基礎研究振興部会(第7回) 議事録

1.日時

令和4年6月17日(金曜日)14時00分~15時30分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 数学アドバンストイノベーションプラットフォームの成果報告
  2. 2030年に向けた数理科学の展開について
  3. 研究DXの推進について
  4. その他

4.出席者

委員

観山部会長、小泉委員、合田委員、小谷委員、齊藤委員、品田委員、辻委員、長谷山委員、美濃島委員

文部科学省

研究振興局長 池田貴城、研究振興局基礎・基盤研究課長 西山崇志、研究振興局基礎・基盤研究課課長補佐 西山裕子、研究振興局参事官(情報担当)付参事官補佐 神部 匡毅

オブザーバー

九州大学マス・フォア・インダストリ研究所所長(九州大学大学院数理学府教授)佐伯修

5.議事録

【観山部会長】  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第7回科学技術・学術審議会基礎研究振興部会を開催いたします。
 本日の会議ですが、本部会運営規則に基づき、公開の扱いといたしますので、御承知おきお願いいたします。
 まず、事務局より、本日の出席者と議題の説明などをお願いいたします。

【西山課長補佐】  文部科学省基礎・基盤研究課課長補佐の西山でございます。本日の出席者を紹介させていただきます。
 まず、科学技術・学術審議会より、観山正見部会長でいらっしゃいます。

【観山部会長】  よろしくお願いします。

【西山課長補佐】  小泉周委員でいらっしゃいます。

【小泉委員】  よろしくお願いします。

【西山課長補佐】  小谷元子委員でいらっしゃいます。
 合田裕紀子委員でいらっしゃいます。

【合田委員】  よろしくお願いいたします。

【西山課長補佐】  齊藤英治委員でいらっしゃいます。

【齊藤委員】  よろしくお願いします。

【西山課長補佐】  品田博之委員でいらっしゃいます。
 辻篤子委員でいらっしゃいます。
 長谷山美紀委員でいらっしゃいます。
 美濃島薫委員でいらっしゃいます。
 また、天野浩委員、黒田一幸委員、城山英明委員につきましては、本日は御欠席の御連絡をいただいております。
 また、御出席いただいています小谷委員につきましては、本日用務の御都合上、15時頃に御退席される旨御連絡いただいております。
 続きまして、文部科学省の出席者を紹介させていただきます。
 研究振興局長の池田貴城でございます。
 研究振興局基礎・基盤研究課長の西山崇志でございます。

【西山課長】  よろしくお願いします。

【西山課長補佐】  また、本日は、議題1の関係で、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の佐伯修所長にも御出席いただいております。

【佐伯所長】  よろしくお願いいたします。

【西山課長補佐】  続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。資料は、議事次第の配付資料一覧のとおり、事前にメールにて配付しておりますが、欠落等ございましたら、画面越しに手を挙げ、申し出てください。資料の欠落等はございませんでしょうか。
 御確認ありがとうございました。
 続きまして、本日の議題について説明させていただきます。事務局から西山課長、よろしくお願いいたします。

【西山課長】  失礼いたします。すみません、課長も同じ西山なのですけども、私のほうから本日の議事について、先生方に御審議賜りたい内容について簡単に御説明申し上げたいと思います。
 本日でございますが、資料1から資料4までございますが、大きく分けて議題は3つでございます。1つ目の議題は、昨年からこの部会において御審議、御議論いただいています数理科学、数学の研究振興方策についてでございます。昨年、検討会の報告についても御審議を賜り、もろもろ取組を進めている最中でございますが、本日は、先ほど補佐の西山から申し上げましたとおり、九州大学の佐伯所長にも御出席いただきまして、これまでの文科省の委託事業の成果について御紹介いただき、その上で、今後の数理科学の展開、振興方策について事務局より御説明申し上げて、御審議いただきたいというのが1つ目でございます。
 2つ目の大きな議題は、数理科学の今後の振興の関係の中でも触れられているのですが、研究のDX化。研究DXについて、今、文部科学省における取組の状況について御報告をしたいというのが2つ目でございます。
 3つ目は、その他、資料4の関係ですが、本部会の公開手続について一部修正がございますので、これについて御審議をお願いしたいということでございます。
 以上です。よろしくお願いいたします。

【観山部会長】  それでは、議事に入りたいと思います。
 まず議題1、数学アドバンストイノベーションプラットフォームの成果報告についてですが、資料1を基に、佐伯修所長より御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【佐伯所長】  それでは、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所、それから数学アドバンストイノベーションプラットフォームの代表をしておりました佐伯から成果報告をさせていただきます。
 2ページをお願いします。こちら文部科学省科学技術試験研究委託事業、数学アドバンストイノベーションプラットフォームという委託事業ですけれども、省略してAIMaPで、「アイマップ」というふうに呼んでおります。こちらは平成29年度から5年間の委託事業でございまして、今年の3月31日をもって終了いたしました。その成果について、本日御報告させていただきます。
 こちらの委託事業は、前身となります、こちらも文部科学省の委託事業であります、略称でございますが、数学協働プログラム、こちらで構築された研究活動の数理科学におけるネットワークの基盤を受けまして、数学・数理科学と諸科学分野・産業との協働を推進する組織的な取組として、5年間の委託事業を行いました。こちらは九州大学マス・フォア・インダストリ研究所が幹事拠点となりまして、全国12の数学・数理科学機関を協力拠点として、オール・ジャパン体制で数学・数理科学へのニーズを積極的に発掘し、様々な研究者との協働による研究、そういった活動を促進する仕組みの構築を目指してまいりました。
 3ページをお願いします。こちらが協力いただいておりました日本全国における12の数学・数理科学拠点でございます。幹事拠点として九州大学、協力拠点として、そこにありますように、北は北海道大学から東北大学、東京大学、明治大学、そして早稲田大学、それから統計数理研究所、筑波大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、広島大学ということで、5年前に始めたときに日本全国で非常に大きな拠点ができておりましたので、そういったものを束ねた形で、オール・ジャパン体制で進めておりました。
4ページをお願いします。こちらのAIMaP事業ですけれども、大きく3つの柱を基に活動してまいりました。1番目が、重点化連携分野に沿った訴求企画の実施、それから2番目が、技術相談窓口によるマッチング活動、3番目が、拠点間の定期報告・情報交換会などを通した全国的ネットワーク体制の構築、この3つが柱となって5年間の活動を行ってまいりました。この3つの柱に沿って、今から成果について御報告させていただきます。
 5ページをお願いします。まず訴求企画ですけれども、こちらは12の拠点それぞれで強みがございます。例えば筑波大学では、統計数理学とその応用に強い研究拠点ということで、それぞれの拠点の強みが生かせるような重点化連携分野を、このページにありますように、5つほど設定いたしました。1番目がAI・データ駆動型科学の限界突破と活用範囲の拡大で、その他合計で5種類ありまして、それぞれの分野で強みを発揮できる拠点が、そこで訴求活動を行ってまいりました。
 こちらは、5年間の中でちょっとやり方が変わりまして、最初の3年間は日本全国から公募を募りまして、それで訴求活動を行ってまいりましたが、その後、中間評価を経て、各拠点の強みを生かしたほうがよいという点から、KPIをより絞ったほうがよいという御意見をいただきましたので、後半の2年間に関しましては、幹事拠点、協力拠点で企画、実施してまいりました。
 6ページをお願いします。これは具体的にどういった活動かと申しますと、例えば、様々な分野の学会――数学ではありません――に数学者が出かけていって、そこで、数学としてどういった貢献ができるかというのを、その学会に参加している方々と議論を行うということが、一つの大きなイベントの趣旨でございました。例えば、上の日本流体力学会年会では、機械学習という数学のテクニック、技術をどのように用いて流体力学に応用していくか、そういった訴求企画を行いまして、その後、そこに参加しておられたプロメテック・ソフトウェアという企業の方が非常に興味を持っていただきまして、技術相談などを行った後、次年度には、その企業の方がAIMaP企画をしていただいたとか、そういった形で数学者が、ほかの分野の業界、あるいは諸科学分野、そういったところに出かけていって、そこで数学の有用性について訴える、それが訴求企画でございます。
 下の進化計算シンポジウムに関しましては、進化計算というと数学に近いと思われるかもしれませんが、実際には様々な現実問題を進化計算という手法を使って解いている、そういった現場の研究者が多く出席しているシンポジウムなのですが、そこに数学者が出かけていって、あらかじめいただいた課題を数学的にどうやって解決していったらよいのかというアドバイスをその場でして、その研究会に参加していた方々と議論を行ったと、そういったような企画でございました。
 7ページをお願いします。このような形で、例えば令和2年度にそういった活動から発展しました共同研究の事例を14件、ここに書いてございますが、各訴求企画に、研究者だけではなくて、産業界の方も参加してくださいます。そういったところで話が始まり、その後、様々な産業界、あるいは他分野の方々との共同研究が始まったというのが非常に多く出ました。ですので、これが3本柱の1つ目の活動でございます。
 8ページをお願いします。2つ目の柱が技術相談窓口で、こちらは今回のAIMaPの事業で、コーディネーターあるいはシニアコーディネーターという担当者を幹事拠点の九州大学に配置いたしまして、その2人を中心に、産業界に出かけていって、産業界のニーズを集約する、そしてそれを日本全国の数学者と共有してマッチングを行うという活動を行いました。これは、これまで各拠点がばらばらにやっていたものを日本全国でまとめて、ネットワーク体制を構築してやっていくということで、非常に活発に行いました。これも中間評価を受けて、こういった活動をしたほうがいいということを受けまして始めたことですので、後半の2年間に行った活動でございます。
 9ページをお願いします。例えば昨年度、令和3年度に、このような業界の民間企業とコンタクトを取り、その中で興味を持ってくださったところと、オンラインでですけれども打合せを行い、その後、共同研究に進むべく相談を進めているといったようなものの数がそこに書いてございます。大体100件弱、コンタクトを取りましたが、実際の打合せまで進んだものが14件、その後、共同研究に向けて相談が進んでいるものが7件という感じで、なかなか打率的には低いかもしれませんけれども、こういった活動を数学者が行ったという初めての試みで、様々な成果が出ております。
 10ページをお願いします。これが一つの例ですけれども、企業とコンタクトを取ったところ、ウエアラブルデバイスの開発で数学者に協力をしていただきたいという要請がございました。最初、九州大学の中で研究者のマッチングを行おうとしたのですが、残念ながらうまくいきませんでした。ところがその後、明治大学とか理化学研究所さんのほうにこういった情報を共有したところ、ぜひ協力したいというお申出をいただきまして、その企業様と明治大学と理化学研究所と、それから九州大学のAIMaPが協力して、現在でも製品化に向けて共同研究が進んでおります。ですので、こういった形で日本全国の様々な拠点が協力する形でマッチングがうまくいった、そういった成果もAIMaPの中でございました。
 11ページをお願いします。こういったネットワーク体制を強化するべく、我々は定期報告・情報交換会というものを、大体3か月に1回ほど行いました。こちらに12の拠点の代表者、あるいは代表補佐の方が参加してくださいまして、そこで情報交換を行い、ある拠点でうまく受け取れないような産業界等からのニーズをほかの拠点で受け止めるとか、そういったマッチング活動に役立てたほか、意見交換会というものも行いまして、各拠点で抱える課題、あるいはうまくいったような事例、そういったものを水平展開しまして、これまで各拠点がそれぞれ、ある意味でばらばらに頑張ってやってきた連携活動を一緒になってやっていくような体制の構築に向けて、かなり基盤が整ってきたというところでございます。
 12ページをお願いします。それで、AIMaP事業は、この3月31日をもちまして終了いたしましたが、せっかくこういった成果が出ましたので、Post-AIMaP活動としても今年度、継続しております。経費的な支援は終わってしまったのですけれども、その代わり、別の手法を使って継続しております。例えば訴求活動につきましては、マス・フォア・インダストリ研究所が共同利用・共同研究拠点として認定されておりますので、そういった枠組みを利用しながら訴求活動を続けていく。それから、技術相談窓口に関しましては、現在、九州大学IMIの中に産学連携担当の者がおりますので、そちらが引き継ぐ形で技術相談窓口を引き継いで、場合によっては他拠点との課題の共有なども行っております。そしてネットワーク体制も、少なくとも各拠点の連絡窓口となる担当者のリストを作り、これから定期的に、技術相談を含めて情報交換会を実施していく予定です。
 最終的には、こういったものをより大きなプラットフォームとして、日本全国の数学・数理科学者が一つになって進めていく、そういったものを今後構築していきたい。今すぐにはそういったものはできないかもしれないけれども、いずれ近い将来、何かしらの手だてを打って、プラットフォームとしてしっかりつくっていきたいというふうに、我々を中心に数学・数理科学のコミュニティーが考えているところでございます。
 以上のPost-AIMaPに関しましては、Post-AIMaP宣言というものを九州大学IMIで策定いたしまして、現在ホームページ上で公開しておりますので、お時間がございましたら御覧いただければと思います。
 次、お願いします。以下は参考資料でございますので、お時間があれば御覧いただければと思います。訴求企画であるとか、あるいは5年間の実績値とかいったものがそちらに書いてございます。
 私からは以上でございます。どうも御清聴ありがとうございました。

【観山部会長】  ありがとうございました。ただいまの説明に関して、委員の先生方から御質問等ございますでしょうか。
 では、私のほうから。私がイメージしているような数学者とはちょっと違った感じで、数学の先生からこんなふうに、認識をすごく変えたところでございます。非常に大切な事業で、私の専門は物理学というか、天文学ですけれども、社会の方は数学というと、すごく敷居が高くて、何を相談していいのかわからない事が多いと思います。相談をする側がまず、どういうことを持っていったらいいのかというのがなかなか分かりにくいのではないかと思います。先ほどのいろんな事例、様々にあると思うのですが、そういう事例そのものをもっともっと御紹介されると、こういう問題を相談に行くと何とかなるのかということが分かっていただけるのではないかと思いましたいかがでしょうか。

【佐伯所長】  どうもありがとうございます。本日は時間の関係で割愛してしまったのですけれども、実は5年間の事例、それからAIMaPだけではなくて、ほかにも数学・数理科学研究者がこれまで行ってきました社会との連携、産業界との連携、そういったものの事例を、イラストなどを使って分かりやすくしたものをAIMaPのホームページ上で公開しております。それはAIMaPの成果として確かにございます。すみません、本日は時間の関係上割愛してしまいましたけれども、お時間があれば、そちらのほうを御覧いただければと思います。

【観山部会長】  非常に印象的に思っているのは、後で資料2にも出てくるようですけれども、待機児童の処理を、埼玉でしたか、非常にうまく連携された                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     事例があります。市の職員が1週間から10日間ぐらいかかって待機児童の、どこかが空けば誰が優先的に入るとか何とかという調整を大変な思いでやっていたのが、富士通と一緒にやられて、5分か数分ですぐ解決できるような仕組みをつくられたとかというのをNHKで放送していました。非常に印象的なもので、こういう問題が解決できるのかという非常にいい例になったと思います。今回のコロナでよく見た保健所のいろんな対応も、もうちょっと早くから対応できていれば非常に効率よくできたのではないかと思って、今後はそこら辺も随分、いろんな活躍の場があるのではないかなと思っておりますけれども。

【佐伯所長】  どうもありがとうございます。保育所の児童の配置というか、どの児童をどの保育園に行かせるか、そういったものにつきましては、数学の理論をうまく使うことによってアルゴリズムをつくって、なおかつその結果が、瞬時に出るだけではなくて、そうやって決まったお子さん、あるいは保護者に対して、どうして第1希望が駄目で、第2希望になってしまったのかとか、そういった理由もきっちり説明できるような形でアルゴリズム化、そして商品化ができております。そういったことはAIMaPの成果ではないのですけれども、AIMaPの事例集の中に今回の保育園のことも、イラストなどを交えて書いております。そういったものを社会一般の方、あるいは産業界の方が見ていただいて、ぜひ数学者にアプローチしていただければなと我々は考えているところです。

【観山部会長】  はい。
 先生方から何か、御質問なり御意見なり。

【辻委員】  辻ですが、よろしいでしょうか。

【観山部会長】  辻さん、どうぞ。

【辻委員】  辻です。AIMaPはすばらしい成果だと思いますが、気になるのはPost-AIMaPです。今後も続けていかれるということですが、事業が終わると、予算措置がなくなったり、なかなか難しい点があるかと思います。先ほども出てきましたが、今後の支援などの見通しをもう少しお聞かせ願えたらと思います。よろしくお願いします。

【佐伯所長】  どうもありがとうございます。そちらに関しましては、今すぐにこれが使えるとか、あれが使えるとかといった支援が手持ちではありませんので、これから様々な機会を使って、例えば大学からの概算要求であるとか、あるいは様々なプロジェクト経費であるとか、そういったものをIMIを中心に取りにいって、様々なところから支援をいただけるような形で続けていきたいというふうに考えています。
 こういったプラットフォームは、例えば共同利用・共同研究拠点の枠組みを使うこともできるとは思うのですけれども、そちらは共同利用研究の活動をするところで、ネットワークづくりというのは少し違うのですね。ですので、それはそれでまた別途、何かしらの予算要求等を通して強化していきたいと考えて、今、実際に動いているところでございます。

【小泉委員】  小泉です。よろしいでしょうか。

【観山部会長】  小泉さん、どうぞ。

【小泉委員】  今の観山先生や辻先生の御質問と絡むのですが、まず観山先生の関連する質問として、なかなか質問に行こうというと敷居が高いところを、できるだけ情報を公開していくという観山先生の御指摘だったと思うのですが、例えばその一つとして、論文のオープンアクセスというのを進めていくと、みんなが見られるようになっていって、ここにこういう研究者がいるのだというのがオープンアクセスで見やすいと思っています。
 そういった中、論文数の話が先ほど出ていましたけれども、確かに日本の論文数、伸びてはいるのですが、世界に比しては少ないほうであるということだと思うのですが、オープンアクセスの率を見ても、ヨーロッパとかは50%以上超えている、アメリカも50%近いにもかかわらず、日本は30%台しか数学の論文がオープンアクセスになっていないとなると、論文も少ないし、外からも見えないという状況ができているような気がします。なので、そこのオープンアクセス化というところも一つ重要なポイントなのかなと思っているところでした。
 それから、辻先生の御質問に関連して、佐伯先生も言われたみたいに、やはり共同利用・共同研究拠点というのをいかに活用していくのかというのが、もちろん共同利用・共同研究のミッション、拠点のミッションというのはあるわけですが、そこを、例えばIMIもそうですし、統数研もそうですし、そういったところが中心となりながら、特に大学共同利用機関法人がそういうネットワークづくりというところでの拠点にもなり得るべくところでもありますので、そういった共同利用・共同研究の枠組みを使いながらネットワークをつくっていく、そこを文科省も支援していくということができるとスムーズなのかなと思って聞いていました。ごめんなさい、質問というより、コメント2つです。

【佐伯所長】  貴重なコメントどうもありがとうございます。オープンアクセス化に関しましては数学コミュニティーでも重要なことだと考えておりまして、アーカイブ等に投稿するなどして、最終版でないものをそちらのほうで公開して、オープンアクセスに近い形で、一般の方々でも見られるような形を推進しているところなのですけれども、それは組織的にやっていくということではなくて、各研究者が頑張ってやっているというようなところもございます。例えば九州大学ですと、九州大学の中のリポジトリでオープンアクセス化を図るような動きもしておりますので、各大学で、数学に限らず、そういった方向で進めているところではないかと思われます。
 それから、2つ目の共同利用・共同研究拠点に関しましてはまさにおっしゃるとおりで、そういった活動を通してネットワーク化、これをより強固に、強力に進めていく必要があるというふうに考えております。これまで我々、産業数学をテーマに活動する場を提供するということはやってきたのですけれども、互いのネットワーク、そういったものを積極的にやっていこうということは、正直申し上げて、あまりやってこなかったのですね。そこはちょっと今反省しておりまして、今後、そこでの活動を行った方同士のネットワーク、あるいは産業界とのネットワーク、そういったものを共同利用拠点の活動を通して進めていきたいと考えているところです。どうもありがとうございます。

【観山部会長】  どうもありがとうございました。
 まだあるかと思いますけど、関連する議題が続きますので、議題の2に移らせていただきたいと思います。
 「2030年に向けた数理科学の展開について」に移りたいと思います。まず事務局より、資料2を基に御説明をお願いいたします。

【西山課長補佐】  事務局より、資料2に基づきまして御説明させていただきます。
 まず、一番最初の表紙のところを御覧いただければと思います。「2030年に向けた数理科学の展開(案)」というふうに書かせていただいております。この2030年というところが政府として、産業構造の転換点であるという、非常に重要な年であるというふうに整理をしておりまして、第6期科学技術・イノベーション基本計画におきましても、この2030年を見据えて、これから今後5年間政府として何をしていくべきかということについて議論され、閣議決定しているという状況になってございます。したがいまして、文部科学省としましても、科学技術・イノベーション基本計画の着実な実行に向け、2030年に向けどのように数理科学を展開していくべきか、そのときに数理科学に何を期待し、何を重要課題とするか、そういう観点から議論した資料がこちらになっております。これはあくまで文部科学省として議論してきたものですので、本日この場で先生方に御議論、御審議いただきたいというふうに思ってございます。
 それでは、1ページをお願いいたします。
 もう皆さん非常に御存知のことと思うのですけれども、数理科学につきましては、いろいろな社会の場面で広く使われ、役に立っている学問でございます。例えばデジタルの場面、そしてAIの場面、通信の場面、経済の場面、例えば、AIでは、ベイズ統計、フーリエ解析というふうに言うと、非常に難しくて、社会一般の方々にはちょっと取っつきにくいというイメージがありますけれども、例えば迷惑メールの解析であるとか、画像の圧縮変換に実は数学が使われているというふうに思えば、非常に社会のあらゆる場面に数学が使われているということが御理解いただけるかなと思います。
 また、これは、そういう社会に広く使われているだけではなくて、左側にありますブロックチェーン技術のような形で、社会を変換する、社会の転換になる、変革するという技術に数学が、ゼロから1をつくり出す学問として関わってきていると、そこがやはり数理科学の一番重要なところではないかと思っております。したがって、数理科学がDX、デジタル革新を加速し、新たな価値創造の原動力になっている学問であるというふうに書かせていただいております。
 そのような認識の下で、次のページ(2ページ)をお願いいたします。
 文部科学省として、それでは2030年に向けて、この数理科学というものはどのようなところが課題であるかということをまとめさせていただいております。今申し上げたように、数理科学が社会のあらゆる場面に使われているということはもちろんなのですけれども、もともとのこの学問というのがどういう学問なのかというところについて、ここもやはりなかなか、社会一般に広く知られているかというと、知られていないのではないかと思っておりまして、これを概念的に整理したというところが、青い四角の中でございます。
 では、数理科学はどのような学問かといったとき、社会現象や産業現象、気象の現象、例えば株価の現象など、いろいろな現象において、その根本原理というものを解明する、そしてその根本原理が解明できるからこそ、その中で変化をしていく兆しの段階でそれを予測できるのではないかと、そのような学問が数理科学であると。
 そして、その下に「また」、新たな価値を創造するとあります。根本原理を解明できたことによって、またそれを新たに、ゼロから1をつくり出す新たな価値を創造することができるのではないか、これによって新たな産業や社会変革を伴うイノベーションが創出できるのではないか、そういうところを我々として、この数理科学の学問の根幹であるというふうに思ってございます。
 こういうような整理も含め、これを新たに今回整理をしたのですけども、昨年8月に、この基礎部会でも、数理・融合検討会の報告書について少し報告をさせていただきました。そこから皆様の御議論、御意見を踏まえまして、また文部科学省で再検討、再議論した結果として、このような整理をさせていただいております。こういうような整理の中で、では数理科学を振興するに当たってどのようなものが重要課題なのかというところを、下に模式図のようなものを描かせていただいてまとめさせていただいております。
 大きく5つ、課題を挙げております。1つ目が産学官の政策形成の場というふうに左上にありまして、2つ目が、世界トップレベルの数理科学の探求拠点とありまして、真ん中に重要課題の3、学際、異分野との連携とありまして、左に社会との連携、知的アセットの価値化とございます。右のほうに、数理・データサイエンス・AI人材育成というふうにあります。この5つ、実は非常に深く連関していると思っておりまして、この図も意味を持っております。
 この三角が数理科学の学問だと思っていただき、下に行けば行くほど学問として深化していくと。地中深くに潜っていくイメージです。この学問が深化していくというところと、社会や他分野と連携をしていくというのを、矢印が3つずつぐらい描かれている、この矢印で表現しております。
 このように、数理科学がどのように学問として発展し、社会と相互作用していくか、融合していくかというところを図示しておるのですが、「目指すべき社会」を赤い四角で書いており、科学技術・イノベーション基本計画においても、また骨太の方針や、そのほかの政府文書においても、日本としてSociety5.0を実現するというのが、最終目標であると位置づけており、数理科学が重要課題を解決していくことでこの目指すべき社会が実現するかというようなところの観点での、この課題5つでございます。
 ちょっと細かく説明しますが、重要課題の1としては、産学官の政策形成の場と書いてありますように、まずは何をするべきかというのを産と官と学がしっかりと、一つのところに集まって政策形成をしていく、これがまず基本であるだろうと思っております。そして、重要課題の2に書いておりますように、世界トップレベルの探求拠点、これは、諸外国
で非常に今、数理科学が大切だと言われておりますが、まずはやはり大きな研究拠点、それも、まず数理科学という学問としての探求拠点、こういうものも非常に重要になってくるということで、重要課題の2と書かせていただいております。
 それと分かれる形で重要課題の3がございまして、学際、異分野との連携。これは、社会科学であるとか、工学、物理学であるとか、医学、薬学、いろいろな分野で、議題の1で佐伯所長から御説明ありましたように、いろんな連携を数理科学コミュニティーとしてもやっておりますけれども、やはりここを爆発的に推進していく必要がある、そしてそれが社会に還元されていく必要もあるだろうということ。
 そして、重要課題の4、社会との連携。重要課題の3は異分野ですけれども、これは社会との連携ですので、いろいろ、産業界であるとか社会課題解決であるとか、こういうものを連携していく必要がある。実際には、重要課題の3と4を連携したような、学際、異分野と産業界の連携というようなことも想定しているところでございます。
 そして、重要課題の4のところに、もう一つ書いております。これは新しく今回打ち出したいというふうに思っておる概念の一つでありますけども、全体としては新しいのですけども、知的アセットの価値化とございます。ここが、先ほど佐伯所長からもありましたような待機児童の問題、これは非常に社会問題になっておりましたけども、これを数学が2年、3年と共同研究することで、今までできなかったようなスピードでそれが解決したと。そういうようなことというのは、社会的に価値もあり、またそれが産業になったときに非常に価値がある、そのアルゴリズム自体は価値があるのですけれども、それをしっかりと価値化して、それを実際に発明した方、知を創出した方にしっかりと還元をする、そういうものが仕組みとしてまだないのではないかと。そういうところがやはり、研究者側のインセンティブ、学術界側のインセンティブにもなっておりませんし、また産業界の方々も、これをどう評価していいのかと、そういうところについても前例が足りないというようなところもあって、こういう仕組みもしっかりつくっていかなければいけないのではないかというふうに思っております。
 そして、重要課題の5でございます。数理・データサイエンス・AI人材育成というふうにありますけども、この人材につきましては第6期科学技術・イノベーション基本計画でも提唱しておりまして、もともとAI戦略2019で出てきましたけれども、AI人材というのがやはり重要施策に非常に大切であると言われた中で、やはりその根幹となる学問としての数理をしっかり分かっている人材、これは本当にそんなに多くないかなというふうに思っておりますけれども、こういう人材をつくっていくことが非常に大切であると、そのために博士支援であるとか、そういうことが重要であるだろうと思っているということでございます。
 3ページをお願いいたします。今申し上げたような5つの重要課題に対して、それでは政府としてどのような施策を展開していくべきかということを整理したのが、この紙でございます。実際には、やはり文部科学省、これまでもいろいろな形で博士支援や産学連携の推進ということをやっておりますので、既存の施策というものも当然あるというふうに思っておりますので、新たにこういうものが必要だという議論ではなく、今、政府として何を打ち出すべきか、何をするべきかということをまず整理して、その中で、これは既存にあるとか、これがまだないとか、そのような議論にしていくのが非常に建設的ではないかというふうに思っておりますので、こういう形でまとめております。
 具体的に、重要課題の1、先ほど産学官の政策形成の場がないのではないかと、これはやはりないと我々思っておりますので、新たに創設をする必要があるのではないかと思っております。仮の名前というのは仮の名前ですので、あまり意味がないのですけれども、イニシアティブ会議というふうに名づけたようなものを設置する必要があるのではないかと思っております。
 そして、重要課題の2でございます。世界トップレベルの探求拠点、これは学術としての探求拠点でございますけれども、こういうものもやはり今ないのではないかと思っておりますので、この創設を検討というふうに、新たなものとして検討が必要ではないかと書いております。
 重要課題の3と4は非常に近しい課題でございますので、一緒にまとめておりますけども、学際、異分野との連携、そして社会との連携、産業界との連携は今も、数理科学に特化した形ではございませんけれども、いろいろ推進施策というのを文科省でも展開しておりますので、これは省内にもいろいろ関係課がございますし、そういう関係課とも話をしながら、そういうところの活用なども含めてできないかというようなところで話をしているということでございまして、また新たに必要なものとして、少し真ん中のほうに書いておりますけども、滞在型研究とPBL型研究を国際的に提供し、相補的に進めるため、東西2拠点に組織体制を構築とございます。これは新たに書いておりますところでございますけれども、このような形で滞在型研究が、昨年の報告書で少し提唱、提言がございましたけれども、まだ国内に1つもないと思っている仕組みでございまして、具体的には、産業界の方、異分野の研究者、数理科学の研究者が一つところに集まって、例えば1か月、2か月の間、数理科学についての学術的な研究をがっと一緒にやることで、解いているのは数理科学の式なのですけれども、それがそのまま、例えば産業界で今起こっているような問題の解決につながる、そのようなことを想定しているということでございます。具体例は後ほどに御説明を少しさせていただければと思っております。
 その下のほうに、研究DXを加速するべくというふうに書いてありますけれども、これも新たに書かせていただいているものです。この研究DXは本日の議題3にもなっておりますけれども、こういうものを数理科学においても加速していくために、ユースケースを形成し、連携して実施をしていくと、こういうことも大切であるというふうに打ち出しているところでございます。
 そして、右側の重要課題5でございます。人材育成、人材層の重層化とありますけども、こちらについては数理科学に特化したということではありませんが、いろいろと、博士人材の支援であるとか、そういうものについて、国のほうで施策、データサイエンス・AI人材の支援というような形で幅広く展開しておりまして、このようなところについてもしっかりとやっていく必要があるだろうというふうに思っております。また、下のほうに「ジョブ型研究インターンシップを促進」というようなところも少し書かせていただいているということでございます。
 たくさんありますので、代表例を御紹介させていただきましたけれども、次(4ページ)をお願いいたします。
 そうしまして、今御紹介した2枚が主に御審議いただきたい大きな政策ですけれども、この政策を我々提言するに至った、その分析が以下にあるものでございます。具体的には、まずこのページ(4ぺージ)は何を示しているかというと、これまで文部科学省として、数理科学、一番最初にこういうものが大切だというふうに思ったときから、これまでの間どういうような政策展開をしてきたか、施策展開をしてきたかというのを、基本計画の変遷と比較して整理した図になっております。
 古くは第3期科学技術基本計画、2006年からでございますけれども、このときに初めて「忘れられた科学-数学」として、行政の中で数学という言葉が注目されたという状況でございます。そこから文部科学省としては、やはりこの忘れられた科学をしっかり推進しなければいけないということで、委託研究というような形で、最初の5年間は統数研で、そして次の5年間は先ほど佐伯所長から御紹介があった九州大学のIMIに、委託事業という形で全国のネットワークづくりや産学官の連携マッチングというようなことについて取り組んでいただきまして、一定のネットワークづくりができたと思っております。ただし、冒頭でも御説明しましたとおり、今、2030年に向けてさらにこれを加速していく必要があるというようなところを整理したところでございます。
 5ページをお願いします。ここからは、数理科学というのが、2006年に発見されてから15年間の施策で今現在どういう位置にあるのかということについて、いろいろなデータを集めて、我々文部科学省で分析をしたものになっております。ごく簡単に御紹介をしますけれども、研究力がどうであるかというところが最初にあります。左側が国際数学者会議での講演者数とありまして、数学の世界、学術の世界ではここで講演をするというのが、ノーベル賞とはいかないまでも、学術コミュニティーで非常に権威となるような、そういう講演の機会であるというところで、ここで日本の人が何人講演をしたかというところが、トップレベルの数学研究者が日本に何人いるかということを指していると、そういう図になっておりまして、アメリカが圧倒的でございますけれども、日本というところも世界で一定レベルの競争力を維持してきているというふうに思っております。
 右側は数学の論文数でございます。真ん中に100の線がありますけども、実は論文数自体は非常に増えております。ただし、世界と比較した順位というのが下がっていると。右側に、2005年から2007年の平均が6位でございますけども、その後、2016年から2018年の最近の順位が9位というふうに、ちょっと下がっているような状況でありますので、世界順位が低下傾向であると、この辺が警鐘かなというふうに思っております。
 6ページをお願いします。ここからはもうざっと、大学としての研究力というのも、論文数など頑張っております、分野との連携も活発になってきていますという図です。
 7ページをお願いします。これは博士人材、日本数学会がデータを提供していただきまして、博士人材どうかということですけど、ごく簡単に。大学への就職者数が割合として減っている一方で、就職先未定であるとか民間企業とか、そういうところが少し増加しているというふうに分析しております。
 8ページをお願いします。社会・産業界との連携でございます。これは大学にも御協力いただいて、上のほうの赤いグラフを比較していただければと思うのですけども、共同研究の件数と金額を示しており、(産学連携は)活発になってきているというふうに思っております。
 9ページをお願いします。先ほど、数学が何の役に立つのかというのは非常に難しいというふうにありましたけれども、本当にこの5年間、10年間でどういう成果が現れたかということをここにまとめておりまして、かつ、これがどういうふうに今後のイノベーションに期待できるかというようなところについてまとめております。佐伯所長からありました待機児童につきましても真ん中の上のほうにありますけれども、また東北大学の材料研究も左側にありまして、今後の将来的なイノベーションの期待というところも非常に強い分野であるというふうに思っております。もし話題に出てきたら、また御説明したいと思います。
 10ページをお願いします。冒頭にもありましたけども、アメリカや、その次(11ページ)のスライドのイギリス、そして中国、このような主要国において、この分野は非常に力を入れて支援をしていると。そのようなところで、日本としても非常にこの分野、研究力を高めていかなければいけないというふうに思ってございます。
 駆け足になりましたけれども、以上でございます。

【観山部会長】  ありがとうございました。ただいまの説明に関して、委員の先生方から御質問や御意見ございますでしょうか。
 小谷先生が3時で出られるそうですが、小谷先生、何かございますでしょうか。

【小谷委員】  小谷でございます。予定が変わって、最後まで出られることになりました。

【観山部会長】  そうですか。

【小谷委員】  数学のことですので、私から口火というよりは、皆様の御意見を割きにお聞きできればと思います。後でまたコメントさせていただきます。

【観山部会長】  はい。
 いかがでしょうか。
 では、私のほうから。随分具体例も示されましたけれども、やっぱり重要なのは、先ほどの資料で言うと3ページですかね。研究者とほかの分野との融合とかというのは、割といろんな世界の事例もありますし、我々の分野で言うと、ブラックホールの写真をうまく作ったというのも、その成果の一つなのですけども、やっぱり重要なのは、書かれている重要課題の3とか4、特に社会との連携という部分がもっともっと進まないといけないと思います。先ほど佐伯所長からのお話もありましたけれども、もっと社会と連携して新しい問題をどんどん解決していけないでしょうか?学術関連の連携に対しては、そういういろんな面から一つの体系をつくっていくということでありますが、社会問題のほうがなかなか進んでいないのではないでしょうか。まだ数理科学だとか数学だとかというと、どういうことができるのかというのが、一般の理解が少ないと思います。今、特に日本はまだ遅れているのではないかと思って、それで、今後の展開をぜひ一生懸命やらないといけないなと思っておるところで。ですから、この重要課題3、4の点が特に私は非常に重要な点ではないかと思いました。
 先生方、いかがでしょうか。

【品田委員】  すみません、よろしいでしょうか。品田ですけれども。

【観山部会長】  どうぞ。

【品田委員】  今、先生おっしゃったことはまさにそのとおりだと思うのですが、私、先ほどのAIMaPの御発表を聞いたときも思ったのですが、学問として数学を究めようとしている方たちが、社会との連携で、時間は有限なので、ある程度取られるわけですよね。当然トータルとしては非常にプラスになる、いいことなのですけれども、研究者にとってのインセンティブとかモチベーションとか、そういうものはどういう形で得られるのかなというのが、私がお聞きした中ではあんまり想像できなかったこと。あと、また社会との連携となると、その成果によって民間企業が非常に大きく利益を得るとか、要するに経済活動につながるので、それはいいことなのですけれども、そうすると民間企業の数学、AIとか深層学習とか、そういうところの技術を持っているところがもっと頑張ったほうがいいのかな――ほうがいいのかなというのは、ちょっと不適切ですけど、そういうところももっと頑張るべきなのではないかなどと、全体まとまらないのですけど、もやもやと考えました。
 まず、アカデミアの方、数学の方が社会と連携するときのモチベーションとかインセンティブみたいなものはどういうふうにお考えでしょうか。

【観山部会長】  では佐伯先生、実例からいかがでしょうか。

【佐伯所長】  おっしゃるところは非常によく分かります。一つの情報というか、事例なのですが、九州大学IMIは設立の趣旨からして、産業数学を進めて、産業界との連携を進めていくということがミッションになっていますので、所員の皆さんがそういった研究をすることをIMIとしてもちろん推奨し、ミッションですからやっていただかないといけない。実際やっていただいた教員の皆さんにはきちんとした評価を行うということで、一応IMIの中であればインセンティブがそれなりにあっていいのですけれども、ただ、皆さんが共同研究をやっていくと、自身の研究以外のこと、企業との交渉であるとか知的財産のことであるとか、そういったことに時間を取られてしまっています。ですので今後の課題としては、そういった教員の研究に専念できるような環境をより強固にしていく必要があると思っておりますので、それはIMIのことなのですけれども、日本全国の数学コミュニティーの中では、やはりまだまだ産学連携、あるいは教員が連携をやるためのインセンティブというのですか、そういったものがまだきちんと整っていないというのが現状だと思います。
 ですので、例えば産業界と連携活動しますと、場合によっては企業の方に、それは論文にしないでほしいとかいうことで、研究者としては論文を書くことが非常に重要なのですけども、論文に書けないというようなことが起こると、研究者としてのインセンティブが非常に下がってしまいます。ですので、その辺りはまだまだ解決すべき課題が多いところというふうに考えております。

【小谷委員】  小谷です。よろしいでしょうか。

【観山部会長】  小谷先生、どうぞ。

【小谷委員】  今御質問されたところですけれども、海外の研究者、特に海外のほかの分野の研究者とお話ししますと、数学を使って新しい展開を求めるということは、もうある意味では当たり前というか、みんながすごく興味をもっているという印象です。一方、日本では数学は仙人みたいに暮らしている変な人というイメージがまだまだ固定的にあります。一方で、九大IMIの活動を含め、いろんな形で産業界の方と数学の出会いも幾つか生まれていて、実際に何かやられた方はすごく満足してくださるという状況があります。
 これは本当にもったいなくて、世界中が大きく動いている中で、たまたま出会いの場がないだけで、せっかくこちらにすばらしい数学者がいて、こちらに数学を求めている課題があるにもかかわらず、その間がつなげていない。ポテンシャルはあるけれども機会や仕組みがなかったというのが今の状況で、しかもこれが世界の中で立ち後れているのだとすると、やっぱり国に支援していただきたい、そういうスキームをつくっていただきたいなというふうに思います。
 それから、モチベーションですけれども、日本の企業の方が数学者に求めることに関して、非常にイメージが固定的というか、小さい役割しか考えてくださっていない場合があります。本当は数学を使うことはもっとダイナミックに幾らでもあって、そういうダイナミックな数学との連携であれば、数学者にとっても非常に大きなメリットになります。実際、冒頭、観山委員も言われたように、数学と物理はお互いにウィン・ウィンの関係でやってきたわけです。数学はやはり外の分野から何か刺激を受けて、そこからいただいた問題を契機に新しく発展していくという形態でしたので、これまで物理と仲よくしてきたが、ライフサイエンス、経済との出会いでまた新しく発展し、さらに社会課題、そして、それこそ人の感性とか感情とか嗜好みたいなところまで含めて、新しい刺激の中で、課題をどうやって数理化するかというところから、新しく数学が発展する契機になります。そういう形での連携できるようであれば、これは数学者にとってビッグチャンスでしかないというふうに思っています。
 ただ、そのためには、佐伯先生も言われたように、それがインセンティブになるような仕組み、まだまだ幼児期の状況でありますので、何らかの意味でのそういうことができるような仕組みというものが必要だというふうに思っているところです。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございました。品田さんが言われた1番目の問題、2人の委員から、佐伯所長と、今、小谷先生から言われた2番目の問題は、確かに企業の中でいろいろあると思います。一方、企業というのは、その企業の利益を最優先にするので、別の企業に相談に行くなんていうのはなかなか難しくて、それはそれこそ非常に公平な立場である研究者とか、そういうところにうまくパイプをつくっておくほうが全体として動くのではないかなと思います。もちろんいろんな、コンピューターのメーカーだとか、そういうのに強いメーカーがたくさんありますので、そういうところとの連携もあり得る思います。オープンプラットフォームとかいう考え方も今すごくはやっていますので、そういうところでやっていただければと思いますが。

【品田委員】  ありがとうございます。私のイメージは、1つは数学者、すごい純粋に数学を究めようとしている研究者と、社会課題を持っている、本当に数学者って仙人なんじゃないかと思っているような人たちとの間をつなぐトランスレーターというか、そういう役割は、もちろん大学とか国主導でつくるのも必要だと思いますけども、そういうので事業をするような民間企業も存在し得るのかなと、ちょっと漠然と思ったもので、申し上げてみました。それ以上深くは考えていないのですけれども。
 以上です。ありがとうございます。

【観山部会長】  それと、何回も言いましたが、さっきの待機児童の問題なんて、これが数学で解決できるのかなというのはやっぱり非常に面白いところで、そこら辺もっといろんなところに広報、アピールされればいいと思います。私、昨年から私立大学に行きまして、1つ驚いたことというのは、入学試験の合格判断をするというところが、物すごく複雑なところがあって、それが人海戦術で、かつ時間があまりないので、労力かけているのです。つまりどんどん国立に逃げられるとか、何ていいますか、いろんな選択科目を取っているので、次に誰が抜けたら誰を上げるのかという問題、待機児童とよく似たような問題があります。そういう問題は今、本当に人がやっているのですが、ソフトができるとすぐに解決できるのだろうなと思っています。企業と相談するとすごい高額に請求されるのではと躊躇しています。いろんな問題がたくさんあって、それがこういう数理科学という問題で解けるのだということがもっともっと社会に出てくることが必要だと思います。だからそのマッチングするところが非常に重要だと思うのです。大学というのは問題発見型と、よく我々も天文学ですから言っていたのですが、問題解決型の窓口がたくさんあるのだということが非常に重要だと思いますけれども。
 いかがでしょうか。よろしいですか。

【齊藤委員】  齊藤ですが、よろしいでしょうか。

【観山部会長】  どうぞ。

【齊藤委員】  前のページ(2ページ)の、重要課題1、2、3、4、5とあるページですが、5というのはなかなか重要だと思っていて、例えば大学で工学部とかに入ってくる学生でも、数学苦手ですという方が年々増えているという状況です。でも、数学苦手というのと、数学を本当に上手に使いこなせるかというのは、またちょっと別の話なので、こういった文脈で数学を使うというのはかなり広い裾野が必要で、いろんな現象を数理モデル化してみようということをまずやってみるかどうかということがかなり重要だと思うのですね。だから、例えば日本は英語リテラシーがないと言われていましたが、英語リテラシーがあるということと、いい英語学者が沢山いるということは全く別問題で、数学も多分、日本は数理科学の研究者のレベルというのは非常によい状態にあるのだけど、全体としては数学リテラシーがあまりないというような状況にあるのではないかと思います。
 だからそういう意味で、この重要課題5というのは、AIを良い機会として利用されると書いてあり、大学、高校生を対象に全員向けという施策かと思いますが、これは基本パッケージなので、誰でも使えるような簡単なパッケージがありますし、中を必ずしもよく分かっていなくても、物事を数学に乗っけようと、そういうアティチュードが多分学べるのですね。パッケージを使ってしまえば、中で何やっているか全く分からないのであんまりよくないという御批判もあるのですが、数学に乗っけようという態度はまず学べるので、もうちょっと教育対象を広げてもよろしいのではないかなというふうに感じています。できるだけ裾野を広げるようなことも重要なのではないかなと思っております。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございます。重要な視点だと思います。

【合田委員】  よろしいでしょうか。合田と申します。

【観山部会長】  合田先生、どうぞ。

【合田委員】  今の齊藤先生のおっしゃった点と似ているのですけれども、分野融合や学際研究の推進などへ自分自身も関わってきて一番の壁を感じるのは、やはりお互いの言葉が違うということです。ある程度その分野のバックグラウンドを持っていないと話が進まないという点があります。マチュアな研究者がお互いマッチングされても、それはいいのですけれども、やはり特に欧米とかですと、もう大学のときから違うフィールドとのダブルメジャーとかを推奨しているということがあって、やはり若くいろいろ吸収ができて柔軟な発想ができるときに、それこそ違う分野の勉強を積むような機会があればいいかなと思いました。
 あと博士課程の支援は、AIのところにしか書いていないのですけれども、例えば、博士課程でもほかの分野のワークショップ参加を推進するとか、そのような経験を得ると、今度ポスドクになったときでもその経験を思い起こして、異分野の研究者と交流するときにいろいろなアイデアが浮かぶのではないかと思いました。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございました。異分野の連携というのは非常に重要ですし、それから言葉の問題が確かにあると思います。やっぱり数学というと、なかなか数理科学、敷居が高いし、どういう言葉でどういうふうに持っていったらいいのだろうかというところがもっともっと開かれていくとよろしいかと思いますけどね。
 ほかにいかがでしょうか。

【辻委員】  すみません、辻です。

【観山部会長】  どうぞ。

【辻委員】  先ほど小谷先生がおっしゃった、現実社会の問題と取り組むことは数学にとっても発展するための非常なチャンスだということについて、3ページの上から2行目に「適切に価値化し学問へ再投資することで、学問の幅を拡げていく機能拡張のモデル」とあり、下の方に「価値化して、資産として、収益を再投資する仕組み」とあります。社会の問題に取り組んだ結果が数理科学に還元されて、それによって数理科学がさらに進んでいく、そういった側面もあったほうがいいように思いました。当然だから触れられなかったのかとも思いますが。

【観山部会長】  ありがとうございました。確かに、小谷先生も最初に言われましたけれども、具体的な問題をいろいろ解決することによって、それを新たな数理体系化するだとか学術化するということもできるかと思いますので、そういう面も触れていったらいいと思います。

【美濃島委員】  よろしいでしょうか。

【観山部会長】  どうぞ。

【美濃島委員】  美濃島ですけれども、キャリア、博士の進路というお話しがあったと思うのですけども、やはりこういった新しい分野を活性化していく点では人材育成というのが重要な柱となると思います。その場合に、キャリアパスを見通して人材育成ということを総合的に、いろんなレベルの人材育成をしていくことが必要だと思うのですが。そういった意味で、1つはアカデミアの中で、例えば、数学者が社会的な課題、ある意味融合分野に乗り出していったときに、それを評価される仕組みということが1つだと思いますし、あとそれから、先ほど人材の裾野を広げるというお話がありましたが、まさに従来の、仙人という言葉が出ていましたが、そういったトップレベルの数学者がこういった分野に乗り出していくというだけではなくて、やはりデータサイエンスという観点で、従来の数学という概念とはちょっと違う、使っていくという概念のデータサイエンスを主としたキャリアパスというのも考えていく必要があると思うのですね。
 そういったときに、やはり出口が、博士であれば卒業した後の産業界での受皿というようなことを考えていく必要があると思いまして、ある意味、今非常に求められている人材だと思うのですが、やはり心配なのが、今は非常に求められているということで育成をするのだけれども、言葉はちょっとあれですけども、使い捨てというか、そういうふうに使われてしまうのではないかというような、人材側の将来的な、どのように息長く活躍していけるかというような心配があると思うのです。
 というのは、先ほど九州大学さんの例を伺って、非常にすばらしい活動だと思って伺ったのですけど、産業界と共同研究していく場合に、例えば、数学がこういった問題、課題を解決できますよというふうに売り込んだとして、ではぜひうちの課題を解決してくださいと、恐らく皆さん興味を持つと思うのですが、道具というか、御用聞きというか、使われてしまって、その企業さんの課題を単に解決してあげるみたいな、そういった形になってしまうと、人材としては、その先ちゃんとキャリアを積んでいけるのかという心配があると思うのです。
 ですので、こういった人材育成を考えるときに、例えば、産業界ともう少し一体となって、業界の中で、こういったデータサイエンスとか数理というバックグラウンドを持った人材をどう活用していくのかと、単に課題をちょっと解決して、デモンストレーションするというだけではなく、長い目でどう活用していくのかというような形の議論も必要なのではないかと、それが安心して若手人材がそこに進んでいけるということになるのではないかというふうに思いましたので、コメントさせていただきました。

【観山部会長】  ありがとうございました。重要な視点だと思います。ただ、まずはこういう試みにアプローチしていただくということが重要だと思いますけど、その先は先生おっしゃるとおりだと思います。
 よろしいですか。
 それでは、また振り返ることができると思いますけども、議題3、研究DXの推進について、移りたいと思います。今日の議論は次回の基礎研究振興部会でも再び議論したいと思いますので、どうも本当にありがとうございました。
 では、資料3を基に、事務局から説明をお願いいたします。

【神部参事官補佐】  研究振興局情報参事官付補佐の神部と申します。本日は、研究DXの推進について御説明の機会をいただきまして誠にありがとうございます。
 早速ですが、次のページ(2ページ)をお願いいたします。
 新型コロナの影響もありまして、社会全体として、DX、デジタルトランスフォーメーションが進んでいるというのが現状の認識でございます。それは経済や産業の場面だけではなくて、研究の分野におきましてもデジタルトランスフォーメーションというものが進んでいくものだと認識しております。特に人工知能やビッグデータの解析の発展や、研究機器の遠隔化・自動化、あとはスパコン、そういったデジタルインフラの利用の拡大が続いております。さらには、世界的な潮流としましてオープンサイエンスの動きがございまして、論文だけではなく、データをよりみんなで共有していこうと、そういった動きが進んでおります。こういった動きの中で、新たな価値の創造を目指して、デジタル技術とデータを活用しまして研究活動を変革していく、そういったことが研究のデジタルトランスフォーメーションだと考えております。
 下に図示したものがございますが、これはあくまでイメージでございます。例えば研究施設・設備について、研究機器がリモート化、スマート化するだけではなくて、得られたデータをAIが解析することによって、また新しい次の実験を自動的に生成していく、そういったループをつくることによって、より生産性を高めることができるというふうに考えられます。また組織を超えたデータの利活用が進むことで、分野融合の研究コミュニティーなども進んでいくと考えられます。そういったことがクラウド上でより行えるようになれば、それは時間や場所を問わない研究活動ができていくと、そういったことが考えられます。
 3ページをお願いします。実際に、研究DXに関係する事例を幾つか集めてございます。左上を御覧いただければと思いますが、これは物材機構の成果の事例の一つでございますが、モーターの効率化のためには永久磁石の効率性を高めていくといった社会的なニーズがございまして、その一つにネオジム磁石がございます。その作成プロセス自体は、約6,600万通りあると言われておりますが、これをAIで解析しまして、最適な作成条件に基づきまして実験を積み重ねることで、約40回程度の実験で、従来に比べ1.5倍の性能を得るといった成果を出した事例もございます。
 あと右下のほうでございますが、これは海外の事例でございます。ケンブリッジ大学とマンチェスター大学の共同で開発された「イブ」というロボットでございますが、こちらにAIを活用することによって、1日当たり1万化合物のスクリーニングを可能としまして、研究の生産性、効率性を非常に高めたといった事例もございます。
 こういった事例が少しずつ出ているところではございますが、まだ一部の研究者、もしくは研究領域のみだというふうに考えてございまして、この変革の動きを日本全体にどうやって広めていくのかということが、今、政策的な課題と認識しております。
 4ページを御覧ください。そのための課題として、幾つか主なものをまとめたのがこちらの表となっております。左側の列に課題を挙げておりますが、例えば、そもそもDXとは何なのかということは、やはりあまり一般的には認識されていないというふうに考えております。あと実際にDXをやって本当によくなるのか、本当に成果が出るのかといったことも、まだまだケースが不十分だと考えております。あとデータに関しましては、分野やデータの特性、個人情報や知財に絡むような特性もございまして、本当にみんなでシェアできるのか、公開できるのか、そういったオープン・アンド・クローズの難しさといったものもございます。そのほか、研究DXにかかるコスト、データをちゃんと整理するためのコストであったりとか、それに必要なインフラをどう確保していくのか、あとは、今回数学の議論もございましたが、最先端の情報技術、数理科学、そういった分野とどういうふうに融合していくのか、そういった課題もございます。
 これらを踏まえまして、今3つのアプローチが必要ではないかというふうに考えているところでございます。それが右側でございます。
 1つが、価値創造を目指したユースケースの形成、普及。つまり、具体的な成果事例をしっかりつくっていくこと、また、その成果事例をつくる中で、単純に成果だけではなくて、仕組みや経験、ノウハウ、そういったものも普及していくといったことが必要ではないかと考えております。
 2つ目が、データ共有・利活用を促進する基盤的機能の強化。成果を創出するだけではなくて、やはり日本全体として、このデータ共有・利活用を進めていくために必要な機能をしっかりと開発していく、それを利用していく、そういったことが必要であるとともに、分野と基盤の研究コミュニティの融合、そういったことを進めていくことが必要ではないかというふうに考えております。
 3つ目がデジタルインフラの関係でございますが、既に日本には数多くのインフラがあると考えております。これをより効果的に促進していく方法が必要であるというふうに考えております。
 5ページをお願いします。これらをまとめたのが次の図になっております。上に行くほど価値創造、成果といった流れになっておりますが、まず、先ほど言いました3つの施策の方向性の1つ目、価値創造を目指すユースケースの形成でございます。データは分野ごとの特性がございますので、やはり分野ごとにしっかりとユースケースをつくっていくことが大事ではないかと考えております。例えばここでは、マテリアルとか気候変動、レジリエンス、ライフサイエンス、人文社会、こういった事例を挙げていますが、分野ごとにしっかりとAI・データ駆動型研究を推進するとともに、プラットフォーム形成を進めていくといったことを1つ考えております。
 2つ目、データ共有・利活用の点ですが、分野ごとだけではやはり不十分で、日本全体として研究DXを進めていくためには、各機関のデータ管理というものをしっかり進めていく必要がございます。各機関、大学などのデータ管理を進めていくための基盤をしっかり確立するとともに、そこで整理された、管理されたデータを日本全体で横断的に検索できるような、そういった仕組みをつくっていく必要があるというふうに考えております。さらには分野融合の話もございますし、あとは単純に研究開発を進めるだけではなくて、評価も含めました制度改善、人材育成、こういったものが必要であると考えております。
 3つ目が、これらを支えるインフラ等の効果的活用。スパコンやSINET、ストレージ、そういった研究ディレクトリに必要なインフラの利便性向上・高度化を進めていきたいというふうに考えております。
 6ページをお願いします。ただいま研究DXを進める方向性を説明させていただきましたが、その中で特に重要になってくるキーワードをピックアップしました資料でございます。研究データは当たり前なのですが、1つ、そのデータをしっかり解析していくためには、人工知能をはじめとする数理・情報科学を結集させていくこと、あと、その解析などを行っていくためにも計算基盤をしっかりと使っていくこと、この研究データと人工知能、スーパーコンピューター、こういったものをいかに有機的に組み合わせていくことが今後の成功の鍵になっていくと考えております。
 それをもう少し具体的に示したものが次のページ(7ページ)となっております。これは全体のフローをイメージとして作成したものでございますが、まず左上のほうで、フィジカルの世界でデータが計測、収集されていく、これが基本であるというふうに考えております。さらに、データが集まってくるだけでは、やはりなかなか実世界で観測が難しいものもございますので、そういったものはシミュレーションによる、リアルの空間では取得が難しい仮想的な研究データを創出し補完していくと、データアセットとして統合されていく。そうしますと、非常に大量のデータ、かつ多次元のデータが集まってくることになります。それらは集まっただけでは使えないので、これをどういうふうに統合して知識化していくか、そういったことが必要になってきます。
 その際に、右下でございますが、人工知能をはじめとする数理・情報科学、こういったものが非常に重要になってきまして、データ間の関係性なども整理しながら、データセットを知識として統合していく、さらに、その統合化された多次元データを使って高付加価値化の製品を作ったり、新しい機能の創出などを目指していく、そういったアウトプットをつくる流れが大事だと思っています。さらに、この数理・情報科学の結集によりまして、シミュレーションの高度化ということも期待されますので、それによって、よりデータとして質も上がっていくといったことができるのではないかというふうに考えております。
 8ページをお願いします。1つ、関連の施策を御紹介させてください。これは今年度から始めました事業でございますが、研究DXに関する様々な事業がある中で、全国の各機関のデータ管理を支援していくための事業というものを今年度から始めたいと考えています。詳細につきましては次のページで御紹介させてください。
 9ページをお願いいたします。真ん中の全国的な研究データ基盤、この構築を目指したいというふうに考えております。この全国的な研究データ基盤は、右側にございます分野や機関のリポジトリ、そういったものに対して、まずデータ管理を支援する機能を提供したいと考えております。これによりまして、各機関でデータ管理がよりしやすい環境をつくりまして、そこで整理されたデータは、メタデータのレベルでございますが、こちらの研究データ基盤に接続されていくと。そうしますと、全国的な研究データの検索、アクセスが可能となりますので、これを活用しまして、左側でございますが、幅広いユーザーが研究データにアクセスできる、そういった環境をつくっていくためのコアとなる基盤を構築していきたいと考えております。
 そのためのチームとしまして、下に書いてございます丸1から丸5のチームで進めようとしているところでございます。研究者の管理支援の事例としましては、丸1にございますように、例えば、データマネジメントプランを各研究者に作成いただきますが、それに基づきます研究データの取扱いというものをある程度簡易にできるような、そういったシステムを構築していくこと。あと研究データの出所や修正履歴等を管理しまして、研究データの真正性をしっかりと説明できるようにしていくこと。あとは、秘匿したままで安全に解析できるような、そういった環境を構築していくことなどを考えています。
 次の丸2というのは、そのデータを連携、接続していくということでございます。
 丸3としまして、単純にデータ基盤をつくっていくだけではなくて、分野を超えたデータをどう使っていくのかというところのシーズ、ユースケース形成、そういったものもしていきたいと考えております。
 そのほか、データを取り扱うためのルール、ガイドラインの整備だったりとか、データマネジメントを行う人材育成に向けた教材開発、こういったものを進めることで、日本全体としての取組を進めていきたいというふうに考えているところでございます。以上でございます。

【観山部会長】  どうもありがとうございました。いかがでございましょうか。今の説明に対して質問なり御意見なりありましたら、よろしくお願いいたします。

【齊藤委員】  齊藤ですが、よろしいでしょうか。

【観山部会長】  どうぞ。

【齊藤委員】  これは非常に重要なテーマで、ちょっと気になった点を2点質問させていただきたいのですが、大きく、多分これ、研究DXというにしては広い領域を含み過ぎているなという気がまずしました。例えば、一番最初の1ページ目の図にあります研究施設をロボットで自動化するとかいう系統の話と、AIを使って情報をコントロールするという話は、手法もノウハウも全く異なる領域なので、分けたほうが分かりやすくて、議論に浸透性があるのではないかなと思います。研究の現場でもAIを使うのですが、基本的にこれはベイズとかシンプルなものなので、ロボットの性能とか、あとは、実際には室温をどう安定化させるとか、そういう面です。基本的にここに必要とされる能力は、今どういうものが最先端として市場で使えるのかという能力がかなり重要で、これは数か月で新しいものが現れるので、一度しっかり作っても、それがずっと使えるものではなくて、もうほぼ毎月毎月どんどん最新のものを入れていくというタイプのものだと思います。
 一方で一番最後の部分、これはとても重要な論点で、ここで御議論いただくことが重要だと思うのですが、9ページにあるのは、サイエンスにおけるシンボルブランディングとは何かという問題や、AIで言うところのシンボルブランディング、そういう問題とサイエンスをどう結びつけるかという問題だと思うのですが、これは、さっきの研究DXの範疇に入れるには大きすぎる問題で、多分これをどうしたらいいかというのはまだまだソリューションがないところなのですね。
 ちょっと前までは、結局AIというのはデータがどれぐらいあるかが重要で、だからAIそのものを工夫するよりも、情報集めや、データベースのほうが重要なのだという認識もあったかと思うのですが、最近そこは随分変わってきて、例えば、どうしても商業ベースのところに情報が集まってしまうので、国が主導してとか、軍事もない国が主導して集めるデータというのは、なかなかやっぱり、それほど大きな、十分な量がないので、少ない情報からどうデータを引っ張ってこようかという研究のほうが日本は勝算があるのではないかと、そういう御議論も多分あるかと思います。
 ここはもうちょっとサイエンティフィックな領域なので、先ほどの研究DXという感じではなくて、どういう名前で呼ぶかですが、AIとサイエンスのちょうど境界にある領域で、ここはまだ日本が勝算があるところで、単純にデータをそろえればいいというだけで本当に日本は勝てるかという議論をやるべきで研究DX領域ではないのかなと考えております。
 その点、もし何かありましたらお願いいたします。

【神部参事官補佐】  よろしいでしょうか。

【観山部会長】  はい。

【神部参事官補佐】  御質問ありがとうございます。DXについて、ざっと説明させていただきましたが、非常にいろんな分野を含んだ概念となっておりまして、その中で実際に変革を生み出すところがどこなのかというところがまだやっぱりクリアになっていないというふうなのは正直なところだと思います。
 まず、AIを活用してデータを解析する、AI・データ駆動型の研究開発、そういったところが非常に進んでいるところだというふうに認識しております。そういった意味で、まずそのデータ、例えば分野ごと、マテリアルであったりとかライフサイエンスだったりといった分野で、データがある程度そろっている領域、もしくはそろいやすいところでAIを駆使していくことで、何ができるのかというのが、まず一つ重要なところだと思います。
 ロボットのところにつきましては、おっしゃるとおり、ロボット自体はどんどん新しいものが出てきまして、生産性というのも非常に高まっているという認識はしております。一方で、さらにその先としまして、出てきたデータをどういうふうに人間が理解していくのか、それをAIが理解しまして、さらにそれを実験にフィードバックしていく、そういったループをどういうふうに効率化していくのかというところは、一つ先の姿としてあるのではないかというふうに考えておりまして、そういったところでリモート化なども関係してくるところでございます。
 あとAIのデータに関しましては、おっしゃるとおり、AIそのものはやはりデータがないと駄目なので、そのデータを集めるコストというのが非常に難しかったり、正確なデータを集めること、あと正と負のデータを集めること、そういったデータ収集の問題が非常にございます。その中で、例えば理研のAIPですと、少ないデータ、不完全なデータからどういうふうに解析できるのか、そういう理論的な研究なども進めているところで、まさしく先生おっしゃられるとおり、そうしたところに日本の勝ち筋があると思っておりまして、しっかりそういうのは進めていきたいと思っております。
 そういったものを進める中で、一方で、将来的にこれをさらに価値創造に進めていくためには、データをそろえていく、集まっていく、そういった環境整備も並行して進めていくことが必要ではないかというふうに考えてございまして、今こういった取組も進めさせていただいているところでございます。

【齊藤委員】  ありがとうございます。

【観山部会長】  ありがとうございました。齊藤先生が言われた、少ないデータで活路を出していくということは非常に重要で、そういう点から言うと、ちょっととんちんかんかもしれませんけど、今コロナでワクチンとか薬の治験に日本ではそのデータを集めるのが非常に大変なので、どんどん欧米の会社に先行されているように思います。日本製のワクチンも薬もまだまだ世の中に出ていませんけれども、そういうところもこのままだったら後れをとるばかりという感じを個人的には思いますけども、重要な指摘だと思います。
 ちょっと時間が来ているのですけども、長谷山先生、何かありますか。よろしいでしょうか。

【長谷山委員】  長谷山です。資料3「研究DXの推進について」でデータベースの話がありました。私も先ほどの齊藤委員の御意見に100%賛成いたします。世界中で研究動向に変化が生じています。特にAIとデータについては、齊藤委員がおっしゃるように、少数のデータで、アノテーションの精度が低くてもデータを生成しながら、正解を求めていくAIも提案されています。産業データを精緻に集めている日本と情報科学が連携することで、勝ち目があると感じます。切り分けながら御議論いただくことが必要ではないかと思います。
 以上です。

【観山部会長】  なるほど。ありがとうございました。
 まだあると思いますが、次回もありますので、その時にまたお願いします。
 それでは、最後に議題4、その他について、資料4を基に事務局より説明をお願いいたします。

【西山課長補佐】  事務局でございます。資料4をお願いします。
 これは科学技術・学術審議会基礎研究振興部会の公開の手続として、昨年8月に皆様に御決定いただいたものでございますけども、その後、軽微な変更が生じましたので、一部改正という形で御決定いただきたいと思っております。
 具体的には、真ん中に赤字で書いてあるところでございまして、昨年、令和3年10月1日に文部科学省組織令改正しまして、文部科学省組織改編が行われました。それに伴いまして、課の名前が変更となり、基礎研究振興課であったものが、今、基礎・基盤研究課になってございますので、こちらについて一部改正として御決定いただければと思います。
 以上でございます。

【観山部会長】  いかがでしょうか。これは課の名前が変わったということで、問題ないと思いますが、よろしいでしょうか。
 御異論ないと思いますので、議題4については、そのとおりさせていただきたいと思います。
 それでは、本日の議題は以上になります。
 次回の基礎研究振興部会の日程ですが、7月7日15時から17時で開催する予定としております。また、基礎研究振興部会運営規則第7条に基づき、本部会の議事録を作成し、資料とともに公表することになっておりますので、本日の議事録については、後日メールにてお送りいたしますので、御確認をよろしくお願いいたします。
 事務局から何かありますでしょうか。

【西山課長】  大丈夫です。ありがとうございます。

【観山部会長】  よろしいですか。

【西山課長】  はい。

【観山部会長】  それでは、ちょっと時間が延びてしまいまして申し訳ありません。以上をもちまして第7回の基礎研究振興部会を閉会いたしたいと思います。本日は、委員の皆様、それから佐伯先生、どうもありがとうございました。これで終了したいと思います。ありがとうございます。
 
―― 了 ――

 

お問合せ先

研究振興局基礎・基盤研究課