総合政策特別委員会(第30回) 議事録

1.日時

令和元年9月27日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 中間取りまとめについて
  2. その他

4.出席者

委員

濵口主査、橋本主査代理、越智委員、川端委員、菊池委員、五神委員、新保委員、菅委員、竹山委員、知野委員、塚本委員、冨山委員、畑中委員

文部科学省

村田研究振興局長、田口サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、増子研究振興局審議官、林研究開発局開発企画課長、菱山科学技術・学術政策局長、梶原科学技術・学術政策局審議官、真先文部科学戦略官、角田科学技術・学術政策局総括官、横井科学技術・学術政策局企画評価課長、大洞文部科学戦略官、中澤企画官

5.議事録

科学技術・学術審議会 総合政策特別委員会(第30回)


令和元年9月27日


【濵口主査】
 それでは、ただいまより科学技術・学術審議会総合政策特別委員会を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。
 それでは、会議開催に当たりまして、事務局から出席者の紹介と資料の確認をお願いいたします。

【中澤企画評価課企画官】
 人事異動により、9月1日から科学技術・学術政策局の担当でございますが、大臣官房審議官として梶原が着任してございます。

【梶原科学技術・学術政策局審議官】
 梶原と申します。よろしくお願いします。

【中澤企画評価課企画官】
 資料の確認でございます。本日も1枚紙の議事次第がございます。この裏に資料のリストがございます。資料については、お手元のタブレットの中にも入れてございますが、紙の資料として、机上に資料1と資料2については配付させていただいてございます。乱丁、欠落等ございましたら御連絡ください。

【濵口主査】
 ありがとうございました。本日は、一言で申し上げますと、2時間1本勝負でございます。中間取りまとめの最終的な御確認をいただき、絶対今日のチャンスをお見逃しにならないように、きちっと言いたいことは全て言っていただけるようによろしくお願いいたします。
 本日は議題1として前回まで御議論いただいた中間取りまとめであります。
 それでは、事務局から資料1と2について御説明お願いします。

【大洞文部科学戦略官】
 ありがとうございます。委員の方々におかれましては、非常に建設的で前向きな意見をいろいろいただきましてありがとうございます。
 資料1として、今回中間取りまとめとしてまとめさせていただく資料を御用意いたしております。
 また、資料2でございますが、こちら、いわゆるポンチ絵と概要ものを用意してございます。この両方を見ながら御説明を聞いていただければと思っております。
 まず、資料1の本文を御覧ください。タイトルを主査と御相談して付けております。「知識集約型の価値創造に向けた科学技術イノベーション政策の展開」というタイトルを付けさせていただいております。また、副題としては「―Society 5.0の実現で世界をリードする国へ―」となっております。
 それでは、本文の説明に移らせていただきます。1ページ目を開けていただけますでしょうか。第1章の基本認識からでございます。
 現状認識といたしまして、まず、社会システムのパラダイムシフトの進展を書いています。ずっと御議論いただきましたように、デジタル革命の進展により、「知」の価値創出が社会の基盤になる、パラダイムシフトが起きつつあることですとか、「モノ」から「コト」へのシフトチェンジが起こっていること、また、3段落目ですと、「データ」がますます決定的な価値を持っているというようなこと、4段落目ですと、研究開発の分野でも、世界のプラットフォーマーが最先端の科学に対する投資や研究者の獲得というところで、世界のトップ大学とライバル関係にさえなりつつあるような状況を書いております。
 最後の段落は、イノベーションの創出が、そのプロセスですとかスピード感で明らかに変わってきていると書かせていただいております。
 2ページ目を開けていただきますと、2番目の現状認識といたしまして、SDGsの広がりと持続性確保に向けた意識の変化ということを書いています。ここは地球規模の問題が山積していること、そして、SDGsが設定されていることですとか、あと、STIが有限のリソースを最適化し発展を図る「切り札」として期待され、STI、SDGsという動きがあることを書かせていただいております。
 また、2ページ目の後段ですが、マル3といたしまして、我が国の科学技術イノベーション政策の置かれた状況を書いています。
 前段は明治以降に、積極的に西洋科学を受け入れて、さらに江戸時代からの蓄積も踏まえて、我が国で真理の探究ですとか、独創性の重視等の科学的精神が培われ、その結果、北里先生ですとか湯川先生のような、世界水準の研究成果が生み出されてきたこと。
 また、この伝統の発展を目指して、平成7年に基本法ができまして、8年以降は基本計画が策定されて、政府一丸として研究開発投資の拡大を進めてきたこと。その結果として、我が国の科学技術は、自国のみならず、世界の発展にも大きく貢献する成果を生み出してきたと。留意付きではありますけども、ノーベル賞の受賞者数は今世紀世界第2位であることですとか、様々な実用化につながるような発見がなされていて、我が国発の独創的な発想は、真理の探究とともに人類社会の発展に大きく貢献し、世界からも高い評価を受けているというような認識をしております。また、産学連携においても、基本計画以降、投資は着実に増えていることですとかを記載しています。
 最後のところですが、このように科学的伝統の継続や過去の研究開発投資による有形無形の資産の蓄積が科学技術先進国の一角を担う我が国の礎となっているという認識です。
 2段落目以降は少し課題を書かせていただいておりまして、まず科学技術関係予算が伸びていないというところを他国と比較して書いています。よく言われます引用論文数のシェアの問題、また、3ページ目に移っておりますけれども、研究者の間でも、国際的に突出した成果が十分に出ていないという認識ですとか、挑戦的な研究が十分にされてないという認識が広がっているということも書いています。
 また、デジタル・プラットフォーマーのような巨大なイノベーションを生み出すことができていないということもありますので、締めとしては科学技術イノベーションを取り巻く多くの側面で、我が国の国際的地位が相対的に低下しているという認識になっています。
 ここまでが現状認識でございまして、3ページ目、(2)といたしまして、Society 5.0の実現に向けた知的集約型価値創造システムの構築に向けてどういうことをやっていくかということを書いています。
 最初の括弧のところでございますが、知的集約型価値創造システムを構築していかなくてはいけないということでございます。このシステムにつきましては、「知」が流通・循環し、それに対して活発な投資が行われることにより、最大価値化されると。また、新たなイノベーションや高付加価値なビジネスが創出される知識集約型の価値創造システムを、世界に先駆けて構築する必要があるという文脈で書かせていただいております。
 その下は、データが価値創造の鍵であって、また、リアルデータ、リアルタイム、そういったところが重要であるということを書いてございます。
 4ページ目に行きますと、4ページ目の上から2つ目の段落では、このような「知」の循環の実現のためには、大学や国研が持つ様々な力を育成することが必要であると。これが価値創造システムの中核として機能し、変革の原動力になるという文脈を書いています。
 また、3段落目ですと、従来想定できなかったようなスピードで、基礎研究の成果が実装されるという状況であって、個人に依存するのではなく、組織による集中的な支援などで社会の課題解決につなげるエコシステムを確立する必要があると。また、そのための人材の育成の重要性を書いています。
 最後の段落ですが、知識集約型の価値創造の源泉である「知」の価値が適切に評価されて、民間資金が活発に投資され、イノベーションの元となる基礎研究や人材、「知」をベースとした高付加価値型のビジネスモデルに活発に投資される資金循環を実現していくべきということで、その際、大学や国研が機能を強化するとともに、投資先として魅力のあるものになるというところで、こういったシステムをいかに作っていくかということを、この報告書の中核的な課題として書いています。
 続きまして、4ページの中段にございますが、このようなシステムですとか、Society 5.0が実現し、我が国の社会課題の解決と世界の持続的発展に貢献していくということです。我が国の課題ですとか、人類共通の課題をSTI For SDGsのような形で解決していくと。
 2段落目ですが、こういった状況になれば、持続可能な社会システムとかビジネスモデルを構築して世界に輸出可能な成長産業を生み出して、これをチャンスとしていくことができるということを書いています。
 4ページ目の下ですが、人間中心のインクルーシブ社会の実現ということで、様々なハンディキャップですとか制約を乗り越えて、全ての人々が分け隔てない「知」へのアクセスや発信、社会活動への参加が可能となり、「誰一人取り残さない」インクルーシブ社会を実現するということです。
 5ページ目ですが、ただ、その際に情報格差ですとか、ELSIに関する様々な問題への対応は、先送りなく取り組むことが必要であると書いてございます。
 5ページ目の最初の括弧のところですが、こちらは具体的なイメージを少し皆様に分かりやすいように持っていただくために書いてございます。特に、1段落目は、リアルタイムビッグデータ解析に基づく様々なデータ収集、解析、フィードバックが重要であるということを書いています。これがビジネスを生み出すような例として、1段落目としては、医療や健康サービスにおけるセンサーを活用した病気の予防ですとか、そういった医療費の削減につながるような話を書いています。
 また、下の防災・減災という段落におきましては、様々なリアルタイムデータをスーパーコンピューターでシミュレーションすることによって、ピンポイントの集中豪雨の解析などができて、それが防災をはじめ、様々なビジネス展開につながるということを書かせていただいております。
 6ページ目でございますけれども、教育分野のことも書いています。超高速で大容量の通信をはじめとしたICT環境を基盤とした先端技術やビッグデータを活用すると、個々の子供にとって最適な学びを実現できるということで実例を挙げて書いています。
6ページでございます。3と書いてあるところですが、ここで早急に求められる集中投資とシステム改革について書いています。
 まず、マル1として、社会システムの改革が必要だということを改めて書いていまして、日本は長い停滞期ではあったけれども、大きな転換点を迎えているというところで、この段階で今まさにシステムを変えていくということを書いています。
 マル2ですが、次期の科学技術基本計画の期間の重要性を改めて書いています。少子高齢化の話ですとか、国際的な期待が高まっている話ですとか、そういったことを書いた上で、2番目の段落でございますが、我が国がこれまで培ってきた科学技術力や人材といった資源の蓄積や強みを生かして、豊かで活力のある国として存立する新たな基盤を構築し、世界的な知識集約型社会の転換を我が国が主導できるかどうかという点で極めて大切な移行期間であり、まさに決断と実行の分水嶺であると書かせていただいております。
 続きまして、7ページのマル3ですが、ここは集中投資について書いています。
 我が国は、躊躇なく科学技術イノベーションへの戦略的な集中投資を図るべき時期であるということを最初の認識に書かせていただきまして、1段落目の中段あたりですが、このため、次期計画中に官民挙げて科学技術イノベーションに対して集中投資を図ることが必要であると。また、実装につなげるエコシステムも重要であるということでございます。
 2段落目でございますが、短期的には、まずは知識集約型社会への移行をしっかり完了するということのために、現有のあらゆる資源を総動員し、最大限活用することが鍵となると。国費の事業は、基礎研究をはじめとする、非常に公共財としての性格が強いもので、知識集約型社会の基盤として重要な役割を果たすものに対して集中投資を行うべきであると書いています。
 また、真ん中下あたりでございますが、民間資金の科学技術イノベーションの投資が大幅に拡充されることも重要であるという観点から、国が「知」への投資の呼び水となるようなレバレッジ効果の高い政策を集中的に実施していくべきであると書いています。
 また、最後の段落ですが、長期的な視点といたしまして、大学改革と一体となった人材育成をしていくと、そういったシステムを構築していくことの重要性を書いています。
 簡単ではございますが、1章は大体以上でございまして、2ポツ以下は、2章以下の要約等を書いています。
 続きまして、2章以下、非常に簡単に説明させていただきたいと思います。2章、前回御議論いただきました9ページでございますけれども、黄色い部分が主に変更した点で、そのほかにもいろいろ変更はさせていただいております。
 2章のタイトルは「価値創造の源泉となる基礎研究・学術研究の卓越性と多様性の強化」とさせていただいた上で、少し各章にキャッチフレーズ的なものを付け、「~『知』の創造大国ニッポンへ~」としています。
 9ページですけれども、学術研究のところに大型の学術フロンティア研究プロジェクトのことを黄色いところで書かせていただいております。
 続きまして、10ページのマル3でございますけれども、研究の挑戦性の重視のところでは、大型の研究費については研究能力を適切に評価することも重要であるということを御指摘いただきましたので、若手向けについて、特に研究の挑戦性を重視していくような文脈で書かせていただいております。
 11ページでございますけれども、研究は継続性の際に過度な集中が起こらないような留意というのを書いています。
 また、マル6の人文科学と自然科学の融合のところは、実例として、津波研究のようなところで、古文書等の歴史学との融合のような事例を書いています。
 12ページ、若手研究者の自立促進のところでございますが、まず、博士人材の認識といたしまして、黄色いところでございますが、すぐれた博士人材は、知識集約型社会への転換が加速している我が国の発展を担うべき存在であり、産業界をはじめ、アカデミア以外においてもそういった人材が多様に活躍できる社会の構築が重要であるというのを基本的な方向性に書かせていただきました。
 13ページ、大学院教育の充実のところですが、大学院生に対する期待が、例えばスタートアップ企業ですと、技術志向の中小企業からニーズが高まっているということも併せて書かせていただきましたし、企業が奨学金に相当する金額を負担するというような形のインセンティブを用意しているということも書いています。
 続きまして、14ページ、マル4の大学等のアカデミアにおける安定的なポストの確保のところです。この黄色い部分ですが、多様で安定したキャリアや博士号取得者の有する知識や経験が適切に評価された待遇が用意されているというようなことが重要であるということを書かせていただいております。
 続きまして、主な変更点としましては、16ページに飛んでいただきまして、若手研究者の研究力向上のための機会の充実というところで、ここはマネジメント能力の向上も重要であるということ、また、マル9の女性研究者の活躍促進におきましては、業績評価においても、ライフイベントに伴う中断をしっかりと考慮することが重要ではないかという御指摘と、あと、女性の割合が少ない上位職への登用がまだまだ十分でないのでその一層の促進ということを書いています。
 マル10ですけれども、最後のあたりですが、中堅研究者の中には、この能力に見合った十分なポストが提供されず、不本意ながら身分が不安定な職に就いている者がいるというようなことを改めて認識として書いています。
 続きまして、17ページです。最高水準の研究環境につきまして、(2)マル1ですけれども、我が国全体の研究設備ですとか、そういったものを最適化するというような、そういった中期戦略が重要であろうということを一言書いています。
 また、下にありますように、共用モデルを考える際には、産学が連携して検討するという文脈を書いています。
 続きまして、19ページに移ります。技術職員のキャリアパスのところでは、技術職員には高度で専門的な知識が不可欠であるという文脈を書かせていただいております。
 また、真ん中あたりで、その能力に応じて高度な人材として位置付けられるということが重要であることを追加しています。
 20ページ、研究時間確保のための制度改革のところです。最後のところで、国の調査などにおける負担の軽減というものが重要であるという観点を追加しています。
 21ページ、国立研究開発法人の事務機能の国際化のところです。最後、ファンディングエージェンシーの機能強化の文脈のところですが、我が国の技術の国際標準化ですとか、科学技術外交の推進に積極的に役割を果たしていくという役割を追加しています。
 第2章の主な変更点は以上でございます。
 続いて、第3章以下を説明させていただきます。

【中澤企画評価課企画官】
 では、第3章以降、私の方から説明させていただきます。
 ページ数で言うと、23ページになります。
 3章の「知識集約型価値創造に向けた大学・国立研究開発法人の役割の拡張」でございますが、こちらもサブタイトルを追加してございます。「~大学・国研を新たな価値創造の原動力に~」というサブタイトルでございます。
 本文の中央のところに追加している部分は、こういった方向性をさらに強く打ち出していこうということと、他の閣議決定されているような文章などからも引用させていただいて、役割を拡張し、機能を強化していくことにより、変革の原動力としていくといったようなフレーズを追加させていただいてございます。
 おめくりいただきまして、24ページでございますが、これも前回の議論でございました「『知』の値付け」というフレーズが一部誤解を招く可能性があるんじゃないかというような御議論がございましたので、タイトルのところで「『知』の社会的な価値付け」という形に変更させていただきました。本文の方も連動して変更してございますが、括弧で「『知』の値付け」という単語自体も本文の中には入れているという状況でございます。
 25ページではクロスアポイントの部分について少し説明を補足してございます。なかなか進まないというような部分について、もう少しどういったところが根本的に原因なのかというところで、大学の現状についての課題など追記させていただいてございます。
 26ページは、黄色のハッチがかなり大きく書いてございます。こちら、中身自体はそんなに変更は多くないんですが、前回、カーブアウトベンチャーといったものを大学の中でどのように連携していくかというところで、これも企業の中でなかなか価値にならない部分というところが、何か大学が変な形で受け皿になるという誤解がないようにということで、まずカーブアウトベンチャーあるいは大学、企業の中で、潜在化しているものをどういうふうに外出ししていくのかといったようなところの意義と、それを大学の中で、プロセスの一つとして大学とも連携していけるような形にしていくというような形で、分かりやすく文書を書き換えてございます。
 続きまして、28ページ、29ページ、こちらもかなり大幅に変更させていただいてございます。黄色いハッチの部分でございます。
前回、委員の先生方から御意見いただいてございます。主な御意見、2点ございました。1点は、全体として、地方大学あるいは地域の大学といったようなところの書きぶりが弱いのではないかというような点、それから、もう1点は、大学自体をもっともっと個性化をしていくといったようなところを強く押し出していくべき、そういったような御意見を頂いてございまして、それを踏まえて、こうした書きぶりにさせていただいてございます。
 タイトル自体も、28ページの左下でございますけれども、3ポツ、「地域の多様化・特色化による国土全体での価値創造の推進」ということで、地方大学だとか、都会の大学とか、そういうことは差がなく、いずれにしても、我が国全体の中で個性化を進めることによって、世界に発信していくというような書きぶりにさせていただいてございます。
 29ページの上のところにそういったところがございますが、「グローバルニッチ」という言葉がございますが、デジタル化によって非常にニッチな取組であっても、世界に発信することで大きな関心、人々、結果的にお金も集まってくるというようなことで、徹底的に多様化、それから、個性、特色化というところを進めていくという戦略という話について書かせていただいてございます。
こちらについては、研究分野をいかに重点化していくかということに加えて、教育システム、あるいは大学の経営戦略といったようなところもどんどん特色化していくというような議論について追記させていただいてございます。
 3章の主な変更点については以上になります。
 4章、5章については細かい変更点が幾つかございますが、こちらは文言上のことが多かったので割愛させていただきます。サブタイトルについては、追加させていただいてございますので、31ページでございます。4章、「イノベーションの担い手の育成」でございますが、こちら、サブタイトルは、「~多様な『知』を育み、出る杭を伸ばす社会へ~」というような形で追記させていただいてございます。
 5章については、こちらもタイトルでございますが、もともと5章のタイトルは「デジタル化」というフレーズを使わせていただいたんですが、デジタル化だと誤解を招く部分があるのではないかということで、「デジタル革命の進展」というような形でフレーズを変えさせていただくとともに、サブタイトルについては、「データ・AI駆動の研究革命」というような形でさせていただいてございます。
具体的な変更の部分については、説明は割愛させていただきます。
 それから、前回の総合政策特別委員会において、第6章、7章については、議論、御説明の場がなかったので、この場で説明させていただきたいと思います。
 第6章でございます。「政策イノベーションの実現」ということで、サブタイトルは「~挑戦する行政へ~」という形にさせていただいてございます。こちらについては、前段までのところと少し毛色が違ってございまして、まさに科学技術イノベーションという政策の対象そのものがこれだけ目まぐるしく変わる社会という中で、行政そのものについても、今までとやり方というところはバージョンアップしていく必要があるのではないかということで、大項目としては3点挙げてございます。
 38ページ以降でございます。大項目を3点挙げてございまして、1つ目は、「大局観と現場感を持った政策分析」、2つ目が、「政策の自前主義から脱却」、最後は、「“前例踏襲主義”に陥ることのない政策づくり」でございます。
 お戻りいただきまして、「大局感と現場感を持った政策分析」でございます。まさにこのタイトルのとおりでございますが、部分最適に陥ることなく、やはりどのように全体最適を目指していくのかといったような観点、それから、逆に言うと、スローガン行政に陥るようなリスクというようなところを回避して、現場というようなところをいかにしっかりと見た上で行くかというようなところについて、全体としては書かせていただいてございます。
 「具体的な取組」のところはマル1番からマル3番までございますが、1つ目については、政策分析の強化でございます。エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、EBPMという単語を我々もよく使ってございますが、そういったところをやはり徹底的に強化して、こうした大局感を持ちながら、それから、エビデンスに持ちながら政策を作っていくというようなところをこれまで以上に進めていくというところ。
 それから、2番目については、現場をいかに巻き込むかというところで、そういった情報意見交換を徹底的に進めるということ、3番目については、水平展開と出口戦略の実施ということでございます。我々行政をやるときに政策のターゲットというものがございます。モデル事業というようなものは結構多くございますが、事例としてやってみたものをいかに横展開するかということでございます。政策のレバレッジとしての効果を上げていくのであれば、本当に横展開といったところを真摯に向き合って、理想論に陥らないように、いかに水平展開していくかというところを徹底してやっていくというような形でございます。
 39ページでございます。2ポツの「政策の自前主義からの脱却」でございます。
 全体としましては、行政、これまで以上に外の「知」をいかに使っていくかと、我々行政内部だけで、財源的なところも当然ながらですけれども、財源のみならず、いろんな取組ということについても官と民というところで連携していくことができるのではないかということでございます。
 具体的な取組、マル1は、政策の企画段階から、例えばベンチャーの起業家の方々だとか、いわゆるイノベーターの方々なんかとハッカソンをやりながら作っていく、そんなプロセスも考えられるのではないかと。あるいは2番目でございますが、昨今では、民間のビジネスベースでいろんな研究支援そのものをやっているような、ビジネスとして成り立たせているような取組もございます。こういったところをもっと一緒にやっていけるのではないかというような御趣旨でございます。
 最後は、3番「“前例踏襲主義”に陥ることのない政策づくり」、40ページでございます。こちらについては、我々行政官、あるいは行政の政策そのものについてチャレンジしていけるというようなところを意図してございます。
 具体的な取組では、1番、例えば、我々の評価というような観点においても、結果責任と、あるいは行政でございますので、当然そういったところは考えていくわけですけれども、政策のプロセスの段階では、徹底的に挑戦的なことというのを、中での企画検討という段階ではもっともっと取り入れていこうということでございます。
 2番目については、人事制度についても少し切り込んでございますが、行政官のキャリアシステムという中で、もっともっと外の「知」に触れるという機会が必要ではないかということで、イノベーション経営を実践している、多くはベンチャー企業の可能性もありますが、そういったところの人事交流を質的にも量的にも大幅拡充していくというような形で書かせていただいてございます。
最後、7章でございます。7章、「今後さらに検討すべき事項」ということで42ページ目でございます。
 こちらについては、まさに今回中間報告が取りまとまりますが、この後、年度末に向けて、最終報告ということで取りまとめていく予定でございますので、そこでどのようなことを議論していくかというような点でございます。
 冒頭の最後の段落のところで書かせていただいてございますが、今後、以下の2点について議論を深めるとともに、状況の変化に合わしてこれまで議論をしてきた部分、さらには科学技術イノベーションに対する集中投資の在り方について検討を行うということで、これまでの議論自体も進化していける場が後半できればと思いますが、主としては、以下の(1)と(2)でございます。
 (1)については、我が国の強みを生かした研究開発戦略の構築、いわゆる縦分野という言い方をしてもいいのかもしれませんが、そういった分野についてどのような戦略を立てていくのかというようなところについての議論でございます。
 観点としては幾つかございます。42ページの真ん中あたりに書いてございますが、我が国の強みをどのように捉えていくのかといったようなところでございます。基礎研究力の強みといったような部分もありますし、あるいは産業面、こういったところで双方に強みのある部分というところをどのように戦略化していくかというような議論、あるいは、当然ながら知財戦略、オープンクローズといったような観点というところ、さらには、未来社会からのバックキャスト、ニーズ・プルという言い方をさせていただいていますが、一方で、科学技術の潮流といったような観点からのフォアキャスト、シーズ・プッシュといったような、双方を考慮した研究戦略の立案ということで、今後、後半議論できればと。
 さらには(2)でございますが、科学技術と社会の関係性ということでございます。ビッグデータ管理技術、自動運転技術の進展等ということで、いろいろなところ、この事例に限らずですが、やはり社会の中で科学技術がどのような意味を持つか、さらには科学技術が社会との関係でどのような意味を持つか、そういった中で、1章にも当然書いてございます。ELSIといったようなところについて議論をしていく必要があるのではないかということで、7章についてはこのような形で書かせていただいてございます。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございました。
 それでは、資料1と2に基づいて、中間取りまとめの議論を深めていただきたいと思います。今回は資料の分量が多いため、初めに第1章、次に、前回御議論いただいた第2章から第5章、最後に第6章と7章という順番で御意見を頂きたいと思います。
 まず、第1章について、30分程度、しっかり議論をしたいと思います。御意見あります方はお願いいたします。いいかがでしょうか。
 五神先生、どうぞ。

【五神委員】
 第1章、かなりしっかり書いていただいたと思っています。
 まず、Society 5.0に関する記載は、第5期の議論の中で明確になったこともあるので、より良い社会を日本がどのように実現すべきか、冒頭に書き込むべきだと思います。具体的に言うと、デジタル革命は社会をよい方向にも悪い方向にも導く可能性がありますが、私達はより良いシナリオとして、Society 5.0を、意思を持って選び取り、世界のインクルーシブ・グロースに日本が主体的に貢献する、ということを序盤に書き込んだ方がよいのかなと思います。
 また、3ページで、「ヒューマンセントリック」の訳が「人間中心」となっていますが、SDGsの観点から地球環境に配慮していることをふまえますと、「人間中心」という表現の誤解を招く可能性もあるので、「人間主体」など、訳語に少し工夫があると良いのではないかと思いました。
 先週の9月19日に開催された、第30回未来投資会議などでも議論したのですが、日本はアベノミクスで資金を作ることはできたものの、最大の問題は、それが未来への投資に結びついていないことです。非金融系企業の現預金総額は2012年以降、55兆円ほど増加し、家計資産も200兆円近く増加しました。これらを未来のための先行投資に結びつける仕掛けをどのように作るかということが重要です。
 ただ、ここ1年で、実は企業のキャッシュの増加速度がかなり減速したという報告もあるので、様子を見ていかなければなりませんが、これまでの蓄積として、企業のキャッシュは約223兆円あるので、それを吐き出す仕組みを検討することは、なお重要だと思います。
 また、知識集約型社会において価値をどのように生み出すかということについては、やはりデータ解析の技術や、データそのものに価値があることは明らかなので、そのデータ活用をテコにして、より大きな価値を生み出していくことが大事だと思います。全国にある大学は、データ活用のための資源をふんだんに持っているので、大学を使い尽くすということが大事です。例えば、中国は文化大革命以降、最初に軍事を強化し、次に工業化を行い、そして現在は、来るべき経済の主体が「知」だということで、大学に莫大な投資をして、大学を使い倒していると言えます。その投資額は、「双一流」政策によって増額し、北京大学や清華大学は運営費に相当するものが年間数千億円あります。東大はもちろん運営費交付金を一番多く交付されていますが、法人化のときに約900億だったのものが、今は約780億になっているという状況で、日本と中国では大学への投資の桁が違います。しかし、日本は国の資金は限られているので、民間の資金が大学へ流れ込む仕組みをどう作るかが重要です。しかも、大学はこれまでの人材の発射台という役割から衣替えをする必要があるので、一過的な、大規模な先行投資が必要だという意識もまた重要です。企業のキャッシュが約55兆円増えた状況のなかで、大学はその資金投資の受け皿になり得ると思っています。このことをきちんと中間取りまとめに書く必要があるだろうと思います。
 大学への投資という観点ではまた、いろいろなところで発言していますが、学術ネットワークのSINETが、データ利活用の基盤となる情報流通網、すなわち社会インフラとして重要です。SINETは有線でつながっているクローズドなネットワークです。今年のダボス会議で安倍首相が提唱した「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」を進めるためには、セキュリティーが極めて重要です。SINETが採用しているのは、通常のインターネットを介したバーチャルプライベートネットワークではない、L2-VPNと言われる接続形態です。これにはデータ流通をセキュアにおこなうための暗号処理にともなう、計算負荷が小さく消費電力が少ないという優位性があり、セキュリティーの観点からも評価できます。速度が速いということに加えて、セキュリティーの観点からもSINETは社会システムインフラとしての価値があるということを、中間取りまとめでは分析的に書けると良いと思います。
 次に資金循環についてです。産業界での議論を聞いていると、ESG投資がSDGsに明確につながることは明らかと考えられているものの、調べた結果、あまり相関がない、という解析結果を時々耳にします。しかし、重要なことはそのような解析ではなくて、ESG投資がSDGsにつながる仕組みを作り、そのようなムーブメントを大きくしていくことです。大学はその役割を担うこともできます。
 特に環境問題は万国共通の問題なので、グローバル・エコシステムの中で日本がどのような立ち位置をとるか、そしてどのような役割を果たすかという観点からも、大学は重要です。世界でインクルーシブ・グロースを進める中で日本が主体的に経済を引っ張っていけるような立場に戻れる可能性もあります。その資金循環については、大学が受け皿のひとつとなっています。1つ参考になるのは、イギリスの大学です。オックスフォード大学やケンブリッジ大学が、2017年頃から、100年債や60年債という長期の債券を発行しています。日本の大学も債券を発行することができますが、特定の事業のために発行し、その事業の収益で償還する場合に限られています。大学の持っている「知」の資産や信用についてが、資金調達のツールとなるのです。今の、低金利時代に、巷に止まっているお金を動かす仕組みとして債券は重要です。債券発行は同時に、ゲームチェンジのための一過的で大規模な投資を大学に呼び込むための仕掛けとしても重要になります。我々も具体的に検討し始めていますけれども、実際に資金を集めることができるという感触を持っています。
 別の話になりますが、量子コンピューターが最近急に、様々なニュースで取り上げられています。私が総長をやっている間に、技術が具体的に進んだことを実感しています。OSやソフトの開発には、小規模であってもハードの実機がないと進みません。この七、八月に、実機を動かしながらハードからミドルウェアアプリまでを一気通貫に開発する先陣争いが始まったというような動きが世界でみられます。日本がAIのときのように、世界から遅れてしまってから対策を講じることにならないように、中間取りまとめにも、可能であれば具体的に書いていただければと思います。今ならまだ間に合います。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。いかがですかね。

【大洞文部科学戦略官】
 なるべく今の趣旨で書いているつもりではございますが、今、いろいろご意見頂いたものをさらに加えて、最終版とさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【濵口主査】
 この100年債とかのお話はある程度改革を進めないと、法的なバックグラウンドも伴ってくるんでしょうね。

【五神委員】
 現状でも法律的には大学は債券を発行できます。ただ、債券が運用された実例を見ますと、特定の事業について、所定の年数の間に償還性があることを提示したものについてが、認められています。しかし、60年債、100年債といった長期債はそのようなものではありません。もちろんある一定の利率、リターンは出せる程度の体力が大学にあることを示す必要はありますが、償還のための収益を生まないものについても、長期債の場合は資金調達の可能性があります。例えば、大型基礎研究のための装置を導入するために200億円を調達する際などです。大学による長期債の発行は、今の日本の経済環境、あるいはやるべきことを考慮すると、新たな資金循環の方法としては重要といえます。
 また、グリーンボンドやソーシャルインパクトボンドといった形式であれば、大学の規模に応じてどこの大学でも発行は可能です。手数料などのコストを集合的に低廉に抑えるような仕組みなどのサポートがあれば、多くの大学がそれぞれのニーズに応じて利用できるようになるだろうと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 どうぞ、じゃ。

【知野委員】
 ありがとうございます。1ページの基本認識、基本的考え方のところですけれども、全体にSociety 5.0とかいろいろ並んでいると、ほかの経済関係の政策とか、ほかの政府のいろいろな報告書との違いがはっきりせず何の報告書かよく分からなくなるのではないかと思います。1の最初に4行ぐらいパラグラフがありますけれども、そのところで、8ページ、例えば、今こそ基礎研究・学術研究が大事であるとか、国内の大学、国研、それから、企業の研究力を高めていく必要があるんだという、その辺を最初にうたって、これから科学技術に関して論じていくなどとした方が、この報告書全体がつかみやすいかなと思いました。

【濵口主査】
 どうですか。

【大洞文部科学戦略官】
 分かりました。ちょうど1ページの最初のところの段落4行ほど、基本的認識の要約がございますけれども、まず、ここのところで、先ほど五神委員もおっしゃったような、Society 5.0をもう少しいい社会にもっていくという話と、今、知野委員がおっしゃっていただいたような、基礎研究が大事になってきているというところを少し書くように工夫したいと思います。ありがとうございました。

【濵口主査】
 冒頭の4行のところですね。

【大洞文部科学戦略官】
 はい。少し膨らませます。

【濵口主査】
 もう少し膨らませてということで。
 ほかいかがでしょうか。
 はい、どうぞ。

【川端委員】
 私もちょっと気になっているのは、要するにSociety 5.0、これを全体に広げていくと、集中投資とするんだとなるんですけれども、ど真ん中に、社会システムという話なはずなんですよね。その社会システムは一体誰が変えるんだという、要するに技術を作れば社会システムは変わるのかというところが私には気になっていて、それがポンチ絵になれば、さらに明確になっていて、真ん中に日本の地図が書いてあって、左側に企業から大学への大規模投資と書いていて、右側にはスタートアップベンチャーが何か作れるんだ、ビジネスをできればいいんだという、こういうストーリーしか見えないんですよ。
 でも、今、ここで必要なのは、人間中心のインクルーシブであったり、SDGsであったりというものがカウンターで必ずやってくると。ここに対して、大学だとか研究機関はどう動くんだって、こういう動きになっていてほしくて、そうなったときに、今、さっき言ったのは、大学から大規模投資とか、それからベンチャーも含めたこういう話というのは、どちらかというと、大企業を中心にした大きな話の中で、大きくお金が流れるところの話をしている。
 一方で、地域はどうなのかと。後ろの方では書いていただいたんですけれども、地域を誰が活性化していくのかって、そのコミュニティーは誰が作るんだという、そこのところをど真ん中に、次の人間中心のインクルーシブ社会をどう作っていくかという、そこの主体に我々がなっていくという、そのストーリーがどっかにもっと現れてほしいなと思っています。
 それは一体何かというと、人間中心のインクルーシブ社会の実現の、この下の4行を読んでみると、結局、いいデータに誰でもアクセスできれば、誰一人取り残されない社会ができるのかというと、そんなわけはなくて、それを活用するコミュニティーが必要と。コミュニティーは誰が作るんだと。自律的にそれをやるための中に、文系とか人社系の活動も含めた大学だとかの活動がその中に埋め込まれていくと。そこをもっと強く出していただけるとありがたいなと思いながら、単語としては全部入っているんですけれども、ストーリー的にはどうしても、技術のど真ん中の最高のそれをどう新たに作っていくかというストーリーにしかなっていないんで、やはり社会をどう取り込むかというところにもうちょっと文章を入れていただければと思います。

【大洞文部科学戦略官】
 4ページ等でちょっと工夫させていただきます。ありがとうございます。

【菊池委員】
 ちょっとよろしいですか。

【濵口主査】
 どうぞ。

【菊池委員】
 表現なんですが、例えば、マル1の1段落目もあるんですけど、「パラダイムシフトが起きつつある時代を迎えている」と。この「つつ」というのはもう要らないんじゃないですか。そういうのが結構いろいろありまして、「高付加価値なサービスを生み出しつつある」と書いてありますが、「つつ」だったら、もうサービスを生み出す必要があるというくらいのものだと思っていまして、こういう曖昧な表現じゃなく、明快に言い切って、こう進むんだという表現の方が、せっかくすばらしい考えを後段に全部述べてありますので、整合性がとれるじゃないかなと思いました。

【濵口主査】
 すいません、これは私に大分責任があります。「つつ」とってください。

【大洞文部科学戦略官】
 進行形というよりは、すでにある程度進んでいるというニュアンスをもう少し強めます。

【濵口主査】
 現在完了形になってきているので。

【畑中委員】
 よろしいですか。

【濵口主査】
 どうぞ、お願いします。

【畑中委員】
 ありがとうございます。第1章の基本認識で、特に基本的考え方のうちの(1)現状認識のマル3「我が国の科学技術イノベーション政策の置かれた状況」は、この報告書の一番基本的なところになると思います。今までの基礎研究への投資の積み重ねによって、大きな成果が得られていることが書かれていて、加えて産学連携の進展にも触れられており、ポジティブな面にハイライトされていることは非常に大事なことだと思っています。
 一方、「もう一つの課題として、」から始まる第2パラグラフでは、科学技術関係予算、Top10%補正論文数、そして特許出願数など、もちろんTop10%補正論文数は質的側面も含まれているとはいえ、量的側面からの考察は書かれておりますが、質的な面の考察としては、「国際的に突出した成果が十分に生み出されていないという認識や挑戦的な研究や探索的な研究が減少しているとの認識がある」との表現に留まっています。関連するエビデンスをお持ちだと思うので、量的な面と合わせて、質的にも最終的に目指す方向に繋がる記載にしていただきたいと私は考えます。

【濵口主査】
 一定のデータはありますので。

【大洞文部科学戦略官】
 こちらは前々回紹介させていただきました科学技術・学術政策研究所の定点調査の記述から書いておりますので、エビデンスという形では、欄外に引用を書く形にしたいなと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【竹山委員】
 マイナーな指摘です。4ページの「ピンチ」という言葉が使われていますが、他の言葉で表現したほうが良いかと思います。
 あと、次の6ページです。「慣性の法則」、突然出て来ますが、特に必要がないように思います。存続し続ける傾向がある、ですね。

【濵口主査】
 お願いします。「ピンチ」は私もちょっと引っ掛かっていまして、我が国にとって挑戦というぐらいの方がいいかなと。ちょっと検討させていただきます。
 どうぞ。

【塚本委員】
 ありがとうございます。6ページの3のマル2の5行目について、趣旨は、正しいとは思いますが、言葉の使い方についてご検討をいただいたほうがよいのではないかと考えます。「地政学」というと、ある特定地域となり、例えば北東アジアの情勢などであれば該当しますが、米中もたとえにいれると、やや違和感があります。また、「国際政治の流動性」というのは、あまり一般的ではなく、たとえば、予見可能性の欠如とかの方がなじむようにも感じますので、ご意向に沿うようであれば、御検討いただければと思います。

【大洞文部科学戦略官】
 ありがとうございます。

【濵口主査】
 お願いします。ほかいかがですか、よろしいですか。
 はい、どうぞ。

【菅委員】
 どうもありがとうございます。ちょっと最初、インプレッションから、最初からずっと見ていて、最初、デジタル革命という言葉が出て、次、またデジタル革命が出てきて、またIoTが出てきて、インターネットが出てきて、ほとんどデータだけで我々は生きていくのかという印象をどうしても持ってしまいます。やっぱりこれは何のためかといったら日本国民のため、人類のため、これ、国民に向けて出すメッセージだと理解していますので、余り最初からデジタルとか、そんなことばっかり書かれていると、若干、人はどうなるんだろうという印象を私は受けました。そこはちょっと配慮していただいた方がいいかなと。恐らく読む人はほとんどデジタルに目が行くと思うんですよ。データとデジタルとIoTと、そんなのばっかりなので、そこは少し気を付けてください。
 Society 5.0がそういうコンセプトでやっているというのはよく理解していますが、それはやはり人があって、社会があっての話なので、そこが最初にまず出てきて、それからそういうものが必要であると、それが人間をいかに助けるかという話をした方がいいのかという気がします。
 それから、2ページの一番下側ですけれども、「もう一つの課題として、」と頭についているんですが、その中にどこか課題が書いてあるかというと、ちょっと課題が見つからないんですよ。

【濵口主査】
 すいません、これ、ちょっと途中の改訂のミスですので。

【菅委員】
 それは書き直していただくといいと思います。

【濵口主査】
 ちょっと入っていたのが、ほかへ移った。

【菅委員】
 そう、分かってます。

【濵口主査】
 これ、先生の言われる意味で、SDGsだとか、インクルーシブという言葉をもう少ししっかり……。

【菅委員】
 最初に出てきた方がいいかなと。

【濵口主査】
 キーワードが頭へ来た方がいいということですか。

【菅委員】
 印象が余りにも、データ、デジタル、IoTと偏り過ぎて……。

【濵口主査】
 1-1の基本的な考え方のところにしっかりそこをもう少し書き込むということでしょうか。

【菅委員】
 はい。

【濵口主査】
 お願いします。

【大洞文部科学戦略官】
 はい。

【濵口主査】
 ほか、いかがでしょうか。もう大丈夫ですか。

【冨山委員】
 ちょっと今回の話ではないかもしれないんですけれども、同じく印象論なんですが、さっき地政学の話がちらっと出てきましたけど、これは五神先生なんかがよく御存じなんですけど、今時の日本の東大をはじめ、トップ大学周りのディープテックのベンチャーを支えているのは、実はどんどんノンジャパニーズになっていまして、どんどんノンジャパニーズになってきている背景というのは、実は地政学的に日本がすごくいい場所になってきて、例えば、今、私が卒業したスタンフォードに合格する中国人の数はどんどん減っています。いろんな事情があって。恐らくこの傾向は多分戻らないと思います。
 これは米中問題も覇権の問題なので、別に今回の貿易摩擦が解決しても、ずっと続きます、これは。21世紀ずっと続いちゃうような話です。とすると、要はアジアの高度人材から見ると、もうはっきり言って、シンガポールはあれ以上人が住めないところなので、ぱんぱんの状態です。実はシンガポールも最近高度人材を若干閉ざし始めていて、なぜそれが起きているかというと、余りにも高度人材がいっぱい入ってきちゃって、シンガポール大学を卒業した平均的成績の子ってシンガポール国内に仕事がないんですよ。という状況が起きていて、要は高度人材を引き受けるキャパシティー、それは量的な問題と、それから、社会的、文化的な、自由度であるとか、いろんな大学の環境であるとか、あるいは、居住、生活環境、ビザとか、そういういろんな条件を考えたときに、今、日本は抜群の、圧倒的優位な立場になりつつあって、したがって、東大周りの、ディープテックのベンチャーからすると、とにかく優秀な中国人であるとか、インド人であるとか、東欧の人が、実はかなりリーズナブルな条件で今雇えるようになっているんです。
 これって、もう構造的にかなり何十年ぶりかにめぐってきたチャンスだと思っていて、要するに知的高度人材というものが、まさにSociety 5.0ということをまじめに考えるんであれば、これは別にデジタルだけじゃなくて、今、菅先生が言ったように、それはバイオだろうが何だろうが、全ての面において、アジアに30億人、40億人いるのかな、インドと中国で30億人いますから、例えば、いわゆるギフテッドって2%とか、NHKでやっていますから、ギフテッドって単純に計算して6,000万人ぐらいいるわけで、このうちの1割でも日本に来たら、これは大変なことになりますよね。
 今回のラグビーワールドカップを見ていても、あれを見ていると、日本人だけでやっているわけじゃないんだけど、日本人よりサムライ・スピットの人がやっているわけでありまして、ひょっとしたら本国に残れば南アフリカの代表になれたような人とか、オールブラックスに入れたようなやつが日本代表に入ったんですよね。特に知的高度人材の世界というのは、ああいう世界になっていくと僕は思うんですよ。そのときに、日本というのは閉じた国で、アメリカや中国やシンガポールに比べると不利だから、優秀な人は全部日本をスルーしてアメリカに行っちゃうとか、中国に行っちゃうと、今まで思い込んだ感じがあるんですけど、明らかに今、流れが変わってきています。
 それで、そう考えると、ここに書いてあることを実現していくのはやっぱり人材でありますから、そういった高度人材が日本に来てくれて、できれば定住してくれて、場合によっては帰化してくれて、2世から日本人になっちゃうみたいな流れがすごく大きく出てくると、多分20年後、30年後の日本の姿はすごく変わるし、それが生まれてくると、多分世界中から今度資金が流れ込んでくると思います。ですから、その流れを変える、今、すごく絶好機がやってこようとしている。絶対一過性じゃないので、構造的にやってこようとしているので、これを今後どう生かしていくかというのが、多分日本のポストオリンピックの、だから、オリンピックはそういう流れを作るいい機会なんですよね。そうすると、大成長戦略になるんじゃないかなと最近思い始めておりまして、すいません、終わりのところでこういうふうに言い出して申し訳ないんですけれども、最近すごく思っている次第なんで、ちょっと先の参考にしていただきたいのと、ひょっとすると、そういうニュアンスのものをもし載っけられるなら載っけてもらえたら嬉しいと思います。
 以上です。
 ありがとうございます。

【濵口主査】
 実はJSTもそういうのを最近分析しておりまして。

【冨山委員】
 やっぱりそうですか。

【濵口主査】
 1つは、外国人の研究費の受給率、まだまだ低い、ここら辺に問題があります。ただ、JSTでファンディングした人のフォローアップをやってみますと、その後ずっと、10年、20年、日本にいる人は結構いるようになってきている。これが1つ大きな変化だろうと思っています。
 それから、もう一つは、東南アジアの科学技術は相当変わってきておりまして、シンガポールがサチュレートし始めながら、マレーシアがすごく伸びていて、でも、マレーシア、タイ、シンガポール、この3強がかなり日本に肉薄し始めております。7割、8割が国際共同研究になっています。その国際共同研究の主体は、やっぱりイギリスが強いんです。かつては日本が2位だったんですが、20世紀末、今は7位ぐらいです。オーストラリアとか、意外なところではイタリアがすごく連携していて、ヨーロッパが相当入っています。日本の東南アジア戦略は科学技術面で遅れているなというデータを私ども少し分析しております。

【冨山委員】
 ポイントなのは巻き返すチャンスだということと、それから、あと、やっぱりアジアの人によっては故郷が近いので、日本は。アメリカ、ヨーロッパへ行くよりは、中国の人なんて2時間で自分の家に戻れますから。親が向こうにいたりして、実家に。北海道と変わらないので、あの環境って。いや、これは大事ですからね、若い人たちにとっては。そこはすごくチャンスかなと思っています。

【濵口主査】
 御指摘のとおりです。
 五神先生、どうぞ。

【五神委員】
 中間取りまとめ中にデジタルという言葉が目立つという菅先生の違和感と、今の話はおそらく関連しています。今までの科学技術政策というのは、経済的な成長のために科学技術をどう活用するかという、拡張型の経済成長モデルのもとで検討されてきました。拡張型の成長についての限界がみえてきたなかで、格差を解消するようなインクルーシブ・グロースを実現するためには、まだ成長の余地が相当あるという、新しい経済発展のシナリオが議論されるようになりました。有限な地球の中で、どのように日本がグローバル・エコシステムの中でしっかりと貢献をするか、それを言葉で言ったのがSociety 5.0だったということだと思います。デジタル革命がバッドシナリオにいかないように、意志をもってよいシナリオを選び取った結果、Society 5.0へ行き着けるというイメージです。
 先ほど冨山さんがおっしゃった風向きの変化は、おそらく5年前の第5期科学技術基本計画の検討の際には私が感じていなかったような大きな変化なのだと思います。アジアの中でも、例えば、タイなどは完全な先進国と見るべき部分が多くなっているように、地政学の状況が大きく変化しています。その結果として、日本に大きなチャンスが来ています。材料やモノづくりいった、簡単には立ち上げられない分野に、日本はもともとの強みがあるため、高度な技術や人材を供給することで、グローバル・エコシステムに重要な貢献ができます。経済的にも、科学技術も発展し、未来の人材を育てることができる良いシナリオが見えてきたところです。この良いタイミングのなかで、デジタル革命をどう使えばよいかを考えながら、きちんと良い未来のシナリオへむけてやっていきましょうという話になればいいと思います。冒頭のところを入れ替えれば、今の話は取り込めると思います。

【濵口主査】
 どうぞ。

【新保委員】
 私も基本的な考え方のところで、まさに今出てきた意見で、恐らくこの委員会も皆さん御自由に発言されるので、事務局はこの後修正されるのが大変だろうなといつも思っているんですけれども、確かにどの報告書も枕言葉としてデジタル、データ、ネットワーク、グローバル、少子高齢化、これはもう必ず入っているというか、必ず入れておかないといけない用語だと思うんですけれども、私もこれに違和感を全く感じていなかったんですが、菅先生の御指摘のとおり、確かに冒頭の基本的考え方、ここで安易に、冒頭に人間中心とか持ってくればいいのかというと、これまたおかしくなってしまって、この主語も、投資を表に持ってくるのか、パラダイムシフトが上か、社会システムか、イノベーションの促進にするか、そうすると何か経済産業省の報告書になってしまうのではないかみたいな。
 ふと表紙を見ると、知識集約型の価値創造に向けた科学技術イノベーション政策、これをまとめるのが今回の中間取りまとめだと思いますので、ですから、表紙を見ると、この表紙そのままが基本的考え方をまず、知識集約型の価値創造に向けた科学技術イノベーション政策のために、この今の枕言葉が全部入ってくるということであれば、事務局も少しは修文が見える。方向性がどうかなというのが私の意見であります。

【濵口主査】
 ありがとうございます。大変助かると思います。
 大洞さん、よろしいですか。

【大洞文部科学戦略官】
 はい。

【濵口主査】
 それでは、ちょっとお時間もございますので、次の2章から5章のところの集中議論をお願いしたいと思います。御意見ある方、どうぞお願いします。
 越智先生、どうぞ。

【越智委員】
 文言も少しあるんですけれども、例えば13ページのマル2、大学院教育の充実によるキャリアパスの多様化ということで、黄色の部分、「取り組む動きも見られる」というような形でいいんですかねというのが1つです。
 もう一つ、私自身が思っているのは、研究の時間をどう作るかというところとこれはちょっと関係してくると思うんですが、御存知のように働き方改革が4月から変わりました。そのときに、時間外労働の上限を原則としては年360時間、臨時的に720時間です。医師は臨時的に960時間というのが検討されているということなんですが、これは罰則付きで規定されていますから、大学の教員、研究者にとっても適用になります。
 実際に、それとは別ですが昨年の8月に島根大学に労基署が入って、島根大学は9,000万、香川大学も2,500万だったと思うんですが、時間外手当を支給しなさいということで、22時から5時までですか、それは時間外、土日ももちろん含まれます。だから、研究した時間に対してお金を支給しなさいということで、お金を持っている大学は支給できると思うんですけれども、一定時間以上は働けなくなるというのが、研究時間を確保しないといけないと言いながら相反するのではないかと。
 それで医師の方を見てみますと、2024年までに決めていこうということになったんですけれども、7月1日に、医師は特別にある条件を満たせば、それは研鑽としてみなされて、労働としてみなされないというようなことになったのは御存知だと思うんです。一般診療における新たな知識・技能の習得のための学習、それと、博士の学位を取得するための論文とか研究、それと専門医を取得するための症例研究や論文作成、そして手術手技を向上させるための手術の見学とかいうようなものは、新たに判断の基本的な考え方が出てきたわけです。
 ですから、もし医師がそういうふうなところが認められるのであれば、医師以外の研究者にも認められるように、今からでも遅くないと思うんですけれども、文部科学省あるいは厚生労働省をはじめとした各省が、これはちょっと検討しないと、研究時間を確保して論文をたくさん書いていきましょうというところが全く書けなくなるんじゃないかなというふうに、そこをちょっと私自身は危惧しているんですけれども。

【濵口主査】
 これ、先生、従来は裁量労働制という枠で、ある程度申告する形で自分の時間をコントロールしてやってきていますけれども、それがかなり厳しくチェック……。

【越智委員】
 もうこれはだめになりました。働き方改革で。

【濵口主査】
 どうぞ、お願いします。

【森高等教育局審議官】
 高等教育局です。労基署の考え方としては、裁量労働は裁量労働なんですけれども、いわゆる休日勤務でありますとか深夜の割増賃金、これは裁量労働であっても適用になりますので、その部分に関しては割増賃金を支払う必要性が出てくるということで、裁量労働の方であっても、時間外勤務手当ということではないんですけれども、いわゆる割増賃金の部分は適用になるので、その部分が必要だということを指摘されたということだろうと思います。
 ですから、時間の制限というものに関しては、裁量労働と、先ほどあった医師の方、医師については裁量労働ではない中での時間外勤務を何時間までするかというお話なわけなんですけれども、そういう中で、大学の研究者の方については、基本的には裁量労働をとっておられる方が多いわけでありますが、そういった場合においても、いわゆる深夜であるとか休日勤務に関しては適用になるので、その辺の扱いが問題になったということだと思います。
 その辺について、確かに大学の側にとっては、これまでの実態からすると、取り扱いとして困る点も出てくるのではないかというお話が、そういう問題の課題があるというのは私どもも認識しておりますけれども、制度としてはそういうことだということでございます。

【越智委員】
 島根大学のは昨年の8月で、働き方改革以前の話なので、これはまたちょっと別の問題になるんじゃないかと私は思っているんですが。

【森高等教育局審議官】
 その働き方改革の話とは別で、もともと裁量労働であっても、深夜業とか休日勤務については割増賃金を払わなければいけないと、そういう制度でございます。

【越智委員】
 ただ、そうすると、研究者は今後も割増賃金を払えば、土日にかなり出てやっていくというのは可能なわけですか。

【森高等教育局審議官】
 ただ、そうすると、大学としてはそれだけの払うものがあるかというか、そういう考え方でもともと組んできたわけではないと思いますので、それでどういうふうに扱うのかということだろうと思います。
 だから、本来は、裁量労働であっても、ある程度の時間の管理というのは、ないといけないという、そういうのはあることはあるわけです。

【越智委員】
 私も病院長をしていたので、時間外の取り扱いというのはよく分かっているんですけれども、ただ、改正後には法律による上限というのが設定されたわけですよね、この4月以降は。

【森高等教育局審議官】
 それはいわゆる、時間外勤務労働をさせる場合を何時間までというような制限であります。だから、それはそれで、いわゆる時間外労働の時間を何時間まで認められるかという話なんですけれども、先ほど先生のおっしゃった島根県の例というのは、それはまたちょっと違うという。

【越智委員】
 はい。別です。

【森高等教育局審議官】
 ということではございます。ただ、おっしゃった点に関しては、多分研究者の研究の仕方の実態からすると、ちょっとこれはどう扱ったらいいのかというのは悩ましい問題だというふうに私どもは思っています。

【濵口主査】
 機械も動物も土日休んでくれないんです。なかなか悩ましいところだと思います。

【越智委員】
 どういうふうな形で落とし込んでいくのがいいのか私もちょっと分かりませんけれども、そういう視点がやっぱりあるということは自覚しておいた方がいいんじゃないかと思うんです。

【濵口主査】
 どうぞ。

【冨山委員】
 働き方改革って結局、この表題の言葉で言ったら、労働集約型産業を前提とした法体系なんです。知識集約型の価値創造と働き方改革って、全く何らのリンケージがないので、多分哲学的にこの領域ではあれは間違っているんですよ、根本的に。要は、20世紀の労働集約型産業を想定した議論なんです。確かに日本の国内もいっぱいまだ労働集約型産業があるので、そういうところで働いている人たちをどう守るかという議論は、これは全く正しいんだけれど、ここで議論している知識集約型の価値創造と時間って、はっきり言って全然関係ない話なので、多分そこの根本的な違いを、政治的にしようがないから捨象して、要するに四捨五入しちゃったわけでしょう。なので、その問題も先送りしたんだと思うんですよ。これは大学だけじゃなくてです。うちみたいなプロフェッショナルファーム含めて、あれは極めてナンセンスな規制なんだよ。というのは、やっていることが違うので。
 変な話、ちょっと分かりやすい例で言っちゃうと、錦織がウインブルドンで勝ちたいと。だけどおまえ、何時間以上練習したらだめだという規制なんですよ、あれは。突き詰めて言っちゃったら。はっきり言って余計なお世話ですよね。渋野さんがどれだけゴルフの練習が……、余計なお世話なんだけど、要するに、あれは結局、一定時間以上練習してはだめだという規制なんですよ。
そうすると、そもそも根本的にミスマッチが起きているんです。極めて根本的な。この問題は、私は何らかの問題提起を僕はしておいた方がいいと思います。というのは、今の規制がけしからんというのではなくて、あれは労働集約型産業においては決して間違っていないんですよ、僕思うんですけど。だから、あの規制はうちのバス会社においてはいいんです。だけど、ちょっと悪いけど、東大前のディープテックのベンチャーであんなこと言われたって何か笑っちゃうし、今、越智先生が言われたように、研究の最先端であんなこと言われたって笑っちゃう話なので、そこはやっぱりどこかで私も問題提起しておいた方がいいような気がします。私は。

【濵口主査】
 これやっぱり、文部科学省としても何らかの議論はやられておられるんですかね。

【菱山科学技術・学術政策局長】
 何て言いますか、冨山先生がおっしゃるのは、研究の現場ではそのとおりだと思いますが、一方で、労働関係法は大学も病院も全て引っ掛かるので、そのとおりなのであって、それをどうするかというのは、私が今、答えに窮しているように、検討は今のところされてないと思います。

【濵口主査】
 了解しました。多分一番の問題は、病院の特に若手医師は、労働集約型の労働もやりつつ、知識基盤型の、これを1人で両方やっているところなんです。グレーゾーンがいっぱいあるところが整理し切れていないということなんです。

【越智委員】
 病院の医師に関しては、それは労働とみなさないというふうになったわけですから、研究者にしても労働とみなさないと。上司とか会社からぐっと押し付けられたというものを除いてということにはなるんですけれども。

【濵口主査】
 それをオフィシャルにある程度きちっとまとめるべきであるということですかね。

【越智委員】
 というふうに私は思います。

【濵口主査】
 どうぞ、お願いします。

【大洞文部科学戦略官】
 20ページの研究時間の確保の文脈でおっしゃっているんだと思いますので、高等局とも相談して、どのような問題提起、問題点があるかということに言及できるかどうか、検討させてください。

【濵口主査】
 お願いします。宿題ということでよろしいでしょうか。

【冨山委員】
 私、一応、労政審の基本部会の委員なんで、今日の話をちゃんと受け止めて、ちゃんと問題だと扱います。約束します。

【濵口主査】
 よろしくお願いします。
 ほかいかがですか。知野さん、お願いします。

【知野委員】
 24ページの価値付けのところですが、前回の値付けというのを価値付けという言葉に変えていただきましたが、やはりこの価値付けという言葉が分かりにくいと思います。必要なコストの積み上げだけではなくて、そこから生み出される知に対して価値を評価すべしと言ってらっしゃるのだと思います。特許収入とかそういうことだけではなくて。そうすると、例えば知の価値を重視する社会へとか、何かそういう平らな言葉に直した方がいいのではないかなと思いました。

【濵口主査】
 どうでしょう。

【中澤企画評価課企画官】
 まさに、今現状、大学にある特許に限らずですけれども、現在ある知的価値というものの現在価値のみに立脚して、なかなかそこに価値というものを社会の中で表すことができなかったところを、いかに未来に向かってそのものを使ってどんなことができるかというところを、この場合は大学と産業界が一緒になって作っていくというような、将来に対する価値がどのようなものが大学にあるのかというところを考えていくというようなところで、今そういった取組が少しずつ大学の中、あるいは企業との関係ででき始めていると思っていまして、そこを拡大していくというメッセージを書きたいつもりなんですが、御意見も踏まえたいと思います。

【知野委員】
 大体おっしゃっていることは想像できたので、例えば、知のかぎ括弧の中に価値を入れて、知の「価値」を重視する社会へとか、何かそういう方が分かりやすいかなと思いました。

【濵口主査】
 どうぞ。

【五神委員】
 おそらく前回、活発な議論があったのだろうと思うのですが、知識集約型社会へのパラダイムシフトにともなって、価値の作り方も変化します。例えば、いまは、格好が良くてよく走る車に価値があり、それを皆が高額で買いたがるような時代ではありません。その車をどう使うかというところに、要するに無形のサービスに価値を認めるのが、知識集約型社会の経済における特徴でもあるわけです。それは産業界と大学の共同研究の場合も同様です。これまでのほとんどの共同研究で、作業をするために必要なコスト、例えば試薬や大学院生の労働などのコストを積み上げることで、契約の費用の値付けが行われてきました。知識集約型社会における価値の考え方は、そうではありません。企業の課題を解決する大学の知識の価値は、その企業にとっては、コストの積み上げではない、別の価値付けがあるはずです。これが「値付け」という言葉についての私のイメージです。しかし、日本の社会においては、知識集約型社会へのパラダイムシフトを前提としておらず、先ほどの労働時間の議論のように、何時間働くかということが価値のベースになってしまっています。働き方の改革と同時に、何を価値とみなすかという社会システムを変えないといけません。
 大学について言えば、価値の転換ができないのは大学にも責任があったわけです。つまり、共同研究に積み上げではない価値を大学と企業が合意して定めるためには、どのような責任を果たすかという約束をきちんと明文化しなければなりませんが、大学にはそのような仕組みはありませんでした。この数年の間に大分改革が進んできて、法曹資格をもつ職員を雇用するなどして、知的な価値を提示した契約書を企業と交わすことができるようになりました。しかし全国の大学は依然として、そのような仕組みがない中で、知的な価値が非常に低く見積もられることが多いと思います。このままでは大学が知識集約型社会において未来社会を創るための役割を十分に発揮できないと、中間取りまとめでは表現したかったのです。表現の工夫は必要だと思いますが、分かりにくい話ではないと思います。

【濵口主査】
 例えばある企業なんかは、マネジメントでお金を稼いでいます。何時間働いたから幾らという形でない、極めて方法論にすごい価値があります。それがもう少し大学のこのシステムを利用していただくときに価値を付加していただく形に我々としては転換できないのかなという問題提起です。
 それで、重視ではなくて、価値を見ていただきたい、そこに価値があることなんです。重視というと、私もちょっと物足りないなと実は感じるんですが、重視はずっとしていただいている。だから、日本社会は大学の先生が死ぬと新聞でも死亡広告をちゃんと出していただける。アメリカではあんなことはないんです。だから、それだけ尊敬していただいている。すごくありがたいし、だからこそ公的な仕事であるという思いでみんな働いているんだと思います。自分の労働時間とかそういうところを考えずに誠心誠意働いている部分、そのすばらしい日本社会の伝統的な構造はあるんですけど、もう少しそこに評価を入れていただきたいという思いがちょっとこういう言葉になっているんですが、語感はどう変えるかということを、事務局、議論させていただけますでしょうか。

【冨山委員】
 今の点は公正な評価と実現という話ですね。

【濵口主査】
 そうですね。

【冨山委員】
 本来の価値を公正に評価して実現するということをこれは意図しているんでしょう。そうですよね。

【濵口主査】
 そう。無形の価値提供しているところにある程度評価をしていただきたいと。
 どうぞ。

【橋本委員】
 よろしいでしょうか。今、産学連携のいろいろなプログラムがある中で、昔は結局、ある特定の研究室の教授と企業との相対で、じゃ、1本幾らでお願いしますみたいなところから始まっているのを、もう少し組織と組織で、しかもコストも含めて透明化しようという議論があって、例えば大学の方も、大学職員のアワーレートを出すみたいな、一旦数値化しましょうみたいな今動きが出てきていると思うんです。ある意味ではプライスリスト、価格表を作って、この教授が何時間働いたから幾らですと、一遍ちょっと透明化しようというところがようやく始まっている。だけども、今おっしゃるように、実はそれでは計り切れない、大学にある知の蓄積の価値をどうその研究費なりそういう形で出すかという、また次のステップの議論が始まっているのかなと私も思います。ですから、そこら辺の表現。
 私は値付けというよりは、価値評価みたいな形で表現してはどうかなと思っていたんです。確かにその辺がもう少し分かりやすい表現が必要なのかもしれませんが、そのプロセスを今経ている、その途中なのかなと思っております。

【濵口主査】
 多分、知野委員が感じておられる、見ておられるのは視野が広いんだと思うんですけれども、例えばこの問題でいくと、越智先生の問題提起にも絡んでくるんですが、病院で例えば、日本でトップの名医が手術しても、駆け出しの研修医が手術しても、日本は同じ値段なんです。時間が掛かった方がコストは上がってくるし、手術が下手なほど入院時間は長くなってコストが上がるという、こういう構図がある。医療現場ではずっと、我々は腹の底には抱えている問題ですよね。でも、日本国民のために誰でもフリーアクセスできる医療社会を作るというところが大前提でずっと来ているんです。
 例えば、隣の中国を見ると、上位、中位、下位でお金が違うんです。ちゃんと20年前からそんなのがありました。だから、こういう議論を始めると、ある種、かなり視野が広がった議論がずっと起きてくることはあると思うんですけれども、越智先生、御意見ありますか。

【越智委員】
 おっしゃられるとおりで、中国は階で値段が違う医師が診ています。一番トップの階に上がると、中国では診ないというような階があって。昔、私が医師になった昭和52年頃から、それはもうかなり先輩からも言われていて、手術のアシスタントに私が行っても給与は同じなんだと。返してこいとか言われたことも私はあったぐらいなんです。もらい過ぎだと。いや、そんなにたくさんもらっているわけじゃないんですよ。その人から見たらもらい過ぎであるというふうなことを言われていて、それはもうずっとディスカッションがあるんですが、誰も問題提起をきちっとした形では起こさない。これは今までも続いてきたし、そういうふうなことで日本の社会を支えようというようなことがあって、ちょっと手術がうまくなったからお金をたくさんもらおうとかいうふうに日本の医師が思っていないという。メンタルなところがあるので、これは将来的にどういうふうに変わっていくか、変わるべきかというところはディスカッションが要るんじゃないかなと私も思っています。

【濵口主査】
 菅先生。

【菅委員】
 ちょっと話題変えます。お医者さんから離れます。
 産学連携でいろんな形があると思うんですけれども、基本的に、価値は最初に出ないんです。最初から価値があることはまずないです。産学連携において何が出るか分からない。なので、最初に価値を決めることは極めて難しいです。価値を決められるとしたら、何か特許が出て、そのときに初めてロイヤリティーを、ではどうするかこうするかといって価値を算出していくことになると思います。
 なので、本来は産学連携、今話しているような、会社の課題を解決するような産学連携を今後進めていくならば、産はその価値を最初に決められない以上、特許は全て大学に帰属するとすべきです。それでもって初めて特許が出来上がったときに、これは大学が全て持っていて、それをエクスクルーシブにライセンスするかどうかを最初に吟味できるのがその資金を提供した会社と。その会社がこれは価値がないなと思ったら、その大学は別のところに持っていけばいいだけのことだと思うんです。
 要は、最初から価値を決めるのは不可能で、最初に価値を決めずに、後で価値を見出すという方向に、今後産学連携というのは向かっていかないと、大学がやはりエコシステムとして生き残っていくこともできないし、産業側も最初から価値出せと言われたら、すごい金払わないと産学連携できなくなるので、その辺は今後の産学連携の形というのは議論していくべきことで、それをここに書くかどうかは別にして、来週私は内閣府でも同じようなことを言おうと思っているんですけれども、そんな感じだと思います。

【濵口主査】
 入りますか。

【中澤企画評価課企画官】
 最近の産学連携の事例では、ストックオプションを使う形で、知財を単純にライセンスする形ではなくて、将来価値という形でストックオプションというものも進化しつつあるんだろうなと思っています。実際に大学の数字で見ても、知財収入の中に占めるストックオプションの割合が急激に伸びています。ほかのところは少し伸びているという形ですけれども。
 先生のおっしゃる趣旨は、そういったところも含めて、将来価値というのをどういうふうに考えていくかということだと思いますので、工夫したいと思います。

【菅委員】
 そうですね。それは多分ベンチャー系で、私の創った会社はそれで随分と東大さんに貢献していると思うんですけれども。恐らくベンチャーの場合はお金がないのでストックオプションで買えると。もう一流企業になっているところは、その価値を最初に算出しろと言ってもやはりできないので、そこはじゃ、あなたたちがその価値は全部一旦持っていい。そのできたものを今度はどうするかという、産学連携が2つ変わってくると思うので、そういうところも踏まえて、こういうところで産学連携の位置付けというのはあってもいいかもしれません。

【濵口主査】
 ちょっとそこら辺、進化させていかないといけないところですね。
 菊池委員、お願いします。

【菊池委員】
 非常にマイナーなところなんですが、カーブアウトのところです。せっかく博士課程の部分を強調したいというところもずっと前段であったものですから、第2段目のところを……。

【濵口主査】
 何ページ目ですか。

【菊池委員】
 26ページのマル4の第2パラグラフの真ん中辺だと思うんですが、親元の企業から一定期間独立して、大学等のビジネススクール等への入学と書いているんですが、このビジネススクールの前に博士課程を思いっきり出したらいかがですかという。そこまで含めて持っていければ、前から博士課程のところの、もっと強調したいというのにつながるかなと思ったものですから、そういうふうな方向で検討願えればと思いました。

【濵口主査】
 ありがとうございました。入れてください。

【大洞文部科学戦略官】
 その方向で修文いたします。

【濵口主査】
 ほかいかがでしょう。2章から6章、よろしいでしょうか。
 どうぞ。

【川端委員】
 また蒸し返して24ページに戻るわけなんですけれども、社会的な値付けの話はさておきまして、それはそう。
 知の循環の促進という、こちら側の話が書かれていないんですよ。要するに人材で循環するみたいになっていて、どうしても産学……、後半、中間まとめの後で地域課題の話を、社会課題の話をするというので、多分そこが入って、この中にそれが盛り込まれていくのかなとは思うんですけれども、何らかの形でこれを頭出ししていただけると、というのが1点です。
 それが中身は何かというと、要するにここでの議論で、値段がいわば、今までの産学連携よりは非常にコストが掛かりますよと表に出ていくわけです。一方で、中小企業との間の産学連携は一体どう推進されていくのかという。値が付いて高くなればなるほど、中小企業はリーチできなくなってくるという。それが結局、大きな社会を変えていく原動力になっているはずなんだけど、そこにどうしてもリーチできないというのが今までのストーリーの中ではずっと感じていた話で、どこかに頭出し、それは後半戦でまた社会課題として議論されるのであれば、そこでしっかりやれば、さらに加われていいんですけれども、是非24ページのあたりに社会課題としての産学連携の在り方みたいな話を入れていただけるとありがたいと思います。

【濵口主査】
 お願いします。

【菅委員】
 同じことですよね。最初に価値を付けることはほぼできないので、それは大学に帰属しますと。その後話し合って値段決めましょうという方が随分とすっきりしていると思うんです。だから、中小企業でもそれだったらアクセスできると思うので。

【川端委員】
 値段を付けた後に、お金の循環の仕方ですよね。だから、1年、2年で収支決算してしまうような、出したものをもらうんじゃなくて、5年とか10年かけて回収できるとか、新しいシステムが必要だという話だと思いますけど。

【濵口主査】
 2章、6章よろしいでしょうか。

【塚本委員】
 6章もよろしいのでしょうか。

【濵口主査】
 どうぞ。

【塚本委員】
 理解が間違っているかもしれませんが、2、3、4、5章はWhatを記載していて、6章はHowとなっているように思います。

【濵口主査】
 6章は次でした。2から5でした、済みません。
 6章、7章のところ御意見頂ければと思いますけど。

【塚本委員】
 6章について、コメントをさせていただきます。

【濵口主査】
 どうぞ。

【塚本委員】
 何度も済みません。2、3、4、5章に関してはWhatを書いていて、6章に関してはHowというか、政策をどういうふうに作っていくかということを記載しているので、少し書き方を膨らませて、最初のところに、Society 5.0の実現で世界をリードする国にしていくためには、このような政策が必要、などというストーリー展開にしたほうがつながるのではないかと思います。また、6章に関しては、例えば文部科学省で主体的に進めていくなど、もう少し自らがやっていくというような意思のような表明があるとよりよいかと感じます。
 以上です。

【濵口主査】
 これは文部科学省として。

【大洞文部科学戦略官】
 おっしゃるとおり、行政、我々がやるべきことを書いているのが第6章ですので、そこが最初のところにメッセージとして伝わるようにさせていただきます。

【濵口主査】
 どうぞ。

【竹山委員】
 6章だけ何か雰囲気がとても異なる文章になっている気がします。その前までは、理解しやすい書きぶりですが、6章からは多分文部科学省の担当の方々の自戒の念が入った文章になっているようですね。唐突的なところもあるので、全体を見直す必要があるかと思います。小見出しもよく見直しをしていただきたいと思います。

【大洞文部科学戦略官】
 ありがとうございます。

【濵口主査】
 御指摘は感じますか。

【大洞文部科学戦略官】
 コメントさせていただいてもよろしいでしょうか。第6章、メッセージを、どういう構成で何が言いたいかというところをうまく、構成等を工夫しながら、そこは修文したいと思います。
 最後の点ですが、文部科学省も博士課程卒業の者を毎年行政官として採用するようにしています。ただ、その方々も五、六年たつと現場がかなり変わってくるので、現場と常にやりとりをして、現場感というのは持っていくことが、我々にとって重要であるということだけはちょっとコメントさせていただきます。

【竹山委員】
 現場感は重要かと思いますが、もう少し格調の高い小見出しになってもよいかと思います。

【濵口主査】
 例えば、現場を巻き込んだとか、これは何と品が悪い言葉だなと思った。変えることはなくて、今日まで来ちゃったんですが。

【大洞文部科学戦略官】
 表現ぶりをちょっと工夫させていただきます。ありがとうございます。

【濵口主査】
 どうぞ、知野さん。

【知野委員】
 その関連で申し上げたかったのですが、これを読ませていただくと、前例踏襲主義からの脱却とか、今の行政の仕組みから脱却しなきゃいけないと考えていらっしゃるというのは分かるんですけれども、ただ、行政に関しては、研究費にしても何にしても、税金を使っているわけで、そういう中で公平性とか透明性とか、そういうものをどう担保していくべきかという点で少し不安になります。その辺の目線がないので。やはり私たち一般の者が行政に対して期待するものというのは、その点があるわけで、何でもかんでも言われたら、誘われたら、何でも協力しますよみたいな感じがちょっとトーンとして強いような気がするので、その辺も目配りして書いていただきたいと思いました。

【濵口主査】
 重要な御指摘です。透明性、公平性、説明責任というのは絶対必要ですね。
 どうぞ、お願いします。

【畑中委員】
 今回、基礎研究、学術研究の振興に集中投資をして、大きく変えていく最後のチャンスであると記載されているので、行政は何をする必要があるかというところも書くべきであると考えます。第6章の1.大局観と現場感を持った政策分析の(2)具体的取組を見ても、何となく国の中枢に近い人たちと推進していきましょうというトーンが強いため、基礎研究を増やしていかないと、日本の研究、あるいは日本も含めた世界に貢献できないというところを国民とディスカッションする取り組みが必要であると私は思います。
 企業にとっては説明責任を果たすことが最重要であります。例えばガバナンスについて等、幾つかの項目がありますが、R&Dの投資先を決定することに対しては極めて重要な企業の説明責任があります。ですから、今回、国が基礎研究に集中投資をしようと決めたら、行政としてなぜ投資が必要なのかをきちっと説明する必要があります。この委員会が国民代表の場と思われたら困るので、もっと幅広く国民に対する情報発信、対話を重要視していくことを記載していただきたいと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。貴重な御意見ですね。
 ほかいかがでしょうか。どうぞ、五神さん。

【五神委員】
 今回、政策イノベーションの議論ということは、国がどのようなところを主導するかということを考えるのですよね。知識集約型社会に向けて、国としては何をするのかという意味では、自前主義からの脱却と書いてあるのはそのとおりだと思います。いま、国が使うことができる資金は限られていますから、一国でやることだけでは知識集約型社会に転換できないわけです。そのために、レバレッジを効かせたり、企業がためているキャッシュを投資へと向かわせるための呼び水を用意したりすることが大事です。しかし、それだけでは不十分です。例えば先ほどの議論にありました、経済原理に任せたままにできない地方の問題については、どのようなレギュレーションや政策をとるかが重要になります。そのことを十分承知したうえで、自前主義からの脱却と書いてあるのでしょうけれども、その中で国はどのような責任を持つべきか、特に巷にあるお金について、この国の未来に向かって有効な形で使えるような仕組みをどのように誘導していくかということは、書いていただきたいと思います。

【大洞文部科学戦略官】
 ありがとうございます。コメントよろしいでしょうか。第6章について、まさにおっしゃるとおりで、もう少し行政そのものの本質とかすべきことを踏まえた上で、さらに足りないところという観点で書けるようにしたいと思いますが、中間取りまとめで全て入れるのは、議論も必要だと思いますので、最終取りまとめに向けてはそういう形にさせていただいて、中間取りまとめのところは、今日御指摘いただいたところをなるべく反映する形で修文をさせていただきたいと思いますが、そのようなことでよろしいでしょうか。

【濵口主査】
 よろしいですか。ありがとうございます。
 7章のところはいかがですか。よろしいですか。

【菅委員】
 ちょっと私1つだけ。しょうもないことです。すいません。私がいつも学生に言っていることを。(1)の2番目のパラグラフで、「産業界の高い研究開発能力品質管理能力等が挙げられるが」で、「が」と入れちゃっているんですけれども、この「が」はやめませんか。「が」と言うと否定的に取られることも、これはどっちでもいいけど、後ろが重要と取られたらいけないので、そこはちゃんと丸にして、「それらを維持・強化していくとともに」というふうにしてくれるといいかなと思います。

【濵口主査】
 ここは、「挙げられ」ですかね。

【菅委員】
 「挙げられる」で丸にしていただいて僕はいいと思います。

【濵口主査】
 「る」で止めてもいいですね。

【菅委員】
 はい。全然大丈夫だと思います。

【濵口主査】
 ほかいかがでしょう。よろしいでしょうか。

【五神委員】
 SDGsは2030年のゴールへむけた取り組みになっています。また、第6期科学技術基本計画は2025年までです。しかし、2040年や、パリ協定の2050年やさらにその先に向かって、それらをどのように仕込むかという長期的な視野をもった議論がなければ、おそらく不十分でしょう。
 例えばダボス会議などでも、プラスチックごみの話や温暖化の話が中心になっているわけですが、世界がインクルーシブ・グロースに向かうということを考えると、Society 5.0というサイバーとフィジカルが融合し不可分な状態の社会になってゆくわけです。そのときに、例えば地球環境についてのグローバルコモンズといった議論は、フィジカルにかなり特化した議論です。Society 5.0を踏まえて、2050年あたりまでを視野に入れた議論は、サイバーとフィジカルが一体となった世界のコモンズはどうなる、といったものであるべきでしょう。そのような文脈で、インクルーシブ・グロースに日本が積極的に貢献するというメッセージを、未来型で書くようなものが最後にあると、よいのではないかと思います。
 これは実は、G20などで日本が提唱したDFFT(Data Free Flow with Trust)にも直接関連する話です。つまり、データというサイバー空間のものをどのようにトラスト、信用ある形で、みんなでシェアできるかということです。それがサイバー空間だけではなく、フィジカルとの融合について、検討することが重要です。例えば温暖化について、パリ協定の目標をクリアしようとした場合、ハードウエアの話、電力のエネルギーミックスの議論だけでは決して解決しません。サイバー、フィジカル融合の中で、コモンズをどのように位置付けて、それを高い価値のものとしてみんなが認めるような、科学技術を発展させていかなければなりません。

【濵口主査】
 ありがとうございます。大変重要なポイントです。ずっと先を見据えた、どうあるべきかということをもう少し準備させていただいて。

【大洞文部科学戦略官】
 工夫させていただきます。

【濵口主査】
 どうぞ。

【冨山委員】
 一応私、電力会社の取締役をやっているものですから、今の話にちょっと反応するんですけど、例えばSDGsの話もパリ協定の話も、割と世の中的にはありがちな議論としては、要はポリシーチェンジとか、人文社会科学的領域で大半の問題が解決できると思っている節があるんですが、これは全くノーでありまして、実はものすごく科学技術に対してストレスがかかるんですよ。要するに、ものすごいブレークスルーをすごい勢いでたくさんやらないと絶対無理なんですよ。ということは、SDGsを促進するために云々というよりは、この話はマスト条件に近くなっていて。要は、例えばの話ですけど、スウェーデンのお姉さんが頑張っていますと。なんだけど、あの話が一番深刻な問題は、先進国の企業行動のパターンの問題だけではなくて、後進国と先進国の対立なんです。後進国は圧倒的にローテクで安く使える石炭を燃やしたいんです。貧しいんだから。現状、貧しくて技術のない人たちに、太陽光発電だけでグリッドコントロールして、もう、これ、冗談はよしこさんです。とにかく安くてローテクで使える石炭をたきたいんですよ。この問題になっちゃうんです。ということは、この問題を解決しようと思うと、テクノロジイノベーションというのが相当進まないと、最後は極めて深刻な、生々しい対立問題にあれは絶対沈んで消えるんですよ。せいぜい先進国でちょろちょろっと太陽光が普及するぐらいの話で終わっちゃって、全然パリ協定はクリアされません。
 なので、今、五神さんが言われたことにちょっと触発されちゃったんですけど、相当この領域に全世界的に期待と負荷が掛かるということは僕はアピールしてもいいような気がしているし、これはちゃんとやらないとパリ協定なんて絶対不可能ですから。そうすると、人類の存続の問題に関わっちゃうので、そのニュアンスはすごく強く出てもいいし、その中で結構、日本の持っている電池なんかも含めて、テクノロジーって結構、クリティカルテクノロジーが多いんです。だからそこは何か割と。それもさっき言った地政学的風向きの変化も含めて、いろんな意味で日本に対する期待は、結構真剣に高まると私は思っているので、そこは大事かなと私も思いました。

【濵口主査】
 ありがとうございます。ここら辺のポイントは少し書き込んでもいいですね。

【大洞文部科学戦略官】
 はい。

【冨山委員】
 強調してもいいかもしれない。

【大洞文部科学戦略官】
 最後に頂いたコメントは是非書き込みたいと思います。ありがとうございます。

【濵口主査】
 どうでしょう、6章、7章よろしいでしょうか。もう少しお時間ありますので、もう一回全体を見て言い足りなかったこと。これは最後の10分でございます。もう受け付けませんので。いかがでしょうか。
 全体の大きな構成としては、第1章の基本認識の1ポツのところをもう少ししっかり膨らますということと、やっぱり第7章が意外とこれは命かもしれませんね。ちょっとそこまで頭が十分回っていなかったかなという実感がございますけれども。
 いかがでしょうか。菅先生、どうぞ。

【菅委員】
 GDPに対して科学技術の投資の割合を上げることを目標にはできないですかね。それが本当に最大の行政が持つべき挑戦で、科学技術に関してはほかの国に比べると、近いのは確かですけれども、負けているのは事実だと思います。

【濵口主査】
 これの悩ましいところは、多くの大学の先生方が基礎研究にもっと投資をと言っておられて、そこのところの――ステレオタイプ的な価値基準があって、ちょっと対立的な空気があるんですね。

【菅委員】
 そうですね。私なんかはどっちかというとイノベーション側に寄っているように皆さん思うんですけど、相当基礎研究を重視している研究者でもあります。逆に言うと、僕は今、基礎研究をやる研究費がほとんどなくなってしまいました。こういう時代になってしまっているというのが、私でもないんですから、これはほとんどないですよね。基礎研究しかやっていないというか、そういう言い方はちょっと申し訳ないですけれども、基礎研究を本当に中心にやっている場合はかなり難しくなってきているのは事実です。だから、そこをイノベーションにこれだけ力を入れるんであれば、基礎研究も入れられるように増やしていかないと絶対無理だと思うんですよ。これから支えていくイノベーションを持たなければいけない基礎のところが薄くなっていくというのは、私はすごく危機感を感じています。

【濵口主査】
 どうぞ。

【大洞文部科学戦略官】
 今の点については、文部科学省だけではなくて、内閣府と経産省と総務省などいろんな省庁とタッグを組んで、そこの重要性をしっかりと政府の中で位置付けていくということが重要だと思いますので、第6期基本計画に向けて、そこは一緒に頑張っていきたいというふうに思います。
 また、我々の報告書は、やはり基礎研究というのを第2章の中で一丁目一番地に持ってきておりますので、それがCSTIの議論でもしっかりと反映されて、そこへの投資が、国の投資だけではなく、民間の投資も含めてされるというような形にしっかりと持っていきたいと思っております。ありがとうございます。

【濵口主査】
 どうぞ。

【五神委員】
 先ほどの知の値付けの話とも関係しますが、値段をどう付けるかということは本質ではありません。そうではなく、知的な活動が経済的にも評価され、結果として資金が循環する仕組みをどう作るかということが重要です。菅先生の産学連携のケースは、結果的に資金が循環した数少ない例というわけです。では、資金を循環させるためにはどうすればよいでしょうか。確かに、値段を明確に示すことができないものに対してお金を出せというのは難しいかもしれません。だからといって、国が税金を財源とした補助金で積極的に支援するということも、もはやできないわけです。ですから、やはりレギュレーションなど、国内でできることをきちんと考えて、政策に落とし込むということ、そしてやはり大学にお金が流れるメカニズムをどう作るかということに知恵を出していくことが重要です。先ほどの知の値付けの議論のところは単純な話ではありませんが、しっかりと検討すれば深く書けそうな話だなと思いました。そして実際に第6期の期間中に達成しうることを目標としなければ、紙が出るだけで終わってしまっては意味がありません。菅さんのおっしゃるとおり、科学技術に対する投資は足りていないと思います。GDPの何%にあたる投資が必要になるのか言えるかどうかで、影響力は違ってくるのだろうと思います。

【菊池委員】
 すいません、最後に一言。

【濵口主査】
 どうぞ。

【菊池委員】
 今、五神先生がおっしゃった知の値付けのところにも入っているんです。今また日本が置かれている状況じゃないかなと思うんですが、はっきり言いまして、精華大学に100億出すか東大に100億出すかとなったときに、ランキングは精華大の方が高いじゃないですか、何で東大に100億なんですかっていう議論がやっぱりあるんです。文部科学省は真剣に考えてほしいんですが、あのランキングってばかにならなくて、結局予算決めをしていくときに、やっぱりそっちの方を見ちゃうんです。そうすると、我々はそれをディフェンドするときにいろんな理由を述べていかなきゃいけない。こんな、はっきり言って不毛な時間を会社の中で使わなきゃいけないということも、実は現実としてあるんです。そういうことも踏まえると、やっぱりこの文部科学省の予算は増やしてもらわんと、本当に何ともならんじゃないのかと。そういうときに、やっぱり置かれている現実を何かもうちょっと、きれいごとじゃなくて、思いっきりある部分では出さなきゃいけない時期にもう来ているような気がしてなりません。
 すいません、半分愚痴みたいなものなんですが。

【濵口主査】
 ありがとうございます。実感は本当に同感です。
 どうぞ。

【菱山科学技術・学術政策局長】
 まさにおっしゃるとおりで、国際的に、企業から見たらどこの国の大学かというのは、もう一番いいところに出そうというところだと思うんです。それはアカデミア側から見ても、どの企業が一番いいのかというのを選ぶ時代であるというふうに我々も認識しています。
 その中で、この中にも書いていただいているように、やはりそれだけの魅力、企業が投資をしたくなるような、そういった魅力のある大学になるようにしたいというのでこれは書いてありますので。予算をどうするかというのは付随的に付いてくると思っています。
 さっき、予算の話が菅先生からもありましたけれども、それはどこで勝負するか、いつのタイミングで勝負するかというのはあると思っております。いずれにしろ集中投資するとか、あるいは魅力的なものにするという形でこの中には書かせていただいているので、今後、さっき大洞も申し上げましたように、総合科学技術・イノベーション会議、それから各省とも連携していきたいと思っております。
 ただ一方で、我々は今、予算要求をしているところでありますけれども、主計局からはいろいろ言われていて、社会保障費がほとんどを占めていて、しかも赤字国債をばんばん出している状況でありますので、非常に厳しい状況で、まさに財務省から言わせれば、社会保障よりも大学に投資した方がいいですよというのをちゃんと示せというところでもありますので、是非そういったところで皆さんと一緒に知恵を出し合いながら、我々も交渉していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【濵口主査】
 ありがとうございます。よろしくお願いします。いいお言葉を頂いたところで締めにしたいんですけれども。よろしいでしょうか、もう言い残したことはございませんか。
 それでは、司会を事務局にお返しします。

【中澤企画評価課企画官】
 ありがとうございます。では、最後、主査の方から御確認いただいた方がいいかもしれませんが、今日頂いた意見につきましては、主査と御相談させていただいて……。

【濵口主査】
 大分深掘りしたい御意見頂いたところがありますので、冒頭のところと最後のところぐらいはもう一回、メールでお諮りして御意見頂いて最終案をまとめるという方向にさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。6章も大分文言を変えないかんですね。

【中澤企画評価課企画官】
 それでは、我々で一案練りまして、主査と御相談させていただきました案を一度御拝読いただいて、それで中間取りまとめといった形でまとめさせていただきたいと考えておりますので、またよろしくお願いいたします。

【濵口主査】
 今後の流れですけど、そのステップを踏ませていただいて修正を図った上で、最終的にはホームページで公開してCSTIの次期科学技術基本計画への議論にもインプットしていくという方向で作業を進めさせていただきます。どうかよろしくお願いします。
 次回以降は、今後検討すべき事項に示されている項目です。我が国の強みを生かした研究開発戦略の構築、科学技術と社会の関係性の在り方、これに沿って議論を深めて、最終取りまとめに向けた議論をさらに図っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 日程等の御紹介をお願いしたいと思います。

【中澤企画評価課企画官】
 まず、議事録については、前回同様に確認の上でホームページにアップさせていただきたいと思います。それから、中間報告に向けた取りまとめについては、先ほどのとおりとさせていただきたいと思います。
 なお、次回でございますが、既にお伝えさせていただいてございますが、11月7日13時からの開催予定でございますので、よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 どうも今日は長時間ありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 

お問合せ先

科学技術・学術政策局 企画評価課

(科学技術・学術政策局 企画評価課)