気象災害研究では、マルチパラメータレーダ等のリモートセンシング技術の開発が進んでおり、さらに、豪雨・豪雪・強風・土砂災害への応用を図るためのアルゴリズム開発が重要である。先端的技術の開発に力が注がれている一方で、降積雪の計測技術は開発が進んでおらず、山地の降雪量の実態も充分に把握できていない。土砂災害による被害はあまり減少しておらず、大規模地すべり予測の基礎資料として、引き続き、調査・観測や大型降雨実験施設等による実験が必要である。
地変災害研究では、地震観測や地下構造調査のデータ及び実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)を活用した実験と国際的な技術交流によって取得した基礎データ等を用いた地震動・地震被害推定、危険度評価及び地震による人的被害発生メカニズムの解明が重要である。また、過去の災害を今後の教訓に反映させるため、地震・火山災害事例研究が重要である。
災害に強い社会づくりの研究では、災害による危険度評価を行う上で基礎となるデータの収集が重要である。
災害のリスクマネジメント、震災後の復旧・復興に関する施策の立案等においても、研究の基礎となるデータベースの構築が重要である。また、データベースは、GISなども活用し、汎用性が高く、発展途上国を含む国際的流通可能なものであることが重要である。
気象災害研究では、近年の気象災害の多発に対応して、通常の気象観測網より小さいスケールでおこる集中豪雨の予測や地吹雪・雪崩等の雪氷災害の予測と、リモートセンシングによる広域の被災地推定が重要である。また、大規模地すべり予測の基礎として、高速土砂流動現象等の発生機構の解明が必要である。地球温暖化等による災害リスク評価のため、検潮所とGPS観測網を駆使した海面上昇の実態把握、数値シミュレーションと気候モデルの改善、融雪期に対応する降積雪モデルの改良、局地的な異常気象に及ぼす影響の解明に取り組む必要がある。
地変災害研究では、来るべき東海・東南海・南海地震等に備えて、地震及び津波災害発生メカニズムの解明及び振動台実験や数値シミュレーションにより地震時の構造物の破壊過程を明らかにすることが重要である。
災害に強い社会づくりの研究では、地震火災のメカニズム解明、防災教育や被災経験の伝承による防災意識向上及び地域防災計画の見直しに資する社会現象の解明が重要である。
気象災害研究では、台風上陸前の被害推定、都市域における中小河川の氾濫や地下空間における溺死危険度評価、地すべり予測技術・危険度評価、豪雪に伴う雪崩や地吹雪の予測技術、地球温暖化による海面上昇に伴う沿岸災害危険度評価等の高度化や、住民の防災意識向上のための雪崩・地吹雪・融雪・土砂災害等のハザードマップ作成が重要である。また、マルチパラメータレーダ等の最先端レーダを活用した直接防災に役立つ短期予測も重要である。
地変災害研究においても、住民の防災意識向上のため、強震動予測や地盤災害等のハザードマップ作成は重要である。今後は強震動予測を被害予測につなげていく研究が必要である。
災害に強い社会づくりの研究では、社会的混乱も含めた危険度評価、住民の防災意識向上のための、複合災害に備えたハザードマップ作成等、包括的かつエンドユーザー指向の研究を進めることが必要である。
気象災害研究では、強風、豪雪、洪水氾濫等への耐力向上によって、災害に強い社会システムを構築することが重要である。
地変災害研究では、耐震点検・耐震診断の普及が阪神・淡路大震災以降の重要課題である。地震動により被災した構造物・施設の応急の強度・性能回復技術や材料の開発、地震による大きな揺れが到達する前に情報を伝達し、防災対策に活かす技術の開発が重要である。
災害に強い社会づくりの研究では、住民参加型の防災計画策定手法、復旧・復興過程の社会的側面からの研究が、阪神・淡路大震災以降顕在化している。緊急時の対応システムの確立に向けた技術・装置の開発、地方公共団体で扱える防災実務者のトレーニングにむけた災害シミュレータの開発・高度化を、社会のニーズを掘り起こしつつ進めることが重要である。さらに、これらに基づき総合防災システムを構築するため、国レベルから市民・地方公共団体レベルまでの防災リスクマネジメント手法高度化の研究を進めることが必要である。
ここに掲げられた重要研究開発課題は、「防災に関する研究開発基本計画」(平成5年12月)に沿った研究成果・進捗状況についての現状を把握する目的で行われた「防災分野の研究開発状況調査の中間とりまとめ」(平成14年9月)の結果の分析及び評価に基づいて、「防災に関する研究開発の推進方策について」(平成15年3月)で取りまとめられたものを見直したものである。
科学技術・学術政策局計画官付