務省、5億円と言っているのは、5億から100億円の間のものは買えない。誰も買うスキームがないというのは、日本として最大の欠点だと思っています。
 この5億から100億円の間のものを買う予算スキームがないという状況を何とか、ここにいらっしゃる皆様は、この問題意識を共有されている方ばかりですので、文科省の皆さんも含め、僕がここで言っても、いや、そうだよねと思っていただいていると思うのですけれども、ぜひ財務省のほうにも5億円以上のものは贅沢品だと、そんなこと言うなと。それがなければ最先端の研究ができないのだということをぜひ財務省に理解していただけるように、今後も引き続きよろしくお願いします。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 中規模設備に関しては、老朽化並びに最先端のものが買い負けているという部分がありまして、研究環境部会でも随分調査をしたり、方向性を議論したりしておりますけれども、ほかにいかがでしょうか。今の点について文科省から何かありますか。

【中澤課長】  ありがとうございます。直前の科研費の話も含めてでございますが、まさに長い間、デフレが続いていた中で、実はこの近年、一、二年で税収も上がっていますし、それから、国費としての予算も、単年度予算も上がっていますし、それから、GDPも上がっていますし、物価も上がってきた。そんな中で科学技術予算が上げられなかったというところは、私、省内でも非常に頑張ったのですけれども、なかなか難しかった部分があるんです。ちょうどまさにそこの日本全体のゲームチェンジのトレンドがあった部分だと思いますので、これ、頑張りたいと思います。当たり前でございますが、今日の意見を踏まえて、しっかりそこをやっていきたいと思っております。
 それから、中規模施設のところは、全体額とはまた別で、小泉委員がおっしゃるとおり、制度として非常にうまく整備できない部分というところは、おっしゃるとおりであるので、全体額をいかに伸ばすかというところと、それから、その個別のところで最適化されていないような仕組みというところは、我々、問題意識を持っていますので、引き続きしっかりやっていきたいと思います。ありがとうございます。

【観山部会長】  どうもありがとうございました。
 ほかに御意見、御質問はよろしいですか。辻先生、どうぞ。

【辻委員】  先ほどの議論にも関連して、一般的な話になりますが、融合研究やネットワークが大事という話が出ました。新しいものをそこから生み出していこうということだと思いますが、そうしたときの基本はやはり、研究者の内発的な意欲ではないかと思います。先ほど話に出たように、国際性にしても、言われてやるのだと形だけになってしまう。研究者の内発的な意欲に基づいて新しい研究をするには、何といっても余裕が必要で、それは時間であり、お金であり、ということだと思います。研究時間の不足が言われていますが、研究時間を確保するための方策が、当たり前のことながら重要です。お金はなんといっても基盤的な研究を支える科研費。特に基盤Cなどももっと採択率を上げてほしい。これから人口が減っていく、研究者も減っていくという時代に、できるだけ多様な人材を確保するとなると、そのあたりが入り口として重要では、と思っています。どうやって増やすか、簡単ではありませんが、その効果というか、結果的に何を生み出しているかといったことが見せられないか、ということも思っています。
 それともう一つ、ここではAIについて議論されてきましたが、新たに出てきたDeepSeekが話題になっています。開発に絡んで不正があったと言われるなどまだよくわからないところもありますが、この世界の構図が大きく変わる可能性がある、あるいは後発にも可能性があることが示された、とも言われています。柔軟に新しい状況に対応しつつ、かつ、単に目先を追うのでなく、かつて日本で生み出されたような、根本的な、全く新しい学理などが生まれるようにしていただきたいと思います。そのためにも、人材の多様性が重要であり、一般的な話になりますが、女性がもっと増えるように、外国人ももっと増えるように、ぜひぜひ進めていただきたいと思います。
 以上です。

【観山部会長】  どうもありがとうございました。様々な観点から御意見をいただきましたけれども、最後に言われたジェンダーの問題というか、女性研究者をどんどんこういう新しい基礎科学力だとか科学力の分野に入ってきてもらえるような形にするというのは非常に重要だと思いますね。ありがとうございました。
 ほかにはよろしいでしょうか。小泉先生。

【小泉委員】  財務省の態度からすると、やはり科研費を大幅に増やすというのはなかなか難しいし、頑張っていただくとしてもなかなか難しい状況なのだろうと思っています。そうした中で、やれることとしては、科研費の直接経費等で払っている部分、研究ではないところで払わざるを得なくて払っている部分をとにかく減らしていくということ。端的に言うと、例えば今、国分参事官のところで頑張っていただいていますけれども、オープンアクセスで、例えばAPC代、Nature1本載ると200万円ですよ。200万円のAPC代がかかる。
 それを科研費から払っているということは、ばかばかしいので、そういったところを個別に200万円払うのではなくて、集団交渉することによって、もっとその値段を、1人1人の研究者が払う金額を下げる。200万円、1人で払うのではなくて、集団交渉をすることによって下げる。そうすることで、実質的に使える科研費の実質的な量が増えるということをしていかないと、または共同利用・共同研究だったり、コアファシリティだったりを使って、1人1人が何か機器をみんな買うのではなくて、うまくそういったところを共同利用・共同研究、共用することによって科研費で、1人1人が払っている部分を下げることによって、実質的に研究費として使える部分を増やすということをしていかないといけないのかなと思っているところです。
 すみません、最後、余計なことを言いましたが、以上です。

【観山部会長】  論文雑誌社との戦いはやっぱり非常に重要で、もう政府として対応しないといけないレベルだと思います。各大学だとか、各研究者のレベルを超えていると思います。ありがとうございました。
 それではまだ質問やご意見は、まだまだあるのだと思いますけれども、時間もだんだん近づいてきましたので、本日は、どうもありがとうございました。先ほど申しましたように、今期で最後になりますので、私からお礼を申したいと思います。本当にお忙しい中、この基礎研究振興部会に参加いただきまして、様々な観点から御意見をいただき、ありがとうございます。
 ただ、今、委員の方々から御意見をいただいたように、日本の状況というのはなかなか厳しい状況で、予算的な問題、それから、人的な問題、それから、国際的な中でどうやっていくか、それから、新しい分野にどのように研究を活性化するか、それから、もう本当に進展が激しいAIとか、そういう分野に量子研究だとか、そういう分野にどうやっていくかというのは、非常に課題は大きいと思いますけれども、ぜひとも今後とも様々な形で御協力、御意見をいただければと思います。2年間、本当にどうもありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局からも御挨拶をいただきたいと思います。塩見研究局長から御挨拶をお願いいたします。

【塩見局長】  文部科学省研究振興局長の塩見でございます。観山部会長をはじめとする基礎研究振興部会の委員の皆様、お忙しい中、2年間、誠にありがとうございました。今日の御審議でも出ておりましたけれども、この2年間を振り返って考えますと、AI技術の飛躍的な進展ということが大変大きなインパクトを与えてきた、そうした期間だったように感じております。
 先ほど来、事務局からの報告にもございましたけれども、こうしたAIに関する研究でありますとか、また、このAIをいかに科学研究の中に取り入れていくかといった点についての様々な検討、また、開発も進んできた。そうした時期でもあったと考えております。
 また、本日、御審議いただきました事項にもございますけれども、次の第7期の科学技術・イノベーション基本計画に向けて、基礎研究の振興という観点から、先生方にはまた貴重な御意見も賜りまして、ありがとうございます。今日の御議論にもありましたように、本当に課題は多々あると我々も認識しております。
 まず、予算の点につきましても、様々、御意見を頂戴いたしましたけれども、我々としましても、この予算の増額ということに向けまして、未来に向けての基礎研究の大事さということをいかに社会の中でも御理解をいただくか、その上でいかにして人も、また、資源も得ていくことができるようにしていくかということについて、しっかりと考えていかなければいけないと思っております。
 本当に難しい課題が多うございますけれども、ぜひ今後とも先生方から様々な観点から御指導、また、御意見もいただきながら、この難しい課題を乗り越えるべく、共に取り組んでいければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。このたびは、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして第17回科学技術・学術審議会基礎研究振興部会を閉会させていただきます。
 運営規則第7条に基づいて、本部会の議事録を作成し、資料とともに公表することになっております。本日の議事録については、後日、メールにてお送りいたしますので、御確認をいただければと思います。本日は、どうもありがとうございました。これで閉会とさせていただきたいと思います。失礼いたします。
 
―― 了 ――

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