総合政策特別委員会(第20回) 議事録

1.日時

平成30年7月19日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省13階1~3会議室

東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 報告事項
  2. 文部科学省における第5期科学技術基本計画の進捗状況の把握と分析結果(案)について
  3. researchmap について

4.出席者

委員

濵口主査、新井委員、大橋委員、小野寺委員、川端委員、庄田委員、白石委員、新保委員、菅委員、角南委員、竹山委員、知野委員、塚本委員、土井委員、冨山委員、西尾委員、橋本委員、松本委員

文部科学省

伊藤文部科学審議官、松尾科学技術・学術政策局審議官、勝野科学技術・学術総括官、坪井科学技術・学術政策研究所所長、西條産業連携・地域支援課長、松岡企画評価課長、ほか関係官

5.議事録

科学技術・学術審議会 総合政策特別委員会(第20回)


平成30年7月19日


【濵口主査】
  それでは、定刻になりましたので、ただいまより科学技術・学術審議会第20回総合政策特別委員会を開催させていただきます。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、また大変暑い中御出席いただきましてありがとうございます。
 それでは、まず事務局より、出席者の紹介をお願いいたします。

【小野山企画評価課課長補佐】
  それでは、事務局より、本日の出席者の御紹介をいたします。
 本日は、五神委員、永井委員が御欠席でございます。あと新井委員、菅委員、出席予定ですけれども、少し遅れております。
 その他の委員の方々については、本日御出席いただいております。ありがとうございます。
 加えまして、前回委員会が開催された2月以降、事務局の方に人事異動ございました。私、小野山が企画評価課課長補佐に着任しております。よろしくお願いします。
 以上でございます。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 続きまして、勝野総括官より御挨拶を頂きたいと思います。

【勝野科学技術・学術総括官】
  おはようございます。委員の皆様には、大変お忙しい中、本日の第20回の総合政策特別委員会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 さて、報道等で御承知かと思いますけれども、7月4日に当省の佐野太大臣官房付前科学技術・学術政策局長が受託収賄の容疑で逮捕されました。今回の件に関しまして、社会、多くの皆様に大変お騒がせしておりますことを、まずもってお詫び申し上げる次第でございます。
 文部科学省としては、捜査当局が行う捜査に全面的に協力し、全容解明に貢献していく必要があると考えております。7月10日には大臣から全職員に対して直接訓示がございました。今後、文部科学省の全職員が一丸となって、文部科学行政に対する国民の皆様の信頼を取り戻すため、日々の業務の公正性や法令遵守について改めて徹底するとともに、文部科学行政に停滞を来さぬよう、真摯に業務に取り組んでまいる所存でございます。
 本日は、文部科学省における第5期の基本計画の進捗状況の把握・分析について、各分科会等における議論を踏まえて、この委員会において幅広い御議論をお願いしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【濵口主査】
  ありがとうございました。
 それでは、会議開催に当たりまして、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【小野山企画評価課課長補佐】
  資料につきましては、今回より本格的なペーパーレス会議としております。お手元のPCを見ていただきますと、資料1-1から1-3、資料2-1から2-3、資料3。それから参考資料でございますけれども、1から5までをパソコンの中に御用意しております。御不明な点等ございましたら、事務局まで何なりとおっしゃっていただければと思います。
 以上になります。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 本日は、議題1、「報告事項」としまして、NISTEP定点調査について、科学技術白書についての2つを報告していただきます。
 また、議題2としましては、「文部科学省における第5期科学技術基本計画の進捗状況の把握と分析結果(案)」を御報告させていただき、議論をいただきます。
 また、議題3の「researchmapについて」は、新井委員より資料を提出いただいておりますので、御説明いただき、議論をさせていただきます。
 それでは、議題1の「報告事項」に入ります。NISTEP定点調査、今年度の科学技術白書についてお願いいたします。

【坪井科学技術・学術政策研究所所長】
  お手元の資料1-1です。科学技術・学術政策研究所の坪井でございます。NISTEP定点調査2017につきまして御報告したいと思います。
 2ページ目ですけれども、この定点調査は、産学官の第一線級の研究者や有識者への継続的な意識調査を通じて、科学技術やイノベーションの状況変化を定性的に把握する調査ということで、毎年行っているものでして、第5期科学技術基本計画中の5年間について、今年は2回目に当たるものということになります。有識者等2,800名ということで大きく2つのグループに分かれますが、これらの方に6つの質問パートの63問ということで、毎年同じ質問をさせていただいて、その変化を見ていくというような調査でございます。
 3ページは、質問させていただいた方々を、少し具体的に書いております。
 4ページですけれども、実際に調査を行いましたのは、昨年の9月から12月、回答率は92.3%と非常に高くなっております。また、これらの質問に関連した自由記述や回答理由ということで、これは文章で書いていただいた部分があるんですけれども、約9,000件、56万字という大変多くの量のコメントを頂いておりまして、これはいろいろキーワード検索をしたり、回答者の属性別にそれを整理したりということもウェブ上で自由にできるようにしているものでございますので、そういった形でいろいろ活用できる形の基盤を整えているというものでございます。
 5ページのところに、今回の調査の結果を大きくまとめますと、このようなことになるということで書いておりますけれども、1つは大学公的機関の研究活動の基盤に関する危機感が引き続き継続しているという点。また、昨年、1年前の調査に比べると、基礎研究の状況に対して不十分という認識が去年よりも増えてきているという点があるということです。また、産学官連携については、大学公的研究機関の側の方は比較的取り組んでいるとしている。一方、産業界の方はまだ不十分だということで、ここはちょっとほかの質問に比べて認識ギャップが大きいという特徴が見られるという点などがございます。
 多くの質問に関しては、実は評価を上げたという回答者もいますし、下げたという回答者も一定割合存在するので、平均化してしまうと変化がないというような結論に陥りがちなところもあるんですけれども、大学公的研究機関におけるよい事例なども幾つか出てきているあたりはしっかりそういったところをピックアップして、評価をしていくことが重要ではないかという点があろうかと思っております。
 6ページ以降が具体的な結果、それぞれの項目のものになりますが、ここでは大学公的研究機関の研究活動の基盤というところで、見ていただくと青印のところが今年、三角の空欄になっているのが去年ということで、去年に比べて下がっているというような状況です。ただし、回答者の幅を見ていただくと、いろいろ回答した方の属性によっては、意見の幅もあるというところも見てとれるかと思います。一番上の質問でいいますと、国立大学の方は厳しい、私立大学の方はそうでもないというところも見てとれるわけでございます。こういった形で、それぞれの質問に対して分析ができる状態を示しております。
 また、7ページのところはさらに回答者の属性別の評価と、評価を上げた方の理由の例とか評価を下げた方の理由の例という形でこのように整理をしているところで、こういったところで評価を上げた方の意見も拾い上げる形ができているかと思います。
 8ページのところは、特に研究時間の確保というところになりますが、ここが大変厳しい意見が、やはり増えています。
 また、9ページのところは若手の研究者に対する取り組みというところがあります。ここについては、比較的若手研究者の取組があるというところで、評価を上げた方が一定の割合いるという事実関係があろうかと思います。
 あと10ページのところは、今回、基礎研究の関連のところは、去年に比べてやはり下がったという評価が多かったという点が見てとれます。このような形で、ちょっと時間の関係で省略いたしますが、全体としてこういった個別の分析を行っているということです。
 あと少し飛んでいただき、19ページのところが全体のまとめの中で整理をしているところです。よい変化の兆しもあるのですけれども、そういったものを導入したくても、人的・資金的リソースのため困難という意見があることも事実です。
 また、20ページのところにありますけれども、やはり大学や公的研究機関に関しては、安定的な支援が求められているという点が、多く意見が出ているかなと思っておるところでございます。現場の声が非常にこの調査に反映され、いろいろ分かるわけでございますけれども、現場の研究者が改革の意図を理解、成果を実感できるようにしていくことが必要ではないかという点があろうかと思っております。
 簡単でございますが、NISTEPの定点調査の御報告でございます。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 それでは、続きまして、科学技術白書についての報告をお願いいたします。

【松岡企画評価課長】
  続きまして、科学技術白書でございます。資料は1-2と1-3がございますが、1-2を使って御説明させていただきます。資料1-3は、1-2のデータの部分だけ抜粋したものですので、1-2で説明したいと思います。
 29年度科学技術振興に関する年次報告、通称科学技術白書と言っておりまして、配布版のきれいな表紙がついたものには、30年版科学技術白書というタイトルがついております。本体の方は大部になりますので、後ほど送付させていただきたいと思っています。
 構成ですけれども、特集、今回はSDGs、第1部では科学技術イノベーションの基盤的な力の更なる強化に向けてということで、昨今、日本の研究力が落ちているのではないかということがありましたので、第1部でこのテーマを取り上げさせていただきました。第2部は、科学技術の振興に関して講じた施策ということで、我が国全体で講じられた施策について、基本計画の項目に基づいて整理させていただいたものです。本日は、第1部について説明させていただきます。
 まず、少し下がっていただいて、図表の1、図表の2とございますが、論文数が減っているのではないかという指摘を受けております。論文数、それから論文の質の高さを示す引用度数、トップ10%補正論文数、いずれを見ましても、我が国は国比較しましてランキングが低下している状況でございます。
 その内容を見ますと、図表の2ですけれども、大部分が大学が出している論文でございますが、大学は近年、微増から横ばいという状況でございます。それから、緑の部分が企業ですが、こちらの方が、もともと数が少ないのですけれども、近年減少しているという状況が、内容を見るとこういうことが分かっているということでございます。
 研究のアウトプットを見るときに、論文だけでは不十分であろうということで、下の方にいきますと、知的財産で見ております。知的財産につきましては、中国に昨年追い抜かれましたけれども、米国、中国、日本ということで高い水準を保っているという状況でございます。大学で特許を使っていこうという動きが出ておりまして、大学発ベンチャーにつきましては、昨年の数字ですけれども、36社上場しておりまして、時価総額が1兆円を超えるというところまできており、取組の成果が出てきているのではないかという面があります。
 右にいきまして科学技術関係予算ですけれども、中国が突出しておりますのでちょっと見にくいですが、日本、2000年に比べて115%と伸びておりますが、諸外国と比較すると、米国とかドイツが180%という程度になっておりまして、比較すると日本の伸びは停滞していると言わざるを得ないという状況でございます。
 こういった国際的な状況のもとで、基盤的な力、つまり、人材力、知の基盤、研究資金という3つの要素が基本計画等で定められておりますけれども、その順に分析をしております。
 まず人材力ですけれども、博士課程の進学者、それから若手研究者が育っていく、若手の人たちの状況を見ております。まず、図表7ですけれども、博士課程に進学する人が少なくなっているという状況です。特に修士課程から博士課程に進学する人が減ってきているという状況です。一方、ピンクの部分が社会人ですけれども、社会人は増えてきているという状況で、これはこれで良い傾向ではないかということが言えます。
 それから、博士課程になぜ進学しないのかという要因ですけれども、キャリアパスの不安定さですとか、在学中の経済的な負担に対する不安があって躊躇しているというアンケート結果を、白書の中では紹介させていただいております。
 それから、図表8ですけれども、こちらは教員のポスト、任期の有無、それと年齢別の構成を見ております。若手教員の任期付きポストは、近年増加している傾向です。一方、図表の右側です。任期のないポスト。こちらを見ますと、年齢の高い層が増えているという状況になっております。こういった状況があって、今後、若手の確保が重要な課題となるだろうという可能性があるということを指摘させていただいております。
 それから、人材力では、流動性と多様性も重要だということが基本計画に書いてあります。図表9を見ますと、研究者の国際流動性が低いことが分かります。海外から受け入れる者も横ばいですし、海外に派遣する研究者は低下傾向で、その後横ばいということで流動性が低いということと、図表10、論文数と国際共著の関係を見ますと、丸の大きさが論文の数を示しています。少し見にくいですけれども、丸と丸をつなぐ線が、国際共著の数を示しています。各国とも丸の大きさが大きくなっているのですけれども、日本が丸が余り大きくなっていないということと、各国とも線の太さですとか線の数が増えておりますけれども、日本が増えていないということで、国際頭脳循環の参画に課題があるのではないかという指摘をさせていただいています。一方、多様性に関しましては、女性の割合を近年増加させておりますけれども、諸外国に比べて低い状況であるということでございます。
 こういったことを紹介させていただいて、白書の中では博士課程リーディングプログラムですとか、海外特別研究員ですとか、そういった取組の成果も紹介させていただいております。
 次のページにいきまして左の方ですけれども、知の基盤でございます。1点目は、新たな研究分野への挑戦についてでございます。国際的に注目度の高い研究領域が増えております。図13ですけれども、日本はここに参加している割合が3割程度に低迷しているということと、アンケート結果でも、過去10年との比較において、挑戦的な研究ですとか探索的な研究が減少しているという認識をされているということを紹介しております。
 それから、下の方にいきまして、研究時間という項目がございます。研究時間が減っているのではないかということで、図表14でございますけれども、研究活動に充てている時間が減ってきているという状況です。それから、紫、緑、ブルーのところ、こちらが社会サービスの活動でございますが、ここが増えているという状況でございます。
 それから、各省の中の分析では、研究支援者数が諸外国と比べて少ないということと、学内の運営事務、学内事務手続の効率化が課題だということを指摘させていただいております。
 それから、右の方にいっていただいて研究資金でございますが、まず図表15ですけれども、我が国の研究費総額は、7割程度は企業が負担しておりますが、企業の研究開発はリーマンショック以後落ち込みましたけれども、その落ち込みからは回復傾向にあります。そのほか、大学・公的機関等については横ばい傾向でございます。
 それから、図表16ですけれども、国立大学の運営費交付金、私立大学の補助金、国立研発の運営費交付金、減少ですが、近年横ばいということで維持しているということを紹介しております。
 それから、大学等の民間との共同研究が進んでおりまして、図表17ですが、民間企業から大学等の研究資金受入額は順調に伸びておりますが、まだ1件当たりの額が小さいですとか、そういった課題があります。組織対組織の大型の共同研究を進める必要があるということを指摘させていただいています。
 取組事例として、中外製薬と大阪大学、武田薬品と京都大学と、こういった大型の組織対組織の産学連携のプロジェクトが加速しているという事例を紹介させていただいています。
 それから、下の方に横長の部分がありますが、これは今までの指摘を取りまとめたものでございまして、省略させていただきまして、こういった状況を踏まえて、下の方ですけれども、基盤的な力に向けて今後の取組の方向性ということで、政府は研究者が独創的・挑戦的な研究を進めるための環境整備をすること。それから、第5期基本計画の実現に向けた研究開発投資の確保、こういったことが必要である。大学、国立研究開発法人等につきましては、外部資金拡大による財源の多様化、人材の流動性・多様性の促進などを進めまして、国際頭脳循環への参画が必要であるということ。産業界におきましては、博士人材の積極的な活用を採用していくこと、それから、オープンイノベーションの更なる推進、こういったことを期待して、白書としては取りまとめをしております。
 6月12日に閣議に諮りまして、国会に報告したところでございます。白書については以上でございます。

【濵口主査】
  ありがとうございました。それでは、御報告いただいた2件について、質問、御意見ございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。どうぞ、新井委員。

【新井委員】
  2点、特に今、お話しいただいた白書について少し質問をさせていただきます。
 第1点は、女性研究者比率についてです。この白書では、女性研究者比率が伸びているけれども、伸び悩んでいるというような指摘にとどまっていて、なぜ女性研究者を増やさなければいけないかということの必然性が十分に書き込まれていないというふうに認識しています。例えば、日本開発銀行が2016年に調査をした結果、特許は圧倒的に男性だけのチームで書かれたものの方が数は多いんですけれども、男女が合わさった多様なチームで作られた特許の方が、直近の結果では、15分野のうち13分野でその方が1.2倍以上の価値があるということが分かっておりまして、女性が含まれるような研究チーム、あるいは多様性、女性だけではなくて、バックグラウンドであるとか、国籍であるとか、多様な性があるような研究チームの方が、今は価値を創造しているということが統計的に分かっておりますので、単に女性を増やしましょうということではなくて、増やした方か生産性が上がるということについて明記が必要だと思います。
 そういう場合に、例えば九州大学や名古屋大学のように、先んじて女性登用を明確に打ち出して、何%以上、あるいは女性枠というのを作った大学で、その枠で入られた女性がどれぐらい研究出力があるかということを調査もなさっています。そういう結果から、実は女性枠というものは、研究出力を下げない。逆に研究出力は男女均等枠よりも、実は成果が上がっているという事実がありますので、そういうことも書き込まれる必要があるかなと思います。それが第1点です。
 第2点目は、国立大学における知財権の取扱いの問題です。これは一昨日、林大臣とsociety5.0の後の懇親会でもお伝えしたことなんですけれども、今、国立大学はそれぞれ法人化していて、それぞれが弁護士を雇っています。そういう中で、大学の中でデータサイエンスが盛んに行われているんですけれども、その大学で蓄積されたデータが誰のものかということに関して、弁護士によって議論が分かれています。例えば競争的資金を獲得して、それによって蓄積したデータであっても、研究者が他大学に移動するときに、大学側がデータの移転を認めないという事案が増えています。
 そうしますと、競争的資金を取ってデータを集めても、その途中で移動したときに、もう1回データを取り直さなければならないので、国民の目から見ると、投資したものに対して、同じものを作るのに2倍かかっているという、非常な不効率が起こっています。これは民間から来た弁護士にとってみれば、例えば、これは単に例でしかありませんけれども、日立で作ったデータを、その人が富士通に動いたら富士通に持っていけるかといったらそれは違いますねということなので、弁護士はそのように判断をしてしまう。だけれども、国立大学に関しましては、主には交付金です。あるいは、もともとの出元が競争的資金、JSPS、あるいはJSTといったようなファンディングエージェンシーが出しているお金です。それに関して、一度大学の方にお金が名目上入っている。それに対して、そこから何かデータを作るのに発注をした場合、当然契約書上では、成果物の所有者は法人になっていて、研究者個人になっていない。そういうことから、それは個人のものではないので動かせないというふうに言うのです。
 でも、大抵の場合、特に人文社会学などはそうですけれども、大学に置いていっても、その知財を大学の方は使いこなせない上に、管理をするのもコストがかかるということで、特に退職教員の残していったデータをどうするかということが今、大きな問題になっていますので、これは国立大学法人それぞれで解決ができることではないので、林大臣には、トップダウンに、これについてはどういうふうに見解を出すかということをお願いしたいというふうに言っているところです。ですので、こちらの科学技術政策の中でも、このような知的財産の扱いと、研究者の移動を推し進めている中で、この知財の問題をどうするかということについては、統一的な見解を出していただきたいというふうに思います。以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 どういたしましょう、松岡課長、御意見ありますか。

【松岡企画評価課長】
  1点目の、女性比率の件でございますが、女性が参画するチームの方が生産性が高い、そういう情報は頂いていました。いろいろなところで幾つかデータをくださいとか、内容をお伺いしたんですけれども、今回は、白書に間に合いませんでしたので、引き続きそういった点については検討していきたいと思っております。
 それから、知的財産の件ですけれども、知的財産ですとか担当のところと相談して、課題を整理して検討していきたいと思います。

【濵口主査】
  引き続き議論させていただきます。
 ほかにございますか。西尾先生、冨山委員。

【西尾委員】
  今、2つの報告を聞きまして、みな右肩下がりという状態で、はっきり申しますと元気の出る報告がないですね。大学の研究者が何か怠っているかというとそうではなくて、現在、大学の基盤的な経費がこれだけ縮小している中で、例えばトップ10%の論文数において横ばいの状況をキープしているということ自体、ある意味ではすごい大変な努力をしていると捉えることができます。それと、ある方から伺ったことなのですが、研究者の給与と発表している論文数との割合を国際的に比較すると、日本のトップレベルの大学の研究者は世界のトップランクに位置すると言われています。要は、大変安い給料で高い論文生産性を有していると言われています。
 こういう状況のときに、以前から申し上げておりますが、目標とするアウトプットを得ようとしたら、それだけのインプットをしないと成果は出てこなくて、アウトプットのところばかりを評価することは問題だと考えます。先程の報告のような危機的な状況をどう改善していくのかについては、インプットのことも含めて抜本的に今考えないと、今後さらに大変な状況になると思います。
 そのような対策を考える際に、グローバルな視点で申し上げますと、例えば、AIの分野ではPh.Dがを取得しますと、米国では年間で3,000万円以上のサラリーでオファーが来る状態です。日本で有能な研究者を育てたときに、グローバル競争の中でその研究者が日本の研究力に向上に貢献するために、どのような形でインセンティブを与えるのかを考える必要がますます高まっていると考えます。給与面では難しい場合には、国内にはAIの研究対象として大変興味深いデータがあるというような何か別の魅力を提示するようなことを考えていかないと、日本から有能な若手研究者が海外にどんどん出て行ってしまうのではないかということを、最近、危惧しています。そういう点も含めた抜本的な対応が必要なんじゃないかと思います。以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。同感です。
 冨山委員、お願いします。

【冨山委員】
  やや同じ話なんですけど、研究資金のこの数字がありますと。ちょっとこの表現は私はどうかなと実は思っていて、あたかも企業も頑張っているように書いてありますが、企業部門の研究開発投資に関しては、日本は全く負けています。桁違いにアメリカや中国やヨーロッパの会社の方が使っているはずです。もともと日本は、民間が研究開発を頑張っていて、公的資金が少ないという構図だと思われていますが、もはや国際比較においては、民間は全然頑張っていません。桁違いです、はっきり言って今、例えば欧米のIT系で言うと、グーグルが使っているお金は下手すると2桁ぐらい違うので、要は、官民ともに遠く引き離されているし、それだけのお金が入っているから、3,000万、5,000万のオファーが来るんですね。これは分かりやすく言うと、入っていく金が全然違います。
 これは少し次元が違うくらい差をつけられそうになっているので、今までやってきたような、ある種改良的なアプローチで何とかしましょうというのだと、勝負にならなくなるし、それこそ今、英語教育なんかちゃんとやればやるほど、今、西尾先生が言われたような人材流出が起きます。
 私も、たまたま身内が日本のトップ大学でPh.Dとかやっているので分かるんですけど、優秀な研究者には二十五、六歳のところに、5,000万、6,000万円のオファーが実際来ます。それが現実の成果です。多分これは全ての領域に広がっていきますから、若い子たちが英語ができるようになればなるほど、言語は全然ハードルはなくなるから、この問題はちょっとある種、本当に異次元にどうするかということは、根本的に議論してもらいたいなと私は思います。これはすごく強烈な機会を持つ。
 これは大学・研究機関だけじゃなくて、企業も同じことです。結局、人材の取り合いは、大学と民間企業だけじゃなくて、民間企業も、要するに全部グーグル、アマゾン、これから恐らく中国勢にさらわれていきます。ですから、この問題に対峙していて、相変わらず民間企業も、私も経済同友会の筆頭副代表幹事なので言いにくいんですけど、馬鹿みたいに就職協定で、一括採用で、一括初任給で、一括終身雇用、終身年功制でやっているわけですよ。こんなことやっていたら、はっきり言ってトップ人材は採れないです。だから、もう前の動きはやめた方が思っているんですけれども、実は多分同じ意見なんですけれども、かなり真剣にそう思っています。ですから、これは民間の側も、非常に実は遅れているということです。これが1つ。
 それからもう1点が、先ほどの新井先生のお話とちょっと被るんですけれども、要は今、知財の問題というのは非常に新しい局面に明らかに入ってきていて、データの問題というのは、実は債権法とある種、所有権法がすごくぐちゃぐちゃになっていて、どっちで処理するかってはっきり分からなくなっていて、その中でいろいろややこしいことが起きているという事実があります。これはやや国際的な問題とも絡むんですが、曖昧な感じでやっていた方が、例えばアメリカは有利なんです。要はデータ独占企業があるので、今の状況で引っ張った方がいいんですね、彼らは。日本とヨーロッパは、データ独占企業は存在していないので、実はむしろデータに関しては、できるだけパブリックコモンズにした方が実は有利なはずなんです。要するにコモンズにすれば、彼らは吐き出さなきゃいけないので。
 実はそういった問題があって、知財法の発展というのは、少なくとも過去100年間は、知財の排他的権利性を広げる方向でずっと来ています。これが知財法の歴史です、社会学的な。ところが、ここに来て知財の排他性というものを認める、要するに所有権的な排他性というものを認める方向が本当はいいのか、むしろパブリックコモンズ的に、むしろそういう意味では制約をかけて、先生が言われたように簡単に移転できるようにした方がいいのかというのは、多分曲がり角に来ていると思います。少なくとも国益という観点で言ってしまうと、米中は明らかにデータ独占型の社会構造、経済構造になっているんですけれども、日本はヨーロッパに近く、この2領域、多分日本、ASEAN及びEUは、パブリックコモンズに持っていった方がむしろ有利な状況があります。
 この問題も、実はかなり本質的な問題提起なんですよ、さっきの新井先生のお話は。これは多分、文部科学省の領域も超えちゃうんですが、これは実はある意味、今旬で、昨日EUが5,000億円の課徴金を出した。要するに、全部同じなんです、根っこは。この問題も、ちょっと異次元の取組に、ちょっと博士の問題を超えちゃいますけれども、是非ともそういう取組を政府全体で、これも時間との勝負なので、急いだ方がいいと思います。以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。幾つか重要な御指摘をいただきました。引き続き検討、分析していく必要があると思いますので、課長、よろしくお願いします。
 はい、どうぞ。

【新井委員】
  済みません、西尾先生が最初に冒頭おっしゃったことはとても大事だと思うんですけれども、毎年、タイムズ・ハイアー・ランキングが出るたびに新聞報道が、東大が何位に落ちたという話を書いて、それでまた騒ぎになるんですけれども、そのタイミングでNISTEPはきちんと1人の教員の給与当たりとかで割ると、日本はこれだけいいというのを、逆にきちんと各報道機関にプレスを入れた方がいいんじゃないかという気がします。ですので、単にタイムズ・ハイアー・ランキングで何位でしたという報道だけが一人歩きするので、今こういう状況が内閣府で行われていて大変困るので、NISTEPは単にそれを後追いするような分析だけを出しているのではなくて、それに対して、いや、日本はこういう状況だからこうなっているんだということが分かるようなデータを、きちんとプレス側に出してほしいと思います。

【濵口主査】
  ある種、コストパフォーマンスがいいということを証明することになるかと思うんですけれども、一方にいかに給与が低いかというのをはっきりされてしまっている気がします。

【坪井科学技術・学術政策研究所所長】
  当研究所ではインプットとアウトプットの関係について、これまで幾つか研究してまいりましたが、今御指摘の点も踏まえてどのようなことができるか、検討してまいりたいと思います。

【濵口主査】
  よろしくお願いします。
 お時間押しておりますので、このあたりで終えて、次の議題に移りたいと思います。
 議題の2は、前半と後半に分けて、まずは人材委員会、国際戦略委員会、産業連携・地域支援部会と社会との関係深化についてお願いいたします。

【石丸人材政策推進室長】
  人材政策課でございます。科学技術基本計画、第5期の科学技術基本計画の進捗状況につきまして、人材委員会関係部分につきまして御報告申し上げます。
 お手元の資料2-1を御覧いただきまして、その中の1ページでございます。その資料に基づきまして、御説明を申し上げたく存じます。俯瞰マップで申し上げますと俯瞰マップの7、人材の育成確保、そして俯瞰マップの8、人材の多様化・流動化、この2つが主な対象範囲になってございます。先ほど白書の関係でも多岐にわたりまして御議論ございました、人材の指標1つとりましてもたくさんの指標が設定できるわけでございますけれども、今回は科学技術基本計画で定められてございます指標が2つございます。
 1つは、40歳未満の大学における本務教員数を基準値、2013年度よりも1割増加すること。そして、女性研究者の新規採用割合を、自然科学全体で30%にすること、こういった指標が定められてございます。この指標に加えまして、科学技術イノベーション人材を育成する上での基盤となります大学院分野における状況ということで、修士課程から博士課程の進学動向、この3点を基準といたしまして、これまでの進捗の把握というものをさせていただいた次第でございます。
 1点目でございますけれども、下の方、分析を御覧いただければと思います。まず1つは、修士課程から博士課程への進学状況についてでございます。これは先ほど白書の中でも御紹介申し上げました、余りいい数字ではございませんけれども、博士課程の進学状況といたしましては、2004年から2016年にかけまして、7,491名から6,674名まで減ってきている。済みません、これは基準値が2013年から2016年にかけて、微減という状況になるということでございます。一言で言うと、博士離れが進んでいるという状況かと思います。これにつきましては、博士課程修了後のキャリアパスというものが不十分ではないか、不明確ではないかということと、経済的不安があるのではないか、こういったことが大きく言われているところでございます。
 これに対応しまして、文部科学省におきましては、これまで博士課程の修了者のキャリア形成というものを支援するために、博士課程教育のリーディングプログラムでございますとか、ポストドクターのキャリア形成の支援事業、そして現在、卓越研究員の支援事業、こういったものを展開させていただいているところでございます。
 結果といたしますと、博士号取得者のキャリア形成といたしまして、企業における在籍者を見てみますと、企業における博士号を持つ研究者は、2004年から2016年、約10年間で1万8,000人から2万4,000人ということで、パーセンテージは低いわけでございますけれども、30%程度増加してきているというような傾向が見えてきているところかと思います。しかしながら、依然として国際的に見た場合には、まだ低い水準にあるというような状況かと存じます。
 もう1点、博士課程の進学動向といたしまして、経済的不安ということが指摘されてございます。これにつきましても、基本計画の中では博士課程在籍者の2割程度が生活費相当額を受給できるような状況に持っていこうというような目標を掲げているわけでございますけれども、ページをおめくりいただきまして2ページ目でございますけれども、これに対しまして文部科学省といたしましても、TA・RAの雇用拡大と処遇の改善の促進、そして特別研究員事業等のフェローシップの充実、更には奨学金の業績優秀者の免除制度の拡充等々行ってきているところでございます。しかしながら、現状におきましては、生活費相当を受給している博士学生は10.4%にとどまってございまして、更なる改善が必要だろうと認識しているところでございます。
 2点目でございますけれども、40歳未満の若手教員の研究担当につきまして、その本務教員の状況でございます。これまで文部科学省といたしましても、若手教員が安定かつ充実した環境の中で研究に専念できるような環境作りというのに取り組んでいくために、その促進といたしまして、ついてテニュアトラック事業、これは平成18年からでございます。そして現在、卓越研究員事業を展開させていただくとともに、これは昨年、残念ながら廃止になってしまいましたけれども、国立大学におきましては、若手人材の支援事業というものを展開してきたところでございます。これにつきましては、2013年から2016年まで、若手教員の各本務教員の数というものは4万3,000人から4万3,000人ということで横ばいの状況ということで、増加には至っていないと。逆に低減は食いとめられているというような状況かと存じてございます。これにつきましても、今後、大学の人事マネジメント改革を進めることによって、状況を改善していく必要があるというふうに認識しているところでございます。
 3点目でございます。先ほど白書の中でも御指摘いただきました、女性研究者の活躍促進についてでございます。これにつきましても、状況といたしましては、1つには女性活躍推進法が制定されたということによりまして、各機関におきまして、大学におきまして、事業主行動計画が策定されたということが、1つ大きく寄与していると思います。また、国立大学におきましては、中期目標・中期計画において、それぞれ促進の取組を明確に掲げてお取り組みいただけるという状況になるかと思います。また、手前ども文部科学省といたしましても、女性研究者の研究活動支援事業でございますとか、現在はダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ事業を展開していくことによりまして、数値だけで見ますと、自然科学系全体の採用比率は目標値の30%に近くなって、今、28.2%まで増えてきているというような状況でございます。国際的に見ますとまだまだ低い状況にございますし、上位職に占める、特に教授以上、学長でございますとか副学長、こういったところの女性研究者比率というものはまだ低い状況にございまして、こういった取組を促進していく必要があろうと考えてございます。
 1ページおめくりいただきまして、最後のページでございます。今後の方向性を3点につきまして挙げてございます。1点目、博士課程への進学状況を改善してまいりたいと考えてございまして、これに対しましては、今後とも卓越大学院プログラムというものを着実に実施していくということと、卓越研究員制度というものを、事業の実態を踏まえまして、十分に改善していくことが重要だろうと考えてございます。また、博士人材のマッチングを促進していく観点からも、システムの構築というものを検討していきたいと考えているところでございます。また、博士課程の学生への経済的支援につきましても充実を図るとともに、修士課程から博士課程に進学するタイミングというのをしっかりと把握した上で、有効なインセンティブを付与するような施策を検討してまいりたいと考えてございます。
 また、若手研究者の研究環境につきましては、卓越研究員事業、先ほど申したとおり、運用改善を図ってまいりたいとともに、研究者が自立して研究を行えるような育成方策というのを考えていく。あるいは、先ほど申しました、国立大学における人事給与マネジメントシステム改革をちゃんと進めていくことが必要だろうと考えてございます。
 女性研究者につきましては、ダイバーシティ支援事業を行っているわけでございますけれども、これによって各大学の取組を促進していくのみならず、各大学で行われている取組の優良事業を横展開していくことが重要であろうと考えてございまして、今年度、早速全国ネットワーク型ということで、その取組を横展開していくような事業を展開しているところでございます。
 簡単でございますけれども、人材委員会関係の御報告は以上でございます。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 それでは、吉田戦略官付室長補佐、お願いします。

【吉田戦略官付(国際担当)室長補佐】
  国際戦略付(国際担当)の吉田です。よろしくお願いします。
 資料2-1の8ページになります。国際戦略委員会についての御報告ですが、第9期の国際戦略委員会はまだ開催できていないところなんですが、第8期の国際戦略委員会及び省内で科学技術・学術分野における国際的な展開に関するタスクフォースということで、そのタスクフォースの取りまとめがございましたので、そこを中心に御報告させていきたいと思います。俯瞰マップでいいますと、8の人材の多様化・流動化、あとは俯瞰マップ15の国際関係強化というところになります。
 分析のところを御覧いただければと思うんですが、先ほどの白書の話でも言及がありました、国際共著論文数の伸び悩みということで、中国が急激に増加する中で、英・独・仏などについても、国際共同研究を推進するEUのファンドなどを背景にして、国際共著論文数も大幅に増加していると。その一方で、日本の状況を考えますと、日本の研究の国際化というのが、欧米先進国に遅れをとっていることが要因の1つになるのではないかということです。また、日本人研究者の国際流動性の不足については、内向き指向と指摘されるところもございますけれども、高校生・大学生の段階からの留学生の減少傾向とともに、あとは帰国後のポストの確保、あとは海外挑戦の機会の不足、また研究者が大学内の教育研究に忙殺される中で、なかなか海外に派遣するという人的余裕がないというのも要因として挙げられているという分析がなされております。
 次のページに移っていただいて、取組の方向性です。まず(1)研究の国際化ということで、平成30年度のファンディング機関の戦略目標、研究開発目標に国際戦略の記載をしているところでございますけれども、一番上のところです。JSTの戦略的創造研究推進事業の採択課題に関しては、海外研究者との連携強化といった支援をしている。また、研究開発の成果の社会実装を促進する観点から、SICORPやSATREPSといった事業において、企業を巻き込んだ形の国際共同研究について取り組んでいく。そして、科学研究費助成事業の方ですが、国際共同研究加速基金について見直しを行い、海外を基盤とする活動への支援を強化する。また、外国人研究員の招聘の継続・充実といったこともやっていくというところです。
 2、ネットワーク構築支援というところで、国際的な研究拠点の形成。
 そして(2)がファンディング機関、また大学の教育研究環境の国際化です。大学の国際化というところで、ここにはオンラインによる海外大学との双方向の教育手法や国際共同学習プログラム、あとは海外大学とのジョイントディグリーの導入・拡大等が挙げられております。先ほどの議論の中でも、新井先生、冨山先生からデータ、知財の取扱いとったところで課題、問題意識も挙げられたところで、これにとどまらず、様々な課題、取り組む方向について検討の必要性というのがあると考えております。
 2、ファンディング機関における国際化のところです。ここにいろいろな取組が書かれているところですが、JSTにおいては100%グローバルということで国際化に取り組んでおりますし、AMEDに関しましては、オンライン・イン・イングリッシュということで、申請書類の英語化を進めているところです。JSPSにおきましては、国際統括本部のを設置や、海外とのファンディング機関とのマッチングにおいて、海外でも非常に一般的になっているリードエージェンシーモデルを導入していこうといった取組を進めているところでございます。
 そして、最後の(3)で、人材育成のところです。JSPSにおいては、博士後期課程の比較的早い段階で、なるべく海外に行く機会を作ろうということで、若手研究者海外挑戦プログラムという事業をしております。また、これはライフサイエンス分野になるんですが、国際的な研究ファンドを獲得していこうということで、研究者の育成事業といったものも行っています。
 これに加えて、ここにはちょっと書いていないんですが、1つ国際戦略として大きな方向性として、STI for SDGsというのがあります。これに関しては、4月17日にSTI for SDGsに関する基本方針というのを文部科学省として策定しております。これに基づいて、STI for SDGsの施策パッケージというのを、今省内でタスクフォース等を踏まえ、検討しているところでございますので、そういったものも踏まえて、関係ステークホルダーと連携しながら、第6期の基本計画に向けては、STI for SDGsというのが大きな方向性になると思いますので、文部科学省としても様々なステークホルダーの方々の意見を頂きながら進めてまいりたいと思っております。以上になります。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 それでは、次をお願いします。

【西條産業連携・地域支援課長】
  産業連携・地域支援課長の西條です。同じく資料2-1の続きで12ページを御覧ください。第5期科学技術基本計画の第5章の部分になりますが、イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築、ここの部分について、産業連携・地域支援部会関連としてフォローアップをしている内容を御説明いたします。
 まず、上のところに現状というまとめがございますけれども、産学官連携の現状といたしまして、全体としての規模は着実に増加しているものの、その共同研究などの1件当たりの規模は約200万円と非常に少額であるということ。また、技術シーズの事業化の担い手の1つであります大学発ベンチャーについては、企業割合は依然として低調ではあるけれども、近年回復傾向にはあるというところをちょっとまとめとして書かせていただいております。
 下の枠の方にまいりますが、分析及び取組の状況でございますが、まず1つ目は、オープンイノベーションの推進でございます。こちらは民間企業との共同研究の受入額につきましては、2016年度、これは2013年度から比較しまして約4割増加しております。390億から526億となっておりますが、1件当たりの規模は、先ほど申し上げたように、平均で200万円程度と少額であると。共同研究費の受入額を5割増とした基本計画の目標達成のためには、1件当たりの規模を中心に増加させる必要があると認識しております。このため、経産省とともに「産学連携による共同研究のガイドライン」といったものを策定しまして、大学の産学連携機能強化や企業の意識・行動改革促進などの方策を提示しております。また、あわせて大学シーズの見える化のために、経団連、経産省とともに「産学官共同研究におけるマッチング促進のための大学ファクトブック」といったものを公表しているところでございます。
 次のページ、13ページの方に移りまして、一番上のポツのところになりますけれども、産学連携の阻害要因及び改革方策を示した「オープンイノベーションの本格的駆動に向けて」、こういったものを文部科学省の中にオープンイノベーション競争会議というのを設けまして、これを取りまとめております。これに基づきまして、大型共同研究のマネジメント体制構築を支援するオープンイノベーション機構の整備事業、また非競争領域における共同研究等を推進する「産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム」、これはOPERAと呼んでおりますが、こういったものを通じて、大学の体制整備を支援するとともに、「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」等によりまして、大規模な産学連携拠点の構築を引き続き支援していきたいと考えております。
 2つ目の括弧で、大学発等ベンチャー創出研究成果の事業化ということでございますが、我が国における大学等発ベンチャーの創立数は、先ほど申し上げたように回復傾向にはありまして、研究開発型ベンチャーの新規上場数を2倍とした基本計画の目標に貢献するためには、起業家人材の育成や大学発ベンチャー創出に向けた支援の充実を図る必要があるというふうに認識しております。こういった観点から、「次世代アントレプレナー育成事業」、EDGE-NEXTと呼んでおりますが、これによりまして、大学における起業家人材の育成を支援していくとともに、これはJSTの事業で、「大学発新規産業創出プログラム」、これはSTARTと呼んでおりますが、これによりまして、研究者、ベンチャー、経営者候補に対して、アントレプレナー教育やビジネスモデル探索活動等を支援するという形をとっております。
 また加えて、基礎研究と実用化のギャップを超えるために、「研究成果最適支援プログラム(A-STEP)」事業、これもJSTの事業になりますが、ここに概念実証のためのプログラム、これは1,000万円規模のものですが、こういったものを創出するという形で取り組んでございます。
 14ページのところになりますけれども、ちょっとこの中の1つ、大学等における知的財産の活用支援ということがございますけれども、大学等における特許保有件数と実施件数は増加傾向にはございまして、実施等の件数については約4割の増という形になってございます。また、実施等の件数に比べて保有件数の伸びがちょっと大きいという形にはなってございます。実施等件数の5割増とした基本計画の目標達成をするために、研究成果の活用を見据えた知的財産の取扱い等が重要になってくると認識しておりまして、このために大学と企業の共同研究契約のモデル等を示した「さくらツール」というのを作成しております。こちらをホームページ等で、これは英語版も作っておりまして、こういったものを公開して活用していただくことで、効率的な共同研究契約の実現を支援していくというような状況にございます。
 最後、地方創生というところでございますけれども、第5期基本計画において、起業化の成功モデルを各地で創出するために、「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」を進めておりまして、ここにおいて大学シーズ等の事業化を支援しているところでございます。
 14ページの四角下の方になりますが、取組の方向性ということでございますが、まず1つ目、オープンイノベーションの促進でございます。これは先ほど申し上げたCOIプログラムやOPERA、オープンイノベーション機構の整備を引き続き推進しまして、組織対組織による本格的な共同研究の拡大を目指したいと考えております。また、研究環境の充実、ひいてはオープンイノベーションの推進に向けまして、URAの実務能力に関する質保証制度の構築に向けた制度設計、施行に係る調査研究の実施を現在検討しております。こういったものも通じて支援をしていきたいと考えております。
 また、大学等発ベンチャー創出等の研究成果の事業化のところでございますけれども、起業家人材の育成を支援するEDGE-NEXT、また大学発ベンチャー創出を支援するSTART事業等を引き続き一体的に推進することによりまして、ベンチャーエコシステムの創出を図りたいと考えています。
 また、先ほども申し上げました契約に関する「さくらツール」といったものの活用によりまして、柔軟な契約交渉を促すことを通じまして、知的財産の活用を促進していきたい。加えてTLOの関係、大学・産業界、特にTLOのネットワーク強化などの取組を通じて、大学研究成果を効率的な技術移転活動の推進を検討していきたいと考えてございます。
 最後の15ページに地方創生ということで書いてございますが、「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」によりまして、大学シーズ等の事業化を引き続き推進いたしまして、各地で成功モデルの創出を図っていくと。また、これまで地域の強みを伸ばすということを中心に考えてきましたが、地域が抱える様々な課題を、多様な人材で議論して、科学技術イノベーションにより解決策を、異分野の人材が糾合して見つけ出すことで、持続可能な地域の実現や地方創生を推進する仕組みについて検討したいということで、現在、本部会の地域科学技術イノベーション推進委員会の方で、今年度中を目途に、こういった部分についても議論をしていきたいと考えてございます。以上でございます。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 それでは、次、お願いいたします。

【松岡企画評価課長】
  資料は少し飛んでいただいて、21ページを開いてください。科学技術イノベーションと社会の関係深化を通じた、イノベーション創出機会の拡大、マップの16でございます。
 このマップの取組ですけれども、契約と社会、対話を通じまして、国民に広く科学技術に関心を持っていただくとともに、科学者が社会に対して、どういう課題に対して国民が課題に思っているのか、そういったことを理解していただく。それと、科学技術の社会実装に際しまして、倫理的・法制度的・社会的課題に解決の中で対応していくということが取組の内容になっております。
 現状、指標ですけれども、まず科学技術に関する国民の理解ということでございますが、内閣府が不定期に実施している調査がございまして、それによりますと、科学技術についてニュースや我々に関心のある人が、22年度から比較しまして1.3ポイント減りまして60.7ということになっております。内容を見ますと、特に若い世代、18歳から29歳の方たちの関心ある人の割合は50%ということで、世代間で比較すると最も低いという状況になっております。
 それから、2つ目ですけれども、科学コミュニケーターということで、対話をする専門家ということで、科学未来館で育成をしております。現在まで117名育成してきております。主に研究機関ですとか企業・公的機関、科学・博物館、教育機関で活躍をしていただいています。
 それから、その次のポツですけれども、科学技術の社会実装に対しての倫理的・法制度的・社会的課題の解決のための対応の取組です。人文・社会、自然科学の連携による取組です。それともう一つかぎ括弧がありますが、多様なステークホルダーが双方向で対話・協働するといった取組について、先ほどNISTEPから紹介がありましたけれども、定点調査でそういったアンケートをされています。その結果によれば、大学・公的機関においては不十分という評価がされています。大学研究機関の回答者は不十分と回答していて、大学発ベンチャーや中小企業の方々は不十分が強いという認識を回答しています。これを見ますと、大学・研発の方々よりも、大学発ベンチャーですとか中小企業の方が、現在の状況を厳しく見ている、評価しているということだと思います。
 それから、この分野の取組としましては、リスクコミュニケーションですとか、研究不正の防止という取組も進めております。
 次のページに進んでいただきまして、分析です。現状の取組ですけれども、国民に関心を持っていただく取組としては、科学技術振興機構、日本科学未来館、日本科学博物館、日本学術会議それぞれが、ステークホルダーの対話ですとか、国民との対話ということに取り組んでいただいております。
 2つ目の項目で、政策形成の科学的助言ということでございますが、「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」におきまして、人材の育成、研究コミュニティの形成という取組を推進しております。拠点の修了生が4割公的機関に就職するなど、そういう成果が出ておりますほか、行政官と契約の対話といった場を提供していただいておると。それと政策形成に貢献することを目的とした研究プロジェクトを実施しているということでございます。
 それから、次のページでございますが、上の枠の方にありますが、倫理的・法制度的・社会的課題の対応ということで、研究が進んで科学技術が進展しまして、倫理的な面ですとか法制度の件とか、あるいは社会が変わって研究とそういったELSI等の問題を調整しなければいけないということで、指針の検討や見直しが行われています。
 今後の取組の方向性ですけれども、国民に対する、科学技術に興味を持っていただく、関心を持っていただくことにつきましては、引き続き未来館、科学博物館といった施設で科学のおもしろさを伝えていただくことを進めていくということです。
 丸の3つ目ですけれども、政策形成の科学的助言につきましては、引き続き「政策のための科学」推進事業におきまして、人材の育成やコミュニティの形成を進めていくということでございますが、今後さらにこの取組を強化しまして、契約と行政官が連携した具体的な政策決定・実施に直接関与するような研究を推進していく、政策の企画・立案を支援するための基盤を整備していくということを進めていきたいと考えております。以上でございます。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 以上、御説明いただいたものについて少し議論したいと思います。大分お時間押していますので恐縮ですが、知野委員からお願いします。

【知野委員】
  ありがとうございます。まず人材のことですけれども、先ほど科学技術白書で博士離れのお話がありましたが、一方で社会人はかなり増えているという分析がありました。この社会人というのは、どういう人たちが一体何の目的で大学院、博士課程に行っているのでしょうか。かつそこで学んだ後、それをどのように生かしているのかという、そのあたりの追跡調査などもされているのかどうかという、その点を1つ教えてください。
 もう1点は、今御説明いただいた社会との関係のところなんですが、若い世代、18歳から29歳の関心が低いという御指摘がありました。そして、科学未来館とかその他で対応をとっていくという御説明でしたけれども、若い世代はなぜ科学技術に対して関心が低いというふうに答えているんでしょうか。その辺の分析はどうなっているのでしょうか。以上2点、お願いします。

【濵口主査】
  どうぞ、手短にお願いします。

【石丸人材政策推進室長】
  手短にお答え申し上げます。社会人の学生の増加でございます。2点あるかと思います。1つは、社会の動向との関係でございまして、企業活動のグローバル化に伴いまして、海外で企業活動を行う日系企業におきましても、人材においてPh.Dを持っていないと海外で非常に不都合があるといった事情から、企業の方々が入ってこられる。そして、その方々は社会人学生の約6割弱でございますけれども、そういう方々は社会人の元のいた企業、所属機関に戻ってまいりますので、そういったところで研究開発業務を行っていらっしゃるんだろうと想像してございます。
 もう1点は、保健分野の社会人学生が増えてございまして、これはメディカルドクターの方が多いわけでございます。この方が大体3割ぐらいいらっしゃるというような状況になってございます。これは臨床医制度が導入された後に、社会人でもう1回ドクターを取るということで、社会人になられてから、いわゆるドクターになられてからもう一度戻ってこられると、こういった方が増えているという状況でございます。

【濵口主査】
  松岡さん、お願いします。

【松岡企画評価課長】
  若い世代が特に関心を持っている人が少ないということにつきましては、内閣府の調査でそこまでの分析というのはなかなか分からないんですけれども、過去の調査と照らし合わせてみると、科学技術に関する情報はどこから得ているかという調査項目を見ますと、テレビが圧倒的に多いです。若い人たちはテレビを見ないということもあるので、そういうことも関係するのかなと思っていますが、そこはデータを見て類推ですので、なぜかというところは今のところ内閣府の調査では分析できていないです。そこは今後、分析していきたいと思っています。

【濵口主査】
  それでは、土井委員。

【土井委員】
  ありがとうございます。いろいろ御説明いただいて、気になるのは、KPIなどいろいろ設けて分析をしていただいているのですが、その数値を追い求めることが、大学の経営の中で悪い作用をしているのではないかということです。例えば、先ほどからお話が出ている女性教員の話ですが、女性教員はもともと母数が少ないので、それぞれの大学がKPIを満たすために取り合っているというのが実情だと思います。多分結構優秀な先生は、今、1年半ごとぐらいに大学を変わって、最終的には東大とか、いわゆるトップのところに行くという形で行くので、地方大学からどんどん人がいなくなっているという状況もあります。
 また、先ほど御指摘のあったデータに関しても、今、NIIの山地先生のところでオープンサイエンスに向けた学術情報基盤を作っていらっしゃいますが、それは本来はデータを公開して、より研究環境をアップする、あるいはビジネスに展開できるようにするというための基盤を作るのに向かっているはずなんですが、それは不正に向けて10年間データを取っておくための基盤だということの方が、各大学にとってメリットがあると。要はKPI、リスクも侵さずにガバナンスを強めて、なおかつ10年間ずっと交付金が減ってきたという中で、局所最適化というと言い過ぎなんですが、それぞれの大学ができる限りのことをやろうという、小さく小さく縮こまるという経営に向かっているんだなというのを非常に今回の分析でよく分かりましたというのが、私の感想です。
 これだとやはり、先ほど西尾先生が言われたように、まずいと思います。やはり個別の大学が成果を挙げていくというのはもちろん大事なので、そのための法人化だったはずなんですが、そうなっていないということは由々しき事態でありますし、じゃあ女性教員が増えているかということに関して、各大学がやるのではなく、大学全体で本当に増えているかと見たときにどうなのかという、やっぱりそういう視点も必要なのかなと思います。以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。御意見として賜りたいと思います。ポジティブなデータも、やっぱりよく出さないといけないなと思うんですけれども、法人化に関しては、例えば一番はっきりポジティブなのは、大学病院の収益が非常に上がって、看護師の採用等も非常に増えたというのはありますね。そういうデータも少し盛り込むようにした方がいいかなと、ちょっと感じました。
 それでは、川端委員お願いします。

【川端委員】
  意見です。お話をずっとお聞きしていて、NISTEPというのは基本的には研究者の今の意識がどうかという、暗い気分になっているかどうかという話。次が、白書というのはデータで示すというので、だからドクターの人間が減り続けているぞとか、それに対する課題が一体何なのかという話が整理されて出てきたという。そういう中で、基礎の環境が悪いとか、ドクターが減っているとかそれぞれ言われて、最後に今の5期計画の把握と分析というところで、最終的に今、こんな政策を打っているぞ、これはこんなふうな成果があるはずだというような話をされたと。
 もう1回見てみると、全部西尾先生のお話に戻るんですけれども、どうも暗い。暗い話の根幹が、5年前から同じことを言っているという気がするんですよ。もっと言えば10年前も同じ課題を抱えていた。これ、10年ずっと施策を打ち続けて、これだけの基本計画まで立てて前に進んでいる。で、話は元に戻ったり、じゃあ、どう解決するの、これという。だから、NISTEPの定点調査に戻った結果がどこかにあるのかという。施策を打ったために、こんなふうにフィードバックされて出たんだという結果があるのかどうかというところがもしあれば、表にもっと強く出すべきかなという。ごめんなさい、ちょっと思いつくものがないから困って言っている部分が。
 もう1点は、こういうループを本質的に考えたときに、横手では何が起こっているかといったら、大学の合体の話、ホールディングス化しろという話が出ていたり、年俸制を全部導入して、お金で研究者を引っぱたいてもっと活性化しろと言ってみたり、それから、大型化の機能強化というので、例えば1,000億円を、毎年の評価によって1,000億円を増減させて、要するに短期の資金に変えてしまえと言ってみたり、こんな話はこのループの中に入っていないところで大きく動いている。
 こんなことで、抜本的にこのアカデミアというか大学全体が元気になるのかというのが、私は非常にきつくて。極端に言えば、昔のオリンピック型で、短期の成果を早く刈り取る。このスタイルだったら、このスタイルは動くのかもしれないですけれども、やっぱり86大学あっていろんなサイズがあって、文系もあって、いろんなものがあって動いている。そういう中を、こういう施策1本が大きく走りながら動いている状態がいい状態とは余り思えなくて、一方ではうまくいっている部分に関しては、国としての施策がうまく働いて、ここには評価が出てきたという話があれば是非表に出して、大学も頑張ったんだということを主張していただければと思います。以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。暗い話が続いてしまったようですが。客観的に見ていると、データはまだ十分出ていないと思うんですけれども、1つはさっき申し上げた、法人化後、病院の活力が非常に上がっているというケースがありますし、もう一つは新しいサインとしては、資産価値数千億の大学発ベンチャーが、結構今、出てきているんですね。これは10年前、5年前には余りなかったと思うんですけれども、今数社あります。ここもちょっと分析した方がいいかなと。そこも要するに、病院がなぜ元気になったか、それで社会人入学が増えているというような、キャッシュフローがどんどん入っているわけですね。大学のほかのところも、どうやったらキャッシュフローを増やすか。特にベンチャーに1つヒントがあるだろうと思います。ちゃんと成功するところが出てきているわけですから、お金減った、減ったということだけやっていてもしようがないなというのが率直な実感です。ちょっとそういう議論をもう少しした方がいいかなと思いますけれども。済みません、宿題ということで。
 後半に入りたいと思いますので、お願いします。後半は基礎基盤研究部会、学術分科会、資金改革の強化、それから資料2-2、2-3の要約版についてお願いします。

【岡村基礎研究振興課課長補佐】
  基礎基盤研究部会の部分について御説明させていただきます。基礎研究振興課の岡村と申します。
 資料2-1の29ページ、先ほどと同じファイルですけれども、ここを御覧いただければと思います。俯瞰マップは9に該当しております。
 目的としましては、イノベーションの源である多様で卓越した知の創出というところで、俯瞰マップ9でございますけれども、まず現状について御説明させていただきます。2つの事業、世界トップレベル研究拠点プログラム、WPIと呼んでいますが、この事業と、あとこちらはJSTの方で実施しております、戦略的創造研究推進事業、この2つの事業の着実な実施などを通しまして、いろいろな戦略的な基礎研究というものを進めてきております。
 まずWPIの方ですけれども、こちらは平成19年度から開始しておりまして、国際頭脳循環の促進を通じて世界最高水準の研究成果を出していくと、そういう拠点形成型の事業としてこれまで取り組んでまいりました。結果、これまで採択している各拠点では、高度に国際化した環境が整備されるとともに多くの優れた研究成果、論文成果が出ております。また、このWPI自体が、大学等の研究体制や組織の改革を1つのミッションとして当初から掲げておったというところもございまして、例えばクロスアポイントメントなどの取組によって様々な優れた研究人材をいかに組織の中で生かしていくか、そういった取組、あるいは外国人研究者、その御家族含めて、いかに研究環境として整ったものとしていくか、そういった環境整備の面でも先導的な取組を進めてまいりました。
 そうした結果、例えば平成28年度には、事業のフォローアップのために毎年開催しているプログラム委員会というものの中で、最初に採択した5拠点については、全てが世界トップレベルであるとの評価を得ております。昨年度も2拠点を新たに採択しております。これは累次で採択してきておりますけれども、現在ですと7拠点に対して補助金を支援中でして、今年度もちょうど2拠点の採択プロセス中でございます。
 続きまして、もう一つのJSTの戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)の方です。こちらも新興・融合領域の戦略的な開拓に向けたものですが、WPIの拠点形成支援とは違って、こちらは研究費での支援で、公募で採択されたトップレベルの研究者が組織や分野の枠を越えて共同研究していく時限的な研究体制を築いて取り組んでいくものです。これまでも様々な革新的な技術水準の創出を通じて、我が国の基礎研究を先導してきたというふうに考えております。
 こちらも外部評価を行っておりますが、5年に一度JSTの国際評価の委員会の方で行っております評価ですと、平成28年には、日本の科学技術イノベーション創出に向けて大きく貢献、「Excellent」という評価を得ているところです。
 現状としましては、チーム型で取り組むCRESTというものが4領域、個人で取り組むさきがけというものが4領域、卓越したリーダーがプロジェクトを率いていくERATOというものが2領域、新たに今年度も設定しておりまして、引き続きこうした研究成果の創出に向けて、継続的に研究支援を行っております。あわせまして、基礎からPOCまで含めて一体的な支援を行うため、これは29年度から、未来社会創造事業というJSTの中の別事業がございますけれども、そちらとも検討会を合同で開催するなどの連携をしております。
 続きまして、関連する指標の状況ですけれども、もともとこの第5期の基本計画における8つの目標値のうちの1つに、論文数を増やすということですとか、総論文数に占めるトップ10%論文の割合が10%となることを目指すというものがありますので、そういった指標も引き合いに出しながら御説明させていただきます。
 まずWPIの方ですと、トップ1%の方で申し上げますと、最初採択した5拠点の平均値は4.6%という数字になっておりまして、これは世界の最高水準、例えばロックフェラー大学が6.2%、MITが5.3%と書かれているような、世界最高水準の研究機関・大学とも比肩する優れた実績となっております。国際的な環境という面で申し上げますと、もともとWPIは採択要件として、外国人の研究者が30%以上というものを掲げておりますが、実態としてはこれが45%に達するなどの実績を挙げております。加えて、国際共著論文という観点で申し上げますと46.5%という割合でして、日本全体が30%弱であることを考えますと、非常に高い水準となっております。
 JSTの戦略的創造研究推進事業の方は、具体的な成果としましては、この事業によって、iPS細胞もそうですし、IGZOもそうですし、非常に社会的にも経済的にもインパクトの高い成果が生まれております。また、論文実績ということで申し上げますと、トップ10%論文というものが、我が国全体の8.5%に比して21.5%という高い割合を示しているところです。
 こうした論文成果を踏まえての分析ですけれども、まずWPIの方は、特筆すべきは、各拠点、あるいはホスト機関というのが、拠点計画の遂行に向けて御努力を重ねられる中で、先ほども申し上げましたプログラム委員会、プログラム・ディレクターですとかプログラム・オフィサーですとか、こうした田形が各拠点側ときわめて密な連携、きめ細かな運営とマネジメントを行っていると。そうしたことの顕著な貢献があればこそのものと考えております。
 他方でやはり課題もございまして、WPI事業、12年目に差しかかっておりますけれども、10年前とは状況が違いますし、今後10年後のことを考えますと、補助金の支援期間が終了した拠点がいかに自立化して拠点機能というのものを内製化していくか、そういうことに向けた仕掛けであったり取組であったりというものを進めていかなければいけない時局を迎えていると考えております。
 戦略的創造研究推進事業の方ですけれども、こちらもやはり研究総括というものが領域ごとにおりますが、その方々が柔軟で機動的な研究費の配分や、研究計画の見直しを随時行うですとか、あるいは利用機関の連携促進ですとか、そういった新興領域・融合領域の開拓について非常に有効な対策を行っていらっしゃるということが、こういった論文成果にもつながっていると思っております。
 他方で、やはりこれは我が国全体で指摘されているような、例えばサイエンスマップにおける「国際的に注目を集めている研究領域」への参画数が、国全体として伸び悩んでいるですとか、若手の問題、研究生産性の問題、いろいろと指摘がございますので、この事業を通じて、若手の支援ですとか、融合領域をいかに開拓していくかですとか、そういったことにしっかりと取り組んでいく必要があると考えております。
 以上が部会における分析結果でして、これを踏まえまして、今後の方向性としましては、これは両事業共通してですけれども、いかに新興・融合領域を機動的に見きわめて、そこに適切に資源配分をしていくか、そういった仕組みをきちんと引き続き進めていく必要があると思いますし、WPIの方では、既に補助金支援期間が終了した拠点については、その自立化に向けてきちんと取り組んでいくと。これまでに生み出してきた成果というのを、学内外、そして国内外にきちんと展開していくということに取り組んでいく必要があると考えております。
 JSTの戦略的創造研究推進事業の方もそうですけれども、今後も引き続きCREST、さきがけ、ERATOを続けていくのと併せまして、国全体で指摘されているような、若手への対応、そして戦略目標の領域の大くくり化ですとか、そうした動向も踏まえて、プログラムを進めていく必要があると思っております。以上でございます。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 それでは、次をお願いします。

【田村研究開発基盤課課長補佐】
  続きまして、研究開発基盤課の田村と申します。資料の33と34ページ目を御覧ください。こちらに基づいて御説明させていただきます。
 まず33ページ目でございますけれども、こちらについては俯瞰マップ10の研究基盤の強化ということで、主に研究インフラのハード面の共用と、あと計測分析機器などの研究機器の開発について、主に基礎基盤研究部会の下の研究基盤整備高度化委員会の方で御議論いただいている内容についてまとめさせていただいております。
 まず現状についてですけれども、研究機器の大きさごとに整理しておりまして、まず1つ目は、SPring-8だとかSACLA、J-PARCなど大型の特定先端大型施設というふうに我々呼んでおりますけれども、こちらについては下の指標のところに書いてございますとおり、産業界、学術界ともに利用者が拡大していると言えるのではないかというような評価を頂いているところでございます。
 次に、大型のNMRだとか電子顕微鏡だとか、個別の機関が整備したものを共用・ネットワーク化するというプラットフォーム事業というのを行っておりますけれども、こちらについても産学官の利用者が増加しているということが言えるのではないかという評価を頂いているところでございます。
 他方、大学の各研究室が競争的資金で購入した機器を、共用ルームなどを整備して各大学で共用を進めていこうといった施策も講じているところでございますけれども、こちらについても、継続的に共用ルームというかそういうものが整備されて、共用という文化が進展しているのではないかというような御議論を頂いているところでございます。
 あと、先端的な計測分析機器を初めとする研究基盤機器の開発についても、JSTの先端計測プログラムというのがございますけれども、こちらについて製品化も進んでおりますし、あと戦略創造など、トップサイエンティストが使うようなプロジェクトにも使われているということで、成果が上がっているのではないかというような評価を頂いているところでございます。
 指標については、下の囲みのところに書いてございまして、それぞれSPring-8だとかSACLAだとかJ-PARCだとかの利用者数が上がっているところが確認できるところでして、あとJSTの先端計測分析プログラムの方でも、製品化に幾らつながったかというのもフォローしてもらっていただいておりまして、こちらについても72件つながったということで、研究現場に最先端の機器を届けるだけではなくて、先端計測の計測業界の産業強化にもつながっているのではないかということを御議論いただいているところでございます。
 あと分析のところに移りますけれども、34ページ目の上の方になります。先端的な大型施設につきましては、継続的に維持・運転できるように経費の確保が必要なのではないかということを御議論いただいております。あと、NMRだとか、各機関のネットワーク化を図っている共用プラットフォーム施策の方ですけれども、こちらについては各プラットフォーム、人材育成だとか、新しい計測技術を開発するだとか、そういった利用者と連携しながら、利用者とメーカーを連携させながら、いろいろな高度化の取組というのを行っているような、特徴あるネットワークのプラットフォームもできてきておりますので、そういったものも進めていくことが必要なのではないか。また他方、各機関それぞれ今までNMRだとか整備してきたところなんですけれども、機器自体の高額化だとか、あと利用する技術のテクニシャンの育成がなかなか難しいということで、そちらについても今後、取扱いについて議論する必要があるのではないかというような御議論をいただいているところでございます。
 あと、大学の学内での研究機器の共用につきましては、国の事業で、モデル事業として今、補助という形で支援しているところですけれども、そちらが終わった後にも、継続的に各大学で運営されるような取組になるようにフォローアップしていく必要があるだろうと。またそれ以外にも、地方大学を含めようとして、地域の大学に同じような取組を水平展開していくというようなことも必要なのではないかということを御指摘いただいているところでございます。
 あと、計測機器につきましては、共通基盤技術として、未来社会実現の鍵となるIoT技術だとかナノテク、光・量子技術、いろいろな分野に活用できるような研究基盤機器というのを開発していく必要があるのではないかというようなことを御指摘いただいているところでございます。
 あと、今後の取組の方向性につきましては、下の四角の方に書いておりまして、共用プラットフォームにつきましては、今年度中間評価を迎える年になってございまして、それぞれの特性に応じて、今後どういった事業運営をしていくかということを検討していく必要があるのではないかというふうに頂いております。
 あと、放射光につきましては、次世代放射光施設の検討を今、進めているところでございますけれども、こちらについても引き続き取り組んでいく必要があるだろうと。あと、スパコン「京」の次世代につきましても、2021年、22年度運用開始を目標に、引き続き取組を進めていくべきであるというふうに頂いております。
 あと、共用システムにつきましては、大学の学内のこれまでの取組ということで、共用を進めてきたところでございますけれども、きめ細かな数千万、数百万円の機器につきましても、地方の大学だと、近隣の企業と連携しながら、お互いに相互利用するような取組を支援する必要があるのではないかというようなことを御議論いただいているところでございます。
 あと、計測機器につきましては、未来社会創造事業というJSTの事業で進めているところでございますけれども、より強化すべき技術として、ハイリスク・ハイインパクトなものについて、特に重点的に取り組む必要があるのではないかというようなことは御議論いただいているところでございまして、引き続き年末に向けて、これらについて具体化を進めていただくということになってございます。以上でございます。

【濵口主査】
  それでは、次、お願いします。

【山口学術企画室長】
  学術分科会の担当をしております、学術企画室長の山口と申します。資料ですと2-1の続き、35ページを御覧ください。俯瞰マップですと9、10が主に関係するところです。
 初めにお詫びと訂正、及びそれに伴いある意味で逆説的に、少しだけ明るい御報告をさせていただきます。35ページ下段1行目、主な指標の状況を御覧ください。いわゆるトップ10%論文、そしてその総論文に占める割合、Q値と言われておりますが、中ほどのところで8.5%とありますが、過去の古い公表資料をベースに記載してしまったようでして、口頭で恐縮ですが、論文数6,546は6,385、パーセントにすると8.5%ではなく8.3%となります。すなわち、大きく見ればたしかに横ばいかもしれませんが、小なりといえども微増しているというところでございます。
 なお、関連して申し添えますと、実は日本の総論文のピークは、2000年前後にございましたが、その当時のQ値は7.5前後でした。つまり、その後、予算の伸びなどインプット面で相当に厳しい中、あるいは論文も若干増えたり減ったりという時期もございますが、それらにかかわらず、Q値は着実に世界平均に近付いてきている、そういう側面もあるということでございます。
 ただ、いずれにしましても、前回の本会議でも関連の御指摘があったと承知しておりますが、特に本指標については引用という事柄の性格も相まって、統計上の制約としてタイムラグがございます。2015年までが直近の数値ですが、今期計画のタイムスパンは2016年以降ということですので、そもそもの齟齬があることについては、留意が必要かと存じます。
 前口上が長くなりましたが、36ページの方を御覧ください。3つに分けておりますが、まず科研費についてです。科研費は、予算の伸びが厳しい中で大変ニーズが高いということで、応募件数が大変増加しておりまして、結果的に平均的な新規採択率は低下しております。ですが、そうした中、総合的・抜本的な改革を進めているところでして、例えば研究種目の性格に応じてということで、下の方にございますが、多様性を支える要ということで、いわゆる基盤Cとか若手のような研究種目については、重点的な配分等を通じまして、新規採択率概ね30%を確保するなどの努力を重ねてきているところです。
 次に中ほど、大学共同利用機関法人や共同利用・共同研究拠点、あわせていわゆる共共体制でございますが、こちらについては、社会経済の大きな変化などに、より柔軟に対応し、機能強化を図っていくという課題はございますが、全般的な研究関係指標については、基本的に増加傾向にあるところです。
 下段にまいりまして、世界的潮流の中で、我が国でも政府を挙げて取り組んでいるオープンサイエンスの状況についてです。かねて特に機関リポジトリの整備・運用を中心に進めてまいりましたが、現状では、特に研究データ面について、搭載できるシステムの整備や、管理・利活用の方針策定が不十分であること、さらにそういった取組にコミットしていく研究者の意識の問題といったことが主に指摘されております。
 続いて37ページを御覧ください。以上の課題状況を踏まえた取組の方向性でございます。
まず、学術研究では、要となる科研費について、研究者のキャリアパスを俯瞰的に見渡して、支援を切れ目なく展開していくことが大事だということで、若手研究はもとより、基盤研究など中核的な研究種目の充実を引き続きしっかり図っていくことが肝要であると考えております。また、いわゆる共共体制については、大学改革等各般の状況を踏まえ、例えば大学共同利用機関法人の枠組み自体に係る幅広い検討ですとか、共同利用・共同研究拠点のメリハリのきいた中間評価、国際的な共共拠点制度の実施などを通じて、総合的に機能強化を図ってまいりたいと考えております。
 オープンサイエンスについては、先ほどの3点の課題に対応して申し上げます。
1点目のシステム整備については、国立情報学研究所において、データ面での管理・公開そして検索に係る共同利用ができるようなシステム開発を引き続きしっかりお進めいただくとともに、JSTにおいて、J-STAGEの更なる機能強化を図り、論文とデータをリーダブルにする、機械可読化を進めることによって、研究成果の再利用を促進していくこと、2点目のデータ管理面等については、内閣府の方で先日策定されたガイドラインを踏まえ、着実にデータポリシーの策定などを進めていくことが考えられます。
 最後の意識の問題については、NISTEPにおいて、少し踏み込んだ調査・分析を行っていただき、方策の検討につなげていくということが考えられるのではないかと存じます。
 なお、個票の方には明示的な形で記載されておりませんが、概要の方に特記したとおり、全体を通じて、学術情報の流通基盤であるSINETについては安定的に運用されており、引き続きしっかり整備を図っていくことが肝要ではないかと考えているところでございます。
以上でございます。

【濵口主査】
  それでは、松岡さん、お願いします。

【松岡企画評価課長】
  続きまして、同じ資料の39ページを開いていただけますか。マップの11の資金改革の強化という項目です。
 こちらですけれども、現状は、先ほどから何度か出ていますけれども、基盤的経費、競争的資金は近年横ばい、または微増ということであります。他方、多様な財源ということで、民間からの研究費の受け入れにつきましては、大学も国立研発も増加傾向にございます。ただ諸外国、特にアメリカと比べれば、まだまだ少ないという状況でございます。
 あとデータがついていますが、分析ですが、基盤的経費につきましては、ポツのところにありますけれども、国立大学運営費交付金の中で、3つの重点支援の枠組みということで、各大学の機能強化を推進しているところであります。
 それから、少し飛ばしていただいて、科研費改革の実施ということで、科研費の改革を27年度から方針を策定して実施しているところであります。その下の丸、企業との共同研究ですけれども、企業の自前主義の脱却から、そういう動きと相まって、組織対組織の産学連携の実現を図っていかなければいけないということですが、個は先ほどマップの12にあったとおりであります。
 次のページですけれども、取組の方向性ですが、財源の多様化が必要ですが、こちらにつきましては、各大学等で産業界から資金、寄附の受け入れといったことを引き続き努力していただくとともに、共同研究の受入額の増額を図るために、大規模な産学連携拠点の整備ですとか、大型の研究資金を呼び込む体制について支援を行い、組織対組織の本格的な大型研究の拡大を目指していく必要があるということでございます。
 一番最後の丸ですけれども、1つ指標のことを書かせていただいております。先ほどから研究力を示す指標、世界で認められる研究成果として、論文数ですとか被引用回数トップ10%論文が1つの指標になると思いますけれども、研究の成果が必ずしも論文になることを期待しているかというと、そうではない研究もあるかと思います。社会的課題の解決ですとか、国際社会の貢献ですとか、経済成長ですとか、新たなサービス・製品を作っていくとか、知のフロンティアを拡大するとか、そういったことを目指して研究しているものもあると思います。それらをどう評価していくのかについては、今後検討が必要ではないかということで書かせていただきました。
 続きまして、お手数ですが資料2、3を開いていただきたいと思います。
 資料2は、これまで各担当課から報告いただきましたけれども、これまでの報告は、各分科会・委員会ごとの整理ということになっていまして、マップごと単位で見るとどうなるのかというのがよく分からない。分科会にまたがっているマップもあります。幾つかのマップを1つのシートで報告してあります。それをマップごとに整理するとどうなるのかということで、2-2はそういった形で、主な部分を抜き出した要約版ということであります。
 それから、資料2-3ですけれども、こちらは前回までの議論で、マップとマップの関係性がよく分からないという御指摘、御意見がございました。そういったことも踏まえまして、マップごとの要点を、左の下の方が基盤に近い部分ですね。それから、人材があって、右の上の方が社会との関係に近い部分といったように整理してみました。矢印の目指す方向に、文部科学省が目指している科学技術政策の目指すものが見えればいいんですが、よく見えないという状況があります。
 そういったことを踏まえまして、右下の方に、今後検討が必要な視点を整理しました。これまでの議論ですとか分析を通じて、我々事務局で考えたポイントということでございます。4つほど挙げております。これらについて、今回は資料2-2と資料2-3は要点ということで、各報告を整理したということで要点としてお示しさせていただきましたけれども、今日の御議論を踏まえて、次回修正したものを出しますので、それに基づいて次回、検討いただければと思っております。ありがとうございます。

【濵口主査】
  ありがとうございます。時間が押しておりますが、二、三御意見を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。西尾先生。

【西尾委員】
  全体を通じて、若手ということが強調されるということは重要だと思うんですけれども、この問題は、今までのさまざまな施策の結果として出てきていると思っています。例えば、大学院重点化の時に、その当時、工学系では1つの研究室に助手が2名いたのを、その助手1名のポストを大学院の専任的な研究室とか講座を作るために、教授、あるいは助教授のポストに振りかえた経緯があります。また、定年延長の実現、それから運営費交付金等の任期無しの教員を雇用するための基盤的な経費の減少、そういうさまざまな施策が若手の減少という今の結果につながっているのだと思います。
 今、若手ということを大きくクローズアップすることは大切なのですけれども、今度は逆にそれが行き過ぎてしまいますと、将来的にはその方がどんどんシニアの研究者になっていくわけで、年齢分布として、40歳未満の研究者の割合として何%ぐらいが本当に適切なのかという議論はきっちりしておく必要があると思います。卓越した研究の実質的なリーダーシップを発揮しておられる研究者は、中年、シニアの方々が多いのが現実です。その上で、若手、中年、シニアの研究者の年齢構成をどうすべきかをきっちりと考えた上で若手研究者問題への対策を打つことが重要に思います。
 それと博士後期課程の大学院生の減少問題は、全世界を見ても、いわゆる先進国で博士後期課程の大学院生の人数が減っているのは日本だけと言っていいと思います。世界の中で、日本はもう高学歴社会ではないと言ってよい状態です。このことを認識して、どのように解決していくかは大変大きな問題です。私は、企業の方々とも、今までよりもう一段踏み込んだ議論をしないとなかなか解決しない、と考えます今後、企業における給与体系も、修士課程を修了した大学院生に対する給与に、その後の3年間積を上乗せしたような給与体系では、博士後期課程にはなかなか進学しないと思います。また、私はトップの方々と話すと、博士後期課程を修了した人材の必要性について非常に理解してくださいます。そうであるならば、そのような意向を前面に出していただき、博士後期課程を修了しても就職口があるということを修士課程の大学院生に明示していただくと効果があると思います。
 最後、財務的なことで言いますと、やはり学術研究基盤の再構築ですね。学術研究を支える運営費交付金等の基盤経費、あるいは競争的資金である科学研究費に関してはデュアルサポートの概念が壊れてしまっているという認識を本当に強く持たないと、国力の源である学術研究の苗床が、今後さらに枯れていくしまうことは必至です。以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。重要な御意見を頂きました。
 新井委員、お願いします。

【新井委員】
  2点です。WPIに関しては、比較的よい結果が出ているということで、これは明るい話題だと思います。加えて、WPIと似たような施策として、内閣府がやっているImPACTとSIPというのがあります。これについて、比較検討していただきたい。同じ目線で比較検討していただきたい。それで、エビデンスを出して、どちらの施策の方がよかったのかというのを科学的に分析していただきたい。これが1点目です。
 2点目。オープンサイエンスに関しては、これだけ旗を振ってもなかなか動かない。それは土井先生がおっしゃったように、今、オープンサイエンスのリポジトリを結局何に使われているかといったら、1、機関リポジトリは博士論文を必ずオープンにしなければいけないということが法律で決まったので、その博士論文を入れる入れ箱になっている。2、それと加えて、10年間データを保存しなければいけないというふうに言われたので、それの入れ箱になっている。ほとんどコールドデータになっていて、別にオープンサイエンスにしたからって、みんなが使っていない状態です。それは基本的には、結局、日本全体として、エルゼビアにどう対抗するかということの国策が決まっていないからだと私は思います。ドイツ、スウェーデン等は、もうエルゼビアとの契約を切って、そしてオープンサイエンスするんだと。エルゼビア関係の査読者は全部引き上げるというようなことをしています。
 ヨーロッパがそういうふうに動いているのに、日本は各法人に任せるということをやっているので、結局ある大学はエルゼビアを切らざるを得なくなったとか、そういうようなことで足並みがそろわないので、オープンサイエンスに向かわない。それでコールドデータになっているということになっているので、二重の意味で無駄だと思いますので、ここに関して、トップダウンの意思決定をお願いしたいと思います。

【濵口主査】
  ありがとうございます。これはかなり決断が。議論をちょっとやらなきゃいかんですね。
 大分時間が押しております、申し訳ないですが、次回もう1回やれますよね。

【松岡企画評価課長】
  はい。

【濵口主査】
  それで、次回にもう少し本日の議論を深めていただくということで、今日はこのあたりで要約版の御報告とさせていただきたいんですが、よろしいでしょうか。済みません、言いたいことはいっぱいあると思いますが。
 それで、今日はもう1件、researchmapについて御説明が必要なので、そちらに移りたいと思います。議題の3でありますが、researchmapについて、新井委員から説明をお願いいたしたいと思います。

【新井委員】
  はい。では、短くお話をします。この1年半ぐらい前に議論になりまして、そして発表させていただいて、概算要求がなりましたので、中間報告をさせていただきます。
 AI for IR、研究IRということですが、人-機械協働によるresearchmapの高度化ということでお話をさせていただきます。
 資料3の1ページ目をめくっていただきまして、researchmapはもう既に御存じだと思いますが、約26万人の研究者が登録している国内最大級の研究者データベースです。アメリカにもない、ヨーロッパにもまだないというようなタイプのものでございます。運営主体は科学技術振興機構なんですけれども、開発はそちらから委託を受けて、情報・システム研究機構の方でさせていただいています。
 今のresearchmapは、単に研究者のホームページのようなものを、ある程度機械可読なようには作ったんですけれども、その頃と機械可読とかAIという概念が大きく、2010年のリリース時から変わってきましたので、このたびこのresearchmapにAI、主には名寄せということですけれども、導入することによって、研究者の研究と、あるいは外部資金と、経歴がどういうふうに上がっていくかということと、あるいは、研究者の活動にしても、研究論文だけではなく、社会貢献活動であるとか委員歴であるとか、受賞歴であるとか、あとは特許等、網羅的に1つのところに集めることによって、より高度な分析をNISTEP等ができるようになって、大学の抱えているよいところと、そして課題と、それが分析できるようにしようというような規格でございます。
 めくっていただいて2ページ目が今までのresearchmapで、今、こうすればできるというところまでできたところをお示しします。3ページ目になります。2019年上半期に、JST及びROISが連携して提供する予定のresearchmap V.2、バージョン2におけるAIと人が協働することによって、業績をどうやって同定するかということのアルゴリズムについてお話をします。AIだけで分析同定、名寄せをすると、大体80%ぐらいしか精度が出ない。それはエルゼビアがやっても、トムソン・ロイターがやってもなかなかそうなわけですけれども、それをどうやってresearchmapでは98%くらいの精度で出すか。それのアルゴリズムを次のように考えました。
 まずresearchmapにログインをしていただくときに、お名前を入れていただくだけではなく、その先生がどういう名前で論文を発表しているか。英語名及び通称も含めて名前を全部書いていただきます。例えば、佐藤先生という方だとSATOと書かれる方とSATOHと書かれる方がいらっしゃいます。そういうような名前の表記揺れを全部ここの中で吸収するために、まずここをしっかり書いていただきます。研究者番号を入れていただいて、所属機関、肩書、性別、研究分野等を入れていただきます。ここで性別を入れていただくことで、女性研究者がどれぐらい活躍しているか等も見られるようになります。そうしますと、ここの段階でresearchmapが過去のデータから、この方があなたの共著論文者ではありませんかというサジェストを出してきます。この段階で、共著者を正しく3人ぐらい選択をしていただきます。
 そうしますと、この段階で実験が済んでいますけれども、普通の名寄せ以上の精度で、70%以上の精度で研究業績の候補をサジェストしてきます。この中から、自分の業績を正しく選択し、他人の業績を正しく排除していただきます。これが人が機械に協働するというか、ある意味グーグルのGメールとかで、要らないメールをごみ箱に捨てるとか、迷惑メールにするとかというような作業を人がちょっとするということで、迷惑メール排除というのが非常に精度が高まったのと同じことを、ここで研究者の方にしていただきます。
 それをしていただくと、あとは97%以上の精度で正しい業績を提示するということができるようになります。比較的珍しい名字、あるいは比較的業績の多い方から、AIが完全自動で業績管理をしてくれるようになります。研究者は、以下だけをメンテナンスすればいいと。基本情報、名前が変わったときとかですね。共著者リスト。共著者が新しく加わったときとかですね。あとは同姓同名による業績の、AIによって誤ったサジェストを排除するということを1年に1回ぐらいメンテナンスしてくれると、研究者自身による論文業績の入力は、基本的に不要になるということを目指しています。
 今、実験段階でかなりいい結果が出ていますので、これは来年の5月ぐらいにリリースをさせていただいて、その最初の段階では、まだ名寄せ制度が97%なわけではなく、その後、皆さんがきちんと名前を入れて、自分の英語の名前はこうです、研究者番号はこうですということを入れていただいて、共同研究者を選んで、最初の名寄せのところで丸バツをつけてくだされば、その後は大体自動運転になるというようなことでございます。一番難しいのは、一生涯に1本しか論文を書かない方です。それはどうしても見つけられませんので、それは御自身で入れていただくということになります。
 以上でございます。こういうことで、次期researchmapの工程表、2017年から2021年ですが、主要大学で研究業績管理システムとしてresearchmapを採用していただきますと、researchmapに集まった正確かつ正規化された機械可読なデータを、大学に対してAPIを通じて御提供します。それを各大学では、研究IRに御入り用ください。もう既に採用していただいているのは、京都大学、北海道大学、大阪大学、東北大学、高専機構等102機関に上ります。加えて、熊本大学が採用予定ということです。
 競争的資金配分機関が、研究者、課題の申請報告書と連携する。特に基盤Sのような大きなものですと、研究者の業績を全部集めるのが非常に大変です、報告書を作るとき。そうではなくて、この研究はこの科研費から支援されていますというのをくっつけるインタフェースを提供しますので、それを使っていただきますと、最後に基盤Sのメーンの研究者の方が、何もしなくてもJSPSに全部の研究成果が動くと。あるいは、JSTにもそうなるというふうになっています。
 これのよいところは、報告書が終わった時点では、結局その研究によって支援された研究が全部出切っていない。これがあると、その後の、特に基盤的研究に関して、長期的にわたって2年後、3年後に出たような論文についても、この研究資金でサポートされているということが分かるような仕組みになりますということで、e-Radとも連携をするということで、私はこのデータは、文部科学省が所有しているべきだというふうに思っておりまして、そこから必要に応じて、CSTIがこういうデータが欲しいと言われたら、そこからNISTEPさんがデータサイエンティストとして分析をして、CSTIさんにお戻しするのが一番よろしいかと思っているわけでございます。
 というわけで、研究者の多忙感を減らし、そして科学的にこれから科学基本計画第6期を作成するためにも、このデータをきちんと集約していきたいと考えて推進しておりますので、御協力よろしくお願いします。以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。一、二質問を受けたいと思います。大賛成ですか。質問ありませんか。
 あとは省力化がされるということが、研究者によく分かるような情報と、工程表ですね。

【新井委員】
  それはJSTさんに、是非広報をよろしくお願いしたいと思います。運用側ですので。私は倒れないで頑張って開発します。

【濵口主査】
  担当がそこに。はい、どうぞ。

【菅委員】
  今、私の研究室でもやっているんですけれども、相当大変なんですよ。論文が多分、年間に3報ぐらいしか出さない人は簡単です。それが20報とか、それから研究費のかなりの数があると相当大変で、研究者はやってないです。私はやってなくて秘書さんにやらせているのでいいんですけれども、相当大変だというのは、今後は論文を発表したら、自動的にそこに入っていくんですか。今は手作業で入れてますよね。

【新井委員】
  はい。そういうことはなくなります。ですから、ScopusとWeb of Scienceから入ってきますので、そこでタイムラグがあると思うんですよ。多分出してすぐは出ない。どうしてもそれはScopusから来ないといけないので。

【菅委員】
  ということは、将来的にはどこかの時点で、我々はクリックするだけで終わるだけで、打ち込むことはないと。

【新井委員】
  はい、そうです。

【菅委員】
  今、リサーチゲートというのがあって、そっちは結構自動的にどんどんどんどん入っていくようなシステムになっているんですけれども。

【新井委員】
  自動的にAIが見つけてきて、入れてくれます。たまに間違っていることがあるので、たまに間違っているのは捨ててください。

【菅委員】
  だから、リサーチゲートと同じようなことですね。

【新井委員】
  はい。

【菅委員】
  分かりました。

【濵口主査】
  特徴は、e-Radと連動して、公的なシステムへ組み込まれていくということですか。
 はい、どうぞ。

【土井委員】
  ファンディングエージェンシーのものと連動しているということはすごく大事だと思いますが、その後、企業とのどういうふうに連携したかとか、そういうところも将来的にはリンク張られるんでしょうか。

【新井委員】
  はい、そうです。特許とか知財とかというような欄がありますので、そこのところから取ってきまして、これがここに行ったみたいなリンクが張られるようになります。

【冨山委員】
  ベンチャーなんかもそこにつながるんですか。ベンチャー企業。企業側の話なんですが。

【新井委員】
  それは経歴等にも入ってきますので、その人が何をやっているかということがあると、例えばベンチャーをやっていますとか、そういうのが出てきます。そういうふうに連携していきます。
 それと大学のプレスリリースと連携します。プレスリリースを入れていただくようにして、このプレスリリースはどの研究者に関連しているかということが出てきますので、そうすると社会的インパクトの大きい、例えば日本のウナギの養殖ができたとか、そういうようなものとも連動していくと思います。

【濵口主査】
  済みません、お時間が超過してしまいましたので、そろそろ締めにしたいと思います。御意見ある方は、次回またチャンスがあると思いますので、よろしくお願いします。
 最後に、事務局より事務連絡をお願いしたいと思います。

【小野山企画評価課課長補佐】
  次回第21回は、8月7日の15時から17時を予定しておりまして、場所は今回と同じ、13階1から3会議室を予定しております。
 本日頂いた御意見は、第5期基本計画フォローアップの取りまとめ(案)を踏まえまして、次回御審議いただく予定にしております。
 本日の議事録は、後ほど事務局よりメールでお送りして、確認していただきます。確認後、文部科学省のホームページに掲載させていただきますので、御協力よろしくお願いします。以上になります。

【濵口主査】
  長時間ありがとうございます。それでは、これにて本日の会を終了いたします。どうも御出席ありがとうございました。


お問合せ先

科学技術・学術政策局 企画評価課

(科学技術・学術政策局 企画評価課)