1.数学イノベーションが必要とされる背景
1-1 数学イノベーション
○数学イノベーションによりもたらされるブレークスルーへの期待
◆諸科学・産業における特定の課題の解決
◆数学・数理科学の汎用性を生かした、研究成果の他の科学分野や産業への爆発的波及(研究成果の水平展開)
◆数学・数理科学と諸科学分野・産業技術との融合による、これまでにない新しい価値の創造
◆数学・数理科学への刺激(新たな視点の発掘・提供、数学・数理科学研究の更なる深化への貢献)
【過去の事例(水平展開;ウェーブレット等)、外国の現状等を交えて】
(参考)数学イノベーションをもたらし得る研究テーマの例
・グリーンイノベーションをもたらし得るテーマ
・ライフイノベーションをもたらし得るテーマ
・安全かつ豊かで質の高い国民生活の実現をもたらし得るテーマ
・産業競争力の強化をもたらし得るテーマ
・諸科学分野の研究におけるイノベーションをもたらし得るテーマ
1-2 数学・数理科学の重要性の高まり
○社会の情報化・複雑化や計測技術の進歩、計算機性能の飛躍的向上により、大量・複雑なデータから有益な情報を抽出し活用することの重要性が高まっている。
○また、数学・数理科学が直接使われる分野の社会的インパクトも増大している(多くの最適化問題、暗号による情報セキュリティ、コンピュータ・グラフィックス等)
○このため、諸科学・産業における様々な課題や、数学・数理科学が直接使われている領域の課題を解決するには、数学の古典的な基礎理論から、高性能モデリングをはじめとする新たなニーズに応える高度な数学まで、数学・数理科学的アプローチの必要性がますます高まっている。
1-3 近年の数学イノベーションをめぐる動向
○我が国における数学イノベーションの状況
◆我が国の数学・数理科学研究をめぐる状況
・応用数学への意識の変化、取組状況
◆数学・数理科学と諸科学・産業との連携・協力の進展
・大学、公的研究機関等における取組事例
・産業界における取組事例
・JST戦略的創造研究推進事業
「数学と諸分野の協働によるブレークスルーの探索」領域
(平成19年度~:さきがけ、平成20年度~:CREST)
・文科省共催連携ワークショップ(平成22、23年度)
○我が国における数学イノベーション関連状況
◆第4期科学技術基本計画における位置付け
・「科学技術の共通基盤」、「領域横断的な科学技術」として、充実、強化を図るべきものとして明記
◆東日本大震災を踏まえた今後の検討の視点(科学技術・学術審議会決定)
・震災からの教訓や反省を踏まえた改善すべき点や取り組むべき点
・社会が抱える様々な課題を把握するための方策、課題解決のための学際研究や分野間連携を行うための取組
・研究開発成果が課題解決のために適切かつ効果的な活用されるための取組
・科学技術・学術に関する知見や成果、リスク等の社会への発信や対話
○諸外国における状況
◆米国における近年の動向
◆欧州諸国における近年の動向
◆中国をはじめとするアジア諸国における近年の動向
◆その他の国々における近年の動向
◆我が国の状況との比較
2.数学イノベーション推進に当たっての問題点
2-1 数学・数理科学研究の特質に根ざした基本的事項
○数学・数理科学研究の特質は、様々な現象等の背後にある本質的構造を見いだすことを通じて、普遍化・一般化することにある。
○このため、研究成果の水平展開(特定の科学分野・産業における課題解決に貢献した数学・数理科学的知見が様々な分野・産業へも活用されること)が可能。
○一方、数学・数理科学の貢献は外からは見えにくいため、数学・数理科学的知見による解決が期待できる課題は諸科学・産業では必ずしも十分に認識されていない。
○また、数学・数理科学側でも諸科学・産業側でも、協働による研究に携わる人材が不足。
○このままでは、既に数学・数理科学的知見が活用されている実績のある一部の分野(金融・保険、暗号、情報科学など)と数学・数理科学との協力だけにとどまり、これ以外への自発的な広がりは困難。
○したがって、諸科学・産業において、数学・数理科学的知見により解決が期待できる課題の発掘、研究テーマの抽出、必要な人材の育成が必要。
2-2 数学イノベーション推進に当たって改善が必要な具体的事項
(1)数学・数理科学研究者と諸科学・産業の研究者との”偶然”の幸運な出会いの確率を高め、”必然”にする仕組みの不足
○諸科学・産業において、数学・数理科学に対する潜在的なニーズは大きい。しかし、数学・数理科学的知見による解決が期待できる課題や協働による研究のテーマの具体化は不十分。
○数学・数理科学者と諸科学・産業研究者との”出会いの場””議論の場(研究集会 等)”が不足。
○両者の相互理解を深めるために必要なノウハウ等が不足。
○研究集会等の後に具体的な研究につなげるための支援が不足。
(2)数学・数理科学と諸科学・産業との協働による研究から数学イノベーションへつなげるための仕組みの不足
○数学・数理科学側においても諸科学・産業側においても、協働による研究に携わることのできる人材が不足。そのような活動に対する評価も不十分。
○数学・数理科学研究者と諸科学・産業の研究者との間をつなぐ人材が不足。
○協働による研究の成果が、諸科学や産業における実際の課題の解決につながるようにするための仕組みが不十分。
(3)その他
○研究に必要な基盤的事項にかかわる問題
○知的財産権に関わる諸問題(研究成果の特許成立性、学会・論文発表等への制約等)
3.数学イノベーションの推進方策
3-1 数学イノベーション推進方策の全体像
○基本的問題点
◆数学・数理科学の貢献の見えにくさ
◆数学・数理科学的知見により解決が期待できる課題の認識困難
◆数学・数理科学者と諸科学・産業との出会い、議論の機会の不足
◆人材の不足
○国、学術界、産業界の役割
3-2 数学イノベーション推進のための具体的方策
(1)数学・数理科学と諸科学・産業との協働による研究へ導くための方策
【1】数学・数理科学者と諸科学・産業研究者との間の仲介
◆諸科学分野における数学・数理科学的知見の必要なプロジェクト等と数学・数理科学側との情報交流促進(プロジェクト情報の提供、数学・数理科学者の情報を提供)
【2】課題発掘・研究テーマ抽出のための“議論の場”の設定(諸科学・産業に潜在する、数学・数理科学的知見により解決が期待できる課題の発掘、数学・数理科学と諸科学;産業との協働による研究テーマの抽出)
◆諸科学分野・産業側から数学・数理科学者側に対する課題提示型セミナーの開催、諸学会での数学・数理科学との合同セッションの開催
◆諸科学・産業界からの相談対応、コンサルティング等の開催
◆発掘された課題と数学・数理科学的知見(シーズ)とのマッチングを図るための研究集会を企画・開催
◆数学・数理科学者と諸科学・産業研究者との相互理解を深めるために必要なノウハウ等の効果的な抽出・活用方策
【3】具体的な研究につなげるための支援方策(研究集会等開催後のフォローアップ、具体的な研究につなげるための方策)
◆研究体制構築の支援
◆異なる研究テーマ間の情報共有
◆研究成果に関する情報の発信、共有
(2)数学・数理科学と諸科学・産業との協働による研究から数学イノベーションへつなげるための方策
○数学・数理科学と諸科学・産業との連携による研究に関わる人材の育成方策
【4】大学等の数学・数理科学専攻における視野の広い学際的研究者の育成・評価方策
【5】数学・数理科学専攻学生の新たなキャリアパス構築(インターンシップ等)
【6】数学・数理科学研究者と諸科学・産業の研究者との間をつなぐ人材の育成方策
○研究成果を実際の課題解決につなげるための方策
(3)その他
【7】研究に必要な基盤的事項の改善方策
【8】知的財産権に関わる諸問題への対処方策
◆過去の対処事例の整理・共有
電話番号:03-5253-4111(内線4120)