情報科学技術分野における当面の研究開発の推進に関する考え方について

平成13年8月30日
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
情報科学技術委員会

1.基本的な考え方

 第2期科学技術基本計画及び「e-Japan」重点計画の着実な遂行に向け、「平成14年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」(平成13年7月11日総合科学技術会議決定)の3つの柱(※)に基づき、先端的な情報科学技術の研究開発及び研究開発に関する情報化を推進する。

(※)

● ネットワークがすみずみまで行き渡った社会への対応と世界市場の創造に向けた「高速・高信頼情報通信システム」の構築

● 次世代のブレークスルー、新産業の種となる情報通信技術

● 研究開発基盤技術

2.具体的な推進施策の考え方

2.1 ネットワークがすみずみまで行き渡った社会への対応と世界市場の創造に向けた「高速・高信頼情報通信システム」の構築

(1)要素技術例

  • 数十メガビット/秒級の情報を光ネットワークを介して高品質に交換・活用でき、高度インターネットを支える超高速モバイルインターネットシステムを実現する技術
  • 高性能な携帯情報端末、高速のネットワーク等を実現する高性能・低消費電力デバイス技術
  • 必要な情報をネットワークから迅速に検索するなどの利便性技術、不正な接続の排除、情報の秘密の保持、障害発生時の迅速な復旧などの、安全性・信頼性向上技術
  • ソフトウェアの信頼性・生産性を向上させる技術、動画などの情報内容(コンテンツ)の制作・流通を支援する技術

(2)推進施策の考え方

 情報通信分野の研究のうち、新技術の創生につながるものについて、萌芽的段階から集中的投資を行いその育成を図るとともに、得られた成果の実用化、企業化を目指すことで積極的な社会還元を図る。具体的には以下の施策を中心に推進する。

○ 大学等の研究ポテンシャルを活用し、研究室レベルの研究のうち実用化が期待できる技術(モバイル、光、デバイス技術が核)について、プロジェクト研究を推進する。

2.2 次世代のブレークスルー、新産業の種となる情報通信技術

(1)要素技術例

  • 機械が人間に合わせてコミュニケーションできる次世代ヒューマンインターフェース技術
  • 量子工学技術、ナノ技術等の新しい原理・技術を用いた次世代情報通信技術
  • ITS(高度道路交通システム)など、他分野との連携の下で行う研究開発

(2)推進施策の考え方

 ライフサイエンス、ナノテクノロジー、環境、宇宙等各分野と情報通信技術との融合研究を加速するとともに、競争的資金等を活用した基礎的研究を推進する。具体的には以下の施策を中心に推進する。

○ バイオインフォマティクス推進センターの充実、地球シミュレータ計画の推進、i-spaceの構築等の大規模プロジェクトを引き続き推進するとともに、科学研究費補助金を活用した情報学研究や戦略的基礎研究推進事業における量子効果等を活用した新たな高速大容量コンピューティング技術研究等の着実な実施を図る。

○ タンパク質構造・機能研究分野、ナノテクノロジー分野等のシミュレーション研究開発を推進するとともに、競争的資金を活用した基礎的研究の充実・拡充を図る。

2.3 研究開発基盤技術

(1)要素技術例

  • 研究所・大学のスーパーコンピュータの間を高速回線で結び、遠隔地で共同研究が行えるネットワーク
  • 分子構造など複雑な自然現象のシミュレーション等を行う計算科学

(2)推進施策の考え方

 ITBL、スーパーSINETを中核に、ネットワークの高度化、連成シミュレーション、スパコンの遠隔操作、大容量データ共有等、高度アプリケーションを開発し、新しい研究スタイルや融合領域創生の環境を構築するとともに、研究用デジタルコンテンツ基盤の整備、データベースの整備・高度化、宇宙開発等大規模研究開発のIT化を推進する。具体的には以下の施策を中心に推進する。

○ IT活用による「eサイエンスの実現」
 ITBL、スーパーSINETを効率的に活用するためのグリッドコンピューティング、ナノ・ライフ等戦略的融合分野における連成シミュレーション、可視化技術等の研究開発を推進するとともに、データベースの整備・高度化等その充実を図る。

○ 科学技術計算用基盤ソフトウェアの開発
 欧米に対して大きく遅れていると言われている科学技術計算用基盤ソフトウェアについて、我が国の基礎的レベルにあるものを、新技術分野の国際競争力確保に不可欠な基盤ソフトウェアとなるよう戦略的開発に取組む。

○ 研究情報ネットワークの整理・統合
 IMnet、ITBL用高速IMnet、SINET及びスーパーSINETといった研究情報ネットワークを我が国の研究活動を支える基幹的な情報インフラとなるよう統合し再構築する。

○ 超高速専用コンピュータの開発
 高精度ゲノム創薬に資する超高速専用コンピュータ(プロテインシミュレータ)の開発を推進する。

○ 研究用デジタルコンテンツ基盤の整備
 電子ジャーナルを中心とする内外の研究情報の電子図書館システムを開発するとともに、電子ジャーナル等の海外情報の体系的導入及び日本発の主要論文の全デジタル化を推進する。

○ 宇宙開発等の大規模研究開発のIT化の推進
 大規模研究開発の典型である宇宙開発におけるIT化を進め、開発当初より各要素間の整合性をとりながら目標を効率よく達成する開発支援システム等を構築する。

情報科学技術委員会名簿

(委員)

  浅野 正一郎 国立情報学研究所情報基盤研究系研究主幹
  安西 祐一郎 慶應義塾大学長
  宇津野 宏二 科学技術振興事業団専務理事
  戎崎 俊一 理化学研究所情報基盤研究部長
  上林 弥彦 京都大学大学院情報学研究科教授
  國井 秀子 株式会社リコー執行役員(ソフトウェア研究所長)
  小池 秀耀 株式会社富士総合研究所取締役(科学技術グループ担当)
  後藤 敏 日本電気株式会社支配人
  坂内 正夫 東京大学生産技術研究所長
  知野 恵子 読売新聞社編集局解説部次長
  土屋 俊 千葉大学附属図書館長
土居 範久 慶應義塾大学理工学部情報工学科教授
  東倉 洋一 日本電信電話株式会社先端技術総合研究所長
  中村 慶久 東北大学電気通信研究所長
  根岸 正光 国立情報学研究所学術研究情報研究系研究主幹
  村岡 洋一 早稲田大学理工学部教授
  矢川 元基 東京大学大学院工学系研究科教授
(日本原子力研究所計算科学技術推進センター長)
  米澤 明憲 東京大学大学院情報学環教授

(科学官)

  西尾 章治郎 大阪大学サイバーメディアセンター長

○・・・主査

科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会 情報科学技術委員会 議論の経緯

○ 第1回(平成13年6月13日)

  • 委員会開催の趣旨等
  • 総合科学技術会議等における検討状況
  • 文部科学省における情報科学技術関連の研究開発
  • 本委員会における今後の検討の方向性・視点

○ 第2回(平成13年7月31日)

  • 第7回技術予測調査について
  • 総合科学技術会議等の検討状況
  • 主な競争的資金制度の現状
  • 文部科学省の平成14年度情報科学技術関連施策

お問合せ先

科学技術・学術政策局政策課

(科学技術・学術政策局政策課)