数学イノベーション委員会(第16回) 議事録

1.日時

平成26年5月27日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省17階 研究振興局会議室
東京都千代田区霞が関3丁目2番2号

3.議題

  1. 数学イノベーション推進方策について
  2. その他

4.出席者

委員

若山主査、合原委員、青木委員、安生委員、伊藤委員、北川委員、髙橋委員、中川委員、西浦委員、宮岡委員、森委員

文部科学省

小松研究振興局長、山脇大臣官房審議官(研究振興局担当)、安藤基礎研究振興課長、粟辻融合領域研究推進官

オブザーバー

樋口統計数理研究所長、伊藤統計数理研究所教授、舟木東京大学大学院数理科学研究科教授、池川早稲田大学理工学術院研究院客員教授、中村(株)ハーモニックドライブシステムズ取締役

5.議事録

【若山主査】 
 それでは定刻となりましたので、ただいまより第16回数学イノベーション委員会を開催いたします。本日はお忙しい中、また、暑い中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日、小谷委員と杉原委員から欠席との御連絡を頂いておりますけれども、通常より少したくさん、きょうは御出席のようです。ありがとうございます。
 それでは議事を進めるに当たり、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【粟辻融合領域研究推進官】 
 配付資料の確認の前に、研究振興局長の小松の方から一言、最初に御挨拶を申し上げます。

【小松研究振興局長】 
 研究振興局長の小松でございます。この年明けにこの職に就任をいたしまして、お初にお目にかかる方もいらっしゃいますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 この御挨拶といいますか、ちょっと位置付けみたいなことですけれども、皆様御案内のように、この委員会は平成18年のうちの科先研の報告書をきっかけに、いろいろと数学的なものの見方というか、根本的な発想というものを諸科学や産業界に生かすということで、様々な問題に新しい発想を持っていって、解決を目指していこうという考え方で、こういうことを一種イノベーションという表現で追い掛けているという位置付けでございます。
 今までにも2年前に中間報告を取りまとめていただき、その後引き続き審議を重ねていただいておりますけれども、科学の動向とか内閣府も含めた政府全体の動向、それから政策科学の進展、そういったことを世の中の動きから考えますと、様々な更に追求しなきゃいけない課題があるなということで、引き続き皆様にお手をお忙しいところ、煩わせまして、更に積み重ねていく必要があるというふうに判断をいたしております。
 きょうも、そういうことで現状の取組等についても幾つかお聞かせいただくということになっております。いつもより出席が多いそうでございますけれども、お忙しい中をお集まりいただきまして本当にありがとうございます。
 そういうスタンスで引き続き先へ進めたいというふうに考えておりますので、お忙しいとは思いますが、どうぞ引き続きよろしくお願い申し上げます。

【粟辻融合領域研究推進官】 
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。
 議事次第の後でございますけれども、資料といたしまして、まず資料の1が統計数理研究所が実施している数学協働プラグラムの資料でございます。それから、資料の2が、統計数理研究所の取組についてという資料でございます。それから、資料の3が数学・数理科学分野の若手研究者のキャリアパス構築についてという資料でございます。資料の3-2が、日本数学会の国際交流とアジア数学連合結成に向けた動きでございます。それから、資料の4が、数学イノベーション委員会報告書に盛り込むべき内容とその背景(案)という資料でございます。
 あとは参考資料で、参考資料の1が前回の議事録、それから参考資料の2-1と2-2、2枚ポンチ絵、これ、以前委員会でお配りした資料を御参考に付けています。あと、2年前に出した中間報告を机上では配付しております。
 以上でございます。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 さて、きょうの委員会は、委託事業数学協働プログラム、それから、統計数理研究所の取組、さらに、日本数学会の取組について御紹介いただきます。その上で、数学イノベーション戦略に盛り込むべき内容について御議論いただきたいと考えております。
 それでは議題に入ってまいりたいと思います。まず最初に、委託事業数学協働プログラムのこれまでの取組について、受託機関である統計数理研究所の伊藤先生から御紹介いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【伊藤教授】 
 統計数理研究所の伊藤でございます。
 この数学協働プログラムを開始しましてちょうど1年半がたったところでございます。数か月前にフェイスブックの方も開始いたしましたので、是非皆さん一度ごらんになってください。
 本日の資料は、昨年度の事業内容も含めまして全体の事業計画ですとか、そういうものも含めておりますが、昨年度のちょうど夏頃に平成24年度についての事業内容を御報告申し上げましたので、本日は平成25年度、昨年度の事業内容を中心にお話しさせていただきたいと思っております。
 ここら辺の目的、背景につきましては、もう皆さん、御存じのことですので省略させていただきます。
 運営体制でございますけれども、昨年度、特任助教を2名採用いたしまして、特に作業グループの実施を中心にこの事業に参加してもらっております。この2名は統計数理研究所の人材育成組織でございます統計思考院の方に所属しております。協力機関として8機関に御協力いただいているところでございます。
 また、運営委員会でございますが、今申し上げました8協力機関の代表の先生方8名、それから日本数学会、日本応用数理学会、日本統計学会から3名の代表の方に入っていただき、また、これは開始当初ですけれども、産業界の委員ということで6名を含めて全部で24名の方に運営委員会に入っていただいております。
 続きまして、業務の内容でございますが、これは昨年度のこの数学イノベーション委員会でもお話しさせていただいたところですので、簡単に御説明申し上げたいと思います。
 まず、本事業の目的、内容といたしましては4つございます。まず、数学・数理科学を活用した課題解決に向けた研究内容・体制の具体化に向けた議論ということでございますが、これは後ほどワークショップ・スタディグループ・作業グループの実施ということで後述させていただきます。いずれの事業におきましても、重点テーマといたしまして6つを挙げております。1から3はいわゆる対象についての分類。4から6は方法論についての分類となってございます。これは本数学イノベーション委員会の中間報告の別表に従って運営委員会で決定したものでございます。
 続きまして2番、数学・数理科学側からの提案・働き掛けによる諸科学・産業における数学・数理科学の有用性に関する理解の促進ということで、簡単に御説明申し上げますが、諸科学分野の学会セミナー、研究集会等におけるセミナー・合同セッション等の開催ですとか、諸科学・産業向けの講演会の開催、また企業や業界団体等への訪問、それから、それを通して、産業界の特性を考慮した多様な連携方法の検討と実践ということを挙げております。
 ここで、黒丸で上げた項目は、これまでの事業で既に実施しているところでございます。白抜きの四角は、今後検討を進めていく内容になってございます。
 続きまして、数学・数理科学を軸とした協働研究等の情報共有・発信ということでございますが、これはこの事業のために協働研究情報システムというものを作りまして、情報の発信に努めているところでございます。
 また、先ほどもちょっと申し上げましたが、ツイッター、フェイスブック等のSNSによる配信も行っております。その他、一般向けのアウトリーチ活動なども行っております。
 次、4番ですけれども、これは数学・数理科学と諸科学・産業との協働を担う人材の確保・育成ということで、若手研究者の連携事業への参画ですとか、これはまだ手つかず状態で今後の検討項目でございますが、企業のインターンシップとの関連、それから、一般向けのアウトリーチ活動などがこちらに含まれております。
 これは昨年も申し上げました平成24年度の事業内容ですので、これは省略させていただきます。
 平成24年度は、ごらんのように9件のワークショップを、非常に短期間の公募でございましたけれども、実施いたしました。参加者数等はここに記しているとおりでございますが、事業を実施した1か月後には実施報告書を提出していただいております。また、大体半年たった頃には、どのような進展が見られたかということについてフォローアップを行っております。
 そこで出たものをここで幾つか抜粋しておりますけれども、例えば1番、2番では、再生医療で必要とされる多能性幹細胞を自由自在に分化させる技術の開発ですとか、組織画像を用いた自動診断法というテーマで行われたワークショップでは、その後、国内の学会セッションで集中的に討議をしたり、国際集会を準備したりしている。それから、企業との共同研究に進んで、実際特許申請が行われる。また、自動判定のソフトを開発、リリースしたというふうに報告を受けております。
 そのほか、大学間の共同研究ですとか、国際ジャーナルのこの研究集会に特化した特集号を発行したですとか、それから、JST/CRESTでの研究企画に発展した。あるいはこの数学協働プログラムの別のワークショップ、スタディグループを企画した。あるいは新学術領域・研究計画の企画ですとか、学術振興会の競争的資金への応募などに発展したというようなアンケート結果でございます。
 これは、平成24年度のワークショップに関する重点テーマの分布でございますけれども、ごらんのとおり偏りが見られます。非常に短期間の公募を行いましたので、このような結果になったわけですが、その後、翌年度の公募に際して十分広報活動をいたしまして、その結果は後ほどお見せいたします。
 また、シンポジウムを開催しました。
 これが昨年度、平成25年度の事業内容でございますけれども、一昨年度同様、運営委員会を3回開催いたしました。1回は京都で開催いたしました。また、ワークショップの公募を同様に実施いたしまして、昨年度は応募が全16件のうち10件を採択して実施したというところでございます。2回に分けて公募いたしました。
 それから、昨年度新たに開始した事業といたしまして、スタディグループの実施がございます。これは集中討議型で1週間から数週間程度の会合を7件実施いたしました。昨年度は重点テーマの下ですが、協力機関・受託機関が中心となって実施いたしました。
 今年度は現在、公募中でございます。
 どのような研究集会かと申しますと、主に諸科学分野、あるいは企業からの具体的な話題、これは1会合につき3課題程度ですけれども、これを提供していただいて、それに関して集中討議をしたということでございます。詳しくは後ほど説明いたします。
 そのほか作業グループとして、生命科学と材料科学の2分野を運営委員会で決定いたしまして発足させました。ここでは重点テーマやワークショップ、スタディグループで議論すべき課題等を抽出しているというところでございます。詳しくは後ほど申し上げます。
 それから、産業・諸科学向けのチュートリアルの実施ということで、これはワークショップ、スタディグループと連携して幾つか実施されておりますけれども、単独でもビッグデータに関するものを1件実施いたしました。
 それから、最後、先ほども申し上げましたけれども、ポスドクを2名採用して事業に参加していただいております。
 それから、これは昨年度の16件中採択した10件のワークショップでございます。これが重点テーマの分布でございますけれども、ごらんいただくと、これは応募の全16件の分布でございますけれども、公募の際に広報に努めまして1番のビッグデータ、それから6番の最適化と制御が多くなるのはいつもそうなのですけれども、一昨年度少なかった過去の経験的事実、人間の行動等の定式化、それから、疎構造データですね、これが3件、4件と応募を頂いております。
 これは参加者にお願いしているアンケートなのですが、それをまとめたものでございます。これは所属についての分類でございます。これは参加者が御自分でどのような分野の研究者か判断していただいたものでございます。
 これを見てお分かりになると思いますけれども、ほぼ数学・数理科学と諸科学・産業のバランスがとれていると思うのですけれども、2件ほど、例えば異常拡散の数理とシミュレーション手法ですとか、一番上のこれ、国際会議ですけれども、このあたりは数学・数理科学側が非常に多くなってございます。
 これは両方とも国際会議、英語で行われているということもございますし、例えばこの異常拡散の数理とシミュレーション手法は、3分の1程度が外国人ということで、そうなると、日本の感覚ですと諸科学に分類される研究者が数学・数理科学側というふうに判断していることがうかがわれます。
 これはワークショップを知ったきっかけということでございますが、ぱっと見ますと、やはり個人的な連絡が一番多いということでございます。公募と、それを実施する際は広報に努めているのですけれども、やはり個人的な連絡が一番多いということでございます。
 何を期待して参加したかということでございますけれども、今後の自分の研究に役立つかもしれない。そういう期待を込めて参加された方が多いということでございます。
 それから、これはワークショップに参加してどうだったかという、そういう感想を聞いたものですが、3割程度は期待以上、ほぼ全ての方が期待通りか期待以上とお答えいただいております。
 これ、スタディグループでございますが、昨年度は7件を協力機関、中核機関を中心に実施いたしました。これがそのうち幾つかの課題を挙げたものですけれども、これは一般向けの資料として出すことをまだ了承を完全に得られておりませんので、資料には含めておりませんけれども、例えばこのような課題がございます。
 例えば真ん中でございますが、統計数理研究所と鉄道総合研究所のスタディグループでございますけれども、乗客のアンケート結果から鉄道車両の乗り心地を推計するというような課題が挙げられて、その後共同論文の執筆、共同研究に発展しております。
 このようなスタディグループの課題、内容につきましては、数学協働プログラムのホームページでも公開しているところでございます。
 それから、このようなチラシも作りまして各方面に広報に努めているところでございます。
 これ、1つの例として挙げてございますけれども、この真ん中に数学協働スタディグループとございます。これは「感染症の流行モデリング小研究会」と題しまして、昨年の11月に統数研で開催したものでございますが、そこでは2つの課題が挙げられました。その2つの課題というのは、もともと文部科学省の内局のワークショップで発掘されたものでございます。これをスタディグループで深掘りしたということでございます。
 その2つの課題のうち1つは、3月の末ですか、国際論文誌にアクセプトされたという連絡を受けております。もう1件はまだ共同研究が継続中でございます。
 この課題につきましては、今年、産業・政策における活用に向けてワークショップを開くということで、これは九大のIMIの方で共同利用研究集会として採択されたと伺っております。
 また、人材育成に向けまして、入門的なワークショップを統数研の公募型人材育成事業で採択された。
 それから、人材育成が大切だということで、8月に10日間、これは土日を含めた10日間ですが、連続的なサマーセミナーを実施するというふうに報告を受けています。これは1つのモデルケースとなるのではないかと思っております。
 それから、作業グループでございますけれども、先ほど申し上げましたように、2分野で作業グループを実施いたしております。こちら、材料科学の作業グループでございますが、今年度6月から7月にかけて仙台で第3回の会合、それからミニスタディグループを開催すると聞いております。これは中川先生にも御協力いただくと聞いております。
 それから、9月には、日本応用数理学会と共催で数学協働ワークショップを実施いたします。これは西浦先生と中川先生にオーガナイザーとして参加していただくことになっております。
 これはもう一つの生命科学の作業グループですが、こちらは理化学研究所の望月先生をリーダーとして、12名で発足させたものでございます。こちらのスタディグループでは、これまでの協働による成功例とその理由、あるいは逆に困難だった例、失敗例とその原因をまとめるということを目的に活動しているところでございます。これは今年度以降、ワークショップの開催を検討していると聞いております。
 それから、その他の事業ですが、ビッググラフと最適化というチュートリアルを3月に実施いたしました。これは125名を集めまして、数理の専門家以外の方に啓発的なチュートリアルを行いました。
 これはシンポジウムでございますけれども、算数・数学を学ぶ子供たち、小学生から高校生、大学生を含めた一般向けにこのようなシンポジウムを開催いたしました。これは申込み段階で350名の申込みを頂きましたが、実際300名程度の参加を集めました。これは森先生や小谷先生にも御協力いただいております。
 その他の事業、これは数学会との連携ワークショップあるいは事業説明会を開催いたしております。
 大変駆け足で申し上げてきましたけれども、1年半の活動を振り返りましてと題してここに挙げておりますけれども、連携の輪が十分広がっているかどうか。これまで数学協働で16件応募、10件採択。あるいは内局ワークショップを含めますと、昨年度は19件の実績がございました。事務局といたしましても、周辺学会、30学会弱にですが、積極的な広報を努めていますが、どうもそれだけで十分ではないと感じております。顔ぶれの広がりという点で不十分ではないか。
 先ほどもちょっと申しましたけれども、結局個別のコンタクトに頼らざるを得ないということで、有効なのですけれども、そのような活動には限界がある。
 結局は仲立ちをする人材が不足しているのではないか。ワークショップ、スタディグループを単独で開催するだけでは効果の点でちょっと疑問があります。
 2番、産業界との連携、特にスタディグループの実施についてですけれども、今年度7件企画いたしましたけれども、東大・九大では平成22年度からでしょうか、スタディグループを毎年実施されております。
 ヨーロッパでは1968年オックスフォードで始まりましたけれども、現在まで250社以上と500超の課題に取り組んだと聞いております。これを実施しておりますSumith Instituteの方では15名のテクニカルスタッフを擁している。現在では40大学に拡大している。
 国内ではと申しますと、JSTでは、新技術説明会、これは学から産への説明会、それから産から学へのプレゼンテーション、これが実施されている。
 それから、東京都立産業技術研究センターというところに行ってお話を伺ったのですが、これは都内を中心に全国の主に中小企業から年間13万件程度の技術相談を受け付けている。これは10名のスタッフ、それから300名の研究者、主に工学分野ですが、産総研等40機関と連携して実施されているということです。
 それを踏まえまして、数学協働におけるスタディグループの取組はどうあるべきかということで、これ、結論が出ているわけではございませんけれども、同じやり方をしても仕方がないということで、適正な規模で実施する必要があるのではないかと考えております。
 それから、3番、啓発活動、人材育成の在り方でございますが、先ほども感染症の例を挙げましたけれども、ワークショップ、スタディグループと連携してチュートリアルやサマースクールなどの人材育成を実施するというのは非常に効果があるのではないかと考えております。
 数学連携の輪を広げるために、連携を担う人材、特に若手の育成が必要。数学側でも関心のある研究者は、潜在的に多いはずですけれども、なかなか振り向いていただくのは難しいということです。
 今年度の事業実施でございますけれども、ただいまワークショップ、スタディグループ等を公募中でございますが、今年度は奨励枠ということで萌芽(ほうが)的な研究、若手研究者の応募を奨励しております。
 それから、スタディグループにつきましても、今年度は公募いたしております。今日時点で結構な数の応募がございます。そのほか作業グループの活動は先ほど申し上げました。
 アウトリーチ活動といたしまして、JSTのサイエンスアゴラというイベントが今、公募をいたしておりますので、これへの出展を企画しているところでございます。
 以上でございます。

【若山主査】 
 どうもありがとうございました。
 ただいまの御発表について御質問とか、御意見、ございましたらどうぞ。お願いいたします。

【合原委員】 
 いいでしょうか。最後から2番目の都立産業技術研究センターのやつがあるんですけど、13万件ですごく多いですよね。これ、どの程度実際に、全部やったと。

【伊藤教授】 
 これ、受け付けたという数だと思います。中には何もやらなかったのも含まれているかもしれません。

【合原委員】 
 その300名の研究者というのは、大学の教員とかも含んでいるわけですか。

【伊藤教授】 
 いや、これは。あのお話では多分内部にそれだけ所属されているようなお話だったと思います。

【合原委員】 
 あっ、そんなにいるのですか、ここって。

【伊藤教授】 
 ちょっとそれ、自信がないのですけど。何名で取り組んでいらっしゃるのですかと聞いたら、300名とおっしゃいました。もしかしたら、これは連携機関も含めているのかもしれません。

【若山主査】 
 ほかにございませんでしょうか。少しだけ時間を取っております。

【伊藤委員】 
 よろしいですか。大変いろいろなことをやられていてすばらしいと思ったのですけれども、ここでやった結果はどこかで見ることはできるのでしょうか?先ほどホームページに載っているという話がありましたけれども、それは多分結論的なまとまったものが載っかっているような気がするのですけれども、もうすこし細かい中身までアーカイブしているようなことはなさっていますでしょうか。

【伊藤教授】 
 今、載せているのは運営責任者がお書きになった実施報告を載せているので、そのほか、概要的なものはパンフレット等を作成していますけれども、細かいところというのはまだ何も公開はしていないのですけど。

【伊藤委員】 
 実施できるワークショップの数も限られているので、それにぴったり合うという人には参考になるのはもちろんですが、その分野の人にとってもそのいろいろなことから類推がきいて、いろいろなことが分かるかなと。そのためにはまとめていただくという、この委員会でも時々そういう議論が出ているんですけれども、どこかでそういうことをやっていただく必要があるかなと。いろいろなワークショップをやられていて、素材はどんどんたまっているので、それをこのままにしておくのはもったいないし、報告書となると、本当に圧縮された、ある種とりすました成果しか残らなくなってしまうんです。もっと具体的な成果とか中身を残していただくような仕組みというのは作ることは可能でしょうか。

【伊藤教授】 
 今のところやっておりませんけれども、確かにおっしゃるとおりですので……。

【伊藤委員】 
 すごく大変だとは思うのですが、御検討いただけると大変有り難いと思っています。

【伊藤教授】 
 フォローアップアンケート等を通して、詳細は伺ってはいるのですけれども、どこまでそれを出していいのかという、それは個別に判断していかざるを得ないと思います。

【伊藤委員】 
 分かりました。よろしく。

【伊藤教授】 
 検討させていただきたいと思います。

【青木委員】 
 よろしいですか。すごく勉強になりました。ありがとうございました。この上の1のところに仲立ちをする人材が不足しているということと、あとそのSmith Instituteでは15名のテクニカルスタッフということを書かれているんですけど、このテクニカルスタッフというのは、この不足している仲立ちの人に相当するということなんですか。

【伊藤教授】 
 この15名のテクニカルスタッフのほぼ全ての方がPhDを持っているということで、この方々は研究しないそうです。つまり、コーディネートをする人材。

【青木委員】 
 なるほど。そうすると、その何かに参加した理由が人を知っていたからという話がありましたけど、このテクニカルスタッフというのは結構電話を掛けたり、人のところに話に行ったりとかいうこともするのが仕事なのでしょうか。

【伊藤教授】 
 恐らくそうだと思います。課題に応じて研究者を集めてくるというのが仕事だと思います。

【青木委員】 
 なるほど。分かりました。

【若山主査】 
 よろしいですか。
 きょう、ちょっと時間が詰んでおりまして、先に進みたいと思います。
 それでは、続きまして統計数理研究所に取組について、樋口所長より御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【樋口所長】 
 統計数理研究所の所長を務めております樋口と申します。座ってお話しさせていただきたいと思います。
 きょうは、説明させていただく機会を設けていただきましてどうもありがとうございます。また、日頃からいろいろお世話になっている先生方がたくさんいらっしゃっておりまして、直接お話しできることを大変うれしく思っております。
 きょうは、統計数理研究所はいろいろな多様な活動をしていますけれども、この共同研究の立ち上げに関わる人材育成をという話がありましたので、そこを中心にお話しさせていただきたいと思います。
 統計数理研究所は1944年、戦争末期に設立されました。ですので、ちょうど今年が70周年になります。これまでの間に1985年の大学共同利用機関に改組転換、また、2004年の国立大学の法人化とともに大学共同利用機関も法人化され、情報・システム研究機構を構成する1研究所になった。これが大きなイベントではないかと思います。
 また、その間に、1988年に日本で初めての大学院大学、総合研究大学院大学に設立当初から参画しております。右側になりますが、統計数理研究所は大学共同利用機関ですので、ミッションとして、研究活動、共同利用、人材育成、この3つが重要なミッションです。
 共同利用に関しましては、きょうは余り時間がありませんので触れませんが、NOE(Network of Excellence)形成事業、またちょっと触れますが、公募型共同利用・共同研究、また、大型研究インフラとしてスパコンを保持しております。なお新たなスパコンシステムの整備により、大学共同利用機関として初めてHPCIに参画いたします。
 人材育成として、これが今日の中心的な話題ですが、統計思考力育成事業を行っています。また、総研大の基盤機関として日本で唯一の統計学にかかわる専攻、統計科学専攻を担当し、大学院教育をしております。
 この図が統計数理研究所の組織構成になっております。下側に数字が打ってありますので、お手元の資料と参照していただければと思います。上側の水色のモデリング研究系、データ科学研究系、数理・推論研究系、これがいわゆる基幹的研究組織です。
 緑色のセンター群は、先ほどのNOE(Network of Excellence)形成事業を推進するためのセンターになります。その基幹的研究系とセンター群の構成方法に関しては4ページをごらんください。統計数理研究所は50人弱の常勤の教員がいますが、この3つの研究系のどれかに必ず属します。ここがいわゆる方法論を研究するところです。
 また、統計学はその学際性、また研究所の規模からしまして、教員センターに兼務するという体制をとっております。NOE型研究組織は、喫緊の課題に対応するために設置されていまして、常勤の職員はこの5つのセンターにその興味あるいは専門性に応じて1つ、あるいは2つ属する、兼務するという形をとっています。
 一番右側が人材育成組織で統計思考院、これがきょうのメーンな話題になるものです。先ほどの最後も少し出てきましたが、いろいろな人材育成においてこのT型人材を育てるのが重要であると。皆さん方、よく御承知だと思いますが、縦型はいろいろな分野だとしますと、分野横断的な学問も修得、その横と縦両方修得するとTになりますけど、T型人材の育成が非常に重要であるということで、そのために統計思考力育成事業を統計数理研究所で進めております。
 左側に対象と書いてありまして、統計数理に関わるいろいろなステークホルダー、その対象に対応しましていろいろなサービスを提供しております。この部分的に事業を推進する組織が統計思考院になります。統計思考院の目標は、統計思考力を備えたT型人材育成による融合研究の推進です。
 右側に、その看板あるいは出勤退勤札としまして昔風のものがありますが、狙いとして道場の気風を持つ場というのを考えております。
 構成員としては、この左にあるようなもので、特徴としましては、特命教授、シニアの先生ですが、その方々を3名雇用し、特任助教、統計数理研究所のこの思考院では2名、また先ほどの数学協働プログラム特任教授も参画、またほかの活動に興味あるという特任助教、研究外来員が老若入り交じって在籍しています。
 行っている事業についてはこれから後述いたします。まず、対象が研究者そのほかの方である共同研究スタートアップについて説明させていただきます。共同研究スタートアップはいろいろな所外からの共同研究に関する申込窓口を一本化しまして、それを成長させるための仕組みでございます。昔は多様な、またレベルの異なるいろいろな相談がありましたけれども、共同研究スタートアップというプログラムにより申込窓口を一本化しました。
 2番目の緑色の部分では、問題を担当特命教授、また、先ほど言いました特任助教、教員等々が相談を相手側から受けます。また、その結果、一番右側にありますように、いろいろな発展の仕方がありますが、プログラムは左から右に行くこのような流れになっています。
 昨年は41件の共同研究スタートアップの申込みを受け付けまして、その年度内にいろいろな形で発展したものがこのようにあります。これが共同研究スタートアップの仕組みです。
 その具体的な内容については、ここにリストアップしたものですが、41件のうち民間企業からの相談が21件ということで、半分が民間企業からの相談になっております。
 それの1つの実現形として、民間と秘密保持契約等々のいろいろな契約を結んで、民間からお金を頂いて共同研究をする「民間との共同研究」があります。これは、第2期スタート時から昨年度までの実績を書いたものですけれども、順調に、また受入れ研究資金額も急激に伸びております。
 次に、思考院で行っている別の事業として、公募型人材育成事業を説明させていただきます。公募型人材育成事業は人材育成に関わるプログラムを公募するもので、2つのタイプがあります。1つはワークショップ、もう1つは若手育成事業です。
 ワークショップは若手の研究者、ポスドクあるいは学生の方々が主に夏とかに集まるときに、滞在に関するいろいろな資金援助等々をするものです。また、若手育成事業というのは、ここにありますように、少人数の1人あるいは2人の若手研究者、学生を、統計数理研究所に滞在させまして、2週間等々で育成するものです。
 また、もう1つの事業として、夏期大学院というのをやっております。統計数理研究所は大学共同利用機関ですので、運営会議における外部の先生方からのいろいろなアドバイスに基づいて事業を行うこともよくやっておりますが、その1つとして実現されたものです。
 従来は大体1日、2日の講義をしておりまして、昨年は理化学研究所脳科学研究センター特別顧問の甘利俊一先生に情報幾何学をたっぷり教えていただきました。それはUstreamでも講義を配信しました。
 また、今年は先ほど伊藤の方からも説明ありましたけれども、夏に連続10日間のいわば「統計数理ブートキャンプ」を行います。内容は感染症流行の数理モデルを学ぶ、目標は実践プログラミングまでのスキル向上を目標とするコースで、10日間ぶっ続けでやるというのを夏期大学院で行います。先ほど御説明した公募型人材育成事業のワークショップの一環としての開催になります。
 また、滞在型に関わるものとして、統計数理研究所が属します情報・システム研究機構のいろいろな事業にも参画しています。例えば情報・システム研究機構では、若手研究者クロストークで毎年60人ぐらい、夏に1泊2日の合宿を行っており、非常に面白いプログラムなのですが、きょうは時間がないので割愛させていただきます。
 また、同じく情報・システム研究機構は、3日あるいは1週間ぐらいの滞在型のワークショップ、小さいワークショップを支援するプログラムを行っておりまして、それにも応募しまして統計数理研究所で外国から人を呼びまして滞在型で行いました。
 また、情報・システム研究機構では、この研究者交流促進プログラムというのがあります。半年あるいは1年、国内の先生方が情報・システム研究機構の各研究所で研究活動のために滞在するというプログラムがあります。容易な長期滞在を実現する方策も、重要であると我々は思っていますが、そのためにAkaike Guest Houseというゲストハウスを作りました。現在、稼働率が80%を超えており、非常に好評ですので、今年は増築着工等々考えております。
 次に、統計数理研究所、公募型の共同利用・共同研究を紹介します。この図では、横軸に予算額、縦軸に1つのいろいろな企画に対してどれぐらいの人数が参画しているかで、ちょっと俯瞰マップを作ってみました。この一番右上が情報・システム機構リサーチ・コモンズ事業で、これは規模が大きいものです。これがNOE形成事業になりまして、この茶色のものが先ほどお話ししました公募型人材育成事業、今からお話ししますのは、この真ん中の公募型共同研究というものです。
 1件当たりの研究予算は非常に小さいものになっています。このような整理を行って理想形で言えば左下から右上に成長していくようなものをイメージしております。左下にあります公募型共同利用・共同研究の特徴としましては、先ほどの資金等々の規模もありますので、萌芽(ほうが)的な研究、あと新分野の発掘、これらを重視しております。
 その分野を示したものがこの図になります。これは先ほどのT型あるいは統計数理研究所のNOE形成事業の概念図とも関連するんですが、この横方向に統計数理の基礎分野で分類したもの、縦方向に専門分野で分類したものになります。公募型共同利用に応募される方はこの2つの、アルファベットと数字で応募するものになっています。
 注目していただきたいのは、この統計数学あるいは情報科学を除いたこの3番、生物からその他までの右側の応用分野がこの公募型の大体75%、つまり4分の3がこのような分野の方々の共同研究になっております。
 法人化された後の数字としましては、当初は共同研究の数は100件程度ですが、現状は160件から180件、また注目していただきたいのは右側の参加人数ですけど、延べ人数と研究者数がほとんど余り変わらない。参加される方は大体日本全国、世界も含めて800人の方々が参加されていらっしゃいます。
 残された時間、もう少し人材育成に関わるところをお話ししたいと思います。左側の図は有名ですけど、Mackinnsey Global Institute、MGIリポートでデータサイエンティストの育成状況を図にしたものです。残念ながら先進諸国で減っているのは日本だけだとなっています。左がデータサイエンティストの数です。また右側は米国における統計学の人材育成を示すデータです。ちょっと字が小さいんですが、縦軸の表示はリニアスケールになっています。
 米国においては近年、統計学を学びたい、あるいは実際に学位を取られる数というのが非常に増えておりまして、例えば米国はいわゆる統計学だけに限っても博士号が毎年500名輩出しておりますが、日本は統計科学専攻が1個しかありませんので5人程度。大体50倍から100倍の規模の違いがあります。
 これは、統計数理研究所は受託として先ほど伊藤から説明があったものと、研究振興局の「ビッグデータ利活用のイノベーション人材育成ネットワークの形成」のデータサイエンティスト育成ネットワークの形成というのも受託しておりまして、いろいろなものをやっております。
 昨年来、そのベスト・プラクティスの調査研究等々を行いまして報告書も出しております。また、MOOCで教材も作りました。
 右側にこの事業の1つのものとして、データサイエンティストインターンシッププログラムというものの説明会を6月15日に行います。いろいろな企業の方々にデータサイエンティストの卵を派遣して、また鍛えてもらうというプログラムです。
 これは最後になりますが、NOE形成事業の説明の図です。統計数理研究所の規模からすべての分野をカバーできませんので、5つの分野を特定しまして、この5つの分野で各々中核・HUBの役割を果たすセンターを作り、いろいろな協定、MOAを結ぶというところでNOE形成事業に努めております。これが国内の協定締結機関等々になります。
 また、その締結の中にも、教育に関係しまして東京大学、名古屋大学、お茶の水大学のリーディング大学院に統計数理研究所は参加し、この1月にシンポジウムを開きました。また、これが国外とのいろいろな提携状況になっています。
 最後に滞在型が非常に有効であるという話をしましたけれども、先ほど伊藤からもありましたように、いろいろなプログラム、いろいろな企画の在り方というのがありますが、それを成長する、あるいはいろいろな連携をさせるということが重要ではないかというふうに思っております。
 統計数理研究所、小さい研究所で多様な活動を行っておりますが、これを日本全体にスケール化するには、より一層のサポートを頂ければというふうに、最後にちょっとお願いを申し上げておきます。
 以上です。

【若山主査】 
 どうもありがとうございました。ただいまの樋口先生の御紹介、御発表に関し、御意見、御質問等ございましたらお願いします。

【伊藤委員】 
 先ほど民間との共同研究に関しては、10ページのところに既に表が出ておりますけれども、その後にある人材育成事業ですとか、大学院ですとか、こういうものというのは産業界の人というのはどのぐらい来ているんでしょうか。あるいはその産業界とアカデミアの人は特に区別せずに、先生の方ではお考えでしょうか。

【樋口所長】 
 まず、大学院の方ですけれども、これは総研大の方ですが、統計数理研究所の場合、学生の約8割の方が社会人になります。多分その理由として、入学される社会人の多くは具体的な一定の課題意識を持って統計数理を学ぶという形になるので、いわゆるT型が自然に構成できるということで、社会人が多いのではないかというふうに思います。
 共同研究は公募型ですのでお金を頂かない等々のものですので、もし、何らかの発展形が考えられるのでしたら、お金を頂いて民間との共同研究をする。それより前のものはいわゆる研究者同士での共同研究ということです。

【伊藤委員】 
 ありがとうございます。

【合原委員】 
 統計思考院が道場の気風を持っているというのはちょっと興味を、僕、武道が好きなので。道場のよさというのは基本的には師範、師範代がどういう人材がいるかということと、その人たちがどういうタイミングでどういう稽古をつけくれるかという、その2点だと思うのですけれども。その辺はどういう工夫をされているのですか。

【樋口所長】 
 前者の方は、特命教授が統計数理研究所を退職された方、あるいは統計コミュニティの会長等々をされた方々、シニアの方を師範役としてお迎えしております。もちろん現職の教員が参画することがありますが、先ほど言ったシニアの特命教授方々と若い特任助教等々の交流がポイントではないかと思います。

【合原委員】 
 で、常駐されている。

【樋口所長】 
 人によって違いますが、特命教授は最低でも週1回はおいでいただいています。
 あと、どのようにして訓練させるかということですけれども。図に示した共同研究スタートアップのフローで3つの真ん中で、特命教授と特任助教が一緒に相談しますが、特任助教に対して、その特命教授がついていろいろなアドバイスをする。あるいは特命教授がある程度民間の方とか諸科学の人と相談するところに同席させたり、それに関しての課題を与えたりして、どれぐらい進んだかをちょっと報告しなさいというふうにして報告させます。そこに教員が参加することもありますけど。そういうことで、乱取り稽古みたいなイメージでやっております。

【合原委員】 
 分かりました。

【樋口所長】 
 それは昔なら当たり前のことでやったことかもしれませんが、ちょっと意識してやるようにしています。

【若山主査】 
 ほかにございますか。

【森主査代理】 
 18ページに共同研究のスタイルとして興味がありますが、延べ人数と研究者数がほぼ同じというのは、ちょっとその感覚が分かりません。延べ人数というのは何の……。どういう人数でしょうか。

【樋口所長】 
 大体参加する人は1つの共同研究テーマに参加すると。

【森主査代理】 
 延べは何をもって延べとするかという質問です。

【樋口所長】 
 ある人が2つ参画するときもありますので。

【森主査代理】 
 研究集会みたいな。

【樋口所長】 
 研究集会もありますが、共同研究のテーマでも2つ以上の参加がある場合があります。

【森主査代理】 
 日数じゃなくて、幾つの研究に参加しても。延べの意味が。

【樋口所長】 
 日数はこの場合は関係ないです。

【森主査代理】 
 違うのですか。

【樋口所長】 
 テーマあるいは研究集会への参加が人によっては重なることがあるので実人数以外に延べ人数が出ます。

【森主査代理】 
 そうすると、1人の人は大体ほぼ1つのテーマに参加した。そういう意味ですね。分かりました。

【若山主査】 
 西浦先生、どうぞ。

【西浦委員】 
 5人対500人ということで、もうちょっと伸びてほしいなと思うんですけれども、その5人と言われるところの人材のリソースですね。23ページに国内協定締結機関とか書いておられるし、若手のエンカレッジや、クロストークとか、非常に様々な活動をされているのですが、結局のところ、その5人というのはどちらから来るのですか。

【樋口所長】 
 5人は統計学という名前がついた博士号ということで、統計数理研究所は総合研究大学院大学の統計科学専攻から統計学博士を出していますので、統計学という名前がついた博士として5人対500人と。ただ、素養としましては、統計学の素養、統計学の知識、経験を持った他の学位を持たれる方は研究所以外にもいらっしゃいますけど、それは入っていません。私が今言ったのは、あくまでも統計学博士号というところの数です。

【西浦委員】 
 あともう1点、17ページにいわゆる自然科学系、情報系はまあ当然なのですけれども、6番、7番はその人文科学、社会科学も含まれているのですけれども、これは具体的にはどういう内容で来ているんでしょうか。

【樋口所長】 
 6番、例えば人文科学ですと、計量文献学等々ありますし、自然言語等々のテクニックと大分近いところもありますけれども、言語解析、また学校教育におけるもの、そういうものですね。また社会科学は、ありとあらゆるところに今たくさんありますので、1つ1つ説明できないのではないかと思いますけれども、たくさんあります。

【西浦委員】 
 結構、だから、数としてはかなりあると……。

【樋口所長】 
 ちょっと数は持ってきてなかったのですが、やはりちょっと正確ではないんですが、多いのは生物科学、医学、薬学、疫学、災害時意思決定というのがありますね。ここが多いですね。あと環境が、新しく追加したのでここも増えてきているということで、社会科学も非常に多くなってきていると思います。

【西浦委員】 
 個人的感想ですけれども、この分野というのは、僕は結構ポテンシャルが今後あるのではないかと。自然科学系は当然もちろんあるのですけれども、この辺でその統計思考院も含めて、若手の人に、こういう自然科学系以外の分野に結構いろいろまだ大きな問題があると思うので、是非やっていただけるといいなと。個人的意見ですけれども。

【樋口所長】  私も全く同感です。1つは、自然科学というのは法則等々一定のコミュニティが共有するものがありますが、これらの適用分野というのはいわゆるデータドリブンが非常に有効であるということですので、じゃあ、それをどのようにして具現化していくかということで、なかなか分からない人たちもいらっしゃるので、ここは先生がおっしゃるように、あるいは我々もそのように思っております。

【西浦委員】 
 ありがとうございました。

【若山主査】 
 ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

【安生委員】 
 データサイエンティストを育成されていくスタイルはいろいろ御紹介いただいたのですけど、そういう方々が産業界に浸透していく典型例としてどんなものがあるのでしょうか。アカデミアではない方向に広がっていく行き方についてです。

【樋口所長】 
 我々の研究所にいろいろな問合せがあるのですが、もちろんインターネット系のところはもう既にどんどんどんどん入ってきているわけですけれど、私はポテンシャルが大きいと思うのは、従来のものづくりの分野です。この分野ではいわゆる計測技術の発達とともに膨大なデータが得られ、グローバル競争に勝つためには、何らかのスマート化さらには最終的なアウトプットを個人化する必要がありますが、日本の企業はなかなかそこの部分が弱いのではないかということなので、私はそこに人材を送り出していきたい。ものづくり分野で学ぶ学生はもともとそういう地力はありますので、そこにプラスアルファすると、ものづくりにとっても、非常に進歩するのではないかというふうに思っています。

【宮岡委員】 
 5人ほどのドクターを出しているということでしたが、もともとは社会人の人が大部分ですよね。

【樋口所長】 
 8割がそうです。

【宮岡委員】 
 その方は大体元の会社に戻るわけでしょうか。

【樋口所長】 
 具体的な数字、ちょっとパーセンテージは分かりませんけど、戻る方もいらっしゃいますし、アカデミアに行かれる方もいますが、最近は元に戻る方も多いような……。

【若山主査】 
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、時間も若干押していますので次へ参りたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、日本数学会の取組について、日本数学会の社会連携協議会における活動として、若手研究者キャリアパス構築支援活動の御紹介を池川先生、中村先生よりお願いしたいと思います。その後、続けまして、日本数学会の国際交流とアジア数学連合結成に向けた動きについて、舟木先生より御紹介いただきたいと思います。

【池川客員教授】 
 御紹介いただきました池川と申します。私は実はここ四、五年、NTTの方で産学連携、特にインターンシップを主体とした産学連携教育を担当させていただいておりました。
 私自身、東京工業大学の数理を修了しまして博士号を持っております。そういうことがありまして、日本数学会の方から、この若手人材のキャリアパス問題について是非とも協力してほしいということでしたので、この3年間、このキャリアパスの構築の支援活動をさせていただいております。
 きょうは、その活動の状況を報告するとともに、今後に向けた取組と課題について御紹介させていただければと思っております。
 これはもう皆様も御承知かと思うんですが、1990年頃から、科学技術立国日本を標榜(ひょうぼう)するということで、若手の高度人材育成を政策的にいろいろ推進してきました。残念ながらバブルの崩壊等によりまして、研究者の需要低迷、そしてアカデミックポストの減少ありまして、博士の就職難問題というのが表面化いたしました。
 その後、幸いなことに産業界ではオープンイノベーションという機運が高まり、大学におきましては、バイ・ドール法の制定や大学の国立法人化等により産との連携をしようという機運が高まりました。
 このような背景の中、文部科学省様の方では、インターンシップ等の産学連携教育を主体とする事業を推進したところでございます。
 私ども数学会もこの博士の就職難問題というのをひしひしと感じておりまして、まず、2010年にアンケートを行いました。その結果は後ほど御報告いたします。その結果に基づきまして、数理科学振興ワーキンググループというのを設置いたしました。そのワーキンググループでの審議の結果、キャリアパスセミナーというのを行いましょうということで、今まで3回実施しております。
 現在、当委員会で御審議いただいておりますように、数理を基盤とする産業分野は顕在化しております。さらに、アベノミクスの奏功によりまして、民間企業における研究開発投資の増加をうけ、増研究者の需要は増えつつあります。そういうところを踏まえまして、私どもでは産官学の連携を基軸とする協議会、ここでは社会連携協議会と呼んでおりますが、それが発足いたしました。現在、それを基にいろいろな取組を行っております。
 それでは、今までの取組を簡単に御紹介させていただきます。まず、なぜ学会がこのような活動を行うのかとよく問われます。実は学会がこのキャリアパス構築支援をやる上でいろいろなメリットがございます。まず、1番目がアンケートというのを比較的簡単に取りやすい。これによって、状況を正確に把握することができます。それによって企画の立案を的確にできます。
 次に、あと数学という学問の特徴に応じた取組を考えることができます。
 最後に、これが一番大事なところですけれども、学会というのは中立的な立場でございますので、企業様の方の御理解を比較的得やすいところがあります。
 私どもはこのようなメリットを活用いたしまして、数学会の会員へのサービス向上ということを願って様々な取組を推進しているところでございます。
 では、なぜ数学会がキャリアパス構築支援をしようとしたか。それについて簡単に御紹介いたします。このグラフは2010年、日本数学会が主体となって各研究機関にアンケートを行った結果でございます。いろいろな項目についてアンケートをいたしましたけれども、ここでは大学院修了後の進路の見通し、あとキャリア支援企画への参加の希望についてのみ記載させていただいております。
 このグラフ内において赤丸で囲ってお示ししておりますように、博士課程の半分以上の方が将来不安であると。そういうこともあって、キャリア支援企画を是非ともお願いしたいということが会員の方からの要望として挙がりました。
 このようなことを踏まえまして、日本数学会では数理科学振興ワーキンググループというのを設置いたしました。このワーキンググループでは、3つの課題を取り組むことを決めました。特に、最初の大学院生の効果的就職支援を重点化しようということになりまして、今から御紹介いたしますキャリアパスセミナーというのを開催することになりました。
 今まで3回、キャリアパスセミナーを開催しております。第1回と第2回は、それぞれ東京理科大と京都大学で行っております。基本的に講演の後に、採用担当者に参加いただいて学生とのマッチングイベントを開催しております。第一回セミナーの模様をごらんいただければ分かりますように大盛況でございました。
 第2回のセミナーにつきましては京都で開催しましたけれども、20社の参加を頂きました。この背景といたしましては、そこに座っております中村会長が関西経済連合会の人脈がございますので、そこにお願いいたしまして、企業に参加をお願いいたしましたところ20社も集まっていただきました。
 このグラフでお示ししますように、いろいろな業種の方が参加いただいています。これは、先ほど私、冒頭で申し上げましたけれども、やはり学会というところもありますので、皆さん、企業の方が比較的参加しやすいのかなというふうには思っております。
 ここで、この20社の参加された企業にアンケートを採ったところ、やはり3月にマッチングイベントをするのは時期的に遅いと。就職のマッチングの時期をもっと早めてほしいということがありまして、それについては、後ほど御紹介します社会連携協議会で議論いたしましたところ、今年から秋に開催することになっております。
 第3回のセミナーにつきましては、マッチングイベントの代わりに、パネル討論を開催いたしました。このパネル討論では、パネリストや聴衆の方から非常に興味深いコメントを頂いております。
 続いて、先ほど社会連携協議会というキーワードを出しましたが、それについて簡単に御紹介いたします。何度も申し上げますけれども、ちょうど、今、産ではオープンイノベーションという機運がございまして、産学連携という波がございます。さらに、この委員会で議論されていらっしゃいますように、ICTの進展などに伴って数理分野が産に貢献できる分野も顕在化しております。幸いなことに、民間企業では業績回復をして研究開発投資が増え、研究者のポストが増えつつあります。
 このような機運を捉えることが大事ということで、産の方にお声掛けをいたしました。なぜ産の方の有識者をお招きしたかといいますと、次の3つの目的がございます。
 まず、1点目としては、やはり産の方にお越しいただいて新たな産業分野を発掘していただこうというのがあります。
 2点目としては、選択と集中とかマーケティングとかの産流ノウハウを取り入れて、少ないリソースの中で最大の効率化を図ろうという運営の方法を考えております。
 最後は、やはり人脈ですよね。実は中村会長は経団連の方にも人脈がございますので、そういう方々の活用をするということで、産の方を巻き込んで社会連携協議会というのを発足いたしまして、キャリアパス構築支援の強化・加速化を実践しているところであります。
 この社会連携協議会において、博士課程の修了生の就業状況はどうですかという御意見がありまして、日本数学会の協力の下、現状を把握するためにアンケートを行いました。今年3月に博士後期課程を修了した学生のアンケートの結果がこのグラフでございます。
 約140名の方が修了されました。約半数の方がPD、研究員、非常勤講師という非正規雇用、不安定な身分の方であるということが明らかになりました。この半分というのは特段驚くべき数字ではない。実は2013年8月に文部科学省様の方で学校基本調査というのをされております。その結果によりますと、理学の専攻の博士課程修了者における非正規雇用の割合は56%でございます。
 ですので、数理だから特段どうこうというのではなくて、やはりこれは理学という基礎的研究の要素が強い学問であるために、このような傾向にあるのではなかろうかなというふうには推察しております。
 もう一つここで大事なポイントは、たかだか6名しか民間企業に就職していないということです。このような状況を踏まえまして、産業界へのキャリアパス構築支援について強化・加速化が必要というふうに、更に私どもは認識しているところでございます。
 今後の取組でございますが、今年の秋に異分野・異業種交流会というのを開催いたします。これの目的は、若手研究者を産業界の方にうまく引き合わせましてアピールしてもらうということですね。それによって、産からのフィードバックをもらうとか、学生自身に産業界への道を選んでもらう気付きを与えるとかということを考えております。
 ほかといたしましては、今年の春に開催しました第3回のセミナーでのパネル討論においてパネリストや聴衆者の方から貴重な御意見を参考にした活動を考えております。1点目は、本日の最初の御講演でもありましたけれども、アウトリーチ活動ですよね。聴衆者の方から非常にいい取組なのでもっとアウトリーチをしてほしいという御要望を頂いております。
 今回パネリストとして、数理を専攻され産業界で活躍された方を御招待して、成功事例を語っていただきました。2点目といたしまして、そのようなことを踏まえまして、成功事例をされた方を軸としたコミュニティを作って、そこをベースにパスを広げるというような手段も大事かなというふうに認識しております。
 3点目として、数理修了生の産への出口発掘を淡々と進めていきたいと思っております。
 さて、このような取組を推進するに当たって、いろいろな問題が挙がっております。   1点目としては、この取組は数学会の活動ということもあり、慈善活動、言うなればボランティア活動として行っておりますので、人的とか経済的な面で不足しているという懸念が今出ております。
 冒頭の御講演での数学協働プログラムでは、アウトリーチ活動も推進していらっしゃるようで、それなりの要員を何か手配されているようですけれども、私どもアウトリーチ活動を行うに当たって費用対効果を今吟味しております。やはり学会のお金を使うということに関しましては、会員様の御理解等を得ることは必要ですので、そういうことを踏まえて今吟味中でございます。是非とも文部科学省様をはじめとした関係各所の方に本格的支援を頂ければというふうに思っている次第です。
 2点目としては、私どもが取り扱っております博士就職難問題というのは、根が深い社会的な問題ですので、一学会で取り扱うべき課題ではないかなと思っております。ということもありまして、ほかの学会と情報共有等で連携を行うことや、先ほど申し上げましたけれども、関係省庁様の本格的な御支援を頂きたいなというふうには思っております。
 まとめについては、時間の都合上、列挙だけさせていただきます。以上でございます。

【若山主査】 
 どうもありがとうございました。まず、続けて舟木先生の方からお願いできますでしょうか。

【舟木教授】 
 数学会の舟木です。きょうはこういう機会を与えていただきありがとうございます。粟辻さんの方から、先ほどのキャリアパス構築と、それからもう一つはアジア数学連合の結成に向けた動きというテーマを与えられましたので、それについてざっとまとめてみましたので、御報告したいと思います。
 最近10年間の動きといたしまして、特にこの近隣アジア諸国、つまり韓国、中国、台湾、そういったあたりとの関係、そこを通してのアジア数学連合-The Mathematical Union of Asiaですね、その結成へ向けた動きについてまとめてみました。
 まず、数学会と大韓数学会との協定というのが2004年、ちょうど10年前に始まりました。それから、2006年にGlobal KMS Day、これは大韓数学会60周年のときに、このアジア数学連合結成の提案というものが、フォーラムというものがそこで開かれまして、そういう提案が出た。これが初めてかと思います。
 それで、その後いろいろ動きがありまして、台湾、中国ともありまして、2010年ですかね、ICMを機会にこういう議論がまた再び起こっておりました。余り時間もないですので、さっさと進めたいと思います。
 2012年には、特に数学会と大韓数学会の間でジョイントミーティングが九州大学が開かれ、宮岡先生が挨拶されている、その風景であります。
 昨年はAMC-Asian Mathematical Conferenceというものが、これが東南アジア数学会を拡大する形で初めて韓国釜山で開かれまして、そこで釜山宣言といいますか、そういうものを採択しまして、そこで今年のICMまでにこのアジア数学連合の規約を決定して、そしてICMのときに設立宣言をしようということで、一応皆さん合意して釜山宣言というものを採択いたしました。その後、台湾数学会にも数学会から訪問したりして、小磯理事が講演したりしております。
 それで、その後、今年になりまして5月に、この大分時間は掛かりましたが、立ち上げのための委員会のメンバーが決定しました。これは韓国のパクヒョンジュ先生、ICMのプログラム委員長をなさっている方が中心になってやられていることですけれども、日中韓それぞれ1名、それから東南アジア数学会から2名、そしてインドから1名という、こういう委員は一応決定いたしました。
 それで、そこで規約を議論しようということですが、なかなかちょっともう時間もかなり迫っていますので、ICMまでに本当に行くというのはなかなか難しいかなとは今、感触としては持っております。
 ちょっと宣伝も兼ねてですが、そのICMの期間中、これは8月13日から21日ですが、数学会主催で初めてですが、数学研究交流日本フォーラムというものを開催いたします。8月19日の夜でしょうか、ソウルのコンベンションセンターといってICMの会場で、こういうフォーラムを開催します。これは欧米諸国はもう長年こういうものを開催しているんですが、日本としては初めてのことです。森先生にもここで祝辞を頂く予定になっております。是非皆さんにも参加していただければと思っております。
 これは近隣諸国ですが、そのほかにもベトナム、フィリピン、カンボジアとの交流というものもいろいろございます。
 このアジア数学連合の目指す方向というのはここにざっとまとめましたが、特にAsian Congress of Mathematicians、こういうICMのようなものを4年に1回開こうということ、そして特に賞です、特に若手の賞を与えることによって、若手をエンカレッジしたいというようなこと。あるいは数学の雑誌を発行しようというようなこと。それから、こういうことを通して各国の行政、国民に共通に訴えていきたいというようなことが目指すべき方向であります。
 ただ、問題点としては、やはりアジアだと数学のレベルが各国で違うとか、目指す方向性がやはり研究を向いているか、教育を向いているかで違うだとか、数学の応用という面ではなかなかまだまだアジアは進んでいないだとか、それから歴史的な背景がそもそもかなり違うので、そういうものをまとめていくというのはかなり難しい。
 範囲もいろいろ、どこまでがアジアなのかというのはなかなか厳しいというか、ちゃんと決めるのは難しいというようなことで、なかなか意見の相違というものが依然としてありまして、本当に動かすのはまだまだ難しいかなという側面も感じております。委員会は一応メンバーが決まったと申し上げましたが、そういうことで全部がまだまとまっているという感じはいたしておりません。
 このIMUですね、国際数学連合からの提言としては、とにかくできることから始めてはどうかと。そういうことだとか、IMUあるいはEMS(European Mathematical Society)を見習って進めたらどうかとか、弱い国はサポートする。加盟単位を国にしない。これは当然、特に、中国だとか問題があるので、そういうことだと思います。特に、トップの研究所間のネットワークを作って、そこをてこにして進めなさいというようなことも言われております。
 それから、ヨーロッパ数学会から学ぶ点というのは、やはり強力なリーダーシップが必要であると。それでも10年は掛かっているので、なかなかそんなに、ヨーロッパに比べてアジアはもっと特殊な事情もありますし、先ほど申し上げた歴史的な背景等もあるので難しいのではないかということで、そんなにすんなり行くような感触ではないけれども、皆さん、一応委員は出してまとまっていこうという機運はあります。
 そして、ヨーロッパ数学会で学ぶべき点というのは、やはりコングレスを開いて、これもICMの中間の年に開いて、ヨーロッパ数学会賞というのを毎回10名ですか、しかも35歳未満に与えるということで、実際ここでヨーロッパ数学会賞を取った方の中から確かにフィールズ賞をもらっている人がもうかなり出ているというようなことで、できればアジア数学連合としても、こういったような成功例に学んでいきたいということはあります。
 あとは出版物であるとか、レクチャー、研究集会等々やっているというようなことで、そういうことを見習えればということであります。
 最後に、日本数学会独自の取組としては、研究集会、国際研究集会を開いていて、まとめてみますと、21年間で27回開いている計算になります。外国からも研究集会のテーマによってもちろん違いますが、昨年は46名外国から参加、その前は78名ということで、たくさんの参加者を集めております。
 そのほかにも、高木レクチャーというものを2006年から開始しております。これは世界的な数学者の方に講師を依頼して、大体半年に1回開くというような、そういうペースで行っています。これが数学会の取組と外国との関係の上での取組ということで、簡単ではございますが、終わらせていただきます。ありがとうございます。

【若山主査】 
 どうもありがとうございました。前半の池川先生から発表していただいたキャリアパス構築のための活動、それから、今頂きました国際交流の話は一応独立ではありますけれども、広い意味で若手の研究者をエンカレッジするということにつながっていくことだというふうに思います。何か御質問とか御意見とかございましたら、よろしくお願いいたします。どうぞ。

【合原委員】 
 池川先生に非常に重要な御指摘を頂いたと思うのですけれども、やはりこの博士のキャリアパスの問題というのは非常に根が深い問題だと思います。東大の場合だと、うちは数理工学ですけど、うちに来る学生たちというのは進学振り分けのときに、数理科学に行こうか、うちに来ようかと悩んでうちに来る。どういうふうに考えてくるかというと、やっぱり数学好きなのだけれども、社会に使えるような数学をやりたいという判断を進学振り分けのときにして、だから、2年生ですね、それでうちに来るわけですね。
 うちの学科では、産業数学を教えるので、それでそれを学んで修士ぐらいである意味、無駄に学位を取ることもなく、無駄に博士課程に行くこともなく、自然に産業界に入って活躍している。そういうルートができている。
 他方で、僕の印象だと、数理科学に行くと決断した学生は、やっぱり純粋数学をやりたいわけですよ。そうすると、そういう純粋数学をやりたくて博士課程に進学した学生を産業界にキャリアパスを作るというときに、やっぱりその学生にとっても方向転換になるので、そこのケアをどうするかという問題が1つあって、もう一つは本当に産業界に役に立つような人材に育てるためのカリキュラムを数学会でどう作るかという、やはりその2つの問題を解決しないと、この問題は解けないと思います。

【池川客員教授】 

 私ども数学会としてできることは、やはり私ども数学会は基本的に会員様のためにあるということです。やっぱり会員の満足度向上というのが基本でございます。ですので、若手研究者で別段私どもは東京大学様に限らず、全国津々浦々の会員様に対して、このような産との連携する機会をまず与えます。それをどう学生がうまくフィードバックするかは、会員様や学生自身の努力でもありますけれども、学会としてはそういう場をまず設けるということが、まずは最初の取組かなと思っています。

【合原委員】 
 それは分かるのですが、実際にだから6名しか就職していないわけですね、産業界に。だから余りうまくいっていないということですよね。

【池川客員教授】 
 現状残念ながら産業界へ進まれる方が非常に少ないというのは事実ですよね。そういうところに行けるチャンスが実はあるのですよ、実は。企業としてはあるのですけれども、学生自身がそれを見付けるきっかけがまずないということもあって、マッチングイベントを開催しています。

【合原委員】 
 で、そこですよ。だから、きっかけでもあるし、もともと純粋数学をやりたいと思って進学した学生ですから、そこの何と言うかな、やっぱり何か一種のケアですよ。だから、うちに来るのはもう学部2年生で決断してから来ているので、そこの問題がない。
 ところが数学科にいた学生は基本的にはやっぱり純粋数学をやりたいと思っているはずなので、特に博士まで進学した学生はですね。だから、そこで単に産業界に行きなさいと言っても、そう思ってなくて進学しているわけですから。だから、そこをどうするかということです。

【池川客員教授】 
 そこは私、数学会として考えるのは非常に難しいところで、中村さん、何かありますか。

【中村取締役】 
 協議会のメンバーの中でも、今おっしゃった先生のそうした御意見がございました。まず、大学の中で純粋数学を学んでいる人に、方向の可能性を広げるというのですか、そのために大学としてそういうふうな産業界に出るようなカリキュラムを、そういうものをやはりセッティングしておかなきゃいけない。それがまず重要だということと。
 6名しかという、こんな深刻な問題があって、自分が間もなく身分不安定になることが分かっているわけですね。実際、京都大学のときに私も参加したのですけれども、全然学生の意識がついていっていない。学会にあったから来たというだけで、企業は前向きで学生に向かうのですけれども、学生の方は、ちょっと僕らは民間の人間だし、信じられないぐらいおっとりしていると言うのでしょうか、普通こういうマッチングのときはもう少し学生が前のめりになって。そういうギャップがある。我々とすれば、まず、カリキュラムのそういう問題と、学生をそういう意識変革と言うのか、そういうものを醸成していかなきゃいけないと。
 それで、そのために、きのうもちょっとある方とお話ししたのですけれども、やっぱりポスドクの数学の人というのは、それは産業界から見れば非常に良質な、もう希少な人的資源だと。レアアースだと。しかし、産業界は前のめりになっているのに、学生の方はこのままでいたらばなかなか将来の生活設計というのは難しいのに、そういう意識にのめり込めないと。
 そのためにちょっと先ほどお話ありましたけれども、少しそういうことで資金的なサポートを得て、我々が例えばポータルサイトを作って、そういう学生の人にメンバー登録してもらったりして、そういう情報発信をする。今までは、ただこういうことがありますよというポスターを出して、黙って学生が来るのを待っていたわけですけれども、産業の人は一生懸命始めたのですけどね、それをやっぱり学生に直接呼び掛けるというか、それとおっしゃったようないろいろな問題があるので、そのカリキュラムとは別に何かホームページを作って、そういうことでこういう産業界で活躍する仕事の可能性の、そういう意識付けとか、方向感というのが得られるような仕組み作りというのをしたらいいのではないかという議論がたくさん出ましたです。

【若山主査】 
 どうもありがとうございました。

【舟木教授】 
 九州大学さんで取り組んでおられるインターンシップなんか非常にうまくいっていると、そういう例は出ていますよね。

【池川客員教授】 
 私どもとしてはいろいろなツールがあると思います。学生さんに産業界へ結ぶきっかけ作りはいろいろあると思う。1つはインターンシップもそうですし、こういうマッチングイベントもそうですし、日本数学会として、まずできるところから少しやろうかなというふうに思っていますと。
 この問題は1年、2年で解決できると私は思っていないです。やっぱり着実に1つ1つ解決していくというのかな。先ほどうちの会長の中村からお話がありましたように、先生の意識改革も必要だと思いますし、学生の意識改革も必要だと思いますし、そういうことを着実に1つ1つ長い目で行うことが必要だなと私は思っています。
 ということもありまして、側面的支援という形ではなくて、できれば本格的な支援を関係部署から頂ければ非常に助かるというのが、私どもの要望であります。もし、数学会の理事長として何かありましたら。

【舟木教授】 
 もし可能であればお願いしたい。非常にいい取組をなさっていただいているので、できれば予算をコンスタントに続けていきたい。なかなかボランティアだけでは難しいという、そういう面がありますので、もし可能性があるものなら御検討いただきたいと思います。

【若山主査】 
 どうもありがとうございました。私どものところですけれども、結局コースを2つに分けて、機能数理学コースを作ったことと、それから研究所を作ったということの、もともとの半分の理由がやはりその人材育成、研究の方向を見せるという、そういうことが大きな目的でありました。深い大事な問題だというふうに認識しています。
 ほかにございますでしょうか。

【伊藤委員】 
 ちょっといいですか。若干今のにかぶるのですが、学会なので多分カリキュラムを作るというのはかなり難しいことだと思うのですね。それもあって、今のマッチングイベントをやられているのですが、これは、いきなり企業側は採用を前提に来ますから、ちょっとハードルが高いわけです、学生にとっては。
 今、学生が多分一番知りたくて、かつ企業側も是非いろいろな方に知らせたいことは、数理科学の知識を持っている人はこういう場で活躍できるという、そういうセミナーみたいなことだと思うのです。
 それを学会がやっていただくのはすごくいいことで、いきなりマッチングイベントに行くのではなく、産業界でどういうところで数理科学が使われているかという、そういう事例紹介をどんどんやっていくようなイベントを是非やっていただいて、で、それはウェブでやるとかでなくて、やはりフェース・トゥー・フェースでやらないといけないと思います。これ、人間関係なのでウェブなどではうまくいかないです。そういうのを是非お考えいただいたらどうかな。
 で、もう一つ、それがかなり回るのであれば、産業界はお金を払います。人の採用には物すごくコストが掛かっているのです。1人採用すると5億円の投資です。だから、物すごく真剣に考えているわけですね。
 それに対して、今までこれしかやられなかったところに対して母集団がこれだけ広がるとすると、それに対しては、産業界、お金を払ってでもそういう場を利用するはずです。ですから、うまい仕組みを作れば、多分産業界側からそういうサポートも得られるのではないかというふうに思います。

【若山主査】 
 どうもサジェスチョンありがとうございました。

【伊藤委員】 
 長くなって申し訳ない。

【若山主査】 
 いえいえ、どうもありがとうございます。
 続きまして、報告書取りまとめの方に移りたいと思いますけれども、(本日、御紹介・御説明を下さった)先生方、もしお時間がございましたら、30分ほどですけれども、御同席いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、新しいその次の報告書に盛り込むべき事項と、その背景や問題意識を資料4に整理していただきましたので、粟辻さんの方から御説明をお願いします。

【粟辻融合領域研究推進官】 
 ちょっと簡単に、お時間もございませんので簡単に説明させていただきます。
 前回、3月の委員会で、これの前段階の資料をお配りしたかと思いますけれども、それをその後のそのときの議論も踏まえて、更に少し充実させるとともに、右側に真ん中の部分が新たに盛り込むべき部分ですけれども、それの根拠とか背景になるものを追記しております。
 ちょっと説明をはしょらせていただきます。最初の部分は、これはなぜ数学イノベーションが必要になったのかというところで、そこを社会的要因とか技術的要因に分けて記載しているというものが1ページ目でございます。
 2ページ目の上のあたりにあるのは、これは2年前の中間報告以降にいろいろ進展、先ほどありました数学協働プログラムも含めてございましたので、そういうものを追記してはどうかということでございます。
 3ページ目のところからは、ここは少し新しく書いているんですけれども、これ、数学イノベーションで取り組むべきいろいろな課題、数学イノベーションでどういう課題に取り組むべきなのかということを議論していただきましたので、前段として数学ならではのアプローチというのはどういうものなのかというのをまずここで、いわゆる抽象化のアプローチとデータ駆動型のアプローチに分けて少し記載をしております。
 それから、めくっていただきまして4ページ目が、それを受けて、では(3)のところですけれども、数学の力を発揮させるプロセスとして、いわゆるニーズを発掘してそれを数学の問題に落とし込んで、それを解いて検証するという、そういうプロセスが必要で、その各々のプロセスにおいて数学のいろいろな専門分野の研究者の方の参加が不可欠だと。
 具体的な例として、いわゆるデータ駆動型のモデリング、それから、先ほども出てきました原理を抽出するようなモデリング、双方が各々の強みを生かしながら協力するということが必要ではないかというようなことですとか、あるいは伝統的な応用数学だけではなくて、これまで余り応用されてこなかったような数学というものも重要ではないか。
 さらに、具体的なニーズに応えて、それに応じて数学を新しく作っていくということも重要ではないか。そんな御意見もいろいろございましたので、ここでまとめて整理しています。
 ちょっと具体例のところが空欄になっていますけれども、このあたり、もしいい具体例があれば、盛り込めば少し説得力が増すのかなと思っていますので、報告書をまとめていくプロセスでお知恵を頂ければというふうに思っています。
 その後、青字になっている部分が少し御議論いただきたい部分ですけれども、それを受けて数学イノベーションにより、どんな課題に取り組むべきなのかということをいろいろ議論させていただきましたので、それを少し反映させています。
 5ページの部分に書いておりますのは、これまで数学協働プログラムあるいはそれ以前に文部科学省との共催でやってきたようなワークショップなどで、今後、その後の進展がいろいろ見られるようなものを少し抽出してみたもの。この3つぐらい、ちょっと個別の説明は省きますけれども、ここには挙げています。
 その次のページに行っていただきまして、6ページの5行目ぐらいの、「また」のところからが、これまで昨年の秋にいろいろこの委員会で御議論いただいた際に、いわゆる社会的な課題からのアプローチとそれから数学的手法からのアプローチに基づいて数学イノベーションではどういう課題に重点的に取り組んでいくべきなのかというのを御議論していただきましたので、その議論の成果としてこのような課題についての検討が行われたという現時点での到達点と、それから今後はそういった課題間の優先度ですとか、あるいは具体的な研究の進め方などについて関係する機関と学協会で更に議論が深められて研究テーマの中につながっていくということが期待されるということを記載してはどうかということでございます。
 その後幾つか例がありますけれども、ちょっとこれは先生方からいろいろ出していただいたものを整理したものでございます。人の五感の数理的な記述ですとか、あるいは自己修復ダイナミクスの数理ですとか、あるいは22世紀に向けての社会システムデザイン、それから、材料のスマートデザイン、めくっていただいて8ページに行きますと、全体最適化の一層の普及あるいは計算機アルゴリズム、変化の前の「兆し」の検出、ビッグデータから有益な情報を抽出する。こういったもともと有用だと言われているような問題もございますけれども、いわゆる抽象化のプロセスとデータ駆動型のプロセス、これがうまく力を合わせて取り組んでいけるような問題というものがうまく定義できればなというふうに思っています。
 この後が、ここまでが課題の話ですけれども、この後までが10ページをちょっと見ていただきますと、きょうも御議論がございましたけれども、1つは外部へ向けての情報の発信だということで、この場所に書くべきかどうかというのはまた御議論があるかと思いますが、要は外からなかなか見えづらい、あるいは関連の情報というのはどうしても散逸しがちだという特性がありますので、そういったものをうまくまとめて外に向けて分かりやすい形で発信するというような仕組みが必要だというような趣旨のことを書いたらどうかというのが1つでございます。
 それから、もう一つは、これは国際交流、これも今、アジア数学連合の結成に向けた動きがあるという御紹介がありましたけれども、こういった国際交流については、いわゆる若手研究者の人的なネットワークによる交流、これも当然重要ですし、あと個人とか機関レベルの交流だけではなくて、学協会とか学術団体レベルの交流連携も重要である。
 アジア地域において、更にこういう連携、交流を深め、あるいは人材育成なども深めて日本数学会なんかが中心となってアジア諸国の関係数学会と協力してアジア数学連合の形成に向けて取り組んでいくというようなことを、少しモチベートできるようなことを記載してはどうかということでございます。
 それから、キャリアパスの構築、これも本日、池川様の方から御紹介がありましたけれども、こういったキャリアパスの構築に向けた取組、何かもう少し具体的なものがあればこの報告書に盛り込んでもいいのかなというふうに思っています。
 それから、データサイエンティスト、これも樋口先生の方から御紹介がありましたけれども、具体的なキャリアパスの1つとして、いわゆるデータサイエンティスト的なものが考えられ得るのではないかということで、12ページの上の方を見ていただきますと分かるように、いわゆるデータの分析からその分析結果のビジネスへの反映までを視野に入れた活動ができる人材が大変必要になっていると。いわゆる数学的なバックグラウンドのある博士課程修了者というものを活用して育成することが効果的だという。
 その後具体的に何をどうすべきなのかみたいなのがもう少し入るといいのかなと思いますけれども、そういうところがもう一つの論点かなというふうに思っています。
 最後に、これで言いますと3-4というところで、もともと数学イノベーションの実現に向けた必要な体制というものが書かれていて、ここでいわゆる拠点ですとか、拠点間の協力体制というものが必要だという趣旨のことが書かれていたわけですけれども、ここは今の紹介いただいた数学協働プログラムですとか、あるいはその各拠点が共同利用機関の認定も含めて整備が進められつつあるといった前進が、2年前らか比べても見られるわけですけれども。
 それに加えて更に何が必要なのかということで、前回、東北大学の小谷先生からも御紹介があったような、いわゆる訪問滞在型拠点のようなものが必要じゃないかという議論が以前からなされているわけですけれども、どんな効果、あるいはなぜ必要なのかということ、仮に一定の効果があるというふうに言えたとしても、ここに書いてあるような常勤型ではなくて一時的に滞在するような訪問滞在型がなぜ有効なのかとか、あるいは有効だとしても、何か現状の各大学なんかの体制とか支援とかでできないのかみたいな、そういう疑問に答えていくようなことが必要かなというふうに思っています。
 ちょっと青字にした部分は、本日御紹介いただいた内容ともリンクしているということで、本日、時間が少ないですけれども、御議論いただければなというふうに思っています。以上でございます。

【若山主査】 
 どうもありがとうございます。
 それでは、この今、御紹介いただいた項目について、例えば不足しているところとか、もっと強調すべきところとか、あるいはちょっとその方向はどうかというところももしかしたらあるかもしれません。そういうことで、全般的に先生方から御意見いただければと思います。
 時間がきょうは余りございませんので、順番にということでは少し変ですけれども、森先生の方から何か御意見を順番に行きたいと思いますので。

【森主査代理】 
 まだ、理解する方で十分できてないですけれども。

【若山主査】 
 それではどなたか。

【中川委員】 
 数学イノベーションで何をもって成功したかという定義、こういう状態なればよしとする基準が要るかなと思います。そこは余り議論されていなかったように思います。成功の基準というのは。

【若山主査】 
 そうですね。1つには、先ほどの学生のキャリアパスなんかというのは、1つの大きな施設で成功……。

【中川委員】 
 そうです。数学の重要性を数学応用分野がしっかりと認識した上で、共同で競争的資金を申請し活動の幅を広げていけるようなチームができるというのが1つの例だと思います。

【若山主査】 
 ありがとうございます。ほかに御発言は。

【青木委員】 
 よろしいですか。この7ページの22世紀に向けての社会システムデザインというところで、西浦先生からもその人文社会科学は統数研でもかなりプロジェクトがあるのだと思うのですけど、社会システムデザインに是非人文社会科学との連携というのも入れていただいて、震災に強い社会システムを作るとか、流通システムを作るとか、この前の震災のときのデータを集めて今、分析しているので、是非社会科学も入れていただきたいのですけど。
 あともう一つ質問ですが、データサイエンティストとインフォマティシャンというのはどう違うのですか。たしかインフォマティシャンが不足しているというのを以前かなり聞いたことがあって、私のイメージだとデータサイエンティストと同じ感じですが。

【樋口所長】 
 全然違うと思います。現時点でのデータサイエンティストというのは、いわゆる数学・数理科学、あるいは情報科学的なものと、むしろリアルな問題との間の距離感をきちんと取り、コミュニケーション能力あるいはビジネスだったらビジネスとの価値、産業界における価値、そういうものをきちんと理解できるというところが非常にすぐれたデータサイエンティスト。
 あるいはそこが1人でできない場合には、チームを作ったときにそのチーム構成として、それはどういう自分がポジションになるのか、それがちゃんと分かるような人間、これがデータサイエンティストだと思います。
 いわゆるインフォマティシャンがどうあるのか。これは長い歴史があるので私がここで断定的な発言するのもちょっと誤解を生む可能性があると思うので言いませんけれども、私は違うと思います。

【若山主査】  
 どうもありがとうございます。
 それでは、次に参りたいと思いますが。ほかに御発言はございませんでしょうか。

【伊藤委員】 
 よろしいですか。どこに入れたらいいか分からないのですけれども、例えば先ほど樋口先生の方からもシニアの研究者の方に特任教授になっていただいて、ある種の知識伝承のようなことを助教にさせると。非常にいい話ですし、私もそのシニアの方々、産業界も含めてですね、活用するべきだと思っています。
 ただ、そうすると、特に数理科学の場合、どうしてもいろいろな技術が属人的になる。人についている技術なのですね。それで先ほどちょっと、伊藤先生の御発表のときにも申し上げたのは、そういうデータをどこかに置いておくことによって、知識を汎化するといいますか、要するに属人的にしないようにしないと、いろいろな方が利活用できないのではないかという気がするのですね。
 それをどこにどう書いたらいいかよく分からないのですけれども、例えば私がやっているようなシミュレーションの世界ですと、ある種のやり方がきちんと決まれば、標準ツールをきちんと作っておくというふうにすれば、誰でも使えるようになる。知識が汎化できるのですが、何かそういうところをどこかに入れていただけないかなというふうに思います。

【若山主査】 
 ありがとうございます。それでは余り長く時間を差し上げなかったような気がしますけれども、森先生。

【森主査代理】 
 なかなか答えにくいですけれども、拝見していて数理研の自分のところがやっぱり一番気になります。数理研が数学連携という活動にどういうふうにコミットしていけるのかという視点ですけれども、共同利用研究所として数理研というのはほぼ毎週1回より多いペースで研究集会やっていて、ほぼパンク状態ですね。
 それがどうやってこれに加わっていけるかというのを考えると、結局、前、文部科学省でやっておられたところに数理研で採用された研究集会の研究代表者に文部科学省のこういう数学連携のプログラムがあるけれども、それを活用してみませんかという声掛けをしてみましたけれども、それを続けるぐらいが一番現実的かなと思います。
 数学協働プログラムは出口に向かって進むように良く考えられていますが、入り口は閉じずに空けておくのも重要だと思います。一方、毎年、RIMS共同研究あるいはRIMS研究集会が70件程度3月中に確定します。4月以降に、これらを更に数学連携のワークショップと認定する場合でも(講師の費用は別にして)会の開催自体にはお金は要らないわけです。しかも、これらの研究集会の研究代表には、応用の方に主に目を向けているわけではないが、応用も気になるという純粋数学者もいるわけです。つまり、数学連携のワークショップ開催を決断しやすい環境にある方々ですので、彼らに声をかけるようにすればいかがでしょうか?実際、以前は声かけをして、数件の応募がありました。お認めいただければ、来年また試すことは可能です。

【若山主査】 
 どうもありがとうございます。順番にとは申し上げましたけれども、きょう、まだちょっと御発言いただいておりませんし、高橋先生。

【高橋委員】 
 少しの間欠席が重なりまして、申し訳ありません。きょう、お話を聞いて、ますます私ども独法の立場からもどんなことができるのかなというふうなことを考えさせていただきました。今、森先生の方からありましたけれども、独立行政法人の私どもは、実際には観測とかシミュレーションからデータを吐き出している、吐き出しつつあるというか、吐き出してきた蓄積データをいかに使っていくか。これらのデータは本当に1つの大きな財産なのですが、実際のところ、研究目的以外には十分に活用されつくしていないという現状があります。私ども独立行政法人は、例えば基礎の数理科学研究と、その成果を気象業務のような現業をつなぐ1つの中間地点にいる研究開発機関では、数理科学の基礎研究部分と、研究開発の成果を実社会という出口につなぐ研究開発のバランスをどう考えるかという課題をいつも考え続け、研究開発と人材育成を進めています。
 私どもの例えばシミュレーションのデータあるいは観測のデータというのは、地球物理の場面では物理の制約の下にあるようなデータでございまして、その物理的制約を含む様々な異種のデータ、あるいは物理的構造が入ったようなデータの解析手法は、数学や数理の方々に広く問題意識として知っていただき、共通の課題を見いだし新しいアプローチを作っていけるとよいと考えています。これまでにないアプローチを開拓するためには、交流のなかった分野の研究者の方々にも私たちの問題意識を知っていただく機会が必要であり、また異なる分野の専門用語と考え方をどのように共有するかについては、地道な、研究開発とは直接関係ない取り組みも必要であることから、このような数学イノベーション委員会の活動の軌道上に挙げていく必要性を強く感じます。今すぐに何らかの解決策を示すということができませんが、そのような問題意識を非常に持っておりまして、1つのネットワークラインを構成することから始まるのかな、ということを、先生方の御発表をお聞きしながら思いましたが。
 できれば、提言のどこかに、キャリアパスの部分かもしれませんし、この具体的な例というところに何か盛り込めるようなことがあれば、私も協力させていただきたいと思います。以前から考えていたところですけれども、具体的なパス、ネットワーク構築のような具体的な取組みたいなことの一例を挙げさせていただければなというようなことを考えております。取り留めがなくて申し訳ないですが、このような感想をもっております。

【若山主査】 
 どうもありがとうございました。先生がおっしゃっている産業界の問題でも、そのスケールの大小はあるかと思いますけど、同じような面が必ずありますので、そこはうまく盛り込んでいけたらと思っています。北川先生。

【北川委員】 
 ここにも書いてあるように、やはり現在、重要な点の1つはデータドリブンの方法です。これは社会においても、アカデミックな研究においても、ますます重要になってくるかと思うんですが、その中でそれを担っていく人材に関しては先ほど樋口所長が言われたように、単にデータサイエンスのスキルを持っているというだけじゃなくて、ちょっと違った形の人材を育成していかないといけないということがあると思います。
 それに関連して、やはり我が国の特異的な問題というのは、先ほど樋口所長が言ったように、統計に関して、例えばアメリカと比べて100分の1ぐらいの人材しか育成できていないということですが、これは例えば中国でも既に統計の学科が150ぐらい、韓国でも50幾つ既にできていて、この10年ぐらい非常に増えてきているんですが、その部分がやはり日本が追い付いていないという状況はあります。
 そういう意味で、このデータサイエンティストを育成していくという中でも、やはりその一部重要な部分である統計のところが特に遅れているので、何らかの形の国としての育成が必要ではないかなと思っております。
 学術会議でも今ちょうどそのデータサイエンティストというか、ビッグデータ時代の人材育成という問題が提言を考えられているところですけれども、やはり是非そこを考えていただく必要があると思っています。

【若山主査】 
 どうもありがとうございました。安生先生どうですか。

【安生委員】 
 私は産業側から、やはり同じような人材のことがすごく気になります。粟辻さんの資料で言うとちょうど数学と諸科学・産業との協働を担う橋渡し人材ですけれど、きょう、最初の方に伊藤さんからお話があった中でも、そういう仲立ちをする人に関する問題提起といいますか、実際の経験がお話ありましたけど、これはいわゆるアカデミア側の人材としても必要ですし、やはり産業側にもそういった仲立ちをする人材の重要性を共通認識化することが飛鳥だと思います。アカデミアと産業双方にも仲立ちをする人が存在しないと、そういう集いなり機会なり作ろうという機運にならないわけなので、産業側の方もかなりそういうことを真剣に考える必要があります。仲立ちのできる人材というのは産業側にも必要だし、そういう知識能力を持った人材を育てる側にも必要なので、そういう人たちがまたどこかで会っていろいろ議論していくような形にしていくというのがいいのではないかなと思いました。
 その報告書にも伊藤さんの資料にあるよう具体例、どこまで具体的に書いていいのか分からないですが、何かこういうことが現状だという話も入れておくと、ある意味その重要性なり危機感なりをあおって、いいことじゃないかなと思います。

【若山主査】 
 どうもありがとうございました。宮岡先生。

【宮岡委員】 
 最大の問題はやはり純粋数学をやる方の視野が狭くなっていって、応用方面に余り関心を示してくれないと、積極的に自分から打って出ないとということだと思います。そこを何とかする必要がやはりあるわけで、できれば大学に入った1年生の教養の講義からそういう視点を入れた講義を是非進めていただきたいと。
 それから、専門、学部ないし大学院で、東大は少し部分的には会社の人とかそういう人からの講義を社会……何て言うのかちょっと正確に覚えていませんが、やっているわけですけれども、そういうものの出る方もみんなが出るわけじゃないので、まあ、必修はちょっと行き過ぎかもしれませんが、準必修化みたいなことも考えたら、そういうふうな教育体制をいろいろな大学で作るということが重要なんじゃないかと思います。そういうふうなサジェスチョンを報告書に盛り込めたらなと思っています。

【若山主査】 
 ありがとうございます。西浦先生、どうですか。

【西浦委員】 
 青字ということで、ちょっと先ほどのアジア数学連合ともリンクするのですが、10ページ、11ページのあたりに、どの範囲までというときにオーストラリアというのが出ていたのですが、ちょっとスタティスティックスを調べてきていないですが、数学者の数ではオーストラリアは多分日本よりは大分小さいと思います。
 ところが、ちょっときちっとした数字を調べてくればよかったのですが、オーストラリアはかなり東南アジア、中韓含めまして、留学生をかなり受け入れている印象を実感として僕は持っています。それが何によるのか。つまり語学、言語の問題なのか。スカラシップの問題なのか、各大学の取組の問題なのか。あるいはもっと大きく国全体がそのオーストラリアという国、人口が非常に小さいわけですけれども、それをオセアニアといいますか、パシフィックリムというスケールでどういうふうにやっていけばいいのかというのをかなり考えているのか。
 ちょっとその辺を調べた方がいいのではないか。つまり地理的にはオーストラリアが中韓、サウスイーストにおける位置というのは日本と余り変わらないわけですけれども、数学者のコミュニティのサイズと比べて非常にそういう若手の優秀な人の受入れに成功しているとするならば、日本と何が違うのかと。その点はちょっと調べた上でそこの10番、11番の課題ですね。というのもひょっとすると意味があるのかもしれない。これはちょっと僕自身調べてくればよかったのですが、数学や統計のトリックはあるので、気を付けて調べないといけないですけれども、それが1点と。
 それから、ちょっと細かいことですが、13ページの東北大学における訪問滞在型の試行的取組、これは試行ではなくてもう本当に始まっているので、これ、どれだけのデータが必要か分かりませんが、4月から、10月発足で4月から本格発足しております。
 ただし、これは数学だけではなくて、全サイエンスから発しますので、今年、最初ディザスタープリベンション、防災、減災の場合ですし、数学はそのうちしかし、地道ではありますけれども、多分しっかり継続的にできる話題が提供できるというふうに思っております。
 以上です。

【若山主査】 
 どうもありがとうございます。前者についてはちょっとだけいずれ御紹介したいと思いますけれども、私ごとですけれども、九州大学のIMIではオーストラリアに分室を置くことにしております。それは今先生がおっしゃった問題意識も半分ございまして、教員を少なくとも2名、それからポスドクを設置するということ。10月頃に発足する予定です。また、御報告したいと思います。
 さて、時間があと2分ほどしかございませんが、中川さん、先ほどの大問題のみでよろしいですか。

【中川委員】 
 次回、継続して議論させてください。

【若山主査】 
 あと合原先生、どうですか。また、今後の継続のときに御発言いただくということでよろしいですか。

【合原委員】 
 はい。それで結構です。

【若山主査】 
 それでは、特に今、きょう発言しておかないとまずいというふうなことがございましたら。よろしいですか。
 それでは、どうもありがとうございました。本日御議論いただいた内容を更に充実する形で、今後の数学イノベーション委員会の検討につなげていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 最後に事務局より連絡。

【粟辻融合領域研究推進官】 
 次回の日程、また調整させていただきまして御連絡させていただきます。資料は大部でありましたら机の上に置いていただければ郵送させていただきます。

【若山主査】 
 それでは、これにて委員会を閉会したいと思います。
 どうもきょうは先生方、おいでくださいましてありがとうございました。


 

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