防災に関する研究開発の推進方策について はじめに

 文部科学省の科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会では、文部科学省が主として関与する各分野の研究開発計画の作成及び推進に関する重要事項の調査・検討を行っている。このうち防災分野については、分科会の下に「防災分野の研究開発に関する委員会」を設置し、そこでの審議をもとに「防災に関する研究開発の推進方策について(平成15年3月)」を取りまとめた。これは平成13年3月に閣議決定された「第2期科学技術基本計画」、及びこれに基づき総合科学技術会議で策定された「分野別推進戦略(平成13年9月)」を踏まえて文部科学省における推進方策をまとめたものである。
 第2期における推進方策の策定にあたっては、防災関係研究機関を対象として独自に実施した広範な研究実態調査の分析結果やヒアリング結果をもとに、文部科学省として取り組むべき防災分野の研究開発の重点課題及び推進のための重要事項について議論を行い、その成果を反映することとした。
 一方、平成7年1月の阪神・淡路大震災を契機として、平成7年7月に地震調査研究推進本部が設立され、「地震調査研究の推進について-地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策-(平成11年4月、地震調査研究推進本部)」を決定した。
 また、学術研究としての性格の強い地震観測研究や火山噴火予知研究については、測地学審議会(現在の科学技術・学術審議会測地学分科会)の建議に基づく「地震予知のための新たな観測研究計画(平成10年8月)」(現在は第2次計画(平成15年7月))と「第6次火山噴火予知計画(平成10年8月)」(現在は第7次計画(平成15年7月))が策定された。推進方策の策定にあたっては、これらとの整合性に留意した。
 平成18年3月、「第3期科学技術基本計画」が新たに閣議決定された。この策定に先立ち、科学技術・学術審議会では、基本計画特別委員会を設置し、基本計画の策定に資するため、調査検討を行った。防災分野の研究開発に関する委員会としても、文部科学省として防災分野において当面取り組むべき課題を取りまとめ、基本計画特別委員会に報告書として提出している。第3期科学技術基本計画においては、3つの基本理念と、それを実現するための6つの大目標及びそれぞれを構成する12の中目標を政策目標として掲げた。このうち、防災分野に関しては、基本理念3に「健康と安全を守る-安全・安心で質の高い生活のできる国の実現に向けて-」、大目標6に「安全が誇りとなる国-世界一安全な国・日本を実現」が掲げられている。また、政策課題対応型研究開発における重点化の対象として、重点推進4分野・推進4分野が挙げられており、防災分野は推進4分野の「社会基盤分野」に含まれている。この基本計画に合わせ、総合科学技術会議では、各分野において重点領域並びに当該領域における研究開発の目標及び推進方策の基本的事項を定めた「分野別推進戦略(平成18年3月)」をとりまとめた。分野別推進戦略においては、分野別に「重要な研究開発課題」、「戦略重点科学技術」、「推進方策」を定めている。このうち、社会基盤分野の防災分野においては、重要な研究開発課題として、1.地震観測・監視・予測等の調査研究、2.地質調査研究、3.耐震化や災害対応・復旧・復興計画の高度化等の被害軽減技術、4.火山噴火予測技術、5.風水害・土砂災害・雪害等観測・予測および被害軽減技術、6.衛星等による自然災害観測・監視技術、7.災害発生時の監視・警報・情報伝達および被害予測等の技術、8.救助等の初動対処、応急対策技術、9.災害に強い社会の形成に役立つ研究、10.施設等における安全確保・事故軽減等の技術が挙げられている。また、基本計画期間中に重点投資する対象となる戦略重点科学技術としては、減災を目指した国土の監視・管理技術(1.高機能高精度地震観測技術、2.災害監視衛星利用技術、3.効果早期発現減災技術、4.国土保全総合管理技術、5.社会科学融合減災技術)が挙げられている。
 本報告書は、第3期における分野別推進戦略を実施するにあたって、先の推進方策の内容を基本として、その後の状況の変化等を考慮した上で、今後10年程度を見通した当面5年間において進めるべき重要研究開発課題、研究開発推進にあたっての重要事項等を示したものである。

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