総合政策特別委員会(第32回) 議事録

1.日時

令和元年12月18日(水曜日)9時30分~12時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 関係機関からのヒアリング
  2. 研究開発の戦略的な推進について
  3. 科学技術と社会との関係性について
  4. その他

4.出席者

委員

濵口主査、橋本主査代理、越智委員、川端委員、菊池委員、郡委員、五神委員、新保委員、菅委員、角南委員、知野委員、塚本委員、十倉委員、冨山委員

文部科学省

田口サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、増子研究振興局審議官、林研究開発局開発企画課長、菱山科学技術・学術政策局長、梶原科学技術・学術政策局審議官、角田科学技術・学術政策局総括官、横井科学技術・学術政策局企画評価課長、奥野科学技術・学術政策局人材政策課長、大洞文部科学戦略官、中澤企画評価課企画官、鈴木新興・融合領域研究開発調査戦略室室長補佐、磯谷NISTEP所長、赤池NISTEP上席フェロー、伊神NISTEP科学技術・学術基盤調査研究室長、須藤COCN専務理事・実行委員長、岩瀬JSTCRDS上席フェロー、湯本経済産業省産業技術環境局総務課長

5.議事録

科学技術・学術審議会 総合政策特別委員会(第32回)


令和元年12月18日

【濵口主査】
 お時間になりましたので開始させていただきたいと思います。
 科学技術・学術審議会総合政策特別委員会、第32回でございます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席を賜り、誠にありがとうございます。
 それでは、会議開催に当たりまして、事務局から資料の確認をお願いします。

【中澤企画評価課企画官】
 おはようございます。
 議事次第、1枚紙がございます。こちらの裏側に資料一覧がございます。資料が今回も多いんですけれども、基本的にはタブレットの中に全て入ってございますが、机上配付している資料が、資料3、A4の3枚紙でございます。資料6はA4の1枚紙でございまして、最後は参考資料3、この3つでございます。欠落等、不備ございましたら、事務局までお知らせください。それから、もう1つ、こちらCRDSの『Beyond Disciplines』という冊子も机上に配付させていただいてございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 本日は、議題(1)として、関係機関からのヒアリングとして科学技術・学術政策研究所及び産業競争力懇談会(COCN)より御説明を頂きます。
 また、議題(2)として、研究開発の戦略的な推進について御議論いただきます。そして、議題(3)として、科学技術と社会との関係性について科学技術振興機構研究開発戦略センターから説明していただき、論点案について御議論いただきます。
 いろいろ情報がたくさんございますが、今日は情報の栄養を取っていただくフェーズと思いますので、しばらくしっかりお聞きいただければと思います。
 それでは、科学技術・学術政策研究所、磯谷所長、赤池上席フェロー、伊神室長から、資料1について、御説明をお願いいたします。

【磯谷NISTEP所長】
 御紹介いただきましたNISTEP所長の磯谷です。赤池、伊神とともに、資料1について説明申し上げますが、私から基本的には説明申し上げて、あと質疑対応ということになります。15分ぐらいお時間を頂いております。よろしくお願いします。
 目次を御覧ください。2ページ目でございます。今日の私どものプレゼンのポイントは2つ大きくありまして、1つは5月のこの会議で、科学技術予測調査について御紹介を申し上げたと思います。それにつきまして、第11回の科学技術予測調査でございますが、11月に大体全体を公表いたしましたので、それについての御紹介、御説明をさせていただきたいと思います。それから、2番目、3番目に書いてございますように、そうした予測調査を基に、今後、STI政策関係、サイエンス・テクノロジー・イノベーション政策関係のシンクタンクの横の連携を図りながら、この総合政策特別委員会、あるいは、第6期科学技術基本計画の議論に対して、我々としても貢献をしたいということで御提案を差し上げるというこの2点でございます。
 まず前半の科学技術、予測調査の概要でございます。3ページ、もう1つめくっていただいて4ページになります。全体像について、これも5月に御説明いたしております。もう一度おさらいのために申し上げますと、今回、第11回目の調査になります。この調査は科学技術基本計画をはじめとしてSTI政策立案のための基礎的な情報を提供するということを目的としてございまして、今回の調査のターゲットイヤーは2040年ということでございます。今回の特色の一つとして、AI関連の技術等も使いまして、分析いたしました。社会の未来像及び科学技術の未来像を検討して、それを基に科学技術発展による社会の未来像としての基本シナリオあるいは融合領域としてのクローズアップ領域というのを作成いたしております。この調査検討に当たりましては、科学技術予測調査検討会、分野別分科会を設置いたしまして、この検討会の座長は濵口委員長にお務めいただいてございます。下の方にイメージ図がありますけれども、先ほど申し上げましたように、社会の未来像、ビジョニングをいたしまして、また同時に、いわゆるデルファイ調査による科学技術の未来像、これらをつなぐシナリオというのを作成するといった作業をしてまいりまして、今年の11月に公表したところでございます。
 次のページ、5ページをお開き願いたいと思うんですが、これは全体像、結果概要でございまして、社会未来像ビジョンニングは50の未来像と4つの価値を、世界の未来、あるいは地域の未来、あるいは日本社会の未来をそれぞれワークショップを行いまして、4つの価値ということでHumanity、Curiosity、Sustainability、Inclusionとまとめてございます。右の方を見ていただきますと、702の科学技術トピックにつきまして、約5,000名の専門家へのアンケート調査を行ってデルファイ調査を行い、さらに今年の特色としましては、右の下の方に書いてありますクローズアップ科学技術領域ということで、分野横断・融合のポテンシャルの高い領域も同定し、それらをまとめて左の下の方にある基本シナリオと書いてありますけども、人間性の再興・再考による柔軟な社会を目指す科学技術の発展による社会の未来像をこのようにまとめたということでございます。
 次のページを御覧いただきまして、デルファイ調査の検討方法について、御説明を書いてございます。2040年をターゲットイヤーとしまして、先ほどの702の科学技術トピックを専門家によりまして設定をしていただきまして、5,000人ほどの方の2回のアンケート調査によってこれを行ったということでございます。分野については1から7まで書いてあるところを御参照いただきたいと思います。
 次のページでございますが、これが科学技術トピックと左から2番目の欄に書いてあるところをずっと見ていただきますと、こうした例えば健康・医療・生命科学につきましては老化に伴う運動機能低下の予防・治療法ということで、重要度とか国際競争力とかあるいは科学技術的な実現時期とか社会的実現時期というのを並べております。こうした科学技術トピックが702あるとお考えいただきたいと思います。ここに挙げてございます1-3の資料は、各分野において専門家の方から見て重要度の高いものを2つずつ抽出したものでございます。例として挙げております。下の方を御覧いただくと、例えば環境・資源エネルギーのところなどは、電気自動車のための交換不要な長寿かつ低コストの二次電池。これはこの間、吉野先生がノーベル賞の対象となったリチウムイオン電池の発展形として、さらにこうしたものが実現することは重要度が非常に高いですし、科学技術的実現予想としては2029年ということを書いているわけでございます。
 それから次のページですけども、各分野において国際競争力の高い科学技術トピックについて、2つずつ上げてございます。上の方から再生医療の話ですとか、あるいは農林水産の関係では衛星データを活用したリアルタイムの予測についても掲げられております。これはあくまで、専門家5,000人ぐらいの方たちの見立てでございますので、それぞれの分野の方たちがそれぞれのトピックスについてどのように国際競争力があるのかないのか、先ほどの重要度があるのかないのかという御判断を頂いているというデータでございます。
 それで、次のクローズアップ領域でございますけども、今回、新しい試みとしまして、こうした702のトピックスについて、AI関連技術において、32のクラスターを言語の処理によって生成し、さらに専門家のジャッジによって8つのクローズアップ領域を抽出しました。次のページにそれぞれ、まずは融合領域のポテンシャルの高い8つの領域ということで、領域1から8まで、例えば領域2なんかは個別医療を目指した次世代のバイオモニタリングとバイオエンジニアリングとか、領域の5ところはICTを革新する電子・量子デバイスの領域について設定をしていたしておりますし、11ページの方は特定分野に軸足を置く8つの領域ということで、エネルギー関係ですとか宇宙の関係とか交通に関する関係等々が8つ挙げられているところでございます。
 それから2番目のパートに移ります。13ページを御覧いただきますと、11月6日にNISTEPフォーサイトシンポジウムを行いました。これはCSTIの上山先生や濵口主査にもご講演を頂いて、様々な今日、この後、御説明される須藤さんにもパネル討論にも参加していただきまして、これは一ついろいろな試みをいたしました。プログラムのローマ数字2のところを御覧いただきますと、太字で書いてあるように、STI政策関係シンクタンクの専門家連携によるワークショップ報告をいたしました。これは次のところを御覧いただきますと、私どもNISTEPとJST-CRDSとNEDO-TSC、それぞれが科学技術あるいは社会ニーズに基づいた将来予測的なことをやっております。それをそれぞれ持ち寄って、それらに関するキーワードをクラスター分析といいますか、AIで分析をしたりして、実はワークショップで4つの仮の領域を抽出しました。今後の社会課題を考えたときに、それを解決するための関連する4つの仮の領域を設定したわけでございます。参加者とかオブザーバーとして、内閣府や文部科学省あるいはJSPS、GRIPS等々の方たちにも参加をしていただいております。
 もちろんあくまで仮の姿でありますけれども、次のスライド、15ページでありますが、社会課題の仮置きということで我が国の存在感ですとか、持続的な経済システム、国民の安全・安心、知的探求といったことに関してひも付けをしまして、3つのシンクタンクが持ち寄って領域1から4までを仮に置いているということでございます。それに関連する必要となる制度的対応についても、そこに少し記入、記載をしておりますけれども、AI社会原則の社会共通認識ですとか、データトラスト保全、AIの寡占防止といったことも必要になってくるということも議論をいたしております。さらにその下に、関連する科学技術としてのコアとなる重要テーマを事例として挙げさせていただいていると、そんな状況でございました。
 それらのシンクタンクが持ち寄った具体的なテーマと記述については16ページに書いてございますが、これは4の日本のものづくりをリードする、先進計測とシミュレーション領域に関してのそれぞれのシンクタンクが持ち寄ったキーワード、テーマでございます。そこまでが我々がやっておるんですが、次の。
 もう1つございました。17ページでございます。領域ごとに科学技術が関連する用語をワークショップで専門家が抽出をしまして、例えば先ほどの領域4で見ていただきますと、最近のオペランド計測ですとかマテリアル・インフォマティクスということが科学技術関連用語として並んでいるわけでございます。こうしたことが今後必要になってくるんじゃないかという仮置きの用語でございます。
 そこまでがワークショップのプロセスでございますけども、3番目に次の今後に向けての御説明でございます。社会課題に結び付いた研究開発領域を抽出するべきではないかということで、トライアルをしております。19ページを御覧いただきますと、先ほど申し上げたように、STIのシンクタンク連携を活用しながら、科学技術予測調査における702の科学技術トピック、それから先ほど御紹介した専門家連携による科学技術関連用語などを見た上で、これに関して、我々がやっていますサイエンスマップ、これは論文の俯瞰になります。日本がどの分野でどの程度の論文を産出している、あるいは世界の動向はどうなっているかということを我々はデータとして持っております。それから、科研費の公開されたデータベースによって、最近の科研費の研究の動向なども俯瞰できるというシステム我々は持っております。これらを接続しまして、更にそうしたエビデンスを基にした新しい領域名を検討する、あるいはその領域を構成するコアになる科学技術あるいはきざしの科学技術を同定していく作業を、我々としては行っていきたいと思ってございます。
 そのイメージですけども、20ページを御覧いただきますと、我々としては先ほど来、御紹介したような将来の達成すべき科学技術トピックですとか、重要な科学技術関連用語というのは持っているわけでありまして、それに関連しまして現在とか過去を結び付けていくという作業をしながら、新しい領域を提案していきたいと思っております。それをイメージとしまして、21ページですがこれはちょっとビジーな資料なので、詳細の御説明は省略いたしますけれども、例えば領域4は、日本のものづくりをリードする先進計測とシミュレーション領域につきまして、それぞれ科研費の俯瞰とサイエンスマップの論文俯瞰をすることによって、日本がどの程度、今、何ができているのか、あるいは今後の状況としてどんな兆しがあるのかというのをつかまえた上で、下の方にちょっとまとめさせていただいておりますけれども、専門家の目で見て、今後、新しい領域としては、例えば次世代製造技術のための先端計測等々の融合領域という領域が必要ではないかと。それを支えるコア科学技術として、オペランド計測ですとか、量子デバイスといったようなこと。そしてきざしの科学技術としましては、格子暗号とかいったようなことが見られるのではないかということ。これを更に海外動向の比較、右の下の方でございますけども、そうしたことをしながら本格的な分析を行っていきたいと。それをする際には、JSTのCRDSとかNEDOのTSCとも連携しながら行っていきたいという提案でございます。
 まとめが22ページでございますけども、先ほど御紹介いたしましたように、科学技術予測調査の一環としまして、科学技術トピックをグループ化し、ポテンシャルの高い領域を提案させていただいています。それから、シンクタンク連携によりまして、まだ仮の姿ですけども、以下の4つの仮の領域を抽出いたしました。さらに今後といたしまして、NISTEPがこれまで持っているいろいろなデータあるいは成果を俯瞰しまして、社会課題に結び付けた研究開発領域と、それを構成する科学技術要素の抽出を試行していきたいということでございます。
 説明は以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの説明に関して、御質問、御意見があります方は、挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。御自由に発言いただければと思います。
 詳細なお話を頂いて、ちょっとすぐ処理するには時間が要るかもしれませんけれども。
 大事なことは、20ページにありますように、過去現在未来というふうに分析を進めて、今後の予測をしっかり客観的にしていく作業を進めるというシステムを今、作っていただいているということですね。
 よろしいでしょうか。御意見ないですか。
 菅委員、いいですか。

【菅委員】
 一言だけ。
 この予測の中ではブレークスルーがどこかで起きたときには予測できなくなってしまう部分があると思うんです。例えばゲノム編集とかは5年前にそれができているかというと、そんなことができているとは余り思っていなかった。ちょうどその辺からマージしてきた技術なので、例えばそういうものが出てきたときにどう対処するかということも多少考えに入れておかないと、いつもなんか外れてしまう場合も結構あると思いますので、よろしくお願いします。

【磯谷NISTEP所長】
 よろしいでしょうか。

【濵口主査】
 お願いします。

【磯谷NISTEP所長】
 ありがとうございます。
 御指摘のとおりで、余りこういうのをがちがちにして5年間これで全部やりますよと言ったら全くそれはブレークスルーがないので、我々としてはこれはアジャイルな仕組みというか、常に兆しを見ながらそういったものにフレキシブルに対応していきたいと。ちなみに過去の科学技術予測調査は、数年前にやったんですけれども、平均して7割ぐらいは実現をしているというデータも出ております。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 ほかよろしいでしょうか。はい、どうぞ。

【大洞文部科学戦略官】
 事務局から今の点、補足させていただきます。
 NISTEPは20ページのようなツールをお持ちなのですが、前回、委員会で発表いただいたように、CRDSは専門家のインタビューを広く進めて、最先端の専門家の方々の知識をとにかく捉えるという作業をしております。それがちょうど現在と未来の間ぐらいのところの調査として入るのかなと考えています。また、前回のJSTのプログラム戦略室の取組として、論文動向の説明をさせていただきましたが、あちらはホットペーパーなど、最新の今、引用が急に上がったようなところを捉えて、そこを見ていくということで、それはまた現在のところで、また非常に新しい現在だというふうに考えております。シンクタンク連携について先ほどNISTEPからの説明を頂きましたけれども、JSTのシンクタンクのデータとあとはNEDOなどのいろんな調査も踏まえて、政府として一つの知見をしっかり6期計画に向けて活用できればと考えております。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 今期の大きな特徴は、今まで各専門家のグループが調査を未来に関してやっていたことをもう少し統合的に見てみようという試みを少しこれから始めたいと。そのために、前回から幾つかお話を聞いていただいているというところなんですが、階層性もすごく違いますので、総合的に理解することは大変努力の要る作業になってくると思います。
 いかがですか。もう少し。どうぞ。

【橋本委員】
 詳細な調査の報告ありがとうございます。余り量が多いので、まだちょっと十分消化し切れてはいないんですが、例えば7ページと8ページにそれぞれの個別の要素について、例えば科学技術的実現時期と、それから社会実装時期という形で書いてあるんですが、もともとこの調査は2040年を目標にとお聞きしていたんですが、これ見ると大体10年後には科学技術的にどれも実現できて、その数年後に多分できるだろうみたいなふうに読めてしまうんですね。そうすると40年後はこれが全てもう社会実装されて実際に動いていると見ていいのか、何か余りに全てがどれでも実現できますと見えてしまうんですね。

【濵口主査】
 どうぞ。お願いします。

【磯谷NISTEP所長】
 私どもと2040年をターゲットとしていまして、2050年までを一応、調査期間とはしております。ただ、これは重要度が高いというところを並べたものでございまして、重要度が高いと専門家も含めてアンケートで認識するものは、比較的近いものが出てきてしまう傾向があります。ですので、遠いものについても別の観点で、専門家の先生のアンケートの重要度ではなかなか出にくいものも含めて、長目の分析を時系列に並べていきたいと思っております。ここで重要度の高い上2つを取っているので、2030年だとか2025年度だとかそのぐらいのものがここの表の中では上がってきているという傾向がございます。
 あともう1点、すみません。先ほど菅委員へのお答えについてちょっと補足させていただきますと、私どもも10年に1回ぐらい私どもの予測調査がどのぐらい当たっているかを検証するんですけども、今回、ゲノム編集について検証していましたら、ゲノム編集についても、ゲノム編集という名前ではなくて、同じような概念の技術は何年か前に出てきているんです。問題はやっぱりそこで見付けられているかどうかということだと思っておりまして、今回の少しトライアルの中では、そのメインストリームのものだけではなくて、兆しというものが角度が低くても、目利きとして見付けられるかどうかということにもトライしていきたいと思っております。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 菅委員よろしいですか。

【菅委員】
 確かにゲノム編集もそうなんですけれども、あのすごいのはやっぱり、ちょっと専門的なですが、Zinc Fingerというのがあって、その後、TALENというのがあって、その後、Cas9が出てくるんですけど、その時期がZinc Fingerだと随分昔からなんです。私が学生のときからやられている仕事なんですよ。MITのカール・ペイボ先生とかやっていたんですけれども、その頃には何かすごい遠い話だったんですね、それが種が出てきて、あっという間に、Cas9が出てきて、もうがらっと世界は変わってしまった。このスピード感がものすごく速くて、それで今、バイオロジーの研究は随分と変わってしまったというところがあるので、そういうところをどうするかというところですね。だから結局、ちょっと厳しいことを言うと、日本がiPSだと金とつぎ込んでいるときのアメリカはそっちに行っていたっていうことなんですよ。だからそこにも全く気付かず日本はiPSをやっていて、向こうがぼんとこういうのが出てきたら、お金がぱっとそっちに集まっていて、あっという間に取られてしまったというか、もともと発見は日本だったという話もありますから。

【濵口主査】
 そうですね。

【菅委員】
 はい。そういうところがやっぱり少しばかり心配なんですね。私は常にそういうブレークスルーが出てきたときに非常に心配ですね。アメリカはそういう下地を例えばNIHとかそういうところがアカデミックエクセレンスを中心に動かしているんですよ。日本は何かアカデミックエクセレンスが若干薄くなってきている状況にあって、非常に危惧します。AMEDにしても、いろんなところのファンディングエージェンシーにしても、アカデミックエクセレンスの追求よりも。それもすごく、それだけじゃだめなんですけれども両輪ができてないというのがちょっと心配なところでもあります。

【濵口主査】
 大変そこについて、JSTとしても責任を感じているところです。抗体医薬品なんかもそうだったんですね。90年代にどっと出てきたんですけれども、対応し切れなかったです。
 五神委員。

【五神委員】
 研究動向の予測は非常に重要です。おそらく、菅委員は穏当な方で、アカデミックエクセレンスの追求に関して、日本が遅れをとっているのではないかいうことを指摘されたのだと思います。最先端で何が起こっているかというリアルタイムの情報を、日本の研究者が取りにくくなってきているか、もしかすると取れてないかもしれないということを、ここ二、三年、様々な場面で私も痛感することがあります。総長としての業務に携わっていると、世界各国の方から様々な情報が入ってきます。その情報を日本のその分野の専門家に聞いてみたら、全然把握できていないということが多いのです。海外にいる友人に聞いてみると、その情報はそのとおりであるということがすぐに確認できます。日本の研究者がとれている情報と世界の最先端とのギャップが残念ながら広がったのだと思います。海外のトップ機関に所属するポスドククラスの日本人研究者も減ったという話を聞くことも多く、私の周りでも海外の重要な研究拠点に配置されている知り合いの研究者が、10年ほど前と比べて、減ってきているという実感はあります。ですから、日本の専門家に聞くだけでは、最近の情報がとれないというリスクが高まっていると思います。それぞれリーダーではあっても、全体の中の一部分のテーマについてのリーダーとしての視点になっていて、全体を俯瞰して見る力が、残念ながら衰えているのだと思います。論文の被引用回数が多いことだけが重要ということではありませんが、世界の中で存在感のある研究者が東京大学でも着実に減ってきているという状況のなかで、トップレベルの研究拠点に入り込んでいるボリュームも減っているので、その数を徹底的に増やしていかなければなりません。また、常識的な意見から外れたものを正しく客観的に評価するためには、グローバルな評価を意識しつつおこなうことが極めて重要であると思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 貴重な意見だと思います。
 はい。お願いします。冨山委員。

【冨山委員】
 ややちょっと近い話になっちゃうんですけれども、これ多分、今、五神委員が言われた、菅委員も言われた話って結構、産業的にも似たようなことがあって、もう遺伝子編集なんてもう産業化されている領域なので、まさにだからアカデミックエクセレンスの世界で、何らかのAIの話の典型ですが、一番最先端の転換が起きますと。パラダイム転換が起きると、すぐその後、産業的な展開も始まっちゃうんですね。そのときに何が大変かというと、その手の転換は基本的な産業のアーキテクチャーそのものを変えちゃうので、日本の携帯電話はその典型なんですが、そこで全滅するんですよ。ゲームが変わっちゃうんで。そうすると例えば携帯電話のケースだと、それまではいわゆる通信会社が中心で、通信会社向けに一生懸命みんな携帯電話を開発していましたと。だから自動車でいうと自動車会社、OEMと部品と同じ関係なんですよね。そこに要するにiOSが出てきましたと。iPhoneが出てきたときに、日本が何に気づかなかったかというと、iPhoneというのはキャリアフリーなんですよ。キャリアっていうものを、通信携帯キャリアを超えてiOSという横串でもう標準OSを提示して、その下にキャリアがぶら下がるという構図に彼らは変えちゃうわけですね。そこへ要はiOSの、ある種これは技術の問題なんですけども、そういう発想をして出てきたときに、日本の携帯電話会社全滅するんですね。そういうことがたびたび起きていて、多分、恐らくそういった話の一番根源にあるのは、今、五神委員から言われたような多分、テクノロジーのやっぱり当然その根っこにイノベーションが起きていて、その結果として産業が次にまたすごい勢いでやっぱり同じような転換が起きちゃうんですよ。そうすると恐らく産業論的にもアカデミックエクセレンスな転換情報というのが、例えば企業経営者の本当に最先端の者。トップですよね。トップがちゃんと感性をもってそれをつかんで、もうそのかなり瞬時のピボットができないと、気が付いたときにはもうtoo late、全滅っていうその繰り返しなので、私は今の議論というのはものすごくこれはだから科学技術を超えた、多分非常に本質的な議論なような気がしたのが1つ。
 それからその脈絡でもう1つ申し上げると、例えばここに次世代蓄電池の話が出ていますと。で、低コストの二次電池というのはそのとおりなので、非常に極めて特にエネルギー政策上、大事なんですが、例えばなんですが、今、この前、だからリチウムイオン電池でノーベル賞を取りましたと。なんだけどこの瞬間、セル造ってもうけている会社は1つもありません。要するに、この技術領域で、例えばセルを造るというビジネスモデルというのはもうあっという間にコモディタイゼーションしちゃうんですよ。要は巨大でマスなので、すぐコモディティーになります。今、多分、かろうじて収益上げているのは極めて、要するに代替可能性のない材料を造っている会社と。あと、あるとすれば最終的にはバッテリーマネジメントシステムというモジュールを造るのであれば、利益が出る可能性があるんだけども、要はもうセルなんてのはもう誰がやったって、中国勢も国の補助を外せば多分赤字です、みんな。
 そうなっちゃうと、要はこういう議論の中にまさにそういう、ややそう要素ですよね。そういう要素をある程度。そうすると今度は、要は二次電池の開発はいいんだけれども、その二次電池が本当にマスに。だから世界、人類に貢献するという意味でいうと、これは是非やった方がいいんですれども、要はこれは税金を投入するわけで、では税金がどう日本のGDPあるいは日本の国民所得に還元されるかということまで考えると、当然そこまでの視野を僕は思っていた方がいいと思うんですね。これもずっと繰り返して失敗してきているパターンなので、これだけの大変なリサーチとファクトがあるわけですから、今、菅委員、五神委員が言われたピボットの問題と、それからこれもある種のピボットなんですよ。産業論的にピボットが起きちゃうんで、セルを造るということ自体が儲からなくなるということなんですけれども、そういった視点も私は入れてもらえると、この後すごくこれだけの材料と有意な何か立体化するような気がちょっとしております。

【濵口主査】
 磯谷さん、どうぞお願いします。

【磯谷NISTEP所長】
 五神委員と冨山委員、まさにそのとおりでありまして、我々これで全てをやろうと全く思っておりません。要するに、2つ私が申し上げたかったのは、1つは五神委員がおっしゃったとおりなんですが、一応、今、日本のここにいる、日本で活躍されている方たちの見立てとしてこういう結果が出ていますということが1つと、それから、もう1つはちょっと言い方に語弊があるかもしれませんけど、思い付きの政策というのをやっぱり避ける必要があって、ファクトとしてはどうなっているのか、データとしてはどうなっているのかと。もちろん隠れているものがありますし、兆しを見付けなきゃいけない。事業化するときは、さっきおっしゃったように、ピボットが必要だというのはよく分かります。だけれども、今とにかく見えているもの、あるいは見えかけているものというのは何があるのかっていうのを一応、洗いざらしこういうふうに提出し、そうしたことによって今のような御意見がちゃんと出てくるわけなんです。そこから我々としても是非。我々はパートだと思っていまして、全て我々がやるわけじゃないんです。政策に有用なデータを提供したいですし、今、御指摘のようなことはまさしく関係する機関とも連携しながら取り組んでいきたいと思っております。
 済みません。ありがとうございました。

【濵口主査】
 ありがとうございます。先ほど、企業の方の話が出ていましたので、ここでCOCNのお話に移って、もう1回後で議論を戻したいと思います。よろしいでしょうか。
 須藤さん、お願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【須藤COCN専務理事・実行委員長】
 よろしいでしょうか。
 COCNの産業競争力懇談会で実行委員長をやっております東芝の須藤でございます。
 COCN、なじみのない方ももしかしたらいらっしゃるかもしれないんですけれども、大手の企業、約40社、少しアカデミアの知見を参考にしようということで東京大学、京都大学、東京工業大学、早稲田大学、それから理科学研究所と産業技術総合研究所がメンバーになって、主に科学技術関係のいろんなプロジェクトを起こしながら、時には政策提言をするというような活動をしております。
 今日の資料、資料2-1はCOCNが第6期の科学技術基本計画に向けて提言を、実は2月に一度出しました。これについては、もう先ほどNISTEPから紹介がありましたけれども、フォーサイトのシンポジウム等で、私が話していますので、同じことをここでしゃべってもしようがないのかなと思いまして、その後、いろいろ内閣府、文部科学省、経済産業省等の動きをウオッチしまして、もう少し第1回目の提言をリバイスというか、少し書き直して提言しようじゃないかということで議論を進めてきまして、今、第2提言とすごい書き方をしてありますけども、もう1回、提言を出し直そうかということを議論しているところでございます。その内容について、今日、御説明したいと思います。
 私も普段この科学技術・学術審議会の委員で議論しているんですけども、今日は業界の実行委員長としてしゃべるということですので、多少、産業界寄りの内容で、もしかしたらアカデミアの方からは、えっと思うようなこともあると思いますけれども、今の産業界はこういう危機感を持って動いているということで御容赦願いたいと思います。
 ページをめくっていただきまして、2ページ目が本論点提示の位置付けと書いてありまして、先ほど申し上げましたように、2月に1回出しましたので、この内容を踏まえて、もう1回今新しく追加をしようということでございます。
 3ページ目は、2月に出した提言の一部を紹介してあります。全体のこういった課題認識をもって提言したと。これは前回出したものです。
 4ページ目が、第1回目の提言を1枚でまとめたものでございます。ごく簡単に説明しますと、真ん中の上の方に我が国の根源的な社会課題ということで、一応、少子高齢化の問題、それから社会のサステナビリティと、こういった2つが大きな根元的な問題だろうという認識に立ちまして、第6期では何をやるべきかということを議論しまして、縦で7つあります。エネルギーとか、健康、それからものづくり、食、地域、モビリティー、インフラのレジリエンスの強化といったこところを重点的に第6期ではやるべきではないかと。それと横串を刺すような青で書いてありますけれども、データ駆動型社会の構築に必要な環境基盤等の、いわゆるIoT、 AI関係の基盤技術、あるいは材料関係の基盤技術も大事だろうということで提言しております。
周りに書いてありますのは、それを行うためにどういった仕組みを構築すべきかということで、左の方から人材育成とか制度、投資、知。知財関係とか知の活用、それから社会の受容といったところが重要ではないかということを提言の中では書いてあります。
 これが最初に出した提言ですけども、その後、議論を進めまして、時間の関係もありますので、5ページにまとめて第2提言の骨子を書いてあります。もう御承知のように、第5期の基本計画をじっくり読みますと、非常にいいことが書いてあるといいますか、ほとんど抜けがないと、これをきちんとやればSociety 5.0が実現できるのではないかということは、もう大部分の方が御承知だと思います。ただ、それがなかなか実行できていないというところが少し問題なのかなと思いまして、第6期に向けて強調すべき点というのを書いてみました。
 まず、1)が世界規模の地経学的な環境変化に機敏に対応したような戦略ということで、地経学という変な単語を使っていますけれども、地政学的と経済学を混ぜたようなものであれですけれども、要は米中の問題あるいは中東、イギリスの問題、それから最近、日韓の問題といろいろ世の中の環境が第5期を作ったときよりも、かなり変わってきている。こういったことを相当意識して産業界としてはかなり危機感を持って対応しなきゃいけないのではないかと考えております。
 まず世界と闘うためのエマージングテクノロジーというのは何かということを、もう1回日本として検討すべきではないか。この後、議論する骨子案の中にも多少入っていますけども、こういったエマージングテクノロジー、日本が投資すべきエマージングテクノロジーは何かというところをもっときちっと決めて、ある程度、集中投資をしなきゃいけないんじゃないかということが第1番目の問題、提言です。
 それから余り議論に出したくないような気もするんですが、デュアルユースの問題。これもアカデミアではいろいろな課題を抱えているというのは私もよく分かっているんですけれども、やはり産業界としては、デュアルユースを避けて通っていくと、これは事業、研究開発、技術開発が成立しませんので、そこのところをしっかりとデュアルユースになっても、必要なものはきちんとやる。これが我々、COCNの基本的な意見でございます。
 3番目は欧米、それから中国に対しての先手の標準化戦略ということで標準化は大事だと言われていても、なかなか日本がまだまだ欧米に比べると遅れているという現状がありまして、この辺は産業界も大いに反省しなきゃいけないんですけども、何とか、少しヨーロッパの動き、アメリカ、中国の動き、いろいろな違った動きをしていますので、それに先手を打つような戦略を、もう一度、第6期に向けて構築しなければいけないのではないかと考えております。これが最初の1)です。
 それから、2)DXで産業構造の変革と書いてありますけれども、我々COCNの活動はどちらかというと技術担当の役員をやっている者、あるいはやっていた人たちが集まって議論しているんですけれども、少し経営側、CEOとか会長の見解はどうなんだろうということで、集まってもらって意見交換等をやっておりまして、その中でやはり今の、実際に経営しているCEOについては、いろんな意見が出ました。データの価値というのが、企業経営の中で一番大事だと思っている方がほとんどです。かなり前と変わりまして、やっぱりCPS、サイバーフィジカルシステム。この辺を事業戦略の中心に置くという企業が増えていますので、こういったことを踏まえて、第6期に向けても少しDX関係を重点的にやるべきではないかということを書いてあります。
 それから3番目は、「実証」にとどまらず「実装」やり切るということで、今、例えばSIPのような動きで、基礎から実証までとやっていますけれども、実証試験はできたけれども、なかなか実際の社会に実装できていないと。要は、会社から見ると利益が出るような状態になっていないということで、これは何が問題なのかなということで、COCNでかなりこの辺の議論はしています。
 今の、私も実はSIPをいろいろ見ているんですけれども、SIPのやり方って実証試験までしか考えていなくて、実装と言葉では言っているんですけれども、本当に実装するにはどういうエコシステムを作る必要があるかというのを、本来でしたら研究を始める前の基礎段階からやらなきゃいけないことを基礎から実証までやって、後は企業がやってくださいと。これ以上、お金、出せませんので、あとは産業界、勝手にというような感じなんですけれども、そうじゃなくて、実装するときに何が必要になってくるかというのは、研究開発するところの段階からしっかりとシステムを作らなきゃいけないというふうに考えて、これが一番日本で落ちているんじゃないかなというふうに今、我々は考えていますので、この実装という言葉を是非第6期では前面に出してほしいなと考えております。その下の市民の視点というこの辺はもうよく言われていること。産学官金。金融も連携したような「実装」のためのエコシステムの構築と、この辺はここに書いてあるとおりでございます。
 それから、4)は、オープンイノベーションについて、この辺はもう第5期あるいは今もいろんな議論の中で盛んにされていますけれども、まずは産業界の意見ですけれども、SIP、これは一応オープンイノベーションの一つの形として非常によく動いているということで、このシステムをしっかりと維持する必要があるのではないかいうことは最初に申し上げたいことでございます。それから、大学の改革というのはもちろん今、かなりもう進んできていますので、その辺、しっかりやっている大学に対しては、産業界も 積極的に投資して、企業の資金がうまく回るようにするというところも我々の強調すべき点であります。
 それから第5は人材の話ですけども、世界に冠たる「人材立国」ということで、人材についてはもう第5期でもいろいろ書かれているんですけども、いろいろな意味で人材の育成は大きな課題を持っていると思います。大学については特に文部科学省を中心にいろんな議論がされてきていますので、産業界もほとんど同じ意見です。もう少し、中、小、高。この辺に対してしっかりと教育をすべきじゃないかと。そのためには産業界も積極的に出ていくということが第5番目の柱になっております。
 これだけしゃべれば実はもうほとんど今日しゃべりたいことは終わりですけれども、あと資料があるのでざっと行きたいと思います。
 6ページ目は、世界で最もイノベーションに適した国という、総理の発言を見据えて、こういったこともやるべきだろうと。現実を見据えた危機感と書いてありますけれども、大学も今、危機感を持っていると思いますが、産業界もかなりいろいろな意味で危機感を持っていますので、ここのところをしっかりとこの危機感を伝えていかなきゃいけないかなと考えています。
 7ページ目は、科学技術イノベーション基本法。科学技術基本法を科学技術・イノベーション基本法にと書いてあって、これも今、進んでいることですので飛ばしたいと思います。
 8ページですけれども、GDPの1%をしっかりと確保すべきだということ。これはもう我々も経団連もしつこく言っていることですし、恐らくアカデミアの方からも出ていると思います。
 9ページ目は、さっき申し上げたエマージングテクノロジーの話ですけれども、上の方は戦略に基づいたエマージングテクノロジーに取り組むべきだろうということで、日本がポテンシャルを持つような領域というのをしっかりと特定して、投資対象をある程度集中して行うべきではないか。それから下の方はデュアルユースの話でございます。先ほど申し上げたので、余り繰り返しませんけれども、やはりこういったこともしっかりと考えながら技術開発をやる必要があると、我々は考えております。
 10ページ目が人材の話でございます。これも先ほど申し上げましたように、大学の改革というのはもう既に実行段階に入っていますので、少し小、中、高に目を向けるべきではないか。文部科学省は当然、その辺、目を向けていると思いますけれども、産業界もこちらの方に少し目を向けてもいいのではないかと考えております。特に教育の中のデジタル化については、パソコンを配るとかそういう問題ではなくて、もっと中身自身をどうやってデジタル化をしていけばいいかということも必要かもしれません。
 11ページについては、優先度を上げるべきテーマということで、最初に7つの柱みたいなのを書きましたけれども、その後の最近のいろんな状況を見ると、その中でも、もちろん7つ全部必要なんですけれども、エネルギー。サステイナブルなエネルギー、サーキュラーエコノミー等を含めたものづくり。それからインフラの維持管理と、この辺がここ半年ぐらいでかなり重要になってきたのではないかなと考えております。
 12ページは、Society 5.0の推進ということで、フィジカルの強みも生かしながらデータクリエーションをやっていくというところでございます。
 13ページがオープンイノベーションということで、先ほど申し上げましたように、SIPを更に強化すべき。その中でも特に基礎研究から社会実装までと。社会実装をかなり意識した一気通貫のやり方に変えなければいけないのではないかなと考えております。
 以上まとめると14ページにまとめ書いてありますけれども、これは最初に申し上げました1、2、3、4、5。追加の提言のポイントと同じでございます。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの提言に関して、御意見いただければと思います。
 越智委員、どうぞ。

【越智委員】
 まず、個々の部分に関してですけれども、デュアルユースの問題が出てきました。広島大学の学長としては、軍事関係のグラントに手を出すというのはなかなかできません。ただ、デュアルユースのことで、例えばサイバーセキュリティに関しては、国民の安全の視点からも、国立大学であることからも私は絶対やっていかないといけないと思っております。ただ、お金が防衛装備庁からのグラントとして出てくると、これはちょっと手が出せないんですね。ですから、そういうデュアルユースの研究をするにしても、もっと、例えば科研費のような形であれば積極的に研究ができると思います。防衛装備庁の方からだけになると研究は難しいというところは御理解いただいておいた方がいいんじゃないかと思うんです。それはまず国立大学としては、その点に関してはどこの大学も温度差はあるにしても同じであると思います。
 それともう1点、濵口主査、よろしいですか。先ほどのことに戻りたいんですけれども、五神委員がもう既に指摘はされたんですけれども、やはり医療から見ても世界のトップレベルの研究所とか大学に顔の利く若手が少なくなっています。これも例えば、アンケート調査でこれは本当に詳細なデータだと思うんですけれども、20代が2%、30代が20%ですね。専門家をどういう定義で専門家と決定するのかと。もうエスタブリッシュされた人をもって専門家とするのであれば、その人の頭は少し固い。やはり20代、30代の人が、例えば海外の研究所に行って、最新の情報等を持ち帰ったような人が、世界最先端のレベルを基に、新たな何かを考えていくかということが非常に重要になってきます。しかし、やはりその数は減っているというのが事実です。科学技術のレベルがちょっと下がっているということを考えると、現時点においてはこれが最高の分析かも分かりませんが、10年後、20年後にもっとすばらしい分析に基づいた研究、資金投資ということになれば、地道なことになりますけれども、やはり現在、近未来の博士のPh.Dの数を増やす、留学を増やしていくというところに戻っていくと、私は思っております。

【濵口主査】
 本当に今の御意見に同感なんですけれども、私もまじめな研究者だった頃を思い出すと、論文になる二、三年前にハーバードなんかでこういうことやっていると、これ面白そうだぞ、展開しそうだぞというのが結構あったんですね。そうするとその論文が出てきた頃にはこちらもスタンバイしていて、ある程度、動きが取れたんですけれども、多分そのネットワークが弱っているなとはかなり感じています。JSTも実はアメリカにいる研究者、日本人研究者の組織とネットワーキングを創ったり、ヨーロッパの人とネットワーク、それから女性研究者で、向こうで研究室を持っている人たちとかなりネットワークを今、創り始めております。そういう人たちからの生の情報を取れるようなシステムを創らないと、パブリケーションだけでは見えないものが見えないですね。それをどうやっていくか、そこをもっと強化していく多分、作業が必要だと思いますし、中華人脈やユダヤ人脈はそれを当たり前にやっている世界でもあると思うんです。

【菊池委員】
 よろしいですか。

【濵口主査】
 どうぞ。

【菊池委員】
 今の越智委員の話ともみなさんのご指摘とも関連するんですが、確かに若い有能な人材を海外に出すことも非常に重要な一面だと思うんです。それ以上に重要なのは、外から人が来る仕組みを創り上げないと、留学生をとにかく入れ込む。そして、外国からの有能な研究者を日本の研究機関なり大学なり企業の研究所に迎え入れることが一番重要な抜けているところじゃないのかなと思います。
 実は国の研究所のレビューをしたんですが、ほとんど全ての主要な研究ポストを日本人の研究者で全部埋め尽くしているんです。外から来た先生方は、それにまずびっくりしまして、いや、どうして、2人、3人の、どう見てもこれは外国籍の人だよねと思うような有能な研究者がいくつかの主要なポストに就いていないのかということで、これだと幾ら若手を外に出したり、若手を外から取ってきても、結局、日本の社会は、そういう人を受け入れない。もう、結局は日本の中で閉じてしまう社会を創ってしまうと思います。やっぱり閉じたところからイノベーションは絶対に起きないと思う。そういうところで、今、本当に進めなきゃいけないのは、日本の若手を外に出して、ダイバーシティーを創り上げるのは正しいです。それをまた戻す。でもそれ以上に、外からの若手の人材をいかに日本に入れて、日本のために働いてくれるような人たちをどう創るかの施策がない限り、なかなかこれは進まないんじゃないかなと。

【濵口主査】
 ストレートに言うと、給与格差の問題がすごくあるんです。日本の国立大学の教授の給与でアメリカから人は来ないんです。 よっぽど向こうで食いあぶれた人間を取るかという話になっちゃうんですね。本当はこれをやるとしたら企業の研究所にやっていただくと採れると思うんです。それに大学とクロスアポイントメントをやる形でやるとか、そういうフレキシブルなシステムを創らないと恐らく間に合わないかなと思います。

【菊池委員】
 今、濵口主査からおっしゃられたように、そこの私がレビューしたところも、結局はほぼほぼ、国家公務員的な形でしか報酬が定まらないということでした。

【濵口主査】
 無理です。

【菊池委員】
 まず無理ですという答えが最初に返ってきました。それで、今、似たような案を出したんですが、企業でも本当に生き残りたい企業であれば、それをやらない限り、もう生き残れない時代に入っていますので、日本の研究者だけに閉じた企業研究所であれば、もう自分も含めておしまいだと思いますので。

【濵口主査】
 COCNとしてどう考えますか。

【須藤COCN専務理事・実行委員長】
 企業は既に海外にも大体、研究所を持っていますので、そこでは海外の人を相当な給料で雇っていますので、そういった素地はあると思います。ただ、もっともっと活用しないと、今、言われた問題は解決しませんので、その素地を生かしながら、増やしていかなきゃいけないのではないかと思います。

【濵口主査】
 何かそういう方々がクロスアポイントでも何でもいいですから、少しでも大学側に教育にコミットしていただけると、大分変わってくる気がするんですよね。
 冨山委員。

【冨山委員】
 このCOCNの提言、私も全部大賛成なんですけれども、今まさにそのポイントで、結局、例えば経済同友会の、例えば正副代表幹事会であるとか、恐らく経団連の副会長もそうかな。集まると、そこにいる日本人のおっさんだけなんですよ。日本の大企業で経営会議をやるとおそらく95%は日本人のおっさんですよ。それで起きていることはまさにここに書いてあることで、破壊的な不連続なトランスフォーメーションが起きているわけです。あるとき、さっきのiOSじゃないけれども、とんでもない天才のお兄ちゃんだかお姉ちゃんだかがある発明をしてアーキテクチャーを変えられちゃって全滅するってことを何度も繰り返してきました。それをやってきたのは、要するにアメリカの中でも異物な人たちですよ。それは、今回パナソニックで採用したヨーキー・マツオカみたいな、要は極めてディバースな、異色な、天才な、自分は神様だと思っているような連中がやっているわけです。ところが、さっきから言っているように、ではそれに対してどう対抗策を打つかと議論しているのは、日本人の同じような学歴の同じような年代のおっさんが集まって、どうしよう、こうしようと言っているわけですよ。
 それで、結局、2)の産業構造の変革なんだけれども、これ問題は過去の歴史というのはそういうすごくダイバーシティーというのは、ある集団や国やコミュニティーや産業クラスターに産業構造を根っこから変えられて、日本のメーカーがいる場所がなくなってきたのがエレクトロニクスの産業の歴史で、今、自動車でも同じことが起きようとしています。そうすると、これは私も経済人の一人なので、この論点提示の中に、やっぱりそこは僕は絶対入れた方がいいと思いますよ。我々自身がかなりつらい思い、あるいはそこにストレスのある思いをしてもいいから、自分たち自身を変革変容させて、自らトランスフォーメーションして、とにかくばーっと経営会議をやったら、それは日本人のおっさん半分以下。半分以上は要はアメリカ自身の女性の若い人もいる、中国人の若い人もいる、そういう人間で経営幹部を構成するような会社に日本の会社自身が変わっていかないと、多分これだめになるんですよ。多分、さっきの話は全部これにつながっていて、では日本の会社が、例えばアメリカにいる研究所は年収1億、2億で人を雇います。だけれども、日本人に関してはダブルスタンダードかなんか言っちゃって、日本人は2,000万、3,000万で雇おうとするんですよ。こんなもの、通用するわけないじゃないですか。だって同じことをやっている人をアメリカで1億円で雇ったら、日本では1億円で雇わざるを得ないので、それをまたそういうことを例えば株主総会で開示すると文句を言われるわけですよ。そんなのくそくらえですよ、はっきり言って。それをやる勇気がないから、ああいう中途半端な1国2制度、3制度をやって、結局トランスフォーメーションできずに、また同じこと歴史を繰り返すと思いますよ、この後。このモードを本気で変えないと。
 僕はだから、私はこういう話というのは常に僕、思うんですけど、そのアカデミックな皆さんに何かを言うのであれば、おまえらに言われたかねえよという状況をやっぱり産業界が創っちゃだめですよ。むしろ産業界の方が言われたようにフレキシビリティーがあるんだから、産業界自身が自らトランスフォームして、こうなるべきだという姿を自分でやって、それをやっぱりアカデミックにぶつけていかないと、かつては経済一流と言われていましたから、日本の会社の経営モデルとか企業モデルというのは多分世界の先端だった、30年前は。でもこの30年間で決定的にやっぱり遅れちゃったんですよ。だから大企業だって大体が七転八倒して、必死になって、要するにトランスフォーメーションやってきているわけだから、僕は皆さんに、この提言は全く同じ意見なんだけども、これはそのまま企業自身にやっぱりフィードバックして、かつ企業の方が早く動けるんだから、この姿を、やっぱり企業の方を先に作ったらいいと僕は思います。

【菊池委員】
 ちょっと補足させてください。
 もう思い切りこういうところから、国の方から今まだ生き残っている企業にこれからも生き残りたかったら、例えばもう大学に新しい学部を創るから、そこのところは別の人事体系でやるから、そこに報酬体系も違うからと、お金出してくださいれよとはっきりと言ったらいかがですかというところまで言っちゃわないと、これは進まないんじゃないかなと思ってるんです。今、完全に例えば東京大学さんにしても京都大学さんにしても、ほかの大学も同じだと思うんです。もう国の今までの報酬体系ではそんな面白い人は来ないんですよ。だったら、そういう人が来れる一つのスクールを創ったっていいんじゃないですか。東京大学第2工学部じゃないんですが、第2東京大学創ったっていいでしょうというくらい。

【濵口主査】
 現実にはOISTが1つモデルで、OISTの場合は、ネーチャーの分析で世界トップ10に入っておるんですね。初めてのことです。ただ、あそこはものすごくコストが掛かってるからモデルにならないという問題がある。ではそのコストを含めたマネジメントをどう変えていくかという実験を、日本の津々浦々でできる体力が今あるかどうかという問題が1つあります。それとは別に、典型例をこの本州とか九州、四国、こっちの方で、メーンランドの方でももっとやらんといかんフェーズなんですね。第6期は恐らく総力戦になると思うんです。で、第6期を外したら後は本当に開発途上国になってくる可能性が高いですよね。今の状況。

【菊池委員】
 いや、もうそういうのに対して企業がもし投資したら、その投資に対しては国は少しちゃんと見てくれるよという仕組みがあれば、まだ競争力を持っている企業も考えるんじゃないでしょうか。

【濵口主査】
 どうぞ。

【五神委員】
 少し違う話をします。SIPでは実証から実装へとシフトしなければいけないのはそのとおりだと思います。実装されるということは、社会で使われるということで、結果としてお金が動くということです。つまり、実装のためには、どのようなビジネスに転換するかという、経営ビジョンが必要です。それを考えるのは産業界のトップの方々の責任です。しかし、その実装の部分の具体的イメージが、これまで様々なCEOの方と議論しましたが、日本は弱いように感じます。ただ、そのようなビジョンを出すことができているCEOも日本企業にもいて、そういう会社はこの20年間を見ると非常に成長しているという印象をもっています。大学には若い学生や研究者がいるので、成長している企業と組むべきだとつくづく思っています。組織対組織の連携では、大勢の企業の方々が大学のキャンパスを訪れるわけですが、成長している企業の社員には明るい雰囲気があります。さらに、人の使い方にも工夫があり、大学の事務組織改革にも役に立つことがたくさんあると実感しています。
 国際社会において日本のどこに強みがあり、どこで勝てるのかというところを、きちんと分析する必要があります。12月6日から8日まで、SKグループの会長のチェ・テウォン氏のファンドであるChey Institute for Advanced Studiesのサポートによって、東京フォーラムというイベントを本学で開催しました。このタイミングで、日本と韓国の経済界のトップが参加をするフォーラムを開催したことは、極めてインパクトがあったという反響もありました。安田講堂の壇上で、韓国の財界3名と経団連会長の中西宏明氏、日本商工会議所会頭の三村明夫氏、みずほフィナンシャルグループ取締役会長の佐藤康博氏が壇上に上がって、それぞれが本音で議論をしました。その中で、日本側の多くが思っていることとは全く異なる発言が韓国側からありました。それは、日本の強みは部品と素材、そして産業界の資金力だと言うのです。そして、韓国は最終製品を造るところに長けているため、サプライチェーンをしっかりと維持すれば、両国は非常にウィンウィンの関係になるのだという意見でした。これを聞いた多くの日本の方々は、意外に思うか、残念に思ったかもしれません。しかし日本は、素材、部品が強く、技術があり、韓国との間にサプライチェーンがあることは確かなわけです。しかし韓国に最終製品の製造を任せるわけにいかないという意見は当然あると思います。そこで日本の強みをどう生かすかが重要になるわけです。グローバル規模で経済が動くわけですから、日本が全部を制覇するなどということは不可能です。第6期科学技術基本計画が終了する2025年までに、日本がどこで勝てるかというのは、おおむね見えているはずです。そこをしっかりと言い当てるような形で、SIPのようなプロジェクトを実行すれば、実装に向かうのだと思います。しかし、そのような意見を産業界の方か明確に示していた会議を私は知りません。
 では2025年までに、日本の様々な技術力を生かして、どこで稼げるのでしょうか。先日の経済対策で取り上げられたポスト5Gの議論や、この会議で触れられている、ムーンショットの議論のなかで、すぽっと抜け落ちているところがあると思います。それは、ビヨンド5Gあるいは6Gです。ポスト5Gとビヨンド5Gは異なるものです。ポスト5Gは5GをIoTに適用するというもので、対応は急務です。そこには半導体戦略等が重要です。今、先行投資として考えるべきなのはその先のところです。中国やアメリカが投資をしているように、日本も国として投資しなければならないところです。企業では投資をすることができないので、そこは国の役割のはずですが、現在の戦略では完全にずれてしまっていると感じます。やはりもう少し、産業界の経営者の方々とも戦略についてきちんと議論しなければなりません。なけなしの税金をどう切り分けるかなどという議論では不十分で、400兆円以上ある企業の内部留保や、1,800兆円ある個人の金融資産を動かすことを目的として、短期決戦を仕掛けるべきです。
 最後に、人材について触れます。確かに人材育成は大事です。例えばシンガポールは今、国家を挙げてライフ・ロング・ラーニングをおこなっています。40歳以下の人たちのリカレント教育の費用の一部をマッチングのような形で政府が負担し、それが大学の収益になっています。このような仕組みは日本でも全国の大学を活性化するためにも極めて重要です。様々な分野でリカレント教育が必要とされているなかで、各地方の大学にはその地域で先進的な知があるため、活用することができます。また、シンガポールの場合では、その補助金の対象を40歳以下に限定しているようです。未来の産業力に資するものに、国民の合意の下で税金を使っているということです。そのような意識を、第6期には入れ込まないと短期決戦には間に合わないと思います。

【須藤COCN専務理事・実行委員長】
 よろしいでしょうか。何か、お答えしないといけない状況に。
 冨山委員と五神委員が言われたことは、多分、基本的に同じところがあって、まず我々の提言は外に向かってしていますけれども、自分たちが変わるというのが前提にあるんです。決して人に向かって言っているだけの提言じゃなくて、ちゃんと自分たちも変わらなきゃいけないよということを入れてあるつもりですので、その辺は御理解を頂きたいと思います。実際ビジネスモデルと開発との接点というの企業単独でやっている研究は、全部ビジネスモデルと結び付いてやっています。問題は今言ってる国が出すような国家プロジェクトの中で、一応、競争領域じゃなくて、協調領域だと言われている中で、そういうビジネスモデルをどうやって公にしていくかという難しいところがSIPとかあるんですけども、そうはいってもやっぱり実装は大事だと我々も言っているぐらいですから、そこのモデルをしっかり創らないとだめだ。ただ、基礎研究からそれをやるべきだというのが、我々が一番言いたいところで、企業任せにしないでほしいと。これはみんなで考えないと実装はできないんですよというのは我々の言いたいことで、今、五神委員の言われたことと、冨山委員の言われたことはもっともだと思いますし、私も全面的に賛成ですので、その辺はこれから我々も改めながらやっていきたいと思っています。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 多分、これは夜通し議論になってくると思うので、知野委員、御意見があるかと思いますけど。

【知野委員】
 質問がございまして、実証にとどまらず、実装をやり切る戦略をということで、産官学金連携という「金」という金融を加えたのはちょっと新しい表現だなと思って見ていました。ただ、市民の視点も包含したとありますけれども、実証から実装へやり切る、そしてかつ使われていくためには市民の視点や意見、たとえばここまでは市民は望んでいないんだなど、そういうものがやはり必要だと思います。その点でそういう人々の声をどのように吸い上げていこうとされているかを、教えていただきたいと思っております。

【須藤COCN専務理事・実行委員長】
 非常に難しい御質問ですけれども。ただ、技術で勝手に自分たちの描いた姿を押し付けると、絶対いいことがないというのはもう大体、皆さん、いろいろなところで言われていますので、そこにはしっかりと市民目線というか、いろいろな目線を入れなければいけないと。本当のニーズというのは何かというのを捉えなきゃいけないというのは、我々も思っています。それをどうやって取るかと分かっていたら、ここに書きたかったぐらいなんですけれども、非常に難しいので、是非こういった場で議論をして頂きたいと思います。

【濵口主査】
 昨日からのムーンショットでもかなりシチズンの声を聞けというのが。

【須藤COCN専務理事・実行委員長】
 出てましたよね。

【濵口主査】
 欧米の先端的なムーンショットやっておったり、破壊的イノベーションをやるグループが特にそれを言ってますね。

【冨山委員】
 結局、これ自立的自走性ですよね、最後、取れるのは。さっき言った。自立的自走性を担保するのは、ユーザーである市民がそこに持続的にお金を払ってくれるかどうかなんですよ。っていうことですよね。それはないから、結局、持続性を持てないわけで、その脈絡で言っちゃうと、ある種、ちょっと変な言い方をすると、まさにさっき須藤さんが言われたように、真面目にビジネスとして自走、自立させようっていうところから発想すれば、本来市民の声が一番大事なソースなんですよ。ただ、私が感じるのは、結局この手の議論を、この社会実装実験の議論をするときに、その次元でアーキテクチャーをデザインするということを必ずしもやっていないんですよ。こういう技術があったら、こういうことができたらいいなということでやるんだけれども、それに最終的にその受益者である消費者がお金を払ってくれるかどうかっていうことを、まさにさっき言われたように、最初からそれを思考して議論していかないと、何かこればっと自動で車、走ったらいいんじゃね? というのでやっちゃうと、それは人はいいかもしれないけれども、別に使わねえよって言われちゃったらそれでおしまいなんで、ですから私はこの手の社会実装実験をするときに、どこまでその段階でそれを作り込んで、あるいはそこを想定して仮説を持っているかということが大事な気がしているんですが、これ正直、残念ながら企業が関わっているやつも、やっぱりそこが弱いです。そこはどうしても今ある何かのプロダクトとかインベンションをマーケットにプッシュインしようとするところからこういうのが始まっているので、そこはまさに大転換が私も必要だと思うので、そこは大賛成です。

【濵口主査】
 多分、一番必要なのが国のファンディングだと思います。

【冨山委員】
 そこですよね。

【濵口主査】
 というところで、夜通し議論になってしまいますので、議題の(2)に移りたいと思います。後でお時間ありましたらもう1回、御意見を頂くということで。
 それでは、議題(2)について、事務局から資料3について説明をお願いします。

【鈴木新興・融合領域研究開発調査戦略室室長補佐】
 それでは資料3に基づいて、御説明をさせていただきます。
 前回の委員会では戦略的な研究開発に向けた論点という形でお示しさせていただきましたけれども、そこで頂いた御意見として、やはり社会像からバックキャストして考えるべきというところが多くございましたので、そういった形で資料を組み直してございます。
 まず1ポツの現状認識につきましては、これは多くの先生方も御存じのことかと思いますけれども、やはり各国が最先端の科学技術への投資を強化しているというところがございまして、米国もAIや半導体、量子といったものを強化しておりますし、中国も製造大国を目指した戦略も掲げているところでございます。そういった中で、やはり次のキーテクノロジーとなる新興技術をいかに先取りできるかがかなり重要な時代になってきているというところがございます。
 (2)ですけれども、こちらもSTI for SDGsですとか、あと気候変動対策に向けた正味ゼロ・エミッションとか低消費電力社会の実現とか、あとEU等々ですけれども、やはり課題解決に向けた科学技術イノベーションへの期待が大きくなっていて、そういったところにも投資が増えているというところを書いてございます。
 その中で(3)として、では我が国の立ち位置ですとか、どういった視点で研究開発の戦略的推進が必要なのかを書いてございますけれども、まず日本の科学技術力はやはり相対的な低下傾向にあるというところで、特に新しい領域ですとか融合領域の参画が遅れているというところがございます。
 例えばAIですとか量子コンピューターなんかでも、要素技術、基礎研究レベルでは優位性があったというところがございますけども、それを社会実装して、具体の経済的価値につなげていく段階で他国に先を越されてしまったケースもあるというところを書いてございます。その中で、まずは「知」の多様性を確保するというところで、研究者の自由な発想に基づく研究に対して十分な規模の資源を配分することは、ある意味、当然のことでございまして、これは中間取りまとめの方でもかなり言及させていただいているところでございますが、これに加えるという形で、日本が目指すべき国の姿に大きく貢献する重要な研究開発領域に対する追加的な資源配分を重点的に行うことが必要であると。そういった研究領域については、例えば戦略的な基礎研究とか、あとは出口に向けた集中的な研究開発といったものを含めたものでございます。
 1枚めくっていただきまして、特にその研究開発の投資規模では欧米や中国に劣るという中で、日本が知識集約型社会の中で勝ち抜いていくためには、やはり明確な目標設定の下で日本の強みや特色ですとか、日本の持つ蓄積を生かした研究開発を推進していくというところが必要だろうというところを現状認識としてまとめております。
 2ポツ。こちら側の研究開発の戦略的な推進の考え方というところでまとめさせていただいておりますが、こちら4階層で構成されております。まず、(1)の目指すべき国の姿というところですけども、これ過去の基本計画の中でも言われているところでして、恐らくこの3点に集約されるだろうということで書いてございますけれども、まず1つ目としては、我が国の産業競争力の強化による強い経済ですとか、1人1人が生き生きと快適に暮らすことのできる社会の実現を通じて、国民生活を豊かにするということを掲げております。2つ目は、我が国や世界が掲げる課題の解決に貢献し、持続可能な社会を実現する。3つ目が国民の安全・安心を確保し、生命、尊厳、財産、国土を守るということを掲げておりまして、これは前回の論点でも示させていただいたところでして、ちょっと(1)のところに1人1人が快適に暮らせる社会ということを加えております。
 2階層目としてはこういった目指すべき国の姿に対してどう貢献していくかというところで、我が国の強みや特色、蓄積を生かした方針というところを第2階層として掲げております。こちら1から4とございますけれども、まずはサイバーとフィジカルの高度な融合が進む中で、「超」が付くほどの高精密、高品質、高性能で複雑なすり合わせが必要なフィジカル技術や現場のリアルデータを持つ強みを発揮して、バリューチェーンの中核を押さえるという視点。2つ目が、将来の産業や社会を一変させる可能性のある最先端技術、括弧してエマージングテクノロジーと書いてございますが、それを追求して、先行者利益の獲得や国際競争力の確保を目指す。こちら先ほどCOCNさんからも言及があった点です。3つ目としては、世界中がSDGsの達成を目指す中で、課題先進国としてのソリューションモデルを、人文学・社会科学と自然科学の知見を総合的に活用することにより、我が国が世界に先駆けて社会実装し、グローバルに展開すると。ここで課題先進国の例としては、少子高齢化ですとか、社会保障費の増大とか、都市への人口集中、エネルギー・食料・環境問題等々、今後、世界が向き合う課題であり、かつ今、既に日本が抱えている課題を例として書いてございます。4つ目は日本の持つ地理的、地政学的状況も見定めた国家存立の基幹的な機能を確保・向上するということを掲げてございます。
 この1から4の方針に対して、それぞれこういった方針に貢献するための研究開発の方向性と、そのために必要となる研究開発領域の例をそれぞれ示してございます。それが(3)のところでございます。
 1枚めくっていただきまして、1の関係ですと、例えば高品質なリアルデータやリアルタイム処理を生かしたデータ駆動型価値創造といった研究開発の方向性があるんじゃないかと。そのときに必要となる研究開発の例としましては、例えばAIとかセンサーとか、あとデータの信頼性にも関係するトレーサビリティの話ですとか、あとは様々なシステム、情報基盤、あとは次世代通信です。例えば6Gといったものがもう世界では研究開発が進められておりまして、そういった次世代の通信技術、セキュリティー等々、そういったものがあるんじゃないかと書いてございます。2点目は、サイバーとフィジカルを高度に融合させた社会において強みとなるマテリアル創成技術や超微細・精密制御を駆使したものづくり技術によりバリューチェーンの要を押さえていくというところでして、必要となる研究開発領域の例としては、様々なセンサー、素子・デバイス技術とか、若しくは、製造に関わるような接着・接合、分離・分解技術、材料、触媒技術ですとか、あと具体のプロセス面でも微細加工、先端計測系、シミュレーション系といったものを書いてございます。
 続きまして、2の方針に関する研究開発の方向性ですけれども、例えば量子科学技術として、量子状態の制御から様々な量子を使ったアプリケーションの領域、若しくは光・量子ビームといった大規模な研究施設の話ですとかいったものを書いてございます。2点目のバイオテクノロジーについても、言葉は大分昔から使われているところではございますけれども、やはりより高度な、遺伝子レベルの制御とか、合成生物学、脳科学とかといった先端的な技術がどんどん出てきておりますので、そういったものを突き詰めていくといったところがございます。3つ目としては次世代のAIというところで、まさに今、ディープラーニングがいろいろなところで活用されていますけれども、そういった課題に適用される中で出てきた課題に対して、例えば高信頼性のAIとか、若しくは自律的なAIとか、若しくはそういったものを実現するためのチップ技術、ニューロモーフィックのような技術といったものを例として書いてございます。4つ目については、最先端に革新をもたらすマテリアルテクノロジーというところで、1にも物質材料関係が入ってございますけれども、こちらはもっと物性に近い基礎的なところ、元素戦略とか、分子技術・空間空隙制御技術、複合的な材料ですとか、あとマテリアル・インフォマティクスのようなもの、若しくは革新的材料創成として、AIとか量子とかバイオテクノロジー等々に貢献するような材料テクノロジーといったものを掲げてございます。5つ目としては、インクルーシブ社会を実現する人間・社会機能拡張というところで、まさにAIとロボティクスの融合ですとか、BMIというブレーン・マシン・インターフェースといった技術ですとか、ARとかVRのようなものを活用したテレイグジスタンスのような技術、あとはAIとか様々な技術が意思決定にどう関与するか、人間の行動社会動態にどう関係するかといったものを整理してございます。
 3ですけれども、まためくっていただきますと、また4つほど掲げておりまして、1つ目は健康寿命延伸・Q0L向上というところでセンサー系、医療関係、あとは認知・睡眠機能等解明とか身体機能補助技術といったものを書いてございます。2つ目が、都市と地方が共生するスマートなまちづくりということで、スマートモビリティ、スマートインフラ、スマート農林水産といったものを例として挙げてございます。3つ目が脱炭素社会の構築に向けたスマートエネルギーシステムというところで、これはまさにゼロ・エミッションに向けた技術が多く掲げられておりますが、再エネ・蓄エネ、省エネ技術とか、カーボンリサイクル(CCUS)のような技術といったものが掲げられております。4つ目が、持続可能な地球環境の構築ということで、環境・モニタリングとかデータシミュレーション関係、社会システム設計、あとは資源循環技術的なものをここに盛り込んでおります。
 最後に4の関係ですと、まず災害レジリエンスというところで、まさに日本は災害が多い国という中で、観測、予測、解明、若しくは減災技術、シミュレーション技術だったりといったものを統合するインテグレーション技術、若しくは実際の応急対応とか復旧復興に向けた技術等々を掲げております。2つ目のエネルギーセキュリティについては、例としては次世代原子力とか核融合とかそういったものを掲げてございます。3つ目の宇宙・航空技術につきましては、様々な宇宙開発利用技術に加えまして、次世代航空技術としてドローンといったものを盛り込んでございます。最後の海洋技術については、海洋探査ですとか海洋・極地の観測技術、若しくはそれに必要な材料等々の技術を掲げております。
 (4)につきましては、前回の論点でも書いてございましたが、最新の研究開発動向ですとか、地政学的な状況を的確に対応して先手を打つこと、また新しい変化に柔軟に対応できる戦略立案を行う体制が必要であるというところで、こちらはNISTEPさんからもお話のあった、そういった体制をしっかり構築していくということの重要性を書いてございます。
 めくっていただきまして、3ポツは、以前の論点10のところでいろいろ書いてあったところを少し書き下しておりまして、ただ、多くのことは中間取りまとめにも書いてございましたので、なるべく、共通的に掲げるべきことをかなりコンパクトに整理しております。
 (1)の人材育成に関しましては、やはり分野別の人材の需給バランスがまず重要だろうということと、あとは分野越境の能力を備えた人材育成を、産学官が一体となって取り組むことが必要だろうと。また別の視点では、ミッション志向型研究開発と言われているかなり大規模な研究開発を研発法人なんかでやっていますけども、そういった現場の実践的な人材育成を大学と研発法人が連携し取り組むことも重要だろうということ。
 (2)のファンディングの在り方としては、戦略的基礎研究、ミッション志向型研究、出口向けた産学共創等々ございますけれども、そういったものを総合的に組み合わせたファンディング戦略が重要であるということを書いてございます。
 (3)先ほども議論ありました社会実装に向けた仕組みの整備に関しましては、まずは民間資金が次世代投資に循環する仕組みの構築が重要であると。それに併せて実装する際に必要となる法制度の整備やソフト・ローの活用、知財、国際標準等々も含めたエコシステム形成が重要であることと、それを担う人材の育成を併せて進める必要がある。また宇宙・航空、海洋、原子力などのフロンティア分野においては、その培った技術と民生・産業技術を相互活用して、官民のコラボレーションにより革新的なイノベーション創出する仕組みが重要であるということを書いてございます。
 (4)の最新科学技術の情報管理につきましては、まずは科学の成果はオープンであるということを原則にしつつ、やはり慎重な管理が求められる科学技術情報については、外為法等の遵守ですとか、様々なガイドラインも踏まえた体制整備が必要であると掲げております。ただ、その際には、そういったことで様々な研究活動とか、優秀な外国人研究者の活動が妨げられて、イノベーション創出の阻害にならないように配慮が必要であるということを書いてございます。
 (5)につきましては、これまで強みを生かしたという戦略を考えていますが、やはり弱みをどう補完するかという観点、若しくは日本単独ではなし得ないような価値の創出を目指して、戦略的な国際展開が重要だろうということ、また特にアジア、アフリカ等で今後急速な発展が見込まれる国との間では、やはり従来の援助型のような協力に加えまして、最先端の基礎研究も含むイコール・パートナーシップに近いような国際協力が必要だろうということを書いてございます。
 最後、世界に伍する研究拠点の構築という視点では、様々これまでスモールサイエンスと言われていたのがビッグサイエンス化しているというところに対して、研究者の連携、分野融合若しくは基礎から社会実装までのサイクルの一体的推進のための拠点化等の構築が必要だろうということを書いてございます。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 今の報告に御意見ございましたら。いかがでしょうか。
 先ほどまでで、大分言い尽くしてしまいました。

【十倉委員】
 いいですか。

【濵口主査】
 どうぞ、お願いします。

【十倉委員】
 さっきCOCNの須藤さんからも地経学という言葉があったんですけど、第5期と第6期の違いは、そういう地政学的なリセッションがかなり起こっているということなんですね。しかも古い言葉で言えば、上部構造が下部構造に影響を与えると。普通は僕らが大学で習ったのは、下部構造が上部構造に影響を与えるんですが、今はもう政治が経済に影響を与えていると。経済というのはイノベーションにつながって、イノベーションは科学技術つながっていきますから、やはりここをどう考えるか。ですから目指すべき国の姿、Way of Stateというか、国家像について、やっぱり科学技術も当然、無縁じゃいられない。我が国の目指すべき国家像みたいなものと、科学技術が、密接不可分な関係にあると思うので、日本はどうやってグローバルに生きていくかといったら、この前どなたかがおっしゃいましたけれども、島国で人口も減っていって、地下資源もない。我々はグローバルに生きていくには、科学技術でイノベーションを起こしてそれを世界に広げる、日本だけじゃなくて世界に広げて、それで、世界で存在を認めてもらう、そういうイニシアチブを日本が出していくというぐらいの気構えでないといけないと思うんですね。アメリカは御存じのように、中国を敵視してやっていまして、中国をイクスクルードしようしている。本当にそういうやり方に追随するだけでいいのかどうか。むしろ中国をインクルードするには、どうしたらいいか。マルチラテラリズムという言葉がもう後退していっているんですけれども、そういった点について、どう考えるか。そういった点について日本はどうイニシアチブをとるか。
 例えば、今パリ協定と言われていますけど、CO2排出についての国際的な議論も、日本の京都議定書があるからだし、アメリカが脱退したTPPを取りまとめたのも日本ですし、ヨーロッパとのEPAもやりました、RCEPも推進している。今は、先に国家像ありきというような時代になっている中で、日本はそういう実績を示してきたんじゃないかと思うんですね。本当にアメリカは国防権限法でいろいろなことをしていますが、本当に中国をサプライチェーンから除外するのであれば、それに備えて企業も2つサプライチェーンを持たなきゃいけない。経済というのはさっき日韓の話も出ていましたけれども、やっぱり僕らが習った経済原理で、唯一正しいのはリカードの比較優位の原則だという話を聞いたことがあります。我々は、比較優位の原則を、自由貿易を通じてグローバルに実践してきたのですが、それを分断するというようなことが今、現に起ころうとしていると。これは、オーバーに言えばイノベーション停滞の時代に入ってくる、イノベーションの方が影響を受ける。そういうときに日本はどういう立ち位置でいくかという、そういう国家像みたいなものがあって、それで科学技術が入ってくると思います。エマージングテクノロジーについて、これもちゃんと現実的にどういうルールでいくかというのを決めてあげないと、アカデミアの人は困ると思うんです。アカデミアのトップのマネジメントの裁量だけで、どうこうできるものではないと思うので。
 ですから、報告書に書いてあることはもう、そのとおりなんですが、日本がむしろこういう今、angry world。何か『タイムズ』誌がそういうこと言ってますけれども、どこかの新聞で見たんですが、令和というのはBeautiful harmonyですから、Beautiful harmony in an angry worldと。angry worldの世界で日本がbeautiful harmonyを出していくんだというメッセージを込めて、もう少し強調していったらどうかと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。

【菊池委員】
 そうしたら、もう日本は昔から科学技術で国を立てていくということで、基本的な考え方もずっと5期まで続いてきて6期までいるという、そこはもう全然ぶれる必要はないんじゃないですか。

【十倉委員】
 全然ぶれる必要はないし、もっと打ち出していくべきだと考えます。

【濵口主査】
 はっきり記述するということですか。

【十倉委員】
 企業の方も時価総額とかそういうシェアホルダーズバリュー一辺倒な議論がずっと占めていて、アメリカ流の資本主義が良いように思っていたんですけども、最近アメリカのBRT、ビジネス・ラウンドテーブルは、ステークホルダーが大事だと。これは昔から日本にもあった議論で、近江三商人とか、私のグループで言えば住友事業精神とか、今で言えば渋沢栄一の公益資本主義みたいな。そういう形になってきています。日本はそういうところでリーダーシップを出すんだというところを打ち出して、その中での科学技術イノベーション戦略というか。やっぱり国家の在り方が、こういう経済のあり方に影響を与える時代に入ってきたと思いますので。

【菊池委員】
 それに関してはヒューマンセントリックという何か人を中心とした科学技術立国という。それは私はなんか戦後ずっと日本はその上に立って政策を進めてきて、ここまで来ているんじゃないかなと思っておったんですが、今また更にそれを強調する必要であれば、そこはもう一番大上段に掲げていけばいいんじゃないんでしょうか。

【大洞文部科学戦略官】
 中間取りまとめの1章で、かなりその点を我々強調してまとめさせていただいたつもりでありますけれども、今の御議論のまさに大前提として、そういったことがあるということはしっかり書いていく必要があると考えています。今、御議論いただいている骨子案と1章と、実はどうしても議論していくと重複してつながってるところがありますので、そこをうまくこれからつなげて報告書の形にしていきたいと考えております。また、CSTIで基本計画専門調査会が立ち上がり、次期の検討に向けて動いておりまして、そこで社会像についてかなり御議論いただけるということも聞いております。また、未来投資会議など政府の様々な会議で国家像、社会像が議論されてますので、そこをうまく取りまとめさせていただいて、こちらにもニュアンスとかうまく反映できるようにしていきたいなと思っております。

【濵口主査】
 第1章をもう1回確認しないといかんですね。

【大洞文部科学戦略官】
 はい。

【濵口主査】
 大分書き込んであったと思いますので。

【大洞文部科学戦略官】
 はい。

【濵口主査】
 川端委員、お願いします。

【川端委員】
 済みません。私から、先ほどのお話、研究開発の戦略的な推進だとかCOCNの須藤さんの話もそうなんですけれども、やはり社会実装という話。ここをやっぱりもっと徹底的にやるべきだと思っていて、先ほど言われたそのエコシステム1個取っても、本当のところはよく分からないんですよね。このものを創って社会に出せば社会実装だという時代はもう終わっちゃっていて、それを基に社会、地域の社会構造がどう変わっていったか。それが地域ごとに多様に展開していくというのが次の姿じゃないかなと私はずっと思っていて、それをただの経済論理でやると至るところの駅前はみんな同じ形していますよね。要するに同じものを効率よく造ったら同じような駅前ができるという。そうじゃないんだ。だからエリアだとか社会のコミュニティーごとにそれぞれ科学技術であったりいろいろなものを取り込んだら違う姿がそこに出てくる、それがやはり先の形になるんじゃないかなと。そのときにやっぱり出てくるのはやっぱり経済論理だけではない世界がそこにはあると、さっきちょっと言っていただいたように、地域にはそれをもう拒否するという姿もあるし、知らなくて拒否するというのもあるけれども、そこはやっぱりコミュニティーを強化した上で、それを判断できるような姿にしていくというのが、科学技術やる人間にとって並行してやらなきゃならない、要するに人社系の方々も入ってやらなきゃならない世界だし、いや、大学がやるべき部分、企業と一緒にやるべき部分というようにも思っています。
 もう1点、ちょっと突っ込むと、エコシステムの話をしたときに、今、単純に、これで一体幾らもうかりますかという話をすると、多分、地域の人はまずノーという話から始まります。これで一体、最初におたくたちは幾ら、100万ずつ出しますかと言ったら、まずノーという話から始まって、一体これ何が起こるんだろう。それがお金にどう換算されるかということから始めていくということからいうと、今までの、いわゆるエコシステム。ビジネス的な産学連携もそうなんですけれども、そういうようなシステムでは動かない世界がそこにすごい多く広がっているっていう。それは理屈では済まない世界もあって、そこに自治体の話があったり、それから人とのつながりの話があったりして、下手するとこれは寄附金でしか返ってこないのかもしれないというそんな世界まであるので、多分、このエコシステムを別途しっかり考えるようなセクションも必要なのかな、そう思いました。

【濵口主査】
 昨日からのムーンショットの話でも、イノベーションの重要な要素として、多様性っていうのがあって。日本はホモジニアスで、この島国で多様性がないと言っているんですけども、実は地方に多様性がものすごくあるんですけれども、そこをエバリュエーションでき切れていないんじゃないか。それからそれをエコシステムとしてきちっと立ち上げる知恵とマネジメントが今まで創り切れてないと。もう1回、鎖国して幕藩体制リカバーするかもしれない。

【角南委員】
 質問。

【濵口主査】
 どうぞ。

【角南委員】
 せっかくですので磯谷所長にお聞きします。さきほどのお話の中で、最新の研究動向や地政学的状況の収集分析及びそれを踏まえた戦略立案の体制強化というお話があって、また冒頭で、磯谷所長から、シンクタンクのネットワークによりコア技術を特定するようなお話がありました。地政学的状況については実際に今後NISTEPが中核となって、可能性としてこのネットワークの中にもう少し、例えば他の外交的な研究所を加えるなど考えていますか?また本来ならばエマージング技術やコア技術の知識というのは、かなり専門性が高くないとできないので、NISTEPを中核としてこういった分析体制の強化に期待できるのか、実際のところを磯谷所長に伺いたいと思います。

【濵口主査】
 いかがでしょうか。

【磯谷NISTEP所長】
 NISTEPの所長として申し上げたいと思うんですが、まずは3機関で連携するということを御提案していて、当然、その先にはエマージングな技術とかということ、コア技術ということになったときには、NISTEP自身は、安全保障とか地政学的な話、地形学的なところの専門知識がないので、例えば、それは外務省とか、様々な知見があるでしょうし、そういったところも一緒にやっていく必要があると思います。ただ、それはどういうお座敷なり仕掛けでやっていくのかっていうのは、これはまた別の話ですし、我々としては逆に我々の提案として、そういったところまでやらないと全体的なコア技術とかエマージング技術は抽出はできないんじゃないかということは、逆に申し上げているという立場であります。これからどういうシステムを作っていくかというのは政府の中での議論になってくると思います。

【濵口主査】
 どうぞ。

【冨山委員】
 似た質問なんですけれども、さっき十倉委員が言われた話もそうだし。あとさっき川端委員が言った話もそうなんですが、例えばさっきの経済性の議論というのは恐らく前提は20世紀的な大量生産、大量消費的な供給の経済学なんですよね。だけれども、今、そんなことを研究している経済学者は先端には誰もいなくて、むしろ贈与の経済であったりとか、要はエクスターナリティをどう取り込んでいくかというもう経済学の先端って変わっているわけですよ。あるいはナッジであったり、そういう世界になっていて、そうすると要はこの手の議論というのは、多分、国際政治学的な話もそうだし、指摘のあった経済学の本当に先端的な一番限界的領域ですよね。そういったものの知見をどう取り込むか。あと経営も、さっきから繰り返して申し訳ない。もう、今、正直言って、多分エレクトロニクスの世界で、多分、今後自動車もそうなんですけれども、大量生産型でマスに造ってどかんと売るというのは全然もうからないんですよ。だから今、川端委員が言われたようなことをやるのは、実は供給側にとって一番経済的にナンセンスなことをやることになっていて、例えば地域であるとか、個人の多様性、再生にどう対応できるかという、要するにマスカスタマイゼーションの勝負になっていますから、経営学もはっきり言えばそっちへ向かっていますよね。
 ですからそういった本来、最先端のいろいろな知見がこういった話に確かにフィードバックされていて、そこが反映されていくということが、まさに本来のエコシステムを形成するような何か展開のような気がしているのですが、要は質問は、こういう話ってくどいようですけれども、日本人のおっさんだけで議論していてもだめで、どれだけ世界の先端的な、知も含めて、どれだけ多様なあるいは深さと多様性というのかな、あるいは先端性と多様性を満たしているような人たちが集まってこういう議論、こういうことを考えていくのかというところは一体どうなっているのでありましょうかというのが質問なんですけれども。

【濵口主査】
 難しい質問ですね。
 どうぞ。

【大洞文部科学戦略官】
 今、シンクタンクの方々にいろいろ我々も知見をかりておりますが、やはり日本人が日本人から収集した情報が多いというのはもう間違いないです。ただ、海外の学会の動向ですとか、海外の学会に行って情報収集していただくような形で情報は集めてはいただいております。ただ、今おっしゃったように、それを議論しているのは日本人じゃないかという御議論ですと、そのとおりだと思っています。ただ、先ほどムーンショットシンポジウムが昨日と今日、行われていますが、あちらは外国人の方の知見をかりて、ムーンショットの目標をしっかり作っていこうという議論を進めていますけれども、今後の課題としてちょっと我々もそういうところを取り組んでいきたいと思っています。

【冨山委員】
 1点だけ申し上げると、少なくとも、経済学であるとか、恐らくポリティカルサイエンスもそうですけれども、残念ながら日本の学会のレベルは低いです。多分、この自然科学の領域とは比較ならないくらい低いです。ですから、もしそういうものを取り組んでいくんだとすれば、むしろその人たちに考えてもらった方が、ひょっとしたらいい可能性があるし、例えばギル・プラットがトヨタを選んだ理由、それから今度、ヨーキー・マツモトがパナソニックを選んだ理由というのは、むしろ日本人では想像できなかった理由で彼らは選んでくれているんですよね。ですから、日本企業の持っている本質的な良さとか世界に対する通用性とか潜在性というのは、むしろ僕ら自身じゃなくて、最先端のことをやっている彼らの方が理解している場合が多いので、是非ちょっとそういう工夫をしていただきたいなと思います。

【濵口主査】
 検討させていただきます。
 どうぞ。

【赤池NISTEP上席フェロー】
 今、例えば冨山委員が御指摘されたようなことは、地域のこともそうなんですけれども、多分、議論のフレームとか仕方がすごく大事で、よくあるワークショップでとにかくいろんなステークホルダーを集めてきて、ごちゃごちゃにやればいいと。多分これは何も意味がなくて、私どもも何回も実験して、大失敗しているんですね。それで、そういう意味では、だから私どもシンクタンク連携でTSCにせよ、CRDSの比較的技術の強い人たちをまず集めて、たたき台を作って、そういう外交の現場の分かる方。それは別に国際経済学者である必要はないと思うんですけど、そういうところに論点という形で入れて、それをまたフィードバックして、また戻すというような議論の仕方というのができたらいいなと思ってます。実は私どもはNISTEPの予測の範囲内でも、国際ワークショップとか地域ワークショップが全国6か所であったんですけども、これはむしろ私もさっき言ったように、ちょっとごちゃっとした形で拾っただけですので、いずれも50の未来像という社会の未来像を創ったんですけども、今、要するに散在してるわけですね。やっぱりこれをもう1回整理し直して、提案して、また外国、海外に戻す、あるいは実務の方に戻すという中で、ブラッシュアップしていくと。そういう意味では、なんか出して終わりというんではなくて、ダイナミックに変化していくようなシンクタンク連携だとか、シンクタンクの外との連携がすごく大事になっていくのかなと考えております。

【濵口主査】
 どうぞ。

【菅委員】
 ちょっと須藤委員のおっしゃったSIPとも絡みながらお話ししたいと思いますけれども、SIPのときのやり方がまずかったのかなと思うんですが、どうしてもシーズから入っちゃう場合多くて、やはりニーズから入ってほしいなと。だから、特にSIPみたいなのは、まずはニーズから入っていけばその社会実装とそれを前段階、あるいはその研究のところがつながるのかなと思います。常に日本の悪い傾向で、シーズから入っちゃうんです。大学の先生がやると、絶対シーズから入るんです。自分の技術、これで何かできませんかという話なのでニーズから入らないです。例えば、この書いていらっしゃるドキュメントの資料3は何も私は問題はないんですけれども、例えば次世代AIなんかを見ると、高信頼性AIとか自律AI、AIチップとか書いていらっしゃいますけれども、これはもう当然、起きる話で、もっと何かニーズがあった方がいいと思うんですよ。例えば、前、濵口主査とお話ししたことがあるんですけれども、例えばドラえもんのロボットを造りましょうと。無次元ポケットみたいなのはちょっと置いておいて、ドラえもんのロボットみたいなやつがそこにいたら、多分日本の国民はみんな賛成で、でもそのために何をしたらいいかというのは、ものすごくたくさん課題があると思うんですね。そういうのを、やはりニーズから入っていって、このニーズはものすごく先のニーズですけれども、手前に落とし込んできてどうするかっていう話で、多分、いろいろなプログラムを、プロジェクトを戦略的に組んでいけばいいんだと思うので、少し考え方を変えて、今後、やっていく必要があるんじゃないかなと思います。

【知野委員】
 済みません。1点、短くですけれども、5ページの(3)の社会実装に向けた仕組みのところなんですけども、これはやはり先ほど指摘させていただいたように、やはり人々の理解や合意が必要なのではないかと思いますので、上から3行目、国際標準の獲得なども含めたエコシステムの形成というところに、国際標準の獲得、人々の理解、合意などを書き加えていただいた方がいいのではないかと思います。
 以上です。

【濵口主査】
 済みません。塚本委員。

【塚本委員】
 ありがとうございます。
 先ほどの2番の研究開発の戦略的推進の考え方の目指すべき国の姿のところに戻らせていただきますが、、科学技術立国で進んでいく日本がすでに昔から行っているストラテジーだとすると、おそらく目指すべき国の姿は、ゴールみたいな印象を個人的には受けます。ゴールだとすると、十倉委員のおっしゃったように、現在の国際情勢や日本のおかれた状況を踏まえて少しエッジの立った分かりやすいものにした方が、国民からも含めて理解が得られるのではないかと思います。
 もしも、加えることが可能であれば、4点目として、別の視点を入れてはどうかと考えます。既存の3点は、国が何をするかとなっていますが、先ほどのCOCNの専務からのお話や、知野委員からもご指摘がございましたように、ユーザーや市民という視点で国民1人1人が幸せを実感するとか、国民自身が幸せと思えるなど、主語を変えたものが入ると、新しい視点となるのではないかと思いました。
 以上です。

【濵口主査】
 この間のワールドサイエンスフォーラムでも、JSTの方からwell-beingという価値をもっと強調してほしいということを言いまして、SDGsと関連して、第1点目にそれが入っております。やっぱりwell-beingをどう実現するかということです。

【菊池委員】
 済みません。よろしいですか。

【濵口主査】
 どうぞ。

【菊池委員】
 SIPもそうなんですが、各項目テーマを見ますと、ほぼほぼ業界で構成されています。例えば燃焼に関してだったら自動車業界とかですね。いや、本来のイノベーションというのは業界を超えたところで起こるんです。そういう意味でいけば、もうこのSIPのプロジェクトを全部並べてみますと、ほぼほぼそれぞれの業界をカバーしているという。その上のところが全然示されていない。同じように、私たちが科学技術というこの基礎の部分を本当に徹底的に進めていこうとすると、かなりの部分、業界に引っ張られるところもあると思うんですが、やっぱり次の時代の業界を創る。そういう汎用性というか一般性というか、そこの基礎科学、基礎工学をやっぱりもう少し前面に出していかないと、イノベーションは出ないと思います。今の連携のないSIPに引っ張られると業界のための何か実装というか実証で、絶対にそれを実装された他の方は困っちゃうということも生じる可能性がすごく高いんじゃないかなと思っておりまして、そこの辺りをまず考える必要があります。

【濵口主査】
 須藤さん。

【須藤COCN専務理事・実行委員長】
 ちょっとCOCNの立場を外れて、SIP統括として言わなきゃいけないんですけれども、今、言われたようなことは当然、我々は考えていまして、ちょっと賛否両論まだあるんですけれども、リファレンス・アーキテクチャーという考えをちゃんと入れようと。そのアーキテクチャーの中には、基盤からいろんな層があって、一番上部の層には市民の視点とかそういったところがあって、そこをしっかり創っていろんな層ごとにやるべきことを落とし込むというやり方を今、SIPはやっていますので、決して業界で集まっているわけじゃなくて、それから乗り越えた上で、どういうところを攻めるべきかというのは、一応、いろんな目線を入れてやっています。

【菊池委員】
 いや、それは私も理解していますが、私自身も、私たちもそれに参画させていただいている方なんで。ただ、でもあくまでもその中で活動していますと、私はそこの上の理想のところ、目指すところに本当に向かっているかというところをもう一度検証しないと、これの2期目、3期目を続けたら、間違った方向に行く可能性がすごく強いと思っておりまして、あえて苦言を呈しました。

【十倉委員】
 いいですか。

【濵口主査】
 十倉委員。

【十倉委員】
 元CSTIのメンバーとしてちょっと言いますと、SIPではバックキャスティングという言葉がよく使われまして、あるべき姿から逆算してやっていこうということなんですね。だから、ある程度見えている技術でやろうということだと思うんですが、それだけじゃやっぱりいけないので、フォワードキャスティングというか、創発的な研究というか、そういうこともやらなきゃいけないということでImPACT。ImPACTがSIPと似通ってしまったじゃないかという反省もあるんですけれども、今、ムーンショットというプロジェクトが出来て、ムーンショットのプロジェクトの全部がいいかどうか分かりませんが、私個人の意見かもしれませんが、長い目でイノべーションを考えると、やっぱりそういう創発的な研究、基礎研究がないとイノベーションは起こりませんので。ただ、短期的にイノベーションを起こせと言われれば、いろいろな技術の組み合わせでも起こせますので、だからやっぱり両方から攻めていかないとだめだと思います。SIPというのはやっぱりバックキャスティングという言葉に代表されますように、そういう進め方だと思っています。それだけで我が国の研究開発とかイノベーションが十分かといったら決してそうではないと思います。

【濵口主査】
 五神委員、どうぞ。

【五神委員】
 先ほど川端委員がおっしゃったように、多様性を尊重するというのはSociety 5.0の肝なのです。デジタル革新をうまく使えば、多様性が尊重される社会を実現できるかもしれないと思います。ところが、市場に任せたら、データ独占社会という悪いシナリオに行き着いてしまうかもしれません。意思をもって良いシナリオを選び取り、多様性を尊重する社会を創ることが我々の目標です。そうすれば日本が先導して、世界全体をハーモナイズして成長へ導くことができる可能性があります。第5期科学技術基本計画の中身を検討した際には、まだそこまで議論が深まっていなかったのですが、その後、現在までの議論を通じて、日本が世界を先導するために何をすべきかがかなり見えてきました。ルールについては新しいモノを取り入れやすくするには、よりソフト・ロー的なものを日本で導入しなければなりませんし、経済メカニズムについても、クリエイティブな学理が必要です。それら両方とも、日本は非常に劣後してるということは、冨山委員のおっしゃるとおりだと思います。そのような知の創出を促すために、人文社会の研究の活性化はまさに必須といえるでしょう。
 ここ半年、1年ぐらいの間で、世界がなぜこれだけ分断が進んだかというと、サイバー空間とフィジカル空間が融合してきたことと関係していることは間違いないと思います。サイバー空間は、早い者勝ちの、荒れ果てた戦場のような状態になってしまっています。だから、それと融合しているフィジカル空間の議論も進まないのです。COP25の破綻はまさにそのような状況です。ですから、地球環境だけをグローバルコモンズとして守ろうというのは、もはや古い議論の仕方だと思います。サイバー空間におけるコモンズが何なのかを明確に示して日本が世界を先導し、なおかつお金が動き日本が稼ぐことができるような仕組みを提案すべきです。そのために第5期科学技術基本計画の議論があり、それを受けて第6期についての議論をおこなっているのです。
 日本において、カーボンニュートラルやゼロ・エミッションを目指のは、ほかの国よりもはるかに難しいわけです。かつては日本は課題先進国で環境問題への対策も強かったといわれますが、COP25の状況を見れば、世界から劣後した国というレッテルを張られてもおかしくないと思います。またダイバーシティーについては、男女共同参画という意味では、『ニューヨーク・タイムズ』でも本学が紹介されたように、女子学生および教員比率が低く、まだまだという状況です。難しい課題ですが、長期的に真剣に取り組まなければいけないことは明確です。そのためには、ブレークスルーも必要で、他の課題と組み合わせで取り組まなければなりませんし、本学の女性職員を中心にワーキンググループを立ち上げ、具体的に取り組みを始めました。
 一方、科学技術基本計画には書けるはずの目標が書いていないという感じがします。例えば、環境の問題については、先ほど述べたように、サイバー空間をどのようにコモンズとして扱うかという課題があります。日本はDFFT(Data Free Flow with Trust、信頼性のある自由なデータ流通)を提唱し、G20では大阪トラックというすばらしいアクションをしたわけですが、そこには、技術的にもクリアしなければならないチャレンジングな問題もまだ沢山あります。そのような流れの中で、量子技術のような将来必ず必要となるものは、今から手を打っておくべきです。また、半導体も明らかに大事ですが、戦略を立てるにはジオテクノロジーを考慮しなければなりません。そこで東京大学はTSMCと連携をしたわけです。そういう中で、日本ができることがあれば、第6期を先取りする形で、穴がないように埋めていかなければなりません。要素としては良いものは既にできているので、あとはシナリオが必要です。あとはそれを少し並び替えれば、産学官の意見はほとんど一致していることがわかると思います。そのように示すことができれば、何をやるべきか明確になるでしょう。また、多様性を尊重し、地方を大事にするという流れは自然にはいはできません。そのようなシナリオを選び取るためには、科学技術をフル稼働するというステートメントが不可欠だと思います。

【濵口主査】
 御意見。

【十倉委員】
 五神委員がおっしゃるとおりだと思うんですね、さっき私がBeautiful harmony in an angry worldなどと言いましたけれども、日本がそういうところのリーダーシップを取らないといけないので、大阪トラックでDFFTも提案していますし、それからSociety 5.0も、ちょっと後付けの議論になるかもしれないですけれども、ステークホルダーズバリューを考えると、シェアホルダーズバリュー一辺倒じゃないという概念そのものですよね。そういうのを日本が世界に発信していると。だから環境問題も一緒だと思います。そういう国だということをまず明確にして、その上で、我々がどういう科学技術イノベーション戦略があるかということだと思うんですけれどもね。

【濵口主査】
 いい御意見をいっぱい頂いたので、宿題に。

【大洞文部科学戦略官】
 はい。そうさせていただきます。1章で、書き切れていませんが、そういう趣旨を書いてありますし、そこと今の接続を、先ほど申し上げましたが、うまく考えていきたいと思っていますので。

【濵口主査】
 お願いします。
 お時間も押しておりますので、ここで話題を変えさせていただきたいと思います。
 議題の(3)でございますが、科学技術振興機構研究開発戦略センター、岩瀬上席フェローから、資料4について説明をお願いします。

【岩瀬JST CRDS上席フェロー】
 御紹介いただきましたJSTの岩瀬です。
 まずは、机上配付されておりますこの冊子の概要を資料4-1に基づいて簡潔に説明させていただきます。
 資料4-1の表紙にありますように、科学技術イノベーション政策において、社会との関係深化を進める必要があるということ、具体的には我が国において、ELSIやRRIと言われる取組を我が国なりに構築して定着させることが必要であるということがレポートの趣旨であります。
 次のページ、右下のページ番号だと1ページです。御承知の方が多いこととは思いますが、このレポートで取り上げておりますELSIといいますのは日本語では、倫理的、法的、社会的課題ということでありまして、科学技術が発展するに伴いまして、倫理的、法的、社会的課題が生じてくるという事例が多くなっているわけですが、科学技術の研究を進めるのと並行して、そういう課題について、あらかじめ研究しておいて対処していこうという取組がELSIでありまして、これはアメリカを中心に発展してきたものです。
 次のRRIは日本語でいいますと、責任ある研究・イノベーションとなりますが、これは欧州を中心に発展してきた取組と言えると思いますが、これは先ほどからの御議論にもありましたような科学技術あるいは研究・イノベーションの全体のプロセスを、研究者あるいは科学技術の関係者だけではなくて、社会の関係者が協働するというプロセスにしていくということ、それによって、研究・イノベーションのプロセスと成果が社会の価値、ニーズあるいは社会が期待するものに沿うようにしていくことを目指した取組であります。
 次のページをお願いします。そういうものが重要になってきている、取り組まれてきている背景ですが、科学技術の社会への影響が大きくなると同時に、プラスだけではなくてマイナスの影響も目立ってきているということ。また、社会自身あるいは社会から科学技術に対する期待と要求というものも変わってきているということ。物質的な豊かさから質的な豊かさへとか、持続可能性ということが求められるようになってきているということがあります。
 次のページをお願いします。また、遺伝子組み換えがいいかどうかとか、環境と産業の発展のバランスがどうかという問題になりますと、科学的な知見あるいは科学の立場からの見解だけでは結論が出ない。当然、社会の価値としてどうなのかということが入ってこないと判断できない。そういう問題をトランス・サイエンスと言っておりますが、そういう問題が増えてきている。あるいは今もいろんな話題が出ましたGAFAの情報独占の問題のように、科学技術が進むにつれて社会が大きく揺るがされるような事例も増えてきておりますし、ゲノム編集やAIのように、生命や人間の在り方そのものが問われるような問題も出てきている。こういうことをまとめれば、人間や生命の在り方も変えるような影響が社会のあらゆる人々に及んでいって、その影響を正確に予測することも難しい。そういうことが出てきているということでありまして、そういうことを踏まえて、社会としてどうあるべきかといったときには、プロセスとしてまず、これも先ほどの議論と共通するところがあると思いますが、望ましい社会の在り方はどうなのか、どういう方向に行くべきなのかについて、ビジョンを共有した上で、研究者あるいは科学技術の関係者だけではなくて、社会の多様なステークホルダーが研究開発の初期段階から関与して、社会と調和するように科学技術を進めていくというプロセスにしていくことが必要だということになるわけです。そういう問題意識に基づいた具体的な取組ということで、ELSIやRRIが更に重要になってきているということが背景としてあります。
 簡単に、歴史的な話を少し振り返りますと、ELSIが中心的に発達していったアメリカにおいては1952年には有名な『沈黙の春』という本が出て、化学物質のリスクというようなことが問題になって、これが科学技術全体に対する懸念ということにもつながっていった面があると思いますし、1972年には、技術が社会にどういう影響を与えるのかというようなことを評価して政策に反映させる必要があるということで、テクノロジーアセスメントという活動が本格化して、米国議会にそのための組織が置かれ、それがその後、欧州に波及するということもありました。
 そのようないろいろな展開をたどっていって、1990年にヒトゲノム計画が立ち上がったときに、ELSIが本格的に始まったと言われております。ヒトゲノム研究に伴って発生するであろうELSI課題の研究に、研究開発予算の3から5%を充てるということがなされたわけです。これは研究プロジェクトの中に、研究そのものにもしかするとブレーキを掛けるかもしれないことまで、研究の対象に組み込んだということで画期的であると言われております。
 次のページ5ページ目でありますけれども、ライフサイエンスのゲノム研究の分野で始まったELSIの取組でありますが、その後、アメリカの国家的なイニシアチブとしてできましたナノテクのイニシアチブ、あるいは脳研究のイニシアチブ、あるいは今年のAIのイニシアチブ、それぞれにおいてELSIの取組は柱としてしっかり位置付けられるということで展開をしてきております。
 RRIが中心的に発展してきております欧州を見ますと、1986年のチェルノブイリ事故以降、科学技術に懸念を生じさせるような課題が生じて、先ほど申し上げましたアメリカで始まったテクノロジーアセスメントが欧州各国の議会の組織として設置されて今日に至るということがあります。そして1999年、欧州のところに書いてありますが、これは欧州というよりも世界の科学界の問題でありますけれども、ハンガリーのブダペストで開かれました世界科学会議で、「科学と科学的知識の利用に関する世界宣言」が出て、その中でscience in society、science for societyということが言われて、これが大きいインパクトを与えていくということになるわけです。そしてEUにおきましては、EU全体として科学技術を進めるプログラムということで、フレームワークプログラムが、累次創られてきておりまして、これは1984年に最初のものができておりますけども、2002年にできた第6期になりますと、Science and Societyということで、科学と社会の関係に関する幅広い問題を取り上げるということが、EUのプログラムとして始まっております。これは倫理の問題や科学コミュニケーションの問題、科学におけるジェンダーの問題、科学と社会の間の協働の問題など、幅広く取り上げております。2007年の第7期フレームワークプログラムでも、更にそれが拡充、発展していって、2010年頃になりますと、先ほど御説明したRRIという言葉が広く使われるようになってまいります。2014年に現行のHorizon 2020というフレームワークプログラムになっていますが、その中ではRRIの取組を幅広く支援するプログラムが位置付けられておりまして、そこでは科学への市民の参加、オープン・アクセス、ジェンダー、倫理、科学教育ということが柱になっています。再来年の2021年から次のフレームワーク計画でありますHorizon Europeが始まります。その概要がだんだん明らかになってきておりますけれども、その中でもRRIを推進するということが明確に言われております。
 次の7ページ目、日本の関係ですが、これは御承知のとおりで1990年代には科学技術の懸念を生じさせるような問題が幾つか起こるということがありました。そして2000年代に入りますと、社会課題の解決を目指す社会技術という取組をするとか、あるいは欧米のELSIの取組も踏まえて、日本の中でも専門家だけではなくて市民などの参加を得て、テクノロジーアセスメントを試行してみるとか、ナノテクノロジーの多面的な影響を検討するといった試みが幾つか行われましたが、いずれも時限的なプログラムで行われたり、研究者の自発的取組で行われることが多くてなかなか定着しなかったということです。したがって、ベースになるような知見や人のネットワークというものが蓄積したり維持するのは困難であったということです。
 8ページ目ですが、そういうことが活動の実情であったわけですが、では政策上どうなっていたのかと言いますと、科学技術基本計画においては、第1期では理解増進、社会への情報発信という表現から始まって、第3期になると、ELSIが言葉として出てきています。
 さらに次のページに行っていただくと、現在の第5期では、そこに見ていただきますように、共創的な科学技術イノベーションというコンセプトで、ELSI/RRIに相当するようなことが基本的には充実した記述で書かれております。そういう政策上の位置付けがなされているということです。また、今年取りまとめられましたバイオ戦略の中にも、ELSIの取組については明確に書かれているわけであります。
 その次のページでありますけれども、今、申し上げたことを絵にしますと、こういう科学と社会をめぐる問題というのは、ELSI/RRIを含めて充実した書き方にだんだんなってきていて、第5期では、政策、政策文書の中でかなり充実した位置付けになっております。
 次のページ、11ページ目ですが、そういうことが日本を含めた経緯でありますけれども、先ほども御説明しましたように、欧米におきましては科学と社会との問題ということから、更には経済成長や国際競争力という視点も含めて、今、戦略的に、政策として位置付けるだけではなくて、実質的にやってきております。他方、日本では、第5期において、政策上は十分な記述がなされておりますけれども、具体的な取組は不十分であります。こういうことは、我が国の国際競争力あるいは国際的な協力という観点で見ても、課題があると思われます。したがいまして、今後こういう共創的科学技術イノベーションについて、第5期で位置付けた政策的な位置付けを第6期でもう1回しっかりしていただくことが必要であると思いますが、それだけでは十分ではなくて、ELSI/RRIと言われるような取組を研究イノベーションの取組と一体化して、実際に着実にやっていくことが必要であると考えております。
 時間もありませんので、1ページ飛ばしていただいて13ページをお願いしたいと思いますけれども、今後どう進めるかということで幾つか提案をさせていただいています。
 まずは研究開発あるいはイノベーションのプログラムの中に、ELSIをしっかり組み込んでいくことが必要だと思います。予算の一部を充てるとか、実施計画の中にELSI/RRIについてのテーマをしっかり組み込むことが必要だと思います。本日行われておりますムーンショットプログラムのシンポジウムにおいて、幾つかの分科会が今日、行われていますけれども、その中の1つの分科会では、ムーンショットプログラムにおいてELSIをどうやるかという議論が、ただ今行われております。
 次に2ですけれども、そういうふうに具体的にやっていく上で、それを支える基盤、これは実際にELSI/RRIの取組を担う人材とかそのための手法、またそういうものを蓄積していく拠点ということですが、そういうものもしっかりやっていく必要があると思います。
 次のページをお願いします。そういうことをやっていく上で、是非、政府の各府省や私どもJSTも含めてファンディング機関等においては、ELSI/RRIの問題について担当を定めて、具体的な進捗状況あるいはどんな課題があるかをフォローしていただくことが必要だと思いますし、政府全体としてはどんな問題があるのか、そのようなことも議論できるようにしていただくといいのではないかと思います。
 また、ELSI/RRIにこれから関わっていく関係者の間の自主的なネットワーク、コミュニティーを創って、現状や課題を共有するようなこともやっていく必要があると思います。私どものセンターでも、そういうものを、微力ながら支援していきたいと思っております。
 併せまして、もう1つの資料も簡潔に御説明させていただきます。資料4-2ですが、これは今、御説明しました話題と関係が深いので、併せて紹介させていただきます。1ページめくっていただいて、World Science Forum、これも御存じの方が多いと思いますが、これは科学技術に関係する方々が世界から集まって、社会との関係あるいは科学技術に関する重要な問題、様々な問題を話し合う場であります。これは先ほどの説明の中でも出ましたが、1999年に開かれた世界科学会議の後継のイベントとして開かれておりまして、2003年に第1回が行われて、その後ブダペストで同じように行われたわけですが、第6回からは開催地をブダペストとほかの国で交互でやっています。今回は、再びブダペストで行われて、これまでと同様、UNESCOやISC、AAASなどと協力して行われたということであります。
 次のページをお願いします。今、申し上げたように1999年の会議を前身として続けられてきて、今回、Science, Ethics and Responsibilityというテーマで行われたということであります。
 次のページをお願いします。1999年の、最初の世界科学会議については、先ほど申し上げましたように、これまでの知識のための科学ということだけではなくて、社会における科学、社会のための科学が打ち出されて、これが大きいインパクトを与えたということがありました。
 次のページをお願いします。今回の会議は、11月20日から23日に行われて、120か国から1,100人以上参加しました。今回の会議は、先ほど申し上げました1999年の会議から20周年であり、そこで示された考え方がますます重要になっているという議論がいろいろ行われたということでありますし、また科学を多様な人々にオープンにしていくことが必要だという議論もかなり多かったと承知しております。また、アフリカをはじめ、途上国からの参加者が多くて、途上国の課題について議論されることも多かったと承知しております。
 議論の全体が取りまとめられております宣言文についてはこの後、別のページで説明をさせていただきます。
次のページで、参加者ですが、主催国ハンガリーの大統領でありますとか、NSF長官のように先進国の方、南アフリカの大臣のように途上国の方、あるいはISCやUNESCOのような国際的な組織・団体の方が、幅広く参加されております。日本からは、政府の関係では、岸外務大臣科学技術顧問。また、学術会議からは武内副会長。ファンディングエージェンシーということでは、JSTの濵口理事長が参加されております。後ほど、濵口主査から補足していただくことがあればお願いしたいと思います。
 最後に、宣言の要点になりますが、かいつまんで御説明しますと、1999年の世界科学会議から20年たち、ここで打ち出されたことがますます重要になっているということ。その中で2.にありますように、倫理の問題が大事で、科学コミュニティーとして責任を持ってやらないといけないということ。そして、これを科学者が自主的な規制で能動的にやることが大事だということを言っております。
 次のページに行きますと、先ほど主査から出ましたが、well-beingが大事だということが一つの議論としてなされたということがありました。そして、well-beingあるいは世界の人たちの幸福が大事だということではありますが、3.にありますように、他方で、社会や経済といった面では、期待に直ちには答えないかもしれないような研究も、研究者が実施する自由、これも大事だというようなことも主張されています。
 第2章で、研究のintegrityのスタンダードを上げることが大事だと言っておりまして、3.で言っておりますことは、研究の不正があると疑いを持ったら、科学者が不安を持たないで、報復されるという懸念を持たないで、しっかり報告できるような自主規制の手続きを創ることが大事だというようなことも言われております。
 次のページ、3章でございますけども、学問の自由あるいは科学に対する人権が大事だということで、2.では学問の自由の実現のために、国際的な科学コミュニティーとして取り組むべきだということとか、4番、5番のように、難民とか女性その他マイノリティといった人たちの科学における権利が大事だと、そのようなことが言われています。
 第4章は科学についてのコミュニケーションの問題が言われていまして、1番ではオープン・サイエンスとか、科学的出版へのアクセスが大事だということを言っておりますし、3番では、科学者がほかのステークホルダーに対するコミュニケーションがしっかりできるように訓練をすることが大事だとか、4番、5番ではメディアの役割、メディアの責任が大事だということが言われております。
 次のページ以降は、どんな発言があったかを例として挙げておりますか、時間もありませんので、説明はここで終了とさせていただきます。
 ありがとうございました。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 それでは、事務局から併せて資料6について、説明をお願いします。

【大洞文部科学戦略官】
 もうお時間も押しているので、資料6を簡単に説明させていただきます。
資料5で、科学技術・学術審議会の科学技術社会連携委員会からの検討も頂いておりますので、それと今の状況も踏まえまして論点をまとめております。
 1枚目、基本的な考え方ですが、先ほどから議論がありますように、やっぱり科学技術イノベーションを駆動力として、人類共通の課題いかにインクルーシブな社会を構築していくかが求められている中で、科学技術の急速な進展によって、様々なルールですとか、価値観、順応性ですとか、ELSIへの対応が求められていると。ただ、2番目にありますようにそれはブレーキであってはならないということ。3番目にありますように、様々なステークホルダーとの対話が重要で、国際的にはwell-beingという話になってることを示しています。
 2ポツですが、科学技術コミュニケーションについて書いています。こちらは、先ほどありましたように、共創というところまで進化してきてるんですが、単に共創にとどまるだけじゃなくて、様々なステークホルダー等と取組を多層的に組み合わせて実施するモデルが必要であるという点。2点目ですが、そのステークホルダー同士をつなぐような知識の翻訳ですとか、対話、調整、コーディネーションが重要であると。ここに人文・社会科学が重要であるという点。3点目ですが、不確実性の理解を含む科学技術リテラシーを深めていくための取組が重要で、そのための研究者の責任などに言及しております。
 2ページ目です。ELSIに係る取組ですが、こちらも広く社会課題に対して、どれだけ科学技術が好転できるかという観点で捉え直して新たな価値を見出すと。この変革を促すようなことが必要であると。このために2番目にありますように、トランスディシプリナリーリサーチですとか、人文学・社会科学的アプローチも重要である。3点目にありますように、社会実装を目指すようなプロジェクトにおいては初期段階からこういったアセスメントですとか、法整備ですとか、リテラシー向上、ELSIの取組も並行的に進めるべきであるという点ですとかを書いてございます。また、4点目としては自然科学系の専門知識ですとかいったものを備えた人文学・社会科学系の知識を持った文理融合人材が必要であるということです。
 4ポツといたしましては、政策形成において、科学的知見をしっかり研究者から頂いていくことが重要であるという点ですとか、そういった研究者側がその知見について明確に説明していくような責任があるという点を書いてございます。
 5点目としましては、研究の公正性ということで、信頼関係には研究が公正かつ適正に行われることが重要で、そのための教育の重要性ですとか、国際社会への発信が重要であるという点をまとめております。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 お時間も押していますが、御意見、一、二、頂ければと思います。
 新保委員いかがですか。

【新保委員】
 ELSIにおける取組を重視した内容でいろいろ書いていただいているところもありますけれども、このソフト・ローというのはそもそも何かというところがあります。今後、ちょっと細かいところではありますが、ソフト・ローというのは、例えば法的な規制というのはどうしても規制になってしまうわけですけれども、ニュアンスとして例えばガイドラインであるとか自主規制であるとか、場合によっては共同規制といったような、そのような手法も用いたソフト・ローという趣旨だとは思うのですが、このようなところについて、どうしても漠然とソフト・ローというと、法規制ではなく何か抽象的な何か取組ではないかといったような受け止められ方がすると、それはちょっと本意ではないと思いますので、こういうところもまた今後、細かいところについては、若干精査をした方がいいのではないかと思っています。

【濵口主査】
 ありがとうございました。貴重な意見。
 ほか、よろしいでしょうか。前半のところでも御意見ないですか。よろしいですか。
 はい。

【冨山委員】
 今日の議論の通底として、さっき五神委員も言われていましたけれども、要は世界は分断と、要は多様性にむしろ不寛容になってるわけで、その中で、これは大きな議論として、私たちの科学技術が進んでいく方向が、その分断を更に深めて多様性により不寛容になってはいけないわけで、そこは多分、通底していると思う。その中で日本という国がぐるっと回ってみたら、割とそういうことをちょっとお気楽にって言い方はあれですけど、割と何か躊躇なく言える今、国なんですよね。別にその巨大プラットフォーマーがいるわけでもないし。だからある意味では産業的に負けてきたんだけれども、そのおかげで既得権がないので。済みません。ちょっとひどいですね。ストレートなものしかできないタイプなんで。逆にそれをある意味で思い切り言えちゃう立場になってるわけです。ですからそこは、やっぱり今後、全ての議論において、私は中心に据えた方がいいと思ってるんですね。これは常に意識した方がいいと思っています。で、さっき十倉委員が言われたように、どうしても米中がそういう既得権を持っちゃってるんで、そこで、ある意味では、本来正しい議論しにくい今、状況に彼らはなっていますから、そこが私はすごく大事だと思っています。
 もう1点、ただその一方で、その脈絡においてさっきのエネルギーなんかその典型なんですけど、ふと気が付いたら、では日本がそれを言えるのかよという問題があったりするわけですよね。やっぱり、産業界の議論も、確かにとても今、日本のガバナンスコードというのはステークホルダー主義で書かれてるわけです。なぜ私がコードの導入にこだわったかというと、確かに公益資本主義というのは正しいんだけれども、日本の実態は私に言わせればアメリカとの関係でいうと、アメリカは株主主権で日本はサラリーマン主権だったに過ぎなくて、実は本当のステークホルダーガバナンスになっていなかったんじゃないかという思い入れがすごくあったので、産業界の人も一時期ちょっとこうなりましたけれども、最後に理解してくれて、今そういう流れになってるわけで、そうするとやっぱり、まずはある種の競争力を持っていないと。さっき五神委員が見せられたように、そういう分断を縮めていくようなイノベーション、あるいは多様性というものを取り込めないイノベーションについて、日本自身がもっと高いレベルにいっていないと。これはエネルギーもそうですよね。要するに気が付いたらおまえらに言われたくないという状況に今、なっちゃってるわけだから。だからやっぱり自己変革意識もちゃんと持ってないと多分だめで、多分、どう両面を何かそろえていくかというのが、この後の基本的な通底的テーマだと思うので、そこは常に私も何人かの委員の方から言われましたけれども、これはかなり意識的に強調し続けた方がいいような気が、今日の議論を受けてしまいました。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 非常に重要な御意見を頂いたところで、また宿題にして。
 お時間も来ておりますので、とりあえずこれで水入りにさせていただきたいと思います。
 本日頂いた御意見を基に、研究開発の戦略的な推進、科学技術と社会との関連性について、更に深めていきたいと思います。
 最後に事務局より事務連絡をお願いいたします。

【中澤企画評価課企画官】
 本日の議事録については、後ほど皆様にメールでお送りさせていただきますので、御確認の上、御返信いただければと思います。文部科学省のホームページへ掲載させていただきます。
 また次回は年が明けてになりますが、1月29日の10時からになりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 ありがとうございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 長時間、御議論いただきまして、ありがとうございました。なかなか司会がうまくいかなくて、30分延ばしたのに、結局、時間足らずでありました。
 本日の総合政策特別委員会をこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 

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科学技術・学術政策局 企画評価課

(科学技術・学術政策局 企画評価課)