参考資料2 数学イノベーション委員会(第28回)における議論の概要について

(第28回 平成28年6月17日(金曜日) 10時00分~12時00分)

1.数学イノベーション拠点の「見える化」

相談窓口

  • 中核拠点だけで全部対応できるかという問題がある。各拠点がそれぞれ特色を持った窓口となり、これを中核拠点でうまく取りまとめる仕組みがよい。各拠点にシニア人材+若手がいるとよい。
  • 各拠点で数学と異分野連携の名前やステージは違う。バーチャルな組織体でも、各拠点の相談窓口に「統一的な名前」を付ければ認知度アップが期待できる。
  • 相談は中核拠点か否かに関わらず各拠点で受け、全ての拠点で情報共有しながら、数学へのニーズをうまく処理することが必要。
  • 相談内容を相互に情報共有することが必要。これによりシナジー効果が生まれる。
  • 各拠点のコーディネータが相談された問題を検討する際に、拠点間でつながり、若手や学生を巻き込むことが大切。これにより、実際の問題解決と教育の双方が期待できる。
  • 中核拠点は、情報集約機能と外からのコンタクトポイント機能だけと考えるのか、実際の研究もやると考えるのかがポイント

情報集約

  • 諸科学から見ると、いきなり数学者に会うのは敷居が高い。数学者に会う前にワン・クッションあるとよい。ホームページなどでライブラリー的なものがあるとよいのではないか。どんな数学がどんなものに役立つか、どんな数学者がその研究をしているかなどを整理して公開するとよい。
  • 少ない労力で最大の効果が得られるようなサイト、例えばワンストップサービスを提供できるようなサイトを作ることが必要。
  • 中核拠点が数学者と連携した企業の人を名簿にしておくことが必要。「連携経験バッジ」のようなものがあるといいかも。

シーズの売り込み

  • ドイツのフラウンホーファー研究所では「御用聞き」をしており、そこまでやるならシニアな人材が必要。
  • シーズの売り込みは難しい。顧客からは「そんなことできるのか?」「今はどこまでできるのか?」と聞かれることが多い。シーズをニーズに合わせて翻訳することが必要で、シニアな人材のサポートが必要。
  • 現在のシーズだけではニーズに十分対応できない。ニーズに合わせて新しいシーズを作る必要があることが多い。

2.必要な人材

コーディネータ

  • 東北大の「数学をコアとするスマート・イノベーション融合研究共通基盤の構築と展開」では、ポスドクを5、6名雇い、自分の数学研究+(自分のシーズを生かした)諸科学との共同研究やワークショップの企画等をやってもらった。このようなポスドクは皆、その後にアカデミアにポジションを見つけている。
  • ポスドクがやりたいことと産業界のニーズがつながっていない可能性がある。お互いを見えるようにして両者をつなぐ機能として中核拠点の役割は大事。

シニアな人材

  • 九大IMIにうおける岡田さん(企業出身)のような人が内部にいなければ、外から採ることが必要。

3.人材育成

中核拠点の人材育成機能

  • 中核拠点に相談窓口を集約するなら、中核拠点に教育機能の一端、例えば連携拠点から若手が参加するような事業を担わせることも考えられる。

評価

  • 学生へのインセンティブを与えることが必要で、何がインセンティブになるのかは立場や状況によるので議論が必要。例えばバイオインフォマティクスの場合、情報系の学生にとって、金融や企業就職に比べ給与や労働市場におけるインセンティブが少ないことが課題。
  • 諸科学や企業との連携活動をした人には何らかのステータスが与えられ、企業就職に有利になるとか、他分野の人から評価されるようになるとよい。「アクチュアリー」のように。
  • 連携した人が数学の中で評価されるようになるとよい。これまでにはない発想を出してくれることを数学者には期待しており、本当に優秀な数学者と組みたいと思っている。
  • 米国のベンチャーキャピタルのリーダーは副専攻で基礎をやって、ニーズとうまく組み合わせて成功している。
  • 企業も企業内の数学出身者が見えておらず、数学者にコンタクトしようという話にならないのが問題。

4.人工知能、ビッグデータ等との連携

数学の必要性

  • 人工知能も根源的な難しさは数理的なもの。そこでのブレークスルーには数学が貢献できる。
  • AIだけを活用したいという企業と、AIの改良エンジニアリングをしたいという企業があり、数理が必要なのは後者。
  • 現行のAIでは静的なもののパターン認識はできるが、(力学系、制御理論の活用などによる)動的なものの情報処理が抜けている。
  • 不連続データの2次元化によるデータ量の削減が期待できる。
  • ツールのコモデティ化が進んでおり、中身もわからずに、解決まですごく遠回りして使われていることがある。数学が入ることでこのような遠回りが解消され処理時間の大幅な短縮、効率化が期待できる。帰納的アプローチと演繹的アプローチのミックスでよりスマートにできる。
  • 数学が入ることで期待されるのは、合理性だけでなく、飛躍性(これまでにない発想の活用)。数学者が活躍できる問題を設定することが重要。

必要な方策

  • AI研究にも優秀な数学者が少人数でいいから入ることが必要。圧縮センシングが数学者のタオにより大きく進んだように、数学者にはある程度自由にやらせることが必要。
  • 先に理論を作ってから使うのではなく、社会の現場で使われることから始まるのが多い。理論研究と社会応用を双方向で進めることが必要。

5.その他

プログラミング等の支援

  • 数学的アイデアというシーズと現場のニーズの間をつなぐため、プログラミング支援などが必要ではないか。
  • さきがけ数学領域の研究者の中には、自分で仕様書を書いてプログラミングを外注する人がいる。ただし、アイデアがまだ抽象的で仕様書を書くレベルでない場合は外注も難しい。
  • アイデアをプログラミングする人材は、九大のIMIでは情報系の研究者として採用して、チームで研究するという形をとっている。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課/数学イノベーションユニット

電話番号:03-5253-4111(代表)