基礎研究振興部会(第1回) 議事録

1.日時

令和元年5月22日(水曜日)10時00分~12時00分

2.議題

  1. 部会長の選任等について(非公開)
  2. 運営規則等について(非公開)
  3. 部会における主な検討の観点等について
  4. 戦略的創造研究推進事業の現状と課題について
  5. その他

3.出席者

委員

栗原委員、観山委員、天野委員、長我部委員、川合委員、黒田委員、小谷委員、齋藤委員、城山委員、山本委員

文部科学省

研究振興局長 磯谷桂介、大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)増子宏、研究振興局振興企画課長 原克彦、研究振興局基礎研究振興課長 山下恭徳、研究振興局基礎研究振興課基礎研究推進室長 金子忠利、研究振興局基礎研究振興課融合領域研究推進官 髙橋理恵、研究振興局基礎研究振興課課長長補佐 岡村圭祐

オブザーバー

科学技術・学術政策研究所長 坪井裕、JST研究開発戦略センター・フェロー 山村 将博

4.議事録

今回の議事は、部会長の選任等があったため、科学技術・学術審議会基礎研究振興部会運営規則第6条の規定に基づき、開会から議題2までは非公開。

議題(1)部会長の選任等について(非公開)

議題(2)運営規則等について(非公開)

【栗原部会長】 それでは、公開されて傍聴者の方に入室いただいたところで再開したいと思います。部会長の栗原でございます。第1回基礎研究振興部会について、これより公開の議題に入ります。委員の皆様におかれましては、これから2年間、審議のほどよろしくお願いいたします。
それでは、引き続き議題3、部会の主な検討の観点等についてということで、事務局より説明をお願いいたします。

【岡村補佐】 それでは、御説明させていただきます。資料3をごらんください。科学技術・学術審議会基礎研究振興部会における主な検討の観点についてということで、その案をお示しさせていただいています。こちらに記載させていただいている内容は、今期2年間の部会運営を通じて、我が国の基礎研究環境を取り巻く様々な課題について委員の皆様方に御審議を頂きます中で、様々な文脈において主な論点としてこれから触れられ、また浮かび上がってくることが想定される観点につきまして、事務局として現時点での案を暫定的に整理させていただいたものです。
こうした検討のスコープを事前にこのような形で共有させていただき、部会として特にフォーカスしていくことになると思われる観点について、委員の皆様方あるいは事務局との間で、あらかじめ議論の前提としての観点を共有させていただくことで、部会における議論がより効果的に深められていければ幸いと考えております。
なお、ここに挙げました観点は、あくまで例示的なものでございまして、本部会において今後審議していくことが適切と思われる観点については、これらに限定されることなく、是非闊達な御議論をお願いしたいと思っております。
ここでは仮に5つの柱に分けてお示ししてございます。1つ目が基礎研究の今日的な意義、そして位置付けについてでございます。様々な科学技術の急速な進展、国内外における政策動向の変化、そうした今日的な課題を踏まえた上で、基礎研究の意義、その政策的な位置付けについて捉え直し、それを今後の政策推進にあたってどのように織り込んでいくか、その際に重要な観点とは何かという点でございます。
2つ目は我が国の基礎研究環境の現状と課題ということで、様々なエビデンスやデータに基づく現状分析及び課題の把握の観点です。本日も後ほどJSTから海外のファンディングシステム及び主要動向についての御説明がある予定です。
それから3つ目が、戦略的な基礎研究の推進方策ということで、こちらも後ほど御説明差し上げ、また向こう数回の会議を通じても議論を深めていくこととしておりますが、戦略目標の策定プロセスの改革でありますとか、戦略的創造研究推進事業の充実の方策、あるいは各種のファンディング事業をどのように効果的に連携させていくか、成果の継続についてどのよう実行性を確保していくか、そういった観点を挙げてございます。
4つ目は基礎研究のタイプ、そして分野特性・事業特性に応じた振興方策に関する観点でございます。一口に基礎研究・基礎科学と言った場合にも例えば加速器科学ですとか宇宙・天文科学ですとか、そういったビッグ・サイエンス型の事業もある一方で、この部会において特にフォーカスしていく戦略的創造研究推進事業などスモール・サイエンス型の事業もございます。ですので、そういった関係性や差異といったものを踏まえた上でいかに進めていくか。あるいは科研費に代表されるようなボトムアップ型のファンディング事業もある一方で、戦略的創造研究推進事業のようなトップダウン型のファンディング事業もございますので、この関係をいかに考えていくか。それから拠点形成事業とファンディング事業ですね。基礎研究振興に向けて、こうした事業間の相補的な、あるいは相乗的な連携というものをどのように考えていくかという観点もございます。
最後に5つ目ですけれども、新興・融合分野の振興方策というものを挙げております。分野融合研究、これは各国において政策的に進められておりますが、我が国としてもこれをどのように捉え、どのように取り組んでいくか。数理科学的なアプローチというものもございます。そういったものの科学的な意義、そして政策的な意義に関するものです。最後に、世界トップレベル研究拠点プログラム、WPIのこれまでの成果検証を踏まえた今後の事業の進め方について、どのように考えていくかという点についても例示させていただいております。
こうした観点を踏まえまして、今後、今期2年間の部会運営を通じて様々に御審議を頂く中で、いずれ科学技術・学術審議会の総会ですとか、あるいは総合政策特別委員会、総政特と呼んでおりますけれども、そういった場での報告などの機会も見込まれてございます。そうした機会を捉えて、幅広い政策関係者間で、この部会における審議内容を共有していくことで、今後の様々な政策形成にしっかりと活かされていくよう事務局としても対応してまいりたいと思います。
私からの説明は以上でございます。

【栗原部会長】 ありがとうございました。
続けて資料4について御説明いただきます。まとめて質問、議論等を頂いたらいいかと思うので、資料4については、原課長の方から御説明いただけるということでよろしくお願いします。

【原課長】 ありがとうございます。ちょっと資料が行ったり来たりしていて恐縮ですけれども、まず参考資料の方の束に参考資料の3-1と3-2というのがございます。参考資料3-2は冒頭の局長の挨拶でも言及させていただきましたけれども、柴山イニシアティブというもので、今年の2月に大臣が公表したものであり、高等教育と研究の改革を一体的に進めていこうという方向性を示したものでございます。本日は時間の関係で、その中身を御説明することは差し控えますけれども、これを踏まえて参考資料の3-1、研究力向上改革2019というものを4月のゴールデンウィーク前にまとめまして、これを基に今、文部科学省として改革に向けた取組を進めていこうということでございます。
まず最初に参考資料の3-1の方で、この研究力向上改革2019の全体像を説明させていただきたいと思います。表紙をおめくりいただきまして1ページ目、緑色のタイトルで研究力向上改革2019と書いてあるページでございますけれども、これがこの取組の全体像を説明したものでございます。この検討に当たりましては、我々研究振興局だけではなくて、文科省の中で研究を担当している3局、それから文科省の中で高等教育を担当している高等教育局、この4局が副大臣の下で議論をして、諸外国に比べ研究力が相対的に低迷する現状を一刻も早く打破するために今何ができるのかということを中心に取りまとめたものでございます。
中身でございますけれども、タイトルの下に書いてございますが、研究力を向上させていくためには、まず研究の「人材」「資金」「環境」という3つの要素を中心に改革を進めていくことが必要であること。それから大学のガバナンス改革ですとかマネジメント改革というものもやっておりますので、それらを一体的に進めていくことで我が国の研究力をV字回復させて、イノベーションを生み続ける社会を目指していこうということでまとめたものでございます。
個別の論点でございますけれども、研究人材の改革につきましては、緑色のところの左側の方に、日本の研究者を取り巻く主な課題というところに書いてございますが、博士課程への進学者数の減少ですとか、社会のニーズに応える質の高い博士人材の育成ができているか、研究者ポストの低調な流動性と不安定性といったところに課題があるのではないかということを受けて、研究人材の改革としては緑色の箱のところでございますけれども、若手研究者の「安定」と「自立」の確保、「多様なキャリアパス」による「流動性」「国際性」の促進などを通じ好循環を実現し、研究者をより魅力ある職にしていこうということでまとめたものでございます。
それから研究資金の改革につきましては、若手が自立的研究を実施するための安定的資金の確保が課題ということ。それから若手に限らず様々な研究者の方々において、新たな研究分野への挑戦が不足しているのではないかというようなこと等から、研究資金の改革としては、すそ野の広い富士山型の研究資金体制を構築し、「多様性」を確保しつつ、「挑戦的」かつ「卓越」した世界基準の研究を支援するといったようなことをキーワードに進めていこうということでございます。
それから研究環境の改革という面につきましては、研究に充てる時間割合が減少していること、それから研究組織内外の設備・機器等の共用や中長期的・計画的な整備更新の遅れがあるのではないかということで、右側のオレンジ色の箱でございますけれども、研究環境の改革として、研究室単位を超えて研究環境の向上を図る「ラボ改革」を通じ研究効率を最大化し、より研究に打ち込める環境を実現するといったようなことを進めていくということでございます。
具体的なことはちょっと後でまた御説明しますけれども、こういう3つの柱の改革と、先ほど申し上げました大学改革というのを一体的に進めていくと。それから政府の中あるいは産業界等々でも、これから第6期の基本計画ですとか、様々な政府全体の計画、それからCSTIですとか学術会議でもいろいろな検討が行われております。こういうものとうまく連携をしながら進めていくということでございます。
改革としては、ここで書いたものが最終的なゴールではなくて、様々な課題が出てくるものについては、それを取り込んだ形で進化し続けるローリングプランということで進めていきたいということでございます。
その次のページ以降が各論でございます。2ページ目と3ページ目が対になってございまして、2ページ目は研究人材改革の論点でございます。若手からシニアの研究者に至るまで様々な課題があるわけでございますけれども、それを整理したものでございまして、それを解消するための取組として3ページ目の方に書いてあるのは、これから取り組んでいこうとしている具体策ということでございます。
本日は時間の関係で、主なものだけ後で別の資料で御説明させていただきますけれども、3ページ目に記載がある具体的で「安定」と「自立」の確保ですとか学位取得の魅力、多様なキャリアパスの提示というものを研究人材改革については進めていくということ。
それから4ページ目は研究資金改革についての論点です。5ページ目が研究資金改革について、これからどんなことに取り組んでいくのかというようなことをまとめたものでございます。すそ野の広い富士山型の研究資金体制を構築し、多様性を確保しつつ挑戦的かつ卓越した世界水準の研究を支援し、それぞれの研究のフェーズに応じた研究費を活用して山頂を目指すといったようなことで研究資金の改革を進めていきたいというものでございます。
それから6ページ目、7ページ目が研究環境の改革についてでございまして、論点として事務負担ですとか研究設備・機器等の共用といったようなものがございます。それを解決するために7ページ目で具体的な対策として、設備・機器の共用ルールの浸透を進めていくということ、それから更なる研究効率の向上・事務負担の軽減というものも併せて進めていきながら、大学改革と一体となって研究環境改革を実現していこうということでまとめたものでございます。
本日は頂いている時間が5分なので、全体の構造の話はここまでにさせていただいて、その次に本体の資料の4、これから我々が取り組もうとしている対策の主なものということで御説明をさせていただければと思います。
資料4のページをめくっていただきまして2ページ目でございます。研究人材改革ということで、先ほど申し上げました課題を解決するために、まずは若手研究者の雇用の安定と多様なキャリアパスの確保ができるような取組を進めていこうということでございます。最初の丸、プロジェクト雇用における若手研究者の任期長期化として、なかなか任期が短い若手の研究者が多いという現状がありますので、それを、任期をできるだけ、例えば5年程度以上というような長期化ですとか、あるいはプロジェクト雇用で、そのプロジェクトの目的だけの研究ではなくて、ある程度専従義務を緩和した上で、自分のやりたい研究に打ち込んでいただけるような時間を確保してはどうかというようなことを考えてございます。
それから、優れた若手研究者のポスト重点化に向けて卓越研究員事業や人事給与マネジメント改革等の促進をしていくということで、右側の方にそれぞれ指標は書いてございますけれども、ポスドクの3年未満の任期の雇用割合を2021年実績で5割以下にするですとか、2023年度までに研究大学の40歳未満の本務教員割合を3割以上にしていこうというような目標を持って進めていきたいということでございます。
それから主な取組の方の丸の3つ目でございますけれども、ファイナンシャルプランの提示や多様な財源を活用した博士学生の経済的支援の促進をしていこうということで、これは右側の方に参考指標で、博士課程(後期)在籍者の2割程度が生活費相当額程度を受給できるようにということで、現時点ではおおむね1割にとどまっておりますけれども、そういったものを拡充していきたいということでございます。
それから研究時間の確保につきましては、若干競争的資金の制度改革をさせていただいて、競争的資金等の直接経費から研究以外の業務の代行経費の支出を可能にするような仕組みを導入していきたいということでございます。
それから国際化の促進としては、海外経験を有する日本人教員の登用拡大ですとか、国際共同研究の強化、それから海外からの応募に係る負担軽減としてWeb応募の拡大などを通じて増やしていきたいということでございます。
3ページ目に研究資金改革がございます。研究資金改革といたしましては、若手への重点化ということで、これは今年度の予算編成の過程から取り組んでいるものでございますけれども、若手への重点支援、新興・融合領域への挑戦、海外挑戦促進をしていくということで、例えば科研費の新規採択率30%を達成するということを考えているところでございます。
それから研究資源の多様化ということで、大学が自由な裁量で活用可能な経費を拡大していこうということで、オープンイノベーション機構等による外部資金の呼び込みを強化するというようなことが挙げられます。
その下に競争的資金等の直接経費からPI人件費の支出を可能にするということでございます。これは、今は科研費以外の競争的資金について、直接経費からPIの方の人件費の支出を可能となるような制度の改変ができないかということで検討を進めさせていただいてございます。
それから研究環境改革ということで、研究設備の共用の徹底として、コアファシリティとして共用するとか、あるいはチーム型研究体制の促進として、技術職員やURAの組織的育成・活躍促進といったようなものを進めているといったようなことを考えているところでございます。
以上の取組をこれから文部科学省として省を挙げて進めていくということを考えてございます。
それ以降の資料は参考でございますけれども、例えば大学の裁量で自由に使える経費が増えていけば、そこに書いてあるような各大学の特色ある取組といったようなものが進んでいくのではないかということで、この今、私が御説明させていただいた資料は、表紙に書いてございますが、今年の5月13日に、総合科学技術イノベーション会議で柴山文部科学大臣から説明させていただいた資料でございます。これを基に来年度の予算要求等に向けて文部科学省として取組を進めていきたいと考えているものでございます。
説明は以上でございます。

【栗原部会長】 ありがとうございました。
何か補足いただくようなことはありますか。

【岡村補佐】 ありがとうございます。
特に本部会にとって関連の深い内容といたしましては研究資金の観点がございます。今の資料4で申し上げますと、3ページ目の研究資金改革というところに挙げられた主な論点として、若手が自立的研究を行うための安定的資金の確保が課題であるとか、新たな研究分野への挑戦が不足ですとか、そういったところは本部会においてもフォーカスしていくべき観点かと考えてございます。
ただいま、科学技術・学術政策研究所から坪井所長もいらっしゃいましたので御紹介を差し上げます。

【坪井所長】 坪井でございます。よろしくお願いいたします。

【栗原部会長】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明について御意見、御質問などありましたらお願いします。
どうぞ。

【川合委員】 御説明ありがとうございます。実際に2019年の研究力向上改革というのは大変多面的な検討から問題点を抽出されて、その解決に至るような道筋のキーワードをきちっと整理いただいているように思います。大変これからの審議に役立つまとめだと感じました。
ちょっと今、1点だけ御質問したいと思ったのは、3ページのところのいろいろな研究環境改革を拝見していると、私、大学共同利用機関におるものですから、全部の大学を見ながらいろいろな設備を充当し、そしてお役に立てるような研究環境を作るというのが1つのミッションのところでございますのでちょっと気になったんですけれども、研究設備の共用の徹底というのは大変いいキーワードだと思いますが、「研究組織単位で一元的にマネジメント」というように書いてあるところがちょっと気になりまして、1つずつの大学で閉じてしまっていると、やはりできることに限りがあるので、ここは組織で閉じるだけではなく国全体として、幾つかしか置けないような大型のものとかもあると思いますので、そういったところにも少し目を開いていただくと、もう少し広い意味での環境改革が可能かという気がいたします。
ちょっと大事なポイントだと思いますので、一言言わせていただきましたけれども、お考えがもしあればお願いします。

【栗原部会長】 磯谷さん、どうぞ。

【磯谷局長】 川合先生、ありがとうございます。御指摘のとおりでして、今、御指摘いただいた資料については、さっき原課長からも申し上げたとおり、CSTIの本会議でかなり要約して出した資料で、コアファシリティ、要するに研究室を超えた形での大学組織とか研究を進めるという観点だけを取り上げているんですが、実は先ほどさっと御説明した参考資料3-1の7ページをご覧いただくと全体像が書いてございまして、今、川合先生御指摘の組織を超えた環境整備について、もちろん大学共同利用機関のことも記載させていただいていますし、先生がおっしゃったように、今までどうしても大学や研究開発法人や大学共同利用機関ということで、それぞれ取組があったんですが、さらにそれを全国的というか全体を見渡して、本当に真に必要なものをどこに担っていただくかみたいなことはちゃんとやっていかなきゃいけないということで、先生の御指摘も踏まえて進めてまいりたいと思っています。
ありがとうございました。

【栗原部会長】 今、議論になっている点は、随分共用は、いろいろな学内も、それから大学間、組織間も進んでいると思うので、むしろそれをきちっと見えるようにというところも大事かとも思うんですね。どんな形で今進んでいるのかを、きちっと少し見える化していただくだけでも大分違うように思います。よろしくお願いします。
ほかに何かありますでしょうか。
じゃあ簡潔にお願いします。今日はたくさん議論の論点がありますので。

【山本委員】 今の資料の3ページのところでお願いします。直接経費からPI人件費の支出を可能にということで、これから詳細を検討ということだと思うんですけれども、ここではどういうことが課題になっているのか、どこを詰めていくのかというところをちょっと簡単にお願いします。

【磯谷局長】 まずPI人件費支出を可能とする競争的資金等の範囲なんですけれども、これは端的に申し上げると、我々どもで今考えていますのは、当面は科研費以外の競争的資金等ということで、科研費の場合、個人に対する補助金という性格もあり、またそれはそれで研究者がいろいろ異動したときに移動しやすいというメリットがあるわけですよね。そういったものと、組織全体に渡している委託費とかそういったものとの、ちょっとまた予算的な性格も違うし、趣旨も、そもそもPIが機関に雇われていて、そのPIが自由研究をやるというミッションがある方に対しての補助という形になっていますので、まずはやはりそのほかの、例えば大型のファンドとか委託費的なものとかそういったものについて、これを導入していく必要があるだろうということと、やはりこれは研究者御自身のインセンティブということも必要になってきますよね。その辺を大学のマネジメントと研究者御自身のインセンティブなりメリットみたいなものをうまくバランスをとる形で導入すると。決して何か研究者個人に、これをどうしてもPI人件費を必ず入れなきゃいけないと強要するような形になってくると、逆にその方の人件費以外の研究費というのが圧縮されるような形があっても、それも困りますので、そこはマネジメント改革と御本人のメリットみたいなものをうまくバランスをとって進めていくということと、何せこれまでこういったことをしていなかったファンディングのシステムが多いものですから、そこを全省庁的に関係省庁も含めて検討していただくということで、今、議論をしているところです。

【山本委員】 ありがとうございます。

【栗原部会長】 小谷先生。

【小谷委員】 最初に大臣のイニシアティブ、そして文部科学省の御説明資料にあったように、研究力についてしっかりまとめていただきましてありがとうございます。基礎研究力の強化は本当に緊急の課題でございますので、ここでもいろいろ議論できればと思っています。
質問は、この委員会の部会の所掌に関してなんですが、この資料4で研究人材改革の中でも国際化の推進ということがうたわれていまして、これから研究を国際していくことや頭脳循環というのは非常に大切だと思っています。それについては、この部会の中でも検討することができるのか。それともこちらを見ると国際戦略の委員会は別にありますので、そちらで行うことになるのかを教えていただければ幸いでございます。

【磯谷局長】 余り私自身が申し上げるとあれなんですけれども、当然それは議論していただけると思っていまして、国際戦略の方は、やはりフォーカスが各国あるいは日本の地政学的な位置付けとか、そういったことも含めての国際関係プロジェクトについての議論ということなんですが、基礎研究を進行するに当たって世界水準とか国際連携というのは当然必要になってきますから、必要であれば場合によっては国際戦略の方の議論の様子をこちらの方でお聞きするということもあり得るでしょうし、そこは是非そういった視点も踏まえて議論していただければと。

【小谷委員】 ありがとうございます。さきがけ海外自分のラボを立ち上げたりしている方も見ましたので、さきがけを利用した国際共同研究とか、またWPIのこともようですので、そ国際的な観点も議論できればと思っています。よろしくお願いします。

【栗原部会長】 ありがとうございます。
非常に多面的な視点を今挙げていただいているんですけれども、この委員会はそれを具体的なプログラムの中にどう反映していくかということを、こういう観点を踏まえつつ議論するということになるではないかと考えています。よろしくお願いいたします。
まだあるかもしれませんが、今日はほかにも議題がありますので、先に進めさせていただきます。
次、議題4、戦略的創造研究推進事業の現状と課題についてに移ります。事務局より説明お願いします。

【金子室長】 失礼いたします。基礎研究推進室長をしております金子でございます。
資料5-1をまずごらんいただければと思います。タイトル、戦略的創造研究推進事業に関する検討事項(案)ということでございます。この部会のスコープ、特にここで私から御説明したいのはJSTのいわゆる戦略事業について改善すべきがあれば改善して、基礎研究力向上ということで大変重要なプログラムの1つでありますので、それをさらに強化・発展させていくため、ここに事務局として整理したものであります。
1つには、取り巻く現状あるいは課題の把握、その上で改善策を検討、さらには関連して必要なことがあれば検討するというのが大きなスコープと考えてございます。その中で、例えば日々、私どもは事業をJSTともども運営している中にあって、いろいろ各方面から御意見を頂戴するポイントを2ポツのところで、論点の例ということで1から5まで記載しており、簡単に御紹介申し上げますと、戦略事業、今日的にはどのような意義があるのかというようなことであります。戦略事業に関する考え方については、平成26年でございますとか平成27年に審議会等々で考え方が整理されているところでございますけれども、それ以降の状況の変化を踏まえて、さらにどのような意義があるのかという、場合によってはこれまでの位置付けなどを、今日的な意義を再確認するということも必要かなと考えてございます。
さらには、(2)でありますけれども、先ほど来出ていますが、新興・融合領域の開拓、これは非常に重要な論点だろうと言われてございますので、それを進めていくためには、戦略事業としてはどういった視点があるのかということであります。指摘の1つとして、創設時と比較いたしまして、いわゆる戦略目標、これの対象粒度が多少スペシフィックになっているというような御指摘がありますので、そういった指摘を踏まえて戦略目標のスコープというのはどういった形がより今日的には適切であるのか、あるいはそういった設定、戦略目標を定めるようなプロセス、これはどういうふうに改善していく必要があるのかといったところが論点となるのか。さらにはFA間の連携、これも1つ論点として可能性はあるのかなと考えているところであります。
(3)でありますけれども、若手研究者の支援ということでございます。これも非常に大きな政策イシューだと認識しておるところでございますけれども、特に戦略事業の内、さきがけなどは、研究総括のメンタリングでありますとか、領域会議に代表されるような若手研究者を育成するような非常にすぐれた仕組みというのがあると認識してございまして、そういった特徴等を生かして、さらに強化・充実させていく点があるのかないのか、こういったところも1つであろうと思います。
さらには、戦略事業の継続性の在り方でありますけれども、戦略事業を運営していく中にあって、各年各年、戦略目標というのはできているわけではございますけれども、それを継続的に世界の研究動向の潮流を見た上で、継続的にはどういった形で戦略目標あるいは個々の研究課題の継続性をどうやって理解したらいいのかといった論点も場合によってはあるというのが(4)であります。
さらには、戦略事業の1つの大きな特徴、機動性、柔軟性、JSTが運営しているわけでございますけれども、そういった柔軟性ですとか機動性をどういうふうに改善する余地があるのかないのか、さらには、場合によっては、先ほど全体の改革の中で研究者の研究時間をいかに確保するかというのも重要な論点の1つでありますけれども、いろいろな研究の管理に関わるようなコストを、必要な部分は必要なんでしょうが、効率化できる部分はあるのかと。そういった点も1つ論点があるかなというのが検討事項でございます。
今回は第1回ということもございまして、資料5-2の方で、戦略事業を取り巻く現状ということで若干周辺状況も含めましておさらい的なこととして、御紹介申し上げたいと思います。
2ページ目ですけれども、これは戦略事業をオーバービューする資料として、左下にございます、いわゆるCREST、さきがけ、ERATO、これが今ここで議論の対象とする事業でありますけれども、こういったものがあると。繰り返しになりますけれども、2019年度予算のポイントということで、大きな政策テーマとして新興・融合領域の開拓を進めるためには、戦略目標というのは大くくり化する必要があるということをやらせていただきつつ、領域数を拡大するということが2019年度予算のポイントの1つでございます。
もう一つは、若手育成であります。これにつきましては、特にさきがけにつきましては、前年度4領域を6領域に拡大するというような取組をしたところでございます。さらには若手研究者育成策ということで、ACT-Xというプログラムを新設したというものでございます。
資料は3ページ目であります。1枚おめくりいただきまして3ページ目、特徴・強みというところをごくごく簡単にまとめてございますけれども、1つには、いわゆるトップダウン型のプログラムということで、戦略的に目標設定するというような特徴があると。2つ目、卓越した目利きということであります。いわゆる研究総括の目利き力によって、挑戦的な、より創造的な、チャレンジングなものを採択し得る可能性があるという御指摘があります。さらには総括でございますとか多様なアドバイザーによってきめ細やかなマネジメントができるというような特徴が言われているところでございます。
さらにはネットワーク形成・異分野融合ということでありますけれども、領域会議に代表されるような比較的幅広い研究者間の非常に忌憚のない意見交換から新たなアイデアが生まれるという部分が特徴として言われているというところでございます。
さらには機動性・柔軟性でありますけれども、研究総括に裁量を持っていただいて、研究計画ですとか予算面も併せて、可能な範囲で柔軟に対応するというのが1つ特徴としてあるのかなと考えております。
4ページ目であります。それぞれのプログラムの特徴ですけれども、CRESTにつきましては、いわゆるチーム型で、我が国の研究動向、潮流を作るようなネットワーク型の大きなプログラムということで特徴が1つあるということかと思います。
さきがけでございますけれども、若手の非常に卓越した研究者を育成する機能があるということであります。
さらにはERATOでございますけれども、これは何よりも次代を担うような卓越したリーダーを、独創的なアイデアを育成するという大きな効果を果たしてきたと理解しているところでございます。
5ページ目であります。戦略事業の予算、創設以来の予算の推移を記載してございますけれども、ざっと見ていただきますと、平成12年、13年ぐらいまでは着実に増をしてきてございますが、それ以降、総じてフラット、それほど充実は、量的にはできていない部分もあると考えてございまして、今日的に基礎研究の重要性が言われる中において、さらに量的にも充実する必要があるのかなと担当する者としては非常に強く考えているところでございます。
6ページ目、これは最近の応募数でありますとか採択数、あるいは採択率といったものでありますけれども、採択率の方でいきますと、CRESTの採択率は緑色の折れ線で、さきがけの採択率がオレンジ色の折れ線で描いてございますが、総じて、10%をやや超えるぐらいで推移しているといったところであります。
7ページ目、戦略事業の効果というところでありますけれども、例えば左上であれば非常に卓越した質の高い論文を多数輩出しているということで、青の折れ線が戦略事業、赤が日本全体ということであります。右上がさきがけの成果からのハイインパクト論文を抽出した、トップ1%論文でありますけれども、総じて4%前後で推移していると。日本平均は1%ぐらいといったところであります。その下にはさきがけの研究者の処遇というか昇進、例えばさきがけ研究者のテニュアの獲得率は50%ぐらいと。採択時点で任期付きであった研究者が、さきがけ終了時点では半分はテニュア職を得ているというようなデータもあるところでございます。左下は例えばサイエンス誌による10大成果ということで、これは全部が日本のリストになっています。その内、赤字が戦略事業で関わっていたところを記載したものでございます。
8ページ目以降でございますけれども、新興・融合領域の開拓あるいは若手支援が必要、あるいは継続的な支援が必要との論点に対応する形で参考となるような事項を一部準備いたしましたので御紹介申し上げます。
9ページ目、戦略事業の位置付けとして我が国の基礎研究を支える、科研費と両輪をなすトップダウン型の我が国を代表する基礎研究のファンディングであるというところであります。
資料の10ページ目、戦略事業について、これまで審議会あるいは検討会で、その位置付けなどのこれまでの経緯、平成26年あるいは27年の指針で、戦略事業の果たす意義あるいはどういう事業運営をしていったらいいか御議論いただきまして、26年、27年にまとめたところでございます。今日的には、これを見直すべきであるのであれば改善して整理するということが1つあるということで御紹介申し上げます。
11ページ目でありますけれども、新興・融合領域の開拓の必要性ということで、各国、新興領域について参画割合が伸びている中、日本は必ずしも伸びていないという1つの情報として御紹介申し上げます。
12ページ目ですけれども、平成27年に戦略目標をいかにして策定するべきかという議論がございまして、そのときに整理し、この整理に沿って、戦略目標を策定しているプロセスであります。ファーストステップとして、まずは可能な限り客観データ、1つには科研費の様々なデータがございますので、JSTの協力も得ながらデータベースとして整理、分析して、最近の研究活動、例えば増えてきているキーワードとかいったものを整理するというところでございます。さらには研究の世界の動向ということで、NISTEPのサイエンスマップに代表されるような書誌情報、そういった動向を議論の前提として準備、分析するというところが1つと思います。
さらにはステップ2ということで、それを基にホットなキーワードというような客観データを横に置きつつ、NISTEPの2,000名以上の研究者ネットワーク、そういった知見を有する方々に御協力を仰ぎまして、次の強化すべき分野、領域というものはどういったものがあるかという情報として、現場の生の声として集めるところでございます。そういった現場の生の声を可能な限り整理し、私ども文科省が総力を挙げて、次の戦略目標として考えるべき候補というのをステップ2で特定するというところでございます。
その結果を踏まえましてステップ3でございますけれども、純粋なサイエンスの価値、これは当然重要でありますが、それに加えて社会的価値でございますとか経済的価値の観点も踏まえまして、今、取り組むべき戦略目標というものを、例えばワークショップなどを開催するなどして、可能な限り広い意見を踏まえまして、最終的には文部科学省の方で戦略目標を決定するというステップをとっているところでございます。
13ページ目でありますけれども、これは最近の戦略目標の例ということでここ七、八年の例を記載してございます。
14ページ目であります。若手研究者の支援の必要性ということで、一部の情報ですけれども、例えば短期間の成果が求められ、みずから発案した研究テーマに挑戦できないとか、安定的な研究資金の確保ができないといった障壁があるというアンケートデータですとか、それに対応する形で15ページ目ですが、特に若手支援ということで、さきがけの数、量的にしっかり確保したいということで、本年度予算におきましては6領域を確保できたということでございます。
ACT-Xの新設、これはアイデアとしては、いわゆるさきがけの領域会議等々の効果、チャレンジングな創造性ある方をもっと若手から、場合によっては修士の学生なんかもスコープとするということで、これは公募中でございます。これに先行するプログラムが実はJSTの方でACT-Iというプログラムがありますけれども、その中では、学生も採用して、比較的小規模な金額ですけれども、領域会議等での切磋琢磨を通じて若手の育成の1つの施策として実施しているところでございます。
最後、16ページ目ですけれども、長期的な戦略、継続的な支援といった現場の声があるということで、戦略事業においてはなかなか難しい課題ではあると思いますが、どういうふうに考えるべきか、幾つか御議論がございますので、そういったことについても御紹介申し上げたということであります。
大変雑駁でございましたけれども、全体をつかむということで、周辺も含めて御説明申し上げます。

【山村フェロー】 JST、CRDSの海外動向ユニットで海外の調査を担当しております山村と申します。私から資料5-3に沿って簡単に御紹介させていただきます。
今回は、第1回の会合ということで、主要国がどのように公的研究費を供給しているのかというところと、最新の科学技術動向政策、ファンディングに限らずどういったところに国として力を入れようとしているのかというところを中心に御説明させていただきます。その上で、第2回以降で、個別の注目すべき研究プログラムについて御紹介させていただくという流れを考えておりますので、今回は概略説明ということでお話しさせていただきます。
まずアメリカです。アメリカの公的研究費供給構造ということで、アメリカは目的に応じた多様な研究資金が併存しているマルチファンディングシステムの国です。1つは、各省庁、例えばDOD、防衛省とか、そういったところとその傘下にある国立研究所、DODの場合はよく聞くDARPAですね、というのが分野ごとに研究開発を推進しています。基礎研究については、主要な配分機関は、NSF、ライフ系のNIH、環境系のDOE科学局というところが主流です。その中でもNSFというのが最大、資金配分に特化した機関で、ここはJSPSとJSTの機能を併せ持つような形で様々な分野に支援を行っているという構造になっています。
次のページで、アメリカの主要政策動向ということで、国としては国家安全保障と経済成長というのが優先的な事項です。2020年度の研究開発優先項目ということでは、安全保障とかAI、右上の緑色のところにこういった項目を掲げているんですけれども、こういった項目を優先としています。予算教書については、未来の産業ということで、人工知能、量子科学、5Gネットワーク、先進製造といったところを重視していまして、これらの分野では国家戦略の策定というのも相次いでおります。
連邦政府の果たすべき役割としては、初期段階の研究支援に焦点を当てています。アメリカの場合は民間セクターが産業の研究を相当、GAFAはじめみずからやっていますので、そういったところは民間中心で、政府は基礎研究を大事にしましょうというところでございます。
NSFは近年、基礎研究に加えてコンバージェンス研究ということで、もう少し基礎から応用も見据えた融合領域研究というのを推進しているというのが特徴です。あとDODではDARPAがデュアルユースの研究を重視しているといったところが米国の動向です。
続いて英国、イギリスです。イギリスは、もともと研究会議、リサーチカウンシルというところが生物ですとかライフですとか工学といったところを分野別に支援していて、Innovate UKというNEDOに比較的近い機関が応用研究を支援するということをやっているんですが、これらを束ねる傘下に持つUKRI、英国研究・イノベーション機構というところが4月に発足しまして、7つの研究会議やInnovate UKを傘に入れて、分野横断的な研究を基礎からイノベーションまで一気に見られるようにしましょうという改革が行われました。
次のページに行きます。背景としては、イギリスは大学、オックスフォードとかケンブリッジとか非常に基礎研究で強いレベルのものがあるんですが、一方で産業競争力で見ると、そこまで、ドイツとかアメリカに比べると目立った企業もなく、実用化で目覚ましい成果というところで課題を抱えているということがあります。それでこのUKRIというのを作って、一気通貫で支援をやろうということを1つ始めています。これはまだ始まって1年ぐらいの取組です。
あとは国の戦略としては産業戦略という、ビジネスエネルギー産業戦略省が作っているんですけれども、これ、名前は産業なんですが、科学技術イノベーション政策ということで、この右にあるような4つの分野を特定して、これらを中心に重点投資していきましょうということをやっています。また、それを支援するために産業戦略チャレンジ基金ということで、基礎研究から応用まで、これも産学連携で特定の技術開発、社会課題解決に取り組むプログラムを立ち上げております。
続いて、ドイツです。ドイツについては、左側にあるドイツ研究振興協会、DFGというところが自然科学から人文社会まで幅広い領域にわたって大学への基礎研究を中心に資金提供を行っています。一方で応用研究とかイノベーション、テーマ型の研究については、連邦教育研究省、BMBFという機関をはじめ5つの省庁が、ドイツには研究助成を代行するプロジェクトエージェンシーという、研究機関とか大学とか、そういったところとともにやっている仕組みがあるんですが、資金提供をやっています。この中で1つ、ここに詳しくは書いていないんですが、フォトニクス分野でBMBFが長期的に、2020年から10年計画でフォトニクス研究への支援を行うというのをやっていまして、それが2002年から2011年まで続いて、今度2012年から21年まで再度、フォトニクス研究に重点投資するというのをやっています。フォトニクスという分野の中で3年単位のプロジェクトを進めるという取組を1つの研究領域を設定して行うということをやっています。
次のページに行きます。ドイツでは、国家戦略としてはハイテク戦略というのを2006年に策定して、現在第4期のハイテク戦略2025というのを実施しています。背景としては、ここも高い研究力と名だたる世界的企業があるけれども、ちょっとイノベーションソースというところでなかなか課題があるというところで、産学官のステークホルダー共通のミッションを定義して政策を進めるということを行っています。このほか人工知能戦略ですとか量子戦略というところが去年出されまして、これらの分野に重点投資してきましょうという方針があります。また、DARPAをモデルとした飛躍的イノベーション庁というのを作って、イノベーションソースを目指しましょう。あとサイバーセキュリティ庁というところを作って、サイバーセキュリティ分野にも特化していきましょうというのがドイツの動きです。
フランスです。フランスのファンディング・エージェンシーとしては、高等教育・研究・イノベーション省、MESRIという機関の下にあるANRというところが基礎研究、応用研究に資金を提供しています。ここはボトムアップのものもあれば、重点課題、横断課題を設定して行うというところもございます。そこから先については、フランス公共投資銀行というところが中小企業やスタートアップの支援を行っているというところでございます。
次のページです。フランスの政策動向としましては、マクロン政権の中で、ここに掲げるイノベーションのための基金の創設ですとか、AIに関する国家戦略といったことが進められています。フランスでも国防イノベーション庁というのが新たにできて、防衛分野の破壊的イノベーションプログラムへ投資するという動きが進んでおります。
続いて、中国です。中国は地方政府の投資が非常に大きいというところで、北京とか上海のような大都市では、地方政府がかなり研究開発にお金を出しているということがまず1つあります。中国で最近、特筆すべき点は、もともとNSFCというアメリカのNSFをモデルとした基礎研究を支援する機関があるんですが、これが科学技術部という中国の文部科学省に相当する機関の傘下に入りまして、MOSTの下で基礎研究から応用研究までしていきましょうと、効率化を図るという動きが進められています。
10ページにMOSTの新しい組織の詳細が書いてあるんですが、もともと独立していたところを科学技術部(MOST)に集中することによって、研究資金運用の効率化を図ろうと。イギリスもUKRIというのがあるんですが、それに近い動きが起こっているということはあります。
あと中国としては、よく聞く中国製造2025とAIというところで、半導体を中心とする先進科学技術分野やAI分野に国として重点投資を図っているということがございます。
最後に、EUについてです。EUは28か国の集まりで、税金を使っている以上、加盟国が単体でできるような事業にはそこまで投資はせずに、加盟国単体では実施が困難な事業、例えばリスクの高い研究開発とか国際的な共同研究、また地球規模課題解決、SDGsに関する取組などに重点投資しています。そのファンディングシステムとしてはフレームワークプログラムというものが代表的で、現在、Horizon2020というものがなされていて、今後、2021年からHorizon Europeと、これはかなり検討対象になるかと思うんですけれども、始められております。
次のページにHorizon Europeの詳細なものを書いていまして、Horizon Europeは3つの柱から成ります。予算は大体7年間で12兆円と、相当多額の予算が今提案されています。基礎研究については第1の柱、卓越した科学というところのEuropean Research Council(ERC)という機関で重点的に支援しています。ここはかなり前から進められているんですけれども、評価が高く、長年にわたって基礎研究を支援するというところ。第2の柱、第3の柱で社会的課題の解決と。あと第3の柱でイノベーション創出を目指した取組が行われていて、Horizon全体の中で基礎からイノベーションまで幅広いところを見るということがなされています。
あと最後のところに書いてあるFET Flagshipsという、FETというのは新興・融合領域を対象としたプログラムで、これは大規模拠点を作るという10年単位のプログラム、グラフェンとかブレインとか、近年では量子技術といったところに重点投資するという取組が行われています。
最後のページにまとめということで、今までお話ししたことをまとめさせていただきました。各国とも基礎研究を重視しつつ、それをいかに応用研究につなげていくかというところで様々な取組をやっているというのが近年見てとれる現状と考えております。
駆け足になりましたが、以上で説明を終わります。

【栗原部会長】 ありがとうございました。幅広い御説明をありがとうございます。
ただいまの説明を踏まえ、戦略的創造研究推進事業の現状と課題について、御意見や御質問などあればお願いしたいと思います。今日は第1回ですので、幅広く御意見を頂ければと思いますのでよろしくお願いします。
齊藤先生。

【齊藤委員】 さきがけとかこういう人を育てる仕組みというのは非常に日本ならではのいい仕組みで、余り海外に例がないと認識していますが、なかなかスピードに間に合っていないという資料5-2の11ページのグラフですが、なかなか日本が今、国際的にサイテーションがある領域の参画数は少ないということですが、これは日本発の領域がなかなか育っていないという原因と、研究の世界的なスピードというのが非常にスピードアップしているという2つの要因かと考えられますが、先ほどステップ1、2、3と、大体どれぐらいのスピードで進んでいるんでしょうか。

【金子室長】 戦略目標は、毎年度決めているもので、毎年ステップ1から3までやってございます。ステップ1は3月とか4月から徐々にスタートし、夏頃にステップ2に移行します。その上で秋ぐらいから年末に掛けてステップ3のフェーズが続いて、最終的に決定・公表が例年年度末になっているという年間スケジュールです。

【齊藤委員】 大体最近、前ですと数年単位で進んでいたものが、数か月で研究の様子が変わっていくという状況になっていますよね。できる限りスピードアップして、最新の情報で考えていくということが重要かなと考えております。ありがとうございました。

【栗原部会長】 ありがとうございます。
ほかにありましたでしょうか。
どうぞ、黒田先生。

【黒田委員】 同じく、せっかく戦略目標等の策定プロセスのところに話が入っておりますので、そこでお伺いしたい点は、元素戦略のように、せっかく日本発で出たものがありまして、CRESTにしても最近成功したと思うんですが、やはり一定期間が終わってしまうと、もう戦略目標として立たないのが。せっかく日本で独自な発展を示しているものに関して、さらなるファンディング、これ、拠点型のも今動いていますので、そういう意味でよろしかったと思うんですが、同じプログラムの中で続けるということはできないのかなということを思うんですが。

【金子室長】 そういう御指摘も幾つかございまして、継続的な在り方をいかに考えるべきかも重要なテーマだと思っています。戦略事業のようなファンドからいわゆる拠点へつながるものやほかの施策手法へつながるものもあるかと思いますので、内容、分野、領域の特性ですとか、その他の施策が十分に準備できているかといったことと相まって、その時々で最適のファンディングをしたいと省内、常に関係課と議論してございます。そういった中において、例えばこの分野の最適な資金投下方法についてはJSTの戦略事業でやるのが今現状の最善の策ではないかというような、大きな、全体的な考え方で私ども日々運営しているところでございます。

【黒田委員】 ありがとうございます。

【栗原部会長】 継続性はなかなか難しい課題だと思います。新しいものも入れていかなければいけないので。ですからうまく違うプログラム間で移行とかできればいいけれども、そうでないものもあるでしょうから、そういうところをどういうふうに視点を広げられるかとか、情報がうまくいろいろな人たちに共有することで、実質的には継続がうまく発展的にできるとか、そういうようなところを今後の中でも議論できればいいかと思います。
すみません、注意ですが、観山先生の方に聞こえるためには、マイクを使ってかなり大きな声ではっきり話すということが重要だそうで、文科省側の方の声はよく聞こえているそうですが、どうもこちら側が元気がないらしく、発言のときに気を付けていただければと思います。よろしくお願いします。
じゃあ、どうぞ。長我部先生。

【長我部委員】 戦略的基礎研究に関して2点ございます。1点目はコメントです社会的インパクトイノベーションをトップダウンで基礎研究をやるというなので、後シーズの効果が書かれていが、社会的インパクトをどうもたらしたかということを必ず問われると思評価になって、基礎研究を工夫が必要だとだと思います。
2点目は、新分野とか融合という言葉が出てき新分野・融合といっても、例えば新しい真理追究とか新しい学術を作り出すというやってしかるべきあると思、そういうタイプの新分野・融合とかというのは、戦略的基礎研究の枠組みでは拾えていないんでしょうか。必ず社会インパクトとかイノベーションを問われて、その絵が描けないと、真理が発見はなかなかという構造なんでしょうか。

【金子室長】 そこは含まれているというのが私の理解で、参考資料の4-1をごらんいただければと思うんですが、これが平成26年のときに、この事業の位置付け等々について整理したものですけれども、参考資料4-1の3ページ目の真ん中の3つ目であります。「『出口を見据えた研究』とは」と始まるパラグラフ、読み上げさせていただきますと、「研究者が主体となり、研究の進展等により実現しうる未来社会の姿を見据えて実施される研究である。純粋基礎研究から展開し、用途を考慮するに至ったものであり、純粋基礎研究と同様に研究者の内在的動機に基づく根本原理の追求という基本的性格を残しつつも、科学的な価値のみならず社会的・経済的価値の創造を志向し、それが新たな社会的・経済的価値として社会や市場に受容される最終目標を見据えて実施される基礎研究である」。すなわち根本原理の追求というのは、とりもなおさずスコープの中心にあるというふうに理解しているところでございます。

【長我部委員】 そう書いてあるんですが、内在的な研究者のモチベーションとしてはそうでも、社会的インパクトと結び付く基礎研究を拾うプログラムだと理解したときに、やっぱり何か漏れちゃうところはないかなという。新しい研究の社会的インパクトというのは初期の段階ではすごく測るのが難しいの御質問したまでです。

【栗原部会長】 どうぞ。

【磯谷局長】 長我部先生、よく御存知の上で御発言されたというあれで、あえて念のため申し上げると、科学研究費助成事業の方で新学術領域研究というのがあって、あれはまさに新しい学問を内在的動機に基づいてコミュニティーとして提案をしていくという話なので、一方でそういうのがあって、今度JSTの方で今議論されているような戦略の方で、どうやって新興・融合領域を拾っていくか、あるいは広げていくか、あるいは見付けていくかというところの役割分担とか、あるいはうまいつながりとか、そういったところも是非御意見、コメントがありましたら、またゆくゆく今後頂ければと思っております。ありがとうございます。

【長我部委員】 ありがとうございます。

【栗原部会長】 ほかに御意見はありますでしょうか。
どうぞ、天野先生。

【天野委員】 私、さきがけとかCRESTとかERATOとか、自身で何もやっていないので、学内で関係というかやったことのある方に御意見を伺ったんですね。そうすると、よかったことと悪かったことということで非常にたくさん御意見を頂いたんですけれども、そういったことをまとめてどっかで見ることができるようなところってあると非常に参考になるかなと思ったんですが、いかがでしょうか。

【金子室長】 断片的にはあるかもしれません。まとまったものがないので努力したいと思います。

【栗原部会長】 ほかに何か御意見等ありますでしょうか。
新興領域という意味で、すごく印象に残っているのは、例えばナノテクの振興のときに、たくさんのナノテクバーチャルラボラトリーが立って、幅広いゴールを設定しつつ、研究振興が非常に速やかに加速されたというようなこともありましたし、最近では情報系のいろいろなプログラムも、やはり意識的な振興だと捉えていいんじゃないかと思います、予算も限られているところ、そういう中でよりよい形の種の拾い方や分野の設定の仕方があればと思います。ですから今回大くくりという言葉が出てきているのは、そういう中で予期しないようなものもうまく拾いつつ、よい形で運営できたらというような視点だと思いますので、御経験のある先生方、是非貴重な御意見を頂ければと思います。
齊藤先生。

【齊藤委員】 その観点で、さきがけとかずっとアドバイザーもやっていまして、結局、予算はどうしても制限があるので、その範囲内でやるしかないんですが、アドバイザーとか審査員の持っていき方によって、その領域の質というのはものすごく変わるので、同一の金額でするんであれば、よい研究者を選択して、よいアドバイザーとよい評価者を、アドバイザーの教育のシステムがないなと。評価者の教育システムがないなとつくづく感じることがあるんですが、その辺何かアイデアというのはないんでしょうか。

【黒田委員】 私、さきがけの研究総括をさせていただいた経験からしますと、分野のバランス、それから御所属のバランス、産業界も含めてバランス、それからJSTの方々と相談しながら、その方々の今までの御実績、あるいは今までの関わり方の中で、非常に慎重を期して選んでいきましたので、領域によって違うのかもしれませんが、おっしゃることは非常に重要です。アドバイザーの選定は極めて重要で、プロポーザルの審査のみならず、領域会議における発言、私の領域の場合ですと、個々の研究者に対するメンターの役割も果たしていただいたり、私は全体をもちろんやるわけですけれども、非常に深く関わっていただくこともできましたので、それはやり方次第という中で、決まったものではないかと思います。

【栗原部会長】 JSPSでは書面審査員なんかの評価リストもあるようなんですが、多分JSTはそこまでやっていないと思いますが、この場合、そういうのが有効か分からないですけれども、観点としてはあるのかもしれないですね。私は自分でもアドバイザーもさせていただいていますが、皆さん、すごく熱心で、全体として見ると、非常にバランスよく運営されていると感じます。幾つも領域を手伝わせていただいているけれども、あれっというようなことはなかったと理解しています。黒田先生と同じ意見です。
ほかに御意見がありますか。川合先生。

【川合委員】 以前の大学のシステムですと、若手の研究者というのは自分の研究室のところだけに閉じこもっているケースが多かったので、こういうさきがけのようなプロジェクトに参加することでマルチメンタリングというんですかね、いろいろな人に接触できること、それからかなり広い分野の人たちが1つの領域に入って昔はいたので、そこで新しい接触があって、それゆえに、多分、今シニアな先生になられた方も、さきがけのところの人脈で、本当に違う領域の人たちと今でも交流ができるということを大変大きなメリットとしてうたっていらっしゃるように思います。
最近ちょっと問題だなと皆さんがおっしゃっているのは、割と小さい目標の中に1つの領域が閉じ込められる傾向があるように思えていて、そうすると学会でしょっちゅう会っている人たちと組み合わせが余り変わらなくなってきて、本来のさきがけのダイナミズムというのが少しそがれているかなという印象を持っていらっしゃる方が多かったように思います。そういう意味では、設定する領域の仕方を工夫することで、やはり大事なマルチディシプリナリーな関係をそこで築くというファンクションはまだ持たせられるのかなと思っています。
ただし、最近私が気になっているのは、さきがけはそういう本当に一研究者として自立するところの境目にあるぐらいの方の支援組織としては非常にいいんですけれども、若手が独立して自立したラボを持つというところに対する実は支援システムが余り充実していないと思っています。例えば准教授で独立したポストをとったときに、大学で1ポストをとっても、せいぜい科研費をとるぐらいしか自分のラボの補助ができないので、非常に時間が掛かりながら大きな装置を作っていくと。ゆえに、割合簡便にできる材料研究の方は進むんだけれども、ちょっと言い方は悪いかもしれないですが、大きな資金を要する測定を開発するとかそういうところは、長期戦略に立ったチャレンジングな課題がなかなかできていないんじゃないかという印象を持っています。
一方で先ほど各国のというところで御案内がなかったんですけれども、私は最近、ちょっとドイツでこれはと思うシステムがあって、それはマックス・プランクとかヘルムホルツが、若手の自立するための資金をかなりの数、用意しています。それは大体五、六年で2億円程度をもう個人に与えてしまうと。それをどう使うかというのは、それぞれの研究の進め方で采配できるようになっていて、それに当たった人は、そのお金と自分の名誉を持って、マックス・プランクの研究所に自分のグループを作ったり、ヘルムホルツの場合だと多分、大学にも作れるようになっていると思うんですけれども、そうやった個を評価して与えることによって、その人が適したところにそれを持って生活圏を選ぶことができるというシステムがあるんです。できた当時は、何か大分コンフリクションがあって、摩擦があるなと思っていたんですけれども、もう五、六年たってみると非常にうまく機能していて、成功する人たちは、そこである意味での若手のPIとしてのステータスを築いているし、それを持ってまた別のところに行くこともどうもできるみたいなんですが、何かそういう本当の意味で自立した研究者になるところの支援システムが、実は国内にはない。1,500万ぐらいじゃできないんですよね。大きい装置とかというのは。例えば2億を5年間で使うのに、最初に1億を投資して、何かベースを作って、その後、小刻みに人を雇いながらやるというのも多分許されているんだと思うんですけれども、何かその辺のところが要になるかなという気がしています。というのは大学側が類型化してしまったので、中堅の地域の大学は、余り大きなお金をサポートすることができないので、スタートアップも多分余りできていないと思うんですけれども、そういうところにいい研究者が一時的にでも入るためには何かの仕組みが必要で、ちょっと参考になるシステムのような気がしました。途中でちょこちょこ評価しないようです。もうあげちゃったら、失敗したら残念ねということだと思うんですけれども、もう長期的に自分の計画でチャレンジなことをやらせるという目的がどうもあるようですので、その辺は少し参考になるシステムのような気がしましたので、ちょっと一言。

【栗原部会長】 ありがとうございます。

【小谷委員】 今、川合先生が言われたことは大変重要で、もちろん若手研究者の支援、これは一番大切だと思うんですが、そこからその先に独立した研究環境を整えるというところが、日本は大きく欠けているような気がします。そのことは、海外から優秀な研究者をリクルートするときの一番大きな障害になって私はWPI、海外で活躍している研究者をリクルートしよう何度かしましたけれども、研究環境をセットアップする。外国であれば、2億ぐらいのスタートアップ資金が付くものであるということです。それが1点です。
それからもう一つは先ほどの出口からの距離ということとも関係あるんですが、先ほどの文科省基礎研究力強化の中ファンディング・エージェンシーの連携ということが書かれていました。文科省としての個性ある戦略も立てられてすが、一方で量子のような基礎から社会実装まで重要な課題については、それぞれのファンディング・エージェンシーで関連する課題が立っていることが多いわけですね。その役割を切り分けられているのか。逆に連携をして基礎から実装までをつなげていくことができるのかというところは非常に重要ですが、今はど横の連携をとられているでしょうか。

【金子室長】 現状、どこまでできているかという議論はあると思うんですけれども、今進みつつあるのは、量子という例が出されましたが、そういう領域というものを大きな流れで捉えて、大きな流れを関係者で共有、状況を理解、共有しながら施策をより分担すべきはし、協力・連携すべきはしというようなことを、より今まで以上にやろうという気持ちでおります。

【小谷委員】 是非上手な連携パスをしていただければと思います。

【磯谷局長】 よろしいですか。

【栗原部会長】 はい。

【磯谷局長】 小谷先生と川合先生の、小谷先生の前半の話と今の川合先生のお話なんですけれども、私も非常に重要だと思って、いろいろなところからもそういう話を聞いていて、今のお話は、研究のステージとしては、ちょっと確認をさせていただきたいんですが、例えばさきがけを卒業したぐらいのレベル、だから准教授をとる、とらないぐらいのレベルのところをターゲットにすればよいのか、あるいは分野みたいなことをもう少し加味して、ライフサイエンスなり何なりという分野のあれがあるんですけれども、いうのか、どういう切り口でどのあたり……。私、たしかドイツの例は、もっと若いアーリーステージだったような気もするんですが、そこのところどういうふうに考えたら。

【川合委員】 ドイツは多分、30代の中ぐらいから40代に掛かるぐらいのところの人たちです。我々の認識から言うと、比較的切れ者の人が准教授で独立研究室を持つ、そんなステージです。日本の場合だとなかなか30代で教授になるケースがそれほど多くないので、多分、准教授クラスという言い方をするのが一般的な言い方だと思います。
研究室のスタートアップというのは、私たちのところはそこそこ出しているんですけれども、出せているところは国内でほとんどないと思います。やっぱり自立して研究室を運営するときに、その辺のサポートがないと加速して自立した研究室が存在できないと。なので、本当にお金まで全部考えて打算的に動くときには、大ボスの下にいた方が得なんですね。だから自立しないんですよ。あえて。研究の自分の展開を考えて。それがやっぱり弱みになっているような気がしますので、全員が自立する必要はないんです。だけど、そういうことができる人には、何かチャンスがあると伸びると思います。しかも本当は5年じゃなくて10年ぐらいの単位で、もう賭けで渡してしまうということをすれば、相当長期的なチャレンジが可能なので、ある意味今、ちょっと欠落しちゃっているところの補完には非常に大事な施策かなと。

【小谷委員】 私もほとんど同じ考えです。海外を見ると、ポスドク助教、独立のPIになる人が多い。優秀な方はそういうふうになっていると思うんですね。日本で言うと准教授レベル独立した研究室を持ためには、ちゃんとした設備投資を自分でできるということが重要す。WPIジュニアPIというような形で。

【栗原部会長】 すみません、私は、さきがけの第1期の研究者なので、ちょっとその点から補足させていただくと、さきがけができたときには独立というのはキーワードだったと思っています。そのときはCRESTもなかったので、今のさきがけよりは研究者はもう少し成長していたと思うんですね。それで教授のところに挨拶にいって、独立して研究をさせてくださいと。JRDCの皆さんがおっしゃって歩かれた。ですけれども、CRESTもできて、さきがけもあるということで、アイデンティティーが少しずつシフトしてきているんだというのが私の理解です。今回ACT-Xというようなものもできたということですから、少しそのような視点も考えながら、今あるプログラムをそういうコメントに対してどういうふうに育てられるかということもあるかなと思います。

【川合委員】 すみません、ACT-Xは最初いいなと思ったんだけれども、金額を見て何だこれはと思った。桁が全く違うので。ちょっとさっき小谷さんと私が言っている話は、そこより上の方の年齢で。

【栗原部会長】 今のさきがけって本来は独立させるという理念でスタートしたので、それぞれのプログラムでどこまで考えるのかという位置づけを考えたいという意味です。。

【川合委員】 そうですね。

【小谷委員】 金額の問題が大きいと思う。

【川合委員】 それで、すみません、ちょっと栗原さんのそのときのさきがけの位置付けと、私、今、そのままじゃいけないなと思っている理由がちょっとあって、それはボスのところに引っ付いたポストなんですね。その人たちが独立してやるというのは、実はなかなか難しいわけです。ワンセットになっている。だから本当に独立した形のものを持っていかなきゃいけなくて、今のさきがけのスキームはスキームですごく大事だと思うんです。やっぱり成長する第一段階として。

【栗原部会長】 もう少し独立心のある人たちを採用すべきだと私は思っています。

【川合委員】 いやいや、そうじゃない。その次のステージの間がやっぱり、ERATOに行くまでの間が絶対要るなという感じで。

【黒田委員】 私はさきがけの名誉のために申し上げたいんですけれども、さきがけの採択のときに研究室のテーマであるものは全部落としていますので、まず本人のオリジナルなアイデアであるものしか採っていない。それから採択してから、全てのボスのところへ研究総括は行くんです。

【栗原部会長】 だから今でもそこはそうだと思います。

【黒田委員】 やっています。で、自由にやらせてあげてくださいということは全てのボスにお願いするわけです。ですからそれは今でもやっておりますので、それは誤解のないようにしていただきたい。ただし、川合先生のところのことは全く私も同感で、私もさきがけで、准教授で採用して、教授になったのが6名前後いると思います。私、そのときに思いましたことは、3年半終わって、そのトップレベルは教授ポジションをとった。ここで支援してやりたいという気持ちはすごくあって、JSTさんとも話をします。だが、そこはないということで、彼らは、ほかの研究費をとってこいということかもしれませんが、せっかく今、それで伸びてきた。そういうときに数名でいいからさらに支援していきたいという思いは非常にありました。

【栗原部会長】 それはそのとおりだと思います。さきがけから、その後独立してはすごく大変でした。

【磯谷局長】 ありがとうございました。ちょっと事務局ばっかり発言してあれですが、2つのことだけコメントなんですけれども、1つは思い出したのは、たしか山中先生がアメリカから帰ったときに、奈良先端大という新構想大学で、当時はまだ助教授という名称だったんですが、教授と同じような形で研究室をちゃんと持って、そこに部下が張り付いて、設備も当然、最先端のがあったから、そこから、彼はそれからまたCRESTをとったりしたので、今それが1つあったのと、それからおっしゃるように我々富士山型のいわゆるファンディングなり環境を作りたいという、まさに今おっしゃったようにさきがけを卒業して、今度は本当に准教授、教授なりとして独立していくところのスタートみたいなのを少し長期で応援してあげる。金額もかなり大きなものだったりとか、環境もいいところというのを、ドイツの例も勘案しながら検討させてください。ありがとうございました。

【栗原部会長】 今のところは、課題は独立していくためというところなので、どういう形でというのはまた今後とも議論できたらと思います。
どうぞ。

【城山委員】 ちょっとこの中で社会科学系で参加させていただいて、さきがけのアドバイザーなんかは少し情報系なんかでやらせていただいているんですが、そういう観点で、若干ちょっと話が戻るんですが、社会的インパクトの関係のところをコメントさせていただければと思います。先ほど御紹介いただいた平成26年の報告書というのは、なかなか考えたワーディングをされているなと思いました。「出口から見た研究」と「出口を見据えた研究」は違うんだと。「出口を見据えた研究」というのは、あくまでも基礎研究と同様に内在的動機がベースなんだけれども、他方そうはいっても、それだけではなくて、実現し得る未来の社会の姿を見据えて実施される。社会的インパクトも考えますよという話だと思います。ここはなかなか難しいのは、例えば出口見た研究であれば、現実にある社会課題を解くとか解かないとかって、目に見えやすいインパクトを見るわけですけれども、逆に言うと「出口を見据えた研究」は、将来の社会がどうなるかというのを見据えた上でやる。つまり今ある社会課題ではなくて、実は社会が将来どうなるかという話とうまく突き合わせることによって多分この話は成り立つんだと思うんです。逆に言うと、そういうふうに社会を柔軟に考えれば、結構ある種の自由な発想に基づく研究というのを制約するというよりかは、むしろ思考の上で刺激を与えることもあり得るわけなので、何かそういう意味でのダイナミックな関係ってどうやって作るかというのがすごく大事なんだろうと思います。
そういう意味で言うと、今日頂いた資料の5-2の、例えば戦略目標の策定プロセスで、これは個々のプロジェクトではないんですけれども、ここだと基礎研究がベースにあって、最後のところでステップ3で社会・経済的価値と合致するかをネガティブチェックするみたいな話になっていて、こうしちゃうと逆に制約要因の側面が強いのかなと。むしろ、もうちょっといい意味でラフに社会の在り方だったり、どういうことが課題になり得るかというのを柔軟に考えて、そういうところとやりとりしながら研究プロジェクトを作っていくような仕組みというのを考えるということが重要なのかな。そこは、いわゆるフォーサイドとかシナリオとかいうのは多分そういう話なんだと思いますが、そういうところを柔軟にやっていくことは大事だし、恐らく実際にやっていく段階になると、そういうのを最初で分かるというのはなかなか難しくて、ここの辺がまさにさっきのさきがけなんかの意味ともつながってくると思うんですけれども、やっている中でいろいろ試行錯誤しながら、実はこういうことインプリケーションありますよねというところを気付いていくプロセスが大事なので、研究の採択のときもありますが、研究を実施してくプロセスの中で、ある種の広い意味での技術の社会的インプリケーションなりを考えていくような機会をきちっと埋め込むことによって、むしろ結果として将来社会を見据えたような研究ができてくるという、多分そういう点ではなくて線というかプロセスで多分考えた方が、何かこういうメカニズムは機能するのかな。そういう意味で言うと社会に寄与するというのを、何か予算制度上の仕組みとして外在的制約があって自由度を失わされているんですということではなくて、有機的に社会ある種どうなるかということとの対話の中から、むしろ基礎研究的にもおもしろいものが出てくるという、何かそういう仕組み作りみたいなものをちょっとどっかで埋め込むということを是非考えていただけるといいのではないかなと思いました。
以上、コメントです。

【栗原部会長】 どうぞ、山本さん。

【山本委員】 今の基礎と応用の点で関係するところで質問です。基礎の戦略創造と、JSTにはイノベーションの産学連携の方の社会に近いところの事業があります。もちろん基礎研究は応用の方に必ずしもつながらないものですけれども、JSTの事業として、もう少しつなげていきたいねという気持ちがあるということをちょっと耳にしました。その意味で戦略創造に対するちょっと期待といいますか、位置付けといいますか、近年変わってきているんだとか、ちょっと何かありましたらお願いします。

【金子室長】 大きな研究の動向という潮流としての継続性をいかに考えるかというのと、個々に課題として出てきた成果の継続性をいかに考えるのかという側面もあると思います。私が理解するに、後者の側面で申し上げると、戦略で出た研究、個々の課題の成果を次につなげられるかという継続性をいかにすべきかという中においてはJSTのいわゆる産学連携の施策につながるようなものは当然つなげていくという、そういったものについては、できる部分は既に情報共有を各事業間でやっているところでありますけれども、それを政策として見たときに、どういった加えての工夫ができるのかということが問題かと思います。

【栗原部会長】 それでは、まだあるかと思いますけれども、時間ですので今日は初めということで、またいろいろ課題をたくさん挙げていただいたので、そういう点を踏まえながら今後検討を進めさせていただければと思います。
最後に議題5、その他について、事務局より説明をお願いいたします。

【岡村補佐】 御説明させていただきます。資料6をごらんください。本日は、第1回のところにございますとおり、特に戦略的創造研究推進事業を取り巻く現状や課題について御議論を頂いたところです。
現時点での案ではございますが、第2回は既に御案内差し上げておりますように6月26日を予定しております。翌27日に総合政策特別委員会が開かれる予定でして、政府として今後検討していく、2021年度からスタートする第6期の科学技術基本計画の策定に向けて、文部科学省としてもこれから骨子案というものを作っていく中で、その骨子案の取りまとめが、この6月27日の総政特で予定されております。そうした中で、この基礎研究振興部会における審議状況、ですからこの時点までに2回開催されていることになりますが、それについても、その時点での状況として総政特の事務局と共有していくということを見込んでございます。そういった第6期の科学技術基本計画に向けた検討、そして本日も様々な御示唆を頂いたところですが、戦略事業の特長・改善点ですとか、あるいは戦略事業の意義・機能強化の方向性に向けた議論ということも予定してございます。加えまして、先ほど小谷委員からも御言及いただきましたけれども、WPI、世界トップレベル研究拠点プログラムの成果検証について、そしてそれを踏まえた今後の方向性について、そういったことも議論していければと考えてございます。
第3回は今のところ7月を予定しておりますが、具体的な日取りはこれから調整させていただきます。引き続き、第6期の科学技術基本計画に向けた検討に加えまして、戦略事業の意義・機能強化に関する取りまとめですね、この案に関する議論というものを予定しております。
以上でございます。

【栗原部会長】 ただいまの御説明について、何か御質問ありますか。

【川合委員】 2回目の時間は決まりましたか。

【岡村補佐】 時間はまだ決まっておりませんので、決まり次第御連絡差し上げます。

【栗原部会長】今日の議論でも分かるように、多面的なことを非常に短期間でまとめなければいけないので大変だと思いますが、皆さん、大変活発に御意見を出していただいているので、より進んだ形で何か次の運営の形について提言ができるといいと思っております。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
それで、本日の議題は以上ですので、事務局から御連絡等ありましたらお願いします。

【岡村補佐】 本日は、闊達な御議論を頂きましてどうもありがとうございました。
議事録についてですけれども、先ほど決定いたしました本部会の運営規則第7条に基づき本部会の議事録を作成し、資料とともに公表することとしております。本日の議事録の案につきましては、後日メールにて委員の皆様方にお送りさせていただきますので、御確認のほどお願いいたします。
本日の資料ですけれども、郵送を御希望の方は封筒にお入れいただきまして、机上に置いたままにしておいていただければと思います。また不要な資料や紙ファイルも机上に置いたままにしておいていただければと思います。
以上でございます。

【栗原部会長】 ありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、第1回の基礎研究振興部会を閉会いたします。また今後ともどうぞよろしくお願いします。本日は、ありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。