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1.課題名: テーラーメイド医療実現化プロジェクト

2.課題概要:   遺伝情報を基にした個人個人にあった予防・治療を可能とする医療(テーラーメイド医療)を実現するため、1SNP(一塩基多型)と疾患・薬剤応答との関連データベースの構築(30万人規模のバイオバンクの整備を含む)、2個人遺伝情報を臨床応用するための検査用診断機器ソフトの開発を実施する。

3. 評価の検討状況
(1)課題設定の妥当性(必要性)
1 国の方針との適合性
  ヒトゲノムの解読が進展し(精密解読が来春完了予定)、我が国においてもこれまで、ミレニアムプロジェクトにより、疾患遺伝子の探索が行われるとともに、遺伝子領域におけるSNPsの基盤データベースが完成するなどの成果が創出されている。
  これらの成果に立脚して、テーラーメイド医療の実現を目指し、激しい国際競争の下で、諸外国においても国をあげての取り組みが進められている。このような状況に鑑み、テーラーメイド医療の実用化を戦略的に推進することを目的とする本プロジェクトの立ち上げは妥当であり、「ライフサイエンスに関する研究開発の推進方策について」等においてもその重要性を指摘しているものである。
2 リーディング・プロジェクトとしての妥当性
プロジェクトの基本的性格
  本プロジェクトが目指しているテーラーメイド医療の実現化に必要な技術及び情報は、次代の経済産業基盤の構築に不可欠であり、早急な取り組みが適当。
研究開発成果の持つ経済活性化効果等(実用化された場合の社会・経済へのインパクトを含む)
  米国のデータ(JAMA 1998)によれば、副作用により派生した医療費は9.1兆円に成ると言われている。我が国では、医療費の算定が異なることから単純な比較は難しいものの、我が国においても相当規模の医療費が副作用により発生していると考えられるが、テーラーメイド医療を実現することによりこれらの医療費を抑制することが可能となることが期待される。
研究開発成果の目標とスケジュール
  3年間で30万人規模の血液サンプルを適切な手続きを経て収集することは、多くの機関の連携と協力が必要であり、十分な準備等を進め対応していくことが重要である。SNPsの解析等プロジェクト全体としてのスケジュールは妥当である。
大学等と産業界の役割
  全国規模でのネットワークを有する医療機関等との協力が本プロジェクトの成否の鍵であり、十分な連携を常に留意する必要がある。情報解析、医療支援システムの構築については、産業界の貢献が予定されており適切である。
政府部内における既存制度における研究開発課題及び他経済活性化プロジェクトとの関係
  既存施策において、ハプロタイプ地図の作成、疾患遺伝子探索等が進められており、これらの成果が適切に本プロジェクトに活用されるとともに、資金の効率的利用が重要である。

(2)手段の適正性(有効性・効率性等)
1 研究体制の妥当性
研究責任者(プロジェクトリーダー)の適否
  理化学研究所における世界最高の解析能力を誇る遺伝子多型解析チームを率いているほか、ミレニアムプロジェクト(ヒトゲノム多様性解析プロジェクト)のプロジェクトリーダーを務め、当初の目標を上回る成果を得るなど、遺伝子多型解析に関する十分な実績と能力を有すると判断され、妥当である。本プロジェクトへの従事率を一層高めることが期待される。
研究体制及び研究運営方法の妥当性
  これまでのSNP解析や疾患遺伝子の解析などで高い実績を有す機関を中心として、試料収集協力をする医療機関等との連携と、社会基盤となるようなITインフラ・セキュリティインフラの構築能力を有す情報産業、さらには構築されたデータを利用する製薬産業が参加することとされており適切である。他方、広く提案を募集することによって、優れた成果が取得できる課題もあると考えられ、実施段階において検討されることが望まれる。本プロジェクトでは、ヒト由来試料、個人情報等を取り扱うこととなるため、倫理問題等への十分な配慮が必要である。特に、個人情報に関しては、専門のグループを作って対応することが望まれる。
2 研究計画の有効性・効率性
費用対効果
  投資する費用は、5年間で約400億円とされているが、その使途については、極力効率的・効果的にするよう留意する必要がある。
知的財産の取得・活用方針
  30万人の血液サンプルの試料や情報についての公開に関する方針をプロジェクト開始にあたり、明確にする必要がある。本プロジェクトによる成果が、適切に権利化され国内産業界がその実施を進めることが重要である。

4. 評価結果
  重要なプロジェクトであり、実現するべきである。実現にあたっては、大型プロジェクトであり、責任者の強いリーダーシップと、本プロジェクトへの深い取り組みが必要である。倫理的側面も含め進行の管理、評価体制に十分留意する必要がある。

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