数学イノベーション委員会(第10回) 議事録

1.日時

平成25年1月21日(月曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省17階 研究振興局会議室

3.議題

  1. 数学イノベーションに必要な方策について
  2. その他

4.出席者

委員

若山主査、安生委員、北川委員、杉原委員、中川委員、西浦委員、宮岡委員

文部科学省

吉田研究振興局長、森本大臣官房審議官(研究振興局担当)、菱山振興企画課長、安藤基礎研究振興課長、太田基礎研究振興分析官、粟辻融合領域研究推進官、藤沼情報科学技術研究推進官、田村学力調査企画官

オブザーバー

東京大学大学院数理科学研究科 山本昌宏 教授
株式会社富士通研究所ITシステム研究所数理解析グループ 穴井宏和 主管研究員
明治大学先端数理科学インスティテュート 三村昌泰 所長
日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所数理科学担当 井手剛 部長

5.議事録

【若山主査】  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまより第10回数学イノベーション委員会を開会いたします。本日は御多忙のところ、お集まりいただきましてありがとうございます。
 本日は森主査代理、小谷委員、大島委員、それから、急きょ、青木委員から御欠席との御連絡を頂いています。また、今回、オブザーバーとして明治大学先端数理科学インスティテュート、三村先生。それから、日本アイ・ビー・エム株式会社の井出部長に、オブザーバーとして御出席いただくことになっております。
 それでは、本日の議事を進めるに当たり、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。


○粟辻融合領域研究推進官より、配付資料の確認があった。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 それでは、議題1に入ってまいりたいと思います。数学イノベーションに必要な方策についてということです。本年8月7日に、御承知のように本委員会の議論のまとめ、「数学イノベーション戦略(中間報告)」が先端研究基盤部会において決定されました。その後、連携相手となる諸科学・産業界のニーズやより効果的な連携方策について聴取するため、中間報告について学会や経済団体等と意見交換を行い、一部の委員にも意見交換に御参画いただきました。前回、第9回の委員会で学会等から頂いた意見について御説明いたしましたが、それ以降、今回までに新たに三つの学会関係者から御意見を伺うチャンスがございました。事務局からそれについて御説明をお願いいたします。

○粟辻融合領域研究推進官より、資料2について説明があった。

【若山主査】  ありがとうございました。
 ただいまの御説明に対しまして御意見、御質問等ございましたらお願いいたします。たくさんのページから成る資料でして、今、概要を御説明いただいたわけですけれども、資料の後ろの方に各学会から頂いた意見の詳細がコンパクトにまとめられております。テーマ、課題対する意見が物理から始まって産業までですね。それから、連携推進方策に関する意見といたしまして、1番は諸科学との連携が書いてございます。ページをめくっていただきますと、その次のページから企業との連携ということまとめられております。

【粟辻融合領域研究推進官】  特に何もなければ、次の議題もありますので。

【若山主査】 そうですね。分かりました。
 それでは、続きまして、今日はお二人の先生にお見えいただいております。プレゼンテーションをお願いしたいと思いますが、最初に東京大学大学院数理科学研究科の山本先生からプレゼンをお願いしたいと思います。先生には数学・数理科学における国際交流についてお伺いすることとしております。
 それでは、山本先生、15分程度でお願いします。

【山本教授】  御紹介いただきました東京大学大学院数理科学研究科の山本でございます。よろしくお願い申し上げます。今日は国際交流についてということで、多少、私自身の経験に依存しているところもあるかと思いますが、細かい数値についてはまだきちっと調べてはいないので、多少曖昧さも残りますが、自分の経験並びに周辺の観察に基づいて少しお話をさせていただきたいと考えております。
 まず、私自身は大体年間で30名ほど海外から来る人がいて、ただ単に議論だけするという人もいますし、大体そのうちの15人ぐらいと共同研究、これは論文を書くということなのですけれども、やっております。私自身も海外の国際会議とか、研究滞在に出かけるのですけれども、少し申し上げたいのは、海外の優秀な院生をスカウトするという目的もございます。後ほど少し触れますけれども、こういう海外の連携で産学連携への、私が今やらせていただいておりますそういうもののグループに取り込んでしまおうということもございます。私が所属しております東大の数理科学研究科全体ですと、数値は多分、140人ぐらいだと思うんですけれども。

【宮岡委員】  多いときは200人ぐらい。

【山本教授】  多いときは200人ぐらいですね。それで、教員一人当たりに対する外国人の訪問研究者数は東大の中では1位ということになっております。それで、分野によっても多分、相手、パートナーの国はいろいろなのですが、私の場合は逆問題が専門ですので、旧ソ連と、あとアフリカ諸国、ホワイトアフリカのところも含まれていて、あとはヨーロッパとアメリカ、中国ということになっております。アルジェリアにも共同研究者がおりますが、私自身は出かけたことはございません。私自身は国際交流を重要と考えているわけなので、そのような立場でお話をしたいと考えております。
 数学研究にはやはり数学特有の部分がありまして、それはどういうことかと申し上げますと、ほかにもいろいろな特徴があると思うのですけれども、数学というのは普遍性がございます。地域によるとか、各国の固有の文化とか歴史に依存する部分が、数学では自然科学の中でも依存する割合が低いのではないか。これは客観的に比べたわけではないんですけれども、これは感覚的な感じでこのように申し上げようと思います。
 あと、数学もいろいろなところに使われておりますし、グローバル化と言ってしまえばそれまでなのですけれども、国際性が増しております。数学研究の特徴として施設などの制約が少ないということがございます。CERN(欧州原子核研究機構)とかですと、多分、あれは実際にそこに行かないと仕事ができないのではと思いますが、制約が少ないので、例えば日本の小さい都市でも優秀な日本人の数学者が一人でもいれば、世界的に一流の人材が海外から訪問するということがございます。これが国際性ということの特徴かと考えております。
 それで、じゃあ、数学の国際交流をするとどういうことがあるかというと、これは恐らく、いろいろなくくり方があると思うのですけれども、まず、院生の立場からということと研究者の立場からというのを分けて述べた方が整理しやすいかなと考えて、(プレゼン資料を)このようにしました。
 プレゼン資料にそって説明をいたします。国際交流の意義を申し上げます前に、最近、私が感じている背景というのがございまして、国際的な背景を思い付くままに書いてみました。まず一つには、数学自身の中の分野の多様化ということがあるかと思います。これはいろいろな異分野と連携するということもありますし、今まで構築してきた理論をいろいろな問題に応用していこうということも多分あると思います。2番目は、いろいろ原因はあると思うのですけれども、数学のみならず、国際共同研究が私の感覚では普通になっている。これは例えばヨーロッパ共同体の枠組みが強くなって、その中での複数国にまたがる科研費の申請が普通になってきたとか、そういうことがあるかなと思います。
 それで、それと関連するのですが、欧米ではやっぱりボローニャ・プロセスというのが、普通にかなり運用されているようで、現在の運用状況をきちんと調べているわけではないのですけれども、大学改革が進んで相互乗り入れが進む、あるいは多国間での研究とか教育環境が一定の規格化がされている。単位の互換化とか、そういうのがあるので、一層学生も含めての交流がヨーロッパの中では例えば盛んになっているということがあります。ですから、元々国の枠を超えて研究、あるいは教育が進んでいるという現状があるかと思います。
 これは背景のうちでも大きなことだと思うのですが、海外も外国人学生の受入れを拡大しているという傾向があるかと思います。例えば最近、エコールポリテクニクが非常に熱心で、私の10年ぐらい前の感じでは考えらないことで外国人を積極的に受け入れて長期インターンシップを受け入れるというのはすごく力が入っているんです。長期というのは、向こうで言うと大体最低で六箇月ぐらいということで、日本の場合と比べてスパンが長いということがあります。2番目はかなり自明なことだと思うのですけれども、いろいろなそういう背景もあって国際共同研究が重要な研究所存続の評価基準になっているということもございます。
 また、私は1992年から1993年、随分前なのですが、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団で、ポスドクで2年、ミュンヘン工科大学に滞在していたんですけれども、この財団はドイツこてこての財団ではあったのですが、最近、グローバリゼーションの影響とかいろいろあって、基本的に英語で全部構わない。特に自然科学はですね。また、いろいろ奨学金受給の条件の大幅な緩和ということがされて、積極的に日本からの奨学生を、フェローシップを募っているということもございます。
 これが背景ということになるわけですが、それで、再び話題は前後してしまうのですが、国際交流の意義ということでございますけれども、院生の立場からの意義としては、もちろん海外でインターンを通じて経験が増える。経験が増えるということはどういうことかというと、日本だけではない、外でどんなようなことをやっているか研究動向が当然多様なわけです。いろいろなところでいろいろなことをやっているということに触れることができる。それと、英語になってしまうのですけれども、コミュニケーションスキルというやつですね。日本語の論理とか、レトリックでは普通、数学では発表とか議論とか執筆にはなりませんので、そこの分類にもなる。4番目は、これは多分、私も非常に恩恵をこうむっているのですが、向こうに行くと自然と向こうの研究者ネットワークの中に入ることができて、これは研究者としてやっていく場合には一生の宝物になると思うんですね。何かのときはいろいろと助けてくれるということがございます。
 やや年配の研究者の、別に年配である必要もないんですけれども、研究者の立場からの意義の一番は最新の成果を漏れなくキープすることができるということがあるのではないかと思うんですね。これはやっぱり最初に申し上げましたように数学そのものも多様化していますので、完全に関連分野の知見をフォローするというのは、なかなか日本に閉じこもっていると難しいので、海外の研究者ネットワークをうまく使って、漏れなく最新の成果も取り入れていくということになります。それで、これは異分野連携でもやっぱり、こちらは全ての道具の引き出しをきちっと整理しておかないと、すぐに異分野連携、例えば産学連携でも役に立たないところがありますので、そういうことにも非常に重要かと考えております。
 もちろん、海外とやると結果的に成果の優先権の確保もしやすくなります。あと、研究成果の周知効果も絶大です。友達の友達は何とかという話もありましたけれども、大体、数学者ですと友達を6回繰り返すと世界中の全数学者をカバーして自分のところにほぼ戻ってくるのではないかという説があって、そんなに人口が膨大なわけではありませんので、いいパートナーがいるとパートナーのパートナーという感じになって、結局は世界全部のところをカバーしてしまうということもあり得ます。ということで、関連分野ではあるのですが、研究のやり方とか考え方が違いますので、共同研究をするとやっぱり1たす1が2になるというのではなくて、質的な変化があって新たな研究が展開する可能性があります。
 結論としては、当たり前の結論みたいになってしまうのですけれども、我が国の数学の底力、これは我が国の数学の基礎数学というか、純粋数学も含めて非常に高いレベルにあります。そのようなものがないと、これは話が先に進まないのですけれども、数学として優れたものがないと海外から関心を持ってくれませんので、そのような資本というか日本の数学の底力がありますので、それを生かして一層の振興を図るために有効であると私は確信しております。この結論のためにいろいろと留意点があるのですけれども、これは多分、思い付くままなので余り網羅しているところはないかもしれませんけれども、またこれも後ほどいろいろと御意見を頂戴したいと思いますが、まずは相補的であることですね。バイラテラルというか、例えば専門分野が過度に一致していても意味がないわけです。多少ずれて、だけど、共通部分がある。お互いの得意、不得意がうまくデコとボコになるようにやっていくのが望ましいということがございます。
 私はそんなに大きな規模のではないのですが、平成22年から23年までJSPSとフランスのCNRSというところなのですが、二国間のをやらせていただいて、日仏の得意分野が関連はしているのですが、色分けがされて、やっぱり得意、不得意で特徴があるんですね。フランスは数学で言うと制御論が盛んだけれども、逆問題は余り盛んではないということはありますので、あとドイツだと最適化が強いとか。あと中国は専門というよりかは、むしろ研究者の資質と言うと変ですが、特徴、結構、理論と数値計算に中国の数学者はバランスがとれているんですけれども、その分やっぱりどっちつかずと言うと変な言い方になりますが、その辺は理論面に強い日本が補うということで、いい結果が生まれていると考えております。ですので、WinWin関係を目指すということにしておかないと長続きしないわけです。ですから、一方向ではなくて、招へいと派遣ということになってまいります。
 それで、数学の場合には人単位での交流というのが重要になるかと思うんですね。あと、快適な研究環境を確保する。これは欧米と異なる生活習慣などのためということがありますので、これも重要な留意点かと思います。継続していくと、初め、立ち上がりというのは時間がかかるかもしれませんけれども、それで一定のところに乗ると成果が出てくるということがございます。
 それで、これは最後のところなのですけれども、やっぱりこういうことがネックになってしまうと思うんですね。国際交流は重要で、もちろんやりたいのだけれども、なかなか時間がないということがあります。時間がないというのは別に言い訳でもないのですけれども、講義をする、自分の学生の指導をするというのが第一の本務になるので、大学内などの支援体制が余りないということになって、それが多少足を引っ張るということになるかと思います。当然、ビザ申請とか、在留資格申請とか、外務省、法務省マターが一杯あるのですけれども、今のところだと支援が余り十分ではないので、教員が全部するということになっていて、それはそれなりに負担が多いということで、多少というか、かなり引けてしまうということがあるのではないかと思います。
 やっぱりこれは人単位に重要ですので、国際交流のための制度を作っていただいたとしても柔軟な運用ということが重要になるかなと考えております。それで、すみません、最後になりましたけれども、これもかなり常識的な提案なのですけれども、国際交流というのは数学にとっては非常に重要であるということを前提にして、余裕のある大学をコアにして、そこだけではなくて、先ほども申し上げましたように数学は大学全体の規模と、そこでやっている特徴ある研究と独立ですので、規模は小さいのだけれども、特徴ある研究をしている研究機関というのはたくさんありますので、そこをうまく組み込むようにして、人単位の国際交流ができるようなシステムがあれば非常によろしいかと考えております。
 御清聴、どうもありがとうございました。

【若山主査】  山本先生、どうもありがとうございました。
 ただいまの御説明、お考えに対しまして御意見とか御質問があるかと思うのですけれども、何かございましたらよろしくお願いいたします。

【太田基礎研究振興分析官】  結果の優先権の確保とあるのですが、この優先権というのは特許とか金銭的な面ですか。

【山本教授】 いや、違います。最初に出版物として認知されるかどうかということですね。重要な定理を最初に証明することが数学者の最大の目的です。

【太田基礎研究振興分析官】  名前というか、名誉的なものの。

【山本教授】  いや、名誉というか論文至上主義というのがあるので、やっぱり名誉は名誉だと思うのですけれども、これは基本だと思うんですね。共著者がいるとアンテナを張っていますから、どういうところが研究が集中しているかというのを日本だけにいると見えないところもありますので、そこのところはかなり大きいかなと思っております。

【若山主査】  ほかにございませんでしょうか。時間の確保というのはもちろん重要だと思いますが、あとファンディングの現状認識や今後についてはどういうふうなお考えでしょうか。

【山本教授】  頂ければそれに越したことはないわけですね。ただし、柔軟に運用できるということが、もちろん頂いた上でそういうことに注文をつけるというのもちょっと虫のいい話もしますけれども、ファンディングについては現状では日本全体ですると全然十分ではないと思うんですね。いろいろなところを使いながら何かやっているというところがあって、何かいろいろなところと交渉してお金をちょっとずつもらってくる。先方からやりくりをする、こっちでもやりくりするということですので、何か多分、研究そのものよりかはそちらの方に費やされる時間と手間、知恵がより必要になって、それは余り健全なことではないかなという気がします。
 あともう一つ、組織の柔軟な、どうも機関単位になってしまって、例えば他機関の院生を派遣するとかとなると、これは結構、事務的に面倒くさくて、教授会を通さないといけなかったりということもありますので、そこのところも是非御留意賜れば有り難いということであります。すみません、ちょっとまとまりがない回答になってしまいましたけれども。

【若山主査】  ファンディングは今、先生がおっしゃったように、どうやってこれを進めようかと思ったときに時間も相当食いますよね。

【山本教授】  ええ、そうですね。

【若山主査】  だから、それがやっぱり最初の時間がないところに戻る。

【山本教授】  ファンディングは。

【若山主査】  時間を取られるというのは。

【山本教授】  ええ。ですから、時間というのはお金で買えるというとちょっと変な話なのですけれども、スタッフを例えば有期で雇用するとか、例えば在留資格の書類を書いてもらうスタッフを雇うとかということにもつながると思うんですね。ということがあります。ですので、お金と時間ということになってしまうのですけれども。

【若山主査】  ほかにございませんでしょうか。それでは、また後でございましたら、一緒に御質問等お願いしたいと思います。
 続きまして、今度は株式会社富士通研究所ITシステム研究所、穴井主管研究員より産業界との連携についてお伺いしたいと思います。それでは、目安として15分程度でお願いいたします。

【穴井主管研究員】  御紹介にあずかりました富士通研究所の穴井と申します。よろしくお願いします。
 最初に産業と数学の連携ということで、私は富士通研究所の数理解析制御グループに所属していまして、そこで研究をしているわけですけれども、私自身の専門は計算機代数で、代数計算なんですね。企業の研究所にいますので、それをいかに社会に役立てるか、会社の業務に貢献するかということを、入社以来ずっと二十数年考えてきたという立場にいます。今日は我々のグループでどういう活動をしているかというのをほんの少しでも紹介させていただいて、数学と連携の取組として富士通研究所の中でどういうことをやっているかというのを紹介させていただきます。そういった取組、かなり手広くやっているつもりなのですが、その中で日頃感じていることなどを少し御紹介させていただければなと思っております。
 我々の研究部はデザインイノベーション研究部という部にいまして、もともとはCAD、Computer-aided designとかでものづくりを支えるいろいろな数理的な手法とかツールを開発する部署です。そういう意味で、いろいろなものに対する実験データやシミュレーションツールがあって、そういったものから現象をモデリングして、シミュレーションして、ある種の最適化をして制御するというような、こういうプロセスをいろいろな対象に対して行うような研究をやっています。そういう意味で、現在、皆さんもよくお聞きかと思いますけれども、数式モデルに基づくモデルベースの開発とか、モデルベース設計というのが非常にこういうものづくりとか、こういうITの中に入ってきていまして、基本的には対象を数理モデル化して、いろいろなデータを使ってシミュレーション、最適化、制御するという、こういった取組をずっとやってきています。
 研究のテーマとしては、そういう意味でモデリングをやっているところ、シミュレーションをやっているところ、こういう検証とかテスト、半導体のチップとか、スパコンの京の重要なインターコネクトチップというところのテストなども、ある意味で数理的な手法を使ってやったりしています。その中で私は最適化とか制御という部分を特にやっています。この中に私自身としては計算代数の手法も使った最適化とか、制御手法というものを提案して、ものづくりの効率化とか高精度化ということをずっとやってきています。
 もう一つ、我々の取組で特徴的なのは、これは後ほどITの視点から少し紹介させていただきたいのが、このエンジニアリング・イノベーションということで、基本的にこういったところで培われた、要するにノウハウとか数理的な手法の知見とか、それがツールになったときに、そのツールを使うためのノウハウとか、そういったものが蓄積するのですけれども、そういったものをどうやって共有するかとか、広げていくかという取組を一つの研究テーマとしてやっています。これは後ほど紹介させていただきます。
 そういう意味で、我々のやっている研究対象というのはすごく広くて、数理解析って数学の部分なので、いろいろな数理的手法を使って、ずっとものづくりを中心にやってきたのですけれども、最近ではいろいろなビッグデータが、車の運行情報のデータとか、いろいろなものが刻々と手に入るようになってきたので、そういったものを使った、状況変化に対応した配送計画とか、スケジューリングの話みたいな、こういったところもやるようになってきています。それから、特に近年ではエネルギーとか環境の問題をやっぱり数理的なシステムとして捉えて、いろいろ制御する。エネルギーの有効活用をするような制御とか最適化をやっています。
 そういう意味で、数理に対する、我々のグループに対する社内の期待というのは非常に大きくなっていまして、そういう意味で少し人数も増えました。増えたといっても10人規模なのですけれども、10人規模で我が社の抱えるいろいろなこれだけ広範な問題をカバーするというのは非常に大変で、そういう意味で期待はあるのですが、今、課題はこれだけのニーズにどう対応するか。この少ない人数でどう対応するかというのが非常に問題です。また、数理的手法なので、我々の会社にもSEさんとか、営業さんとか、もっとフロントにいる方たちがいるのですけれども、そういう方に数理技術を使ってほしいのですが、やはりそこはいろいろ障壁がある。数学が難しいという意識が皆さんあって、なかなかそういう技術とか手法を使いこなせないので、いかにこれを広げていくかというのが一つの非常に大きな課題になっています。
 そういうことも考えつつ、やはり数理というものがまずは社内で認知してもらうため、いろいろなイノベーションを起こすため、あるいは効率化とか高精度化のために数理が必要だということを知ってもらうことがまず第1弾なのですが、そのためにいろいろ、いかに数理が役に立つかというのを実際に活動しながら、実例でバリューを見せてずっといろいろ活動してきています。取組としては、今ここにたくさん羅列しているのですが、簡単に紹介させていただくと、これは多分、企業ではそんなには余りないと思いますが、数学とか、純粋数学とか、数理科学系の先生とずっと20年ぐらい、いろいろな分野で継続して共同研究をやっています。私自身も科研費を頂いたり、JSTのCRESTに採択されて、その中に数学の先生たちのチームを2チームぐらい入れて一緒にやっているとか、そういうこともやってきました。そういう意味で非常に国の方からいろいろ支援していただいたことが社内の数理が大事だという意識の改革に非常につながってきています。
 あと、人的交流が非常に重要だと思っていまして、我々富士通側としては、これは私のことなのですが、若山先生のIMIに兼務させていただいていますし、私の部下とか、私の部の中から社会人コースとして九大の数理に派遣したりしています。企業の研究員を数学の博士コースに派遣するというのはなかなかなくて、こういうことができるということはやっぱり大分、そういうのが大事だということが会社の中でも非常に認知されてきたことの一つなのかしらと思っています。
 あとは、今度は大学の方からポスドク研究員、これは九大のGCOの研究員だったのですけれども、長期滞在していただいて研究活動をしてもらったり、あと僕たちが特に非常にいいと思っているのはインターンシップでして、数理の博士学生を長期インターンシップでかなり継続して受け入れています。大体三箇月と言われているのですが、いつもいい成果が出るので、三箇月延ばしていただいて半年とか来ていただいています。この期間に我々の実績だと研究発表はもちろんですけれども、特許も出てきていますし、うまく問題をこちらが切り出して一緒にコラボレーションできると、すごくいい成果が出ています。
 あとは、こういった文科省のサポートでやられている研究集会にも参加させていただいたりとか、うちの会社の中で開催していただいたりとか、こういうことをやりながら、いろいろ数理は大事だよということを皆さんに会社の中で意識を変えてもらうような活動につなげていっています。今日は、その促進の面と人材に求められる必要な人材、どういう感じかという、この2点について思ったことを残りの時間で簡単に紹介させていただきます。
 数学の連携というか、先ほど少し言いましたけれども、数学を広げていく上で、社内でいろいろ問題が、難しさがあって、ここに四つぐらい難しさがある。まずは、数学は難しいという意識があって、なかなか使いこなしてもらうのに非常に時間がかかる。そこの意識と、それから、そういったものを使いこなせる人材というのがなかなかいない。これを育てるのが非常に難しい、そんなに容易ではない。それから、数学と実際の現場の問題のどこがどうつながるかというマッチングの問題があって、これは我々がある意味いろいろなところを回って話をしながら見つけていくのですが、逆に向こう側で問題を持っている方が、もしかしたら数学で解けるのではないかという意識を持ってもらわないとなかなかマッチングが進まないので、そういうことができるために先ほどの活動をいろいろ大きくやっているところがあります。
 それから、連携の難しさという点では、いろいろ数学者、長くやっているんですけれども、数学者側のインセンティブをどう設計させられるかというのは非常に大きいと思います。僕たちとしてはいろいろ、ここの下にその対応を書いているのですが、うまく問題を切り出して、数理的にも意味のある問題設定ができるとか、それが論文につながるとか、そういうのをうまくやらないとなかなか継続してやってもらえない。私の場合、ずっと長くいろいろやっているので、そういうノウハウが蓄積されてきていますけれども、そういうのを普通の部署の方に求めるのは非常に難しい。それから知財の問題や契約の問題とか、難しさがあるのですけれども、一番の問題は我々自身が数理的なアルゴリズムで特許化しようとすると、これは特許にならないことが多いわけです。それをいかに特許化するかという難しさが一つあって、あとは特許にしたときに非常に汎用的な手法なので、ほかのところに使えてしまうところをどうするかとか、その辺のところが非常に難しさがあります。
 いずれにせよ、こういった問題点をどう解決するかというのを日々考えていろいろやってはいるのですが、そういう意味でツールの難しさとか、技術の難しさは、こちら側が社内でいろいろな技術セミナーとか、チュートリアルセミナーをいろいろ企画してやったりして、啓もう活動したりしています。ただ、これは非常に好評で、技術者が数学は大事だなと思って、意識が変わってきたのを感じるのですが、1回、例えば最適化のセミナーとかを社内でやると、100人単位で人が集まってくるわけですね。みんな忙しいのですが、会社でやっているというのもあるのですが、そういうこともあって、そういうことも非常に重要で、実はそういうところに社内の研究員がやるのは非常に難しいところもあるので、大学の先生とかとコラボレーションしながら、そういうことが社内でできるとすごくいいのかなとか思ったりもしています。
 あとは、こういう機会を、数学と問題のマッチングの話では、研究集会とか、スタディーグループに我々も毎年参加してやっているのですが、もう少し楽にできる機会というのを何かうまく作らないといけないと思っています。最後に一言、ここでは組織の存在が大きいと書いていますけれども、文科省の方にこういう動きがあって、数学イノベーションユニットができて、こう活動しているんだよということは実はすごいメッセージで、これが社内にいろいろないい影響があって、そういう方向の研究というのは大事だし、我々の数理解析グループみたいなのを作ってやっていかなければいけないという意識が根付いてきていると感じています。
 そういう意味で、こういったIMIとか、こういったものの存在は大きいですし、会社の中でこういうグループを作るというのは、なかなかそんな容易ではないのですが、こういう数理系のグループが富士通にもできまして、これでやっぱりいろいろな部署の方が、もし数学的に何か困ったら、ここに聞けばいい。まず、コンタクトしてみようということで、こういうことの存在というのは思った以上にあるなというのを感じています。数学を連携、促進する一つの側面で、富士通はICTのカンパニーなので、そういうのを積極的に活用したいと思っています。これは簡単に紹介させていただくと、数学関連のソフトウェアというのは一杯あって、皆さんフリーでも使えるものが一杯増えてきたんですけれども、先ほど言ったように難しくて使えない。何ができるか分からないというのが現場の方の声で、そういう意味で専門家やプロでもないユーザーが使いやすいようにツールというのは進化していっています。
 それはある意味、プラットフォーム化して使いやすいようにしている提供の方向性もありますし、あとはシミュレーションなどでよくあるのが、ソフトウェアが高かったりするので、あと計算量がすごくかかるので計算機をたくさん作らなければいけないので、そういったところに柔軟に対応できるようにソフトウェアの費用とか、計算機のパワーを柔軟に増減可能なサービスとして、クラウド上で提供されるような形になってきて、こういったものがうまくどんどん広がっていくと、少し数理的な手法、ツールを使う敷居が下がるというか、そういう努力も必要だと思っています。
 あとは、マッチングとか、先ほどエンジニアリング・イノベーションと我々の部での取り組みで、こういったツールとか手法の使い方のノウハウをやっぱりシェアして広めていく仕組みというのが重要だと思っていまして、そこにSNSみたいなものを活用しようという取り組みを社内で始めています。SNS上に例えばこういう最適化のツールのグループとか作ったりしながら、お互い助け合うとか、いろいろな技術的なサポートをするような場を作ったり、あとは勉強し合う場のグループのネットワークとか、こういったものを活用して、その場を作って、それがそういったクラウドサービスとか、プラットフォームツールとつながっていくようなイメージでソフトウェアというのを進化させていこうとしています。言いたいことは、こういったICTのツールもうまく使って数理を広めるのを、特に我々の会社などがやっているのですが、こういったのは広めていくといいのではないかと思っています。
 最後に連携に求められる人材です。これは感じていることを少し書いただけなのですが、まず、いろいろ問題解決はあるのですが、多様な問題に対応しなければいけない企業である。かつ、自分の全然専門でないところというのが大体普通なので、そういう意味では複数の数理技術を使いこなしてやらなければいけない。なので、自分の専門分野以外にも継続して興味を持って勉強しながら専門性を広げていくというか、自分の専門だけではやっていけないところがあります。それからあと、問題の分野依存の知識というのがあって、その分野の知識があるので、そういったものをどう埋めていくかというので、もちろん自分で勉強するというのはあるのですが、やはりなかなか効率的ではないので、そういう分野の方とのコミュニケーションが大事なのですけれども、ここはいろいろなギャップがあるので、粘り強くやるというか、そういうところが結構大事です。
 それからあとは、理論と実際のギャップというところが必ずあるので、実適用すると本当にギャップがあります。そこをちゃんと理解して、ちゃんと数理的にきちっと理解した上で、実際適用するときには、例えばここは丸めてしまうとか、無視してしまうとかいったような割り切りというのが非常に重要で、ここが実はある意味、エンジニアリングセンスだと思っていまして、そういったところは実は非常に重要だなと思っています。
 最後に、そういう人材の育成ということで、解があるわけではないのですが、企業側でそういう人材をどうするかというので、一番いいのは人的交流だと思っていまして、そこの中でお互い学ぶ。インターンシップというのは、特に非常に有効に働いていると思います。研究員の方の意識もすごく変わってきました。そういうのを実践しながら積み重ねるしかないかなと。本当はそういう教育カリキュラムみたいなものを社内で作るべきではないかなと思っているのですが、なかなか難しい。ああいうSNS上でそういったものをやるとか、オンラインのああいうe-learningみたいなのを作っていくとかというのも重要かなとは思っています。
 それから、学生の方に対しては、プログラミングは会社に入ったら絶対重要ですし、数学を形にするのはやっぱりプログラミングという感じなので、そこは絶対できた方が就職とか、キャリアパスに対してもすごくいいので、そういうところは何とか数理の学生もできるようになってほしいなと。素養は絶対あると思っているのですけれども、なってほしいなと思っています。あとは、就職活動で来る学生で情報系とか、ほかの分野というのは結構優秀な方が来ると何とか賞受賞、論文賞受賞とか一杯書いています。

【山本教授】  そうですね。一杯書いてあります。

【穴井主管研究員】  ほとんど書いているんです。だけど、数学は賞がないんですよね。そうすると、賞がある方が何かよさげに見えて、いや、それは本当にすごくもったいないと思っていて、だから、僕自身も会社の中でみんな賞をもらうんですけれども、数学にいると賞がないんですね。

【山本教授】  賞が少ないですね。

【穴井主管研究員】  僕も賞を頂いたのは、数学を別の分野に適用して、そこのバイオとか、別の分野で賞をもらっています。だから、そういう意味で、何かそういう産業数学をエンカレッジするような仕組みとして、賞とかあったらいいんじゃないかなと思ったりしています。
 余りまとまりがなかったですけれども、以上です。

【若山主査】  穴井先生、どうもありがとうございます。
 それでは、御質問等ございましたらよろしくお願いいたします。

【中川委員】  若干デリケートな質問なのですけれども、数学の成果を御社の中で評価はどういうふうにされているのか。数学で何かやったとしたときの評価の基準ですね。

【穴井主管研究員】  基本的に会社の成果って、何でやったかというよりも、例えば効率が10パーセント改善したとか、出口分野でのバリューがどれだけ改善したかということで、手段がどうのこうのという議論には上の方では余りならなくて、ただし、そこに独自技術とか、自分たちしかできない技術があるということは非常に好まれるので、我々としてはまずはその分野でのバリューとか、どれだけ貢献できたかというのを数値で見せて、そのためにこういう技術を開発して、これが数理でなければ、この数学がなければできなかったみたいな主張をして言っています。

【中川委員】  ありがとうございました。

【若山主査】  どうぞ。

【三村所長】  いい話をどうもありがとうございました。先ほどの最初のところで、いわゆるエンジニアリング・イノベーションで、いろいろな分野から、社会とか、経済、資源とか、そういう意味では非常に扱いにくいところをいかにやっていくかということなので、そこでモデリングベースの研究ということで、モデリングはどこでやられているんですか。その後にモデルができれば、数理的な処理は聞けたと思うのですけれども、モデリングというところはどこでやってられるんですか。

【穴井主管研究員】  モデリングは我々が一緒にモデリングをやるときもあって、例えば半導体の設計者と我々が数理的なモデルを一緒に作っていくとか、制御系設計とかだと、制御のそのやっている、物を動かしている人たちのところに行ってデータをもらって、我々がそのデータからシステムをモデル化していくとか、実際、一緒にやっていることが多いです。あと、経済とか社会の問題は、我々、余り社内、そういったところの分野に専門家がいないので、それはやっぱりその先生が主になっていて、それを支える数理的なところを我々が一緒にやるというようなやり方をしています。社会的な問題とか、そういう課題の特徴的なのは、曖昧さというか、不確かさとか、分からないところが多くて、そこのモデリングをどうするかといつも悩ましくて、そこがきっと多分、これからの一番のビッグチャレンジになるのかなと思って、そこはやっぱり経済とか社会の問題の専門家と本当に膝を突き合わせてやっていかないと多分難しいかなと思っています。

【三村所長】  はい。

【若山主査】  よろしいですか。中川さん、先ほどデリケートな御質問ということだったのですけれども、御社でも回答は大体同じですか。

【中川委員】  はい。同じです。私のところもそうです。基本的には成果というのは企業にとって幾らもうかったかということです。それをどういうふうに数学の貢献で示すかということですから。

【若山主査】  ただ、そういう数学の貢献度みたいなものをちゃんとある意味で表明することはできる。

【中川委員】  それは可能です。可能ですけれども、簡単ではないです。

【若山主査】  ほかにございませんでしょうか。

【粟辻融合領域研究推進官】  先ほどインターンシップのところで、うまく問題を切り出せればいい成果が出るというふうにおっしゃいましたが、うまく問題を切り出すというのは、どのようになされているのでしょうか。

【穴井主管研究員】  来る学生さんの専門性を見て我々が実問題で見せられる分と見せられない分もあるので、そこも考えつつ、数理的に切り出していくという感じでやっています。基本的には我々が切り出してやっていて、ただ、その来ていただくインターンシップの学生の専門性というのは前もって分かるし、場合によっては、こういう専門性で来ていただけるとうれしいなという希望も出したりはしているので、そういう専門性を見ながらうまく切り出してはいます。
 あとは、もしそこに少しギャップがあっても、数学の学生だったりすると何とかなるというか、数学だからこそ、ちょっと違う専門の分野でも対応できたりして、自分が例えば最適化の専門だけれども、課題は最適化ではなくてどっちかというと制御だとかなったとしても、そこがアダプトできて、三箇月から半年間という時間をもらえれば結構いい成果を出したりします。そこはやっぱり数学の強みかなという気はしています。
 あとは、インターンシップで来たときは、ほかのエンジニアとかは、彼は数学者だと見るので、彼の専門性というより、あいつは数学ができるのだと思っていて、何の分野でも聞いてしまう。結構、インターン生が頑張ってそれに答えて、結構、数学の質問をされて、そこでいろいろ教えてあげたりとか、そういう効果もあるので、すごくいい。そういう意味で、そういうのにいろいろ対応できるというのが数学の1つのメリットかなという気はしています。

【森本審議官】  SNSを活用した人的ネットワークというお話がありました。今まで拠点づくりだとか、窓口を置こうとか、そういう議論はあったのですが、どうやってネットワークを作るかということは、セミナー以外の手法で具体的なアイデアが出てきたのは初めてだと思うのですけれども、これはどういうふうにオーガナイズしていくのが望ましいのでしょうか。深い意見交換を行う場が必要なのか、それともきっかけづくりが大事なのか。

【穴井主管研究員】  今、試行錯誤的にいろいろやっているのですが、まずはやはりきっかけづくりの場とか、いろいろな段階の場があって、それが同時並行的になっているようなイメージで今運営をしています。今一番活発なのは、ある種、最適化のツールがプラットフォームに乗っているんだけれども、それをどう使ったらいいかとかいうノウハウの共有のところが非常に活発で、もっと深い数学のところというのは社内ではなかなかないので、そういう少しレベル感とか、例えば適応先分野とか、何かそういう違うグループをうまく分けてオーガナイズしていかなければいけなくて、そうすると各グループをどう誰がオーガナイズするかとか、そこら辺をうまく仕組みを考えていかないといけないと思っています。

【森本審議官】  なるほど。

【穴井主管研究員】  ただ、そういう場ですと聞きやすいというのはやっぱりあるようで、だから、そこに数学のコアのところがあれば聞きやすいことがある。今、数学の先生に聞きに行くのは敷居が高いけれども、そういうところに聞けるといいとか、そういうのはある感じがします。

【森本審議官】  基本的にはこれは匿名を前提にしているのでしょうか。

【穴井主管研究員】  今、社内でやっているのは、全部社内なのでちゃんと個人に、自分が出してやっています。

【森本研究振興局審議官】  そうですか。

【太田基礎研究振興分析官】  プラットフォーム化が重要というお話でしたが、今までのところ、プラットフォームというか、数理的なソフトはほとんどメイド・イン・USAとかカナダで、日本製が少ないと言われていて、その問題点というのはどこにあるとお考えですか。

【穴井主管研究員】  確かに日本製、例えばプラットフォーム、MATLABとか、ああいうのもそうですし、そういう最適化の複合ツールなどもやっぱり日本製では確かにないですけれども、ただ、各数学のそれぞれの分野の専門的なツールというのは、結構、日本でも作られているのがあって、そういうのを統合するとか、デファクトになっているようなものというのは非常に少ないというのが認識ですね。だから、そういう意味で、そういったものを今から作るのかというところは非常に議論があって、例えば会社の判断としては、既存のものをうまく作る。
 例えばフリーで流れているオープンソースのソフトウェアとか、商用のものもプラットフォームとして何かうまく組み合わせて使えるような環境を提供して、価値、もうけの源泉というのは、それを我々は使いこなせるんだよとか、それをクラウド上でこうやって使えるようにできるんだよということが会社としては意識があって、だから、会社の中にいると個々の優れたソフトウェアとかを作るというのは、そんなに事業的には余り強調されないですけれども、我々自身は自分たちのやつをやっていたりします。日本製があるかないかという議論に関しては確かに少ないので、本当はそういった日本から発信できるようなものがあれば、すごくいいなとは思っているのですけれども。

【若山主査】  どうもありがとうございました。
 先ほどの粟辻さんのインターンシップにおいて問題を切り出すという話ですけれども、九州大学で七、八年前からやっています博士課程の長期インターンシップにしましても、受け入れていただくときに相当マッチングの時間をかけています。最初にぴたっと専門が合っている場合には余りどうってことはないのですけれども、そうでなければかなり時間をかけて学生の興味、それから、会社側も誰をメンターというか、実際に一緒に研究および研究指導してくださる方ですけれども、誰をあてるかということまで随分と御苦労をおかけしているような気がします。もちろん宿題も出て、これを来るまでに読んでおきなさいという、そんなこともあります。以上、補足いたします。
 ほかにございませんでしょうか。山本先生の国際交流のことに関しても、何かもし情報等がございましたら、お話しいただければと思いますが、いかがでしょう。

【粟辻融合領域研究推進官】  さっきの山本先生の国際交流の話の中で、例えば産業界とか異分野連携とかいったところで、国際交流の効果の一つとして取りこぼしがないという話をされたと思うんですけれども、何か具体例がありましたら。

【山本教授】  穴井先生の例で、産業側からは数学の中だけの分類での専門分野と違う分類で質問とかが来るわけです。一方数学者は数学独自の論理で働きますので、日本のアカデミア側の分類で、例えば私の専門分野の解析学だけでやっていくと産業界からの要請に即応できないんですね。なので、そこで国際交流の部分があると、インターフェースが多様になるんです。だから、問題解決のためのいろいろな引き出しが増えるということなのですけれども、問題解決のための方策が非常に多様になるということがまずあります。
 それと、例えばアメリカでその問題というのはよくやられているんだけれども、日本では余り知っている人が少ないかなということもあったりするわけです。逆の場合もあると思うのですけれども、その意味で例えば産業界からの課題を解決する際に方法や知識の取りこぼしをなくして、最善かつなるべく最強の人間とかをそろえることができるのではないかということであります。先ほどの穴井先生のお話とかなり関連していると思うんですけれども。すみません、これがお答えになっているかどうか。

【粟辻融合領域研究推進官】  例えばそれに応じて外国の数学の研究者などを紹介できるというようなイメージですか。

【山本教授】  ええ、そうです。問題に応じて、例えばドイツから一人、アメリカから一人という感じにして、結構、外人部隊みたいなのを作ったりすることもあります。

【粟辻融合領域研究推進官】  それは企業から見るとすごく魅力的に映るわけですか。

【山本教授】  ええ。多分、いろいろな物の見方ができると思うんです。地域性がないと申し上げましたけれども、国などによって特色ある学派というのがありますので、その特有の思考形式というのが何となくあるんですけれども、一応、そういういろいろなところとやっていると、いろいろな見方とか手法も多様になるので、うまく答えられるのではないか。それで、先ほどの穴井先生のでも多分あったと思うのですけれども、産学連携だとスピードが大事なので、そこの辺のところも克服できる可能性が十分あるわけですね。

【安生委員】  海外との研究を企業と直接やる場合、山本先生をはじめとしてアカデミックの方々は論文というのが一番大事なことで、企業ですと。

 

【山本教授】  違いますよね。

【安生委員】  その前の段階に特許を出しましょうとか、その辺のやりくりというのはどのようにうまく進められていますか?

【山本教授】  ですから、その場その場やりくりをしていきます。

【安生委員】  まあ、そのスピード感が重要ですしね。

【山本教授】  言ってしまうと、二つうまくいかないと回っていかないんですね。だから、例えば海外の方がいらして産業数学、例えばスタディーグループで中心的になってやってもらう場合もあるんですけれども、産業界の課題を解いたという成果ではなく何か論文につながるような成果をそこの研究者と共同研究をして、やっぱりそこでの特色があって来てよかったと、研究面でも感じてくれることが重要と思います。このような面もないと長続きしないですよね。だから、現実的な問題解決と数学研究の両方こちらでは準備する必要がある。むしろ、やっぱり産学連携の国際交流に関して言うと、単なる助っ人(すけっと)のように海外から研究者が参加するだけでなく、一緒に論文を書くという純然たる数学の共同研究もがあるのが強いかなという気もしますけれども、でも、基本的に両方あればそれにこしたことはありません。
 私の場合ですと、私のところの共同研究者ですと3通りあります。論文だけ、産学連携ゼロ。産学連携だけ、論文ほぼゼロみたいな、両方というのはなかなか難しいんですけれども、でも、何か両方目指さないと、多分、向こうにとっても魅力がないのではないかと思うんです。そこをうまく満足させるような環境を作るという、何かありますね。

【若山主査】  どうもありがとうございました。
 ほかにございませんでしょうか。それでは、お二人の先生方、ありがとうございました。ただ、もし、いつも来ていただいた先生方には申し上げるんですけれども、お時間がございましたら、お座りいただければと思います。

【山本教授】  傍聴させていただきます。

【若山主査】  ええ。御意見を求めることもあるかもしれません。よろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2011)の結果について、初等中等教育局の田村学力調査企画官に御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○田村学力調査企画官より、資料4について説明があった。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 「勉強は楽しい」からほかの項目まで国際平均よりいずれもかなり下回っているのにも関わらずハードに勉強しているのか、成績の方はこうなっていますが、こういう「勉強は楽しい」とか、「勉強が好きだ」とか、「数学、理科を使うことが含まれる職業につきたい」とか、将来のことですね。そういうのが高い国というのは、どういった国なのでしょうか。

【田村学力調査企画官】  実は、この関係についてはアジア系の国、特に成績が良かった韓国や台湾や、日本の上位にある国もあるんですけれども、そういった数値はいずれも余り良くはないです。日本の方が更に良くないのですけれども、どちらかというとヨーロッパだったり、「数学、理科を使うことが含まれる職業につきたい」というのはアフリカとなど成績は下位だけれども、そういう希望だけは持っているというのが強く出ている。成績とは逆相関みたいな形で出てきているところがございます。

【若山主査】  そうですか。分かりました。ほかに御質問等、よろしくお願いいたします。

【北川委員】  コホート分析というのがあるのですが、要するにこういう時代ごとに、年齢ごとにとったデータの場合ですと、それを年齢の効果と世代の効果と現在の時代の効果に分けて、なぜかというと4年前に小学校の何年生かだった人は4年後の現在には上に上がっているわけですね。だから、そのグループというのはある時点にある教育を受けた人がそのまま来ていて、いろいろな政策をやったりしたときに、今の影響なのか、あるときにそういう影響を引っ張ってきているグループかというのがあるわけですが、そこを分離できるので、その辺の方法で考えてみられると面白いかなと。

【田村学力調査企画官】  御指摘のとおり、これは小4と中2を調査しているというもので、小4で受けた世代が4年ごとに調査をやっていますので、中2で、抽出調査ですのでぴったりは一致しないんですけれども、世代としては一致しているということで効果を見ることができるのではないかという形でやっております。今回、小学校の成績が上がっていますので、この世代が4年後に受けたときにはどうかというところを、我々としてもきちんと見ていきたいと思っています。

【若山主査】  「私の先生の授業は分かりやすい」というところは、これは小学校だったら小学校、中学校だったら中学校の先生のことを聞かれているんですか。塾の先生とかも含めているのでしょうか。

【田村学力調査企画官】  これは学校の先生です。自分の受けている先生の授業はどうかという形で聞いています。

【若山主査】  分かりました。塾も結構、公教育と言っていいところもあると思いますので、ちょっとそんなことを思いました。
 ほかに何かございませんでしょうか。これは近年ちょっと持ち直したというのは、何か理由があるのですか。

【田村学力調査企画官】  御案内かもしれませんけれども、実は算数とか理科、きちんと思考力を高めるためには授業時数が少し不足しているのではないかという御指摘もありましたので、平成23年度から小学校の学習指導要領が新しいものに変わっているんですけれども、算数と理科については先行して平成21年度から先に実施しておりまして、ちょうどこの小学校4年生のTIMSS2011を受けた世代ですと、3年生、4年生とその新しい先行実施の学習指導要領で授業を受けた世代ということで、その効果も多少出てきているのではないのかなと思っているところでございます。
 それだったら、じゃあ、どうして中学生の方がというような、あるかもしれませんけれども、中学生は中1、中2のときは新しい学習指導要領が先行実施に入っているんですけれども、小学校時代は旧指導要領の体系で受けている。内容も難しくなる中で、小学校時代に残念ながらきちんと理解できないままに上がってきた生徒には、まだそこまで効果が出ていないのかなと。そういった意味でも、今回、よかった小4年がさらに続けて中1、中2も受けて、次のときにどうなっているかというのが一番注目されるところなのかなと思っているところでございます。

【若山主査】  では、上のシンガポールとか韓国とか、時間数は比較的多い。

【田村学力調査企画官】  ええ。特にシンガポールなどは小学校5年生、6年生から徹底して習熟度指導を全部に取り入れておりまして、できるところにはどんどん専門の先生をつけて教えているというようなところがございます。日本の場合も理科とかは少しずつ専科教員を入れているのですけれども、数学、国語とかは普通の同じ先生でやっていますので、そういったところの徹底度の違いとかも出ているかなと思います。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 ほかにございませんでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。それでは、次に参りたいと思います。本日、御発表いただきました内容、それから、以前のことも踏まえて、次期の数学イノベーション委員会における検討事項についての議論にこれから入りたいと思います。事務局より資料の説明をお願いいたします。

○粟辻融合領域推進官より、資料5について説明があった。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 今日のこの重点研究テーマごとというところは、今、統計数理研究所が中心になってされている委託事業に深く関わっているというものであります。さて、御存じのとおり、今回が今期最後の委員会ですので、今後、必要な方策について御意見を頂戴したい、意見交換をしたいと考えているわけですけれども、今日は、たっぷりとは申しませんけれども、少し時間を設けておりますので、委員の先生方から一言ずつ御意見を頂いて、この今の1枚のペーパーに限らなくても結構ですので、御意見を頂戴して、その後、残った時間で意見交換をしてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、委員からということで、宮岡先生から。

【宮岡委員】  今までいろいろ議論してきたわけですが、交流を盛んにするためには数学会などの機会を使って、ほかの分野の方との交流の機会を増やしていかなければいけないのではないかと思っております。相手はたくさんあるので、すぐに全部というわけにもちろんいきませんが、少しずついろいろな分野から慎重に選んで、学会の折の、例えば今、応用数理学会を招いてやっていますが、そのほかにもそういうものを1年間に一つぐらいやってみたらどうかなと考えております。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 学会等との意見交換のときにもそういう話が随分と各学会等出ましたし、数学会の中だけではなくて出ていくとか、いろいろあるかと考えていますが、よろしくお願いいたします。それでは、西浦先生。

【西浦委員】  私自身はJSTの数学領域が今走っている途中で、今ちょうど真ん中、5年を超えた段階です。私の方としては、具体的にこの連携というのをやっている研究者が、特に今後3年間、CRESTの方で走っていて、CRESTの実は制度改革も含めて、どういうふうにやっていくのがいいのかということをこれから少し整理していきたい。具体的な何が問題で、どういうふうにやればうまくいくのかという、そのある種のリストアップを問題点とともに、この委員会で御紹介して、やっていきたいと思います。
 実際、前回の委員会でさきがけの人たち、あるいは現在CRESTをやっている水藤さん、坂上さん、田中さんのインタビューがあったと思うんですけれども、それをもし出席された方がおられましたら、具体的な現場での問題点というのが出てきているわけです。その点は私の方で、前回の3名以外、全員を含めた、さきがけ、CRESTの人たちから上がってきた問題をもう少し、これまでの委員会の議論よりは深めた形でいろいろ御議論願えればうれしいなと今後に向けて考えております。

【若山主査】  どうもありがとうございます。先生が中心になっておられたJSTのさきがけ、CREST、非常に大きな影響を与えていると思っているのですけれども、それでも社会全体にというところまで行っていないことも一方で事実ですので、しかし、貴重な大きな芽がより発展できるために、先生がおっしゃるようにしていかないといけないのだと思います。それでは、後で意見交換ということで、中川委員から。

【中川委員】  1年半ぐらい、ずっとこの辺の方策については議論をしてまいりましたので、次は多分、これを具体的な、いわゆる問題解決の作業というものを見せていく時期かなと私自身は思っています。今、数学のニーズのマッチングという話もありましたけれども、ニーズは恐らく山ほどあると思います。だから、そのニーズといっても、数学が生かせるようなニーズという意味では、多分、ほかの分野の問題、恐らくその辺の未解決問題を自らがコミットメントしてやりますというのは、まず必要かなと思います。その上、多分、いろいろな数学が必要だと思いますので、それでメンバーを集めながら結果を見せていくというふうな具体的にその成果を見せるということを、こういうふうな場も含めて示していくという、そういう仕組みが要るのかなと個人的には思っています。

【若山主査】  どうもありがとうございます。個人的ということですけれども、会社の方も、中川さん、これに参画してくださることに、ある程度ポジティブでいらっしゃると思うんですけれども。

【中川委員】  私が個人的と申しましたのは、多分、企業のメンバーの場合は二つあって、一つは会社関係の仕事、これは守秘義務がありますので、恐らくほとんど言えないと思うんですね。公開できるのは多分、10年前のデータです。だけど、もう一つは、例えば私が今参加しております、東京大学の合原先生のプロジェクト、ああいうものはオープンにできますので、オープンで工学の未解決問題を数学などを使いながら出していくという意味で、そういうふうな場を活用しながら、そういう成果をうまく数学というか、いろいろな数学の先生方のお知恵を巻き込みながら、これで問題解決して実際的に社会のその辺のイノベーションにどういうふうにつながったということを見せていくということは非常に大事かなと思います。

【若山主査】  どうもありがとうございます。それでは、次に杉原先生、お願いします。

【杉原委員】  今、中川先生がおっしゃったみたいな具体的なフェーズの部分と、その発信の部分というふうに横に広がっていく部分、両方必要かと思いますので、私は応用数理学会が割と今中心になってやっていますけれども、応用数理学会では例えば何とかワーキング若しくは個別の分科会みたいなものをたくさん作っていて、例えば数理学などは多分、CRESTにお世話になっている鈴木先生とか、そんなのが入っていたりしますし、だから、逆に言うと数学会で見える化することが一つ重要かと思うんですね。非常に人がたくさんいらして、そこに見える化することによって数学の人たちにアピールする。ここでやっているのは事実ですけれども、数学会に出ている若い人が知っているかというと、それは必ずしも知らないのではないかと思うんですね。
 いろいろなことで努力されていますけれども、なので、そういうワーキングでもいいですけれども、何か分野ごとにそういうのを一つ作ってそこで何か定期的な発表をしてアピールするとか、そういうような組織的な数学会を少し変えていくというふうなことをすることによって、若い人にアピールできるのではないか。そういうチャンスがあれば非常にいいと思います。それが一つです。
 それからもう一つは、多分、今、穴井様とか中川様、企業の中で非常によくアクティブに動いていらっしゃる方々がいらっしゃるのですけれども、そこの連携をする部分があってもいいのではないかと思っています。今、たまたまアクティブに動いている方の一部が出ていらっしゃると思うのですが、各企業でもある程度悩んでいる方もいらっしゃるし、そういう方向でやりたいと思っている方もいらっしゃるので、そのネットワークをうまく作れないかと思っています。それによって話せる分は話せる、話せない部分は話せないと思いますけれども、共有化することによって問題解決する部分が出てくると思います。なので、そういうようなことでもって企業の方のネットワークも作る。大学関係のネットワークもうまく構築していくということで、あとは中川先生がおっしゃったように具体的なフェーズで何かうまい事例をたくさん蓄積していくということによって発信していくというふうになると思います。以上です。

【若山主査】  どうもありがとうございます。
 発信という面で言えば、今、先ほどの統数研がお受けになって努力している委託事業の方もありますけれども、これまで2年間文科省のワークショップというのがありまして、それはなかなか、先ほど山本先生のお話でもありましたけれども、ある小さな大学にも優れた研究者がいると国際的に興味を持って人が来るという、そういうのが数学の特性みたいなところがあります。
 ただ、大学を取り巻く環境が非常に厳しいですので、数学を取り巻く環境もここでは数学型、数理科学が大事であるということは共有されているわけですけれども、必ずしもそれが1番目に挙がっているわけではありませんので、そんな意味でワークショップをお続けいただくとやはり数学、数理科学が何やるものぞというふうなところが、その大学の中でも分かりますし、非常に貴重な活動になっていると思います。そういう意味では、杉原先生がおっしゃった見える化と少し違うかもしれませんけれども、一つの大きな活動だと思いますので、是非お続けいただきたいなと思っているところです。それでは、北川先生、お願いします。

【北川委員】  今期の活動の結果、例えば問題発掘とか、そういう点に関しては組織的にできるような形になってきたと思います。それで、是非これを進めて更に問題解決に至るような形に発展させていただければと思います。そういう意味では、現在の活動、予算、統数研で代表でやっているもの、年間1,900万ぐらいですけれども、そこはやっぱり一桁以上上げていただかないと実際の活動には難しい。発展させていくのは難しいのではないかと思います。
 その際にやはり気をつけないといけないのは、1で書かれている丸が二つありますけれども、重要分野ごとの活動、これはもちろん大事ですが、特に数理科学の場合は横糸の部分が重要で、上の方、予算獲得の方に進んでいったときに、しばしばそちらの方が消えていくということがあります。個人的には例えばサービスサイエンスというのを一時やっていましたが、だんだん、最初はサービス科学の共通的な方法が確立していないので、そこが大事だということを言っていくのだけれども、最後、いよいよになると出口のところが大事で、もちろんそれだけいいんだけれども、最後にそれだけになりがちなんですね。そうするとやっぱり、本来の目的が達成できないので、そこは是非意識してやっていただきたいと思います。
 それで、基礎数学というのは、これは余り予算要求したりするときは言えないことですけれども、やっぱりプロジェクトを10やったら三つぐらい成功すればいいという立場で、私、個人的にはやっぱり10やって10成功するというのは最初から計画が甘過ぎたのだと思うんですね。だから、非常にたくさんチャレンジして、三つぐらいは駄目だったけれども、三つぐらいは大成功で、そのほかはまあまあというぐらいの、そのくらいで大きなものを全体としては狙う。もちろん、個々のやつは全力を出してもらわないといけないけれども、それをうまく許すような体制にしていただければと思います。
 それから、2に関連しては、連携を推進する具体的体制や方策ということで、これまではやっぱり特に諸科学とか、産業への応用というのを考えたときに個別の研究組織で対応するのは無理だから、こういう問題に関してはネットワーク型、ネットワークを形成することを考えていくべきだという流れになっていたと思います。この場で言うのが適当かどうか分かりませんけれども、一方で共同利用認定という動きがあって、そうなってくると個別に申請しないといけないという状況になっているかと思います。これがこの委員会が考えてきたことを来期、今後実現していくときに、いい方に働くかどうかというのは非常に疑問で、個人的にはかえってせっかく連携して全体で産業とか、諸科学に対応するシステムというのを考えてきたわけですけれども、そこにマイナスに働くのではないかということを危惧しております。その辺もできれば検討していただければと思っております。以上です。

【若山主査】  どうもありがとうございました。

【杉原委員】  連携では申請できないんですか。つまり、二つの、今、IMIが申請されているものと。

【北川委員】  いや、もちろんできるわけで、個人的には当然そうなると思っていたのですが、今は違うということで、それはいいのかなというのは非常に危惧しております。

【若山主査】  私は今ここで主査をしていますし、ここで補足説明すべきかどうか分かりませんけれども、二つほどありますが、一つにはこのイノベーション委員会、当初からやはり各大学ができることは、とにかく精一杯やっていただくということで、その上で、それではとても足りない。この「数学イノベーション戦略」を進めるに当たって、そこをやはりネットワークを作ってやっていくという、個人も機関もそうですけれども、そうやって膨らませていこう、豊かにしていこうという、そういう考えでやってきたつもりであります。
 それからもう一つは、例えば先ほど杉原先生の企業間のネットワークということもございますが、文科省学術機関課の方でお進めになっているのは、学術の発展のためにということが非常に第一義的にございまして、私たちの研究所も研究所を開いてから、組織名というのがありますので、産業界からの共同研究の申入れが増えております。しかし、それはもちろん守秘義務を持ったもので、知財に関して非常にデリケートなことを抱えたものであります。それは学術機関課でされている共同利用というのとはまた違うものであります。しかし、一方で、そういう守秘義務も伴う、そしてその後のアウトプットは、今日、山本先生のお話もありましたけれども、いろいろあります。
 産業的なことのアウトプットだけで論文がないという場合もあれば、両方あってというのが一番いいのでしょうけれども、論文だけというのはあると思うのですけれども、そういうことを全体を含めてやっていきたい、進めていきたいというのがこのイノベーション戦略での根底の考えにあると思います。そんなふうなことで、これまで進めていっておりましたし、これが北川先生が御心配になっておられるマイナス面に働くというふうなことは、少し考えにくいのかなと思っている次第です。先生からこのような御指摘を受けましたので、立場もわきまえてか、わきまえていないか分かりませんが、発言をさせていただきましたが、ひとまず、委員会を継続させていただきたいと思います。

【北川委員】  少しよろしいですか。

【若山主査】  はい。

【北川委員】  マイナスのおそれはほとんどないという御指摘ですけれども、本来、いろいろな機関、個人的には連携で出すということを頭に置いたいたかと思うのですけれども、一つの機関が応用という形で出してしまうと、ほかが同じような認定を受けることは非常に困難だと思います。その辺はいかがなのでしょうか。
 それと、やはり共同利用認定というのはコミュニティの合意の下で進めていくのがベストで、そうあるべきだと思うのですけれども、この委員会の委員でもどう考えられているか、私だけが誤解していたのかもしれませんけれども、中間報告などではネットワークを形成すべきであるという、単独では無理だという形で書いてきたと思うのですが、それと違う形で動いていくというのは、やっぱり問題があるのではないかと考えています。

【若山主査】  時間があれば私の方で考えを御紹介したいと思いますが、まずは安生さん、お願いします。

【安生委員】  私はこのイノベーション委員会に産業側から参加させていただいていますが、先生方からいろいろお話が出ましたので、私からは追加というか、少しだけ気になる点をお話しします。2番と3番ですが、要はこれから具体化をして数学を活用してくという実際のプランはもちろん、具体的な体制や方策とその評価が当然必要です。評価といっても点数を付けたいからやるべきだという意味ではなくて、長く継続していくために、「ああいうことをやったらこれだけの評価を得ましたので、引き続きやりましょう」となるための評価という意味なのですけれども。
 ただ、こういうことは時間がかかることです。押し広げて言いますと、ここにはいろいろ産業界の連携促進と書いてあり、先ほどTIMSS2011の結果のお話などもありましたが、子どもたちにとっても面白い魅力のある数学というものを産業の中で使っているとか、数学の中で発展しているなど、いろいろな人に伝えるべき情報発信、つまり3番にある情報発信やアウトリーチ的なもの、かなり底辺のところからも必要になってくると思います。
 ただ、情報発信やアウトリーチ活動の本当の結果が出るまでには10年以上かかることかもしれません。当面の進め方としてはやはり今、数学系の大学、数理系の大学院の人が、それぞれ就職された産業側の人との連携や実績を膨らませていくということから始まると思います。できれば方策として、評価を積み重ね、継続するという仕組みまで、ある程度は考えなければいけないかなと思いました。産業側の方でも共通の認識をもっていく必要がありますので、心理的な面かもしれませんけれども、方策と情報発信は結構見逃せないファクターかなと思いました。

【若山主査】  どうもありがとうございました。
 安生さん、以前から機会があるごとに情報発信のことについてもおっしゃってくださっていまして、アウトリーチ活動というか、どれの一つも箇条書にしますと独立して見えかねないですけれども、全部が関係しているということは恐らく間違いなく進められていく、関係していくことは間違いございませんし、それを考慮しながら進めていくことが必要だと思っています。これまでに議論をしてきた。次期は具体的にもっと本当に手に取るものを作るのだということは皆様の御意見、一致しているかと思います。今回、ほぼ毎回ですけれども、今日の小中学校の学力ということはともかくとしまして、人材育成、それから、教育ですね。大学の学部の教育まで踏み込んだことも少し、踏み込みそうになったこともございましたけれども、そこについては教育の問題、非常に難しいことがありまして、割と時間的に避けてきたというところはあります。
 しかしながら、研究の進展というのは研究人材の育成も含め、それから、必ずしも数理科学をメインに活躍される方でなくても、重要なポイントになっている。そういう方がいらっしゃると、先ほどの穴井先生の富士通での話もありますけれども、チュートリアル的なことをやれば多くの方が時間を作って集まられるということもございます。そういう人材育成、それから、教育というのはどうしてもイノベーションにとって重大な問題であると思っておりますので、次回のイノベーション委員会については、そういうことも話題にしていきたい。ここは文部科学省ということでありますし、そこは非常に大事な問題であると認識しています。難し過ぎるかもしれないんですけれども、数学・数理科学の方から光を当ててやっていければと考えている次第です。

【杉原委員】  すみません、その件で。

【若山主査】  はい。どうぞ。

【杉原委員】  日本学術会議の方で数理科学の学部教育の参照基準とかいう委員会があって、そこで実はもう草案ができています。北川先生もこの前、シンポジウムに出られたんですけれども、多分、それも何かちょっと見ていただく必要があるかと思います。既にそういう基準を作るみたいな話が進んでいるということです。

【若山主査】  ありがとうございます。まず、委員の方だけに少し御意見を伺ったのですけれども、もし何かございましたら、オブザーバーの先生方も、御発言がございましたらお願いしたいと思います。三村先生。

【三村所長】  僕はまだこれ、2回しか出ていないので、むしろ意見というよりも期待という形で考えているのは、数学・数理科学というのがこれからどう発展していくのかということと同時に、どれだけ社会に貢献できるのか。そういうことがこれからの我々、僕個人的にもそうですけれども、この委員会の一つの方向性だと思うんですね。だから、そのためにいろいろな方がここに出てきていらっしゃっているので、そういう意味では新しい知見というものを是非出してほしい。だから、願っている意見ですけれども、そう思っています。

【若山主査】  どうもありがとうございます。井出先生。

【井出部長】  私も余り全ての活動を把握しているわけではないんですけれども、私からコメントをするとしたら、例えば重点的に取り組むべき課題ということに関しては、多分、これはこの数学イノベーション委員会というものができた背景だったと思うんですけれども、日本が勝てる分野というんでしょうか、何かやれる分野を選ぶということももちろん重要なのだと思いますけれども、日本が勝ち切れる分野を戦略的に選ぶというような発想も一つあっていいのかなと思います。私みたいな外資系の会社に勤めている人間がこんなことを言うのもあれなのですけれども、日本、数学のレベルが高いというのは非常に誇るべきことですし、それを戦略的に活用するということですよね。そこはやっぱり非常に可能性がある分野だと思うんですね。今、日本の地盤沈下が非常に言われているんですけれども、勝ちたい、勝ち切りたいということがあります。
 そこで、やはり数学者側、さっき、モデリングは誰がやるかということのお話があったと思うんですけれども、数学者側も現場の問題に興味を持つような何か仕組み、これは2点目に関係すると思うんですけれども、そういうことがあったらいいなと。いい問題をくれたら俺が解いてやるというのではなくて、問題を作るというような発想で何かコラボレーションできるような仕組みが作れたらなと思います。

【若山主査】  どうもありがとうございます。

【穴井主管研究員】  今言われたように確かに現場の方としゃべるというのは企業だからこそあって、その中で得られるものもあります。特に応用数学というか、例えば僕も計算代数ということをやって、代数の計算なんですけれども、数学のオブジェクトではなくて、それをどういう方向に持っていくと社会に貢献するかみたいなもののヒントがもらえることがある。そういう意味では、そういったところに興味を持ってもらうというのは非常に重要かなと。
 あとは、例えば企業でアクティブに数学をやろうとしているネットワークというのは非常に魅力的だし、そういうコミュニティは大事だなと思うんですけれども、前向きに考えたいけれども、実際、守秘義務とかいろいろなところがあるので、うまい仕組みを考えるのは必要かなと。今ここにもアイ・ビー・エムさん等いらっしゃるので、こういうところからそういうコミュニティみたいなのを企業の中でもできるとすごくいいのかなというのは思っています。

【若山主査】  どうもありがとうございます。事務局の方から何かございますでしょうか。

【安藤基礎研究振興課長】  先ほどもお話がありましたけれども、学会の先生方ともこのイノベーション委員会の先生方との間でいろいろ意見交換もする場も作らせていただいて、いろいろな課題も、あるいはニーズというものも少しずつですけれども、見えてきています。その中で話を聞くと、情報共有、コミュニケーションをもう少し深めていった方がいいという話ですとか、具体的な問題設定というものがあると、もう少し議論が深まるのではないかという話もございます。
 それから、もっと若い人を巻き込んで議論をしていくような場を作っていくのが大事ではないかという、そんなところが非常に特徴的ではないかなと感じておりまして、今、統数研でワークショップを開催して、いろいろな機会を提供するというところを進めてきつつありますけれども、そういった分野間、学会間の連携、あるいは若い方をいろいろ入れて、いろいろ具体的な課題を作り上げるというような、そんな体制づくりに向けて今やっている事業も最大限活用していけたらいいなと思っておりますので、また具体的な方法論については次期の委員会の方でも御議論いただきたいと思っておりますので、是非そういったものを出していただいて、それを受けとめてこれから行っていく事業の中でうまく生かしたり、次の取組、施策につなげていくということを考えていけたらと思っております。

【若山主査】  どうもありがとうございました。
先ほど北川先生の御意見もございまして、御返答申し上げましたけれども、その上での御発言がございました。それについてほんの少しだけ時間を頂いて、考えを述べさせていただきたいと思います。
 まず、御存じのとおり、文部科学省の学術機関課がやっております共同利用に関する制度ですけれども、それは今、6年間というのを基本にしまして、今期、こういう募集があるかどうかも実は直前まで分かりませんでした。実は私たちは1年半、IMIを作ったときから学術機関課と御相談し、そして各機関とのすみ分けについての御意見を頂戴いたしまして、京都大学の森先生もその中で学術機関課とお話になってまいりました。その活動、IMIはそういうことがあれば、アプライしようということは北川先生も当初より御存じだったと思います。最初、学術機関課としましては、例えば今できている京大数理解析研と、それとの連携に拡大していってはどうかとか、そういう御意見もちょうだいしました。今回は単独でアプライするということにいたしたわけですけれども、中期目標の真ん中にありますので、実は6年間というふうに定められているわけではなくて、場合によれば3年後、2年後というか、そのときに改めて申請し直すということになるのかもしれない。そこのところはまだ明確には伺っておりません。
 さて、そのときにネットワークといったときに、根本にある考え方は、できることはやっていく、どんなことでも、どこかあれば、一つのところが最適化極大になれば、全体が最適化されて大きくなるというふうに理論的に考えているわけではございませんけれども、基本的に大学の活動としてやれることはやっていくという、その上でそれが先ほどの学術機関課からも言われましたように、その後でこの法律下で連携ネットワークに変更していくというふうなことは、申請の機会にはできることだというふうに考えてまいりました。それについては割と積極的に考えてまいったわけであります。
 それともう一つは、ネットワークを作るといったときに、上からネットワークが作れるわけではありませんので、そういう意味で来期のこの委員会でも、ネットワークの、もう既にかなりの活動をされているところもあるわけですけれども、芽を具体的に育てるという方策というのを考えていく必要があると思います。これは委員会でやっておりますことは概算要求に反映することでして、また、例えば今、大学の状況で言いますと、人を割いていろいろな新しい連携の枠組みを作るということは、なかなかそういう意思をお持ちの先生方、グループがあっても難しい時代であります。
 その中でやはりこの数学イノベーション委員会での戦略での概算要求等が将来的により見込めるようになれば、それをやはり幾つかの積極的なところの芽を育てる形にして、それを本当に連携のネットワークの――まあ、サイズが違いますから、どういう在り方がいいかというのも次の委員会での議論だと思うのですけれども、そんなふうに構築していくということが非常に具体的な形が取れていいのではないかと思っているわけです。
 うまく御説明できたかどうか分かりませんけれども、そういうことが今後できていくという意味で、今後していくべきだという意味で、私はマイナス面に働くわけではないというふうに考えてきた次第です。もちろん、異なる御意見があるということは承知いたしましたし、そこも含め、今後、三村先生もおっしゃってくださいましたように、やはり数学・数理科学の社会への貢献、学術を通しての貢献、直接的な貢献も含めてどうやってやっていくかということを議論していく場であると認識している次第です。最後に私がたくさんしゃべってしまいまして、申し訳ございません。
 さて、今日は吉田研究振興局長にもお見えいただいております。是非御挨拶をお願いしたいと思います。

【吉田研究振興局長】  この数学イノベーション委員会は、今期の科学技術・学術審議会の先端基盤部会の方に作らせていただきまして、正に数学を用いて科学的、社会的な課題にどういうふうに切り込めるかという新しい視点から、2年間にわたりまして御審議いただき、中間まとめもおまとめいただいき、大きな成果が上がったのだろうと思っております。ただ、まだそこまででございますので、先ほどいろいろな御意見がありましたように、これから実際の作業や、見える化、いろいろなキーワードも頂きましたけれども、それを更に具体的な施策としてどういうふうに練り上げていくかという段階になってこようかと思います。
 予算的には先ほどそんな大きな枠ではないとおっしゃいましたけれども、まさにそれはこれから数学を用いてどういうことが生まれるのだということの具体的な提案が出てくれば、それに応じてまた予算の方も変わってくるだろうと思いますので、引き続き、次期におきましても、この数学イノベーション委員会で更に検討を深めさせていただければと思っております。
 先ほど、北川先生と若山主査の間のやりとりがありましたけれども、いわゆる共同利用拠点の考え方というのが、数学の共同研究を進める体制づくりにマイナスということは、私もないのかなとは思うんですけれども、そういう意味ではまた別の場でその対処をさせていただければと思っております。いずれにしましても、この2年間、委員の皆様方には大変お世話になりました。ありがとうございました。またどうぞ引き続き御指導をお願いしたいと思います。

【若山主査】  どうもありがとうございます。皆様、どうもありがとうございました。それでは、一応、今期の数学イノベーション委員会は、これにて閉会申し上げます。先生方、どうもありがとうございました。

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