ライフサイエンス分野における当面の研究開発の推進に関する考え方について

平成13年8月30日
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
ライフサイエンス委員会

1.はじめに

  1. ライフサイエンス分野の研究開発に関しては、これまで、「ライフサイエンスに関する研究開発基本計画」(平成9年8月、内閣総理大臣決定)、「大学等におけるバイオサイエンス研究の推進について」(平成12年2月、学術審議会建議)等に基づき推進されてきた。近年目覚しいライフサイエンス分野の研究成果は、上記の建議等が、幅広い観点からライフサイエンスの推進を支えてきたことによるものであり、今後ともこれらに基づき、我が国のライフサイエンスが全体として推進されることが重要である。
  2. 科学技術の発展により、知的存在感にあふれ、国際競争力のある国を実現していくことの重要性が各方面から指摘されている。ライフサイエンス分野においても、生命への理解が深まることなどを通して、科学技術が文化を創生するという観点からの貢献が期待されるとともに、医療、食料、環境等の領域において、現下の社会が有する諸課題を克服する観点からの貢献が強く期待されている。
  3. 第2期科学技術基本計画(平成13年3月30日、閣議決定)において、ライフサイエンスは、重点的に推進する必要のある科学技術分野の一つとして位置付けられ、また、「平成14年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」(平成13年7月11日、総合科学技術会議決定)では、ライフサイエンスは、特に重点を置いて、優先的に研究開発資源を配分する分野の一つとして掲げられた。また、科学技術・学術審議会においても、「科学技術・学術振興に関する当面の重要事項について」(平成13年8月9日)が取りまとめられ、ライフサイエンス分野の重要事項に関する考えが示されたところである。
  4. かかる状況下、文部科学省が具体的に平成14年度予算編成作業を行っていくにあたり、ライフサイエンス分野の諸施策が適切に実現されるよう、本委員会の考え方を示すことが重要であると考え、今回取りまとめを行った。
  5. ライフサイエンス委員会は、今後、長期的・総合的観点からのライフサイエンス研究開発計画を検討していく予定である。その際、産業競争力の強化には、短期的な研究目標の遂行はもとより、長期的に見れば基礎研究が不可欠であるとの認識に立ち、研究者の自主的な発意を基本とした取り組みが進められるよう十分留意するとともに、我が国の研究者が結集して目標を達成することが重要である。

2.今後のライフサイエンス分野の研究開発の方向性

  1. ライフサイエンスの研究開発は、近年その進展速度が速く、また、多様である。従って、研究開発の推進に当たっては、特に、我が国が欧米に比して進んでいる領域に関し、我が国の優位性を生かして大きく発展させていくことは勿論のこと、現時点では、国際的に未着手な領域や、我が国がやや遅れをとっているものの極めて必要性の高い領域については、国家的観点から戦略的に取り組むことが必要である。
  2. ライフサイエンス分野の研究開発は、研究者の自主的な発意による多様な研究が確保されることが、将来画期的な成果をあげる上で不可欠であるとの認識に立ち、多様かつ広汎な基礎研究と国家的・社会的課題に対応して進める研究開発とが適切なバランスで推進されることへの十分な配慮が必要である。
  3. ライフサイエンス分野は、他の分野に比して長期間の研究開発を要する一方、一旦、成果が創出されると、直ちに、これまでの技術体系を革新し、社会経済に大きな変革をもたらす可能性がある。また、様々な研究開発課題に対する取組が互いに連携しあって発展していくものである。このため、研究開発の責任機関である文部科学省としては、長期的かつ総合的な観点から、国全体としてのライフサイエンス分野における研究開発活動の在り方を検討し、各年度の計画を企画・立案することが必要であり、その際、研究者等からの意見・評価を幅広く聴取することが重要である。
  4. ライフサイエンス分野における科学技術の発展は近年目覚しい一方、これら科学技術が人間・社会に及ぼす影響も拡大しつつある。このため、研究開発を行う上では、倫理面に十分配慮する必要がある。

3.国としての推進の在り方

(1)幅広い基礎研究の支援

  1. ライフサイエンス分野において世界を先導する革新的成果の多くは、研究者の創造性が十分生かされた多様な基礎研究によって実現されたものであることを認識し、基礎研究が十分実施できる環境を確保することが重要である。特に、ライフサイエンス分野は、複雑かつ多様な生物現象や生体機能を対象とし、他の分野に比して未解明な領域が多いことから、幅広い基礎研究を進めることが極めて重要である。
  2. ライフサイエンス分野の研究は、生物学、医学、薬学、農学、工学等の枠にとらわれず、物理学、化学、数学、人文・社会科学を含む極めて学際的な研究活動によって進展されるものも多く、研究者の自由な発想に基づく基礎研究が適切に支援されることが重要である。
     特に、全く新しい発想や研究課題への取組は、異分野の研究活動が緊密に連携した環境で生じる新たな領域から創出されることも多いことから、多様な研究が柔軟に実施できるシステムを実現することが重要である。
  3. このため、大学、研究機関等における研究体制の整備、人材育成等をたゆみなく進めるほか、基盤的研究資金について、適切に確保することが重要であり、競争的研究資金については、その拡充を図ることが必要である。また、具体的な研究課題に関しては、厳格な評価の下、研究者の自由な発想を基本とする、優れた研究課題が採択されていくことが重要である。
  4. 第2期科学技術基本計画において重要政策の第一番目に記述された基礎研究の推進に当たっては、科学研究費補助金等の一層の充実と活用が具体的に検討されることが重要であり、併せて、大学や研究機関等の研究基盤及び体制の整備・充実を積極的に推進する必要がある。その際、基礎研究が学術研究活動の推進に中核的な役割を果たしていることは、科学技術・学術審議会の「学術研究の重要性について」(平成13年7月24日、学術分科会)等においても明記されており、ライフサイエンス分野においても、かかる認識に立った計画の推進が重要である。
  5. また国家的・社会的課題に対応した研究開発を進めていくに当たっても、関連する基礎的段階の研究活動を併行して推進していくことにより、研究開発の成果の活用が促進されるとともに、画期的な突破口を当該分野にもたらすことが期待され、この点に十分留意した研究推進が図られることが重要である。

(2)国家的・社会的課題に対応した研究開発の推進

  1. 第2期科学技術基本計画においては、我が国が、経済や産業の活性化により持続的に発展を遂げていくため、また、国民が安心して安全な生活を送るためには、重点分野に積極的、戦略的に投資を行い、研究開発の推進を図る必要があるとされており、ライフサイエンス分野は、特に、少子高齢社会における疾病の予防・治療や食料問題の解決に寄与する分野として、重点分野の一つとして掲げられている。
  2. 国家的・社会的課題に対応した研究開発については、経済や産業の活性化等に貢献する観点から、成果の社会還元が基本であり、目標達成のための期間を設定して、集中的に研究開発を推進することが必要である。また、このような研究開発活動については、参加する機関の連携や協力体制を確立することが必要である。このため、課題によっては、研究計画立案段階から産業界からの参加を得て、研究実施過程での産学官連携を確保することが不可欠である。
  3. 平成14年度においては、総合科学技術会議が特に重点的な資源配分が必要であると指摘した事項について、今後具体的な内容の検討が進められるものとなると考えられるが、ライフサイエンス委員会としては、今回同会議が取り上げた以外の事項についても、長期的観点から国として重点的に推進してきた課題の重要性が何ら変わるものではないと認識し、これらについても引き続き積極的な研究推進が図られることが重要であると考える。
  4. また、生物遺伝資源確保等の研究基盤整備は、我が国の研究開発活動を支える根幹であり、国家的・社会的課題の一環として推進することが重要である。これらについては、明確な責任体制のもと長期的観点から安定的に実施できる体制を整備することが必要である。このため、中核的拠点を中心にした関連機関間ネットワークを構築するなどによる十分な連携体制を実現して進めることが重要である。

(3)推進体制

  1. ライフサイエンス分野の研究開発については、各研究機関の特徴を十分生かし、多様性を重視した分散的な研究開発と、予め達成目標を明確にして研究チーム(組織等を含む)を作り、集中的に実施する研究開発とが適切なバランスをもって進められることが重要である。
  2. 本分野の研究開発が、総合科学技術会議等の基本的方針の下、今後、短期的な成果をあげるのみならず、長期的観点からも、大きな発展を遂げていくためには、研究開発計画の立案段階及び実施段階において、我が国全体の研究開発を視野に入れた検討が十分なされる必要がある。
  3. このため、研究開発の大宗を担う文部科学省の関連施策の企画、推進等に関し、ライフサイエンス委員会が適切な役割を担うことが重要である。また、文部科学省として、課題設定等計画の具体化を進めるに当たっては、当該研究分野全体の動向を見渡せ、最新の知見を有するとともに、目指すべき方向を明確に意識した専門家の意見等を幅広く聴取することが重要である。
  4. また、文部科学省としては、国全体のライフサイエンス分野の研究開発活動が総体として大きな成果を上げられるよう、既存の研究機関、支援制度等を最大限活用するとともに、既存の枠組みにとらわれず、総合的かつ柔軟な推進施策を講じていくことも必要である。

(4)人材の育成

  1. 大学等における人材の育成に関しては、長期的視野にたって、広汎な観点からの指摘が「大学等におけるバイオサイエンスの研究の推進について」(平成12年2月1日、学術審議会建議)においてなされており、今後とも、同建議に沿った総合的な施策の展開が必要である。
  2. ライフサイエンス分野の研究開発が発展していくためには、独創性を有する優れた若手人材の育成が重要であるが、その際、多様かつ異なる分野や組織の研究者が若い時代に互いに影響し、関連しあうことによって、新たな分野が開拓されることに対する配慮が重要である。また、研究活動を支える高度な技術を有する人材の養成及び確保が長期的なライフサイエンスを支える上で重要であることにも十分な留意が必要である。
  3. 以上を踏まえ、平成14年度においては、特に、将来のライフサイエンス分野の研究活動を担う、優れた研究者の育成を図るため、創造性豊かな若手研究者に対する支援を充実することが重要であり、「科学研究費補助金の改善について」(平成13年7月10日、科学技術・学術審議会学術分科会研究費部会報告)等を踏まえ、若手研究者への支援制度等の充実、若手研究者に対する競争的資金の拡充等を進めることが適切である。とりわけ異分野かつ多機関の研究者が融合して進める研究活動においては、若い人材が積極的に登用され、責任を持って研究活動を進めることができるよう配慮することが重要である。

(5)研究成果等の取扱い

  1. ライフサイエンス分野の研究開発から生まれた成果は、「知」の創造に寄与するとともに、社会経済活動に大きな変革をもたらす可能性がある。このため、その効果的な社会還元を進めるため、TLO(技術移転機関:Technology Licensing Organization)等の活用を図るとともに、特許等知的所有権の在り方、産学官連携の推進、大学発ベンチャーの促進等について検討されることが期待される。
  2. 研究開発の結果生じた新しい科学的知見、材料、情報等は、我が国の貴重な財産であり、適切な管理が必要であるとの視点に立ち、所要の取組を検討することが重要である。また、研究開発成果を速やかに経済社会活動に反映させるため、研究開発成果の特許化を常に念頭においた取組が各機関において実施できるよう適切な体制の整備が必要である。さらに、研究環境の流動化、研究機関間の連携等に従い、研究者の異動が活発化し、研究試料等の移転が日常的に行われるものと予想されるが、その際必要となる一定のルールについても、国際的視野に立った検討が必要である。
  3. また、近年、医療、農業等の分野において実用段階への取組が益々進められつつある遺伝子組換え体の利用について、一層の国民的・社会的合意を得るための配慮が重要である。

4.当面(平成14年度)の研究推進の考え方

 平成14年度の研究開発に関しては、総合科学技術会議の重点資源配分の方針等を踏まえ、ポストゲノム配列時代の研究を戦略的・重点的に進めることが必要である。ライフサイエンス委員会として、特に、平成14年度、新たに重点的に予算を配分することが必要であると考える領域・課題は以下のとおりであるが、基礎研究の充実を図るとともに、これまで我が国として重点的に推進してきているがん研究、ゲノム科学研究、発生・再生・分化研究、免疫・アレルギー・感染症研究、脳科学研究等の分野に関しても、長期的観点からの継続的な研究開発推進が必要であり、引き続き、積極的な研究推進が図られることが必要であると考える。国家的・社会的課題に対応するために推進することが適当と考えられる課題に関しては、これまで多くの場合、研究開発実施機関毎の研究開発の実施がなされてきているが、今後は、総合的な計画の下、より競争的環境下で、必要な取組が進められるとともに、全体としての機関間連携が進められる新たな仕組みが実現されることも適切である。
 また、研究開発の推進に当たっては、若手人材の育成・支援や生命倫理上の配慮が十分なされることが重要である。

1.ライフサイエンス分野の萌芽・融合領域の研究推進

 バイオインフォマティクス、システム生物学、バイオイメージング等はライフサイエンス分野の研究の新しい取組であり、異分野の融合による新しい形式の研究開発によって画期的成果が創出されることが期待される。その際、若い人材を動員しつつ、従来の学問体系を超えた発想でライフサイエンス研究に取り組むことが重要である。このため、平成14年度から、特に、
 萌芽・融合領域において、科学研究費補助金のより一層の活用を図るとともに、異分野の研究者が若い人材とともに結集し、融合して、全く新しい領域の研究に取り組むことを可能とする研究推進方式(ユニット)を創設することが適切である。
 その際、医学、薬学、理学、工学、農学等の分野の研究者が組織を越えて融合することにより、新たな研究が大きく進展することのほか、ライフサイエンス分野と人文・社会科学との融合(例:脳機能と行動との関連性解明)によって全く新たな領域の研究が創出され、画期的な成果が生み出されることが強く期待される。

2.タンパク質構造・機能解析計画の推進

 ゲノム創薬等の効率的開発システムを実現することなどを目指し、平成14年度から、特に、
 5年間で、タンパク質の全基本構造の3分の1(約3000種)以上の構造及び機能を解析する計画を、我が国研究開発能力を結集して開始することが適切である。
 本計画については、タンパク質の構造・機能を解析し、そのデータを活用していくという一連の技術体系の構築を目指し、タンパク質の大量発現・結晶・精製技術等の先端技術開発やタンパク質発現に必要なcDNA配列決定等についても併せて推進する必要がある。また、タンパク質の基本構造解析に必要なソフトウェアの開発や得られたデータに基づくタンパク質構造機能シミュレーション、タンパク質間相互作用等のためのバイオインフォマティクス研究を進める。
 また、個別タンパク質の全体構造について、その構造と機能の解析や全く新たな結晶化技術開発等に関しても、必要に応じ、その成果が本計画の一環として捉えられるよう、適切な配慮が必要である。

3.テーラーメイド医療実現のための遺伝子発現ネットワーク解析計画の推進

 各種環境下で個々の細胞が発現する遺伝子の探索及び機能解析を通し、生活習慣病や難治性疾患におけるテーラーメイド医療を実現することを目指す。このため、ヒト遺伝子領域における15万箇所のSNPsの位置決定や体系的疾患SNPs研究の進展を踏まえ、平成14年度から、特に、
 各種疾患遺伝子等の生体内における発現ネットワーク(遺伝子間相互作用)の解析を開始するとともに、疾患の原因遺伝子を特定するための基盤技術開発を進めることが適切である。
 特に、約3万と言われるヒト遺伝子についてその発現機序解析を進めるため、ヒトcDNAを対象とした解析を進めることが重要であるが、生命機能に関係する全遺伝子を対象としたネットワーク解析を進めるためには、ヒトcDNAと相補的関係にある実験生物の各種cDNAを対象とした解析が不可欠であるなど、総合的な戦略の下、本課題を進めることが適切である。

4.先端基礎研究と実用化研究との双方向の橋渡し研究開発の戦略的推進

 ヒトゲノム情報等から得られる各種知見や、脳機能解明、疾患遺伝子探索・機能解明、発生・再生研究、非ウイルス性ベクターによる遺伝子導入技術開発等に関する基礎的研究を実施する研究機関が、その成果について、疾患・先進医療技術等を保有する専門機関と連携し、実用化を目指した多様な臨床応用例を蓄積するシステムを整備することが重要である。また、臨床等の場から提起される様々な新たな生命現象等について、基礎研究の場において迅速に解析等を行い、新たな科学的知見を創出することも重要である。このため、平成14年度から、特に、社会的要請の高い、
 痴呆やその他の神経・精神疾患、視覚・聴覚等の感覚障害、免疫性疾患、生活習慣病等の研究や遺伝子治療、移植医療等の治療法の開発について、基礎的研究と臨床応用研究との双方向性橋渡し研究を開始することが適切である。

5.ライフサイエンス分野の研究による食料・環境問題への対応

 地球温暖化、環境汚染等の地球環境問題に適切に対応することは、環境先進国としての我が国の責務であり、極限環境微生物等の有する環境浄化等の遺伝子の探索及び機能解析を進めることが重要である。また、将来深刻な問題となることが予想される食料問題等に対応するため、高生産効率の作物等を開発することを目指し、物質生産等に関連する遺伝子の探索及び機能解析を進めることが重要である。以上により、平成14年度から、特に、
 多様な遺伝子変異植物の開発や様々な極限環境に適応した微生物等の探索を通し、環境浄化、環境ストレス耐性、物質・食料生産等に有用な遺伝子の単離・機能解析等を重点的に推進する。

6.高度先進生体情報解析技術の開発推進

 生体内分子挙動解析、動的細胞内遺伝子発現解析等の先端解析技術は、今後のライフサイエンス分野の研究開発において、画期的な成果をもたらす可能性がある。現在のライフサイエンス分野の研究開発は、殆どが欧米発の技術によって実施されている状況であり、かかる状況を解消することは、我が国の独創的研究を一層進める上で不可欠であるとともに、社会経済にも大きな影響を与えることが期待される。このため、平成14年度から、特に、世界をリードできる分野であり、また、脳科学研究、がん研究等の広汎なライフサイエンス分野の研究等の推進に当たって画期的な成果が期待できる、
○バイオイメージング技術(例:生体内分子動態可視化技術)
○高精度遺伝子発現解析技術等
について、取組を進めることが適切である。
 なお、ポストゲノム配列研究における各種解析機器開発は、生物学、工学、医学等の異分野の研究者等が結集して取り組むことにより、大きな突破口が実現できるものもあり、それらについては、前述の萌芽・融合領域で指摘した研究推進方式によって推進されることが適切である。

7.生物遺伝資源の開発・保存・供給、データベース化

 生物遺伝資源、実験生物等は、多様なライフサイエンス研究開発活動を支え、新たな研究成果の創出を内包する重要な財産である。特に、我が国の特徴を生かした、多様な生物遺伝資源及びポストゲノム配列研究を支える各種実験生物等の重要性については、長期的視野から検討すべきである。また、生活習慣病対策、高機能食物生産、環境対策等の研究開発を重点的に進めるためには新たな生物遺伝資源の開発・供給が必要である。このため、平成14年度から、特に、
 生物遺伝資源(高品質の実験動植物、突然変異動植物、各種遺伝子等)の収集・保存・提供等について、我が国全体を視野に入れた統合的生物遺伝資源の開発供給体制を整備するとともに、それらに関連するゲノム情報等のデータベース化、ネットワーク化等を進めることが適切である。
 その際、生物遺伝資源の開発供給等に関しては、高度な技術を有する人材の養成及び確保が不可欠であり、この点に十分留意した計画の立案が重要である。
 また、ゲノム創薬やテーラーメイド医療の実現等に資する各種情報のデータベース化についても、本計画の一環として進めることが適切である。

8.ライフサイエンス研究体制の整備

 これまで、ライフサイエンス分野においては、多くの独創的研究が研究者の自由な発想と取組を基本とする分散的研究体制によって実施されてきたとの認識に立ち、今後、我が国が欧米に伍して優れた研究成果を創出していくためには、大学、研究機関等における研究体制の強化が緊急の課題である。このため、平成14年度は、特に、
 重点的に予算を配分することが必要とされる領域・課題に関連したものについて、研究体制の重点的整備を進める。また、大学、研究機関等の基盤的施設についても、体制の整備・充実を図る。
 また、産業競争力の強化等の観点からの国家的・社会的課題に対応した領域・課題については、産学官の十分な連携が計画の着手段階から実現されていることが必要であるものもあり、この点に十分留意して、研究開発体制を構築することが重要である。


平成14年度文部科学省ライフサイエンス分野の研究開発の進め方

ライフサイエンス委員会名簿

(委員)

  板井 昭子 株式会社医薬分子設計研究所代表取締役社長
  伊藤 菁莪 協和発酵工業株式会社常務執行役員創薬研究本部長
  大井 玄 独立行政法人国立環境研究所参与
  加藤 郁之進 宝酒造株式会社取締役副社長・バイオ事業部門本部長兼バイオ研究所長
金澤 一郎 東京大学教授(大学院医学系研究科)
  川人 光男 株式会社国際電気通信技術研究所先端情報科学研究部計算論的神経科学プロジェクト/サイバーヒューマンプロジェクト・プロジェクトトリーダー
  郷 通子 名古屋大学教授(大学院理学研究科)
  小原 雄治 国立遺伝学研究所教授(生物遺伝資源情報総合センター長)
  榊 佳之 東京大学医科学研究所教授(ヒトゲノム解析センター)、理化学研究所ゲノム科学総合研究センターゲノム構造情報研究グループ・プロジェクトリーダー
  佐々木 康人 独立行政法人放射線医学総合研究所理事長
  猿田 享男 慶應義塾常任理事
  篠崎 一雄 理化学研究所ゲノム総合科学研究センター植物ゲノム機能情報研究グループ・プロジェクトリーダー
  高井 義美 大阪大学教授(大学院医学系研究科)
  高木 利久 東京大学医科学研究所教授(ヒトゲノム解析センター)
  高久 史麿 自治医科大学長
  竹市 雅俊 京都大学教授(大学院生命科学研究科)、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター長
  津本 忠治 大阪大学教授(大学院医学系研究科)
  廣川 信隆 東京大学教授(大学院医学系研究科)
  本庶 佑 京都大学教授(大学院医学研究科)
  吉田 光昭 萬有製薬株式会社つくば研究所長
○・・・主査

(科学官)

  勝木 元也 岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所長

科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会 ライフサイエンス委員会   議論の経緯

○  第1回(平成13年7月11日)

  • 委員会開催の趣旨等
  • 総合科学技術会議等における検討状況
  • 平成14年度概算要求におけるライフサイエンス関係の施策について
  • ライフサイエンスの研究開発の推進方策について
    (「平成14年度に向けたライフサイエンス分野の研究開発の推進に当たって」考え方の整理)

○  第2回(平成13年7月25日)

  • ライフサイエンスの研究開発の推進方策について
    (「平成14年度に向けたライフサイエンス分野の研究開発の推進に当たって」たたき台の検討)

○ 第3回(平成13年8月6日)

  • 科学技術・学術に関する最近の動向について
  • ライフサイエンスの研究開発の推進方策について
     (「平成14年度に向けたライフサイエンス分野の研究開発の推進に当たって」取りまとめ案の検討1)

○ 第4回(平成13年8月20日)

  • ライフサイエンスの研究開発の推進方策について
     (「平成14年度に向けたライフサイエンス分野の研究開発の推進に当たって」取りまとめ案の検討2)

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官

(科学技術・学術政策局計画官)