令和6年8月6日(火曜日)16時00分~18時00分
オンライン開催
観山部会長、佐伯部会長代理、有馬委員、上杉委員、小泉委員、齊藤委員、品田委員、合田委員、辻委員、長谷山先生、前田委員
研究振興局長 塩見みづ枝、大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当) 松浦重和、研究振興局基礎・基盤研究課長 中澤恵太、研究振興局基礎・基盤研究課 融合領域研究推進官 葛谷暢重
京都大学名誉教授 永江知文、東京大学大学院理学系研究科附属原子核科学研究センター准教授 郡司卓、国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS)フェロー 福島俊一、国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS)フェロー 茂木強
【観山部会長】 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第16回科学技術・学術審議会基礎研究振興部会を開催いたします。
本日の会議ですが、本部会運営規則に基づき公開の扱いにいたしますので、御承知おきお願いします。
まず事務局より、本日の出席者と議題の説明などをお願いいたします。
【葛谷推進官】 本部会の事務局を担当しております、文部科学省基礎・基盤研究課の葛谷と申します。よろしくお願いいたします。
まず、本日の委員の出席状況につきましては、現時点では13名中10名の委員の方に御出席いただいております。齊藤委員におかれましては、途中からの御参加と聞いております。美濃島委員、城山委員におかれましては、本日は御欠席の御連絡をいただいております。
本日は、議題(1)の関係で、京都大学名誉教授、永江知文先生、そして東京大学大学院理学系研究科附属原子核科学研究センター准教授、郡司卓先生に御出席いただいております。
また、議題(2)の関係でございますが、国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター(CRDS)フェロー、福島俊一様、茂木強様にも御出席いただいております。
続きまして、配付資料を確認いたします。資料は、議事次第の配付資料の一覧のとおり、事前にメールしておりますが、欠落等ございましたら画面越しに手を挙げ、お申し出いただければと思います。
よろしいでしょうか。御確認ありがとうございました。
また、事務局において人事異動がございましたので、お知らせいたします。
7月12日付で、基礎・基盤研究課長に中澤課長が着任しております。中澤課長より一言御挨拶をお願いいたします。
【中澤課長】 基礎・基盤研究課長を拝命いたしました中澤でございます。
既に各委員の先生方、いろいろな場でこれまでもお世話になっている部分あろうかと思いますが、これからしっかりと政策のほうを進めさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。
続きまして、本日の議題について御説明いたします。中澤課長より、よろしくお願いいたします。
【中澤課長】 本日、議事次第にありますとおり、4つの議題を想定してございます。1つ目は、EIC計画及びこれに関連する原子核物理学の新たな展開に関する中間報告ということで、ワーキンググループを設置して検討してきたことを中間報告として取りまとめいただきましたので、この場で御報告いただくというところが1点目でございます。
それから2点目につきましては、Physical Intelligenceということでございます。革新的な人工知能に関する研究、革新的なAIロボット研究という点について、これまで何度かこの部会においても御議論いただいたものについて、今後、概算要求ということも1つ念頭に置いた状況ということで、こちらは事務局のほうから御説明させていただきたいと思っております。
それから、資料3については、第7期科学技術・イノベーション基本計画の検討に向けた意見になりますが、5年に一度、科学技術・イノベーション基本計画が取りまとめられます。これは文科省が協力した下で、最終的には内閣府がまとめつつ閣議決定をするものでございます。今後、この第7期基本計画の検討に対して、各科学技術・学術審議会の幾つかの部会から意見を集約していくことになっています。これまでこの部会においては、この議題について特段取り上げて議論したことはございませんが、これまでいろいろ議論してきた内容を1枚の紙にまとめさせていただいてございますので、こちらについて御意見をいただき、部会として意見をまとめることができればと思っております。
それから、最後の議題は、創発的研究支援事業、こちらについては文字どおりその進捗状況ということで、この場で御報告いただき、何らか御助言いただければということで考えてございます。
以上でございます。
【葛谷推進官】 ありがとうございました。事務局からの説明は以上でございます。
【観山部会長】 それでは、議事に入ります。
まず、議題(1)EIC計画及びこれに関連する原子核物理学の新たな展開に関する中間報告です。文部科学省から説明をいただいた後に、委員の皆様より御意見を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いします。
まずは、文部科学省より御説明をお願いいたします。
【村松室長】 素粒子・原子核研究推進室長の村松でございます。
取りまとめいただいた中間報告は資料1-2ですが、分量が少々ありますので、資料1-1の概要に沿って説明させていただきます。
最初にこの有識者会議の構成員を説明させていただきたいと思いますので、資料1-2の13ページ目を御覧ください。構成員10人の先生から成る会議で、京都大学の永江先生に座長、KEKの三原先生に座長代理をお願いいたしました。原子核物理学そのものもかなり幅広い分野であり、低エネルギーから中エネルギー、高エネルギーまで、そして理論研究と、非常に幅が広い分野ですので、それらの各分野に知見のある先生にバランスよくお入りいただきまして、それから素粒子分野という比較的近接した分野の先生、加速器にも詳しい先生にもお入りいただきつつ、原子核分野と近年連携を進めていく方向が徐々に出来つつある量子コンピュータ・量子情報分野の先生、エネルギー科学・核融合科学の先生にも御参加いただいて、合計10名の先生で5月から3回、議論をしてまいりました。
それでは、資料1-1を御覧ください。
我が国の原子核物理学の現状と課題について整理しています。これまで国内での大型実験施設RIBFやJ-PARCと、国際共同実験、CERNでの実験やブルックヘブン国立研究所での実験等への参加を通じまして、クォーク・グルーオン・プラズマの発見やニホニウムの発見など、優れた研究成果を創出してきました。この分野においては、近年、我が国の研究者数や、いわゆるトップ10%論文数は減少傾向にあります。その一方で、我が国の若手研究者が国際共同実験を主導する研究ポストを獲得して活躍しているというようなこともありますし、当該分野を志す大学院生の数も、近年増加している状況にもあります。
このような状況を踏まえますと、ぜひ若手研究者等を惹き付けて、この分野への参加を促していくような環境の整備が必要ではないかと、現状認識をしています。このような現状認識の下、EIC計画への我が国の参画及びこれに関連する原子核物理学の新たな展開について議論を行いました。
我が国の原子核物理学が目指す方向性ですが、原子核物理学は広い分野と関連する現代物理学の基本概念が集約された学問であり、量子物理学を広い階層で活用するために重要な役割を果たすのではないかという意見がありました。そのために原子核物理学を起点として、理論・実験・計算科学を融合して、階層を超える量子ダイナミクスの普遍的な法則の解明を目的とする「マルチスケール量子ダイナミクス研究」の創出を目指すという方向性がよいのではないかという意見が出されました。さらにエネルギー分野や量子技術分野のイノベーション創出にも貢献するという考え方も示されました。
2ページ目を御覧ください。原子核物理学の新たな展開とEIC計画についてです。EIC計画の成果を活用しまして、量子同士の干渉が保持される性質や、量子が多数集まったときに初めて発現する現象や機能に関すること、また、日常環境下で現われる量子現象等を理解し、マルチスケール量子ダイナミクス研究推進への貢献が考えられます。それに加えて、陽子の質量とスピンの起源の解明などの科学的成果や、新たなエネルギー源の開拓、量子コンピュータ実現への貢献などの広範な応用への期待が挙げられております。
EIC計画への参加体制についてですが、日本グループは40代の研究者を中心に、30代の多くの若手研究者とともに、我が国の強みを生かして計画の成否に関わる測定器と、データ収集・分析系を担当して、科学成果の創出を主導することとしており、その中でまず理化学研究所は、米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)にEICの拠点を整備して、測定器の建設やストリーミング型のデータ収集システムの配備、日本から来る研究者の受け入れ、マルチスケール量子ダイナミクス研究の創出を目指した取組を実施する予定としています。
大学は、国内のアカデミアの知を糾合して、優秀な人材を確保して、BNLに派遣をするとともに、測定器とデータ収集技術の国際標準化等を主導することとしています。
総合的所見として、EIC計画への我が国の大学・研究機関の参画及びこれに関連する原子核物理学の新たな展開を積極的に進めていくため、文部科学省は理化学研究所、東京大学、大阪大学等の関連する機関や研究者の取組を積極的に支援していくことが必要であるという提言をいただいています。
また、若手研究者が国内外の多様な実験に参画してスキルアップしていける体制の整備等の留意点もいただいておりまして、それらについては今後も議論を進めていくことが必要であるとの提言をいただいています。
事務局からの説明は以上です。
【観山部会長】 ありがとうございました。今の説明を踏まえて、委員の先生方から御質問等ございますでしょうか。挙手ボタンでも、実際に手を挙げることでも結構だと思いますけれども、いかがでしょうか。有馬先生、どうぞ。
【有馬委員】 有馬です。御説明どうもありがとうございました。
EICに関しては、第14回の基礎研究振興部会でもお話があったと思いますけれども、非常に大事な計画だということと、プラス波及効果をどのように書くかというところで議論があると思います。あまりきちんとは書かれてはいないけれど期待していることの1つがおそらく測定器のところで、ダイレクトに高エネルギーの測定器をつくるということだと思います。ただ測定器には信号処理などいろいろな技術があり、民間に技術的な波及があるとすると、様々な検出器系の高度化ということが1つ大きいのかなと思っています。量子コンピュータなどはやはりエネルギースケールが違い過ぎるとは思っているのですけれども、一方で、例えば信号処理にAIをつけるなど、広範という意味ではそちらかなと思っています。そのようなこともぜひ意識していただいてやっていただくと良いのかなと思っています。
以上です。
【観山部会長】 何かお答えがありますでしょうか。よろしいですか。
【村松室長】 事務局です。御指摘いただいたとおり、測定器に関する部分はいずれも純国産の技術基盤を用いておりまして、国際共同実験に参画することを通じて国際標準化を目指すこととしています。また、それは我が国の産業にも裨益するものであるということが本文の中にも書かれています。概要には書ききれませんでしたが、産業波及も意識して、この取組を進めていきたいと思います。
以上です。
あと郡司先生から何かあれば。
【郡司准教授】 どうもありがとうございます。これから開発および量産するものは、純国産の技術で、既にある程度の技術が実証されているものなのですけれども、このような大規模実験は20年、30年稼働し、途中半ば10年毎に必ず測定器のアップグレードがあります。そこで、さらに挑戦的で波及性の高い、例えば、非常に高時間、高空間分解能を持つセンサー、センサーからの高密度な信号を処理するための三次元積層の回路実装技術、オールフォトニクスを使った省エネの高速データ転送、その後の大規模なデータ収集系というところが、社会に応用できる技術の確立に向けて、加速器実験で実証できると思っています。測定器や信号処理やデータ収集技術を非常に大事にして、我々も次の一手を計画しています。
【観山部会長】 ありがとうございました。では小泉先生、お願いします。
【小泉委員】 では、小泉です。
資料1-2にある中間報告を読ませていただいて、特に最後のところ、第14回にこの場で議論して私からも申し上げたように、国民の理解、社会へのアウトリーチの大切さというところも書いていただいてありがとうございます。特にやはり資料1-2の12ページ目の今後の留意点のところ、他分野との連携とか、それから人材育成、それから社会や国民からの支持といったところは、やはり研究のとがった部分とはまた別に、今後の広がり、未来へ向けた人材育成だったり社会からの支持だったりというのはとても重要だと思いますので、中間報告ではそこはまだ十分に議論されてないと思いますけれども、今後この点は引き続き、広がりという点での議論は是非していただければと思っております。
以上です。
【永江名誉教授】 非常に貴重な御意見ありがとうございます。ぜひしっかりやってみたいと思います。
委員の間で議論したときにも、単にお互いのところの学生同士の取り合いになるようなことなく、お互いのところで若手がそれぞれ育っていくと。その中で両方の分野がそれぞれまた育っていくという、そういう視点が必要だろうということで議論を進めたところでありました。
【小泉委員】 どうぞよろしくお願いします。
【観山部会長】 ほかの先生、いかがでしょうか。
では、私のほうから二、三お伺いしたいところがあります。まず、今のお話にもありましたけれども、先ほど40代、30代が中心となってということでありました。多分、大学院生も現地、ブルックヘブンに参加して実験装置をつくったり、それから、実験に参加したりするということなのでしょうけれども、何人ぐらい想定されているのでしょうか。
【永江名誉教授】 新しいディテクターのデザインがしっかり決まってない段階では大分訂正は大きいかと思いますけれど、多分50から100人ぐらいの人がディテクターの開発ということで現場にいるような形になるのではないかと思います。
【郡司准教授】 学生や大学院生に関しては、量産、建設、運用初期の非常に忙しい時期には30~40人ぐらいを見込んでいます。現在はまだ20人くらいですが、今、EIC日本グループはどんどん広がっています。この前も東北大学がEICの実験グループに正式に参加表明したり、色々な大学にも声かけをしているところで、今後広がっていくと思います。
【観山部会長】 私は宇宙とかそういう分野なのですけれども、やはり若手の人が海外に行って、現地に滞在して、海外の研究者と意見交換をしながら、物をつくったり実験するということは、なかなか大変なのですけれど、非常に貴重な体験です。その中から国際機関で働いていくような学生、研究者も増えてくるということは非常によい機会であります。大変期待するところです。
一方、これは最近の状況ですけれども、物価というか、西海岸は日本と3倍ぐらい物価が違いますよね。30~40人となると、なかなかそういう支援が大変なのではないか。大体ラーメン1杯3,000円以上ぐらいかかると聞いています。そのようなわけで色々なサポートも必要だと思うのですが、そのあたりのサポートというのは大丈夫なのでしょうか。
【郡司准教授】 ブルックヘブンはもともと敷地内にすごく広いアパートメントがあり、周囲と比べて割と安く宿泊できるなど、それなりに生活環境が整えられていました。ただ、最近は、ブルックヘブンの中で食べられる食堂がなくなってしまうなど、生活を支えるインフラの低下がみられます。衣食住に関するサポートは、EICの実現と合わせて向上してくると思います。所内に宿舎や割と比較的安く泊まれるところとかもできてくると期待していまして、大丈夫ではないかと思っております。でも、物価が高いのは事実でして、今まで以上にお金がかかるところはあるとは思います。
【観山部会長】 それでは、品田さん、どうぞ。
【品田委員】 すみません、ありがとうございます。資料1-1に大学院生の数が近年増加ということでグラフが載っていて、22年から23年でぐいっと上がって、これはゆらぎを超えて何か理由があるようにも見えるのですが、何かその辺の分析というのはなされていらっしゃるのでしょうか。
【村松室長】 事務局です。何人かの原子核物理学の先生方からヒアリングをした中では、先生方の体感として大学院生の数が増えているとのことでした。実際に数えてみたら直近の年度では増えていました。大学院に進学してきた学生と話をした先生によると、博士課程学生の支援が充実したというのが大きいという意見を一番多く聞きました。
以上です。
【品田委員】 ありがとうございます。
【観山部会長】 ただ、私の印象ですが、以前に比べると原子核物理分野というのは、大学院生とかがほかの分野に比べては少し減少気味だと思いました。なので、こういうやっぱり最先端の研究施設ができるということは、若手の人たちが当該分野に参加するというところで1つの契機になるのではないかと思います。
基本的にこのエネルギー分野で、平行ビームで実験をするとなると、それ以上の高エネルギーの分野との連携というか、このエネルギー分野だけで閉じない部分がどうしても出てくるのではないかと思うのですけれども、他の高エネルギー実験との連携などはどのように考えられているのでしょうか。
【郡司准教授】 Electron-Ion Colliderは、実は素粒子物理もできる加速器です。素粒子物理学は幅広いのですけれども、標準模型を超える事象の幾つかをEICで検証することが可能です。LHCよりも強いチャンネルもあります。現に、EICの日本グループの中には、素粒子物理の研究を行っている大学も入っていて、日本グループの中で高エネルギーの人たちと協力してやっているところはあります。
もう一つ、素粒子物理分野と大きく手を取り合ってできることが、先ほどにも挙がりましたが、測定器の技術とデータ収集の技術です。それらの技術に関しては、ニーズ等も含め、オーバーラップしている部分が多くあります。数週間前にKEKで研究会を一緒に行うなど、今後ますます手を取り合って技術開発を進めていく体制になっていくと思います。
【永江名誉教授】 ディテクターの部分でいうと、原子核だ、素粒子だという区別はもうないというのが我々の認識です。
【観山部会長】 ほかに先生方、何か御質問ないでしょうか。
阪大とか理研とか国内施設もあるわけですが、EICが動き始めた場合に、その連携というのは、特に若手の研究者にとってどういう形を展望されているのかお聞きして、私の質問はおしまいにしたいと思います。
【永江名誉教授】 やっぱりディテクターにおける協力というのが一番強いかなと思います。日常的には国内にある研究施設を使いながら、年のある時期、アメリカに滞在しながら研究を続けるということで、そのバランスでお互いいいものを見つけようということだと思います。
【郡司准教授】 私のほうからは、例えば、理化学研究所は、ブルックヘブンに理研BNLセンターという拠点を持っていて、ブルックヘブンのRHIC加速器を使った実験をサポートしています。日本人研究者が長期で滞在する際には、研究所の中の衣食住に関するインフラや研究環境の整備など、非常に手厚くサポートしています。大学と連携し、若手の研究者がブルックヘブンに長期滞在するためのサポート体制をEIC向けに構築していきたいと思っています。
大学側は、EICを契機として、これまでの各研究室についているノウハウを組織につけてコミュニティ全体で研究力や技術力を継承するような、ネットワーク型の新しい拠点を、東京大学を中心としてつくろうとしています。各大学が強みを持ってネットワークに参加し、EICを始めとする様々な国際的な研究を日本が主導できる体制を作ります。EICに関しては、データがたくさん出てくるので、例えば、予算はないけれどEICの研究に参加したいというような声も拾ってきちんとサポートできるような体制を作りたいと思っています。大学間のネットワークと理研がうまく連携して、若手研究者が現地で長期的に研究を主導できる体制をきちんとつくっていきたいと思います。
【観山部会長】 ありがとうございました。
時間はまだありますけれども、よろしいでしょうか。
それでは、どうもありがとうございました。今後もどうぞ御活躍いただくことを期待しております。
【永江名誉教授】 どうも失礼いたしました。
【観山部会長】 どうもありがとうございました。
【観山部会長】 では、続いて議題(2)フィジカル・インテリジェンス研究開発の方向性についてでございます。まず、事務局より御説明をお願いして、その発表後に委員の皆様から御意見を頂戴できればと思っております。よろしくお願いします。
【葛谷推進官】 それでは、フィジカル・インテリジェンス研究(革新的なAIロボット研究)について、資料2に基づいて御説明いたします。また、参考資料として参考資料2から4をつけております。こちらにつきましては、これまでCRDSさんのほうから御説明いただいた資料をつけております。
フィジカル・インテリジェンス研究につきましては、前々回、前回の過去2回議論をしており、本日は来年度の概算要求に向けて、どのような方向性で研究開発をしていくのかといったものを取りまとめておりますので、ぜひ御意見をいただければと思っております。
また、資料の構成としては、前半6ページまでは、これまでに御説明した資料となりますので簡単に御説明し、後半部分を中心に御説明したいと思っております。
それでは、2ページ目をお願いします。こちらは、なぜこのタイミングでフィジカル・インテリジェンス研究を進めるのかといったところでございます。AI技術の飛躍的な進展、AIアルゴリズムとか半導体、そしてロボットにおける技術的な進展、こういったものと相まって、これまで課題でございました変化する実環境に柔軟に対応できるフィジカル・インテリジェンス、こういったものの研究開発の開発・実装ができるようになってきました。
具体的には、AIが物理的な身体機能(ロボット等)を獲得することによって、右下にございますけれども、これまでそれ自体物理的動作ができないスマホなどのデバイス、端末が、左側でございますけれども、身体機能、機械等と融合することによって、AI自体が物理的動作が可能になる、こういったことが行われていくのではないかと考えております。
世界はこの動向を捉え、大規模な投資を行う向きがございまして、いち早く重要技術を日本としても獲得し、この変革のイニシアチブを取っていくべきではないかというところを考えております。
3ページをお願いします。こちらは技術シナリオと、今後の社会イノベーションシナリオの概観をまとめたものでございます。下側に技術シナリオとして、半導体、AI、ロボットについてまとめております。半導体につきましては、現在から右側を御覧いただければと思いますけれども、ラピダス社がノード2ナノメートルを2027年、そして、短TATパイロットラインの構築を2020年代後半にということで、今後さらなる微細化、そして、専用・多品種といったような動きがございます。
AIにつきましても、AI基盤モデルの後、マルチモーダル化が進み、さらに推論計算の進展、そしてエコでエッジな知能化、こういった流れがあると思っております。
ロボットにつきましては、知能ロボット、産業用ロボットが、実験分野において自動化が進みつつあり、今後、非定型・多品種・少量生産を中心とした幅広い分野に広がっていくのではないかと考えております。
こういった状況を踏まえ、社会経済イノベーションシナリオを見てみますと、これまでPC、スマホといったところから、次にEV、自動運転といったところを想定されておりますけれど、その次に、エコで省人化が可能であるフィジカル・インテリジェンス、AIロボットといったものが登場してくるのではないかと考えているところでございます。
4ページをお願いします。海外におけるAIロボットの研究開発の動向でございまして、例えばテスラ社においては、自動運転技術を応用したAIロボットが開発されております。ほかにもOpenAI、そしてスタンフォード大学など、研究開発が進められているところでございますけれども、全てほとんどのロボットにおいてはまだ基本的な動作のみができるところであり、まだまだ高度な動作、そして高速性、リアルタイム性、こういったところに課題があるといった状況でございます。
続きまして、資料5ページ目でございます。こちらはフィジカル・インテリジェンス構想として、これまで御説明しましたけれども、推論計算、こういったものが今後技術的に進展することによりまして、知能と身体機能が融合し、研究の潮目が大きく変わると思っております。これまで課題と言われてきた社会的受容性が高いAIロボット、こういったものが知能と身体機能システムの融合によって可能になってくると考えているところでございます。
6ページ目、お願いいたします。続きましては、考え得る導入シナリオと目指すべき目標でございます。こちらについては、効率的に研究開発、効果的に研究開発を進めていくために、バックキャストの視点からの研究開発を検討しておりますので、まず、目指すべき目標を定め、それに向かってどのようなシナリオでロボット、AIロボットといったものが社会に入っていくのか、こういったものをまとめたものでございます。
まず、目指すべき目標、上側でございますけれども、実環境で利用拡大につながる導入課題として、社会受容性、経済性、拡張性、データ、こういった観点、そして地球規模課題、社会課題の観点から、省エネ、省人化、こういったものを踏まえまして、目指すべき目標としては、高い社会受容性を持ち、実環境、いわゆる開かれた環境で能動的に学習・進化する汎用人工知能機械(AIロボット)、こういったものを定めているところでございます。
下側に、この目標に向かってどういった技術をベースに、ロボット、AIロボットが社会に入っていくのかといったものをまとめたものでございます。まず、横軸でございますけれど、右下のほうにございます実世界タスクの種類拡大・高速化ということで、米印3ということで少し小さい字で恐縮でございますけれども、こちらの横軸については、ある程度限定された環境の下で1台のシステムが様々なタスクを実行可能、タスクに応じた高速な操作などが可能といったものでございます。
一方、縦軸でございますけれども、実環境の多様性・複雑性ということで、こちらは米印2でございますけれども、タスクの種類といったものはある程度限定されておりますけれども、環境や条件、多様性・複雑性、こういったものがあってもロバストにタスクが実行可能といったところのため、それぞれシナリオA、B、Cの3つを考えております。
シナリオAでございますけれども、自動運転技術をベースにしたAIロボットでございます。既にテスラ社においても、先ほど御説明の中で自動運転技術をベースにしたAIロボット研究が進められておりますけれども、自動運転といったものが先行した場合には、自動運転技術をベースにしたAIロボットが考えられないかと考えております。
続いて、右下、シナリオBでございます。こちらは日本が強みを持っております産業ロボットに関係するものでございますけれども、産業ロボットの知能化、こういったものがシナリオBでございます。
そしてシナリオCが、これまでの延長線上にない革新的なアプローチということで、前回の部会において國吉先生から御説明いただいた研究、まさにああいった研究が、このシナリオCに該当すると考えております。
次のページをお願いします。ここからが、新しい内容でございます。こちらは前回、CRDSさんのほうにおいて御説明いただきました技術課題などを踏まえまして、考え得る導入シナリオと目指すべき目標を踏まえた重要技術課題をまとめたものでございます。
左下に、重要基盤技術(共通)といったものがございます。こちらはシナリオAとシナリオBに共通する基盤技術をまとめたものでございます。大きく3つございまして、1つ目が知能コアシステム開発、2つ目が知能と身体機能システムの融合、そして、3つ目がAIロボット開発といった観点でまとめております。
例えば、知能コアシステムにおいては、身体性に基づく(模倣型)AIモデル開発や、上から3つ目、身体性に基づく知能基盤、いわゆる能動的に学習するような知能システムの開発、そしてその下、超高効率な知能システム開発、こういったものが考えられます。続いて、知能と身体機能システムの融合でございますけれども、AIと身体機能システムのリアルタイム性を実現、そして次でございますけれど、物理世界とサイバー空間の融合、シミュレーション技術の高速化・高精度化といったものを挙げております。そして、AIロボット開発については、汎用人工知能を最大限に活用できる形状のAIロボット開発、こういったものを考えております。
続いて、シナリオA、左上でございますけれども、こちらはシナリオAの重要技術課題ということで、シナリオAに特化した技術でございます。知能コアシステム開発に関してでは、自動運転技術をベースにしたAIモデル開発、こういったものがあると考えております。
続いて右下、シナリオBに関係する重要技術でございます。こちらについては、特定の業種・環境に対応する頑健性のあるAIモデル開発、こういったものを挙げております。
8ページ目をお願いします。次のスライドにおきましては、先ほどまとめた重要技術課題について、短期、中期、長期といった時間でまとめたものでございます。今回、文科省としてターゲットにする技術課題については、中期、長期、この赤で囲ったところを考えております。例えば中期においては、上の知能コアシステム開発については、身体性に基づく知の基盤(能動的に学習する)知能システム開発や、右側の長期(10年程度以上)につきましては、超高効率の知能システム開発、こういったものを考えております。
また、知能と身体機能システムの融合に関する中期に該当する技術としては、2つ目のポツでございますけれども、AIと身体機能システムのリアルタイム性を実現や、長期に関しては、物理世界とサイバー空間の融合、こういったものを挙げております。
また、AIロボット開発について、長期としてはAGIを最大限に生かせる形状のロボット開発、こういったものを挙げております。
9ページ目を、お願いいたします。これまでまとめた技術を踏まえまして、来年度に向けて進めていく研究開発の大きな方向性をまとめた資料でございます。まず、大きく研究内容といたしましては、真ん中にございますけれども、能動的に学習・進化する革新的なAIを開発、そして搭載し、エッジの知能化により、エコで知能と身体機能システムのリアルタイム性を有するAIロボット(フィジカル・インテリジェンス)の実現に向けた研究開発を推進していくということを考えております。
先ほどお示しした共通基盤技術の3つの観点については、中核拠点として3つを設置して、その3つが連携して研究開発を進めていくといったところを考えております。1つ目が、革新的な知能コアシステム開発として、能動的に学習・進化する知能システム開発や、超高効率・省エネな知能システムの開発、こういったものを考えております。2つ目、知能と身体機能システムの融合については、エッジの知能化やエッジ間の処理・通信システム開発や、現実世界をサイバー空間に高精度に再現する技術、こういったものを考えております。そして、AIロボット開発については、AIを最大限に生かせる頑健性、柔軟なロボットハードウェア開発、こういったことを考えております。
あわせて先ほど御説明したシナリオAとBに特化した、いわゆるユースケース関係でございますけれども、こういったシナリオAやBやCに特化したAIロボット開発ユースケースとして進めていくことも考えております。
こういった技術開発を通じまして、下側でございますけれども、知能と身体機能のリアルタイム性とマルチタスクを兼ね備えたAIロボットの実現、こういったものが可能になっていくのではないかと考えているところでございます。
続いて、参考資料でございますけれども、11ページでございます。前回、政策文書のアップデートをしておりますけれど、さらに前回会議以降に出ました政策文書について少し御紹介したいと思います。
1つ目が、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024の改訂版ということで、ここの中でAIのイノベーションとAIによるイノベーションの加速の中で、労働力不足の解消はGX等に資する革新的なロボット等の研究開発・実装等を官民で加速するといったところが挙げられております。
また、真ん中のほうでございますけれども、経済財政運営と改革の基本方針2024、いわゆる骨太でございますけれども、この中においても、下側でございますけれども、AIや半導体の中で、AIに関する競争力強化と統合イノベーション戦略2020に基づき、研究開発力の強化といったところを挙げられております。
統合イノベーション戦略2024につきましては、次のスライドの下側でございますけれども、3つの強化方針、AIのイノベーションとAIによるイノベーションの加速の中で、先ほどのところでも御説明しましたけれども、労働力不足の解消、GX等にも資する環境変化にも柔軟に対応可能な革新的なAIロボット等の研究開発、実装を官民で進めるというあたりがまとめられているところでございます。
私からの説明は以上でございます。
【観山部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、今の発表を踏まえて、委員の先生方から御質問等ございますでしょうか。前田先生、お願いします。
【前田委員】 御発表ありがとうございました。3つシナリオの中があり、日本はシナリオBの分野が強いとご説明いただきました。単純に考えると、日本はシナリオBが強いのであれば、そこを重点的に攻めていくのが良いのではないかと思ったりもするのですが、同時にシナリオCが一番革新的に見えたり、良さそうな雰囲気もあったりして、その辺りはどのようなバランスで考えていらっしゃるのか教えていただければと思います。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。シナリオBについては、資料の中では産業用ロボットの知能化ということで、日本がもともと産業用ロボットに強みを有しているところでございまして、こういったところにAIを融合することによって、最終的なゴールが実環境に開かれた環境の中で能動的に学習・進化する汎用人工知能、機械というところで、そのゴールに向かって進んでいく1つのパスであるというように考えております。
一方で、産業用ロボットの強みとしては、高速性や精度、こういったものを閉じた環境の中で、これまでいろいろと産業分野の中で活躍しているロボットでございまして、そこから開かれた環境に行くというパスがどれだけうまくいくのかというのは当然課題があると思っております。ですので、ロボット自体は強みがあるものの、ゴールに向かってこれだけのパスでは、本当にそのゴールへ向かっていくのかどうか分からないといったところがございますので、他のパスも示しているところでございます。
一方で、シナリオAに関していうと自動運転技術ということで、例えば自動運転であれば開かれた環境で既に動いているものでございまして、その技術を使って開かれた環境の中で進めていく。ただ一方で、高速性とか高精度といったところではまだまだ産業用ロボットに比べては見劣りするところがあると思うので、そこを克服していかないといけないという課題があって、それぞれに課題があると思っております。
一方シナリオCについては、革新的なということで第15回基礎研究振興部会で國吉先生に御説明いただいたようなところで、文科省的な研究開発に近いところでございますけれども、こういったものを通じて、全く想定されないようなパスでこのゴールに近づいていくと、こういった様々なシナリオに対してしっかりと措置をしていくということが重要ではないかということでまとめたものでございます。
【前田委員】 ありがとうございました。
【観山部会長】 バックキャストと言われたのですけれども、これを見るとやっぱりフォアキャスト的な感じがして。例えば、今、日本では人口を減少のことで、例えば土木や建設に携わっている人たちが非常に少ないとか足らないとか、宅配だとか、お医者さんというか、特に体を動かす手術だとか、そういう分野をAIロボットが担っていくということで、そういうことのためにバックキャストとするとどうなっていくのかとかいうような形にしないと、イメージがなかなか湧かないのではないかなと思うのですけれども、それは飛躍し過ぎですか。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。重要な御指摘だと思っておりまして、フィジカル・インテリジェンス研究においては、1つの課題、省人化という対策、いわゆる少子高齢化、労働力人口減少という観点で対応していかないといけないというところも考えております。
一方で、資料6ページ、前回も御説明したところでございますけれども、これまでのロボット研究においては、社会受容性というのが大きなキーワードになってきたかと思っております。実環境で利用拡大につながる導入課題として、例えば、介護とか、まさにロボットが大事だと言われているところでございますけれども、まさに介護は人との関わりが大きいところでございまして、例えばロボットが少しミスをして、動作不良を起こしてけがを起こしてしまったとか、こういったことによってロボットの導入というのはなかなか進みづらくなってしまう。こういった課題もあるので、まず、社会受容性といった観点、人と関わりが少ない環境、肉体的負担が大きい労働環境、こういったところも見据えながらロボット研究を進めていく必要があると思っておりまして、その結果の延長上に、介護とか、例えば医療現場、そういったところにも活躍できるロボットがあると思っております。
他方で、土木とかこういったところについては、物を運んだりするとか、そういったものについては確かに肉体的負担が大きい労働環境ということで、これまで使っている産業ロボット、倉庫などで使っているものを屋外で使っていくとか、こういったものの可能性は十分あると思っておりまして、こういった段階を経てロボット研究開発を進めていくべきではないのかなと考えております。
【観山部会長】 お医者さんでも、患者に対応する仕方だとか介護だとかという、人間の豊かさ、優しさみたいなものが必要な部分というのは後に残っていくのではないかと思いますが、機材を運んだり、それから、自動運転で運転していって物を宅配、届けるとかいうことは、温かみとかそういうものももちろん必要なのですけれども、物理的に負荷がかかっている部分を対象にして、それをバックキャストしていくというような形を取っていかないと、やっぱり今までのつくり方ってどうしてもフォアキャストの感じがします。今のAIを使ってロボットに載せたらどうなのだろうとかという感じだと、社会的な認知や影響力というのが難しくなるのではないかという、感想ですが持ちました。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。しっかりいただいた御意見を踏まえて検討していきたいと思っております。
あわせて一応、参考に先ほどの6ページのところに、今お話があった点、小さい字でございますけれども、自動運転技術をベースにしたモビリティ型ロボットの中に、自動運転×物流ということで、運送・宅配・買物ロボット、産業向け自立ロボット、AIロボット、シナリオBの中で、例示として製造業に使うようなロボットとか、建設業に使うロボットといったものも挙げておりまして、おっしゃるとおりそういったところをしっかりと念頭に置きながら、研究開発を進めていければと思っております。ありがとうございました。
【観山部会長】 品田先生どうぞ。
【品田委員】 ありがとうございます。私、聞き逃してしまったかもしれないですけれど、8ページには重要基盤技術、シナリオAの重要技術、シナリオBの重要技術とあるのですが、シナリオCに特化した重要技術というカテゴリーはないということですか。それはもう重要基盤技術に含まれていると。シナリオCこそ革新的な技術課題があって、そこを国として支援というか注力すべきなのかなと少し思ったものですから、その点を教えてください。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。御指摘のとおりで、シナリオCについては、技術の特定といったところが難しい分野ということで実は入れていないところがございましたけれども、基本的にはやっぱり長期に関係するような技術、中長期に関係する技術でございますので、下のほうの米印とか、そういったところで例示として挙げておきたいと思います。やはり革新的なアプローチということで、今既に分かっている技術であれば、そこは整理できる可能性があると思っておりましたので、そのような整理の下で、どういった技術が来るか分からない、そういったものの対応を込めて書いていなかったというのが実態でございます。
【品田委員】 分かりました。何かこうあったらいいな、具体的に何をやるというよりも、こういうことができる技術というような捉え方でも書けるかなと思うのですが。
【葛谷推進官】 分かりました。ありがとうございます。いただいた意見を踏まえて修正したいと思います。
【品田委員】 ありがとうございます。
【観山部会長】 有馬先生、手が挙がっていましたでしょうか。
【有馬委員】 有馬ですけれども。やっぱりシナリオAとBの差がまだ少しよく分からないところがあって、例えば、人手不足という意味では農業というのが1つ大きいと思うんですけれども、例えば、農業のための、要するに身体性を持ったAIとかをやろうとすると、これはAになるのですか、Bになるのですか。その辺、例えば例を挙げるとどうなるのでしょうか。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。結論から言うと、AとB両方ともあり得ると思ってはいます。というのは、例えば物を運んだりする、農作物を運んだりするだけであれば、多分シナリオAの技術を使ったほうが早いと思いますし、一方で、例えば見極めて、農作物を取っていくとか、そういった技術はピッキング技術で、今例えば産業ロボットである技術を使っていくというところがございますので、シナリオBの技術をベースにするケースもある等ございますので、両方ともあり得ると思っております。その分野というか用途に応じてそれぞれ技術を使っていくと。あるいは両方使っていくとかということも、今後あり得るかもしれません。
【有馬委員】 ということは、シナリオAとかBとかいうように分けていますけれども、実際どっちの色が強いかで、用途によって割とそれを混ぜて開発しなければ、いずれにせよ駄目だなということがあって、Cというのはこの前、國吉先生がおっしゃったような、もう少し革新的な話なので少し分ける、そういう理解でよろしいですかね。
【葛谷推進官】 そのとおりでございます。どちらを中心にやっていくかというところでございます。
【有馬委員】 なるほど。ありがとうございます。
【観山部会長】 上杉先生、お願いします。
【上杉委員】 上杉です。今の議論もお伺いして、疑問に思うことが1つあるのです。この会議は、基礎・基盤研究課がやっている会議ですよね。でも今の議論を聞いていると、結構応用的な、技術的なものが多くて、それも含んだ会議なのかなと今思っていたのです。恐らく基礎基盤研究ということに着目して考えると、8ページ目の資料を見ますと、ここにもまとめていただいた中には、重要技術と基盤技術というのが書いてあるのですよね。応用の部分は誰か他の課が行うということだと考えれば、この会議では、どのような基盤技術が大切なのかという話が重要ではないかなと思うのです。いかがでしょう。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。まさに御指摘のとおり、どういった基盤技術が大事なのかといったところは重要な論点だと思っております。ここでお示ししております重要基盤技術のまさに基盤技術ということで、基礎的な研究というか、いろんなところに応用できるような基盤技術だと思っております。一方で、シナリオAとかBというものについては、応用に近い技術、そういったところを挙げているところでございます。今回の整理としては、フィジカル・インテリジェンス研究、いわゆる革新的なAIロボット研究というところで、ロボット自体のゴールというのが、先ほどの目指すべき目標の中でも示しましたけれども、省人化といった観点で社会に導入されていくと。こういったものはやっぱり前提条件としてあると思っておりますので、基礎基盤的な研究に加えて、シナリオAとかBに関するようなユースケースに関するものも併せてやっていくことによってより効果的ではないかといったところで、シナリオA、Bに関する重要技術も挙げているところでございます。
【上杉委員】 つまり、こういうことですかね。応用を見据えて、応用を考えながら基盤技術のことを考える、そこで決定する、こういう意味でいいですか。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。そうです、応用を見据えながらやっていく技術と、あと併せて革新的なアプローチC、先ほどシナリオCを御紹介しましたけれども、全く革新的な成果ですね、基礎技術の成果によって社会を変えていく、そういった技術も当然対象になると思いますので、両方見据えてやっていくということが大事だと思っております。
【観山部会長】 よろしいでしょうか。私の大雑把な理解としてでは、学術、科学技術というものがあって、学術の基礎というものは、例えば、それこそ物理学の基本的な法則とかそういう部分から基礎があって、その上にそれを応用して学術が進展するということもありますが、科学技術の基礎というのは、いろんな開発の中でもやっぱり基礎的な過程というのがあるわけですね。例えばAIだったら、基盤的な情報を集めて、それから、それを重ねていくというような部分があって。だから、それらを混同してしまうと少し分からなくなります。しかし、ここで今議論をしているのは、応用というものを考えた上での基礎的な基盤をどう開発していくかというところに論点があると思っていただければいいのではないかと思います。
小泉先生、どうぞ。
【小泉委員】 観山先生、ありがとうございます。
今の御質問とも関連するのですけれど、6ページ目、7ページ目にあるような、例えばシナリオAとかシナリオBというところ、自動運転技術だったり、産業ロボットだったりというところ、ごめんなさい、門外漢なので全然わけの分からないことを言っていたらすみません。ただ、自動運転技術にしても産業ロボットのAIにしても、既にLLMモデルで大分進んでいて、今の上杉先生の質問に近いのですが、産業応用はされてきている、またはそういったスタートアップだったり、いろいろなところが世界各国で既に起こってきていると、それを後追いすることではないというように理解をしています。
そういった意味では、シナリオCと切り離してシナリオAやシナリオBを考えるべきではなくて、シナリオCを突き詰めていく中で、それをLLMモデルではない形で、自動運転技術だったり産業ロボットだったり、そういったところを応用していくのだと。もしかしたら多少世界の開発のスピードよりは遅れるかもしれないけれども、我々としては、将来的には既存の技術ではないものを使って、自動運転技術だったり、産業ロボットの応用だったりを考えていくということなのかなというように理解していたところです。今みんなが世界各国でやっているLLMで自動運転だったら単なる後追いになってしまうので、そのようなところではないところを、応援のつもりで言っています。
そういった意味では資料8ページ目の中期のところのターゲットとする技術課題の、やはり重要技術課題の一番上、身体性に基づく知能基盤だったり、それからもう一つそこに書いてある、分散モデルを統合した分散知能開発、ここはすごく重要なところだと思っていて、こういったところがしっかりできてくる、こういったところができてくる、基本技術が開発できてくるからこそ、新しい形で自動運転だったり、新しい形で産業ロボットだったり、そういったところに応用できる、既存の技術ではないものを応用する先として自動運転や産業ロボットがあるという建付けでないと、結局何か世界の後追いしているだけになってしまうのではないかなという懸念を持ったところですし、文科省がそういうつもりではないということも信じています。
それからもう一つ、ここでいうと長期のところで、上から2つ目ですか、物理世界とサイバー空間を結びつけるというのは、ここも日本の強みだと思っていて、VR空間とかで、やはりこの技術って必ずしも物理世界である必要はないので、サイバー空間でこういったものが再現できていくという技術開発というのも、長期と言わずに早い段階からどんどんやっていったほうがいいのではないかなと思ったところです。なので、何となくもやもやしながら聞いていたのは僕もそうなのですけれども、最重要基盤技術を、やはり基礎科学としてそこを求めていき、既存の技術ではない形で自動運転だったり、既存の技術ではないところで産業ロボットだったりというところに応用していくという考えなのかなと思ってお聞きしたところでした。
すみません、応援のつもりで言っていますが、門外漢のため全然とんちんかんでしたらすみません。以上です。
【葛谷推進官】 ありがとうございました。まさにそのとおりでございまして、LLMとかそういった既存技術ではない別の技術を使っていくといったところは、当然文科省として考えておりまして、本日の資料15ページにCRDSさんのほうで御説明いただいた、現在の基盤モデル、いわゆるLLMの技術的な課題、資源効率とか、実世界操作性とか、こういった課題をクリアした新しい技術をシナリオA、B、Cのそれぞれにおいても当然使っていかないといけないと思っておりますので、そこについては先生の御理解のとおりでございます。
【観山部会長】 ほかにいかがでしょうか。この議題についてはよろしいですか。ありがとうございました。
【観山部会長】 それでは、続いて議題(3)第7期科学技術・イノベーション基本計画の検討に向けた意見についてです。まず、事務局より説明をお願いします。この発表の後に、皆様の御意見を頂戴できればと思っております。よろしくお願いします。
【葛谷推進官】 資料3に基づいて御説明させていただきます。
最初の議題の紹介の際に中澤課長よりも御説明ございましたとおり、5年に一度、科学技術・イノベーション基本計画といったものが策定されているところでございます。現在、第7期の科学技術・イノベーション基本計画の検討が進められているところでございます。来月の科学技術・学術審議会において幾つかの部会から意見を述べる機会がございまして、今回、本資料を準備しているところでございます。
一方で、科学技術・学術審議会の下にあります学術分科会といったところがございまして、その中では基礎研究や学術研究の必要性として、独創研究のこととか、研究環境の改善、研究大学群の形成といった観点で検討が進められております。
こういった状況を踏まえまして、本資料ではこれまで基礎部会で議論してきた点を中心に、学術分科会での検討にプラスアルファの点といった観点でまとめていると、こういった前提条件を御説明させていただきました。これを踏まえて資料3について御意見等いただければと思っております。
まず、基礎研究の価値でございます。1ポツでございます。デジタルトランスフォーメーション、いわゆるDXによって、従来のリニアモデルの延長上にない不連続な変化、いわゆるパラダイムシフトが起こる時代になってきております。そこでは研究は短期や長期といった旧来の区別がなくなりつつあるとともに、基礎研究とイノベーションの距離が近接し、相互に行き来するなど、これまでの基礎研究の在り方が異なるものになりつつあります。このような状況におきまして、基礎研究の重要性はますます大きくなり、その研究成果は新たな価値レイヤーを創造し、将来の社会経済の転換や産業構造の変革機会を創出するものとして認識すべき状態になってきているところでございます。
そのような認識の下で、社会的または知的な新たな価値を創造し、未来の成長機会の源泉となる基礎研究をより一層推進することが必要であると考えております。基礎研究の多様性と厚みを生み出しつつ社会との好循環を形成していくためには、若手研究者のみならず全ての研究者が長期間腰を据えて挑戦的な研究に打ち込める状況や、国際的な潮流を踏まえた研究環境の整備や、多様な分野及びセグメントの研究の交流や結集、融合により、新たな研究分野の開拓及びその展開を推進するための支援の強化、そして人文科学、社会科学から自然科学に至るまでの伝統的な研究に加えて、必ずしも従来の延長線上にない独創的な研究に対する支援の強化、こういった取組が重要であると考えております。
続きまして、2ポツでございます。基礎研究の社会的意義・価値化でございます。基礎研究の知的アセットを適切に価値化して、よりよい社会の実現に向けて、社会との間で好循環を形成していくことが必要であると考えております。例えばでございますけれども、企業等の共同研究においては、研究成果のみならず、基礎研究そのものが有する知的アセットに対する適切な値付け(「知」の価値付け)を行い、その対価を研究者・学生、教育研究環境の改善や新たな研究課題に挑戦する費用等に充てることで好循環を形成し、基礎研究の学問の幅を広げ進展させていく、機能拡張モデルの実践が重要になってくると思っております。
そして、3つ目でございます。基礎研究のさらなる進展に向けた研究DXの推進でございます。新たな価値を目指したデジタル技術とデータ活用による研究活動、研究DXが進みつつある状況でございます。また、これまで基礎部会でも議論してきておりますけれども、科学向けへの生成AIに関する研究開発や、AI×生命科学、AI×数理、AI×ロボットなど、AIとあらゆる分野の研究が融合することにより、科学研究が飛躍的に発展し、加速することが見込まれております。このような状況において、基礎研究の取組方についても変革が求められており、研究DXやAIを効果的に取り入れ、基礎研究を推進していくことが必要であるといったところをまとめております。
説明は以上でございます。
【観山部会長】 ありがとうございます。このまとめというのは、本部会で議論したことも含まれておりますけれども、改めて基礎研究の重要性というものをまとめた文章になっていると思いますが、どうぞ御意見。上杉先生、どうぞ。
【上杉委員】 京大の上杉です。
僕、いろいろな事情がありまして、6期の文章をよく読んでみる機会があったのです。それで思いましたのは、今、議論されたようなこと、書かれたようなことは、6期に書かれてあるのです。6期の文章、本当によく書けているなと逆に感心するぐらいです。ただし、6期で書いたことが実現してないのです。そこに大きな問題があるなと、皆さんもお気づきだと思います。
ただし、今、6期で言ったことが本当にできそうな状態になりつつあるのではないかなと思っています。ですので、6期で言ったことと同じことを書くのでも問題ないと思います。より実現していくという強い意思が7期には必要ではないかな。そして、具体的な方法が必要ではないかなと思います。
この基礎研究に関しては、7期でより強く言うこともできるのではないかなと思います。以前にも申し上げましたけれども、研究の早期にスタートアップをつくることは、基礎研究を進める力になるということも申し上げました。もちろん6期にもスタートアップのことが書いてありますし、7期にももちろんスタートアップのことを書かれると思います。どうやれば基礎研究を皆さんに理解していただいてペイするものだというのを説得力ある力で書くかというのが、7期は基礎研究振興部会としては重要ではないかなと思います。
以上です。
【観山部会長】 貴重な御意見ありがとうございました。
小泉先生、お願いします。
【小泉委員】 ありがとうございます。中澤さんが課長にもなられたところで、あえてというか言っておこうと思ったのが、最近、内閣府側が言っている知の価値化という言葉にすごく違和感を感じています。というか、そもそも知には価値があるのですよ。今まで知に価値がなかったみたいなことを言われることに関しては非常に違和感を感じていて、知の価値化って何やねんと。知に価値がないと思っていたのか、と非常に違和感を感じています。なので、ぜひ基礎・基盤研究課としては、課長はじめぜひその辺は、知に価値がなかったわけではないと、知には価値がもともとあったのだと。それが多様な形で社会に価値が波及していったり、いろんな知の価値の多様化というか、知の価値の波及とか、何かそういう言葉に言い換えていただくほうが良いかと思います。
それから、知の価値のところで、2ポツのところで適切な値付けというのもありますけれども、必ずしも値付けだけではない価値もあると思っています。例えば、1番目のはやぶさが小惑星探査の後、地球戻ってきたときに、あれは本当に値付けとしてはどうだったのかというのはなかなか難しいかもしれないですけれども、映画もできて本当にみんなが応援して、日本の科学技術をみんなが応援しようというそういった価値、何だろうな、そういった社会文化的な価値というか、そういったものも価値だと思いますし、必ずしもお金で、マネタリーで換算できるものだけが価値ではないというようにも思っていますので、そこはこれもまた基礎・基盤研究課としては、それをぜひ主張していっていただければと思っています。
もちろん政府として研究のお金の価値ということを言うというのはしようがないというところもあるのですが、それは否定するものでもないのですが、ぜひ基礎・基盤研究課としては、知の価値は、そもそも知には価値があるのだということ。それから、知の価値というのは必ずしもマネタリーな価値だけではなくて、ソーシャルかつカルチュラルな価値もあるのだということは、ぜひ主張していただければと思っております。
以上です。
【観山部会長】 これも貴重な意見ありがとうございました。
担当課としては、何かありますでしょうか。
【中澤課長】 ありがとうございます。基礎・基盤研究課長の中澤です。まず直前の小泉先生、それから上杉先生から御意見いただいた点、少しコメントさせていただければと思います。
実は私自身、この基礎・基盤研究課に着任する何代か前は、まさに第6期科学技術・イノベーション基本計画の担当でございまして、文科省と内閣府併任かかる形で、実際にある種、役人として素案作成の部分をさせていただいています。その面において、上杉先生から、ある意味でのお褒めの言葉をいただきまして、本当にありがたいと思っております。御指摘のとおり第6期の際からこういった話はかなり書かれている部分はあるのですが、より一層その状況を加速していくべき、あるいは書いているけれど出来ていないところというのは、進めていくべきかなと思っております。そういう意味では、頑張っていきたいなと思っております。
それから、小泉先生のほうからいただいた「知の価値化」に関する点も、全く100%そのとおりでございまして、基礎・基盤研究課としてもそのように思っています。
価値化には、目に見えない部分も含まれると考えており、例えば、はやぶさの例であれば、はやぶさに感銘を受けて、科学者になろうとする子供たちというのを増やしたという意味で、大きな価値の1つの形態であると考えております。
知の価値化という言葉はある種、知を軽んじた部分に対するアンチテーゼの意味もあるのかなと思います。
いずれにせよ、今のままを使うと少し言葉としても非常に誤解を招くような部分もあると思います。文章上のところももちろん留意しつつ、文章だけに現われない部分としても、我々の気持ちとしてはそういったところを進めてまいりたいと思っております。ありがとうございます。
【観山部会長】 やっぱり文章力というか表現力が非常に必要とされる文章だと思うのです。総合知というものも、分かったようで分からない部分があり、少し具体性も含めながら表現していくということが伝わるためには必要ではないかと思います。
佐伯先生、お願いします。
【佐伯部会長代理】 研究DXについてなのですけれども、今後、DXを研究の方面でも推進していくということは非常に重要なことだと思っておりますので、ぜひこちらのほう、盛り込んでいただければと考えています。
特にAI、こちらを重要視したような書きぶりになっておりますけれども、今現在、あるいはこれから直近の10年ほどは、AIがこれからもどんどん進展していって、あるいは研究者人口の減少等もありますし、研究の方面で活躍していくことが期待されるとは思うのですけれども、先ほどの文章だと、AI掛ける何か、AI掛ける○○というような形で表現されていたような文面もございましたけれども、必ずしも2つだけということもございません。今、お話もありましたように総合知ということもございますので、様々なものと組み合わせつつ、AIをベースにやっていくといったようなことも重要ではないかと少し思いました。
1つの分野だけにとどまっていると、さすがに新しいことをつくり出していくということは難しくなってきますので、いろいろな分野と、その融合としてAIなどを基盤とする技術をどんどんやっていく、そういった中にDX推進に使っていくということが重要かなと思いました。
それから、もう一つは、今回のものについては直近の5年程度を想定しているのかもしれないのですけれども、もう少し長期的な観点から、AIに続くものを考えていくことも重要ではないかなと思いました。先ほどの6期のお話につきましても、結局6期の中では実現できなかったけれども、次の7期で実現の可能性が出てくるといったようなこともございますので、7期では少し難しいかもしれないけれども、将来的にはぜひやってもらいたいというような少し挑戦的なこと、例えばAI技術の次に来るのは一体何なのかと。量子コンピュータの進展もございますし、我々人類が今知っていない、まだ手に入れていない技術もこれからあるかもしれません。そういったことについても積極的に研究していっていただければと考えております。
以上です。
【観山部会長】 ありがとうございました。
辻さん、お願いいたします。
【辻委員】 辻です。言わずもがなではありますが、好循環を形成しようというなら、博士課程に進む学生を増やしていく、そこがまずは重要ではないかなと思っています。研究環境の整備が進めば、そこにも効いてくるでしょうから、研究環境の整備は、好循環を形成する上でも大事だと思っています。
それと、先ほどのAIで新しい研究というお話が出ました。日本でもかつて世界とは全く違うような新しい発想が出てきたし、そのような下地があるわけです。研究の多様性も重要とありますが、自由な発想で行う研究への支援が不可欠です。科研費を増やせという運動も行われていますが、自由な発想で研究ができる、そういう環境をぜひぜひ整えていってほしいということを思いました。
いずれも既に言われていることで言わずもがなではありますが、改めて強調していただければということを思いました。以上です。
【観山部会長】 ありがとうございました。
ほかによろしいでしょうか。品田先生、お願いします。
【品田委員】 ありがとうございます。瑣末なことで大変恐縮なのですけれど、2の基礎研究の社会的意義・価値化の2番目の段落に、「企業等の共同研究」で、「企業との」になるのですかね。以前この会でも議論された、日本の大学と企業との共同研究において、平たく言ってしまうと企業が大学に払っている金額が海外の、特にアメリカの大学に比べて非常に少ないと。それは基礎研究のアセットに対する値付けが十分されてないからだという議論があったと思うのです。その議論が反映されているとすると、私は「企業等との共同研究」という意味なのかなというように捉えました。これ、「企業等の共同研究」になると企業間の共同研究も含まれてしまって、少し言いたいことが分かりにくくなるというように思いましたので、私の誤解だったら申し訳ないのですけれど、コメントさせていただきました。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。先生の御指摘のとおりでございます。「企業等との共同研究」でございます。修正させていただきます。
【観山部会長】 ほかにいかがでしょうか。
今まで非常に貴重な意見をいただきましたので、また科学技術・学術審議会等にペーパーとして報告させていただきたいと思いますが、なるべく先ほどからの意見も付加したような形で報告させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
【観山部会長】 それでは、続いて議題(4)創発的研究支援事業の進捗状況についてです。まず、文部科学省より御説明をお願いします。この発表の後に、委員の皆様から御意見をいただければと思います。
【加藤専門官】 研究振興局学術研究推進課の加藤と申します。本日、創発的研究支援事業の進捗状況について御報告のお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。
本事業は、創設前の段階から、基礎研究振興部会のほうでいろいろ御意見賜りながら進めてきた事業でもございますので、近年の状況について御紹介させていただきたいと思います。
資料4の2ページ目をお願いします。創発的研究推進事業について、本事業の運営に関しては、基礎研究振興部会に御参加の先生方にも既にいろいろ運営に御協力賜っているところでございますので、重複説明になってしまって恐縮でございます。
本事業は、挑戦的・融合的な研究構想に挑戦する独立前後の研究者を対象に、最大10年間、通常7年間程度ですが、安定した研究資金と研究に専念できる環境を一体的に支援する事業でございます。本事業は、JSTに基金を造成して実施している事業でございまして、主に行う取組に関しては3つ柱がございます。1つは最長10年間、平均して年間700万円の研究費を個人の研究者に対して提供すること。2つ目が、創発研究者が研究に専念できる環境を、大学等所属する研究機関から御提供いただきたいということをお願いしておりまして、そうした取組を行っていただいた研究機関に、我々のほうから追加的に財政的な支援を申し上げること。3つ目が、JSTのほうでプログラムオフィサー等を設置いたしまして、創発研究者に対するメンタリングですとか、あとは創発研究者同士が相互触発するような場を形成していただいて、多様なバックグラウンドを持つ研究者同士の融合を促し、最終的に破壊的イノベーションにつながる成果の創出を目指すというものでございます。
3ページ目をお願いします。本事業の予算措置の状況でございます。本事業は令和元年度補正予算によって開始された事業でございまして、その後も主に補正予算によって必要額を確保してまいりました。令和4年度2次補正において特に553億円の措置がございまして、第4回公募以降の事業が継続できるようになったという状況でございます。
4ページ目をお願いします。本日のトピックは主に3つございます。新規課題の公募・採択、ステージゲート審査の実施状況について。あとは研究環境改善支援の審査結果について御紹介させていただきたいと思います。
では、まず新規課題の公募採択状況についてということで、6ページ目をお願いいたします。令和5年度公募、これが第4回の公募に当たるのですが、令和5年8月23日から公募を開始しまして、令和6年6月25日に結果を公表いたしました。2,644件御応募いただきまして、うち243件の採択になっております。採択率9.2%と非常に厳しい選抜になっているところではございますが、応募数、採択数とも例年とほぼ同様というところでございます。30代後半を中心に、本事業が本来目的としていたとおり、独立前後の助教・准教授クラスの研究者を多く採択しているところでございます。
7ページ目をお願いします。こちらのスライドが、第4回公募で採択した研究者の所属機関の内訳でございます。全国68機関に所属する研究者を採択させていただいているところでございます。
8ページ目をお願いいたします。第5回公募、令和6年度の公募に向けてでございます。令和6年度の第5回公募に関しては、8月中旬、もうそろそろ開始できるように、現在鋭意準備中でございます。採択予定件数は200から250件程度と、こちらも例年同様というところでございます。公募の要件としてもほぼほぼ前回までと同じような形で進めていくことを想定しておりますが、独立に関する要件として幾つか要件を求めていたところの趣旨の明確化として、研究室を持つことという要件を課していたところなのですけれども、これは創発的研究の遂行に必要な場所を確保してくださいという趣旨でございますよということ、その観点を重視することを明示させていただきたいと考えております。今後のスケジュールは、下記に示しているとおりでございます。
9ページ目をお願いします。創発事業は、研究者個人が通常の競争的研究費などと同じような形で、自らの意思で直接本事業に申請することが可能になっております一方で、採択された後は、所属の研究機関ですとか部局からも、創発研究者が研究に集中できるような環境を御提供いただくことに御協力をお願いしている事業でございます。JSTでオンラインにて公募説明会なども実施しているのですが、これはやはり公募期間中がメインということもございまして、我々のほうからも事業の趣旨を御説明する機会をもう少し設けたほうが良いかなという考え方の下に、各研究機関・部局等が主催されます創発的研究支援事業に関する説明会等に関し、文科省の担当者を講師として派遣してお伺いするといったことを可能としたいと考えております。概要は下の四角の中に書いてあるとおりでございますので、もしお聞きになっている方で御関心の方いらっしゃいましたら、当課までぜひ御連絡いただけますと幸いでございます。
10ページ目をお願いします。ステージゲート審査についての実施状況でございます。
11ページ目をお願いします。本事業、10年間にわたる長期の事業でございますので、中間的な実施状況の確認という意味を込めまして、研究開始3年目と7年目にステージゲート審査を設けております。昨年令和5年は、第1期生の研究開始3年目に相当しますので、本事業において初めてステージゲート審査を実施しました。対象は224名、評価としては、4年間今後継続できますよ、4年目から7年目までの継続はオーケーですよというのが1つ。条件付継続、もう1回再審査を行いますよというのがもう一つ。今、この時点で完全に終了という3段階での評価を行いました。
結果として、4年継続になった方が206名、条件付きで継続となった方が18名ということで、現段階での終了判定となった方はいらっしゃいませんでした。やはり通常7年、最大10年の安定的な研究費の支援とうたっている関係上、3年目のステージゲート審査で研究業績が出ていないからということで厳しく審査するということはあまり行っておりませんでして、3年目のステージゲート審査のタイミングでは、メンタリングの機会としての活用、研究計画をどのように改善していくか、そういったところに主眼を置いて、運用しているところでございます。
13ページ目、研究環境改善支援について御説明申し上げます。本事業は先ほど申し上げましたとおり、研究者が創発的研究に専念できる環境の提供ということにも重きを置いてございます。ですので、本事業に採択された研究者に対して、研究開始後3年間で所属機関がどのような御支援をしてくださったのかということを、研究開始3年目が終わったタイミングで、JSTのほうで審査させていただきまして、研究開始4年目以降に、1機関当たり最大5,000万円の追加的な支援を実施する、そういうスキームを設けてございます。ですので、これまで3年間というのは財政的な支援というのはまだできていない状況だったのですけれども、それでも皆様非常に積極的に御支援いただきまして、現段階でも創発研究者の研究活動時間の割合というのは61%と、FTE調査で一般的に見られている平均値よりは大分多く研究時間を確保していただいていたりですとか、創発研究者の43%が昇進・昇格、そういったものを経験していたり、新たに定年制ポストを獲得された方が約30%ぐらいいらっしゃったりと、これまで各機関が非常に熱心に取り組んでいただいていることに心から感謝しております。
14ページ目をお願いします。こういった取組に関して、昨年度、研究環境の整備支援などを審査させていただきました。審査対象機関が70機関ございまして、うち63機関に対して、総額10億320万円程度の支援を今後行っていく予定でございます。どういった取組が対象になったかについては、下記AからDに記載しているとおりでございます。
下のグラフにまとめているのですが、約半数くらいの機関が、AからDに挙げた取組を全て行っていただいているという状況でございます。あとはどういう取組を行っている機関が多かったのかということなのですが、やはり独立支援、ポストの提供ですとか研究スペースの提供とかいう部分をやっていただいた研究機関ですとか、研究時間の確保に関する取組をやっていただいた機関、ここら辺はほか2つと比較すればやや少なめになっております。
一方で、研究加速に関する支援ですとか、これは研究スタートアップ費とかを多く含むのですが、あとはその他、研究環境改善、モチベーション向上に向けた支援、これは結構執行部と研究者の意見交換実施をなさっている機関が多かったのですが、そういったところに取り組んでいただいている機関が非常に多かったところでございます。
15ページ目をお願いします。ここから先、3枚ほどすばらしい支援を行っているということで高く評価された機関の取組の内容を掲載させていただいております。研究者と密にコミュニケーションを取って、研究時間確保に関して部局にお願いいただくことも大事ですし、そのためにどのように業務量を調整すればいいのだろうかということを丁寧に支援を行っていただいたというように捉えております。
18ページまで回していただけますでしょうか。研究成果に関しても、この事業は長期的な視点で破壊的なイノベーションにつながるような研究を行っていただきたいという観点から、現時点で、研究業績がどうこうということをそこまで求めているものではないのですが、既に注目度の高い研究成果を出されている先生方もいらっしゃいますので、2つほど御紹介のスライドを掲載させていただいております。
現時点での創発事業の進捗状況としては、報告は以上とさせていただきます。
【観山部会長】 どうもありがとうございました。
先生方から何か御意見、御質問がありますでしょうか。前田先生、お願いします。
【前田委員】 創発事業はすごくうまくいっていると認識しているのですけれども、私はアドバイザーもさせていただいているのですが、彼らが持っている悩みの中で1つ大きいところは、やはり人材の確保で、さきほどの説明でも助教をつけるなどの支援をしている大学もあるということでした。創発の資金で人を雇おうとしても、大きい研究室の中にいる若手であれば応募もいっぱい来たりもしますし、あと学生も東大とか京大とかそういうところの大きい研究室にいればどんどん優秀な人が来ますけれども、そういったところの確保ができるできないが、結構ばらつきがあるかと思います。そこのところをどのようにすればいいのかということは、創発の中でもいろいろ議論してもなかなか答えは出てこないのです。学生の配属の仕方とかというのも指針を示していただくとか、何かそういうことがあったら、もう少し彼らの支援になるのかなと思っていたりします。
【観山部会長】 事務局から何かありますか。
【加藤専門官】 前田先生、御意見ありがとうございます。また、アドバイザーとしてもいつも御協力いただきまして、誠にありがとうございます。
人材確保の問題、こちらについては、そもそもの時点で単価700万円が小さいのではないか、昨今の物価高騰と加味すれば、もう少し規模が大きくないと人を雇えないのではないかという御指摘は、先生以外の方からもいろいろ御意見賜っているところでございます。すぐに変えられるところではないのですけれども、こういったところも検討していきたいと思います。
また、学生配属に関しては、大学のみならず、部局ごとで結構ルールが違ってしまったりするケースも多いと理解しておりますので、そういったところに関してはなるべく部局単位で寄り添った支援ができるように今後やっていきたいと思います。御意見ありがとうございます。
【観山部会長】 上杉先生、お願いします。
【上杉委員】 京都大学、上杉です。
このシステムはすごくうまくいっていると思います。まだ完全に結論づけるまで至ってないですけれども、うまくいっていると思います。こういう研究費の大きな問題は、いろんなものがいっぱいあることです。時には小さいものがいっぱいあって、その時々、例えば材料が大切だ、がんが大切だ、女性をプロモート、留学生をプロモート、若手をプロモートというたびにいろんなところからアイデアが出て、小さいグラントがたくさん乱立していて、すごく複雑な状態になっていると思います。それぞれのプログラムでシニアの方々がアドバイザーをやって、それの評価も行って、どれを採択するかの審査も行って、フォローアップもしてというふうになっているので、これで研究時間が少なくなっている事実があるのです。
今回、創発の場合には、うまくいっていると僕は信じています。こういううまくいっているところに、そういう小さなアイデアを集約していっていただきたいのです。例えば、女性をプロモートするのだったら、この創発の中で女性をプロモートするとか、それとか、例えばがんをやっている人をプロモートしなければいけないというのがほかのところで出たのだったら、がんの人を、創発の枠をつくるというふうに、創発の中にいろいろな小さな政策を入れ込んで、創発を発展させていただけたらなと思います。
また、役所の中にもいろいろあって大変だと思いますけれども、ぜひ集約していくことをお考えになってほしいと思います。
以上です。
【観山部会長】 ありがとうございました。
ほかの先生方、いかがでしょうか。品田先生、どうぞ。
【品田委員】 制度の本質的なことではないので恐縮なのですが、6ページ目の性別の図を見て少し衝撃を受けたのですけれど、それとあと過去の推移を見たら、第3回から第4回で女性が半減、絶対数でも半減以下ということで、これは偶然なのですかね。それとも何か時代に逆行するという言い方も語弊がありますけれども、少し違和感を感じたもので。すみません、何かありましたら。
【観山部会長】 事務局、お答えありますでしょうか。
【加藤専門官】 品田先生の御質問に回答させていただきたいと思います。こちら、女性の採択人数が前回比約半減ということに関しては、我々も憂慮しているところではございます。応募者に占める女性の割合が極端に3回から4回で減ったということではございませんので、審査の過程でこういう結果が出てしまったというところが正直なところでございます。多様性のある研究者が集った中で創発的な関係性を築いていただいて、融合的な研究を行っていただくことを考えれば、やはり研究者の多様性というのは非常に重要だと考えてございますので、こちらは何か改善策が打てないかなということで考えているところでございます。
そうした背景もございまして、我々のほうで説明会等への講師派遣を行うということは、ぜひいろんなバックグラウンドの研究者に御応募いただきたいということを、我々のほうから直接大学さん、研究者の皆様に御説明するという意図もあって、始めようと思っているところでございます。
【品田委員】 ありがとうございます。女性の結婚とか出産とか、そういう性別にも付随するもので、この制度が利用しにくいということはもうないというのは以前の説明でも受けたような気がするので、ぜひそういう説明会をどんどん開いて、どんどん応募していただくようにするといいですね。ありがとうございます。
【観山部会長】 ほかにいかがでしょうか。合田先生、お願いします。
【合田委員】 私もPOをさせていただいて、非常にうまくいっているシステムかなと思っているし、創発研究者と交流していて、彼らも創発の機会をいただいて、研究を促進できて非常に満足しているというフィードバックをいただいているのですけれども、一般的に分野間のばらつきはどのぐらいあるのでしょうか。例えば物理系や生物系それぞれのキャリアプログレッションのニーズはかなり違うかと思います。論文の発表サイクルも異なると思いますし、そのようなばらつきはあるのでしょうか。そして、そのようなばらつきに対してどのような対応されているのかうかがわせてください。
【加藤専門官】 合田先生、御質問ありがとうございます。また、いつもPOとして本事業に御尽力いただきまして、本当にありがとうございます。
御質問のところに関して詳細な分析ができているわけではないのですが、少なくとも本事業の1期から3期までの採択者の占めるe-Rad上の分野の分類、236の分野の中で、自然科学系に限れば相当数はカバーされているというふうに理解しています。しかし、その中でどういった分野の方の応募が多いのか、また、これが本事業に特有に、とある分野だけ極端に多いですとか少ないですとか、そういったことがあるのかということに関しては、まだ今年度分の分析等がきちんと行えていないところでございます。
ただ、体感としては、やはり他のJST事業が扱うような、実用化に近いといいますか、社会実装にやや近めの領域とか、戦略創造でよく扱われることが多い領域以外の分野に関して、本事業の支援対象だと思っていなかったというようなお声を現場からいただくことが多うございます。本事業は自然科学系の分野は全部対象でございますので、そういった方々からも御応募いただけるように、我々も広報を頑張っていきたいと思っております。
【合田委員】 ありがとうございます。それで一旦採択された方々の中で、ニーズの違いなどはあるのでしょうか。
【加藤専門官】 採択された後の方々のニーズの分野間での差というのは、あまり文科省としては現段階では承知しているところではございませんが、もしかしたらもう少し詳細に見ていくと何かあるかもしれません。
【合田委員】 分かりました。すみません、少し変な質問になってしまったかもしれないのですけれども、具体的には例えば学生のサポートの仕方とか、学生の配属のニーズとか、あとエンジニア、生物系、化学など、いろいろ分野によってポスドクのサイクルの長さも違うと伺うので、その辺をどのようにフラットに全体的なシステムとして運営されているのかということを伺いたかった次第です。ありがとうございます。
【観山部会長】 辻先生、お願いします。
【辻委員】 辻です。ステージゲートの審査結果の数字をどのように評価しておられるのでしょうか。全員がそのまま継続というのもすばらしいし、逆に言うと、少し困難な非常に難しい課題にチャレンジしているがゆえになかなかうまくいかないということもあるかもしれません。どんな難しい課題でも、着実にやっているのであれば継続ということになるかとも思うのですが、その辺り、どう見ておられるか、伺えればと思います。
【加藤専門官】 辻先生、御質問ありがとうございます。このステージゲート審査の結果の我々の捉え方としては、基本的に皆様、創発研究に真摯に取り組んでいただいている方がほとんどを占めていたために、このような結果になったものと認識しております。POの先生方ともいろいろお話しさせていただいたのですけれども、条件付継続になった方に関しても、別に研究成果が出てないとか、取組方があまりよろしくないとかそういう捉え方はしておりませんでして、せっかく研究成果が出ているのですからもっと発表していきましょうよとか、あとはすばらしい結果は出ているけれども、もっと挑戦的なことができるのではないかとか、そういったエンカレッジの意味での判定として、こういったコメントが出ているものと承知しております。
【辻委員】 分かりました。ありがとうございます。
【観山部会長】 よろしいでしょうか。
小泉先生、どうぞ。
【小泉委員】 すみません。時間もないので一言だけ。研究環境整備支援というか、そこが本当にこの事業のもう一つ重要なポイントなのだと思っています。各大学・機関がそのようなところで工夫をされていることはとても良いことで、好事例を共有していくのはとても良いかなと思いました。
数年前のこの基盤部会で、たしか逆に創発の研究者から、実際に組織や大学から支援を受けていますかという調査をされていたと思うので、ぜひ引き続き研究者サイドから意見を聞くということもされたらいいのかなと思っています。
以上になります。
【観山部会長】 よろしいですか。
【加藤専門官】 小泉先生、すみません、一言だけ御返事させてください。
研究者サイドに対して、機関から支援を受けていますかというアンケートは、今年度も継続して実施しております。こちらの資料に掲載していなかったというだけでして、大変失礼いたしました。
【観山部会長】 この創発事業に関しては令和の初めから始まったわけで、皆さんの評判は非常に高いと思いますが、割とクールに言うと、やっぱり政策に関してはアウトプット、アウトカムを示していかないと継続ができないという状況があります。そのため創発という、こういうやり方が若手への支援の在り方としてうまく機能している、こういう具体的成果が出ているということをアピールしていきたいです。各研究者そのものについては別に急がせる必要がなくて、10年間なり7年間をしっかりやってもらうということなのですけれど、政策としては、いい成果が出たらどんどんアピールしていって、こういうスタイルの支援がうまくいっていることを示すべきです。その上でうまくいった原因なのだという形でアピールしないと、なかなか政策的に継続というのが難しくなります。私も随分期待していますので、そういうところで頑張っていただければと思います。なかなか難しい注文で申し訳ないですけれども。
【加藤専門官】 はい。観山先生、ありがとうございます。
【観山部会長】 よろしいでしょうかね。
それでは、本日の議題は以上となります。
基礎研究振興部会運営規則第7条に基づきまして、本部会の議事録を作成し、資料とともに公表することになっております。本日の議事録については、後日メールにてお送りいたしますので、御確認のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、以上をもちまして、第16回科学技術・学術審議会基礎研究振興部会を閉会いたします。本日は、どうもありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局基礎・基盤研究課