参考資料1 科学技術・学術審議会 戦略的基礎研究部会(第3回)

平成27年6月8日

【大垣部会長】
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第3回科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会を開催いたします。
 本日は御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。
 では、まず事務局より配付資料の確認をお願いします。

【浅井室長補佐】
 配付資料の方、一番上に議事次第がありまして、資料1‐1、1‐2から資料4までと、参考資料が1から6まであります。欠落等ございますでしょうか。万一、欠落等ございましたら、会議の途中でも結構ですので事務局までお知らせください。
 なお、本日は、阿部委員、角南委員、片岡委員、川上委員につきましては、欠席の御連絡を頂いております。また、長我部委員、柳川委員は少々遅れていらっしゃるとのことです。貝淵委員、波多野委員は途中で退席されるとのことですので、早めの発言をお願いいたします。以上です。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題ですが、その他を入れれば4つございます。まず、戦略目標等策定指針について、前回の議論を踏まえて事務局が策定した指針(案)に基づき審議を行いたいと思います。
 次に、議題2として、戦略目標及び研究開発目標の評価に向けた検討について、事務局から説明を頂きます。こちらについては、本日審議は行いませんが、今後検討すべき課題として紹介をしていただきます。
 最後に、議題3として、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)について、審議を行います。本日は、東北大学から伊藤貞嘉理事にお越しいただき、AIMRの将来構想等について御説明を頂きます。
 以上が本日予定している議題です。質疑、意見交換は事項ごとに行いたいと思います。積極的に御意見を頂くとともに、議事の円滑な進行に御協力をお願いしたいと思います。
 なお、議題に1、2、2、3と書いてありますが、両括弧の1、2、3、4ですね。
 それでは、まず戦略目標等策定指針について、審議を行いたいと思います。まず、事務局から戦略目標等策定指針(案)について説明を頂き、その後委員の皆様から御質問、御議論をいただきたいと思います。それでは、事務局から説明をお願いします。

【岩渕基礎研究推進室長】
 それでは、資料1‐1、資料1‐2、参考資料3の3つの資料を使って戦略目標等策定指針(案)についての御説明をいたします。
 まず資料1‐1をごらんいただければと思います。戦略目標等策定指針に係る主な意見ということで、これまで2回の当部会における議論の中で、戦略目標を策定するに当たってどのような事柄について留意すべきかという御議論を様々頂いておりました。その第1回、第2回の部会での委員の皆さまの意見をまとめたものが、この資料1‐1でございます。
 戦略目標策定の指針というのはSTEP1、2、3から成りますので、それぞれのSTEPごとの意見、そして、その全体についての留意事項ということで分けさせていただきました。STEP1番で、研究動向を俯瞰するというプロセスについて特に留意すべきこととして御指摘を頂いたことをまとめさせていただきました。1つ目、論文分析を行うに当たっては、経年変化を行うべきという声がありました。これは非常に多くの委員の方から頂いた指摘です。2つ目、研究者の属性、あるいは論文を分析する場合、その論文の種類――基礎研究に寄った論文なのか、応用寄りに寄った論文なのか、こういうジャーナルの種類なども分析対象として加えるべきではないかということを前回の御議論で頂きました。また、国際連携の観点から国別の動向といったこともインフォメーションとして加えるべきという意見を、前回の委員会で頂きました。また、論文だけではなく、国際的な学会、会議などにおける議題や発表題目といったことも、研究動向を俯瞰する上で大事だというコメントを、これは前々回、第1回の会合の際に頂きました。
 STEP2番ですけれども、こうした動向、俯瞰の結果を踏まえて注目すべき研究動向を特定するというプロセスにおいて、注目すべきという御指摘を4つ頂いています。1つ目として、アンケートによって動向を特定していくわけですけれども、その際に回答者がシーズの立場からのコメントなのか、ニーズの立場を意識しているのか、その辺の立ち位置を明確に回答していただくようなやり方を工夫してもらえばいいのではないかということ。
 また、STEP1にありましたけれども、国際連携により行うべきものか、あるいは日本として独自に行うべきかといったことについても、意識をしながら回答していただいたらいいのではないかと。あるいは、回答者の所属や分野バランスといったものも考慮しながら、最終的に動向を特定していくことが大事ではないかという御意見。あるいは、これもSTEP1と同じようなことですけれども、情報科学などの分野では論文情報だけではなかなか拾い上げられないということがありますので、そういう分野についての配慮が必要ではないかという御意見を頂いています。
 STEP3番です。こちらは以上のように特定された研究動向を社会・経済的な価値に接続していくというプロセスですけれども、そこにおいての留意事項として5つ御指摘を頂いています。1つ目は、社会・経済的価値を知るものとして産業界というふうに説明してきたわけですけれども、例えば医療分野であれば、AMEDの皆さんの御指摘によれば、医療従事者のような方が産業界と並んでニーズの持ち主であるという御意見であるとか、あるいは、これも前回非常に多くの方から御意見を頂きましたが、社会科学、人文科学の研究者のような方も、ニーズの方を俯瞰的に見れる専門家として参画すべきではないかという御議論をいただきました。2つ目ですけれども、分散的・多様な学理追求を融合・統合していくというところに特に留意をしながら、目標を決めていくことが大事ではないかということ。3つ目は先ほどと重なりますが、医療・健康分野については、よりニーズを重視した検討が必要ではないかという御議論がAMEDの皆さんからありました。また、4つ目ですけれども、将来の人材の需要といったことも、目標を決める際には気をつけるべき。あるいは、最後ですが、必要に応じてこのSTEP1の情報分析に立ち戻りながらこのプロセスを回していくという考え方が大事ではないかと。
 全体にわたっての留意事項として3つ書かせていただきましたが、非常にはっきりとした出口が設定できないような研究課題というのもあるけれども、その中にも大事なものも隠れているので、そこは考慮すべきということ。あるいは、プラットフォームとなり得るような技術を生み出すということを考慮すべきではないか。また、3つ目で、どのぐらいのタイムスパンで価値に結び付けるのか、これを明確にすべきではないかといった意見がございました。
 そうした意見を踏まえまして、資料1‐2になります。資料1‐2で戦略目標等策定指針(案)の素案を事務局で作成をさせていただきました。まず、参考資料3を見ていただけますでしょうか。参考資料3として「戦略的基礎研究の在り方に関する検討会報告書(概要)」という資料をお配りしています。10ページぐらいの紙が添付されていますけれども、これは昨年の夏に「戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会」で検討した結果をまとめた報告書の中身ですが、この中に戦略目標策定指針として、昨年この検討会に作っていただいたものです。
 具体的には、参考資料3の6ページに、(1)戦略目標策定指針の制定ということで、今私が説明しました、策定のための個別手順STEP1、2、3といったことが5ページ、6ページといったところに書かれております。現在、文部科学省はこの策定指針に基づいて目標を決めているわけですが、これをベースとしながら、今資料1‐1ということで御紹介しましたこの部会での委員の皆さんの意見ということを加味して、参考資料3の指針を書き直したものが資料1‐2ということになります。
 ということで、また資料1‐2に戻っていただければと思います。資料1‐2ということで、戦略目標等策定指針(案)を事務局で作らせていただきました。最終的にこの部会の決定としたい文書であります。ベースは、今申し上げました参考資料3でございます。
 めくっていただきまして1ページの「はじめに」から文章が書かれています。最初ですので、ざっと上から概要を読みながら説明させていただきます。資料1‐2、1.はじめに、1ページのところをごらんください。ここでは、戦略的な基礎研究を行うことの重要性、あるいは戦略目標を立てることの意義といったことを書かせていただいています。最初の段落で、知識集約型の社会・経済活動がもたらす付加価値ということが各国にとって大事になっていると。
 2つ目の段落ですが、特に新たな科学的・技術的知見に立脚したイノベーションということが、非連続的な社会・経済発展を引き起こすという観点から、国際競争力の観点でこうしたイノベーションが注目されているという時代認識。
 3つ目の段落ですけれども、こうした科学的知見というものについて、これを社会的・経済的価値の創造に結び付けるためには、社会的な仕組みということが必要になってくると。
 4つ目の段落ですけれども、その際に国が何か目標を示すということなどをすることによって、生み出された科学的な知見というものを進展、統合させていくということが社会・経済的な価値の創造に向けて大事ではないかという認識を書かせていただいております。
 こうしたことについては、次の5つ目の段落ですけれども、昨年の「戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会」報告書の中でも、こうした戦略的基礎研究の重要性について整理をさせていただいています。その際に、「出口を見据えた研究」といったコンセプトを打ち出しておりますけれども、こうした「出口を見据えた研究」というコンセプトを踏まえた適切な目標を定める必要があると。
 そのため、ということで、本部会で決めるこの指針においては、戦略目標等が「出口を見据えた研究」の性格を踏まえ、学術研究等によって創出された知の広範な探索から、社会的・経済的価値の創造に向けた効果的・効率的な知の発展を図るための検討を経て適切にされるよう、その策定手順等を定める必要があるというふうに書いてあるわけです。ここまでが「はじめに」です。
 次、2ページに移らせていただきます。2ページに、2.ということで、戦略目標等の策定手順を書かせていただいております。(1)概要ということで、戦略目標は、「出口を見据えた研究」といったコンセプトを踏まえて、以下の手順によって検討・策定すべきということで、STEP1番、STEP2番、STEP3番ということを書かせていただいております。これは、昨年度の検討会の柱に沿ったSTEPになっておりまして、この部会においてもこの柱に基づいてこれまで説明をしてきたものです。
 それぞれのSTEPごとの具体的な内容ということをその後ろの(2)で書かせていただいております。(2)具体的な内容。STEP1、基礎研究をはじめとした研究動向の俯瞰です。1つ目、国内動向の俯瞰ということで、ここでは科研費等の国内の学術研究の成果を確実に把握することが、この研究動向の俯瞰において最も大事であると書かせていただいております。
 このため、ということで、文科省、JST等で今構築中のFunding ManagementのためのDataBase(FMDB)といったものを活用しながら、動向分析を行う必要があるという指針を示してあります。また、この分析を行う際には、新たな研究概念の登場、あるいは研究間の連携・融合の進捗等を把握するために、研究動向の時間的な変化を分析する必要があるということで、先ほどの委員のコメントのうち、経年変化を追えるような研究動向俯瞰をすべきというところをここに書かせていただきました。
 2つ目で、世界動向の俯瞰が書いてあります。2ページの下の方ですけれども、世界動向の俯瞰の中では、科学計量学的手法を活用し、研究論文の発表状況やその相互関係を把握するとともに、研究に関する国際的な会合における動向を把握する必要があるということで、論文だけでは見切れないような動向を俯瞰するために国際学会の動向などを見るべきという委員の御意見を書かせていただきました。
 2ページから3ページに移らせていただきます。3ページの上、NISTEPで作成しているサイエンスマップを活用していくことが大事ではないかということです。この際に、また重ねて書かせていただきましたが、3行目で、研究に関する国際的な会合における議題や発表題目についての情報も収集すべきと。そして、なお書きで、この論文の分析を行う際には、時間的変化を分析するとともに、ここで研究論文の発表雑誌の種類なども分析対象として加えるという委員の意見を踏まえて、入れさせていただきました。
 3ページの中ほど、STEP2のところですけれども、こちらで知の糾合による注目すべき研究動向の特定ということで、最新の研究動向に関して知見を有する組織・研究者に対する質問調査の在り方について、ここで規定をさせていただいております。このSTEPについては、2行目にありますけれども、論文を用いた分析というのは、近過去の研究の動向を表すものであって、最新の研究動向を正確には表していない可能性があるという観点から、その部分を補うプロセスとして質問調査を行う必要があると。
 このため、2段落目ですけれども、JSTの研究開発戦略センターのプロポーザル等の動向、調査の結果も活用しつつ、こうした最新の研究動向について知見を有する組織や研究者の方々に質問、調査を行う必要があると。具体的にはということで、このJSTの研究開発戦略センターの分野別ユニットや、新たに本年度誕生したAMEDのプログラムディレクターのような方、あるいは科学技術・学術政策研究所の科学技術動向研究センターの専門ネットワークに参画している専門家等に対して質問調査を行う必要があるということを規定しております。
 特に、この「質問調査を行う際には」というところですけれども、質問調査の回答者の所属や分野バランスをよく考慮した分析を行う必要があるということ、これも委員の御意見で頂いたところです。また、質問調査に対する回答がシーズ・ニーズのどちらを意識して回答したものであるかということを明確にしながら分析を行う。また、国際連携の下に進める必要がある研究動向であるかどうかも、意識しながら明らかにする必要があるということ書かせていただきました。
 また、情報科学など、書誌情報で拾い上げることが特に困難な動向については、質問調査手法を工夫することが重要であるということで、この最後の5行ぐらいのところについて委員の皆様の意見が盛り込まれております。
 3ページの一番下、注目すべき研究動向の特定ということで、文科省はこうした分析結果、質問調査の結果を踏まえて注目すべき研究動向を特定すると書かれています。
 4ページに移りまして、STEPの3番です。STEP3番で、科学的価値と社会的・経済的価値の創造が両立可能な戦略目標等の決定という項目です。
 1つ目の段落が、社会・経済に与え得る影響の推量ということです。2つ目の段落です。文科省は、JST及びAMEDの協力を得てこれを行うわけですが、この際に社会科学・人文科学の専門家の知見を活用しつつ、社会・経済に与え得る影響の推量を行う必要があるということを書かせていただきました。ここも委員の意見を反映した部分です。また、医療従事者などの参画を得たワークショップ等の開催ということも書かせていただきました。
 また、ワークショップにおいて影響の推量を行うということで、「具体的には」という段落ですけれども、具体的には、ワークショップ等において、この社会・経済に研究動向が与える影響の推量を行うわけで、この際、必要に応じてSTEP1の情報分析に立ち戻ることが必要と。あるいは、学理の融合・統合を図りながら社会的・経済的な価値の創造に結び付けるということが大事であること、あるいは将来の研究人材の需要についても考慮しながらこのワークショップの議論を進めていく必要があるということを書かせていただきました。また、特に医療・健康分野については、アンメットメディカルニーズなど、より具体的にニーズを考慮しながら議論を進めていく必要があるのではないかということを、前回のAMEDや委員の皆様の意見を踏まえながら書かせていただきました。
 次の段落、戦略目標等の決定ということで、以上のようなワークショップにおける結果を参考にしつつ、最終的に文部科学省において戦略目標等を決定する必要があると。
 4ページの下の3.留意事項ということで、以上、全体のSTEPにわたっての留意事項を書かせていただきましたが、戦略目標の検討を行う際には、その一旦設定した領域が存続する期間はおおむね8年間であるということを踏まえながら、戦略目標策定後、8年間の研究推進によって一定の研究が実用化に向けた民間企業との共同研究に結び付く、8年間で民間企業との共同研究に結び付くといったようなタイムフレームのものを目標とすることが適当と。また、その民間企業との共同研究に結び付いた後、比較的早い期間で実際の社会・経済的な価値に結び付くようなものを念頭に置いているということです。
 5ページに移ります。5ページの一番上ですが、社会・経済に大きな影響を与えるプラットフォームとなり得るような技術といったものは重視すべき。あるいは、現状では出口を一定以上明確化できないようなものについても留意する必要があるということを書きました。
 次の段落ですが、戦略目標の粒度。これについては、余り先鋭な目標、小さな粒の戦略目標を立てると、研究者のモチベーションを保つことができないといったこともあり、また、基礎研究段階において不可避な高い不確実性に対応することを考えれば、一定の広さを持つ粒度で目標を決めることが大事であるということを総論的に書かせていただいております。
 以上が事務局で作成しました戦略目標策定指針(案)です。資料1‐1に含まれた意見というのは一応全て拾ったつもりですけれども、不十分な点があれば御議論いただければと思っています。以上です。

【大垣部会長】
 御苦労さまでした。それでは、今説明のありました戦略目標等策定指針について審議を行いたいと思います。御質問、御意見のある方はどうぞ。

【貝淵臨時委員】
 名古屋大の貝淵です。前回もちょっとお話ししたんですけれども、今回のSTEP1、2、3を見ていますと、何回か医療・健康分野についてはニーズが大事だということが非常に明確に書かれています。私は恐らくこの中で唯一の医学研究者だと思うんですが、AMEDの研究とCRESTの研究というのはどう違うんだというところが、非常に分かりにくいと思うんですけれども、そのあたりいかがでしょうか。
 というのは、実は大きなお金でAMEDは疾患――がんとか、循環器とか精神疾患をターゲットに研究していくわけです。それに比べると、はっきり言ってこのCRESTの研究というのは額も数も圧倒的に少ないんですけれども、同じような形で変えてしまったら、その2つの区分けをどうするのかという疑問が多分いろいろなところから出てくると思うんです。それについては、どういうふうにお答えされますか。

【岩渕基礎研究推進室長】
 AMEDの戦略的基礎研究は、JSTの戦略的基礎研究から移管されたものです。AMEDに移管された後も、扱うフェーズとしては同じという整理になっています。したがいまして、AMED全体の中では最も基礎研究寄りの部分をサポートするのが、ここで議論しているAMEDの革新先端事業です。つまり、この目標が適用される先の事業は、AMEDの中で最も基礎研究寄りの部分であり、そこに適用する目標を今議論しているということになります。
 ということで、ニーズとの近さについてもこれまでと変わるものではないのですが、一方で、AMEDは、厚生労働省なり、経済産業省なりの制度とも一緒に扱う法人ですので、アンメットメディカルニーズの話もそうですけれども、そうした医療分野の実際のニーズをより意識しながら目標を立てることを期待したいということが言われております。
 これらを意識した結果として立つ目標が、必ずしも出口に極めて近い目標である必要はないですけれども、そうしたニーズを具体的に意識しながら目標を立ててほしいということが、AMEDからのご意見の趣旨だったかと思っています。

【貝淵臨時委員】
 私は非常にそれを危惧します。文章ではっきり残っていない場合に、徐々にそこに融合されてしまって、結局区別できないものになってしまうんではないかなということを恐れます。今まで日本では、非常に基礎的な研究からiPSとか、そういったものが出てきているわけなので、そういったものをチャンスをなくしてしまうのではないかということを多くの研究者が今危惧していますので、是非そこは何らかの形で文章で残していただきたいなと思います。
 今のままですと、極めて臨床的な研究をやるというふうに読み取れてしまうので、特に医学研究以外の方が見ると、全く一緒だということになってしまうと思うんです。私は非常にそこを危惧いたします。

【大垣部会長】
 いいですか、さらには。

【岩渕基礎研究推進室長】
 はい。

【有信委員】
 今の件にも多少関連するんですけれども、多分STEP1、STEP2はそれぞれ専門家が個別に検討していくので余り心配はしておりませんけれども、STEP3のところで社会・経済的価値と基礎的な研究との両立可能な戦略目標というところなんですけれども、ここでかなり堅い書き方になっていて、確かに国がやることだから、こういうふうにきちんとやっていかなければいけないのかなという気はするんですけれども、一番重要なのは、何度も前から言っておりますけれども、ニーズが顕在的である場合はそれに向かって進めばいいので、特に基礎的なところから戦略的にどう攻めるかというところはそんなに神経を使う必要はないんですね。
 ただ、将来の何がニーズであるかということが顕在的でないケースが一番重要だと思っていて、潜在的なニーズをどう顕在化させるかというところで、いわば社会科学だとか、人文科学の専門家の知識が重要になってくる、こういう部分があるわけですね。それをどういうふうに運用していくかというところで、潜在的な見えていないニーズをどう顕在化させるかというときに、将来社会を描いていく能力が必要とされるというところが、もうちょっと何か分かるような感じになっているといいかなという気がします。
 例えば、今アップルウォッチというのが盛んに喧伝されていますけれども、ペントランドがウエアラブルインテリジェンスということを言ったのはもう20年ぐらい前の話です。そのときに現在の様々なウエアラブルズの原型は出ていたんですけれども、その当時の技術では今のような状況は作り出せなかった。
 だけれども、どんなコンセプトがあり得るかということに関しては、ウエアラブルファッションショーというのをやったんです。多分NHKで中継もされましたから覚えている方はおられるかもしれませんけれども、ファッションショーの中で、将来のウエアラブルインテリジェンスの姿を1つの典型として示そうということでやったわけです。
 それがずっと地下に潜って様々な研究の結果として、眼鏡にディスプレーが付いたものだとか、やっと世の中で――まだ受け入れられるところまでは行っていませんけれども、そういう萌芽が見えてきたという、そういう時間的な経過もあるわけです。そういうことを考えると、余りがちがちに将来を見越すというか、社会・経済的な価値と結び付けるということを、余り堅苦しく考えると、ファッションショーのような格好でコンセプトを見せるというような――ここで言っているとすぐにワークショップということになるわけですけれども、そういう発想の中にもやっぱり人文系の人たちの発想が必要なんですね。
 だから、もうちょっと柔らかく出ると、様々なそういうコンセプトを実現するための研究が、合目的的にやっているわけではないんだけれども、そういうところに結び付くかもしれないような研究が進んでいくというところがあるわけです。だから、この戦略的というのも、将来の姿をどういう形で見せるかということがやっぱり重要になると思います。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。はい。

【西尾部会長代理】
 今お二人の委員の方々がおっしゃられたことを私も危惧しています。前にもお話ししたことがありますが、過去のCRESTにおいて一番成功したのは岸本元大阪大学総長のCRESTだと言われています。岸本先生は、すぐに役立つを考えないで、とにかく真髄を極めた基礎研究をきっちりしていけば自然と応用につながっていく、という考えのもとで領域設計をなさいました。それで、山中先生のiPS細胞の初期の段階の研究も岸本先生のCRESTでなされたという経緯があります。
 私の今までの経験で、記載されている社会科学、人文科学の専門家というときに、具体的にどういう方が加わられるかということが非常に重要だと考えております。えてして、いわゆる市場調査、この研究をやればどれだけの市場が出てきますかというようなことの調査になってしまうと、これは非常に近視眼的になってしまいます。結果として、戦略基礎研究としては、先ほど来議論になっています、今後の対応スケールを非常に短期間のものに見てしまう可能性があります。戦略基礎研究では、長期的視野で大きなイノベーションを起こしていかなければならないということが一方ではあると思います。そのような観点から注意深く考えるべきだと思います。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。どうぞ。

【土井委員】
 お3人の委員の御意見と似ているのですけれども、やはり4ページのSTEP3に書かれている書かれ方は非常に気になるところであります。まず、出口を見据えた研究という言い方をしたときに、ある技術があって、それを出口に持っていこうというものと、ニーズに合わせてどういうふうに考えるのかというのと、2通りあると思うのです。この中の書き方だと、ニーズの方に関しましては、医療従事者のニーズを聞きなさいというふうに書かれていて、それはAMEDの方でやります。
 シーズがあって、それを出口に持っていく方は、社会科学・人文科学の人たちとやりとりをしなさいというふうに書かれているように読めてしまうのですが、それは今御指摘があったように、必ずしもそうではないと思うんです。特に医療従事者というふうに限定されたときに、その方が広い視野で考えてくださっていればいいんですけれども、そうではない場合は非常に狭いところに、先ほども御指摘がありましたように落ち着いてしまうというと、それはニーズではなくてシーズの延長になっているという可能性もあるわけです。
 そういうふうにならないように考えているんだというところが、どうも表れていないのではないかというのを少し危惧をしております。特に医療のところに関しては、アンメットメディカルニーズと書いていただいていますけれども、でも、これからやはり重要なのは予防医学とか、そういうところでありまして、そのあたりをどうするかというのを、それこそ社会科学、人文科学の方たちも皆さんに入っていただいて、どういう日常生活のデザインをしていくかというところ、そこを考えていかないといけないと思うので、ちょっとこの書き方だと、それが表れていないのではないかなというところを危惧します。
 あともう一点なんですが、同じページの3番の留意事項というところです。8年たったら民間企業と共同研究してやりなさいと。これは気持ちは分かりますし、多分財務省からそういうのをきちんとやりなさいという指導とかが入っているのかもしれないんですが。いや、もちろん、それを目指していくというところは大事だとは思うのですが、必ずしも成功する話ばかりではないですね。
 この戦略的基礎研究分野でも全部成功するものしか許されないとなってしまうと、大きな萌芽を育てることができなくなってしまうので、もちろん、これを目指すのではありますが、次のただし書きにも少し書いてありますけれども、そうじゃないところもエンハンスするんだよと。もう少し、一番最初の段落にそのニュアンスがないと、この段落だけ見て費えてしまうという形になるのを非常に危惧します。以上です。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。はい、どうぞ。

【岩渕基礎研究推進室長】
 4ページの書き方ですが、これは事務局の作文技術の不足でに申し訳ございません。4ページの一番上のところの医療従事者云々の部分の2つ目の「このため、文部科学省は」以下についてです。文部科学省は、JST及びAMEDの協力を得て、「社会科学・人文科学の専門家」の知見を活用しつつ、「注目すべき研究動向に関する研究者」、「産業界やベンチャーキャピタルなどの新たな市場の開拓等に知見を有する識者」、「公共ニーズに関する知見を有する識者」と並んで、「医療従事者」などの参画をも得たワークショップも開催するということになっています。このように、ニーズを有する側の方としては、人文社会系の専門家を含めていろいろな方を例示したつもりですが、その書き方が若干分かりにくかったと思います。
 また、「出口を見据えた研究」というコンセプトについては、去年の「戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会」の報告書の方では書いたのですが、ここではそこがきちんと説明されていないので分かりにくいようです。「出口を見据えた研究」というのは、まずシーズがあって、そのシーズをニーズの側に結び付けていくというようなタイプの研究です。違う形のものとして、「出口から見た研究」というコンセプトもあり、「出口から見た研究」は、まず特定の課題があって、その課題を解くためにいろいろな研究、技術開発を行っていくというものです。
 この部会で議論する戦略的基礎研究については、「出口から見た研究」を行うのではなくて、「出口を見据えた研究」のこと、つまり、シーズがまずあって、それを育てる研究を行うというコンセプトのものを全体として書いたつもりですが、そこが十分伝わらない作文になっているようで、そこは反省しております。
 また、4ページの下のところの8年間で共同研究に結び付くという部分ですが、ここも少し作文技術が不足しているようです。一応、想いとしては、研究推進によって一定の研究が実用化に向けた民間企業との共同研究に結び付く、という中の「一定の」というところに込めたつもりではあったのですが、確かにその部分が分かりにくく、全ての成果が共同研究に結び付かなければ失敗であるかのような印象を与えているとすれば本意ではありません。その辺の作文については工夫をしたいと思います。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。ほかには、御意見いかがですか。はい、どうぞ。

【柳川臨時委員】
 今まで何人かの方がおっしゃったことに対する補足のようなコメントですけれども、御指摘の点、とても重要なことだと思います。恐らくかなり書きぶりの問題だと思うので、その点、社会科学者から見た、どんなふうな書きぶりなら、もう少し幅の広がりが出るだろうかということの単純な例示なんですけれども。
 まず、4ページのSTEP3の表題のところで、社会的・経済的価値の創造というのが出てきます。これ科学的価値というのは、皆さん、余り問題なく受け入れられると思うんですけれども、経済的価値といった途端に価値がお金という感覚がどうしても非常に強くなってしまって、市場でどのくらいの金額の産業が出てくるのかというようなところに、どうしても狭い意味でとらわれがちなんだと思うんです。おそらく事務局の方が書かれていたここでの社会的・経済的価値というのは、もう少し大きなコンセプトの話を書いていたと思うので、これは価値という言葉の日本語の意味が非常に難しいということの1つの表れなんだと思うんです。
 ですから、余り価値ということにこだわらなくて、少し変えていただいたらいいのではないかと。例えばですけれども、社会的・経済的意義とか、そういうことでもポイントは十分に伝わると思うので、多少価値と経済的がつながると、どうも少し誤解を生むという気がいたします。なので、少しそこを文章を考えていただければなと。
 もう一つは、皆さんおっしゃったことなんですけれども、そういう意味での社会的・経済的影響というときには、1つはお金じゃないということと、もう一つは、現状のところで判断するのではなくて、もう少し経済・社会がそれによって大きく変わっていったときにどんな影響が出るのかというところも、少しフォワードルッキングな形で見て評価をしましょうということだと思うんです。
 そのときにこの影響の推量というところで、多分その言葉、その意味を表現されているんだと思うんですけれども、そこともう少し広げていただいて、単なる推量ではなくて、ある程度将来を見据えた分析を通じた評価とか、余りいい言葉を思いつかないんですけれども、何かそこのところでちょっと未来思考的に、これから起こり得ることを社会人文科学者がある程度将来の予測を踏まえた調査なり、判断をした上で、影響の推量をするんだというあたりを付け加えていただくと、大分ここで書かれている意味内容が大分正しく伝わるかなと思います。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。どうぞ。

【有信委員】
 そこのところはちょっと異論があります。やはり価値という言葉をどう見るかという議論をきちんとやる必要があると思うんです。単純にお金に換算できる価値だけではなくて、何年か前から盛んに言われているのはQOLということです。クオリティー・オブ・ライフという生きる質、生活の質のようなものが価値だ、それを目指すべきだという議論もやられているわけですね。
 ですから、単純に価値を昔の概念に押し込めないような意味の展開も、やっぱりよりやわらかい人文的なものも必要だというのも入ります。今の御意見は非常によく分かるんだけれども、ちょっとそこのところはそう思うんですけれど。

【柳川臨時委員】
 済みません、勉強不足で、そういう議論が価値に関して議論されているのであれば、それを踏まえて、むしろこの価値を残した上で、今おっしゃったようなことを付け加えていただくことに私は大賛成でございます。

【大垣部会長】
 はい、ありがとうございます。ほかには特にないでしょうか。よろしいですか。
 どうもありがとうございました。皆様の意見は大体同じようなことに関して、個別の文章の表現に関する御指摘があったので、今の御意見をまとめて文章にきちんと表せればよろしいように見えますが、改めて整理をさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、今の審議内容を踏まえまして事務局と相談しながら、戦略目標等策定指針(案)を修正しまして、委員の皆様に修正(案)をお送りし、改めて御意見を伺いたいと思います。なお、確定した戦略目標等策定指針(案)を基に、文部科学省において速やかに平成28年度の戦略目標等の策定を進めていただく必要がありますので、修正案の最終的な確定は部会長に一任いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

【大垣部会長】
 ありがとうございます。ちょっと一言、言わせてください。出口を見据えた研究というのが、この段階だと非常に分かりにくくなっていると思います、前の議論で。今の話を整理すると、将来を見据えた研究というような雰囲気の意味なんです。その辺も含めて少し整理をしたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、次の議題に入ります。続いて議題2ですが、戦略目標及び研究開発目標の評価に向けた検討について、事務局から説明をお願いします。

【岩渕基礎研究推進室長】
 資料2をごらんいただければと思います。「戦略目標及び研究開発目標の評価に向けた検討について(案)」というものです。資料2の2枚目の横長の絵、戦略目標等の策定に係る政策マネジメントサイクル、まずごらんいただけますでしょうか。戦略目標等策定指針をここまで議論してまいりました。これが一番左上に書いてあるところです。これを今まさに審議をして、この策定指針が定まりますと、それを基に文部科学省が戦略目標を策定するというプロセスになっていくわけです。
 その後、ファンディングエージェンシーに目標が伝わりますと、そこで具体的な研究領域が設定され、研究課題の応募がされ、研究が実際に実施されるということになっていくのが左下の方です。その上で、実際に研究が行われますと、研究の評価という右側で必要になってくるわけです。これまで、この戦略的な基礎研究に関する評価は、研究課題ごとの評価、あるいは研究領域の評価ということの中で行ってきたわけです。
 言い換えれば、戦略目標が達成されたかどうかということを分離して議論をするということはしてこなかったわけです。しかし、今回、戦略目標の策定指針をこのように作りましたので、戦略目標自体が達成されたのかどうか、あるいはその評価を通じて戦略目標の策定指針というものがそもそも妥当なものであるのかどうかも議論する必要があるということで、右側に戦略目標の評価と、戦略的基礎研究部会というプロセスを書きました。
 これまでなかったプロセスですけれども、この戦略目標の評価という議論をこの部会でしたいと考えておりまして、そういう観点で資料2を用意させていただいたわけです。
 資料2の1枚目に戻りまして、戦略目標の評価に向けた検討について(案)ですが、今後、戦略目標策定指針の改定に係る検討をこの部会で毎年行っていくことを考えているわけですが、この策定指針に基づいて行われた目標の策定過程の評価のみならず、実際に戦略目標の下で構築された研究体制や研究の成果も含めて、戦略目標自体の妥当性についても十分に評価を行う必要があると考えております。
 こうした戦略目標の策定、戦略自体の妥当性を評価する方法についても検討するために、今後この部会においてヒアリング等を実施し、戦略目標の評価の指針を策定すべきではないかと提案しております。戦略目標の評価の指針というものは今までなかったもので、これから新しく議論を始めることですので、委員の皆様にもそのバックグラウンドとなる情報を御提供しなければならないと思っております。
 したがいまして、事務局の案といたしましては、本年内をめどに、今実際に研究課題や研究領域に対してどのような評価が行われているのかについて、ファンディングエージェンシーであるJST等からヒアリングを行うことを想定しております。
 また、JSTの戦略的基礎研究に今まで関与されてきた研究者の方、特に領域総括のような形で、研究領域全般についての運営に携わってこられたような研究者の方に対するヒアリングを行ってはどうかと考えております。また、諸外国において研究開発プログラム、こうした戦略的基礎研究といったフェーズのプログラムについて、どのような評価の取組を行っているのかということをヒアリングしてはどうかと考えております。
 こうした内外の情報を十分に把握した上で、来年、戦略目標の評価の指針を策定してはどうかと提案させていただきたいと思います。以上です。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。では、今説明のありました戦略目標及び研究開発目標の評価に向けた検討についてに関しまして、御質問、御意見があれば。特にあればということでお願いしたいと思いますが。

【有信委員】
 特にあるんです。済みません、いつも文句を言って申し訳ないんだけれども、戦略目標の評価という言葉が物すごく引っ掛かるんです。結果評価であるならば、これは分かるんだけれども、やっぱり必要なのは戦略目標のふだんの見直しで、そのふだんの見直しのための評価という視点であるんだったら、それは分かるんだけれども、戦略目標の評価というふうに言ってしまうと、この目標そのものが妥当であったか、妥当でなかったかということになってしまう。
 もちろん、見直すからには、ある部分の妥当性等々も評価をしなければいけないんだけれども、そこのところを単純に従来の評価と同じ目線で見てしまうと、ちょっと違和感があるような気がするので、注意を頂けると。もちろん、評価という言葉を使っても構わないんだけれども、それはあくまで中期的な計画、あるいは長期的な計画を常に見直さなければいけないという視点での評価のような気がするので、御検討を頂ければと思います。

【岩渕基礎研究推進室長】
 おっしゃる点、もっともでございます。実際に作る文書のタイトルをどうするかというのはよく考えたいと思います。議論の前半であった目標の策定指針に基づいて目標を決めて、その成果が出るのは8年後なわけですが、8年は何も評価をしないのかというと、そうではありません。今後、毎年目標を作る上で参考になる知見を得ようと、フィードバックをする観点から、過去、この策定指針に基づいて作られたわけではない目標に基づいてどんな研究が行われたかについてもフォローアップをするということになるかと思います。それは確かに目標の評価と若干違う位置づけだと思いますので、そこが明確になるようにうまく表現する必要があると認識いたしました。

【大垣部会長】
 西尾委員。

【西尾部会長代理】
 ここの戦略目標の評価ということに関してお伺いします。研究領域等の評価というのはJSTでも行われていますので、戦略目標の評価ということは、先ほど来説明いただいているSTEP1の戦略目標を立てるときのプロセスが妥当であったのかというところまで遡った評価になるのでしょうか。
 具体的な戦略目標が妥当であったかということなのか、戦略目標の立て方そのものが、もう一度考え直す必要があるのではないかというところまで戻るのか、そこら辺が不明確ですのでお伺いします。

【岩渕基礎研究推進室長】
 両方あると思っています。目標を達成されたかどうかということは、実は研究領域の評価とかなり似通った部分があります。しかし、戦略目標と研究領域はイコールではないので、目標が達成されたかどうかということは改めて検討する必要がある、この部分は研究領域評価を少し別の観点からチェックするという評価になるかと思います。
 一方で、目標の策定のプロセス自身の評価は、これは研究領域の評価には全く出てこない観点ですので、これはこの部会で目標評価としてやらないといけない。
 2つありますけれども、一方は研究領域評価に比較的近しいもの、一方は、全く独立のものというふうに考えています。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。では、簡潔にお願いします。

【竹山臨時委員】
 具体的なこととしてお聞きします。例えばJSTの中でCRESTとして立ち上げる領域を決めるときには、様々な領域案が出され、評価後に順番がつけられ、さらにそこから戦略目標に合ったものを上位から選ぶというプロセスがされているかと思います。ここでもそのような具体的なことが出されるのでしょうか。

【岩渕基礎研究推進室長】
 それはプロセスの話と近いものがあると思うのですが、文部科学省が決めた目標に書いたことが仮にまだ達成されていないとすれば、それはどこに原因があるのか。その中には、領域の設定に何か不具合があったということかもしれませんし、ほかの要因もあるかもしれません。全体としてそのプロセスを眺めてみるということになるかと思います。

【大垣部会長】
 よろしいでしょうか。はい。

【波多野臨時委員】
  戦略目標のフレキシブルな見直し、特に世界の動きが速い中、出口も変化もありますので重要と思います。が、「評価」というのは現実的に難しいかなと思います。評価の指針を十分に検討しないと、形式的なものになるリスクがあると思います。フィードバックを何に、どのようにして行っていくか、その基準、どの程度の期間で行うか、また科学技術政策そのものにも関わってくることだと思います。
 これは、毎年実施というのは、毎年、例えば領域の目標を評価する、ということではないですよね?【岩渕基礎研究推進室長】
 将来的には、これは毎年目標を立てて、8年後になると成果が表れて、毎年目標が立ちますから、毎年評価すると単純に書いてあるわけです。その8年後までの間で言えば、目標の策定指針自体は毎年この部会で改定しますから、策定指針を毎年改定する際に、過去の目標がどう達成されたかを議論するという意味では、毎年、という意味です。

【波多野臨時委員】
 分かりました。

【大垣部会長】
 はい、ありがとうございました。それでは、次回以降の審議では、平成28年度の戦略目標等の策定状況などに関する文部科学省の報告や、戦略目標及び研究開発目標策定過程等に対する評価方法などについて、審議を進めたいと思います。今の御意見がまた次の議論の材料になるということで、よろしいでしょうか。
 それでは、続いて3番目の議題ですが、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)について審議を行いたいと思います。
 まず、事務局より前回の議論を踏まえて改定された論点案について説明を頂き、併せて今年の10月に開催されるWPI国際ワークショップの概要について紹介を頂きます。その後、前回の審議で委員からWPI拠点の現況をヒアリングした上で審議を行うべきとの意見があったことを受け、東北大学の伊藤理事より、東北大学のWPI拠点であるAIMRの持続・発展に向けたポスト機関の取組について御説明を頂きます。
 では、まず事務局から説明をお願いいたします。

【岩渕基礎研究推進室長】
 それでは、資料3‐1と3‐2に基づいて御説明いたします。資料3‐1です。1ページと少しの文章ですけれども、「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に関する論点(案)」ということで、前回の部会にもこの論点(案)の基になる文章を配らせていただきました。前回の部会で提起された議論もここに加筆し、改めて論点(案)として提出させていただきました。
 論点は2つです。論点の1つ目ですけれども、新規拠点公募の必要性及びその方針についてということで、前回掲げさせていただきました。このWPIプログラム、どういう成果を上げているのか、その成果の客観的評価を踏まえた上で新規拠点公募を行う必要があるという論点です。この辺は前回と余り変わりがないところです。
 論点の2つ目です。補助金終了拠点の持続・発展も含めたプログラム全体としての成果の定着についてということで、この論点については、前回大分御議論をいただいたところです。前回までの復習ということで4つ丸を書かせていただきました。論点としてこんな議論があったということで、1つ目の丸ですが、各拠点の持続は原則ホスト機関の役割であるけれども、プログラム全体としてのブランドを持続・発展するために、国としてもフォローアップする必要があるのか。もし必要があるとするならば、どのような観点から行うべきかといった論点。
 2つ目の丸ですけれども、補助金終了拠点が確実に持続されるために、ホスト機関がどのような支援を行ったか評価する必要があるのではないかというような論点。そして、国としてのフォローアップとして、制度的なものとか予算的なものがありますけれども、もし必要とすれば、どのような支援があるのかといったこと。
 最後の丸ですが、これも、今、部会長から御指摘がありましたが、拠点やホスト機関の実際の状況をきちんと把握した上で議論を深めるべきと。こうした論点が前回まであったということです。
 今日、この後、ホスト機関の一つである東北大学のヒアリングもあります。そのほか、資料3‐2がございます。こうした今後のプログラム展開を考える上で、諸外国では拠点に関する施策がどういうふうに行われているのかということを十分に把握した上で、文部科学省で政策立案する必要があるだろうという観点から、資料3‐2にございますけれども、Research Excellence Initiativeに関するWPI国際ワークショップの開催を予定しております。
 WPIプログラムは日本学術振興会に審査評価業務を委託して行っておりますので、日本学術振興会の主催ということで今年の10月に予定しているワークショップです。
 目的は、WPIを含む主要国の研究拠点形成施策に関するノウハウを共有し、WPIを含むそうした施策の将来計画について議論をするということです。Research Excellence Initiative、REIという施策については、OECDでレポートが出ております。このレポートによりますと、「大規模かつ長期的な予算を研究組織に集中的に助成することにより、優れた研究成果を創出するための国際的研究ハブを構築することを目的とした施策」というふうに定義されています。WPIはまさにこういうものに含まれると考えます。
 諸外国においては、例えばドイツにはエクセレンス・イニシアチブというものがあります。これは、このOECDのレポートにグッドプラクティスと書いてある施策で、卓越した研究拠点の形成、ドイツの大学の全体的な質の向上を目的として2006年に開始されたプログラムです。拠点支援のメニューとしては丸1から丸3といったものがあります。
 このワークショップでは、諸外国のこうした施策の担当者、フランス、ドイツ、カナダ等のプログラムの担当者をお呼びします。このワークショップの結果などについては、この部会にも御報告し、議論のお役に立てていただこうかなと思っておりますので、御紹介いたしました。以上です。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 では、続きまして、伊藤理事から御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【伊藤東北大学理事】
 東北大学の研究担当理事の伊藤でございます。今日はこのような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 まず初めに、私のことを一、二分だけ紹介をさせていただいて、その後で現在の東北大学の考え方とAIMRについての将来構想等についてお話をさせていただきたいと思います。私のバックグラウンドは医学でありまして、腎臓、高血圧、内分泌を専門にしております。私は1979年に東北大学を卒業した後に、研修を終わって大学に2年後に戻ってまいりました。そうしましたら、私の師事しておりました阿部圭志先生に、来年君はアメリカに行きなさいと。次の年からアメリカに行きまして、2年半ほど研究をして、日本に帰って来ました。
 そうしましたところ、デトロイトのヘンリー・フォード病院から、是非またスタッフとして戻ってきてくれということで、2年半後にまたデトロイトに行きました。そこでは、スタッフとしてRO‐1グラントとか、プログラム・プロジェクト・グラントを取って、私自身の研究室を作り上げて、七、八人ぐらいのスタッフを抱えやっておりました。
 研究室は非常に順調に運営されておりまして、私のトレーニングした中には、アメリカの内科の教授になった者もおります。そういうことで大変活発な研究活動をしておりましたけれども、8年後に、阿部圭志先生から帰ってこいと言われて、一応そのラボにあった研究費も返せるもの、ラボに置けるものは全部ラボに置いて、スタッフも全部置いて日本に帰ってまいりまして、現在に至っております。
 1995年に帰ってきましたので、これまでの研究生活の半分以上はアメリカでというのが私のキャリアでございます。日本に戻ってからは、いろいろと大学の運営にも関わってきましたが、3年ほど前に里見総長に、君の今までの経歴と経験を生かして東北大学の研究を活性化してくれ、組織改革も含めてやってくれということで、研究担当理事を拝命いたしまして、約3年間いろいろと研究面での大学改革をやらせていただいてまいりました。
 現在、東北大学は様々な改革をしようとしております。WPIが目指すのと同様に、世界に冠たる研究大学になるために様々な改革をやってきております。特に意識改革、組織改革、特に壁を破るための組織を作り上げることに力をいれております。それから、もう一つは、常に競争的環境であって、研究者が世界最高の研究に自らチャレンジする場を作るということです。同時に、こんなことを言って申し訳ありませんが、大学は研究だけではございません。教育とか、社会貢献があります。
したがって、教員生活の全期間を最先端研究の場で世界と戦うというのでないような人もいますので、その人たちはその期間中に自分で能力開発をして、教育とか社会貢献に全力を注ぎ組織の活力となる、そういうことにモチベーションを与えられる評価、それから運営システムを作ろうということで、各所と話をしながら様々な仕組みを作って現在までやってきております。
 そのような中で、AIMRについてお話をさせていただきたいと思います。1ページをめくっていただきまして、本日のメッセージというところがございます。端的に言いますと、東北大学は国と約束したことを誠実に全部果たしてやってきております。そして、東北大学はAIMRを東北大学の宝として育てて、そして、これをずっと維持します。AIMRを核として大学を牽引する力にし、組織システムを変えることも含めてやってきております。
 さらに、AIMRだけではなくて、AIMRのようなすばらしい研究の組織を作ろうということで、高等研究機構を新たに設置し、ここにAIMRを置き大学として支援することはもとより、他の領域、生命とか社会システムなど、そういう領域でもAIMRのような研究組織を作ろうということで総長と話をしました。少なくとも2つ、3つは作らなきゃ駄目だというのが総長の考えでございます。
 それから、もう一つは、国際的に、例えば米国のように非常に厳しい競争社会の中でやられている研究に対して、日本がどのようにして互角に対峙していくか、互角に渡り合っていくかということを考えたときに、社会のシステムの違いを考える必要があります。先生方御存じのように、習慣も、慣習も、社会システムも大きく違うところがございます。予算規模も違う。そういう環境である日本の国としては、やはり戦略的にWPIのような非常に強い組織を作って、それを育て上げると同時に、その組織が自ら強くなっていくような、ある意味ではエリート集団を作って戦っていくということが恐らく必要ではないかなと考えております。
 そうであれば、国の方でも予算とか制度的なもの、様々な面から、このように高い成果をあげて出来上がってきたWPI拠点をもっと強くするにはどうするのかという観点でお考えいただきたいということでございます。
 特に日本のVisibilityをきちんと保つということと、また、後でお話しいたしますが、真の意味での頭脳循環のハブとなる拠点を維持することが重要です。WPI拠点は流動性を保つことが特色でございますので、人が入れ代わり、テーマが入れ替わっても、常に新しいものを創造していくチャレンジの場ということでも、優秀な人たちがチャレンジする場ということでも、非常に重要なものではないかと、私は個人的に思っております。
 その下の東北大学の宝、AIMRというところでございます。このAIMRは材料科学を基本とした研究者たちの集まりであります。東北大学は大変材料科学が強く、世界6位ということでございます。400名を超える材料科学研究者が在籍し、本多光太郎先生に端を発して、現在まで、多様な研究者が優れた材料の研究を実施しておりまして、金研・多元研、工学部等に非常に厚みのある研究グループがございます。
 そのような厚みのある研究グループから、さらに先進的な研究を発展させて世界最高レベルに持っていくことを目指し、WPIプログラムが公募された折、東北大学からAIMRを応募いたしまして採択されました。そしてAIMRを創設時から大学の本部の正式な部局であると位置づけておりまして、全てそのような運営がなされております。
 WPIプログラム終了に向けて、本学でも自分たちでAIMRの評価をやりました。科学的にはどうか、ネイチャー・サイエンスを含めてとてもすばらしい業績を上げている、国際ブランド力も上がってきている。さらに、システム改革、教員・事務職員の意識改革がなされ、AIMRでは事務でも英語をしゃべり、それだけではなく積極的に自分たちから制度改革に関わっていく、研究者と関わっていく雰囲気が醸成されていること。又、研究者たちの交流が非常にすばらしい。上と下の差別なく、みんなでコーヒーを飲みながらディスカッションして、新しいアイデアが生まれやすい環境になってきているわけでございます。
 もちろん、教員へのインセンティブにもなります。給料とか研究費もさることながら、研究環境という意味で、研究者にとってはとても大きな魅力を与えています。外部資金も約1.5倍から2倍ぐらいでしょうか、創設当時から現在まで伸びてきているということもございますし、新たな研究の挑戦も行っているということもございます。
 これは我々独自の評価でございますが、WPIのプログラムの委員会もWorld Premier Statusに東北大学は到達したと評価を受けております。第一級の研究所として、世界に認知されたということです。海外の優れた研究大学とも共同研究を行い質の高い研究成果を上げたり、さらに数学と材料科学の連携を短期間に進展させました。初め、小谷先生がこのアイデアをプロポーザルしたときには、プログラム委員会では少し懐疑的な意見もありましたけれども、その結果は、逆に3年間によくここまでやったというすばらしい成果を上げていると評価されました。それから、国際水準の研究環境・制度改革のため、ダブルアポイントメント等々、今まで様々な計画を進めてきております。
 そして、次の東北大学のアクションということでございます。ごらんのように、本学はAIMRを本当に大切にしております。当初から正式部局、そして総長の里見ビジョンに本学のワールドクラスへの飛躍の要としてAIMRを明記してございます。
 そして、さらに先ほど言いましたように、AIMRのノウハウを全領域に拡大しようということでございます。研究専念、人事や運営についての機動性、機構長のトップダウンの運営。年俸制・二重所属も既に可能にして人材確保に努めて、すばらしい人たちが海外から集結することで外国人研究者率の50%を維持。そして、運営費・外部資金・間接経費を本部とのやりとりの中で柔軟に運用するなど、AIMRで開発された極めて柔軟、フレキシビリティーに富んだ機動性のある組織を高等研究機構で展開しようということになっております。
 さらに、当学におきましてはAIMRに予算とテニュア職を10措置しております。その中の幾つかの職は既に活用して研究者が赴任して来て活躍しています。ダーラム大学の正教授から東北大学に異動したケースもございます。
 さて、高等研究機構についてです。これは、先に説明しましたようにAIMRのノウハウを他領域に拡大するということでございます。右側の方のオレンジのところにAIMRがあったわけですけれども、これは紫のOASの方にもう既に移行しました。AIMRの事務部門は、WPI事業終了後は、OASのリサーチレセプションと国際対応事務部門になる予定でございます。
 さらに、この真ん中の知のフォーラムですが、これは滞在型の訪問研究所でございまして、既に建物も造っております。そこにノーベル賞を含めたたくさんの海外のすばらしい研究者に滞在してもらって学生たちと研究者とインタラクションしながらトップサイエンスを行う、さらにこの場がまた新たな融合研究の始まりの場になるという位置づけます。
 そして、学際科学フロンティア研究所と右下の方にありますが、これは国際公募で若手を募集して、AIMRをはじめとするOASと協力しながら優秀な人材を育てようと総長裁量経費での取組を実現しているところでございます。
 もちろん、研究推進本部が全体を統括して、システムを含めて様々なサポートをするということで現在に至っているわけでございます。現在はライフサイエンスとか、幾つかの研究グループから高等研究機構で研究を展開したいと提案があるので、私がいろいろ注文を付けているところでございます。そのうち、何とかこれらの提案を実現する組織を高等研究機構に作るということを目標にしているところでございます。
 さて、AIMRですけれども、我々東北大学としては覚悟を持って、自分たちの運営資金でできる限りのことはやるつもりです。スペースも用意していますし、コアとなる部分、少なくともプリンシパル・インベスティゲーターとか、研究支援体制とか、事務は東北大学できちんと面倒を見るつもりです。当然研究費が必要ですが、これは研究者が自分で稼いでくるのが当たり前ということでございます。稼いでこれないような研究者はOASに入っていただかなくても結構ですというぐらいつもりです。いずれにしても、そういうフィロソフィーでございます。
 また、一方、大学だけではなかなか維持できないということがございます。1つは、WPI拠点として材料科学社会で築いたVisibilityの維持です。これは日本の国の支援があり、WPIというお墨付きがあったということがあり効果があったと思います。そういうところはきちんと維持していただくことが必要ではないかと思います。
 もう一つは、WPIが開発したノウハウを国全体に波及し、さらに拠点自身も伸びていくということが重要ではないかと思っております。これはなかなか大学だけではできない。
 それから、世界トップクラスの研究者、先ほども言いましたよう海外研究者のジョイントアポイントメント等様々な工夫をしながらでございますけれども、全てのリソースを大学が投与できるというところまではなかなか行かないということがあります。ということで、その点はまだ少しハードであるかと思います。
 それから、国際研究機関とのパートナーシップという点について、AIMRはジョイントラボを設置し共同研究の枠組みを作りました。いろいろな御支援を頂きながらやっていまして、大学自体も、提携大学といろいろな形でコミットメントしながら、お互いにお金や知恵を出しながらやっていますけれども、やはりそこにも限りがあるということがございます。
 AIMRがあるということは、研究者にとっては本当にいいこと、新しいことをやっているというモメンタムの維持という面でも、非常に重要になります。
 参考までですが、5月28日に示された科学技術イノベーション総合戦略2015(案)では、世界トップレベル研究拠点の形成等の促進、国内外から第一線の研究者を引き付ける拠点を形成するWPIについて、世界的な知名度の維持・向上を図るとともに、国際的な頭脳循環の中核となる研究拠点の着実な形成、展開に取り組むべきであるという案が出ております。
 ということで、私のほうからは東北大学の話が中心でございましたが、一研究者としてWPIを見たときには、やっぱりWPI拠点のアイデンティティーを保つ仕組みはあった方がいいのではないかと思っております。そして、冒頭にも言いましたように、システムの違う日本がアメリカとかヨーロッパ――特にアメリカが大きく違うのですが、そういう国と本当に互角に渡り合っていって、人類貢献のためのサイエンスをプロモーションするためには、ある程度の選択と集中ということも必要でしょうし、拠点が大きくなるための予算的措置とか、制度的措置ということはとても重要ではないかと、私自身は思っております。
 ここに掲げたような、様々な案が具体的にはあろうかと思います。これは私がここでお話しすべきことではなくて、皆さんにきちんと議論いただき、考えていただくということが大切なことだと思います。
 最後になりましたけれども、東北大学は当初約束したことは全て誠実に果たしてやってきており、さらにそれをもっともっと有効利用というか、発展させるために覚悟を持っております。このようにホスト機関が覚悟を持って維持するWPI拠点について、様々な形でこの拠点を強くする、または拠点が自ら強くなるような国からの制度的予算的な措置等を含めて、本部会で検討いただければ大変ありがたく存じます。以上でございます。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。たまたま機構長の小谷委員がいらっしゃるので、もしも何か発言が。

【小谷臨時委員】
 この件では発言はしないつもりなので、WPIのことについては何も申し上げません。第1回目の委員会で申し上げたことを繰り返しますと、私は女性研究者育成事業をリーダーとしてやってきて、東北大学としては大変にいい制度を作ったと思っています。補助期間は大学のプログラムではなかったので、サイエンスエンジェルを全国に派遣する等、国の力になるように活用することができました。補助期間終了した後も、総長の配慮により東北大学ではその制度を続けていますが、大学の予算で実施する以上、大学に貢献するという形でしか運営できないということを非常に残念だと思っています。
 これまで様々なシステム改革が文科省の支援によって行われ、日本の国力のシーズになるようなものが幾つかできましたので、今度はそれをどうやって国の力にするかというご議論いただければいいと思っております。以上です。

【大垣部会長】
 突然で失礼しました。ありがとうございました。
 それでは、今説明のありましたWPIプログラムについて審議を行いたいと思います。御質問、御意見のある方はどうぞ。はい、どうぞ。

【有信委員】
 質問になるんですけれども、WPIのこの組織そのものが優れた成果を上げたということに関しては何の異論もないんですけれども、組織を大学内組織として内在化した途端に、一応テニュアポストを10用意したとおっしゃっていますけれども、この中での今度は人材育成をどうするかというのがすごく問題になると思います。そうすると、10のテニュアポストを含めて人をどう回していくか。
 もちろんWPIとして目的を明確にして設置されていれば、その中で外部との人の循環ということで、それは勝手に育つ人は育つというレベルでもいいかもしれませんが、大学の組織となった途端に、その中でどう人を育成して、どういうふうにしていくかという部分が問題になる。これはどういうふうに回るようになっているんですか。

【伊藤東北大学理事】
 AIMRは1つの部局ではあるのですけれども、同時に各部局との人事交流が非常に盛んで、ポスドクとか、共同研究する人たちが集まってきています。柔軟性の高い組織で、部局から優れた研究者がやって来て、ここでその研究をさらに発展させ、そしてまた、場合によっては部局にもう一度戻っていくこともあり得るということで、極めて流動的な対策をとっているということです。

【有信委員】
 この中でテニュアトラックみたいな格好の。

【伊藤東北大学理事】
 テニュアトラックのポジションは10付けています、AIMRと部局が協力して選考するテニュアトラック研究者が、一定期間後にはまた別の部局のところに行ったとしてもいいわけで、これは非常に流動的にやろうと思っています。本当に優秀な人を、日本国内でも、海外の若い人でも、AIMRに来て活躍してもらおうとすれば、やはりきちんとした処遇とポジションを用意するということはとても重要なことだと思うのです。
 そういうことで、テニュアトラックのポジションを用意しながら、極めて流動性の高いやり方でやっていこうと我々は考えています。
 

【小谷臨時委員】
 答えていいのかどうか分からないですけれども、東北大学は既に材料科学の研究所が幾つかありましたので、横並びにもう一つ作るということではなくて、それらの研究所と連携し、一番強い部分を大学の戦略に基づいて花を開かせる場所という形でAIMRを恒常化したいと考えています。人事交流等を踏まえて、そういうことが可能な、普通の組織とは違う形での部局を作りたいということでございます。

【伊藤東北大学理事】
 ほかにも、いい研究をしている人がもちろんたくさんいますけれども、それをある一定のプロジェクトなり目標に向かってさらなる発展につなげる場ということです。先ほども言いましたように、現在のAIMRでは、違った分野の人たちが一緒に交流しながら、新しいアイデアが出たり、数学の考えを取り入れて新たな発展がいっぱい出て、大変に活気があります。

【有信委員】
 その辺は分かりました。いや、大学内に内在化したときにどんな形で継続性が保てるか、あるいは、その中でどういう格好でうまくなじんでいけるかというのが気になったものですから。

【伊藤東北大学理事】
 これでよかったでしょうか。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。資料3‐1に論点が2つ出ておりますので、それとの関連でも御意見を頂ければと思いますが。

【鈴木臨時委員】
 よろしいでしょうか。御発表ありがとうございました。最後のサマリーのページにあります、国際オープンラボとして国内外の研究者の参画を可能にという点についてお伺いしたいのですが、この研究者というのは、大学だけではなくて、産業からの研究者も含むという意味合いを持つと理解してよろしいですか。

【伊藤東北大学理事】
 はい。私は、国内外の研究者というのは、国内外、別なフィールドからでもいいですが、いずれにしても研究目的に適う研究については、産業界でもどこでも関係なく入ってきて、研究を思い切りやってもらえばいいと考えています。共同研究なり何なりやってもらえばいいと思っています。

【鈴木臨時委員】
 ありがとうございます。すばらしいと思いますが、その場合に、従来のように1年とか、2年とか、3年とか、産業から大学の方に籍を移さなければいけないようなものではなくて、もう少し流動性の高い、会社で働きながらもそこで研究できるようなものも可能ですか。

【伊藤東北大学理事】
 はい。我々はそういうシステムを作っていますので、それは可能です。

【鈴木臨時委員】
 ありがとうございます。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょう。
 はい、どうぞ、どちらでも。

【竹山臨時委員】
 ここには非常に成功した話が中心に書いてありますが、解決がなかなかできない問題点もおありになったかと思いますが、その点はどうでしょうか。
 
また、当然期間終了後を考えて対策をとっていたかと思います。今回に関して、制度的な援助、金銭的な援助ということが書かれていますが、制度的な援助としては、例えばWPIとしての肩書があればよい話なのでしょうか。お金に関しては、多分一番大きいのは人件費の部分かと思います。人件費に関しては、別途いろいろな話が出ていますが、例えば大学内での間接経費から捻出するやり方も考えられるかと思います。東北大学では外部資金を精力的に取得していらっしゃるようですし、大学としてWPIの機構に対して特別な配慮をすることもあるかと思います。ある程度独立採算ができるめどや、それに加えて大学の取り組みの具体的なお話があればお聞きしたいと思います。
 最後に、先生も選択と集中ということをおっしゃっていましたが、分野を今回少し絞って、もっととんがった研究をさせるのか、このまま全体を維持していくことをお考えなのか、教えていただければと思います。

【伊藤東北大学理事】
 やってきてうまくいかなかったこと、まだ壁が残っているということはあります。まずは、部局とAIMRとの間の関係をどうするかということです。例えば、部局から出てきてAIMRで研究専念するが元の住所が部局にあるという場合には、部局には教育とか、他の業務がいっぱいあります。この人がAIMRに来たときに、部局での仕事をどうするかということは大変な問題です。
 私自身が今実はいろいろな学部、特に私の出身学部である医学部に教育と業務改革しろと言っています。今までの教育と業務の改革をしないことには、うまくいかないので、10ぐらい課題を投げつけています。この前一部返事を持ってきて、ちゃんと推進すると言って帰っていきましたので、少しずつ本気になって改革する雰囲気になっています。ただ、それは非常に大きな問題で、ここはもう少し時間を掛けて是非解決しようと思っています。
 評価の話を一番初めにしました。大学の研究者は研究だけで評価されるということではなくて、教育に対しても評価してやり、社会貢献も評価すると。そのような多様な評価で、本当に世界と戦っていける研究をしている場合には、研究ができるような場を作っておかなきゃいけないです。そこから私みたいに、昔は世界で戦っていたのですけれども、そして今でも頑張っていますが、マネジメント職になったときに、自分の能力を、学部でも発揮できる、それぞれが能力を発揮してやっていけるようなシステムを作るつもりです。

 そのためには、やっぱりある程度のインセンティブのようなものを付けたり、その間の補助をするということはとても重要なことなわけです。総長裁量経費なり、このようなプログラムの中で制度的又は経済的な支援を頂ければ、さらにこういうシステムが活発化していくのではないかと、私は思っております。
 

【竹山臨時委員】
 制度的支援ということも。

【伊藤東北大学理事】
 制度的支援に関しては、WPIとしては、やはりWPIのブランドネームをちゃんと残しておくようなシステムがあるといいですね。この辺は私自身も今後、新たなものを作りながら考えてみなければいけないと思っています。
 お金に関しましては、大学は研究以外に教育とか諸々のこともやっており、間接経費によりある程度のことは差配できます。AIMRに関しましても、ある一定の金額を、組織を維持するだけの金額を投与すると――具体の金額はもうしあげませんが、少なくとも今のサイズの3分の2以上、少なくとも今のPIの数は維持できるような予算を用意しています。
 ただし活力の元であるフェローや研究員を雇うなど若手研究者の維持までは、なかなか難しいので、そのような支援を国でしていただくとありがたいです。
 あとは海外との連携ですね。大学としてはもちろん最大限の努力はしますけれども、ある一定のサポートを頂けると、大学の枠組みを超えて国際的なVisibilityをあげることができます。オープンラボなどの枠組みで国内外と協力しそれを維持しながら、もっと強くしていきたいというふうに思っております。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 西尾委員、どうぞ。

【西尾部会長代理】
 先ほどの制度的支援、予算的支援ということについて確認をいたしたく思います
 例えば総合戦略2015で書かれていることで、世界的な知名度の維持・向上というところが結構大事なことだと思っています。つまり、WPIが国内では広く認知され、高く評価されているけれども、海外の同様の拠点と比べたときに、世界的な視点でWPI拠点に対してどのような評価がなされているのか、ということです。そのことを考えたときに、ここまで日本の中で成功しているプログラムを海外により見える形で、日本の大きな成果として何らかの形でそれをプレゼンスしていくかということに関して、今後、制度的、あるいは予算的なサポートが必要なのではないか、という趣旨のまとめを伊藤先生はなされていると考えてよろしいですね。
 

【伊藤東北大学理事】
 はい、そういうふうな形だと思います。もちろん、大学の中ではやることは一所懸命やります。WPIのような取組を世界に広報し、日本のサイエンスのよさをもっと知ってもらうということが、WPI拠点と海外機関との交流がもっと深くなって、さらにいい研究が出てくるということになるんだと思います。是非そのようなことはやっていただきたい。

【西尾部会長代理】
 ですから、5大学を連携させた上での海外戦略をきっちりと行っていくことに関しては、予算的なサポートが必要である、という御趣旨の発言だということでよろしいですね。

【伊藤東北大学理事】
 はい。それから、先ほど竹山委員のお話で、網羅的にやっているようだと意見いただきましたが、高等研究機構は決して網羅的ではございません。例えばメディカルサイエンス、ライフサイエンスにおいても、その中でも特徴のあるプロジェクトなりチームを作るということになるので、全てをやるというわけではない。とにかくそこで本当に活躍できるようなチームを作るというふうな意味でございます。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 では、宇川委員。

【宇川臨時委員】
 この話は論点をかなり整理した方がいいのではないかと思いまして、私なりの論点整理をやらせていただきたいと思います。10年たった後はホスト機関がWPI拠点は維持することの意味は何かということだと思うんです。本日の東北大学のお話を見ると、研究所をつくってそれを維持するということに関して、多少PIの数は減るかもしれないけれども、二十五、六人のPIの人件費は大学が担保する。
 それから、研究スペース、これも担保する。さらに、研究組織を維持するための事務組織、これも大学が保障します。ですから、その意味で、つくられた研究所を維持・発展させていくための基本的なところは大学が全部面倒を見るとおっしゃっているわけですね。
 問題は、じゃ、それだけで、ここまで育ってきたWPI拠点がこのままでやっていけるのかどうかということです。これはWPIに限らないと思うんですけれども、研究組織というものをつくったときに、そこにおける研究をさらに維持・発展させるためには、国はそれなりにいろいろな施策―研究プログラムとしていろいろな形があると思いますけれども、そういったものを実施してきているわけです。
 ですから、何らかの形で、それは予算的な支援もあるかもしれませんし、あるいはWPIブランドを保障するためのある種のアカデミーみたいなものをつくって、厳しい評価をして質を保証するといったような制度的な支援もあるかもしれませんけれども、何らかの形で国が関与していくということはあっていいことではないかというふうに思うんです。
 特にWPIの場合に特徴だと思うのは、国際的なレベルで、国際的な頭脳循環をやりながら、世界に見える研究をやっていく研究所ということです。その意味で、研究所はいろいろあると思いますけれども、ある種別格の高いレベルの研究所という位置付けをされているわけですから、そこの特徴を生かすためのプログラムというものは考え得るのではないか。
 もう少し詳しい議論が必要だと思いますけれども、そういった考え方で、国としての制度的、あるいは予算的な関与の仕方というものを議論していくべきではないか。その観点からすると、一言で申し上げるとすれば、10年で終わりでそれから後は大学が全てやるんですよということではないのではないかと私自身は思います。これが論点2に関する意見です。
 それから、論点1はほとんど議論されていないわけですけれども、新規拠点候補の必要性云々というところです。これについては、ここまで高い成果を上げてきたプログラム自身がさらにそのプログラムとして発展していくためには、新しい拠点とある種入れ換えていく。そういう中で、現在走っている拠点がさらに申請することができるかどうかというようなことも議論するということも含めて、今後議論していくことが必要ではないかというふうに思います。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、小山委員、お待たせしました。

【小山臨時委員】
 宇川委員とほぼ同じ意見なのですけれども、インターネット資料の3‐2のところに、10月にOECD関係の情報を一応参考にしようという場があると思うのです。お伺いしたいのは、こういった世界的な拠点との比較という視点で見たときに、今回の日本のWPIというのは、どういう優位差があるんだろうかという視点で見られたことがあるのかということです。
 時間が余りないので、細かいやりとりができないと思うんですけれども、今回、東北大学が中心になってやられたこのWPIというのは、一つの例だと思うのです。ほかに拠点が4つあるようですけれども、そういったところの全体像というのも見て、そして秋の他国のWPIの状況も見て、それで日本としてどうあるべきかというのを、その機会にもう一回見直すというやり方もあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【大垣部会長】
 はい。

【岩渕基礎研究推進室長】
 資料3‐2のワークショップについてです。国際的な比較ですが、比較的この分野は新しい分野で、OECDで報告書が出ていますが、これがほとんど初めての国際的な文書でした。その中で、グッドプラクティスという形で世界の主要な施策が紹介されていて、紹介したドイツの施策であるとか、WPIも紹介されています。
 比較優位のようなことまでは、まだ分析はなされていないところです。したがって、このワークショップにおいては、それぞれの施策の特徴、短所、長所、こうしたものを比較する議論をしたいと思っています。成果として御報告をしたいと思っています。

【大垣部会長】
 よろしいですか。ありがとうございました。
 ほかには、いかがでしょうか。

【土井委員】
 前回もこれに関しては意見を述べさせていただいたので、それに関しては変わっていないのですが。少し文科省に教えていただきたいんですけれども、このWPIの論点2のところで、国としてのフォローアップということで、制度的な支援と予算的な支援というふうに書かれています。ここで少し今疑問に思うのは、もともと大学に任せるということで始めたものを、あえてここでわざわざ――制度的な支援という意味では、インテル入っているみたいな、そういう意味でやりますというところは全然問題ないと思うんですが、予算的支援というのをあえてわざわざ出してきているというところの、その意図が少し分からない。
 なぜかと申しますと、大学に関しては、今それぞれの大学が3つのカテゴリーを選びなさいよと言われているわけですね。そういう施策と、一方で、このWPIは、ある意味では先ほどお話があったように、特区として自由にやりなさいと。それは、最初は助けますよと言ってやっている部分なので、そこまで支援したら、ベンチャー的なところは立ち上げは助けたんだから、あとは頑張りなさいよというところでもいいんじゃないかと思うんです。
 何を基本にして、予算を付ける、付けないと考えていらっしゃるのか。全体的な施策の中でのこのWPIの位置づけが少し見えないんです。だから、大学法人格で自分たちの裁量でできるところはやっていいよと言って、このWPIを立ち上げるのを手伝ったというふうなイメージでいたんですけれども、そうではないのであれば、何か方針がもし変わられたところがあるのだったら、少しそれを教えていただきたいなというのが質問です、済みません。

【大垣部会長】
 はい。

【岩渕基礎研究推進室長】
 これは非常に難しい質問、本質的なところですけれども、各大学において優れた拠点を作るというところについては、もともとの事業目的で、そこは達成されてきています。その部分については、各大学が自ら11年目以降も維持していくという原則、これはそのとおりです。
 ただ、昨年、WPIのプログラム委員会で、過去8年間の成果を振り返りますと、予想を上回って非常に良い成果が出てきていると。この拠点の成果を、単に各大学の中の資産としてではなくて、日本全体としてさらに積極的に活用する余地があるのではないかと、プログラム委員会でも議論になりました。そして、国全体としてこの形成された拠点を活用する仕組みがあれば、それに対して支援する価値があるのではないかという観点からここで挙げさせていただいております。
 そういう意味で、8年前、この事業を始めた時点では、そうしたものは特に想定していなかったわけですが、改めてそういうことがあるのかどうか、今、議論をしているということです。

【大垣部会長】
 よろしいですか。

【有信委員】
 論点1に関わる話ですけれども、じゃ、何がWPIの成功であったか。もちろん、個々の研究成果が成功であったことについては誰も異論はない。すばらしい成果が上がっているということであろうと思うんです。私自身が考えるのは、前にも申し上げましたけれども、日本の大学というのは、どうもあっちにもこっちにもお山の大将がいて、結局重要な研究の部分に研究者がそこにどんどん集まってきて、ある種の研究分野のメッカのようなものが形成されるという形にならないんです。
 これは、結局あちこちに分散して、みんなクリティカルマスを割ったような形で研究が進んでいるために、やはり研究成果という意味でどうしても限界がある部分があるんじゃないかとずっと心配しているんです。WPIはそれを打ち破るような形で成功してきているわけです。ですから、個々に出した研究成果ではなくて、このいわばスキームそのものがある意味で重要。拠点を作る。そこに有力な研究者がどんどん集まってきて、さらにいい成果に結び付いていく。こういう循環を生かす仕組みは何とか残したいというか、日本の大学が全てそういう仕組みになっていかないと、本当は困るということだと思っています。
 ですので、WPIをそのまま延長させるという話になると、先ほどの土井委員の説明のように、もともと約束事で決めたものを何でまた予算を付けて延ばすんだという議論も当然出てきますが、やはり、新しい日本の大学の拠点の在り方としてどういう形でこれを発展させていくか、あるいは日本の大学そのものをそういう形に変えていくかという議論をしたらいいんじゃないかというふうに思います。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 はい、どうぞ。

【柳川臨時委員】
 多少財政側寄りの発言になるかと思うんですけれども、やっぱり今御指摘があったように、もともとの約束があったのを、そこと多少違ったような支援をするということに関しては、文科省にかかわらず、国全体としては非常にハードルが高いんだと思うんです。
 やっぱり、こういうのは続けた方がいいと思いますし、ますます続けるどころか発展させた方がいいと個人的には思いますけれども、やっぱり、そういうものを安易には許さないという財政上の事情があるというのも、かなりはっきりしたことであろうかと思いますので、やはり単純にうまくいっているので延長しますというようなロジックではなかなか通用しないという面があると。ですので、今御指摘があったように、少し視点を変えた新しい意義というものをここに載っけないと、外側の人たちに対しての理屈付けはなかなか難しいと思いますので、論点2に関しては、そういうところがきちっとした整理が必要かと思います。
 それから、もう一つの観点からすると、これは論点1にも関わる話で、1の新規拠点の方で募集する場合は、それに対しては10年以降、どういうふうなことを言うのかと。第1回は延長があったんだけれども、第2回は絶対ないよと。これは、なかなかどこまでクレディビリティーがあるかみたいな話になるので、その点も踏まえて、やっぱり単なる延長でないという話にしないと、次の募集のときにも少し面倒なことが起きるだろうと。
 さらに言えば、こういうことを続けていくとすれば、仮にその中で全部は延長しないと、ごく一部だという話にしても、それで新規の募集もするとなると、結局のところここの数が全体としてだんだん広がっていってしまって、必要な予算がどんどん広がってしまうじゃないかというのは、おそらくお金を管理する側の人からは出てくる議論だと思いますので。
 これが最後の全体の規模ということに関わるんだと思いますけれども、総額としては、例えばキャップを設けるとかだったり、何かその手の整理もしておかないと、本当に必要なところに逆にちゃんとお金が回っていかなくなるという懸念がありますので、そのあたりの整理も必要かと思います。

【大垣部会長】
 今の延長という言葉の意味合いなんですけれども、今回、1つ本格的に延長するものと、あとの4つは延長はしないということが決まっているわけです。そのあとの4つの方をどういう形で支援するかということですので。

【柳川臨時委員】
 はい、済みません、私の言葉遣いが、あとの4つに関して。

【大垣部会長】
 はい、どうぞ。

【宇川臨時委員】
 ごく短く。例えば延長という言葉自体にしても、延長とだけ言ってしまいますと、今の拠点がそのままで延長するというような印象を受けてしまいますけれども、それは1つだけですね。ですから、この議論をするときには、やっぱりかなり突っ込んで細かいところまで見ながら議論しなければいけないのではないか。
 私、先ほど割と長々しゃべりましたけれども、申し上げたかったことは、10年でそこから先に大学がやるべきことと、大学がやるべきことはやったとして、その上で、国としての関与が11年目以降全くなくていいのかどうか、そこは2つ区別して議論すべきだというふうに申し上げたかったわけです。私の立場は、11年目以降も、国として関与すべきところというのは幾つかあるのではないかと。そのことはこれから議論していけばいいのではないかと、そういう視点でございます。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。

【西尾部会長代理】
 私も先ほど確認させていただいたのは、そういう観点から発言をさせていただいた次第です。

【伊藤東北大学理事】
 そのとおりです。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。じゃ、手短に。

【鈴木臨時委員】
 WPIって、知っている方は知っているのだと思いますが、私みたいな一般庶民は全然存じ上げませんでした。なので、やはり知名度向上というのは重要だなと思いますし、妄想的になってしまいますけれども、例えば中学校の修学旅行とかのデスティネーションの1つとして見ていただくと、50%の方々がリサーチャーとして日本に来て研究している場所があることを知り、夢と希望につながると思います。

【小谷臨時委員】
 今AIMRではSSHと共同で、高校生が来て外国人と一緒に共同研究を行っています。また、小学生からの科学のアイデアを募集して発表するイベント――これはMANAと一緒にやっています。このように既にWPI拠点同士の連携もやっています。アウトリーチも随分やらせていただいています。

【鈴木臨時委員】
 ありがとうございます。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。それでは、手短にお願いできれば。

【若山臨時委員】
 実は発言しづらいんですけれども、私はちょうど伊藤先生のお立場の後ろを行く立場にございます。九州大学にもWPI拠点、大型のがありますが、少し遅れていますので、今年5年終わったところです。そういう意味で、そういう色を持って発言を聞いていただくとちょっと困るんですけれども。
 まず1つ、自分たちにとってもちょっと厳しめになるかもしれないんですけれども、今回、5拠点のうち1つだけが延長を認められたと。私自身がまだその理由をすとんとよく分かっていないということがあります。それが、先ほどの土井委員の御意見とか、その他の御意見の中で、どうして文部科学省がこのように新たにという、そこに若干の疑問を感じておられるのではないかなと思ったところです。
 しかし、一方で、先日もちょっと言葉足らずで申し上げましたけれども、論点1と似ていて、サイズもさることながら、もちろん制度的支援というのは皆さんと大体同じ考え方ですけれども、既存拠点のホスト機関が全くの新規とは別に、やはり新しいプロポーザルをするチャンスがあるということは1つの方法なんじゃないかと思うんです。そうすると、それはある程度の説得力を持って社会からも受け入れられるのではないかと考えているところです。
 たくさん話すとややこしくなってきますので、ここで失礼いたします。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。ほかにはもうよろしいでしょうか。もしよろしければ少し取りまとめたいと思いますけれども。ありがとうございました。
 それでは、論点1についてでありますが、前回及び本日の審議を踏まえると、これまでのWPIプログラムの成果を踏まえれば、新規拠点公募を行うべきであるということで、皆様のコンセンサスを得られているというふうに――べきであるというと、ちょっと強いですけれども、得られたということでよろしいでしょうか。
 それから、事務局から説明があったとおり、10月にWPIプログラム委員会と国際ワークショップが開催されますので、そこでも新規公募の必要性や、その方針について議論が行われるため、その結果について本部会として報告を受けた上で、来年の夏をめどに結論を得ることとしたいと思います。
 それから、論点2についてであります。様々な御意見がありましたけれども、補助金終了拠点の持続・発展については、日本のVisibilityの向上や頭脳循環のハブとしての機能の発展のために、何らかの形で国が制度的ないしは予算的支援を行うことについて、大方のコンセンサスが得られたというふうに考えます。
 具体的な方策については、論点1と同様、10月のWPIプログラム委員会と国際ワークショップの議論の結果を踏まえて、本部会として結論を得ることとしたいと思います。というまとめでよろしいでしょうか。

【土井委員】
 済みません、予算的なところは必ずしも合意が得られたというふうには、私は今の議論では感じなかったんですけれども。そこは、ちょっとクエスチョンマークがあります。

【有信委員】
 予算的というのは、このまま延長という意味で予算的処置をするというところは、それはなしというのはもう決まっています。

【大垣部会長】
 その意味合いは、宇川委員がうまくまとめていただいたような意味で、次の支援を、国として支援をするということに関して合意を頂いたということでよろしいでしょうか。

【土井委員】
 はい、分かりました。

【大垣部会長】
 よろしいですか。

【土井委員】
 ちょっとこの論点の、この書き方だと分かりにくいですね。

【大垣部会長】
 じゃ、その辺は。どうぞ。

【竹山臨時委員】
 先ほどお話があったみたいに、1機関だけは延長があったということは、それは特例なのかどうかということが疑問になります。それに関してはちゃんとコメントをしておいた方がよいかと思います。

【岩渕基礎研究推進室長】
 それは延長です、はい。

【竹山臨時委員】
 ということは、延長は認めないという話に特例があったということでしょうか。

【岩渕基礎研究推進室長】
 もともと8年前の公募の時点で、特例として5年間に限って補助金の延長をするというスキームを決めておりまして、8年前の原則どおりに行いました。また、それもずっと続くわけではなくて、あくまで15年目までの特例的な延長というスキームです。そのスキームがもともとあって、それを1拠点のみ適用したということになります。

【大垣部会長】
 宇川委員、何か加えるべきことはありますか。いいですか。

【宇川臨時委員】
 結構です。

【大垣部会長】
 よろしいでしょうか。
 ということで、それでは、今のような取りまとめで進めたいと思いますが、ありがとうございました。
 それでは、時間となりましたので、本日は以上で終了とさせていただきたいと思います。大変活発な御議論、ありがとうございました。
 最後に、事務局より競争的研究費改革検討会の議論の紹介と、今後のスケジュールについて説明をお願いいたします。

【岩渕基礎研究推進室長】
 参考資料6に配付しておりますけれども、「競争的研究費改革に関する検討会」というものが、今、文部科学省内で立ち上がって検討を進めており、この中で、研究費に関するもろもろの改革を議論しております。
 この部会でも取り扱っておりますJSTの戦略的創造研究推進事業などにも影響のある話です。間もなく、そこでの論点取りまとめが行われますので、次回のこの部会において、検討会の検討結果について御報告するとともに、具体的にJSTの戦略的創造研究推進事業、あるいはAMEDの革新的先端研究開発支援事業に対してどう適用していくのかといった議論も少しできればと思います。
 例えば研究費を人件費に充てることができるようにするとか、研究設備・機器の共用ということを少し義務づけて、原則化していくような議論とか、そういったことが今議論されております。これを具体的にどう適用するかという議論をしたいと思っております。
 次回のこの部会につきましては、8月18日を予定しております。以上です。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。それでは、以上をもちまして、第3回戦略的基礎研究部会を閉会といたします。次回の審議では、競争的資金改革に関する政府決定を踏まえた施策の見直し、それから、平成28年度概算要求の方針などについて審議を進めたいと思います。本日は、長時間にわたりどうもありがとうございました。

―了―

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