数学イノベーション委員会(第14回) 議事録

1.日時

平成25年12月16日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省17階 研究振興局会議室

3.議題

  1. 数学イノベーションに向けた今後の推進方策について
  2. その他

4.出席者

委員

若山主査、合原委員、青木委員、安生委員、伊藤委員、北川委員、小谷委員、杉原委員、中川委員、西浦委員、宮岡委員

文部科学省

吉田研究振興局長、安藤基礎研究振興課長、粟辻融合領域研究推進官、田渕基礎研究振興課課長補佐

5.議事録

【若山主査】  それでは、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまより第14回数学イノベーション委員会を開催したいと思います。本日は御多忙の中、お集まりいただき、誠にありがとうございます。
 本日は森主査代理、大島委員、高橋委員から欠席との連絡を頂いております。
 本日の議事を進めるに当たり、まず、事務局から配付資料の確認をお願いしたいと思います。

○粟辻融合領域研究推進官より配付資料の確認があった。

【若山主査】  ありがとうございます。本日の委員会は、報告に盛り込むべき事項について紹介させていただいた上で、研究の目標と活動について審議したいと考えています。基本的に報告書をまとめるという方向に向かいたいということです。
 それでは、議題に入りたいと思います。
 資料1-1を御覧ください。この資料は報告に盛り込むべき事項について整理したものです。まだ欠けているところがいろいろとあるかもしれませんが、それについては後ほど御議論していただくことにしまして、まず、事務局より説明をお願いいたします。

○粟辻融合領域研究推進官より資料1-1について説明があった。

【若山主査】  どうもありがとうございました。
 将来的なロードマップを作っていきたいというふうに考えているわけですけれども、まず、この今御説明いただいたことに関して、御質問等ございましたらよろしくお願いいたします。

【小谷委員】  数学と他分野の連携の芽は出ているけれども、そういう情報がなかなかビジブルにならないので、目に見える形でのアーカイブやデータの蓄積が必要であるということは、これまで何度も指摘されていると思うのですが、それはこの資料のどこに入るのでしょうか。

【粟辻融合領域研究推進官】  中間報告ではこの一番左側の数学と他分野が連携をして具体的なイノベーションにつなげていくという部分の一環として、こういったワークショップ等の活動で得られたような情報をうまく整理して共有できるようにしましょうということが書かれていますので、内容的には一番左側の部分に入ると書かれています。

【小谷委員】  そのワークショップのリストの公開がとても大切だと思うのですが、もう少し具体的に、うまくいった事例や今後どういうことが考えられるかということ、それから、人材育成や中心的になる拠点等のいろいろな情報を、外からも見やすい形にすることによって、数学者にとって今後の方向性が見えやすいですし、他分野の方に数学に対するニーズがあったとき、そこが見られるようにすることが重要ということが何度も指摘されていると思うんですね。
 ワークショップは今までそういうシーズ探しということでやってきたので、数学者が見れば大体分かりますけれども、それをきちんと整理して外の人に分かりやすくすることが今一番大切だと思いますので、それをどこかに埋め込まずに、きちっと書いていただいた方がいいと思いますし、ある程度整理すべきだと思います。

【合原委員】  それは情報発信というのとは違うんですか。

【小谷委員】  情報発信というのとは違うと思います。

【若山主査】  恐らくこの議論は今日のメインとなるポイントになると思っております。
 最終報告については、皆さん御理解いただいていますように、数学の強みを、数学を専門とする方以外にも具体的に分かりやすく説明し、見えやすくするようにしていきたいと考えている次第です。
 そのような観点から、今の議論を始める前に、報告書で示す具体例として、委員や各大学等の皆様から御提案いただいているものがございますので、それをまず御紹介したいと思います。資料2-1の方を事務局から御説明をお願いいたします。

○粟辻融合領域研究推進官より資料2-1について説明があった。

【若山主査】  どうもありがとうございました。この三つが代表的ということではございませんけれども、時間の関係もございまして急いで資料を作っていただいた次第です。合原先生のところにいらっしゃる佐伯先生は、トポロジーの変化を見てるということで、心は同じようなところがあるんじゃないかというふうに思っております。

【杉原委員】  すみません。

【若山主査】  どうぞ。

【杉原委員】  佐伯先生のは、大分前に慶應の藤代先生が可視化にモース理論を使うというような話をやっておられたように思います。画像処理の分野では情報の方でもいっぱいいろいろやられているので、その辺りをちゃんと調査してやらないと、数学者のひとりよがりだと言われる可能性もあるので注意が必要であると思います。

【若山主査】  これは東大の高橋先生という情報の先生が九州大学に来られて、この話を進めたいということです。

【杉原委員】  分かりました。

【若山主査】  ほかによろしいでしょうか。
 それでは、次に資料2-2をごらんください。五人の委員の方から9件を提案していただきました。どうもありがとうございます。
 御提案いただいた先生から、1課題当たり、3分以内程度で御説明いただければと思います。北川先生、お願いできますか。

【北川委員】  これはあえて非常に漠然と書いております。というのは、一つは、先月懇談会が開催されて、そのときに具体例を5件出させていただいたんで、また同じものを書くのもどうかという気がしました。
 それと、もう一つは、具体例というのは非常に大事だけれども、具体例に突っ込み過ぎているような気がして、それ以前に、全体的に、現状を把握することが大事じゃないかと思いましたので、そういう観点で書かせていただきました。
 それで、1.の課題ですが、一つは、Science for ScienceとScience for Societyの二つというのが学術会議で議論されていて、その後者の部分について、数学も貢献するようにしていく必要があるんではないかというふうに考えました。
 その背景としては、社会も学術もこのところいろんな要素があって、非常に急激に変化しつつあるということです。学術会議の提案や、報告を参考文献として挙げていますが、そのために必要なことと言われているのは認識科学から設計科学への転換です。前者をやめるということじゃなくて、新たに後者を始めるということですね。認識科学はあるものの探求、それに対して、設計科学はあるべきものの探求ということになっています。
 次に、どのような数学を用いるかということですが、上の目的のためには設計科学の確立のために必要なことになります。認識科学との違いは、従来のサイエンスがむしろ目的を排除していたわけですが、むしろ目的や、価値観を定式化して、それを使ったモデリングをし、最適化をするので、そのための方法が重要になってきます。数学的な方法としては、動的なモデリング、あるいは、情報統合の方法、それから、最適化という関連が特に重要になると思います。
 数学的なコンセプトというところですが、従来の認識科学においては第一原理に関連した計算であるとか、解を求めるとか性質を求めるということが大事ですが、設計科学においては、通常それは仮定しないので、目的とか価値、現在の情報を使って、その分野のモデルを構築するんですね。発見するとか検証するというよりは、モデル、モデリングによってモデルを目的のために作るということです。
 同時に、それはトゥルーがあればそれほど回す必要はないこともあるけれども、やはり人間が割と恣意的に作ったモデルですから、検証とか評価のプロセスを経て知識発展させる、その一連のサイクルを作っていくということが大事になると思います。これを一言で第4の科学と言っていますが。
 それから、そのときの一つのキーは、これはかなり古い話、第5世代コンピュータの頃の話ですが、モデルを確率分布で表現すると、情報というのはその分布に関する制約であると捉えられるというふうに考えられています。その辺をやっていくということですね。
 それから、自由なモデリングをしていく場合に、従来の方法では解けないということで数値的方法、特にモンテカルロ法を使って動的・非線形の対象をありのままに分析する、あるいは、取り扱うということですね。余りモデルの段階で近似を行わないということです。
 下の例は時間的な流れを書いていますが、18世紀から20世紀にかけて、最小二乗法、最尤法というものがあります。1960年頃には、状態空間モデル、ここで動的になっています。ただし、線形、正規分布。それに対して、静的であるけれども、非線形、非正規ということでMCMCというのが出て、20世紀の終わりにMCFと、逐次モンテカルロ法というのが出てきて、その辺の方法は非常に発達してきています。
 効果としては、次のページですが、社会における複雑な現象に対する科学的な接近を可能にするということで、そこに適用できそうな領域というのを並べております。
 数学的なフィードバックとしては、歴史的には、何回も申し上げたように、対象とか課題を拡大することによって新しい数学が生まれたということがしばしばありますので、そういう成果のフィードバックが期待されます。つまり、従来の方法で解決できない問題というのが大事で、それが新しい方法の契機になるというふうに考えています。

【若山主査】  ありがとうございます。
 それでは、西浦先生、お願いします。

【西浦委員】  既にこの資料にもたくさん、過去のワークショップのデータが添付されているんですけれども、どういう立場でこの委員会、考えていけばいいのかということで、私としては今の北川先生のとスタンスがちょっと一部重複するんですが、21世紀ではなくて、22世紀に向かってどういうふうに我々、生きていかなくちゃいけないのかという視点を数理、実は数学、数数だけではなくて、統計、情報、計算科学も含めてなんですけども、あらゆる数学を核とする理論科学が結集して、やはり何か大きな枠組みを取り出しつつ、ここの課題にどういうふうに振り分けていくのかという視点を持たないと、やはり個々の出口のみに極小最適化にいつまでやっていても、なかなか、日本社会全体、誰が考えているのということになっちゃうので、もちろんそれはぼう漠とした部分もあり、方法論もまだ開発されていないのもあるんですけれども、やはりそういう視点を忘れてはなかなかネクスト、ネクストセンチュリーにおいて我々は生き延びられないのではないかと思います。
 ここに個別的に、エネルギーと書いていますけれども、ここでは単に妄想的に私が言っているんじゃなくて、個々の分野では相当な情報の蓄積が既にあります。もちろん私は全部把握しているわけじゃないんですが、だから、この委員会が旗振り役となって、そういう知恵の委員会みたいなものを、統計情報、計算科学を含めてですけれども、ただし、数学、数理科学はやはり僕は中心にならないと、いろんな視点、方法論、観点がやはりいろいろ欠如するところが出てくるというふうに考えております。
 そういう意味で、個々の点について詳細はもう申し上げませんが、一言で言うと、数学的コンセプト、ワット・イズ・ソサエティということを考えていただきたい。やっぱり社会って何なのという視点がやはり欠落している。倫理観も含めて、そこのところを見ていかないと、やっぱり大きな見失うものが出てくるんじゃないかということで、数学的コンセプトはワット・イズ・ソサエティです。
 もたらされる効果も個々の点、いろいろこれも話し出すと何時間でもしゃべれますが、やっぱり世の中というのは今、個々の方法論とか見方ではなかなかいろんなフィードバック、ローカルフィードバック、グローバルフィードバック、それから、時間的な特にスケールですね。どうしても人間がパッシブできるところだけに、それは政策的にやむを得ない面はあるんですけれども、やはり数学、数理科学が核となるならば、人間のワン・ジェネレーションでパッシブできない感覚というのをもっとビジブルにする。それは数理モデルなり、統計的手法なり、いろんな手法があるわけですけれども、やっぱりそういうのを一つ持っておかないと、やはり個々の政策に生きないというふうに考えます。
 以上です。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、小谷先生。

【小谷委員】  私が提案していることは、先ほど、北川先生が御説明されたことの一つのエグザンプルにすぎないと思います。材料科学は日本が最も強みを持っている分野です。今までは世界の材料科学、材料の設計やエネルギーの問題等、主導的な立場を取ってきたわけですけれども、最近、情報や統計的な手法を使った新しい材料科学の研究が日本以外の国で始まっています。エネルギーや安全が目前の重大な課題となってきていることとコンピュータ技術が非常に高まっていることがあり、新しい材料科学の研究が世界中で始まっています。
 日本には、先ほど西浦先生、北川先生が言われたように、材料に関する膨大なデータ蓄積があり、さらに、研究者の中に蓄積されている経験とか勘とか言われているようなものがあるわけですけれども、そろそろそういうものをきちっと数理的に理解して、誰でも使えるような技術にしていくことが大切だと思っています。偶然の発見を待つのではなくて、むしろ、データの中から新しい手法で材料を設計していくようなアプローチが必要であるということです。
 この手法は、仮に、特に材料に限定するものではなく、先ほど北川先生や西浦先生が言われた全てのことに通ずる問題だと思っています。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 では、私の方から、それから、安生さんの方からですが、テーマ別に、粟辻さんの方でおまとめくださったものです。
 これは懇談会のときにもちょっとお話ししましたけれども、私から出しておりますが、準備は研究所におります岡田さんという、米国で学部から大学院まで、物理、それから、博士は数学で学位を取って、その後、主としてソニーで研究部長とかされていた方です。
 その方が今、いろいろ企業との窓口となって、非常に多く産業界との意見交換をしている中で、こういうものを、具体的な産業ニーズというのを反映した形で作ってもらいましたので、紹介ということで簡単に御説明させていただきます。
 最初は、有機材料のミクロとマクロをつなげるマルチスケールモデリングということで、これは詳しいことを皆様に御説明する必要はないかと思いますけれども、やはり、コストダウンや製造プロセスの効率化などでの優位な働きをする有機エレクトロニクスにおいて、高機能、高性能化が期待される、いかにも産業界からという感じですけれども、これに向かいたい。
 それから、もう一つ、これはこの方自身が非常に関心を持って、産業界におられたときから関心を持っておられたものです。ソニーの後、シンガポールでA*STARの一つの研究ブランチのディレクターをやっていたんですけれども、ナノ領域における工学/光学、デバイスの設計解析などにおいて、これ、カシミール効果という微小な力ですけれども、これは、普通は引力ですが、ある条件を満たすと斥力として使えるということで、これは固体物理の研究をはじめとして、かなり世界的にも研究が進んでいます。ここに数学をより貢献させたいという、そういうことを述べております。
 途中になりますけれども、安生さんの方から、お願いしたいと思います。

【安生委員】  はい。私の考えたものはメディアのことです。つまり、数学の役割というだけではなく、数学が貢献した、例えばコンピュータができたときのように、大きな意味でどういうことに数学的な発想が役立つかということを考えてみました。私が携わっているCGという観点から、やはりこれからのメディアと、特にデジタル映像に関わるものを提案としました。
 課題としては、いろんな意味でのいろんなジャンル、あるいは、専門家、非専門家、年配者、若い人、いろんな分野、いろんな形でのいろんなコミュニケーションが今あって、たくさんの問題も出ていますが、それを解決する手段としてのメディアとして、デジタル映像を核として、円滑なコミュニケーションツールを作っていく。それは映像的にいうと2次元、3次元とか立体像とかありますが、それだけではなくて、例えば声を失った場合に音声でも復活できるとか、触覚デバイス等を含めた統合的なメディアというものを考えると。
 そのときに重要なポイントの一つは、もちろん物理的な制約を数学的な問題で解決することと、タイトルにあるような、感情とか個性というものを、定量的に完璧にやるという意味ではなくて、近似的な定量表現を作り、そこから実際には必要な情報、例えばお医者さんと患者さんであれば、必要な情報を取り出すという意味の処理と手続があって、それはある意味、インタフェースの問題にもなります。そういう部分の取組というのがなかなか今までのサイエンスでは取り上げにくいところですので、数学の役割が必然的に大きくなるのではないかと思っております。
 手法・理論は、私、及び、私たちで一緒に研究している人たちの経験値を述べただけでありまして、これで全てが解決するわけではなくて、もっといろんなことを知らなければいけないと思いますが、この先にもっと深めるべき数学的な手法も出てくるであろうと。それは今申し上げたような新しいメディアを作るという観点に立つと、見えてくると思っております。
 そのメディアというのは、それ自体が何かを生み出すわけではありません。他者、二者の間でコミュニケーションを作り出すものですから、それ自体でビジネスになるとか、そういうことはないと思います。しかし、例えば携帯がiPhoneに代わり、多様な、いい面も悪い面もありますが、新しいコミュニケーションの仕方が確立されつつあります。iPhoneの例は、新しい産業の要はメディア、媒体にあるという可能性を例示しているのではと考えます。もちろん、新しいメディアの出現に伴ってそれによって新しい数学が必要になると思います。というところです。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 では、あと、二つ、先ほどの続きをさせていただきたいと思います。
 これは、今、安生さんからお話にあったこと、それから、先ほど、北川先生、西浦先生からあったことの一つの例になるものかと思いますが、産業界も基本的にサービス、それから、都市、未来の社会の設計ということに関心を強めているというのは事実であります。その中で、具体的な割には具体的ではない書き方になっておりますけれども、産業界としては何が使えるかなという、そういうことを拾ってきたのがこのようなものです。
 9ページも10ページも、基本的にはリアルで表現力豊かなと書いたり、人の五感の数理的記述とモノづくりやサービスへの展開、これはどちらからものを見ているかということでありまして、ほぼ同じことを目的にしているということです。
 数学的理論、手法・理論としては、そこに書いておりますように、多変量データ解析法等々が書いておりますけれども、これに限らずというふうに思っておりますが、これも一つ、産業界が今どういうふうに思われているかということを表しているというふうに御理解いただければと思っております。
 この中に書いてございますが、いろんな、まだ使われていない数学も寄与していくというふうに考えている次第です。
 短いですけれども、以上、御紹介させていただきました。

【粟辻融合領域研究推進官】  すいません、西浦先生の4ページ目のインフラとかネットワークとかの自己修復ダイナミクスの話があんまり触れられてなかったように思いますので、一言だけ何か今ありましたら。

【西浦委員】 これ、ちょっと個別理論の個別の話なので、いろいろ、今、私の分野に近いところで、離散的なモデルも含めて、セルフヒーリングですね、自発、ほかのエネルギーやらいろいろな代謝を使わずに、自分だけの力で外的な外とインタラクションしながら直していくという、そういうセルフヒーリング、これは、だから、もう先ほど言いました社会におけるインフラストラクチャーから、個々の橋や橋梁やそういう建築物、さらにはその材料、何か非常にマクロなものからミクロなものまでいろいろ知られている事例はあるんですけれども、そこにおけるダイナミクス的な側面がまだよく分からない。
 さらには、最近話題になっていますiPS細胞も、御存じのように、ある種、自己組織的に自分自身がいわゆる幹細胞から出てくるわけで、そこのところもやはり実態的によく分かってない。
 だから、その辺り、単にマクロあるいはミクロの個々の事象、事例に関わらないところのセルフヒーリング、自己修復ダイナミクスというのを、いろんな立場の人たちの知恵をかりて数学的に取り出せないか、そのことの応用範囲というのは結構広いんじゃないかというふうに考えて、上げさせていただきました。
 以上です。

【若山主査】  どうもありがとうございました。
 これから今日の議論を始めたいと思うんですけど、今の委員からの御紹介について、何か特にこの時点で質問等がございましたら、お願いします。よろしいでしょうか。
 それでは、次に参りたいと思います。
 きょう、私が一応試案として、お手元の資料1-2というものを1枚紙で書かせていただきました。1枚に収めるために、背景とかは何も書いておりませんけれども、まず、順に御説明し、このようなことをたたき台として皆さんに御議論していただこうと思った理由も御説明申し上げたいと思います。
 まず、報告書の構成ですが、まだ細かいところまで入っておりませんが、数学と数理科学、諸科学、産業との連携について、これまでの発展や成果、現状を整理すること。これは戦略的創造研究推進事業であるとか、これまでのワークショップ、各大学・研究機関の取組等のことを指しております。これを踏まえ、今後はどのような課題に数学・数理科学が重点的に貢献すべきかを整理します。
 特に以下の点について、数学・数理科学の専門家以外にも分かりやすく伝えるため、具体例を用いることが重要だと思っておりますが、数学・数理科学におけるアプローチや手法の持つ強みはどのようなものかと。今までできなかったことができるようになるとか、見えなかったものが見えるようになる。それから、数学・数理科学が関わることによって、どのようなイノベーションがもたらされるか。社会や生活にどのような革新をもたらすかと、革新という言葉はともかくといたしまして、そういうことが具体的に説明できることが重要であると考えています。
 具体例については、以下のような整理の仕方を考えてみました。
 伝統的な数学応用。伝統的に数学の応用が、例えば産業界であっても科学の中でも、もう既に重要性が理解されているもの、数値解析、それから、統計、最適化、逆問題などということです。これまでの社会から行われてきたというよりは、社会からよく見られている数学の応用は、暗号分野等は少し別ですけれども、欧米でもやはりこの伝統的な数学応用が主流であるとのことです。これらを、現在までに進歩した、この伝統的数学分野を含めた高度な数学的知見や発展中の研究、そして専門家の視点から今後更に強化していくことが重要だと思います。
 それから、新たな数学の応用。これまで余り応用が考えられてこなかった数学分野の応用。実際には考えてきているわけですけれども、なかなかそれが表に出ていないということがございます。きょうのポンチ絵でもございましたし、それから、逆に言いますと、先ほどの私の方から紹介しました産業界から出てくるという話の中には余りこのBの方には触れられておりません。例として、トポロジー、特異点の分類なども、先ほどの佐伯さんのは実際には使います。それから、微分幾何、離散微分幾何等々ですね。そのほか、計算機・情報科学の発展とともに進展してきております現在の実代数幾何、グレブナー基底とかカテゴリーセオリーとかなどの応用展開も必要であろうと考えられます。
 これまでに知られていた、あるいは、期待されていたアプローチとは異なる、まだ隠れているアプローチを提供し、数学をベースに研究パラダイムを革新するものとなればよい。数学が他分野と連携する際のポテンシャル、数学外から見た際の宝がまだ見られていないにしても眠っている現実、それを明らかにしていきたいと思うわけです。
 また、このAやBの応用を進める上で、連携の推進のみを念頭に置いたときでさえ、数学的知見開拓の不断の積み重ねも重要となること、つまり基礎的研究の促進が欠かせないということを強調していきたいと考えております。
 少しだけ、このように考えました理由を申し上げておきます。今年度秋になってからも、私自身が必ずしも説明したわけではないですけれども、ある種の競争的な課題に関してのヒアリングというのを三つ受けてまいりました。三つとも数学者は一人もおられません。最近の数学でいうと、その中での主なる質問のひとつは、情報と数学の違いはどの程度あるのかという質問でした。それは違いがあるということはもちろん、私ではなくてプレゼンターが説明したわけですけれども、その後、では、数値シミュレーションと数学はどれぐらい違うのかということを聞かれたりしました。結果として、その申請はうまくいきませんでした。二つ目でも、三つ目でも同様の質問を受けました。
 そこで、二つ目、三つ目では、このBのようなお話を具体的にしましたところ、そういうことがあるのですかということでうなずかれ、それらは無事うまくいったという、そういうことがございます。
 自分の身の回りの状況を見てみますと、10年前に比べると確かに学内や産業界からの数学への関心が高まっているということは分かります。しかしながら、やはり限定的であるということをすごく感じた次第です。
 実は先々週、機会がありまして、ヨーロッパでこのMathematics in Industryみたいなところで講演をする機会があったんですが、その講演の後も、やはりこのBのところがヨーロッパでもなかなか分かってもらっていないというふうなことを言っておりましたので、その辺りは似てるのかなというふうに思いました。
 大事なのは、AにしてもBにしても、先ほど申し上げたような基礎研究の推進もやはり欠かせないものであるということです。当然、学問として大事なんですけど、それを、そこを連携の推進に着目しても大事だということも、盛り込めばいいというそんなことがございます。
 今ある、中間報告のときもそうだったですけれども、具体例といっても、なかなか他分野に比べて、これこれこうやったらこうできるということは言い難い。そこで数学の普遍性であるとか、それを重点に置いていろいろと主張できればよいのですが、なかなか理解されにくいということがございます。
 そういう意味で、例えばこういうAとかB、これはもうほんとに試論ですけれども、こういうものである程度、課題解決型のもので、先ほど冒頭にございますような戦略創造事業の方でその数学の方を総括に迎えるようなプランができればよいと思うわけです。その上で、実績を重ねることによって、より数学らしい、プロジェクトができるとなれば、そして、数学者の研究環境整備に生かせます。
 ずっと以前に御指摘がありましたけれども、やはり数学・数理科学の教員というのは比較的教育、講義負担というのが多くございまして、そういう意味で研究時間も少なくなっているということもあります。そういう意味でも、環境の整備を超え、そして、例えば全国にサービスできる、しかも、国際的にも利用していただけるような訪問滞在型、例えばですね、そういうものの設置に向けてロードマップを作っていけばいいのではないかと、そんなことを考えてまとめた試案ですので、どうぞこれからたたいていただければと思います。
 基本的には、報告書をまとめる方針ということをこれから御議論いただきたいというふうに考えております。今回だけでは済みませんけれども、よろしくお願いいたします。皆様のいろいろ御意見あると思いますので、順番にというほどではないですけれども、できましたら、皆様から御発言いただきたいなと思っております。それでは、合原先生の方から、お願いできますでしょうか。

【合原委員】  では、まず、先ほど紹介していただいた提案で、最初の2件は非常に大きな話ですよね。残りが各論みたいなもので、だから、そこをどういうふうに整理するかというのが多分一つ。
 それから、今の若山さんのお話で、AとBとあるんですけど、我々みたいに応用サイドの研究をしている人間にとっては、AでもBでもいいんですよ、役に立てば。だから、解きたい問題があって、それを解くために数学を使うときにAとBとあって、そこがより豊富になれば我々にとっては非常に有り難いので、そういう意味ではAとB、両方とも欲しい。それで、A自体もやっぱり進歩はしていくわけですよね。そういう分け方自体は我々にとっても分かりやすいとは思いますが。

【若山主査】  先ほど、繰り返しになりましたが、Bの方がちょっと見えてないので、見せないといけないという意味で、あえてちょっと分けているだけです。数学を分けるつもりは全くございません。

【合原委員】  なるほど。

【若山主査】  青木先生、お願いします。

【青木委員】  ありがとうございます。まず、非常に野心的なテーマがたくさん出てきて、ここにいらっしゃる先生方のような人がもっと増えればいいのだなと内心思ってました。それに関連して、この基礎研究が重要だというお話で、そこで、もう一つ大事なのは、よい基礎研究をやるためには優秀な人を育てることが必要で、そのためにはやはり数学の底辺を広める必要があって、それもあわせて、是非触れていただきたいと思います。
 というのは、数学、この特に新しい数学は、私みたいな教育を受けた人は分からないわけですよね。全くどんなものかというのが分からないので、せめて大学まで行ったら、もう少し先端の数学をみんな触れることができるようにしてほしい。そのためには高校でやる数学もちょっとレベルアップしなきゃいけないのと、それを教える人も必要なわけですね。それも含めて、報告書に入れていただけたらと思います。
 あと、この最初の北川先生のとか、最初の、ソーシャル・オーガナイゼーションなどは社会科学でも非常に今問題になっていることなので、期待が大きいと思います。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 ちょっと振れてしまいますけれども、宮岡先生の方から、少しお考えとか。

【宮岡委員】  大学に入って、確かに今の教育というのは1年生段階ではほとんどいわゆる古典的な数学しか教えてないわけですよね。それで、東大なんかの方でもアーリー・エクスポージャーとか最近盛んに言っているわけで、最先端の紹介をしなきゃいけないというんですけれども、ただ、その場合、ある程度の知識がなくて先端のものを紹介しても、結局何をやっているか分かんないわけですよね。
 だから、ある程度は教育を進めてから、具体的には2年生とか3年生ぐらいでないと分からないと。そのためには、もう少し広い範囲に、特に生物関係の方ですね、に対する数学教育をかなり上げないといかんと感じております。
 そのために、ちょっと今、我々の大学ではむしろ授業時間を減らすという動きになっているのですが、これはちょっとほんとは逆行しているので、私としては非常に困っているわけなのですが、でも、教養課程の必修も含めて、学生に取らせる単位をかなり減らそうと、3分の2ぐらいにするとかということで、数学も今まで理科系はみんな週3コマ、1年あったのですが、2コマになる雰囲気なんですね。
 だから、ちょっと逆行しているので、こういうのも含めて、報告書に、もう少し数学教育を、文系まで含めて、充実しなきゃいかんという方向も含めていただければ、少しは歯止めになるかなと。ちょっと遅過ぎるのかもしれませんが、ということをちょっと今考えました。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 ちょっと一つ、それ、やはり単位数を減らすというのは、やはり自学自習時間を増やそうという、そういうことが狙いなんですか。

【宮岡委員】  はい、そういうことです。もちろん、実際やってくれれば、それは効果あると思いますが、絶対机上の空論に決まっているわけで。

【若山主査】  分かりました。どうも、参考までに伺わせていただきました。
 伊藤委員から、少しお話しいただけますか。

【伊藤委員】  今、若山先生にまとめていただいたこの形、非常に最もだと思ったんですが、一方で、特に産業界の観点から、先ほど先生もおっしゃったように、先に課題が必ずあります。その課題に関して、どう取り組むかという章があってもいいのではないか。その課題に関しては数学がすぐに適用できるわけではなくて、その課題がまずどうモデル化できるかも分からないので、先ほどモデリングの話がありましたし、モンテカルロをうまく使ったらどうかという御指摘、私もそう思いますし、あるいは、ネットワーク理論をもっと使う。
 そういういろんなものを使って、一旦数理モデル化し、その数理モデルができれば、それを解析し、それが本当に妥当かという、モデルの妥当性かというところをちゃんと検証しなきゃいけないわけですが、それができると、更にそれを解析することによって、あるいは、コンピュータシミュレーションによって、もとの課題に関して定量的な扱いができると。そういうアプローチというような切り口の節が一つあってもいいのではないかというふうに思いました。
 それから、もう一点は、これは多分、北川先生や西浦先生の御提案の中に入っているんだと思うんですが、いろんなコンテンツというか、意味論ですね、文章に書かれているものの意味の数理化というのは、多分、社会シミュレーションをやろうとすると必ず必要になると思うんです。産業界的にもかなり大きな問題がそこにあって、いろいろな知見が既にあるんだけど、最初からデータベースに載っている知見は全然問題ないんですが、実はテキストになってしまったもの、あるいは、図になってしまったものを何とかしたい。
 産業界には自動翻訳をはじめとしたいろいろな技術があって、非常に大きいコーパスも持っているんですね。ところが、そのコーパスを、じゃあ、きちっと自動翻訳以外のところに適用する、そうして例えば材料に関するたくさんの知見をうまく持ってくると、データマイニングなり何なりをうまく使うことによって、先ほど小谷先生が言われたようなスマートマテリアルの開発に使えるかもしれないんですが、まだそうはなっていない。そういう、意味論に言及した章というものも一つ入ってもいいのではないかというふうに思いました。
 以上です。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 それでは、杉原先生。

【杉原委員】  若山先生に抽出していただいた整理の仕方A、Bどちらかというと手法オリエンテッドな分類であって、やはりモデリングという観点も重要と思います。そのとき、第1原理的なモデリングの方と、今伊藤先生がおっしゃったデータ駆動型モデリングという両方の記述がある方がいいと思います。
 ただ、そのときに往々にして抽象論だけになってしまうので、どういうふうにして構成していいかがちょっといまいちイメージが湧きにくいところもあるので難しいなとは思うんですけれども、何か具体的な問題を一つ取り上げて、例えばそれに対してこんなようなとか、そういうような形で記述すれば、ある程度書けるかなという気もしています。その中に上のA、Bの方法もうまいぐあいに埋め込めれば、よりアピールするような文章ができて、うまくできるかなというふうな気もしています。それが一番先生の作っていただいた中では気になったところです。

【若山主査】  ありがとうございます。御指摘のとおり、そんなこともあるというふうに思っておりまして、そういう意味で、ちょっと出過ぎた試案であったかもしれませんけれども、例えば、その戦略創造などで課題解決型での課題を設定して、そして、そのAなりBなりの少し、A、Bで分けるのがいいかどうかは別としても、色を濃く出せるようなものを二つぐらい、簡単に言うと、取りに行くと、そういう報告書にできればというふうに今考えているところです。
 中川委員の方から、御意見。

【中川委員】  私は、数学の有用性というか、数学だからできることをどういうふうに示すかというのが一番大事かなと思います。先ほどのAとBとありましたけど、多分、若山先生が先ほどおっしゃいましたように、情報や数値シミュレーションと数学が何が違うかということを明快に回答できるようになることが必要かなと思います。
 多分、Bの方は新規性がありで、ある程度インパクトあると思うのですけど、Aは数学以外の分野で今までやってきたことと何が違うのかと絶対言われると思います。数学ゆえにできることを認識いただくような差別化戦略が要るかなと思います。

【若山主査】  そうですね。どうもありがとうございました。先ほど、三つのインタビューとヒアリングの機会があって、今、中川委員が言われたようなとおりのことを言われました。そんなこともありまして、こういうお話を持ち込んだという次第です。
 それでは、北川先生。

【北川委員】  率直な印象は、これは、ちょっとシーズ志向で、やはりこの委員会はニーズをちゃんと把握してからやるべきだということで、この2年間ぐらいやってきたんじゃないかと思うんですね。特に半年ほど前ですか、かなり時間を掛けて、何回もいろんな分野の聞き取りをやって、いろんな貴重な意見が出てきたと思いますので、それをうまく取り入れる方向でやったら、よろしいんじゃないかと思います。
 それから、このA、Bの話がさっきから出ていますが、個人的に見ると、やはり合原先生が言われたように、使う方から言うとどうでもいい話であって、特にこの応用という書き方は全く数学の立場なんですね、数学者の。これはちょっと、言葉尻ですけど。
 それと、私はやっぱりA、B、CのCが大事で、既に使われているものがあるけれど、使われてないんじゃなくて、課題解決のためにこれから作っていくべき数学というのができたら、それが数学にとって非常に大きいし、貢献も大きいんではないかと思います。そういう意味で、ちょっとA、Bの分け方も問題だけど、書くんならCが要るんじゃないかなというふうに思います。
 それで、やはり余り短期的な出口のところだけ考えるのは問題で、西浦先生は22世紀と言われましたけど、まあ、それもそうですが、そこまで言わなくても、学術会議なんかもやっぱりロードマップでは、各研究分野の30年先まで大体考えているんで、そのぐらいのイメージで今後数学が何をやっていくかというのをまず考えて、そこから押さえていく必要があるんではないかというふうに感じました。
 以上です。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 では、安生さん。

【安生委員】  私も産業側の立場ですから、やはりAとB、どちらでも有り難い話なのですけど、もし発展していただければ。
 それで、あと、報告書の読者の想定というものがあったとして、それに対してどれぐらい分かりやすく、今、いろんなお話が出たものを書き下せるかというところが肝要だと思います。最初の小谷先生の質問のように、どういうふうにアピールできるのか、非常に、まずこの報告書自体も非常に大きな意味があると思うので。それはここに書く内容ではないと思うのですけど、何かうまい記述の仕方を考えなきゃいけないなということを感じました。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 どうぞ。

【小谷委員】  皆さんが言われたことと同じですけれど、まず、数学・数理科学でなくてはできない大きな枠組みが最初に書かれるべきで、それは今回、北川先生や西浦先生が提案されたような割と俯瞰的な数学の特色を生かしたことだと思います。
 その後で、その具体例も必要かと思いますけれども、それは今までやってきたワークショップやこの委員会でやってきた活動を書くべきです。
 それと、AとBの分け方は私もやはりちょっと違和感があります。数値解析、統計最適化等に関しても、恐らく数学・数理科学の人でなければ知らないような、非常に新しい研究が進展しているわけですね。
 そういうことを知っていただくことも必要で、ここは伝統的な応用分野(A)とか、新しい数学の応用(B)とかいう分け方ではなくて、応用の仕方が伝統的に他分野で確立しているものと違う宝が数字にはたくさんある、この50年ぐらいに数学で進展している宝がほとんど使われていないので、それを主張することは大切ですが、何かこうA、Bとこういうふうに書かれるとちょっと私は違和感があります。
 皆さんがおっしゃったように、やっぱりニーズ志向で考えたら、恐らく数学のどれか一つの手段だけ、例えばトポロジーを使ったら解決するとかいうものではないので、今までも議論してきたわけですし、そういうふうに課題側からまとめていただくのがいいと思います。
 それから、ここではその数学がどんなふうに役に立つかというところまでしか書かれていないんですが、むしろ、報告書として大切なのは、それをどうすれば実際に使えるようにするかという具体的な提案です。これはそこまでの、なぜそれをやる必要があるかということしか書かれていなくて、その一番大切な、どうすれば数学が世の中で使える形にできるかという部分が全く書かれていないのは非常に残念です。

【若山主査】  そこはここには書いておりません、すいません。
 それから、今、小谷委員からおっしゃいました、この50年間使われ、50年、最近50年のこともほとんど使われてないということですけど、そういうつもりでAの方の下の矢印のところを書いたつもりでおりました。
 ただ、AとBを、これは飽くまで御議論していただきたいために少し分かりやすく表示しておりますので、いろいろと御意見いただければと思っております。

【小谷委員】  先ほど言及された学術会議の下で今、夢ロードマップというのを作っています。これまでと画期的に違うことは、数学会、応用数理学会と統計関連学会連合が一つに集まって数理科学のロードマップをまとめているところです。これも報告書に反映していただければというふうに思います。

【若山主査】  分かりました。
 では、西浦先生。

【西浦委員】  一つは大枠的な観点を入れていただきたいということと、もう一つ、全くその逆の点をどうするか。すなわち、諸分野、諸科学の連携というときに、ほとんどの数学の方はやはり現場、つまり数学として見れば、顧客の人たちが何を欲しているかと、どうして欲しいのかというその現場感覚がやはり普通は欠如していると。
 私は幸い、実験系の研究所、現在も今、材料科学のところですけども、まず、その問題、現場で出てくる問題というのはどういう問題であれ、数学的に決して定式化された形は出ることはないわけです。普通は余りにも汚いデータ、ぐちゃぐちゃという感じで、モデル化以前です。ですから、やはり、まずそういう現場科学をどういうふうにしていくのかと。
 私の、幾つかあるんですけども、一つだけ申し上げますと、何か非常に使いやすい、インタフェースがきちっとしたソフトウエアですね。先ほど来、例えば計算、トポロジーとか、それから、グレブナー基底も出てましたけれども、そういうものが今使いやすい形で、使いやすいという意味はトポロジーのディテール、グレブナー基底のディテールを知らない現場の人も、こういうことをインプットすればこういうものが出ますよということを言えば、いつも僕、言うんですけど、自動車のディテールを知らなくても、ドライブは楽しめるわけです。
 ですから、いい車、例えばエコなソフトウエアというのを現場に持ち込むと、その現場の人が、あ、そうなんですか、私のデータはそういうところに入れれば、こういうものを返してくれるんですかと、そういうものを一度経験していただいて、そこからコミュニケーションを始めると、かなり連携というのは加速します。それをプロセス、内処理のプロセスがないと、諸分野、諸科学の連携というのはなかなか進まない。行き違え、僕の経験でもそうですし、現在も凍っていると。
 だから、ソフトウエアというのは飽くまでも一例であって、誤解しないでいただきたいのは、それ以外のあらゆるコミュニケーションを努力しているんですけど、何かそういう1枚かませてインタフェースを作っていかないと、なかなか現場のデータというのは数学的に決して定式化されては出てこない。それは生命科学、材料科学の分野を問わず、社会科学、問わずです。
 だから、それがどういうインタフェースでどういうソフトウエアか、乗りたいなと思わせる車を作るという努力もちょっとしていかないと、数学の理論だけいろいろありますよという、これはなかなか説得力を持たないので、みんなからああだ、こうだ言われて、若山先生も大変苦労されていると思うんですけど、そういうちょっと現場の苦労ですね。私のやらせていただいているJSTでもやっぱりそういう苦労がいろいろ出ているので、次の領域ではそこら辺をうまく実にもっと効率的にやっていただければうれしいんですけども。
 ちょっとそういう現場感覚的なところですね。顧客の立場に立つようなのも考えてますよと、そういう努力もやりますよという、そういうのもちょっと何か盛り込められるといいかなという印象を持っています。
 以上です。

【若山主査】  どうもありがとうございます。おっしゃるとおりだと思っております。また、全て先生方のおっしゃっていることのどれかが対立するようなことではないというふうに思っております。
 一つポイントとなるのは、これはまた数学サイドという御批判を受けるかもしれませんけれども、先ほども冒頭にも申し上げて、御意見もありましたように、数学だからできるというところは見せていかないと、やはり説得力が全然ないというのはもう事実です。
 ただ、現状把握をきちっとしておかなければいけないし、この間のコミュニティの努力とか成果というものをきちっと書いていく必要がある、それは非常に重いことだというふうに思っています。その意味で、今までこちらにおいでいただいてお話を聞いた先生方のお話とかも盛り込んでいきたいと。
 報告書としましては、まだ、これ、非常にはっきりとはしておりませんけれども、うまく、資料集という名前を付けるのがいいのかどうか分かりませんけれども、最初から1冊のものを大部にしてしまうと、なかなか読んでいただけないというふうなことがございますので、概要として本体にするのか、やや抽象的になりつつも、参考資料を引用しながら比較的薄いものを作って、別にきちっとしたその資料を見ればそうかということが分かるような資料を作るのかなと。そんなふうなことを個人的には想定しているわけです。
 きょうのお話しいただいたところでこれから何をやっていきたいかといいますと、章立てを具体的に進めていくというのが大事なのかなというふうに思っています。章立てをして、実際にそこに何を書き込めるのかどうかというのは勝負かもしれません。ただ、先ほど、安生委員からも御指摘がありましたように、どなたが読むのかと。もちろん、コミュニティのメンバーにとっても有用なということは当然ですけれども、むしろ、社会に対して、きょうの御提案にもあった、西浦先生とか北川先生のお話にも端的にありましたけれども、そういうScience for Societyということを考えれば、当然、その方たちに読んでいただくということが大前提となると思っているわけです。
 まだ時間が、たっぷりと思うとすぐになくなってしまいますけれども、章立て、それから、これ、議事録に残りますので、これをまた起こすことができます。そういう意味で、報告書をどのように作っていくか。これまでも御提案、幾つかございましたけれども、御意見を頂戴したいと思いますが、どなたからでも。

【北川委員】  質問、よろしいですか。中間報告というのが昨年出ているんですが、これを全く忘れて、白紙から書き直すということですか。

【若山主査】  いや、それはそうではありません。中間報告をやはり発展させるという形で作っていきたいというふうに考えております。

【青木委員】  すみません、一つ確認ですけど、報告書の構成で、ここ、二つ丸があるところで西浦先生のコメントとも関係ありますが、連携とかをやっていくシステムの話も書かれるわけですよね。それの評価みたいなものも入れる予定なんですか。こういうのはうまくいったとか、こういうのがうまくいかなかったとか。

【若山主査】  そうですね。それは必要だというふうに、もちろんうまくいったところは当然書くわけですけど、ここはより充実、今すぐにはできなかった、この期間ではできなかったけれども、次があるときちっとできていくんだ、というふうな意味での評価というのは必要なんじゃないかと思います。

【青木委員】  そのトピックを紹介するときにも、こういうシステムでやりましたというのに触れられるのもいいのかもしれません。多分、内容によって体制が違うのだと思うので。コメントと質問です。どうもありがとうございます。

【若山主査】  どうもありがとうございます。

【伊藤委員】  ちょっと今の点に関係して、発言していいですか。先ほど小谷先生が御指摘になったことに近いんですけれども、ワークショップをいろいろやられていて、それのアーカイブをどこかにおく。今回の報告書にも多分付録みたいな形でいろいろなものが付くのかと思うんですけれども、今の青木先生のお話にも関係するんですが、それをいろいろな形でユーザーは見たいと思うんです。それもこの報告書に関してだけで終わってしまうとそれはもったいなくて、多分今いろんな事業がJSTでも動いているわけで、そういうものをうまく集めて発展できるような、まさにデータベースみたいなものですね。
 それぞれの事業の、データベースはあるにはあるのですが、数理科学に関しては、この切り口だったらこう見える、そういう検索ができるような仕組みまでを、報告書とは違うんですけども、せっかくここまでやったので、作っていただくようなことをしてはどうかなと思うんですけど。

【若山主査】  どうも貴重なアイデア、ありがとうございます。

【合原委員】  ちょっと関連していいですか。今、伊藤先生がおっしゃったみたいにやらないと、多分読んでもらえないんですよ。

【伊藤委員】  そうなんです。

【合原委員】  単にホームページに載っていますというんじゃ、多分誰も、委員すら読まないかもしれないぐらいです。我々はFIRSTで今取りまとめの時期なのですが、今何をやっているかというと、ウィキペディアみたいな、ああいう感じだと使いやすいので、ノンリニアというのを作っています。それで、研究者がやってきた成果をデータベース化して、キーワードで引くと最終的にその人のやったところまでたどり着けるような、そういうデータベースを作っていて、そういうのだと結構使いやすいですよね。
 だから、何かやっぱりそういうネットで検索ができるような、今回は無理かもしれませんけど、そういうのを作っていかないと、こういうのが蓄積していかないし、毎回報告書を作ってそれで終わりで誰も読まないというのを繰り返すことになると思うので、ちょっと何かロングタームのその辺の設計は要るかなという気はします。

【若山主査】  ありがとうございます。
 是非御意見、きょう、幾つもの御提案がありましたので、幾つかそこから御提案等を引き出して、それをうまく整理して報告書を作っていきたいというふうに思っておりますので、今の合原先生、伊藤先生の御提案も含めて、御発言いただければ。

【西浦委員】  データベースはもう前から私も何度も言っていることなんですが、もし具体的に動くとすれば、どうしますか? どういうふうにやりますか。例えば、今、統数研で一つのプログラムが走っているわけで、我々に投げてもまたよく訳が分からなくなってくるし、大体時間がないでしょうから、ちょっと具体的にやるのであれば、どういう日程で誰にどういう分野でという、先ほどの合原さんのノンリニアのように、何かちょっと具体性を持って、全体のデザインをどうするかというのを何か決めていかないと、多分、今ここでやりましょうという掛け声だけではなかなか進まないので、何か具体的な、人も含めて時間のデッドラインを決めて、何かちょっと考えた方がいいように私は思いますが。

【若山主査】  どうもありがとうございます。

【西浦委員】  作業としては結構大変だと思うんで。

【合原委員】  ええ、そうですね。結構予算も掛かるんですよ、データベースって。

【伊藤委員】  あともう一つ大事なのは、一旦始めちゃうと、少なくとも10年ぐらいもってくれないと、3年間でプロジェクトが終わったから、そこでぷつんとデータが切れると、全く意味がなくなるんですね。

【西浦委員】  そうなんですよね。

【合原委員】  そのメンテナンスをどうやるかというのが一番問題で、人もお金も継続的に要るので、そこなんですよね。

【宮岡委員】  そういう意味では、リソースが考えられるところって統数研しか考えられないような気がするけど、どうなんでしょうね。

【西浦委員】  そうですね。統数研の今全体の、僕、ちょっと統数研の運営委員じゃないんで、どういうプログラムがどういうふうに今走っているのか、詳細把握をしてないんですけれども、ちょっとどなたか御存じの方はいるかもしれませんけど。

【宮岡委員】  でも、予算がそれぐらい掛かるとちょっと苦しいですよね。

【若山主査】  ほかにございませんでしょうか。

【合原委員】  あと、報告書という意味では、前回の議論でアプローチ1と2というのがありましたよね。そこはきょう入ってないので、そことどうマッチングするかという。

【若山主査】  その下にある下部のところで、きょう、この報告書に出た議論をしたいので、そのためにあえてちょっと作ったものです。

【合原委員】  じゃあ、アプローチ1の方も2の方も、その数学の部分は要するにこういうことだということですかね。

【若山主査】  そうですね。こういうことというか、ここから構築していくということで、あれは既に皆様で御議論いただいて、その方向は変わっておりません。

【合原委員】  なるほど。

【若山主査】  はい。全く変わっておりません。そういう意味で、ニーズ、シーズのところがきょうはちょっと偏っているという、そこであえて出しているというところです。
 きょうの冒頭、粟辻さんの方から御紹介いただきました数学イノベーション委員会報告書に盛り込む事項についてという1枚目の紙ですけれども、今後の取組とかということも書いてございますが、それももう一度ごらんになって、御意見頂戴できればと思います。

【伊藤委員】  いいですか。

【若山主査】  はい、どうぞ。

【伊藤委員】  ちょっと話がずれるんですけれども、今後の取組で人材育成のところにキャリアパスの構築と書いてあるんですけども、産業界でも人材育成というのはいつも議論になる。特にこういう新しい分野にはまず人がいないのでどうするかというのはいつも問題になります。最近では、元気な企業は割と簡単に中途採用で採っているわけですけれども、そうすると、その後のキャリアパスがものすごく難しくなります。
 この分野のキャリアパス、実は前の中間報告書にも新しいキャリアパスを構築しなければいけないというそういう方向性は書いてあるのですが、今回そこに何か言うのであれば、もう一歩踏み込まないと。新たなキャリアパスを作る、そのためには例えばインターンシップをうまく使ってというのは、それはもう随分言われてきたので、特に数理科学なら数理科学ならではの何かを言わないといけないのではないかと思います。
 ちょっと私自身は今余りアイデアがないのですけども、例えば、先ほど申しましたように、企業の場合、課題の数理モデル化のところがものすごく難しくて、こういう問題は実はシニアでないと解決できないんですよね。若い人は余りいろいろな現象を知ないので、きちんとしたモデル化というのはシニアでないとできないと。一方で、シニアは新しい数学を知らないので、数学的にうまく取り扱うことができないと。
 何かそういう役割分担するような形のキャリアパスみたいなことが少し考えられるといいのかなという気は、個人的にはしております。

【若山主査】  ありがとうございます。キャリアパスで少し関係することでは、以前にも発言させていただいたかもしれませんけれども、数学の方がそれでも少数、少数とは言わず、産業界に研究者として出ておられますが、大学に戻ってこられるとき、一番多いのはやはり情報系に戻ってこられるということが今までの実情です。
 そうではなくて、情報系以外でももう少し大学のいろんなところに戻って、そういう人材の還流というのができていくということが、社会の中に根ざしていって、しかも、学生たちにそれを伝えていくことができるんじゃないかというふうに思っているところです。

【合原委員】  人材の問題でいいですかね。前も発言したんですけど、やっぱり今一番僕、気になっているのはポスドク問題なんですよ。安西先生に聞いたら、現在1万7,000人ぐらいいるんですね、非正規雇用でポスドクの方って。それ以外に、ポスドクになれない、要するに40才ぐらいになるとポスドクにもなかなかなれないので、多分対象者が2万人ぐらいいると思うんですよ。
 その人たちを何とかしようと思って、今いろんな産業界の人たちとも議論をしているんですけども、多分この分野だと割と潰しが利くかなと思うんですね、数理的な方だと。どれぐらいいるんですかね、この分野のポスドクって。というか、かなりの数いるのであれば、結構それを核にして、産業界の人たちは多分興味を持ってくれるという感触は今持っているんですよ。その辺のデータがあるんですかね。

【安藤基礎研究振興課長】  ちょっと調べてみます。

【合原委員】  もしそれが数百人とか1,000人とかいるんだったら、かなりのことができるんじゃないかと思っていてですね。

【若山主査】  今、数学系、広い意味での数学系で学位を取られる方が……。

【合原委員】  理論物理とかでもいいんですよ。

【若山主査】  200人ぐらいですかね、年間。

【合原委員】  数学科だけではなくて、理論系ですね、いわゆる理系で、かつ、理論をやっている、実験ではなくて。その人たちがどれぐらいいるかなというのは非常に興味深いですけど。

【宮岡委員】  物理はその数倍いるかもしれませんね。

【合原委員】  そうすると、1,000人近くいるかもしれないですね。

【若山主査】  そうですね。
 実は、ある物理の助教授人事に関与したときのことです。多くの応募がありましたけれども、40代以上の方が1/3強おられました。ほとんど全てが理論系でした。基本的に欧米でのポスドクなどをされた優秀な方ですが、現在は無給の研究員などをされていて、非常勤講師をされているという方が多くおられたように思います。もったいないことです。

【合原委員】  だから、そういう人たちをやっぱり何とかしてあげなきゃいけなくて、他方で、企業で、以前杉原先生もおっしゃいましたけど、最適化とか使えば、すごく効率が上がることって、山ほどあるんですけど、それをやるような人材がいなくて。工場とかは、外に出ていっているんですけど、知的な部分というのは割と日本に残っているわけで、そこを支える人材はむしろ不足しているんですよ。だから、そこはニーズがあるので、何とかできると思っているんです。

【若山主査】  ほかに御意見あると思いますが。

【北川委員】  人材育成のところで、キャリアパスの問題というのは非常に重要で、昔から言われていることですが。もう一方で、どういう人材を育成するかですね。従来の数学の教育が弱かったのか、あるいは、それはそのままでいいけれども、その先に産業界とか諸科学の分野との連携を考えたとき、もう少しプラスアルファの教育が必要じゃないかと。その辺もやっぱり考える必要があると思うんです。
 これに関連して、学術会議がちょうど数理科学の参照基準を出したばっかりのところで、ある程度議論ができていて、先ほど小谷先生の話もあったように、割と画期的なのは、純粋数学と数理科学と、応用数理でしたっけ?

【小谷委員】  数学会と応用数理学会と統計関連学会連合。

【北川委員】  その三つの集合的なところで考えてその参照基準というものを出していますので、その辺が参考になるんでは。

【小谷委員】  その3学会が集まって、キャリアパスセミナーのようなこともこれから一緒にやっていこうという話も出ています。今、数学会では、学会時に、企業の方を呼んで、キャリアパスセミナーというのをやっています。数学の大学院生に、企業でどういう研究が行われているかということを知らせるとともに、企業の方に数学の大学院生がどういう人材かを見ていただくためにやっています。社会連携推進委員会というのを作りまして、数学と外の世界をつなぐ取組を始めています。そういう情報がみんなに伝わるようになるといいなというふうに思っています。

【安藤基礎研究振興課長】  先生。ありがとうございます。まさにそういう具体策をどう進めるかという議論がこの場で進めていただくというのは非常に重要だと思っていまして、きょう、合原先生が言われた企業との連携の中でどんな人材を育成してくのかというのも、合原先生の方でいろいろ御検討されているという話は伺っていましたし、小谷先生が言われた学会で連合していろいろ連携をしながら取組をされているということもありましたので、この今後の取組の中で、学会との連携、産業界との連携で具体的にって記述とちょっと書かせていただいたのは、そういうのが頭にあったんですけども。
 そういう事実は事実としてきちっと把握をした上で、どういった形でこれからそこを強化あるいは支援していくようなことが必要なのかというのは考える必要いい材料だと思いますので、少しこの場でも議論いただく、あるいは、もう報告書の中にもしっかりと状況を書かせていただくというようなことは検討していきたいというふうに思っています。

【若山主査】  どうもありがとうございます。今、せっかく安藤課長の方からもお話しいただいたわけですけれども、それを受けて、少し何か御意見ございますか。

【西浦委員】  少し補足、よろしいですか。キャリアパス、あるいは、今、幾つかの学会があって非常に重要で、大きな一歩だと思います。ただし、キャリアパスをどうつないでいくかというときに、そういう場に学生をさらす、経験させるというふうに、誰がちゃんとそれを教え、オーガナイズしていくのかという、その何を教えるかということがまず重要なんだけども、それを誰がやるのというこの誰が、も欠けていて、結構足りないんですよね。
 ですから、やはり、そこも実際に本当にそこを執行できる人も育てていくと同時に、どこにいるのかというのを見つけて、三つの学会が連合するけど、僕は非常に幅が恐らく広がるし、結局非常に例えば統計的な具体的な手法をピュアマス、ピュアな人にも体験してもらう。だから、非常に僣越な言い方になりますけども、数学者側の再教育と言うと怒られると思うんですけど、そういうことにおける再教育、先生方がやられている研究そのものということでは当然ないわけですけれども、学生やポスドクの方に。だから、非常に一見無関係に思われているピュアなことでも、あ、この先生はこんなところで使っているよというのがそういう大きな学会で広がりを持った中に必ず出てくると思うんですよね。
 だから、そういう形で、先生の再教育って怒られますけども、ある種の観点を変えていただいて、幅を持った先生方が増えてくると、何を教えるかというテーマとともに、それを教えられる人が実体として増えてくると、教育の末端のところで非常に学生の意識が変わってくる、幅が広がってくる、それによってジョブマーケットも広がってくるというふうに、いいポジティブなフィードバックが出てくると思うんです。
 だから、教える側の我々も、私自身も含めてですけども、そういう意識を広く持っていきたいなというのを感じました。
 以上です。

【若山主査】  ありがとうございます。
 はい、どうぞ。

【小谷委員】  そのことと関連して、また先ほどのアーリー・エクスポージャーに関してなんですが、実はこの土曜日にアウトリーチ活動の一環でアメリカの高校生が来て、研究発表をしました。 3人来て、3人とも数学の話をしていったので、後でいろいろ聞くと、大学が提案したいろんなプログラムに参加している、それから、NIHとか国の機関が提供したプログラムにも参加しているそうです。プログラムの内容を聞いても非常に魅力的なんですね。一方、日本のSSHの先生がよく言われるのは、理科の実験を学生にやらせるのは簡単なんだが、数学の実験や研究題材を見つけるのが非常に難しいと。
 アメリカのプログラムの話を聞いて、ここまで積極的に工夫を凝らした試みがあったら絶対良いけれど、大学の先生が片手間でそこまでできるとも思えないし、また高校の先生だけでできるとも思えないので、どういう人がそれをオーガナイズしているのか聞いたところ、やはりそういうことにたけた人材がいて、専門的にやっているという話です。これ、西浦先生が言われたこととも関係しているのですが、そういう人材を何とか手当てすることが必要だと思います。

【若山主査】  ありがとうございます。

【合原委員】  日本の数学の先生は教育、授業とか多いから、教育に疲れてるんですかね。

【宮岡委員】  いえいえ、実際の授業負担はアメリカの方が平均は多いですよ。

【合原委員】  そうですか。

【宮岡委員】  ええ。ただし、日本はどうなんでしょうね。人数が多いというのはありますけど、でも、外国も多いかな。でも、工夫次第ではあるとは思うんですが。今、標準的な教育だと、数学、1年生の教育なんてほとんど全然面白いところには普通は行かないわけですよね。例として、例えば簡単な、何だろう、テイラー展開なんかでも、それで微分方程式を解いてみせるとか、具体的に熱方程式みたいなものを解いてみせるとかやると、少し関心を持つ学生もいますが、でも、そんなことをみんなに要求するのは無理なので、やはりエクストラ授業とかを作らないとしょうがないのかなという気もしているんですけれども。
 少なくとも人物養成ではキャリアパスの構築と並んで教育ですね、教育のエクスポージャーという言葉を少しは入れた方がいいのかなという感じはしています。具体的にどういうことをすればいいかというのがちょっと分からないんですけれども、とにかく、今の数学、あとは統計とかも大学1年生の講義というのはかなり魅力が一般にはないのかなという気がしているのですが、せっかくコンピュータとか、みんな普及しているので、少なくとも情報と統計はまとめ、まとめていいのかどうか知りませんが、ある程度融合させて、もっと魅力的なもの、カリキュラムを作れるんじゃないかなとは個人的には思っています。数学もそうだと思いますが。実際の計算はコンピュータに任せて、ちょっと面白い例を計算させるということも考えてもいいのかなと思っています。

【青木委員】  すいません、いいですか。全く個人的な経験ですが、今、小谷先生のおっしゃった高校生に関係してコメントをさせてください。アメリカはウェスティングハウスのサイエンスコンペティションが、自分が子供のときから非常に活発だったのを覚えています。ストーニーブルック、ニューヨーク州立大学で、今度、アシスタントプロフェッサーをやったときに、ウェスティングハウスサイエンスコンベティションに参加する学生を受け入れるのも非常に重要な仕事の一つなんですね。
 それもテニアのときにクリティカルなインフォメーションではないですけど、評価されるので、高校生をどれだけ指導したか、評価基準に入っているので、多分アメリカでは重要だということです。
 それと、そのウェスティングハウスサイエンスコンペティションが科学者養成のルートに入っているのだと思います。ノーベル賞を取った人がよくそのコンペティションでファイナリストだったとか、よく新聞に載っているので、その分、ちょっと日本は、オリンピックとかありますけど、もっとこう、もっと層を厚くできたらいいなと個人的にいつも思うんですけど。受験があるから難しいかもしれませんが。アメリカは大学で入るとき、大学の内申書にウェスティングハウスでどこまで行ったかというのも非常に重要な情報になっていると思います。

【西浦委員】  すいません。アウトリーチはJSTでもいろいろかなり継続的にやっていて、やはり極めて重要で、今やっている話で、一つポイントとしては、たとえ高校生であっても、最先端の数学、それを砕いて言える、説明できる人が必要なんで、最先端の数学を見せるというのは非常に重要なんですね。だから、何かポスドクとかそういうのだけでやるんじゃなくて、最先端の数学がこんなところにとかいう、その、えっというわけですね。そのいわゆる身近なものでもいいんですけれども、数学から応用にやる、そういうものも非常に重要なんですけども、えっというその最先端の面白さ、そして、高校生の目の輝き。
 それから、特に数学なんかやっても、親には、数学なんかやるんだったら、勉強してもっとええとこ入れとかいって、学問、もうちょっと役に立つ学問をせえとか、親に言われているわけですよね。そうするとアンケートを採ると面白くて、いや、僕は数学好きなんだけど、いや、もう親からも、高校の先生からも、数学ではなかなか飯を食っていくの大変だよとかいって。といって、でも、きょう来てびっくりしましたと言うわけですね。最先端の数学、こんな数学があって、こんなところに使われていて、こんなことが今話題になっているかというのは知らなかったと言うわけですね。
 だから、そういう高校生のアウトリーチでやって、実はJSTのこと、怒られるかな、最初、研究推進、何に役に立つんですかって、えらい怒られまして、だけども、数学という学問の性格上、非常にそういうアウトリーチというのは長期的に役に立つということで、今は積極的にやれと逆に言われているんですけど、そういう意味では、僕は、最先端の数学、じゃあ、誰が教えられるのかというと、高校生の先生には無理です。我々、あるいは、我々の拠点大学、大きな大学の最先端の先生がやっぱりやらねばならないと。
 だから、そういう意識を持ってやっていただくと、非常に、眠っている才能の財産が日本の国力に最終的には効いてくるという。そういう今話題になっているアウトリーチが、最先端の我々の中でオーガナイズしてやるというのは。
 だから、何かちょっとくちょくちょとやるというのは僕は、我々がやる必要はないと思うんで、もうちょっと非常に高いところから広く観点を持ってやれば、効果が大きいというふうに感じます。
 以上です。

【若山主査】  そうですね、今、ほんとに西浦先生がおっしゃったこととか、小谷先生が紹介されたこともそうですけど、去年かな、一昨年かな、SSHの全国のやつがその1年間1回だけ集まる機会に言われまして、話をした後、そのポスターを見ていってほしいということで拝見していったんですけれども、多分、ポスターは150ぐらいはあったと思うんですが、150はないかな、100以上はあったと思うんですけど、そのうち、数学は三つだったですね。
 その三つは実は高校生たちの非常に熱心な、先生が介入していると思いますけれども、働き掛けがあって、一つは京大かな、一つは大阪市大かな、そういうところに出掛けて、そこのやはり教員に一緒になって最先端の数学というか、数学をテーマにして、ほんとに研究になっていたという印象を受けました。ただ、それが三つしかなかったと思います。
 やはり理科だと日常的な観察とかというところから、それから、実験して何か作ってみると、手作りしてみるというところからできるので、そういう意味では、逆に言うと、これだけ計算機が普通に使えるようになったという意味では、宮岡先生の御指摘もありましたけれども、そこもうまく実験として取り入れていくというふうな手もあるのかなというふうに感じて……。

【西浦委員】  手作りでできますよ。そういうネタは我々、結構持っていると思うんですよね。そこの十分な蓄積とあれをまだ我々は知らないというかやってないだけで、できると思います。

【若山主査】  そこで、やはり、高等学校の先生がその最先端のことというのは難しいかもしれないんですけど、高等学校の先生も御存じないので、どこにどうすればいいかというのが課題です。実際、ときたま自分の同級生が数学者になっていたりすると、電話をして行くという、そんなところもあるというふうに伺いましたので、それがもう少し公なシステムになるといいのかなと思いました。
 きょう、まだ中川委員、そんなに発言されてないですが、いつもそんなに別に多いわけじゃないですけど、お聞きになっていて、何か今の人材育成などについて御意見ございますか。

【中川委員】  企業の求める人材というのが多分あると思うのですけど、問題の解決する能力、いわゆる回答のない問題に対して数学の問題設定をどういうふうにするかという、能力が求められると思います。
 そういう人を受け入れる土壌がまだ日本の企業にはないので、キャリアパスを考える場合、いきなり企業への就職というよりも、ドクターを取られた人が研究者として研究できるような環境がまずあって、企業の人との対話の中で数学の有用性をどんどん広げていけるようなことができれば非常にいいかなと思います。
 そういう人たちをどのようにサポートするかということですね。多分、国としてのサポートを考えるべきだと思うのですけど、その辺の仕組み作りが非常に大事かなと思います。

【杉原委員】  いいですか、すみません。その点について、実は私、青学に行って、今度は数学科に所属するようになって、非常勤でいっぱい数学出身の方々が来て、演習なんかをお願いしているんですけど、やっぱり応用と観点が違うんですよ。
 表裏、いろんなものを一体にやらなきゃいけないと思いますけど、モデリングが重要だという視点とか、そういうのはないですね。数学的に重要な概念を教えたいというのがあって、数学的に重要な概念が必ずしも応用の場面では重要とは言えないのですが、そういった観点はないように思います。
 両方やっぱり必要だと思うんで、是非数学科の教育において応用的なことを教えるような授業が入れると同時に、入れることによって、多分そういうのが改善されていくでしょうし、また、そういうサポートされるようなシステムが出てくれば、その人たちの意識も変わってくると思います。両方をやっぱり一緒にお互いにやっていかないといけないというのが、数学科に行って、感じているところです。

【若山主査】  非常勤を雇用される、来ていただくときに、もちろんこの科目ということはもう指定されると思うんですけど、先生がおっしゃるようなことも含めてやってほしいという要求はあらかじめされたりはしないんでしょうか。

【杉原委員】  応用的なこととかですか。

【若山主査】  そうですね。

【杉原委員】  私なんかは基本的な線形代数の話なんかを授業でやっていて、それの演習をお願いしたりしていますけど、学生に説明していたのを聞くと、理工の一般の学生なんですけど、同形とか、そういうのがばんばん出てくるわけですね。そうなったら、それはもう分からないですよ、学生は。
 基本的に数学的に重要なことと、理工系一般において重要なこととの間にギャップがあったりして、雇うときにそういうようなことは説明するのはなかなか難いですね。その辺りのこともちょっと感じたことですね、最近。

【若山主査】  何か具体的なテーマがあって初めてよく理解できるということはたくさんあるので、大切なことですね。

【伊藤委員】  すみません、今のにちょっと関係するんですけれども、私、企業にいたときに、インターンシップの学生さんを毎年定期的に受け入れていたんですが、かなりうまくいくんですね。数学、数学といっても基礎数学じゃなくて、数理科学専攻のような統計解析をやっている方だったので、どっちかというと工学っぽいですけれども、そういう方も受け入れたりしていて、結構うまくいった経験があったので、会社の役員に学生さんではなくて先生を受け入れるというのがあってもいいのではないかと。もちろん大学の教員との共同研究はよくやるんですけども、それとはちょっと違って、来ていただいて、もうちょっと一緒にやれるような、そういう仕組みがあったらいいよねという話はしたことがあります。
 ただ、日本の企業の人事というのは難しくて、学生のインターンシップは簡単にできるのですけど、先生に来ていただくとなると共同研究以外がなかなかできなくて、実現しなかったんですが、ワンルーフというか、同じ場で議論しないと、なかなか課題を共有することは難しいかなという気はしていますね。

【若山主査】  そうですね。私たちのところでも、今、伊藤委員からお話があったように、教員を、やはり学生をインターンシップに出すんだから、教員もインターンシップにということでやったことがありますけれども、このところ、難しくて、どういうふうにするかと。だから、その経費をうまく分けて、2回ほどやりまして、それはそれで実りはあったと思っていますが、確かにいろんな観点があると思います。
 はい。

【合原委員】  高校生に話をする機会が多いんですけど、我々、例えば二次関数の分岐図でドレスを作ったりしているんですよ。その二次関数で東京コレクションに出すようなドレスが作れますと言うと、女子高校生も、すごく興味を持ってくれるんですよね。
 だから、ほんの少しでいいので、その先にあるものを教えるというのが多分若い人たちにとっては重要で、それを教えてもらうためには、やっぱり先生にそれを教えないといけないですよね。
 おととしだったか、去年だったか、数学教育に携わっている先生たちの学会があるんですよ、小中高大学の。たまたまそこで基調講演を頼まれたので、3,000人ぐらい参加されていた大会ですけど、そこでそういうお話をして、二次関数を教えるときには、ドレスにも使えるんだということを話してくださいと頼んだんです。
 そういう努力を続けて、中高の先生たちがちょっと変わってもらうと、やっぱり大分変わるんじゃないかという、そこの努力は続けないといけないかなという感じはしますね。

【若山主査】  大学における、高等学校の先生を生み出しているのは大学ですので、大学の方も考えないといけないなと思いますね。
 先ほど、合原先生がおっしゃったように、数学に限らず、理論系の学生というのは一つのことをやっていても割と一人で長く考えるという習慣が付いているので、潰しが利きやすいというよりは、やっぱりいざとなると広がりがあると思っているわけです。そんなところも出していければと思いますが。
 割と自由なきょうは御意見を頂戴しておりますけれども、ほかに何かきょう、ございますでしょうか。

【合原委員】  じゃあ、もう一つ、いいですか。

【若山主査】  どうぞ。

【合原委員】  若山先生の最後の提案と関係するんですけど、脳科学が今世界的にかなり動きがあって、日本でも文科省の脳科学委員会で議論している真っ最中なんですけど、ヨーロッパでヒューマン・ブレーン・プロジェクトというのが始まって、今後10年で1,500億の予算が付く予定です。それから、アメリカでブレーン・イニシアチブというのが始まって、これは産学入れて10年間で2,000億ぐらいのスケールです。日本でも、今後の脳科学の方向をどうするかということが、議論されています。
 やっぱりそういうときに、数学と諸科学との連携という意味では、脳科学における数学の貢献というのは多分日本の強いところでして、例えば理研の甘利先生なんかはほんとに世界的に見てもパイオニアなんですね。
 だから、是非何か、若山先生の最後の提案みたいな感じで、脳科学の方に数学から貢献してもらえると、脳研究にとっても非常に有り難いと思います。

【若山主査】  ありがとうございます。
 ほかに御意見ございませんでしょうか。
 それでは、粟辻さん、先ほどちょっと申し上げましたけど、議事録の中から、特に今後、報告書をまとめていく際にキーとなるような御意見、たくさん頂いていますので、それをちょっと抜き出すという形の作業をしていただけませんでしょうか。

【粟辻融合領域研究推進官】  きょう、いろいろ貴重な御意見を頂きましたので、そして、それを整理させていただいて、幾つかの項目に分けて整理させていただいて、また御相談させていただきたいと思います。

【若山主査】  それでは、よろしくお願いいたします。
 最後に、では、粟辻さんの方から、次回の開催日程なんかについて。

【粟辻融合領域研究推進官】  次回はまた追って日程調整をさせていただいた上で御連絡させていただこうと思っております。本日の議論も踏まえて、また議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【若山主査】  大体1月と、2月にもう一度とできればというふうにお考えですか。

【粟辻融合領域研究推進官】  そうですね、1月とか、場合によって、ちょっと先生方の御都合次第ですけれども、2月とか、そのくらいでちょっとできればなと思っています。

【若山主査】  どうも、よろしくお願いいたします。
 それでは、数学イノベーション委員会第14回を閉会いたします。どうもありがとうございました。皆様、よいお年をお迎えください。

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