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1.課題名: 都市型水循環インフラからの有用資源回収プロジェクト

2.課題概要:   「持続型経済社会」の実現に向けて、都市における下水や生ごみなど高含水率廃棄物からの有用資源の回収・再利用と複合処理による回収効率の向上のための技術開発を行うとともに、都市における水資源再生利用・再資源化システム等に関する研究開発を産学官の連携により行う。

3. 評価の検討状況
(1)課題設定の妥当性(必要性)
1国の方針との適合性
  京都議定書の批准やヨハネスクブルグ・サミットの開催等を背景として「持続可能な開発」の実現に資する研究開発の推進が一層重要となっている。第2期科学技術基本計画おいて,「資源の有効利用と廃棄物等の発生抑制を行いつつ資源循環を図る循環型社会を実現する技術」等の推進に重点をおくことが指摘されているほか,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」における新重点4分野として「循環型社会の構築・地球環境問題への対応」が指摘されている。
  本プロジェクトは,総合科学技術会議の環境分野推進戦略における重点課題,科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会「地球環境科学技術に関する研究開発の推進方策について」における今後取り組むべき研究課題に対応するものであるとともに,「平成15年度の科学技術に関する予算,人材等の資源配分」における重点事項である「ゴミゼロ型・資源循環型技術研究」,「自然共生型流域圏・都市再生技術研究」及び「化学物質リスク総合管理技術研究」に合致するものである。

2リーディング・プロジェクトとしての妥当性
プロジェクトの基本的性格
  技術的には,比較的短期間で実用化を目指すものであり,要素技術開発を1つのモデルとした水資源の再生利用・再資源化,有用資源の回収・活用のための社会システム設計に関する研究開発により,地域における社会的・技術的検証実験を行うことで具体的な実現性を示す。中・長期的には,資源循環型社会の形成など,社会システムの構造改革に寄与するものである。

研究開発成果の持つ経済活性化効果等(実用化された場合の社会・経済へのインパクトを含む)
  短期的には,下水の高度処理プラントの開発・実用化により、発電による電力自給と二酸化炭素排出量の削減による効果、水資源の再生利用・再資源化,窒素及び燐の回収による環境負荷の低減と再資源化による活用,最終処分汚泥量の縮減等の経済効果が期待できる。中・長期的には,廃棄物処理に係る社会コストの低減,資源循環型社会の形成など,社会システムの構造改革への効果が期待できる。

研究開発成果の目標とスケジュール
  本プロジェクトは,下水処理場に有用資源回収設備を付加することにより,下水処理場を現状のエンド・オブ・パイプ(終末処理)のインフラから物質循環のインフラへの転換を図ることを目的としたプロトタイプの開発である。
  また,本プロジェクトは,5年間で,都市下水等の複合処理と資源回収効率の向上のための技術開発を一つのモデルとし、水資源の再生利用・再資源化,有用資源の回収・活用のための社会システム設計に関する研究開発を行うものとして研究計画がなされている。
  これらの点において,本プロジェクトの目標及びスケジュールは妥当なものであると評価できる。

大学等と産業界の役割
  5年以内の実用化・普及を目標に,産業界と大学等との連携・協力により核となる要素技術開発とプラントによる実証を行うとともに、水資源再生利用・再資源化のシステム設計については人文・社会科学分野の研究者も参加した融合的な研究開発を推進する。
  廃棄物処理のプロセス技術については,実証プラントの建設・運転等に関して企業側からのコミットメントが得られる予定である。また,大学については大学連合グループによる自然科学と人文・社会科学の融合した研究体制を構築し,大学・研究機関の研究資源を横断的・集約的に動員することとしており,こうした連携・協力は,本件プロジェクトを実施する上で妥当なものと評価できる。

政府部内における既存制度における研究開発課題及び他経済活性化プロジェクトとの関係
  メタン発酵による炭素回収技術の開発や窒素・燐の組み合わせ回収技術の開発等のプラントによる実証に関しては国土交通省や地方公共団体との連携・協力を図ることとしており,こうした連携・協力は適切なものと評価できる。

(2) 手段の適正性(有効性・効率性等)
1研究体制の妥当性
研究責任者(プロジェクトリーダー)の適否
  水処理,化学物質の処理やリスク評価を専門とし,特に都市下水処理や廃棄物処理に関する研究業績を有しており,本研究プロジェクトにおける研究開発をリードし、適切な管理・運営を行う上で適任であると評価できる。

研究体制及び研究運営方法の妥当性
  本プロジェクトは,科学技術を通じた経済活性化を図ることを目的に、産学官の連携による研究開発を進める。特に大学については、大学連合グループを形成することにより,自然科学と人文・社会科学の融合した経済・社会システム設計に関する研究を推進するとともに,環境研究におけるコーディネータやネットワークの形成を図る。こうした研究体制により,自然科学と人文・社会科学の両分野の研究者や技術者の参画による政策追求型の研究プロジェクトを推進することは,環境問題のような広範かつ複雑な課題に対応する上で妥当なものと評価できる。

2研究計画の有効性・効率性
費用対効果
  発電等のエネルギー利用効率の向上と二酸化炭素排出量の削減による効果、及び再資源化生成物の販売等による直接的な経済効果とともに,中・長期的には,廃棄物処理に係る社会コストの低減,資源循環型社会の形成,持続的な経済・社会の発展など,経済・社会システムの構造改革への効果が期待できる。

知的財産の取得・活用方針
  特になし。

4. 評価結果
  水処理に伴なう循環の付加価値をあげることを目的とし、産業の技術と大学のシステム設計・環境評価技術の適切な組み合わせにより、地域に根ざした技術開発を狙っている点が評価できる。全体として、高含水率廃棄物からの燃料回収を中心とした地域資源循環システムの実験 実証として適切なシステム構築である。高度処理プラント技術の効率改善とともに、 有機系廃棄物の導入による熱効率改善が期待される。アンモニアやリン、脱水ケーキ の処理方法、油脂類の分解には更に工夫が必要。綿密な地域資源・地域市場の把握評価がシステム成立のかぎとなるので、研究を先行させるべき。研究遂行時にも地域産 業・自治体などの参加が望ましい。

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