資料1 数学イノベーション委員会におけるこれまでの主な意見

数学イノベーション委員会(第18回、第19回、第20回)におけるこれまでの主な御意見

 

<18>…第18回での御意見
<19>…第19回での御意見
<20>…第20回での御意見

 

1. 数学へのニーズの発掘
(1)より多くの数学者が自発的に諸科学・産業との議論の場に参加するようにするにはどうすれば良いか。
(2)諸科学・産業の数学へのニーズを引き出すにはどうすれば良いか。
・諸科学・産業の課題と数学のマッチングは、課題を数学者間で共有した上で、諸科学との連携の経験がある人が行うことが必要。<19>
・ドイツでは企業のトップに数学関係者が多いため、トップダウンで共同研究が成立しやすいが、日本は状況が違う。このため、連携の意味、事務的負担、実務プロセスなどを企業に説明し企業を説得できるコーディネータ役の人材が必要。<19>
・アカデミアと企業とではプライオリティーが若干異なるので、それぞれのニーズや状況を理解している両サイドの人たちが集まれるようなちょうど中間地点が必要。これまで議論の中心はアカデミア主体の取組となっていたが、企業への要求も入れ込んでいっていいのではないか。<20>

 

2. 数学と諸科学・産業との協働による研究の推進
(1)数学を活用して諸科学・産業の課題解決を実現するには、どのような方策が必要か。
【必要な組織】
・外部から相談を受けた場合、相談を受けた当の組織での解決が難しければ、他の組織、例えば、企業からの相談をよく受けている組織や課題解決をこなしている組織にうまくトランスファーすることはある程度までならできる。しかし本格的に課題解決に取り組む部分は、時間も労力も人手もかかるので、組織をつくり、マンパワーを拡大し、職業として認知されるようにするとともに、給与、キャリアパスをきちんとすることが必要。<19>
・継続的な組織があれば様々な課題が解決できるような気がしている。<20>
・日本全体とか数学界全体とかのスケールであればもう少し具体的に仕組みを考えなければならない。<20>
・大学における数学と諸科学・産業との連携のための組織は一定の規模の組織であっても得手不得手があるので、互いに補完し合う、あるいはコーディネーションするような機能も必要ではないかと思う。<20>
・方向性が少し見えていてある程度の数の企業が興味を持つようなテーマであれば、産学でコンソーシアムを形成するという方法もある。<20>
【数学の効果、数学への効果】
・破壊的イノベーションを目指すのであれば、抽象の世界の思考を現実世界に持って行くという方法になると思うが、純粋数学が本当に貢献できるのはそこの部分だと思う。<20>
・数学の特性は演繹(一般論から具体へ)だが、諸科学・産業と連携する時には帰納法(事例からモデル化・抽象化)の方がうまくコミュニケートできる。<20>
・数学が諸科学にどう貢献するかという方向と、融合研究によって生じる数学そのものへのフィードバックという双方向の循環があればより堅固な体制になると思う。<19>
【数学的アイデアの実装】
・数学的アイデアの実装(プログラミング、ソフトウェア化等)に携わった人も、次のキャリアステップにつながるようにしないといけない。<19>

 

(2)研究成果の水平展開を促進するためには、どのような方策が必要か。
・T型人材集団のような、数理的な基盤は理解できるが応用分野は違う者同士が集まる場があれば、ある分野で確立したモデルを他の分野に水平展開(横展開)することは発想しやすい。個人でやるには限界があるので、組織としてやった方がいい。<20>
・これまでの大型プロジェクトではT型人材はドメイン側の研究所あるいは機関に埋め込まれる形で参画してきたが、これからはT型人材から成る集団で相互に刺激する環境を作ることが必要。これにより、最先端の手法やスマートな解き方、便利なソフトウエアの教え合い、あるいは連帯感が生まれるといったいい効果が期待される。T型人材が何かしらのかたちで集まれる仕組みをプロジェクトに入れ込んでおくだけでも効果があると思う。<20>
・効果的な予算の付け方の解は、共通基盤ともいえるT型人材集団に予算を付けて、分野連携を通じて諸科学の研究を振興することなのかもしれない。<20>
・抽象化・一般化したものを、個々の分野に水平展開するときに、その分野に応じて使える化する作業も必要。クロスアポイントメント制度が実現すれば、人材流動が活発になり使える化は容易になるかもしれない。<20>
・抽象化が進むほど水平展開はしやすくなるが、問題を抱えている諸科学・産業の人は、その理論が使えることを発想しづらくなる。そのため、問題の現場と抽象的な解決法の間を埋める技術やシステムが必要で、それらの支援が属人的ではない在り方だとよい。<20>

 

3. 数学イノベーションに必要な人材の育成
社会からの数学・数理科学へのニーズや期待に応えられる数学人材を育成するにはどのような方策が必要か。
【必要な能力】
・分野跳躍力とチーム力の両方の資質が重要。分野跳躍力とは、分野を跳躍するような力(≠ピンポイントな分野に特化した育成)。チーム力とは問題の発見と設定、産業界からのニーズの見極め、計算機やプログラミング等に対応できる力。<18>
・人材(インセンティブ)・制度・仕組みの実装を具体的にきちんと考えておかないといけない。<20>
【評価】
・数学者としての評価、諸科学の研究者としての評価、という2つの軸しかないとすると、融合研究に挑むのは難しい。融合の分野として評価されるべき。ポスドクの先に道が見えるようになるとよい。<19>
・社会の複雑な問題の解決に数学者が参画しづらい原因は、問題が複雑になればなるほどコントリビューションが明確にならなくなるということ。現状の一元化された研究業績の評価方法では、学問ののり付け部分の評価が極めて厳しい。<18>
・融合領域で研究したい数学者が実際の所どれくらいいるのか、諸科学側はどういう人材を採用したいのかを視野に入れて、評価方法を考えなければならない。<19>
・現状では、数学科の学生が諸科学との融合研究に専念したくても将来に対する不安から融合研究だけでなく純粋数学もやらざるをえない。<19>
【キャリアパス】
・企業では、数学者の扱いに慣れていない。数学者を社内でどのように活用するのか、社内でのキャリアパスをどう考えるのかという議論は企業の側ではまだ始まっていない。<19>
・数学専攻出身の人材が企業に増えてくれば、企業も数学者も互いの話がすぐに分かっていろいろなことが流動的に動いていくような気がする。<19>
・大学で数学科に進学すると周囲から数学者になるのか、と見られるので、数学科で勉強しても数学者以外の道があるということを高校生ぐらいにも見せられると良い。<18>
・数学的アイデアの実装(プログラミング、ソフトウェア化等)に携わった人も、次のキャリアステップにつながるようにしないといけない。<19>

 

4. 必要な体制
数学イノベーションの推進体制として、どのような姿を描くことが必要か。
・アメリカではコンピュータサイエンスを応用数学と言い切ってしまうが、日本ではそれを許容しない意識でこれまで来た。その意識を根本的に変えないと数学イノベーションは難しい。<19>
・数学を広く捉えるということは非常に良いことだと思うが、一方で、純粋数学の人が取り残されてしまうのは良くない。純粋数学と応用数学の両者が連携できるような体制をつくりたい。<19>
・諸科学から見て、その両者の間が全然つながって見えないので、純粋数学に話を持っていきようがないように感じている。諸科学側の研究者の努力が足りない部分もあるが、数学側でも努力してほしく感じる。<19>
・数学科という意味でなくて、応用数学も含めて、数学をやっているんだというのを表に出して見えるようにしていくことが必要。<19>
・情報科学をはじめとする諸科学の研究室で数学をやっている研究室がたくさんあるということをまずは見える化して、(数学イノベーション、融合研究、数学リテラシーの)必要性を明らかにすることが一番早い方策かと思う。<19>
・複雑化した社会の中で、日本の従来の縦割りされた学問(数学、物理、生物、…)では問題を解決するのには窮屈になってしまった。<19>
・生活がどんどんデジタル化されている昨今、インタラクションやインテグレーションを深めることが現代的な基礎の概念になるのではないか。<20>

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