戦略的基礎研究部会(第4回) 議事録

1.日時

平成27年8月18日(火曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 戦略目標及び研究開発目標の評価にむけた検討について
  2. 数学イノベーション委員会における調査検討状況について
  3. その他

4.議事録

【大垣部会長】
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第4回科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会を開催いたします。
 本日はまた大変暑くなりましたけれども、御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。
 まず、本日御出席いただいております委員の皆様の中には、初めて出席される方もいらっしゃいますので、事務局より御紹介をお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 本日初めて御出席いただいております委員の方について御紹介いたします。科学技術・学術審議会委員より、阿部委員でございます。

【阿部委員】
 東レの阿部でございます。よろしくお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 なお、本日、角南委員、宇川委員、長我部委員、貝淵委員、小谷委員、小山委員、竹山委員につきましては、欠席の御連絡を頂いております。
 また、事務局として8月4日付の人事異動により、研究振興局長及び担当審議官が交代しておりますので、紹介いたします。
 研究振興局長の小松でございます。

【小松研究振興局長】
 小松でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 大臣官房審議官、生川でございます。

【生川大臣官房審議官】
 生川でございます。よろしくお願い申し上げます。

【大垣部会長】
 では、まず事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 配付資料については、まず議事次第があり、その議事次第の次に資料1-1から資料1-6までと、資料2-1と2-2、そして資料3から5まで、また、参考資料が1から7までとなっております。さらに、大垣部会長より追加の参考資料として、International Water Association の機関誌「Water21」の抜粋を机上に配付させていただいております。
 欠落等ございますでしょうか。万が一、欠落等ございましたら、会議の途中でも結構ですので事務局までお知らせください。

【大垣部会長】
 それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題ですが、まず、戦略目標及び研究開発目標の評価に向けた検討について審議を行いたいと思います。本日は、科学技術振興機構、JSTから小賀坂康志戦略研究推進部次長と、曽根純一研究総括にお越しいただき、戦略的創造研究推進事業の実施状況について具体事例に基づいて御説明を頂きます。
 次に、数学イノベーション委員会における調査検討状況について、若山委員より御報告いただきます。
 以上が本日予定している議題です。審議、意見交換は事項ごとに行いたいと思います。積極的に御意見を頂くとともに、議事の円滑な進行に御協力をお願いいたします。
 それでは、議題1ですが、最初の議題、戦略目標及び研究開発目標の評価に向けた検討についての審議に入らせていただきます。戦略目標等策定指針を決定させていただきましたので、今回は前回、第3回に引き続き、戦略目標等の策定プロセスの更なる発展に資する観点から、戦略目標等の評価に向けての議論を進めたいと思います。
 まず、事務局から改めて戦略目標等の策定後のプロセス、戦略的創造研究推進事業等の評価の概要、そして本日の議論の論点案を説明していただきます。その後、戦略的創造研究推進事業の実施状況について、JSTの小賀坂戦略研究推進部次長と曽根研究総括から具体事例に基づいて御説明を頂きます。
 では、事務局からお願いいたします。

【岩渕基礎研究推進室長】
 資料1-1の横長の1枚紙と、資料1-2の文字で書かれた1枚紙、この2ページを使って御説明したいと思います。
 まず、資料1-1、政策マネジメントサイクルと書いた横長の紙をごらんいただければと思います。この紙は前回までのこの部会でも何度か御紹介していますが、戦略創造事業等において、戦略目標等をどのように策定しているかという全体プロセスを書いた紙です。今日御議論いただくのは、その右上の方に黄色で塗ってあります戦略目標等の評価という部分です。前回まで御議論いただいたのが左上の戦略目標等策定指針というところでした。この関係を簡単に御紹介しますと、今回議論していただく戦略目標等の評価というのは、戦略目標等策定指針の高度化、改定に資するという観点から行う活動ということになります。
 左上の戦略目標等策定指針のところから申し上げます。前回、6月8日の部会でこの策定指針を定めていただきました。この部会ができたので、今回初めてこの戦略目標等策定指針が定められたということになるわけです。これを基に、文部科学省は、戦略目標等の策定という作業を、この策定指針に基づいて現在始めたところです。来年度、平成28年度にどのような戦略目標を立てるのかという議論を省内で始めていますが、早速、この部会で決めていただいた策定指針を使わせていただいています。戦略目標等は今後、省内で議論し、来年初めに新年度の目標を定めるというスケジュールで進めております。
 文部科学省は、戦略目標等を策定した後、この目標をJST、あるいは医療分野についてはAMEDに対してお示しします。JST、AMEDはその目標に基づいて研究領域の設定、あるいはその領域の総括を選任するという作業をするわけです。この点については後ほどJSTの小賀坂次長の方から御説明があると思います。JST、AMEDにおいてそのように研究領域を設定し、総括を選任いたしますと、領域ごとに研究課題の公募、採択をし、実際の研究が行われます。この研究領域ごとのマネジメントがどのように行われているのかについて、後ほど研究総括のお一人であります曽根先生から御紹介があると思います。
 このような研究の進捗が行われますと、右下になりますが、研究領域等の評価が行われます。これはJST、AMEDという研究ファンディング機関において、この評価活動が行われます。これは、研究成果の評価のためのものです。研究課題ごとの評価、そして研究領域に関する評価ということが行われています。
 これは研究成果そのものの評価で、今からこの部会で御議論いただく戦略目標との評価とは若干違う位置付けだと思います。
今から御議論いただくのは、繰り返しになりますが、この部会で今後、戦略目標等策定指針を改定していく上で参考になるような気付きを得るための戦略目標等の評価ということになります。この点で研究課題、研究領域の評価とは目的が違います。また、研究課題、研究領域の評価については、これまでもJSTの方で相当な評価活動を行っております。この点についても後ほどJSTの小賀坂次長の方から御説明があると思いますが、これと繰り返しとなる評価を行うことはないと思っております。そうではなく、既に行われているJST、AMEDにおける評価活動の厚い基盤の上で、戦略目標等策定指針を高度化するという観点からすると、どういうことをこの部会として気付きを得るべきだろうか。そういうところに焦点を絞りながらこの評価の作業を設計していきたいと思っております。今日は、どのような評価があるべきかということの第1回目のキックオフの議論が行われるという認識です。
 続きまして、資料1-2をご覧いただければと思います。今、資料1-1の絵を基に申し上げたことを、今度は別の言葉で御紹介させていただきます。資料1-2に、「1.評価の現状」を書いております。繰り返しになりますが、現在、JSTの戦略的創造研究推進事業に係る評価につきましては、既に次のような評価が行われているということで丸が2つ書かれており、個々の研究課題に関する評価、そして複数の研究課題で構成される研究領域ごとの評価というものがJSTにおいて行われております。
 AMEDは今年度立ち上がりましたので、まだこの評価を行っていませんが、今後、AMEDにおいてもJSTと同様の研究課題評価、研究領域評価が行われていくと考えております。
 この研究課題評価、研究領域評価は、研究成果そのものに関する評価であり、戦略目標自体の妥当性であるとか、文部科学省における戦略目標等の策定プロセスが妥当であったか、あるいは目標等の策定プロセスを高度化するためにどういう気付きを得るか、という観点から行われたものではないわけです。その点で趣旨は違いますが、このような課題評価、領域評価というのが行われてきたということでございます。
 「2.」ですが、戦略目標及び研究開発目標の評価にむけた論点(案)と書いています。今後、この目標等の策定プロセスの更なる発展に資する観点から、次のようなことについて今後、この部会において議論を深めていただければということで、(1)から(3)まで挙げさせていただきました。
 (1)は現在の評価活動の実態です。これは今回、小賀坂次長から御説明を頂くことになりますが、現在、戦略目標等の達成度を把握するために、JSTなどが実施している評価活動としてどのようなものがあるのかをまず把握することが大事ではないかと思います。そして、その評価のプラクティスの中から、戦略目標等の策定プロセスの高度化に資するような要素があるか探っていただければよいと考えます。達成度の高い目標とはどういうものだったのか。それは目標がうまく立てられたから達成度が高くなったのか、あるいは非常にイージーな目標を立てたために達成度が高かったのかというような、様々な議論があると思います。現状行われている評価活動をよく踏まえた上で、戦略目標等の策定プロセスの発展のために、さらにこの部会として議論すべきことはないかという観点で見ていただければと思います。
 (2)は研究マネジメントと評価です。この点については後ほど曽根研究総括から御説明があるかと思いますが、実際の研究領域のマネジメントの場面において、戦略目標等がどのように意識されているのか、その達成のためにどのようなマネジメントがなされているのかということについて、現状を確認していただきたいと思います。また、このような研究領域マネジメントの現状を踏まえた上で、この戦略目標等の策定プロセスに資するという観点から、この部会でどういう点を議論していくべきか御議論を頂きたいと考えております。
 (3)は評価に関する国際的動向について。これは次回11月の会合で議論したいと思っています。この戦略的創造研究のような社会的・経済的なインパクトを目指す研究については、評価も困難であり、評価手法も収れんしていないという現状がございます。例えば、平成25年の科学技術白書の記述を見ますと、「研究開発活動の経済的・社会的なインパクトの測定手法は国際的に標準となるようなものが存在している状況ではない」と書かれております。したがいまして、国際的に見ても、諸外国でもいろいろ苦労をしながら、この経済・社会的インパクトを評価するという作業を試行錯誤で進めているということです。なので、なかなか正解があるわけではないのですが、米国、英国等でどのようなプラクティス、試行錯誤が行われているのかという点について、次回の部会で少し確認する場面を設けたいと思っております。
 例えば、米国であれば、NSFが、ブローダーインパクト、幅広いインパクトということで、単なるサイエンスの成果に加えて幅広い社会・経済的インパクトをきちんと評価するということになっています。これは実際どのように評価が行われているのか。あるいは、英国においてはリサーチカウンシルにおいてイノベーション・パスウエイ、イノベーションへの道筋というものを評価するという考え方があります。こうしたプラクティスがどのように機能しているのか、していないのかについて、我々の方で資料を少し準備し、次回11月の会合に御提供したいと思います。その上で、諸外国の評価手法の中で見るべきものがないか、この評価目標等策定プロセスの高度化に資するようなエッセンスはないか、という点から御議論いただければありがたいと思います。
 以上、簡単ですが、資料1-1と資料1-2の御説明でした。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 今、資料1-1と1-2の説明がありましたが、特に御不明な点、あるいは確認されたい点があればお願いしたいと思いますがいかがですか。
 特にないようであれば、次に行きたいと思います。
 それでは、早速、戦略的創造研究推進事業の実施状況を具体的に説明していただきますが、流れが分かりやすいように、実際のプロセスに沿って説明していただきたいと思います。そのため、まず小賀坂次長より、文部科学省が戦略目標を設定した後、JSTにおいてどのように研究領域、研究総括を設定しているかを御説明いただき、次に、平成20年よりCRESTの研究領域、プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムにおいて研究総括を務めていただいております曽根研究総括より、研究領域をどのように運営しているか御説明いただき、最後に再び小賀坂次長より、JSTがどのように領域評価を行ってきたのか御説明いただきたいと思います。相互に関連した説明が続きますので、説明をまとめて聞いた後に御議論の時間を設けたいと思います。
 では、まず小賀坂次長、お願いいたします。

【小賀坂次長】
 JSTの小賀坂でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、資料1-3をご覧ください。まず、研究領域・研究総括の前提について御説明申し上げます。
 1ページ目をご覧いただきまして、簡単に戦略的創造事業の運営体制について御説明します。まず、制度全体を統括し、制度改革を主導する役割を担う研究主監がおりまして、研究主監で構成される研究主監会議が、本日御説明します研究領域設定、研究総括指定のための事前評価を行います。その下に研究領域が設定されており、そこには研究総括(PO)が配置されております。研究総括はバーチャル・ネットワーク型研究所の研究所長として、研究領域をマネジメントしており、その職務の一つは、これから御説明いたします研究課題の選定、中間事後評価です。
 2ページ目をご覧いただきまして、この研究主監会議において研究領域の設定を行います。手順としては、文部科学省からの戦略目標の決定を受けまして、JSTが選定を行います。具体的な流れとしては、この絵に図示したとおり、まず、文部科学省の戦略目標の設定を受けまして、領域調査を行います。これは部分的には戦略目標の策定と並行して、予備調査の位置づけでも行います。この領域調査と並行して、研究主監会議では、適宜、領域調査結果を受けて情報交換や議論を行いまして、検討を進めてまいります。そして、図の3にございますとおり、研究領域・研究総括の選定を研究主監会議における事前評価(審議)として行い、その後、4にございますとおり、研究課題の公募に進むという流れです。
 次に3枚目のスライドで領域調査について御説明します。2つ目のひし形にございますとおり、調査の方法としては、まずは有識者に対するヒアリングを行います。また、補足情報として、例えばJST研究開発戦略センターの関連プロポーザルや、文部科学省の審議会等での御議論の経過等も参考にし、また、文部科学省が戦略目標の策定に際して開催するワークショップの議論内容等もふまえてヒアリングを進めてまいります。
 次のひし形にございますが、有識者ヒアリングにおける方法としては、1つの戦略目標についておおむね20から30名の有識者の先生方にヒアリングをいたします。いろいろなセクターの方から御意見を頂くということでございます。お伺いする内容としては、主にはまずこういう戦略目標下で研究領域を設定するとしたならば、例えば研究総括はどのような方がよいでしょうかということをお伺いします。また、この領域についてさらに意見を頂く方としてはどんな方がおられるかということもお聞きし、人脈をたどって御意見を頂いてまいります。また、さらには、この領域を設定するに当たってどのような関連研究分野を巻き込むべきであるか、あるいは国際比較の中での日本の強み、弱みといったもの、あるいはこういう領域を設定した場合に研究者層はどれぐらい望めるだろうか、さらには若手研究者の育成の観点等々についても御意見を頂きます。
 4ページ目をご覧いただきまして、このような情報を基に研究主監会議に研究領域の案及び研究総括の案をお諮りします。先ほど申したとおりですが、この領域調査の進行中でも、あらかじめ分野を担当する研究主監と情報交換を行い、また、研究主監会議でも予備的な議論を進めてまいります。また、領域が設定されました後には、3つ目のひし形にございますとおり、新任の研究総括と研究主監との意見交換を開催しまして、事業目的・趣旨の共通理解を図るという工夫を行っております。さらには、募集要項には研究総括が執筆する、研究領域についての考え方というものをしっかり書き込んでいただきまして、その趣旨を徹底するという工夫もしております。
 5ページ目のスライドに、研究主監会議における事前評価の評価項目について簡単にまとめてございます。研究領域については、当然、戦略目標の達成に資すること、それから、我が国の研究の現状を踏まえた適切な研究領域であること、具体的には研究テーマが多数見込まれることというのが評価の基準です。また研究総括については、当該研究領域において先見性及び洞察性を有していること。また、研究マネジメントを行う経験、能力を有していること、さらに、こちらは非常に重要ですけれども、優れた研究実績をお持ちのことはもちろん、関連分野の研究者から信頼されていて、また、公平な評価を行えることということを選考基準としております。
 御参考までに、本日、説明は割愛しますけれども、平成27年度に設定いたしました研究領域2件について概要を記載してございます。
 以上でございます。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、次に、曽根研究総括より、CRESTの領域運営について戦略目標をどのように意識し、その達成のために領域としてどのような取組をしてきたかについて御経験をお話しいただきます。また、今後、文部科学省が戦略目標を策定していく上で留意すべき事項がありましたら併せて問題提起していただきたく思います。曽根研究総括、よろしくお願いいたします。

【曽根研究総括】
 はい、分かりました。
 資料1-4を使って御説明申し上げたいと思います。プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創製ということで、2008年にスタート、今年度が最終年度という研究領域です。この間、私の所属もいろいろ変わっていますけれども、企業の人間が総括をやるという意味では非常に珍しい研究領域だったと思います。
 次に、本日お話しする目次が1ページ目に書いてあります。2ページ目を見ていただきたいのですが、文科省の方で設定された戦略目標について、具体的内容が書いてあります。これは2008年当時のナノテクノロジーをめぐる環境の中で、こういった課題が浮き上がってきたわけです。その当時は、トップダウンとボトムアッププロセスの高度化、すなわちナノスケールの構造を作るのに、半導体の微細化が非常にドライブしていたわけですが、当時、微細加工は45ナノメートルのサイズでした。その限界が議論されて、この後どうなるのかとの危機意識がありました。そういう中で化学反応、自律的な反応をうまく駆使した自己組織化利用のボトムアッププロセス、これはモレキュラーレベルの構造ができるということで、その期待が非常に高かったわけです。それの高度化、おのおのの技術の高度化と、それを統合して新しいプロセスを確立して、ナノ構造体を作る。それによって新しいナノシステムの創製を目指すということが可能かが問われておりました。
 当時、ナノシステムというのは非常にチャレンジングな言葉でありまして、ここに書いてありますように、分野融合を徹底的に新しいプロセス統合によって進める。例えば、バイオとエレクトロニクス領域、あるいはいろいろなケミカルな反応を使った新しいシステム。それから、MEMSですとか、マイクロフルイディクスのようないろいろな構造体、あるいは分子システム、そういったことが期待されていたわけです。
 政策上の位置付けはそこに書いてあるとおり、このような革新的な材料の開発によって、困難な社会的課題の解決と国際的な産業競争力の優位を構築するのだということですね。特に、研究開発目標を達成するための留意点として、この戦略目標は単なるプロセス研究ではなく、次世代ナノシステムの創製を目指すということを当時強く言われました。それは非常にチャレンジングな課題でありまして、次の3ページを見ていただくと分かるのですが、この戦略目標に対してCRESTの1つの研究領域では達成不可能だろうということで、2つのCREST研究領域が設定されました。一つは要素技術の高度化ということですけれども、ナノ構造体の創出ということで入江先生、私の方は、そういったことをベースにして、新しい機能を活用してナノシステムを作っていくのだという事が求められました。したがって、ここは非常に出口を要求される、CRESTでは珍しい研究だったわけです。そのために、当時としては珍しかったのですが、企業の人間でないとこういうことはできないだろうということで、私がこの総括を仰せつかったわけです。
 4ページ目を見ていただくと、当時なぜそういうことが期待されていたのか、時代的背景が分かると思うのですが、これは皆さん御存じのように、2000年にアメリカでナショナルナノテクノロジーイニシアチブが宣言され、ナノテクへの大きな期待が高まってきたわけですね。それを受けて、日本でもナノテクノロジーバーチャルラボ、これは10領域パラレルに一気に走らせた大きなプログラムです。ここのところで、いろいろな個々の要素技術はかなり深化したのだと思います。それをフォローアップするような形で、ナノ界面、ナノ製造技術というプログラムが走っていました。そういった時代背景の中で2008年に、研究の背景はそこにありますように、半導体の微細化の限界が見えてくる中で新しい技術の創製、あるいはそれを使って、単なる半導体のデバイスの高度化ではなく、分野融合的に、バイオ、メカ、あるいはフォトニック、いろいろな分野との融合の新しい領域を切り開く。すなわちナノシステムを作っていくということが要求されたわけです。
 2008年はそこに書いてありますように、実はこの年は非常に厳しい年で、リーマン・ショックが始まりました。その後、2009年、オバマ政権がスタートして、彼はクリーンエネルギーの政策というのを大きく取り上げるわけです。また、この当時から地球温暖化の問題が非常にクローズアップされてきまして、サステイナビリティー、この問題に対してどう対応するのか、あるいは健康医療の分野では高齢化社会到来の問題に関係して健康医療の問題が非常にクローズアップされてきました。したがって、その後の時代背景は、ここに書いてありますように、半導体の技術に関しては電子産業の苦境と半導体産業の再編ということで、半導体分野の様子が激変してくるわけです。それから、グリーンイノベーション、ライフイノベーション、そういったことがやはり日本の課題として大きくクローズアップされているということです。特に、2011年に大震災、福島原発の事故に伴って、エネルギーミックスの見直し、すなわち再生可能エネルギーの重要性というのは非常に認知されてくる。そういった時代背景があったわけです。
 我々の方は、基本的には頂いた課題はプロセス統合によるナノシステムの創製であると理解しました。この本筋は外さずに、時代背景も含めてフレキシブルに対応していこうと考えました。即ち、時代が必要とする新しい技術の開発へ向かっていこうということを考えました。採択の判断ポイントは、まずプロセス融合、即ちトップダウン、ボトムアップに挑戦しているか。それか2番目は、入江先生の研究領域はナノ構造体を作るということですけれども、我々はその機能を積極的に活用して、新しいナノシステム、難しい課題ですけれども、これに挑戦しようとしているかと。ここでやろうとしていることが新しい学問分野を作るのか、新しいマーケットを切り開くのか、そういうイノベーションの可能性を秘めているのかと、そういうことを問うていました。また、それが研究のプロポーザルをする人が単なる思い付きで言っているのではなくて、そのアイデア、それを具現化する技術、あるいはそのエビデンスデータが彼らの提案の中にしっかり述べられているか。そういったことを問いました。
 そういう中で、ナノシステム、すなわちナノテクノロジーをベースにして、分野融合的に社会にインパクトを与える新しいシステムを構築していくということです。そこに必要な技術は、ここに3つ書いてありますけれども、非常に広範な分野が要求される。結果として、平成20年度、2008年ですが、この年は応募件数はそんなに多くなく、32件でした。それなりの件数でしたが、皆さん、ナノシステムって何なのだろうという、ちょっと警戒の気分があったのかもしれません。これは非常に珍しいのですが、年を追うごとに応募件数がどんどん増えてきました。時代がこういう方向に向かっていったのだろうなと今は認識しています。そういう中で、ここに書いてありますように、採択件数、16課題を選ばせていただきました。
 次に6ページを見ていただくと分かるように、広い領域で採択してきたわけですけれども、ここにあるような7つの領域、自己組織化の生体材料を使ったエレクトロニクス素子、フォトニック素子から始まって、ソフト基板上のエネルギー、あるいはエレクトロニクス素子。後半の方にバイオの領域の提案が非常に多くて、これは私の研究領域でバイオの新しい領域が開けたのではないかと思っていますけれども、単一細胞、単一分子、あるいはDNAの計測、あるいはマイクロフルイディクスによるiPS細胞も含む細胞のハンドリング、あるいはニューロサイエンス、脳神経の活動への計測、そういった課題が選ばれました。
 それで、次、7ページ目、これをどういうふうに運営していくのかということですけれども、非常に広範な専門領域から成っている研究課題、これはアドバイザーの助力なしに進めることはできません。私自身は、電子工学と物理は自信があるのですが、化学とバイオは不安なところがあったので、そこのところはアドバイザーを多く配して、この領域の全体のマネジメントを進めていったわけです。リーマン・ショックで、スタートしたときはほとんどの課題が産業界との連携というのはほとんどなかったのですが、時代の流れの中で皆さん、いい研究をやっていただいて、産業界との連携の件数が63件というのは、2013年当初という今から2年以上前の時点ですので、もっと今は増えていると思います。そういった形で産業界との連携も、特にCRESTの中にあっては出口を意識してということなので、それは研究者の皆さんに対して、エンカレッジするようにいたしました。特に半導体に関して新しい技術が我々のところで生まれたわけですけれども、これを是非実用化したいということで、半導体の企業のコンソーシアムでありますLEAPという技術研究組合に出掛けていって、よく議論させていただきました。
 続いて8ページ目を見ていただきたいのですが、マネジメントとしては基本的には私が頂いた研究目標というのはプロセス統合によるナノシステムを創製すること、その本筋はきちんと守るという中で、研究の内容についてはかなりフレキシブルに考えてきました。それはここに書いてありますように、研究計画の見直し、あるいは研究費の柔軟な配分ということですね。研究開発で、最初、採択するときに目標として掲げられていた内容でも、その後の進展を聞くと、さすがにこれは無理だなというものについては、やはり方向転換、あるいは中断をするというようなことを研究代表者の方にお願いして、実際そのとおりに実行されてきたと思います。
 また、その過程で、やっぱり基礎研究というのはセレンティピティ、そこからとんでもないことが起きるというのはよくある例でありまして、その可能性を感じさせる新しい研究の芽、それは積極的に支援してまいりました。特に、今から振り返って非常にうまくいったのは、領域内の共同研究の奨励を行ったことです。これは、せっかく選んだ16課題、各学問的な領域、専門的領域を代表するような方々が集まっているわけで、それが個々に独立してインタラクションなしで終わってしまうというのは余りにももったいないと。お互いのインタラクションの中で個々の技術が非常にブーストする、そういった可能性もありますし、また、ナノシステムという雲をつかんだような目標設定ですけれども、それについて一緒になって分野融合を図るということでは、研究領域内の共同研究を通じてナノシステムを追求していこうと、そういったことで共同研究がかなり積極的に行われました。
 ここで成果例を挙げていますけれども、実際、非常にいい成果がたくさん出ていまして、バイオの燃料電池も圧倒的に世界トップの出力を実現する電池ですとか、あるいは野地先生のところでは、その後の受賞につながるたくさんの新しい技術の構築、そういったこと等々がたくさん生まれました。9ページを見ていただくと、ここでどのような方が、どういう形で、どの領域で共同研究をやってきたかの一覧表を掲げております。ここで赤字で示したものについては、特に私が気に入っているものというのですか、そういったもので、本当は説明したいのですが、残念ながらきょうは技術的なことを議論する時間もないし、趣旨も違うと思うので、その後のページは後でゆっくり見ていただくことを期待して飛ばしていただいて、14ページに行きたいと思います。
 ここでは、実際にやはり研究者間のインタラクションというのを非常に重要視してきました。領域会議というのはどこでもやっているのですが、それだけではなくて、同じ戦略目標で集まった3つのプログラム、要するにCRESTが2領域、さきがけが1領域、その3領域が集まって合同のミーティング、発表会を毎年行っております。それから、私の領域でいきますと、領域がエレクトロニクスからエネルギー、環境、バイオ、メカ、非常に広いので、領域会議で皆さんと議論するというのは有益なのですが、同時におのおのの専門領域を深化させるという意味では物足りないところがありまして、領域内の専門領域を同じにする、例えばバイオならバイオというところで皆さん集まって、いろいろな議論をするワークショップを開催いたしました。
 15ページはそれ以降の定量的成果と今後の展開ということで、特にここで述べておきたいのは、やはり今から振り返ると、ナノシステムの創製という設定は非常によかったなと思っております。その後の時代の流れを先取りするようなテーマであったと認識しています。それは、私のところのCRESTがスタートだと思いますけれども、この後、次々と、採択16課題の今後の展開と書いてありますが、おのおのの研究者が代表者として、ACCELが2課題、ImPACT、今これは検討されていますけれども、1課題、ERATOが2課題、さらに継続の新しいCRESTに4課題、それから実際のビジネスの方へ展開したのが1課題と、これは非常に珍しいことですけれども、多くの継続のプログラムに結び付いております。せっかくのこれまでの我々の努力なので、これを何としても海外に発信したいということで、今、『Intelligent Nanosystem』という本をSpringerから発行すべく準備をしているところです。
 以上、振り返ってみますと、ここに書いてありますように、繰り返しになりますが、ナノテクバーチャルラボで要素技術は出来上がったが、それを社会実装に向けたシステムとして展開してくれというのが私への期待でした。それはある意味で取っ掛かりができたのかなと認識しています。それから、当時は半導体の微細化限界を打破するプロセス融合ということが非常に問われていたわけですけれども、その後の半導体産業の変遷、それから持続可能な社会を実現するための環境エネルギーの問題のクローズアップ、あるいは健康医療の問題、そういったことが出てきて、そういった新しい領域にも展開していく必要が時代の流れの中で生まれてきたのかなと思っております。
 それから、「振り返って」と書いてあります。ここのところで述べておきたいのは、この研究領域は、今から思うと、ナノシステムという未知の領域に踏み込んだわけですけれども、その概念を、具体的な姿を、私自身も具体的にどんなものがナノシステムという答えを持っていたわけではなくて、研究者と一緒になってそれを追求していく8年間だったのかなと思います。
 それから、そういう意味で、大事なことは、戦略目標のプロセス融合によるナノシステム追求という本筋は外さずに、時代の要請に柔軟に対応して新しい可能性を感じさせる新しい技術の芽、そういったことも積極的に支援してきたというのがこれまでの経過だと思います。また、実践的には、研究領域内の共同研究が非常にうまくいったと認識しております。
 その後の絵は「振り返って」の一部になりますので、とりあえず時間ですのでここまでにしたいと思います。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、私自身も平成21年度からCRESTの研究総括を務めておりますので、ただいまの曽根研究総括からの御発表に関連して少しばかり補足のお話をさせていただければと思います。
 資料1-5をごらんください。私の領域は、水利用といいまして、そこの戦略目標をごらんいただくと分かるように、気候変動等により深刻化する水問題を緩和し、持続可能な水利用を実現する革新的技術の創出ということが目標でございまして、先ほどの曽根総括とは少し違うタイプのCRESTの事例になるかと思います。具体的な領域設定の概要はそこに書いてあるとおりでございますが、研究チーム数も17と、似たような数でございます。コメントとして特に申し上げたいのは、領域設定のところで、上の概要に書いてあります。コメント2のところに書いてございますが、水利用というような社会との関係が深いものの場合、それを具体的な科学技術の展開に結び付けないと研究領域になりませんので、そこに気を配った点と、それから、どこまでが研究領域として対象とする科学技術かというようなことをできるだけ分かるようにしたというような工夫をしております。
 1つ申し上げたいのは、コメントの3に書いてありますが、公募の意義と書いてございますけれども、新しい科学技術的発想の導入や、社会的意義の発想や、また、全く異なる学術分野からの参加というような意味で、水利用の場合は非常に公募が意味を成したと思っておりまして、戦略目標、領域設定の後のところの運用の方法に関係するところですけれども、改めて別の意味で公募は戦略目標達成のために価値があるのではないかということを再度確認しているところでございます。
 それから4番目のコメントは複数年度採択で、これはごく普通に行われていますが、先ほど、曽根総括からの説明にありましたように、2011年に東日本大震災がありまして、それに伴う放射性汚染による水利用の課題を新たに研究総括の裁量として新しく第3年度に採択するというようなことができまして、複数年度採択というのはいろいろな柔軟性を領域に加えるという意味でも、ある種、経験したところでございます。
 内容に関しましては、参考としてカラーのものを別にお配りしていますが、これは国際的な水の学会の機関誌でございますけれども、こちらのCRESTの広報という意味もあるのですが、皆さん水分野から見るとまとまった予算が水分野に付いたということで、国際的に興味を持っていただきました。
 以上、簡単に私の分野の補足をさせていただきました。
 それでは、続きまして、JSTより、JST内での領域評価・課題評価の実施状況について。特に領域評価において戦略目標達成度評価をどのように実施しているのかなどについて御説明いただきます。小賀坂次長、再びお願いいたします。

【小賀坂次長】
 では、資料1-6をごらんください。
 まず1ページ目をご覧いただきまして、戦略的創造研究推進事業の評価の体系を簡単に御説明いたします。左側のピンクの四角が戦略的創造研究推進事業の構成でございまして、CREST研究領域、さきがけ研究領域があるという構造になっております。右側の青い矢印の部分が評価の階層構造でございます。一番下の3、4が、これから御説明します研究領域評価と研究課題評価でございまして、それぞれ事前、中間、事後、追跡と行っております。その上のレイヤーに、中期目標期間に1回行います国際事業評価を設定しております。その上の最上位にございますのが、いわゆる法人評価でございまして、年度評価と中期目標期間評価というのがあります。
 今日はスライド資料を使いまして、評価の概要、それから評価基準について、それから最後に実施の具体的な内容について簡単に御説明いたします。2ページ目をご覧いただければと思います。まず、評価の目的を簡単にまとめてございます。領域、それから課題、いずれにおきましても、1.事前評価というのは、課題であれば選定、領域であれば設定に資するという目的で行うわけでございます。2.中間評価は、実施状況を把握し、その先の研究推進、あるいは研究領域の改善に資するということを目的として実施いたします。3.事後評価は、達成状況や波及効果等の見通しなど、あるいは領域であれば研究マネジメントの状況を見て評価を行いまして、今後の事業運営に資するという目的で実施をいたします。さらには4.の追跡評価については、これはいわゆるインパクト評価でございまして、研究終了後一定期間を経過した後、研究成果の発展状況、活用状況、それから与えている波及効果等を明らかにするという内容で行っております。国際評価につきましては、戦略的創造研究推進事業全体についての総合的な評価を行うという位置付けで実施をしています。
 次に3ページ目をご覧いただきまして、こちらは評価の時期や、被評価者、評価対象は何であるか、評価者は誰であるかということを簡単にまとめてございます。上側の表をご覧いただきますと、横方向に事前、中間、事後、追跡とございまして、評価時期は記載のとおりでありまして、中間評価については研究開始後3年後、追跡評価は終了5年後等々でございます。課題については、評価対象は当然、研究課題でございまして、被評価者というのは研究代表者でございます。戦略事業の場合には、評価者は研究総括及び領域アドバイザーが行います。対しまして、研究領域については、評価対象は研究領域及び研究総括でございまして、評価者となるのは外部評価委員会、外部有識者を招いて、1回限りの外部評価の委員会を組織し、評価を実施するという運用を行っています。
 4ページ目をご覧いただきまして、研究領域の運営のスケジュールと評価の関係について少し詳しく説明をいたします。これは横方向に研究領域発足からの年次をとっておりまして、グレーの横棒が研究課題の実施期間を示しております。従いまして、CRESTについては1年目、2年目、3年目にそれぞれ課題を採択いたします。三角印が評価の時期でございまして、このように採択における事前評価、中間評価、事後評価を行うという建て付けでございます。また研究領域評価については、領域事前評価を行いまして、領域発足から4年経過時点で中間評価を行いまして、終了時に事後評価を行います。従いまして、課題の評価は順次、領域評価に反映されていくと、そういう仕組みでございます。
 さきがけにつきましては、研究実施期間が3年半でございますので、中間評価は行わず、課題、領域、いずれにおいても事後評価を行うということになっております。
 続きまして、5ページ以降で少々細かくなって恐縮でございますけれども、評価の基準についてかいつまんで御説明いたします。まず、研究課題について、5ページ目では事前評価について説明しております。左側のCREST課題事前評価をごらんいただきますと、主にa、b、c、d、4つの項目で評価をしております。最初の3つについては、まず戦略目標の達成に貢献する課題であること。また、研究領域の趣旨に合致していること。そして、Cは独創的であり、国際的に高く評価される基礎研究であって、今後の科学技術イノベーションに大きく寄与する卓越した成果が期待できること。この3つが主な評価基準でございまして、dはそれに加えまして、研究提案者が研究基盤を有しているかという趣旨の要件でございます。例えば、研究実績があるか、研究構想の実現に必要な手掛かりが得られているか、体制はどうであるか、研究費計画、さらには所属研究機関において技術基盤があるか、こういった基準でございます。
 一方、個人研究であるさきがけにつきましては、CRESTとの違いについて赤字で示しております。まずCには挑戦的という文言が入っております。それからdは、ちょっと長く書いておりますけれども、これは領域内で連携を行って、相乗効果が期待できるかと、そういうような趣旨の基準でございます。また、研究基盤については、まず研究提案者本人の着想であるか。また、個人型研究として適切な実施規模であるか。こういった基準で課題を採択しています。
 6ページ目をご覧いただきまして、中間評価でございます。中間評価というのは、主に進捗状況、それから課題のマネジメント状況について評価するのが一般的でございまして、CRESTにおきましても(1)研究進捗状況についての評価、(2)研究実施体制等についての評価、(3)このまま課題を継続した場合の見通しについての評価を行いまして、(5)の総合的評価にございますとおり、進捗状況と成果の見込み。いわゆる振り返っての評価を行うとともに、継続可否と今後の展開についてという評価を行います。総括しますと、課題中間評価では、進捗状況の評価とともに、当該課題の継続の可否の判断というものを行うということです。
 続きまして、7ページ目をご覧いただきますと、こちらは最後の事後評価でございます。こちらも(1)については、いわゆるアウトプット・アウトカム評価でございまして、(2)は、これはいわゆるインパクト評価ですが、終了時点でございますので、波及効果が得られていることは余り期待できませんが、見通し・見込みの評価という意味合いで行っております。(3)はマネジメント面の評価でございまして、これらを総括して評価結果としています。
 続きまして研究領域評価についての基準をご説明します。8ページ目をご覧いただきますと、8ページ目は研究領域の事前評価ですが、これは先ほど御説明しましたので割愛しまして、9ページの研究領域の中間評価ですが、評価の要素はおおむね課題の評価と同様ですが、領域評価の場合には1にありますとおり、研究総括による研究マネジメントの状況はどうであるかということにも重点を置いて評価いたします。それから2の戦略目標の達成に向けた状況につきましては、マル1、マル2、2つの軸を持っております。一つは、科学技術への貢献ということで、どちらかといえばアカデミックな成果についてです。それからもう1点は、科学技術イノベーション創出への貢献ということで、社会実装や実用化についての評価でございます。そういうわけで、領域評価では、課題ごとの評価も基にして進捗状況を評価するとともに、領域マネジメントについても評価を行うということです。
 領域が終了いたしますと、10ページ目にございますとおり、研究領域の事後評価を行います。こちら、1の研究領域としての成果についての部分は、中間評価と同様の項目でございますけれども、領域事後評価におきましては、これに加えて、2にございますとおり、評価委員会から今後の展開等についての提言を頂いてこれを取りまとめ、研究総括に対して、あるいはJSTに対して頂戴するということもやっています。
 最後に11ページ目でございますが、こちらは追跡評価です。追跡評価の項目は大きく2つございまして、一つは、研究成果の発展状況や活用状況、いわゆるアクティビティーの継続状況を評価いたします。もう1点は、インパクト評価で、アカデミックインパクト、それからイノベーションインパクトの両方について、その波及効果の創出状況を評価いたします。さきがけの方はこういった評価基準に加えて、人材育成の観点も取り交ぜておりまして、例えば人材のキャリアアップの状況についても評価を行っております。
 続きまして、評価の実施について少し御説明いたします。12ページをご覧ください。繰り返しになりますが、JSTではこのような手順で評価を実施しております。横方向に時間の流れを取っておりまして、縦方向にはそれぞれ課題の評価、領域の評価、追跡の評価というレイヤーを示しております。まず、左上をご覧いただきますと、中間・事後評価においては、まず研究者が成果報告書を作成しまして、これを研究総括及び領域アドバイザーが評価をしまして、評価結果を確定します。その結果は研究者へフィードバックするとともに、ホームページ等で公開します。また、これを受けまして、研究領域評価に進みます。領域評価では、研究総括が研究課題単位の評価の結果も基にしまして、報告書を作成します。それを外部有識者で構成される評価委員会が評価をしまして、評価結果を確定させ、こちらについても研究総括へフィードバックするとともに、ホームページ等で公開します。
 一方、追跡評価については、評価報告書については、外部委託により追跡調査行います。この調査結果資料を基に、元研究総括に少々の加筆をお願いしまして、評価資料を作成いただきます。これを基に評価委員会を開催し、評価を実施する。具体的な手順としてはこういった流れで評価を行っております。
 13ページには、平成26年度の評価の実施状況を記しております。事前評価については、研究領域としては7領域を設定しております。また、この7領域を含む24領域について、170課題を採択したという統計です。課題中間評価については、21領域、合計77課題、また、課題事後評価については31領域、256課題の評価を行っているということでございます。研究領域評価については、中間評価4領域、事後評価4領域を実施いたしました。それから、追跡評価については、平成13年度設置のCREST4領域、平成15年度設置のさきがけ1領域、合計5領域についての追跡評価を行ったということでございます。
 最後に、評価事例を1つ御紹介いたします。14ページでございます。これは平成18年度に設定しました、界面についての戦略目標に基づいて設定されたCREST・さきがけ領域についてです。先ほど、曽根先生からも少し御説明がありましたが、ナノテクバーチャルラボに引き続いて設定されたナノテク関係の領域でして、機能を持った界面という視点で設定された戦略目標で、詳細な御説明は割愛しますけれども、ナノ、エレクトロニクス、あるいは蓄電・発電、こういった多様な技術分野について、接合界面に着目した戦略目標が設定されました。
 15ページをご覧いただきますと、それに基づいてCRESTについては新海先生の研究領域が設置されております。例えば、戦略目標という観点で申しますと、ポツの3つ目等にありますとおり、例えば幅広く特許出願を行っているテーマも多々あり、全体的には科学技術イノベーションに寄与した成果、あるいは産業イノベーションの創出を期待される成果であると評価できるといった御評価を頂いております。
 提言という意味では、従来のディシプリンや元素の切り分けでなく、例えば「エネルギーと物質創製のためのナノ界面」「エネルギーのためのナノ界面と物質創製」といったような研究設定が今後必要になろうという御提言を頂いたというところです。
 最後に、16ページをご覧いただきまして、この研究領域と対をなしておりましたのが川合眞紀先生のさきがけ研究領域です。こちらについても、例えば最後のポツをご覧いただきますと、応用面において多くの貴重な成果が生み出されたとともに、知的財産権活動においても積極的に取り組んで、結果的に応用を重視した戦略目標の達成にも十分に寄与しているという御評価を頂いております。
 以上でございます。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、以上を踏まえて審議を行いたいと思います。冒頭、事務局からも説明があったとおり、本日は戦略目標の評価に向けた検討のキックオフですので、本日何かを決定しなければいけないというわけではございません。したがって、まずは現状の事業実施状況を把握するという観点からの御議論を頂ければと思います。
 それでは、ただいまいろいろありましたけれども、その説明に対する質問や、あるいは資料1、2の論点案について御意見のある方はお願いをいたしたいと思います。いかがでしょうか。

【有信委員】
 どうも説明いろいろありがとうございました。
 評価を非常に詳細、綿密に行っているということはよく理解できましたし、こういうやり方が多分順当だろうと思うのですが、基本的にこういうものの評価には、いわゆるピアレビューに属する部分の評価と、それからアカウンタビリティーに関する部分の評価と、2つの側面があると思うんですね。社会・経済的な価値という観点からすると、やっぱりアカウンタビリティーという観点が不可欠になって、これはやむを得ないことなのですけれども、この中の評価は、やっぱりアカウンタビリティーとピアレビューがある程度混在しながら評価が行われているということになっていて、これをどういうふうに区分けができるのかというのは非常に悩ましいのですが、1つ質問があるのは、いわば社会・経済的な価値ということがそれぞれ言われていることをアカウンタビリティーという観点で考えると、どうしてもインプット、アウトプットの関係を考えざるを得ないと。つまり、ここで得られて想定される社会・経済的な評価に対して投入された資源が適正であったかというのが、プログラム全体としてのアカウンタビリティー的な評価になると思うのですが、ここの部分を実際に評価の中にどう取り込んでいくかって非常に難しい課題だとは思いますけれども、この辺に関しては何か議論をされているんでしょうか。

【小賀坂次長】
 まず、できる限りの工夫としては、研究領域評価の委員の構成は、いわゆるエキスパートパネルの構成をとっております。通常5名の委員構成ですが、産業界から御意見を頂ける方を1名お願いすることで、委員の多様性を担保しております。従いまして、そういう多様な有識者の、多少主観も入った価値観でもって社会・経済的な価値についての御評価を頂くという運用をしております。
 社会・経済的な価値の評価をどう行うのかということは、実は、評価委員からも御質問を頂きます。領域事後評価実施の時点では、何かが顕在化しているという可能性は正直申し上げて低かろうと思います。従いまして、何年か後に社会への還元、社会への実装、あるいは経済活動の創出が見込まれるだろうかということを判断していただきたいというお願いをしております。これに対して先生方からは、基準は何だという御質問を頂きます。その際、私どもが説明しているのは、これはやはり残念ながら明確な基準を設定することは非常に困難なので、この分野、このメソドロジー、こういった研究領域設定であれば、今時点でしかるべく創出されているべき成果は何であろうかということを先生方の主観で御判断くださいということをお願いしております。ですから、そのために評価委員も注意深く選んでおりますし、そこは評価委員の価値判断にお任せしているというところが実態でございます。

【有信委員】
 多分、今のところだとそういうやり方しかないのかという気はするのですけれども、やっぱりピアレビューの部分とアカウンタビリティーをある程度峻別しながら評価をやる必要があると思うのは、例えば、学問上の進歩で、例えば順当にいくとこれだけの進歩があるはずだという、そのエクストラポレーションの予測は立つわけですね。それに対してどれだけ学問的な進歩があったか、あるいは発見上のブレークスルーがあったかというのが、これが大きな一つの、ピアレビューの観点から言う研究上の成果になるわけで、アカウンタビリティーという観点は、これが社会・経済的な効果として見積もるときに、これは一体誰の責任でそれを見積もればいいのかという問題は残りますけれども、やはりそれのインパクトをある程度想定しながら、そのインパクトに対して投入された資源の適正性を評価するという視点をもう少しやっぱり議論をする必要があるような気がします。
 これは、例えば社会・経済的な評価だけで研究の成果が全て評価されるわけではなくて、もちろんピアレビューと併せて、それぞれの研究テーマごとにその軽重が違うはずなので、それを含めて評価をすると。そこを今度は実際に目標設定のときの適正性にフィードバックしていくということをやっぱり何らかの格好で、難しいけれども考えなければいけないような気がするのですけれども。最後はコメントです。

【岩渕基礎研究推進室長】
 今の有信委員の件ですが、我々はNSFの取組に注目しています。NSFでは、全ての評価の仕組みとして、インテレクチュアルメリットの評価と、ブローダーインパクト即ち社会・経済へのインパクトの評価の2本立てで行うということが、90年代後半からルール化されています。そのうち、ブローダーインパクトの評価の方がどのように機能し、あるいは機能していないのかという点には、我々としても注目しています・少し精査をしたいと思いますが、アメリカの連邦議会の中でも、このブローダーインパクトの評価はうまくいっていないのではないか、メソドロジーが不足しているのではないか、という議論は常々あるというふうに承知をしております。なかなか正解はないと思いますが、今、得られる最良の評価の手法はどういうものなのか、そういう観点で少し勉強していきたいと思ています。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。よろしいですか。
 波多野委員が先で。

【波多野臨時委員】
 私は、現在CRESTの研究代表でもあり、領域のアドバイザーも引き受けております。現場にいる立場からしますと、評価システムは終了後の追跡評価も含めて、こんなによくできていることを初めて知りまして、素晴らしいと思いました。さてここでは戦略目標の評価をこれから議論していくわけですけれども、社会や産業界、世界の動きが速い現在、戦略目標は陳腐化しないように評価は重要ですが、評価の重複にならないように、現在ある評価にうまく整合するとよいのでは、と考えます。曽根先生の総括のCRESTは成功例として存じ上げていますが、ご説明にもありましたように、戦略目標をナノデバイスやナノエレに留まらずナノシステムとしたことで、融合も生まれ産業界との連携も生まれたと思います。ただし終了後の追跡評価で、生まれた融合研究や産学連携、知財の活用、がどのように進展していっているかを知り、戦略目標にフィードバックを掛けるのも一番実質的に効果的なやり方とも考えます。特に、研究の資金、知財のポジション、研究者のモチベーションがさらに向上しているか、また社会のニーズは引き続き高いか、など評価してフィードバックすることは非常に重要なことだと考えていますので、それをうまく追跡評価に含めれば、戦略目標が適切であったかを評価することができると考えます。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 片岡委員。

【片岡臨時委員】
 私はCRESTで評価される側に2回ほどいました。それで改めて、ああ、そうか、こういうふうにやられているのかと分かったのですけれども、評価そのものはCRESTを行っている立場からすると、非常に緊張感があって、やはりあった方がいいだろうと思います。そういう点で特に中間評価は非常に重要だなと。ただし、CRESTの場合は戦略目標があって、それに向けてやっていく研究ですので、5年という期間がいいかどうかというのはちょっと疑問があります。立ち上げに1年、まとめに1年ですから実質3年なんですね。本当は個人的には7年ぐらいあると一番いいのかなと思いますが、これは諸般の事情で難しいのかもしれません。いずれにしても、5年ですと3年目ですかね、中間評価。これが非常に重要な意味を持っているなと思います。
 それから、事後評価は評価される方のモチベーションというのが、どうしても中間評価に比べるとそれほど高くはならないというのがありがちなことなんですよね。そういう点でやはり事後評価は何のためにやるのかというのはすごく重要かなと。つまり、ネガティブポイントというより、むしろ加点するというんですか、そういう観点の評価というのが重要だし、それがあることによって評価される方も非常に大きなモチベーションが湧くんじゃないかなと思います。そうしないと、終わったときは何か、評価を行う方もされる方も、場合によっては余りファイトが湧かなかったりする可能性もあるので、事後評価を効率的かつ意味深くやるという方が難しいのかなというふうに思いました。
 それから、一番難しいのは、先ほど言われたブローダーインパクトという評価軸で、もちろん戦略目標を設定して行う訳ですけれども、結局、インパクトがどの時点で出てくるのかというのが非常に難しいのだと思います。終わった瞬間にすごいインパクトがあるというのは確かに一見すごいんですけれども、特に社会的にですね。これはある意味では非常に短い期間に目標が設定されてしまう危険性もある。一方において長過ぎると、これは確かに、いつまでたっても出てこないじゃないかということになります。ただし、やはりインパクトの顕在化が長くかかる、そういうものもあり得るわけですよね。ものによっては、例えばiPS細胞みたいに非常にいいタイミングで出てくるものもあるわけですけど、全てがそうとは限らないわけですね。ブローダーインパクトの評価はアメリカでもうまくいっていないというお話もありました。ある時点でたまたま事後評価をやったときによかったからこれでいいですというわけでは困るわけで、かといって、いつまでたっても、10年も20年も追い掛けるって、追い掛けられる方も大変ですので、それは難しいですよね。追跡調査に関しては、特に研究をやったグループに大きな事後負担が掛からないで、自然に評価がされていくような、そういうシステムというのもあり得るのではないかと。それによって、あるところですぱっと評価するのではなくて、経時的に。これを結局、積み重ねていくと、そういうのがデータとして残りますから、それを10年、20年とやっていくことによって、評価する方法論なり考え方が出来ていき、データベース化されていくのではないかと思います。
 大体、日本の場合はどうしても、これに限らず、データを蓄積して、それに基づいて何かを考えるというシステムが時々うまく横の連動がなかったりするので、これが連動してくると、オートマチックと言うと言い過ぎですけど、自然に評価されてくる様になるといいなと思いますけれども。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。

【岩渕基礎研究推進室長】
 今の波多野委員と片岡委員のお話について。波多野委員から評価が重複作業にならないよう気を付けるべきということ、片岡委員から事後評価についてその結果が十分活用されていないということが言われました。これをつなげて考えれば、目標策定の高度化において、今はまだ活用されていない事後評価あるいは追跡評価の成果を、この部会はよく分析し、そこから何かインプリケーションを得るというようなやり方をすれば、非常に効率的、効果的かという感じを受けました。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 土井委員。

【土井委員】
 私は、領域アドバイザーを今、務めておりますし、それ以外にも中間評価とか事後評価などに携わらせていただいておりますが、冒頭に御説明のあったCRESTとERATOがあると思いますが、ドリルダウンをしていくときにCRESTですと研究総括は公募するわけで、ドリルダウンしたものがそのまま素直にいろいろなテーマを選んでいくことができないわけですね。ERATOの場合は、研究総括は、そのドリルダウンしたものに対してどういうグループでやるかというのを体制作りすることができるわけで、そこが大きな違いだと思います。今回はそういう意味でCRESTの方だけが御紹介があったのですが、そういう意味ではCRESTのところで今、曽根総括からお話があったように、内部での連携とか、ドリルダウンをうまくできなかったところをいかに改善していくかというやり方をされたわけで、そういうものを他の領域でも、そのうまいやり方を、ベストプラクティスをきちんと学んでやっていくような仕組みがまだ現在はないのではないかと思いますので、そういうところは是非、せっかく評価したのであれば、そういうベストプラクティスを生かしていくということが大事なのかなというのが1点目であります。
 2点目は、研究主監会議というところで、この図を見ると、CRESTとさきがけ、ERATOに関してどういうふうにドリルダウンしていくかというのが決まっていくように書かれているのですが、1つ見えないのが、CRDSがございますよね。ですから、CRDSもこの領域のテーマの設定に関わっているわけで、どういうプロセスでやったのが一番ドリルダウンとしてよくいったのかという、その評価というんですか、評価すると言うと、余り評価はしたくないのですけれども、よかったものはこうなんだと、やっぱりそこのドリルダウンのプロセスでよかったベストプラクティスというのも、できれば蓄積していくような形にして、それがあれば戦略目標、どういう形でやればよく、それが研究領域のテーマに落ちていったときにどういうふうなドリルダウンの仕方をすればいいかというところが見えてくるのかなというふうに、今、お話を伺って思いました。
 以上です。

【小賀坂次長】
 運営についてお答えしますと、領域運営におけるベストプラクティスの共有については、新規領域が発足するときに、研究主監と研究総括との意見交換会というのがございます。その場で、成功事例をいろいろお示しして、こういう運営方法があるということの共有を図っております。できる限りのことを行っております。
 それから、片岡先生御指摘の事後評価のモチベーションというお話ですが、戦略事業では、過去5年間において研究が終了し公開された事後評価の結果については提案書にお書きいただくことにしております。それにより、過去における研究の成果の評価について、事前評価の材料として取り込むという工夫を何とか行おうとしております。

【西尾部会長代理】
 私は、平成22年から5年間研究主監を務めてきました。先月まで研究主監を務めていましたが、その間に特に行ってきたことがございます。それは、戦略的創造研究は戦略目標の下で独創的な基礎研究を行うという原則を徹底的にベースとしながらも、募集要項から評価のありようまで、研究主監のまとめ役である中村栄一先生や山本嘉則先生のもとで毎月のように議論してきたということです。現在までに、先ほどご報告があったような段階まで何とかたどり着きましたが、波多野委員の先程の御発言で労が報われたような気がしている次第です。
 先ほど、土井委員がおっしゃった、戦略目標等の設定と、もう一方の研究領域の設定および研究総括の選任等のところについてですが、私が平成22年に研究主監になった当時には、この両者に大きな溝があるように思いました。文部科学省側では、戦略目標を設定する際に、その戦略目標を受けてのJSTの研究領域設定に関してある程度の想定あるいは期待をしながら審議がなされる。ところが、JST側に戦略目標に渡った後は、その想定とは少し異なる仕上がりになってしまうことがある。一方でJST側としては、戦略目標の設定には直接携わることができず、受け身的に研究境域設定をして行かざるを得ない。そのようなことからも、文部科学省とJSTが対峙する雰囲気がありました。ところが、現在JSTに出向された安藤参事役もそうですし、岩渕室長もそうなのですが、文部科学省の方々がJSTの研究主監会議に必ず出席いただいて、いろいろなコメントや御意見をいただいたりすることで、今では双方の風通しが非常に良くなったのではないかと思います。
 ただし、先程来問題にしていています戦略目標を設定するサイドと、戦略目標をもとに研究領域を設定するサイドがより緊密な連携関係を構築した方が良いのか、そうではなくて両者は独立性を保った方が良いのか、そこら辺の議論は一度していただく必要があるのではないか思います。
 現在は双方が対峙しているのではなく、シームレスな状況をお作りいただいているという努力は認めながらも、本来はどうあるべきなのかということはお考えいただく必要があるのではないかと思います。
 次に、曽根先生のお話を聞いて非常に感銘を受けたことですが、ユビキタスという概念が出てきたのは1991年、ゼロックスのパロ・アルト研究所のマーク・ワイザーからと言われていますが、その後現実世界で広まっていくにはさまざまな壁がありましたしかし、先生がナノシステムという概念を提唱されたことによって様々な技術革新が起こり、ユビキタスが、IoTやビッグデータと相まって現実的になっている感があります。曽根先生が、単なるナノテクノロジーではなくナノシステムとして研究開発なされたところが、その実現に大きく寄与しているのではないかと思いまして、その先見性に非常に敬意を表します。

【曽根研究総括】
 先見性と言われてしまうとお恥ずかしいのですが、最後、説明しなかったのですけれども、17ページ、確かに半導体が盛んだった頃は、いろいろな半導体の可能性の中でナノシステムを考えていましたこれは2008年当時、私が使った図を取ってきたのですが、先生がおっしゃるように、当時はセンサーネットワーク、これでサイバー空間とリアル空間をつなげるとの考えです。また、データセンターへの期待が大きく、そこでそのような膨大な情報の中から新しい知見を発見するんだとの考えです。ただ、これは概念がかなり先走っていて、これに関する研究のトライアルもなされたのですが、やっぱり今、時代が進み、IoT、この言葉で表現されるようになってきました。情報爆発と当時言っていたのはビッグデータに変わりましたし、センサーネットワークはIoTに、ユビキタス・コンピューティングはサイバーフィジカルシステムと表現されています。これが今、かなり具体的にこれを実行できるステージに入ってきたのかなと。そういう意味で時代はぐるぐる回っていくのかなという思いをここに入れました。

【岩渕基礎研究推進室長】
 西尾委員御指摘の点について。文科省とJST・AMEDの間の風通しをなるべく良くするということで、当然、お互い役割分担はあるわけですが、今もなるべくコミュニケーションを密にするよう努力していますし、今後ともそのように努めたいと思っています。

【川上臨時委員】
 文部科学省、JSTの評価は素晴らしい仕組みで、世界でも一番やっている方だと思っています。たまたま、2年前に私、厚生労働省の戦略研究の検討会の委員をやっているのですが、その中で世界の医療系の大きなグラントの評価をどうやって行っているかという資料を分担で作ったことがあり、お役に立てるか分かりませんが、後でお送りします。例えば、イギリスのリハビリテーション障害者の研究費とか、ビル&メリンダ・ゲイツ財団がどのような評価をしているかとか、イギリスだと高等教育協議会とか、リサーチカウンシルがどういうことをやっているかというのをまとめたものがございますのでお送りします。これを見ていて思うのは、先ほど有信先生がおっしゃっていたのは全く私も同じ意見で、アカウンタビリティーに対する評価系というのはすごく今、どんどん世界的にも重要視されています。特に私は専門が医療ですので、医療ですと、医療技術評価(ヘルステクノロジーアセスメント)は、いわゆるテクノロジーアセスメントとは違って、大きな違いは、医療は税金でやっているというところから社会のアカウンタビリティーがあるために、例えば費用対効果というところでも重み付けというのが最近はやっていまして、これはヨーロッパの方が進んでいます。ヨーロッパでは、マルチ・クライテリア・ディシジョン・アナリシス、MCDAという考え方があって、例えば、MCDAの中では、この評価項目を達成していれば何点というのを、何領域から点数を付けるんですね。その点数というものが単なる投資に対する評価というものだけではなくて、係数みたいな形でそれを表すことによって定量的に費用対効果というものを投資に対して示すということが、試行錯誤されながらもこの数年行われていると思うんです。2008年ぐらいからか。こういうことも我々も考えていかなければいけないと思っています。
 あと、1点、短くですけれども、私は政策のための科学プログラムの京都大学の拠点長もやっていますが、社会実装をするためにすごく大事なことは、規制がどうなる、例えば先ほどのセンサーの技術もそうですけれども、例えば医療の規制がある、あるいは総務省の規制があるというところがあったりして、技術が開発されてから、じゃあ考えましょう、ネゴしましょうっていうと競争力を失うんですね。世界的な科学技術競争の中では。なので、やはりある程度の戦略目標があり、研究しているのであれば、並行して走らせる形でそういったレギュラトリーサイエンスの部分や、あるいはリテラシー、ELSIのようなところに関しても並行してやっておいた方が、結局のところ、世界競争では勝てるのではないかと、すごくこの数年実感しています。
 以上です。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 どうぞ。恐縮ですが手短にお願いします。

【阿部委員】
 私も、先ほど御意見がありましたけれども、このCRESTの中間評価の時期が結構早いんじゃないかなと。やっぱりなかなかやり始めてみないと分からないことって多いですよね。多分、始めるときって、経済的効果がこう出るって書いてあっても、ほとんど当たらないと思うんですよね。ですから、始めるときは、いかにその技術が革新的であるかということを念頭において選んでいただいて、それでやはり中間評価ももう少し長い時間を取って見ていくという方が、このCRESTとか、経産省とか、我々産業界とはまた少し違うと思うので、是非そういう視点を入れてやっていただきたいなと思います。我々も産業界とはいえ、これは10年で見極める、これは5年で見極めると。あるいは具体的内容は申し上げられませんけど、これは多分50年後だろうなと。本当に当社の利益に大きく寄与するのは多分50年後だろうなというのもやっていますので、やっぱりそういう目でCRESTの運営をお願いしたいなと思います。
 以上でございます。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 ほかにはよろしいですか。
 それでは、多分まだいろいろ御意見があるかと思いますが、本日のところはただいまの御審議いただいた内容を踏まえつつ、次回以降の審議に続けたいと思います。次回では、戦略目標及び研究開発目標の評価に関し、諸外国の事例などについて事務局から御紹介いただき議論を深めたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、議題2に移ります。数学イノベーション委員会における調査検討状況について審議を行いたいと思います。数学イノベーション委員会は、本部会の第1回で設置し、その後、委員会の主査を務めていただいております若山委員を中心に議論を行っていただいていますが、委員会の検討状況を報告いただき、本日の部会での議論を踏まえて、委員会での議論を更に深めていただきたいと思います。数学イノベーション委員会の主査を務めていただいております若山委員より、現在の調査検討状況について御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【若山臨時委員】
 はい、分かりました。
 まず、お手元の資料2-1、2-2と。2-1の方から、少し私の方から御報告したいと思います。
 まず、この部会の以前から、前期と書いてございますけれども、数学イノベーション委員会というのが設置されておりまして、数学・数理科学と諸科学・産業との連携による研究を通じて、諸課題の解決に貢献するとともに、既存の枠組を超えたイノベーションを生み出し、社会に広く貢献するための方策について検討するのが目的でした。そのために平成23年6月に先端的基礎研究部会の下に置かれておりました。そして、26年8月に報告書「数学イノベーション戦略」を取りまとめた次第です。
 この4月からですけれども、きょうの議題にしていただくものですが、戦略的基礎研究部会の下に本数学イノベーション委員会が設置されました。別紙の方を少しごらんいただくとよろしいかと思いますけれども、委員が今期15名おりまして、大きくまずお話ししておきますと、半数ぐらいが広い意味での数学を専攻して活躍されている方たち、正確に言いますと半数である7名か6名が広い意味での数学あるいは統計を専門とされている方たち。6名の方々が、例えば物性理論であったり、生命科学、バイオインフォマティクスだったり、情報、機械工学、そういう方々。それから、産業界からお2人のメンバーがおられまして、一人は鉄、それの製造、それからプロセス、そういうところに積極的に数学的アイデアを取り込んでいきたいと考えておられる方。それからもう一人は、花王という会社ですけれども、マーケティングに関する事柄、そういうところに数学のシステムを応用していきたいとお考えの方。そういう構成になっております。
 これまで、この4月より4回の検討を重ねてまいりました。数学の活用により解決できる問題を明らかにし、数学研究者につなぐ機能、それから問題解決に向けた研究を行う数学研究者の活動を支援する機能、それから3番目に数学研究者が提案した数学的アイデアを使えるようにする機能について検討を進めました。例えば、数学というのはある種の言葉の学問ですけれども、それを応用するといったときに、現在ではソフトウエアを作るということが大きな達成というか、成果となってまいりますけれども、そういう際にプログラミングウエア、ソフトウエア、今申し上げたように、そういうのを支援する機能等を備えた拠点の必要性について整理いたしました。詳細についてはこれから事務局の方から御説明いただきますけれども、資料2にあるとおりです。今後は、数学イノベーションに必要な人材の育成を含め、更に検討を深めていく予定にしております。
 それでは、粟辻さんの方からお願いします。

【粟辻融合領域研究推進官】
 では、続きまして、今、簡単に若山委員の方から説明がございましたけれども、資料2-2に基づきましてごく簡単に御説明させていただきたいと思います。
 今、お話がありましたように、数学イノベーションの推進に必要な機能についてということで少しこれまでの議論を踏まえた整理をしております。それで、文章の部分は時間もございませんので省略しまして、一番裏に概要をまとめたポンチ絵が付いておりますので、それに基づいて簡単に御説明させていただきたいと思います。
 一番上に、現行の課題として3つ書いておりますけれども、諸科学・産業から見て、数学・数理科学研究者の姿がなかなか見えづらいですとか、あるいは、こういう諸科学・産業等と連携する数学・数理科学研究者支援の仕組みがまだ十分ではないとか、最後に、何か問題解決のために役に立ちそうな数学的アイデアが出てきても、それを実際に使えるようにしてやる、そういう仕組みがまだ十分ではない、こういった問題、課題といったものが現状ではあって、それを解決するために、その下の青い部分の枠の中にあるような、数学イノベーション推進拠点に必要な機能というものを整理してまとめています。
 大きく分けますとAとBというふうに2つありまして、Aの部分が数学の活用により解決できる問題を明らかにして、それをしかるべき数学研究者につなぐ機能ということでございます。前半部分は、下のマル1、マル2というふうにあるように2つありまして、一つは社会や諸科学・産業等から、数学の活用により解決の可能性があるような問題を見いだすというような、どちらかというと、こちらは数学側から積極的に問題を見出していくというような機能。マル2は、諸科学・産業等から相談を受けた問題を数学が本当に生かせるのかという観点からふるいにかけてやるような機能。マル3が、そういった問題を、しかるべきふさわしい数学・数理科学研究者につなぐ機能ということでございます。
 Bが、その後の、じゃあ実際にそういった問題解決に向けた研究をする数学・数理科学研究者を支援する機能という形でまとめていまして、まず、マル1がそういった諸科学とか産業等の問題に取り組む数学・数理科学研究者の活動を支援してやる機能ということで、こういった数学・数理科学研究者を配置してやるとか、あるいは、そういった研究者各々が用いている数学的な手法とか理論を共有して議論する場、あるいは国内外の研究者が一定期間滞在して議論するような場、こういった場を運営する機能が必要だというのがマル1です。
 マル2が、こういう議論の中で、こういう数学的なアイデアが問題解決のために役に立つということが見えてきた場合に、なかなかそのアイデアだけでは諸科学とか産業等の方の、特に現場がただちにそれを理解して使えるという形にはなりませんので、そこにありますように、数学的アイデアを実装して諸科学とか産業の現場が使えるようにしてやるような、そういう人材を配置してやる。具体的には、例として挙げてありますように、プログラミングとかソフトウエア化等ができる人材を配置し、数学・数理科学研究者とお互いに連携協力しながら問題解決に向けた研究を進めていくということが必要ではないかというのがマル2でございます。
 マル3は、こういったところで見えてきた使える数学的な数学というものを外に向けて、特に諸科学・産業等に向けて発信する機能が必要で、それを通じて数学の潜在力への諸科学・産業化の認知度が向上し、新たな問題の発掘の促進につながるということが期待でき、また、新たな一種の良い循環が生まれるのではないかということでございます。
 それから、右の端に書いてありますのが、こういったものを設けることによってもたらされる、あるいは期待される効果ということで、当然のことながら諸科学とか産業等の問題を解決して数学イノベーションの実現を図るというのが直接的な効果、あるいは目指すべき点なのでございますけれども、それ以外にもこういった諸科学とか産業等の問題に取り組んでいる数学研究者を外から見えるようにしてやるとか、あるいはミッションを明確にしてやるといった効果が期待できるということでございます。
 これが今回、少し整理した課題を踏まえた、これを解決するためにどんな機能が必要なのかということをまとめたものでございます。
 今後は、先ほど少し若山委員からも御紹介がありましたように、数学イノベーションのために必要な人材をどう育成していくのかということについても少し焦点を当てながら検討を進めてまいりたいと思っております。
 若山先生、少し補足があればよろしくお願いします。

【若山臨時委員】
 数学イノベーション委員会における今後の検討に関する問題意識がございます。それをお話ししまして御意見を頂戴できればと考えております。
 今のポンチ絵のところの最後の成果例というふうなこともありますが、圧倒的効率化であるとか、異常発生前の対応を可能せしめる、これは予知とか予見とか予測とかいうものに関係するかと思います。ビッグデータという言葉でも象徴されますように、近年の計算の性能の目覚ましい発達によって、諸科学や産業界においては、数学が関与する課題が著しく増大しております。しかしながら、いまだに十分には使われていない20世紀以降の現代数学の出番、それが待たれているというふうに私たちは考えております。20世紀に発達しました数学、現在でも数学分野の中で発達しているものは著しく抽象的なことが多くありまして、それが直接の技術とかに関係して貢献していくというのは難しいように見えます。しかしながら、例えばビッグデータなんかは、数学者の中、私もそうですけれども、ある種の幾何学的な対象だと考えております。ですから、20世紀に発達した、例えば抽象的な幾何学、代数幾何学であるとか微分幾何学、そういうものがそこに使えるようになってきた。それから、いろいろな抽象的な概念が計算機の発達によって、逆に実際に計算できるようになってきた。昔は定義はあって、おもちゃみたいなものは計算できたけど、それ以上の込み入ったものは計算できなかったということがございます。そういうことがございまして、最近では、たんぱく質の構造分析であるとか材料科学に対しても数学が貢献し得るということが見えてまいったわけです。また、さらに、このような諸科学や社会における課題の解決に取り組むことによって、数学における新研究領域の出現も期待されると。ここが一つ、また大事なことだと考えております。
 このような環境の下で数学、統計学を積極的に活用した科学技術・社会システム等におけるイノベーション、数学イノベーションと呼んでおりますけれども、促進する必要があるわけでありますが、その多くはやはり諸科学、産業界における数理的課題における研究者の関心を高めることにより起こっていくものだと考えております。したがいまして、数学イノベーション創出には、数学系の学部、大学院等で学び、研究を行った経験のある研究者と、それから諸科学分野や産業界の研究者、技術者との連携の機会の創出支援のほか、数理的考察を多くする諸科学分野の理論研究者の育成や、さらには実験系研究者の育成を行う大学院等における現代数学教育に実効的に取り組むことが重要だと考えております。
 同時に、純粋理論研究を行う数学者の研究環境の向上というものを図るということも大きなイノベーションを将来に生む源泉になると考えておりまして、こういう観点から今後検討を進めていきたいと考えている次第です。
 以上です。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、御質問、御意見のある方、お願いをいたします。

【鈴木臨時委員】
 ありがとうございます。特にライフサイエンス、バイオインフォマティクスの人材育成という観点から、数学に非常に期待したいところなのですけれども、例えば、弊社は最近、新たな人の雇い方を始めまして、2日大学で働いている方が3日弊社で働く、このようなことというのは、これはアメリカの例なのですけれども、日本でも可能になってくるのでしょうか。

【若山臨時委員】
 これは数学だけじゃないですけれども、クロスアポイントメントという制度が、例えば私のおります九州大学でも、ほかの大学もそうですけれども、ございまして、導入されておりますので可能です。

【鈴木臨時委員】
 ありがとうございます。

【大垣部会長】
 有信委員。

【有信委員】
 いろいろ御検討されて、非常にいい方向に行っているという印象を持っています。ただ、いつも言っているのと若干反対のことを言いますけれども、数学に関しては、どちらかというと余り応用側に引き寄せられて、役に立つものだけの方向に収れんしていくのが多少心配で、前にも似たようなことを申し上げましたけれども、ただ、これからの検討課題の中で、いわゆる新しい現代数学の研究者だとか、現代数学の研究者の研究環境の改善を含めて検討するということをおっしゃいましたので、少し安心していますけれども、ここにあるような拠点とそういう部分との関わり合い、ここを是非うまくやっていくということと、役に立つ数学だけをやっていればそれで済むかというと、これはもう既に、別に数学者がやる必要はないかもしれないことですよね。逆に言うと。だから、本来、数学者がやるべきことというのがあるような気がしていて、これは例えば数学の構造だとか、あるいは非線形系の構造だとか、代数系の構造ということを含めて、そういう部分のところもどこかでこの拠点にうまく絡むようなことを考えて検討していただければというのが私の要望です。

【若山臨時委員】
 ありがとうございます。
 先ほどのCRESTのお話にもありましたけれども、やはり研究というのはとがった研究とうのを目指しているわけです。深く研究したいというのが常にあるわけですけれども、ただ、狭くなっていくということはございます。そうしたときに、歴史を振り返っても、役に立つということを考えなくても、ほかの分野の課題、社会の課題というのが出てくることによって、それが新しい数学を生むということが大いにあります。そういう意味で、そこは単に今あるものを使って貢献していこうという態度ではなくて、新しい問題が見出されてくることが期待される点です。そこに新しい数学が生まれる。それが新しくまた貢献していくと。そういう正のスパイラルが将来的に起こっていくような、そういう拠点の形成、それから連携が必要だと考えておりますので、先生の御指摘はまことにそのとおりだと受け止めております。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 じゃあ、簡潔にお願いいたします。

【土井委員】
 ありがとうございます。
 今の議論とも関係すると思うのですが、1つ、この絵で見たときに、アカウンタビリティーを高めるということも非常に重要だと思いますが、文科省としては数学に直接というわけではありませんが、ポスト「京」のところでもどういう問題をやっていくかというシミュレーションの話とかいろいろありますし、人材育成でもデータサイエンティストの人材育成をどうしようかということで関係している部分がありまして、ですから、そういうものと数学イノベーションとして目指しておられるものが、この絵を見ると余り違いがないように見えてしまうので、多分、今、有信委員が御指摘された、とがっている部分としてどういうものを目指されているのかというのが、ここにもう少し見えるようになるといいのかなと感じます。
 そうしないと、今もう既に考えられている施策との違いが少し見えてこずに、ちょっと言葉は悪いですが、数学者がいろいろなところの御用聞きに回るような、何かそういうイメージになってしまうと、多分目指していかれているところとは違うので、そこを明確にもう少し描かれているといいのかなというふうに感じました。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。

【若山臨時委員】
 ありがとうございます。御指摘のとおりかと思います。やっぱり数学の強さというのは、ある種の問題に応じてそれを定式化していくということもございますけれども、難しい問題が解けないときに何が起こってきたかということを、歴史を振り返ると、新しい言葉、概念、それを見付けてきたんですね。そういうところが、逆に言うと問題はないところに研究はないというところもありまして、今、先生が御指摘になったところは委員会の中でも大変注目しているところでございますので、検討していきたいと思います。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 ほかになければ、これでよろしいでしょうか。
 それでは、本日の議論を数学イノベーション委員会において引き続き検討を深めていただきたいと思います。
 議題は以上ですが、事務局より2点、説明がございます。1点は、競争的研究費改革検討会中間取りまとめを踏まえた制度改革の検討状況についてであります。お願いいたします。

【岩渕基礎研究推進室長】
 その後のWPIの件も併せてお話し致します。

【大垣部会長】
 はい。

【岩渕基礎研究推進室長】
 資料3及び資料4について御説明いたします。
 資料3は、競争的研究費改革に関する報告事項です。この件、年初より産業競争力会議、あるいは科学技術・イノベーション会議など、オールジャパンで議論が始まっており、例えば間接経費30%というルールを普遍化していこうというような議論が出ているところです。この部会で議論をしております戦略創造事業やAMEDの事業にそうした改革からどういう影響が生じるのかについて簡単に御報告いたします。
 「1」ですが、まず、この部会で議論している事項と特に関係がある部分です。競争的研究費改革の議論の中で幾つか言われている点があり、例えば、戦略創造と科研費の連携を図っていくべき、そうした連携を図りながら目標を作るべき、というような御提言があります。あるいは、戦略的基礎研究における目標設定などにおいてPDCAサイクルを審議会での透明性ある議論に基づき回していくことは大事であるというような御提言もあります。あるいは、国際融合研究が大事であるという観点から、目標等策定の過程において国際展開を十分に踏まえた検討を進めていくべきという御提言も頂いております。こうした競争的研究費改革に関する提言については、もちろん今の戦略目標等策定指針においても、こうした考え方は十分に含まれていると思いますが、さらに今後、策定指針の改定を行っていく上で、こうした競争的研究費改革の議論を踏まえていくということが大事だと思います。
 「2.その他」です。この部会の審議事項に関わらない点ではありますが、広く戦略的基礎研究に関わることとして、競争的研究費改革の中で言われていることが幾つかありますので、簡単に御紹介いたします。1つ目の丸ですが、若手研究者をはじめとする研究人材に対する支援の在り方の改善が必要という議論がなされています。この点につき、今、文科省あるいはJST、AMEDの方で幾つかの対応策を検討しているところですが、例えば、若手のキャリア形成に係る組織的取組について、研究課題を公募する際に、こうした取組がしっかり行われていることを確認するということ。あるいは、若手研究人材のキャリアパス支援に資する方策を講じるということで、例えば、ポスドクの方などが産業界の方とコミュニケーションをとる取組みとして、NSFにI-Corps、イノベーションコープという施策がありますが、そうした仕組みを取り入れていくこと。あるいは、ポスドクの方に、産業界でのインターンシップの機会を設けることなど、様々な方策を検討しています。また、研究代表者の人件費の一部について、研究費の直接経費から支出可能とする方策についても検討中です。
 2つ目の丸でございますけれども、研究設備・機器の共用の促進を行うべきということがこの改革の中で提言されております。この提言についても、戦略的創造研究推進事業等の公募要領などにおいて、設備・機器の有効利用を明示するなどの制度改善の方策を検討しています。
 3つ目の丸、研究力強化に向けて研究費改革を加速すべきということで、具体的な提言を幾つか頂いています。例えば、CRESTにスモールスタート方式を導入すべきというような提言を頂いています。スモールスタート方式とは、例えば中間評価などのタイミングで研究課題間の再編を行い、最強チームを作っていくという考え方が大事ではないかというような提言で、こうした提言を具体的にどう取り入れていくのか、今、文科省、JSTの方で検討しています。また、成果を下流につなげる仕組みの強化を検討せよという提言もありますので、この点についても、データベースを活用した下流機関との連携促進、あるいはフィジビリティスタディーの導入というようなことを検討しています。また、国際融合研究に向けて外国人研究者を研究代表者として我が国に招へいして、プロジェクトの可能性を検討せよという提言もありますので、この点も、どのようなことが可能か、例えばERATOの研究統括に国外からリクルートするというような可能性について検討しています。また、若手研究者等の「挑戦」的な研究の機会の充実等についても提言を頂いており、そうした取組についても、鋭意検討しています。
 続きまして、時間もありませんが、資料4です。世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に関するこの部会での今後の審議予定について、改めて御紹介させていただきます。これまでのこの部会での審議実績ですが、過去3回の部会で御議論を頂き、ヒアリング等も実施した上で、前回会合においてWPIプログラム、今後の新規拠点整備などの重要性について確認し、今後更なる検討課題としてこの議論を深めていくという方向性を共有したところです。
 今後、この部会における議論の予定ですが、まず、今週金曜日に、本部会の委員によるサイトビジットを予定しております。現時点で6人の委員の方から御出席という連絡を受けております。WPI拠点のうちの一つである東京大学Kavli IPMU拠点を訪問していただき、実際のWPI拠点の運営状況等を実地に確認をしていただき、今後のこの部会での政策立案の参考としていただきたいと考えております。
 また、WPIプログラムについては、今年10月の中旬にWPIプログラム委員会という会合があります。これはWPIプログラムのガバニングのための委員会でして、委員長は元京大総長の井村先生に務めていただいております。このプログラム委員会においても、過去のWPI事業の成果をレビューしながら、新規拠点整備の必要性、あるいは補助金終了後の既存拠点に対する制度的ないし財政的支援の在り方について検討をしていただき、委員会の見解を取りまとめていただく予定で
すので、この取りまとめを我々としては待ちたいと考えます。
 以上のような成果を踏まえまして、次回11月13日のこの部会において、改めてプログラム委員会の検討結果の報告などを受け、新規拠点整備の考え方、あるいは補助金終了後の既存拠点への制度的ないし財政的支援の在り方についての検討を再開したいと考えており、平成28年、来年の夏までに一定の結論を導けるよう、今後、この部会での御議論を頂きたいと思っております。
 以上です。

【大垣部会長】
 ありがとうございました。
 時間もあれなのですが、特に何か確認されたいこと、御質問ございますか。

【若山臨時委員】
 確認というか、ちょっと違うかもしれませんけれども、特にCREST、戦略創造研究推進事業の中で、きょうも御紹介いただきましたように、やはりいろいろな分野の人たちが交わると非常に良いことが起きるということは経験的に分かっているわけですけれども、我が国におけるこういう改革強化のときに、人文社会系のアイデアというのを前向きに捉えていくというのが、なぜか文字として抜け落ちていることがよくあると思うんです。しかし、今後の、例えばエネルギー問題一つを見ても、自然エネルギーとかそんなのを考えても、技術だけではまさしく難しいですし、かといって技術のないところで人文社会系の議論をしてもやっぱり難しいと思うんですね。そういう両者がお互いに技術は何があるのかということも含めた議論ができる、そういう研究ができるという、ある意味ではミッションドリブンな人社研究というか、そういうものが何か少し言葉として入っているといいなと思います。

【大垣部会長】
 ありがとうございます。
 それでは、よろしいでしょうか。
 それでは、8月21日の東大のKavli IPMUの訪問に関しましては、詳細をもし必要な方は事務局にお問い合わせいただきたいと思います。
 それでは、時間となりましたので、本日は以上で終了とさせていただきたいと思います。
 最後に今後のスケジュールについて事務局から説明をお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 先ほどWPIの方の説明はありましたけれども、資料5の方に今後の予定として、11月13日に次の回を予定させていただいております。
 本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様に御確認いただき、文科省のホームページに掲載させていただきます。
 なお、本日の資料につきましては、封筒に入れて机上に残していただければ、事務局から後ほど郵送させていただきます。

【大垣部会長】
 どうもありがとうございました。
 以上をもちまして第4回戦略的基礎研究部会を閉会といたします。皆様、どうも大変熱心な御討議をありがとうございました。

─了─

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