数学イノベーション委員会(第19回) 議事録

1.日時

平成27年5月28日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省17階 研究振興局会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 数学イノベーションに向けた今後の推進方策について
  2. その他

4.出席者

委員

若山委員、合原委員、今井委員、國府委員、高木委員、常行委員、長谷山委員、舟木委員、本間委員

文部科学省

常盤研究振興局長、安藤大臣官房審議官(研究振興局担当)、行松基礎研究振興課長、粟辻融合領域研究推進官、田渕基礎研究振興課課長補佐

オブザーバー

東京大学大学院数理科学研究科 山本昌宏 教授

5.議事録

【若山主査】
 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第19回数学イノベーション委員会を開会いたします。本日は御多忙の中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日は、急遽(きゅうきょ)の開会ということで、御欠席の委員が、大島委員、グレーヴァ委員、小谷委員、中川委員、樋口委員、森委員と多くおられますけれども、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事を進めるに当たり、事務局より配付資料の確認をお願いしたいと思います。
【粟辻融合領域研究推進官】
 配付資料の確認をさせていただきます。座席表の後に議事次第が1枚ございまして、それから、委員名簿、資料が資料1、2、3、3つございます。資料1が、國府委員の御発表の資料、それから、資料2が東大の数理科学研究科の山本昌宏先生の資料、それから、資料3、論点についてというペーパーが1枚、それから資料4が「今後の予定について(案)」という資料でございます。それから、参考資料としまして、前回の議事録が参考資料の1、それから、参考資料の2としまして、「数学イノベーションの取組について」という資料。それから、あと、机上で昨年取りまとめた数学イノベーション戦略を置いております。
 以上でございます。
【若山主査】
 どうもありがとうございます。本日は急遽(きゅうきょ)設定ということで、御出席の先生方にはスケジュールを変えていただいたかもしれません。どうもありがとうございました。
 前回の委員会の後、事務局とも相談しまして、昨年度までの議論の蓄積をベースとして、スピード感を持って8月までに必要な方策を取りまとめるという方向で審議を進めていきたいと、そう思っています。そのため、今日と6月にもう一度本委員会を開催しまして、8月に取りまとめを行いたいと思っています。前回は、新しく委員になっていただいた諸分野や企業の先生方に数学・数理科学への期待を述べていただいたところです。今回は、数学・数理科学側から発表していただき、更に踏み込んで数学イノベーション推進の方策について審議したいと考えています。
 それでは、議題に入りたいと思います。きょうは、お二人の先生方にお話しいただくんですけれども、東大の山本先生には、このために今日の夜中まで御準備いただいたそうで、ありがとうございます。最初に、戦略創造研究推進事業の数学領域、CRESTのチームリーダーを経験され、昨年度より立ち上がった数学領域さきがけの研究領域、研究総括もされている國府委員からお話を伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【國府委員】
 國府です。よろしくお願いいたします。それでは失礼して着席で発表させていただきます。
 私は現在さきがけ数学協働領域の研究総括を務めておりますが、その前に、西浦先生の数学領域のCRESTの研究代表者をしておりまして、そういうことも含めて数学イノベーションの推進のためのアイデアや意見などを述べる機会を頂いたと理解しております。
 私はこれまでこの委員会でどのような議論がされてきたか十分把握できていないところがありますが、自分の理解でこういうことが良いのではないかということをお話しさせていただきたいと思います。
 最初に自己紹介に代えて、私自身がどういうきっかけで数学と諸分野の連携について考えるようになったかということを簡単にお話しさせていただき、それに基づいて幾つか考えたことをお話ししたいと思います。もちろん自分の経験が一番良かったということを申し上げるつもりではありませんが、自分の経験をお話しすることで、私が例えばどういう理由で何かが必要だと考えるようになったかということが、御理解いただけるのではないかと思います。
 私は京都大学の理学部の出身であり、また山口昌哉先生の研究室で学んだという、この2つが自分自身にとってその後に大きな影響があったと思います。
 京都大学の理学部は、理学科1学科だけから成る、つまり、数学科とか物理学科とかに分かれていない、1学科だけから成る学部で、そこでは「緩やかな専門化」ということを今に至るまで重要な教育方針として維持しております。「緩やかな専門化」というのは,1、2年生の間は数学や物理学や生物学などと志望分野の異なる学生が、1つのクラスの中にまざっており、その中でお互いに知り合って話をしたりしながら、それぞれが勉学を進めて専門を深めていいき、3年生になるときに数学と理科4分野の5つの系に分属するという教育のやり方のことを指します。
 多くの学生が最初は研究者を志望していますので、志望分野の異なる学生が共存する環境にあって、その後も知り合いになった人たちとの友人としての関係が続くので、研究者として自立するようになってからも異分野にアクセスしやすいということが特徴的な効果ではないかと思っています。
 これは例えば東京大学でも、進学振り分けの前まではそういう環境に、ひょっとしたら理学系だけでなく工学系なども含むもっと広い人たちが共存していると思われますので、京大理学部だけの専売特許ではもちろんないのですが、いずれにしてもそういう環境というのが良かったのかなと私自身は感じています。
 それから、山口昌哉先生というのは、御存じの方も多いかと思いますが、日本応用数理学会の設立のメンバーの1人であり、現在の日本の応用数学者を何人も育て、日本の応用数学の研究の発展に大きな影響を与えた人だと思います。
 山口昌哉先生の研究室には、私はどちらかというと知らないうちに入っていたというか、自分の指導教員が山口先生の助手ということもあって、知らないうちにそこに放り込まれたということなんですが、私が学生のときには山口先生は例えばカオスとか、フラクタルとか、ウェーブレットとかに非常に関心を持っておられ、それ以前にも様々な数学分野や応用分野との関わりを持った方でした。
 そういうこともあって、山口先生のまわりには年代の異なる人たちが広い分野から自然に集まるような場が形成されていて、そういうところに私のように知らず知らず入ってしまった者は、しようがなくというか、最初のうちはどうしてこんな話を聞かないといけないんだろうと思いながらも、数理生物とか数値解析の話とかを聞いていました。特に自分が何かそのような分野をやりたいと思っていたわけではなく、いろいろな人たちがいろいろ話をしているところを横で見ていたというような具合でした。そのように山口先生の研究グループにいて、数学といろいろな分野の関わりを自然に見ていたことが自分の考えに影響しているのではないかと思います。
 私自身の専門分野は力学系理論といいまして、ダイナミクスという言葉は非常に広い意味で使われますが、状態が時間とともに発展していくシステム、微分方程式や差分方程式のような形で、決定論的な法則に従って時々刻々変化していくようなシステムについての数学理論です。そのために純粋数学から様々な科学まで幅広い分野に関係しております。挙げてみると切りがないような感じがしますが、スライドの小さい字の上の段が力学系理論と関係がある数学分野で、小さい字の下の段が数学以外に関係する分野で思いつくものを幾つか挙げてみました。
 ダイナミクスの問題はほとんどの科学技術の分野で否応(いやおう)なく出てくるので、数学以外のダイナミクスの研究者との共同研究や議論の機会も多く、私自身も大学院生のころから、例えば電気工学や機械工学の方と話をする機会がありましたし、今でもいろんな分野の方とお話をする機会があります。
 欧米には特に幅広い層の研究者が集まる力学系理論の国際研究集会がありまして、そういうところに出席していろいろな分野の研究者から刺激を受けたということもたくさんあります。このような力学系理論という数学分野を自分が専門としているということもあり、自分自身が学生から教員になって今にいたるまでに、純粋数学と応用数学について考える機会も何度かありました。私の所属する京都大学の数学教室は非常に純粋志向の強い教室で、余り応用数学の研究についての志向性がそれほどない。そこでは数学そのものの研究を深くされている人が多く、山口先生はちょっと例外的だったかもしれませんが、そういう中で自分自身が教員となって研究していく過程で、例えば数学の厳密な証明を与えるような研究をするか、それを学生に指導するか、あるいは、もっといろいろな分野と関係して、証明にまで至らない実験的な数値シミュレーションを主体とする研究をもっとやるのかなどについて、いろいろな機会に考えたことがありました。
 例えば学位審査でも、数学としての学位審査を行うときに証明があるべきかどうかについて、これは例えばアメリカとかでもそういう議論がありましたが、そういうことを自分自身の仕事の中で考える機会が何度かあり、計算機についても、それを教育の中でどのように取り入れて活用していくべきかということについても否応(いやおう)なく考えざるを得ないということがありました。
 3つ目に、JSTのCRESTやさきがけなどの戦略的創造研究推進事業と出会ったことがあります。2007年に西浦先生の数学領域が発足し、そのときにちょうど研究していた力学系の大域的構造に関する計算機援用解析が使えるのではないかと思って、非線形物理と機械工学の研究者と共同で申請してCRESTの2期生として採択していただきました。
 そのCRESTでの共同研究の経験では、主たる分担者はいずれも京大とその周辺の方で、研究ミーティングをわりと頻繁に、月に2、3回のペースで実施したのですが、それにもかかわらず、相手の話がある程度理解できて、お互いに意味のある発展的なディスカッションができるようになるまでに2年近くかかったような印象を持っています。本格的な議論ができるようになったのは3年目ぐらいからで、中間評価がありますので、そのために頑張ったというのもあるんですが、そのおかげで後半はかなり突っ込んだ議論ができるようになり、ある程度自分自身で納得がいくような形で研究ができたかと思っています。
 そのCREST研究は今年の3月に終了し、現在も京都大学の学内経費などで共同研究を継続していますが、これまでのようなペースの形ではなかなか進みません。
 そういう中で、思いがけず昨年度からさきがけの数学協働領域の研究総括のお話を頂いて、このような形の研究活動の支援を始めました。このさきがけ数学協働領域では、社会的・人類的課題の解決を目指して、数学と諸分野の協働を促進するということを掲げています。たくさんの応募があり、そこから選考して、昨年度は9名を採択しました。今年度分については現在選考中ですが、昨年度の採択者では、広い意味の数学関係分野の出身者、例えば東京大学の計数工学科なども含めて、6名の方が広い意味での数学関係の出身者、それ以外の分野の出身者が3名です。後者の中には大学院から研究がかなり数学的な方向に行った方もあり、その意味では数学に関わる方が大半を占めているといえます。
 採択者の中で私が印象的に感じたのは、東大の数理科学研究科の博士課程を修了して、国立の研究機関に所属して研究している人が2名おり、数学のバックグラウンドを持って、今はそれ以外の分野の研究をやっているところからさきがけ研究に応募してもらって、それが興味深い研究テーマであったので採択されたという、そういう形の進み方もあるということをそのとき初めて認識しました。
 次の表は、ちょっと文字がぼけていますが、昨年度の採択者と採択課題などを挙げていますので、これはまた後で御覧ください。
 以上のことを踏まえて、私自身が数学イノベーションを更に進めるためにどういうことが必要と考えるかということをもう少しゆっくりとお話をしていきたいと思います。
 最初に私自身が数学イノベーションということをどのように捉えているかを一応確認しておきたいと思います。私自身が考える数学イノベーションというのは、様々な科学や技術、社会の問題・課題に対して、数学の発想や方法を活用し、数学と関連諸分野の研究者が協力してその解決に向けた本質的な貢献をすること。また、それが広く科学全体の発展にもつながるようになることと考えております。
 科学や技術、社会の課題の解決に何か数学的に本質的に新しいアイデアが必要となる、つまり、よく知られている方法を適用して解決したというよりは、解決のためにもっとレベルの高いクリエイティブな発想を必要とし、そういう研究が数学の発展にもつながると良いのではないか。またそのことで数学者が、数学の外にも非常に興味深い研究テーマがたくさんあることを知るきっかけとなると良いのではないかと思っていますし、逆に諸科学や技術の分野の研究者にも、そういうことで数学の重要性、有効性が広く認識されるようになってほしいと思います。
 もう一つ重要なこととして、ある課題の解決に本質的に貢献した研究の成果が水平展開されて、より広くほかの分野の科学や技術の発展を促すようになってほしいということも期待しております。例えば1950年代から60年代に、1週間くらい先の気象の予報が非常に難しいという課題があって、アメリカの気象学者のローレンツはその理由を解明しようとする過程で、原理的な困難がそこにあるということを、今日でいうカオスという形で明確にしました。それが1つのきっかけとなって、また気象学以外のいろいろなこともきっかけとなってカオスの研究が生まれ発展して、現在ではカオスの概念は様々な分野に浸透してダイナミクスにおける予測困難な複雑な振る舞いの理解に大きな貢献をしているわけですが、そういう水平展開を頭に描いております。
 そのような数学イノベーションの芽をどのようにして見いだすかということですが、まずやはり大事なことは、科学・技術・社会において数学が貢献できるような課題を知るということだろうと思います。課題を知るにもいろいろなレベルや形があると思います。課題や問題が、既に明確でよく絞り込まれている、言い方を変えれば、数学的に定式化されているものから、ビッグデータなどのように、もっと漠然としているが、もっと広い範囲に及ぶような問題で、どのように問題を捉えるかということ自体が難しいというようなものなど、いろいろなレベルの問題や課題があると思います。
 特に後者のような課題の解決には思いもかけない数学分野の発想や方法が活用できることもあるので、例えばこの問題はこういうものだから数学のこの分野を使うというような形で余り最初から関係する数学の分野やアプローチを限定しないことも重要ではないかと思っています。
 逆の方から言いますと、数学の新たなアイデアや発展が諸分野に活(い)かせる可能性に気づくことが重要で、そのためには数学者自身が問題意識やアイデアを持つことも重要であると思います。
 スライドに例として挙げました微分幾何学におけるうんぬんというのは、最近私が共同研究者から聞いた話ですが、フィールズ賞の受賞者のセドリック・ヴィラニらの微分幾何学における最適輸送理論を、がんの代謝のネットワークに応用して、その構造が正常な代謝のネットワークと本質的に違っていることを示したというアラン・タンネンバーグという人のグループの研究のことです。タンネンバーグは、数学の出身ですが、例えばコンピュータビジョンの研究などで有名になっている応用数学者ですが、そういう人が、純粋数学のアイデアを予想もしないガンの代謝ネットワークの研究につなげるという立ち位置にいて、それを実現できたというのがこの仕事のインパクトであると私は感じました。
 そういう意味で、数学者にとっては早くから科学の広い分野に触れる機会があるとよいし、また、数学が様々な分野の問題の解決に活用できると確信できることも重要であろうと思います。そのためにも、若い数学研究者が数学の外に向かう意欲を持つことが重要で、それには彼ら自身の将来の展望が見えることが大事ではないかと思っています。これは後でまた述べたいと思います。
 そのような数学へのニーズとか期待があったときに、それをきちんと実現する、きちんとイノベーションという形につなげるためにどうするかということですが、それにはまず、科学・技術・社会の様々な問題と接触する機会や数学の外から問題が持ち込まれるような相談窓口を作ることが重要です。例えば東大と九大でやっておられるスタディーグループというのはそういうものの1つであると思いますし、数学協働プログラムの様々な研究会、交流会等もそうだと思いますが、そのような機会を更にうまく活用するということが重要ですし、問題にもよりますが、その情報を、関心を持つ数学研究者の間で共有できるようにするということも重要だと思っています。
 もう一つは、数学者が受け身でなく自発的に問題の探索をすることを促す仕組みも必要です。これも、こういうところに問題がある、しかも数学的によく定式化されたものから漠然としたものまで、いろいろなレベルの問題があるときに、それに対して数学者が、ある問題に自分が持っている方法やアイデアが活用できると感じないといけなくて、しかし、例えば数学の研究のみに没頭している数学者はそれに気がつかないかもしれない。そういうときに、誰かが気づいて、その問題と数学を結び付けるかという仕組みをうまく作らないといけないと思います。これについて私が思いつくのは、諸分野との連携に経験を持つ数学者集団がいて、その人たちがいろいろな数学と外からの課題とをうまく結び付ける役割を果たすことができないだろうかということです。明確に論理的にこうだからこういうふうにつながると言えればもちろん良いのですが、それは恐らくなかなか難しいので、様々な数学についての知識や情報と、諸分野との連携で培われた経験や勘を動員して橋渡しをするような形になると思いますが、何らかの接続をうまく図るようなことが必要ではないかと思います。
 数学者と現場との対話というのは重要で、そのためには、いろいろな工夫と、それから覚悟が必要であると思いますが、数学者がきちんと相手の話を聞くとか、自分の数学を分かりやすく説明する、あるいはそれの逆で、相手の方が数学者に向かって、数学者に話して、自分の持っている問題、あるいは数学を活用したいというアイデアを説明するという、その両方が必要ですが、特に数学の人は、なかなか数学以外の分野の人と話すことに慣れていないことが多いので、相互理解に時間がかかります。そのためにも早い機会に幅広い分野の人に数学的なアイデアや方法を説明する力の訓練とその機会が必要ではないかと思います。
 また、一旦そのようなマッチングができたら、それを持続的に継続していくような工夫も必要で、議論が始まったグループに、その議論や共同研究を継続するための何らかの、例えば研究費の支援のようなインセンティブがあると良いのではないかと思います。例えば数学協働プログラムに参加した人が、そこでうまくほかの参加者と興味が一致して、一緒に何かやりましょうということになっても、そこからは自分の研究費とか相手の研究費とかを使ってやらないといけなくて、その分は、要するにエクストラの負担を必要とするわけです。それはもちろん本人たちがやりたいと思ってやればいいので、放っておいてもいいのかもしれませんが、そういう人たちが出会ってきっかけができたときに、それを継続しようというインセンティブとなるような支援があると良いのではないかと思います。 
 1つ言いたいことは、数学的な定式化ができるまでには問題を十分に咀嚼(そしゃく)しなければならず、それに対して数学のアイデアとして問題の解決へのアプローチが固まるまでにかなり時間がかかるので、性急に成果を求めないということが重要であり、そのためにじっくりと十分な時間をかけた議論をできるような環境を整える必要があります。そういうことを努力してやりとげるためのモチベーションとしては、短期的には研究支援しかないのではないかと思われます。長期的には数学と諸分野の連携の重要性や面白さを伝える教育の効果としてそういうことをやりたいという人たちが次々と出てくるようになると良いと思いますが、とりあえず今のところは研究費支援をするというのが1つの有効な手段ではないかと思います。
 そういう際に、若手の人たちを自然に巻き込むような仕組みを作るということと、それから、先ほども言いましたが、純粋数学の成果も十分に活用するということが必要で、革新的なイノベーションは応用を意識しない研究からも十分生まれ得るので、そういう純粋数学の成果も活用できるような仕組みを作っていくのが大切かと思います。そのための目利きとしての数学者集団がいて、ネットワークを作って、それで助言をできるような形がいいのではないかと思います。
 それで、そのための体制ですが、先ほども言いましたように、短期的には研究費の支援、長期的には人材育成が重要であり、当面は数学協働プログラムなどから出た芽を研究費などで支援するというような仕組みを作ることが良いと思います。更に、一旦研究費で獲得して、例えば5年間のCREST研究をやるわけですが、それで成果が出ても終了した時点で継続できなくなってその研究が途絶えてしまってはもったいないので、さきがけからCRESTとか、CRESTからその次というような何らかの予算的な措置があって、それで研究を持続的に、研究予算の形を変えてでも持続的に支援できるような仕組みを用意するのが大切かと思います。
 そういう成果が出たところを更に水平展開するような機会を作るためにどうするかということについては、他の研究グループの成果が見えるようにするというのが有効だと思いますので、何かバーチャルな数学イノベーションの研究ネットワークを作るということを提案したいと思います。
 もう一つは、数学的アイデアなどの実装ということも重要で、数学的アイデアや開発された方法がそれだけではなかなか使えない、使いこなせないと、特に数学以外の分野の研究者には感じられることが多いのではないかと思われますので、それを活用するためには計算機による何らかの実装が有効だろうと思います。
 例えば計算トポロジーという研究があって、古くからホモロジーという代数的位相幾何学のアイデアがあるわけですが、最近の計算機の発達によりそれをソフトウェアとして実現できたことによっていろいろな応用がどんどんと出てきています。このようなことが1つの典型例ですが、アイデアの実装ということにも十分注意を払うべきで、そのためにも、実装のための計算機の活用への人的支援の仕組みを整えることが重要です。プログラミングとかソフトウェア開発を担ってくれる人が必要だと思いますし、そのときに、例えばプログラマー集団がいて、どんなソフトウェアでも請け負いますという形というのはかえって非効率で難しいのではないかと思いますので、問題や研究グループごとに、そこで使われる数学の専門性にも十分配慮した実装のための人材が協力して開発に携われると良いと思いますし、そのような支援を包括的に行う体制が取れればと思います。
 すみません。大分時間が押していますが、最後に教育について少しだけ述べたいと思います。最初にも言いましたが、私自身の経験からも、若いときに数学の外の人たちと話をする機会が多いというのが、その後の他分野との垣根を低くするのに有効で、そういうことを学部や大学院の教育の中でうまく実現できると良いと思いますが、一方で、コアとなる数学の基礎的教育はしっかりと行うことが必要で、自分の専門性の基盤となるような部分の教育は十分に行うのが良いと思います。計算機の教育も何らかの形で行われる必要があります。数値計算とか数式処理とか、いろいろな計算機の活用の仕方があってどれも重要ですが、少なくともどれか1つでもまず手始めに行って、それが他にも広がっていくと良いのではないかと思います。
 もう一つ申し上げたいのは、例えばさきかげに応募する人は、既にかなり自分自身の専門性もできて、問題意識もできているわけですが、その前の博士課程の学生やその直後の若手が関われるような数学連携の研究員のような制度があると、そこからさきがけのような次のステップにうまくつながっていくのではないかということです。そうすることで、学位を取る前後の数学の若手の研究者が数学の外に向かうインセンティブができて良いと思います。そして、そういう人たちに、異分野とのコミュニケーション能力の向上の機会を増やすことが有効だと思いますし、同時に諸分野の研究者に数学を学ぶ機会も作ると良いと思います。
 そういうことをトータルに持続的にやっていくためには、数学から外に出ていくような若手研究者のキャリアパスをしっかりと用意して、彼ら自身がそのような数学と諸分野と協働する研究者として成長していく道筋が見えるようになるのが大切だと思います。これは、大学のそれぞれの学科等での人事にも関係することで、一番理想的なことを言えば、そういう数学と諸分野の連携を行うような研究者の教員ポストがあると一番良いと思うのですが、それはなかなか難しいかもしれません。それでも、それに準ずるような何らかの方策があると、若手研究者がそういう方向に向かおうという意欲が出るのではないかと思います。
 最後に、実装についての人材育成も重要だと思います。
 すみません。大分時間を超過しましたが、言いたかったことは以上です。
【若山主査】
 どうもありがとうございます。超過していただいた分も含め、豊かな話をお聞かせいただきました。どうもありがとうございます。
 それでは、10分ほど時間を取りまして、國府委員の発表に関する御意見とか御質問がございましたらお願いいたします。どなたからでもどうぞ。
【合原委員】
 どうもありがとうございました。山口先生の貢献は僕もすごく大きいなと思っています。僕自身もとてもエンカレッジしていただきました。ぜひ國府さんも山口先生みたいな存在になってほしいなと思います。
 きょうのお話は、数学が他分野にどう貢献していくかという観点からだったと思うんですけれども、例えば7ページとかを見ると、何か一方向的かなという感じがするんですよ。今ある数学の理論を使っていかに異分野を活性化するかとか、そこにアイデアを出すかということなんですけれども、逆に、そういう応用研究をすることによって数学そのものにフィードバックがないとうまく回っていかないような気がするので、こういう応用研究をしたことによっていかに数学自体がまた深まっていくかという、そこも考えていただいて、循環をする仕組みかあると、より堅固なやり方になるかなと思います。
【國府委員】
 はい。最初にも少し言いましたが、数学が広く科学全体の発展につながって、それが数学の中にもちゃんと戻ってきて、数学にも豊かな内容が加わるというのが良いと思います。
【合原委員】
 そこが同じぐらい重要かなと思うんですね。
【國府委員】
 そうですね。はい。
【若山主査】
 ほかにございませんでしょうか。
 やっぱり今の論点ですけれども、現在私たちが数学と考えている外の世界に、数学の新分野が生まれてくるぐらいの興味深い問題が、見えないけれど、ごろごろしているわけですね。さっきのビッグデータなんかもそうでしょうし、計算トポロジーなんかにしても、ホモロジー群なんて、かつて大学2年生ぐらいで習ったときには、何かおもちゃみたいなものしか計算できなかったわけですけれども、ソフトウェアができて理論をつかっても手計算ではできない計算をできるようになると、計算できるものが増えたので新しい概念が出てくるわけですから、そういうのがやっぱりすばらしいだろうなと個人的には思っています。
【國府委員】
 計算ホモロジーに関しては、ホモロジーの教育の仕方ががらっと変わる可能性があって、計算するために図形を分解するという方法や、そういう定理を必要としないで計算機で直接的に求められるというのもある意味で驚きです。そういう意味では極端に言えばホモロジーの定義だけでよいということになります。自分の学生が今、計算ホモロジーの勉強をしていて、数学理論の方を見過ごしてしまいそうになるところが少し驚きでした。
【若山主査】
 純粋数学との関係でいえば、ホモロジー群って定式化されたのは、20世紀初めというか、19世紀の終わりですよね。だから、そのころの純粋数学だと思うんですけれども、それが今回こうやって展開されてきて、やっぱり計算機の発達というのが数学自身にさえものすごく大きな影響を及ぼしているんだなという印象を持っていますけれども。
【常行委員】
 諸分野との連携に経験を持つ数学者集団が問題の振り分けに関与するというお話は、大変いいと思うんですけれども、問題とそれに対応する数学の関係がわりとはっきりしているときはこういうのはすごくやりやすいと思うんですが、もっともやっとした、今の数学で何が対応するのかわからないとか、あるいは、ないとか、そういう場合に、もう少し広い集団で、新しい社会的なニーズとか、応用分野の話を聞けるような、そういう環境というのは何かあるんでしょうか。
【國府委員】
 1つは、多分、問題を共有するということで、関心のある広い範囲の人たちがその問題を知るということができるようになり、その中から問題に関心を持つ人が出てくるかと思います。一方で、そうやって手が挙がるのを待っていてもなかなか動かないことも多いと思いますので、それで経験と勘でというふうに申し上げましたが、どの問題とどんな数学が対応するかよく分からないときでも、何となく、この人なら、まず話を聞いて何か動き始めることができるのではないかという、そのくらいの問題のマッチングをできる人は、ある程度、数学と諸分野との連携研究を自分自身で経験している人でないと難しいかと思いまして、そのような述べ方をしました。もちろんいろいろなやり方があると思いますので、これがベストだと申し上げるつもりはないのですが、出てきた問題に対して、あるいは、そこにある課題に対して誰がどういうふうに取り組むかについて、どのように機会を用意するかが難しい問題だと思いますし、そこにいろいろ複合的な場というか、機会を用意しておくのが重要かと思います。
【若山主査】
 ほかにございませんか。
【舟木委員】
 大変面白い話で、うまくまとめていただいて、勉強させていただき、ありがとうございます。特に、個人的な経験から気になるのは、やっぱりキャリアパスをどうするかということなんですね。私の学生でも、個人的なことですけれども、生物の問題だとか、そういうことに関係して、私の場合、確率論が専門ですが、ミクロな系から偏微方程式等々でやられていることを出すと。特に自由境界問題であるとか、そういうことで、影響されてやっているんですが、ただ、本人としては、これをやって本当に大丈夫かという、そういうような気持ちをいつも持っていると思うんですね。ですから、どうしても純粋数学の方でも研究をやり、そちらもやるということで、先ほど言われたキャリアパスがもっとしっかりして、安心してやれるような環境がもしできれば非常に有り難いと思います。
【若山主査】
 ありがとうございます。先ほどのインセンティブ、短期的には広い意味での研究費の支援しかないかもしれませんね。しかし、長期的に見るときにですね、やっぱり評価の制度というのも今のお話に関係してくる大事なことだと思っています。常行先生が御指摘になったような、そういう仕組みを1つ提案していくというのもこの委員会の大きなミッションだと考えていますので、具体的なものがあればあるほどいいと。
【國府委員】
 多分ポスドクくらいまではいろいろな研究費などで、数学と諸分野の協働に向かうような機会が作れるかと思いますが、その後に自立した研究者としてその研究を継続できるような形が見えないと、ポスドクの機会があっても一時しのぎみたいな利用のされ方しかできないのではないかという気がしています。ある人が数学と数学以外両方にまたがって仕事をするときに、それが数学者として評価されるか、ほかの分野の研究者として評価されるか、その2つしかないと、そのような研究活動を継続的に行うのは大変難しいのではないかと思います。そこがやはり若山先生が言われるように、きちんと評価されて、その後に続けていけるようにする仕組みが必要なのだと思います。
【高木委員】
 先ほどのインセンティブには短期的には研究費支援しかないというお話だったんですが、例えば生物系ですと、ポスドクを雇って実験するから研究費がないと研究ができないという状況ですけれども、数学の場合はちょっと状況が違うと思うんですね。それで、ここでいう研究費というのはどういうものが必要だからインセンティブになるという感じなんでしょうか。
【國府委員】
 やはり計算機の活用ということがどうしても大きなウエートを占めるかと思いますが、それを諸分野と連携する中心的な研究者が自分でやるのはなかなか難しいので、それを実装するポスドクなどの補助者が必要かと思います。また、アイデアをもっと深めるためにも、中心的な研究者のアイデアだけでなく、ちゃんとそれを詰めていくプロセスを、ある程度グループ的にやるのが、私自身の経験でも必要だと思います。必要な経費としては、そのような目的でのポスドクの雇用や計算機の利用、更に関係する分野の研究者たちと議論するために必要な旅費等の経費だろうと考えています。
【若山主査】
 ほかによろしいでしょうか。
【合原委員】
 今のは、だから、なおさらその後のキャリアパスが重要になりますよね。
【國府委員】
 そうです。
【合原委員】
 つまり、ポスドクはそれでいいと思うんですけれども、その後、他分野がただでさえ減っているポストを数学者に割り振るかというと、そこはなかなか厳しいんですよね。だから、そこをどうするかという、やっぱりそこにかかっているかなという気がします。
【國府委員】
 実装に関わった人も、実装に関わるということが何らかの次のステップにつながるようにしないといけなくて、そういう研究者としてのキャリアと開発者としてキャリアの2通りの方向性が必要だろうと思います。
【常行委員】
 すいません。分野外なのでちょっと伺いたいんですけれども、私、数学者ではないので、ちょっとイメージをはっきりさせたいんですが、キャリアパスと言われるときは、それは数学者としてのキャリアパスのことをおっしゃっているんでしょうか。
【國府委員】
 必ずしもそうではないというつもりでお話ししておりました。ですので、どのように名前を付けるかということはありますが、応用数学者としてのキャリアパスというべきでしょうか。応用数学者というのは、日本ではかなり狭い意味で、数学者の一部と考えられているかもしれませんが、例えばアメリカやドイツなどでは、ドイツは今からお話があるのかもしれませんが、欧米では日本と比べるともっと数学の外に出ているような分野として、そこで1つの研究領域のアイデンティティーがあるような研究者としてのキャリアパスではないかと考えております。
【常行委員】
 学者ではなくて、企業で数学的な思考方法を使って活躍するような研究者、そういうのも含まれるということですか。
【國府委員】
 企業の研究者も含まれる可能性は十分あると思います。先ほどちょっと言いましたアラン・タンネンバーグという人は、所属は大学の研究センターだと思いますが、数学者というよりは、数学的なアイデアを持ってほかの分野との融合研究をいろいろやっていて、コンピュータビジョンなどから、お話したようなバイオロジカルのネットワークの話など大変広く研究しておられる方で、そのような幅広いところに出て行ける研究者として確立されるというイメージを持っています。
【常行委員】
 ありがとうございます。
【本間委員】
 補完すると、僕、民間企業代表なので、言うと、民間企業側で数学者の使い方がまだ慣れてないという側面が多分にあって、先ほどおっしゃったように、実は数学をやっている最中に、プログラムなどを実装する人ってたくさん途中に発生するんですけれども、そのアカデミアでの実装者と企業の実装って違うのかという話もまだきちんとかみ合わせができてないんですね。すなわち、一時的に相当コンピュータソフトウェアとコンピュータのプログラム化することに関してアカデミックな空間で教わってトレーニングされるんだけど、それが企業の一般的なプログラムと何が違うのかというのがよく分からない。ほぼほぼ一緒なんですよ、実際には。抽象化された概念をあるアルゴリズムに置き換えてプログラム化するということは、サイエンスの世界でもビジネスの世界でも余り大差はないんだけど、そこに関してまだ僕たちも、両者ともに話をしたことがないというのがまず1個あって、どうしても企業側の数学者の雇用というと、ピュアサイエンスの領域が想定されていると思います。すなわちファイナンスだとか、一部の製造業における極めて科学の領域に近いところでしか数学者を雇用してこなかったというのは事実としてあり、恐らく今議論しているのは、科学になるか、ならないか分からない領域も含めてもっと広く考えようとしているので、そこまでの議論は企業の側ではまだ考えてないというのが事実で、なので、今回出てくるキャリアパスも、アカデミックな空間でのキャリアパスプラス、実業界、産業界のキャリアパス、両方考えなくちゃいけないんだと思うんですけど、特に後者の部分は余り議論が始まってないというのは事実としてあります。
【若山主査】
 どうもありがとうございます。国によって数学者の定義が違いますので、例えばアメリカだと、大学以外の職業で数学を使っている連邦政府の職員なんかも、企業の研究者も合わせて3,500ぐらいのポストがあって、それをマセマティシャンと、ちゃんと労働統計上は位置付けていますので、そういうこともございます。
 それでは、時間が押していますので、後ほどまた関連する議論はしていただきたいと思いますが、ここで山本先生にドイツの研究所の先進事例、一応先進事例ということでお願いしたいと思います。これは、私たちが目指すバーチャル、バーチャルでない仕組みも含め、日本の中にいい制度を取り入れていこうという、必要なことは何かということを学ぶ機会にしたいということでお願いしているものです。よろしくお願いします。
【山本教授】
 東京大学の山本でございます。よろしくお願いいたします。
 とりあえずタイトルは、ドイツの事例ということであるわけですが、これ、20分ぐらいですかね。20分ですね。
 それで、簡単な自己紹介させていただきますと、主にドイツの方にばっかり行っていて、ミュンヘンと、ベルリンは1993年から毎年のように、主にベルリンのワイエルストラス研究所というところに滞在しております。あと、フランスとかで。新日鐵住金さんとか、ここにいらっしゃる花王さんとも共同研究をしております、これ、出しちゃってよかったかな、合原先生の御紹介で東和精機さんともハッピーにやっております。
 私の所属は数理科学研究科で、これは旧数学科でございます。そこには数理科学連携基盤センターとかがありまして、異分野連携についてもやっております。それで、九大さんとは、若山先生のところとは、2010年から年1回共同開催でスタディーグループというのも開催させていただいております。
 さて、それで、私の発表のスタンスでございますが、最初考えたときは、第1点(ドイツの数学研究所の概況をベルリンを中心に説明すること)しかなかったんですね。ドイツの数学研究所の概況をよく知っているベルリンを中心に御説明しますというつもりだったんですけれども、やっぱり自分の意見も踏まえて、数学連携の組織化について、ドイツの現況や経験も踏まえて小生の意見を最後に述べさせていただこうかなと思って、この部分を付け加えました。最終稿ではないのがお手元にあって、申し訳ありません。
 ドイツの場合には、国民性も多分あると思うんですが、分類、ちゃんとするんですね。カテゴリー分けをします。ドイツにおける数学研究所の活動というのは4つに分類すると便利かと思います。これは便宜上の部分もかなりありますが、実質的にこういうふうな理解でございます。
 4つのカテゴリーというのは、数学研究。多分これ、物理とか、ほかの分野でもそうだと思うんですけれども、まずは大学です。これは当然教育と研究でございます。
 次に、マックス・プランク、これ、ゲゼルシャフトになっているんですね。一応学術振興協会という、日本語訳は定訳かどうか知りませんが、数学ですとボンにいわゆる純粋数学、ライプチヒにいわゆる応用数学があります。端的に言うと、リサーチ・オリエンテッド・リサーチです。目標はノーベル賞がフィールズ賞ということになっています。すごく割り切って御説明しちゃうとですね。
 その次の段階として、Leibniz Gemeinschaftというのがあって、これはプロジェクト・オリエンテッドなんですね。1つの典型的な例としては、ワイエルストラス研究所というのがございます。
 最後にフラウンホーファー、これもゲゼルシャフトなんですけれども、利益を追求するタイプの方でございます。これはアプリケーション・オリエンテッドなんですね。応用第一ということでございます。
 この4つがあります。すごく単純化して性格付けをすると、余りにも単純過ぎてお叱りを受けるかもしれないんですけれども、大学は、等価かどうか分かりませんが、ほぼ教育の活動の部分と学術研究があります。マックス・プランクは、ほぼ学術研究。別にこれは字を小さくしたのは大した意味はございません。ライプニッツの場合には、これから主に御紹介するワイエルストラス研究所でございますが、学術研究プラス産業応用。これが五分五分ぐらいでしょうか。フラウンホーファーになると、もろ産業応用のみでございます。
 ということで、大体こういう4つになっております。
 ちょっとだけフラウンホーファーについて御説明しますと、フラウンホーファーの場合は、ちょっと御説明した方がいいのかもしれませんけど、いろんなところで、海外ではいわゆる応用数学と応用可能な数学というのをどういう用語を使うかというのがいろいろあって、ドイツではしばしばテヒノマティマティック(Technomathematik)という言葉を使うんです。この言葉を作ったのは、フラウンホーファーの数学研究所のHelmut Neunzert先生ということが定説になっていて、これは必ずしも応用するだけの数学ではなくて、先ほどのお話にもあったと思うんですけれども、それを使うことによって、数学のある分野に本質的に寄与するようなのも目指したいと。applicable mathematics (応用可能な数学)という感じですかね。更に応用数学(applied mathematics)というと短い時間スパンで応用に役立つ数学の分野を切り分けているわけで、現実の課題を解決するためには数学を総動員する必要がある、思わぬ抽象数学が役に立つなどいうことがあるので、ドイツでは「応用数学」という言葉よりも、上の意味で「応用可能な数学」ということが多いです。そういう研究所がございます。
 これはそんなに大きな街じゃないんですが、西南部のカイザースラウテルンというところにあって、創立がこれで、彼がすごくエネルギッシュにこういうのをずっと推し進めております。
 産業応用が第一です。したがいまして、外部資金獲得というのが極めて重要で、正確な表現ではないですが、外部資金があると公的資金が出てくる。逆がないというのに近いらしいんですね。今は多少ニュアンスが変わっているかもしれません。
 研究の執行原理というのは、研究グループがございます。比較的常設に近い研究グループがありまして、それを問題に応じて、メンバーをあっちにやったり、こっちにやったりして、組み合わせてやると。これは後で詳しくまた述べさせていただきたいと思います。これは大抵こういう形式にしかならないのかなという気がします。これまた後で説明させてください。
 カイザースラウテルンにも3回ほど出かけてインタビューとかしたんですが、実際に研究滞在はしたことがございません。よく行っているのはベルリンなので、以降、しばらく主にベルリンの数学の研究の大ざっぱな、ベルリンの全ての研究機関を御説明することはできませんが、お話をさせていただきたいと思います。
 ベルリンの数学のいわゆる教育研究機関としては、大学は3つございます。一番古いのはフンボルト大学ですね。これも創設年もいろいろありますが、大体こんな感じということでお考えください。
 国立になったり、市立になったり、帝立になったり、あるいは、東ドイツになったり、いろいろしていますが、ちょっとこんな感じです、目安は。これ、3つございます。
 あと、研究所としまして、ワイエルストラス研究所というのがございます。あと、コンラート・ツーゼ・インスティテュートというのがございまして、これは多分後で若山先生が補足をされるんですかね。IMIと連携をされているようなので。これは私、余りよく知らないんですね。所長さんは個人的には多少知っているんですけど。まあ、それはそれで。
 そのほか、もちろん研究費配分機関として、Deutsche Forschungsgemeinschaft(ドイツ研究振興協会, 以下 DFG という)。あとは、ベルリン特有なものとして数学センターがございます。これはマテオンという、かなり大きなものがDFGからの予算で数学研究センターというのがあったんですが、それが今年で終わって、それの後継ということになっております。これら5つがここからサポートを受けてプロジェクトなり何なりをやっていると。教育活動にも援助を受けているということでございます。
 これ、ベルリンの、ちょっとぼやけちゃったんですけど、ブランデンブルク門がここににあって、これがウンターデンリンデンで、ここにベルリン大聖堂があって、これがワイエルストラス研究所なんですね。ちょっと見づらいんですけれども、ここがウンターデンリンデンで、この辺にフンボルト大学の有名な本部の建物、昔の古い建物があります。それで、これずっとやっていくと、この通りが広い通りなんですが、大体これの2倍、主に倍すると、それがベルリン工科大学ということになっております。
 何でこんなことを申し上げているかというと、距離感というのが結構大事で、ここからここまで歩いて10分か15分ぐらいなんですね。ちょっとまたこれは後で触れたいと思います。こんなところがあって、ワイエルストラス研究所自身は、まちのまん真ん中にあるということでございます。
 それで、じゃあ、ワイエルストラス研究所って一体どんなものかというと、正式名称は応用解析と統計に関するワイエルストラス研究所ということでございまして、歴史は例によって、ベルリンの研究所なので、荒波にもまれて、出発点はどこかわからないんですが、一応, 1946年の旧東ドイツのアカデミーの研究所に起源を持つKarl Weierstrass Institute for Mathematicsだったんですね。ところが、ドイツ再統一で、どういっていいかわかりませんが、規模が縮小で、いわゆる純粋数学部門が全部なくなっちゃって、こういう名前になりました。
 所長さんはSprekelsさんで、創設以来ずっと彼で、随分長期ですが、今年めでたく引退をされたということで、こういうことでいろいろ苦労されております。
 あと、特徴としては、ワイエルストラス研究所、何年か、ちょっと忘れました。今、IMUの森先生が総裁をされている国際数学連合の事務局が置かれております。事務局長がここのメンバーのミールケさんという方でございます。
 先ほども申し上げましたように、プロジェクトオリエンテッドなんですね。だから、これは、プロジェクトって多分いろいろあると思うんですけど、企業の方から提示されたのもプロジェクトですし、もう少し学術的なニュアンスで、よくあるのはスペシャルイヤーとかというので、この年はこういう微分幾何と何とかの応用みたいなのをしましょうというようなプロジェクトがあって、それを志向する、その解決を目指すというのが第一目標であります。
 先ほど申し上げた4つの分類で申し上げますと、Leibniz共同体というところに入っておりますので、学術研究も、応用も、大体等価に評価されるというキャラクターがございます。
 で、ワイエルストラス研究所における研究の遂行体制を簡単に説明いたします。所長の下に7つの研究グループがあります。分野は、これ、中間評価とか途中の評価とかで名前が変わったり、いろいろするんですが、かなりよくあるような名前が付いております。これは適当な日本語訳をつけたんですけど。
 偏微分方程式。これはただ偏微分方程式という名前がついていて、これは先ほど申し上げたアレクサンダ・ミールケがグループの長ということになっております。あと、レーザー科学であるとか、数値計算ですね。
 私が主にずっと、22年間ぐらい行って滞在していたのはグループ4というところで、非線形最適化と逆問題。今、ヘムベルクという人でございます。研究グループは7つございます。
 グループ長、7人いるわけですが、1人はドイツ特有の大学のポジションである私講師でプロフェッサーではないんですが、大学までちゃんと調べてないんですが、原則、彼らはベルリンの3大学のどこかの普通の教授でございます。
 各グループの構成は、グループ長がいて、専任の研究員ですね。ちょっとこれ、給料の出どころまでは余り正確に調べなかったんですけれども、専任の研究員がいて、あと、別雇用のDFGか何かで雇用されて、この辺は日本と感じが似ているんでしょうか。あと、院生というのがおります。
 ここは多分いろいろなことを考えていく上で1つのポイントになるかと思うんですが、これは研究所でございまして、教育機関ではありません。したがって、ここで学位を授与することはできません。なんですが、やっぱり研究をする上では、院生にとっても、専門の研究員にとっても、やっぱり若い人材というのは重要だし、院生もいろいろな経験を積めるので、院生がここにいるということは重要なことなんですね。それがあって、グループ長は、各どこかの大学の教授職です。ですから、院生はいろいろなサポートの奨学金とか、そういうのがあるんですが、学位は、簡単に言ってしまうと、各グループの長の所属する大学で取るということでございます。
 そういう院生の発掘というのは、知り合いに聞いたんですが、確かに公募も出していますが、一番簡単なのは、知り合いの知り合いの紹介みたいな感じので、それに合った人を集めるということになります。
 それで、ここは補足なんですが、これはいろんな財源がありますということでございます。
 さて、それで、じゃあ、7つグループがございまして、プロジェクト研究はどのように進めていくかというと、これを日本で当てはめる場合にはどうするのか、そういうところが当然問題になってくるんですけど、ドイツの場合には、後で述べることもあるんですが、10年以上これで動いちゃっているので、結構これでうまく回っているんですね。これは、また後で御説明させてください。
 研究課題としては、研究所そのものが主宰しているプロジェクトが大体8つあって、これ、長いのもあるし、短いのもあるようなんですね、年報を調べてみたら。これはアドバイザリーボードとか、産業界の人たちが入っていますので、それと相談して決めるとか、多分いろんな決め方があると思います。当然あとは、産業界などからの課題があったり、共同研究の申込みがあったりするということがございます。
 これもちょっと後で触れますが、この辺のケアは、サイエンス・テクノロジー・トランスファーという専門の研究者がいて、リエゾンオフィスみたいなことで、その人はどうもずっと長くそれをやっているんですね。ケーラーさんという人なんですけど、学位を持っております。
 研究の遂行は、これはフラウンホーファーのところでも申し上げましたけど、7つの常設グループというのがあって、それが課題に応じて別チームを作って、混成チームですね、これでやるということでございます。
 次の表は、2013年は大体こんな感じでやっていたということなんですが、これは細かいところはともかくとして、こちら側が7つのグループですね。あと、附属の若い人たちが主宰する、ジュニアプロフェッサーというシステムがあるので、それが主宰する比較的小さなグループが4つあって、こちらが常設グループのグループ分けで、これでいろいろと組み合わせてやるということになります。
 これって、独特の共同研究の体制(課題に併せて常設研究グループを組み合わせること)で、すごいと思ったんですけど、よく考えたら、ここは皆さんの御意見もいろいろある可能性はあるんですが、実際にこれしかないんじゃないかと思うんですね。というわけで、何かこんなような方式は、ミッション解決のために普通に、形は違うけど、やっているんじゃないかということに気がつきました。これ、言葉としては、タスクフォースって、軍事用語で余り良くないかもしれません。任務部隊とか、特別作業班とか、特命チームということで、要は、課題に応じて、今ある組織の部局から人材をピックアップして、臨時に特命チームを作って、問題に当たって、それが終わったら解散、そんな感じですね。ちょっといいかげんに書いたんですが、相手の出方に応じて全部指名打者みたいな野球チームのような感じでしょうか。
 私もこのような形態でやっていました。よく考えたら、こんなようなのって大抵使うんだなということがあって、私の例で言いますと、産業界からの課題が提案されたときに、何が来るか分からないので、自分のところだけで解けるかどうか分からないので、知り合いですね。たまたま私のところなので、丸を、大きく書いただけで別に深い意味はないんですが、知り合いがいて、更に知り合いの知り合いとか、いっぱいいるわけですね。数学の場合には、多分物理とかと違って、研究者の人口が少ないので、友達の友達を7回繰り返すと自分のところに戻ってくる可能性があるので、多分。分かりません。8回かもしれませんが。それをうまく利用すると、知り合いの知り合いになっちゃうと、これやっていると、はっと気がつくと、全然知らない人がそこに入っていたりすることもあるんですが、例えばですが、材料科学の課題が来たときには、こんな特命チームという大げさなものじゃないんですが、私と私の知り合いと知り合いぐらい。すいません、これも別に深い意味はないんですけど、マーケティングの課題が来たときは、特命チームで、知り合いの知り合いの知り合いみたいのが入っていたりすると。これもよくあるんですね。やってみたら例えば私が全然役立たずで首になって、別のチームのところへ交換とかということもあり得ます。
 先ほど申し上げた研究所の運用方法というのは、特に数学というのは思わぬところで使われたりしますので、汎用性があるので、初めからこの数学がいいというのは実は判断がつかないので、それと課題の多様性から、ああいう形態を取るのが多分自然ではないかと。私自身、自分の産学連携プロジェクトは15年以上あんな感じでやってまいりました。
 私の場合、研究所と違うのは、さっきと違うのは、チームが常置しているかだけの違いで、先ほどのですと、バーチャルな形式で、研究チームみたいなのが何となくぼわっとあって、課題に応じてピックアップするということであります。
 ここで重要なのは、最後に触れたいと思うんですが、常設の、再び研究所のところに戻りますが、研究所の場合ですと、例えば7つ研究チームが常設であったとすると、それと課題に応じて臨時に編成される特命チームの間の流動性が重要で、余り研究チームをきっちりとさせちゃうと、流動性がなくなって、硬直化した回答しか出てこなくなるので、7つは7つなんですが、余りそれ、きっちりと分類しないで、何となくもわっとして、問題に応じて、この人が入ってきたり、あの人が入ってきたりする流動性ですね。当然その流動性を担保するためには、各研究チームリーダーの資質が重要になってくると思います。何でもありじゃないかと思っていただくような感じでしょうか。その反面、そうはいっても専門性は非常に重要だという、一種の頑固さ、ということも重要かと思います。
 さて、それで、これが大体研究運用の特徴かなと思うんですけど、あと、もう一つ重要なポイントとして、今まで申し上げたことは、どちらかというと研究の実践の場ですね。あと、当然それを支えるロジスティクスというんですかね、後方支援と今使うと微妙な意味になっちゃうから、何かそんなようなあれですね。それはどういうやつかというと、リエゾンをするというか、そういうお膳立てをするというか、支援ですね。
 一応ワイエルストラス研究所では、サイエンス・テクノロジー・トランスファーという、トランスファーラーというんですか、でも、トランスファーと書いてある。人間です。先ほどちらっと申し上げましたように、小さなオフィスが研究所の中にあって、独立した研究者で、いろいろなことをやっています。一義的には問題の発掘とか相談窓口をやっております。肝腎なのは、その人は継続性を持ってリエゾンをやっているんですね。
 こういうこともいろいろあって、産学連携メッセとかですね。インダストリアル・コロキウムというのは、これ、4年ぐらい前に若山先生、やられたんじゃないですかね。こんなのを取り仕切っているのがこの部署でございます。
 あと、ここのところは、いろいろ私も、実際に事案としてこういうのに、間接的ではありますが、タッチしたことがあるんですが、このオフィスで完結しているので、余り調べられませんでした。専任の弁護士がいて、それに全部任せてあると言われてしまって。ただし、特許の出願件数は、ここに限らず、フラウンホーファーでも、以前に数学調査ということでインタビューに行ったんですけど、特許申請というのは意外と少ないんですね。ということがあります。ちょっとこれは今ここで触れると時間がなくなっちゃうかと思いますけど。
【若山主査】
 すいません。スピードアップしていただけますか。
【山本教授】
 成果物は主にこういうソフトウェアです。これでいくというのは、ここ、ドイツとの違いがございまして、向こうは、先ほどのキャリアパスの話じゃないんですけど、学位を取った数学者がどんどん企業が採ってくれるんですね。したがって、ソフトウェアをポンと渡すと、そこでうまく加工してくれるというところがあるので、ここは日本と根本的に違います。
 産業界のパートナーは、これ、その当時は新日鐵でございました。
 さて、それで、あと、支援としてロジスティクスの部分として重要なのは、広報活動を大々的にやっております。これ、いろんな機会を利用してやっております。
 さて、それで、これでもうほぼ最後のシートですが、以上を、かなりかたよっているいるかもしれませんが、総括させていただきますと、特徴としては、目的別で研究組織を分類しているということでございます。研究中心、応用中心。
 あと、社会情勢があるので、これは余り日本の参考にならないと思うんですね。ドイツ再統一ということで、かなり再編成しました。
 これもちょっとドイツ特有で、所長の権限が強いと。
 ここが重要なところでございまして、会社の管理職に数学出身者が日本に比べると多いということで、これ、産学連携に有利であるということがあります。
 これもドイツ特有の事情ですね。
 で、地域に根差した広報活動というのがあって、地域内でうまくまとまって連携していると。
 ただし、もちろん万事いいということだけではなくて、ここで機能で分けちゃっているので、どうも純粋数学まで巻き込んだオールドイツ数学体制というのは弱い感じがします。
 あと、やっぱり契約に基づいてするので、柔軟性が少ないんですね。ということがあります。これは新日鐵とワイエルストラス研究所との共同研究に参加したときに特に強く感じました。
 生産物は、企業の側の構成の問題があるので、ソフトウェアを作って渡して、あとは向こうでやるというのがあるので、製造現場まで入り込んでやるというのがちょっと少ないので、物足りないという感じが個人的にはします。
 ドイツモデルと勝手に言っちゃいましたけれども、じゃあ、どういうことが学べるかというと、これは先ほどの繰り返しになります。機能・目的によって大胆に特化しちゃっているんですね、研究中心とか。これ、意思決定のプロセスが多分日本と全然違うので、そういうことができちゃうので、これはなじまないかもしれませんが、こういう要素は大事かと思います。
 これをうまく運用されれば、もう役割分担されちゃっていますので、しかも日本の場合には和をもって尊しとなすということなので、広い数学の範囲の人材をうまく機能できれば、総力を結集することができると。
 こういう制度が回り始めると、先ほどの評価システムではないですけれども、インセンティブとかでもないんですけど、業績評価として、産学連携、特許、知財、そういうことももう少し評価されるようになって、若い人が入りやすくなるのではないかと思います。
 あと、これは先ほどの繰り返しです。こういうことをやったときに、特命チームと常設チームの間の流動性ということで、それを担保するのはこれしかほぼないんですね。チームリーダーの資質で何でもあり、こういうことでございます。
 あとは、ここは実践部門で、こういうロジスティクスのところも重要であるということでございます。
 以上、知り合いの上級研究員と会う機会があったので、いろいろと細かく聞いたり、メールでその都度聞いたりして、いろいろ情報を得ました。ただし、これをまとめたのは、当然私の責任でやりました。
 以上です。時間が延びてしまいまして申し訳ありません。
【若山主査】
 どうもありがとうございます。それでは、押していますけれども、また10分程度質疑応答を進めたいと思います。何かございますでしょうか。
【本間委員】
 7グループぐらい常設の研究所が先ほどの場合ある。10年間ぐらい動いているという話なんですけれども、そこの相手先が10年間一緒なわけではないですよね。
【山本教授】
 例えば企業ということですか。
【本間委員】
 はい、そうです。
【山本教授】
 10年間、相手先が同じということは少ないと思います。
【本間委員】
 じゃあ、逆に言うと、企業側がいろんな問題を出しているんだけど、7つのグループで今賄い切れている。
【山本教授】
 賄い切れているということです。ただ、これ、いろいろ、ほかの研究所とも連携しているんです。
【本間委員】
 なるほど。
【山本教授】
 ほかの研究所、例えばフラウンホーファーの研究所ともやっているんですね。だから、多分実用はそこでやって、より学術的な数学的なところはワイエルストラス研究所でやっていると、そういうのをやっています。だから、知り合いの知り合いでぶわっと広げるというところがすごくあると思います。常設だけでは賄い切れてないと思います。私も呼び出されることもあります、そこの部分だけ。
【若山主査】
 関連しますが、きょう少し出てきましたツーゼ・インスティテュートというのがありますよね。あそこに、先ほど、ワイエルストラス・インスティテュートにはなかったような、例えば幾何をベースとしたビジュアライゼーションであるとか、それから、いろんなリニアプログラミングだとか、最適化問題なんかを多く扱っている、そういう人たちがいるわけですね。そこも共通しているので、だから、きょうおっしゃったようなことは、グループ研究とチーム研究の違いみたいな感じですね。
【山本教授】
 ええ、そうだと思います。
【若山主査】
 そこが大事なポイントだと思います。
【山本教授】
 ただ、やっぱり中間評価とか、5年ごとの評価で責任を負うのは研究グループ長なんですね。だから、ある種、自由裁量、誰を呼んでもいいという感じですかね。そこが研究所内では全然とどまらない。
【若山主査】
 ほかにございませんでしょうか。
【高木委員】
 先ほど主な成果物がソフトウェアというようなお話がございましたけれども、それから、最初のお話で、研究費が必要なのは、やはり何か実装するための費用が必要だという話もあったんですが、そのときに、先ほど数学者の定義の話がありましたけれども、ソフトウェアを作るというのは数学者と考えればいいんですか。
【山本教授】
 研究所の中で作るあれですよね。
【高木委員】
 はい。
【山本教授】
 それはいわゆる数学者ですね。
【高木委員】
 ああ、そうですか。情報科学者と数学者の関係というか、定義みたいなのはどういうふうに。
【山本教授】
 まず数学者の定義が違うんですね。ワイエルストラス研究所には統計学者が同じところにまず入っています。それと、サイエンティフィックコンピューティングというグループがあるので、感じとしてそこがコンピュータサイエンスの人なんですね。でも、日本では数学科というと、ちょっと入りませんよね。
【高木委員】
 そうですね。
【山本教授】
 数学の研究所としては当然入るべきだと思うんですけれども、そこがちょっと違います。もちろん、今先生がおっしゃったように、コンピュータサイエンスの人もここには、研究チームの中に入っています。
【高木委員】
 分かりました。
【今井委員】
 ソフトウェアを作るのは、数学に関係している知識がとても必要で、そうではないと作れないことが多いのですが、ソフトウェア自身に関しては、日本だと余り業績に認めてもらえないように思います。論文にできない部分があって、そのような部分はドイツでは業績として認めてもらえる、若い人の業績にカウントしてもらえるような体制ができているのでしょうか。
【山本教授】
 具体的にどういうポイントが付くかというのは私も詳細にはしてないんですけど、研究所の中の評価軸としては高く評価されています。研究所として高く評価されているので、それは多分研究所の外側の一般レベルでも高く評価されているということが結論として出てくるような感じだと思います。だから、ある種、もう価値観が確立しちゃっているとしか言いようがなくて、だから、全然、私、すいません、これ、余り具体的な方策ではなくて、でき上がっちゃっていると思うんですね、そこが。逆に言うと、彼らと議論していて結構いらだたしくなるのは、数学の中途半端な、ある種、ソフトウェアでもないようなアイデアってありますよね。それが余り評価されないんですよね、逆に。数学の側からすると、それってすごく重要で、萌芽的というか、というところが歯がゆいところがあります。ちょっとそこはギャップがあります。
【合原委員】
 トランスファーの部分と実際にそれを解くのと、両方同じぐらい重要だと思うんですよ。
【山本教授】
 ええ、おっしゃるとおりだと思います。
【合原委員】
 山本先生と僕との連携でうまくいった例をちょっと紹介すると、生産技術研究所というのは結構いろんな企業の人がしょっちゅう来るんですよ。それで、相談をいろいろ受けるんですけど、あるとき、偏微分方程式の問題の方が来られて、僕はODEしか分からないのですが、で、たまたま山本先生が専門というのは知っていたので、それで山本先生を御紹介したら、山本先生がうまく解いてくれて、うまくいきました。
【山本教授】
 私だけが解いたんじゃなくて、いろんな人が。
【合原委員】
 つまり、両方が必要で、多分生産技術研究所みたいなところは、トランスファーのところはできると思うんですよ。この企業から持ち込まれたときに、この問題は、あの人だったら解ける、この人だったら解けるという。より重要なのは、解く方で、解く方は時間もかかるので、山本先生みたいに個人の努力でやっておられる方がもっと増えればできると思うんですけれども、やっぱり限界がありますよね。
【山本教授】
 あります。あと、問題処理能力に数学界の方で人的な制限、そういう連携ができる人間の数に限界がありますね。
【合原委員】
 そうですよね。だから、さっきみたいなああいう研究所があれば、そこに我々が問題をトランスファーするということは多分できると思うんですけど。
【山本教授】
 それは十分あり得ますね。
【合原委員】
 そこの仕組みをきちんと作れば、うまく日本でもできるのかなという。
【山本教授】
 その可能性は十分あると思います。今のところだと、中小企業の個人経営みたいな感じ。
【合原委員】
 1人で頑張っている。
【山本教授】
 それはそれでいいと言えばいいんですが。
【合原委員】
 限界がありますよね。
【山本教授】
 全体のシステム的には無理がありますね、それは。
【合原委員】
 ちゃんと組織が要るかなという印象です。
【國府委員】
 すみません。2つ質問があるのですが、1つは、トランスファーをされる方は何人いるのでしょうか。
【山本教授】
 そこのところは1人だけです。
【國府委員】
 どういうバックグラウンドの方ですか。
【山本教授】
 彼は、ちょっと調べたんですけど。
【國府委員】
 数学は数学?
【山本教授】
 もちろん数学です。パッと開くと履歴が出てきて、卒業と学位取得年が全部出てくるんですけど、忘れました。物理だったような気がします、ただし。だから、数理物理か何かですね。だから、別にそれを専門にやってきた人ではないです。普通のサイエンティストです。
【國府委員】
 ということは、経験を積んでそのようなことがいろいろできるようになってきたという感じなのですか。
【山本教授】
 そうですね。多分そうだと思います。人当たりもすごく良かったりして、その辺があります。
【國府委員】
 もう1つは、7つの研究グループがあって、いろいろな課題に対して流動的にチームを組んでということですが、研究グループそれ自身ではそれぞれが独立して研究をしているわけなのですね。つまり、それぞれの研究グループはそれ自身の研究テーマを持って研究活動をしていて、それで課題が来るごとに、それに対応して解決に当たるということでしょうか。研究活動は全体としてどのような感じになっているのですか。
【山本教授】
 たがら、1人の人間が3つぐらいやっていたりすることはあり得るわけですね。重複して。
【國府委員】
 メインの活動は、持ち込まれた課題に対して、そのグループから適当に人を選んで、それに対応するというのがメインの活動ということですか。
【山本教授】
 そうだと思います。もちろん立場によって違いますよね。院生はそれもとにして学位論文を、それに関連したので書いているんですね。だから、相乗りさせている感じですね、院生に関しては。もう少し上の専任の研究員のレベルだと、何かニュアンスがあるんでしょうね。ここの会社のこのプロジェクトはこれとこう関係するから、エフォートを何とかでやってくれみたいな。
【國府委員】
 だから、例えば半分ぐらいのエフォートは自分自身の研究に使っていて、それであと残り半分はいろいろな課題対応に関わっていくという感じですか。
【山本教授】
 エフォートは、私の知っている範囲では、月1回書かされていたんですけど、私は書いてないんですが、同僚が書いているのを見て、自分で決めていました、エフォートは。
【國府委員】
 人によって違う。
【山本教授】
 人によって全然違う。細かいんですね。教育とか何とかまで含めて全部書いてあるんですね。そこはかなり自由裁量のようでした、原則的には。ただ、どこかのプロジェクトの進捗状況がよくないと、チームリーダーからもう少しこっちをやってくれないかというのは当然あり得ると思うんですね。という感じ。
【國府委員】
 その辺も流動的。
【山本教授】
 流動的で。はい。
【長谷山委員】
 この分野では、どのようにしてPDCAを回していらっしゃるのですか?
【山本教授】
 すいません、PDCA?
【長谷山委員】
 例えば、どのようなゴールを設定して、どのような数値目標を設定して、どのように評価なさっているのでしょうか?
【山本教授】
 そこは、私、すいません、評価システムについては今回調べなかったんですね。
【長谷山委員】
 そうですか。分かりました。
【山本教授】
 ただ、申し上げられることとしては、極端な話、そこにいて、専任の研究員として数学の論文しか書いてないと首になるかというと、首にはならない。ということぐらいはすぐ言えるわけですね。だから、それはビジターに関しても同様で、普通のマックス・プランクみたいなところのつもりで行っても、それはそれで歓迎されるんです。周りの専任の人たちを見ていても、比較的好きなようにやっているんだけど、あるときになると、みんなで一生懸命プレゼンのポスターを作ったりはしていますね。だから、すいません、そこの具体的なところは調べていなくて。
【長谷山委員】
 最終的に上位ポジションまで行く若手研究者の割合は、どれくらいなのでしょうか?
【山本教授】
 上位ポジションというのは、基本的にドイツなので、研究リーダーには原則内部昇進は極めて難しいと思うんですね。
【長谷山委員】
 ということは、多くの若手研究者が自身の組織で昇進せずに、外部に出ていらっしゃるということですね。
【山本教授】
 外にもちろん出ますね。
【長谷山委員】
 キャリアパスには、どういうものがあるのでしょうか?
【山本教授】
 キャリアパスですか。やっぱり最近はベルリンも普通の都市になってきたので、ベルリンの中の様々な研究機関がかなり増えてきたかなという感じがしますが、やっぱりどこかの大学の……。すいません。院生ですかね、今おっしゃったのは。
【長谷山委員】
 院生も、若い研究者の方もいらっしゃると思うんですけれども。
【山本教授】
 やっぱり2つありますね。研究職としてどこか別の研究所というのは当然あります。すいません。ちゃんと整理していなくて申し訳ありません。
【長谷山委員】
 企業に職を得る方は、どの程度いらっしゃるのでしょうか?
【山本教授】
 企業からの人は、私の感じでは、ちゃんと統計を取ってないんですけど、少ないです、ただ、院生の人は当然かなり、半々に近いというか、それは超えていますね。
【長谷山委員】
 そうですか。
【山本教授】
 ええ。
【長谷山委員】
 分かりました。ありがとうございます。
【舟木委員】
 関連してちょっと聞いた話ですけど、IMUの前のセクレタリーですね、去年までセクレタリーをされていたGrotschelさんはベルリンですね。
【山本教授】
 ベルリン自由大学ですか。違った?
【舟木委員】
 産業関係の研究所と言われていたので、ツーゼ研究所ですか。
【若山主査】
 ええ、そこのプレジデントです。
【舟木委員】
 ですよね。彼から聞いた、ただ2年前ですけれども、彼のところには200人数学者がいると。多分数学者という意味が、山本先生がおっしゃったように、広い意味でおっしゃっているんだと思うんですが。
【山本教授】
 それは所属はどこですか。
【舟木委員】
 ツーゼだったと思います。
【山本教授】
 ツーゼね。
【舟木委員】
 そのときに言われたのは、アジアにはそういう研究所は1つもないと、はっきり、もう2年前ですけれども。私としては、ちょうど九大でこういうこともあるということもお話ししましたけれども、彼らから見ると、それはまだまだ違うんだというようなことを強くおっしゃっておられました。
【山本教授】
 彼らの数学者とは何かという感覚は我々と明らかに違うんですね。ただし、今、何年前か分からないんですけれども、多分そのときというのは、ベルリン数学センターの大プロジェクトのマテオンが動いていた時期じゃないでしょうか。
【舟木委員】
 ちょっとそのあたりはよく知らないんですけど。
【山本教授】
 そうすると、マテオンというのは大体200人(数字未確認)なんですよね。教授職がたしか50か60(数字未確認)なんです。だから、何かその数と変に合っているんですよね。彼らは、ベルリン自由大学の、ちょっと名前を忘れちゃったな。ちょっと名前を忘れました。やっぱりすごくマテオンに関しては大変誇らしいんですね、その辺に関しては。ただし、あれは時限ですから、5年か6年か忘れましたけれども、だからちょっと、私はそれは違うなという感じはします。
【若山主査】
 参考までにお伝えしておきますと、十数年前までは、ワイエルストラス研究所も、ツーゼにしても、上級のそういう研究員ですね、今教授になっている人たちも、パーマネントの職じゃなかったんですね。ところが、やっぱりそれは、もう少し安定的であるべきだということと、それから、大学の教育も、もう少し教育手助けしてほしいという事情があって、それで、そういう上位職の人たちを3大学のどこかの教授職にアサインして、教えることはやると。そのかわり、終身雇用になったという、そういういきさつがドイツにはあります。そういうのがベースにあってやっていますね。
【山本教授】
 ええ、そうですね。
【合原委員】
 大学のポジションは増えたということなんですか。
【若山主査】
 そういうことですね。
【山本教授】
 多分そうなんでしょうね。ただ、その前までは、特にベルリンは貧乏を絵に描いたような感じで、とにかくお金がなくて、ある年はフンボルト大学が新入生の募集をやめちゃったんですよね。お金がない。そのいろいろなプロモートを大学側がやって、マテオンが付いて、200人、多分ポスドクという意味だと思います(この数字は未確認)、それは。それを雇用して、時限付きのプロフェッサーですかね、それを50か60(数字未確認)増やしたということは私は聞いています。だから、多分どういう雇用形態かによるんじゃないかと思うんですね。逆に終わっちゃっていますからね、その人たち今どうしているのかなという。
【合原委員】
 そこ、知りたいところですね。
【山本教授】
 アインシュタインプログラムというのが実は同じぐらいの規模のはずだったのが縮小されちゃったんですよね。そうすると、余りが出ちゃって、そういう人たちは。でも、ドイツの場合には、会社で結構、そこのパスが確立されているというところが日本と全然違うので、学位取って、教授資格論文を書いた人でも会社の研究員になれるんですね。もう40歳近い人でも。なので、そこでかなり日本と違うということはありますね。若い人も、そういうことが保証されているので、どんどん入ってくるというところはあると思います。それは日本の状況と全然違うので。すいません、いろいろ長くなっちゃいまして。
【若山主査】
 どうもありがとうございます。議論は尽きないんですけれども、次の議題にも進んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。数学イノベーション推進の方策に向けた議論です。これまでの議論を踏まえて、論点を資料3に整理していただいておりますので、それをまず粟辻さんの方から。
【粟辻融合領域研究推進官】
 すいません。今いろいろ御議論いただいたものもある程度出ているかと思いますけれども、少し頭の整理をさせていただこうと思いましてこのペーパーを作りました。簡単に触れさせていただいて、その上で御議論いただければと思います。
 大きく分けまして、今、4つに分けて整理をしていまして、1つ目がニーズをどう発掘するか、課題をどう見つけていくのかという話。2つ目が、その後の協働研究をどうしていくのかという話。3つ目が、人材育成。4つ目が必要な体制ということでございます。
 まず1番目のニーズの発掘ですけれども、現状、少し整理していまして、皆さん御存じのとおり、数学協働プログラムというのが3年前から統計数理研究所に委託をして始まっておりまして、いわゆるワークショップとか、あるいはスタディーグループを年間数十件程度開催し、これまでの累計だと恐らく100とかを超えるような数になっているということです。
 ただ、現状では、こういったワークショップとかスタディーグループへの参加者の層というのは少し低下しつつあるんじゃないか。あるいは、余り広がってないんじゃないかというような課題。あるいは、ニーズの方は、どんどん増えていく方向に傾いているのかなと思っているんですけれども、それに必ずしも十分応えられてないのではないかということで、こういった問題点も踏まえて、少し御議論を頂きたいと思ってまして、2つ論点として整理しています。
 1つは、より多くの数学者がこういった活動に自発的に参加するようにするにはどうすればいいのか。単に今までやっているようなワークショップとかスタディーグループの活動を増やせばいいのか、あるいは何か別の仕掛けみたいなものが必要なのか。これが1つ目でございます。
 2番目は、こういうある意味潜在的な膨大なニーズに応えていかなきゃいけないわけですけれども、これをうまく引き出していくにはどうすればいいのか。これも諸科学とか産業の方にこういったワークショップとかスタディーグループでの問題提供とかを呼びかけるだけでいいのか。あるいは、先ほど少し議論がありましたように、相談窓口的なものを設けて、どこにどういうレベルの問題を持っていけばいいのかをもう少し明らかにしてやることでニーズを引き出してやるというような活動が必要なのか。あるいは、それ以外も含めて、少し御意見いただければなと思います。
 2つ目が、研究の推進ということで、これは現状、JSTの戦略創造事業で、数学関連の領域が昨年度から本格的に始まっていたり、あるいは科研費でも、特設分野研究といったものが始まったりしております。
 こういった現状も踏まえて、どんな課題があるのかといいますと、1つは、こういった研究を通じて実際の課題解決、例えば、先ほどもちょっと出ましたけれども、研究成果を諸科学の研究者が実際に使いこなせるようなプログラミングとか、ソフトウェアとか、そういったものにまで必ずしもなってないんじゃないかといった問題に応えることにより実際の課題解決を実現するにはどんな方策が必要なのか。研究費的なものを増やすというやり方だけでいいのか。あるいは、こういったプログラミングとか、ソフト化を支援するような人材の配置とか、あるいは、体制みたいなものが必要なのかということでございます。
 もう一つ、水平展開につきまして、これも先ほど幾つか議論がありましたけれども、こういった問題に取り組んでいるような数学者間の横のネットワークのようなもの、あるいは情報共有のようなものが有効なのか。それを当事者の自主的な取組に委ねるだけでいいのか、あるいは何らかの支援が必要なのか。支援が必要だとすれば、どんな支援が必要なのかということでございます。
 3番目は、人材の育成で、人材の育成に関しましては、こういったワークショップとかスタディーグループへの参加とか、さきがけ、CRESTへの参加、あるいは、各大学でできつつある連携拠点における活動。こういったところに関与した実践的な育成と、それから、九大や明治大学などの大学の数学関係学科による取組。こういったものが現状では例としてあるわけですけれども、こういった取組に参加しているような学生とか若手研究者は全体の数からするとごく一部にとどまっていたり、あるいは大学における取組も一部の大学にとどまっているのではないかというのが現状かと思います。
 そこで、こういったある意味潜在的な大きなニーズに応えられるような数学の人材をもっと効果的に育成していくにはどうすればいいのかということで、こういう実践的な取組への参加をもっと呼びかけるのがいいのか、あるいは大学における教育カリキュラムのようなものを改めなきゃいけないのか。あるいは、単独の大学だけではなかなか限界があるというのであれば、複数の大学が協力して何かやるようなことを支援するというようなことが必要なのかということでございます。
 4番目は、必要な体制で、これは現状、統計数理研究所、京大の数理解析研究所のほかに、ここ2年ほどで、九州大学のIMI、それから、明治大学の先端数理科学インスティテュートが、共同利用・共同研究拠点に認定されたり、あるいは、これ以外にも各大学で研究拠点が立ち上がっているというのが現状ですけれども、こういった大学の自主的な取組だけではなかなか限界があるのではないかという問題点もありまして、実際に数学イノベーションを推進していく上でどんな体制が必要なのか、将来においてどんな姿を描くべきなのかというのが論点になろうかと思っております。
 このように、論点は4点あるわけですけれども、本日時間も限られておりますので、主に1とか2の点を中心に少し議論をいただければなと思っております。以上でございます。
【若山主査】
 どうもありがとうございます。今、粟辻さんの方からも御説明いただきましたが、最後に4というところに持っていかないといけないんですけれども、きょうは時間もございますし、1、それから2について、この論点に基本的には参考にして意見交換をしたいと思います。まず数学へのニーズの発掘。なかなか、1、2、3、4、分けづらいところもたくさんあるんですけれども、そこは適宜御判断いただきまして御意見ちょうだいしたいと思います。
【國府委員】
 数学協働プログラムに参加した何人かの人に少し話を聞いたのですが、もしそこに書かれているように、参加者が固定しているとか、広がっていないとかということがあるとすると、その原因として2通り考えられるのではないか。1つは、最初の段階では結構意識の高い人が参加していたけれども、それに続く層がなかなかいないということ、もう1つは、それに参加して違う分野の人との共同研究の芽が感じられて、そこでうまく話がまとまって、じゃあ、やりましょうと一旦なると、その後は、もう同じようなテーマのワークショップに参加する必要がなくなって、むしろ、始まった研究を継続するという方向に行ったのではないかということが考えられます。ですから、今、参加者の層がある程度固定化しているとか、広がってないとかということがあるときに、それがどういう理由でそうなっているのかを分析する必要があると思います。例えば初年度とか2年目に参加している人たちが、その後うまく共同研究につながっているのなら、それはある意味で良いことで、そうすると問題は、それに続く層をもっとどうやって広げられるかということになるでしょうし、逆に、一度ワークショップに参加しただけでもうおしまいになっているとすると、今の形では必ずしも効果が出てないのだということになるかもしれません。そのあたりをきちんと分析するのは大事なことだと思います。それで、うまくいき始めたら、それを継続的に支援するというのがその次の段階に進める良い手立てなのではないかと感じています。
【若山主査】
 どうもありがとうございます。印象は持っていますけれども、ちゃんと分析していませんので。
 ほかにございませんでしょうか。
【本間委員】
 先ほど山本先生が、数学界、もともと人数がそんなに多くないのでという話があった一方で、多分企業側に、さっきのドイツの話は、かなり数学関係者がトップに多いので、トップダウンでディシジョンメイクをして共同研究というのはすごい成り立ちやすい一方、日本はそこがないとするならば、逆に言うと、相当産業界側とパイプを作らないといけないという問題があるので、ある意味こういう活動に対して企業側を説得できるコーディネーターというのが必要になってくるんじゃないかなと思えると。特にやらなきゃいけない問題点に関しては明確になっているものの、どういうつき合い方をしたらいいのかだとか、そもそも産業界がどれくらい持ち出しをしたらいいのかって、全く皆目見当がつかない会社はたくさんいると思うので、やる意味の説明と本当の事務的なプロセス、物理的なプロセスを説明できるある意味エバンジェリスト的な人をちょっと置かないと、待っているだけだとちょっと出てこないんじゃないかなという気持ちはあります。
【若山主査】
 1つそれに関して言いますと、先ほども話に出ましたが、今井先生の話にもあったんですけれども、いわゆるICTとの関係ですね。コンピュータサイエンスといったときに、例えばアメリカなんかだと、自分のやっているのは実は完全にアプライドマスだと言い切っちゃうんですね。ただ、日本だとそこは数学じゃなくて、これは数学の方のコミュニティーも良くなかったのかもしれないですけれども、数学じゃないと言ってきたものだから、社会からは、ICTはこうだけど、数学って、別にほとんどないでしょうって、そうなっているところがあるんですね。そこの意識を根本的に変えないと難しいと思います。
 ですから、先ほどの今井先生の話もありますけれども、評価の問題にしても、狭く数学だと思うと、プログラミングやっている人たちは、狭い意味で関係ないので、論文にせいぜい謝辞しか入らないわけです。でも、それもやっぱり自分たちの仕事として、成果の集大成として重要だとなれば、それはやっぱりチームとしての研究となりますから、そうやって評価されていくという、そういう良い面があるんだと思います。
 委員長がしゃべってしまいました。ほかにございませんでしょうか。長谷山先生さんなんかはそのあたりはどう思われますか。
【長谷山委員】
 やはり若山先生のおっしゃったことは、本質と思います。私自身も頭が固くて、自分自身を、「情報系の研究者」と呼んでいます。ところが、やっていることは数学であったりします。論文を書いても、大量の数式が出てきて、たくさんの応用数学の論文を引用しています。それにもかかわらず、自身を情報系と呼ぶわけです。他方で、企業にも同じようなことが起こっているように思います。「数学者に聞くのは敷居が高いけれども、先生だったら聞きやすい」と言うわけです。それで、話を聞いてアドバイスをした後に、企業から「その分野の数学者を紹介してください」と言われることがあります。これは数学だけでなく、他の分野でも同じことが起こっています。例えば、生物の進化の過程や情報処理について話を聞いた後に、「該当する生物学者を紹介してください」と言われることがあります。
 社会が複雑になった現状では、数学だけ、物理だけ、生物だけなどと、縦割りの知識だけでは、問題の解決法を見いだすことができないのだと思います。やはり、のり付けの役割を担う他の学問の存在が必要だと考えています。そのような学問や人材をうまく増やしてきた国が、イノベーションを起こしているように感じます。日本というのは、知識をきれいに整理して、それを保管するための引き出しをしっかり準備することが得意なように思います。それが、現代社会の複雑な問題の解決方法を探すには、窮屈になってしまったのかもしれません。先生の質問の答えになっておりますでしょうか。
【若山主査】
 ありがとうございます。ほかに御意見ございませんでしょうか。
【合原委員】
 確かに縦の学問が多いんですけれども、例えば数理工学みたいな横の学問もあるわけですね。横型の学問というのは、いろんな分野をよく見られるので、そことうまく連携していくというのは、現状、今の日本でやるとすれば、そこは重要なポイントかなと思いますけれども。
【長谷山委員】
 その場合に1つお聞きしたいのですが。現在の日本において、そのような分野の研究室、教員、輩出される学生の数は、どの程度なのでしょうか?更に、そのような分野から輩出される学生がどのようなキャリアパスに進んでいるのか、およその値を教えていただけると、議論すべきポイントが見えてくるのではないかと思います。例えば、私の分野は数学を使っているのですが、工業数学というような分野に入っていて、今の議論の研究室としてカウントされていないと言う理解でよろしいでしょうか。
【合原委員】
 そうですね。
【長谷山委員】
 先生のおっしゃる数学や横型の学生や若手研究者は、どのようなキャリアパスに進んでいるのでしょうか?
【合原委員】
 まずは、学科がないと見えませんよね。東大だったら計数工学科がそれに対応していて、京都も数理工学があって、あとは、数理工学という学科があるのは2、3大学あるんじゃないかと思いますけれども。基本的には、数理工学であれば、工学なので、かつ横型なので、基本的にはどの産業にも行くんですよ。そういう意味でいろんな分野に行っているんですけれども、卒業生自身がそんなに多いわけではないので、トータルの数としてはそんなにはいないでしょう。日本全体で見てもですね。
【長谷山委員】
 今、先生がおっしゃった数よりも、情報工学という研究室の学生のほうが多いように感じますが、いかがでしょうか。
【合原委員】
 多いと思います。
【長谷山委員】
 先生と同じように私も思っているのですが、多くても、産業界から情報処理やソフトウェアエンジニアが足りないと言われています。足りないので、特定の研究室に直接、学生を紹介してほしいとの依頼が来る状態です。そう考えると、先生がおっしゃった、数学の研究室を増やすとか、教員を増やすということを始めに主張するのは現実的ではないように思います。まずは、この分野が重要であるということを主張することが必要と思います。例えば、先ほどの横型で産業に貢献しているとおっしゃったことが、具体的にどのような所でどれくらい貢献しているのかを示す必要があります。これは、人材が必要とされていることの見える化です。これを行わないと、必要性が社会に見えません。本日の2件のお話の中にも、この見える化が含まれておりました。社会の現状を考えると、まずは、その必要性の見える化が必要なのだと思います。
【若山主査】
 國府先生のさきがけの中にもそういう方が実際いらっしゃるし、チャンスなんですよね。
【長谷山委員】
 ええ。そうだと思います。
【若山主査】
 だから、それをちゃんと言っていけばいいんだと思うんですけど。
 常行先生、高木先生、狭い意味での数学の外からごらんになって、今のお話とか伺って、御意見いただければと思うんですけど。
【高木委員】
 先ほどちょっと御質問させていただいたように、情報科学とか数理工学とかいうものを数学に含めるのか、含めないのかということが少し定義として混乱していると思うんですが、例えば資料3の一番下に、数学的アイデアの実装を支援する人材と書くと、これは数学者じゃないということだと思うんですよね。そうすると、ここで振興されようとされているのは、例えば数理工学とか情報科学出身の人じゃなくて、いわゆる数学科出身の人をどうするかという議論なのかとなってくると話は違いますし、もう少し数学を幅広く使っている人をどうプロモートしていくか、あるいは増やしていくかという議論とちょっとそこは違うと思うので、そこはどちらなのかなというのがちょっと疑問に思いました。
【若山主査】
 一応これは主査としてお答えしますけれども、前者ではなくて後者。その中で数学科出身の人たちも含めて。きょうお話にあった数学科とか、やっぱり数学ってそれなりに数学科でなくても数学をバックグラウンドで力を発揮しようと思うと、それなりの教育はちゃんとしておかないとできないと思うんです。ほかの分野もそうだと思いますけれども。そういう意味で、数学といったものの、余り狭く捉えないということが重要だというのはここでの一貫した議論だと思います。ただ、そのときに、数学科を無視するわけにはもちろんいきませんので、そこは大事なところ。
【高木委員】
 ただ、そうすると、先ほど数学協働プログラムで広がってないとか、人が何とかという話ありましたけれども、例えばバイオの分野には相当情報系の人とか数理工学やっている人いっぱい入っているんですね。そういう意味では、入ってないというのは、先ほど申し上げたように、わりと数学科の人が入ってないということになってしまうので、そこの定義をあれしないと、ちょっと議論が少し齟齬(そご)があるのかなと感じました。
【若山主査】
 そうかもしれませんね。それと、数学をされている生物系とかの人たちが、自分たちはアプライドマスをやっているんだというふうにはおっしゃらないというところもあるんですね。
【高木委員】
 そうですね。
【若山主査】
 その両方だと思います。
【國府委員】
 数学を広く捉えるということは非常に良いことだと思いますし、そういうところからの数学を活用したいろいろな連携研究に入っていくというのは大事なことだと思のですが、一方で、そのときに、純粋数学の人が取り残されてしまうようなことになるのは良くないと思います。応用数学、数理工学という人たちが非常に活発にそういう連携研究をしたときに、そうすると、純粋数学の人が、これは自分たちの出番じゃないのではないかというような印象を持ってしまうと、思いがけない発想、純粋数学の誰も気づかなかったような発想が使えるというようなつながりが失われかねないので、その辺をうまく巻き込んでちゃんとやれるような体制というのが良いと思います。実装のところも、純粋数学者が、プログラミングに直接は役に立たなくても、数学的アイデアをアルゴリズム化するときの議論には参加できるような形になるのが良いと思いますし、そういう意味で両方の連携が必要かなと思います。
【合原委員】
 ちょっとそこで心配なのは、数学の中で、巻き込まれたいと思っている人と巻き込まれちゃ嫌だと思っている人の、両方いるわけですよ。どれぐらいの比率だと思いますか。
【國府委員】
 今は、巻き込まれたくないかどうか分からないですけれども、別に巻き込まれなくてもいいやという人がかなり多いのではないかと思います。それはなぜかというと、先ほど言いましたように、自分は一体どこで勝負をするのかというのが、今は分かれてしまっているので、数学とそれ以外のところの中間でやれるということが余りよく見えないから、そちらになかなか行くことができないのではないかというのが私の印象です。
【若山主査】
 本当にあらゆる意味での評価という、人事に反映する評価というのが効いてくるんですね。
 ほかにありませんか。
【常行委員】
 私、今、話伺っていて、なるほどなと思ったんですけど、我々物理から見て数学者というときに、非常に純粋な、例えば解析とかの整数論をやっていたりとか、純粋数学の方がまずパッと頭に浮かんで、でも、実際に我々がつき合っている人たちはもっと実用に近いところでやっている方たちで、その両者の間が全然つながって見えないので、話の持っていきようがないというか、そういうのを感じています。
 そうはいっても、例えば東大の数理科学の人たちがどういうことやっているのかなと思ってホームページを見たんですけれども、実は話せそうな方がいっぱいいて、知らなかったなということが分かったんですね。ですから、これは先ほど言われたように、見える化というんですかね、それ、すごく大事かなと思いますね。我々も、外の人間も努力をしていなかったし、でも、中の人ももうちょっと何とかしてくださいよというように感じます。
【舟木委員】
 本郷と駒場と分かれたのがやっぱり良くなかったんですかね。
【常行委員】
 それはとても痛いですね。言ってもしょうがないんですけど。
【粟辻融合領域研究推進官】
 國府先生の発表にもあったんですけれども、今の見える化の関係で、要は、どこにどんなレベルの問題を持っていけばどの程度扱ってもらえるのかみたいなことを、相談窓口という言い方がいいかどうか分かりませんけれども、少し明示することも効果があるかどうかというところが1つ議論のポイントかと思うんですけれども、その際に、単に見える化するということだけではなくて、その後、実際に問題をうまく数学の問題にして振り分けてやるという機能と、それから、実際にその後引き受けてくれる数学者のネットワークみたいなものが必要だというお話だったんですけれども、そういうものをやろうと思ったときに、どういう支援が一番必要なんですかね。見える化といったときに、じゃあ、ホームページを作ればいいのかというと、多分それだけじゃないような気もしますし、あとはマンパワーとかキャリアパスとか、いろいろ全体が絡んでくる話だとは思うんですけれども、どの程度のものが最初にあると、逆に外から見たときに分かりやすいという感じになるんでしょうか。
【合原委員】
 さっきちょっと言いましたけれども、例えば生産技術研究所とかだったら、しょっちゅう企業の人が来て、相談に来られるわけですよね。その中から、我々が余り無理なく解決できそうなものを選んで共同研究にするんですよ。そこで取りこぼした問題というのは多分いっぱいある。多分長谷山さんのところもいろいろ来られると思うんですけど。そういう組織は国内には幾つかあるので、そういうトランスファーができる組織と、それから、実際に山本先生みたいに解決ができる組織とをうまく連携して、ここで書かれている4番だと思うんですけれども、4番の最後のあたりだと思うんですけれども、その辺は、既存の組織をうまくつないである程度はできると思うんですよね。ただ、本格的に解く方をやろうとすると、さっきのドイツみたいなああいう研究所がないと難しいかなと。要するに、数学者がどれぐらい応用問題を解くことに喜びを見いだせるかにもよるんですけれども、そこはある程度組織があって、そこできちんと職業としても認知されて、ペイもきちんとあって、それでキャリアパスがきちんとできていてという、そういう体制がないと、解く部分に関しては、時間もすごくかかるので、そこが一番のポイントだと思います。トランスファーだけだったら、そんなには大変じゃないので、既存の幾つかの国内の組織でできるかなとは思うんですよ。
【山本教授】
 そうですね。その後の補足の部分がきちんと。
【合原委員】
 個人にとっても時間を割かなきゃいけないところなので、それがちゃんと解くに値するような体制が作れるかという、そこだと思います。
【國府委員】
 本間さんにお伺いしたいのですが、企業の方の問題というのはどれぐらい、例えばどこかに持ち込んだときに、みんなで共有できるのでしょうか。
【本間委員】
 開示度の問題ですかね。
【國府委員】
 はい。
【本間委員】
 それ、両者の問題があって、まず抽象度が高くなっていた場合というのは相当開示ができるんですよ。ただ、問題は、数学的、科学的に今起こっていることを抽象化したことを企業側の人がどの程度できるかという問題によってしまっていると。僕が九州大学、東大とスタディーグループに出ているときに、抽象度の仕方は、何となくお互いにあうんの呼吸が見えてきたので、さっき山本先生の言葉でいうと、多分長(た)けたトランスファーの人が出てくると、抽象化できる人が出てきて、そうすると、実は企業の問題、隠れた形の問題になってしまえば相当開示ができると。ただし、データを出さなくちゃいけないことが結構あるので、データに関しては、何を見せているか分からないんだけど、一応言ってみるというやり方で逃げることはできるんですね。だから、意外と問題を科学的なアプローチに変えると開示はできると。
 一番の問題は、実はその問題をどうしていいか分からないときが一番複雑な状況を説明しなくちゃいけないので、これ、1年以内に解きたいのか、いや、競合が来ているからやらなきゃいけないのかとか、状況、悩みを打ち明けるじゃないですか。この打ち明けている最中の情報が一番開示度がきついですね。それを超えれば、あっ、何だ、普通の熱方程式なのねと言われた瞬間、それがビジネスにどう影響してくるか分からないわけだから、いいんだと思うんですけど、その手前が一番開示度としては難しいので、きょう出てきた言葉でいうと、目利きだとかトランスファーに該当するところの人の保証と、この人が逆に言うと企業側のきつさとやりたいことの熱意をどう言葉に代えられるかが結構重要な気はするんですね。
【長谷山委員】
 現状は共同研究に結び付く可能性を考えて、両者のNDAの締結を想定してお話しなさるのでしょうか?それとも、抽象的なところから議論を始めるのでしょうか? 実際に本間さんのところでいろいろと産学連携を進められていると思うのですが、どのように進めていらっしゃいますか。
【本間委員】
 今のところ、正直に言うと、初期段階では、会社の方には、この問題ってすぐには解けないからNDAに該当しないだろうと。それってアカデミアにすごい失礼なんですけど、アカデミアの方に解けるよと言って持っていっているわけですけど、解くまでには2、3年かかるから、まだ特許案件にもならないし、どういう特許技術になるか分からない、これはNDAにならないと会社側に言っていると。
 一方、大学の方に持っていくときには、解けたら考えようよという状況ですよね。これ、やっぱり一番問題なのが、解けるかどうか分からないときのNDA交渉って、お互いストレスフルなのと、お互いの疑心暗鬼がすごいまといついちゃうので、これをどう突破するかが、僕が企業側のビジネスを作るときの責務だと思っているんですよ。なので、そういう状況で今動かしています。
【長谷山委員】
 ありがとうございます。
【合原委員】
 でも、今はそこも大学側もわりと敏感になっているので、やる前にきちんと締結してからやります。
【本間委員】
 そういう意味だと、プロセス、何段階かあるんだと思うんですね。解き方が見えそうな段階というのはまだNDAじゃない。解けそうになった瞬間の共同研究のNDAだとか、特に後から出てくる弁護士さんに丸投げしていた特許の問題ってどうするのという問題は多分出てくるんですけれども、ここの今うまい解決方法が、個別大学と民間企業だけだと、ちょっとうまくいかない節が。お互いの労力が重た過ぎるという問題が多分あると思います。
【合原委員】
 もうちょっとメタでやれるといいかなと思うときありますね。
【本間委員】
 そうですね。
【國府委員】
 企業の問題以外にも、ほかの学術分野からのいろいろな問題はもう少しオープンになっても良いのではないかと思っているのですが、一方で研究の芽はそんなに自由に誰にでも公開してということにはならないかとも思うので、そういう課題の扱い方というのは、それも目利きの人の仕事なのかもしれませんが、そこはかなり難しいところだろうと思います。
【若山主査】
 高木先生、今の件に関しては。
【高木委員】
 生物系ですと、多分こういう問題を解きたいというのは、非常に具体的に開示して全く構わない状況だと思います。ただ、問題なのは、具体的なデータをお見せするときに、そこはやはり共同研究契約とか、何か結ばないと、というような状況なので、問題そのものは、こういうようなガンのこういう問題を解きたいだとか、こういう画像診断をしたいとか、それはクリアにわりと出せると思います。それはオープンにできるものだと思います。
【若山主査】
 ほかにございませんでしょうか。やっぱりいろんな意味で、数学科という意味じゃなくて、アプライドマスも含めて、数学というのをやっているんだというのは表に出して見えるようにしていくというのが粟辻さんの御質問にも応えていくことだと思うんですね。ある種の看板というか。2種類の看板をお持ちになっていても別にかまわないわけです。先ほど常行先生がおっしゃったように、応用を一切考えないで突き進むことも私は好きなんですけど、そういう数学者だけじゃなくて、このことは大事かなと思っています。
 ほかにございませんでしょうか。今井先生、何かありますか。
【今井委員】
 どういうキャリアパスを若い方たちが望んでいるかというところも問題なのかなと思います。本当に境界領域で生きていこうと思っている方たちがどのぐらいいるのかということも視野に入れて、全体の評価の方法を考えるとか、アカデミアの方も、採用するときにどういう人が欲しいと思っているのかを議論する必要があります。そこも含めてやっていかないと、当面若い人が参加してくれても、じゃあ、その後どうするのかと思った瞬間に立ち止まられても困ります。境界領域の人が多くなればなるほど、産業界とも連携がしやすくなるのだと思いますし、そういう人が企業に入れば、誰に相談すればいいのかもその人たちは知っているかもしれませんし、大学の方としても、そういう人たちが増えれば、産業界からこんな問題があるのだけどと言われたときに対応ができる人材、完璧なプロフェッショナルなトランスファーではないけれども、話が分かる人というのが増えていけば、流動的にいろんなことが動いていくのかなという気がちょっとします。
【若山主査】
 どうもありがとうございます。それでは、終了時間にも近づいてまいりました。どうもきょうは活発な議論、時間があればもっともっと出てくるんだと思いますけれども、ありがとうございました。
 本日御議論いただいた内容を踏まえて、今後の数学イノベーション委員会の検討につなげていきたいと。きょうも論点、御説明いただきましたけれども、まだまだ具体的なところにも届いてない部分もございますので、重ねていきたいと思います。
 今後のスケジュールについて、粟辻さんの方から御説明ください。
【粟辻融合領域研究推進官】
 資料の4という1枚紙を配っております。次回ですけれども、6月24日の水曜日の16時、午後4時から同じ場所で開催を予定しています。またその後、8月にも開催し、できればこのときに取りまとめを行いたいと思っておりますので、御協力をよろしくお願い申し上げます。
 それから、議事録につきましては、これまでと同じように、こちらで案を作って、皆様方にお諮りした上で公開等をしたいと思っております。
 それから、資料はお送り先を封筒に書いていただければ、送らせていただきますので、机の上に残しておいていただいても結構でございます。
 以上でございます。
【若山主査】
 8月ですけれども、おおよそには決まっているんですか。決まっていないんですか。
【粟辻融合領域研究推進官】
 ちょっとまだ皆さんに日程を御連絡しておりませんけれども、上旬に開催する方向で今想定しています。近々御連絡させていただきます。
【若山主査】
 分かりました。それでは、時間になりましたので、きょうの数学イノベーション委員会を閉会としたいと思います。どうも御協力ありがとうございました。

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研究振興局基礎研究振興課/数学イノベーションユニット

電話番号:03-5253-4111(代表)