総合政策特別委員会(第35回) 議事録

1.日時

令和3年1月13日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 関係機関からのヒアリング
  2. 第6期科学技術・イノベーション基本計画の検討状況について
  3. その他

4.出席者

委員

濵口主査、橋本主査代理、新井委員、大島委員、大橋委員、越智委員、川端委員、菊池委員、郡委員、白石委員、新保委員、菅委員、角南委員、竹山委員、知野委員、塚本委員、土井委員、十倉委員、畑中委員

文部科学省

松尾文部科学審議官、板倉科学技術・学術政策局長、梶原科学技術・学術政策局審議官、笠原文教施設企画・防災部技術参事官、塩田科学技術・学術政策局企画評価課長、永井研究開発局開発企画課長、村松科学技術・学術政策局企画評価課長補佐、菱山NISTEP所長、伊神NISTEP科学技術・学術基盤調査研究室長、岩瀬JST研究開発戦略センター上席フェロー、中澤内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付統合戦略グループ企画官

5.議事録

科学技術・学術審議会 総合政策特別委員会(第35回)


令和3年1月13日


【濵口主査】
 それでは、お時間になりましたので、ただいまより科学技術・学術審議会総合政策特別委員会を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席を賜り、誠にありがとうございます。
まず、議事に先立ちまして、事務局の人事異動の紹介をお願いいたします。

【村松企画評価課課長補佐】
 事務局を務めます企画評価課の村松でございます。
 事務局に人事異動がありましたので、紹介いたします。
 まず、文部科学審議官の松尾でございます。まだログインできていないようです。
 続きまして、科学技術・学術政策局長の板倉でございます。

【板倉科学技術・学術政策局長】
 板倉でございます。よろしくお願いします。

【村松企画評価課課長補佐】
 続きまして、大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)の梶原でございます。

【梶原大臣官房審議官】
 梶原です。よろしくお願いします。

【村松企画評価課課長補佐】
 続きまして、科学技術・学術政策局企画評価課長の塩田でございます。

【塩田企画評価課長】
 塩田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【村松企画評価課課長補佐】
 それでは、代表しまして、局長の板倉より一言御挨拶申し上げます。

【板倉科学技術・学術政策局長】
 皆様、おはようございます。科学技術・学術政策局長の板倉でございます。開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げさせていただければと思います。
 まず、委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、御参加いただきましてありがとうございます。本委員会は平成31年の4月からスタートいたしまして、10回にわたり活発な御議論をいただきまして、昨年の3月には最終取りまとめをまとめていただいたところでございます。
 最終取りまとめでは、Society 5.0の実現のため、社会問題の解決と世界の持続的発展、また人間主体のインクルーシブ社会の実現といったような目標に向けて、科学技術・イノベーションによる知の創出の重要性というものについて取り上げていただいたところでございます。また、新型コロナウイルス感染症が拡大しているところでございますが、この状況を先取りしたかのように、デジタル革命に対応した新たな研究システムの在り方につきましても御提示いただいたところでございます。
 現在、内閣府におきまして、次期基本計画に向けた議論が行われておりますが、最終取りまとめと同じ方向の内容になっていると認識してございます。本日は、現在の議論の状況について、内閣府から御紹介をいただく予定としております。
 委員の皆様におかれましては、この1年の状況の変化も踏まえつつ、次期計画に向けた御議論をお願いできればと考えてございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 それでは、会議開催に先立ちまして、事務局から資料の確認をお願いしたいと思います。

【村松企画評価課課長補佐】
 資料については、事前に各委員の先生方にメールでお送りしてございます。議事次第の次ページに一覧がございますので、資料と併せて御確認をお願いいたします。また、参考資料1にございますが、昨年8月に科学技術・学術審議会の運営規則が改正されておりまして、ウェブ会議システムを利用した会議への出席が可能となっております。本日も、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、ウェブ会議システムを用いた会議としております。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
昨年3月に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けまして、第34回の会議を書面会議といたしました。本委員会の最終取りまとめの議決を書面で開催した次第であります。委員会運営規則(参考資料2)において、書面による議決を行った場合には、次の会議において主査が報告することとなっております。議決された報告書は参考資料の3に掲載しておりますが、委員の皆様に活発な御議論をいただいた結果、Society 5.0の実現に向けた科学技術・イノベーション政策の在り方について網羅的な報告をまとめることができました。大変ありがとうございます。改めて御礼申し上げます。
それでは、本日は、議題の1として関係機関からのヒアリングで、科学技術・学術政策研究所及び科学技術振興機構研究開発戦略センターより説明をお願いすることとなっております。また、議題2については、第6期科学技術・イノベーション基本計画の検討状況について、内閣府より説明をお願いします。
 それでは、まず議題1の中で、科学技術・学術政策研究所の菱山所長から、資料1に基づいて御説明をお願いします。よろしくお願いします。

【菱山NISTEP所長】
 よろしくお願いいたします。昨年10月からNISTEPの所長をしております菱山でございます。早速、資料に基づいて御説明をしたいと思います。
 私どもNISTEP、様々な調査研究しておりますが、前回の総政特以降で発表しましたもののうち4つほどを選んで、今日は御説明させていただきたいと思います。科学技術指標の2020、それからサイエンスマップ2018、そして博士人材の追跡調査、それから新型コロナウイルスに関するプレプリントに関しての動向を分析したもの、この4つでございます。
 まずページを開いていただいて、3ページに、科学技術指標について書いてございます。これは主要国の科学技術活動を、様々なデータを用いて分析したもので、毎年公表しているというものでございます。
 次の4ページ、これは主要国の研究開発費総額の推移でございまして、日本の研究開発費総額、一番上に書いてありますように、米、中に次ぐ3位ということでございます。それから、部門別についても右の表に書かれているとおりでございまして、企業の研究開発費において中国が米国を抜いて第1位となったということも、特筆すべき事項だというふうに考えております。
 それから、次の5ページでございます。これは研究者の数でございますが、FTE、フルタイム・エクイバレントで換算したものでございますけれども、2019年において67.8万人ということで、これは中国、米国に次ぐ第3位ということでございます。年次推移についてはグラフのとおりであります。
 次の6ページでありますが、これは論文数の調査でございます。10年前と比較して、分数カウント法で日本は微減であり、しかも他国・他地域で論文数が増加しているので、相対的に順位も低下しています。また、全体として被引用が多い論文数も減って、相対的に順位が低下しているというものでございます。それから、中国が総論文数においては1位となったというので、この辺はかなりニュースや新聞でも取り上げられたところであります。
 それから、7ページでございます。これは産業界の皆さんから反響があるものでございますが、特許と論文のつながりを見たものでございまして、上の四角にありますように、日本の技術、あるいは特許は、科学的成果である論文を利用している割合が低いけれども、日本の論文というのは世界の技術、いろんな特許に多く引用されているというのが分かったというものであります。
 その次のページは、これは産業別の研究人材でありまして、日本の企業における高度研究人材活用度、つまり企業における博士号保持者の割合が米国と比べて低いということが数字の上でも分かったということでございます。
 次に9ページでありますが、これは、博士号の進学者が減っているとか、活用がうまくいっていないのではないかとかいろいろあった中で、調べてみると、特に製造業では博士号保持者の新規採用が増加しているけれども、非製造業では停滞しているということがこの調査で明らかになったというものでございます。
 それから10ページでありますが、これが産業界からも反響が大きかったもので、商標出願と特許出願の関係を見たというものでありまして、日本だけがちょっと特異な動きをしていて、商標出願数よりも特許出願数が多いということで、これは2002年から17年まで追っているものでありますが、こういう結果になっているということで、日本だけが他国と比べて、商標出願数が特許出願数に比べて少ないというのが出ているものであります。
 次にサイエンスマップ2018でありますが、これは2年ごとに出しているものでありますけれども、論文データベースの分析をして、国際的に注目を集めている研究領域を抽出、可視化したものであります。
 13ページに行ってください。これは13年から18年の論文を分析したところ、世界的に注目を集めている研究領域が902領域だったということで、その次のページ見ていただくと、2002年から始まって、順に、2010年、今回2018年ということでありますが、研究領域というのはどんどん増えているということでございます。
 その次、15ページに行っていただきますと、これは参画領域です。サイエンスマップで抽出された領域に、日本なり、その国としてどのくらい参画しているかというのを見たものでありますが、日本は、ここにありますように、減ってきているということであります。アメリカもパーセントとしては減ってきているという状況でありますが、中国が右にありますが、非常に多くなっているというものであります。
 次に16ページでありますが、中国がいろいろ伸びている中で、どんな分野が拡大しているかということでありますが、ナノサイエンス、AIとか、AI・社会情報インフラ、そういったところが伸びているということであります。
 17ページは、アメリカと中国でどういうふうに引用をしているのかということで、中国は、中国で出した論文について中国が引用しているのが65%あるということであります。
 次が18ページですけれども、AIについて分析をしたものでありますが、AIのプロパーの領域というのが一番下のところに赤いポチポチでありますけれども、青いところもAI関連の特徴語をキーワードに含むAI関連の研究領域なんですけれども、例えば一番上のところに循環と書いてあるのは、循環器病とかです。あるいは、がんとか幹細胞関係、そういったところとかにも青いのが見えますし、あるいは右の方のナノとかにもありますし、かなりいろいろなところでAIの研究が行われているのが分かったということであります。
 次は、19ページ以降で博士人材ですけれども、博士人材の追跡調査というのを我々行っております。その中で分かったことということで、幾つか20ページのところに結果概要というのがありますが、博士課程で得られたことのうち仕事などで役に立っている項目というもので、論理性や批判的思考力というのが最も多いとか、あるいは自ら課題を発見し設定する力、そういったところやデータ処理、活用能力というのは非常に役に立っているということです。それについては21ページにありますが、あとほかには、任期なしの割合が増加しているとか、あるいは海外に居住して研究している方が減っているとかそういったことと、それから女性のPIが増えているということが、この調査で明らかになったというものであります。これらの結果については、後ろの参考資料をご覧ください。
 それから、22ページを見ていただきますと、これまで博士課程の追跡調査をやってきたわけですが、まだ結果は出ていませんが今年度から始めたということで、修士課程の修了者の追跡調査も新たに開始したというものであります。
 それから23ページ以降で、新型コロナウイルス感染症に関する、これはプレプリントを用いた研究動向ということで、特に、査読つきの論文というよりは、むしろプレプリントという形で出しているものについて、どういう動向だったかというのを調べたものであります。25ページに飛んでいただくと、プレプリントとは何かというのが書いてありますが、査読前の論文原稿をどんどん出していくということで、一般的には査読を経ると何か月、あるいは1年とかたってしまうので、今回コロナウイルスの研究では、それよりも分かったことをプレプリントでどんどん出していくという傾向だったんですけど、それを分析したものであります。
 26ページで、投稿件数の推移とか、国・地域別の件数比較というのをしております。総数は9月末まででありますが、ピークは5月中旬だった。分野については、様々な分野ありますが、医学系、特に免疫とか病原微生物系が多かったわけですが、その後、公衆衛生関係とか経済的なものも増えてきたということと、国・地域については中国が最初、新型コロナウイルス感染症が中国発だったので中国からどんどん論文やプレプリントが出ていたのは御記憶のところだと思いますけれども、5月以降はアメリカのほうがプレプリント数が多く、アメリカがトップになったというものであります。国別のグラフについては、左のところに棒グラフで表したものであります。
 それから、研究内容に関する分析というのを、これはAIを用いて分析しているところであります。創薬とかワクチン開発、そういったもののプレプリントもどんどん出ているということでありまして、一番下に可視化したものがありますけれども、いつ頃にどんな研究が多いかを示すことで、だんだん研究の内容の移り変わりが見えるというものであります。例えば最初の頃は患者の病状、ケースレポートのようなものが出ていましたし、患者さんのふん便からウイルスが検出されたとか、そういった論文が結構出ていたというのは御記憶のところだと思います。4月から6月ぐらいに感染拡大とか感染モデルも出てきたということで、7月以降、公衆衛生等も出てきたというものであります。
 最後に29ページを見ていただきますと、これは参考資料であります。一部だけちょっと御紹介いたしますと、私ども、コロナ関係は、例えば国民の意識調査とかで、研究開発に対する国民の関心が非常に高まっているとか、そういった調査の結果が出ていますし、また、博士課程の在籍者や研究者に向けてアンケートをして、研究室の状況とか、影響はどうですかといったこともお聞きして、その結果をまとめて発表しているというところでございます。
 簡単ではございますが、以上であります。よろしくお願いいたします。御質問等ありましたらお願いいたします。

【濵口主査】
 ありがとうございました。
 それでは、御質問、御意見のある方は挙手をお願いします。なるべく皆様に発言の機会を提供したいと思いますので、発言は端的に、明確にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。どなたかございますでしょうか。ございませんか。
 それでは、口火を切るつもりで申し上げますけど、最初の研究成果のところで17ページ、研究領域のサイテーションのペーパーの各国シェアを見ると、米国と中国では非常に明確な変化があって、中国は国内引用が多いんですね。この評価は、菱山さんはどう思われますか。中国は国内にとどまっているということなのか、いや、数が多いけれども、やはり研究論文としてはレベルは担保されていると考えるか。いつもここら辺の評価が人によって分かれる部分がございますので、御意見いただければと思います。

【菱山NISTEP所長】
 ありがとうございます。評価というのは大変難しくて、これは事実を出したので、これがどうなのかというのはちょっと難しいところではありますが、よく、中国のほうは自己引用が多くて、それで上げているんじゃないかと、そういう情報もありますので、そういった傾向もあるのかもしれませんけれども、この数値からはこういう事実ですということしか言えないかなと思っておりますが、すみません、そのくらいかなと思っております。

【濵口主査】
 その前のページの16ページで、中国のコアペーパーが50%以上を占める研究領域が148領域あるというのがもう一つございますので、これはかなり革新的な領域を彼らが開発しているという評価で見てよろしいですか。

【菱山NISTEP所長】
 詳しくは実際に調査した伊神から話しますが、これだけだと今出しているぐらい。それよりもさらに詳しく、もう分かっていますので、濱口先生おっしゃるように、かなりコアな――コアというのは革新的というか、新しいというよりも核ですね。もっとかなりセンシティブなというか、いろいろなことに使えるような、ナノサイエンスとか、もっと突き詰めてみると、汎用というか、いろんなところに、デュアルに使えるような技術とか、そういったことをかなり開発しているというのは見えていて、かつそれが論文で発表しているというのも、ある意味オープンにして、我々が読める形でオープンしているというのはありますけれども、かなりそういう分野に注力しているというのは見えてきていると思います。
 ちょっと伊神からも。

【伊神NISTEP科学技術・学術基盤調査研究室長】
 補足しますが、この辺り、解釈としては、やはりコミュニティーの大きさというところが利いているところもありますし、研究自体が革新的なものも含まれているということで、現状では両方が交じったような状況なのかなという気がします。
 1点、革新的なという点では、今回お示ししておりませんが、例えば『ネイチャー』『サイエンス』に中国が掲載している論文というのは、今、日本よりシェアが高いような状況がございますので、そういうものを総合すると、コミュニティーの大きさと、やはり質の高いもの、この両面が現状では見えているのかなという印象を分析者としては持っております。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 お手が挙がり始めましたので、それでは、菅さん、土井さん、それから川端さん、お手が挙がっています。まず菅さん、お願いします。

【菅委員】
 ありがとうございます。先ほどの、今ちょうど出ています論文のことですけれども、この傾向は多分ほかにもありまして、私、最近、特許庁の会議で中分子医薬品という、注目されている、今新興のところですけれども、そこの特許の状況を把握するというので、そういった会議に出ておりますけれども、中国は、その分野に限ってですけれども、特許はほとんど国内です。世界に出していません。もう特許の数だけはすごく表面上出るんですけれども、じゃあそれが一体どこに出ているのかといったら、中国国内だけに収まっていて、それを世界的なところにマッピングすると、もうぐっと減ってしまうという状況になっています。ですので、中国の今の戦略、国の戦略だと思いますけれども、こういった形で自分のサイテーションをして、サイテーションの数を上げていくというのは、もう今頻繁にやっていることかなというふうに思います。決して中国が力をつけていない、そういうことを言っているわけはなくて、明らかにつけてはきているんですけれども、表面上に出ているものというのは必ずしも全てそれを反映しているわけではないということは考えた上で、今、日本の国がどういうふうに戦略を練っていくかということが重要だと思っています。
 それから、かなりお話でははしょってしまいましたけれども、博士人材のところとか、もうこれは繰り返しになるので、決して議論する必要はないかもしれませんが、やはり今、私が長い間、博士の子を自分の研究室でサポートしたり、いろんなことをしても、ドラスティックに増えるわけじゃないんですね。それはなぜかというと、やはり社会的に博士人材を重用していないというか、それに対する評価が低い。評価を低くしていると言ったほうがいいかもしれません、企業があえてそこをあまり認めていないというところがあって、社会全体が、やはり博士課程、博士を修了した人たちを活用していくということを企業がやっていかない限りは、なかなか博士の学生さんは増えていかないのかなと。最近の学生は必ず自分の将来のビジョンを持ち、社会がどう見ているかというのを気にして進学する場合が多いので、その辺がすごく、1つ改善していかないといけないポイントかなというふうに感じています。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。従来から出されているデータで、米国の場合はドクター出たほうが給料が高いと、日本は高くないと、ここがすごく大きな問題のような気がしますね。この20ページの図を見ると、もう一つインパクトがあるのは、女性のPIが、外国へ出た方がどんどん増えている、ここら辺も実はシリアスな問題をいろいろ含んでいるだろうというふうに思います。
 じゃあ土井さん、お願いいたします。

【土井委員】
 どうもありがとうございます。6ページの研究開発総額のところで、教えていただきたいと思います。ちょっと驚いたのが、中国の企業の研究開発費がもう米国より上回っているということなんですが、米国も多分、GAFAが多いと思いますし、中国もBATHということで、デジタル企業が多いのではないかと思うのですが、その辺りもし可能ならば、どういう企業が研究開発費を出しているかというところ、内訳分かれば教えていただければと思います。

【濵口主査】
 分かりますでしょうか。

【伊神NISTEP科学技術・学術基盤調査研究室長】
 残念ながらマクロな統計では、企業レベルでは分かりません。産業分類別のデータもあるんですが、現状で把握できているのは米国のみで、そちらで見ますと、やはり米国においては非製造業ですね。GAFAというお話がありましたが、そういう非製造業でも非常に伸びているという様子がございますので、今先生が御指摘したような点が見えていると思いますので、もう少しデータがあるかどうか探していきたいと思います。

【土井委員】
 もし分かればで結構なので。どうもありがとうございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。引き続き分析をよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、川端先生、お願いします。

【川端委員】
 ありがとうございます。2点、1点は、一番最初に、3ページ目に書かれている、やはり日本は研究開発経費は3位で、研究者数は3位でという、いわゆる大学的考えでいうと、これは日本全体の話で、研究開発費も入っているからでしょうけれども、リアリティーがなくて、注目度の高い論文数というのも同じ台の上に乗っているので、逆に言うと、注目度の高い論文をつくっている資金というのは一体どれぐらいな世界で比較ができるのかという、そんな気が1点、しています。
 それからもう1点は、これはもう完全に私自体よく分からないんですけど、10ページ目に商標と、それから特許出願、これに関して民間の反応が大きかったという、一体どういう意味で大きかったのか。喜んでいるのか悲しんでいるのか何かしたいのか、よく分からない。その辺について情報を教えていただけると、と思います。

【濵口主査】
 いかがでしょうか。

【菱山NISTEP所長】
 ありがとうございます。まず今の10ページの商標と特許のほうですが、これは要は日本の産業界が世界の産業界と違うということで、やはり悲観的ということで、こういう情報というのは多分、ディスカッションはあまりなくて、こんなだったんだという。要するに自分の会社のことは分かるけど、じゃあ産業全体どうかというのは分からないわけで、これを見ると日本の産業界の、先進国の中で違う行動を取っているというのが分かるということです。
 それからあと、最初のほうは。分かりますか。

【伊神NISTEP科学技術・学術基盤調査研究室長】
 研究開発費や研究者数と論文との関係ですが、これはスライド4の部門別の状況を見ていただくと分かって、例えば研究開発費ですと、日本の大学の研究開発費というのは米国、中国、ドイツに次ぐというところで、今第4位です。実はドイツに抜かれたというのは、たしかここ四、五年以内の話で、絶対額に加えて、結構伸びというのが各国違うので、論文数との関係という意味では、絶対額に加えて、やはりこの変化という部分も少し見ていく必要があるかなと。その点において、特に日本の公的部門、大学については、諸外国と比べてやはり伸びはあまり大きくないというのがデータから見えているということだと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 それでは、越智先生、お願いします。
 越智先生、ちょっと反応がありませんので、知野さん、お願いします。

【知野委員】
 よろしくお願いします。25ページのところのプレプリントのことですけれども、今回の新型コロナウイルスなどで研究がプレプリントによって進んだということが指摘されていますけれども、これがあまり進みますと、やはり正確さの問題、あるいは先陣争い、あるいは何かそういう意味でマイナスが出てくる、研究を阻害する面もあるかもしれないと思うのですが、何かプレプリントに関する研究者間のルールであるとか、今後これをどのように扱っていこうかというような、そういう意思を統一していこうなどの動きはないのでしょうか。あるいは、このままでよいとお考えでしょうか。その辺りの見解をお聞かせください。

【菱山NISTEP所長】
 ありがとうございます。プレプリントのルールとか何とかというのは、ちょっとNISTEPではいかんともしがたくて、こういう状況ですよというのを調査したところでありまして、今、知野さんが御指摘した中身の問題とか、まさに今回も、治験の結果、データベースがいいかげんだったので駄目でしたというので、リトラクションが何件も起きていますし、それでもこういう分野で、それこそ研究の信頼性というのはどう高めるのかとかいうのは、今後だんだん議論をして、コミュニティーの中できちんと議論をしていただくことが必要ではないかなと。これはNISTEPから見たところ、見解ではありますけれども、そういうふうに思っております。
 以上です。

【知野委員】
 ありがとうございます。今後の科学技術研究の質とか、あるいは方向性とか、そういうものに関わってくると思いますので、日本でも少し検討が必要なのではないかと考えました。
 以上です。ありがとうございます。

【濵口主査】
 それでは、新井先生、お願いします。

【新井委員】
 ありがとうございました。簡単なことで、これまでこういうタイプの、特に3ページ、4ページあたりの、川端先生は、これはどういうつもりなんですかみたいなことをおっしゃっていたあたりですけど、3番目と4番目みたいなのは、毎年こういう形で出されていると思うんですけれども、そのたびにやはり大学人は何なんだみたいなことを毎回、内閣府等から指摘されるとか、産業界から指摘されることが多いと思うんですけど、よく見てみると割合が、日本は79.4%が企業セクターが占めているわけですよね。大学は11.6%ということになります。ということは、これ、研究がちゃんと進んでいないのは企業の問題ではないかと言えなくもないなというふうに思いますし、企業だったら研究論文ではなくて特許なんだということであれば、それはそういう考え方かなとも思います。
 私はこの後、毎年こういうのを取っていらっしゃるNISTEPとして、一体日本はどんな国をロールモデルとして考えていくのかというのがすごく重要なんじゃないかなと思っています。例えばイギリスみたいな国は、見ると、そんなにマクロで研究開発費が多いわけでもないが、今回の新型コロナの論文の引用度もそうですけれども、非常に存在感があるというようなことがありますよね。そんなに経済状態がいいわけでもないし、国内も結構混乱しているにもかかわらず、存在感を示し続けている。タイムズだからということもありますけど、タイムズ・ハイヤー・ランキングでも1位、2位はオックスブリッジになっている。そうしたら、例えばもうちょっと深掘りして、イギリスみたいな、そう金もないしというような国がどうしてうまくやっているのかみたいなのを深掘りしたほうがいいのではないか。だって米国と中国は、日本はもう目指しようがないわけなので、デモグラフィーのこともそうですし、だからそうではなくて、ほかにも、経済がどっちかというと停滞していて、それで高齢社会になっていてというようなところでうまくやっている国を重点的にちょっと調べるということをされてはどうかなと思いました。
 以上です。

【濵口主査】
 菱山さん、いかがでしょうか。

【菱山NISTEP所長】
 ありがとうございます。恐らくそのどういった国という話については、次の議題の第6期のお話のところで、多分内閣府で、今回の第6期の基本計画の素案の中で、こんなふうにするんだというのが出てくると思っております。
 それから、今のイギリスのお話ですが、確かにイギリスの科学技術の分野を見れば、何といいますか、それぞれ重点の置き方が違っていて、まさに今回のコロナのような、病原微生物のこと、あるいは感染症については、イギリスとか、あとフランスもそうですが、非常にレベルが高いわけですね。歴史的にも感染症は国の大きな課題であったので、そういったことで今回非常に存在感があるんだろうというふうに考えております。特に医学及び創薬の部分、イギリスは非常に強いかなというふうに考えております。国の在り方については、まさに次の議題で御説明があるというふうに考えております。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 産業界の御意見も聞きたいと思いますので、菊池さん、お願いします。

【菊池委員】
 ありがとうございます。新井先生の御指摘と重なるところがあるかと思いますが、16ページ目のサイエンスマップ2018年のところを見ますと、14年と18年の違いで、イギリスと韓国が、実はコアペーパーシェア50%以上のところの数が上がっているんですね。アメリカも日本もフランスもドイツも実はエリア数のところで、ドイツは7から5、日本は4から3、フランスは3からゼロというふうに下がっています。やはりこのイギリスと韓国は、私たちとは違った政策というか、考え方で運営しているから、こういうふうな先導する研究領域数が増加したと考えてよろしいんでしょうか。

【濵口主査】
 いかがでしょうか。

【菱山NISTEP所長】
 すみません、その14年と18年の間についてはいろいろ変動もあるので、この傾向がさらに続くかどうか見ておかないといけないと思います。ただし韓国については、やはり研究費とかそういったものもたしか伸びていますので、韓国、中国はまだデベロッピングという形だと思います。イギリスについては確かに、どうなのかというのを、分析はさらにしていくことが必要かなというふうに思っております。今、先生おっしゃったように、ドイツとかフランスも含めて下がっていますので、そういった中でイギリスがどんな動きをするのかというのは、ブレグジットもあることですし、今後も動向をしっかり見ていくことは大事かなというふうに思っております。

【菊池委員】
 ありがとうございました。
 あと産業界の視点で、先ほどの商標権と特許のことについては、私も実はびっくりしまして、特許のほうには注力しますが、商標権を取るというふうな形で特許を活用するという活動が、日本の企業にはもしかしたら本当に欠けている部分かもしれないなというので、非常に反省というか、これは少し考え方を変えなければいけないなというふうに思いました。また、企業の研究者が、実は論文よりも特許のほうを重んじるということも確かです。それでも最近は論文のほうにも注力しようという機運は出ているんですが、まだそこが十分でないということで、反省をしております。
以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。この商標権の問題は、恐らくGDPに結構直結してくる問題がありまして、例えば無印なんていうのは完全に中国で、二番煎じでやられて、向こうで裁判をやっても負けてしまうというケースが結構出ていますので、かなりここは注力していかなければいけないことだなと感じております。
 お時間押していますので、最後に橋本さん、お願いします。

【橋本委員】
 ありがとうございます。よろしくお願いします。
 質問というよりコメントなんですが、COVID-19の拡大に伴って、先ほどもありましたが、今いろいろな形で研究成果の発表が行われているということで、査読を待たずにどんどん皆さん発表していくという動きがすごく出てきていると思います。私もいろいろなそういう集まりに参加をしておりますが、皆さん、これは本当に未発表のデータだけどと言いながらシェアして、いろいろ意見を交換して新しいアイデアを出していくと、そういう非常に活発な動きが見られております。
 一方で、確かに査読もされていないので、出しっ放しというところがあって、後でリトラクションされる論文もかなり多いというふうには聞いておりまして、昔風に言うとクイック・アンド・ダーティーみたいな形で、大きないろいろな情報が出てきてはいると思うんですが、やはり今こういう状況の中では、こういう新しい論文、研究成果の発表の仕方というのも見ていく必要があるのかなと思っております。
 しかも、非常に残念なことに、このレポートにもありましたが、その中で日本の貢献度が非常に低いんですね。例えば、先ほど新井先生からもありましたが、イギリスを中心としてウイルスのゲノムのシークエンスを患者さんのサンプルから取って、その変化を見ているというようなことが確実に行われているんです。それに関して、例えば日本の関連するような学会で何かをやっているかなということでいろいろ見てみましたが、日本からの情報発信が非常に少ないんですね。
 やっぱりこういう新しい動きが出てきたときに、どこかが中心になって司令塔的に動かないと、日本ではまだ、動きをつくるということが非常に難しいソサエティーかなと思いますが、やはりそこで関心を持った方、あるいは問題意識を持った研究者がどんどん発信していくという、こういう緊急事態での瞬発力みたいなところが問われているのかなというふうに思いました。
 コメントです。どうもありがとうございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。確かに遺伝子のミューテーション、突然変異のデータなんかは、発表、パブリッシュを待っていると、どんどん我々の対応遅れてきて、例えばワクチンが効くか効かないかという判断に直結してきますので、やはりプレプリントの意味もすごくあるかなと思います。一方でガセネタも多いですね、確かに。

【橋本委員】
 そうですね。だからそこの評価は非常に難しいところだと。

【濵口主査】
 難しいです。逆にその研究者がしっかりした判断をしなければいけない時代になってきたかなと、一人一人がレビュワーの実力を持つぐらいの力で見ていかなければいかんのではないかなと、そんな気がします。

【橋本委員】
 そうですね。結果的に日本ではワクチンがまだアベイラブルではないというのが現状ですね。

【濵口主査】
 ええ。総力を挙げて現場へ届けていただきたいなと思っています。
 すみません、お時間押してしまいましたので、次の議題に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 次は、科学技術振興機構研究開発戦略センターの岩瀬上席フェローから、資料2について説明をお願いします。よろしくお願いします。

【岩瀬JST研究開発戦略センター上席フェロー】
 御紹介ありがとうございます。それでは早速、資料2に基づいて説明させていただきます。
 一昨年、この委員会で、その時点の海外の状況を御報告しておりますので、その後の最近の動向ということで、かいつまんで御説明します。
 資料2ページ目に行っていただけますでしょうか。これは国ごとにそれぞれ説明しますので、飛ばさせていただきます。
 次のページをお願いします。各国の動向と、あと最近のトピックスです。
 まずアメリカですが、御承知のように、1週間後にトランプ政権が終わるわけですが、科学技術の分野ではどういう政策だったのかというと、私どもは、総じて言えば科学技術には消極的だったというふうに思っております。例えば、政府全体の科学技術政策を調整する大統領府のOSTP、科学技術政策局の局長の人事が、政権が発足して1年以上行われないとか、予算教書では毎年、科学技術関係予算の減額を提案する、そういうことが続いてきたわけです。そして、その中でも再生可能エネルギーであるとか環境、気候とか、特に消極的な分野があったと思っております。しかしながら、アメリカでは予算の編成は連邦議会が行いますので、連邦議会としては超党派で科学技術予算を維持するということでやってきました。
 そして、トランプ政権の途中から、未来の産業というようなことを提唱しておりました。これは特に中国との関係で、アメリカの優位が脅かされているのではないかという認識があるということであると思いますが、AIとか量子、あるいは先進的な製造、5G以降の通信とかバイオテクノロジー、そういうところに力を入れていくんだという方針は打ち出しておりました。
 一番下ですが、先ほど申し上げましたように、議会が法律を制定して予算を編成しますので、議会の役割が大きいわけですが、議会は積極的に科学技術の分野を強化するという法案を出し続けていました。1つ去年注目されたのは、NSFを国立科学技術財団にして、技術の分野を強化する、5年間でNSFの予算を5倍に増やすという法案が超党派で出ておりました。これは選挙に伴い、前議会の会期は終わったわけですが、その法案については成立しないまま終わりました。
 次に、4ページ目をお願いします。イギリスについては、今、研究のレベルが高いという話が出ていまして、イギリス自身も研究のレベル、特に基礎研究のレベルは高いけれどもイノベーションが不十分だというのが自己認識で、大学のイノベーションを支援するとか、カタパルトといった産学連携の拠点をつくるとか、そういうことをずっとやってきています。また、最近の政策では、産業戦略というのが一番中心的なドキュメントですが、そこでは社会の課題を解決するということで、グランドチャレンジと称して、AIといった技術だけではなくて、高齢化社会といった社会のイシューに焦点を当てた、政策の組立てになっておりました。
 そして2番目ですが、ブレグジット後も、基本的に大学の力を利用してイノベーションを起こすという方向性は変わっておりません。グランドチャレンジを引き続きやるということです。また、人材の話が研究開発ロードマップに出ておりますけれども、イギリス自身も国際的に優秀な人材を引きつけているということが重要であると思っておりまして、そういうことを継続するということを、政策として明確に認識しています。
 そしてまた、特にイノベーション、問題解決ということで、新しい組織を整備していこうとしています。コロナもありましたので、感染症とかバイオセキュリティーの関係の体制を強化するということがありますし、今ちょうど最終段階に入っていますけれども、ハイリスク・ハイリターンのイノベーションをやっていくということで、イギリス版ARPAを作るという検討も進んでいます。ここでは、米国のDARPAの以前の名称であるARPAと言っています。
 次のページをお願いします。ドイツはハイテク戦略といった枠組みで、やはりイノベーション重視の政策をずっと取ってきていますが、ポストコロナで特徴的なのは、グリーンと、AIを含めたDX、この2つをコロナから復興する中で強化していこうという明確な方向性が出ています。特に水素戦略ということで、これはEUの戦略ともうまく連携している形になっていて、水素関係の投資を大幅に増やしていくことになっています。これはCO2の排出を減らすということもありますが、産業とか雇用とか海外輸出というような出口を明確に意識しているものです。
 2番目としては、ドイツは、優秀な人材を海外からもっと連れてくることが必要だということを明確に打ち出しています。特にAI分野を中心に、そういう動きを具体化しています。
 3番目ですが、やはりドイツも、破壊的あるいはハイリスク・ハイリターンのイノベーションが足りないという認識があって、DARPA型と称していますが、そういう破壊的なイノベーションを進めるためのエージェンシーを一昨年作りました。
次のページをお願いします。フランスでもやはりイノベーションをもっとやらなければいけないということになっています。柱は、スタートアップの支援を強化するのと、AIを使って、行政、経済など、国のいろいろなところを強化していくという、この2つの方向が明確に出ています。
 2番目で、フランスもやはり人材の問題を柱に掲げていまして、例えば大学等の研究者は50%までエフォートを企業活動に使える、そんな法整備をするというようなこともやっていますし、ここでも人工知能を中心に優秀な人材を集めるということを意識的にやっています。また、そのAIを含め、フランスとしてもEU、あとドイツと連携して重要なことをやっていくという方針も明確に出ています。
 あと、最近のトピックスで面白いのは、昨年末に成立しました研究の複数年計画法というものでして、これは2021年から10年かけて、研究関係の政府の投資を計画的に増やしていくというものです。これは毎年4億ユーロぐらい増やしていくということですが、フランスの研究開発予算は200億ユーロ弱ですので、2%強、毎年毎年増やしていくということです。そういう法律が今年施行されると、それで若手のポストを増やしたり、処遇をよくすると言っています。
 次のページをお願いします。中国ですが、これは御承知のように、2049年の中華人民共和国建国100年を目指して、再び大国になるということを明確に掲げていて、イノベーション主導でそれをやっていくとしています。特に国際的に注目を集めておりますのは、中国製造2025でありまして、製造については、まだ技術等が国際的に弱いので、海外に追いついていくということで投資をしておりまして、特に米国等の警戒が一番集まっているところでもあります。そして面白いのは、製造の次に、今度は中国の標準を世界に広げていこうという中国標準2035なるものを、今年公表するだろうと言われております。あと、中国もAIや5Gへの投資を意識的にやっておりますが、例えば、上のほうの3行目にあります量子科学の国家実験室というものについては約1兆円を投資するなど、大規模な投資をするというのが特徴です。
 一番下の、中国もというか、中国は特にですが、海外から優秀な人材を集めるということを意図的にやっています。特に2行目の千人計画が有名ですけど、これは中国系の人を呼び戻すだけではなくて、もともと外国人である人を中国に、必ずしもフルタイムでなくても、パートタイムでも連れてくるということです。これは後で、最近のトピックでお話しします国際化をめぐるリスクの議論の一番の象徴的な問題だと、世界的に認識されています。例えば千人計画でアメリカの大学の教授をヘッドハントするときに、そういう契約をしていることを所属大学には秘密にしろとか、あるいはアメリカの大学にある研究室を中国に移転するということを義務づける、そんな契約をしているということがアメリカで明らかになって、これが問題になっているわけであります。それだけではなくて、中国国内でも人を育てようということにも熱心です。
 EUのページをお願いします。EUは一昨年、欧州委員会の委員長以下代わって新体制になって、新体制ではグリーンとDX、これをやるということを一昨年末の政策として出しておりまして、それはコロナが起こってからも、むしろそういうことを通して欧州を強化するということで、堅持されていると思います。
 例えば、研究開発の関係の主要なファンディングプログラムは、いわゆるフレームワークプログラムと言われていて、最新のものがホライズンヨーロッパと言って、今年始まります。これは約12兆円のお金が7年間でつきますけれども、最低35%は気候変動対策に投資するということを決めております。また、デジタル戦略といって、デジタルを使って技術を開発するだけでなくて、経済や社会をどうするのかということを明確に意図した戦略になっています。これも大規模な投資を行うということです。
 それと、2番目の社会変革のイノベーション、ミッション志向型というものですが、欧州の各国にも当てはまることですけれども、社会の課題を解決する、社会を変革するということを非常に重視しておりまして、今年始まりますホライズンヨーロッパの中でもミッション志向という政策を掲げておりまして、これはシーズからのリニアモデルとか、技術の立場から解決する問題を考えるのではなくて、問題の側からステークホルダーが集まって、いろんなアプローチで問題をどう解決するかと考え、その中で研究開発も位置づけるということです。日本としても非常に参考になることではないかと思っています。あとヨーロッパ全体としても、一番下にありますようにイノベーション関係の組織を整備して、そこにお金をつけるということをやっております。
 次のページをお願いします。注目のトピックスということで、2つ申し上げます。
 1つは、先ほど中国の千人計画というのが国際的に注目を集めていると申し上げたことと関連があります。この10年、20年、ずっとオープンイノベーション、国際化というものが進んできており、それは科学技術が進歩するために大事だということになっていっているわけですが、同時にリスクをもたらすという認識が広がっています。特にそのオープンさ、国際的なオープンさを不当に利用する者がいると、それによって国家安全保障や研究システムの健全性が損なわれるという議論が国際的に共有されつつあります。そのための対応として、研究コミュニティー自らがどうしたらいいのかということについて、インテグリティーという切り口が大事ではないかということがあります。私どものセンターでは、日本国内でもそういう問題は皆さんに関心を持っていただく必要があるということで、報告書をまとめました。
 次のページをお願いします。日本ではこの問題について、現状や問題点の分析の情報があまり得られないのですけれども、一番そういう情報が得られるのはアメリカです。アメリカも日本と同じように、FFPを特に重視して、研究不正を中心にインテグリティーをやってきたわけですけれども、最近の千人計画を中心とする外国との関係のリスクが問題になっていて、基本的にはアメリカの大学に、中国が組織的に不当な干渉をしているという議論です。それに対して安全保障の側から規制を強化するというアプローチがありますが、科学技術側からはそれだけではなくて、研究インテグリティー、健全性を保つということで、不適切なことが行われないようにやっていこうという取組が行われています。
 次のページをお願いします。同じような議論は特に豪州でも活発です。中国の豪州の大学に対する干渉にどう対応するかというような議論、取組が活発です。
 次のページをお願いします。イギリスでもそういう国際的なリスクについて、国家安全保障関係機関が大学に情報提供するというようなことをやっています。
 次のページをお願いします。そういうことで我が国としても、昨年夏の統合イノベーション戦略でもかなりこれに対する対応が書き込まれていますけれども、日本としても、国家安全保障上の技術流出の問題、あるいは、外国との関係で不適切なことが起こることによって研究システムの開放性あるいは健全性が損なわれる、そういう問題を認識する必要があるのではないかと思っております。
 次のページをお願いします。先ほど申し上げたとおりですけれども、そういう不適切な問題を防ぐために規制を強化することだけで行うとすれば、研究の活力を損ないますから、研究コミュニティー自体、健全性を高める自主的なこともやることが大事ではないか考えます。そして、それをやっていく上では利益相反、先ほど申し上げましたように千人計画のように、それは利益相反の最たるものでありますけれども、そういうものがきっかけに不適切なことが起こるという事例は、もうかなり出てきていますので、利益相反を防ぐために透明性を高めるということをやっていったらどうかということを言っております。
 次のページをお願いします。それをやっていく上では、大学のリスクマネジメントを強化するということの一環としてやっていただくことが大事だと思っています。
 次のページをお願いします。新型コロナの関係で、研究の国際協力は非常に大事だということになっていますが、同時に今回のようなリスクの問題にきちんと対応しないといけないということで、研究インテグリティーの議論を国際的にやろうということがOECDで今月から始まり、私も日本から参加させていただきます。6番ですが、日本でも研究コミュニティーにおかれては、こういう問題に対して、主体的にどうするのかということを考えていただきたいと思っています。
 次のページをお願いします。次は、1週間後に発足するバイデン新政権ですが、かなりトランプ政権の方針が転換されることが予想されています。パリ協定に復帰する、そういうことが典型的な話です。
次のページをお願いします。先端技術、あるいは新産業ということは、トランプ政権としても重要だと言っておりましたけれども、投資としてはそれほど行われているわけではないわけですが、バイデン政権は投資を増やすと言っています。あとトランプ政権は、DARPAをモデルにしたエネルギー省のARPA-Eというのがありますが、それを廃止するということを毎年予算教書で提案していましたけれども、バイデン政権は逆で、そういうものを維持するだけではなくて、気候版のDARPAもつくるとか、そういうことも言っております。
 次のページをお願いします。あとWHOからの脱退を撤回するとか、コロナ対策について、専門家の知見を重視せず、専門家が言うことと全く違うことを大統領が言うということでありましたけれども、バイデン政権は、特にトランプ大統領が目の敵にしておりましたアレルギー感染症研究所のファウチ所長を重用するとか、専門家をちゃんと活用しますとも言っております。
 次のページをお願いします。アメリカではいろいろなイニシアチブが、政権を越えて行われていて、トランプ政権も、そういうものに対する投資は減らすけれども、やめるというところまではやっていないわけですが、バイデン政権になってそういうものがさらに強化されるということもあるのではないか、特に環境関係とか、そういうところが再度強化されることがあるのではないかと思われます。
 次、お願いします。また、先ほど申し上げましたように、議会の動向が重要ですけれども、例えば、一番上にありますように、人工知能関係の拠点をつくろう、研究費をもっとつけようという法案が、この前の議会で成立するということもありました。2番目は、先ほど申し上げましたNSFの予算を5倍にするという法案、これは成立しませんでした。そこにありますように、いろいろなイニシアチブが議会から出てきて、かなりのものは実行されているということです。
 非常に飛び飛びになりましたが、私からの説明はここまでとさせていただきます。よろしくお願いします。

【濵口主査】
 それでは、ただいまの発表に御意見、御質問ございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 新井先生、お願いします。お手が挙がっておるようです。

【新井委員】
 詳しい御説明をありがとうございました。2点、お尋ねしたいことというか、1点目なんですけれども、今回、国際共同研究とインテグリティーのことを、非常に強い問題意識を持っていらっしゃるという、特に中国との関係においてということだったと思うんですけれども、これは私どもの研究所でも、共同研究があるときに、これは大丈夫なのかということをけんけんがくがく、結構議論しなければならなくなって、研究者の時間が非常に割かれていて、しかも私たちは単にITの人たちなので、法律の素養がない。それで、各大学、機関が法人化されていますから、顧問弁護士がついているんですけど、顧問弁護士に聞くと大体、顧問弁護士はやるなということばっかり言うということがあって、国際共同研究が止まるという方向がありまして、一方、留学生の受入れとかインターンは結構もうほとんど、何も検討しないで入れちゃっているというようなこともあります。
 あとは流出についてなんですけれども、やはり日本の大学の給料レベルであるとか、あるいは待遇が年々悪化していますので、大枚を出して研究に特化させてあげましょうというような中国の大学からのオファーに行くIT研究者であったりとか、もっと基礎研究者ですね、数が増えているなというふうに感じます。なので、大学とか大学人個人であるとか、そのレベルでインテグリティーを担保することは、時間の無駄でもあるし、そろわないということもあるし、どこかきちんと決めてほしいということもありますし、インテグリティーをきちんとして流出させないというのであれば、待遇を改善しないと無理なので、そのところをどういうふうに考えていらっしゃるのかなという。これはJSTのCRDSにお尋ねすることではないと思うんですけど、CRDSが内閣府等にこれを進言される場合には、そのことについて問題意識が実はあるということを併せてお伝えいただけるといいなと思いました。
 2番目です。ドイツのところでマックス・プランクという、ああ、懐かしい名前だなというのが出てきました。多分、今のこのイノベーション、グリーンもそうですし、AIもそうですけれども、イノベーションを起こそうとすると、これまでの省庁縦割りの競争的資金の在り方だと、本当に無理があるとか無駄があるとかということがあると思うんですね。昨日も農水省のIoT農業関連の担当者に話を聞きましたけど、農水省の中ではITが分かる人って1人か2人ぐらいしかいないわけです。そうすると結局は、どういう設計をしてIoT農業をどう進めればいいかとか、どの省庁のどこの担当部署と積極的に連携をすべきなのかとか全然分からなくて、取りあえず予算を立てて、IoT農業という感じで競争的資金をやって、でもあまり、怖いので、1案件100万とか200万というのを20件みたいな、そういうような予算のつけ方で2年間みたいな。そういうのだと本当にけちくさいんですけれども、ずるずるお金は使うんだけれども意味がないということを、多分各省庁でやっているんだと思うんですね、目利きがいないということがあって。
 このITとかグリーンに関しては、目利きになるようなきちんとした人がいて、どことどこをマッチングさせてどうしなければいけないかみたいな、司令塔みたいなものが必要なんだろうなと思うんですけれど、これに関して、例えば誰がそれを担うのかということですよね。CRDSなんかは大変すばらしい機関だと思いますけれども、それは研発がやるのか大学共同利用機関がやるのかみたいな、すごい重要なことだと思います。
 例えば、具体的な事例を1個言いますと、今、人工知能では、BERTの上を行くGPT-3とかというのがすごいことになっているんですけれども、これはGPUをすごい並列で使って、大規模化して実験しないと無理なんですね。日本で行われている自然言語処理の研究は、もうBERTの一番小さいモデルぐらいしか使えていません。理由はGPU並列の大規模計算機がないからです。アメリカのほうは、これはスペースXみたいなところが。そういうようなところを、例えば産総研のようなところが担うとかJSTが担うというようなことをしないと、とてもじゃないと追いつかないなというふうには思います。
 以上です。

【濵口主査】
 岩瀬さん、どうでしょう。

【岩瀬JST研究開発戦略センター上席フェロー】
 インテグリティーの問題は、個々の研究者の方に負担がかかるというようなやり方になるとうまくいかないので、私どもは、利益相反の話にしても、透明性を高めるということをまず徹底的にやればいいのではないかというふうに提案しています。個別の問題でこういうことはいい悪いというのは、相当事例が蓄積されないとできないので、まず透明性を高める。あと、日本ほど状態はひどくないですけど、ほかの国でも同じ悩みがあって、研究機関や研究者をどう支援するかということについては、まずコミュニティーの中で、大学なら大学同士、グッドプラクティスを大学の協会のようなところで蓄積して、いろんなところで参考になるような形に整理して各大学に提供する、これを一生懸命やっている。日本もそれをもっとコミュニティーでやっていただかないと、個々の機関に任せたら、できないと思います。あと、アメリカですとFBIとか情報機関が、こんな問題があって、こういうことに気をつけたらいいですよという話、情報を相当、大学に出しています。イギリスでも出しています。そういうことをもっとやっていただかないと、規制をしますというだけでは動かない、そういうサポートが大事だと思います。
 また、農業の話とか、面白い例を聞かせていただきましたが、先ほど申し上げたミッション志向というようなものが、1つのその答えにはなっています。要するに特定の庁だけでやるのではなくて、農業とか、ある程度広がりある問題を、いろいろなステークホルダーが入って、問題をどう解決するんですかというところから議論する。その中で、技術的にはこんなものが使えるんじゃないかという議論をしていって、その中でその技術的なプロジェクトを位置づけていく、そういうふうに全体の議論をする場をまずつくるというようなことが恐らく大事だと思います。
 取りあえず以上です。

【濵口主査】
 それでは、竹山先生、お願いします。

【竹山委員】
 ご説明ありがとうございます。まずEUの事例について質問です。ご説明の中で、EUの主要国の個別策と、EUとしての政策の二重構造での御紹介だったかと思います。日本からEU諸国との連携を考えたときに、EUと大学の戦略を考慮する必要があるかと思います。ミッションステートメントも違うようなので、その違いを明示していただけると助かります。ムーンショットプログラムが現在進んでいますが、EUをはじめ連携が求められています。
 次に、オープン・クローズ戦略など研究プロジェクトを推進するためにはいろいろ考えなくてはならないことがあると思います。しかしながら、大型プロジェクトでは、意識させられることが多いですが、その規模によっては必ずしもそうではないかと思われます。諸外国への情報漏洩も含め、サイエンスコミュニティーに警鐘を鳴らすやり方をもう少し考える必要があるかと思います。
 最後に、日本のポスドクの給料水準を諸外国と比較したデータがあればと思いました。昔に比べれば高くはなったと思いますが、プロジェクトで雇用されている場合、必ずしも高くはないと思います。日本の社会全体で給料がこの10年以上変わっていない状況下で、ますます諸外国との差が開くことで、海外への流出もあると思います。ポスドクの給料の低さが露呈すると、研究者志望学生が減ってしますかもしれませんが、まずは情報をまとめていただければ助かります。
 以上です。

【岩瀬JST研究開発戦略センター上席フェロー】
 ありがとうございます。御指摘ごもっともだと思いますので、私どもとしてもそういうふうな観点から役に立つような情報提供をもっとできればと思います。ありがとうございます。

【濵口主査】
 よろしくお願いします。
 それでは、新保先生、お願いします。

【新保委員】
 新保です。私からは意見というか、感想のようなものになってしまいますけれども、本日の資料、非常に参考になるというか、私たちが参考にするよりも、例えば政治家の方にもできれば認識していただきたいなと思うところなんですけれども、どういうことかというと、例えば米国は、こういった新興技術の活用について、法案を積極的に提出して予算をつけて、かなり戦略的に取り組むと。EUも同じような取組を行っているわけですけれども、一方、日本の場合は、今デジタル庁創設の議論もありますけれども、デジタル庁創設の議論というのは、あくまで行政のデジタル化という議論であって、新興技術の活用という段階の前の議論だと思います。つまり、周回遅れを挽回するための取組を今始めているといったような感が否めないわけです。アメリカと日本の立法過程が、アメリカが100%議員立法で、日本が政府提出法律案、内閣提出法案、閣法が多数を占めるという、それを踏まえた上でも、やはりこういった新興技術の活用についての議論というのが、諸外国ではかなり積極的に法案の制定という過程で進められているという状況が、今日の資料で明らかになったと思います。
 この点について、ちょっと手前みそなんですけれども、今チャットでリンクを送らせていただいて、去年から、新興技術活用推進基本法のようなものを日本でも制定すべきではないかということを提唱させていただいて、総務省の研究会の資料として公表しているんですけれども、もうほぼ何も反応が、やはりないんですね。私からは、やはり新興技術活用促進を目的とする基本法のようなものをつくるということを、今日の資料を踏まえて、各国の状況からも、これはかなりエビデンスが、各国の状況が分かったという感想であります。
 以上であります。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 菅先生、知野先生、お手を挙げていただいておるんですが、ちょっとお時間押しておりますので、後でお時間あるときにもう一度、御議論させていただければと思います。
 議題2の第6期科学技術・イノベーション基本計画について、これはかなり重いお話ですので、まずこちらを討議していただいて、時間ありましたらもう一度、総合討論でさせていただきたいと思いますので、お願いします。
 それでは、議題2について、内閣府の中澤企画官から説明をお願いします。

【中澤内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 統合戦略グループ企画官】
 内閣府の中澤です。よろしくお願いいたします。資料3-2を使って御説明させていただきたいと思います。
 私自身、総合政策特別委員会の担当を文科省でさせていただき、去年の2月に内閣府に移りまして、基本計画の担当をさせていただいておりました。総合政策特別委員会、昨年3月にまとめていただいた資料、こういったものも踏まえまして、本日主査としてこの場にも御出席いただいて、まとめていただいている濵口先生、それから、この総政特のメンバーでは五神先生、菅先生、さらに十倉先生にも御参画いただきまして、内閣府のCSTIの下に基本計画専門調査会の中で基本計画に関する議論を進めてきたところでございます。
 昨年末に、こちらの資料3-1、委員限りということで恐縮でございますが、年末に、おおむねまとめておりまして、これは非公開の扱いですけれども、基本計画専門調査会、CSTIの会議の場でも活用しているペーパーでございます。そして、今のスケジュールとしましては、こういった資料を基本計画専門調査会の委員、それから関係省庁と最終調整をさせていただいた上で、週明け、来週をめどにパブリックコメントをかけさせていただくというような段階でございます。その後、2月中にパブリックコメントの回収を行った上で、資料としてまとめ、年度内に政府として閣議決定というスケジュールで進んでございます。
 時間が押していると理解してございます。資料3-2で簡潔に御説明させていただきたいと思います。
 現状認識でございますけれども、上にボックスが3つございますが、国内外の社会情勢の変化ということですと、やはり科学技術・イノベーションという観点での国家間の覇権争い、これが非常に激化している。それから気候変動、こういったグローバルアジェンダの脅威というのが非常に大きくなっていると。あるいはITプラットフォーマーによる情報の独占、富の偏在化、あるいは脱炭素ということが国の重要な課題に今なってきている中で、まさに昨年丸一年、もうこれ一色だったと言ってもいいわけですが、真ん中のところにございます新型コロナウイルス、こちらが起きたというところが大きな変化ではなかったのかなと。こういったところが左側の国内外の社会情勢に極めて大きな影響、あるいは我々に気づきを与えていると。 国際社会が一変しているという意味では、やはり感染拡大防止、あるいは社会経済活動の維持、こちらの両立が非常に今求められている。それからサプライチェーンの分断も非常に問題化している中で、これは社会が変わっているわけですけれども、生活そのものも変わっている。我々個人レベルでも生活の改善が求められていると、そしてその非日常が新しいニューノーマルという形で、我々の社会の中で当然のこととしていく社会変化が求められているという状況でございます。
 一番右側のボックス、黄色のところでございますが、一方で我が国特有の状況ということで見ると、今回振り返りをした際に、このコロナで浮き彫りになりましたが、やはりデジタル化の圧倒的な遅れというところはございました。先ほど新保先生のほうからも御指摘いただきましたけれども、非常に我々、デジタル庁を今後立ち上げようというところでございますが、やはり政府自体が圧倒的にデジタル化が遅れていたということ。それからデジタル化そのものが、企業、社会においても目的化したデジタル化ということで、何かすること自体が大事みたいな中で、Society 4.0の単なる延長になってしまっていたというところ。
 それからもう一つ、丸の下のところでございます。これは大きな話でございますが、昨年度、通常国会で科学技術基本法の改正が行われて、これまでは科学技術基本計画だったところですけれども、イノベーションという中身も加わったというところ。それから人文・社会科学、これが科学技術基本法の中では、人文・社会科学のみの振興というのは、いわゆる融合領域以外のところというのは除外されていたわけですけれども、法律上も、これはそのものもやはり大事であるということで、それを含めて、総合知という形で社会を進めていく必要があるという状況でございます。
 真ん中のところが、じゃあ今後、我が国としてどういったところを進めていくべきか。新井先生から非常に示唆的な、中国なのかアメリカなのか、それはないという中で、どの国を1つ見ていくのかというような御指摘もいただきましたが、我々としてどういった社会を描いていくのかというところをこちらで書かせていただいてございます。やはり我々としてはSociety 5.0、こちらを日本なりのやり方でやっていくんだということ、それが、ボックスの太字で書いておりますが、一人一人が輝くオールインクルーシブな未来社会をつくっていくということでございます。一言で答えますと、右側のところに文字で書いたように、我が国の強みであるクオリティー、あるいはデータ、こういったことを活用したデジタルトランスフォーメーションと、我が国の持っている伝統的な価値観、こういったものに根差したアプローチによって、国民の安全・安心、あるいは人類個人の幸福、ヒューマンウェルビーイング、これを実現した社会を目指していくべきではないか。
 その下の大きな真ん中のボックスの中に、4つのエレメントに分かれてございます。1つは持続性の確保をしていくべきではないか、地球規模での環境の持続性が、SDGsと軌を一にするものでありますけれども、必要ではないか。デジタル化を進めれば進めるほどエネルギーの利用というのは圧倒的に増えてしまうと、これはやはり地球に優しくない、それでは駄目だよねという意味での持続性。あるいは、もう少し社会そのものという意味では社会保障費、こういったようなものも非常に増大化していく中で、我が国固有の問題としても安定的な社会制度を維持していかなければいけないという話。あるいは、強靭性の確保、下のところの太字でございますが、今回コロナでもやはり顕在化したところでございます。国として一定程度――一定程度という言い方はちょっと語弊がありますが、総合的な安全保障といったものを、国として立っていられる、そういったところを実現していく必要があるのではないか。
 それから、人生100年時代の多様な幸せの形ということで、やはりヒューマンウェルビーイング、あるいはオールインクルーシブといった中で、個人の非常に多様な生活、こういった中での一人一人、誰一人取り残すことのないという中での仕組みをつくっていく。自らの能力を引き出していく教育環境、あるいは多様な働き方を実現していく社会の雇用環境、それから生涯にわたって健康で社会参画していける、そういった環境を作っていく必要がある。さらには、これを実現するための我が国なりの特殊性としましては、右側のところでございますが、もともと我々、今回コロナの中でも1つ、日本の規律の正しさといいましょうか、最近非常になかなかうまくいかない部分というのも出てきておりますけれども、個々人一人一人の、自分たちだけ、個人の利益だけではなくて、コミュニティーといいましょうか、社会を一定支えていくんだという分かち合いの価値観であるとか、あるいは三方よし、こういったような部分を裏打ちしたやり方によってSociety 5.0を実現することによって、こういった持続的な社会の在り方を日本がいち早く実現するんだということで、それを社会にも発信していくというやり方ではないかということで考えてございます。
 さらに個別の政策エレメントとして、下の黄色いボックスのところを御紹介させていただきたいと思います。
 3つボックスがございますが、1つはイノベーション、左のボックスでございますが、この中には6個のエレメント、イノベーションによって社会変革を断行していくんだと。1つはやはりデジタル化の徹底的な推進ということでございます。これはやはりまず政府からという、先ほどのデジタル庁をつくるというところに加えて、社会のあらゆるデータインフラ、こういったところを徹底的に、イノベーション観点ということではスパコン、宇宙システム、あるいはBeyond 5Gもありますが、こういったところを進めていく。それからカーボンニュートラルの実現、我が国も、遅ればせながらという点もあるかもしれませんが、2050年までのカーボンフリーというところを実質踏み出したと。このカーボンフリーを実現するためには、やはり一人一人、あるいは社会の生活を変えなければいけないというところに加えて、もう圧倒的なテクノロジー、このテクノロジーで改善していくべきというところもあるわけでございます。竹山先生からも御指摘ありましたムーンショット型の研究、こういったところも寄与できると思っておりますし、今般、経産省の中で、環境エネルギーというところで2兆円のファンドも創設されてございます。こういったところも使って、徹底的なテクノロジーでこれを実現していくという、社会変革も当然大事ですし、テクノロジーも大事と。
 さらに、(3)番は安全・安心と強靱な社会の構築というところで、脅威に対応するための重要技術の特定と研究開発。それと、新保先生からも新興技術というようなお話がありましたが、安全・安心という観点の中での重要技術の特定、こういった中ではシンクタンク機能といったところも作っていくというような話も基本計画の中で掲げさせていただいてございます。
 それから(4)番は、社会課題解決に向けた研究開発の実施でございます。幾つか挙げさせていただいてございますが、先ほど御議論いただいたところで、真ん中のポツ、SIP制度の効果的な活用、知財の活用、それから、ここに国際連携、国際展開というところがございますが、インテグリティーについてもこういった中で議論していくということになってございます。基本計画の中で書いている部分自体は、インテグリティーに関する一定の方向性、あるいはガイドラインといったものを、もう既に議論は始まっておりますが、2021年度内に取りまとめるというような方向性を打ち出してございます。
 それから、下のイノベーションエコシステムというようなところでございますけれども、こちらはやはりアントレプレナーシップというような中で、ベンチャー政策を徹底的に進めていく、それから産学連携、こういったところの強化と。さらには、スマートシティの展開というところを(6)番で挙げさせていただいてございます。
 右上のほうに行っていただいて、知のフロンティアを開拓する研究力の強化という部分でございます。こちらについては(1)から(3)、3つの項目を挙げさせていただいてございます。1つ目は研究そのもの、こちらもDXを進めていく必要があるであろうと。先ほどプレプリントというようなところもありましたが、やはり非常に社会のデジタル化が進むに従って、非常に迅速な形でデータの共有、あるいは戦略的なオープンとクローズが大事だというところが今非常に重要になってきているというところで、色々なメタデータをなるべく国全体として、国富の増大につながるような形でもメタデータの共有を進めていくという研究データの共有。それから今回コロナで、遠隔からの研究というところも1つ大きな課題になりました。遠隔からの研究システムへの接続、研究機器への接続ということで、スマートラボ、AIを活用した研究の加速。それから、これまで以上に研究機器設備といったものを効率的に使っていく、そういったようなところが掲げられてございます。
 それから(2)番、こちらがまさに本丸中の本丸というところでございます。非常に博士課程の研究力、こういったところが長い間課題になってございますが、若手研究者は引き続き大事だという中、それから女性研究者の話、それから先ほどのインテグリティーとも連携する形で国際共同研究、この新しい戦略も作っていくということも掲げさせていただいてございます。
 真ん中のポツでございますが、博士課程の学生の処遇改善というところでも、これはこれまでの基本計画で書いても、なかなか改善できなかったところではございますが、今回補正予算等々ついた中で、博士に対する経済的な支援は、もう圧倒的にこれを拡充するという方向性が、これは予算の裏打ちとセットで今つき始めております。それだけではなくて、やはりリサーチアドミニストレーターという形で、博士は学生でもあり一人前の研究者でもあるという形で、PIの先生方の下、しっかりと研究者として尊重していくという中で、RAの支出を促進していく。それから産業界の道というところも早い段階から見ることによって、結果としてアカデミーで活躍する人も増えますし、あるいは産業界でも当然ながら、非常に高度知的人材として大活躍する時代がもう少しで待っているという世界を作っていくというところが必要と。そういった中でインターンシップというところの取組も強化してまいります。
 それからやはり、今回基本計画の中での大きな柱の1つでございますが、人文・社会科学の振興というところでございます。ファンディングの強化、人社のDXということを書いてございますが、これは自然科学と融合した形で、社会を変えていく総合知という形で、人社の色々な知見を科学技術・イノベーション、あるいは科学技術・イノベーション政策そのものにも徹底的に反映していくというところを取り上げてございます。
 (3)番は、大学の機能の強化でございます。こちらは文科省の高等教育局の議論の中でもございますので、割愛させていただく部分は多いかもしれませんが、国立大学の第4期中期計画期間が2022年度から始まる。そこに向けた取組というところで、新しい国と大学との関係を作っていくんだという自立的契約関係の話を掲げてございます。
 それから、今回基本計画の一番の目玉と言ってもいいかなと思っておりますが、10兆円規模の大学ファンドの創設も掲げてございます。大学ファンド、非常にこれは重い話でございますけれども、いわゆる単年度予算という仕組みではなくて、政府、あるいはいろいろなところからのお金によって10兆円規模のファンドをつくって、その運用益を活用して大学の基盤的な取組、研究大学の基盤的な取組というところを支えていく、新しい、そしてインパクトの大きな政策を盛り込んでいるというところでございます。
 最後でございますが、右下のボックス、教育・人材育成システム、それから資金循環というところでございます。2つございます。1つは、今回、初等中等教育も含めて探求力という、ある種決められた答えが1つある課題を解いていくということだけではなくて、まさに現実社会との対応の中で、プロジェクトベースのやり方の中で試行錯誤しながら物事を考えていく、そして曲がりなりにも答えを何とか導き出していく、そういった取組を強化していくといったところを初等中等段階から、STEAM教育等も通じながら進めていくというところを今回、教育政策も科学技術・イノベーション政策の一環として、連携してやっていくというところが1つ。
 それから最後、こちらは資金循環、研究開発投資目標でございます。第5期基本計画では5年間で26兆円の研究開発投資目標というところを設定させていただいてございます。これはまだ調整中で、第6期に向けたところの金額自体は、すみません、政府内での調整というところもあって、まだ調整できていないところもあるわけでございますが、何がしか、先ほどCRDSからも、諸外国でかなり圧倒的な研究開発イノベーション投資を進めていくんだという中で、我々も、イノベーション政策が国家の中心であると、国家戦略の中心であるという中で掲げていきたいと考えてございます。
 一方で、研究開発投資そのものの中でも、昨今いろいろ御批判、御指摘受けているところでございますが、お金として予算は増えても、なかなか大学の中で自由に使えるお金、あるいは先ほどトップ10%論文に寄与するお金といったところもございましたが、どういったお金がある程度、本当に自由度のある形で研究現場に使えるような形になっているか、そういったところもしっかりモニタリングと調査をしていくというところも今回の基本計画の中で盛り込んでいるところでございます。
 すみません、雑駁な説明になってしまいましたが、こちらで一旦説明を切らせていただきたいと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。中澤さん、総政特での議論もよく踏まえつつ、オールジャパンの全体としてどういう政策をつくっていくかというところを今まとめていただいている最中です。非常に新しい観点がいろいろ入っていると思いますが、御意見、御質問をいただきたいと思います。
 それでは、竹山先生、お願いします。

【竹山委員】
 博士課程の学生への給料支出のお話しがありましたが、研究費の種類や規模によって問題点を指摘されることがあります。科研費においても大型予算であれば出せないことはないことはないと思いますが、総じて反対意見が多いようです。様々な国レベルのプロジェクトが作られていますが、大学として申請するような形式であり、必ずしも博士課程の学生がいる先生方に平等に申請が可能な状況ではありません。学生はJSPSのDCという制度がありますが、採用される率はまだまだ低い状況です。科研費も含めて、例えば雇用費として半分程度研究費から支出して、申請ベースで国からの補填が可能なようなシステムがあれば、より多くの博士課程の学生の生活は安定するかと思います。特に科研費は研究者レベルで獲得する研究費であり支援はもう少し平等になると思います。

【濵口主査】
 いかがでしょうか。

【中澤企画官】
 竹山先生、ありがとうございます。今、私は内閣府の立場なので、ぜひ文科省の中で色々と検討していただきたいという思いもあります。
 すみません、数字だけ御紹介させていただければと思います。我が国の競争的資金全体の中で、競争的資金のお金でRAに回っているお金というのは現状0.1%でございます。一方で、NSF、これの研究費の中でRFに行っているお金というのは17%ございます。やはり財源がどうこうというところはもちろんありますけれども、その中でやはりRAという形でしっかり博士を処遇していくという、まさに処遇している研究者のところに当然、研究者、博士も集まるという、ある種そういったエコシステムができればいいかなと。
 それから、竹山先生おっしゃっていただいたような、科研費は私も厳しいなと思っておりますが、その他のところで、先生がおっしゃっていたようなうまいインセンティブ設計みたいなところは本当におっしゃるとおりかなと思いますので、ぜひ私自身も引き続き、ちょっとそういった検討をさせていただければなと思います。

【竹山委員】
 ありがとうございました。

【濵口主査】
 この点、JST、10兆円をはじめ、かなり責任多いんですけれども、1つは直接経費からRA経費等を出せるかどうかと、かなり議論ずっとしてきまして、ムーンショットと、それから創発に関しては可能にしました。ただ創発は額が小さいので、オントップでさらに博士課程のサポート等を200億円、臨時でいただいていますので、これから注入する議論が始まると思います。そこら辺まだ全体の設計がしっかり出来上がっていないですけれども、政策の方向としては、RA経費であるとかポスドク、大学院生のサポートにもう少しちゃんと支援をしましょうという流れはできつつあるように思いますので、引き続き厳しく御指導いただければと思います。

【竹山委員】
 研究費部会でも同様な議論が出ていますので、是非今度またディスカッションさせてください。

【濵口主査】
 はい。よろしくお願いします。
 菅先生、お願いします。

【菅委員】
 ありがとうございます。研究費から出せる謝金についてというか、RAじゃないんですけど、実は謝金は結構出せます。修士の学生にも出せますし、博士の学生にも出せるので、出せないという議論は今さらおかしいなというふうに思います。それはちょっとおいておいて、私、実際、出していますので、出せます。
 まず最初に、CRDSのことにちょっと戻ってから、また議論させていただきたいんですが、アメリカの現在のトランプ政権のめちゃくちゃな話はちょっとおいておいて、あと中国のお金をがんがんかけて全てやりますよというのもちょっとおいておきますと、非常に面白いなと思うのは、EUは地球全体、気候変動に関することにお金はある程度割いていきましょうということ、一方で、そのEUの中の国でありますフランスとかドイツは、それぞれ独自の分野にかなりの額を投入するということを決めています。ドイツなんかは水素なんて非常に大きな額をやりましょうということを決めているといったことを見ますと、日本がじゃあ実際にこういった動向、注目動向というのを日本の中でやって、ほかの国が見たときに、どういうふうなリストを挙げてくるのかというのが非常に私は興味があるところであります。恐らく似たようなことを他国がやっているんだろうなと思いますので、ぜひともそういう情報を同時に発信し、ここに入れていただきたいと思います。そうしないと、日本がどういう比較対象に見られているのかというのがあまりよく分かってこなくて、海外だけがこういうふうには我々は解析するけれども、じゃあ海外から見て日本はどうかというのは必要なことではないかと思います。
 一方で、先ほどの中澤さんからの御説明ですけれども、私はこれ自体に関わっておりますので、実質的に理解しているんですけど、やっぱりちょっと、今もう一度こうやって全体を聞いてみると、日本も全体を全てやっていきましょうというふうに聞こえてしまうものがありまして、それだけの予算がつけられるのかという問題と、あと、若干やっぱり浮き足立っている。Society5.0という名称の下で、ちょっと浮き足立っているような感じがどうしてもしてしまうんですね。ですので、先ほど申し上げたように、海外の人たちから見て、じゃあ日本はどういう政策を取っているのかというのを一度きっちり見たほうがいいのかなという感じを受けました。私自身も、ここに書いてあることは非常に真っ当なというか、夢のようなことが書いてあるわけですけれども、じゃあ本当にそれが足が地についているのかどうかということです。
 それから、あともう1点だけ、こんなことを私が言うのは何なんですけれども、先ほどのヨーロッパの国々を見ても、やはりイノベーションに大分、軸足をぐっと置いているという感じがします。一方で、じゃあ日本はというと、先ほどの話もありましたけど、宇宙とか、それからビッグサイエンス系のほうにかなりお金が行っている部分もあって、果たして本当にそれを続けていっていいのかどうかというのも客観的な立場から見ることは重要かなというふうな印象を受けました。
 以上になります。

【濵口主査】
 ありがとうございます。中澤さん、御意見ありますか。今の指摘に対して。

【中澤企画官】
 御指摘いずれも非常に大事な御指摘かなと思っております。全方位外交でやるのかというようなところも非常に難しい部分だなと思って、そこは2つあるかなと思っています。1点は、全方位といいましょうか、科学技術・イノベーション政策自体が、これまでの、例えば国家戦略の中でも、国家戦略そのものに占める科学技術・イノベーション政策の重要性というのは、これはもう諸外国どこも強くなっている。日本もそこは強くなっているというところはあるのかなというようなところが1点と、それから、これは非常にきれいなこと、いいことばかり書いてもというところは、私も一担当として非常に強く感じておりまして、書いてある文章の裏打ちとなる動きを本当に作っていけるのかという意味では、内閣府の資料の中では、その裏打ちができるという部分だけを書き込むという努力はかなりしてきました。その1つが、例えば10兆円ファンドもそうなんですけれども、あるいは法律改正もそうなんですけれども、そういった裏打ちとなる動きというのも併せて進めていくのが必要かなと思っております。いずれにしても御指摘、重要だと思っています。ありがとうございます。

【濵口主査】
 今の菅先生の指摘で、私、ちょっと調べる必要があるかなと思いますのは、文科省に関わらず、全ての省庁で動いているトップダウン型の大型予算の研究内容をリスト化したほうがいいんじゃないでしょうか。全体が見えていないような気がします、今のところ。我々文部科学省に関してはある程度知っておりますけれども、もう少し全体像を見る必要があるのかなと。

【菅委員】
 そうですね。それが海外から見たときにどういうふうに見えているか、非常に気になるところです。それがちゃんと発信できているのかどうかというのか重要だと思います。

【濵口主査】
 御指摘のとおりです。
 それでは、越智先生、お願いします。お時間を押していますので、すみませんが。

【越智委員】
 ありがとうございます。まとめるのが大変だっただろうと思います。私も何点かあるんですけれども、まず、最初の出だしが国家間の覇権争いというようなことから始まっているんですが、認識としては非常に正しいと思います。ただ、一番最初にこれを持ってくるということになると、やはり覇権争いの中での科学技術イノベーションということになりはしないかということをちょっと危惧します。日本の立ち位置が、可能かどうかは別にして、中国とアメリカの中でどういうふうな形で貢献できるのかというようなところも問われているんじゃないかというところがあるので、最初にグローバルアジェンダ、コロナ、世界秩序再編、情報社会の限界とか、段落と入れ替えたほうが分かりやすいというか、腑に落ちやすいのではないのかというふうに思いました。それと、総合知というのがやはり分かりにくいいので、具体例が何かあればよいと思います。
 それから3点目、最後ですけれども、博士人材の支援というのは非常にありがたいと思いますが、それを採用した企業に対する税金、税制での支援とかいうものも盛り込まれると、もう少し積極的に企業の方が採用してくれる。それによって博士課程のポスト、人材は増えてくるのではないかというふうに考えております。
この3つです。

【濵口主査】
 手短にお願いします。中澤さん、いかがでしょう。御意見ありますか。

【中澤企画官】
 すみません、時間もありますので。中で検討させていただきたいと思います。

【濵口主査】
 お願いします。
 それでは、畑中さん、お願いしたいと思います。

【畑中委員】
 ありがとうございます。私からは2点コメントをさせていただきます。とりまとめ、お疲れさまでした。
 先ほどもありましたが、政府研究開発投資に関して申し上げます。資料3-1の70ページの主要指標について、第5期基本計画までと同様に明確な数値目標設定を検討いただいていることは、関係予算を着実に確保するとともに、イノベーションを重要視するという観点からも、非常にありがたく思っています。しかしながら、GDPが落ち込む、あるいは上下するという今の社会情勢を考えますと、参考指標に記載いただいているとおり、第5期基本計画における予算の約25兆円をベースに毎年何%ずつ増額するなど、絶対額を拡大していくことが重要と考えています。企業も積極的に研究開発投資拡大に取り組む覚悟でおりますので、ぜひとも政府の研究開発投資の安定的な拡大を確実にする議論をしていただきたい、というのが1点目です。
 2点目、それに対する国民の理解という観点から申し上げます。資料3-1の67ページに、科学技術コミュニケーションの強化を記載いただき、ありがとうございます。NISTEPの資料にも記載いただいているとおり、COVID-19を契機に「研究開発に対する国民の関心が高まっている」ということですので、これを機に、特に資料3-1の72ページ以降、官民連携による分野別戦略の推進に記載されている8つの基盤分野に関する研究、基礎研究、学術研究などに対して国が幅広く投資していく意義あるいは必要性を十分国民に理解してもらえるよう、文科省、あるいは司令塔機能となる内閣府が中心となって、複数のコミュニケーションルートを活用して、積極的に分かりやすい啓発活動、発信をしていただきたい。
 この2点コメントいたします。お願いします。

【濵口主査】
 いかがでしょうか、中澤さん。

【中澤企画官】
 ありがとうございます。いずれも承りたいと思っています。特に最後のところの基礎基盤的なところというのは、実は今回、基本法の改正でイノベーションが入ったというようなところで、科学技術だけではなくてイノベーションなんだという議論がやはり大きくありまして、だからこそ、そのベースとなる基礎研究、学術研究の重要性が大事なんだという議論も色々なところでありまして、そういったところを本文の中にも、いろいろなところにメッセージとして書いているところでございます。御意見承りまして、またちょっと中身、もう一度チェックしてみたいと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 すみません、まだ2人ほど御意見いただきたい方がございますが、もうお時間押しておりますので、ここら辺で閉めさせていただきたいと思います。申し訳ありませんが、御了解いただければと思います。
 本日いただいた御意見は本当にすばらしいポイントをいただいていると思いますので、中澤さんのほうでも努力していただいて、予算を数値化しろというのはかなり厳しい議論が必要な点ではありますが、ぜひお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 それでは事務局から、事務連絡をお願いしたいと思います。

【村松企画評価課課長補佐】
 事務局でございます。本日の議事録は、後ほど事務局より委員の皆様にメールでお送りさせていただき、皆様に御確認いただいた上で文科省のホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。皆様、よろしいでしょうか。
 第10期の科学技術・学術審議会の委員の任期が来月14日となっております。今期の総合政策特別委員会も、本日が実は最終回であります。1年余にわたって、非常に熱の籠もったすばらしい御意見をたくさん出していただいてありがとうございます。おかげさまでしっかりした取りまとめをつくることができましたし、またそれを中澤さんが内閣府のほうへつないでいただいているということで、新しい形の科学技術・イノベーション政策ができつつある実感がしております。
 ここで事務局から一言御挨拶をいただきたいと思いますので、お願いいたします。

【梶原大臣官房審議官】
 文部科学省の審議官、梶原です。総政特の委員の皆様には、11回にわたり活発な御議論をいただきまして、濵口主査をはじめとして、御多忙の中御出席いただきまして、皆様に厚くお礼申し上げます。また、本日も御議論いただきましたが、昨年取りまとめていただいた報告書に関しては、中澤企画官も内閣府のほうに行っておりますので、そういったことも次期の基本計画の土台としてなっているかと思います。また、御議論いただきました若手研究者支援についても、うまくというか、ちょうど10兆円規模の大学ファンドにも盛り込むという形で検討が開始されています。また、デジタル革命についても、昨今の政権の重要な課題ともなっております。こういったことを踏まえまして、今後も文部科学省としましては、この委員会で取りまとめていただいた報告書等について、今日いただいた御意見も含めて、それを実現すべく全力を挙げて取り組んでいきたいと思いますので、引き続き皆様には御指導を賜りますことをお願い申し上げます。
 最後になりますが、委員の皆様方には、これまでの御尽力に感謝いたしますとともに、ますますの御発展を願いまして、御挨拶とさせていただきます。これまでどうもありがとうございました。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 それでは、締めにさせていただきたいんですが、ちょっと余談で、私、実は大学紛争の世代の人間でございまして、当時は教養部という時期があったんですが、そこはほとんど紛争で授業がございませんでした。その頃たくさん本を読んだのが実は私の資産になっておったんですが、最近いろいろ思い起こして、サマセット・モームとか当時読んだのを思い出して、『人間の絆』という本を読み返しました。人生が人と人との絆をつなぎ出来上がってくるのを非常にすばらしい形で描いていると思います。何故こんなことを言うかというと、この1年間、本当に皆さんに熱い思いを語っていただいて、すばらしい絆をいただいて、その中で私も目を開くようなものがいっぱいございました。この得難い関係を大切にしつつ、さらに日本の科学技術が活発になることを願っております。1年間どうもありがとうございました。
 これにて科学技術・学術審議会総合政策特別委員会最終回を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局 企画評価課

(科学技術・学術政策局 企画評価課)