数学イノベーション委員会(第21回) 議事録

1.日時

平成27年8月6日(木曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省17階 研究振興局会議室
東京都千代田区霞が関3‐2‐2

3.議題

  1. 数学イノベーションに向けた今後の推進方策について
  2. その他

4.出席者

委員

 若山委員、合原委員、今井委員、大島委員、グレーヴァ委員、國府委員、小谷委員、高木委員、常行委員、中川委員、樋口委員、舟木委員、森委員

文部科学省

 生川大臣官房審議官(研究振興局担当)、行松基礎研究振興課長、粟辻融合領域研究推進官、田渕基礎研究振興課課長補佐

5.議事録

【若山主査】
 それでは、定刻前ですけれども、ただいまより第21回数学イノベーション委員会を開会いたします。
 本日は、酷暑の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、長谷山委員、本間委員から御欠席との連絡を頂いております。また、大島委員が少し遅れてこられるとの連絡がございました。
 それでは、本日の議事を進めるに当たり、事務局より配付資料の確認をお願いします。

【粟辻融合領域研究推進官】
 まずは資料の確認をさせていただきます。議事次第等々の後、資料1がこれまでの主な御意見、資料2が「数学イノベーション推進に必要な機能について(案)」という資料でございます。資料2-2として、ポンチ絵を一つ入れております。それから、資料3-1、これが数学イノベーションに必要な人材の育成に関する検討についてというペーパー、それから、資料3-2が関連データ、資料3-3が同じく関連する概念図という資料でございます。あと、参考資料といたしまして、参考資料1が前回の議事録、それから、参考資料2が「数学イノベーション関係 人材育成に関する整理表」という横向きの資料でございます。あと、机上で数学イノベーション戦略を付けております。
 以上でございます。

【若山主査】
 どうもありがとうございました。

【粟辻融合領域研究推進官】
 あと、事務局で人事異動がこのたびございまして、研究振興局長として小松が着任しております。それから、研究振興局担当の大臣官房審議官として生川がこれも先日着任しておりますけれども、新しい研究振興局長の小松の方は所用のためにきょうは欠席させていただいております。
 それでは、生川の方から一言御挨拶させていただきます。

【生川大臣官房審議官】
 8月4日付けで研究振興局担当の審議官に着任をいたしました生川と申します。新米でございますが、是非よろしくお願い申し上げます。

【若山主査】
 どうぞよろしくお願いいたします。

【生川大臣官房審議官】
 よろしくお願いします。

【若山主査】
 それでは、きょうの予定は半分ぐらいが前回からの数学イノベーションの推進の方策ということで、来週ございますこの委員会の上部である戦略的基礎研究部会への検討状況の報告という位置付けの案についての審議です。
 それから、もう一つは、今後、秋以降、御議論いただかないといけない、これまではむしろあえて少し制限的にやってきたわけですけれども、人材育成に関しての御議論の出発点にさせていただきたいというふうに考えています。
 それでは、まず、事務局の方でこれまでの議論の整理と取りまとめの案を作成いただいておりますので、御説明していただきたいと思います。

【粟辻融合領域研究推進官】
 まず、資料1はこれまで第18回から3回かけて4月以降御議論いただいたものの概略を整理したものでございまして、改めてこの場で説明するのは割愛させていただきます。
 資料2-1がこれまでの御議論を踏まえて少し、前回、検討の方向性という形で紹介させていただきましたものに若干肉付けをして整理をしたものでございます。このポンチ絵の資料2-2と併せて、まず、私の方からきょうは御紹介させていただこうと思っております。
 まず、資料2-1でございますけれども、「はじめに」というところに日付を書いておりますが、昨年の8月に科学技術・学術審議会の先端研究基盤部会の報告書として数学イノベーション戦略というものを取りまとめております。
 また、これと並行して、具体的な取組として、数学・数理科学と諸科学・産業界の研究者などとの「出会いの場」、あるいは、「議論の場」としてのワークショップなどの開催の支援ですとか、あるいは、両者の協働による研究を支える研究費、あるいは、研究拠点の整備といったものをいろいろ実施してまいりました。
 今後はこういった現状を踏まえて、数学イノベーションを進める上でどんな課題があるのかということを整理して、その解決のためにどのような機能が必要なのかということを中心に整理を行ったということでございます。
 以下、1.が「数学イノベーションを巡る現状について」、それから、1枚めくっていただきまして、2ページ目の下の方からが、「数学イノベーションを進める上での課題」、それから、3ページ目の下のところが、それらの課題の解決に必要な方策という形でまとめております。
 まず、1ページ目の「数学イノベーションを巡る現状について」というところでございますけれども、(1)が「数学・数理科学の重要性の高まり」というところで、これも以前から言われていることでありますが、一つ目のポツにありますように、いわゆる大量で複雑なデータの入手が非常に簡単になっていったと。その結果、そのデータの持つ意味を知ってデータを活用することが問題解決の鍵を握るようになってきているというようなことですとか、あるいは、経済・金融システム、社会システム、環境・エネルギー問題、災害の予測・防災等々、特定の学問分野や業界に固有の既存のモデルだけではなかなか捉えきれないような複雑な現象とか問題が非常に増えているというような。
 さらに、これまでの延長線上の研究開発ではなくて、既存の枠組みを超えて、既存の枠組みをいわば破壊するような、そういうイノベーションを実現するには、これまでにない発想、あるいは、ものの考え方が必要であるということ。
 こういった背景を受けて、諸科学共通の言語であり、物事を抽象化する力を有している数学・数理科学への期待が高まっています。例えば、複雑な現象における本質的な部分を抽出してうまく単純化してやることで、例えばデータ解析の大幅な効率化を図ることができるとか、あるいは、将来の変動の兆しを検出することができるなど、数学・数理科学の力を発揮できるような場面が増大しているというのがこれまでの周辺状況でございます。
 こういった点も踏まえて、(2)が、これまで、あるいは、今やっていることを少し簡単に整理しています。
 1枚めくっていただきまして、大きく分けますと1、2というふうに二つありまして、1が数学・数理科学と諸科学・産業等の研究者の「出会いの場」、「議論の場」としてのワークショップ等の開催を支援ということで、これは平成24年度から開始しているいわゆる数学協働プログラムの中でいろいろ支援をしたり、あるいは、それ以前からいろんな取組が行われているものでございます。
 2が、こういった両者の協働による研究を支える研究費ですとか、あるいは、研究拠点の整備で、研究費の例としては、JSTの戦略的創造研究推進事業で、平成19年度から「数学と諸分野の協働によるブレークスルーの探索」という領域が始まっていること、あるいは、これは既に終わっていますけれども、FIRSTの最先端数理モデルプロジェクトが行われたということ、さらに、昨年度から新たにJSTの戦略的創造研究推進事業の数学関係の領域が始まっているということ、こういった例が挙げられます。
 また、研究拠点の例といたしましては、大学共同利用機関の統計推理研究所、あるいは、共同利用・共同研究拠点の京都大学の数理解析研究所があったわけですけれども、ここ一、二年で九州大学のマス・フォア・インダストリ研究所、明治大学の先端数理科学インスティテュートが新たに共同利用・共同研究拠点として認定されるに至っております。
 こういった「出会いの場」とか「議論の場」の支援、あるいは、研究費、研究拠点の整備、こういった活動を通じて、諸科学・産業と連携して研究をしているような数学・数理科学研究者が育ち、研究者間のネットワークの構築、あるいは、連携のノウハウの蓄積といったものも一定程度進展してきているところでございます。
 特にこのJSTの戦略的創造研究推進事業の場合の数学の領域の領域会議の経験などを通じて、日頃は別の分野の問題に取り組んでいる数学・数理科学の研究者同士が、各々が使っている数学的な手法・理論について情報交換して議論するということが問題解決への新たなアイデアを思い付かせるという観点から非常に効果的であるということが実証されているところであります。
 以上がこれまでの現状ですが、では、現状、どういう問題や課題があるのかということを2.のところで整理しております。
 (1)が諸科学・産業側から見た場合、いわば数学・数理科学の外から見た場合の視点ということでして、幾つか課題があるというふうに考えています。
 一つは、数学・数理科学はいろんな問題解決に役立つというけれども、どのような問題の解決に数学・数理科学の力が役に立つのかというのがよく分からないということ。それから、1枚めくって3ページ目に行きまして、数学・数理科学研究者の姿が外からは見えづらいので、仮に諸科学・産業側が自分たちの問題に数学・数理科学の力が役に立つかもしれないというふうに思ったとしても、誰に相談すればいいのか分からない。あるいは、どの程度具体性のある問題を提示すればいいのかもよく分からないといった問題がございます。
 (2)が、今度は、数学・数理科学側のどちらかというと問題ですけれども、こういった諸科学・産業と連携する数学・数理科学研究者を支援するような仕組みが必ずしも十分じゃないということで、そこに四つほど点を上げております。一つ目は、数学・数理科学を活用することにより解決できそうな問題を見いだすための活動の場や仕組みが十分にないということ。それから、二つ目は、こういった問題を受け付け、諸科学・産業から数学・数理科学が役に立ちそうな問題を受け付けて、適切な数学・数理科学の研究者につなぐような仕組みが十分ないということ。三つ目は、そういった問題の解決に向けて、様々な専門分野の数学・数理科学研究者が意見交換し、議論するような場や仕組みができていないということ。それから、最後、四つ目は、連携相手となる諸科学・産業などに向けて、数学・数理科学が非常に効果を生むんだといった有用性を示すような組織的取組が十分ではないこと。こういった点が挙げられるかと思います。
 (3)で整理しているのが、今度は、数学的なアイデアを本当に使えるようにするような仕組みが十分でないということでして、これは要は諸科学・産業が抱える問題の解決に向けて、数学・数理科学研究者が数学的なアイデアを提案することはできて、かつ、それに相当効果がありそうだということまでには至っても、それを実際に実装して諸科学・産業の現場が使えるようにする。例えば、プログラミングしてソフトウエア化することはなかなか数学側だけでは困難である場合が多いので、せっかくの良い数学的なアイデアが埋もれてしまって、うまく生かされなというおそれがあるんではないかということでございます。
 こういった問題点を解決するために、どのような方策や機能が必要なのかを3.のところに整理しています。
 (1)のところで、大きく分けてA.とB.に分けて整理していますけれども、A.の部分は、数学・数理科学の活用により解決できる問題を明らかにして、数学・数理科学研究者につなぐ機能、つまり、問題を明らかにして、うまくつないでやる機能ということでございます。
 1が、数学・数理科学を活用することによりうまく解決できそうな問題を見いだす、問題を発掘してやる機能。それから、最後、4ページ目に行きまして、2が、諸科学・産業等から相談を受けた問題をうまくふるいに掛けてやるような機能。3が、1や2の問題をその解決に向けて取り組むのにふさわしい数学・数理科学研究者につないでやる機能ということでございます。
 B.は、この後、実際にそういった問題の解決に向けた研究を行う数学・数理科学研究者をどう支援するかということでございまして、1はそういう具体的な支援の機能として、諸科学・産業の問題に取り組む数学・数理科学研究者を配置するということのほかに、彼らが取り組んでいる実際に用いている数学的な手法とか理論について情報を共有して議論するような場を提供するような機能ですとか、あるいは、世界トップクラスの研究者と国内の若手をはじめとする研究者とが一定期間滞在して、ディスカッションして、新たな着想につながるような、そういう場を提供する機能といったものが必要であるという形で整理をしています。
 2が、数学的なアイデアを実際に使えるようにする機能ということで、具体的には、こういった問題の解決に向けて提案された数学的なアイデアを実装して、諸科学・産業の現場が実際に使えるようにするための人材、プログラムとかソフトウエア化ができるような人材を配置して、数学・数理科学研究者と密接に連携しながら研究を進めることができるようにするということが必要だという形で整理しています。
 3が、そういった使える数学的手法を外部に向けて発信する機能でして、こういった問題の解決に役立つ数学的な手法や理論を整理して、諸科学・産業に向けて分かりやすく発信する機能というものが必要であるということです。これによって、数学・数理科学の持つ潜在的な力への認知度が高まり、新たな問題の発掘が促進され、好循環につながることが期待されるということでございます。
 最後の(2)は、(1)で述べたような機能を備えた拠点などを整備することによって、上記の2.に掲げた問題の課題の解決につながるのはもちろんですけれども、それだけではなくて、諸科学・産業等の問題の解決に取り組む数学・数理科学研究者の集団を外から「見える」ようにすることで、外部からの認知度が高まることが一つ期待されるのと、あとは、こういった数学・数理科学研究者のミッションとして、諸科学・産業の問題を解決するというミッションが明確化されて、いわばそういう問題解決に専念できるようになるという効果が期待され、数学イノベーションの一層の加速につながるのではないかということが期待されるということでございます。
 これはこれまで議論してきたことを整理したものでして、あと、それを1枚の絵で示したのがこの資料2-2の上の紙でございます。真ん中の青い枠の中で書いてあるところに、3.の(1)で述べた部分の機能を、左側がA.で右側がB.という形で整理をしております。
 あと、この資料2-2の上の部分で整理したものをイメージとして、どういうステップの段階で必要な機能なのかを整理してみたのがこの下の資料でして、これは前回、樋口委員からプレゼンをしていただいた際に、樋口委員のプレゼンの資料の中に入っていたものを少し加工させていただいて、この上の数学イノベーションの推進に必要な機能との関係性を少し図示してみたものでございます。
 一言で言いますと、左から右上へ進んでいくわけですが、最初の一番左側のいわば数学・数理科学の関係者と諸科学、あるいは、企業の関係者との間の出会いの部分が一番左側の部分でして、そこから一番右上の双方ウイン・ウインの関係になると、いい成果が出るという部分に至るまで、三つの谷があるのではないかということでございます。
 一つ目の谷は、実際にこの諸科学とか産業が抱える課題を数理的な課題として設定するのはなかなかできないという谷でして、これを乗り越えるために、A.の機能が必要であり、これによって、数学の問題として見えるようになっていくということでございます。
 その後、B.の1の機能、今であれば、JSTの戦略的創造研究推進事業の数学領域などの研究費がその研究を支援するわけですけども、その後、研究の成果が自動的に実際に実用につながってくかというと、必ずしもそうではなくて、2の谷があるんじゃないかということです。
 2の谷というのは、計算をスケール化することがなかなかできないとか、あるいは、いわゆる使える化がなかなかできないということでして、それをサポートするために、今、上で述べたB.の2の機能が必要ではないかということです。具体的には、サイエンスプログラマーや計算エンジニアみたいな人たちのサポートが必要で、それによって、今度は数学が使える化されるということでございます。
 3の谷は、その後、できた成果が実際に企業のニーズに必ずしも100%合ってなかったり、あるいは、企業戦略とずれがあったりする場合もあり得るわけで、それを乗り越えるために、例えば産学共同研究担当のURAなどの支援が必要で、双方の価値の共有化を通じて、ウイン・ウインの結果に維持できるということでございますが、この3の谷につきましては、最初の1の谷とか2の谷の段階から、3の谷が深くならないように意識をして取り組む必要があるという点も御指摘があったところでございます。
 資料の2-1と2-2の説明は以上とさせていただきまして、御意見を頂ければというふうに思います。
 以上でございます。

【若山主査】
 ありがとうございました。
 冒頭に申し上げましたように、これはちょうど来週あるんですが、戦略的基礎研究部会で現状の検討の報告をするという、そういう位置付けのものです。取りまとめ案ではございませんけれども、言葉遣い等もそれで意味するところのニュアンスが変わってきたりしますので、今の図も含めて、御意見、御質問などございましたら、お願いいたします。どなたからでも、どうぞ。

【國府委員】
 資料2-2の絵が分かりやすいので、つい絵を見てしまうのですが、下の方の三つの谷があるというところで少し違和感というか、どうなのかなと思うところがありまして、一つは、その最初の上り坂が一番大きい坂なので大変な部分であるという意味だと思うのですが、この見える化の坂とその次の使える化のところが上り坂になっていて、その間に数学・数理科学者がしっかり問題の解決に当たるというところがあるのだと思います。実はそれが本当に大事な部分だと思うのですが、それがちょっと少し明確に見えていないように思います。このことは1の説明文を見ますと、そういうことかと理解できるのですが、この絵では、山の頂点のところに活動を支援する機能という部分が来ていて谷になっていないので困難さが表現されていない。むしろ、1の谷と2の谷の間にもう一つ深い谷があるという認識の方が、数学への支援がなぜ必要かというのが分かるのではないでしょうか。
 逆に、このままですと、必要なサポートの部分に、多分一番中心になるべき数学・数理科学の研究者というのが見えてこない感じがしますので、それを明確にしていただくのがいいのではないかと思いました。
 もう一つは、見える化のところの数学コーディネータというのも何をどういう意味でコーディネートするのかというのがはっきり分かるといいと思うのですが、それは文中にも余り書かれていないように思われます.私はここはやはり数学のしっかりした素養を持っている人がコーディネータに入っていただくというのがいいのではないかと思います。このことは前、前回、前々回のときもちょっと申し上げたことだと思いますが、それを御検討いただければと思います。

【若山主査】
 ありがとうございます。

【粟辻融合領域研究推進官】
 文章の方に、実はこの資料の2-2のポンチ絵の上の方のポンチ絵は、この最初の2-1の文章を絵にしたものですので、いわばこの文章と一体となって報告の一部を成す、報告の概要を示すものという位置付けですけれども、この下の方の三つの谷の資料については、今回の報告内容を前回の樋口先生のプレゼンの内容とうまくリンクさせることで、その位置付けを明確にできるかなと思いまして作ってみたものですので、報告の内容にそもそも入れるべきかどうかは少し考えているところです。
 今の御指摘のとおりB.の1の機能、いわば戦略的創造研究推進事業などのような研究をする部分は何かすごく簡単そうに誤解されるおそれは確かにありますので、その辺は少し注意して、必要があれば、修正したいというふうに思います。

【小谷委員】
 同じ趣旨なので、いいですか。

【若山主査】
 どうぞ。

【小谷委員】
 私もこの概念図は非常に問題があると思います。これ、数学が数学イノベーションに貢献するために必要なものは、データサイエンティストと数学コーディネータとサイエンティフィックプログラマーがいればいいように見えます。それは全くそうではありません。第5期基本計画中間取りまとめにも書かれているように、世の中は大変革時代を迎え、これまでと全く違う社会の姿が見え始めています。どうやってこれまでの蓄積をシステム化するかが鍵となっています。
 それを実現するためには、数学者がイノベーション創出に参画しなきゃいけないというのがこの数学イノベーション委員会のメッセージですし、また、大きな集団の数学者がこういう問題に関心を持って参画できるようなシステムを作るべきだと思います。
 そういうことが概念図に全く入っていないので、発するメッセージとしてはふさわしくないように思います。

【合原委員】
 関連の意見、いいですか。

【若山主査】
 どうぞ。

【合原委員】
 僕も同じ感じを持っていて、國府さんが言ったみたいに、やっぱりこのB.の1の谷の次の山のところが谷としては本当は一番深いところで、かつ、そこが一番数学者が貢献できるところなので、そこをきちんと、こういう表現をするんだったら、谷として表現する必要があると思います。
 もう一つは、ここで言っている3の谷というのは企業側の話なんですよね。一貫して、諸科学・産業等と出てきているんですけれども、諸科学との連携と産業との連携というのはかなり異質なので、そこはきちんと区別しておかないと。諸科学との連携の方がよりやりやすいし、それをやりたい人はいっぱいいるわけですよね。ところが、それが産業になると、なかなか数学者にとっても壁が出てくるので、そこをうまく分けないと、誤解を招くかなという印象を持ちます。

【若山主査】
 ありがとうございます。どうぞ、グレーヴァ委員先に。

【グレーヴァ委員】
 ちょっとだけ違う観点から思ったんですが、この一通りの流れとかが1回終わって、それで終わりじゃなくて、常にやっぱり状況が変化していて、不断にもう一回最初の谷から始まると、そういうのも書いていただかないと。数学者は1回問題を解いたら終わりなのかというと、そうじゃなくて、常に数学者は必要で、我々みんな必要で、常に状況が変わってまた新しい問題が出てくるというのがもうちょっと入っていると、なおいいように思いました。

【若山主査】
 どうもありがとうございます。

【中川委員】
 産業の問題でも数学の力を借りることは必要です。なぜかというと、産業の問題は複雑で一つの学問領域だけでは解決できないものがたくさんあります。異分野融合という視点で数学の位置付けを明確にできればと思っています。

【森委員】
 この図の描き方の問題かと思うのですが、数学外の人から見るとこの図のように見えるのかもしれません。ですから、もう一個、谷を足すだけだと、何となく違和感を与えるだけのような気がします。描く人にお願いするだけなのですが、向こう側にも本当の谷があるんだというふうに描いてもらえると面白いかなと思いますね。

【若山主査】
 どうぞ。是非御意見いただければと思います。

【國府委員】
 これは来週の部会でどういう形で提案されるのでしょうか。

【粟辻融合領域研究推進官】
 この委員会の上の部会は再来週の予定なんですけれども、これまで4月以降、この数学イノベーション委員会で4回審議を重ねてきたということの報告の一環として、現時点でこういう整理をしていますというのをこの資料2-1や2-2のポンチ絵の特に上の部分を中心に使って説明をしていろいろ御意見を頂こうかなというふうに思っております。

【行松基礎研究振興課長】
 そういう意味では、この絵も含めて、今までの検討状況ということでございまして、その後、人材育成の議論も含めていただいた上で、やはりそれも人材育成、数学イノベーション推進に必要な人材育成というところもここにフィードバックをした上でまた最終的な形になるだろうというふうに思っております。取りあえず今の段階での検討状況ということで。

【合原委員】
 全体の構造がよく分かってないんですけど、その部会というのはどういう部会で、そこに提案して、その後、どう戻ってきて回っていくのかという。

【行松基礎研究振興課長】
 この委員会の親部会になる戦略的基礎研究部会でございまして、そこで御報告をした上で、こういう視点もあってもいいんではないかみたいなところの御議論とかですね。

【合原委員】
 それがフィードバックされてここに戻ってくる。

【行松基礎研究振興課長】
 ありましたら、こちらに向かってフィードバックをしてということになります。

【合原委員】
 なるほど。

【若山主査】
 この後の人材育成というところでも御議論になると思うんですけども、いわゆる数学を、数学科ですかね、数学系で育った数理科学、数学者、数理科学者という教育というのが一つ、それから、諸科学分野で理論研究が必要な研究者、その人たち、理論研究というのはある意味で数学を使う研究というところが大きくありますので、そういう部分の人材育成、それも併せてこの中では議論していただきたいというふうに考えています。
 そういうことが実際にはこういう最終的な、もし、もしというか、いずれまとめ案を作るんですけれども、こういう表現、ポンチ絵を用いた表現の中にきちっと入れていかなければいけないと、そういう認識でやっております。
 でも、きょう頂いた、先ほど頂いた御意見はとても大切なポイントだと思いますので。

【小谷委員】
 これはどういうふうに生かされるのでしょうか。来週提出されるということですが。

【若山主査】
 再来週です。

【小谷委員】
 再来週ですか。それはそれまでに案を作り直されて、我々にメール等で確認いただくということでしょうか。

【若山主査】
 そうですね。文章のところはもうある程度、特に文言のところは今日の審議の後は御一任いただきたいというふうに思っているんですけれどもこの絵のところは、本文ではないですけれども、御指摘のように、一番目が行くところですので、それも併せてメールで。

【粟辻融合領域研究推進官】
 この下の絵はあった方がいいですよね。

【若山主査】
 そこも今、御意見いただければいいと思うんですけどね。

【粟辻融合領域研究推進官】
 確かにこの下の絵は、これまで例えば戦略的創造研究推進事業などで数学者と様々な分野の人の共同研究とはもう既に行われていて、成果の芽も出つつあるんだけれども、それを前提とした上で、では、何が足らないのかという視点で多分作っているようなところがあると思うんです。
 ですから、この数学者のいわば一番難しいところはもうある程度実績があるという前提で、でも、まだ足らない部分があるよというのを浮き彫りにするために、このような絵になっているところがあります。ただ、この絵を初めて見る人が見れば、何か少し誤解を、つまり、一番難しいところが何か簡単そうに見える、あるいは、支援が必要ないように見えるというおそれもありますので、何かコントラバーシャルであれば、このような絵を付けるのは避けるという手もあるのかなという気もしますけど、どうでございましょうか。

【樋口委員】
 よろしいですか。前回発表させていただいた元図を作った者として、発言させていただきます。図のベースラインは、数学・数理科学者の人たちと問題解決を望んでいる方々が一緒にやっていく中で、大きな問題が解決に近づくことを表しています。そこでは、数学・数理科学者との協働がドライブになっています。その気持ちは、この図がだんだん右上がりになっているところに示されています。
 でも、その途中においてトラップされがちなような場所がある。そこにおいて、触媒となるものがあったならば、大きく加速するんではないかという気持ちでこの絵を描いたものですから、そういうふうにして理解していただきたいです。
 ただ、この図がそのまま出たときに、そのベースラインとしての大きな枠組みというところが見えないのであれば、今いろいろ発言があったような誤解を招く可能性はあるとは思います。絵を作った者の気持ちとしては、今説明したようなところです。

【若山主査】
 それは前回もよく皆さん、御理解いただけていると思います。
 ただ、やっぱり絵を、ここにあることから、クリアに意見も頂いていますので、出す、出さないは別としまして、それも含めて、まだ少し時間がございますので、御意見いただければと思います。

【大島委員】
 よろしいですか。

【若山主査】
 どうぞ。

【大島委員】
 この下の絵は、大事な絵だと思います。しかし文章との位置付け関係が分かりにくいです。例えば第1、第2と第3の谷があり、数学の見える化、数学の使える化、価値の共有化という言葉は文章に明確に示されていないです。
 特にB.が大事で、その部分が補足の図だと思いますが、文章との対応をきちんとした方が、効果的になると思います。
 特に価値の共有化の部分で「使える」がクオーテーションになっていますが、クオーテーションマークで特に強調する必要はないと思います。

【グレーヴァ委員】
 ちょっとだけいいですか。

【若山主査】
 どうぞ。

【グレーヴァ委員】
 あと、やっぱり一つの誤解の源泉はやっぱり谷の部分が余りに大きい箱で描いてあって、黄色い箱がちょっと小さ過ぎるというか、それでやっぱり谷が強調され過ぎてしまっているのではないかと思います。なので、ここで話し合うべきはこの黄色い箱の部分だったということで、ビジュアル的問題ですけど、黄色い箱の部分をもっと強調して、まずそちらをちゃんと見ていただくような形にすれば、もうちょっと誤解が減るのではないかと思いました。

【森委員】
 先ほどこのデータサイエンティスト、数学コーディネータ、こういう名前の人だけが大事なように見えるというような趣旨の言葉があったので、それならば、まず、この山のどこかに数学者という言葉を入れておかないといけないように思いますけど。

【國府委員】
 私がこうであればよいと思う数学コーディネータというのはやはり数学者だと思います。つまり、持ち込まれた問題とか、発見された問題を数学の問題だときちんと認識して、しかも、それをどういう問題と見るかというのは、やっぱり数学の十分なトレーニングを受けた人でないとなかなか難しいと思われるからです。前に東大の山本先生がドイツの研究所の例を紹介されていて、その例では、数学コーディネータという人がいて、その人が研究所内のグループに問題を割り振っているというお話でしたが、1つの研究所であればある程度、スタッフというかグループの数が限られているので、それなりにできるのかもしれないですが、もっと広い範囲でやろうとすると、それはなかなか難しいので、やっぱりきちんと目が利いた方、イメージとしては若い人がそういうことに携わるというのはなかなか無理で、やっぱり第一線級の人がそういうことに当たるぐらいの気持ちでないといけないのではないかと思っています。
 そういう意味で、この数学コーディネータということをどういう意味で使っているのかというのが重要なポイントのような気がします。

【粟辻融合領域研究推進官】
 済みません。数学コーディネータというちょっと文言がそもそもいいかどうかというのはいろいろ御議論があると思いますけども、後の人材育成の方にもまた出てまいりますので、そのときにまた議論させていただければと思います。

【國府委員】
 済みません、あともう一つ。ポンチ絵の中のB.の下の1の下に四角で、「諸科学・産業等の問題に取り組む数学・数理科学研究者を配置」という言葉がありますが、これに当たるものが文中にはないような気がするのですが、私が見落としているだけかもしれませんが、いかがでしょうか。

【粟辻融合領域研究推進官】
 この4ページ目、文章の最後のページの上の5行目ぐらいのところにB.1があって、1のこの「具体的には」というところの。

【國府委員】
 「配置するとともに」のところですね。

【粟辻融合領域研究推進官】
 3行目、ええ。

【國府委員】
 ではこれは、どこに配置するというイメージになるんでしょう。

【粟辻融合領域研究推進官】
 課題解決型の研究をするようなチームを設けて、そこを主導する数学・数理科学の研究者を拠点のようなものを設けて配置するという、イメージです。

【合原委員】
 ただ、拠点が(2)で初めて多分出てくるんですよね、4ページ。

【粟辻融合領域研究推進官】
 そうですね。

【合原委員】
 だから、そこは順番を分かりやすくされた方がいいかなと思いました。

【粟辻融合領域研究推進官】
 はい。1のこの3.のこの文章の3.の整理の仕方は、(1)でどういう機能が必要なのかというのを書いて、(2)でそういう機能を備えた拠点があると、こういう効果がありますよというような形をしているので、必要な機能が先にあって、それを備えた拠点があるとこんなことになりますよという順番で整理しているので、最初から読むとそういう違和感があるんだと思います。

【グレーヴァ委員】
 それはそのポンチ絵のどこに書かれるんですかね。「必要な機能」というのが書いてあって、拠点があるといいですという部分はどこに書かれているのですか。

【粟辻融合領域研究推進官】
 このポンチ絵にはそういう意味では明記はされていなくて、この文章の方でいうと、この3.の「必要な方策」の(1)の「今後必要となる機能」の部分を特出しして明記しているというものです。

【國府委員】
 つまり、上の絵の真ん中の大きな丸い青っぽい四角全体が拠点であるというイメージで見ればよいということね。

【粟辻融合領域研究推進官】
 そこは少しこれから我々も考えなければならないと思うんですけれども、こういう機能が今十分ではないということなので、それをうまく充実させていく方策を考えなければならないということだと思います。

【合原委員】
 ちょっとそこは微妙ですよね。これ、拠点とか書いてあれば、より分かりやすい絵にはなるんだけど、その拠点というのをここで今この段階で書くかという問題もあるので、そこの難しさはあるんだと理解していますけど。

【高木委員】
 済みません、よろしいでしょうか。この、まず、資料2-1の文章の進め方は、先ほどどなたかもおっしゃっていましたけど、もともと数学には他の分野で利用できるものが既にあるのだけれど、それが使えないから問題だ、それを使えるようにすることが大事だみたいな、何となくそのような論理になっているように思うんですよね。ですから、その辺りのことを踏まえると先ほどの谷の部分の意味合いも少し違ってくるんじゃないかと思うんですが。
 それで、この谷の絵に関して言いますと、数学者がずっとこの谷を下ってまた山を登ってという解釈をしますと、最後たどり着いたときに、その人は数学者なんでしょうか。依然としてずっと数学者のままなのか、それとも、その分野の問題を解く人なのか、その辺りのところがどうもはっきりしないので、議論がなかなか噛(か)み合わないじゃないかと思うんですが。
 もし単に既にある数学を使うだけであれば、数学者そのままでいいんですが、もし新たな問題を数学的手法を使って解かないといけないとすると、その人は、数学者でもあるかもしれないけど、その分野の専門家でもある。ここでは飽くまでもずっと数学者ということになっているので、そうすると、この絵はどういうモデルなのか、その人は例えば今はバイオの問題を解いているけど、あしたには、材料科学の問題を解くようなイメージなのか、あるいは、そうではなく数学者がバイオの専門家になっていくというモデルなのか。その辺りのイメージの共有が皆さんでできていないから、こういう議論になるのかなと思いました。

【若山主査】
 それは大変重要な点でして、先ほど、人材育成ということも言いましたけれども、それから、数学コーディネータのことも。國府先生の理解が私、正しいというふうにちょっと思っておりまして、委員長ですから控えるべきですけど、少し意見を述べさせていただきます。
 数学イノベーション推進というのは、もちろん数学者の力を大きく発揮するということ、それから、そのことによって、数学によって、実際問題解決するということでコントリビュートするということ。それから、課題解決といったときに、今やひとつのディシプリンだけではなかなか解けない問題が出てきていて、またそこに新たな数学の問題も出てくると。そういう意味で、数学イノベーション推進という、この言葉の中には、単に数学者の外、その応用に向いたところだけをやっていこうという話ではないわけですね。
 そういう意味で、人材育成といったときにも、先ほど少し申し上げましたけど、いわゆる数学系の学生の育成、その人たちが数学の研究をやって、将来、数学コーディネータになるかもしれない、数学コーディネータとしての役割を果たすかもしれないんですけれども、先ほど申し上げたように、今、理論科学というのが、理論科学と非常に何か数学を使う科学というのが結構似ている、似てるというのはちょっと荒っぽいですけれども。理論系の研究者は数理的な考察をかなり行うということが大きくなってきていますので、そういう分野で少し、少しというか、数学的な能力も議論等で高めながら、こうやっていくということも人材育成の中には入ってきている。
 そういうことを全体推進していくのが、人材育成面からいっても、数学イノベーションに関わる重要部分だというふうに、そういう位置付けでこの会議はある程度進められていると認識しています。
 この絵は、ただ、最終的には取りまとめ等で本当にこういう議論をこれまでしてこなかった、この上部の部会でも余りしてないわけですけれども、そうした方たちが見たときにも、誤解のないようなものに作っていく必要になると考えています。そして作ることは重要であるというふうに思っていますけれども、この時点で、親部会にお見せするかどうかは少し、もし御意見がございましたら、お願いしたいと思います。どうぞ。

【中川委員】
 数学イノベーション委員会で目指すものが数学と諸科学・産業の連携で何かを一緒に作っていくというのであれば、別に数学者に限定する必要はなくて、一緒にやっていくというスタンスでよいと思います。
 例えば数学コーディネータも数学者に限定するのでなく数学を活用する方人たちが数学を勉強して、数学者と一緒に新しいものを作っていく、そういう連携スタイルがあってもいいかなと思います。

【若山主査】
 規定するという意味では全然ありませんで、國府委員の意見も、ベリーライクリーに数学をやってきて、抽象的な面から、これとこれはとか、こういうことだったらこの数学が、例えば既存の数学を使うのであれば、こちらに振り分けるとか、そういうことができる人はいわゆる数学で育った人が中心じゃないかということをおっしゃったんだと。

【中川委員】
 でも、何か目的を達成する上で、例えば数学者がやるのと、ほかの分野の人が数学を勉強してやるの、どちらが早くゴールに到達できるかというような議論は今までしていないと思いますが。

【若山主査】
 それは多分、十分にやってないと思うんです。おっしゃるとおりだと思います。それは人材育成のことについて余り踏み込まなかったということがございます。
 こんなことを言ってはいいかどうか分かりませんけど、もう新聞発表なんかでは、ここにずっと御出席いただいておりました常盤研究振興局長が高等教育局長におなりになりました。研究局長として、本委員会には普段より最初から最後まで出席してくださっておりまして、教育の面でも高い関心をお持ちになっているというふうに認識しています。
 その意味で、人材育成の問題が不可欠だということは御認識は深いと思いますので、こういう言い方は良くないかもしれませんけど、少し期待したいなと思うわけです。

【合原委員】
 いいですか。数学コーディネータなんですけど、多分二つの能力が必要で、一つは、数学の深い知識が当然要ります。しかし、他方で、その現象の見方とか、その産業応用の在り方とか、そちらの知識もないと、コーディネートはできないので、だから、そこを中川さんはおっしゃっているんだと思うんですけど。
 したがって、数学者の定義によりますけども、もうちょっと広い意味での数学者と定義しておかないと、数学だけでそういう人材がいるかというと、そんなにいるとは僕は思えないですね。

【若山主査】
 さて、そろそろ。じゃあ。

【國府委員】
 済みません、一言だけ。さっき高木先生が言われたので、この絵を見直してみて、なるほどと思ったのですが、結局、この左端にある2人の人というのは、実は数学者や諸科学の研究者という個人ではなくて、数学という分野と、諸科学を代表する何か一つの分野との、二つ、学問分野ないし学術分野の絵を表しているのだなと理解しました。
 そうすると、最後のウイン・ウインというのは、数学もウィンで、一緒に協働するほかの分野も、それはいろいろな可能性がありますが、ウィンであるということですね。見える化、使える化のところも、そういう形で理解すると分かりやすいのではないでしょうか。一人の個人が最初からこの道をたどっていくとすると、ちょっと変な感じがするところも、このような理解ができる絵であれば、いいのではないかと思いました。

【若山主査】
 ありがとうございます。

【小谷委員】
 ここまで、下の絵についての議論が主になりましたが、この上の絵についてお尋ねします。この絵は提案の文章を見やすい形にしたものですね。この提案書の中の「期待される効果」というところにはっきりと、「(1)の機能を備えた拠点の設置により」と書いてありますが、このことが上の絵のどこにも書かれていないように思います。

【粟辻融合領域研究推進官】
 一番下の4ページ目のこの下のところに書いてある、4ページ目の(2)の「期待される効果」の記述が余りないということ。

【小谷委員】
 ええ。これまで委員会で議論してきて、数学が必要であるということと、現状の課題に対して数学がどのような問題が解決できるかという、機能が書かれていて、最後にこのような機能を備えた拠点の設置により、とある、それがこの提案文章の構造です。ところが、構造の最後の結論が絵のほうには書かれていないので、その構造が分かるように書かれるのがよいかと思います。

【粟辻融合領域研究推進官】
 そこは付け加える方向で考えたいと思います。

【若山主査】
 どうぞ。

【今井委員】
 B.の「問題解決に向けた研究を支援する機能」1のところなんですけれども、数学・数理科学研究者に、修飾語として「諸科学・産業等の問題に取り組む」というのが付いていて、現在そうではない人も取り込みたいのではないかとおもいます。その辺はいかがでしょうか。

【粟辻融合領域研究推進官】
 現に取り組んでいる人しか相手にしないのではないかと思われるという。

【今井委員】
 そのように見えなくないでしょうか。ちょっとそこが気になりました。そうではない人も取り込んで、もっと数学の分野を使ってもらいたいという意図が、これからだと少し見えないのではないでしょうか。

【若山主査】
 おっしゃるとおりで。
 どうぞ。

【舟木委員】
 文章の方はもうそちらにお任せというようなことをさっきおっしゃいましたけれども、ちょっと気になるのは、2.の「数学イノベーションを進める上での課題」、「1.で述べたように、数学・数理科学の研究者側から見た場合には一定の進展は見られるものの」とありますが、これだけ見ると、数学はいろいろと拠点の整備、あるいは、JSTの関係だとか、そういうことをやりましたということになり、ほかに対しては何もメリットは今のところないというふうに読めてしまうんですが。ちょっとこれ、ストーリーとしてこういうふうに作っておられるのかなと思うんですけど、ちょっと私はここが問題だと思いました。

【粟辻融合領域研究推進官】
 進展がある……。

【舟木委員】
 確かに進展はあるんですが、これを見ると、ほかの諸科学等では進展がないというふうに読めますよね。

【若山主査】
 そうですね。諸科学等ではむしろ大きな進展を、それがあるので、こういう数学イノベーション委員会があり、戦略的基礎研究部会で議論するということになっていると。
 絵の方に集中していましたが、きょうはそもそも、最終的にこの本文案の方を御議論いただいて、もちろんそれで最後の文言は取りまとめにお任せしていただきたいという、そういう趣旨で発言したわけです。

【合原委員】
 脳科学委員会だと、こういう文章が出てきたときに、やっぱり2時間の間では読みきれないので、何日か後まで日にちを切って、意見をメールで送ったりするようにしているんですよ。そういうことをされてもいいかなと思うんですけど。この場で全部チェックするというのはやっぱりちょっと難しいですよね、細かいところまで見るというのは。

【若山主査】
 分かりました。短時間ですけれども、そうしたいと思います。
 ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

【森委員】
 申し訳ないですけど、何かこれだと数学者というのはどこに、数学者のグループ、数学者のコミュニティがどこにあるのか分からなくて、大まかな理解のまま言わせてください。
 このB.の1のこの辺りに実はそこに数学のコミュニティがあって、この動いているのは、何ていうか、私の感じで見ると、問題というか、あるいは、問題を抱えた人であって、問題がまずデータサイエンティストとか数学コーディネータになる人たちによって数学者の世界に持ち込まれて、数学者がそれに取り組んで、それが今度は使える方向に向かっていくというふうに私には読めるんですけれども。
 つまり、数学者が問題を実社会に直接応用できるということはまずほとんどなくて、まず、その他分野の人が何らかの法則なりを見付けて数学者に持ち込んで、数学者がそれを洗練化してきちっとした理論に組み上げて、それを実社会に応用されるというのが割とある形だと思うんですね。そう思うと、何かこのB.の1の辺りに数学者のコミュニティが実はあってというふうになると気持ちがいいなと。
 つまり、数学外から普通に見ていると、樋口先生がおっしゃるように、数学者集団は見えずに、この図のように見えるのが実はその数学者のコミュニティが背後にあって、そこと遭遇することによって、大きく事が進展するという、そういうパターンが望ましいというふうに思います。

【若山主査】
 法則の発見というのも、実は数学をバックグラウンドにする人と、諸科学分野の、最初の課題は、疑問はその諸科学分野の人が発見することがほとんどでしょうけれども、そこで法則を見付けていったりするというところもやっぱり一緒にやっていこうという、そういうのも入っていると思います。この図に入っているのではなくて。

【森委員】
 ただ、これで見ると、数学者の存在する余地がないんですよね。つまり、数学というのは、最終的には世の中に貢献しますが、数学者が研究するとき、世の中の役に立ちたいと思ってやるというよりは、学術的好奇心に突き動かされて研究していると思います。
 じゃあ、そんなのは国としてサポートする必要はないんじゃないかというような意見も出ますけれども、それが一番役に立つ形に発展していくのは歴史が証明しているわけです。だから、そういう世界があるんだというのは、この委員会では分かっていてもらいたいと思いますけど。
 だから、この図にどこにもないのは少々ちょっと残念です。

【粟辻融合領域研究推進官】
 図の描き方、あるいは、この下の図をそもそも上の部会に報告するかどうかも含めて……。

【森委員】
 いや、だから、これは数学をどう応用するかということに特化して描いた図なので仕方がないですけども、実は背後にそういうものがあるんだというところが分かるように描けるといいなという、先ほどからの話をつなぐと、そういうことですよね。

【合原委員】
 昔議論した、数学の宝とか、あの部分ですよね。

【若山主査】
 ありがとうございます。

【粟辻融合領域研究推進官】
 それでは、来週の月曜日までに、この本文、あるいは、このポンチ絵も含めて御意見を頂ければ、少し調整させていただきたいと思います。

【行松基礎研究振興課長】
 この谷の絵は、前回の樋口先生のプレゼンの絵を、我々の方でちょっと加工をさせていただいているわけですが、そのときに「数理アカデミアと産業界の密な連携を阻む三つの谷」と、こういうタイトルの資料でございましたので、今おっしゃったような、この森先生が御指摘いただいたような、この数学のコミュニティが見えないというのは、恐らくこの図を語る一人称の人としてアカデミアがあるので……。

【森委員】
 なるほどそうかも知れません。

【行松基礎研究振興課長】
 そういう意味では、その辺の翻案が、我々、ちょっと十分じゃなかったと思います。ちょっと工夫をしてみたいと思います。

【森委員】
 ありがとうございます。別にそれにクレームを付けているわけじゃなくて、この視点で書けば、これはこれでいいんだと思いますけれども。

【行松基礎研究振興課長】
 済みません。

【若山主査】
 ただ、ある意味では、誤解のないものであれば、あの素朴な形の絵もあればいいと思いますけれども、実はきょうもこれだけ御議論いただけたので、絵を作るということも、後で御議論いただく人材育成のこととどうしても深く関係してきますので、そういう意味で、やった方がいいのかなという印象を持っています。
 ちょっとそこのことも含めて、最終的にはこの絵を入れるかどうかはこちらで判断させていただきますけれども、まず、そこも含めて、御意見を頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、次に参りたいと思います。
 事務局から、取りあえずの論点をまとめていただきましたので、その御説明をお願いいたします。

【粟辻融合領域研究推進官】
 資料3-1と3-2、3-3を使って、私の方から、人材育成に関する現状の問題点のようなものと、あと、論点のようなものを整理させていただきましたので、それを紹介させていただいて、御議論いただければと思います。
 まず、資料3-1でございますけれども、3-1の、なぜ数学イノベーションが必要かというところは、これまで同様のことが書いてありますので省略しまして、2.の「数学イノベーションに必要な人材に関して、どのような問題があるか?」というところで、少し問題点を三つほどに分けて整理しています。
 (1)が「人材を巡る問題点」というところで、一言で言うと、抽象的なものを扱う数学・数理科学と、それから、実態的なものを扱う諸科学とか産業との間には価値観の違いをはじめとする壁があって、それを乗り越えることが必要で、そういったことができるような数学・数理科学系の人材が不可欠だということです。しかし、現状は以下のような問題点があるということで、三つに分けて整理しています。
 一つ目は、諸科学・産業の問題に数学を使うことのできる人材が現状では少ないと。これはもう少し詳しく言うと、実はちょっとA)とB)というふうに書いていますけれども、A)の方が、諸科学・産業の問題に取り組むいわゆる数学の研究者が限られており、B)の方は諸科学・産業側において数学を活用できる人材も限定されているということでございます。
 これを示すバックデータとしまして、この資料3-2のポンチ絵をごらんいただきたいのですが、3-2の上の図、トップ1%論文研究チームへの数学研究者の参加割合を日米で比較したものでございまして、少し古いデータなんですが、アメリカに比べて、日本の数学者の参加割合は低いというデータが出ています。
 もう一つは、その下の図ですけれども、これは数学・数理科学関係の学会の会員数を単純に日米で比較したもので、一番左がいわゆる数学関係の学会、真ん中が応用数学、応用数理関係の学会、一番右が統計関係ということで、いずれも数からいうと日本の方が少なくて、特に応用数理、あるいは、統計ではその差が顕著であるということでございます。
 こういった状況からも分かりますように、日本では、諸科学、いわば数学の外の世界の問題に取り組む数学研究者は少ない。また、諸科学・産業においても、数学を活用できる人材が限られているということの裏付けの一つになるのではないかということでございます。
 もう一つ、最初のこの3-1の方に戻っていただきまして、3-1の2ページ目の真ん中辺りの2に、二つ目の問題点として、「大学教育等において数学を活用できる人材の育成が十分でない」ということで、A)の部分が、大学の数学専攻における教育というのはいわゆる数学の教育が中心なので、大学の数学の研究者、いわば数学を作る人材や、高校の数学教員、数学を教える人材の育成が中心となっていて、例えば大学院の専攻プログラムなどによって、数学の外の世界に目を向けさせるようなこと、あるいは、諸科学との壁を乗り越える「分野跳躍力」、データの扱い、統計の能力、そういったものを身に付けさせるようなことは十分ではないということです。
 一部の大学、九州大学、あるいは、明治大学などではそういった取組を行っているわけですけれども、全体としては一部にとどまっているというのが現状だということです。
 B)の方は、情報科学をはじめとする諸科学、あるいは、産業において、大量・複雑なデータの活用等々が研究開発の鍵を握るようになっているので、数学の必要性というのは非常に高まっているんですけれども、では、数学を活用できる人材の育成が十分行われているかというと、必ずしもそうではないだろうということでございます。
 3は、数学専攻学生のキャリアパス、あるいは、評価というものでして、キャリアパスについては、これも先ほどの図の3-2の裏側をごらんいただきますと、これは博士課程修了者の進路を少し調べたデータで、右側が日本数学会による数学専攻の博士課程修了生の修了状況のアンケート調査を2014年に行ったものの結果で、一言で言うと、民間企業に進んだ人は極めて少なくて、いわゆるアカデミアの世界に進んでいる人、あるいは、進もうとしている人が大半を占めているということです。
 左側は、科学技術政策研究所による理学系の博士後期課程修了生の就業状況のアンケート調査で、これは理学系全体ですと、民間企業の進路割合はかなりあるということでございます。
 こういったデータからも分かりますように、キャリアパスというのは数学系の博士課程の修了者の場合は大学等の教育、研究職を目指している人が中心で、企業への就職者というのは全体からすると極めて少ないというデータが出ているということです。
 また、数学会における評価としても、いわゆる純粋数学の成果に対する評価というものが中心でして、3ページ目に行きまして、数学の応用への評価というのは、例えば日本数学会における応用数学研究奨励賞ですとか、あるいは、九州大学などによるジャーナルの発刊などといった事例は見られますけれども、まだ一部にとどまっていると。
 こういったものの背景には、諸科学とか産業と連携しても、数学者はどちらかというと使われる側になってしまって、数学者側の利益、メリットが少ないと思われていることが背景にあるのではないかというふうに、これまでの議論から思われているところでございます。
 それで、その後、4ページ目に「今後の議論の論点」として、論点になり得るものを幾つか抜き出しています。
 大きく分けて、四つありますけれども、一つ目が、「育成すべき人材像」で、ここには数学、さっき出てきました数学コーディネータですとか、特定分野の数理人材とか、あるいは、企業の数理人材、こう三つに整理しています。
 二つ目の丸が、では、どういう能力が必要なのか。数学側で育った人はどうしても数学の中に閉じこもりがちなので、広い世界への関心とか好奇心、あるいは、分野を越える力、チーム力、それから、そもそも必要な数学の能力、あるいは、データを扱う能力とか統計に関する知識がこれまでの議論からすると必要だと考えられます。諸科学・産業側でも、一定の数学の能力が必要ではないかということです。
 三つ目の丸は、では、どういう方法で身に付けさせるのか、あるいは、どういうタイミングがいいのかということで、例えば教育カリキュラムに盛り込むのがいいのか、OJTのような実践を通じたやり方がいいのかと。学部段階からやるのがいいのか、修士課程の段階か博士課程の段階かといった論点があろうかと思います。
 それから、最後の丸は、関係機関、関係者といった一種のステークホルダーがどういう役割を果たすべきかということでして、大学、あるいは、関連の学会、それから、研究者個人、それから、産業界、ほかにもあるかもしれませんけれども、こういった関係機関や関係者がこの後のどういう役割や責任を果たすべきかというのが論点としてあり得ると思っています。
 それで、分かりやすく図示してみたものが資料3-3でございます。上の絵はこれは現状どんなことが行われているのかというのを少し絵にしてみたものでして、現状の取組というクリーム色の部分の中に書いてある部分がそれでございます。
 左側から、中学・高校、大学の学部、大学院というふうになっていまして、中学・高校の部分では、これまで、例えば一部の数学キャラバンというような取組などで、数学が実際に社会に応用されているような、あるいは、ほかの学問分野に応用されているような事例を高校生向けに紹介するような取組などが一部で行われいるということです。
 それから、大学の学部段階では、例えば異分野との交流会を開催するような例や、明治大学のように、学部を設けて「使える数学」の教育をしているような例が少しあります。
 それから、大学院の段階では、九大、東大などのスタディグループや連携ワークショップへの参加、企業へのインターンシップ、それから、昨年から数学会主催で始まった企業と学生との交流会などが行われております。
 こういったものを通じて、これまでは右側が育成すべき人材像というところで、これまでは全国的には数学科ではB.の大学の数学の研究者、C.の高校の教員、こういったものの育成が中心だったわけですけれども、今後はこのA.の部分、数学を活用する使う人材をどう育成していくのかということが重要なのではないかということで、これはここでは数学コーディネータとか特定分野数理人材とか、あるいは、企業数理人材と書いて三つに分けていますけれども、これを図示したのがこの下の絵でございます。
 下の絵は、真ん中の青の濃い部分がいわゆる狭い意味の数学と言われていた純粋数学の世界で、この外側に応用を念頭に置いたいわゆる応用数理ですとか統計なども含めた広い意味の数学者がいます。このほか、周りのいろんな学問分野、経済ですとか、あるいは、製造技術ですとか、あるいは、医学、生命、情報、こういった各分野に数理的な、数学的な研究や仕事をしている人がいらっしゃるわけで、こういった方々とどう連携を図っていくのか、あるいは、こういう方々の活動をどう活性化していくのかということも論点になるのかなと思っています。
 育成すべき人材を考える際に、この真ん中の部分とこの周囲の数学・数理科学の部分をどうつなげていくのかということが重要で、そのためにどういう人材が必要なのかということが議論になるのかなと思っていまして、1.のこの数学コーディネータはここではいわば数学を専攻、バックグラウンドに持ちながら、この外の部分との連携を主導できるような人というイメージでございます。
 それから、2.の特定分野数理人材というのは、ある意味、特定の分野で活躍できる人ということで、これも大きく分けると、数学専攻出身の人と、各分野出身で理論的な研究をしている方、両方いるのかなというふうに思います。
 3.番の企業の数理人材、これも、大学で数学を専攻して産業界に就職するという方もいれば、必ずしも大学の専攻は数学ではないけれども、企業で非常に数理的な仕事をしているという方もいらっしゃると思いますので、そういった方も含めて、どう育成していくのか、あるいは、相互の関係をどう深めていくのかということが議論の対象になるのかなと思って整理をいたしました。
 ということで、私の説明はこのぐらいにさせていただきますけれども、この資料3-1の4枚目の論点の一つ目の「育成すべき人材像」に当たるのが、先ほどの資料3-3の下のポンチ絵に相当するわけですが、この辺を中心に御議論を頂ければなと思います。
 以上でございます。

【若山主査】
 どうもありがとうございました。
 この文章は、ここだけの文章ですけれども、きょうは、今後の議論の論点として、どういう論点があり得るかということをお示しいただいて、少し言葉遣いもすっと入ってこないのもあるかと思いますけれども、今後の議論を進めていく論点を定めるという機会にしたいと思います。このような位置付けのため、その結論を出すかどうかも含めて次回以降になると思います。
 さて、御意見、今ございましたように、論点としては「育成すべき人材像」、数学コーディネータについては、先ほども幾つかの御議論があったとおりです。数学・数理科学者をどういうふうに捉えるかということも関係してくると思います。
 特定分野数理人材、確かに特定分野で活躍されている数理に強い人材というのはおられるわけですけれども、こういう言葉遣いももしかしたら違和感があるんじゃないかと思います。
 企業数理人材、むしろ2.番より3.番の方が企業の中で数学・数理科学の知見を活用して活躍できる人材という意味で、もう少し入ってきやすいかなという気がします。そういうことを含めた育成すべき人材像について、一つ、これは大きなところです。
 それから、必要な能力・経験というのはどんなものかということも押さえておく必要があるだろうと。それから、これらの能力を身に付けさせる方法、タイミング。もちろん、学校だけが勉強の機会では決してありませんので、その後伸びていくという、そういう状況が大事で、数学イノベーションがある意味では浸透するというか、連携が浸透すれば、そこからまた人材は出てくるんだろうというふうに期待します。ただ、大学教育というのは非常に重要なポイントですので、ここについても御議論いただきたい。
 それから、関係機関や関係者が果たすべき役割についてと、このようにまとめていただいていますけれども、このまとめ方も含めて、御意見、頂戴したいと思います。
 どうぞ。

【常行委員】
 育成すべき人材像、数学コーディネータが私、まだちょっとイメージが湧いてないんですけど、これは何ていうんですかね、専門職のようなものなのか、要するに、育成したとして、その人はどういうポストに就いて、それはどういう、どれぐらいの数が必要でと、そういうイメージをちょっと持ちたいと思うんですが、それはどう考えればよろしいでしょうか。

【若山主査】
 そうですね。そもそも数学コーディネータというのは、つまり、数学で育った人と外というのを対極に置いて、そこでの例えば企業、産業界との共同研究をやったときに、言葉が通じないというのが最初のポイントにあったわけですね。
 言葉が通じないのは両方がお互い分かってないということなんですけども、そういう意味で、多分最初出てきた言葉じゃないかと私は記憶しています。

【常行委員】
 役割としては分かるんですけども、そういう人がちゃんと雇用される場所というのはあるんだろうかというところが非常にとても心配なところで、それがなければ、幾ら育てても、どうしようもないですよね。

【若山主査】
 トライアルがあると思います。ちょっと私ごとで恐縮ですけども、九州大学のマス・フォア・インダストリ研究所ではそういう方をあえて教授として採用した経験がございます。今もいらっしゃいます。キャリアは、大学からアメリカで、アンダーグラジュエートは、物理で学位、大学院は応用数学で学位をとられ、その後、ずっと企業で研究開発職に携われた方です。技術部長とかをされた方を教授として招いてきました。

【常行委員】
 そうすると、何か大きな拠点とかプロジェクトとかがあると、そこにごく少人数、1人とか、そういう方はいらっしゃると。

【若山主査】
 そうそう。多分、数学コーディネータといっても、多分、数学コーディネータ、私のイメージとしては、数学コーディネートだけをやるというのではないんじゃないかと思っているんですけども。ほかに御自身の関心のある研究をなさるという、そういうイメージを持っているんですね。
 私たちのところは、最初そういう方がいらっしゃらないと、いろいろな面でにっちもさっちもいかないという面がありましたので、そういう方にターゲットを絞って募集して採用したということがあります。

【小谷委員】
 今の常行先生の意見にも関係しています。人材育成は大切ですが、育成される人は、その10年後、20年後、30年後に社会で活躍するわけで、そのことを認識しないといけないです。ニーズはどれくらいあって、どのような能力を持った人がどれぐらい必要かということを分析しないで、ただ直感的に必要であるから育てろでは無責任だと思います。
 どれぐらい分析されているでしょうか。今の常行先生の御指摘にもあったように、特別な例、特別な場所で例外的にこんな人を雇いますよというような話であれば、組織だった人材育成の対象として考えることはできません。

【若山主査】
 そのことについては、例えば大学院の……、ちょっと話は大きくなり過ぎるかもしれませんけれども、大学院の専門分野における定員とか、すぐそれが教員の定員に関係してくるということで、とにかく取らなきゃというふうなことでずっと来てるわけですけども、本当はそうではなく、今、小谷委員がおっしゃったように、どういう分野の人材が本当に社会として必要としてるかという、それがあって、大学院の定員などが決まっていくのが良いのだと思います。また今、随分と学部から大学院って大学を移動するようにはなっていますけど、それでもやっぱり学部、大学院と割と同じところに行くことが、同じ分野のところに行くことが多いわけですね。
 そういうことも実は特にこの数学という面では課題があるんじゃないかと。ちょっと抽象的な言い方をしてしまっていますけれども、本当にどれぐらいの人が本当に必要であるかと、社会が必要としているかを考えないと。広い意味での社会ですよ。今、この場というわけじゃなくて。それは全体として常に念頭に置いて。

【行松基礎研究振興課長】
 よろしいでしょうか。今回が人材問題、今までいろんな御議論もありましたものを集約をして、この3-1にまとめてございます。それで、ある意味、その出口のイメージがないといけないかなということで、その「議論の論点」というところを御用意させていただいていますけれども。
 この3-1の2.で、どういう問題があるのかというところを上げさせていただいていますけれども、恐らくここの今までの御議論を踏まえて、それから、データなんかも踏まえてこういうところを書いておりますけれども、恐らく我々に見えてないところの問題等もあるんではないかというふうに思っておりまして。
 できれば、その辺りを少し、きょう、いろんな多方面から御意見を頂戴した上で、改めてこの「今後の論点」というところをもう一度御提案して深めていくということをお願いできるといいなというふうに事務局では思っておるんですけれども、いかがでしょうか。

【若山主査】
 ちょっとみんな中途半端になっているんですけど、きょうは、最初に申し上げましたように、今、行松課長からもありましたように、論点をどうするかということをきょうは意見を頂きたいので、中身に入るんではなくて。

【森委員】
 ちょっと尻切れとんぼになってしまったので、結論だけ言うと、つまり、種々の知識や経験が必要なのは数学コーディネータを目標として人材育成をするのは困難で、ある職についている人が経験を積んだ上でなら、数学コーディネータの役割を果たすことができるということを言いたかっただけです。

【若山主査】
 はい。

【國府委員】
 「育成すべき人材像」が1.、2.、3.と分けられていますが、まず前提となるのは、数学・数理科学のバックグラウンドと専門性を持っていて、しかし、その中だけにとどまらずに、諸科学・産業の中に問題意識を持って、そこに進んで出ていこうとする、そういう人をしっかりと人材育成すべきで、そういう人たちが、ある程度の集団として出てくるようになったら、その中で、例えばある人は特定数理人材という2.番の形になる人が出てくるかもしれないし、もちろん企業で活躍するような人になるかもしれません。
 また恐らく、1.、2.、3.には上がってないと思いますが、数学・数理科学の研究者で、不特定分野数理人材というか、別に分野を固定しないけれども、自分の持っている数学的な力量と学識を持って、いろいろな形で出会った様々な分野の問題に、あるときには例えば生命科学、あるときには情報科学かもしれないけれども、そういうところにどんどん出ていこうという、そういう人が出てくれば、一番いいのではないかと思います.その人はひょっとしたら大学でも数学関係の教室や学科に所属できるかもしれないし、あるいは、特定の分野のところに入っていくかもしれませんが、多分一番大事なのは、やっぱりそういうような数学・数理科学の素養を持って外に出ていこうという人をどう育てるかということなのではないでしょうか。

【若山主査】
 どうぞ。

【グレーヴァ委員】
 いいですか、済みません。森先生の御意見を聞いていて思ったんですが、例えば数学科に数学コーディネーションという講座を、いろんな重要な大学に置けば、少なくともそこに1人は雇えるし、何か科目をちゃんと作れば、そんなに全く職業として成立しないとは思えないです。いまだに日本の大学には教養部がいっぱいありますから、教養部の方に例えばそういう科目を1個置くとかも考えられます。それは数学出身者でもいいし、外部でもいいし、何か少しずつそういうきちんとした、数学コーディネーションという分野を作れば、可能性はあると思いました。

【若山主査】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【中川委員】
 企業の求める人材のひとつの姿として、テーマを自分で構想でき実行できる人だと思います。テーマを構想できるということは、そのニーズ、例えば製造現場、研究現場の人とちゃんとコンタクトして対話して、その中から潜在ニーズを見付けて、自分でテーマを作る。テーマは与えられるのではなく、自分で見付けるものです。
 構想したテーマを実現するにはどのような技術課題があり、課題解決にはどのような技術が必要かを整理していくと、多分、全部自分一人では実行できませんので、人を集める。人を集めるということは予算も獲得する必要がありますので、ちゃんと計画を立てて、それを実行することのできる人材が求められます。
 私の理解では、諸科学・産業の連携という観点からは、数学とは異分野の人たちと対話をするための科学技術の共通言語だと位置づけています。
 テーマを構想してテーマを実現できるという意味で、数学と諸科学・産業の双方で、どのような人材を育成すべきかという視点も必要だと考えています。

【若山主査】
 どうぞ。

【合原委員】
 実際にやるのは難しいかもしれないんですけど、そのやり方としては、まずはこの例えば1.、2.、3.に対応する人が現在どれぐらいいるかというエスティメーションがあると、議論がしやすいかなと思うんです。そんなにいないと思うんですよね。パンダの総数より少ないぐらいか、絶滅危惧種ということです。
 その上で、将来の日本の産業とか科学にとってどれぐらい必要になるかという数字が必要で、よく樋口先生なんかがデータサイエンティストが何人必要だけど、今、何人足らないとかいう議論をされますよね。あれ、すごい説得力あるわけですよ。
 だから、そういう話になれば、非常に具体性が出てくるような気がするのです。何人ぐらい必要だということになったときに、その何人をどういうふうに育てていくかとか、どういうふうに配置、どういう分野でそれを受け入れるかとか、何かじっくり議論しようとすると、そういう流れになるのかなという感じがします。

【若山主査】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【大島委員】
 数学イノベーションに必要な人材ということで、もちろん数学の研究者のコミュニティの方々は大事ですが、それ以外の諸科学の方も考慮していただきたいです。例えば、ページ1のA)とB)の議論においてA)だけに偏っていて、B)の「諸科学・産業において数学を活用できる人材」についてなどは余り議論されていないとの印象を受けます。
若山先生が先ほど例にされていた方は、学部は物理の方であり、数学科に行った方だけではなくても数学に従事されている方がいらっしゃると思います。そのような方々がコミュニティにどれぐらいの割合でいらっしゃるかということだと思います。
 アメリカの学会の比較を例として挙げていますが、アメリカでは、応用数学関係の学会は数学だけではなくて、コンピュータサイエンス、あるいは私のような機械分野の方も所属されています。私も実際に日本の応用数理学会に所属しています。
 実際の割合として、数学以外の他分野でどれぐらいの割合の方がいらっしゃるのかを把握しておく必要があると思います。実際に育成すべき人材として、その素養として持っている人材がほかの分野でどのくらいいるのか把握した上で、B)の方もどうやって育成していくかについて触れていただきたいと思います。特に後半の2から3はほとんど数学学科、数学科の方を中心にしているので、その観点も必要だと思いますが、数学イノベーションという観点で見ると、やはりB)を含めたところも入れていただいた方がいいのではないかと思います。

【若山主査】
 ありがとうございます。前々回ぐらいにそういう議論が随分と出たんですけども、アメリカなんかの例を取ってみると、先生もそうですけど、機械工学なんかへ行くと、実は俺はアプライド・マスマティシャンだという人が束になっているというのが普通の状況ですので。私たちが知っているジャーナルというのは、実は例えばMathSciNetを見てあれが数学のジャーナルだと思っていると、それは一部であって数学のジャーナルというのはその意味では物すごくたくさんあるということがわかります。
 はい。

【國府委員】
 それに関連してですけども、私が今関わっていますさきがけ数学協働領域、あるいは、その前の西浦先生のさきがけ領域とかでもそうだと思いますが、そこに応募してくる人の多くは、数学以外の分野出身の人です.そういう意味で、そういうところに応募してくる数学以外の人の関心は非常に高いと感じます。
 むしろ心配なのは、純粋数学の人がなかなか目を向けてくれないということで、期待している数学の持っているパワーが活(い)かせないということが起こっているのではないかと気にかかります。
 ですから、そういう意味で、今の御意見はよく分かるんですが、やっぱり一番私が気になるのは、数学の、純粋数学の人がもうちょっと外に面白い問題があると、そのさっきの森先生の言い方で言えば、数学者としての好奇心を見いだせるような、そういう問題がそこにあるんだということを認識できるようにすることが大事ではないか、役に立つからとか、この分野と協働するといいことがあるからとかいうようなことではなく、やっぱり数学者としての好奇心でそういうところに問題を見付けるような人が出てきてほしいなと感じます。

【若山主査】
 先ほど、尻切れとんぼになりましたけど、ちょっと主査が余り発言するのはあれなんですけど、少しお答えしておきますと、その方は一生懸命働いていただくということで、それが評価です。それ、何を目指しているかというと、そのことによって、産業界との共同研究で割り振りとかが出てきて、違う分野の数学者がそこで結局こっちの問題かもしれないという議論が起こるわけですね。
 そのことによって、要するにもともとバックグラウンドが純粋数学だった人たちが、インタラクションを起こすというか、共通の問題というか、共通の関心を見いだしていくと。その後に、IMIでその人たちが、実はコーディネータの役割をするようになってきているというのが実情です。いつまでも本当にコーディネータ専門職が、例えばIMIにいるかどうかというのはむしろ疑問というか、多分そうはしないと思います。ちょっと分かりませんけど。

【森委員】
 この1.と2.と3.とありますね。あえて言えば、特定分野数理人材とか企業数理人材、2.と3.はスペシャリストで、1.は、ジェネラリストかなと思えます。私が言おうとしていたのは、ジェネラリストだけを育成するというのは何か無理があるなということです。

【樋口委員】
 國府先生の先ほどのお気持ちはよく分かるのですけれども、少し私の意見を述べさせていただきます。例えば、このポンチ絵で2.と書いてあった「数学イノベーションに必要な人材の育成・活用について(概念図)」とありますけど、この構図というのは数学だけではなくて、分野横断の科学全て共通のものなんですね、これは。
 例えばデータサイエンスもそうですし、制御もそうですし、シミュレーション科学も。これは分野横断の科学に関する人材をどのように育てていったらいいかということで、必ず出てくる問題だと私は思いす。
 國府先生の言われるところもやらないといけませんし私、先生の意見に反対しているわけじゃないんです。先生の御意見は、それはある意味、シーズドリブンの人材育成なんですけども、先ほどの中川委員からもありましたように、今のいろんな社会的な課題等々を考えると、ニーズドリブンの人材にかなり要求が高まってきているのではないかと。これは数学だけじゃなくて、分野横断の科学共通の要求ではないかと思うのです。
 その原因は何かと思いますと、やはり人口は減っている、国際競争力も非常に厳しいといった時には、やはりニーズからくみ取って効果的に問題解決をしていくということがまさに求められている点ではないでしょうか。もちろんシーズがそもそもなかったら駄目ですけれども。ニーズドリブン形の人材育成に、数学だけじゃなくて分野横断の科学の多くの領域が気付いてやろうとしているのではないかというふうに私は見ています。

【若山主査】
 ありがとうございます。
 できれば、御発言されてない委員の方、たくさんあり過ぎて発言ができないかと思うんですけれども。よろしいでしょうか。舟木先生、どうですか。

【舟木委員】
 ちょっとまず質問ですが、この資料3-2の1、これはどういうデータなんでしょうか。数学者の定義、数学を専門とする研究者の定義が余りはっきり分からないのですが。

【粟辻融合領域研究推進官】
 定義、ちょっとはっきり分からないんですけれども、ここで言っている数学は恐らくかなり広い意味で取っているんだと思います。

【舟木委員】
 なので、余りこのデータ自身は参考にならないというふうに思っていいんでしょうか。例えば物理学に数学が関与してないと、ちょっとこれはよく分からないので、いろいろ疑問に思ったのはそういうことなんですが。
 本題に戻りますと、キャリアパスの問題というのは、私は何回かお話ししましたが、数学会でも非常に危機感を持って対応しています。資料3-2の3です。ここに数学会で行ったアンケートの結果を載せていただいていますが、今年もまだ整理はできてないですが、3月に行いましたので、またこれを比較し継続して行うというようなことは数学会としても考えております。
 これを見ても、なかなか企業との連携がうまくいっていないことは明らかです。やはりここで議論されているようなことを議論していかなければいけないということは、こういうデータを見ると明らかかと思います。
 数学コーディネータの定義は私もよく分かりませんが、私から見ると、例えば合原先生は数学コーディネータという感じで、合原先生のお話を伺うと、もうそれ自身が数学の問題をたくさんはらんでいますので。
 だから、そういう意味では、その数学コーディネータの育成というものを本当に限定して議論する必要がどの程度あるのか、ちょっと私もよく分からないというか、いろんなところに転がって……、転がっているというと失礼ですけれども、たくさんおられるので、どういうことを論点として挙げるということがいいのかどうか、ちょっとよく分からないという感じもいたします。
 確かに最近もアメリカの人と話すと、STEMといって、数学イノベーション委員会の昨年の戦略にも出ていますが、STEMということは非常に強調していました。STEMとはScience, Technology, Engineering and Mathematicsということで、やっぱりアメリカの意識というのはそういう意味で非常に高いんだと、数学に対する意識というのは非常に高いということはこのことからも分かりますね。数学者が参加している割合ということを、先ほど定義が分からないということを申しましたが、それは非常に感じているところです。

【若山主査】
 ありがとうございます。

【合原委員】
 いいでしょうか。今の数学会のアンケートのところなんですけど、ここでやっぱり見逃しちゃいけないのは、非常勤とか有期雇用の人たちですよね。「高等教育機関での研究教育職(有期)」と、その下の52%のポスドク関係ですよね。この人たちは、一旦職には就いているんだけれども、その先は有限で限られているわけなので、だから、この人たちを更にどうやって育てるかというのも人材教育の中でかなり重要なファクターになるはずなんですよ。
 これは多分、新しく新規に卒業した人たちなんですけども、更にその人たちがかなりの数、蓄積していっているわけです。博士号を持っているんだけれども、要するに不安定なところにいる人たちをどうするかということはかなり我が国の将来にとってもエッセンシャルな問題なので、その人材教育というときにはもちろん学生も考えるべきなんですけれども、こういう博士号を取得していて不安定なポジションにいる人たちを是非含めていただきたいと思います。

【小谷委員】
 この文章にも書かれているように、博士後期課程に来る学生の大部分は研究者になりたいという気持ちが非常に強いと思います。それは数学に限らずですけれども、特に数学は強いと思います。一方で、アカデミアのポジションはそれほどたくさんあるわけではなくて、今、合原先生が指摘されたように、ポスドクになった後が厳しい人もいます。
 大学院博士課程学生が、企業や社会で活躍することに魅力を持つ、そういう人材を育てることも大切ですが、現状で言えば、いきなり博士修了時点で企業に就職するという気持ちを持ちにくい人も多いので、何かそこをうまくつなぐ支援があるといいと思います。
 例えば新日鐵でやられている企業ポスドクというのは非常にいい制度だと思いました。企業が雇うポスドクだけれども、アカデミアに戻ることも許されている。非常に心の広い制度です。このようにお互いのマッチング期間が一定期間あると博士を取得したばかりでも飛び込みやすいです。優秀な人材が面白い問題を見付けて企業で働きたいと思ういいきっかけになるんじゃないかと感じました。

【中川委員】
 一つ問題なのは、数学の場合は3年間のマッチングで駄目な場合に、アカデミアに戻れるかどうかなんですね。ほかの分野の人たちは戻っている人たちもいるんですけれど、数学の場合、数学ゆえに難しい面もあるのではと感じています。

【森委員】
 どういうものなのかちゃんと分かっていないのでもう少し説明していただけると有り難いですが。

【中川委員】
 システムとしては、ドクター卒の学生さんをポスドクで採用します。3年間の契約期間に仕事をしていただいて、本人と会社のマッチングが合えば、2年目ぐらいで採用試験を受けてもらって、そこでオーケーなら、3年目から正式社員になります。

【森委員】
 仕事というのはどういう仕事なんですか。

【中川委員】
 数学で入った場合は数学の現場応用です。数学を使って現場の課題解決に貢献するという仕事になります。

【國府委員】
 年間に何人ぐらいですか。

【中川委員】
 現時点ではPhDが2名。

【國府委員】
 数学の方ですか。

【中川委員】
 はい、数学です。

【若山主査】
 ある意味では、中川さんがいらっしゃって、中川さんが数学コーディネータの企業側からの役目を果たしてくださっているというのは、事実上あるんですね。そういう意味では、数学系出身の人が産業界にもう少し入って、どっちが卵で鶏か分からないんですけど、入っていくと違ってくるというのは間違いないと。

【中川委員】
 それも向き、不向きがあって、自分でテーマを作れることが企業で求められますので、それができるかどうかが一つの分かれ目になると思います。

【若山主査】
 大学にいてもそうだと思いますけれども。
 高木先生、いかがですか、少し。

【高木委員】
 先ほど、樋口先生の方から、シーズとニーズという、どっちから攻めていくのかという話がございました。それで、私の関わっておりますバイオインフォマティクスという分野ですと、元はどちらかというとシーズ志向で、余り役に立たないことをみんな勝手にいろいろやってたと。
 その後、どんどん、どんどん重要性が高まってきて、みんな今、ニーズ志向で物事をやっていると。それはそれで現場で十分役に立つようになってきているんですけど、一方で、物すごく大きなブレークスルーという観点からいうと弱くなってるのかなと。ニーズに合わせ過ぎているようなところもありまして。
 そう考えると、今回のお話は数学というある種のシーズから行ってもらった方が、バイオでは何か新しいものが出てくるのかなと。だから、皆さん、あんまり今役に立つことばかりやり過ぎて、役に立たないことは余りやらなくなったので、そういう意味で、役に立たないことをやってくださること、そういう方が入ってくるのはいいことかなというふうにはちょっと思いました。

【若山主査】
 入っていければ、将来物すごく、そこがポイントなんですよね。

【高木委員】
 そうですね。

【若山主査】
 ありがとうございます。

【森委員】
 今の高木委員がおっしゃったことは数学者としては非常に共感を覚えます。ただ、一般の方から見ると、つじつまが合わないように聞こえるかも知れません。つまり、好奇心に応じてやるのが最終的には一番役に立つようなことをおっしゃっていますね。

【高木委員】
 それは大分歩留まりは悪いんですけど、どっかで今それなりに閉塞感みたいなのがありますから。

【森委員】
 いや、それを一般の人に是非分かっていただきたいなと思っています。

【中川委員】
 私前回委員会で言いましたように、破壊的イノベーションをするために、純粋数学者の発想は絶対必要だと思います。純粋数学の人は純粋数学の研究に専念していただいて、周りが支援するということができれば、一番いいかなと思います。

【森委員】
 樋口先生のおっしゃっていた話は分かるんですね。ニーズから好奇心を呼び起こすような問題に設定を変える人がいれば、いいわけですが、そこが難しいですね。

【樋口委員】
 どっちかに偏ってしまうのはやはりおかしいわけなので、時代性とか分野性というのによって、その両方のバランスをうまく考えていくことが必要です。更にそれらを先読みするような人もやっぱり必要で、そういう人がコーディネーション機能、力を持っているんじゃないかと思いますけど。

【グレーヴァ委員】
 いいですか。樋口先生がおっしゃることにすごい共感するんですけど、そういう人たちを発見する何かシステムが必要で、そのために、例えば名前は何でもいいですけど、数学コーディネータという一つの分野みたいな、日本に行くと、数学コーディネータという分野があって、それは数学科の学生もなれるし、応用の人もなれるし、それは大変優秀な人がやるものであるという。何かそういうイメージとかをきちんと作り上げられれば、そこに人材も自然に入ってくると思います。
 経済学なんかですと、実は理論のステータスがすごく高くて、優秀な人が我こそ、とまず理論に入ってくる。
 ですから、数学科か、分からないですけども、数理科学の中でも、数学コーディネーションというのは我こそは両方やってみたいと、数学もやりたいし、応用もやりたいとか、そういう人が、こういう分野があって、優秀な人がやるものだからやってみたいなと思えるようになればいいんじゃないかと思います。

【森委員】
 私の感覚はちょっと違っていて、気が付いたら数学コーディネータの役割を果たしている人がいるという状況はわかるのですが、いわゆる数学コーディネータになるように育成するというのは難しいのではないかと言う感覚です。

【グレーヴァ委員】
 応用数学科というのはどういう教育をしているんですか、日本では。

【森委員】
 私に聞かれてもと思いますけど。

【グレーヴァ委員】
 それは私も知らなくて、海外の人は割とすぐ経済学とか物理とかに流れてくるんですけど、日本はどうなっているんでしょうかね。

【合原委員】
 それは前回話したんですけど、数理工学の場合は、駒場の4学期と、それから、学部の3年ぐらいまでかなりベーシックな、教養課程の数学のちょっと先の数学を教えます。それは代数、幾何、解析、それから、いろんな数理基礎を教えて、4年の前期ぐらいから少し応用寄りの話を入れていって、例えば脳科学とか経済とか機械学習とか、そういう講義が入ってきて、大体は大学院の修士までは行くので、修士でまた同じくベーシックな部分で更に高度なことを教えながら、カオスとか複雑系とかのより多様な応用を教えるという、そういうカリキュラムを作っています。
 やっぱり両方要るんですよね。数学のベーシックな部分と、それから、いろんな応用を知るという、そこを両方分かって初めて社会の、特に産業界で活躍できる人材が作れるという、そんな状況です。

【若山主査】
 少し大きな大学での応用数学科的な性格というのは割と少なくて、今、東大の話で、京都にもそういうのがありますけれども、少ないということがまずあります。
 それと、やっぱり数学の、先ほどのアメリカの例もございましたけども、数学以外の学科だと、全く数学にもう大学3年生、4年生になったら触れないということもありますけど、それでも、やっぱり微分方程式を触ったりという機会はいろいろおありになることはたくさんあると思うんですよね。でも、数学科の場合は、どちらかというと、もう理学部数学科なんかだと数学しか触れないという、そういうところがあります。
 そういう意味では、数学科なんだから、やはり固有のアイデンティティーを持てるような教育は必要なんですけれども、もう少し、アメリカではないですけれども、マイナー的なそういう部分も、学部で取り入れるのか、修士で取り入れるのか分からないですけど、それをやってもいいというぐらいの、やらなくてはいけないんじゃなくて、やってもいいという、そういうのはある方がいいというふうに、ちょっと個人的な考え方ですけど、そう思っています。
 そんなこともここで御議論いただいていくのがいいんじゃないかと思っている次第です。

【合原委員】
 ちょっと今ので思い出したんですけど、國府さんが今月号の『数理科学』で書いていた力学系理論をベーシックに教えるべきだというのは僕も大賛成で、いろんな応用をするときに、やっぱり力学系を知っているとすごく有利なんですよね。世の中の、基本的にはダイナミズムを持っている現象を広く対象とするので、線形代数と同じように力学系を教えるようになるといいかなと僕も思っています。ついでですけど。

【國府委員】
 宣伝、ありがとうございます。

【小谷委員】
 ニーズという意味では、産業競争力懇談会の下にある人材育成の委員会の報告書の中に、数学や物理の基礎教育をしっかりしてほしいと書かれているんですね。
 これをみると、異分野融合的な数学も必要だと思われていると思いますが、それ以上に数学の基礎学力が非常に低下していることに産業、企業の方も危機意識を持っていらっしゃるようです。人材育成といったときに、そのような基礎教育の強化も大切です。

【若山主査】
 そうですね。大学なんかで、九州大学だけではないと思うんですけれども、東京大学でもそうだと思うんですけれども、工学部等の教育において、もう少し数学に力を入れてはどうかということをおっしゃる先生は、私が付き合う限り、多いんですけれども、でも、実際にはカリキュラムをとなると、やっぱり難しいなということになったというふうなことをよくお聞きします。
 そういうことを、今の小谷委員が紹介された産業競争力会議のその下にあるところでもそういう発言があることは私も承知しておりますので、何かそういうことにもインパクトを与えられるようなことがここで出していければいいと考えている次第です。
 そろそろ時間になってまいりましたけれども、何かきょうのうちにということがございましたら、お願いいたしますが、よろしいでしょうか。
 では、ちょっと先ほどのとおり、親部会に報告する検討状況というものについてのきょうの案について、時間、短いですけど、月曜日の……。

【行松基礎研究振興課長】
 月曜日中ぐらいに頂ければ。

【若山主査】
 中でいいですね。日本時間でいいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 その後、事務局と私の方で話し合いまして、それで最終的なものを皆さんに配付し、確認いただいて、ある程度のところで今回は提出したいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、本日、終わりたいと思いますけど、事務局から今後について少し。

【粟辻融合領域研究推進官】
 今後の日程につきましては、まだ後日調整をさせていただきたいと思います。
 この資料につきましては机上に置いていただければ、郵送させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【若山主査】
 それでは、これで数学イノベーション委員会は閉会いたします。どうもありがとうございました。

―了―

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課/数学イノベーションユニット

電話番号:03-5253-4111(代表)