数学イノベーション委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成24年1月26日(木曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省17階 研究振興局会議室

3.議題

  1. 諸科学・産業分野において今後必要な数学・数理科学研究について
  2. 数学イノベーションに向けた今後の推進方策について
  3. その他

4.出席者

委員

若山主査、青木委員、安生委員、北川委員、小谷委員、杉原委員、中川委員、宮岡委員

文部科学省

吉田研究振興局長、内丸基礎研究振興課長、太田基礎研究振興分析官、粟辻融合領域研究推進官、竹上基盤研究課課長補佐

5.議事録

【若山主査】  おはようございます。もう1月も終わりになりまして、今更新年の御挨拶になりますが、今年もよろしくお願いいたします。

 定刻となりましたので、第4回の数学イノベーション委員会を開催いたします。御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。

 本日は、大島委員、西浦委員、森委員から、それぞれ御欠席との御連絡を頂いております。

 それでは、本日の議事を始めるに当たり、事務局より配付資料の確認等をさせていただきたいと思います。

【粟辻融合領域研究推進官】  1月に事務局の人事異動がございまして、研究振興局長に吉田が着任いたしております。一言御挨拶申し上げます。

【吉田研究振興局長】  今御案内がありましたけれども、今日は1月26日でございますから、もう20日もたってしまったんですけれども、1月6日付で研究振興局長になりました吉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 この数学イノベーション委員会も今回で4回目ということで、この分野の研究、非常に私は期待しておりまして、今後の議論がどういうふうになるのか非常に関心を持って見つめていきたいと思っておりますので、どうぞ先生方にはよろしくお願いしたいと思います。

○粟辻融合領域研究推進官より、配付資料の確認があった。

【若山主査】  よろしいでしょうか。

 それでは、まず諸先生方に御発表いただくことにいたします。本日は議題が盛りだくさんございまして、少々、10分から20分ぐらい延長することが考えられますけれども、その辺りは問題ないでしょうか、皆様。

 それでは、一応ちょっと覚悟いただいて、始めたいと思います。

 まず議題1ですけれども、前回までに、諸科学分野における先生方に、各分野で必要となる数学・数理科学研究などについて御発表いただきまして、御意見を伺ってまいりました。本日は、本委員会の中で数学・数理科学分野以外の方で、産業界、あるいは学術界といいますか、その御意見を伺いたく、青木先生、安生先生、中川先生に御発表をお願いしております。

 また、大島まり先生は御欠席ですけれども、原稿を頂いておりますので、後ほど事務局から紹介させていただきたいと思います。

 それでは、それぞれ10分程度でお話しいただけると有り難いと存じます。

 では、まず青木先生からお願いいたします。

【青木委員】  ありがとうございます。

 一橋大学経済研究所の青木です。今日は、私は経済学者ですので、経済学の視点からということで、数学イノベーションについて、どんな問題に挑戦できるであろうかということと、それの障害となる問題と解決案というのを、ちょっと話をさせていただきます。

 まず、数学・数理科学を活用して解決が期待できるような課題研究テーマとして、どのようなものがあるかというので、知っている経済学者に、非科学的なアンケートというのを試みたんですけれども、まず一人の先生には、経済学の研究も数学なしにはできないと、経済学は応用数学で、全く質問の趣旨が分からないと言われたんですけれども、当たり前ではないかと。それもそうなんですけれども、従来、皆さんも御存じだと思いますけれども、例えば制約付き最適化問題とか、統計学、確率論というのは、経済学でもふんだんに使っていて、経済学と言ってもいいような応用数学であることは、御存じだと思います。

 今日は、ほかに少し聞き回って、どんなことがやられているかというのをリストとして紹介させていただきます。ほかの人のやっている研究なので、大変申し訳ないんですが、私は余り説明できませんので、お手元に名前と所属がありますので、興味がある方は是非調べていただいて、聞いていただきたいと思います。

 このランダムマッチングを貨幣の研究に使うというのは、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所のセミナーでも神谷先生が発表されましたが、経済学で貨幣が一体何であるかというのは、もう永久の問題で、解決はしないんですけれども、最近はランダムマッチングモデルを使って進展が見られると。あと、オプション理論などが金融工学に使われているのは御存じのとおりで、ほかにはゲーム理論を企業行動とか競争政策、法と経済学などへ応用して使っています。

 これから日本で開けると思うのは、周波数オークションを総務省がやると言っていまして、その制度設計にはもちろん、これらの研究が、応用、ゲーム理論の一種なんですけれども、貢献しなければならないと思います。アメリカで実際どうなっているかというと、制度設計をやった後に、今度は入札の段階で、みんなゲーム理論の人を雇うんですね。それが非常に理論経済学者にとってルークラティブな研究方面になっています。そして、日本も今後多くの専門家が参加し、入札戦略を効率的にやることによって、より効率的な周波数の分配というものができるわけですから、その意味で専門家が参入するというのは非常に大事なことだと思います。

 今度は課題別に、今後どんな連携ができるかというのを、幾つかまとめてみました。災害からの復興と安全性の確保というのが一つのテーマでして、一つ言われたのは、地震研究の報告はここでもありましたが、それと経済と連携して、データを連係して、もっと精度の高い経済予測というものができるのではないか、是非やりたいという話を一橋大の同僚から聞きました。それから、リスクマネジメントの視点からは、石村先生のコピュラの――これこそ私、全然知りませんが――研究があって、時間とともに地震なんかはストレスがたまるので、それを時間のコピュラに入れることによって新しいリスクマネジメントが期待できるという話で、これは本当に数学でも先端的な研究が必要となるということを伺っています。

 それから、私個人的に、誰かにやってもらうと良いといつも思っているのは、風評被害のメカニズムです。情報をORなどの手法を使って、経済も取り入れているんですけれども、今度新しく知ったのは、物質の拡散方程式を使って、映画のヒット予測とか選挙の予測をやっているということなんですけれども、考えてみると、風評と流行というのは、情報の伝達機能から言うと、多分メカニズムは同じようなものだと思うんですね。良い場合には「流行」と言うんですけれども、悪い場合には「風評」と呼ぶだけであって、この情報がよく、訳が分からないんだけれども広がっていってしまうというのを解明するというのは、風評については政策的な害が非常に大きいのではないかと思います。

 もう一つ、世界的な問題となっているのは、金融危機とマクロ経済政策ですけれども、このDynamic Stochastic General Equilibrium Modelというのは、ここに書いてあるとおりですが、General Equilibrium Modelと経済で言った場合には、消費者と企業と両方入っていて、市場でインタラクトして、全ての財の市場を考えて分析するモデルのことなんです。もちろん非常に複雑になるので、抽象的に均衡のことを議論するか、シミュレーションによって実際の動向を追うかという、どちらかの手法があるんですけれども、最近は、計算、シミュレーションするのが非常に普及しています。非線形な最適化問題として解くのが望ましいんですけれども、計算量の制約などで、今のところは多くのモデルが線形近似を行っています。もちろん非線形にした場合の方が精度が良くなるので、それを、要は効率的な解法プログラムの開発ができればいいなという話を、マクロ経済学者から聞きました。これはもうモデルがあるわけですから、解法プログラム専門家の方と一緒に、共同事業などができるのではないかと思います。

 それから、金融機関の破綻がその他の金融機関に及ぼす、もうちょっとマーケットをターゲットした分析では、エコノフィジックス、経済物理学というのがもう成立している分野と聞いておりますが、それが日本の経済学者の中でも、だんだんやる人が増えています。ネットワークの分析というのもORの分野で、経済学の分野、両方ともありますけれども、それをエコノフィジックスに取り入れて、金融機関のネットワークの分析というのはそれ自体で普及していますので、それを連動させて、もうちょっとダイナミックな金融機関の破綻、特に連鎖的な影響を分析できないかということを研究されている先生に聞きました。

 実際に、帝国データバンクというのは、企業の信用調査をして、その情報を売っている企業なんですけれども、そこから、渡辺先生たちは、連鎖倒産を考慮したリスクの評価の方法を開発してほしいという依頼を受けたと聞いています。これまでの帝国データバンクの分析というのは、企業一つしか見ていないわけですけれども、他の企業がどうかしたから、この企業の倒産の確率はどうなるかというのを取り入れて、分析してほしいということです。もちろん、そこのところが分かれば景気循環の仕組みなども、より分かるようになります。

 次のページ、金融危機と政策の3は、数学を応用した経済のいろいろな側面の分析の例です。

 最後の課題は、少子高齢化と世代間問題で、私も関係している研究が幾つかあります。今、行われていることはマイクロシミュレーションによる年金の評価でして、今までの年金の評価というのは、例えば典型的な人が何年生きたとして、何年働いたとして、こういう年金制度だと、こういう支払になりますよという評価の仕方をしているんですけれども、実際は年金制度とか税制とか雇用制度が変わることによって、人の行動がどんどん変わっていくんですね。

 このマイクロシミュレーションモデルというのは、地球シミュレーターとか交通マイクロシミュレーションのように、個々の人が、環境が変わることによって毎期毎期行動を変えていくことを考慮して、経済全体の年金の採算を、100年とかそういう単位で計算する方法です。ですから年金の支払を、今年から月何百円上げた場合に、人々の労働の仕方がどう変わるかとか、そういうことを全部考慮したので、是非効率的なプログラミングをもっと開発してほしいという要望があります。所得再分配のような問題も、マルコフ過程などのモデルを使って分析されています。それから、データの細かい分析も必要です。

 最後に選挙制度が書いてあるんですけれども、これは理論数学の方は結構、インフォメーションのアグリゲーションの方法として選挙制度を分析されているんですけれども、これをもっと現実に、どういうふうにアプライできるかというのも先端研究の一つになるのではないかと思います。

 次の課題、数学・数理科学との連携・協力を強化する上で問題となっている点や、その解決方法は何かということなんですが、これもみんなに聞いて明らかになったことなんですが、例えばパブリケーションの場がないとか、就職する場がないとかいうのは、もう既にこれまで、若山先生たちがやられた研究会なんかでも出てくることだと思います。一つ指摘されたのは、最後にある、前提となる人間観が、経済学者は合理的な個人だと思っているんだけれども、自然学者は、ランダムなブラウン運動をする粒子のように扱って、そこのところが全く合わないと。言われてみると、私も経済物理学で一番納得のいかないのは、この、人間がランダムなブラウン運動をすることなんですね。

 そこのところを合理的な行動をしているというふうに経済学者は考えたいんですけれども、そこをオーバーカムしなければいけないというので、コミュニケーションを密にするということなんですね。そこで、もう一つ言われたことは、学者同士でやっていたのでは、自分たちの学問の主張をするだけで駄目なので、第三者の人に、もういやおうなしに一緒にやれと言われるしかないのではないかという指摘がありました。

 それと、研究所のことですが、海外にある学際的な研究所が、日本にはまだないのではないかという指摘があり、そういうのを作ることはできないかと。ここにある研究所というのは、理科系の方はもちろん御存じだと思いますし、経済学者ももちろん行って研究をしている場です。

 それから、今回、この非科学的なアンケートをやって思ったのですけれども、学部が理系で経済学者になっている人がたくさんいますが、そういう人たちというのは問題意識の伝わり方が非常に早いんですね。理科系の学部の人は理科系の大学院に進んでほしいと思われると思うんですけれども、長期的な戦略から言うと、将来の連携要員養成として、理系出身の人を他の大学院へ勧めるというのも一つの方法ではないかと思います。もちろん競争的資金、特に中小企業とか個人起業家へのイノベーション資金というのを、数学イノベーションと絡めて、もっと活発にやるのがいいのではないかという指摘がありました。

 以上です。どうもありがとうございました。

【若山主査】  どうもありがとうございました。

 御質問もおありかと思いますけれども、時間もございませんので、順番にお話しいただいて、最後にまとめて御質問等、お受けしたいと思います。

 それでは、安生先生、お願いします。

【安生委員】  オー・エル・エム・デジタルの安生と申します。

  私は映像製作の分野におりますので、タイトルが変な日本語ですね。「映像表現が求める数学」と言った方がいいですかね。仕事は、映画、アニメーション、実写、ゲームの映像制作などをやっています。タイトルの読み方としては、「ビジュアリゼーション」となっているのは非常に意図どおりでありまして、本日お話しするのは私の分野の近隣のことが多いです。昨今いろいろな分野で、映像化して、人にプレゼンテーションなり理解を深めてもらうという応用が、ウェブだの、そういうものも含めて非常に多くありますが、技術的には非常に近いものだと思いますので、内容的にはちょっとスペシフィックのようですけれども、実際の応用範囲は結構広いのではないかなということをお伝えしていきたいと思います。

 最初のページは、デジタル映像表現ということで、もちろん皆さん御存じだと思いますが、いろいろな分野で使われているという例を書いておきました。「サイエンティフィックビジュアリゼーション」というところで、メディカルイメージングと、2番目のものがかなり技術的な意味でも非常に高度で、コンピュータービジョン等の技術も含めて、いろいろな数理的な方法を使われているので有名です。あと、デザインですと曲面論的なものです。これはある意味古典的かもしれません。

 コンピュータグラフィックスは、いろいろな、新しい数学も出てきています。この二つの画像は、上が脳みそですけれども、実際のものから特徴的なものを線画で抽出して、これはしわの部分ですね。そういう意味の自動化という意味の技術もありますし、下の画像は、ちょっと暗いんですけれども、これは全部、車のリアルな表現です。実写は一つも入っていなくて、コンピューターで全て計算しています。ほぼリアルタイムで、これほどの質のものを見せることができます。

 ということで、ビジュアリゼーションとして、いろいろなCG技術が浸透していると思うんですね。

 次にまとめましたのが、よく使われる方法、現在、私の知っている範囲の一部を紹介します。

 まず、映像表現ですから、コンピューターの中に3Dのモデル、3次元のモデルがあったときに、光と影、つまりライト情報、色情報を入れて計算します。何を計算するかというと、積分方程式が書いてありますけれども、Leというのがインプットです。Lというのが輝度です。θ方向から目に入ってくる光の輝度。φは、いろいろな方向から、ある点xを見るときに、いろいろなところから光が来ます。それがθ方向にどういう割合で入るかを示すのがρという、確率密度みたいなものです。ρを実測できる場合もありまして、Lが分からなくて、Lを求めるという、積分方程式で解くというのが基本的な考えです。この積分方程式はレンダリング方程式と呼ばれます。レンダリングというのはCGの場合は「表示する」という意味です。自然現象の表現は、映画でおなじみですし、災害のシミュレーションでは、当然、流体力学、ナビエ・ストークスを解きますし、剛体アニメーションではFEM等々、数値解析の方法を使います。ソフトオブジェクトの変形をリアルに出すために微分方程式を解くこともやっています。

 それから、メッシュ。これはCADや曲面のデザインなどを含めても、最適化法がいろいろあります。一番下の画像は境界値問題を解くようなことで、青っぽい方の画像はスムーズにつなげる技術です。それで右側の画像では微分方程式を解いています。いずれも年代を書いておきましたが、新しい技術です。つまり、今からどんどん応用の広がる可能性があります。

 どんな分野でも、CGであろうがなかろうが、解析するだけではなくて、そこから次のことを予測したいわけですね。つまり、シンセシスです。CGの世界では、映像にするというのをシンセシスと呼んでいますが、当然第一歩は物事を解析して、どんなものかを理解できないといけないので、当然アナリシスが第1段階として必須です。完全に物理的に捉えられるのであれば、物理の概念を適用したり、方程式やその考え方を利用できます。人間の動きですと、今度は物理法則では動かないのです。ただし我々は、キャプチャーといって、データを計測する技術やデータの蓄積がありますので、そこから何か学ぶという方法がありまして、これはアナリシスの最初の段階としてやっています。この段階でもいろいろな数学的な手法がもちろん使われています。

 CGですと、特に3番目の、シンセシスのために、こういうものをどう使うか。言ってみれば逆問題を解くようなことになるのでしょうが、そういう意味でのデータの解析の結果とか、データの解釈、それと対話処理能力が必要です。インタラクティブに、要するに映像制作者の考えも入れながら映像を作るというところは、ちょっと特殊ですね。ただ、これは最初に言いましたビジュアリゼーションは全部そうなんですね。何を見せたいかは、物が持っている情報ではなくて、見せる人、作る人が持っている意図なのです。それらと映像とをどう組み合わせるかが課題になります。ちょっと変わった分野というか、ユニークなのがビジュアリゼーションの分野かなと思います。

 これは一つの、最近の実例なんですが、学習の話で、人間の顔というのは物理方程式を解いて作るものではなく、かといってゼロから全部作るというのは大変なんです。この画像は何を表しているかといいますと、左側は、ある計測データで取ったCGのキャラクターの顔です。人間の顔の表面に点をたくさん置いて計測して出した顔のモデルです。今からムービーでお見せします。右側が、そこから顔の動きの特徴を学んで、今度は作る人がそこに新たに表情を足します。表情付けは、自動ではなく人手でやりたいので、対話処理でスムーズに処理できるようにするということで、学習する理論の部分と、対話処理に導くための最適化問題みたいなものを組み合わせて使っています。

 ここで、1分ほどの映像をお見せします。左がインプットで、右側がアニメーターが作った顔です。左は普通に、淡々としゃべっていますけれども、右側は何かふざけた顔をしたりいろいろな表情を見せます。これがどれだけ効率良くできるかということが問題になるわけです。普通にアニメーターが手付けしますと何日も何か月もかければできるんですけれども、我々の技術を使いますと実際10分ぐらいで作ることができるのです。非常にうまくいっている例ですね。最後は、チューニングします。口元の動きがちょっと変わっています。こういう微妙なところは、「スライダーコントロール」と上に書いてありますが、スライダーバーで微妙に動かしながらファインチューニングをしていきます。ここからはメーキング映像ですので、後でお時間があればということで割愛します。

 そういうことで、我々は、ディレクタビリティー、演出可能性ということは、いわゆる普通の物理シミュレーションとか、自然科学で出てくるシミュレーションをするだけではなくて、意図というものを、例えば、柔らかいキャラクター物体が動くんだけれども、ある瞬間はこういうポーズをとってほしい、でも全体の動きとして見るとリアルに動いているということを実現したいのです。全体のリアルさは微分方程式から頂いて、瞬間ポーズは意図、すなわち演出を入れてキーフレームとして作り、両方を両立させて解く。こういうケースでは当然物理ベースの微分方程式を解いただけではできないですから、微分方程式の形が変わってきます。CGの世界では、意図・演出を盛り込んでいくということをやるんです。

 今話した例を映像でお見せします。全体のリアリティーは微分方程式で作ります。キーフレームアニメーションというのは、真ん中のbの部分で、キャラクターの抜け殻みたいなのが飛んでいますけれども、このポーズの形をデザイナーが作りました。aが何もしないシミュレーションです。そうすると、例えばこのポーズを見ると、こっちのものより足がばーんと大きく開いています。大げさな動きになっていますね。こっち側は普通に方程式を解いた絵です。それを、この瞬間で、こういう格好にしてほしいなという意図を後から加えていくんです。動きは元のと似ているけれども、意図の情報もちゃんと加味した動きを作るというようなことが、リアリティーと演出をうまく組み合わせる方法として使っています。

 ということで、物理的な、自然科学的な方法というものにのっとる部分と、それを超越した部分としての人間の意図、演出。繰り返しになりますが、ビジュアリゼーション全般に言えるのですが、インタラクティブにうまく使いこなせるようにする技術というのが、今後必要になります。メディカルイメージングが最もビジュアリゼーション的には有名ですが、ごく最近では、化粧品とかシャンプーの効果などを非常にリアルに表現したいとか、衣服のデザインにCGを使いたいということが本格的に追求されつつあるので、多分数年以内に新しいCG応用が出ると思います。

 私の最近の活動としては、CRESTをやらせていただいて、その中ではCGの分野での、特に流体と人間の表現、実は一番難しいところなんですけれども、それを数学者の方と技術を作っていこうとしています。九州大のマス・フォア・インダストリ研究所の関係では一つ、前回か前々回お話ししたと思いますけれども、CEDECというゲーム技術者のコンファレンスで「Math for the Game Industry」というイベントをやりまして、この場合はゲーム業界の人を集めて、聞く方も、講演者もいろいろな業種の人が交流する機会を作りました。それから、もう一つ、私が仕掛けたものではないのですが、Forum”Math for Industry”のイベントの中でスタディーグループワークショップがありまして、私が顔の変形のみならず、形状変形をCGでどうやっているかという講演をしましたら、純粋数学の人たちが興味をなぜか――なぜかというのも変ですけれども――持っていただいて、短期研究集会を3月にやってくれることになりました。それもどのような交流になっていくかということが楽しみなんですけれども、こういう動きがあります。

 ここに書いた「具体策へ向けて」ということで、数学とのインタラクションです。どういうことができるかというと、研究的な意味では、やはり今のCRESTだけではなくて、いろいろな、相互乗り入れ型の研究というのができるようにしたいというのと、特に、どちら側からしても――「どちら側」というのは、我々だったらCGの研究所からしても、あるいは数学の方からしても――余り接する機会がなかったので、現在進行中の活動をいろいろ広げていけるといいなと思っています。

 国際的な動きも非常に重要なので、先ほど述べたアパレルやコスメティクスの分野からの動きは、日本ではなくて、海外で講演したりすると、頼まれたり、考えたりしているものですから、そういうところもやはり具体化していかなければいけないなと考えています。

 ビジュアリゼーション、CGの分野は結果が映像なので、どんな小難しい数学を使っていようが、結果的に映像として出るというのは非常に分かりやすく、一般の人からも親しみを持ってもらえるという意味でも良いと思いますし、その意味で幅広い分野に波及する可能性を持っていると思いますので、良い成果を伝えていきたいなというふうに考えています。以上です。

【若山主査】  どうもありがとうございました。

 それでは次に、新日鐵の中川先生に御発表いただきたいと思います。

【中川委員】  新日本製鐵の中川です。よろしくお願いします。

 私からの発表は、異分野連携の話です。5年ぐらい前からやっています数学と工学と産業の異分野連携の活動について御紹介します。

 委員への宿題の一つとして、数学の力が必要な課題という項目がありました。数学の力が必要な課題はいろいろありますが、今、私が一番必要だと考えているのはマルチスケールモデリングに関するものです。ミクロとマクロを結ぶ数学理論というのは、恐らくこれといったものがないと思いますので、ここに是非、数学の力をお借りしたいと考えています。この辺の内容を、本日は土壌汚染の事例を使って御紹介いたします。

 二つ目の宿題でございました数学・数理科学との連携促進策、これにつきましては、今回、「数学・数理科学をコアにしたオープンイノベーションのプラットフォーム」を提案しています。これの前段階として、先ほどの土壌汚染を議題にして、5年前から継続して、数学、工学、産業の異分野連携の活動をしております。当初は東大数理科学研究科の山本先生、筑波大学リスク工学専攻の羽田野先生と私の三人でスタートしました。その後いろいろな専門分野のメンバーにこのチームに参加いただき、今では、年々チームが進化していることを実感しております。

 まず、これがチーム運営のコンセプトです。数学がイノベーションの源泉であり、数学者の自由な発想が科学・技術のブレークスルーの鍵になるということを前提にして、一つは、フィードバックが機能するコミュニケーションの場をいかに運営するか。この中で人材育成と問題解決を同時に行いたい。二つ目は、個々の数学者の研究スタイルを尊重しながらも成果を顕在化していくということ。例えば水平分業型のビジネスモデルを運用しています。三つ目が、異分野融合の人材マグネット。アカデミアの工学の先生から見ても参画に魅力を感じるようなチームになること。数学・工学・産業の異分野連携によって、科学・技術の社会への出口の多様化を図ることです。

 これは、実際の議論の場の概念図です。フィードバックが機能するコミュニケーションの場というのが全ての中心にあって、この場で、数学者と企業研究者が数学モデルについて議論をします。ここで言っている数学モデルというのは、既にできている手法を持ってくるというよりも、こちらから提示した問題に一番フィットするような数学モデルを、ゼロベースから一緒に作っていくというスタイルです。その中でいろいろなフィードバックを機能させます。こちらからは現場の現象の解釈の方法、数学者側からはロジカルな考え方、数学モデルのひな形がある程度できますと、数学モデルを検証し、数学者にフィードバックする。こういうフィードバックを何回も繰り返すことで、数学モデルが完成します。

 この数学モデルが、数学と製造現場のインターフェースの役割を担います。こういう活動を通じて、相互理解と信頼関係が構築され、そこからお互いの新しい才能が開花するという経験を多々しております。数学というのは、数学者の人から見るとダイヤモンドのように非常に美しいものだと思うのですが、我々のような外部の者から見ると、ダイヤの原石です。ダイヤの原石を磨くのは一人ではできないので、数学者と他の分野の人たちが現実の問題に対して議論し、一緒に磨いていくという作業が必要だと思います。

 我々の数学イノベーションチームは「数学理論」と「社会を動かす技術実現」の時間の隔たりを劇的に短縮することを目指しています。

 具体的な課題です。筑波大学のシステム情報工学研究科リスク工学専攻の羽田野先生から頂いた土壌汚染に関するテーマを、数学者、工学者、新日鉄の三者で議論しています。この図は、汚染物質が地面に染み出して、周りに広がっていく様子を示しています。これは、フィールドのマクロスケール100メートル~10キロメートルと土壌の間隙のミクロスケール、約100マイクロメートルが混在するマルチスケールモデリングに関する問題です。マルチスケールモデルのニーズは鉄鋼分野でも非常に大きく例えばスラブは幅が2メートル、厚みが250ミリです。一方、鉄の結晶組織がミクロンオーダーのメソスケールです。圧延工程で板厚を制御しながら品質を同時に制御する必要があります。土壌汚染の問題に戻ります。これは汚染状況の概念図で、ここに放出源があって、汚染物質が時間の経過とともに周りに広がっていく様子を示しています。従来は、汚染物質濃度の時間減衰を、移流拡散方程式のモデルで計算していました。しかし、フィールド試験では、汚染物質濃度が環境基準値以下に減衰するのに、かなりの時間を要することが報告されています。この現象は土壌の研究分野では異常拡散と称されています。これが数学をコアにした異分野連携のチームです。数学、産業と工学からメンバーが集まっているだけでなく、数学もいろいろな専門分野の方が入っております。様々なアイデアを関連付けて創造的なひらめきを刺激するのが、このチームの中での私の役割だと考えています。

 これが羽田野先生の実験装置です。水槽の中の土壌粒子に食塩水を入れて、食塩水の拡散をセンサーで観測する。羽田野先生たちのグループは、この現象を解析するのに連続時間ランダムウォークという手法を使って解析しています。粒子の待ち時間に関するルールを計算格子上に与え、モンテカルロシミュレーションを行います。すると、空間スケールの2乗は、時間のα乗に比例するようになります。通常のランダムウォークでは、α=1ですが、連続時間ランダムウォークは、非整数になるのが興味深い点です。

 実験結果の一例です。ひし形のプロットが実測データ、赤の線が、通常の移流拡散方程式で計算した結果で、両者にかい離があります。そこで、連続時間ランダムウォークの待ち時間関数のべき数であるアルファの値を実験結果に合うように、フィッティングします。

 これが、実験で得られたルールです。それを数学的に解釈したらどうなるかということをやったのが、このファーストシナリオです。連続時間ランダムウォークの待ち時間関数は、実験で発見されたルール。時間t、空間xに存在する粒子の確率を確率密度関数で記述し、待ち時間関数をミッタグレフラー関数で表現する。時間に関してはラプラス変換、空間に関してフーリエ変換をしますと無限級数が出てきますので、その第1項だけを採用する。そこで得られた方程式を、逆フーリエ変換、逆ラプラス変換しますと、このような、いわゆる非整数階の偏微分方程式が導出できます。シミュレーションしますと、左の図がアルファが1の通常拡散のケース、右の図はアルファを0.5に設定した異常拡散のケースを示します。アルファ0.5のケースでは拡散が非常に遅く、濃度がノンガウシアン分布形状をしていることが分かります。

 ここまでが、実験で得られた結果を数学で解析するとこうなるという、数学と工学の関わりを示す一つの事例です。

 次に、こういう、マクロなスケールで観察すると異常に見える現象の背後に何が起きているかという、原理原則を見いだそうとすると、別の数学が要ります。この場合は、土壌の粒子の配置が重要になり、土壌粒子の配置に関する図形の不変量をうまく導き出して、そういう不変量と、非整数階の偏微分方程式の因果関係をどういうように結ぶかのかという問題に移ります。

 これがセカンドシナリオです。これは粒子の配置構造を観察するために、CTスキャン装置を使って、3次元の画像を採取します。次に、画像データの解釈のために、二つの次元を準備します。一つは幾何学的な次元であるフラクタル次元、もう一つは、解析的な次元であるスペクタル次元です。これら2種類の資源と先ほどの非整数階の偏微分方程式の微分の階数アルファの因果関係がどうなるかということを、これから考察します。

 これが一つのコンジェクチャーで、物理学者が言っている内容をまとめたものです。(1)式は、平均体積の変化が、粒子の平均二乗自由工程のフラクタル次元のべき乗に比例することを表しています。一方、確率論で有名なバーロウ=パーキンス先生の理論によると、フラクタル上のヒートカーネルが(2)式で表せる。我々のケースは定点観測ですから、y=xと置くと(3)式が得られます。次に、(4)式のようなものを仮定します。そうしますと、(1)式、(4)式、(3)式から(5)式が得られます。

 一方、実際の実験では、(6)式の関係式が得られていますので、(5)式と(6)式から(7)式を得ることができます。時間に関する非整数階微分の階数アルファの値が、dsとdfという二つの次元で表現できることになりますこれについて、先日、京都大学数理解析研究所の熊谷先生と議論させていただき、大体これで合っているようだというコメントを頂いています。

 これで終わりかというと、そうではなくて、この図は、実験装置の大きさを変えた場合に、現象がどう見えるかという実験結果です。こちらの方は、実験装置の長さが0.1メートルの小さな実験装置、右の方は、7メートルという大きな実験装置を使用したときの食塩水の拡散を計測した結果です。

 小さな実験装置では、実験結果が実験赤線のADEで示す通常の移流拡散方程式を使ったシミュレーションで説明できます。それに対して、実験装置が大きくなっていきますと、通常の拡散から実験結果がかい離するだけでなく、連続時間ランダムウォークによるシミュレーション結果とも完全には合いません。ということは、一つの実験装置で、先ほどのα=ds/fdのようなルールを見つけても、それが実際のフィールドスケールでどうなるかということは、説明できないので何らかのスケーリング則が必要になります。そこで、次に、マルチスケールの視点から何らかのスケーリング則を導くという研究を、チームの中で、今しています。

 いろいろなスケーリング則が提案されていますが、比較的数学理論がしっかりしているという理由で、均質化法を採用して、どうなるか見てみております。

 これが元になっている偏微分方程式で、土壌粒子の配置の構造は、Mが土壌粒子、Fが空隙と考えてください。このような構造を持ったものが周期的に全体を構成していると仮定して、この中で起きる現象を偏微分方程式で記述しますと(1)式、(2)式、(3)式で表せます。これは普通の、拡散に関する偏微分方程式に相当します。ここで、(5)式に示すような関係、土壌粒子の拡散係数Dmと空隙の拡散係数Dfの比率を、イプシロンの2乗に比例するという関係のもとで、イプシロンをゼロに飛ばします。これが均質化するということです。イプシロンはスケールの大きさを表すパラメータです。

 そうしますと、元の偏微分方程式(1)~(3)式では見えなかったメモリータームというものが出てきます。これがどうも異常拡散を起こしている何かの追加項のような感じがしております。このメモリータームは土壌粒子の形状に依存します。現在、チーム内で、土壌粒子の形状と、メモリータームの因果関係から、異常拡散がどのように現れるかを議論している最中です。

 これがサマリーです。ファーストシナリオは、工学の先生方が実験で見つけたルールを数学的に解釈するとどうなるかというアプローチ。これによって連続時間ランダムウオークと非整数階の偏微分方程式の因果関係が整理できました。次に、もっと現象をミクロに見て、異常拡散を引き起こす原因を、土壌粒子の配置構造から解析したのがセカンドシナリオです。ここでは二つの次元、フラクタル次元dfとスペクトル次元dsを導入して非整数階微分の階数アルファを記述するということを行いました。しかし、これだけでは不十分で、実験データをうまく解釈するには何らかのスケーリング則が要るということを実験結果は言っていますので、それをサードシナリオで議論中です。

 しかし、これで完成かというと、そうではなくて、今回御紹介した内容は一つの見方だと思いますので、別の見方、いろいろな見方をした上で、最も合理的な解釈ができるような数学理論の構築をするのが、我々のチームの目指しているところです。

 今回数学解析を使い、連続時間ランダムウォーク、非整数階の偏微分方程式、ジオメトリックインデックスと、そしてサブガウシアン・ヒートカーネルの関係をある程度の範囲で整理することができました。このことは、数学をうまく活用することで、異なる分野の知見をうまく関連付けることが可能になることを示唆しています。

 もう一つ、レビーフライトに関しては、空間の非整数階微分の階数ベータとリンクしていますが、これが本当どうかは、まだ分かりません。ベータはウオーク次元というものと多分関係しているだろうと思いますが、これは今後、この分野の専門の人にチームに入っていただいて、議論を継続したいと思っています。新たな専門性を導入し、またチームとして人材ネットワークを広げて、チームのレベルを上げていくということを継続してやっております。

 最後に、この異分野連携の場を「数学イノベーションプラットフォーム」と名付け、数学・数理科学によって、諸科学・工学・産業界で得られている一連の実験的事実、又は経験的事実を、一貫性のある論理で統合できる理論を構築し、同理論に基づく数理モデルを介して、諸科学・工学・産業における未解決問題のブレークスルーと、当該分野の研究・開発工期の驚異的な短縮ができたという実績を示していくことを、チームとして目指します。

 以上です。ありがとうございました。

【若山主査】  どうもありがとうございました。

 それでは最後に、本日、大島まり先生、御欠席ですけれども、資料を頂いていますので、事務局より紹介していただきたいと思います。

【事務局】  では、大島委員より、御自身の研究を中心に、今後どのようなことが必要なのかまとめた資料を頂戴しておりますので、簡単に御紹介させていただきます。

 大島委員は、工学と医学、バイオとの融合領域において、数値流体シミュレーションと、流れのビジュアルセンシングに関する研究をされています。具体的には、動脈硬化症や脳動脈りゅうなどの循環器系の疾患は、血流が刺激となって引き起こされますが、このような疾患がどうやって引き起こされるのかというのを、血液という流体力学的なもの、及び病気となる血管壁に関して、構造力学的な観点、いわゆるメカニクスという観点から解明していく研究をされています。

 7ページ、8ページを御覧ください。研究のアプローチといたしましては、それぞれの患者の方から得た医用画像から3Dモデルを作成しまして、それを基に血流シミュレーションを行うことで、疾患の発症や進展などの予測を行います。最近では、医用画像など、in vitroでは得られることができない情報を得ることが可能となってきたため、それらを利用しまして、ただいまお見せしているムービーのような脳内循環の情報も得ることが可能となってきております。一般に生体内の現象を実験で観察、測定するには、技術的あるいは倫理的に限界がありますので、数値シミュレーションは現象を全てコンピューター上で再現するため、生体を対象にした場合は特に有効な手法と言えます。

 11ページ、12ページを御覧ください。諸科学・産業において、数学・数理科学により解決、あるいは大きな発展が期待できる課題は多く存在し、また多くの人は、数学・数理科学の重要性を認識していることと思われます。しかしながら、人によって認識のレベルが異なるため、11ページに書きましたとおり、大きく四つのレベルに分けられると思います。その中でも、レベル1と2の人が大半を占めると考えられます。このレベル1、2の場合は、自分が抱えている問題が、どの程度難しいのかの判断自体がなかなか難しいということがあり、そこで多くの方がちゅうちょしてしまうというふうに考えております。また、この場合、数学がツールとして必要なことが多いため、数学・数理科学者にとっては興味が持てないため、数学・数理科学者にとっての研究分野とならず、双方にとって共同研究を行うといったようなwin-winの関係になりにくいと思われます。

 これに対する処方箋として考えられますのは、気軽な出会いの場であったり、若しくは目利き、あるいは相談できる機関、あるいは人といった何らかのシステムがあり、数学的な方向性を示してくれるだけでも、研究開発のスピードアップやレベルアップにつながり、かなり違ってくるのではないかと思われます。そうすることによって、諸科学・産業側にとってのメリットだけではなく、数学・数理科学者にとっても新しい研究のシーズの発掘につながるよう、問題をある程度選別できるのではないかと考えられます。

 更に長期的には、レベル1の人がレベル2に移るように、更に上のレベルに移るよう、そのような人口を増やす必要があると考えます。そのためにも、高等教育における数学・数理科学教育の促進と充実化が必要ではないかと考えております。

 簡単ではありますが、以上です。

【若山主査】  どうもありがとうございます。

 先生方、どうもありがとうございました。

 それでは、御質問等ございましたら、皆様の方から御自由に御発言いただきたいと思います。余り時間がございませんけれども、よろしくお願いします。

【小谷委員】  青木先生に質問です。

研究の内容ではなくて、人材のことなんですが、経済学では数学を本質的に使いますよね。さっき、数学をバックグラウンドとする方も入っていらっしゃるというようなお話がありましたけれども、具体的にはどれぐらい、どういう分野の方が日本の経済学研究の教員としていらっしゃるでしょうか。

【青木委員】  一橋大の場合には、実際に数学の先生がいらっしゃるんですけれども、研究科に。石村先生は数学の先生でいらっしゃいますが、どちらかというと、一橋は教養学科がないのでそうなっているので、普通の大きな、研究を主体としている経済学部というのは、数学の大学院に行っている先生というのは、統計学と確率論の先生が普通ではないでしょうか。数理経済というのも、測度論とか使うんですけれども、普通は経済の博士を出ています。それで答えになっていますか。

【宮岡委員】  それに関して、アメリカなんかでは、物理とか数学を出た方で経済に行った方は結構多いと思うんですけれども、日本では少ないということでしょうか。

【青木委員】  そうですね、アメリカの大学院教育というのは、私は経済学しかよく知らないんですけれども、最初の2年間のコースワークが大変ちゃんとしています。経済学の1年目のコースワークというのは、学部で経済をやらなかった人ができるように作ってあるんですね。ですから学部では哲学をやった人とか歴史をやった人は、普通、夏休みに数学のキャッチアップのコースを取って始めるようになっていて、逆に数学や何かの人でも、学部でやる経済をものすごいスピードで復習してくれるので、付いていけますし、そういう人は大歓迎ですね、むしろ。

 日本もそれになりつつあるんですけれども、もうちょっとそれを充実させるといいと思います。

【北川委員】  日本は数学科に統計の人がほとんどいないので、例えば東大だと、統計の多くの人が経済学部。それか工学部の方もいますけれども、一橋も計量経済というか、統計、時系列関係の人がかなりいますね。

【青木委員】  そうですね。失礼しました。数学と統計学は別と考えていましたので。

【若山主査】  ほかにございませんでしょうか。

【北川委員】  安生先生のお話は、リアリティーの部分を物理モデルで書いて、それを超える演出の部分を数学でやりたいというようなイメージかなと聞いたんですが。

【安生委員】  そうですね、映像表現では。

【北川委員】  その場合で、数学が果たす役割のところがちょっと分かりづらかったんですが、物理を超える、何を。

【安生委員】  さっきの例ですと、アルマジロが跳ねている絵でしたけれども、動きはそういうソフトオブジェクトの微分方程式を解きます。まず初期値を入れて、パスを入れて解くわけです。先ほど言いたかった演出というのは、その動きの途中のポーズはアニメーターの人がある瞬間のポーズを決めるのです。でも、さっき解いた方程式で得られるような動きを作るという組み合わせ方をするわけです。その際スティフネス・マトリクスの形を少し変えてあげると、ユーザーが意図した形状変形と、微分方程式で動く滑らかな、自然っぽい動きが両立するというような話です。つまり物理的な、アナロジーはあるんだけれども、物理ではなくなってくるんですね。こういう発想自体、なかなか物理の人は考えにくいだろうなということもあるし、我々、映像を作る側が考えるべきことなのでしょうけれども、そういうニーズから生まれる問題を解くときに、数学の方とやっていけるといいのではないかなと思ったという話です。

【北川委員】  もう一ついいですか。中川先生、いろいろ工夫して、だんだん精緻なモデルになっていくと、ある意味切りがないということがありますよね。

【中川委員】  はい。

【北川委員】  いろいろなモデル、あるいは同じフェーズでもいろいろな工夫の仕方ってあり得ると思うんですが、そのときに、どうやってどちらがいいかとか、その辺は。

【中川委員】  最終判断は、実験をして、実験結果が一番うまく説明できるようなものを、まず選ぶと思います。あとは、それでもっと大きなフィールド試験をしたりして、そこで何か不都合が生じれば、またモデルをいじるということで、フィードバックの繰り返しでレベルを上げていくというふうに考えています。

【若山主査】  よろしいですか。

【北川委員】  はい。ありがとうございます。

【若山主査】  ほかにございませんでしょうか。

【青木委員】  私、中川先生に一つ質問していいですか。

 ミクロからマクロに行くというのは経済でも問題なんですよね。非常に興味があったんですけれども、Dの比がEのスクエアだという仮定、そんなような仮定がどこかにあったと思うんですけれども。

【中川委員】  Dの。

【青木委員】  というか、たくさん、同じタイルの絵があって、小さいのを全体に。あれは、それが一つのミクロからマクロへの鍵のような気がしたんですけれども、それは。

【中川委員】  今おっしゃったのは、私の資料の15ページの5式だと思うのですけれども。

【青木委員】  ええ。これは、何か。

【中川委員】  これは、こういうふうに置けば……。

【青木委員】  うまくいくという感じなんですか。

【中川委員】  16ページのメモリータームが、Kとありますね。6式のK。これが出てくると。これを、例えば3乗に置いてしまうと、メモリータームが出てきません。

【青木委員】  それで、その2乗に置く、何か理屈はあるんですか。

【中川委員】  これは時間と空間の、いわゆる次元の比率です。

【青木委員】  なるほど。分かりました。どうもありがとうございます。

【若山主査】  ほかにございますか。

【北川委員】  マルチスケールの問題はいろいろなところで重要で、大島先生の生体のシミュレーションですよね、特に今スパコンでやっている。分子、原子、細胞、臓器、全身と、そこをどうやってつなぐかというのが非常に大きな問題だと思います。

【若山主査】  どうもありがとうございます。

 この後の議題の方で、また幾つかの例として立ち戻ることもあろうかと思いますけれども、もしよろしければ、次の議題に参りたいと思います。

 それでは、次の議題に参りたいと思います。議題2「数学イノベーションに向けた今後の推進方策について」に移りたいと思います。

 まずは、資料3-1、3-2について、事務局より説明をお願いします。

○粟辻融合領域研究推進官より資料3-1、3-2に基づき、説明があった。

【若山主査】  どうもありがとうございました。

 お手元に、1枚、お配りしている紙があると思いますけれども、これは今、粟辻さんから御説明いただいた論点のところを、タイトルだけ抜き出したものです。

 今御説明いただいた第1章のところは、これまで、前回のイノベーション委員会から、何度か事務局より先生方にお配りして、御意見を頂戴したいということであったわけで、それで頂いて、また新たに事務局の方で作成したものですけれども、方向性として、大きく御異論があるということはなかったというふうに認識しております。細かいところは、いろいろとまだあるかと思います。

 その意味で、今日は第1章について、まず、ここは少し改めておかなければいけないのではないか、あるいはディスカッションの必要があるのではないかというところを、御指摘ください。その上で議論を進めていきたいと思います。そして、また、できましたら第2章、第3章のところに重点を置いて議論を進めていきたいというふうに考えています。

 まず第1章のところですけれども、何か先生方の方で御意見、ここはちょっとどうかというふうなことも含め、追加、修正についてございましたら、御意見頂戴できたらと思います。よろしくお願いいたします。

【北川委員】  まず質問を。単純な質問で、私が知らないだけかもしれない。

 出だしの11行のところ、「蒸気機関の原理」と書いていて、わざわざ例があるんですけれども、これの数学の貢献というのが、ちょっと私は見えなかったんですが。

【粟辻融合領域研究推進官】  すみません、これは先生方から頂いた原稿を活用しているので、具体的に、蒸気機関にどのような数学を、どう使っているのかというのは、私もちょっと。

【北川委員】  物理とか何か、そっちは分かるんだけれども、ちょっと出だしのところなので、何か引っかかる。

【粟辻融合領域研究推進官】  もう少し、いきなり始まるのではなくて、歴史的にずっと追っていくというような……。

【北川委員】  それはいいんですが、もうちょっと、他に幾らでもあるんじゃないかということです。ほかに、はっきりしたのが。

【粟辻融合領域研究推進官】  何かもっといい例があれば、ちょっと頂けると。

【小谷委員】  第1回目の会議のときに言及いたしました日本数学会で作ったロードマップの2ページ目に、数学の発展が現実につながっている例が幾つか挙がっておりますので、その辺も御参考にしていただきたいと存じます。

【粟辻融合領域研究推進官】  ロードマップの。

【小谷委員】  ええ、ロードマップの2ページ目に、確か載っていたと思うのですが。

【北川委員】  もう1点よろしいでしょうか。

 中川先生、知識発展のサイクルみたいなのが大事だというお話をされましたし、2ページ目の上から4行目のところも、「科学的・論理的思考能力」と書いてあります。

 論理的はいいんですが、科学的というのは、やはりエビデンスに基づくという、あるいはポパー流に言うと反証可能性、要するにデータに基づく検証というのがどうしても必要なんですが、そういう観点から言うと、(1)の最初の丸、あるいはその次の間ぐらいに、やはりデータに基づいて検証の部分、科学的研究におけるフィードバックを実現する検証のところを、やはり数学が提供しているということを一言書いておくと、科学全体を支えているというイメージになるのではないかというふうに思います。

【粟辻融合領域研究推進官】  とったデータを検証する役割も果たしている。

【北川委員】  モデルによる、例えば推論だとか予測とかシミュレーションと、それから逆にデータからモデルをチェックしたり、あるいは改良するという、その二つがあって、だんだん知識が発展していくんですね。だから、その両方をやってしまっているという立場に立った方が、サイエンスの中における数学の立場がより重要になるということになる、と言えるのではないかと。

【若山主査】  後ろの方の9ページにある参考資料1のところのことですね。そのものではないですけれども。

【宮岡委員】  だからデータとモデルを結ぶ、行きと帰り両方に関わるのが、厳密にやるのは数学であるということですよね。

【北川委員】  演えきと帰納の両方やります、両方の基礎というか基盤をやっていますと言ってしまった方がいいのではないかと、個人的には思います。

 あと、(1)の最後のところにシミュレーションの話が書いてあります。これ自体はそのとおりで、よろしいんですが、やはり現在ではシミュレーションは、例えば生命等においても、従来の地球シミュレーターのときにやっていたようなフォワード型のシミュレーションだけでは十分でなく、又はそれを超える計算機能力が出てきている。それから、今回のSPEEDIを見ても、直接は、最初は役に立たなかった。それは発生源の、いわゆる初期条件が観測できなかったから使えなかったというわけで、WSPEEDI-2という改良版がありますけれども、それは、いわゆるデータ同化的に、データからパラメーターを調整できるということが重要になってきています。そういう意味で、やはりシミュレーションを改良していくところに数学が重要な役割を果たしていけると思いますので、可能なら一言、そこに付け足しておいたらいいのではないかなと思います。

【粟辻融合領域研究推進官】  既存の、それは要するにシミュレーションの元になっているモデルの改良に……。

【北川委員】  そうとも言えるんですが、従来のシミュレーションが物理モデルを仮定して、ちょっと言葉は悪いけれども計算機で解くという方式ですけれども、パーティクルの移動の形で、計算する。だけれども、そうではなくて、データからのフィードバックをかけるということがもう可能になってきているし、それがいろいろな分野で必要になってきているんですね。それは正に、安生さんでしたか、物理モデルだけでできないところを、ちょっとやろうというのと同じこと。

【安生委員】  そうですね。だから今、同じことをやっているなと思って聞いていました。

【中川委員】  逆問題もそれの一種だと思います。

【北川委員】  はい。もう正にそう。

【若山主査】  ほかにございませんでしょうか。

 時々また帰ってくるかと思いますけれども、それでは、最初に申し上げましたように、第2章のところに入っていきたいと思います。

 御質問等の、会議の進め方ですけれども、総合的に考えなくてはいけないのは当然なんですけれども、余り乱れてしまってはうまくいきませんので、まず、この資料を大体ざっと皆様お目通しいただいているとは思いますが、ここにお名前が挙がっている先生方に、補足なり、強調すべきことなりございましたら、一言、二言で御説明いただいて、それを基に(1)(2)(3)(4)と進めていきたいと考えています。

 まず第1は、問題点というところなんですけれども、出会いから研究へとつながる仕組みということで、最初に私の名前が書いておりますけれども、私が書いてあることも、大島先生が書かれていることも、ある程度総合的なことであろうかと思います。既にこの委員会では、3回にわたって、それから今日も含めますと4回にわたって、数学・数理科学そのものの研究に従事されておられない研究者の方々から、いろいろ御紹介いただいたわけですが、ここには、やはり数学・数理科学を非常に強く使われている方々と、それから、余り数学を使われていない方々では、かなりお考えとか要望というのは違っているということ、期待していることが違っているというふうなことを書いております。

 それから、今日はお休みの西浦先生と小谷先生から御意見を頂戴しておりますので、小谷先生、ちょっと簡単に御説明ください。

【小谷委員】  西浦先生と私がまとめたところも、今、若山先生がおっしゃられたことにかなり近いです。 数学を必要としている方には、いろいろなレベル、いろいろなニーズがあります。そのそれぞれに対してどのように応えるかということを、後ろの方に書きました、結局ネットワークがないので、誰にどういうふうに問題を聞いていいか分からないことが多いであろう。そのような情報が見える場所に置いてあるということが、非常に大切であるということです。問題を解析した経験者であれば、自分でコンタクトを探していくこともできるのですが、そもそも問題の所在が分からないとか、数学的表現が分からないという方にとっては、相談窓口のようなものがなければ、糸口すら見えません。窓口やネットワークがないことが問題だろうということを、ここで提起しています。

【若山主査】  どうもありがとうございます。

 それについて、問題点、及び答えも、今、少し提案もなされたわけですけれども、では、実際にどう推進していくのかということ、その提案が本数学イノベーション委員会としては非常に大事なところだと思っています。

 その提案として先生方のお考えを頂きたいわけですけれども、大島先生は、やはり、今小谷先生からおっしゃったようなことも含めて、コンサルタント的、あるいは目利きができるという人、あるいは機関というのが大変重要であるということをおっしゃっているわけです。ですから、そういうものが必要であり、作ろうということであろうかと思います。

 その次を、宮岡先生。少し、簡単にお願いします。

【宮岡委員】  今、大島先生の目利きができる人、コンサルタントというのと、本質的には同じなんですけれども、それをちゃんとした、数人集まった機関を作りたいと。それが幾つかの大学に、コンサルタント的な方が常駐している窓口が作れればいいのではないかなと。常にその人が電話に出たりするのは大変なので、もちろん秘書みたいな方がいた方がいいと思うんですね。そういうふうな、一つの大学だとやはり偏りますので、数箇所、二、三箇所でしょうか、そのぐらいから始めて、そういうのを幾つかの大学に作るのが望ましいのではないかというのが私の意見でございます。

【若山主査】  どうもありがとうございます。それでは。

【小谷委員】  大体似たようなことですが、今までそういうコンサルタントというか、相談窓口というのは、個人のネットワークでつなげてきたため、知見やノウハウ等が散逸してしまって、高い効果を得られません。やはりそれを集約するような組織が必要であるということと、それに加え、問題の在りかをきちんと特定して、しかも的確な方にそれを投げることができる目利き、私と西浦先生の提案では「伯楽(はくらく)」が必要であるというふうに書きましたけれども、そういう「伯楽(はくらく)」がいるような出会いの場が必要です。

 そこで、触媒型の拠点を作るといいのではないかという提案を書きました。更に踏み込んで、かなり具体的に、どういうことがあれば触媒型拠点の運営が可能かということも書いています。2ページ目に書いてあります。下線が大体引いてございますが、訪問滞在型の研究所があって、そこに、「伯楽(はくらく)」になるような拠点長、それからコーディネーターが数名、支援スタッフがいる。そこに、設定された課題に応じて、ふさわしい研究者が世界中から集まって、ディスカッションをしたり、問題を解決したりします。このようなスクラップ・アンド・ビルドにかなり近い形式の訪問滞在型研究は数学を中心にすればできると思います。

 これは数学の強みを生かすことですし、時代のニーズに合わせて分野を超えて迅速に動くこともできるというようなことを書いてございます。このことによって、強力なリンクを形成することもできます。

【若山主査】  よろしいですか。

【小谷委員】  はい。

【若山主査】  それでは、また宮岡先生に。今の小谷先生のお考えと似たことだと思いますけれども。

【宮岡委員】  全く同じなんですけれども、滞在型というのが、半年ないし1年ぐらい滞在できる方が、特に宿泊施設の付いた滞在型の研究所があれば、非常によろしいのではないか。日中の一定の時間に共同研究をしているというだけでは、なかなか新しいアイデアは生まれないので、やはり食事の後とか、そういうものも交流できるような施設があれば非常に効果が上がるのではないかというのが、私の考えでございます。

【若山主査】  どうもありがとうございます。

 それでは、中川先生の方から。

【中川委員】  私のは、数学モデルというのが一つの成果になると思うのですけれども、数学モデルだけではイノベーションまでつながらないので、イノベーションにつなげるための数学モデルが満たすべき要件として、1)2)3)を挙げさせていただいています。

 そういうモデルを作るためには、下線を引いているところにありますように、多様な専門性を有する人材が集まって一緒に議論する場が要るという。

【若山主査】  頂きました意見は同じ方向の御意見だったと思います。

 それから、それに加えまして、今は触媒型拠点というか、仲介機関というか、多様な人が集まれる場所が必要であるということでありましたけれども、ワークショップ等の内容とか運営について、青木先生から御意見頂戴しておりますので、御説明いただければと思います。

【青木委員】  細かいことなんですけれども、ワークショップをただやるだけでは十分ではなくて、もう少しワークショップの目的がはっきりしたものをまめにやった方がいいのかなと思って、一つは、数学と余り関係のない素人に、数学者が最近の研究なり専門分野を少しわかりやすく話して、一種の啓もう活動というのと、もう一つ、これはもう従来にも、既に存在するワークショップだと思うんですけれども、進行中のものを発表していくワークショップ。最後に、数学者が他分野のワークショップにも参加していただきたいというのは、多分数学の最先端の問題を作りましょうというのは、既存のものをやっていたのでは生まれてこなくて、何か新しいものに接していただきたいと。しばしば理系の人に経済のことを説明すると、よく「自明ではないですか」と言われるので、多分、他分野のワークショップというのは理解がしやすいのではないかと思いますので、そういう場もたまには作ったらいいのではないかということです。

【若山主査】  どうもありがとうございます。

 それから、このセクションでは産業との連携ということで、安生先生から御提案いただいています。

【安生委員】  一つ目の丸は少し茫漠としているかもしれませんが、長期間の「経済的及び精神的」というのは、大学と産業間でやるという意味で考えると、どちら側にも覚悟が必要です。すぐ成果が出るとか、あるいは、こういうことをやりましょうというテーマが分かっていれば、誰も苦労しないわけです。ですから、お互いに覚悟を決めて長期間連携して続けていける形を作るべきだろうということですね。

 二つ目のインターンシップということですが、うちの会社でも実施しています。例えばCGの分野でも、ピクサーという、皆さんも御存じの方がいるかもしれませんが、アニメーション制作会社にいる何人かは、もともと大学の教授をやっていた方、曲面とかそういうものを研究していた方が、短期間でも滞在している。アドビという、フォトショップなどを作っている会社にも、ワシントン大から研究者が行っています。そういう形で、企業に長期的に滞在し、研究活動をすることができるようになってくると、やはり、大学の先生方も最先端の産業側の実態を体験できますから、学生さんに対してもインターンシップに行きなさいよと言えるのではないかと思います。

 

【若山主査】  どうもありがとうございました。

 ここでちょっと切ってもよろしいんですけれども、次の「研究から数学イノベーションへつなげる仕組み」、ここもやはり研究そのもののことをある程度扱っておりますので、引き続いて、頂戴している御意見を御紹介いただきたいと思います。

 中川先生、お願いします。

【中川委員】  私のは、先ほど、御報告した内容と同じですけれども、数学をコアにしたオープンイノベーションのプラットフォームができたらいいなというふうに書いています。下線にありますように、領域横断的に多様な専門性を有する人材が、このプラットフォームに魅力を感じて、自発的に集まるような仕組み作りですね。これは何かというと、多分、他分野の人から見ると、こういう場に参加することで、自分たちの問題が解決できて、ブレークスルーができるだとか、実績とか、あとは自分たちの開発工期が驚異的に短縮できるとか、そういうふうな成功体験を、こういう場を通じて持っていただくということの実績の積み重ねが大切だと感じております。

 その下の1、2、3は、これの運用方法の一つの案で、1番は、ここで議論する課題をうまく抽出することが大事だということで、それは多分、分野の個別課題だけではなくて、その課題が水平展開できるような、一般性を持った課題にうまくテーマ設定をする、そういうことが必要だというのが1番です。2番は、数学者側の話を書いていますけれども、課題ごとにタスクフォースチームを作って、専門性を有した数学者の人たちに集まっていただく。そのときに、純粋数学の方も、この中で活躍できるような仕組みができるように運営をするというのが二つ目。三つ目は、諸科学・工学・産業側の話で、数理モデルから得られる新しい知見をチームメンバーが持ち帰って、自分たちで実験、検証して、あとは研究成果から社会的価値を生み出すような研究開発につなげていく。そのためには予算が必要だと思いますので、そういうお金に関しては、当該分野の人たちの研究分野からお金を持ってくるということで、全体の運営をうまく回していけるのではないかなというふうに考えております。

 四つ目は人材育成の話で、これは基本的にオープンですから、ここで議論した内容はどんどん論文にして、それで新しい刺激を受けて、そういうふうな広がりを作っていくということです。

 以上です。

【若山主査】  どうもありがとうございます。

 それでは、ここでの最後として、短いですけれども、研究チームの編成について、青木先生、中川先生、御意見いただいていますので、簡単に御紹介ください。

【青木委員】  ここに書いてあるとおりなんですけれども、いろいろな、少しずつ性質の違う人を一緒にした方がうまくコミュニケーションがいくのではないかと思って、構成員の工夫を少しするといいかなと思ったので、そう書きました。

【若山主査】  どうもありがとうございます。

【中川委員】  私も同じです。基本的には、日本の事情としては、欧米、中国と比べたら、多分、圧倒的に応用数学者が少ないので、ということは、逆に言うと純粋数学者にうまく入っていただいて、日本独自のそういう仕組みができれば、もっとすばらしいなと思います。

【若山主査】  ありがとうございます。

 最後に私がちょっと書いたことは、少し奇異に映られる方もいらっしゃるかと思いますが、一つには、戦略的創造研究推進事業のプロジェクト、CREST等をはじめ、幾つかの大きなプロジェクトが立ち上がっておりまして、もう前半にもありましたように、諸科学分野で、数学あるいは数理的な手法の重要性をうたっておられるプロジェクトはたくさんあります。しかし数学が、例えばそういうところに大きなプロジェクトを組もうとした場合に、数学の人が一人ずつ割り当てられて入っていれば十分なのではないかという意見が、しばしば出てまいります。

 もちろん、共同研究というか、現在、産業界にしても諸科学にしても、実験を伴う分野では、チームによる共同研究が中心となっています。そのときに、単に割り当てられてというだけで、モチベーションがもちろんなければ、どなたも喜んでは参加はしないでしょうし、高いモチベーションで参加するということがなければ、やはり大きな成果は期待できないと思います。

 そういう意味で、モチベーションを持って参加できるようなチームづくりというのを考えていく必要があること。集められたチームとなってしまっては、やはり大きなことは期待できないということを注意したくて書いた次第です。

 さて、以上、問題点であるとか推進方策、後で議論になります必要な人材、教育に関係するところにも当然関係してまいるわけですけれども、ここまでで、どこか抜けているとか、これは少し違和感があるというふうなことを、これからこの文書をまとめていく際に注意する点等について、御意見等ございましたらお願いいたします。

【中川委員】  「諸科学・産業」とありますけれども、工学はどこに入るんでしょうか。

【粟辻融合領域研究推進官】  ここで言っている諸科学、「諸科学」という表現がそもそもいいかどうかは別にして、いわゆる広い意味での数学以外の学問分野を「諸科学」というふうに整理して。

【若山主査】  むしろ、少しアカデミアというイメージを持って書かれているんだと。

【小谷委員】  社会科学なんかも入っているんですよね。

【粟辻融合領域研究推進官】  はい。それ以外という意味ですので、それ以外というのを「他分野」というふうに言うことも可能なんですけれども、他分野というと、何か数学帝国主義のように思われるのではないかという懸念もあって、「諸科学」という表現にしているんですが、誤解を生むようであれば、もう少し。

【中川委員】  工学が抜けているような印象が何となくありますので。

【粟辻融合領域研究推進官】  はい。

【若山主査】  それは大事ですね。ほか、ございませんでしょうか。

【北川委員】  御提案の内容に必ずしも反対するわけではないんですが、議論しておいて、深めておいた方がいいかなというか、面白いかなと思って発言させてもらいますが、数学のこういう問題を考えるときに、訪問滞在型の研究所というのがよく出てきます。確かに欧米諸国にはかなりそういうのがあって、私もニュートン・インスティテュートと、ミネソタのIMAに滞在したことがあります。非常に良かったと思います。ただ、それが本当に、今ここで考えているのかどうか知りませんけれども、社会的な問題の解決につながるかどうか。個人的に面白かったし、いろいろな分野の方と交流できて、知識も知見も広がってよかったんだけれども、何か問題解決と直接つながったわけでもないような気もするんですね。やはり本当に数学で世の中のイノベーションを起こしていこうとすると、これも必要だけれども、更に踏み込んで、研究を本当に実施していくところまで考えておかないと難しいのではないかというふうに思います。

 自分の分野のことで恐縮ですが、統数研ではもう二十数年、大学共同利用機関として活動してきて交流自体やっているんですが、最近の障害というのは、問題を持ってこられて、話していると、これはこういうのでいきそうだというところまでわかるし、やってくださいと言われるんだけれども、やる人がいないんですよ、実は。教授とか我々が実際やる時間はほとんどない。ところが人材が育成されていなくて、PDぐらいでやってもらえる人がいなくてできないというのが多いんですね。

 一つ具体的に言うと、JR東日本から、運行管理の問題で強風予測とかやってほしいと。人件費を出すから、そちらでシステム開発までやってくださいと言われたんだけれども、残念ながらできませんと断って。結局それは、こちらで最初コンサルティングに従って、向こうが実際に開発して、新幹線の運行に使われるところまで行ったんですが、多くの場合は、そう答えると、それでおしまいになってしまう。「ありがとうございました」で、話を聞いて帰って。

 やはり、数学の人材を育成して、こういう実際の問題をできるような人を育成していかないといけないのではないか。人材の育成、後の話かもしれませんけれども、やはり。それを実施できるような組織も一つ、この滞在型もいいんだけれども、滞在型のほかに持っておかないと、滞在型で、「ああ面白かった、これでできそうですね」でおしまいになってしまうのではないかなという危惧を感じています。

【若山主査】  どうもありがとうございます。大事なところでありまして、今、北川先生もおっしゃったように、その次のところでこの話はしないといけないのかなとは思っておりましたが、もちろん一緒にやってもよろしいですので。

【北川委員】  それともう1点。我々の機構で、研究者交流促進プログラムといって、六箇月以上1年以内、これは大学ですけれども、大学の、私立であろうが、来ていただく研究。それで年俸の1.3倍、こちらが相手の法人に出しますという、全部出してやる。

 そうすると、研究者は非常に興味を持つんだけれども、今のこの忙しい時点で、すぐ出てこられないんですよ。非常に障害になっていて、そうすると実際の、計画的に2年後とかいうんだったらできるけれども、何か問題を持ってこられて、半年以内、1年以内に解こうとするときに、半年来てもらうなんて、多分とんでもないんですね、現実的に。

 だから3週間ぐらいのセミナーだったらできるけれども、現実的に難しいのではないかという印象を持っています。

【小谷委員】  私が提案した触媒型、若しくは滞在型研究所では、先生がおっしゃられたニュートン研究所などで実施されている、半年、1年間の研究もあるんですが、数年単位でプロジェクトをやってもいいのかなと実は思っております。今、課題解決型研究の重要性が言われていて、今ある課題解決に分野を越えたチームを組んで立ち向かわないといけないということですが、解決してしまうと、そのチームはもう必要なくなります。ある課題解決のために研究所を作って、人を付けてしまうと、結局もうそれ以上何もできなくなりますが、数学の特性を生かして、課題を解決するために、ある時期に人が集まってチームを組み、問題開発に始まって、解くところまでを取り組む。終わったら解散する、そういうことができたら良いのではないかというふうに思いました。

 ただ、今、北川先生が指摘されたことも非常に大切で、なぜ世界中で半年、1年単位のスペシャルイヤーを組んでいるかというと、サバティカル等を利用しないとなかなか、本務を離れてこられない。数年単位で問題解決チームを組む場合、うまい仕組みを作るのは非常に難しいかもしれません。

【北川委員】  日本でサバティカルがまだ定着していないというのがある。大きな大学以外は。

【若山主査】  それもありますね。

 ほかに、この場でございませんでしょうか。

 それでは、主査が意見を述べては余りいけないとは思いますが、少し紹介を兼ねて、今の先生方のお話に関連して、1週間ほど前にベルリンに行っておりまして、MATHEONという、数学をキーテクノロジーとする、ベルリンの三つの大学と二つの研究所が合わさって200名ぐらいの数学者が参加している、アプリケーションドリブンなファンダメンタルリサーチということをうたって、企業等との共同研究も非常に積極的に推進しているところに行ってきました。

 そこでいろいろな方とお話ししたんですけれども、一つにはやはり、先ほど北川先生がおっしゃったことに深く関係している時間の問題というのがございまして、例えば、数学で、産業界とかいろいろな分野の人たちと共同研究をするといったときに、確かに数学は、今日の冒頭にもございましたように、普遍性があり、水平展開可能であるという性質、特質を持っているわけですが、一方で、やはり数学関係者は、共同研究をするときに、その分野のことを知るという勉強が、本を読むという時間も必要でしょうけれども、ディスカッションするという時間も必要で、それはどこにでも使える、実際には数学の本質的なところはどこでも同じだといえども、やはりそこに行き着くためにはいろいろ勉強しなければいけないわけです。

 その意味で、強くMATHEONで言われたことは、普通の意味で大学の先生では時間がなさ過ぎて、不可能であるということを強く言っておられましたね。お一人だけではなくて。それで、そこのシステムづくりというので少し工夫をされているという、時間があれば御紹介しますけれども、そんなところがございました。

 それともう一つ、これはそこでも議論があったんですけれども、私が九州大学のIMIというところにいまして、産業界の方々と共同研究というのを少しずつ進めていく際にすごく感じていることなんですけれども、私たちも知識がないということの一方で、数学についてもう少し、こんなことを言ったら叱られるかもしれませんけれども、知識とか感覚を、基礎的なところをもう少し持たれていると、もっとその共同研究が進むだろうと。効率的であるし、内容も濃くなるというふうに感じることが強くあります。

 その意味で、やはり大学における、数学科ではなくて、ほかの分野の数学の教育というのは、このイノベーション促進には欠かせないポイントになってきていると思います。その意味で、やはり数学あるいは数理科学の研究者の時間の必要性というのは、イノベーションを起こすために最も重要なポイントの一つであるかなというふうに考えている次第です。

 ちょっと長くお話ししてしまいました。申し訳ございません。

 さて、私、今、発言させていただきましたけれども、どうしても、将来に必要な人材についての議論が避けて通れないことは、皆様方よく御承知であると思います。また、研究の仕組みとかという議論に元に戻っても差し支えございませんが、次の3番目の「数学イノベーションに必要な人材」というところに入って、議論を進めていきたいというふうに思います。

 そこで、まず7ページの下の方から始まるんですけれども、杉原先生、少しお考えを頂戴できますか。

【杉原委員】  その前に5ページから。5、6ですね。

【若山主査】  そうですね。

【杉原委員】  これはイノベーションに必要な人材を育成するに当たっての、多分これまでの問題点みたいなことを指摘しなさいということの宿題があったので、それで私がちょっと私見を述べたんです。まず、これは大学サイドにおける人材不足の点に関して書いたんですけれども、「人材不足は明らかであるが」というので、一番大きな原因というのは、これは私が考えるところですけれども、数学科において人材を育成する必要性が認識されてこなかったためだと思います。今現在は大分変わっていると思いますけれども、かなり、以前はやはりそういうふうだった。

 実は別の場所で、文科省の方から少し伺ったのですが、大学院化、大綱化するときに、数学科は、応用系をやるという申請でかなりのポストを取っていかれた。ところが開けてみたら、結局そうはならなかった、ということをおっしゃっておられたので、文科省では、人材の必要性は、認識はされていたんだと思うんですが、結果としてはそういうふうな形でもって、うまく機能しなかったんだと思います。一旦大きくなって、それを縮小することは不可能ですから、なかなか。それが現在に至ってしまった部分もあるだろうと思います。ただし、今、若山先生の所属されている九州大のように、それを再度きちんと整理するというようなことをやっていらっしゃるところもありますので、これからこれはかなり改善されるのではないかと期待されると思っています。

 それから、先ほど統計関係に関して、数学科にはほとんど人がいらっしゃらなくて、経済だとかほかのところにいらっしゃるという話が出ましたが、応用系の方の所属場所が必ずしも数学科ではないということによって、数学イノベーションに意識が向かなかったということもあると思います。数学科の人たちにとって、例えば統計の講義を聴くこともないし、そういう関係者も余りいないとか、その辺りもやはり、うまい具合に、数学の方が諸分野に意識を向けられるとか、産業界に意識を向けられるとかいうようなところに至らなかった大きな理由で、かつそこで人材が育成されなかった理由ではないかというふうに思います。

【若山主査】  どうもありがとうございます。その次に。

【杉原委員】  その次は、諸科学と産業界に関してですが、やはりそこに関しても人材不足であるとは思われますけれども、諸科学に関してはちょっとよく分からないところがありますけれども、ただ企業においては、数学の必要性がやはり余り認識されてこなかったのではないかと思います。

 一般に、企業の方に、数学を活用するというような意識が十分ではなくて、そのために産業界とを結ぶ人材も育成されてきませんでしたし、企業側が要求しなければ、大学側も必ずしもその必要性があるという認識もしないというふうに、お互い様だと思いますけれども、そういうような形でもって、うまい具合に回らなかったというのが現実ではないかと思います。それを今ここで、いろいろアイデアを皆さんに出していただいて改革しようという状況にあるのではないかと思います。

 私、ちょっと8ページのところに本を書きましたけれども、これはシュプリンガー・ジャパンから出ている本で、『数学が経済を動かす』というタイトルで、ドイツの企業がどんなふうに数学を有効に使っているかという話が出ています。これは、先ほど、若山先生から、ドイツで産学連携が進んでるという話が出ていましたが、やはりかなり先進的な内容が書かれています。

 それに対して、同じシュプリンガー・ジャパンから出ている、我が国の儀我先生と小林先生による『数学は役に立っているか?』という本があり、答えは「イエス」というふうに書いてあるんですけれども、読んでみると、ドイツとかなり差がありがく然とするというのが残念ながら事実でございます。もちろん―こういうと著者の方に大変失礼に当たるんですけれども―この先生方が選ばれた企業が良くなかったという可能性もゼロではないですけれども、多分平均的なところを取ってこられたのだと思うと、大きな差を感じる部分がありますので、やはりこのあたり、ある程度先進国のドイツのまねをするというんですか、若山先生がおっしゃったようにドイツにはいろいろ英知があると思いますので、そういうのをまねしていくと改良ができるのではないかというふうな気もします。

 最後は感想ですけれども、以上です。

【若山主査】  どうもありがとうございます。今の意見ですけれども、企画・編集に関わった方のお一人は、苦しかったということをおっしゃっておりましたので、推して測るべきかというふうに思います。

 それで、ドイツのことをさっき申し上げましたけれども、MATHEONと、それからもう一つフラウンホーファー協会というのがございまして、そこに応用数学の研究所がございます。前に委託調査を受けましたときに、東大の山本先生とか、九大の福本さんとかが訪ねていかれたんですけれども、そこは基本的に、自分たちが企業から問題を持って来る、産業界から問題を持って来る、あるいは産業界から来た問題を解くということがミッションでして、極端な言い方をすると、来た問題は断れない。それが、その応用数学研究所の役目であると。ですから何らかの答えを出すというのがミッションであるそうですが、非常に成功しているという言い方をされています。そこと、先ほどのMATHEONとは、そういう意味で随分と違うということは、いろいろな人が強調しておりました。御参考までに。

 それで、私、ここを書きましたのは、皆さん御存じのように、せっかくというか、数学を専攻されたのに、その後、いわゆる数学以外の分野に移られた方とのつながりというのが、これまで非常に薄い。これはもったいないことであるということを書きました。やはり会ってお話しすれば、青木先生もそうですけれども、非常に豊かなことが期待されるわけですし、そこは少し、心の問題かもしれませんけれども、気にしていく必要があるのかなということです。安生さんは。

【安生委員】  私が書いたのは、もう既に今までお話に出たようなものの言い換えみたいな、同じことを言っていると思いますけれども、私は産業側にいる者ですが、たまたま数学を少し知っているもので、CGを研究していると、これは数学のああいうことに相当しているということが分かったりして、逆にCGプロパーの人にも説明できるみたいなことがあります。その逆もありますし、そういう人がいるというのは、特に新しいことをやるという意味では非常に役に立つだろうし、ある意味不可欠ですね、違う分野の人が寄り添うというのは。ということで、こういう人がいろいろなところに、私としては数学の側から出てきてくれると面白いなと思っています。

【若山主査】  どうもありがとうございます。

 それで、右の欄に、大学等における教育内容とか、キャリアパス構築とか、諸科学分野における同様のこと、それから産業界における対応について、御意見等を頂戴しておりますので、簡単に御紹介いただきたいと思います。

 私が長く書いておりますけれども、要点は、学部段階では新しい、計算機も発達したこの時代、よりコンピューター言語の習得とか、データを扱う統計学の基礎の習得も重要となってきていることを前半に書いておりますけれども、やはり博士課程の在り方ですね。というのを、これまでもありましたけれども、今日も青木先生から少し御発言ありましたように、大学院教育ですね。一つの先端的な、指導教員がやっている方向の仕事だけをやる、そして博士論文を作成するのではなく、もう少し、博士論文に着手するまでにいろいろなことを学ぶ機会があった方がいいのではないかということです。それから、キャリアパス構築としまして、長期のインターンシップとかスタディグループ活動などの参加というのは、大学院生自身に興味を持ってもらうとか、情報を与えることが言っても大事ですし、人との交流ができるということが非常に大きいことであるということを書いております。やはり生身の人間と付き合うことが重要だという、そんなことです。

 その後、大島先生から、数学や数理科学をバックグラウンドに持った人材の採用を促進することが非常に重要であると。それは私も常日頃思っておりますし、また、その人たちを、大学の数学教室から離れた途端、数学に縁のない世界に去ってしまったと考えるのではなくて、むしろ積極的にその人たちと交流を持っていくということは大変重要なのであるというふうに考えています。大島先生もそのようなことを書かれているんだと思います。

 それから、諸科学分野における人材育成について、青木先生、お書きになっていることを簡単に御紹介いただければと。

【青木委員】  これは一橋大と、私のいたことのある大学のことしか分からないんですけれども、もう少し早い段階で、数学ともっと接する機会を作ればいいのではないかというのが趣旨ですね。だから一般教養課程で数学も必須にするべきだということと、あと、専門に応じて少し数学の教え方も工夫するようにして、早い段階で、マス・リテラシーと言いますよね、それを学部段階で努力するのは、長期的に非常に効果があるのではないかということです。

【若山主査】  どうもありがとうございました。

 その後で、私は、現代における批判というか、不満も少し入れて書いておりますけれども、ここには、将来いろいろな分野に進む学生たちにも、広い意味での数学的な訓練をもっと行い、基礎力を付けさせるということは、とてもお互いにとって大事で、将来にとって大切だということを書いております。

 中川先生。

【中川委員】  企業の方で、次の8ページ目の下線のところで言いたいことが。

 数学者が活躍できるような、うまいテーマの設定をする能力、これはやはり企業側に求められると思います。

【若山主査】  目指すところは皆さん同じことを書いているんだというふうに思います。大島先生もそのような書き方をされております。

 それから、一つの、これはボトルネックでもあると思うんですけれども、今日もございましたように、そういう仕事をしていく、研究をしていくときの評価の問題というのは、ここに私が書いたことだけではなく、やはり大事なんだと思います。そのためにも、異分野の人たちが出会う機会がありますと、そして生身の人間として付き合いますと、その人がやっていることがいかに重要だとか、そういうことが徐々に分かってくるんだというふうに思います。そういうところから評価に対する一つの答えが出てくるのではないかというふうに考えている次第です。

 それから、数学と諸科学、産業界との間をつなぐ人材ということで、宮岡先生。

【宮岡委員】  教養課程において、ほとんど出来上がった数学しか、今、実際は教えていないわけですね。それを、どうやって現象を数学にしていくか、モデリングの問題を、少しは、簡単でいいですから、教養段階からできるだけ教えた方がいいのではないかというのが一つです。

 それから、こんなことまで踏み込んでいいのかよく分かりませんが、例えば経済学部だったら、今、東大の場合だと経済学か数学の、どちらかが必修なんですね。でも、それは数学と両方必修にしなければいけないのではないかというのが私の感想でありまして、それから文系の大学入試でも、数学Ⅲぐらいまでは、法学部とか行政でも、やはりそのぐらいは必要なのではないかと。特に経済なんかは数学Ⅲを課していないのは変ではないかと、それは思います。

 だから、できるだけそういうふうに数学のリテラシーを文系の人にも、工学系とかはもちろんですが、文系まで含めて高めていってほしいなというのが私の考えです。

【若山主査】  どうもありがとうございます。

 最後に、私は、もうこれまでに、やはり全体的な意識の改革というのも必要なんだろうと思います。ヨーロッパ数学会が出しております、ヨーロッパ数学会というよりは、出しているのはヨーロピアン・サイエンス・ファウンデーションか何かですけれども、そこでもやはり意識の改革というのは、数学・数理科学者側、それから産業側も考えていかなければいけないことだと。

 それから、ちょっと補足になりますが、今日の青木先生のスライドにも、最後にあったと思いますけれども、私たち九州大学はもちろん福岡にありまして、福岡にも産業はそれなりにたくさん、小さな産業があります。大きな企業の方たちというか、そこにはR&Dがあって、数学に対するいろいろな意識が高い。そして基礎力もお持ちの方がたくさんいらっしゃるわけですけれども、小さな会社とか中くらいの会社、あるいは新しい会社ですね。数理科学的な仕事に特化したところは別ですけれども、それ以外のところというのは、非常に数学との関連が薄い感じがいたします。しかしながら、そういうところからイノベーションというか、産業のイノベーションが起きることも多々あるというのは、欧米を見ていても感じるところですので、そんなところもやはり人材を出していく、それからつながっていくというところで大事なのかなというふうに考えている次第です。

 時間は、私のせいでどんどん過ぎてまいりますけれども、皆様、どうぞ。

【粟辻融合領域研究推進官】  先ほど、中川先生から御発表があったり、あるいは御意見があったりした中にちょっと関連するんですけれども、例えばオープンイノベーションであれば、課題をいかにうまく設定するのかというのがすごく重要かなと思っています。それは単に企業がこういうふうに困っているとか、ああいうふうに困っているという課題ではなくて、もう少し数学的なものをうまく使えて、数学者も参加する魅力が感じられるようなもので、数学者が論文にも使えるようなものというようなイメージだと思うんですけれども、こういう課題を、ではどうやって設定すればいいのかと。あるいは、そういう課題の設定を促すような仕組みというのは、どういうものが必要なのかというところにちょっと関心があるんですが。

【中川委員】  私の場合は、昨年の一連の数学と諸科学・産業のワークショップで3件発表させていただいたのですけれども、あの課題というのは急に出たわけではなくて、5年前からずっとやっていて、チームとして何をすればいいかということがある程度分かるようになってきたことが、今回の発表内容につながっていると思います。

 やはり継続というのが大事だと思いますので、ワークショップにしても、そういう何かの課題を出すのであれば、そのための準備があって、それからそういう実際の研究という段階を踏む必要があるのかなと思います。

【粟辻融合領域研究推進官】  あるテーマで継続的に集まるような場を作っていて、そこでいろいろ議論していく中で、こういう、いろいろうまい課題が見えてくるみたいな、そういうイメージでしょうか。

【中川委員】  そうですね。そういう中で実際に参加される人全員がメリットを感じられるような課題を、絞っていくことができれば大きな動機になるわけです。

【粟辻融合領域研究推進官】  なるほど。最初からこういうのがあるというわけではなくて……。

【中川委員】  それはなかなか厳しいような気がします、個人的には。

【粟辻融合領域研究推進官】  いろいろある中で選択されていくという。

 ありがとうございます。

【若山主査】  人材育成は不可欠である、それからつながりを高めていくことは重要であるということは、ほとんど自明のことだというふうに思いますけれども、先ほどはちょっと中途半端に終わってしまったかもしれないんですけれども、北川先生、もう少し御発言が。

【北川委員】  人材育成が大事なのは間違いないんですが、どういう人材が必要かというところをやはり考えておかなくてはいけなくて、我々の分野というか、統計関係ではもうほぼ明らかになっていて、それは、要するに統計的方法あるいは理論だけ勉強しても駄目で、実際の問題を解こうとすると、その分野の知識をかなり本気でやって、理解できる程度にはしておかないといけないということだと思います。私も研究所に入って以来、統計の研究者は3倍勉強しろと言われてきました。統計のこと、それから対象領域のこと、それから自分で、ソフトを利用するだけではなくて、プログラミングができる計算能力を持てと、その三つを3倍努力するということを教えられてやってきたんですね。

  最近、やはりそういう人もなかなか少なくなっているということで、統数研は昨年暮れぐらいに、統計思考院というのを作ったんですが、これは道場のイメージで、ドクターを取ったぐらいの、PDぐらいの人に、統計を出た人には実際の領域の問題を、もうたたき込む。逆に領域の方から来た人には、統計とか数理とか情報処理、それを勉強してもらって、それも集中的に、個人的に、1対1ぐらいの教育でやろうという組織を作っています。

 それで、やはりこういう融合研究には、よく言われているT型人材、できればパイ型人材というのが必要で、これは統計だけではなくて、数学も全く同じだと思うんですね。やはり方法論の科学という特徴を持っていますから。だから、数学から進んだ人は領域の方をちゃんとやらないといけないし、領域の方から数学を使おうとしたら、単にソフトを使うというのは全く駄目で、やはりかなり勉強しないといけない。

 そういう人材を作って、そういう人材ができると、コーディネーションとか、あるいはモデラーとか、そういう役割を果たせるようになるんだと思って、それが必要ではないかなと思っています。

【若山主査】  一つ質問ですけれども、先生がおっしゃったことは全くそのとおりだと思うんですけれども、その基になるところは、どういう仕組みを作ればいいんですかね。例えば統計思考院等を作られて、ドクターを取ったぐらいの人たちがいろいろな、初期段階としてはちょっと違っても、いろいろな方法があるわけですけれども、そこにそういうチャンスを与えるとか、そこに行き着くまでの学生が持つ、やはり興味を持たないといけないわけですし、もうちょっと下の方から教育ということを考えていかないと、このイノベーションにはつながっていかないような気がするんですけれども。

【北川委員】  その大学院レベルとか学生レベルをどうするかというのは、また問題かと思うんですが、ちょっと質問とずれるんですが、我々のところは、従来プロジェクトでPDを取っていたけれども、そこに使ってしまうのがあるんですね。どんと統計思考院というところに入れて、ほかの、ライフの人とか、地球物理の人も一緒の場にするために、本当に400平方メートルのスペースを作ったんですが、そこに入って交流しながら、他の先生とも交流できるような形にしたら良くなるのではないかと期待しつつ、始めた状態なんですね。

【杉原委員】  インセンティブとしてはどうなっているかというか、その後、そういうキャリアを積むことによって何かメリットがないと、なかなか学生もそういう幅広い勉強をするようなインセンティブが湧かないかもしれない。つまり深くやる方が面白いと思う学生の方が多いかもしれない、数学であれば特に。

【北川委員】  だからそういう意味で直接のインセンティブはないかもしれないけれども、今、数理科学とか統計とか情報処理で、いろいろな分野の人から、そういう分野の人がやはり期待されているんですね。だからそこになかなか入っていけないんだけれども、そこに入っていけるような人材ができますというのが隠れたインセンティブ。

【杉原委員】  そういうような枠組みがなかったから、まずは作ったという。

【青木委員】  ほかのものに結構元々興味のある人でも、ある程度数学がマスターできるようにするという考え方もあるんじゃないでしょうか。数学が好きな人をほかの方向に向けるというのも大事ですけれども、と思うんですけれども。

【北川委員】  だから両方を狙っていて、そちらの方に数学とか統計的な方法をマスターしてもらうという、両方を狙っているんです。

【青木委員】  なるほど。

【北川委員】  縦か横だけの人を、縦プラス横でTにすると。

【青木委員】  そうです、そうです。

【若山主査】  議事の進め方が不手際で申し訳ございません。しかしながら、せっかく、ある意味でのフリーディスカッションが始まっておりますし、議事録にも残すことができて、それを参考に、また、このイノベーション戦略の報告書を作ることもできます。ここで、まだ今日出ていないけれども重要だとお考えのことがありましたら、少し御発言いただきたいんですけれども。

【北川委員】  もう一つ、今いろいろなプログラムが実施されています。それは面白いと思うんですが、やはりそれがばらばらに終わらないで、その間の、プログラム間の交流のシステムというか、仕掛けを作っておく必要があって、そういう意味で、それぞれでやるというより、あるいは一つだけ作るというよりも、ネットワークをうまく作っていくというのが必要ではないかなと思いますけれども。

【内丸基礎研究振興課長】  まさにネットワークの話を、僕は質問をちょっと最後にさせていただこうかと思ったんですけれども、いろいろ読ませていただきますと、本当に今いろいろな活動が行われていますので、その間のネットワーキングをどう作るかというときに、昔からネットワークの作り方はいろいろな作り方がありまして、中央にホストコンピューターがどんとあってやるスター型のもあれば、今のインターネットのように、ルールが決まっていて、全てが中心になっていて自発的に動くようなネットワークとあるんですけれども、今回、こういう交流をやっていこうとすると、どういうネットワークの、ほかにももっと、第3、第4のネットワークのモデルもあると思うんですけれども、どういう形のネットワークにすると面的にどんどん効率的に広がっていくかなというのを、もしお考えがあったらお伺いしたいなと思っているんですが。

【北川委員】  先ほどの小谷先生のイメージだと、スクラップ・アンド・ビルドで、数年単位でどんどん変えていくというイメージでお話しされていましたね。

 ただ統数研の場合は、そんなに広い領域をカバーできないので、今、NOEという形で五つ、リスクとかサービスとかシミュレーション、調査、そういうのを作っていますが、それに関連する分野って非常に広いわけですね。例えばリスクだと、ファイナンスから医薬品、食品、環境などのあらゆる分野。そういうところを数理科学が中心になって、ハブの形になっていろいろな分野とのネットワークを作る。現時点で我々がやっているのは、特定のサービスとか、そういう問題に関して作っているんだけれども、数学で、全体でももっと大きなネットワークの、更にネットワークできれば、もっといいかもしれません。

【内丸基礎研究振興課長】  既にいろいろな大学で、大きいところでは、本当に統数研、九大、北大は、本当にどーんと、学内組織というか、そういうのもあれば、学内の数学の相談窓口的なところを作っている、もう大小様々ですけれども、何らか各大学に、窓口となるような人は、どうももうできているような感じがありますので、それを全国的につないでいくときの、つないでいき方と、あとは今おっしゃったように、連携する分野別の個別のネットワークがあったら、それを更にオーバーライドするようなネットワークというんでしょうか、何かいろいろそういうものが、ちょっと頭の中でぐるぐる回っていまして、どんなのが一番いいんだろうかというのが。

【若山主査】  ネットワークについては、やはり面的に広げるということはものすごく大事なことだと思います。それと、いろいろなプロジェクトがあって、先ほどの小谷先生のスクラップ・アンド・ビルドという話もありましたけれども、例えば5年とか10年で非常にシビアな評価があるということがあってもいいと思うんですけれども、その後がきちんとしていれば続くというふうなことが見えていないというのが、先ほどの小谷先生の案のように、何かを実行していこうと思ったときにも難しいですね。それから既存の、北川先生のいらっしゃった統数研にしても、どこの大学の数学教室でも同じだと思うんですけれども、大きいプロジェクトのある程度まとまったものがあっても、3年たったらもう分からない、5年たったら分からないということでは非常に不安定で、割と数学とか数理科学をベースとするようなネットワークを組んでいくときに障害になる気がするんですね。そこのところを、むしろこの戦略の中に盛り込まないといけないのかなというふうにも思っています。

 時間は有限ですので、最後に、もしございましたら、発言。よろしいでしょうか。

【北川委員】  課長の質問に関連するかどうか、一時期トヨタが非常に品質管理で、最近はよく分からないですが、十、二十年前、うまくいったときは、もういろいろな営業所等の整備のところで問題が起こったのを全部共有できるようにしていたんですね、情報共有。

 企業との共同研究になると非常に難しい問題はあるけれども、そうでない部分で、例えばいろいろな拠点を作ったら全部で問題を共有できるようなシステムを作るとか、そういうのも考えていいのかなと。共同研究はちょっと難しいような気がしますけれども。

【安生委員】  問題ありますよね。出せる問題と、出せない問題。

【若山主査】  それに関しては、5年とか10年というよりは、20年後のビジョンというものを少し出すことができると考えやすいかなという気はいたしますが。

【太田基礎研究振興分析官】  一番最初の問題で、仲介機関とかのイメージがいまひとつ湧かないんですけれども、つまりネットワークでバーチャルな機関を作るということは、割とお金をかけないで簡単にできるんですけれども、そうではなくてハードな、センターみたいなものを作る。それの運営を限りなくオープンにやるということにしても、そこで例えば、それが単にクリアリングハウス的な機能だけ持つのか、あるいはそこで研究するのかとかということでも、随分設計の仕方が違うと思うんですね。

 そこで研究するとなると、先ほどの北川先生の話のように、そんな全部に対応を、全ての問題を請け負って、そこで研究するなんていうのは、ちょっと考えても絶対不可能なので、やはりそれなりにクリアリングハウスというか、中間、中継機関的な機能はもちろん持つのでしょうけれども、そのバランスをどうするかとかというのは、どういうイメージなんでしょうか。

【宮岡委員】  それは多分、先ほどドイツの話が出ていましたけれども、うまくいっているのを少し勉強する必要があるかと思っています。日本固有にモディファイする必要はあるかと思いますけれども、今まで日本で全然そういうことを、全くやってこなかったので、その辺りの成功例、個別には多分あると思いますけれども、そういうシステマチックにやったことは一度もないので、やはりそういう前例を少し勉強する必要があるというのが、多分一つの答えになるのではないかと私は思いますけれども。

【中川委員】  やはり自主的に集まれるような仕組みで、実績を残していく、それを継続させるということが大切かなと思います。当面は、多分手弁当でみんな集まって、そこで議論すると何か自分たちにないものが出てくるということであれば、どんどん人が集まってくると思います。あとはどこかのタイミングで、そういうチームが継続的にお金がどこかからゲットできるよう仕組みを作る。それは、私が先ほど提案しましたように、当該分野の人たちの予算かもしれません。そういう人たちが、そのチームで新しい発見をして、実験をして検証をする、お金をもらいにいくということができれば、みんなハッピーになります。

【北川委員】  そこに行く人って、どのくらいのレベルの人のイメージなんですか。年齢とか地位とか。

【中川委員】  教授クラスの方がメインにいらっしゃって、若い人を呼んでくるという感じですね。

【北川委員】  問題は、その若い人が、そこで二、三年、非常に成果を上げても、その後どうなるかというのが。

【中川委員】  そうですね。そういう若い人たちが、チームの中で異分野との交流により刺激を受け、自分たちの分野でもっといい論文を出すとか、活躍するとか、そういうことがうまく回ればいいと思います。

【若山主査】  そうですね。いずれにしても、先ほどの産業界にも数学者が必要だという認識、またずっと付き合っていくということをどんどん広げていくということが、結局大きな動きになると思います。

 さて、もうそろそろ最後にしたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。

 それでは、どうもありがとうございました。今日御審議いただいた内容は、報告書案を更新する際に使わせていただき、また次回審議させていただきたいと思います。

 最後に、事務局より連絡事項などをお願いします。

○粟辻融合領域研究推進官より、参考資料と今後の予定について連絡があった。

【若山主査】  今頂きました2,000万円弱の枠ですけれども、これは予算自身は1年でしょうが、これは何年か、こう。

【粟辻融合領域研究推進官】  5年間を一応、今のところ予定しています。もちろんその後評価をして、形をモディファイして継続していくということは当然可能だというふうに考えています。

【若山主査】  分かりました。ありがとうございます。

 それでは、何かございましたら。よろしいでしょうか。

 それでは、どうも長い時間ありがとうございました。本日の数学イノベーション委員会は、これにて閉会させていただきます。ありがとうございました。

 

―― 了 ――

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