総合政策特別委員会(第28回) 議事録

1.日時

令和元年7月23日(火曜日)16時30分~18時30分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 中間とりまとめに向けた骨子案について
  2. その他

4.出席者

委員

濵口主査、橋本主査代理、越智委員、菊池委員、郡委員、五神委員、新保委員、菅委員、塚本委員、土井委員、十倉委員

文部科学省

山脇文部科学審議官、柳官房長、村田研究振興局長、森高等教育局審議官、山﨑技術参事官、林研究開発局開発企画課長、菱山科学技術・学術政策局長、真先文部科学戦略官、角田科学技術・学術政策局総括官、横井科学技術・学術政策局企画評価課長、大洞文部科学戦略官、中澤企画官、磯谷科学技術・学術政策研究所長

5.議事録

科学技術・学術審議会 総合政策特別委員会(第28回)


令和元年7月23日


【濵口主査】
 それでは、ただいまより科学技術・学術審議会総合政策特別委員会を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 最初に、事務局から、出席者の紹介をお願いいたします。

【中澤企画評価課企画官】
 事務局でございます。事務局の方、7月9日付での人事異動ございました。恐縮でございます。今、来ていないメンバーでもございますが、当担当課科学技術・学術政策局の局長で、菱山が着任してございます。菱山は後ほど遅刻で参加させていただきます。
 それから、大臣官房の官房長、柳が着任してございます。

【柳官房長】
 どうも柳でございます。よろしくお願いします。

【中澤企画評価課企画官】
 また、科学技術・学術政策局の担当でございますが、文部科学戦略官に真先が着任してございます。

【真先文部科学戦略官】
 真先でございます。よろしくお願いします。

【中澤企画評価課企画官】
 科学技術・学術政策局の企画評価課長に横井が着任してございます。

【横井企画評価課長】
 横井でございます。よろしくお願いします。

【中澤企画評価課企画官】
 よろしくお願いします。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 それでは、会議開催に当たりまして、まず資料の確認を事務局からお願いいたします。

【中澤企画評価課企画官】
 資料については、議事次第、今日、紙でお配りしています議事次第の紙の裏側に資料番号が振っているものがございますので、御確認ください。また、資料はお手元のタブレットの中にも入ってございます。タブレットの中に入っている資料が全部でございますけれども、別途、紙で配付している資料が今日の議論でメインの資料になるものでございますが、資料1と参考資料1については紙でも配付させていただいてございます。また、参考資料2、これはタブレットの中に入っている資料でございますが、前回、科学技術・学術審議会の各分科会から、正に第6期科学技術基本計画に向けた御意見を頂いてございます。この中に、情報委員会の資料が追加で加わってございますので、そちらもあわせて、お時間あるときに御確認ください。また、机上の紙の配付資料といたしまして、五神委員提出資料という2枚紙を配付させていただいてございますので、こちらについても御確認ください。
 遅れまして恐縮でございますが、7月9日付で、科学技術・学術政策局長としまして、菱山が着任してございます。

【菱山科学技術・学術政策局長】
 菱山でございます。よろしくお願いいたします。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 本日は、議題1において、9月の中間取りまとめに向けた骨子案について御議論いただきたいと思います。
 まず議題1に移ります。事務局から資料1について説明をお願いいたします。

【大洞文部科学戦略官】
 事務局から説明させていただきます。資料1ですが、前回まで論点(案)ということで議論しやすいような形になっていましたけれども、今回、スタイルを報告書に近い形に変えています。一見、外見が変わっていますが、中身については、黄色いところが主に追加、変更のあったところで、それ以外のところは論点とそれほど変わっていません。
 中間取りまとめに向けた骨子案の1枚目ですが、まず基本的考え方を整理しました。
 現状認識と、目指すべき国の姿。そして、早急に求められるイノベーションシステムへの集中投資とシステム改革という欄にまとめております。
 現状認識はほとんど変わっていません。知識集約型の(モノからコトへ)という話ですとか、あとはパラダイムシフトが起こっていること。今こそまさに重要なタイミングであるということでございます。
 2番目の目指すべき国の姿ですが、前回も今回も付けております参考資料1で、かなり知的集約型社会に向けた価値創造システムというお話を議論いただきましたので、その点を主に加えております。
 最初のポツでございますけれども、知識集約型社会において知の力で世界をリードしていくために、知の創造の源である基礎研究を強化するとともに、それを中核とした知の循環により高付加価値が創出される、そういう知的集約型の価値創造システムを世界に先駆けて構築していくというところを加えております。また、2番目の課題につきましては、SDGsについて、気候変動等の例示を加えております。
 3番目でございますが、我が国の強みについてこの前議論いただきました、基礎研究から産業技術まで厚みのある先端科学技術力と人材を要するというところを新たに加えております。また、リアルテック、例えば、医療、交通、電力、製造などの現場におけるデータにも強みがあるということを加えています。
 3番目の集中投資とシステム改革のところは、もう少し切迫感をという御意見ございましたので、なるべくそのように書いておりまして、日本への期待と日本への強みを生かして、知識集約型社会への移行という世界の変革に即時に対応していくために、2025年までの今が決断の分水嶺であり、千載一遇のチャンスであるということを加えております。また、そのために科学技術イノベーションシステムに対する集中投資を官民挙げてしていただくということが重要ということを加えております。また、あらゆる人材資源を総動員すると。スピード感を持って社会システムを変革していくということを加えております。
 また、2番目ですが、長期的な視点も重要だという御意見を頂いておりまして、今世紀中頃を見据えて、あらゆる分野の人材育成を担う大学の改革と、あとは国際社会においてリーダーシップを発揮し、次代を牽引するような高度知識人材をしっかりと育成していくというビジョンが必要であるということでまとめております。
 また、目指すべき方向性でございますけれども、こちらにつきましては、従来の柱をまずは5本に整理しております。1番目は、価値創造の源泉となる基礎研究と、また、学術研究。これは学術分科会からかなり学術研究の重要性、御意見をいただきましたので、表題にも入れる形で、学術研究の卓越性、多様性と。これを戦略的に事業化することを考えてございます。
 また、2番目の価値創造システムの中の大学、研究開発のシステム機能強化については、従来の文脈で書かせていただきました。
 3番目のイノベーションの担い手とキャリアパスを多様化するというような文脈で一つまとめてございまして、ここはシニア世代や女性の活躍ということと、また、多様な場で活躍できるキャリアシステムの構築ということを中心に書いております。
 4番目ですが、これは研究システムのデジタル化ということを少し分かるようにタイトルを変えたということと、あと、我が国の立ち位置や強み等を踏まえて、重要な領域を中心に、世界に先駆けて、社会のデータや研究データを活用していくと、こういうシステムを変革していくというような文脈を書いてございます。
 5番目は、政策について、挑戦性やスピード感をしっかり持っていくと。これを政策立案の在り方に生かしていくという軸でございます。
 また、今後更に検討すべき事項として、中間取りまとめ後に議論すべきものとして明示させていただいているのは、1番目が、我が国の強みを生かした研究戦略ということで、こちらは科学的卓越性の重視などの基礎研究文化に加えまして、科学と産業と両方に強みを持つ分野の戦略的推進と、それに関する知財戦略、オープン・クローズ戦略を。また、次にありますように、社会課題や未来社会からのバックキャストと、そのフォアキャストの視点を考慮した研究戦略について。ここにSTI for SDGsのような観点が入ってくると考えております。
 また、一つ、(2)として、科学技術と社会の側面。科学技術の社会的側面の議論ですとかコミュニケーションの強化。また、科学技術の進展に伴う倫理的・法的・社会的な課題やリスクへの対処ですとか研究の公正性と。このあたりについても最終的な報告書の中では少し触れていきたいと考えているところでございます。
 以上、全体構成でございますが、2ページ以降が各論でございます。
 まず2ページ目の(1)でございますけれども、前回、参考資料で科学技術についてのキャリアステージのような話を議論いただきましたけれども、それも踏まえまして、基本的方向性という、一番上の枠を加えております。基本的方向性ですが、まずローマ数字の1、挑戦的・長期的・分野融合的な研究の奨励というところで、まず科学的卓越性の重視ですとか、積極的な挑戦や長期的視野と分野融合的な研究の推進ということ。学術研究の推進。そして、それに見合うような優れた研究が継続的に支援される評価制度やファンディングシステムと、これを基本として、下のような具体例ということで書かせていただきました。
 具体例については従来と変えておりませんで、学術研究、新興・融合分野のファンディング、また、若手向けについての挑戦性の話ですとか、論文や引用度だけでない評価のシステムですとか、優れた研究が継続的に支援される仕組み、また、社会的な課題については、人文社会的な科学と自然科学を融合していくようなファンディングの話ですとか、また、異分野の研究者がアイデアを生み出すアンダーワンルーフ型研究所の重要性といったことを書いています。
 また、若手研究者の自立促進・キャリアパスの安定につきましては、一番上に博士後期課程学生への生活費相当の支援ということで、特にトップレベル大学において、そのあたりを抜本的に充実するための民間も含めた様々な財源の話を書いています。
 また、2番目の大学院教育についてもかなり御意見、御議論いただきましたけれども、特に最初に科学的思考法に基づく課題設定と問題解決、そういった基礎的素養と専門的知識ということを改めて書かせていただいております。そのほかにも数理人材ですとかAI人材、インターンシップですとか、多様なキャリアパスの話を書いてございます。
 また、3番目に、研究プロジェクトの専従義務の緩和や任期の長期化という話。
 また、4番目に、多様な財源により若手研究者のテニュアトラック制の普及による安定的なポストの確保という軸を書いてございます。こちらにつきましては、研究機関の裁量経費が最終的に拡大されることによって、そういったポストが確保されていくという方向性を踏まえて、競争的資金によるPI人件費の支出ですとか、企業との共同研究による人件費の支出のようなことを記載しています。
 また、新たに加えました論点として、研究者の流動性の確保と、それに基づいた多様な経験を積み、キャリアがアップできるような環境というところが重要ではないかということで加えてございます。
 また、一番下でございますけれども、我が国の研究活動の中核を担う優秀な中堅研究者の能力ということで、必ずしも40歳以下の若手に限らず、優秀な方にしっかりとスポットを当ててやっていく必要があるのではないかと。年齢要件はあんまり厳しくやる必要はないのではないかという観点で書いてございます。
 また、研究環境の実現につきましては、ここは余り変えてございませんが、1番目はやはり数億円から数十億円規模のしっかりとした先端研究施設をオールジャパンで戦略的に整備していくこと。このときに大学共同利用機関の在り方も考えていく必要があること。
 また、2番目については、組織単位のコアファシリティをしっかり整備していくという話でございます。それに合わせまして、やはり技術職員の育成、キャリアパスの構築。そういったものも併せてしていく必要があるだろうこと。
 また、この前御議論いただきました研究施設の話につきましては、老朽施設の安全性ですとかそういったことも踏まえて、機能向上していくような戦略的イノベーションという観点を加えてございます。
 ローマ数字の4、一番下でございますけれども、ここについては、国際的な頭脳循環の確保ということで、国際共同研究と大学事務機能の強化、また3番目にあります、海外の研究者をしっかりと日本に来ていただくような必要な条件整備につきまして、前回、日本人研究者についての御議論もございましたけど、そのあたりも含めて書かせていただいてございます。
 では、続きまして、3ページ目の説明に移らせていただきます。

【中澤企画評価課企画官】
 引き続き、3ページ目以降の御説明をさせていただきたいと思います。(2)番、知識集約型価値創造システムの中核としての大学・研発法人システムの機能強化でございます。
 基本的な方向性のところでございますが、パラダイムシフトにより、価値創造の仕組み、競争力の源泉、まさに資本から知にその源泉が変化しているといったような中で、知あるいは情報といったものを担う大学・研究開発法人といったところが、知識集約型価値創造システムの実現に向けて、まさにその中核となって、機能を強化し、変革の原動力となっていくということが基本方針で、方向性で書かせていただいております。併せて、産業界がこういったところに知の生産活動に積極投資をするということも書かせていただいてございます。
 では、大学・研究開発法人システムという中で、中核を担うに足る現状の機能としては、この真ん中の二重線のボックスの中に4つ、マルというか、枠を囲ってございますが、基礎研究、基礎科学、人材育成という機能がある。さらには、国際頭脳循環というプラットフォームを持っている。それから、データ集積・分析拠点という形の部分があると。さらには、産学官のセクター間での知の循環、このエンジンとなっているというようなところがある。
 では、その矢印の下のところに、機能強化の方向性ということがございまして、3つ、ボックスを書かせていただいてございます。
 1つ目、一番左側でございますが、価値創造に向けた知の値付け、さらには知の循環促進ということで、2つ、パラグラフがございますが、前半の方についてはまさに資金。これをベースにしつつ、資金の循環による知の循環ということで、後半の方については、人、この循環によって、知識、これが循環していくというようなことで書かせていただいてございます。
 矢印、そのまま下に行っていただいて、具体的な項目として、ボックスが3つございます。左のボックスでございますが、知の値付けのところについては、前回も議論ございましたが、共同研究等々によって、コストの積み上げ、これによらない知的生産活動に対する適切な値付けがあるのではないか。あるいは、ビジネスサイドのエキスパート、こういったものをもっともっと大学の中でいかに確保できるか、配置できるかというようなところでございます。
 知の循環のボックスのところでございますが、括弧の中でございます。これまでも続けてやってきてございますが、クロスアポイントメント、あるいは9か月給与だとか週4勤務の導入といったようなところについて、運用上の課題解消に向けた取組といったようなところ。特にこれまでもこれは制度上、今できているところですけれども、どこが進まないかといったようなところについて、まさに、例えばクロスアポイントメントで言うと、対象となった者が給与上の優遇が、あるいは外部資金を得るような形で得られるのかどうかと、そういったインセンティブ付けのようなところをもう少し深堀りしていく必要があろうというところ。それから、追加で入れさせていただいてございますが、知識集約型社会のまさに基本インフラというような形の、SINETを含めたデジタルネットワークだとかデータ収集・分析機能を強化していくということでございます。
 下、真ん中のボックスですが、「組織」対「組織」の連携、あるいはベンチャーといったところでございますが、これも引き続きではございますが、黄色い部分。組織のトップ・本部、こういったところがコミットするというような形。更に、その括弧の中に加えてございますが、「組織」対「組織」に加えて、大企業、こういった中に顕在化しにくいアイデア・人材といったようなものを積極的に大学・研究開発法人が受け皿となって、まさに企業側のカーブアウトの受け皿となるような形で、新しいことを作っていくというような仕組みを作っていけないかというようなことでございます。
 更に、一番下のボックスのところは、特にタイトルを付けてございませんが、こちらについては、まさに知に対して再投資といったところを書かせていただいております。すなわち産業界による積極的な投資、こういったものをポイントとしては大学等々において、裁量的な経費として、しっかりとそれを得て、次の知に再投資していくというような話を追加させていただいてございます。
 上の右側のところに戻っていただき、機能強化の方向性の2つ目でございますが、経営体としての機能強化というところでございます。これは組織として、あらゆる経営資源、これを積極的に最大限有効活用していける環境を作っていくというような話を書かせていただいてございます。
 矢印の下にそのまま下がっていただいて、1つ目についてはやはり規制緩和。こういったところを検討していくべきであろう、あるいは実施していくべきであろうということを従前から書かせていただいているものに加えて、黄色で追加してございます大学・研発法人、これは全体としては大ぐくりで書かせていただいてございますが、やっぱりそれぞれのところにミッションだとか、特性といったところに応じた機能強化、これも引き続き検討していく必要があるだろうということでございます。
 最後、3つ目の機能強化の方向性として、これは黄色、地域のところでございます。これは地域のところを3つ目、特出しさせていただきました。全体としては当然、特出しせずともこういった部分というのは入っているという意識の上ではあるものの、やはりこの黄色の部分のアンダーラインがございますが、地域の大学等、これが多様性を持って、あるいは特色を持って、機能分化をしていって、そういったものを活用しながら、新しい価値を作り出す環境を整備していく必要があるであろうということで、特出しで書かせていただきました。
おめくりいただきまして、4ページ目は、(3)から(5)までございます。
 まず(3)については、説明を簡単にさせていただきますが、イノベーションの担い手とキャリアパスの多様化ということでございます。基本的な方向性の方には、2つ、従前から書かせていただいてございまして、一つは、多様な担い手によるイノベーションの実現。これはシニア人材あるいは女性を含めて、個々の強みを活かしながらイノベーション創出に貢献できる、そんな仕組み作りということでございます。
 2つ目については、「個」の能力を拡張する多様なキャリアパスということでございまして、出る杭が打たれるのではなくて、出る杭が伸びる、そういった文化、仕組みを内包した社会に変わっていくべきであろうと。あるいは働き方改革の中で、副業、転職、リカレント教育、こういったような中で、多様なキャリアパス、これが選択しやすい社会ということを選んでいくということでございます。黄色で追加している下の部分でございますが、自然科学、人文社会科学等々の情報科学等を社会の変化に応じて分野横断的に行う教育の推進というようなところを追記してございます。
 (4)番がデジタル化による新たな研究システムの構築。真ん中のところでございます。基本的な方向性は3つ書いてございます。1つ目は、研究システムのデジタル転換。研究そのものがデジタル化していくというようなこと。データ駆動型であったり、あるいはラボのスマート化という部分でございます。
 2つ目は、研究データ基盤の整備と活用ということでございまして、まさにデータを広く国民と言いましょうか、我が国の研究における公共的な資産として活用していくための仕組みであったり、ハードも含めたところの整備というところでございます。
 3つ目、今回、冒頭に私の方からもお話しさせていただきましたが、情報委員会からの提言というものも頂いてございます。科学技術・学術審議会の中の提言を頂いておりますが、そういったところの御意見、これは参考資料2のところで書いていただいてございますが、教育・人材育成のところで書いていただいており、教育、人材育成の強化というところを追加させていただきました。
 具体的な取組のところを何点か御紹介させていただきます。研究データ基盤の整備と活用のところでは何点か追加してございますが、まさにデジタル化というような中では、中核基盤であるSINETの強化、さらには、学術情報基盤の運用、そういったところの体制を強化していくというようなお話。
 それから、2つ下ですが、研究データのみならず、特に大学病院といったところのレセプトデータのようなものについては、非常に質の高い、かつ定型データというものを有しているところでございますので、こういったものを積極的に利活用していくというようなところ。その際のルール整備というところを引き続きやっていく必要があるであろうと。
 あるいは教育・人材育成のところについては、ポツの1つ目でございますが、初等中等段階からシニア世代までの段階において、リテラシーが見つけられる場を作っていくというような、ある意味、中長期な話。
 それから、ポツの2つ目につきましては、まさに今、高等教育に所属されている方、あるいは産業界の方も含めて、外からの大学等々に入ってくるという形も含めて、大学・大学院レベルでのデータサイエンスの知識を体系化し、複数専攻制あるいは副専攻を活用していくといったところを追加させていただいてございます。
 最後でございますが、政策イノベーション、こちらは全体の中では、直接、科学技術基本計画というよりも、まさに霞ヶ関、我々の働き方、仕事の仕方といったところもございます。こちらについても簡潔でございますが、1つ目は、大局観と現場感を捉えた政策分析をしていく。EBPMというような形もあれば、ボトムアップという意味では、現場とのネットワークの強化といったところ。2つ目は、政策の自前主義からの脱却といったところで、外部のイノベーター、こういったものをもっと巻き込んで政策を作っていくと。あるいは民間の研究支援ビジネス、こういったものが立ち上がり始めているので、こういったものをもっと政策と一緒にやっていくと。
 最後は、前例踏襲主義に陥ることのない政策作りということで、我々の仕事のやり方、あるいは大学・研発法人における評価といったところについても意識していく必要があるというところでございます。

【大洞文部科学戦略官】
 最後の説明となります。参考資料1、これも机上に配付しておりますので、ごらんください。
 前回御議論いただいた、知識集約型社会において世界をリードする国へ(イメージ)というペーパーでございますが、前回御指摘を頂いておりました。一つはやはり現状をちゃんと変えなくちゃいけないという危機感とか切迫感が足らないという点。それから、2点目は、どうしてもリニアモデル的に、将来社会像に向けてということになっているが、それは今現在、すぐにそういう社会にしなくちゃいけないのだということで、リニア的でないというようにした方がいいと。
 3点目は、民間からの投資というのがしっかりとこの知識集約型システムにされていくという点をもう少し強調した方がいいと。
 4点目といたしまして、少し中央の話だけに見えるので、地方の話ですね。そういったものも含めて話すものであるということを示した方がいいという、その点を少し修正させていただきまして、大体、中身は先ほど説明したペーパーに入れているものでございますので、説明は割愛させていただきたいと思います。
 以上で事務局の説明を終わらせていただきます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 それでは、資料1に基づいて、中間取りまとめに向けた骨子案について議論を深めていただきたいと思います。大分中身が濃くなってきていると思いますが、今回、特に黄色でマークしたところが新しく付け加えていただいたところであります。
 黄色のところをよく見ていただいて、御意見いただくこと、あるいは追加のことがありましたら御発言いただきたい。それから、全体としてまだ大きな骨子で足りないことはないのかというのをもう一回ここでしっかり見ていただきたいと思うところもございますので、御意見頂ければと思いますけど、いかがでしょうか。
 五神先生、資料を頂いておりますので。

【五神委員】
 中間取りまとめに向けた意見を書かせていただきました。書いているうちに長くなったので、概要版の1ページも付けましたが、今日の資料ではかなりの部分が取り込まれていると思いました。
 今、産業や社会がいろいろな面で激動していることは間違いありません。その中で総体的に見て、海外から見たときの日本の優位性というか、他国の不安定な情勢と比べたときに、日本が結果として安定しているように見えています。そこを倣いたい、教えてほしいといって東大にいらっしゃる方が実は最近非常に増えています。その視点で改めて、この20年ぐらいの科学技術政策、特にグローバル戦略を振り返ると、海外を追い掛けることが中心だったように思います。しかし、例えば戦後の70年、あるいはもう少し、明治時代からといった長い時間スケールで眺めてみると、諸外国の中で、日本はかなり特異な優位性を持っていると言えるかもしれないと感じています。
 今日はたまたま北京大学の、学長ではなく書記、チェアマンの方が東大に来られたのですが、彼が一番熱心に聞きたいと言っていたのは、日本でなぜ純粋和製のノーベル賞が次々に出ているのかということでした。韓国も中国もそれを出したくてしようがないので、本当のところを教えてほしいというのです。これだけ高等教育に投資をしていれば、心配しなくても10年もすれば圧倒的に中国から出るようになりますよと答えておきましたが、非英語圏の中で、高等教育あるいは高度な研究をどういうふうに立ち上げたのかという、まだ我々がきちんと分析し切れていない日本の価値をここでよく見定めて、見落とさないようにした方がよいかもしれません。
 サウジアラビアの方とも先日話したのですが、やはり東大は非英語圏で成功したモデルであるので、シンガポール国立大学のようなモデルを東大が追い掛けてしまうと、私たちは目標がなくなってしまうとおっしゃるのです。つまり、アラビア語できちんとした高等教育あるいは高度な学術を長期的には立ち上げたいので、そのモデルとして日本に倣いたいということです。そういう価値が、日本がガラパゴス的に閉じこもるという意味ではなくて、むしろ世界に対して、独自の価値を十分にアピールできるかという意味で、これまでの国際化戦略の一歩先の戦略として見据えることができると、この第6期の科学技術基本計画の期間に、日本の国際的な地位もむしろ大きく向上し得るのではないかと思うのです。
 そうした状況を踏まえた上で、私のメモに書いた基本的な考え方についてざっと御説明したいと思います。2025年までの短期決戦は、人口分布などの状況を変えることはできませんので、団塊世代が後期高齢者になる中で労働力をどう確保するか、成長を生み出すためにインクルーシブな社会の実現に向けて日本が率先しない限り、日本が先に負けてしまいます。ですから、第6期中に何とか変化の兆しが見えればいいということではなくて、実は第6期でも遅いぐらいで、本来は第5期のうちに済んでいないといけなかった社会構造の転換を速やかに行うことが必要です。
 そのためには、現在ある資源を総動員するという意味で、あらゆる世代を活用しなければなりません。ですから、団塊ジュニア世代とか、ポスドク1万人世代の人たちの取り残し部分は貴重な資源ですので、そうした方々をエンカレッジしながら活用していくことが必要ですし、科学技術イノベーションを担う人材は、日本の場合ですと大企業に所属する場合も多く、ともすれば有用な技術が企業の中に眠ってしまっている場合もあるので、彼らの知をうまく引き出すような施策を産官学民が連動してやることが必要です。
 もう一つ大事なことは、既に書き込まれていると思いますけれども、国の財源は限られていますので、国の直接投資でできることと、民間にあるお金をうまく循環させるということを両方同時にやらなければいけません。短期と長期、国と民間というのは、二行二列の組合せで4パターンあり得ます。だから、短期であっても国でやらなければいけないもの、民間資金は出しづらいものや、長期であっても、民間資金がうまく動かせるものもあるはずなのです。民間でできることは短期であっても、長期であっても、民間のお金を使うべきですし、国でなければできないことというのもたくさんあるので、そこに正しい投資をしていくということをきちんと戦略的に考える必要があると思います。
 短期で言えば、例えばAI活用の人材あるいはデータの整備は相当急がなければいけませんが、そのときに時間スケールを間違うと変なことをやってしまいます。例えば、今、本当に枯渇していて、困っているデータ活用人材をどう育成できるのかということは、現場を見ている我々からすると、ある程度はもう分かってきていますので、そこを外れないようにすることが重要です。年間25万人必要というところだけを捉えてとんちんかんな施策を打つと、かえって貴重な戦力を失うことになるので、そういうことをしないことが大事と思っています。
 さらに、国の基本計画として打ち出すときに、短期、長期の双方において、日本はどこに取り組むのかということを示すべきです。例えば温暖化対策とかエネルギーの問題とか、あるいは高齢化社会という意味では、日本は課題先進国でありますので、そうした国際的にアピールできるようなターゲットを、日本の優位性が世界のモデルとして通用するということで、シナリオを具体化するということが最後の仕上げとしては必要だろうと思います。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。本当にそう思います。
 いかがでしょうか。今の御意見も聞きながら。
 全体のフレームワークでお話を伺った後で、議長があんまりしゃべると良くないとは思いますが、25年までの短期決戦で何が重要かというので、意外とまだ、このまとめたところで抜けている点は、例えば全体のシステムを軽量化する必要があると思います。今人材も少なくなってきている一方で、あらゆるところに規制があって、AIが使いこなせないというような話も聞こえます。例えば文部科学省のガバナンスのシステムを全てAI化して、全て電子化するぐらいやってしまう。あるいは大学のシステムを全部電子化する。カルテも電子カルテで統一化するというような統合政策が、必要なのではないかという気もしますね。AI、AIと皆さん言いながら、結局様々な現場で十分活用し切れていないですね。先生、どう思われますか。

【五神委員】
 例えば情報の扱いについてのコンセンサスを得るのが非常に難しいとか、10年前から議論していて進まないような部分は、2025年の戦略を考える上では、やはり進まない要因を周到に避ける必要があります。まともな議論であっても、同じ議論を繰り返すと、多分何も起こらないので、そこは非常に注意する必要があります。

【濵口主査】
 実現可能なものをまず進めるべきと。

【五神委員】
 ええ、そうです。SINETが柴山プランによって小中高につながるということになりました。これを、何万点ものデータ収集ポイントが全国津々浦々に、新たに、一気に整備できるという視点に立てば、それはどこにもない新しいものなので、そこから取れるデータの使い方を検討する中から、いろんなデータ化を一気に加速する仕掛けとしてきちんと機能するはずです。
 また、レセプトデータのようなものは、極めて貴重なデータ源であって、それを活用するのにどういう言い方、やり方であれば止まらずに進むのかということは、私もすぐにはソリューションが見つかりませんが、真面目に取り組むべきことだと思います。
 さらに、諸外国も同じように、あるいはもっと加速してデータ化が進むわけです。特にクラウドをしっかりグリップしている国が圧倒的に強いわけですけれども、そんな中で、日本が勝てるかもしれないところもあります。例えばクラウドに限らず、ビッグデータの対象がリアルタイムのデータになるというのが今のトレンドであって、そのときに高速のネットワークを持っているSINETがあることは重要です。モバイルからデータを取ることを考えると、5Gのような基本的な技術で劣後している部分もあるのですが、今回の輸出管理の問題でかなり明確化したように、日本は半導体の周辺材料のように、かなり強いものでグリップしている部分があることも事実です。
 ですから、そういうことを組合せながら、2025年の価値モデルを作っていくという戦略が必要です。それを全部やることはもちろんできませんが、強い部分があることも事実なので、そこを見極めて、国際連携、協調も含めて全体戦略を立てていく中で、2025年の短期をどう乗り越えるのかということが重要です。短期なので、かなり具体的にディテールを見据えた上でやっていくことが可能ですし、やるべきだと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。強みを洗い出すということが改めて必要かなとは思いますが、ヘビーデューティですから、少し頭に入れていただいて。
 それから、今日、病院長経験者もお2人お見えになりますけど、例えばカルテの統一化だとかAI化、IoT化とかいうことを考えたときに、可能かどうか。困難な点は、体験的に何かというのがもしあれば、お話しいただけないですかね。

【郡委員】
 五神先生が、同じ議論をしていても意味がないから違う発想でと言われたので、非常に言いづらいですが、おっしゃるとおり、電子カルテ一つだけを取り上げてみても非常に難しいと。具体的なことを言いますと、本学、名古屋市立大学がある企業から別の企業に変えたと。そうするだけで、もうこの3か月間、混乱を起こしているわけです。それは何のために変えたかというと、名古屋一連のものを統一化することによってビッグデータを取ろうというようなことで、数年間の戦略というほどでもないのですが、計画を立ててやると。
 私と大学が隣の人たちのものに変えていこうと。これは非常に難しい。それは多分、この辺に関係の方がおられたらお許しいただきたいのですが、変えるときに、企業の方々の、何ていうのかな、目に見えない、分かりやすく言うと、邪魔があるような気がします。そうすると、この3か月間は診療になっていないわけです。もちろん収支もこの3か月間、きちっとしたものが取れない。そういうことを続けられるというふうにまずは思います。
 それで、我が国でそれが使えるかどうか分からないんですが、外国ですと、地域ごとというのが非常に病院数が少ない、あるいは病院が一つの、一病院のベッド数が多いものですから、容易にビッグデータが取れる。そして、日本で言う、いわゆる開業医さんとの関係が連携されているものですから、お互いがWin-Winになるわけですが、例えば、先ほど言った企業の側から言うと、この地域は何々だと、F社だと。こちらだったらN社だとか、そういうような形のものになる。そして、それはどういうことで一元化していくかと言うと、アメリカなんかですと、そのハード面は開業医さんに渡す代わりに、ソフト面は大学に、あるいは中央の病院に回すといったような、ギブ・アンド・テイクがきれいにしているものですから。そして、そのことをどう次はと言うと、単に収益性だけじゃなくて、一番重要な市民と言うのか、国民に還元する。
 すなわち、ビッグデータを使いながら、おたくは将来こういう病気になるかもしれない。だから、自分たちで自分の管理をしないといけないというようなところまで進んでいるんですけども、今、先ほど冒頭、非常に寂しい話をしましたが、そういうことで、多分去年のところで、国はそういう一元化をしようというような方針を違う省では出されていると思うんですが、それすら行っていないところというのは、いわゆる医療だけの問題ではなく、是非、産業界等を交えたものをしていただかないとなかなか、五神先生が言われるように、同じことをしとったら駄目じゃないかというふうに思います。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございました。
 越智先生、いかがですか。

【越智委員】
 まず病院のことに関して言えば、日本の大学病院が大体1,000床あたりまでなんですね。韓国でも3,000床ですし、オランダとかアメリカへ行けばもう7,000床というようなことになります。1病院でですね。ということは、さっきからお話がございましたように、大学でビッグデータを集めようとすれば、やはり何かでつながっていないといけないということがあります。
 先ほど郡先生が言われたように、システムを変えようとすると非常に邪魔が入るというようなことがあって、私も病院長のときにシステムをある社から別の社に変えようとしたときに、なかなか大変だったんですね。結局は最終的には元のシステムを改良してもらうことで折り合いを付けたということがあって、これは文部科学省、ここだけの問題ではなくて、産業界の支援というのが私は是非必要だというふうに思っておりますので、郡先生がおっしゃったようなことに賛同をいたします。是非連携を、ここだけ、文部科学省だけの問題じゃなくて、産業界とうまく連携を取っていただければと思っています。

【濵口主査】
 ありがとうございます。カルテのビックデータと、これはもう典型的な日本の強みと弱みが集約されていると思うんですね。長期間にわたる精細な経歴の蓄積、診断の確実性、それから、家族歴、全てあるのに、それが使えない状況があると。問題は、これは文部科学省の責任ではなくて、厚生労働省の責任かもしれないですが、菱山さん、どう考えられますか。

【菱山科学技術・学術政策局長】
 今、郡先生と越智先生がおっしゃったように、病院というか、会社が違うとつながらないと。郡先生が頭文字でおっしゃっていましたが、まさに何社かで寡占状態であるもの、その会社間ではつながらないというのは、多分文部科学省だけじゃなくて、厚生労働省も経済産業省もよく分かっていて、どちらかというとやっぱり行政だけではなかなか進められないところがあります。
 ただ、一方で、幾つかの試みは、先生方も御存じのように、SS-MIXとかそういう通信方式はありますけれども、SS-MIXでやっても、どうも書いている様式が違って、例えばヘモグロビンA1cとありますけれども、よく皆さんも書かれていますが、小文字で書いたり、大文字で書いたりなど、標準化も含めて統一していかないといけないので、AIというよりは、もっと地道なところでデータを整理していかなきゃいけないというのはかなり大きな問題だというのは私どもも把握しております。それをどうしたらいいかというのが、かなり地道にやっていかないと、ビッグデータといってもビッグデータになかなかならないのではと。
 濵口先生がおっしゃったように、非常に詳細なデータ、真面目なといいますか、日本の医師の先生方は皆さん、かなり詳細データを残しているというのは私どもも聞いております。ただ、例えば外科学会などはかなり先生方の努力で、手術のデータを統一化して、データベースにしているとか、幾つか試みはあって、そういうのを研究ベースで厚生労働省なども支援をしていて、そういった試みは幾つか行われているものの、なかなか全てつなげるというのは。技術的にはつなげるのは可能だと思うのですが、それがうまくまだできていないので、それをどうしていくかというのは課題であるというのは、文部科学省だけではなく、担当の役所は把握しているんですが、それをどう実行するかと思っております。

【濵口主査】
 ありがとうございます。いきなり突っ込んでしまいました。
 いろいろ課題があって、短期的に勝負しなきゃいけないものは何かというのを本当はもうリストアップしなきゃいけないフェーズだと思うんですけど、一つは、一番大きいのは、ひょっとすると、医療データかもしれない。ここで勝負を掛けて5年以内に何らかの形を出したら、日本はいきなりトップを走れるかもしれない領域かもしれないんですね。
 問題は、どこに問題があるかがよく見えていないところと、それから、我々ができることとできないことというのがはっきり見極め切れていないような感じがしますね。実は、最近も周辺の人たちとそういう話をしていましたけど、クラスター化して、できる人たちだけでまずやって、形を作っていくということができることかもしれないと。その外科のお話も結局それだと思うんですけど、それは情報をつかんだ方がいいのではないかなと。どこまで進んでいるのかということをお願いできますでしょうか。
 AIの問題、産業界はどう考えておられますか。レセプトの。新保先生。

【新保委員】
 レセプトの問題ですね。レセプトの研究会の委員ですので。

【濵口主査】
 そうです。はい。

【新保委員】
 慶應義塾大学の新保です。4ページの研究データ基盤の整備と活用に関する意見について、レセプトデータについては、以前からレセプトデータの提供については、私は厚生労働省の検討会の委員を務めておりましたので、その点も含めて、大きく2つ意見を述べさせていただきたいと思います。研究データの基盤についてのデータについて大きく、今まで研究成果の提供をする。例えばCiNiiであるとか、そういった成果の提供の基盤というのはかなり充実しているのではないかと思います。
 一方で、この研究資源ですね。やはり研究者としてわがままを言わせていただくと、オンライン資料なども含めて全部根こそぎ集めてもらいたいというのが、いつも研究するときにCiNiiで検索をして、最後までたどり着けるデータというものが非常に限られているわけです。
 この点について2点なんですけども、1つは文献情報と、もう1つがこのビックデータ、レセプトデータをはじめとするデータだと思うんですけども。1つ目の文献情報については、現在もCiNiiで検索を、研究者であれば、みんなCiNiiで検索をして。ところが、今の段階だと4段階と言いましょうか、J-STAGEに移行された論文。これも2,900のジャーナルに限られていますし、国会図書館のデジタルコレクションに移行された論文、あとは機関リポジトリですけども、各大学が積極的にやっているところとそうではないところがありますので、このリポジトリで公開されている論文と、あとは学術団体とか学協会の独自のウエブサイトの論文公開サービス。大体この4つに分けて、今のところ、この文献情報にたどり着くことができると。
 ところが、たどり着くことができないことがやはりかなり多いであろうと。ただ、これはもう今回、中間取りまとめということで、かなり長期的に今後どうすべきかということを多くの研究者が、最後見ようと思ったら、やっぱり国会図書館に行かなければと。ふと思ったのが、国会図書館法の改正によって、オンライン資料は現在、eデポという資料収集制度がありますので、国会図書館は、国会図書館法について国内で発行された論文、書籍については、納本制度があるわけですので、納本をしなければならないと。これについて、電子化資料、一時期、議論がありまして、かなり高額なデータベースとかもありますので、こういったものも含めて納本義務の対象化ということについては、国会図書館法、それから、著作権法の改正によって、現在はオンライン資料収集制度の対象になっていると。
 ただし、DRMが設定されている、このデジタルライトマネジメントが設定されている資料については、全て収集できていないという状況はあるかと思いますけれども、基本的に学術論文で、DRMを設定して公開するという。まあ、あり得るのかな。これ以上は。

【濵口主査】
 先生、実際に使い勝手から見てどうなんですか。今のシステム。

【新保委員】
 そこなんですよね。使い勝手は非常にいいと思います。CiNiiで検索して、リンクが表示されていると、そのまま文献にたどり着けますので。ところが、文献にたどり着けるところまでは……。

【濵口主査】
 たどり着けない文献がある。

【新保委員】
 多いという。圧倒的に多いということですね。

【濵口主査】
 その領域は、ある程度クラスターで、こういう領域というのは分かるわけですか。

【新保委員】
 特に人文社会科学系の論文については、かなり論文にたどり着けない比率は高いと思います。特に法学の論文で公開されている論文というものは、特に少ないだろうと思うわけですけども。そうすると現在は、立法府である国会図書館が情報収集をかなり行うという制度を整備しつつ、それがなかなか活用されていないと。ですから、もう一つ、行政府として文部科学省の施策としての情報収集、特に研究データの基盤については、例えば具体的な例として、今、法学の論文は国内では非常にアクセスがしづらいというふうに申し上げましたけども、例えばアメリカのデータベース、レクシスネクシス、ウエストローもほぼ全てのローレビューにはネットでアクセスが可能であると。ですから、ほぼ全数が検索できるという状況がある一方で、日本の学術論文、特に法学系の論文については、アクセスできるものの方が逆に少ないであろうというふうに思います。
 これが1点目ですけども、もう1つ、2つ目は少し簡単に短く。レセプト含めてですね。こちらの4ページも「大学病院等の」という前書きがありますけども、これは特に不要かと思いますが、レセプトデータについては、厚生労働省がレセプト情報を、特定健診の情報も含めて、データベース、NDB、ナショナルデータベースとして提供しているわけです。
 当初は、このデータについては、例えば特定、又は希少な疾患を調べるだけで、実は個人が特定できてしまう可能性があると。6割ぐらいは個人が特定できるという可能性があるということで、このデータ提供については、極めて機微な情報であるということで、そのデータベースの提供はかなり消極的であったわけです。消極的というよりも、無理ではないかと。私も検討会のメンバーになりまして、この件数を見て、ビッグデータというふうに長年言われていますけども、レセプトほどビックなデータはないと。今、年間100億を優に超えていますので、そうすると、100億件を超えるデータを使って研究ができるものというものは、ほかに何があるかというと、ほぼないという状況だと思うんですね。
 ですから、レセプトのデータを、レセプト特定健診のNDBの活用というものは、現在、研究目的であれば、このデータを活用することができるようになっているわけですけども、大きく2つ問題があると思います。1つは、活用できるということが余り知られていないと。特にこの研究データの基盤については、どのようなデータがそもそも使えるのかということを研究者が認識するのがなかなか難しいわけです。どこにそもそもあるのか。そういう意味では、CiNiiは非常に、一発で検索すると一発で出てくるので、非常にすばらしいデータベースだと思いますけれども、この研究データとして活用できるビッグデータの場所がそもそも、なかなか分かりづらい。そもそも使っていいのかということも分かりづらいということが一つ。
 もう一つは、こういったデータベースがそもそも使えるということについて、これを文字どおり研究におけるデータ利活用促進のための施策としては、今後とりわけAIに学習させるデータとしても、非常に有効なデータがあるわけですから、こういったものの活用をどうするかということを考える上でも、以上2点、この文献のデータベースとレセプトデータをはじめとするビッグデータの活用。この問題について、私から意見を述べさせていただきました。

【濵口主査】
 ありがとうございます。少しアウトラインが見えてきたと思いますが、データのところで少し突っ込み過ぎたようにも思いますので、もう一回、全体を見て、御意見いただけますでしょうか。どうぞ。

【菊池委員】
 よろしいですか。今のデータにも少し関連すると思うんですが、私たちが今、企業のルールで一番困っているのは、このレセプトデータとか、今、既存のところにあるデータですね。それもビッグデータという形で捉えられているんですが、実はAIの活用のところで、一番大きな転換があったかなと思うのは、以前にグーグルの会社が作っていたAlphaGoとAlphaGo Zeroのこの2つの違いというのはめちゃめちゃ大きくて、AlphaGoのところまでは恐らく、いわゆる私たちが理解しているビッグデータを集約して、それに基づいたAIだったかと思うんですが、AlphaGo Zeroの段階になりますと、シミュレーションで得たデータを駆使して、実は通常のビッグデータを全く使わずに実は名人を超えてしまったという、その転換がAIのところにあるものですから、私たちとしては、そういうふうな、あるデータと、実はAIを本当に活用し、もっとさらに進めようとしますと、データそのものをシミュレーションやAIそのものなどで作るという能力を持っていかないと、もう活用がないところに今、AIが来ているんじゃないかなと思っていまして、そこの部分が実はこの研究データ基盤の整備と活用のところに踏み込まれていないというところが非常に気になっているんです。

【濵口主査】
 具体的にはシミュレーション的な予測を入れるかということですね。

【菊池委員】
 はい。単純に言えば、自動運転一つとっても、実際に走行したデータも山ほどあるんですが、そのデータを使った方が有効か、若しくはもう走行データをコンピューターシミュレーションで作って、それでAIにかませた方がいいのかという、そこのところに今入ってきていまして、もしかしたら有象無象の品質の差が非常に激しい、実際のビッグデータを使うよりは、ある程度品質をクラシファイできる形でシミュレーションした、それで得たデータを使ってAIを活用した方が、もっと早く答えに到達するというところに今あるんじゃないかなと思っていまして、AlphaGoとAlphaGo Zeroのそこの転換期のところの部分が、ここのところにまだ十分踏み込まれていないなと思っていまして、そこを足されたら、もっといい提案になっていくんじゃないかなと思っていました。

【濵口主査】
 ありがとうございます。少しこれは相談させてください。よろしいですか。

【大洞文部科学戦略官】
 例えばディープラーニングで、GANのように、シミュレーションでどんどん学習していくような話というのもありますので、そういうものが研究の世界で、リアルでないデータのシミュレーションがどうなっていくか、少し我々も勉強させていただいて、考えたいと思います。

【濵口主査】
 いや、これは大転換かもしれないですね。ひょっとすると。

【菊池委員】
 そうしますと、AIベースのシミュレーションなどというものをいかに作り上げることができるかという基礎力が非常に重要になってきまして、そこの基礎力に関しては、もしかしたら日本が……。

【濵口主査】
 やれるかもしれない。

【菊池委員】
 やれるかもしれないと。

【濵口主査】
 ビッグデータの量で勝負ということではないかもしれないと。

【菊池委員】
 はい。なぜかといいますと、日本は物理化学の能力だけではなくて、数理の能力も非常に高いので、こういったものの組合せでシミュレーションが作られていくというので、シミュレーション科学、シミュレーション工学をもっともっと進めていけば、AIパワードカントリーになるんじゃないかなと思っておりました。

【濵口主査】
 五神先生。

【五神委員】
 今の問題は多分2つあって、リアルのデータで、ごみの少ない、よいデータは、やはり価値が高いです。日本にはそれがあるのに、きちんと使いやすいような形に整理できていません。その作業は知識が必要ではありながらも、労働集約的な作業がかなり入るので、それをどうするかということが一つ大事です。
 それから、もう1つ、菊池委員がおっしゃった点としては、では、今まさにしのぎを削っているところの先のアドバンスなAIの部分のところに、どういうふうな人材を投入するかということだと思います。新聞で、日本は世界のトップAI人材のうち4%ぐらいしか供給できていないという報道がありましたが、シミュレーションによって作ったデータが、更に学習を加速し、あるいは新しいものを生み出すしかけになるのかという学理を作るような部分を誰がやるのがよいかという話になります。これは既に競争の舞台が見えているので、長期戦略ではなくて、明らかに短期戦略です。そのときにAI関連の技術で、世界で勝ち抜ける新しいものを出せる人をどう育てるかというときに、高度なAI人材をゼロから育てるのでは間に合いません。しかし、物理や数学分野における高度なトップの人材にAIリテラシーを加えるというやり方であれば、極めて効率よくできるのです。
 東大で、例えば理論物理学の分野ではトップ層には物理のオリンピック級の人たちが集まります。こうした分野の最近の進路状況を調べてみると、実はデータサイエンスやAI関係に就職する学生が半数近くと、驚くほど多いのです。博士を取ってから行く人もいますし、修士から途中で移る人もいます。AI系のベンチャーで大活躍している人もたくさんいます。数%というのではなくて、半分近くいるわけですから、ここはまさに戦略的にやれるところです。
 そのときにやはりデータの意味を深く理解していることが分かっている人にAIを教えるということが重要です。AI人材に理論物理を教えるのはまず無理なのですが、理論物理をやっている人にAIツールを身に付けさせて、そこで次の一歩をどうするかということであれば、これはかなり実効性があります。研究分野では使えるものは何でも使うので、AIを使っている人が今急速に増えていて、そうした形でのトップAI人材の土壌は相当できています。現状では方向付けがないので、皆さん、個々の判断でそういう選択をするわけですけど、その方向性が見えるとかなり効果的に進むだろうという感触があります。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 4ページのマル2の教育・人材育成、一番下のところに、そこに今のお話が少し入るといいですね。リカレント教育になるのかな。リカレントトレーニングになるのかということですね。

【大洞文部科学戦略官】
 シミュレーション人材、数理人材と、高度人材のリカレントという文脈を少し強調したいと思います。ありがとうございます。

【五神委員】
 一点追加です。その高度の部分で、シミュレーションに含まれるかもしれませんが、AIの弱点と言われているブラックボックス性をいかに縮めるかというExplainable AIへの取り組みは、かなり本格的になっていて、そこでもさきほどのような人材はかなり貢献できそうです。そのあたりはまさに2025年までの対策として重要なポイントになるだろうと見ています。

【濵口主査】
 説明可能なAIということですね。
 はい、どうぞ。

【土井委員】
 今のお話のところで、私が今おります情報通信研究機構では、太陽フレアを観測していまして、宇宙天気というのを出しているのですが、それをやっている人間とAIをやっている人が一緒に組みまして、AIを使うことによって非常に、今まで人が見てやっていた予測よりは早い、正確な予測ができるようにしたという実例もございます。
 そういう意味では、先ほど五神委員が言われたように、やっぱりデータが分かっている人がいて、その人がどうやってAIのツールを使ったらいいか。そのときに従来の方向性のまま使うのがいいのか、先ほど御指摘があったように、GANのようにシミュレにしたりとか、あるいはシミュレーションして、特に非定常時のデータというのは量が少ないので、それをそのまま使うとなかなかうまくいかないので、そこはデータの特性を見て、どうやって増やしていくかとか、きちんと考えることができる人も必要なので、そのときにはやはりデータが分かっている人とAIのツールが分かっている、その人たちのインタラクションが非常に重要だというのを日々見ています。
 あと、ナショナルトレーニングセンターということで、サイバーセキュリティーへの人材を育成するというのをやっていますが、そこでも実はテストベッドということで、いろいろな攻撃をシミュレーションできるような、IoTの環境というのもきちんとネットワーク上に用意してやっています。やはりそういう意味で、リアルなデータを本当は使いたいんだけど、いろんなシナリオを全部やってやろうとするとできないので、それは全部シミュレーションで作るということもやっていますので、先ほど菊池委員が言われたように、シミュレーションもきちんと組み入れるというのは非常に重要なことだというふうに思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。シミュレーションの重要性はある程度確認できたと思います。今の一連のお話をずっと聞いていますと、ここら辺の戦略を、恐らく第6期はかなり柱として立てる必要はある印象が出てきていますね。

【大洞文部科学戦略官】
 今の人材育成という観点からも、やっぱり数理科学、シミュレーションできる人材、それをどのような層で、どう短期的に、また、長期的に育てていくかが、重要だと思います。それはその文脈で書かせていただきます。ただ、AIであれば、説明可能なAIと、あとは信頼性のあるAIとか、取り組むべき重要課題はあると思いますので、そのあたりは後半で総合政策特別委員会の中でも、どのAIが大事かというのは議論させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【濵口主査】
 ほかいかがでしょうか。はい、どうぞ。菅先生。

【菅委員】
 済みません。私は6時に退室しますので、コメントさせてください。3ページの「知識集約型価値創造システムの中核としての大学」というものですけれども、一番上の基本的方向性と最後のところにあるんですけど、最後の文章で、産業界により、大学等の知的生産活動に対して積極的な投資が行われる、好循環を実現されるというのは、正しいんですが、何となくこれは産業界に依存しているように聞こえるんですね。本来は、大学あるいは研究開発法人が自らがそういう好循環を満たさないといけないというように。だから、それは少し言葉をうまく変えていただきたいなと思うんですね。それから、その一番下のところもそうなんですが、決して産業界に依存してやるのではなくて、自らやるという形がすごい好ましいシステムだと思うんですよ。
 僕は最近、先週、私はUKのケンブリッジに行っていたんですけども、あそこのMRCという、メディカルリサーチカウンシルというところに行ったんですけど、5年ぐらい前に行ったときはボロボロの建物に行ったんですけど、今、すごいいい建物を作って、すごいいい環境で研究していると。ノーベル賞をあそこはもう20人近く出ている研究所で、主任研究員はたった60人しかいないんですよ。そういうところの判断というのは60人を増やしていくのではなくて、その人数を最大のクオリティーに高めるということをやっているという感じがしまして、それは昨年、ノーベル賞をとったグレゴリー・ウィンターという、ヒト化抗体の技術を開発して、それでノーベル賞をとったようなものなんですけども、本庶先生の抗体もその技術がなければ薬になっていないんですよ。その技術のリターンが1,000億円らしいです。
 それを研究者と発明者と研究所の本部と、そこの研究所の方に充てるんですけれども、それはもう全部、個人以外は全部併せて建物作って、すごく良い環境を作っているというので、僕は感動したんですね。こんなにエコシステムとして回っているという例を見ると、やはり日本はもう少し考えた方がいいのかなという気がします。どうしてもそこのところを、産業界に依存するのではなくて、自ら産業を作り出して、産業界を巻き込んで、エコシステムを作ると、そういうふうに何か言葉をうまく選んでください。よろしくお願いします。

【濵口主査】
 少し突っ込んで質問すると、先生の目から見ていて、先生は結構企業もやっているし、大学の基礎研究もやっている目から見たとき、今、日本の障害になっているもの。このケンブリッジのような展開するときに障害になっていると思われるものは何でしょう。

【菅委員】
 大学、結構大きいじゃないですか。理研なんかでもすごく大きい。だから、そういうものがたとえ生まれたとしても、まだそんな大きなものが生まれていないというのが一つの理由でもあるんですが、生まれたとしても、それをうまく還元していっていないですよね。それを新しくまた広げていくために。MRCとかは、そこにやっぱり還元しようという、非常に強い意図が感じられて、本当に小さいんですよ。60人の、研究員も200人ぐらいしかいないんですよ。技術員が130人ぐらい。技術と事務員で130。だけど、主任研究員の倍ぐらいが技術職員と事務職員でいるわけですよね。だから、そういうふうな環境作りに努めているというのは、なかなか今、日本にはなくて、少し難しいですね。大学は随分肥大化してしまっていて、なかなかそういうふうにお金が回るときの額も小さいから、結局どこかに消えていってしまう場合も多いので、その辺がやはりどう変えたらいいのかというのは、僕、具体的には、今すぐにはアイデアはないですけれども。
 ただ、割と小回りの利くものにして、集中的にそこから出てきたものはしっかりそっちに返すというような形で盛り上げていくというのがいいのかもしれないです。これは、私の「かもしれない」というだけですね。

【濵口主査】
 実は私、ニューヨークのロックフェラー大学に行ったんですけど、あそこは75教室ぐらいしかないんですけど、過去40人近くノーベル賞が出ていて、大学院生は年間15人しか入れないんです。それで、パテント収入もものすごく持っていて、昔から、フラクションコレクターなんて、我々の世代じゃないと知らないような機械のパテントを持っていて、それで動いて、あとドネーションですね。なぜ日本はうまくいかないのか。産業界の目から見たらいかがですか。十倉先生。

【十倉委員】
 産業界もSociety 5.0ということを積極的に掲げています。イノベーションエコシステムというか、特にオープンイノベーション。アカデミアとかスタートアップと組むというのは一生懸命、それぞれ試行錯誤しながらやっています。先週、経団連の夏季セミナーがありましたが、そこでもそういう議論がありました。浅学の身ではありますが、先生おっしゃるように、アメリカのMITやハーバードなどを見ても、それは日本の取り組みとは大きな差があると思います。
 それから、ここ一、二回出席できませんでしたので、ひょっとしたら、もうどなたかおっしゃっていることかもしれないんですが、今、我々産業界から見て少し気になっておりますのは、米中の貿易戦争です。これは貿易戦争じゃなくて、覇権争いだと。もっと言えば、高度技術戦争だと。Global tech cold warだというのは、もうみなさん認識しているところかと思います。これが、トランプさんがいなくなったら変わるかと、そんなことはなくて、アメリカでは、国防権限法と、その中でエマージングな技術を規制しようという動きが、対中国を念頭にあります。むしろ、アメリカの人たちが心配しているのは、トランプさんが変に中国と妥協するんじゃないかということも聞きます。民主党も保守党も、対中国に対しては非常に強い姿勢でいると思います。それは、中国はGDP的に成長していくに従って、民主国家、自由主義、そういうものになってくるものだと思っていたけれど、そうはならないといったことが背景にあるんだと思います。
 実は、地政学的に見ると、科学技術とかイノベーションについても、日本はひょっとしたら有利な立ち位置にあるかもしれません。相対的に安定していますから。ただ、我々が今直面していますのは、これはタッチーな議論なので、こういう場で議論するのがいいのか、別にするのがいいかもしれませんけど、白石先生がおっしゃっていた機微技術ですね。デュアルユースの問題ですね。この辺も中長期の基本計画を作るという意味においては、しっかりどこかで方針を作っておかないといけないのではないかと思います。米国はもう中国の海亀戦略を拒否してくるでしょうから、中国の方が日本に行って研究したりとか、そういう国際交流も始まるかもしれないのですが、まさに国際交流をやろうというのも資料にはありますが、そういうときに、米中の対立は今後も続きますから、国際的なアカデミアの研究現場であるとか企業のR&Dの現場とかで、混乱が起こるんじゃないかと。そうならないように、議論はしておかなきゃいけないんじゃないかと。
 今、議論になっているデータの世界からAIの世界、それから、バイオ、ゲノムの世界、アメリカの国防権限法に定めるECRAでは、アメリカで培った技術を対外的に輸出する。これを規制しようとしたり、アメリカの技術を使ってやるのであれば、第三国でも規制しようと。皆さん、よくもう御存じと思いますが、これがしばらく続くということであれば、我々産業界はそれでグローバルサプライチェーンが少し崩れてくるとか、下手すると分断されるというようなことがありえるし、また、イノベーションが停滞するんじゃないかと。そういう心配がありますけど、その基礎になる研究の活動にも影響を及ぼすかもしれないと。これはタッチーな問題なので、公に議論して、バーッと書き込むという類いの性格のものではないかもしれませんけど、是非次の基本計画に向けて、何らかのスタンスは立てておかないと、研究現場として困ることが出てくるんじゃないかなと、そう思います。

【濵口主査】
 ありがとうございました。非常に重要な御指摘で、タッチーなところで、なかなかこれは議論がしにくいんですけども、私もつかんでいる情報では、秋以降、やっぱり日本も立ち位置が非常に厳しくなってくる局面があり得るということは、アメリカの側からの情報でも少し見えてきているところですね。だから、余り、ひょっとすると、ボヤボヤしていると思いもよらないような状況へはまり込んでくるような時期があるかもしれないと、少し気にはしておりますけれども。

【大洞文部科学戦略官】
 そのあたりはまず情報収集をしっかり、JSTのCRDSもしていただいておりますし、また、内閣府と情報共有して、政府の中でどう検討していくかというのは、基本計画に向けて検討していきたいと思います。

【濵口主査】
 少し考えさせていただければと思いますが。
 ほか、いかがですか。はい、どうぞ。

【菊池委員】
 今の十倉委員からの話にも関連すると思うんですが、今言ったようなこととも非常に関連する部分として、イノベーションを起こすような人材の大半は、基本的には大学院生、それも博士課程の研究者が非常に多いんですが、その博士課程の若手研究者には2種類あると思いまして、国内で育ってきた研究者と、留学して、日本の大学院に入って、若手研究者として活動する人たちがいると思います。その2種類の若手研究者を、博士号を取得した後、どのように扱うかということがなかなか、こういう国の方針を書くに当たって書きにくい部分かと思うんですが、少なくとも今までアメリカの場合は、大学院生の、特にイノベーションを起こすようなところの大学院生の、若しくは大学院を卒業して、ポスドクとしてイノベーションを起こしたような人たちのかなりの多くが、いわゆる移民と呼ばれる、もともとは自国で育ってきていなかった人たちが多いんです。
 その人たちをどのように取り扱うかについては、トランプさんが出てくる前にも、アメリカは明言を避けていたようなところもあるんですが、それまでのアメリカの社会規範としては、基本としては受け入れるというふうなことでやっていたかと思うんです。日本がこれをどうするかというところが今、特に米中の対立みたいなものが起きてきた場合は、日本がどういうふうな取扱いをするかで、もしかしたら、非常に自国のイノベーションを起こす研究者を育ててきて、その育ってきた人たちプラス外から入ってきたイノベーションを起こす人たちの組合せを考えることもできるんじゃないかなと思っていまして、中間まとめの骨子案の2ポツのところをもう少し踏み込んでそういうことを書かれたら、もしかしたらいいチャンスになる可能性があるんじゃないかなと思っております。
更に言えば、例えばアメリカだと、科学アカデミーでも実は自国会員とフォーリン会員とありまして、フォーリン会員の大半は、アメリカでディグリーを取って、アメリカで活動をした人たちで、それぞれの国に帰った人たちもその会員として認めていくというふうな方向を取っていたり、何か結構、かなり踏み込んだ政策を実際には書き込んでいるんじゃないかなと思っております。今、ここのところで少し踏み込んでいない部分が、今言ったような点じゃないかなと思っております。

【濵口主査】
 これは難しい問題は、米国は14領域に関して、今、ビザの発給が非常に厳しくなったわけです。その考え方がある種のプレッシャーとして日本に及んでくる可能性はあり得ると。そのとき、日本の大学はかなり悩ましい状態になるというところもあるんですね。
 五神先生。

【五神委員】
 このエマージングテクノロジーの14領域というのは、日本の大学でもかなり高度な研究が進んでいて、そのほとんどが基礎研究のカテゴリーとなっています。ですから、出口に近いかどうかで基礎・応用と区分けをしていればよいわけではありません。どの分野でも、米国はじめ外国の情勢を見据えながら、どうマネージするかが極めて重要になるのです。マネジメントの体制を整えるには情報を取ってくることが必要になります。この点で、私がこの数か月、特に痛感しているのは、アカデミアネットワークは、産業界あるいは政治・行政のチャンネルとは別の外交チャンネルとして極めて重要な役割を持っていて、今こういう場では議論できないような情報がいろんなネットワークから取れる状況にあるわけです。それをどのように全体方針の中で活用するかということを書いておく必要があると思います。
 2025年にどこまで進んでいないといけないかというところをまず定めることが重要で、そこからバックキャストしてやれること、やるべきことをやらなければいけません。その上で、マネジメントの戦略を立てて、どういう言い方であれば、国全体としても大きく外れないようにマネージできるのかということを考えなければいけません。25年までに既存資源をどういうふうにするのかが大事だという中で、25年という時期を特に強調している真意はまさにそこにあるわけです。だから、その作業をやるべきこととして、まず分かるようにし、その上でどう見せていくかということに尽きると思います。
 今、これはピンチなのか、チャンスなのかというと、私はマネージをちゃんとやればチャンスになると思っていますが、受け身でやっている限り、ピンチにしかならないのは明確だと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。

【越智委員】
 先生。

【濵口主査】
 はい、どうぞ。

【越智委員】
 骨子案全体に関して、少し意見を言わせてもらってよろしいでしょうか。まず4番ですね。4ページのデジタル化によるというところ。先ほどとも関連するんですけれども、この研究データのことについてお話があったと思うんですけど、国レベルとか大学レベルのデータの安全管理という視点が、少し抜けているんじゃないのかなと思うんですね。サイバーセキュリティーを含めたそういう言葉もどこかに入ってもいいんじゃないのかと思いました。
 それと、五神先生が短期と長期の投資比率について、例えば7対3という形で述べられていますけれども、例えば運営費交付金と競争的資金の配分比率に関しても全体としてはどのぐらいが適切なのかというところを。あるいは、研究開発投資額が対GDP比でどの程度であるのかというようなところも、やはり可能であれば書き込んでいった方が、私はいいんじゃないかなと思います。
 それと、もっと小さいことになって申し訳ないんですけれども、2ページの3ですね。「世界最高水準の研究環境の実現」ということで、組織全体で戦略的に研究設備、機器を集約、共用しというようなところで、やはりチェック機構が要るんじゃないのかと。実際に超大型の機器はどのくらい使われているかというのはサーベイがあると思うんですけども、中型の機器で、例えば大型の資金を得た研究者が購入した機器はどのぐらい運用されているのか調べる。その機器が共用できるのであれば、そういう機器のための研究費として配分されるんじゃなくて、安定的な雇用という方向にそういう資金を投入すべきです。
 豊田先生が書かれた本でも、大学全体に渡されているお金あたりの論文生産性というのは非常に低いけれども、研究者当たりの論文生産性というのは比較的高いというようなことも記載されています。もちろん大型の、例えば大型望遠鏡とかいろんな設備が要ると思うんですけれども、無駄なところに使う必要は全くない。例えば日本にはMRI、CTが非常に多過ぎて、これはもう使い切れていない。これと同じようなことが大学の中で起こっていて、無駄な機器があるのか否かを検証すべきじゃないかというところも少し思います。一言言わせていただきますと、3ページの基本的方向性の中で、これは「知・情報」を担う大学・研究開発法人こそが何とかに向けてというのは、これは正しい表現ではあるんですけれども、その前にやはり改革が必要となる中で、産業界とか政府とか自治体も含めた社会構造の知的集約型変換が必須の状況であると入れるべきだと思います。そのために今、大学がという表現では、社会全体の支援がこの文章では得られないんじゃないのかなというふうに考えます。この骨子案全体をどういうふうに作り込んでいくかという中で、もう最終に掛かっているので発言させていただきました。

【濵口主査】
 よろしいですか。

【大洞文部科学戦略官】
 ありがとうございます。より充実させていただきたいと思います。最初の安全面、セキュリティー面の話ですが、今、安全・安心や倫理面に留意しつつとありますので、そこを充実させる形をしたいと思っています。
 また、交付金の競争資金の比率ですが、なかなかどれが適切かという議論は、そう簡単ではないかなと思っていますが、現状がどうで、それに対してどっちの方向に向かうべきかという議論は必須だと思っていますので、この場で全部できるのか、それともCSTIの場でも引き続き議論することになると思いますが、検討させていただきたいと思います。
 また、共用機器の調査につきましては、これはおっしゃるとおりだと思っていまして、今、競争資金のルールで、共用化ができるかどうかをチェックしてから競争的資金は配賦しますということになっているのですが、実態上、では、どの程度、共用がなされているか、どのレベルの機器でどうされているかということをしっかり調査しないといけないなと我々も考えております。そのあたり、これから担当課とも相談しながら調査をして、一体どのレベルであれば、もう共用していただく、どういう用途であれば共用していただくというような実際のルールを定める際に、そのあたりを考慮しながらやっていきたいと思っています。ありがとうございました。

【濵口主査】
 よろしくお願いします。あと、いかがでしょうか。どうぞ。

【土井委員】
 済みません。細かいことになりますけれども、3ページ目のところの「知の値付け」のところに書いていただいて、今回、「会計、税務、法務等ビジネスサイドのエキスパート」と書いていただいているのですが、ここに少し違和感がございまして、先ほど基礎研究の報酬の対価のお話がございましたけれども、やはりそういうところをきちんと目利きをする人がいないということですね。目利きだけではなく、それをきちんとよいものをプロデューシングして、民間の企業にトランスファーできるようにしていくという、その橋渡しのところが重要で、会計、税務、法務、もちろんそれがうまくいったときに、それを支える人たちは必要だと思うのですが、そういうプロデューサー的な方が重要であると思います。
 また、そのためにも、ライセンスに値する知財、特許あるいはソフトウエアなどを持っているか。基礎研究だけれども、きちんと知財を確保するということをやらないと、やはり民間企業へのライセンシーができないので、そういうところも非常に重要で、やはり知財権の確保という意味も是非ここで考えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 郡先生。

【郡委員】
 先ほど越智先生が言われたように、もう近くなっていますので、小さなことばかりで恐縮ですけども、まず、越智先生と同じように大学にいるからか知らないけど、目線がよく似ているので重複しますけども、まず4ページのところで、やはりデータに関して、先ほど言われたようなこと、とりわけ私は倫理ということについてもう少ししっかりと書く必要があるなというふうに思っています。先ほどレセプトのお話がありました。おっしゃるようにビックデータを自由に使えるように今なっていまして、そのレセプトからの出てきている論文が今非常にたくさん出ています。知っている人は、先ほど少ないとおっしゃいましたが、知っている人はそのビッグデータを幾らでも解析すると論文になってくるわけです。
 それで少し言葉は選びますが、ある大きな事件以降、こういうような疾患が増えていると。そういうことを海外に出しますと、ほとんどアクセプトされている。そういったことというのは日本人にとってというふうに思っています。使われるデータを自分たちでいかに管理していくかということの目線を持たないというように思いますので、言葉はお任せしますが、倫理とかそういう形のものは、独り歩きしてしまうようなことにならないようにお願いしたいと思います。
 それから、先ほどの共用機器に関しても、私たちの公立大学に大学共同利用機関の方々の、それも偉い方々が来て、もっと使うようにということをいつもプロパガンダしていただいていますが、これの中身をよく見ますと、そこのところの改善をされていかないと、そこには地方からそこに、東京の方まで来てというところにあるように私は思います。
 具体的なことは時間の都合上省略しますが、更に大きくしていくというよりも、そこで御苦労されていることは非常によく承知していますが、当初の目的とは少し掛け離れて、リニューアルしないといけないんじゃないかなというふうに思っています。また必要であれば具体的に申し上げます。
 それから、同じく2ページのことにつきまして、これは先に言っておきますけども、五神先生に怒られますが、2番の、これは若手を育成するということは、私、非常に重要だと思うんですが、1番の1つ目のポツ、経済的支援の充実。次の言葉は必要なのか。「特にトップレベルの研究大学において」云々というところ、これは先ほど3ページ目でしたでしょうか。地域の課題解決といったようなところで、黄色で新たに付けておられますけども、それと相反するとまでは言いませんが、やはり地域の地方の方々が研究をする。そこで若い人たちが活躍するという言葉からするとどうなのかなと。今、五神先生、私の横を見ましたけども、そういう感じに思います。正直なところであります。もう少し、底辺とは言いませんが、幅広く日本が反映していくのには、そこで光るような若い人たちをという、この言葉が必要であれば、持っていません。
 それともう一点、その次のポツのところで、4行目ですが、本文の4行目、民間企業、公的機関における博士採用の促進。これは1行というか、ワンフレーズで書かれていて、書かれていると言えばそれまでなんですが、要するに、研究者の多くは大学や研究機関におるということよりも、最後は企業に行く人の方が多いんだと。その企業が博士に行った頭でっかちは要らないという感覚はなくなっていっているというふうに理解していますが、それでもまだまだ少ないと。私、前回、休みましたが、前々回のときにそういう御発言をいただいたこと、非常に心強く思いましたが、是非お願いしたいと思います。
 1つだけ実例を言いますと、どこでも出ているデータですけども、企業のトップは、PhDを六十数%持っていると。日本人は失礼ながらわずか6%であると。そういったところに経済力の差があるというような文書を書いている人もおられますから、やはり企業の方でPhD、博士課程も必要だという概念を持っていただくように。一文だけではなくて、できればですけども、もう少し具体的な文章の中身になっていただいたらうれしいなと思います。
 以上です。

【濵口主査】
 よろしいですか。

【大洞文部科学戦略官】
 これは骨子ですので、また報告書の段階で少し、いろいろな意見いただいたものもニュアンスが出るようにしっかり工夫したいと思います。ありがとうございます。

【濵口主査】
 どうぞ。

【塚本委員】
 ありがとうございます。参考資料1の真ん中のSociety 5.0の実現の2ポツ目のところですが、「科学技術イノベーションの進展により、すべての世代、すべての地域」となっていますが、「すべての世代、それぞれの地域」とした方が、地域ごとに個性を伸ばしてというニュアンスが入り、個が生きるような印象があるかもしれないと思いました。好みの問題ですので、皆様の感覚で決めていただければと思います。
 それから、最初のカルテの話に戻りますが、いわゆるベンダーロックインと言われるもので、いまだに世の中であるもののように思います。業界として標準化は当然ながらそれぞれの団体で進めていますが、それでも、まだベンダーを移行するのが難しいということであれば、最近話題になっている公正取引委員会によるプラットフォーマー規制のようなものを適用していくというのもありえるかもしれません。例えば、現在の公正取引委員会の概念をデータレイヤーまで含めたプラットフォーマー規制という形にするなど、文部科学省のみならず、他の機関の持つ様々なルールや措置と連携して取り組むことにおり、日本全体のイノベーションにつながるという可能性もあるのではないかと思いました。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。アイデアをいただいたような気がします。
 ほかにいかがでしょうか。先生、どうぞ。

【五神委員】
 大分発言したので短くします。先ほど、菅委員も指摘されましたが、3ページの基本的方向性のところ、(2)の知識集約型のシステム機能強化のところの1番上ですけれども、「産業界により」という言い方は、少しイメージがずれているように思います。知識集約型社会で経済的な価値を生み出すセクターが多様化していくということを捉える中で、例えば資金で言えば、日本の産業界の今の構造は、銀行の融資担当を説得して集めたお金を経営判断として大学に投資するかどうかという話になるので、そういうモデルではもう行き詰まってしまうわけです。
 日本にお金がないわけではなくて、あるところにはあるのですが、それが動いていないところが一番問題です。東大はそれを動かすということを、仕組みも含めて作っていくということを同時にやっています。このように、知識集約型へのパラダイムシフトが起こっている最中であるからこそ、今までできなかったことが可能になり、ピンチがチャンスになるというところがポイントなので、そういう言い方にすれば、いろいろな先生方の意見もいい形でまとめることができるはずです。この全体の方向性を、先ほどの参考資料1では、「インクルーシブな社会」を作ると表現しています。データ、知・情報を活用する中で、例えば都市集中が効率がいいのか悪いのかという議論ではなくて、インクルーシブにするという意味で、地域を活性化させるということは、我々が意思を持って進む方向であるということです。そうなるか、ならないかではなく、そうするのだという話なのです。
 Society 5.0の実現とはそういうものだと私は理解していますが、そういうトーンで全体がきちんと書かれているかということを、いろんな先生方の意見も踏まえてもう一回点検すれば、政治的メッセージとしてもより明確なものになるはずです。データについて言えば、DFFT、データ・フリー・フロー・ウィズ・トラストというのを、G20で、安倍首相が主導しています。それをどう日本が先導していくのかという意味で、そのフリー・フロー・ウィズ・トラスト、つまり、規制型ではなく、しかし、無制限でもなくて、トラスト、信頼とをきちんと担保されるようにしたいということです。そのためにどういう発展のさせ方をしていくのか。そのために戦略的な科学技術投資をどうしていくのかと書いていくことが基本であって、セキュリティーの問題とか、データをどう扱うかとか、倫理の問題というのは、全部そこの言葉の中にきちんと入れることになるだろうと思います。

【濵口主査】
 ありがとうございます。「産業界により」というのを、むしろ大学の自立性とかなり御意見があったと思いますけれども、その大学の自立性でキャッシュフローを生み出すために、今必要なこととして、積極的ないろんなプランニングの片方で、大学に対する規制緩和という議論でいったら、皆さん、御不便、感じていることはありませんか。これはやめてくれとかいう。

【五神委員】
 私たちはどういうふうに考えるかというと、資金循環をより良好にする、様々なセクターからお金が入るように、財源を多様化するためにどういうやり方があるのかをまず考えます。これは金融の問題も相当大きいというか、それが本質かもしれません。そのしかけを実装しようとしたときに、現在の法律の立て付けでできるかどうかという考え方をします。
 国立大学の場合には、国立大学法人法ができたときに、大学が日本のGDPを支える柱になるような形態になるということは想定されていなかったはずです。むしろ公務員の数を減らすために非公務員化するということが直近の課題だったと思います。そういう意味で、経営体、自立的な財源多様化の受け皿となるための制度としての立て付けにはなっていない部分が多々あります。
しかし、資金を循環させるためには何をする必要があり、そのためにどの部分を修正する必要があるかを提案すべく、今、具体的に作業を進めています。国立大学の場合には、第4期の中期計画が第6期科学技術基本計画の次の年に始まるので、第4期の中期計画のときに、大学を経営体として成り立たせるために、法人法の立て付けをどういうふうに直さなければいけないかを考えるべきです。全部、一律でできるかどうかは別ですけれども、その方向性を法的にも整備することが絶対に不可欠で、それをやらなければ、大学が資金循環の受け皿になり得ないということは明確だということが我々の経験です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 越智先生、どうですか。

【越智委員】
 具体的にはたくさんあります。ここで議論するのがいいのかどうか、これと直接関係があるのかどうか分かりませんので差し控えたいと思いますが、希望を聞いていただけるのであれば、広島大学だけではなくて、多くの大学からの要望という形でまとめて集約してお願いするのがいいのではないかと私は思っています。

【濵口主査】
 国大協では、そういう意味では何か議論は進んでいますか。

【越智委員】
 文部科学省に対する規制というか、自由度……。

【濵口主査】
 第4期に向けて、あるいは第6期科学技術の。

【越智委員】
 それは直接は今のところはないという。五神先生が来られたらなされるんでしょうけど、時々にしかお越しになられませんので。

【濵口主査】
 先生、どうですか。ほか、いかがですか。もう十分お話しされましたでしょうか。

【郡委員】
 規制緩和じゃないんですけども、私ごとですが、私は国立と私学と公立にいましたけど、一番自由度があったのは私学ですね。それは何かというと、決定とお金の出どころと、そして、実行というのが年度内に行われることができるということ。非常に自由度があって、早かったと。それに比べると、私は今、公立ですと、公立は国立以上に縛りがあって、お金が来るのは設置団体。それを統括しているのは総務省、それを裏でコントロールしていただいているのが文部科学省。そして、厚生労働省も関わっているというので、私たちはいつも4人の母に見られながら生きていかないといけない立場にあるんですが、お金は、年度内に出していただくというような自由度。それは日本の制度として無理なのはよく分かるんですが、ただ、物のスピード感という言葉、ここにも何回か出てきますけども、スピード感を出すのにはやっぱり決定するのとお金そのものをやらないと、私たちだけに頑張れというのはちょっとと思います。規制緩和ではありませんが、いつも感じるのはそこです。

【菊池委員】
 あれですかね。「産業界により」と言うから問題があるのであって、「産業界や地域社会からも大学等の知的生産活動に対して積極的な投資が行われ」というふうに、ただ単に表現を変えるだけで十分なんじゃないかなと。やはりこれは全部、国とか大学の自助努力だけでどうのこうのというのは、やはり限界があるんじゃないのかなと思います。せっかく産業界もそれなりに投資できる環境がある。そして、地域社会もそれなりに成熟してきたということであれば、文部科学省なり国からだけの資金だけではなくてという、そういうような民間の資金を活用するという方向をやっぱり掲げた方が、より発展する措置があるのではないかなとは思いました。

【濵口主査】
 客観的に見れば、10年前、5年前と比べて、随分変わってきていると思うんですね。そこをある程度、定量的にも認識をするという作業も必要で、少しデータをまとめたことはあるんですね。大学発ベンチャーは1兆8,000億、東証マザーズであるとかそういうところまで今伸びてきているとかいうデータもまとめているんですけど、本当はもう少しそれもトーンとして入れながら、更に活性化するにはどういう道があるかということをもっと議論しなきゃいけないという方向なのかなというふうには、これは感じますけどね。
いかがですか。

【橋本委員】
 これまでも何回も言われてきて、皆さん、それぞれ違うお立場から同じことをおっしゃっていると思うんですが、やっぱりスピードを持って変えなければいけない。そのためにいろいろな取組をしようとすると、既存のルールが足を引っ張る。それをやるために随分エネルギーと時間を費やすというのがいろいろな局面で見られていて、例えば現在、私がおります、こういう大学発ベンチャーでも、その開発を進めようとすると、大学との契約、これが実はすごいネックになってしまうとかですね。思わぬところにハードルがあるんですね。ですから、皆さん、それぞれのお立場で違う例を示しながらおっしゃっているけども、結局、同じ話が多分ベースにあって、本当に根本的に何か変えていく。パラダイムシフトを起こさないと、もう本当に間に合わないというものをもう少しこの中に入れ込んでいただけると、日々、皆様が苦労されているものがもう少し伝わるのではないかなという気がします。
 例えば、今日も大分出ました医療データですね。これも本当に今日もお話を伺っていて、非常に日本でこれだけすばらしいデータがある。ところが、特に民間企業がそれにアクセスしようとするといろいろ問題が出てきます。倫理上の問題と言われてしまって、ほとんど手が出せない。だけども、例えば医薬品の開発をするときに、必ず今、薬を投与していない群と投与した群で比較をして差を出すことを求められるのですが、投与していない群、あるいは健康な人のデータというのは、こういったデータベースからかなりきれいなものが引き出せると思うんですね。そうすると、一々そういう人たちを治験にエンロールしなくてもできる。そうすると、比較的早く、しかも、安くできるんですね。
 今こういう議論を、日本がそういうことを言い出すと、欧米からかなり叩かれるんです。そういう不正確なデータで薬を承認すべきではないと。だけど、逆に日本のこの質の高いデータからコントロール群のデータをきちんと出して、それに対して比較するということをやれば、薬の開発でもかなり世界を出し抜けるのではないかなというふうに思っています。
 ですから、こういう医療データの使いやすさ、使い勝手をよくするということなんかも、先ほど言った規制を壊していく。そういったものの一つの例になるのではないかなと思いました。

【濵口主査】
 少し前にもある人と話していたら、リープフロッグの話が出て、インドは今、5本の指の認証と虹彩の認証で、あと、ナンバーだけで全て決済ができるよう、10億の人がほとんど動き始めているということで、日本というのはいろんなシステムがカチカチにあるために、むしろビハインドになり始めているというところがありますよね。今もお話がずっとあるのは、スピーディーにやらなきゃいけない。それから、障害がある。こういう話があるんですけど、私自身として、ずっと同じ議論をしているような気もするんです。一方で、5年、10年の間には現実社会は少しずつ動いているけど、このスピードが遅い。
 今、本当に、例えば2025年に向けて何が必要なのかというのをもっと本当は知恵を絞らないといけないんじゃないか。まだ知恵が足りないなと。ここに書いてあることで私たちは日本を変えることができるだろうかという問い掛けが必要なんだなと。基本的な方向性を固めて、これでやって、一定の水準で項目を潰していったとして、日本は変わるだろうかというのを、ずっと今日は引っ掛かったままで議長をやっていますけども、ひょっとすると、本当はシステムの軽量化なんじゃないかと。もう一回、最初のところに戻りますけど、全てIT化してしまうというぐらいのことをやらないと、これは同じことを繰り返すような気もしますね。本当にこれはどうしたらいいのかな。天才が必要な時代なのかもしれない。

【大洞文部科学戦略官】
 少しコメントよろしいですか。

【濵口主査】
 はい、どうぞ。

【大洞文部科学戦略官】
 皆さんに知恵をいただいた方向性は間違ってないと思いますが、あとは、五神委員の言われたように、具体策をどの段階でどう手を打つかというところに、これを国の計画に落とし込んでいく段階だと思っておりますので。我々の中で書けること、書けないこと、なるべく具体化をするのと、報告書に向けてもう少し踏み込んで、ここに焦点を絞ってこうやるべきというところを工夫させていただくとともに、CSTIで今後基本計画の議論が行われるときに、そういった議論がしっかりされていくように、我々としても参加していきたいなと考えていますので、これから具体策にする際に、またお知恵をいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【濵口主査】
 ありがとうございます。本当に今、正念場かもしれないと思います。我々のこの立場で議論して、打てる手は打ち切るぐらいのことを議論していかないと、本当に高齢化社会がもう本格化していますけど、ピークへ達したときには打てない状態になってくるだろうと。2025年まで、その時間はほんの数年。これをもう一段、まだ時間ありますので、この意見をいただきたいなと本当に思っております。
 全体として、今日までまとめていただいたことは本当に質の高い、網羅的な、きちっとした意見になってきているかなと思っておりますので、もう一段、掘り下げることはあり得るかどうかということを、次、しっかり、この夏の間中、審議していただいて、委員としての責任を果たしていただきたいとお願いしたいと思います。
 お時間も来ましたので、そろそろ終了させていただきたいと思いますが、中間取りまとめに向けた骨子案については、本日いただいた御意見を基に修正して、次回以降の議論に活用していただきたいと思います。
 最後に、事務局、事務連絡お願いいたします。

【中澤企画評価課企画官】
 ありがとうございました。本日の議事録につきましては、後ほど委員の皆様にメールでお送りさせていただきますので、御確認ください。御確認いただいた上で、文部科学省のホームページで公表したいと思っております。
 また、次回でございます。8月22日の10時からということで、事前に御連絡させていただいているところでございます。中間取りまとめに向けて、引き続き今の議論を深堀りする議論をさせていただければと思ってございますので、よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 皆様よろしいでしょうか。御意見なければ、これで本日の科学技術・学術審議会総合政策特別委員会を終了させていただきます。本日は御出席ありがとうございました。
 

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科学技術・学術政策局 企画評価課

(科学技術・学術政策局 企画評価課)