資料4 検討内容の取りまとめの方向性(案)

 数学イノベーション委員会におけるこれまでの検討内容を取りまとめるに当たっての方向性(案)を以下のとおり整理。

 

はじめに
 数学イノベーションを推進するために、これまでに
数学・数理科学と諸科学・産業等の研究者の「出会いの場」「議論の場」としてのワークショップ等の開催支援
両者の協働による研究を支える研究費や研究拠点の整備
等を実施。


1. 数学イノベーションを巡る現状について
(1)数学・数理科学の重要性の高まり
 社会全体の以下のような変化に伴い、数学・数理科学の重要性が飛躍的に高まり、社会からの期待も増大。
計測技術や情報技術の進歩に伴いビッグデータの入手が可能となったが、このようなデータの持つ意味を知り、データを活用することが、諸科学・産業等において問題解決の鍵を握るようになっている。
社会において、既存のモデルだけでは捉えきれない複雑な問題や現象が増加している(経済・金融システム、社会システム、環境・エネルギー問題、サイバーセキュリティ等)。

(2)社会からの期待に応えられる数学・数理科学研究者や必要なノウハウの整備
 このような社会の数学・数理科学への期待を踏まえ、数学・数理科学研究者の側では、研究費や研究拠点の整備を通じて、諸科学・産業等と協働できる数学・数理科学研究者が育ち、その研究者間のネットワークの構築、諸科学・産業等との連携のノウハウの蓄積も一定程度進展。
特に、戦略的創造研究推進事業の領域会議等の経験を通じて、日頃は別分野の問題に取り組んでいる数学者どうしが各自の数学的手法・理論について意見交換し議論することの有効性(新たなアイデアの着想につながる等)が実証。


2. 数学イノベーションを進める上での課題
○数学・数理科学以外の分野の研究者や産業界、社会から見た場合に、以下のような課題が存在。
数学・数理科学研究者の姿が外からは見えづらく、誰に相談すれば良いか分からない。
どの程度の具体性のある問題を相談すれば良いか分からない。

○戦略的創造研究推進事業等を通じて、諸科学・産業等との連携のノウハウや人脈等を有する数学・数理科学研究者が育ちつつあるが、これらの者の組織的活動を支援する仕組みや体制が不在。具体的には以下のとおり。
数学・数理科学を活用することにより解決できそうな問題を検討するような場や仕組みがない。
諸科学・産業等からの問題を受け付け、その問題の解決に取り組む数学・数理科学研究者につなぐような仕組みがない。
問題解決に向けて、様々な専門分野の数学・数理科学研究者が意見交換し議論するような場や仕組みがない。
連携相手となる諸科学・産業等に向けて数学の有用性を示す組織的取組がない。

○数学・数理科学研究者だけでは、問題解決に向けて数学的アイデアを提案することはできても、その数学的アイデアを諸科学・産業等の現場で“使える”ようにする(プログラミングし、ソフトウェア化する)ことは困難。


3. 必要な方策
(1)今後必要となる機能
 上記の2. の課題を解決する上で、以下のような機能が必要。

A. 数学・数理科学の活用により解決できる問題を明らかにして数学・数理科学研究者につなぐ機能
数学・数理科学を活用することにより解決できそうな問題を社会の中から見出す機能
諸科学・産業等から相談を受けた問題をふるいにかけ、適切な「数学の問題」にする機能
これらの問題の解決に取り組むのにふさわしい数学・数理科学研究者を紹介する機能

B. 問題解決に向けた研究を支援する機能
<1> 数学・数理科学研究者の活動を支援する機能
諸科学・産業等の問題に取り組む数学・数理科学研究者の配置
諸科学・産業等の問題に取り組んでいる数学・数理科学研究者が、各自が問題解決に向けて用いている数学的手法や理論を共有し議論する場を企画運営する機能
世界トップクラスの数学・数理科学研究者と国内の若手をはじめとする研究者とが一定期間滞在し、自由な議論を通じて互いに触発され、新たな研究の着想につながるような環境を提供する機能
<2> 数学的アイデアを“使える”ようにする機能
諸科学・産業等の問題の解決に向けて出された数学的アイデアを、プログラミングし、ソフトウェア化できる人材の配置
<3> 諸科学・産業へ“使える”数学的手法を発信する機能
諸科学・産業等の問題解決のために有用な数学的手法や理論を整理し、諸科学・産業等に向けて分かりやすく発信する機能

(2)必要な体制
 上記(1)の機能を備えた組織体制を設けることは、上記2. の課題を解決する上で有効であり、
諸科学・産業等の問題解決に取り組む数学・数理科学研究者集団の「見える」化
当該組織に所属する数学・数理科学研究者の「諸科学・産業等の問題解決」というミッションの明確化
等の効果を通じて、数学イノベーションの一層の加速につながることが期待できる。


※なお、数学イノベーションに必要な人材育成の在り方に関する取りまとめの方向性については、次回以降の審議を踏まえて検討。

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