総合政策特別委員会(第33回) 議事録

1.日時

令和2年1月29日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省13階 13F1~3会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 関係機関からのヒアリング
  2. 最終取りまとめに向けた検討について
  3. その他

4.出席者

委員

濵口主査、橋本主査代理、新井委員、大島委員、大橋委員、越智委員、川端委員、菊池委員、五神委員、白石委員、菅委員、竹山委員、知野委員、塚本委員、土井委員、十倉委員、冨山委員、畑中委員

文部科学省

山脇文部科学審議官、田口サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、増子研究振興局審議官、森高等教育局審議官、菱山科学技術・学術政策局長、梶原科学技術・学術政策局審議官、真先文部科学戦略官、角田科学技術・学術政策局総括官、横井科学技術・学術政策局企画評価課長、小林政策課企画官、大洞文部科学戦略官、中澤企画評価課企画官、鈴木新興・融合領域研究開発調査戦略室室長補佐、磯谷科学技術・学術政策研究所長、湯本経済産業省産業技術環境局総務課長、三島NEDO技術戦略研究センター長、西村NEDO技術戦略研究センター次長、吉村経団連産業技術本部長

5.議事録

科学技術・学術審議会 総合政策特別委員会(第33回)


令和2年1月29日


【濵口主査】
 それでは、お時間になりましたので、ただいまより科学技術・学術審議会総合政策特別委員会を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席を賜り、誠にありがとうございます。
 それでは、会議開催に当たり、まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。

【中澤企画評価課企画官】
 資料につきましては、1枚紙の議事次第がございますが、この裏側に資料の一覧が載ってございます。資料については全てお手元のタブレットの中にございますが、資料4-1と4-2、それから、資料5、この3種類については、机上にも配付させていただいてございます。欠落等の不備がございましたら、事務局にお伝えください。

【濵口主査】
 ありがとうございます。本日は、この会議、あと本日ともう一回で最終取りまとめに入るわけですけれども、大変本日重要な会議でございます。
 今日は、議題1として、関係機関からのヒアリングとして、日本経済団体連合会及び新エネルギー・産業技術総合開発機構技術戦略研究センターにお越しいただいておりますので、説明を後ほど頂きます。
 また、議題2として、最終取りまとめに向けての検討をお願いいたします。
 それでは、まず、日本経済団体連合会、吉村産業技術本部長から、資料1について説明をお願いいたします。

【吉村経団連産業技術本部長】
 皆様、おはようございます。貴重なお時間を頂戴して御説明させていただけるということで、大変感謝しております。経団連の産業技術本部長の吉村と申します。よろしくお願いいたします。
 お手元の資料、「Society 5.0―第6期科学技術基本計画に向けて―」ということで少しお話をさせていただきたいと思います。表紙をめくっていただいて、これは最近我々、いろいろなところで申し上げているのですけれども、私たち経団連は、Society 5.0という、第5期科学技術基本計画で示された考え方を非常にサポートさせていただいて、私たちなりに産業界の視点でSociety 5.0についてその後もいろいろと追求をしてきておりまして、それを実現するためにどうしたらいいかとか、そもそもSociety 5.0ってどういう社会なんだろうか、そういったことを内々にはいろいろ議論させていただいているところでございます。
 Society 5.0は、そういう意味では、私たちは、この第5段階目の新しい社会といったものを創造社会というふうに独自に銘打っております。デジタルの力とか、そういったものをどんどん使っていくわけですけれども、最後はやはり人間のクリエーティビティーと、それから、イマジネーション、こういったものによってどういう望ましい社会を創りたいのかということが最終的には重要ということで、人の創造力みたいなものが最後はキーだということで、創造社会ということで銘打って推進をさせていただいております。
 2ページ目、こういった新しい段階に入るためのいろいろな技術とか考え方は、実は国連で示しているSDGsの達成に向けた方法論と非常に近しいものがあるんじゃないかというふうに私たちは独自に考えを持っております。これは文部科学省さんでおっしゃるところのSTI for SDGsといったものと大分近いところにあると思いますけれども、私たちはこういう新しい5段階目の社会に向けたいろいろな取組が、SDGsの達成にも非常に寄与するというふうに思っております。
 この絵も、私たちが独自に描いたんですけれども、最近いろいろなところで引用していただくようになっておりまして、落合陽一先生の近著などでも言及いただいておりますし、いろいろ今、教育関係の出版社の方々からも、こういうのを使って新しい社会について考えようといったようなことを言ってくださっているような感じになっております。
 私たちが考える今後日本が目指すべき姿は何だろうかということにつきましては、3ページ以降に少し記しております。時間も限られているので、余り詳しくは申し上げられませんが、デジタルの力を使うというのは一つ大きなポイントだと思いますし、ここにはデータの話がもちろん付いてくるわけですけど、もう一つ、必ずしも今、この国で十分とは思えないようなものとして、多様性を内包するといった考え方、ダイバーシティ&インクルージョンみたいな話になると思いますけど、ここをもう少し充実させる必要があるかなと思っております。そういったものを掛け合わせることによって、この国が成功のプラットフォームになるんじゃないかと。そういう考え方を持っております。
 そういったものになるために、この国は自然体でそのままやっていても、なかなかそういう社会にならない部分があるだろうということで、4ページ以降、経団連でありますので、企業自身がやっぱり変わらなきゃいけないことはたくさんあるねということを一丁目一番地に書いておりますが、それ以外にも、行政とか国土自体も変わらなきゃいけないということ、それから、人自身が変わらなきゃいけないということ、そして、データと技術を使って変えていくと。そんなような観点で、いろいろと変えていかなきゃいけないことがあるよねということを申し上げているところでございます。
 5ページ目を御覧いただきたいと思います。いずれにしても、特に大企業視点で考えたときに、やっぱりこれまでのように自分たちだけで何事もできるわけじゃないような時代に入ったという認識は広く共有されつつあるかなと実感をしておるわけですけれども、そのときに、この国に必要なものとしてイノベーションエコシステムがあるねということでございまして、既存の企業はもちろん既存企業で頑張るわけですけれども、これまで以上に大学と強い連携を持つ、あるいは、ビジョンやアイデア、熱量、技術、スピード感、そういったものもあるようなスタートアップの方々ともっと本気で連携する。こういったことを通じて、この国にイノベーションエコシステムを作る必要があると強く感じておりますし、経団連自身もこういった考え方に基づいて具体的なアクションをいろいろと取り始めているということでございます。
 6ページ目を御覧いただきたいと思います。特に教育・人材育成への期待ということで申し上げているのは、文理分断からの脱却と書かせていただいている、こういう文系・理系の垣根の問題といったこと、それから、リーダーシップ、特に多様性を持ったということで、必ずしも日本人だけじゃない議論、あるいは、男女もどんどんもっといろいろと交ざったような議論、そういったものをやっていく中で、これまでよりも多様性を持った人たちの中で議論していって、何かを作っていかなきゃいけない時代になると、そういった中でリーダーシップを発揮できるような、そういった観点も必要かなと思います。
 それから、悪平等みたいなものがやっぱりこの国にはあるということで、悪い意味での平等主義を脱却させて、突出した人材をもっと作っていかなきゃいけないということもあるかと思います。
 それから、知識の陳腐化が激しくなってきますので、やはりリカレント教育みたいなものもこれからしっかりと位置付けてやっていかなきゃいけないと思っております。
 その他、7ページ、行政・国土が変わるとか、8ページ、データと技術で変わる、こういったことはいろいろ申し上げているところではありますけれども、余り時間もないので、少し飛ばさせていただきたいと思います。
 第6期に向けてということですので、9ページに、政府研究開発投資の目指すべき方向性というのを一つ書かせていただいております。まず、やはり政府としても、未来への投資という意味で、研究開発投資の額というか量、これについてもしっかりと確保する必要があると私たちは考えております。そういう意味では、なかなか実現が容易ではないわけですけれども、私たちとしては、対GDP比1%というものを引き続き掲げて、努力をしていただきたいと思っております。
 加えて、額だけ確保されていればいいというものでは当然ないと思っておりまして、それをどういうふうに使うのかということについての質の向上といったものも必要だと思っております。
 政府研究開発投資の配り方の問題ですけれども、これについては戦略と創発という考え方を提唱させていただいているところでございます。ざっくり言えば、戦略的研究というのは、まさにSociety 5.0を実現する、そういったものを目指すために、重要とおぼしきものを戦略的にお金を張ってやったらどうかということが一つの考え方であります。
 当然のことなから、戦略的にやるという意味では、企業自身が中心的な役割を果たしていくといったことがこれまで以上に求められると思いますけれども、分野によってはなかなか、政府側のサポートも頂きながらやっていかなきゃいけない分野も当然あるということだと思います。
 それからもう一つ大事だと思っているのは、創発的研究ということで、短期的に何が起こるかよく分からんけれども、多様性とか融合をいろいろやることによって、将来的に破壊的なイノベーションをもたらす可能性が高いような、そういったものに幅広くお金を張っていくといったようなお金の使い方といったものを併せてやっていくという、この辺のミックスが必要だと考えております。
 その辺のイメージを書いてあるのが10ページ目、それから、11ページ以降、戦略的研究でどういった分野にどういうふうにやっていただきたいかとかいったことを幾つか書かせていただいておりますし、14ページからは、創発研究に必要だと思っていることについても少し書かせていただいておりますが、時間が余りないと思いますので、お読みいただけたらと思います。
 それから、この議論の中で関係すると思っていて、今日少しこれまでに申し上げてきたこと以外のことを申し上げたいと思っているのが、15ページでございます。科学技術と社会の関係性ということでございます。これは科学技術と社会の関係性というのは、これまでよりもますますもって意識していかなければいけない時代に入ったと思います。テクノロジー的にはできる、それから、サイエンス的にもどうも実現できそうだといったものが、必ずしもすぐに社会に受け入れられるかどうかよう分からんと。もうちょっと考えなきゃいけないとかいったことも増えてくると思います。逆に社会の常識の方を変えていくことによって、科学技術の成果がうまく社会に入るということもあるかもしれません。
 こういった議論をやっていかなきゃいけないというのは私たちも従来申し上げているところでございますが、加えて、ここの社会といったところに国際というのを入れてみたらどういうふうに見えるだろかというのが、今日の一つの私からの課題提起でございます。科学技術と国際社会というふうになってくると、昨今の経済とか地政学的変化みたいな話、それから、地球環境、エネルギー問題、こういったものが世界的に人々のマインドセットも変わってきているような状況になってきていますし、危機的な状況になってきていると思います。こういったものを意識しながら、今後の科学技術イノベーション政策の在り方みたいなものを考えていく必要がすごくあるんじゃないかなということでありまして、この辺を今日は少し課題提起させていただきたいと思います。
 そういう意味では、2つ目に書かせていただいた科学技術コミュニケーション、こういったものも、従来から基本計画に記されているところではございますけれども、どちらかというと、科学技術の良さを技術がよく分からない人に一方的に教えてあげようというようなコミュニケーションが何となくイメージされているような気もします。ただ、これからはもう少し技術に関心がない方、それから、技術をどうしても否定的に捉える層、そういった方々も巻き込みながら、双方向で議論を深めていくといったことを意識的にやっていくということが必要だと思います。
 関連した話で言うと、ELSIの話がやっぱりどうしても出てくるかと思います。科学技術を先にどんどん進めてしまって、それから社会に「さあどうですか」といったことでは、なかなか社会に入りにくいといったような例はこれまでも幾つか出てきているかと思います。ですので、もう少し早い段階からいろいろな立場の人を議論に巻き込んで、メリット、デメリット、そういったものを議論するようなことを、もう少し政府側も一体になってやっていただくといいのかなと思っております。
 それから、16ページ目、今、大学でいえば、産学連携をもっとやれ、自分で自立して稼ぎなさいという話が大分言われているところでございます。大学の改革はいろいろ進められていると理解しておりますし、必要で望ましい改革を是非していただきたいと思うわけでありまして、そういったものをヒントとして、「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」も作られておりますけれども、そういったものを参考にしながら、産学官連携の体制強化にも努めていただきたいと思います。それから、大学側だけの責任ではなくて、企業側のマインドセットも変わらなきゃいけないところもあるんですけど、人材流動性をもっと高めるといったことが、新しいイノベーションを起こすために重要だと思いますので、クロスアポイントメント制度、幾つか事例は出てきていますけれども、こういったものをもっと積極的にやるといったことが大事かなということで、これは必ずしも大学だけに努力を求めるものではございませんが、こういった視点も大事だと思います。
 あとは少し繰り返しになりますが、17ページ、Society 5.0時代を見据えた人材に何が必要かといったことについては、産業界はもちろんもっと意見発信しなきゃいけないと思いますけれども、先ほど来、文理分断から脱却みたいな話は申し上げましたけれども、それ以外にもいろいろと必要な能力といったものがあるかと思います。こういったものを是非重点的に関与するようなことにも力を尽くしていただけるとありがたいなということです。
 それから、リカレントについても、先ほど少し申し上げましたけど、やっぱり本当に知識の陳腐化が激しいので、そういったときにもう一回大学に戻って最先端のことを学べるような、そういったプログラムみたいなものを意識して作っていただくということが大事かなと思います。
 あと、18ページ、いずれにしても、ここは、文部科学省さんの座敷なので、あえて参考ということで書いております。ほかの国のいろいろ研究開発戦略を見ると、やっぱり産業をすごく意識しているなという気がすごくしています。文部科学省さんの座敷で考えていないとはもちろん申し上げませんけれども、やはり産業の競争力といったものも併せて意識しながら、是非文部科学省さんのこういった場からもそういった視点で発信をしていただくと、いかにも文部科学省さんはナイーブで、研究のことしか考えていないものしか出ないよねという多分イメージがあると思うだけに、こういった視点も入れながら出していただけると、非常に説得的なものになるんじゃないかなというのが、我々みたいな者から見た感じでございます。
 早口で短く、雑駁なお話ではさせていただきましたけれども、私からは以上ということにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの御発表に御意見、御質問のある方お願いします。
 新井委員。

【新井委員】
 拝見しましたが、軽井沢の昨年の夏季フォーラムでもお話ししましたし、3月25日の経団連の教育大学改革推進委員会の企画の講演もさせていただきますが、経団連さんがいつもこういうものを持っていらっしゃるときって、結構絵に描いた餅みたいなときが多いんですよ。例えば、文理融合とかって急に言われて、全員にAI教育しろとかというようなことをおっしゃられても、それだけの人材が雇えるような国立大学の人件費というのはそういうふうになっていますかといったら、なっていませんとか、あるいは、文系の学生の方が圧倒的人数が多いわけで、そういう人が100人とか200人単位で授業をやっていると。それ、AIの、例えば、Pythonのプログラミングやれますかといったら、それを例えば50人単位でやらなきゃいけない。そのお金どうしますかというようなこともない。あるいは、例えば高校の段階で私学を目指してアラカルト方式というふうに思っていると、数学とか数1まで勉強して、その後全部忘れちゃうみたいな、そういう人材が実際今中等教育では多いわけですよね。大学改革は入試改革しなきゃいけなかったのに、大学入試改革で記述式も絶対多分必要だったんだろうと思うんですけれども、それに対して例えば、世論がいろいろあったときに、経団連さんからは御支援がないとか、そういうようなことだと、やれない。だから、今のままで、こういうのもああいうのもこういうのも欲しいんですって言われたらやれない。
 ムーンショットについても、ムーンショットというふうなのが必要だという気持ちは分かるんですけど、ムーンショットという感じでお金を申請を集めると、ムーンショットのためのムーンショットが出ちゃうんですよ。本当にシーズがあるんではなくて、あるいは、大きい絵をわーって描けば通るみたいな話になっちゃうと、それは本末転倒になってしまって、今まで、例えば、日本がどうしてノーベル賞を取ってきたかということを子細にNISTEPとかが分析をすると、やはりそれは小さいシーズであったときに、科研費がきちんと支援をして、それをだんだん大きく育てたからそういうことになっているんで、ムーンショット課みたいなのを作って、ムーンショットをがんがんやりましょうみたいなのとか、あるいは、ベンチャー支援しましょうっていって、そうしたら、ベンチャーのためのベンチャーを作ってしまう。そういうところというのをもう少し、どっちがナイーブかという話ですよね。文部科学省がナイーブなのか、それとも、経団連の教育部会がナイーブなのかというのは、もう少しお考えいただきたいということは3月25日にしっかり申し上げたいなと思っています。

【吉村経団連産業技術本部長】
 私も発言させていただければと思います。まずムーンショットについては、そもそも私たちからやるべきだと申し上げた経緯はありません。
 それから、私たちは、そういう予算の裏付けとか配分まで提案するというより、政策の方向性、こういったことが望ましいんじゃないかという絵を描かせていただいて、それを世に問うというところがメーンの活動でありまして、それに基づく個別の政策については、関係各省の皆さんとも日々議論させていただいて、それが良いとか悪いとか、具体的な設計をどうするかとか、予算取りに頑張る頑張らないという話を個別にはさせていただいております。それを子細に全部トータルで何か紙に書けというと、相当膨大なものになると思いますけど、一応考えてはいます。こういう提言は、そんなにたくさん書いても読んでもらえませんので、方向性を書いているということがメーンではありますけど、個別政策については、別途、こういう偉い先生方が見えないところで日々各省と議論させて頂いているということでございます。

【濵口主査】
 ちょっと介入しますけど、リカレントとかAIの教育は恐らく双方の協力がないとこれは実現しないと思うんですね。プラクティカルにどういうことが可能なのか。少しでも前進できる効果的な方法論はないのかということを実はもっと議論しなければいけないフェーズに入っていると思うんですね。リカレント教育が必要であるということは多分誰も否定しないんですけど、大学側は資金がないし、人材がないと。現場はニーズがものすごくある状態になっています。これをスマートに解決するアイデアが必要だと思うんで、それをもう少し議論しなきゃいけないフェーズに入ってきているかと思います。
 それから、ムーンショットに関しては、お話を聞くたびに、私、実装化していく立場ですので、これは何回腹切りせないかんなと、ぞっとするんですけど、しっかりこれ、実装化段階でどういうふうに形を作っていくか、もっと御意見をいっぱい頂きながら進めていきたいと思っております。
 ほかいかがでしょうか。どうぞ。

【冨山委員】
 さっきの6ページ目について、ややざっくばらんなというか、べたな質問なんですけど、これ、例えばなんですけど、文理分断からの脱却で、全ての大学生って書いてあるんですけど、これ、もうちょっと本音で議論しちゃうと、例えば、正直に、ストレートに言います。私大文系偏差値50の子にこの議論って、その人の人生を豊かにするのかなと思っていて、正直言って、そのぐらいの子って、無理に統計数学を勉強するよりも、一生懸命大型二種の免許を取ってもらって、うちのバス会社の運転手になった方がきっと人生幸せですよ、絶対に。これ、100%断言します。
 この議論が、たまたま五神委員いらっしゃったんで、ちょっと分かりやすく例で言っちゃうと、東大の文一、文二の子にこの議論をするんだったら、分かる。僕にはまだ分かる。多分、経団連さんも立場上余りそういうことを言っちゃうと、またエリート主義かって怒られちゃうから言いにくいんでしょうけど、ちょっと本音ベースで言っちゃうと、文理分断からの議論というのは、私はどちらかというと、ある種、世の中をリードしていく立場の責任を負っちゃっている、ちょっとエリートに生まれちゃったというか、ギフトのある人がこの国では、ギフトのある人ほど逆に文理が分断されているんですよ、この国。これは僕は不思議なところで、要は、そっちの議論にしちゃった方がこの議論は生産的だし、くどいようですが、例えばなんだけど、私大文系偏差値40台の人にPythonを教えようと思ったら、これは大変なことになります。要するに、僕が100メートルで10秒切るみたいな話になります。それは不可能な議論なので、この辺、そろそろ本音ベースの議論を経団連さんもされたらいかがかなとちょっと思うんですけど、済みません。

【吉村経団連産業技術本部長】
 例えば、大学生といっても、確かにおっしゃるようにいろいろな方がいますし、それを言い始めると、英語だって要らないじゃないかとか、外国人と話す機会なく人生を終える人だっているとか、そういう話になって、確かに全員とか、そういう観点からは、筆が滑っているんじゃないかという御指摘なんだと思いますけれども、大きな方向性として、新しい時代に必要となるリテラシーの一つとして、そういったものも考えたらどうですかという方向性を出したということです。だから、個別の細かい……。

【冨山委員】
 いや、細かくなくて、要は、これは正に新井委員と重なるんですけど、現実化しようという意欲を逆に感じない印象を持たれちゃうんですよ。要は、今おっしゃったような反論が出ちゃうでしょ。そんなもん、だって全員が、例えば、国際会議でややこしい英語で議論するみたいなことが、同友会もそういう傾向があるんだけど、あたかも1億人全員がダボス会議に行くような前提の議論をしがちなんですよ。だけど、経済界でダボス会議で全く通訳を介さないで、ちゃっちゃかちゃっちゃか議論する人、今何人います? 多分、余りいないから同じやつが駆り出されているわけで、結局、要は、真剣にこれを実装しようという気合いをもし経済界が持つんであれば、要は、現実感を持つようなアプローチとした方が、僕は実際に今おっしゃったようなゴールに近付けると思っていて、くどいようだけど、私はこの国の、英語に関する問題点も言っちゃうと、東大卒の子が英語できなさ過ぎですよ、やっぱり。済みません、平均値で言うと。だって、少なくともほかのヨーロッパやアジアの一流大学の本当の中のまたエリートクラスだよ。一流大学の中のエリートクラス、本当にみんな英語できますよ。あるいは、経済界だってそうだけど、経済界のトップクラスってやっぱりみんな英語できますよ、ヨーロッパ人も。中国人も英語できるじゃないですか。僕、あそこの差の方が国益を失っている部分として大きいと思っていて、例えば、バスの運転手が必要な英語は、おっしゃるとおりで、別にダボス会議で議論するような英語である必要はないんです。もっと日常的には、おなかが痛いとか、今であれば熱が出ていますみたいな会話ができればいいんですよ、はっきり言って。
 なので、そこはやっぱりもっと、この議論って、僕、社会実装の段階の議論をすべきだと思っていて、精神論的な議論じゃなくて、やっぱり経済界なんだから、私はもっとプラクティカルな議論に突っ込んでいかれた方が、迫力出てくると思う。

【濵口主査】
 さっきのリカレントと同じで、やっぱりプラクティカルに実装できる効果的な具体的なアイデアを、アカデミアと産業界が相互に出し合って、協力する体制を作らなきゃいけないんですけど、これが手法が……。

【冨山委員】
 プラクティカルな提案は、むしろ経済界の方がしやすいはずなんです。だって、世の中で若者たちがどこに帰属しているかといったら、圧倒的に経済界で働いているわけでしょ。だから、そうした人たちの姿はもっと見えているわけだから、リカレントの世界も、大学から出ちゃっているわけだから、リカレント教育を受けなきゃいけないような若者であれ、中年であれというのは、みんな経済界の中で働いているわけですよね。その姿を僕らの方がよく見えているんだから、そうすると、その見えている人に、またくどいようだけど、ばりばり文系の40過ぎたおっさんにPython教えるなんてナンセンスなんで、はっきり言って。これ、大変ですよ。特に文系のおっさんに今さら教えるというのは。
 だから、そんな議論してもしようがないから、だから、リカレントという議論をするんだったら、もっと何を教えるのかというのを、何をどのぐらいの人数の人に教えるかということを提案する段階に僕は来ていると思っていて、そこは私、すごく経団連さんに期待しているところであります。

【吉村経団連産業技術本部長】
 ありがとうございます。

【冨山委員】
 これはエールですから。

【吉村経団連産業技術本部長】
 ありがとうございます。そういう意味では、この……。

【濵口主査】
 吉村さん、これ、宿題だと考えていただいて。

【吉村経団連産業技術本部長】
 分かりました。ただ、例えば、このページも、我々、平等主義から脱却しようと書くだけでも勇気が要ることなんですよね。世の中、経団連はどうせエリート主義だとか何とかという御批判をすぐ受けがちなので、そういう中であってもやっぱりエリート層というのは一定程度確保する必要があると思うので、思い切って言ったりしているわけです。いろいろ御批判はあるかと思うんですけども、いろいろな論点がばらばらっと入る中で、あそこにも配慮して、ここにも配慮すると、何も言えないということになるんですよね。
 従って、多少賛否はあるかと思いますけれども、私たちは方向性としてはこれが、細かい話はともかくとして、向かうべき方向性だというふうには思っておりますので、こういう会議をきっかけに、今日のみならず議論が深まって、さらに、いろいろなステークホルダーの皆さんと、具体的にどうやって落とし込んでいくのかという、正におっしゃったようなところについて議論を深めていくための一つの材料としていろいろと調理していただいて、この国の政策に生かしていただければというふうに思う次第でございます。

【濵口主査】
 どうぞ。

【川端委員】
 今の話に連動しているんですけど、書かれた文理分断とか、リーダーシップとか、リカレントかという、この辺って、昔から大学でやっているんですよ、もう。だから、言われた話を大ざっぱに書いたら、もともと大学はずっとこういうことをやっていて、さらに社会貢献という単語まで言うと、社会との連携の話もずっとやっていたんだけど、時代が違う時代に入っていって、もっと成果をはっきり定量的に評価しろとか何とかかんとかという話になって、ここからだんだん離れていったんだけど、もう一回ここに戻らなきゃと思っているという状態の中で、逆に言うと、我々の方からお聞きしたいのは、経団連として一体何を問題点に思ったのか。それでこの単語が出てきたのかという、問題点がどこかを具体的に言っていただくと、多分、次の議論が我々との間でできるんだろうと。そういうふうに思うんで、是非そんなことをまたどこかで表現していただければと。

【吉村経団連産業技術本部長】
 ありがとうございます。大学がこれまでできてきたかどうかという問題は、冨山委員の評価も聞きたいところではあり、大学はこれまでちゃんとやってきたという総括でいいのかどうかというのはちょっと分かりませんけど。

【冨山委員】
 私、この議論に関しては、産業界も大学もどっちもどっちだともともと思っていて、産業界側も文理分断でやっているんですよ。だから、大学に文理分断って文句言うんだったら、産業界が文理分断やめればいいと思っていて、いまだに事務屋とか言うでしょ。あと、いまだに年次言うんですよね。だから、私は両方に足を踏み入れちゃっているんで、別に自分が立派だとは決して言いませんけども、ただ、少なくとも、例えば、私が帰属している業界やベンチャーキャピタルとか、そういうところで、事務屋や技術屋って言葉は存在しないですよ。あるいは、僕らビジネススクールの同級生は、別にビジネススクールのことを文系だと思っていないです。だって半分以上、コンピューターメジャーだもん、スタンフォードは。
 だから、それはやっぱり私の評価というのは、ややどっちもどっち感があるので、それは要するに、もっと具体的な次元で、大学と産業界がもっと生々しいコミュニケーションをとって、むしろ具体的なプロジェクトを現実化する過程で出てきたアウトプットというのを逆にこういうところに普遍化した方が、多分、紙に迫力が出るような気がしているということですが、私はもうその段階に入っていると思うので、例えば、文理融合にしても、いろいろなリカレントにしても、それは真剣に産業界のちゃんと現場が分かっている人と大学とで一緒にそういう教育プログラムを組んでいけば、自然にいろいろな壁にぶつかるわけで、そこから出てきたアウトプットの方が正しいような気がするんで、私は、くどいようですけど、もう抽象論でこういうのを言っている段階じゃないというのが私の立ち位置です。

【畑中委員】
 1点だけよろしいですか。産業界の一員として申し上げると、このような経団連の方向性は具体性が乏しいというような御意見もありますが、個別の企業は、これらを全て理解した上で、グローバル競争の中で自分たちの立ち位置を見つつ、世界の人材を雇用して、競合条件や成熟度がそれぞれ異なる中で、最適な解を求めようとしています。横並びの時代ではないため、このような視点で企業はそれぞれ適切に考えるよう経団連は提案しており、個別の企業が既に実践しています。したがって私は、この提言は意味があると考えています。以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 弁明の機会を。

【五神委員】
 6ページの話については、経団連とは、中西会長も含め、随分何年も議論させていただいていて、改革をする必要性というのは十分に理解いただいていると思っています。経団連からこういうペーパーが出てくるということは、かなり大きな変化が起きていることはまず間違いありません。ただ、表現の問題として、高度経済成長のときの大量生産、大量消費という定まった方向性の中で成長していったモデルを忘れることができないというか、そこから脱却できていないのだと思います。平等主義という言葉自身、ベースがそこにあるわけです。
 そうではなくて、今の産業構造はこういう形になっているけれども、それを優位性として生かしながら、正に多様性を活力とするような産業モデルになるときに、どういうふうに全体のGDPを増やしていくか。会社を全部潰すというのではなくて、生かしながらどう変容させていくのか、そのためにはどういう教育をしなければいけないのかを考える必要があって、一律主義だったのを修正しましょうというスタンスの議論は、不連続な変化、すなわちパラダイムシフトを前にした中では無力なのだと思います。
 だから、今の議論も、両方言っていることは正しいのですが、今のような前提がないと、前のものをどう微修正するかという話にしか見えなくなってしまうわけです。世の中はすでにものすごく変わってしまっています。東大でも、ここ数年、学部後期課程の進学先を選択する際に法学部がずっと定員割れしている状況になっています。さらに、優秀な学生たちの中では、ベンチャー企業に就職することも一般的になってきているのです。しかし、ベンチャーにしても、今はエンカレッジしてみんなで伸ばしているものの、例えば、向こう10年を見たら、もっと厳しい時代になることは間違いありません。でも、そのときに、ベンチャーの勢いが皆無になってしまっては日本が成長する余地はなくなってしまいます。そうならないようにベンチャーをもっと強くするにはどうすべきなのか、という議論が重要です。
 英語の問題も、入試については、長い時間をかけて議論してきた労力が無駄になってしまったという意味で非常に残念な結果になっているわけですが、例えば、経団連で、こういうリーダーであれば、例えばCEFRでいえばC2以上がないと困りますと言えば、学生は勉強します。あるいは、さまざまな場で何度も言っているのですが、公務員の総合職の試験で、もっとフルエントな議論ができる英語力を求めるようにすべきです。現実的な問題として、今の総合職試験で求められている英語力だけでは対応しきれないのは明らかです。だから、英語が苦手な皆さんは、多分、入った後ですごく苦労して努力されているのだと思います。それならば、より時間のある学生時代に学習を促すようなメッセージを出して、大学もそれを支援すれば、大学としてもより質のいい教育を提供できるようになります。今、そこがずれているために、卒業証書をもらわないといけないから必修授業を渋々受けるかたわら、外で就活ビジネスを利用しながら就職活動を行っているという、変な形になってしまっているわけです。
 だから、そこをうまくマッチングさせる必要があります。経団連にとっては、どうやってGDPを拡大するかという戦略を見せて、そのためにこれとこれが必要だという言い方で、この4つのエレメントを説明してもらえば、多分、もう少し実質的な方策が見えてくるはずです。もう一声、一歩手前まではようやくやってきたという段階にあるというのが私の印象です。是非頑張ってもう一歩、一緒に進めていければいいかなと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。うまくまとめていただいて。
 ちょっとお時間が押しておりますので、次の議題へ入りつつ、もう一回リカレントとして、反証したいと思います。
 次は、新エネルギー・産業技術総合開発機構技術戦略研究センター、三島センター長、西村次長においでいただいておりますので、資料2について御説明をお願いいたします。

【三島NEDO技術戦略研究センター長】
 本日、科学技術学術審議会の総合政策特別委員会にお招きいただきまして、本当にありがとうございました。
TSC、技術戦略研究センターは、2014年に創設されて以来、我が国の目指すべき方向性について俯瞰的な分析に立脚した技術戦略の策定等を通じて、経済産業省をはじめとする政府機関等の技術政策の企画立案、NEDOの研究開発プロジェクトの企画立案、実施に対して貢献を続けてきたというところでございます。これまでに36の技術戦略を策定、発信しているところでございます。
 ただ、特に最近、技術インテリジェンスの機能、これをもっと強化してほしいという政策当局からの期待が高まっております。そんな中で、今、TSCの職員一同でそのような期待にどうやって応えていくか、よりよい社会を創るために技術がどうあるべきかというようなことを踏まえ、必要な戦略を立てて、それを政策にどう反映するかなど、こういったことを職員全員でいろいろ考えながら進んでいるところでございます。
 本日は機会を頂きましたので、TSCが日本の産業技術力の強化に向けた技術開発課題をどのように探求しているかということにつきまして、西村次長から説明をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【西村NEDO技術戦略研究センター次長】
 NEDOの技術戦略研究センター次長の西村でございます。本当にこういった場にTSCをお呼びいただきまして、ありがとうございます。
 第6期の基本計画に向けてということで、本日のお題は、技術課題の探求ということで、重要な技術課題をどのように見ているかというところに、最後、話を持っていきたいと思っております。
 ただ、皆様、かなりこの審議会、高いレベルでの議論だと思いますので、一つ一つの技術について詳細に御説明するというよりは、TSCから見て、どういう思想に基づいて課題を抽出していくべきか。最後に課題も示しますけれども、むしろ思想のところを今日は中心に御紹介をさせていただければと思っております。
 また、日頃、文部科学省さんもそうですけれども、NISTEPやCRDSといろいろな形で協力させていただいたり、連携させていただいたりしておりますことを、改めて感謝申し上げます。
 早速入りたいと思いますけれども、2ページをお開けください。まず、TSCが何を狙っているかということを御理解いただいた方が、この後の議論が続くと思いますので、そこから入らせていただきます。TSCは、先ほどセンター長からもありましたが、約5年前にできています。そういう意味では、NISTEPやCRDSに比べて新参者でございます。TSCは、具体的なアクションにつなげるということを意識して戦略を練っています。全体を俯瞰しつつも、具体的なところを深掘りしていく。そこでアクションを起こしてもらうということを意識しているということをまず強調させていただきたいと思っています。
 具体的には、さっき36本と言いましたけれども、この5年間で36本の技術戦略を策定してきています。また、それにつながる形でプロジェクト構想、これはNEDOに返ってくるわけですけれども、そういったものを立案してきているということでございます。ある意味で、政策を打ち出していただく、若しくはプロジェクトの形で昇華させていただくという意味では、政策当局との連携が非常に重要ですので、かなり政策当局と密にやらせていただいています。
 なお、これはもちろん経済産業省の傘下でございますので、経済産業省が中心でございますが、ほかのところも呼ばれれば御協力させていただくという姿勢で取り組んでいるということでございます。
 具体的な例をぱっとお見せした方がいいと思うので、3ページをお開けください。36個の技術戦略のうちの1つです。これは2015年10月に公表したものであり、機能性材料分野の技術戦略を策定してございます。
 それがどうなったかということですが、4ページをお開けください。これは2016年度からの国家プロジェクトとして花を開かせております。さきほど公表は2015年10月と申しましたが、通常この時期では、予算要求には間に合いません。つまり、その前から政策当局といろいろ議論しながら、予算にも反映していただいて、プロジェクト化につながっているということでございます。4ページに記載がありますけれども、この特徴は、計算科学とかとプロセスを融合させていくということが一つの柱として作っているものでございます。
 もう一つの例を紹介させていただきます。5ページです。バイオプラスチック分野の技術戦略を、昨年の11月に、公表していますけれども、これは海プラ問題に関するものです。G20でも、大阪のブルー・オーシャン・ビジョンという形で非常に大きく取り上げられましたけれども、そういったものとも呼応しながら策定した戦略でございます。
 6ページをお開けください。それがどうなったかということですけれども、もちろんブルー・オーシャン・ビジョンにも、経済産業省を通じてイメージを打ち込んでいただいておりますけれども、一番大きく反映されたのは、経済産業省がその後に立てた海プラの開発、普及に関するロードマップに随分我々の考えを入れ込んでいただいたということでございます。
 7ページをお開けください。そのほかにも、カーボンリサイクル技術ロードマップですとか、つい先日、1月に発表されたばかりの革新的環境イノベーション戦略といったところにも、いろいろな形で、調査・分析したエビデンスを提供して、政策立案につなげていっていただいております。
 以上、簡単に御紹介させていただきましたが、ご紹介のとおり、具体的な技術戦略や具体的な政策に打ち込んでいくということを強いミッションとしているということでございます。
 ここから分析の視点、我々がどんな視点で見ているかというところに移らせていただきたいと思います。8ページをお開けください。四角に書いてありますけれども、技術は社会実装されてこそ価値があると、強く思っております。電子、機械とか材料といった分野は、産業競争力の代名詞として用いられます。一方で、環境やエネルギー、リサイクルは、やや政策誘導性が強い分野だと思っています。ただ、この環境などの政策誘導性が強い分野であっても、どんなに環境に貢献しても、どんなにリサイクル性能が高くても、社会に実装されなければその価値はゼロだと思っています。なので、社会に実装される、ここでは勝ち筋というエッジを立てた書き方をしていますけど、社会に実装されるということが非常に大きな視点だろうと思っています。
 社会に実装されるためには、技術的なこと、性能とかコストも重要ですけれども、社会的受容性も重要です。さきほど吉村さんからもご発言がありましたけども、ELSIのように、若しくは社会に対する広報や標準化といった視点も取り組まれないと、最後技術としての価値が出せないと思っています。
 なので、TSCとしては、大きく3つの視点を書いています。まず、社会的なニーズ、それと、技術、それと、マーケット。要するに、マーケットで勝てるか、実装されるかということも大きな視点にしているということでございます。
 具体的に、どのように分析しているかということも簡単に御紹介させていただきます。9ページをお開けください。こちらは、TSCで44のグローバルな社会課題というのを、挙げてみたというものでございます。この中には、地球温暖化、若しくは鉱物資源の枯渇、エネルギー資源の枯渇、健康寿命と実寿命の乖離、さらには、AI・ロボットによる大変革の兆しなど、そういったことをいろいろ挙げているのですが、我々はこれらを踏まえ、重要なキーワードの一つとして、サステナビリティが挙げられるのではないかと考えており、我々が最近強く意識しているものでございます。
 10ページをお開けください。もう一つ、これは社会的な価値というよりは、実態として非常に重要なことということですけれども、日本はややものづくりの意識が強い国だと思っていますが、市場のトレンドを見てくると、やはりITサービスの伸びというのが非常に大きいという事実もございます。そういう意味では、デジタルという流れをしっかりと捉えていかないと、社会の変革に対応していけないと思ってございます。
 11ページをお開けください。もう一つ、さきほど、勝ち筋と言いました。勝っていくためには、我々はどこに強みを持っているかということは非常に重要な視点だと思っています。日本市場は、この自動車の丸が大きいように、自動車産業系が非常に大きな市場を形成しています。ただ、この図の右側はシェアが高いということですが、そうしたところにマテリアルとか機能性部素材が位置しており、世界でのシェアを60%以上持っているものが、実は日本は、圧倒的に多く230個あります。アメリカは半分の114、欧州は46、中国43。こうしたどこが強いのかというのも意識して、今後の基本戦略を描いていく必要があるのだろうと思っています。
 12ページはオープンにさせていただかない資料ですけれども、具体的には、市場分析の中では、個別のプレーヤーまで見ております。会社名も消させていただいていますけれども、あるものに注目したときに、それは誰がシェアを握っているのか、どの企業が握っているのかという、こちらは、日系企業が100%のものばかりですけれども、そうじゃないものも含めて、分析しています。
 13ページです。これは半導体のチップに関する分析をしているものですが、やはりサプライチェーンも見ていかなければならないので、どこの国がどこのポジションを取っているのかということも、勝ち筋を考える上で重要だろうということで、注目した技術についてはそこまで踏み込んで分析しているという御紹介になります。
 14ページからは、改めて今後我々が進むべき道として大切にしなくてはいけないことをまとめ直していきます。14ページです。まず、社会的な価値としては、サステナビリティというのは非常に重要な概念ではないかと思っています。この観点から、サーキュラーエコノミー、循環型社会、持続可能なエネルギー、バイオエコノミーの実現、こうしたものは非常に重要な社会価値を生み出しつつあるだろうと思っています。
 加えて、技術的なトレンドとして外せないのはデジタルです。これは社会的なこと、生産も含めて大きく社会を変えようとしているもので、これは大きく捉えなくてはいけないと思っています。
 また、日本としての強みというのを生かす意味では、マテリアル、若しくは機能性部素材、そういった強み、サステナビリティやデジタルの支えとして、今後の戦略を描くのが望ましいと思っています。
 15ページです。サステナブルを捉えたときに、どういったところが重要なのかということで、右側にいろいろな技術を書いています。これはかなりビジーなもので恐縮ですが、サステナブルでいえば、メガトレンドとして今何が起こっているのか。それに対応する技術の進歩の方向性は何か。その上で注目している技術として、TSCが注目しているものを一番右に書いてございます。サステナブルのメガトレンドでいえば、温暖化、温室効果ガスの増大、気候変動問題、再エネ余剰電力が発生しつつあること、SDGs、これらは大きく捉えなくてはいけない。海洋プラスチックの問題のように、社会的ニーズでものすごく注目を浴びているものに対してどう対処するかといったことも重要であろうと思っています。
 真ん中に技術進歩の方向性が書いてありますが、再生可能エネルギー、省エネ、リサイクル技術、生産時の効果的・効率的な生産方法、技術的な革新がすごく進歩しているバイオ、これによって経済のメカニズムを変えていくということも重要な方向性ではないかと考えております。
 注目している技術については、情報量が多いので、全ては御説明しません。このオープンな資料では、オープンになることを意識してニュートラルに記載していますが、やや右側に記載しているものがより今注目しているものでございます。例えば、一番右の方に書いてあります超分散ですが、大規模電源に対して、日本の特性も生かしながら、地域のエネルギーシステムというのをどう考えていくのか。電気自動車をはじめとして、自動車の電動化はものすごい勢いで進んでいますけれども、様々な機械、農機とか林業機械、そういったところまでどんどん進んでくるだろうと思っています。
 気候変動問題では、温度上昇が止まらないという中においては、既に大気に放出されたようなCO₂を回収していくようなDACと呼ばれる技術なども含め注目しており、チャレンジしていかなければならないと捉えています。
 農業分野では、農林水産省さんとも連携しなければならないと思いますけれども、農林水産省さんをはじめとした分野についても、CO₂若しくは窒素などのGHGガスについての回収を図っていく必要があるのではないかと考えております。
 16ページです。こちらは、世の中のトレンドとしてデジタルを捉えなきゃいけないということでございます。これも御説明するまでもないと思いますけども、情報量の爆発やデジタルニーズが増大している一方で、消費エネルギーの問題、ナショナルセキュリティー、セキュリティー問題も対処しなければならないことでございます。
 真ん中にいろいろ書いてありますが、コンピューター技術を更に高めなければならない、若しくは、AIと人間の機能をいかに結び付けるか、そういったことも重要な方向性だろうと思ってございます。
 右の方に、量子やAIとロボットの更なる融合、若しくは、AIを活用して都市の機能をいかに変えていくか、人間の機能をいかに高められるか、若しくは、人が時空間の制約を超えるようなことへの応用など、こうしたものが社会的な価値を生み出すであろうと捉えているということでございます。この辺は細かいので、また詳しく御説明をさせていただく機会があれば、お話させていただきます。
 最後に、システム的なことをお話させていただき、終わらせていただきます。17ページでございます。我々から見ると、イノベーション、さきほどの技術のところもそうですが、やはり今の置かれている立場をしっかり分析する必要があるだろうと思っています。日本の研究開発投資の総額は17兆円です。これは世界3位です。アメリカが54兆、中国が50兆で、日本が17兆です。かなり差があります。その中でどのように勝っていくのかというのが非常に重要です。
 では、誰が研究開発に投資をしているのか。日本の場合は研究費支出の8割が産業界です。研究者の7割も産業界です。一方で、17ページの右に書いてありますが、企業と大学の連携というのは、どうしても日本はまだ諸外国に比べて低いように思っています。研究開発投資総額が小さい中でどう勝つかという意味では、産学連携をして、新しい価値、新しいイノベーションを生み出していくという視点は重要だろうと思っています。
 18ページ、最後、まとめさせていただきます。既に述べたことですけれども、技術は社会実装されてこそ意味があるということで、いかに勝ち筋を見出すかということは大きな視点だろうと思っています。注目すべきものは、サステナビリティ、それと、技術の革新が進むデジタル、日本の強みであるマテリアル、素材といった視点と考えています。そうしたものを総合的に評価しながら考えていくことが重要ではないかと思っております。さらに、日本のような国の場合には、大学と企業の連携というものを進めるということが重要ではないかと考えてございます。
 19ページです。最後、ちょっと宣伝にもなってしまいますが、政府で革新的環境イノベーション戦略が作られました。そういったものに対して、NEDOとしてもしっかりとサポートするということで、関連の報告書を発信するという活動もやっているということで、閉めさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

【濵口主査】
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのお話に質問、御意見ございます方、お願いします。
 新井委員。

【新井委員】
 いつもNEDOさんの資料であるとか、産業技術総合研究所さんの戦略とかを拝見すると、大変IT系からすると不思議だなというような感じがするものがあります。まず、AIとか5Gとかというのは、もう中国とアメリカが覇権を争うというような中で、ヨーロッパと日本、あるいはカナダ、オーストラリアがどういう立ち位置を取るかという戦略づくり。どっちに付くのか。踏み絵を踏まされてアメリカに付くか中国に付くのか、それとも第三極をやるのかというような話になっていると思うんです。でもって、フランスというか、EUとカナダは連携して、AIについてはAI for Humanityといって、法の規制を高めることによって、ある意味、そいでいくというような方向性を打ち出しているんだけれども、経済産業省さんのものを見ていると、まるで米中に対抗して日本もみたいな、そういう言い方になっているように思うんです。それって結局、竹やりでB29みたいな話なので、現実性もないし、全体をがちゃがちゃさせるだけだし、もう少し地に足が着いた議論を経済産業省さんにはしていただきたいなと。そういうのを勝手に内閣府に入れられると、迷惑するのはこっちなので、やめてほしい。
 しかも、経済産業省が産業技術総合研究所の、例えば、「産総研・ロボット」で検索して画像で出したら何が出ますかといったら、女の人がここに白いブラウスを着て、おリボンして、それでもって座っている受付嬢ロボットですよ。こんなもの、ヨーロッパだったらAI for Humanityから考えて、絶対に許容できない。こういうものを出しておきながら、多様性とか、ELSIの観点も重要だとかって言っている意味が分からない。だから、足元の産業技術総合研究所とのそういうゆがんだ、バイアスされた男のロマン的なそういうものに何十億も突っ込んでいるという状況をきちんと精査してから、こういうものを出してほしいなという気持ちがあります。
 以上です。

【濵口主査】
 反論をお願いします。

【西村NEDO技術戦略研究センター次長】
 まず、大変恐縮ながら、私はNEDOの立場で来ておりますので、経済産業省及び産業技術総合研究所に頂きました御意見につきましては、文部科学省さんから、経済産業省及び産業技術総合研究所につないでいただければと思っております。
 一方で、総論として、言われたことは、大きな意味で、勝ち筋が重要だということかと思います。我々の活動が結果として竹やりであれば勝てないので、おっしゃっていること自体は、同意します。
 ただ、ここに書かせていただいているものは、お題として、注目するものは今何かという中で、デジタルという流れは、大きな流れがあることは事実です。私は、それはどんなに言われても、事実だと思っています。

【新井委員】
 それはそう思います。

【西村NEDO技術戦略研究センター次長】
 その中で、日本がどこに立ち位置を見出すのか、どこで勝っていくのか。ここには、アメリカと組むですとか、どうするという概念までは本日の資料には入っていないのですが、実際には、例えば、AI×ロボットでも、その中でどう勝ち筋を見出すのかというのは、必要な議論だろうと思っています。
 そこについても、NEDO及びTSCは逃げるつもりはありませんけれども、今日お話した内容の粒度はこのレベルなので、この資料については、ある程度、我々が今注目しているものとして、自信を持って出させていただいています。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。今朝のニュースでも御存じだと思いますけれども、ハーバードの教授が捕まりました。ナノテクで逮捕されるというような状況、これ、米中対立なのが明らかに出てきている現象で、相当現状は厳しい方向へ動いている。その中での日本の立ち位置というのは、従来の延長線上ではなかなか確保できないようになりつつあるんではないかということはちょっと実感しております。そういう意味でも、総力を挙げて議論をして、勝ち筋を探すということは、本当に重要なフェーズかなと思いますので、先生、御理解ください。

【新井委員】
 もちろん私もその勝ち筋を探すということについては、非常にアグリーしているわけです。だけれども、技術だけで勝てるという時代、でも、今はAIとか5Gとか宇宙とかというのは、そうではない。なので、本来であれば、シンクタンクであるNEDOというのは、そういうところも踏まえて、単にこういうところが世界で注目されていますというのをリストアップするだけではなくて、戦略も含めて御検討いただくのが本来的なお仕事なのかなというふうに思っております。

【濵口主査】
 ここで五神委員お願いします。

【五神委員】
 学の立場というより、産業構造審議会の研究開発・イノベーション小委員会の委員長の立場から申し上げます。この小委員会では、吉村さんも委員で加わっていて、この委員会と同じように、未来に向けてどういうふうに産官学の構造を変えていくかという議論をしています。そこにはNEDOの理事長も参加していますし、産総研も参加しますが、その議論との違和感が相当大きいと感じています。つまり、そこでは、資本集約型のモノベースの価値観から、知識集約型にパラダイムシフトするときに、その機を捉えてどう成長戦略を描くかという議論を何年もしています。
 その場で言ったことの一つとして、最終製品をベースにしたバルーンマップは、知識集約型での価値創造の戦略を立てるにはふさわしくないから、むしろその要素になっているものを、知識集約型での産業要素に書き換えて、縦横軸を書き換えるべきだということがあります。つまり、材料があって、部品があって、そこから最終製品の車を作りますというのは、高度経済成長、20世紀のときには合理的な見方で、それがどう変化していくのかということを見ながら計画を立てなければいけませんでした。しかし今は、物体としての車そのものよりも、車をどう使うかという、Uberのようなサービスに価値の中心が移ってきているので、その要素として大事なことは、モノではなくてデータや価値になるわけです。だからバルーンマップは縦横を書き直さないといけないと言っていて、NEDOの理事長含め、参加者は皆うなずいていたわけです。その議論が反映されていない。
 そういう点で見たときに、15ページ~16ページの整理が、特に15ページですけれども、ここでメガトレンドと書いてあるものは、カテゴリーとしてばらばらです。階層構造でいえば、ディレクトリの上のものから下のものまでいろんな階層のものが同列に並んでいるという感じになっていて、これでどうやって産業政策を議論するのかというところが、ちょっとこなれていない感じがします。
 それから、もう一つ言うと、Society 5.0というのは、第5期のときに私たちが書いたものだから、世界に対して先進的であったわけです。デジタルレボリューションを使って、インクルーシブグロースにつながるような道筋を示したことが先進的だと政府も言っています。つまり、ものづくりベースの資本集約型の経済が知識集約型になることによって、サイバーとフィジカルの融合が起こるのです。それによって個の多様性を生かすようなサービスが、非常に低コスト・高クオリティーに利用できるようになるという社会が来るので、インクルーシブさを伴う経済成長という、拡張主義的な経済成長とは違った道筋が見えてきたのです。そこを日本のGDPを伸ばす戦略にしましょうということで、第5期は始まったというわけです。
 ただ、第5期を書いたときはSociety 5.0の中身がそこまで分かっていなかったので、5期が進行する中で議論を進めているわけです。それを6期でどうしようという話のときに、デジタルは大事だというのは当たり前なのですが、デジタルレボリューションの結果、デジタルデバイスが増えて消費電力が急増し、サステイナビリティや地球環境の観点から見て逆に行き始めていることも明らかになりつつあります。だから、第5期のときよりも、その部分をもっと詰めていく必要があって、融合した中でサステナブルになるにはどうしたらいいかという議論をきちんとしないといけません。
 そのときに、日本の産業資源がどこにあるかを見るにあたって、モノベースの価値観のバルーンマップを見ていたのでは見誤るので、それを直しましょうという議論を小委員会では何度もしてきました。もう3年ぐらいやっている話なので、少し残念な気がしています。そこは是非意識合わせをしていただきたいと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 では、三島先生。

【三島NEDO技術戦略研究センター長】
 今のお話は非常に重要かと思います。私がセンター長になったのは去年の4月ですけれども、それ以後、これを見ているわけですけど、それまでの議論というところが、私にとってもまだ不勉強だったところがあるかもしれませんので、これから今頂いた御意見を、いわゆる分析の仕方のところで、これからの時代にどこを見なきゃいけないかという御意見を、これからTSCの中でしっかりと使っていこうというふうには思います。

【濵口主査】
 どうぞ。

【冨山委員】
 逆に質問なんですけど、今、五神委員が言われた、これ、私の頭の中で言っちゃうと、いろいろなパラダイムが変わる中で、どう将来のアーキテクチャーを想定しますかと。要するに、アーキテクチャーの変容が起きちゃうと、こういう要素的なものというのは吹き飛んじゃうんですよね。それで、また車載用電池って書いてあると思って、私、今、パナソニックという会社の社外取と東電の社外取やっていますが、この分野、何が起きているかということを最先端でリアルによく知っています。これ、いかに厳しい展開になるかってよく知っています。
 これ、例えばなんですけど、この前ノーベル賞取ったでしょ? リチウムイオン電池ね。でも、リチウムイオン電池の発明で誰が一番もうけたと思います? 旭化成でないことは明白ですよ。要するに、Appleと、最近ではシャオミとかがもうけているんです。あるいはファーウェイがもうけているんですよ。なぜそうなっちゃったかといったら、それは産業のアーキテクチャーを変えられちゃったからなんですよ、連中に。
 基本的には、要は携帯の場合にはiOSとアンドロイド系のアーキテクチャーに支配される構造になっちゃって日本の携帯電話産業は衰退したんですけど、質問は、要するに、そういう正に知識集約型ということはそれが起きるわけで、そのアーキテクチャーというものをテクノロジー的に、あるいはいろいろなレイヤーがありますよね。ソフトウエアもある。テクノロジーという意味でもある。それは産業構造でもある。そのいろいろなレイヤーにおいて、アーキテクチャーがどう変容していくのかということについて、ある種研究しているというか、真剣にそれをとにかく一生懸命考えているような、国研とか、あるいはアカデミアというのは――私自身は、割と一生懸命考えている。本人としてはそのつもりなんで、結構そういう本って割と欧米から出ますよね。どこで誰が考えているんでしょうか。産業構造審議会では五神委員中心にそういう議論をされているということは私も重々承知しているんですけど、すごく大事だと思っていて、この前、アーキテクチャシンポジウムというのを経済産業省とやったんですね。中西さんと僕とで基調講演やったんですけど、だから、少なくとも経団連はもう完全にそういうことを踏まえた、要するに、今までそれでさんざん痛い目に遭ってきたんで、思っているんですけど、その辺、NEDOとかでそういうレイヤーの、例えばリサーチャーとか、そういう人というのはいるのかいないのか、その質問なんですけど。

【西村NEDO技術戦略研究センター次長】
 まとめてお答えをさせていただきます。
 まず、今、五神委員及び冨山委員から頂きました御視点というのは、非常に重要な視点だと思います。それは素直に、TSCとして、今後の分析のところにどう反映していくのかということは、しっかりと考えたいと思っています。
 大きな意味で、御指摘のようなトレンドというか、もはや過去の延長線の考え方で対応が難しいだろうということについては、ある意味で、我々としても認識をしているところです。ただ、その中で、本当にどのような分析を今後加えていけるのかというところ、勝ち筋が見出せるかどうかというところに直結すると思っていますので、そういったところは、今回の御指摘を踏まえて少しまた考えてみたいと思います。
 どこがやっているのかということについては、ちょっと他機関のところまで責任持って発言できないですが、少なくとも、TSCはそれを踏まえながらやらなくてはいけないということだと思いますので、また今日の御議論を踏まえて、少し意識して取り組んでいきたいというふうに思います。
 以上です。

【濵口主査】
 済みません。ありがとうございます。本当にタフな議論に、吉村さん、西村さんには付き合っていただいて、心から感謝いたします。

【吉村経団連産業技術本部長】
 参考人だと思ったら、被告人みたいな(笑)。

【濵口主査】
 いやいや、そういうつもりは(笑)。

【吉村経団連産業技術本部長】
 という印象ではあるんですけれども、今後も議論を深めていただいて、こちらの委員会で立派な取りまとめを行っていただけたらと思います。ありがとうございました。

【濵口主査】
 ついつい皆さんの情熱がほとばしるような状況で、それだけやっぱり危機感が深いというのが共通認識かと思います。
 済みません。本当に今御指摘いただいた大事なのは、こっちの方をどうまとめていくかというのが、実は大分時間押しておるんですけど、多分、次回も宿題送りになってくるとは思うんですけど、ここでちょっと今の議論、水入りさせていただいて、議題の2の方に移らせていただきたいと思います。
 まず、事務局から資料3、4について説明をお願いしたいと思います。

【大洞文部科学戦略官】
 ありがとうございます。まず、資料3を使いまして、前回中間取りまとめを頂いた後、政府の方でどのような政策動向になっているかについて説明させていただいた後に、現在の資料の取りまとめについて説明させていただきたいと思います。
 まず、小林企画官の方からよろしくお願いいたします。

【小林政策課企画官】
 それでは、資料の3-1を御覧いただければと思います。科学技術・イノベーション創出に係る制度改革の方針についてでございます。そこにございますとおり、総合科学技術・イノベーション会議の基本計画専門調査会制度課題ワーキンググループの報告書が昨年11月に出されまして、それを踏まえまして、この通常国会に科学技術基本法等の改正案を内閣府から提出予定でございますので、それについてまず説明させていただきます。
 改正の方向性は次のとおりでございます。1つは、科学技術基本法の見直しということで、基本法にイノベーションの創出、人文科学のみに係る科学技術の追加、法律名を変更するというものでございます。イノベーションの重要性や人文科学自体の振興の必要性等に鑑みまして、イノベーションの創出の概念や、人文科学のみに係る科学技術を基本法に含めるというものでございます。
 現行の基本法にはイノベーションということは含まれておらず、また、人文科学のみに係る科学技術は、科学技術の定義から対象外となっております。なお、議員立法による科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律というのがございますが、これを平成30年に改正したときに、以上のことについて検討すべきという規定が設けられております。この改正に伴いまして、法律名も科学技術・イノベーション基本法ということに変更するというものでございます。
 併せて、この基本法の中にある様々な条文について、近年の科学技術・イノベーション政策の動向を踏まえまして、必要な規定を追加するということにされております。
 その下に、なお、科学技術・イノベーション政策のこれらの基本法の見直しの理念を基本法に規定した上で、次期基本計画、に反映することとされております。その下にございます基本法と活性化法の法律は現行の条文でございますので、これを今後改正していくということでございます。
 2ページ目の方で、科学技術・イノベーション創出の活性化法の方の見直しでございますけれども、基本法と同様に、人文科学のみに係る科学技術を追加することということとか、人文科学のみに係る独立行政法人の機関を拡大していくということ、それから、出資規定を整備していくということで、産学官連携を活性化するため、研発法人の出資規定を整備すること、また、国立大学法人等についても併せて出資規定を整備することにしております。これについては、後ほどまた説明させていただきます。
 それから、日本版SBIR制度というのが20年ほど前にできまして、中小企業庁を中心に運用しておるんですけれども、これを中小企業の経営強化からイノベーションの創出に制度の主目的を見直すとともに、この科技イノベ活性化法の方に移管して、内閣府を中心にして運用していくという改正も盛り込まれております。
 続きまして、資料3-2の方を御覧いただければと思います。この資料3-2は、先ほどの制度改正についてのワーキンググループにおける議論の概要で、昨年11月に出されたものでございますので、改正の趣旨等が書かれております。
 そこにございます、2、科学技術基本法の見直しということで、イノベーション創出の概念を追加する必要性、あるいは人文科学のみに係る科学技術を追加する必要性について書かれております。
 2ページ目に行きまして、イノベーション創出に向けた制度構築ということで、産学官連携促進に向けた見直しということで、これは先ほどの資料3-1の出資規定の整備のところに関するものでございますけれども、ここで書かれているのは、大学、また、研究開発法人が共同研究を行う際の外部組織を作って、そこに出資することを可能にするということのための見直しでございます。そこにございますように、産学官連携の促進のため、民間事業者のニーズへの迅速な対応が必要となっておりますけれども、大学・研発法人における課題、例えば、外部組織、研究のスピード感が合わないとか、産学官連携に向けた人材の処遇、あるいはインセンティブの付与が不十分であるということが、大学の中で行われる場合には課題となっているという認識の下で、大学・研発法人の外部組織を作って業務を実施するということを可能にするということが、制度改正の内容として期待されております。現行、大学・研発法人においては、そういった外部組織に出資する際には、様々な規制が存在しますので、その規制を取り除いていくための見直しを行うという内容が入っております。
 また、その下の2は、先ほど申し上げました日本版SBIR制度の見直しについてでございます。
 以上が、科学技術基本法等の改正についての説明でございます。
 続きまして、資料3-3を御覧いただければと思います。こちらは、研究力強化・若手研究者支援総合パッケージということで、先週金曜日、1月23日に総合科学技術・イノベーション会議において決定されたもので、昨年の統合イノベーション戦略に基づきまして、このパッケージを作るということが決定されまして以来、内閣府を中心に文部科学省、経済産業省と関係省庁が議論して決定したものでございます。
 2ページ目を御覧いただきますと、我が国における研究力の課題ということで、論文数について国際的なシェアが大幅に減少しているとか、注目度の高い論文数についてはそういった傾向が顕著であるとか、そういった現状の課題が書かれております。
次のページに行きまして、研究力強化の鍵は、競争力ある研究者の活躍である一方で、若手をはじめ、研究者を取り巻く状況は厳しく、研究者の魅力が低下しているということで、修士から博士後期課程への進学率が減少しているとか、博士修了者の就職率が停滞している、それから、若い国立大学教員の任期付きが増加しているとか、教育・研究時間が減少しているといった課題が書かれております。
 次のページで、目標として、若手の研究環境の抜本強化、研究・教育活動時間の十分な確保、研究人材の多様なキャリアパスを実現して、学生にとって魅力ある博士課程を作り上げるということが書かれておりまして、主に博士の後期課程にどうやって人材を集めていくかということを中心に書かれておりまして、その下にございますように、博士後期課程の教育内容として、独立して研究の企画とマネジメントができる人材の育成、それから、若手研究者の段階では、自由な発想で挑戦的研究に取り組める環境を整備する、中堅・シニア研究者においては、多様かつ継続的な挑戦を支援していくと。こういった環境整備をするとともに、上にございますように、産業界による博士人材の積極採用と処遇改善とか、あるいはマネジメント人材、URA、エンジニア等のキャリアパスを明確化するという、こういう多様なキャリアパスを見せることによって、博士課程の前期から将来の多様なキャリアパスを見通すことによって、博士後期課程に行く進学意欲を向上させるというような理念になっております。その下に、様々な測定指標が書かれております。
 その次のページにございますとおり、施策の方向性として、様々な人材、資金、環境に基づく施策を掲げておりますが、これらの施策を6期の科学技術基本計画、又は第4期の国立大学中期目標期間に反映するとともに、成果を評価するということになっております。
 その次のページに、研究力強化に求められる主な取組ということで、若手研究者のポスト拡大と挑戦的研究費の提供ということで、先ほどの測定指標をここに再度書かせていただいておりまして、将来的に我が国の大学本務教員に占める40歳未満の教員が3割以上となることを目指し、40歳未満の本務教員を1割増やすとかいう目標を掲げておりますが、これらについては、第6期の科学技術基本計画の検討に際して、改めて最新のデータを踏まえて検討することとされます。
 以下、優秀な研究者に世界水準の待遇を実現するための混合給与の推進であるとか、その次のページにございます博士後期課程の処遇の向上ということで、将来的に希望する博士後期課程学生が生活費相当額程度受給できるようにするとか、そこに右側にございます、産業界による理工系博士取得者の採用者数を増やすとかといった達成目標と、それに関する主な施策を掲げております。このパッケージに基づきまして、内閣府を中心に、施策のかなり多くは文部科学省のものでございますので、経済産業省とも連携して取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。

【大洞文部科学戦略官】
 今のように、前期の中間取りまとめで議論いただきましたことを、大体こういうパッケージに盛り込んでいただいて、さらに数値目標等を検討し、6期計画に向かっているという理解でおります。
 続きまして、資料の4-2を使って、御議論いただきたい報告書の案を説明させていただきます。ちょっと時間もありませんので、少し省略させていただくことを御了承ください。
 第1章につきましては、前回の議論でかなり第1章に書くべきという御議論がございましたので、修正をしております。2ページを開けていただけますでしょうか。これは科学技術の状況ですけれども、諸外国の状況等につきまして、諸外国の国家戦略においても、各種先端技術、エマージングテクノロジーへの投資ですとか、そういったものを安全保障の観点からというようなところが始まっているということを書かせていただいております。
 また、3ページですけれども、こちら、科学技術イノベーション政策というのが非常に重要性が拡大しているということを改めてかなり分量を使って書いております。例えば、第1にといいますと、科学技術イノベーションの実現が我々の社会経済、価値観に与える影響というのはこれまでになく大きくなっていて、スピードが速くなっていると。それをAIの例を使って書いていたりします。
第2は、やっぱり差し迫った課題の解決に向け科学技術が求められるというところで、根本的な技術革新が重要になってきているというようなことを書かせていただいております。
 第3では、科学技術・イノベーション政策が、国家間の競争ですとか協調の方向性とか、そういったものにも影響して、国の総合戦略とも密接不可分なものになっているというようなことを、サプライチェーンの話とかも含めて書かせていただいております。
これで、まとめといたしましては、やはり科学技術・イノベーション政策が国家の総合戦略の中核として捉えるようなものになってきているという認識を改めて書いております。
 また、5ページのところでございますけれども、知識集約型価値創造システムの構築につきまして、少し重要なところを書き足しております。例えば、リアルデータの収集ですとか、そういったものの質の問題ですとか、そのようなプラットフォームについて、先ほどNEDOの発表にもありましたけれども、低消費電力のものが求められているですとか、あとはデータポリシー、そういったものが重要になってくるというようなことを書かせていただいております。
 また、6ページですが、人間主体のインクルーシブ社会の実現に向けてということで、ここは更に目標として強めなくちゃいけないだろうということを考えておりまして、そういったまずはデータの独占ですとか、それが格差や分断につながらないように、こういう強い意志を持って取り組んでいくということが必要であるということを書かせていただいております。
 また、そういったためのインフラ整備ですとか、やはり日本のような国の規模でそういったことを達成できれば、これは世界に展開することができるというような趣旨を加えております。
 8ページでございますけども、集中投資が必要という文脈におきまして、何のためにということを書かせていただいております。これはやはり産業競争力の強化ですとか、一人一人の暮らし、生き生きと暮らす生活の実現ですとか、社会の抱える課題への解決、国民の安全・安心と。こういった観点からやはり集中投資が必要であるという文脈を、9ページにもう少し強調して書いたところでございます。
 そのほか、先ほどのパッケージにありましたような議論を少し書いております。ちょっと1点だけ御紹介させていただきますと、12ページに、研究の挑戦性を重視するというところですが、こちらに先ほど経団連さんの発表からもありましたような創発研究、新たな制度ができておりますので、その趣旨を、例えば、既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的な研究を長期的に支援するというような文脈の制度を作ってやっていくということを書いております。
 そのほか、ちょっといろいろ書き足した点はあるんですが、一回お目通しいただいているかもしれませんので、詳細な説明は飛びまして、あと、第6章、42ページは、ここは前回の論点ペーパーとほぼ同じことを文章化させていただいております。先ほども経団連さんからも御指摘いただきましたような科学技術コミュニケーションですとか、ELSIですとか、そういったところ、あとは、政策形成におけるエビデンスの活用ですとか、研究の公正性の確保という観点を、前回の論点ペーパーどおりにまとめているというところでございます。
 あと、8章、46ページが少し戦略的研究の考え方を書き足したところでありまして、ここも説明させていただきます。
 では、続きまして、鈴木から。よろしくお願いします。

【鈴木新興・融合領域研究開発調査戦略室室長補佐】
 それでは、第8章、46ページ目を御覧ください。1ポツ(1)の基本的方向性のところでは、前回骨子案でお示しした4つの方針と、そこに至る考え方を記載してございます。
 マル1の研究開発をめぐる国内外の動向というところに関しましては、後ほど出てきます4つの方針と1対1で対応するような形で、重要な動向の変化ということを記載しておりまして、ここはちょっと項目の読み上げだけで失礼いたしますが、1つ目としては、フィジカル技術やリアルデータの重要性の高まり、2つ目としては、課題解決に向けた科学技術イノベーションへの期待、3つ目が、エマージングテクノロジーをめぐる国際競争の激化、4つ目が安全・安心の確保のための研究開発の重要性の高まり、こういった4つの動向の変化を重要なものとして注目しておるところでございまして、その後に書いてございます、我が国の科学技術の置かれた状況ですとか、マル2にある重要な研究開発領域への集中投資の必要性、これは前回の骨子でも御議論いただいたところですので、説明を割愛させていただきます。
 こういった国内外の状況ですとか、日本の強み等を考慮した上で、今後重点的に取り組むべき研究開発領域を定めるための方針というものを4つお示ししてございます。この方針そのものも前回お示ししたものとほぼ同じでございまして、方針2と3の順番を入れ替えたというところはございますけれども、そこにさらに簡単な解説を下に付けてございます。
 例えば、方針1ですと、フィジカル技術ですとかリアルデータの蓄積というのが強みといったところを前提としつつ、やはりグローバルなバリューチェーンの中核を押さえると。そういったところに資する研究開発が重要であろうというところで、方針2に関しましては、めくっていただきまして、日本が世界に先駆けて様々な課題と向き合っているといったことは大きなアドバンテージであるというふうに捉えまして、そういったところに対するソリューションモデルを、国内はもちろんですけれども、世界に輸出可能な成長産業として発展させることが重要だろうということを書いてございます。
 3つ目のエマージングテクノロジーについては、ゲームチェンジを起こすような技術であり、かつ、基礎研究を要するものが多いということで、日本の強みが発揮できる領域であろうというところでございます。
 4つ目の方針ですけども、地理的な状況ですとか、地政学的な様々な情勢等も勘案しながら、国民の安全・安心の確保ですとか、国としての自立性の確保、そういったところの重要性を述べてございます。
 (2)の研究開発の方向性のところですけれども、こちらも前回の骨子案でお示ししたところに詳細な解説を付けたというところが中心でございます。重点的に取り組むべき研究開発と具体的な研究開発の例というところでして、重点的に取り組むべき研究開発領域は、黒丸下線で書いてあるところで、具体的な研究開発の例はその下にちょっと小さな字で括弧で書いてあるところが該当するところでございます。
 こちら、簡単な説明で恐縮ですけれども、例えば、方針1の1つ目のマルに関しては、やはりこれまでにない価値の創出のためにはリアルデータ、リアルタイムが重要であるというところなんですけれども、そこにはデータそのものの正確性、信頼性ですとか、データ処理に当たっての信頼性、即時性、そういったもののシステムが重要であって、かつ、高速なネットワーク通信ですとか、高度なセキュリティ、低消費電力、こういったところが更なる付加価値の創出につながるだろうというところを記載しております。
 2つ目のマテリアル創生技術やものづくり技術については、日本の研究力、産業競争力の中核であることはもちろん、今後のSociety 5.0においても根幹となる領域であるというところで、ここでもさらにはグローバルなバリューチェーンを意識した研究開発が重要だろうということを書いてございます。
 続きまして、方針2なんですけれども、こちら、4つの研究領域例を示してございまして、1つ目は健康寿命延伸・QOLの向上というところなんですけれども、これはやはり日本では超高齢化社会ということが言われておりますし、今後世界各国も同様の課題が生じるということが想定されまして、そこにはさらにヘルスケア産業の拡大というところもございますので、世界的な成長産業を牽引していくという観点からも、この領域が重要であろうと書いてございます。
 2つ目、めくっていただきまして、都市と地方が共生するスマートなまちづくり、こちら、地方においてのインフラの維持の困難さですとか、労働人口の減少、若しくは都市問題等々、そういった課題というのが浮き彫りになってございますし、また、人生100年時代の中での生きがいを持った人生、そういったところを実現していく上でも、いろいろなライフラインや産業のスマート化への期待が大きいというところで、こういったことが重要であるということを書いてございます。
 3つ目の脱炭素社会実現のための研究開発、こちらは以前スマートエネルギーシステムと書いてございましたけれども、そこをもう少し広い概念としてくくっておりまして、国際的な共通目標であるパリ協定ですとか、日本の脱炭素社会の実現という野心的な目標に向けて、非連続的なイノベーションが必要であると。そして、最終的には地球温暖化の解決と産業発展を同時に達成できるようなシステムが重要であるということを書いてございます。
 4つ目の持続可能な地球環境ですけれども、こちら、気候変動以外にも、環境汚染、生態系の保全、そういったものに対して多角的な研究開発を推進することが必要であるとか、あとは、サーキュラーエコノミーといったものの実現に向けて、多様な分野にまたがる研究開発が必要であると書いてございます。
 方針3、こちら、5つの領域を示してございます。1つ目は量子科学技術ですが、こちらも量子というのが様々な課題を非連続的に解決できるというポテンシャルがあるということと、非常に知識集約度の高い領域であるというところで、日本の持つ基礎、知識基盤を活用しつつ、研究開発を強化していくということを書いてございます。
 2つ目の次世代バイオテクノロジーなんですけれども、こちら、研究開発の様々なパラダイムシフトですとか、あとはバイオエコノミーの実現といったトレンドの中で、基礎研究に強みを持つ日本としては、この研究開発を着実に推進すべきだということを書いてございます。
 3つ目の次世代AIに関しましては、正に現在深層学習が直面している様々な課題を解決するというところに対して、国際的に研究開発が行われておりまして、日本も要素技術の強みを有するというところがございますので、そういった強みを生かした研究開発を進めるというところでございます。
 4つ目のマテリアルテクノロジー、こちら、方針1のところにも若干似通っているところがありますけれども、やはりマテリアルそのものが最先端技術に革新をもたらす、イノベーション創出の最重要基盤であるというところを前提に、日本の国際優位性を確保・向上させることが重要であるということを書いてございます。
 5つ目のインクルーシブ社会を実現する人間・社会拡張技術、こちら、AI、ロボティクス、脳科学などの進展によって、人間や社会の機能を拡張させるということがだんだん可能になっている中で、それがいい面も悪い面も当然あるんですけれども、そこをインクルーシブな社会に使うというところを、しっかり強い意志を持ってやっていくことが重要であるということを書いてございます。
方針4ですけども、4つの領域を示してございまして、1つは防災立国実現のための研究開発というところ、これは日本だけじゃなくて、世界にも自然災害に脆弱な国があるというところもございますので、そういったところを見据えながら研究開発を進めていくと。その際には、産学官民の知見の統合ですとか、人文・社会科学の知見も重要であるということを書いてございます。
 2つ目のエネルギーセキュリティなんですけれども、こちら、エネルギー自給率の観点から、安全性の確保を前提にした次世代のベースロード電源の研究開発を継続することが重要であるということを書いてございます。
 3つ目の宇宙・航空技術に関しましては、最近、いろいろなプレーヤーが参加しているというところですとか、航空ニーズの変化といったところもございまして、こういう非常に高い信頼性、安全性が求められる技術というのは、なかなか持っている国が限られているという中で、安全保障、産業競争力、SDGsへの貢献の観点から、しっかりと独自に保持すべき基幹技術と、ほかのものを、使えるところを見極めながらやっていくべきだということを書いてございます。
 最後、海洋技術ですけれども、こちらはもちろん海洋の持続可能性や防災という観点はあるんですけれども、それ以外にもシーレーンの確保、資源開発等々、安全・安心の確保からも極めて重要な領域であると認識しておりまして、日本が海に囲まれているという地理的環境を最大限に生かした研究開発を着実に進めることが重要であるということを書いてございます。
 最後、2ポツのところは、これもほぼ前回お示ししたものと変わっておりませんが、例えば、(1)であれば、分野別人材の需給バランスですとか、(2)ですと、基礎から出口までの総合的なファンディング戦略、(3)であると、民間資金が次世代投資へと循環する仕組みですとか、社会実装のエコシステム形成ですとか、(4)に関しては、最新科学技術の情報管理の重要性というところで、先ほど主査からも言及がちょっとありましたけれども、国際的には研究の透明性とか相互主義、利益相反の情報開示、そういったものをしっかり求めるという動きがあるということも書いてございます。(5)としては、強みを生かし弱みを補完する国際協力、特には科学技術新興国の知や人材を取り込んで、研究力の強化につなげていく戦略が必要であるというところ、最後には、ビッグサイエンス化への対応といったものを書いてございます。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございました。
 お時間限られていますが、残りの時間、特に第1章と第6章、第8章あたり、しっかり御意見頂ければと思いますが、いかがでしょうか。
 吉村さんにも御意見頂いてもいいんですけど。よろしいですか。
 いかがでしょうか。五神委員。

【五神委員】
 特に第1章のところは、大分いい形で書き込んでいただいたなと思います。
 先週ダボス会議に参加しました。一部だけしか出ていないので全体を通しての感じは分からないのですが、安倍首相が参加していた前回と比べると、今回、閣僚が出られなかったこともあって、日本の存在感が大分薄かったように感じました。私は環境系のセッションを中心に参加していたのですが、日本が課題先進国として、マスキー法への対応をはじめ、かなり頑張って環境問題に取り組んできたという意識は世界からは完全に消えています。正にCOP25のときの惨たんたる状況そのものというか、ネガティブなバッシングこそありませんでしたが、存在が全くないという感じです。SDGs関連は日本も相当取り組んでいるはずなのに、全く目立っていない。むしろインドネシアが政府を挙げてやっているということで存在感を発揮しており、インドネシアは大国なんだなというのを改めて認識して帰ってきたという状況です。日本国内での認識と世界の認識で、かなりずれが大きくなったなと思います。
 ただ、世界全体としてどうしても分断が進んでしまう方向にあります。国の分断もあるし、世代の分断もあるし、サイバー空間も、世界のネット空間が2つに分断されてしまうかもしれないという状況になっています。そのように世界が揺れている中で、それでは困るという人たちが経済界には多いので、どういうふうにルールづくりをするかということがますます重要になってきています。先ほどNEDOの発表に対してやや厳しめの言い方になってしまったのは申し訳なかったと思うのですが、チャンスが見えてきたと感じたからこそ議論を急いだ方がいいということを言いたかったのです。つまり、隙間ができているので、そこに入り込む余地が生じているということです。
 ダボスの後、ロンドンに行って、イギリスの大学の学長さんたちと10人ぐらいで密に話をする機会がありました。彼らはものすごく今不安な状況で、パートナーとして日本と連携したいという話が、キングス・カレッジやオックスフォード大学の学長からも聞かれるという状況です。これは明らかにチャンスなので、その隙間をどう突くかというところが極めて重要です。
 そういう意味で、先ほども言いましたように、サイバー空間とフィジカル空間をつなげた状態の中でサステイナビリティを考えるというアイデアは、多分、日本での議論が若干は先行しているので、そういうところを戦略的に入れることが大事だと私は思っています。
 その意味で、後半のところにも集中投資の話があり、前半の8、9ページでも投資の話が出てきています。集中投資することは大事なわけですが、お金を誰が出すのかというところをよく考える必要があります。私は、例えば、中長期の基礎研究の投資などは国の責任だから、国は財政がどんなに厳しくてもきちんとやりますと宣言すべきだと思います。一方で、民間にある潤沢な資金が今動いていないということも問題なので、国費を呼び水にしてそうした資金を動かし、どうやってレバレッジを利かせるかということも重要です。つまり、国は何をやるかという責任をきちんと明確にステートメントとして出すとともに、レバレッジを利かせるための仕組みをどう構築していくかということを書かないと、お金がなければ何もできないというところで終わってしまいます。レバレッジの効かせ方は、大学改革の中で新しい方策を見出しつつあって、実現可能であるし、公共的なサービスを担ういろいろなセクターにも応用が可能だろうと思っています。
 ですから、政府としての決意のようなものを、安倍首相が所信表明演説などで述べているものをうまく拾ってピン留めするなどして、国はここにはお金を出すのだということを是非書いてもらいたいなと思います。それがないと、民間のお金は動きようがないと思いますし、先ほどのお話で、大学の出資の自由度を増すということを重要な施策として入れていただいて、それはありがたいことなのですが、大学にお金がないのに、出資の自由度だけ増してもどうするのかということになってしまいます。
 国が何もしていないわけではなくて、例えば技術研究組合制度はCIP制度という新しい呼称を作って、経済産業省で改革を進めています。大学が提供する知的貢献など、お金以外のさまざまなコントリビューションに対して、組合を株式会社化したときに3割ぐらいまでの株を持てるような形にするという話です。こうやって、新しいやり方をクリエートする余地はあるわけで、そういうものをいろいろなところで作っていくことも同時にやる必要があります。お金なしでやるというのは精神論でしかない無理筋の話なので、やり方を具体化するという意味で、そこをもう少し追加できるといいなと思いました。
 以上です。

【濵口主査】
 大洞さん、どうぞ。

【大洞文部科学戦略官】
 9ページのところにその趣旨を書き始めておりますので、国がしっかり公共財的なところはちゃんとやるんだと。もう少し記述を見直して、しっかり書きたいと思います。ありがとうございます。

【濵口主査】
 人によっては意見があって、消費税のうち2%を科学技術に投資しろとおっしゃるぐらいの方も今いるんですね。私も、個人の本音ではすごいと感じておるんですけども、何かもう少し変えないといけないんですけど、そこをどう書き込むかというのは、もうちょっと踏み込めないかなというのは正直あります。
 どうぞ。

【川端委員】
 ちょっと違う観点ですけれども、やっぱり全体として、SDGsも含めて、サステーナブルも含めて、国際的な立ち位置、当然それはあってよくて、それはやるべきなんですけど、一方で、日本の中が地域も含めて危機的な状況に、その方向が動いているということをもっとこれは出していいんじゃないかというふうに思います。
 そういう中で、社会システム、せっかく人文・社会系が新たにこの中に取り入れられて、更に上がっていくんだというなら、もっとそこが明快に出てくるようなプロジェクトの組み方というのがあっていいかな。
 特に、それに近いんであれば、50ページに、都市と地方が共生するスマートなまちづくりのための研究開発って、こういうキーワードが出ているんですけれども、まるでスマートにすれば解決するように、何かそんなような感じにも捉えられていて、もっともっとこれ、深刻な話であって、その中にはやっぱりスマート以上に社会システムをどうしなきゃならないかというような議論をしっかり、そこに科学技術が入っていく部分もあるし、社会科学が入っていく部分もあるというような表現になっていった方が、その下の具体的な例を見ても、スマートモビリティとスマート何とかとスマート何とかって並んでいて、これで解決していくようにも見えるんで、そこではないぞというところを前面に出していただけるというのが1点。
 もう1点は、集中投資という、さっき議論が出て、当然是非そういうことは必要なんですけれども、集中投資イコール大規模プロジェクトに見えたりするんですよ。要するに、大規模な何か大きな話を、柱を立てて、でっかい金額でという動きではない方向のものを考えないと、社会システムとか、こういうものは動いていかないというふうに思っていますので、少しその辺も御検討いただければと思います。
 以上です。

【濵口主査】
 2点目は、創発がその典型で、ああいう形のをもう少し開発しないといけないと思いますね。
 どうぞ。

【新井委員】
 では、時間がないので短く。1つ目は、ちょっと前回も前々回も出られなかったので、既に終わっていますということかもしれないんですけど、52ページのインクルーシブ社会を実現する人間・社会拡張技術のところです。ここもやはり先ほどコメントしたように、今、ゲームチェンジが、五神委員もおっしゃったように、激しくなっています。米中がやっているような方向ではない方向に振るというようなニュアンスで、つまり、AI for Humanityというのが、今、EUとカナダではキーワードになっています。ですので、AI for Humanityというのを少し検索をして、勉強していただいて、人を阻害しない、特定の人を何か差別したりしないというような、AI for Humanityというキーワードを、ここで明確に使うか使わないかはあれですけれども……。

【濵口主査】
 日本政府としては、人間中心のAIというのを方針で出ていますので、そこを……。

【新井委員】
 そこを明確にキーワードとして入れていただきたいというのがあります。
もう一つ、44ページになります。政策イノベーションの実現で、これは科学技術というか、研究全般のですけれども、政策イノベーションというのをきちんとやっていきましょうということで、エビデンスに基づくということだと思うんですけど、基本的方向性の後の(2)のマル1、効率的、効果的な政策を展開していくためのというのが、ここが実は余り具体性が前回よりも下がったというか、第5期に比べて下がって、せっかく第5期で、リサーチマップを作って、全研究者の全業績というのを網羅的に集めて、そして、AIによってそれも補完しましょうという話になって、データが来週そろおうとしているところですので、それを使って分析を進めて、例えば、どういう大学にはどういう強みがあるとか、どういう研究機関にはどういう強みがあるとか、こういうふうにするとより効果的に効率的にイノベーションが進むんじゃないかとか、この研究者のところに大変よい生産性の高いチームがあるとか、逆に、地方創生に対して寄与しているような研究チームがこの辺にあるとかというようなことを分析することによって、更にエビデンスに基づく科学技術イノベーションを上げていくというような、そういう書きぶりがここの中に具体的に入ってこないと、いつまでもWeb of Science頼みの分析にとどまってしまいますので、そこは日本の新規性がある部分ですので、是非お書きいただきたい。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 十倉委員。

【十倉委員】
 経団連の吉村さんが、非常にいいことをいっぱいおっしゃったんですが、1つは、科学技術と社会との関連性のところで、「国際」を付けるべきだというのをおっしゃっていて、そのとおりだと思います。議論してきたものは、しっかり書いてもらっていて、繰り返しになりますが、科学技術イノベーション政策は国家の総合戦略の中核だということで、国家の在り方、Way of Stateというか、それと科学技術イノベーション戦略は独立してはあり得ません。それをしっかり今回書いてもらっているのは非常にいいことだと思います。
 私もよく使うんですが、科学技術立国とか貿易立国という言葉は、非常にナショナリズム的なニュアンスがどうしても伴います。最近よく読まれている本で、『ホモ・デウス』や『サピエンス』を書いたハラリ氏の『21レッスンズ』の中で、ナショナリズムで解決できない、グローバリズムでないと解決できないものが3つあると言っていて、1つは核戦争、これは誰でも非常にイージーに分かります。もう一つは、地球温暖化等の環境破壊。3番目は技術的破壊という言葉がありました。いろいろな技術進歩があり、ELSIの問題も議論されていますけど、どこかの国が、例えば、ものすごく頭のいい人ばかりを遺伝子操作で創るというようなことが本当に許されるのかどうか。そういう技術進歩が抱える、グローバルな課題について、以前申し上げたBeautiful harmonyの議論も必要だと思います。
 日本は、五神委員がおっしゃっていたように、デカップリングが言われていますが、日本が今後対応していくのは、そういう状況をカップリングの方に持っていくということだと思います。中国をエクスクルードして、アメリカ用のサプライチェーン、中国用のサプライチェーンを別々に作るとなると、確実に生産性が落ちるし、人類のためにならないと思います。そういうところも書きにくいところはあると思いますが、今回のやつはかなり書いてもらっているんではないかと思います。
 それと、五神委員が知識集約型とおっしゃったように、日本は今からイノベーションを起こしていくわけですが、非常に資源のない国なので、データが資源になります。そこのところをどう活用して、知恵を出していくか。それが知識社会だと思うんですが、そのための重要な資源はデータであります。ただ、データのところは常にプライバシーの問題として議論されます。決済データだけがデータではなく、災害に関係するデータのようなパブリックなデータもありますし、ヘルスケアのデータなんかもあって、データにはいろいろなものがありますから、今や古い言葉になっちゃったかもしれませんが、DFFTみたいな、そういうデータに関するルールを日本が発信して、引っ張っていくと。分断された国際社会を日本がまとめていくと。そういうポジションを狙っていくのが、日本の在り方だと思うんです。それとの連関で科学技術ポリシーがある、イノベーションポリシーがあると思っています。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 では、知野委員、お願いします。

【知野委員】
 最後の54ページのところで、(3)社会実装に向けた仕組みの整備、とあって、ソフト・ローとか法制度整備とかいろいろ挙げられていますけれども、これは、やはり研究者とか、大学なり産業界なりのお話に終始しているように感じられます。せっかく第6章で科学技術と社会の関係の在り方を設けられて、社会との信頼の構築に向けて戦略的に取り組むというのもありますので、やはり社会の支持とか、それに対して国民がお金を負担するかという、そういうことなくしては実装は進まないと思いますので、その辺の表現が入った方がいいと思います。
 それと、あと、細かいことで恐縮なんですけれども、4ページのところで、例えば、上から2行目のところですね。「ディープラーニングの登場以降、わずか数年でAIの実用化が進み」とありますけれども、確かにディープラーニングがブームになってからわずか数年なんですけれども、研究自体はかなり昔からやっていると聞いていますから、「ディープラーニングによって」などの表現にした方がいいと思います。
 それと、更に細かくなりますが、、ディープラーニングという言葉をここで選ばれていますけども、51ページになると深層学習というふうになりますので、用語を統一された方がいいと思います。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 それでは、菅委員、お願いします。

【菅委員】
 ありがとうございます。吉村さんが本当にすばらしい話をして、かなり皆さんの批判が集中しましたけれども、批判じゃないですかね。選択と集中、こちらの冊子の方でもそうですけれども、挑戦的研究、あるいは創発的研究で非常に重要だと。これ、非常に今回、多分大きなポイントの一つだと思うんですけれども、その中で9ページに、経団連のやつで、選択と集中から戦略と創発に変えようという話になっています。選択と集中といったら、そこの競争領域にがちで入っていって、勝とうというやり方だったわけですけれども、戦略と創発というのは、ちょっとそれとは違うスタンスでやっていきましょうと。ただ、ある程度選択は必要なんですが、このときに難しいのは、境界領域がやはり創発になると思うので、実はそれを選択する側の人がほとんどいないという。お年寄りの先生たちになると、みんな同じ領域の話しかしないので、もう無理強いすることはできないという状態のところで、重要になってくるのが戦略だと思います。
 この戦略が、実は欠けていると思うんですよ。例えば、次のページで戦略というのを書いていますけど、Society_5.0とか書いてあるんですけど、これは戦略じゃなくて、単なるスローガンなんですね。例えば、デジタル社会とサステナブル社会、これは真反対じゃないかという気もしないでもないです。要は、デジタル社会が進めば進むほどエネルギーがどんどん掛かるわけで、実はそれはサステナブルな社会を目指しているかというと、逆方向な感じがします。また、健康とかって考えても、そうすると、どんどん国家の負担は増える。これもまた逆方向に向いていると。
 だから、そういう矛盾を解決するための戦略というのを、これから多分、経団連、それから、文部科学省も経済産業省も含め、やっぱり日本の国家として戦略をきちっと打ち出していかないと、創発研究もできないでしょうし、そういう矛盾というのがどこにあるかというのをしっかり洗い出していただいて、提案をしていただくというのが、恐らく今後必要なことかなと感じた次第です。経団連の方々にも是非そういうところは指摘をしていただけると、大学側としては、そうなんだという、この矛盾のところをうまく突いていただけるといいかなというふうに感じた次第です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。非常に貴重な御意見を頂きました。6、7、8章ぐらいでちょっと検討しなきゃですね。
どうぞ。

【白石委員】
 ごく簡単に。今、先ほどデカップリングの話が出ましたんですが、私自身は恐らくデカップリングするところもあれば、しないところもある。ごく当たり前のことが起こっていて、例えば、量子だとか、半導体だとか、ブレーン・マシン・インターフェースだとか、こういうところは間違いなくデカップリングしていくと思うんですね。
 それで、それとの関係で、できれば少し入れた方がいいのかなと思うのは、一番最後の54ページの情報管理、それから、戦略的な科学技術協力のところなんですけれども、こういうデカップリングというのは、恐らくこれから急速に進むと思います。ですから、それを見ながら情報管理をどうするかだとか、あるいは、どこと技術協力や科学技術協力をやるのか。これを考えておかないと、本当にこれ、お題目になっちゃうんで、ちょっとそこだけ申し上げておきたいと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。これ、本当に重要な課題ですね。文部科学省としても、どういう方針で行くかということを議論していただいて、検討課題としてここへ反映できるかどうかという。少し文言を入れる作業に入っております。
 越智委員。

【越智委員】
 よく読ませていただいたんですけれども、第1章でやはりちょっと触れておいた方がいいと思うのは、知の循環というのは割と言われているんですけど、知の循環と循環を結び付けて大きな知にしていくためのコーディネーターの役割というのも必要で、先ほど山脇文部科学審議官のところに行って、国際URAの会合を広島大学が開催することをご説明しましたが、やはりそういう人を含めた優秀なコーディネーターが私は要るというふうに思いますし、ある程度この中にもインセンティブを書いていた方がいいんじゃないですかね。エルダー兼業も含めた収入に上限が決まって、それ以上もらえないような仕組みでは、やる気も出ないのかなというふうにちょっと思います。
 それと、あと、大きなことなんですけれども、SINETの重要性というのは、かなり五神委員から言われているんですけども、今、海外の学術誌がものすごく高騰していて、アクセスができないような大学の研究者もいると。これは国全体としてやはりどういうふうに取り組んでいくかというのを明確にしないといけないと思います。もう1点言わせていただきますと、地方の視点から見た点がこの中に十分入っていないかなと。川端委員がちょっと述べられたんですけれども、少しだけ入っているのは入っているんですが。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。検討課題、宿題でございます。情報というか、学術誌の高騰の問題、相当大きな問題で、学術会議でもかなり議論されているようです。国としてどうしていくかというところをもう少し議論する方向へ入っていかないといけないと思うんですけど、なかなか、韓国なんか失敗していると……。
 どうぞ。

【菱山科学技術・学術政策局長】
 学術誌の在り方に、今の越智委員の御指摘のところは、今、別の文部科学省の中の委員会で検討をしているところでございますので、そういう解決策をどうするのか。かなり今、過渡期でもあるということなので、どうしたらいいのかというのは検討しているというところでございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。よろしくお願いします。
 それでは。

【五神委員】
 さっきの都市と地方の共生の話も、それから、白石委員が指摘されたデカップリングに対して備えるという話も、共通する部分があるのだと思います。デカップリングの方で言えば、デカップリングに向かわないように日本は努力しますということを言いつつも、実際にはそれに備えるという形に多分ならざるを得ないし、なるべきだと思います。それと同じように、都市と地方の共生は、共生できるようにするというのは国として意思をもってその方向に進んでいくべき話であって、自然に共生ができる方向に向かうということではおそらくありません。先ほどのデジタルとサステナの話も、Society 5.0はデジタル技術を活用してサステナブルでインクルーシブな社会を創りましょうと言っているので、そこは一歩踏み込んでいるわけですね。菅委員が戦略がないとおっしゃったけれど、アイデアはお持ちのはずだから、出してもらって、具体例を一つ二つ書くという方向が基本計画としては望ましいのではないでしょうか。そうすると、産官学民の議論がまとまってきて、協調できるのではないかと思います。
 白石委員のおっしゃるところは、リアルとしては重要ですが、記述や扱いは工夫が必要だと感じます。

【濵口主査】
 多分、短期的なセッティングと中長期的にどう見ていくかというのは、少し分けて考えていかないと。

【白石委員】
 ちょっといいですか。国の意思としてというのは、おっしゃるとおりなんですけれども、私の印象というか理解は、これ、恐らく急速に進むんで、5年の時間の幅で考えていると、全然間に合わないだろうということですね。ですから、もちろん国の意思でそちらの方にというのは、理想論として、私はリアリストですけれども、それは別にそれで構わないんですが、同時に、日本の力の及ばないところでどんどん進んでいくわけです。そこにどう対応するかという視点を入れとかないと、本当に絵に描いた餅になっちゃうということです。

【濵口主査】
 厳しくなります。
 大島委員。

【大島委員】
 ありがとうございます。ちょっと違う観点で、今回、科学技術と社会のことを取り上げていただいたということは非常に大きいかと思います。
 ちょっとその点と、あと、それに関連した育成の話なんですけれども、例えば、第4章でイノベーションの担い手の育成ということを取り上げていただいているんですけれども、ちょっと現行の段階でいうと、やはり教育は、今やっている教育の担い手というイメージしかないんですね。でも、現在、教育もやはり社会全体で教育していくという観点が非常に大事だと思っています。
 なので、ここでSTEAM教育とかも取り上げていただいているんですけれども、例えば、学内の資源、これはいわゆる従来どおりの教育の担い手である、初等中等教育であると、小学校、中学校、高校及び教育委員会、そして、高等教育だと大学、大学院ということですけれども、ここは課題解決のことも含めて、産業界であったりとか、特にSDGs絡みであると、地域とかもありますので、やはり社会全体で教育していくという観点で、ちょっと社会の変化に即応できる文理区分を超えた教育の推進では、少しそういう観点も入れていただいた方が、より現実的な、こういう教育の推進もできるんじゃないかなというふうなことは思いました。それが1点目ですね。
 あと、科学技術コミュニケーション、これもちょっと似たような議論なんですけれども、やはり今も従来どおりに科学博物館だけでのコミュニケーションではなくて、ここには産業界も加わって、CSRか、今、CSVという、Creating Shared Valueという観点も入っていますので、そこは科学技術コミュニケーションとして、産業界の方々も実際に加わってやっているケースもありますので、それを更に推進していただくということで、今日の効果的な科学コミュニケーションを模索するということは、従来どおりのコミュニケーションを担っている方々ではなくて、そういう人たちがどうやって連携して進めていくかということは、同じようなことでも大事な観点なので、それを是非含めていただければというふうに思います。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございました。
 大橋委員。

【大橋委員】
 お時間ないので一言ですけど、今回、人文・社会系について、法的にも一定の位置付けを頂いたということで、その分野に属している人間として、ちょっと一言思うことだけ申し述べます。非常に重要な論点だと思うんですけど、今回、こういうふうな計画に位置付けるに当たって、自然科学と同列に入れることはなかなか難しい分野だと思っていて、私も幾つかプロジェクトに絡みましたけれども、大体最初は人文系は重要だといって誘われるんですけど、出口になるといつの間にかいなくなっているというのが大体のケースじゃないかと思っていて、つまり、自然科学の人が使えるところでしか判断されないのかなと。
 そもそも役割としては、どっちかというと、個別の分野というよりも、社会システムとか、先ほど冨山委員からアーキテクチャーというお話もありましたけど、そういうふうなところで活躍の場が多分一定程度あるのかなと。
 後ほど戦略の方針とかいろいろありますけど、こういうことは個別の分野に入れることも重要ですが、一定の横串を刺すお座敷も何かあって、一定の位置付けをしっかり与えないと、こうした中にしっかり5年後生き残っているかなというのは若干心配なので、そこのあたり、見ていただければなと思いました。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
済みません。司会の不手際で、もう時間が来てしまいました。大分たくさんの方に発言の機会を提供できなくて申し訳ないですけど、これ、次回に持ち越して、もう一段踏み込んで議論させていただいて、最終取りまとめを作るという形にさせていただけないかと思うんです。
 今日どうしてもこれ、御意見いただきたい方は、まず、メールで申し訳ないですけど、事務局の方へ御意見を出していただいて、次回、まずそれを最優先で議論させていただくというようなことにさせていただきたいと思いますので、済みませんが、御了解いただけますでしょうか。竹山委員よろしいですか。
 ということで、今日はとりあえず次回への宿題をいろいろ頂いたところで、事務局にお返ししたいと思います。

【菱山科学技術・学術政策局長】
 済みません、今日、経団連の吉村本部長、それから、NEDOの三島センター長と西村次長に貴重な情報を頂きまして、ありがとうございました。本当に感謝いたします。
 趣旨は、いろいろ御議論はありましたけれども、我々とは違う文脈で御議論して、検討されたいろいろな情報を、私どもの方の検討の中に入れさせていただきたいということでございまして、今日は短い時間でございましたけれども、本当にありがとうございました。これからもこういうディスカッションを、是非御議論をさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

【濵口主査】
 私からもくれぐれもお願いいたします。
 それでは。

【大洞文部科学戦略官】
 次回、3月4日に取りまとめさせていただきたいと思います。先ほど主査からありましたように、御意見がありましたら、少し早めに事務局の方へ頂ければ、それを織り込んだ形で皆さんに一回お見せして、それで最終的な議論で固めたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

【濵口主査】
 次回は3月4日水曜日10時から開催予定ですので、よろしくお願いします。よろしいでしょうか。
 それでは、本日の総合政策特別委員会を終了させていただきます。長時間ありがとうございました。

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科学技術・学術政策局 企画評価課

(科学技術・学術政策局 企画評価課)