資料3-1 数学イノベーション委員会における検討について

1.今後の検討の進め方
  数学イノベーション委員会における当面の目標としては、平成24年8月に先端研究基盤部会で決定した「数学イノベーション戦略(中間報告)」を踏まえ、最終報告の作成に向けて、今後の施策の方針や取組(アクション)についてより具体的なものとなるように討議事項を重点化し、調査・検討を進める。


2.検討項目
 数学イノベーション戦略(中間報告)における推進方策を踏まえ、検討が必要な項目は以下のとおり。

(1)数学へのニーズの発掘からイノベーションにつなげるために必要な活動

(2)数学イノベーションに必要な人材の育成

(3)情報発信・理解の増進など

(4)数学イノベーションの実現に向けた必要な体制

 

(1)数学へのニーズの発掘からイノベーションにつなげるために必要な活動
  <論点>
 ・全体を俯瞰(ふかん)して数学の活用により解決を目指すべき課題は何か。
  ・社会的ニーズに数学はどのように応えられるか。
  ・ワークショップ等の数学研究者からの提案による課題発掘以外のアプローチはないか。

 <関連情報>
    ○数学イノベーション戦略(中間報告)における関連事項
      ・「出会いの場」、「議論の場」のテーマや発表者・発表課題の設定については、諸科学・産業の全体を俯瞰(ふかん)し、数学的知見の活用による解決が期待できる課題を見定め、
   その解決に必要な数学分野を見抜いた上で実施することが有益である
      ・分野間の協働をより一層進めるとともに、社会的ニーズの高い課題の解決に向けた優れた成果の創出を図ることが望まれる           
    ○戦略的創造研究推進事業において数学・数理科学が関係している課題
      ・分野を超えたビッグデータ利活用により新たな知識や洞察を得るための革新的な情報技術及びそれらを支える数理的手法の創出・高度化・体系化(平成25年~)
      ・再生可能エネルギーをはじめとした多様なエネルギーの需給の最適化を可能とする、分散/協調型エネルギー管理システム構築のための理論、数理モデル及び基盤技術の創出(平成24年~)
      ・海洋資源等の持続可能な利用に必要な海洋生物多様性の保全・再生のための高効率な海洋生態系の把握やモデルを用いた海洋生物の変動予測等に向けた基盤技術の創出(平成23年~)
      ・生命現象の統合的理解や安全で有効性の高いい治療の実現に向けたin silico/ in vitro/での細胞動態の再現化による細胞と細胞集団を自在に操る技術体系の創出(平成23年~)
      ・社会的ニーズの高いい課題の解決へ向けた数学/数理科学研究によるブレークスルーの探索(平成19年~)
      ・生命システムの動作原理の解明と活用のための基盤技術の創出(平成18年~)
      ・次世代高精度・高分解能シミュレーション技術の開発(平成17年~)
    ○最先端研究開発支援プログラムで数学・数理科学が関係している課題
      ・複雑系数理モデル学の基礎理論構築とその分野横断的科学技術応用
          最先端数理モデルを各分野における課題解決型研究へ応用してその成果を再び理論研究に活(い)かす、という相乗効果を得ながら研究を進めています。
     これらの研究によって、新たな癌(がん)の治療法の開発、動的ネットワークバイオマーカーの提案、 新しい非線形電子回路技術の開発など
          社会的重要性や緊急性の高い課題の解決を目指すとともに、数学が実際に社会の役に立つことを示します。
             
(2)数学イノベーションに必要な人材の育成
  <論点>
  ・いわゆる「橋渡し人材」をどのように育成するのか。
  ・既存の人材を「橋渡し人材」として活用するには、どうすればよいか。
  ・社会的ニーズ等を踏まえ、「橋渡し人材」以外にどのような人材が必要か(データサイエンティスト等)。
 
  <関連情報>
    ○数学イノベーション戦略(中間報告)における関連事項
      ・数学の専門性に加え、諸科学・産業とコミュニケーションする能力や、ものごとの全体を俯瞰(ふかん)する能力が必要で、それらを身につけるには相応の経験が必要
      ・数学と諸科学・産業との協働による研究集会やワークショップ等の企画運営や研究プロジェクト等に参画させ、諸科学・産業の現場における具体的課題を「数学の問題」に置き換える
    経験を積ませることが効果的
    ○学会等との意見交換において指摘された事項
      ・数学と他分野を橋渡しする人材(コーディネーター役等)が必要
      ・理論と実践の両方を知っている人が必要
     
(3) 情報発信・理解の増進など
  <論点>
  ・誰に対して情報発信すべきか。
  ・そのためにはどのような手法や場を活用すべきか
   (例)産業界の経営者層への情報発信
         諸科学分野の学会等への情報発信
         小・中学生、高校生をはじめとした一般への情報発信

 

(4)数学イノベーションの実現に向けた必要な体制
  <論点>
  ・大学共同利用機関や、既に諸科学・産業との連携に取り組んでいる各大学・研究機関の拠点と、どのように協力関係を構築するか。
  ・日本にはどのような訪問滞在型の研究拠点が必要か。
     
  <関連情報>
    ○数学イノベーション戦略(中間報告)における関連事項
      ・数学と諸科学・産業との協働の「拠点」となる複数の大学等が、各々が擁する研究人材や、内外のネットワーク、過去の活動実績等を踏まえた強みや特色を生かしつつ、
    互いに協力して諸科学・産業との協働やそれを担う人材の育成及び確保に向けた活動を行う全国的な体制を国が主導して設ける必要がある
      ・将来的には、このような体制の下での活動を踏まえ、いわゆる訪問滞在型の研究拠点(外部から訪問して滞在する研究者主体の研究所。
    常勤スタッフは課題や必要な数学分野を見抜くことのできる拠点長、拠点長を補佐する研究者、支援スタッフで構成。)や計算科学や情報科学等の
    諸科学と連携した常勤研究者主体の研究拠点を設置することで   具体的課題解決のための研究を促進することが考えられる。

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研究振興局基礎研究振興課/数学イノベーションユニット