第7期基本計画推進委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成25年10月1日(火曜日)15時30分~17時30分

2.場所

3F2特別会議室

3.出席者

委員

野依主査、野間口主査代理、大垣委員、國井委員、平野委員

文部科学省

山中事務次官、板東文部科学審議官
(大臣官房)川上政策評価審議官、斉藤政策課評価室長
(生涯学習政策局)清木局長
(高等教育局)中岡審議官、小松私学部長、里見大学振興課長
(科学技術・学術政策局)土屋局長、伊藤次長、磯谷総括官、小山企画評価課長
(研究振興局)吉田局長、生川振興企画課長、合田学術研究助成課長

オブザーバー

キヤノン株式会社 生駒代表取締役副社長CTO、慶應義塾大学 上山教授

4.議事録

【野依主査】 
 ただいまから科学技術・学術審議会第3回基本計画推進委員会を開催いたします。
 空席がありますのは、今日、副大臣、政務官の交代行事があり、幹部が若干遅れるとのことです。よろしくお願いします。
 それから、黒田委員、柘植委員、濱口委員が御欠席でございます。
 今日は、ゲストスピーカーとして、特にお忙しいお二方、キヤノン株式会社の生駒代表取締役副社長CTOと、慶應義塾大学の上山教授にお越しいただいております。お二方には後ほど御意見の発表をお願いしたいと思っております。
まず事務局に組織改編と人事異動がございましたので、紹介してもらいます。よろしくお願いします。

【小山企画評価課長】 
 失礼します。事務局を務めさせていただきます企画評価課長の小山と申します。
 文部科学省で機構改編をこの7月からいたしておりまして、本基本計画推進委員会の事務局も、計画官付という部署でお世話させていただいておりましたが、企画評価課という新しい課が引き継いで担当させていただくというものでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それから、冒頭、野依先生からございましたように、ちょうど副大臣、政務官の交代行事が今あるということで、本日は次官、文科審、関係局長はぜひ御出席させていただきたいという予定にさせていただいておりますが、後ほど随時参ろうかと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【野依主査】 
 それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。

【小山企画評価課長】 
 失礼いたします。
 本日の座席表、その次に次第がございますが、議事次第の裏が配付資料のリストでございます。一つ一つは省略いたしますが、日本再興戦略、予算関係、それから、生駒先生、上山先生から頂戴した資料、参考資料もつけてございます。そのほか、机上配付資料としまして、科学技術基本計画、東日本大震災の建議等を机上に御用意してございます。もし審議の途中でも、不足等ございましたら、事務局にお命じいただければと存じます。よろしくお願いいたします。

【野依主査】 
 それでは、議題1「科学技術・学術審議会基本計画推進委員会の公開の手続の一部改正について」を事務局から説明してください。

【小山企画評価課長】 
 お手元の資料1を御覧ください。
 これは事務的な内容でございまして、本委員会の公開の手続で、傍聴の御希望の皆様に事務局まで登録していただくという手続を定めて、本委員会の決定で運用させていただいております。その登録先の担当課名称が変わります関係で、機械的な改正でございます。御承認いただければ幸いでございます。

【野依主査】 
 本件はいかがでしょうか。御異議がなければ、本案のとおり決定させていただきます。

(「異議なし」の声あり)

【野依主査】 
 では、このとおり決定いたします。
 続きまして、議題2「科学技術・学術審議会の各分科会等における検討の状況について」に入ります。
 第7期の各分科会の審議の状況について、事務局から報告してください。

【小山企画評価課長】 
 資料2を御覧ください。第7期の科学技術・学術審議会における各分科会等検討状況の資料でございます。青い字が入っておりますが、これが前回6月の本委員会以後の進捗状況の追加でございます。
 まず最初の研究計画・評価分科会では、評価の指針の改定案について御議論いただいているということでございます。1ページ目の一番下で、来年の3月末を目途に部会で取りまとめの上、分科会で御審議いただくという運びになってございます。
 それから、2ページ目で、同じ分科会で、環境エネルギーの関係、「フューチャー・アース・イニシアチブ」への取組、それから、安全・安心の関係では、中ほどの「リスクコミュニケーションの推進方策」について議論が進められてございます。
 それから、2ページ目の下の方からは、学術分科会でございますが、こちらは昨日、開催されました。大学の研究力の強化等について御審議いただいているという状況でございます。具体的には3ページ目で、各関係の部会からの報告が随時上がっている状況でございます。3ページの中ほどの研究費部会では、8月末に、「学術研究助成の在り方について「審議のまとめ(その1)」」が取りまとめをされまして、昨日の学術分科会に報告されております。それから、下の方の学術情報委員会の関係でも、青い字の3行目ほどですが、「学修環境充実のための学術情報基盤の整備」についてのまとめが8月になされまして、やはり昨日の学術分科会に報告がなされているという状況でございます。
 4ページ目、海洋開発分科会、こちらも新規施策の事前評価や、今後の深海地球ドリリング計画の中間評価等の審議がスケジュールアップされているという状況でございます。
 4ページ目の下から、測地学分科会の関係でございますが、今後の予定で「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」について、意見公募を行いまして、11月上旬を目指して議論が進められている状況でございます。
 同じページの下の方からは、技術士分科会でございます。「今後の技術士制度の在り方」について、特別委員会等で御議論いただいているという状況でございます。
 6ページ目からは部会になります。先端研究基盤部会は、研究基盤戦略に基づきまして、調査審議の継続、領域横断的な調査審議等が予定されてございます。6ページの下の方は、研究開発プラットフォーム委員会、7ページには、数学イノベーション委員会の審議状況が挙げられてございます。
 それから、7ページの産業連携・地域支援部会でございますけれども、こちらも「地域イノベーション戦略支援プログラム」に関する中間評価や、作業部会におきまして、イノベーションの創出や大学等の知的財産の取扱いの検討が続けられておりまして、10月末を目途ということで、関係の部会での御審議が進んでおります。
 それから、8ページの下の国際戦略委員会が夏から始まりまして、2回開催されてございます。今後も1~2か月に1回というペースが想定されているそうですが、科学技術・学術分野の国際戦略の在り方について御議論いただいて、来年の春頃にアウトプットを取りまとめる予定と伺ってございます。
 それから、9ページは人材委員会でございます。若手支援等を御議論いただきまして、「我が国の研究開発力の抜本的強化のための基本方針」に基づきまして、人材育成の在り方について審議が続けられるという状況でございます。
 最後に、本基本計画推進委員会では、以上のような全体の状況を俯瞰(ふかん)しながら御議論を頂ければと存じます。
 以上でございます。

【野依主査】 
 ありがとうございました。
 各分科会からさらに御報告あるいは御意見ございますか。
 なければ、これで本委員会として報告を受けたことといたします。
 続きまして、議題3「最近の科学技術政策の動向について」です。
 事務局から資料の説明をお願いします。

【小山企画評価課長】 
 資料の御説明が冒頭続きまして恐縮でございますが、資料3でございます。資料3-1の日本再興戦略、以下の関係の予算等の資料をざっと御報告させていただきます。
 資料3-1が成長戦略でございますけれども、安倍内閣の第三の矢としまして、第一の矢たる大胆な金融政策、第二の矢たる機動的な財政出動に続くものとして、6月に閣議決定されたというものでございます。その後、本日中にも総理から緊急経済対策等の新たな発表が予定されていると報道にも出ておりますけれども、資料3-1は今年6月の成長戦略でございます。
 これもいろんな会議で御報告が行われているかもしれませんが、目次におきまして、29ページからの2.雇用制度改革・人材力の強化を御覧下さい。6大学改革、7グローバル化等に対応する人材力の強化が記述されております。39ページからは3.科学技術イノベーションの推進について記述がなされております。「総合科学技術会議」の司令塔機能強化、戦略的イノベーション創造プログラム等、研究開発法人の機能強化等の提言がなされております。
 御紹介だけさせていただきますと、本文の17ページで、特色として幾つかの成果目標を掲げております。報道等でも御承知かと思いますが、17ページの下の方では、例えば、大学の潜在力を最大限に引き出すということで、今後10年間で大学ランキングトップ100に10校以上入れるという目標が掲げられております。次の18ページでは、世界と戦える人材を育てるとし、2020年までに留学生倍増と掲げられております。18ページの下の方で、技術で勝ち続ける国としまして、成果目標「今後5年以内に科学技術イノベーションランキング世界1位」を目指すということが明記されてございます。
 このほか、科学技術イノベーションの推進は、39ページ以下でございます。本文で39ページをお開き下さい。個々には省略いたしますが、ざっと見出しだけでも御覧いただきますと、「総合科学技術会議」の司令塔機能の強化、40ページで戦略的イノベーション創造プログラムとして、府省横断型の重点予算配分を始めるといったような提言、革新的研究開発の支援、米国のDARPAの仕組みを参考にしたFIRSTのいわば後継的な取組が紹介されております。4研究開発法人の機能強化については、次期通常国会の法案提出を目指すというような話も紹介されております。このほか、5では、研究支援人材のための資金確保、リサーチアドミニストレータ支援がございます。それから、6官・民の研究開発投資の強化ということで、第4期科学技術基本計画でも触れられました5か年間の政府の研究開発投資総額25兆円といったようなことが引かれております。GDP比では、官・民4%以上、政府でGDP比1%にすることを目指すというようなことが記載されてございます。42ページからは、知的財産戦略や標準化の関係といったところが、科学技術イノベーションとして直接言及されているといったような形でございます。
 これは分厚い冊子になってございますが、後半は、もう一つの特徴としまして、詳細な短・中期の工程表を含めまして、プログラムが明示されているといったようなスタイルになっております。
 それから、次の資料を御覧いただきますと、資料3-2-1で平成26年度の文部科学省関係の概算要求の御報告でございます。これも8月末ですので、多少旧聞に属しますが、ざっと数字だけ眺めていただきますと、一番上の箱で、文部科学関係予算全体では、一般会計において26年で5兆9,035億円と、前年度比10.2%の増ということで要求・要望を出してございます。
 文教関係が最初に数枚ございます。9ページがスポーツで、その後が文化で、科学技術予算は11ページからでございます。26年度の要求・要望総額は1兆1,841億円。11ページの一番上でございますけれども、19.9%の増ということで出してございます。この内訳は、白丸だけでもざっと御覧いただきますと、先ほど御報告しました成長戦略である「日本再興戦略」及び「科学技術イノベーション総合戦略」に基づきまして、日本版NIH構想もうたわれておりますので、その推進を主体的に推進するということで、650億円。先ほども成長戦略に出てまいりました戦略的イノベーションのプログラムとして350億円(新規)。これは各府省が担当している科振費の4%相当の経費を計上するといったようなスキームですので、それにのっとりまして350億円といったような新規要求が出てございます。
 次からが、科研費をはじめとしました要求の事項でございます。科研費が2,338億円(20億円増)、戦略的創造研究推進事業では90億円増の624億円、センター・オブ・イノベーションの拡充では265億円などとなってございます。
 次のページもおめくりいただきますと、ITER計画の推進としまして305億円、地震・防災関係149億円、東日本大震災からの復興のための「原子力災害からの復興」関連で231億円。
 さらには、人材力、インフラ整備といたしまして、科学技術イノベーション人材の育成等で、新規80億円。コンソーシアムを作って、大学、企業連携しながら、若手、あるいは研究支援人材等の育成に努めたいという予算でございます。それから、二つ目の研究大学強化促進事業は25年度から始まって、さらに24億増の88億円で出してございます。こちらも今年の夏に22機関を選定して、公表したということでございますが、さらに、総合力だけでなくて分野でも光るようなところにも光を当てるというような意味で、拡充という要求になっているということでございます。それから、世界最高水準の大型研究施設、SPring-8、SACLA、J-PARC、京です。ポスト「京」のスーパーコンピュータの開発は、新規で45億円となってございます。
 このほか、国家安全保障・基幹技術としまして、新型の基幹ロケット、「はやぶさ2」、海洋資源調査研究、「もんじゅ」への取組ということで、所要の予算を計上しております。
 資料3-1は以上でございます。資料3-2-2は分厚いですので、一つ一つの御説明は省略いたしますが、今大略を御紹介しました科学技術関係の予算を詳しく御紹介した資料でございます。最初10枚、20枚ぐらいが数字の概要、そのほか、3分の1を過ぎたあたりからが一つ一つの詳しい説明資料になってございます。今御紹介に挙げたような資料も含みまして、もし御議論の中で必要が出てまいれば、こちらを御参照いただけるのではないかというものでございます。
 それから、資料が多くて恐縮です。次の資料3-2-3の内閣府のクレジットの資料を御覧ください。資料3-2-3、26年度の科学技術関係予算は政府全体の概況をまとめたというものでございます。9月13日の総合科学技術会議で報告されておりますので、その資料を使わせていただいてございます。
 表紙をおめくりいただきますと、政府全体では科学技術関係予算は26年度で4兆1,736億円という合計額になっております。省庁別の内訳が、次の2ページというような状況です。文科省は中ほどやや下ぐらいにございまして、一般会計で2兆4,837億、特別会計では1,607億、合計で2兆6,443億円、と総額の6割強が文部科学省の要求額になってございます。
 3ページは、府省別の割合がグラフ化されており、右の方では機関別割合として円グラフで各省内局予算、独法関係の予算、大学等の関係の予算が大まかに色分けされております。このような各省別の概算要求、あるいは政府予算の集計は、内閣府と、文部科学省でも私どもの科学技術・学術政策局で協力しまして、各省に照会をかけながら整理をしているというような状況でございます。
 4ページは、ちなみに、科学技術関係予算の総額の推移が年を追って表示されてございます。赤の濃い部分が、中核的経費たる科振費、そのほかの当初予算、グレーの補正予算が入った年は加算されております。地方公共団体分も足しまして、科学技術基本計画の計画期間に沿って表示されているという状況でございます。
 5ページ以下は、各省別のアクションプランで指定された、政府全体として主な重点施策として特定されたものが紹介されてございます。概算要求の段階から内閣府が各省と連携をとりまして、各省の要求事項の中で重点を置くべきと総合科学技術会議でも御議論された事項が紹介されてございます。ちなみに、文部科学省関係は、11ページ以下に載ってございます。エネルギー関係、次世代インフラ関係、13ページで地域資源関係、復興再生絡みの東北メディカル・メガバンク等が列挙されてございます。14ページには、イノベーション環境創出のためのテニュアトラック、人材育成コンソーシアム、先ほどの研究大学の強化、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)、も重点施策として登録されているという状況でございます。
 以上が予算関係でございます。あともう2点ありまして、資料3-3で、9月13日の総合科学技術会議で有識者議員の連名で出された「今後の検討課題」を御参考として御報告させていただきます。
 1ページ目、1.の(1)で、二つ書かれてございます。経済再生と財政健全化、この両方を、科学技術イノベーションを推進することによって両立が可能であり、好循環を生じさせることが重要課題なのであるという紹介がされております。経済再生のためのイノベーションといったことは、総理の所信表明でも言われておりましたが、二つ目の白丸で、民間主導の経済成長の実現、科学技術の最大限の活用等によって財政健全化にも貢献できるだろうということで、科学技術イノベーションへの期待がさらに高まっていることが紹介されてございます。
 それから、(2)では、「世界で最もイノベーションに適した国」、これは引き続き挙げられてございます。
 2ページで科学技術イノベーション政策の推進としまして、重要とされる6原則、これは前回から踏襲されてございます。時間軸、目標、包括的、一気通貫型、産学官、政策手段の組み合わせ、ミックス、PDCAサイクルを年間常にやっていくといった視点が示されてございます。
 それから、本年後半に取り組むべき項目が3.で紹介されてございます。1ですと、26年度の概算要求の状況は先ほど資料を御覧いただいたとおりですけれども、さらに11月末を目途に26年度の科学技術関係予算の編成方針を総合科学技術会議で示されるという計画、戦略的イノベーション・革新的研究開発等が強調されてございます。
 それから、3ページは、イノベーション創出環境の整備としまして、1「人」、2「資金」、3「仕組み」とそれぞれ掲げられてございますけれども、それぞれ重点的に検討し、本年末までに基本的方向を取りまとめるということが示されております。世界最高レベルの研究人材、能力、人の確保、育成、循環、結集といったこと、それから、2では、研究資金配分として、特に一番下では、競争的資金の在り方について集中的に議論、具体的な制度設計に反映と述べられてございます。それから、産学官での新しい仕組みとしましては、4ページに、研究開発法人などの制度設計の議論が続けられているといった状況が述べられています。
 最後は、総合科学技術会議の司令塔機能強化としまして、そのための法律改正も次期通常国会の提出を目指してといったようなことが紹介されてございます。
 総合科学技術会議の方では、御議論の課題の提示を含めまして、次から横置きの資料になっておりますけれども、専門調査会を多少組み替えるというか、一つ新設するといった報告がなされてございました。横置きの資料の2ページ、2.専門調査会の再編全体像でございますが、黄色いところの専門調査会の新しい体制で申し上げますと、科学技術イノベーション政策推進専門調査会は継続して置かれます。第4期の推進、科学技術イノベーション総合戦略の推進について議論を続けていただく一方で、重要課題専門調査会というのを立ち上げるとされています。アクションプランの特定等、各省と内閣府で始まりました対話をさらに継続して充実させていく、進化させていくといったような場としまして、こういった専門調査会が位置づけられています。エネルギー、次世代インフラ、地域資源等の戦略協議会が複数置かれるという紹介がなされてございます。
 あと、この資料の最後の2枚は、多少細かくなりますけれども、平成25年度科学技術戦略推進費に関して、8月8日付けの総合科学技術会議において、第4期の基本計画、それから、科学技術イノベーション総合戦略のフォローアップ調査を大規模にこれから行おうと、総合科学技術会議の方で計画をされており、課題の達成度はどのぐらいか、あるいは、ランキングの手法等々の研究、第5期の基本計画に向けた課題等を委託調査で、一番最後、3ページには、配分予定額、4億円弱といったような数字が出ておりますけれども、大規模に今年度下半期準備を進められるというふうに聞いてございます。
 恐縮ですが、あともう1点のみ、資料を御報告させていただければと存じます。資料3-4をお出しください。研究不正に関するタスクフォースの中間取りまとめでございます。色刷りで最初のページになっておりますが、2枚目からの本文は表紙付きで、字面になってございます。
 一番最後の16ページですが、福井前文部科学副大臣を座長といたしまして、文科審、関係の局長で、研究の不正行為、研究費の不正使用に関しますタスクフォースが置かれまして、8月、9月に集中的に検討がなされ、その中間的な取りまとめというものでございます。先週、文部科学省として発表させていただいたというところでございます。最初のページが中間取りまとめの概要になってございます。こちらは字面を簡単に追っていただければと思います。
 最初の白丸で、研究不正は大変残念なことですが、研究活動全体に対する信任を失墜、科学技術・学術の健全な発展を阻害しかねないと述べられています。それから、不正と申しましても、研究における内容面の「不正行為」と、研究費の「不正使用」と二つのフェーズがございます。これまでもそれぞれ文部科学省、ガイドラインをこの二つに分けて策定しておりますけれども、こういった状況を踏まえて、このタスクフォースがさらに議論を展開したというまとめでございます。
 青い字の次の行において、研究者の所属する組織が、ガイドライン等を遵守することを促すとされています。つまり、これまでは、ともすれば研究不正の問題を研究者個人の問題に還元されている向きがなきにしもあらずということです。それを、研究者が所属する組織に主体的な問題意識を持っていただいて、コーポレートガバナンス的な考え方で対処していくべきではないかというのが大きな特徴ではないかと存じます。
 大きく3点に分かれております。赤い字の箱が、不正を事前に防止する取組でございます。倫理教育の強化です。まず倫理教育の標準的なプログラムというのが我が国であまり定着していないというようなことも含めて、関係の大学で先行事例としては研究が進んでおりますので、日本学術会議等と連携をとって、そういうプログラム開発に努めるという点が述べられています。二つ目の白丸で、不正事案がありましたら公開を続けまして、あまり多くない方がいいですが、一覧化するなどすれば、目安となりやすいというようなことが書かれてございます。それから、不正を抑止する環境の整備です。三つ目の白丸では、研究データを一定期間保存・公開して、事後的な検証可能性を確保した方がよい。あるいは、研究費の不正使用に関しましては、調査を機動的に行った方がよいといったことになっております。細かなマークで星(☆)、四角(□)、ダイヤ(◇)とございますが、星印は研究の不正・研究費の不正使用共通、四角が研究の中身の不正の方、ダイヤが研究費の不正使用の方といったように、意識して適用場面を分けた議論が今回整理されてございます。
 二つ目の大きな箱が、組織の管理責任の明確化ということでございまして、コーポレートガバナンス的な考え方、組織としての責任体制を明確にすることが述べられています。具体的には、最初の星で倫理教育責任者を明確に設置すること、次に研究費の監理・執行責任者も明確にするということが書かれてございます。
 三つ目の箱が、国による監視と支援です。監視というような言葉を使ってございますけれども、組織としての管理責任を明確にしていただくという前提で、国はそれをしっかりモニタリングしたり、支援しようという発想でございます。規程・体制の整備状況の調査、各種モニタリングの強化が挙げられています。一番下の青い白丸では、倫理教育、規程整備を各機関が行う際の支援や、外国事例を含めた先行事例、調査研究等が掲げられております。
 一番右端に縦で書いてございますけれども、この中間取りまとめを公表いたしまして、今後はこれらの取組を、さらに具体的なガイドライン改定等で、どの部分が必要か、あるいは、どういった取組が今後必要か、落とし込んでいく作業が続けられます。このほか、関係府省にも働きかけをいたしまして、文部科学省だけの話ではないだろうといったことで、文部科学省としての考え方をまずは中間的に取りまとめたというような状況で公表させていただいているという状況でございます。
 以上、長々と申し訳ありませんが、予算関係、研究不正関係の資料の御報告でございます。

【野依主査】 
 ありがとうございました。
 本件につきましては、報告事項ではありますが、今日は有識者お二方からの意見発表と質疑応答の時間もございますので、御意見のある方は、その中で発言していただいても結構です。何かありますか。よろしいでしょうか。
 この不正行為の問題は、今どこで検討されていますか。研究計画・評価分科会ですか。不正行為、研究費の不正使用の問題についてです。

【小山企画評価課長】 
 この検討自体は、もうアドホックに文科省副大臣ヘッドのタスクフォースでございます。今後、関連する話題として、このタスクフォースのまとめを各関係の分科会、部会等にお配りしまして、御議論に生かしていただくというところでございます。

【平野委員】 
 昨日も学術分科会でも議論しておりますし、それから、評価部会においても検討しておりますが、タスクフォースをもとにしながら議論しております。

【野依主査】 
 今、新聞紙上をにぎわしていますが、どのように対応されますか。例えば、不正な論文を書いて学位を取った方、学位取消でしょうね。
 それから、そのような方が学位を基に職を取っておられますが、そのような例は全部剥奪ですか。

【斉藤評価室長】 
 先ほどの副大臣のタスクフォースの事務局をさせていただきました評価室でございます。
 今回、文科省の中の組織ということでタスクフォースを作りまして、この報告書にあるように、中間まとめということで取りまとめさせていただきました。
 大きく分けて、研究の不正行為と不正使用と二つございますけれども、それぞれ文科省の方にガイドラインが今ございまして、各大学なり研究機関なりに周知徹底しておりますけれども、そのガイドラインを、この方針を踏まえて見直すという作業を今後させていただくことになっております。それぞれ今までの作られ方が違いますので、委員会に諮ったりですとか、新しい検討体制を作ったりとか、やり方は違うんですけれども、いずれにしましても、具体的なアクションにつきましては、今後さらにガイドラインの見直しという形で検討させていただくことになっております。

【野依主査】 
 それぞれの処分は各法人の長に任されることになるのでしょうか。
 どうぞ、土屋局長。

【土屋局長】 
 研究費と研究不正と今分けて御説明したと思いますが、研究費の方は比較的対応も簡単だと思いますが、研究不正の方は非常に難しいと思っています。
 今、野依先生から御指摘ありました制度的な対応の部分をどうするかということについて、今検討はしておりますが、諸外国の対応も相当参考になると思います。諸外国は進んでいるというのももちろんそうですが、研究不正の、どういう種類のどういう行為が研究不正であったか、それは全体の状況の中でどうであったかという、ケース・バイ・ケース、なかなか判断が難しいところもあります。そのため、今の御質問の趣旨は非常によく分かるんですが、そこへの具体的な対応については、もう少しよく慎重に検討させていただきたいと思います。特に学術会議での検討も進められておられますので、そういったようなことも含めて、きちっと考えていきたいと思います。ただ、あんまり時間をかけるわけにはいかないとは思っております。

【野依主査】 
 ありがとうございました。
 ほかにございませんでしょうか。

【生川課長】 
 すみません。今、野依先生がおっしゃったのは、先頃ございました、東大とかで具体的に2件不正事案があって、その具体的対応はどうするのかという御質問かなとは思うんですが、今、東大の方で具体的に調査をまだ続けているところでございまして、その結果を待って、基本的には、大学の方で具体的な処分、対応を決められるということになろうかと思います。

【野依主査】 
 各法人の問題ですから、各法人がしかるべき対応をとられるのがいいのではないかと思います。そして、基本方針を作ることはいいことと思います。よく分かりました。
 それでは、議題4「科学技術イノベーションの創出に向けた取組について」に移ります。今回は、これからの時代において科学技術が果たすべき役割や人間及び社会との関係等について幅広く御議論いただくため、お二方の有識者から御意見を伺うことにいたします。
 なお、質疑応答及び意見交換は、お二方の御発表の後にまとめて、時間の許す限り取りたいと思っております。
 それでは、まず慶應義塾大学の上山隆大教授に御発表いただきます。
 上山教授は、経済学を基盤とされ、科学技術政策、科学技術史、公共政策、イノベーション政策等の幅広い分野に取り組んでいらっしゃいます。本日は、科学技術とイノベーションの関係や、公益と私益の問題について、歴史性を踏まえた御発表を頂けると伺っております。
 それでは、30分程度ということで、御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【上山教授】 
 御紹介、どうもありがとうございました。また、お招きいただきまして、感謝申し上げます。
 最近こういうところで呼ばれることがしばしば多くなって、自分の考えていることを表明できる機会を与えていただき、大変ありがたいと思って。それはなぜかと申しますと、私自身もアカデミアの一員として、日本のアカデミアの全体の行方にとても心配をしている、かつ、なぜ日本で、特に科学者の方々も含めて、グローバルなところで、これほど能力のある、あるいはまた、私の考えからすると、コストから見ればとてもパフォーマンスのいい、その人材が集まっている日本のアカデミアが、なぜグローバルの中で苦しい思いをするのかということに関して、とても危惧をしているとともに、自分自身にしても、微力ながら何かそこにできることはないかなと思って、最近発言することが多くなりました。
 それは一言で言うと、やはり国の支援が足りないということであろうと思っております。端的に言ってしまえば、公的資金がやはりもっと入るべきだと基本的には思っているわけです。特に私のように、アメリカの事例をずっと見ていた者からすると、それをしなければならないという論理が、日本の中ではとても希薄である、あるいは、力が弱いという感想を持っているわけです。ですから、アカデミアの一員として、なぜ我々が公的資金で大学の研究を支えなければならないのか、あるいは、科学研究をなぜ支えなければならないのか、これについて、より新しい説得性のある物語を大学人が自らの力で作り上げて、そして社会に問わなければいけない、そういう時期に来ているんだろうけれども、自分自身もそこの中に少しでも関わりたいと思って、発言をしてまいりました。今日お話しするのは、その一環としてお聞きいただければいいと思います。
 タイトルとして、公益性と私益性ということを掲げているわけですが、最初のスライドにありますように、我々の間でよく言われているのは、科学の普遍性を前提としたマートン流のCUDOSという考え方、ここにありますけれども、Communalism、Universalism、Disinterestedness、Organized skepticism、つまり、科学は全ての人々のものであって、公益性の高い、公共性の高い、したがって、私益とは関わらない、そういう活動であるという前提が、20世紀の後半になってきて、ザイマンという物理学者が唱えた議論ですが、PLACE、私有性が高まってきた、あるいは、ローカル的な意識が高まってきた、あるいは、権威主義的な傾向が強くなってきたと言う人もいるわけです。僕はそれに加えて、我々が考えなければいけないのは、非常に公益性の高かった大学の研究や科学研究に、私的な利益が何らかの形で介在せざるを得なくなってきているという現状に対して、では、私的な利益が介在しなければならなくなってきたこの科学研究に、なぜ公的な資金が投入されるべきなのかという論理構造がだんだん希薄になってきている、何らかの形でサポートするような論理といいますか、物語を考えなければいけない時期に来ていると思っております。
 さらに最近では、Internationalからnationalな意識がだんだん強くなってきており、科学から科学技術、さらには科学技術イノベーションという言葉まで連動して使われるようになっております。イノベーションというのは、まさに何か物を生み出し、技術を生み出し、経済的な利益を生み出すという意味で、とても私的な部門に関わらざるを得ない言葉ですが、それが一つのフレーズとして使われるようになってきた。では、そのような科学の私的利益が大きくなっている状況で、なぜ公的な資金を科学研究に我々は投入しなければいけないのかという、その説得性がだんだん薄くなってきている。それを新しく説得するような新しいセオリーといいますか、理論を作らなければいけないと思う一方で、それを担っている研究大学が果たして、私自身のその一員の一人ですが、その役割を果たしつつあるのか、そのような意識を持っているのか、そのような新しいビジョンを展開できているのかということに関して、不安を覚えております。
 科学がこれほど先端化していきますと、人類普遍の知識を作るという意味での科学だけではなくて、より大きなコストがかかるビッグサイエンスが主流になってきている。そして、そのときによく言われるのは、私も実は総合科学技術会議で関係しているときにも良く聞いたのですが、大学の役割として、人材の育成が中心であるとか、あるいは、基礎研究を担うのが大学の役割であるといわれます。この二つの言葉の中には、何か大学は役に立たないようなことだけども人類のためにやればいいんだと、あるいは、優秀な人間だけ作って産業界に送り出せばいいんだという意味が言外に込められているように思います。はたしてそれだけの役割だというイメージで捉えられてしまうと、せっかくのこれほど強いアカデミアの世界に、ある種のたががはめられてしまって、より戦略的な力というのが発揮できないのではないかと考えているわけです。そのような視点に立って、アメリカの80年代以降の大きな変化を眺めてみると、いろんなことを考えざるを得なくなったというのが、今日のお話でございます。
 まず一つに、アメリカの中には、基礎研究、あるいは、科学研究と国家の戦略性が非常に明確に結びついているという意識を僕は持っております。アメリカ人に、なぜあなたの国はそれほど優秀なのか、強いのかと聞かれたら、軍事的な力があるとか、GDPの力あるとかだけではなくて、我々は世界の中で最も優れた大学を持っている、最も優れたアカデミアを持っているという声が必ず返ってくるだろうと。それの中には、ある種の国家性が、普遍的な科学を追究する中にも国家性の意識がやっぱり潜んでいると考えざるを得ない。そのような意識が私たちの中にあるのかと問いかけたいと常々思っているわけです。
 さらには、科学技術イノベーションという言葉にありますように、ピュアサイエンスとか、応用化学とか、イノベーションとかということに単なる区切りをしてしまって、それで果たしていいのだろうかという意識があります。僕はむしろ基礎の中にこそイノベーションの種もあるだろうし、あるいは、基礎の中にこそ知識の根源を追究する力もあるだろうし、そういう意味では、我々は知識を追究する拠点としての大学、あるいはアカデミアという視点をもう一度取り戻さないといけない。それは科学だけではなくて、もちろん、教養教育を含めた、我々のものを考えて、そして、そこから新しい何かのアイデアを生み出していくような場所としての大学、アカデミアの存在ですね。そのようなことを考えますと、知識そのものに有用性があるとか、有用性がないとかということを問うこと自体も本来間違っていて、イノベーションという言葉の中にも、それは単に有用だからイノベーションであるというのではなくて、我々の新しい世界の見方とか、考え方の機軸とか、そういうものを提供していくということもイノベーションだと考えれば、アカデミアの役割は極めて大きいと。そういった原点に立ち戻って大学ということを考える必要があると常々考えるようになってきました。
 それとともに、アメリカの知識戦略を見ますと、公益性の高い研究大学ではありますけれども、それぞれの研究大学は、極めて私的な利益に基づいて活動を行っている、すなわち、個々の研究大学は、自らの研究大学のレピュテーションを高め、そして、世界に冠たる中での競争力を維持していくための方策を常に考えている。ですから、科学者も、それを持っている大学も、それぞれがそれぞれの私的な利益に基づきながら、それ全体として公益性の高いものへとつながっていくような論理性がそこにはあるのではないかと思っております。
 それから、さらにまた、これもいろんなところで申し上げているので、お聞きになった方もおられると思いますけれども、日本という国の国家性は一体何かということをもう一度考えたときに、東アジアにおける知識の拠点としてのアカデミアということをもう一度訴えたいなと思っているわけですね。富が生まれるところで常に新しい知識の拠点が生まれる。これは地中海世界もそうでしたし、それから、ヨーロッパの北西ヨーロッパもそうでしたし、アメリカの東海岸もそうでしたし、西海岸もそうでしたし、さらにまた、東アジアで新しい富が生まれている現実の下で、我々はもう一度、国家性のあるアカデミアの姿を紡ぎ出すような物語を考えないといけない、そういうふうに思っております。
 アメリカにおける国家戦略ということを考えたときには、次のスライドにありますように、基礎研究といえども人類普遍の知の探求とはいうものの、そこにはアメリカの国益というのがある程度反映されているという意識を持っております。ですから、常に、例えば議会の公聴会なんかで科学者たちが呼ばれて、「あなたのやっていることは果たしてパブリックインタレストに合うのですか」、「ナショナルインタレストに合うのですか」という質問が投げかけられるわけですね。普遍的な知識を、あるいは人類普遍の知識を探求すると言いながらのも、そこの中にはある程度の国家性というものが反映されているということを考えないといけない。ですから、例えば、国防総省から極めて巨額の基礎研究に対する研究支援がなされている。あるいは、国防総省が知的財産戦略について明確にコミットしている。そのことも、アメリカの国家戦略というのがあるんだろうというふうに思っています。
 これは実はアメリカの中にもうエンベッドされている、埋め込まれている考え方であって、例えば、第2次世界大戦の後にすぐに生まれてきた、よく知られているブッシュの報告書の中に、この人の考え方は、大きく分けて三つの特徴があると思っているんです。まず最初は、基礎研究重視という考え方を打ち出したということ。そして、それによって科学の研究を国家が支えなければいけないという物語を確立したということ。実は、それと同時に、彼は、その科学の普遍性と国家性の戦略性とが非常に明確に連動しているという意識を常に持っていたと思います。彼自身は科学者ではありましたけれども、その科学の成果がイノベーションとなって、企業へ流れていき、そして、それがアメリカの国益に合致するという論理をはっきり持っていましたし、彼自身も多くのスタートアップ企業と関係を持っていた。そしてまた、アメリカで最初のベンチャーキャピタルであるAmerican Research and Development Corporationにも明確に関わっていたという人物ではありますね。ですから、単なる基礎研究の追究者ではなかったということ。それに、彼は、1947年に“Military Organization for the United States”という文書を出して、大統領に進言をしているわけですが、そこでは国家安全保障に関わる統一した部局を作るべきだという提言をして、彼自身は実は国防総省のトップになりたいという意識を持っていたと言われております。その望みはかなわなかったわけですが、ミリタリーに対する関心も彼は決してなかったわけではない。そういう意味で、実はピュアサイエンスの側からも、そういった国家性というものは常に内包されている意識としてあったのではないかと考えているということが一つですね。
 それと、その後で、1960年代から70年代にかけて、アメリカのアカデミアがだんだん衰退していく時期がやってきます。すなわち、公的資金が徐々に減らされていくわけですね。一大出来事だったと思います。その当時のデレック・ボックというハーバードの学長は、このことに関して随分いろんなところで発言をしていて、どんどん公的資金が減っていると、その資金の使われ方に様々な制約が生まれてきている、科学者になりたいと思う人がだんだん少なくなってきている、大学に対する研究費が減っているということを常々提言をしているんですね。それを僕が読んだときに、まるで今我々が経験しているような事実だと思いました。
 そのときに、大学人だけではなくて、ここにありますマクジョージ・バンディ、これはケネディの大統領補佐官をやった全米の当時の第一級の知性と言われた人で、39歳ぐらいのときにハーバードの学部長になった人で、大統領補佐官というのが当時はそれほど大きな役割をしていなかったのを、彼がなったことによってとても政治的な力を持ったと言われている人ですが、彼はその後フォード財団の理事長になって、僕は、フォード財団の大学研究に対して果たした役割はとてもおもしろいなと思って調べていたんですが、彼が非常に重要なドキュメントを残しております。その中に書いてあるのは、高等研究というものこそがアメリカの社会の土台である。多元的な社会を作る土台であり、それは民主国家としてのアメリカの基盤であるということを盛んに述べた上で、そういう意味では、ソビエト連邦などとは全然違うのだと。多様で多元的な意思決定が行われる国の中での国家戦略としての高等教育政策を考えなければいけない。各大学がエクセレンスを常に追究しているような状況を作っていき、そのエクセレンスを追究する大学が、研究大学ごとに激しく競争することによって、研究と学術の高みを目指していくという環境を整えるということが、アメリカの学術研究の最大の戦略なのだということを述べているわけです。
 彼の考え方が非常に明確に表れているのは、フォードがこの時代にSpecial Program in Educationというのを出して、各地域ごとの旗艦大学に研究資金を回すというプログラムをやったことがございました。私はスタンフォードのことを随分調べているんですが、スタンフォード大学はそれに選ばれた大学だったと思いますね。ですから、東海岸ではなくて西海岸における知識の拠点としての新たな研究大学として、スタンフォードに巨額のお金がフォードから入り、その後で公的資金が入る。ですから、研究大学は、それぞれが自らの力で競争力のあるエクセレンスの高みを目指すような、そういうビジョンを持たなければいけない。そういうビジョンを持っているところに支援をしていく。そして、そういった研究大学が競争し合うことによってアメリカの学術を高めていくという戦略を国家的に作り上げていかなければいけないという、そういう理念を持っていたんだと思います。
 そして、彼は、実はおもしろいことに、この時代に研究大学のエンダウメントに関するとてもおもしろいドキュメントも出しております。すなわち、各研究大学が大学基金をさらに拡大していくことによって、競争力を高めていく必要がある。当時ハーバードの基金が大体650億ぐらいでしたから、70年代にアメリカの株式市場はずっと落ちていきますから、彼の予言が的中したのは80年代に入ってからで、このマクジョージ・バンディの提言がそのまま生かされたとは思いませんけれども、80年代以降に、各研究大学はエンダウメントを急速に拡大していって、今のようにハーバードが3兆円を超えるような規模に拡大していくという歴史があるわけですね。
 ですから、私が申し上げたいのは、知識をマネジメントするという視点がとても重要で、その知識というのは、大学の中にある、新たな知識を作り出すような環境を整えるということが何よりも大切だ。そういう意味では、基礎研究も応用研究も、技術もイノベーションも、あるいは基礎も実践も、あるいは実学も虚学もない、全てはメタ言語としての知識を開発していくという拠点としての大学という視点がとても重要であり、そういう意味では、技術も、方法も、ノウハウも、価格情報も、あるいは通念を作り出すということも含めて、大学の役割というのはそこにある。そして、そういった活動をすることの中で、大学の中に新たな知識の成長点が生まれる。その成長点が生まれたものをピックアップすることによって、そこに支援をしていくという政策がとても重要なんだろうと思います。ですから、その特異点としての知識の成長点こそがイノベーションということであり、我々は、後になってそれがイノベーションであったとか、新しい知識の成長点であったということは初めて分かるけれども、それを支援しているときには、一体何が成長点なのかとは我々には分からない。もしそういうものが生まれてきたときにこそ、それをピックアップして支援していくという、そういう視点が大切だとすると、その成長点を見つけ出していくというところにはマネジメントの力が必要だと思っているわけです。
 ですから、大学というところは非常に不確実性の高い研究を行うところですから、ここにこそ公的資金を入れて、そういった成長点を作り出し、新たな知識のシーズを作り出すような実験場所としての大学という理念でもって公的資金を入れていくべきだ。そこには本当に国家的な戦略性の高い意識が反映しているのではないかと思うわけです。
 ですから、仮にそれが将来的に私益と関わる、あるいは、経済的な効果を生み出して、民間の企業と関わるということがあったとしても、それはシーズの段階ではあくまでも公的な意味を持つ公共性の高い活動だという意味で、それを支援していくという視点がとても重要ではないかと思っております。
 何もよりもやっぱりそういった研究拠点をファイナンスしていく、資金を提供していくということをサポートする、そういう理論を我々は作らなければいけないと考えております。例えば、その例として、私自身はスタンフォードを中心とするシリコンバレーのことを調べているわけですが、その過程の中で、今日ちょっとお話しするのは、ここに書いていますが、アーサー・コーンバーグと、それから、ポール・バーグという人にも随分長い間時間をかけてお話を聞いたんですが、こういった人たちのインタビューの中から考えていたことは、例えば、本当のピュアサイエンスの中から我々はイノベーションの種が出てきているということを、80年代以降に見てきているわけですね。70年代後半から80年代にかけて、どんどんバイオテクノロジーのシーズが生まれてきて、そこに民間の資金が関わっていくという現象が出てきているわけですが、それによって当時の学者たちは、これを一体どういうふうに理解すべきだということで、随分議論したことがございました。
 その中に、次のページを見ていただければそうなんですが、コーンバーグとポール・バーグのインタビューの中から一文を挙げておきましたけれども、彼らは、我々は産業的な意識は全くなかったと。Industrial considerationというのは、考えても、それはばかなことだ、悪いことだと。産業化ということを目指すようなことではなくて、我々はあくまで基礎研究をやっていったんだと。それが役に立つのか、あるいは、マーケット的に意味があるのかどうかなどと考えることは、そもそも間違っている。そういうことを考えたことは一切ないと。ポール・バーグも同じようなことを申しておりました。
 しかしながら、彼らは、例えば、ポール・バーグもコーンバーグも、やがてディナックスという民間の企業、スタートアップ企業を作って、そこと関係を持って、そして、バイオテクノロジー産業と何がしかのコンタクトを持っていくわけですね。なぜそういうことをやったんですかと聞いたときに、何もそれは金もうけのためにやったわけではなくて、我々は基礎研究を追究するための拠点としての民間の企業ということを考えたんだというふうに、インタビューの中で証言をしてくれました。
 ですから、こういう現象に直面したときに、当時の大学の学長たちは、当然、これをどう考えるかということに直面せざるを得なかったと思うんですね。次のページのところには、ドナルド・ケネディの言葉を挙げておきましたけれども、我々はこれが純粋に公的なものだけではなくて、私的なものと関わっているということを考えないといけない。したがって、その関係をとても注意深くマネジメントしなければいけない。しかもまた、それぞれの関係者たちのインセンティブを考えながら、そういうマネジメントを行っていかなければいけないということを、そういうスピーチをしておられました。これは本当にそういう意味では、先ほどもちょっと不正の問題で、それを取り締まるのは一体どこですかという話が出ましたけれども、大学人の意識が問われているということなのであろうと思いますね。
 そういう意味で、次のスライドにありますように、「公益」と「私益」とつなぐものと書きましたけれども、研究を行っていく研究者たちは、自分の研究を高めることによって名声を獲得したいという私益を持っているでしょうし、大学の運営者たちは、それによって優秀な大学であるという名声を獲得したいという私益を持っているでしょう。しかしながら、それらが全体として最終的に公益につながるような環境を作っていくというのが、公的な組織の役割なのではないかなというふうに常に思っているわけです。
 少し次のところを見ていただきたいんですけれども、バンディも同じようなことを申しておりまして、現在は全米でトップに位置する大学であっても、常に競争にさらされて、その地位が変化していくような国に我々は生きている。そのような競争というのは、商業的な競争でのオープンな市場と、アカデミアでの競争というのは、実は全く同じなのだ。問題は、そのような競争的環境をアカデミアに導入するとともに、公的資金でそれを支えるという論理が必要なのだという、こういう議論をしているわけですね。
 あるいは、それに関わるようなことで、ちょっと見ていただきたいのは、その次のスライドは、バイオテクノロジーパテントをどの大学が持っているかというデータを少し入れてみたんですが、ちょっと見ていただきたいのは、赤いところはUniversity of California。カリフォルニア大学の持っているバイオの特許数というのは、実は突出しているんですね。それから、DNAベースで言うと、民間の企業よりも、実はUniversity of Californiaは多くの特許数を持っているわけです。University of Californiaというのは州立大学ですから、パブリックユニバーシティなんですが、この大学は、非常にたくさんのバイオ関係の特許を取るという戦略をずっとやってきているわけです。
 なぜそういうような結果が生まれているかというと、次のスライドを見ていただけるとそうなんですけれども、この大学は早くから特許ポリシーを作り上げてきて、そして、2003年に、実はこういうメモランダムを発表しているんです。University of Californiaに属している全ての研究者は、その研究者が行ったインベンション、発明に関しては、全て大学に開示しなければいけない。その成果というのは、その人がやった、休暇中にやったものであれ、あるいは週末にやったものであれ、研究休暇を取っているときであれ、夕方でやったものであれ、あるいは家でやったものであれ、ガレージでやったものであれ、つまり、ガレージという言葉はなかなかおもしろいんですが、シリコンバレーのスタートアップ企業のアップルもヒューレット・パッカードもそうなんですが、家のガレージで新しい技術を作って、そして、巨大な企業になっていくわけですが、そういうこと念頭に置いているんだと思いますけれども、そういった研究から生まれてきた成果も全て大学に開示しなければいけない。つまり、大学のものだと言っているわけですね。つまり、大学はそれによって特許を取るべきだと言っているわけです。
 それに比べて、スタンフォードの例でいきますと、実はこれはもっと緩くて、あらゆる研究は大学に一応報告しなければいけないけれども、その研究者が、公的な意味が高いもので、そして、みんなが使えるものにすべきだと思ったときには、それをパブリックドメインに置くという選択を与えると書いていまして、そして、何よりも大学が考えないといけないのは、新しい技術が生まれて、それが企業に素早く効率的に技術移転していくという論理が重要なのだ。それであれば、公共的な意味はちゃんと担保されるということを述べているわけですね。
 これはなかなかおもしろい対比で、すなわち、州立大学のような公益性の高い大学が研究成果を私有化しようとし、私立大学であるスタンフォードが、それを公共的なものに使おうとしているという。そういう意味では、実はアメリカの研究大学というのは、大学ごとによってそれぞれビジョンが異なり、そして、そのビジョンによって競争し合っていると考えるべきだと思います。その競争していくような知識の環境の中で、本当に新しいシーズが生まれ、研究成果が生まれ、アメリカの研究大学のレピュテーション全体を高めて、競争力を作ってきているということなのだろうと思っているわけです。
 もし我々が考えなければいけないものがあるとすれば、このようなアメリカと競争していくための新しい日本的な国家戦略は一体何か、アカデミアの国家戦略は何かということをもう一度考えるべきでしょうし、それは科学技術イノベーションという言葉が普遍化している現在における新しい物語であるべきだろうと思っております。
 そして、アメリカからもし学ぶものがあるとすれば、何よりも、多様なアクターが激しく競争しているようなアカデミアをもう一度作り出すべきであり、それによって私益の追究が公益性へとつながっていくという道筋ができるのではないかと考えております。そういう意味では、メタシステムとしての高等教育のシステムをどう考えるかということを、大学人の一人としていろいろ発言をしていきたいと考えております。
 さらに、最後にちょっと付け加えですが、先ほども見ましたように、東アジアにおける日本、日本というどこよりも早く研究大学を作り出したこの国において、もう一度競争力のあるアカデミアを生み出すような論理は一体何なのかということを常々考えております。そのような理論的なものを、微力ですけれども、作っていきたいと考えております。
 以上で私の発言は終わりにします。どうもありがとうございました。

【野依主査】 
 ありがとうございました。大変刺激的なお話を伺いました。
 それでは、引き続きまして、キヤノン株式会社の生駒俊明代表取締役副社長CTOに御発表いただきます。
 生駒副社長は、半導体エレクトロニクスが御専門でございまして、企業経営、MOT、イノベーション、産学連携等の分野に取り組んでおられます。本日は、これからの社会における科学と技術、イノベーション、大学改革等について、基礎的な部分の御発表を頂きたいと思っております。
 それでは、30分程度ということで、よろしくお願いいたします。

【生駒副社長】 
 御紹介ありがとうございました。生駒でございます。
 私は2008年に政府の審議会、全て辞任いたしました。随分長い間審議会メンバー、いろんな省庁やってまいりましたけれども、2008年に全部やめて、ただし、WPIだけはまだ引き受けておりまして、それだけが残っております。それから、パブリックの前で講演することを一切拒否してまいりまして。
 ところが、今回は、一つは、野依先生が会長であるということと、ここにいる小山君が事務局ですね。実は小山君とは、あれは大学審議会ですか、大学の将来像というのを書くときに、私もメンバーでして、私の意見を随分取り入れてくれて、オルテガ流の教養論というのを書き込んでもらったんですね。ところが、中教審、大学審議会ですかね、委員にこてんぱんにやられましてね。彼はまだ若かったですから、多分、係長ぐらいだったんですかね。課長の合田さんもやめられましたけれども、彼は賢いからあまり自分で言わないで、若い者に投げちゃって。こてんぱんにやられたんですけれども、少し中に入っていまして、あれは機能別というのをやったんでしたっけ。

【小山企画評価課長】 
 機能別分化です。

【生駒副社長】 
 機能別分化ですね。あれを勇気を持って書いてくれた。そのときに彼はすごくオルテガを勉強したんですね。私のところに来られたときも、その話が出ましたけれども。その二つのために、私は久しぶりに審議会に出ました。
 もう一つ、審議会の悪口を言いますと、審議会行政はもう破綻しているというのを最後にして、私は審議会をやめたんですけれども、昔と変わらないですね、すごく。
 それはいいとして、今日お話しするのは、実は小山君が来て、少し本質論をやってくれと。どうも今までのヒアリングは上っ面をなぞったような、スーパーフィシャルな話だったとは言いませんでしたよ、彼は。少し本質論をやってくれと。ですから、これからやりますのは、私が随分昔にいろんなところで皆さんと一緒に議論した、ここにいらっしゃる、特に文科省の人も交えて、こういう議論をさんざん大昔やりました。もう30年ぐらい前になりますか、ずっとやりましたことをもう一回思い起こして、ロートルが青臭い話をしようと思っていますので、よろしく。ここの委員の先生方も私と大体同じくらいの年齢ですから、安心して話せるんですけれども。
 まず、科学・技術・イノベーション政策の本質論という題をつけさせていただきましたが、あえて科学と技術とイノベーションの間にポチを置いております。政策を考えるときには、科学技術という一体語でやってしまうと政策を大いに間違えるというのが、私の昔からの議論で、これが今は非常に強く思っています。これは昔から言っております。
 科学技術という言葉は、科学技術庁ができてから、中ポチをつけることは行政的に禁止されていたんですね。もう科学技術庁はありませんから、安心してポチをつけてください。なぜならば、以下の議論です。
 科学は学問でありますね。自然科学でいう場合には、理学です。学問というのは、やっぱりcuriosity driven、好奇心によって研究をやる人の価値観において行われるものが学問です。これの社会との関係は、人間が人間たるゆえんである好奇心を満足させるということで社会に貢献するのが最も正しい方法であります。
 一方、技術は、技能と技術と分かれますけれども、技能は、いわゆる職人、匠の世界なんですが、これに科学が融合して技術になったんですね。この技術が、幸か不幸か、生活に役立ってしまったんですね。企業に富をもたらすものになった。不幸ではなくて幸ですね。これは20世紀の初め頃だと思います。1800年の後半、化学ですね。ドイツの企業だった化学のBASFとか、幾つかの企業がそれを示す。その後、アメリカのペンシルベニア鉄道というのが、最初にこういう研究所を持ったんですね。これは近代産業の土台になっているのは、皆さんの御承知のことです。
 ところが、科学技術という格好で仕事をしております関係上、私も科学技術振興機構の研究開発戦略センター長をやらされたときに、科学技術を定義いたしました。英語で言った方がいいですね。Technology based on science、科学に基づいた技術、それから、もう一つは、technology driven science、この二つを戦略センターで扱おうということを決めました。Technology driven scienceは二面ございます。サイエンスでドライブされたテクノロジー、すなわち、例えば、物性論なんていうのはそうですね。物性論はストレートに材料科学が続きますね。もう一つは、technology drivenは、技術が進歩したから起こるサイエンスというのがございます。これはナノ、あるいはオングストロームオーダー、原子オーダーの技術、原子オーダーの加工ができる技術が手に入ったがために、そういうようなデバイスを作って実験をして、例えば、非常にベーシックなサイエンスの原理を、現象を見つける。例えば、Quantum Hall効果という、量子抵抗ですね。これが普遍的な定数で書けるということを見つけた人がノーベル賞をもらっておりますし、最近、例えば、固体内における運動量の保存則というのは、ナノテクノロジーが出て初めて実験的に証明されたんです。こういうようなこと二つを言っております。それが科学技術という狭い意味での定義。
 したがって、科学と技術は、その本質において別のものであって、20世紀にニアミス、非常に近づいたんですね。これからの21世紀は、両者は分離していくというのが私のプレディクションでございます。
 昔、応用物理学会の巻頭言で、理学と工学は交わらない直交軸をなすという論文を書きました。一方、科学と技術は同じ平面上でマイグレーションして、時には近づき、時には分離していくというのを書きましたら、偉い応用物理の先生から挑戦を受けまして、「けしからん、おまえは」というのを応用物理学会誌に投稿されました。しかしながら、私のこの考え方は、今でも正しいと思っております。
 これはまさに20世紀中頃から、physical science and engineeringという分野が非生命体を対象とした学問及び技術として非常に発達しまして、今日の物質文明の全ての土台になっています。時間がありませんので、詳しく言いませんが、21世紀は、non live materialを対象とした学問はすたれていくだろうと。重箱の隅をつつくようなものはたくさんありますけれども、すたれていって、今後はlive materialを対象とする学問で。すなわち、学問にはライフタイムがあると言うと叱られますから、旬があると思います。日本の大学は、昔にかじりつく先生が多いものですから、この旬の時期を逃したものでも一所懸命やる、これが日本の大学の最大の問題です。
 これはファンディングシステムにあります。科研費。詳しくは申しません。分母に研究者の数をとって、分子に研究費をとって、それが同じになるように各分野ごとに配分しています。ですから、昔にかじりついている先生の方がずっとファンドを受ける確率が高くなる。これがまず間違っている。研究開発戦略センターでは、それを是正しようとして、これからの学問の領域を選定して、ここにファンドしろということを提言しました。科学技術庁関係ではやっておりますけれども、そういう方針を出しましたら、ある有名な元京都大学の先生から、猛烈にインターネット上で攻撃を受けました。私はいつでも公開討論に応じるというのを出したんですけれども、公開討論は成立しておりません。
 こういうことで、科学と技術と社会、したがって、社会との関係を考えれば、科学というのは、curiosityを満足するという人間の根源的なものにおいて一番重要なものです。これをやるのが大学なんですね。学問の形成。これは後でもう一回述べます。
 もう一つのパスは、とにかく技術という人工物を作って、この技術の役割は二つございます。一つは、今のように富の生産ですね。Industrial、産業技術。もう一つは、これは吉川先生の言葉を借りますと、modern evilを殺すと。要するに、いろいろな障害があって、公害がその一つですけれども、いろいろモダン社会において悪魔が存在するわけです。これをやっぱり殺すのがもう一つの技術で、これは経済効果があまりない。したがって、これは行政が行う、政府が行うものとして、これを社会技術と呼んだんでしょうね、きっと。多分そうだね。この二つがあるんですね。だから、そういう意味では、社会との関係が保たれるだろうと。
 ところが、多分、21世紀は、サイエンスは、バイオ、ライフサイエンスに行きます。ところが、産業は、バイオ産業というのは非常に小さい規模にとどまるであろうというのが私のプレディクション、全体として。富をもたらすもの、あるいは、modern evilを殺すものというのは、依然としてphysical science and engineeringに情報が加わったものです。IT、これはサイバー世界というのは、大きなものが広がっていますね。サイバー世界で食っているのがグーグルであり、マイクロソフト等です。
 これが実世界と融合する。これを私はJSTにいるときにはIRTと呼びました。Information and robotics technology、ロボットテクノロジーはではなく、robotics technology、広い意味ですね。今はInformation and real world technologyと呼んでいますね。これは一方ではCPSと、これはアメリカのNSFの人が言ったんで、こっちが流布されていますけれど、私がIRTと呼んだ方が先でございます。概念的には。CPSは、cyber and physical systemと呼んでいますね。これが産業の肝になります。ですから、科学と技術というのを一緒くたにして政策をやると、今はいいですけれども、近い将来、間違えるだろうと。
 おまけに、科学技術イノベーション政策という、イノベーションというものが入りました。科学技術イノベーション政策というのは、私がJSTにいたときに言い出したものでございます。ちょうど安倍政権が第1次の安倍政権のときに、施政方針演説の一丁目一番地にイノベーションを使ったというので喜んだ人たちがいます。ここにいらっしゃる方もおられます。もっとも喜んだのは経産省ですね。柘植先生が多分そのころ総合科学技術会議の委員をやっておられたと思うんですが。
 ところが、あのときには、総合科学技術会議は、このイノベーションという言葉を入れるのに大変抵抗がございました。柘植先生が一所懸命頑張っておられたんですけれども。ところが、イノベーションパイプラインとかいうへんてこりんな概念を出したんで、ちょっとこれは間違っていたんですね。今日は柘植先生がいらっしゃらないから申し上げられますけれども。
 イノベーションとは何かというのを、私、随分考えました。当時私はセンターにいるときには、自らをチーフイノベーションエバンジェリストと呼んで、いろんなところで講演をいたしました。その記録はJSTのホームページを見ていただくと、いろいろございます。
 その前に、イノベーションマントラですね。イノベーションというのはあっちこっちで使われています。社会イノベーション、何でもイノベーションという言葉をつけると、何か立派なものがあって、いいことが起こると考えられていますね。これがまず政策、行政をやるときには、よく注意しなくてはいけない。
 科学技術イノベーション総合戦略で閣議決定を受けたのは大変御同慶の至りでございます。中を読ませていただきましたけれども、何でもあり。うまいですね。やはりさすがに、ああいうのでお金を取ってくると何でも使えるという図式があそこにはよく出まして、これは大変いいことだと思いますね。ただ、本当に支出されるときには、お金を使うときには、ちゃんと効果のあるものに使っていただかないと、復興予算でもって全然違う、こんなことをやっていて叱られたことは多分あると思いますけれども、ああいうことのないように、科学技術イノベーション、イノベーションというものの定義をきちっとやらないと、政策、行政のときに間違って、効果のない予算を使うことになります。
 イノベーションの本質は、いろいろ私は調べましたけれども、こういうのが一番いいと思うんですね。「新しいアイデアを商品化し、上市し、利益を上げ、成長させる全ての営み」、これは経営学的なものから、過去の先人の非常に立派な人が一様にこのことを言っております。私はこれを採用したい。
 新しいアイデアには、もちろん、発見・発明がありますね。それで、その中で、国が支援すべきイノベーションは、さっき上山先生が私益、公益ということをおっしゃいましたけれども、国が支援すべきイノベーションは、この中で、経済発展の原動力となるものであり、創造的破壊を伴うもの、すなわち、既成価値の破壊を伴うもの。これは抵抗勢力が存在します。既成価値を壊しますから、小泉政権のときのように、抵抗勢力があります。これを死の谷と呼んだんですね。それで、これを言い換えたのが、ダーウィンの海ということで言い換えております。これは非常によい。これは構造改革を伴います。社会の変革です。これは有名なシュムペーターであります。1920年代ですね。シュムペーターという人が、もう既にこういうことを言いまして、これはイノベーションの原点です。その後、クリステンセンだとか、有名な経営学者がイノベーションについて語っておりますけれども、これをもう少しきちっと政策の中で勉強していただいて、取り入れていただきたい。
 国が支援すべきもの、すなわち、これは経済発展の原動力になるからなんですね。経済発展のものに対しては、ケインズ流のものとシュムペーター流のものがございます。経済学者を横に置いて、大変申し訳ございませんけれども。ケインズ流がはびこっておりますけれども、国の金融・財政政策で経済発展ができるかどうかというのが、現代の世界が直面した大問題でして、これはもう半分答えが出ていると思いますね。実はアベノミクスでもって、確かに株価が上がっています。それから、その前にアメリカが、FRBが3兆ドルをつぎ込んだという話が出ていますね。アメリカの借金が1,600兆円になったと。今、破綻を起こしていますね。デフォルト寸前です。これで実体経済が進んだかと言いますと、これは、私、今経営をやっていますから分かりますけど、実体経済は決してよくなっていない。非常に厳しいです。ですから、またこれはバブルが起こります。もう中国もそうですし、アメリカも起こると思います。要するに、金をつぎ込むと金融、経済は上がりますけど、実体経済が動かない。実体経済を動かすものは、イノベーションによる価値創造なんですね。実際の価値を創造する、これがイノベーションですから。だから、したがって、これは国が援助してよろしいということになるわけであります。もう一つ、学問をなぜ国がファンドしなくてはいけないか、後で申し上げます。
 こういうようなものを、実は科学技術イノベーションと私が呼びました。英語で言いますと、Innovation based on science and technologyです。科学と技術とイノベーションではない。Innovation based on science and technologyです。日本語で言いますと、科学技術の知識を「経済的な価値」、あるいは「社会的価値」に転換する全ての営みを科学技術イノベーションと呼びました、当時。今まで従来は、経営学が言っていますから、経済的な価値がメインだったんですけれども、当然、先ほど言いましたmodern evilを殺すという意味では、社会的な価値ですね。この二つに転換する全てのプロセスをイノベーションと呼びますから、これはアクター、ステークホルダーズがいろんなところにいます。
 それで、イノベーションというのは、現在価値の破壊、創造的な破壊を伴ってくるものですから、狙ってできるものではないんですね。狙ってできるものは開発です。技術開発、製品開発、これは狙ってできます。ところが、イノベーションというのは狙ってできるものではないので、確率事象だと私は呼んでいます。ですから、そのものを政策にすることは事実上不可能、自己矛盾を起こしますね。
 これは盛んに私がセンターにいるときにグループで研究しました。政策支援は、イノベーションの入口、すなわち、科学技術の新知識、すなわち基礎研究ですね。学問形成を含みます。これをファンドすることはできます。それから、出口ですね。出口、これは抵抗勢力がいっぱいいる、ダーウィンの海を泳ぎ切る、それで上市する。すなわち、リスクマネーの提供とか、そういう新しいものを受け入れる社会構造の変革、ここの部分は政策課題であります。
 ちょっと参考文献に、科学技術イノベーションのStep & Loopモデルを出しました。後ろの方にございます。これは実はブランズコムという立派な方です。この方たちが、実はNISTの依頼、DOCの依頼によって、Between Invention and Innovationという報告書を出しております。これは御存じだと思います。ATPというプログラムがございましたね。ATPが民主党によってつぶされそうになったときに、NISTの長官のブランズコムのグループに頼んで、そういう報告書で、イノベーションをどうして起こさせるか、そのときのファンドがどうしたらいいかということを書いたときに、このダーウィンの海の右側を書いたのがブランズコムで、その左側に、アイデアの海というパラダイス、ハワイのヤシの実、これをつけたのは私でございます。ちょっとモディフィケーション。
 これは、Step & Loopモデルというのは、このイノベーションが起こるまでには、科学的な知識、発見がありまして、発明、概念の証明、proof of conceptがありまして、技術の有用性のデモ、プロトタイプ云々がありまして、それから製品開発、マーケット投入して、利益を上げて成長するという、事業化ですね。これを、こういうステップなんですけど、ここがリニアモデルと違いまして、その間にいろいろループが書いてありますけれども、時にはダーウィンの海に落っこちてしまう。このダーウィンの海に落っこちたものを、どうやって右側のイノベーション、これは市場ですけど、泳ぎ渡らせるか。この中にはシャークがいますし、いろんなものがいます。ここが進化論的なエコシステムになるわけです。こういう図を書いて、科学技術イノベーションというのを私は説明しておりまして、国が援助できるのは、このアイデアの海をたくさん作ることと、ダーウィンの海をうまく泳ぎ渡って市場に到達する。これは政府調達が一つの手段です。詳しいことは述べませんが。こういうようなことをやりました。
 すなわち、基礎研究の更なる振興とイノベーションの「場」を作る。イノベーションの場というのを定義いたしました。特にこれをグローバルイノベーションエコシステムと呼びまして、ここで一体何を政府がやって、何をやってはいけないかということを定義しております。これはぜひ御覧いただきたい。
 ここでいう科学技術イノベーションの例というのは、トランジスターからLSI、コンピュータに行くのは、極めて大きなものですね。それから、アナログからデジタルの変換というもの。これは大き過ぎます。これはプレーヤーがたくさんいて。もう一つ、サイザブルなのが、液晶のディスプレー。これは1800、19世紀に植物学者がこの液晶というのを見つけまして、1940年ぐらいにハイルマイヤーというRCAの人がこれをディスプレーに使うということを言い出しまして、これを実際にディスプレーにしたのがシャープですね。今はシャープはもう没落して、サムスン、LGというのが勝ち組です。これがイノベーションの特徴ですね。イノベーションを担った者と利益を享有する者は違うんです。ですから、こういうものは非常に長期スパンで公的資金でもって援助する、あるいは、最後のところはいいんですけれども、公的資金で援助すべきものであるということがラショナライズされます。
 iPhoneというのは、非常にすぐれたイノベーションです。これは技術はほとんどなくて、アイデアだけで勝負できるイノベーション。しかも、あれはウォークマンをやっつけようと思って作ったんですね。最初のiTuneというのは。このストーリーは大変意味がありますけど、これは国が援助してはいけないイノベーションですね。なぜかというと、経済発展の原動力になりますか。市場におけるリプレースです、これは。ノキアがつぶれまして、アップルが勝つだけですね。市場を少しは拡張します。少し。これは国がやっちゃいけないものです。こういう区別をしてファンディングしないと、公益性というものが失われてしまう。
 次に、大学の本質。今度は大学論に行きます。ここも非常に青臭い議論をさせていただきたい。大学の本質はアカデミック・フリーダムにある。アカデミック・フリーダムという言葉を聞かなくなって随分になりますね。ほとんど私ひとりが一所懸命まだ言ってます。これは私がまだ若い頃、大学の使命というのは何だろうということを一所懸命考えました。そこで得た結論が、大学というものの使命は、「将来価値の創出」であると結論しました。社会契約説と書いていますけれども、これはどういうことかと言いますと、大学というのは、1000年以上の存続の歴史がございます。しかも、政治形態がどんなに変わっても、共産主義であっても、資本主義、もちろん民主主義であっても、大学というのが非常に重んじられてきた。なぜだろうと考えました。どんな政治形態、価値が変わっても、大学というのは存続し続けたんですね。これがなぜだろうというのを考えたわけです。
 大学を葬り去ったのが、一つは毛沢東。それから、もう一つはポルポトだと思います。この大学の本質というのが失われつつあるのが、今の大学、日本の大学ではないかと心配しております。大学の法人化によって。大学の法人化は、制度を作った人たちと現場で起こっていることとの乖(かい)離がものすごくある。この前、前の遠山文科大臣と話をしまして、遠山さんが盛んに嘆いておりましたね。文科省のやる意図と現場の受けとめ方が余りにも違うんだということで。大学の法人化というのは、そういうことであります。
 大学の本質は、学問をすることなんです。学問をするために、新しいアカデミック・フリーダムが保証されねばならない。これが、社会契約説と書きました。
社会は、大学をそういう格好で置いておくと、将来の発展に非常に重要な役割を果たす。特に学生集団がですね。そういうことを過去の歴史から学んで、社会が変革するときには、大学が極めて大きな役割を果たしてきたという過去の歴史から、暗々のうちに社会がそれを認めて、暗黙の社会契約説があるんだというのが、私の新アカデミック・フリーダムであります。これについては、参考文献の「大学教授職の再定義」という小冊子を配っておりますが、そこに書いております。
 学問をするということは、一つは、学問のフロンティアを拡大すること、すなわち、最先端の研究をやることですね。しかしながら、大学が最先端の研究をやる、私はそれをやっていたわけですけれども、非常にハンディキャップがある。研究する人が学生です。それから、教育という極めて重い任務を持っている。そこで外部の研究機関と対等に競争して、フロンティアで研究して、コンピートすることは非常に難しい。国研の役割、特に理研という非常にある意味ミッションレスの部分の方がずっと強いわけですね。しかも、もうドクターを持った人が行ってますからね。産総研はちょっと違うかと思います。産総研は非常にミッションオリエンテッドだと思うんですけれども、かなり自由な――野間口先生の前の吉川先生がいい理論を作りまして、本格研究と偽の研究というんですか。そうじゃないですね。本格研究と、もう一つは知りませんけど。そういうので基礎研究を擁護したわけですけれども。学問のフロンティアの拡大が大学の一つの使命。
 もっと非常に大事なのは、学問を体系化していくものです。これが今の大学で行われているとは思っておりません。これは欧米の方がいいですね。日本の大学は学問を体系化する、要するに、教科書を作るということですね。新しい教科書を。体系化に組み入れられないようなフロンティアの研究成果というのは、大学としては非常に中途半端である。
 それから、もう一つは、学問の伝達、時空間の伝達です。一つは教育。これは教育ですね。それから、普及、これは啓蒙(もう)活動と言った方が分かりやすいんですが、今、啓蒙(もう)という言葉を使うのはよくないですから、普及という言葉。それから、保存、これは時間的な伝達。これが大学の本質の使命であります。
 それで、教育は二面性があります。専門教育と教養教育と。このアカデミック・フリーダムというのがなぜ必要かというのは、簡単に言いますと、将来価値の創出のために既存の価値が介入してはいけない。既存の価値で通せば、新しい価値が生まれてこないわけですから、将来価値の創出のために、大学はフリーダムを持たなくてはいけない。これがアカデミック・フリーダムであります。これはドイツの大学で始まったと私は理解しているんですが、これは宗派の自由です。宗教ではなく、宗派。キリスト教の中での宗派の自由から。これは私講師というのを設けて、国家からお金をもらわない先生方を雇って、アカデミック・フリーダムを保証した。
 イタリアは、あまりアカデミック・フリーダムというのは言いませんね。なぜか私は分かりませんけど、ボローニア大学へ言ったときにインスパイアしました。それは、ボローニア大学の講堂には、全部当時の大名、領主の紋章が全部飾ってある。ということは何かというと、ボローニア大学に行くようなのは、そういう人たちの子供しか行かなかったんです。だから、もともと施政権を持った人たちの子弟しか行かなかったんですね。だから、多分、アカデミック・フリーダムの必要はなかったのではないか。これは推測です。
 イギリスは非常に強いですね、アカデミック・フリーダム。サッチャーがなくしたと言いますけれども、今でもケンブリッジ、オックスフォードは持っています。どういうことかと言いますと、あそこの教授になりますと、一食ただで食えるんですね。それから、住居が保証される。今でもあるそうですよ、これ。今というのは3年ぐらい前ですけどね。首になっても暮らしていけるというものですね。
 アメリカのアカデミック・フリーダムは、労働組合的な色彩が非常に強いです。日本に若干似ている。
 日本はイデオロギーが先行しちゃったんですね。これは立花さんというジャーナリストがいますね。あの人が『天皇と東大』という厚い本を書いて、あの中に非常に詳しく書いてあります。イデオロギー論争が。日本はイデオロギーがメインだったので、イデオロギーがなくなった途端に、アカデミック・フリーダムを、東大の法学部の先生すら言わなくなってしまった。
 アカデミック・フリーダムを担保するものが、実はテニュア制なんです。そこで、私が大学組織のゴルフボールモデルというのを作りました。参考資料の最後です。これはあまり読んだことがある方はいないと思いますけれども。このコアの部分にアカデミック・フリーダム、すなわち、学問をするというものを置いて、ここはテニュア教員による教育と研究をやってください。その周りに社会との連携の部分を置いてくださいと。社会との連携は二つあります。一つは学生の教育、これは当然、社会に対する最大の貢献ですね。学生を採用して、学生を就職させるという。社会から受け入れて、付加価値をつけて出すという部分。これは上の部分ですね。それから、下の部分が、今いろいろ言われています産学共同、技術移転、研究成果の普及というものですね。これはやっぱりシェルの部分にすべきなんです。大学の本質をここに置いては、大学というアカデミアが失われてしまう。これを、私、非常に恐れております。
 あくまでも産学連携は、産学連携のための連携をやってはいけません。大学が生み出した学問の成果を社会に送出するために置くものであって、もともとあるものは、学問の生成、創出、すなわち、フロンティアの研究であり、その体系化であるべきなんですね。
 立命館大学の村上先生は、この第1回で、いろいろ立命館大学の試みがありましたね。国が、今度はエネルギーだと言うと、大学がエネルギー研究所を作りますというような大学というのはだめです。本当にコアを持っていますか。
 実は、私、21世紀COEの審査委員、評価委員をやりましたけれども、私学の幾つかをファンドしました。確かに、1人いい先生がいるところですね。2人いい先生がいる。成果は出ませんでした、残念ながら。幾つかの問題が見えました。そこを見誤ると、大学を殺してしまうことになる。
 ついでに言いますと、コアの部分がテニュア教授、テニュアトラックの教員、シェルの部分に専門職です。これは、こういうのが必要です。それから、鼎(かなえ)の部分で、下の鼎(かなえ)、支える部分は、普通の企業のもので結構です。民間的な手法。この真ん中の集団が、日本はないんですよ。孫福先生という方がいらっしゃいましたね。亡くなられましたよね。孫福先生、慶應大学。孫福先生は、この役を担っておられたと聞いております。これを作ることは、日本の大学の焦眉の急であります。
 最後に、教養無き専門家集団。大学をそのほかの高等教育と区別するものは何ですかというのは、かねがねの疑問です。昔は研究だったんですね。大学設置審議会では、研究施設がどのくらいあって、研究費がどのくらいある、研究を支える図書が何冊あるというのをやっていましたけれど、どうも今ではそうではない。それで、私の提案では、大学の根幹は教養教育にあると。教養教育をやる教員というのは、教養を持っていないとできませんよね。大学の不正が起こっている最大の問題は、教養無き研究者だと思います。研究能力だけで大学でハイアリングすることによって、こういう不正が起こってくるんだと私は思っております。幾らここに書いてあるようなコンプライアンス、企業でやるコンプライアンスをやるとか、幾つか書いてありますね。最初の三つ。これをやったってだめですよ、こんなものは。大学の本質はそんなところにありません。こんなのをやれば、大学を殺します。
 ですから、テニュアというのをきちっとやって、テニュアの中に教養、教育の能力と教養と研究、この三つを審査すべきなんです。アメリカはやっています。リファレンスをやって。教養の部分もちゃんとやっています。それをやって、一切こういうルール無しにやらせていただかないと、大学はつぶれます。
 もちろん、その周りにいる人ですね。これは、最近はアメリカでもテニュアでないプロフェッサーがたくさんいます。研究プロフェッサーが。研究、あるプロジェクトをやって出ていく人たちですね。これは大学のコアを担っておりません。ファカルティメンバー、本来はならないんですけど、最近、下の方の大学はファカルティメンバーにしていますけれどもね。これを区別しないと、大学は死にます。教養教育というのを重要視して、教養教育をやることこそ大学であるというふうに設置基準を変えてほしい。教養教育がなくなりましたね。大学の大綱化によって。あれも遠山さんがすごく嘆いていましたね。あれも文科省の意図と随分違うと。
 なぜかと言いますと、教養をリベラルアーツの延長、ギリシャ時代ですか、ローマ時代ですか、あの辺で考えている人たちがまだ大半。で、小山君に書いてもらったのは、それを変えろと書いたんですけれども、それを信奉する教育学者から総スカンを食いましてね。それで、現代教養とは何かということを、私は2年間、いろんな人に集まってもらって、朝議論をやりました。結論は出ませんでしたけれども、私自身が個人的にまとめたものがそれでして、現代の教養とは何かというと、「よりよく生きるための理念の総合」、これはオルテガの拝借です。専門と教養がどう違うかと、オルテガが定義しております。
 例えば、量子力学で言いますと、量子力学を使って分子構造からどういうエネルギー準位が出てくるかという計算をするのは専門家、量子力学がもたらす教養とは何か。例えば、二律背反ですね。粒子性と波動性というのは同時に存在し得るんだと。ある一つのことを決めると、あるもう一つのことが決まらないというのがあるよと。蓋然性という概念ですね。確率論的な。そういうようなものを、現在に生きる理念として持つということなんですね。これが教養です。
 現代の教養として、私が五つ考えたのが、ここにございます科学技術に基づく物質文明的世界観であると。これはもうよくお分かり、私ども、一番得意です。
 もう一つは、これは、私、専門ではありませんが、遺伝子解明と、その操作ができることによって惹起(じゃっき)された死生観と倫理の揺らぎとあえて言います。倫理観がすごく揺らいでいます。で、今、多分、倫理何とか委員会で一所懸命苦労されていると思いますね、これ。
 それから、もう一つ、私が個人で分からないのは、宗教と民族の確執の文明史観です。これはイデオロギー論争が終わって、冷戦が終わったときに、世界は平和になると私は思いました。ところが、逆に局地戦がものすごく起こった。バルカン半島がいい例ですね。今は明らかにイスラムの一部とクリスチャニティがけんかしている。これで戦争がひどくなっていますよね。民族間闘争がものすごくあります。これは日本人にとっては非常に分からないところで、これを誰かが読み解いてほしいんですよ。これをやっぱり教養として身に付けなければいけないだろうと。
 それから、もう一つ、4番目、ちょっと変わっています。人間同士及び自然と人間との関わり方に関する見解。これはいわゆる社会科学と人文科学なんですけれども、人間と人間の関わりと人間と自然の関わりを一つの統一理論でできるんじゃないかというのが、私のチャレンジであります。すなわち、環境問題と社会科学とは一緒にならなくてはいけないんだろうと思っていまして、こういうものが現代の教養の4項目。
 それに、当然、考える力、すなわち、哲学ですね。これを現代教養の五つの科目として、この教材づくりをやりたいんです。私がリタイアしたらやろうと思っているんですけど。生きていればの話ですけどね。
 これが私の思いでございまして、冒頭に申し上げましたが、ロートルの青臭い議論でございます。
【野依主査】  大変本質的なお話をありがとうございました。
 それでは、質疑、意見交換をしたいと思いますが、お二方とも表現の仕方は違えども、共通しているところがあったのではないかと思います。
 生駒先生がおっしゃったように、とにかく専門、教養ともに、本当に立派な人物を大学が集めてくるということ、それが大変大事だと思っておりますけれども、その数、質と量ともに足りないということが一点あると思います。
 それから、私は「私」と「公」を分けることができないと思います。幾ら公的な機関に勤めていても、仕事をするのは「私」というものです。両立させていかなければいけない。
 それから、上山先生がスタンフォードないしUCのように、大変立派な大学でのことを例に挙げられました。それが成り立つのは、一つ一つには、アメリカですから、契約で明確に成り立っているということ、それから、もう一つは、教員たちから見て、大学のマネジメントに対する信頼があると感じます。マネジメントに沿っていけば、自分にとっても大変いいことがあり、大学もそれによって繁栄すると、この信頼関係があるからではないでしょうか。日本は、様々な理由によって、人材が不足しているということと、そして大学のマネジメントに対する信頼感が極めて乏しいというところに、多くの問題の根源があるように私は思っております。
 それでは、若干時間がございますので、御質問ございましたら。では、國井委員、どうぞ。

【國井委員】 
 お話、ありがとうございました。
 ちょっとお伺いしたいんですけれど、今の日本の大学は、タコツボ化して、つまり、過度に専門化して統合化が弱い。イノベーションは技術の統合の中で起こる、この統合するというところが極めて重要になっていると思うんですけれど、それについてはお二方からそれほどコメントがなかったんですけれど、そこは重要ではないでしょうか。

【上山教授】 
 お答えになるかどうか分からないんですけど、今、僕は生駒先生のお話を聞いて、非常にもう感銘を受けたんですけれども、若干の違いを感じました。僕はアメリカという、特にイノベーションの活動が非常に盛んになっている場としてのアメリカという国のことを、私自身は研究の中で考えざるを得なくなりました。自分自身の経験で言うと、実はアメリカにもいましたし、イギリスにもいたんですが、アメリカだけで一番違和感があるというか、要するに、ユニークだ、ここだけが違うという感覚を、アメリカにいる間に常に感じざるを得なかったんですね。イギリスにいるときも、やっぱり我々、伝統社会に生きているので、そこそこ似たような感覚で仕事をしているんですが、アメリカだけはとても変わっているという印象があるんです。
 そして、なぜアメリカで科学研究の中からイノベーションが生まれるのかと考えたときに、結局、垣根を軽々と越えていく、基礎研究とか応用研究というものを、同じ知性が、もう本当に軽々と超えていくような知性が生まれるということだと思いました。そしてそれがアメリカではなぜ可能だったのか、と常に考えることがあったんですね。
 それは一つは、生駒先生が今おっしゃったcuriosityということなんだと思いますが、好奇心が非常に盛んなんですね。それはもう科学を進める原動力でもあるとともに、ここは少し生駒先生と感覚が違うのかもしれませんが、僕自身はアメリカをずっと見たときに、あの国には実はテクノロジーそのものにもう激しいcuriosityがある。我々が科学研究で素朴に、例えば、世界の真理を知りたいとか、叡智(えいち)を知りたいというときに持っているcuriosityと、それをそのまま実はテクノロジーにも持っているという、その感覚が僕にはとても強かったんです。
 例えば、彼らはもうどんな技術が生まれて、どういう形でこれを実現できるかということそのものへの、その追究の仕方が、科学と追究することととても似ているということです。つまり、純粋科学研究とテクノロジーの追究にそんなに垣根の差が感覚的にないのではないかということです。それは実は生駒先生がさっきもおっしゃった教養ということとも関わってくると思うんですが。知識を探求するということそのものが実は教養で、だから、アメリカの科学者は本当に本をたくさん読むんですね。文学も読むし、哲学も読むし。彼らにとっては、恐らく自然の真理を探究するということも、技術を探究するということも、あるいは社会の通念を探究して、あるいは人間性を探究するということも、恐らく根源的なところでそんなに違いがないというような教育をかなり受けていて、そのことが日本の大学に欠けているんじゃないかという気がずっとしているんです。もしそういうものを取り戻すものが新たな教養教育というものであれば、我々大学人はもう一度そこについて考えていくべきだというふうに常に思っておりますね。

【野依主査】 
 ありがとうございました。
 生駒先生、定義の問題だと思いますが、科学とは、既に自然界にあるもので分からないことを追究していくことであり、技術は、まだないものをつくっていくものと思います。しかし、両者を一体として扱わなければいけない。

【生駒副社長】 
 テクノロジーがcuriosity drivenでないとは言ってないんですよ。

【上山教授】 
 すいません。

【生駒副社長】 
 ところが、もう一つ言いますと、基礎研究、応用研究、技術開発、製品開発、市場、こういう図式なんですよ。それで、応用研究まではforward lookingと私は言っています。前を見ながら進んでいって、ここまではcuriosity drivenでいいんです。だから、大学の先生は、curiosity drivenで応用研究をやれるんです。ところが、開発になりますと、僕はback castingと呼んでいます。こういうものを開発したいと言って、そこからさかのぼってきて、何をやらなくちゃいけないかを考える。これは企業の開発なんですよ。私は両方やっていますから良く分かります。企業では、今、両方やっている部分があります。うちのフロンティア研究所というのはforward lookingでやりなさいと。今度は、応用研究が終わってから、本当にものにしようと思って、それこそイノベーション最後のフェーズは、back castingをやらなくちゃいけないんですよ。それで、その機能は大学にはないから、大学の先生がcuriosity drivenで応用をやるのはたくさんいます。ですから、テクノロジーがcuriosity drivenじゃないとは全然言ってないんですね。ただ、forward loadingの応用研究では役に立たない技術がほとんどなんですよ。

【野依主査】 
 生駒先生、その前向きと後ろ向きのすり合わせは、会社ではどういうところでやっていらっしゃるんですか。メカニズムは。

【生駒副社長】  メカニズムは、幾つかゲートを設けているんです。これ、企業秘密になりますけどね。R&Dのフェーズと、いわゆるインキュベーションのフェーズと、事業化のフェーズ、三層フェーズで、それぞれのフェーズへ行くときに、ゲートを設けて、審議会をやります。審議会でクリアしなくちゃいけない事項が全部書き出してあって、そこをクリアしたときに、インキュベーションフェーズでback castingするんです。これ、ノウハウですから、これ以上は言えませんけど。

【野依主査】 
 ありがとうございます。
 野間口主査代理。

【野間口主査代理】 
 両先生のお話、大変感銘を受けました。ほとんど納得しているのですけど、curiosityという普通の好奇心という言葉を、基礎研究を推進する動機として発信してしまうと、世の中に若干、間違った伝わり方がするのではないかと思いました。日本の産業の近代化は江戸時代から始まったと思いますが、日本国民のいいところは、いろいろな階層で好奇心が働いて物事が動いてきた面があるわけですね。そういう観点から、日本の各企業が、今はいろいろと言われていますけれども、キャッチアップして先頭グループに入ったのは、高いレベルの研究者やエンジニアだけでなくて、欧米で言えば、本当に命令でしか動かない階層までがいろんな発信をしてくれた、アイデアを出してくれたことがとても大きいと思います。トヨタ自動車の例などを見ても、日本の特長だと思います。だから、その辺はぜひ分かりやすく発信していただきたいなと思いました。先ほど生駒先生が、テクノロジーにも禁じ手はあるんだとおっしゃいましたが、まさに私もそのとおりだと思います。
 上山先生のお話は、アメリカ社会が内在的に持っている特質みたいなものを非常に分かりやすく説明いただいて、なるほどなと思いました。アメリカの企業や大学といろいろつき合って、アメリカに研究所を作ったりして、アメリカ人の研究者の行動様式を見ていますと、なるほどと、腑(ふ)に落ちました。本当にありがとうございました。また、もう少し詳しく別の場でも聞きたいなと思いました。
 それから、生駒先生のお話は、最後の5項目など本当にそのとおりだなと思いますが、特に5項目の中の3番目の文明史観は、日本人は自分のことではないと感じているかもしれませんが、日本こそ、世界に対して、こういう世界の見方が欠けているということを発信し、気づかせて、それを乗り越えるソリューションをみんなで考えようというように持っていく資格のある立ち位置ではないかと思います。ここに書いておられるということは、何か具体的なプランが既にあって書いておられるのではないかと思いますが、どうでしょうか。

【生駒副社長】 
 残念ながら、ありません。勉強している最中です。

【野間口主査代理】 
 ぜひ。

【生駒副社長】 
 だけど、一番日本人が不得手のところですよね。ハンチントンの『文明の衝突』というのが一つの示唆なんですが、あそこは残念ながら、日本のことはほとんど書いてないんですよ。日本人が見た、世界規模で見た宗教闘争、民族闘争というのは、ものすごく理解できないですね。

【野依主査】 
 時間が押し迫っておりますけれども、せっかくの機会ですので、平野委員、どうぞ。

【平野委員】 
 私には欠けているところですが、今、野間口委員が最後におっしゃった、宗教と民族の問題というのは、これは特にヨーロッパの大学、古い大学を訪ねますと、常にいろんな背景で、これがある意味モチベーションにもなり、もう一つは、自分の位置付けをきちっと定めるもとになっている。これが日本では非常に難しいところだなと思っておりまして、教養を、この宗教が基になる教養ではないんですが、どのように幼少時代から教養を育てていくかというのが必要と思っております。

【野依主査】 
 それでは最後に、大垣委員、どうぞ。

【大垣委員】 
 上山先生の御発表の中に、カリフォルニア大学とスタンフォード大学の比較がありまして、知財の管理に関してですね。カリフォルニア大学は、一時期、州政府の予算が少なくて、給料遅配のような議論があったような、要するに、公立の大学ですね。そこでちょっと思い至ったんですが、日本の大学は、慶應大学などは別にしても、国家が設立した大学としての意識が非常に強いですよね。そういう意識が日本の大学のいろんな行動様式を支配しているというようなことはないでしょうか。要するに、自由な資金に基づく、自由な設立の歴史があるところと、そうでないところの違いというような感じは。そんなことはないですか。

【上山教授】 
 私は、日本の国立大学は、もちろん国が作ったものですけれども、この大きな弊害は、大学人に思考停止をさせてしまったということだと思います。つまり、研究費を取る必要もない、自らの大学のビジョンを作る必要もない、大学に属しているそれぞれの研究者が何をやっているかを把握する必要もない。つまり、大学というのが一つの組織として動いていないようにしてしまったという弊害ではないでしょうか。公的資金を入れて大学というものを育てるということはよかったと思いますけれども、それは日本の歴史の中では非常にいい選択をしたと思いますが、その結果として、本来であれば、我々大学人がこういう発言をして、そして、大学がなぜ社会でサポートされなければいけないのかという論理を作らなければいけないのに、それをほとんどやってこなかった。何もする必要がなかったという、この環境を作ってしまったのが問題だと思うんですね。
 カリフォルニア大学の場合は、パブリックサービスという意識がありますから、州の人たちに対するサービスを行う必要があるとありますけれども、しかし、今は本当にもう財政的に危機に陥っている、常に考えなければいけなくなっているということだと思いますね。

【野依主査】 
 生駒先生、どうぞ。

【生駒副社長】 
 今の特許の件は、我々、会社として、ハーバード大学とも非常に大々的な共同開発をやって、あそこに研究所を作ったんですよ。そうしますと、やっぱり大学としてどうかなと逆に思うのは、オーバーヘッド75%取るんですよ。75%。それで、特許の使用量、バックグラウンド特許と言いまして、我々が一緒に使う特許じゃないですよ。そこの組織で、ウェルマンインスティテュートという。特許を、まずはベーシック特許で前払い幾らしろというわけですよ。大学でパートナーというのが横にいて、弁護士がついていて、あれはやり過ぎですよ、幾ら何でも。あんなえげつないことをやっちゃいけません。大学の使命を逸脱してます。
【野依主査】 
 ありがとうございました。
 今日は生駒副社長、上山教授、大変お忙しい方においでいただきまして、また、大変本質的なお話を伺えたと思います。ありがとうございました。
 それでは、今日は文部科学省の高官も御出席いただいておりますし、人事異動もありましたので御紹介いただき、せっかくの機会ですので、もし短い質問でよろしければ、御議論いただければと思います。

【山中事務次官】 
 文部科学事務次官になりました山中でございます。よろしくお願い申し上げます。
 私は質問でなくて、実は明日からOECDの会議があって、イスタンブールに行くことになっております。そこのテーマが、最近、大学に対して世界中で要求が強いということでございます。つまり、今の現在の社会の中で活躍できるような人材というのが大学であまり出てこないということでございます。それをどういうふうにつなげるんだというのが議題の会議に出ることになっております。お話を伺いながら、どうつなげようかと思いながらも、しかし、これはちょっとつながらないなと思いながらも、大変有益なお話で、次の大学、あるいはscienceの政策に生かしていきたいと思っています。ありがとうございました。

【野依主査】 
 板東文部科学審議官、いかがですか。

【板東文部科学審議官】 
 文部科学審議官の板東でございます。
 それでは、短い質問をさせていただきます。生駒先生が先ほど、国立大学の法人化に関して、理念はともかく現実は、というお話をされました。何が一番問題だと思っておられるかをずばり教えていただければありがたいと思います。

【生駒副社長】 
 私も具体的に見ているわけじゃなくて、傍観しているだけなんですけど、一つは、やっぱり大学のアドミニストレーションは金集めばっかりやっているということですよ。そこを第1プライオリティにしているということ。
 それから、もう一つは、アドミニストレーションがすごくがっちりとガバナンスを効かせるか、マネジメントしようとするために、若くて有能な一番研究ができる先生方が全部そっちに使われちゃって、研究をやる時間というのは5時以降なんですよ。教育もうるさくなっているでしょう。あれでは、研究なんかできませんし、世界に伍(ご)していけない。雑用を一切なくすべきなんですよ。ところが、雑用がうんと増えている。これは私は、移行する前に一橋講堂のところで某大学ががっちりしたアドミニを作られて、非常に自慢げに言っていたのに対して、ちょっと揶揄(やゆ)を入れたんですけど、まさにそれが起こっているんですね。

【野依主査】 
 そうです。私も事務的な会議は全廃しなければいけないと思っております。私が言うのは、これは国民の願いだと思います。国民が大学の教員に会議をしろと、求めてないと思います。教育と研究に90%の時間を割いてほしい。

【生駒副社長】 
 そうです。

【野依主査】 
 では、ほかに。

【小山企画評価課長】 
 では、今夏の人事異動に関しまして、お名前だけ御報告させていただきます。大臣官房の川上政策評価審議官、着任でございます。

【川上政策評価審議官】 
 よろしくお願いします。

【小山企画評価課長】 
 生涯学習政策局の清木局長、着任でございます。

【清木局長】 
 どうぞよろしくお願いします。

【小山企画評価課長】 
 高等教育局の中岡審議官、着任でございます。

【中岡審議官】 
 よろしくお願いします。

【小山企画評価課長】 
 次に、課長級でございますが、高等教育局の里見大学振興課長、着任でございます。
 本日からでございますが、研究振興局の合田学術研究助成課長、着任でございます。

【合田学術研究助成課長】 
 よろしくお願いします。

【小山企画評価課長】 
 以上、前回以降の人事異動でございます。

【野依主査】 
 今日はこれだけの高官に集まっていただいて、お二人の有意義なお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。
 それでは、最後に日程のことをよろしくお願いします。

【小山企画評価課長】 
 次回の会合は日程調整の上、改めて御案内させていただきます。
 また、本日の貴重な御議論の議事録は、先生方にお送りさせていただきまして、確認の上、公表の手続をとりたいと存じます。ありがとうございます。

【野依主査】 
 それでは、以上で科学技術・学術審議会第3回基本計画推進委員会を閉会いたします。ありがとうございました。

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局企画評価課

(科学技術・学術政策局企画評価課)