資料1-6 研究開発計画の骨子(案)

資料 1-6
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
(第57回)平成28年7月7日


研究開発計画骨子(案)
平成○年○月
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会

目次

第1章 環境・エネルギーに関する課題への対応
 >環境エネルギー科学技術委員会
 >核融合科学技術委員会
(ナノテクノロジー・材料科学技術委員会、宇宙開発利用部会)

第2章 健康・医療・ライフサイエンスに関する課題への対応
 >ライフサイエンス委員会
(脳科学委員会、ナノテクノロジー・材料科学技術委員会) 

第3章 安全・安心の確保に関する課題への対応
 >防災科学技術委員会
(安全・安心科学技術及び社会連携委員会)

第4章 国家戦略上重要な基幹技術の推進
 >航空科学技術委員会
 >原子力科学技術委員会
 (宇宙開発利用部会)
 ※上記第1~4章では、基本計画第3章(1)~(3)のうち、文科省として特に重要なものを抽出。

第5章 未来社会を見据えた先端基盤技術の強化
 ※基本計画第2章への対応の他、文科省として重視する基盤技術を抽出。
 >情報科学技術委員会
 (脳科学委員会、安全・安心科学技術及び社会連携委員会)
 >ナノテクノロジー・材料科学技術委員会
 >先端研究基盤部会量子科学技術委員会

 ※>:主な委員会、( )内:関係委員会等

第1章 環境・エネルギーに関する課題への対応

<大目標1>
  将来のエネルギー需給構造を見据えた最適なエネルギーミックスに向け、エネルギーの安定的な確保と効率的な利用を図る必要があり、現行技術の高度化と先進技術の導入の推進を図りつつ、革新的技術の創出にも取り組む。
  資源の安定的な確保を図りつつ、ライフサイクルを踏まえ、資源生産性と循環利用率を向上させ最終処分量を抑制した持続的な循環型社会の実現を目指し、バイオマスからの燃料や化学品等の製造・利用技術の研究開発等にも取り組む。
  長期的視野に立って、CO2排出削減のイノベーションを実現するための中長期的なエネルギー・環境分野の研究開発を、産学官の英知を結集して強力に推進し、その成果を世界に展開していく。(エネルギー・環境イノベーション戦略)
  革新的なエネルギー関係技術の開発とそのような技術を社会全体で導入していく。(エネルギー基本計画)
  再生可能エネルギーや省エネルギー等の技術開発・実証を、早い段階から推進するとともに、そうした技術の社会実装を進める。(温対計画)


【大目標1達成のために必要な中目標1】
  エネルギーの安定的な確保と効率的な利用、温室効果ガスの抜本的な排出削減を実現するため、従来の延長線上ではない新発想に基づく低炭素化技術の研究開発を大学等の基礎研究に立脚して推進するとともに、温室効果ガスの抜本的な排出削減を実現するための革新的な技術の研究開発を推進する。

 ●中目標1達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆大学等の基礎研究に立脚した新発想に基づく低炭素化技術の研究開発
     我が国の大学や国立研究開発法人における優れた基礎研究の力を活かし、従来の延長線上ではないゲームチェンジングな研究者の発想に基づく低炭素化技術の研究開発を推進する。

 ◆温室効果ガスの抜本的な排出削減のための明確な課題解決のための研究開発
       温室効果ガスの抜本的な排出削減に向け、明確なターゲットを示し、その解決を図るための革新的な技術の研究開発を推進する。

【大目標1達成のために必要な中目標2】
  核融合エネルギーは、燃料資源が豊富であること、発電過程で温室効果ガスを発生しないこと、少量の燃料から大規模な発電が可能である等の特性を持つ。また、安全性の面でも優れた特性を有することから、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決する、将来の基幹的エネルギー源として期待されている。
  大目標の達成に向け、文部科学省は、国際約束に基づくITER計画・BA活動を推進しつつ、これらの進捗状況を踏まえ、トカマク型を主案とする原型炉開発のための技術基盤に向けた戦略的取組を推進する。並行して、トカマク以外の方式(ヘリカル方式、レーザー方式)や、核融合理工学の研究開発を進めることにより、将来に向けた重要な技術である核融合エネルギーの実現に向けた研究開発に取り組む。
  なお、これらの取組を推進するに当たっては、原型炉開発に向けたロードマップを策定し、量子科学技術研究開発機構、核融合科学研究所、大学、産業界等を網羅する全日本の連携体制で臨む


●中目標2達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆国際約束に基づくITER計画・BA活動の推進
       国際約束に基づき、核融合実験炉の建設・運転を通じて核融合エネルギーの科学的・技術的実現可能性を実証するITER計画に参加するとともに、日欧協力によりITER計画を補完・支援する先進的核融合研究開発である幅広いアプローチ(BA)活動を推進する。現行BA活動後の日欧協力に関しては、国内活動との相補性を考慮し効果的に推進する。

  ◆トカマク(トカマク国内重点化装置計画)
      BA活動におけるサテライト・トカマクの進捗を踏まえ、トカマク国内重点化装置計画を実施することにより、両計画の合同計画である量子科学技術研究開発機構のJT-60SA計画を進めて運転を開始するとともに、原型炉開発のための技術基盤構築に向けて、JT-60SAを活用した先進プラズマ研究開発へ展開する。

  ◆トカマク以外
    ・LHD(大型ヘリカル装置)計画
      核融合科学及び関連理工学の学術的体系化と発展を図ることを目指し、核融合プラズマに関する学術研究の中核拠点である核融合科学研究所のLHD計画を推進する。
   ・レーザー方式
      大阪大学レーザーエネルギー学研究センターを中心として進められている高速点火方式によるレーザー核融合の実証実験を推進する。

  ◆核融合理工学
       量子科学技術研究開発機構における原型炉設計研究開発活動、テストブランケット計画、理論・シミュレーション研究及び情報集約拠点活動、核融合中性子源開発や、核融合科学研究所、大学等における先進的な研究を含む幅広い学術研究を総合的に推進することにより、原型炉開発のための技術基盤構築及び核融合技術の高度化を進める。


<大目標2>
  地球規模での温室効果ガスの大幅な削減を目指すとともに、我が国のみならず世界における気候変動の影響への適応に貢献する。
  地球温暖化に係る研究については、従前からの取組を踏まえ、気候変動メカニズムの解明や地球温暖化の現状把握と予測及びそのために必要な技術開発の推進、地球温暖化が環境、社会・経済に与える影響の評価、温室効果ガスの削減及び地球温暖化への適応策などの研究を、国際協力を図りつつ、戦略的・集中的に推進する。(温対計画)
  スーパーコンピュータ等を用いたモデル技術やシミュレーション技術の高度化を行い、時間・空間分解能を高めるとともに発生確率を含む気候変動予測情報を創出する。また、気候予測の高解像度化を検討する。(適応計画)
  最新の気候変動予測データや、全球気候モデルのダウンスケーリングを活用することで、洪水や高潮による将来の外力の変化を分析する。(適応計画)
  気候変動適応情報にかかるプラットフォーム等において、ダウンスケーリング等による高解像度のデータなど地域が必要とする様々なデータ・情報にもアクセス可能とするとともに、地方公共団体が活用しやすい形で情報を提供する。また、地方公共団体が影響評価や適応計画の立案を容易化する支援ツールの開発・運用や優良事例の収集・整理・提供を行う。(適応計画)

【大目標2達成のために必要な中目標】
  国内外における気候変動対策に活用されるよう、地球観測データやスーパーコンピュータ等を活用し、気候変動メカニズムの解明、気候変動予測モデルの高度化を進め、より精確な将来予測に基づく温暖化対策目標・アプローチの策定に貢献する。また、より効率的・効果的な気候変動適応策の立案・推進のため、不確実性の低減、高分解能での気候変動予測や気候モデルのダウンスケーリング、気候変動影響評価、適応策の評価に関する技術の研究開発を推進する。

●中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆国内外における気候変動対策に活用するための気候変動予測・影響評価技術の開発
       国内外の気候変動適応策の立案・推進に貢献するため、地球観測データやスーパーコンピュータ等を活用し、気候変動メカニズムの解明、気候変動予測モデルの高度化、高分解能での気候変動予測等の技術の研究開発を推進し、気温上昇の不確実性の低減や環境の不可逆変化のより確実な解明、極端気象現象に関する高精度な確率的予測や脆弱性・暴露も考慮した影響評価を可能とする。

  ◆地球環境情報プラットフォームの構築
      国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、防災科学技術研究所(NIED)や、気象庁、国土交通省等の政府が保有する地球観測データ等を集約し、多分野・多種類のデータをリアルタイムで統合・解析するための情報基盤を構築するとともに、研究利用に加え、気候変動適応や再生可能エネルギーの導入等の公共・国際利用、産業利用も促進し、我が国の有する地球観測データ等によるイノベーションの創出を図る。

   ◆地域レベルでの気候変動適応に活用するための気候変動影響評価・適応策評価技術の開発
       気候モデルのダウンスケーリング、地域レベルでの気候変動影響評価、適応策の評価に関する技術の研究開発を推進し、農業や防災等の分野において、地方公共団体による地域の実情に応じた効率的・効果的な適応策の立案に貢献する。


<大目標3>
  ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。
  地球環境の情報をビッグデータとして捉え、気候変動に起因する経済・社会的課題の解決のために地球環境情報プラットフォームを構築する。
気候リスク情報等は、各主体が適応に取り組む上での基礎となるものであることを踏まえ、多種多様な気候リスク情報等の収集と体系的な整理を行うための気候変動適応情報にかかるプラットフォームについて関係府省庁において検討を行う。その際「科学技術イノベーション総合戦略2015」(平成27年6月19日閣議決定)において経済・社会的課題の解決に向けた重要な取組として位置づけられた地球環境情報プラットフォームの活用も含めて検討する。(適応計画)

【大目標3達成のために必要な中目標】
  我が国の政府等が収集した地球観測データ等をビッグデータとして捉え、人工知能も活用しながら各種の大容量データを組み合わせて解析し、環境エネルギーをはじめとする様々な社会・経済的な課題の解決等を図るプラットフォームの構築を図る。

●中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆地球環境情報プラットフォームの構築【再掲】
      国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、防災科学技術研究所(NIED)や、気象庁、国土交通省等の政府が保有する地球観測データ等を集約し、多分野・多種類のデータをリアルタイムで統合・解析するための情報基盤を構築するととも に、研究利用に加え、気候変動適応や再生可能エネルギーの導入等の公共・国際利用、産業利用も促進し、我が国の有する地球観測データ等によるイノベーションの創出を図る。

第2章 健康・医療・ライフサイエンスに関する課題への対応

<大目標>
  健康・医療戦略推進本部の下、健康・医療戦略及び医療分野研究開発推進計画に基づき、国立研究開発法人日本医療研究開発機構を中心に、オールジャパンでの医薬品創出・医療機器開発、革新的医療技術創出拠点の整備、再生医療やゲノム医療など世界最先端の医療の実現、がん、認知症、精神疾患、新興・再興感染症や難病の克服に向けた研究開発などを着実に推進する。 また、我が国の医療技術や産業競争力を生かし、例えば、感染症対策などの分野で、諸外国との連携による地球規模の課題への取組や、我が国の優れた力を生かした国際貢献といった主導的取組を進めていく。
  加えて、幅広い研究開発活動や経済・社会活動を安定的かつ効果的に促進するために不可欠なデータベースや生物遺伝資源等の知的基盤について、公的研究機関を実施機関として戦略的・体系的に整備する。


【大目標達成のために必要な中目標】
  ◆健康・医療分野の研究開発
      「健康・医療戦略(平成26年7月22日閣議決定)」及び「医療分野研究開発推進計画(平成26年7月22日健康・医療戦略推進本部決定)」等に基づき、以下の取組を着実に実施する。
       1.薬品・医療機器開発への取組
       2.臨床研究・治験への取組
       3.世界最先端の医療の実現に向けた取組
       4.疾病領域ごとの取組
       5.その他、バイオリソース等研究開発の環境の整備や国際的視点に基づく取組、研究開発法人等で  行うデータベース整備等を含むインハウス研究等の取組
 
  ◆健康・医療に限らない幅広いライフサイエンス分野の研究開発
     健康・医療分野に限らない生命科学に関する幅広い研究開発は、ライフサイエンス分野の裾野を広げ、健康・医療分野の研究開発の新たな成果の創出にもつながる重要な取組であることから、大学等において当該分野の研究開発を推進するとともに、国立研究開発法人理化学研究所がこれまで幅広い研究開発の実践を通じて培ってきた研究ポテンシャルを最大限に活用し、その総合力を効果的に発揮して当該分野の研究開発の取組を実施する。


●中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆健康・医療分野の研究開発
    
「健康・医療戦略」及び「医療分野研究開発推進計画」に基づき、それぞれの項目について研究開発を着実に実施するとともに、社会情勢等を踏まえて、戦略等に記載されていない、老化のメカニズム解明に向けた基礎研究の推進及び研究基盤の構築等の取組についても実施する。


  ◆ 健康・医療に限らない幅広いライフサイエンス分野の研究開発
       国立研究開発法人理化学研究所の優れた研究開発能力を活用し、植物科学の先導的研究、脳科学に革新をもたらす基盤技術の開発・駆使や神経回路機能解析、胚発生の遺伝子・細胞・組織レベルでの理解、実験と理論・計算による生命現象の予測・制御・再構成、モデリングによる恒常性の根幹をなす機能のネットワーク描出、世界最高水準のバイオリソースの戦略的かつ効率的な整備・提供、構造・合成生物学研究及び機能性ゲノム解析研究の技術基盤の先鋭化等を実施し、ライフサイエンス分野のイノベーション創出に貢献する。

第3章 安心・安全の確保に関する課題への対応

<大目標>
  我が国は、地震・津波、水害・土砂災害、火山噴火などの大規模な自然災害により数多くの被害を受けてきた。南海トラフ地震や首都直下地震などの巨大災害の切迫性が指摘され、一度発生すれば国家存亡の危機を招くおそれもある。また、これまでの災害から得られた教訓を今後の大規模自然災害等への備えに生かすことが強く求められている。
   このため、このような自然災害に対して、安全・安心を確保してレジリエントな社会を構築する。


【大目標達成のために必要な中目標】
   大目標の達成に向け、自然災害から人命と財産を保護し、社会の持続的発展を保つという国土強靱化のためには、科学技術を活かし、被害の軽減を図るとともに、発災時の社会の機能維持とその後の早期復旧・復興を図る研究開発を推進する必要がある。このため、以下の中目標のもと、文部科学省は、従来の研究手法に加え、IoT、ビッグデータ、AI技術等を活用し、調査観測やシミュレーションの高度化、防災・減災対策の実効性向上、社会実装の加速等を図る研究開発を推進する。
  1.自然災害を的確に観測・予測し被害を最大限予防する科学技術の研究開発
  2.発災後の被害の拡大防止と「より良い回復」のための科学技術の研究開発


●中目標1達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆災害を予測・察知してその正体を知る技術の研究開発
       大規模な地震や津波、火山噴火等、発生すれば甚大な被害をもたらすリスクの高い災害、及び、地球規模の気候変動に伴い今後激甚化する と予想される風水害、土砂災害、雪氷災害等に対応し、被害の軽減に向けた予測手法の確立や基盤的観測体制の整備に資する研究開発に取り組む。


 ◆災害に負けない建築物・インフラを構築する技術の研究開発
     近年の自然災害を反映した新たな想定と既存建築物・インフラの老朽化に対応し、発災時の被害を最小限に抑えるとともにその後の回復を迅速に行うため、新しい技術・手法を含む災害に負けない建築物・インフラの構築に資する研究開発に取り組む。


 ◆不確実かつ多様な災害リスクの評価と、それに対応する技術の研究開発
     自然災害の不確実性と社会の多様性を踏まえたリスクの評価方法を構築しその知見を取り入れた連携型防災対応や行動誘発につながる防災教育・啓発を推進するための手法、これらの効果を測定する手法等の研究開発に取り組む。


●中目標2達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆複合・誘発災害等を考慮した発災後早期のハザード推定及び状況把握・予測技術の研究開発
        発災後早期に、二次災害や複合・誘発災害の発生を予測するとともに、時々刻々と変化する状況を多面的に把握し、被害を最小限に抑え、迅速な復旧に資するため、リモートセンシングデータやIoT等を用いたモニタリング及びデータ同化・予測の手法の確立や高度化に資する研究 開発に取り組む。


  ◆災害情報をリアルタイムで推定・予測・収集・共有し、被害最小化や早期復旧につなげる技術の研究開発
        発災時に対応可能な有限のリソースで被害を最小化を図り、早期の復旧を実現するため、リアルタイム被害推定・予測、構造物の即時被害判定、被害状況等の災害情報の共有、対応状況や復旧・復興状況の把握・分析、防災業務手順の標準化・適正化、防災力向上等に資する研究開発に取り組む。


  ◆被災者の生活再建支援等を含む長期的な復旧・復興対策に必要な研究開発
        発災直後のフェーズだけでなく、さらに数年以上必要とされる復旧・復興のフェーズにおいて生じる膨大な災害対応について、広域応援態勢の確立やトリアージ(対応の優先度の決定)等も含め、業務を支援する技術の構築に資する研究開発に取り組む。

第4章 国家戦略上重要な基幹技術の推進

<大目標1>
  航空科学技術については、我が国が国際社会において高い評価と尊敬を得ることができ、国民に科学への啓発をもたらす等の更なる大きな価値を生みだす国家戦略上重要な科学技術として位置付けられるため、長期的視野に立って継続して強化していく。

【大目標1達成のために必要な中目標】
  航空科学技術について、社会からの要請に応える研究開発を行うとともに、次世代を切り開く先進技術を開発することにより、我が国産業の振興、国際競争力強化に貢献する。

●中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆社会からの要請に応える研究開発を推進
       (安全性向上技術)
  乱気流等の気象による事故を防止すること及び我が国にとって急務である装備品産業の育成に貢献するために、晴天乱気流検知技術と機体動揺低減技術を組み合わせたウェザー・セーフティ・アビオニクス技術を確立する。また、航空安全に関する先進技術として、航空機の運航における雪氷や雷などの外的要因及びヒューマンエラーに対して、それらの影響を予知・検知・防御する技術の研究開発を進める。
  航空機利用による安全で安心な社会の実現に向けて、災害時に救援航空機を効率的かつ安全に利用する航空機統合運用システムの技術開発を進める。また、無人機技術やヘリコプタの高速化技術等、航空機の更なる利用拡大による社会リスクの低減に必要な技術の研究開発を行う。

        (環境適合性・経済性向上技術の研究開発)
  高効率軽量ファン・タービン技術および機体騒音低減技術について、企業へ技術移転を行えるレベルにまで成熟度を高めるべく、研究開発を進める。また、我が国の産業界の国際競争力の更なる強化に資するため、次世代の超高バイパス比エンジンや次世代の国産旅客機の市場価値を決定づける低騒音・低排出等の環境性能の向上及び燃料消費やコスト等を削減する経済性向上に資する技術の研究開発を行う。具体的には、高効率・低排出エンジン技術、材料開発から機体構造設計までをつなぐ複合材適用技術や抵抗低減技術等の軽量高効率機体技術の研究開発を行う。

  ◆次世代を切り開く先進技術の開発を推進
       (静粛超音速機統合設計技術の研究開発)
  これまでの研究開発で培った国際的優位性を拡大するために、優位技術として飛行実証された低ブーム設計コンセプトを適用した超音速機について、旅客機としての技術的な成立性を実証することを目指し、各分野の解析/試験技術を統合した設計技術の研究開発を行う。


       (革新的技術の研究開発)
  IATA(国際航空輸送協会)が掲げる「2050年までにCO2排出量半減」という目標を達成するため期待される革新的技術として、モーター技術、電源技術、ハイブリッド推進技術等の電動航空機技術の研究開発を進めるとともに、水素等の代替燃料の利用も視野に加えたエミッションフリー航空機技術等の研究開発を行う。


<大目標2>
  化石燃料の高効率利用、安全性・核セキュリティ・廃炉技術の高度化等の原子力の利用に資する研究開発を推進する。さらに、将来に向けた重要な技術である核融合等の革新的技術、核燃料サイクル技術の確立に向けた研究開発にも取り組む。
  東日本大震災からの復興の障害となっている放射性物質による汚染等への対応が求められている。

【大目標2達成のために必要な中目標】
  「エネルギー基本計画」において位置づけられているとおり、原子力は重要なベースロード電源であり、資源の乏しい我が国にとって重要なエネルギー源の一つである。また、地球規模の問題解決や放射線利用等による科学技術・学術・産業の発展に寄与するための重要な役割も担っている。さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故をはじめとするあらゆる原子力に関する事故の再発の防止のための努力を続けていく必要がある。
文部科学省においては、こうしたエネルギー政策や科学技術政策等を踏まえ、以下の目標を中目標として設定することとする。
  1.東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、廃炉や放射性物質による汚染への対策等に必要な研究開発を推進する。
  2.エネルギーの安定供給や原子力の安全性向上、先端科学技術の発展等に資する研究開発成果を得る。
  3.原子力に係る人材の育成・確保、核不拡散・核セキュリティに資する活動、国際協力の推進、電源立地対策としての財政上の措置などを通じ、
    原子力分野の研究・開発・利用の基盤整備を図る。
 
●中目標1達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆福島第一原子力発電所事故の対処に係る、廃炉等の研究開発
 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉等世界的にも前例のない困難な課題が山積しており、これらの解決のための研究開発の重要度は極めて高い。エネルギー基本計画等に示された福島の再生・復興に向けた取組を踏まえ、東京電力福島第一原子力発電所の安全な廃止措置等を推進するため、東京電力、国際廃炉研究開発機構(IRID)、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)とも連携・協力をしつつ、国内外の英知を結集し、安全かつ確実に廃止措置等を実施するための研究開発や人材育成を加速する。また、環境モニタリング・マッピング技術開発や環境動態に係る包括的評価システムの構築及び除染活動支援システムの開発等を進める。

●中目標2達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆原子力の安全性向上に向けた研究
  東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、原子力の利用においては、いかなる事情よりも安全性を最優先する必要があることが再確認された。また、エネルギー基本計画に示されているとおり、原子力利用に当たっては世界最高水準の安全性を不断に追求していく必要がある。
  そのため、軽水炉等の安全性向上に資する燃材料及び機器、原子力施設のより安全な廃止措置技術の開発に必要な基盤的な研究開発を実施し、関係行政機関、原子力事業者等が行う安全性向上への支援等を実施する。また、原子炉施設の規模に合わせた適切な安全性の確保手段として、軽水炉以外の施設に関する安全対策に関する研究についても重要である。

  ◆原子力の基礎基盤研究
         核工学・炉工学・燃料工学など原子力の推進に必要な基礎基盤研究及び幅広い科学技術・学術分野における革新的成果の創出につながる中性子利用研究等の推進は重要である。特に、原子力分野の研究には大規模・特殊な施設の利用が不可欠である。例えば、基礎基盤研究の推進に当たっては、高速中性子による燃料・材料開発が実施できる高速実験炉「常陽」、中性子利用のためのJRR-3、及び中性子照射による治療等に資するKURをはじめとした施設が必須である。研究炉の再稼働や核燃料使用施設等のその他施設を含めた新規性基準への対応や、高経年化対策、また、中長期的に必要な原子力の研究基盤について検討するとともに、研究施設の機能強化が必要である。加えて、エネルギー基本計画を受けて、固有の安全性を有し、水素製造を含めた多様な産業利用が見込まれる高温ガス炉に係る研究開発を国際協力の下で推進することも重要である。

   ◆高速炉の研究開発
         エネルギー基本計画において、核燃料サイクルの推進は我が国の基本方針とされており、高速増殖原型炉「もんじゅ」については、もんじゅ 研究計画に示された研究の成果を取りまとめることを目指すとされている。また、「もんじゅ」の在り方に関する検討会の報告書を踏まえ、原子力規制委員会からの勧告に応えて速やかに具体的な運営主体を示せるよう、課題の解決に向け関係省庁、関係機関と連携しながら対応を進 める。高速実験炉「常陽」についても、新規制基準へ対応した上で、研究開発を進められるよう早期の運転再開を目指す。

●中目標3達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆放射性廃棄物の処理・処分に関する研究開発等
          エネルギー基本計画に示されているとおり、原子力利用に伴い確実に発生する放射性廃棄物について、その対策を確実に進めるための技術が必要である。また、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、我が国の基本方針である核燃料サイクルの推進を支える技術が必要である。このため、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減の研究開発を実施する。また、高レベル放射性廃棄物処分技術等に関する研究開発を実施するほか、原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物の処理・処分を計画的に遂行する技術開発等に取り組む。 特に、核燃料物質や大量の廃棄物を抱えた高経年化施設の安全の確保のための維持管理には莫大な費用が必要となる。このため、研究開発に伴い発生する廃棄物(RI廃棄物を含む)の処理・処分や計画的な廃止措置は、研究開発に必須の事項であり、そのための長期の取組に係る計画が必要となる。

  ◆原子力施設に関する新規制基準への対応等、施設の安全確保対策
          原子力規制委員会の定める新規制基準に対応するために必要な改修・整備等を行う。新規制基準については、原子力機構が持つ高温工学試験研究炉(HTTR)やJRR-3等の試験研究炉、大学が持つ研究用原子炉のみならず、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の研究開発に必要な施設や使用済燃料や廃棄物を安全に貯蔵・管理するために必要な施設など業務の遂行に必要な施設・設備について多岐に亘りその特性に応じた対応を進める必要がある。また、原子力施設の安全を確保するため、高経年化対策等安全確保対策を行う。

第5章 未来社会を見据えた先端基盤技術の強化

<大目標>
  ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。このため、国は、超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術及び個別システムにおいて新たな価値創出のコアとなり現実世界で機能する基盤技術について強化を図る。

【大目標達成のために必要な中目標1】
  超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術、すなわちサイバー空間における情報の流通・処理・蓄積に関する技術は、我が国が世界に先駆けて超スマート社会を形成し、ビッグデータ等から付加価値を生み出していく上で不可欠なものである。また、技術の社会実装が円滑に進むよう、産学官が協働して研究開発を進めていく仕組みを構築し、社会実装に向けた開発と基礎研究とが相互に刺激し合いスパイラル的に進めることが重要である。加えて、AI技術やセキュリティ技術の領域などでは、人文社会科学及び自然科学の研究者が積極的に連携・融合した研究開発を行い、技術進展がもたらす社会への影響や人間及び社会の在り方に対する洞察を深めることも重要である。さらに、こうした研究開発プロジェクトを柔軟に運営できる体制の構築も重要である。
  これらを踏まえ、超スマート社会への展開を考慮しつつ中長期的視野から、本分野に関する基盤技術の強化を図る。

●中目標1達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆イノベーションの創出に向けた人工知能/ビッグデータ/IoT/セキュリティ等に関する研究開発
        ビッグデータの解析を通じた新たな価値を創造するために、革新的なAI技術を開発・活用を推進する。また、ビッグデータの充実のため、 高度なIoT技術を活用し、あわせてセキュリティの研究開発を推進する。

  ◆情報科学技術の利活用による情報システムと社会システムが高度に連携した社会の実現
        「世界最高水準のICT利活用社会の実現」に向けて、課題解決のための技術を確立するだけではなく、社会のあるべき姿の実現のために必要な技術の実用化を見据えた研究開発を推進する。

  ◆新たな価値創出のコアとなる強みを有する基盤技術に関する研究開発
        我が国が強みを有する技術を生かしたコンポーネントを各システムの要素に 組み込むことで、我が国の優位性を確保し、国内外の経済・社会の多様なニーズに対応する新たな価値を生み出すシステムとすることが可能となる。このように、個別システムにおいて新たな価値創出のコアとなり現実世界で機能する技術の研究開発を推進する。

【大目標達成のために必要な中目標2】
   ナノテクノロジー・材料科学技術分野は我が国が高い競争力を有する分野であるとともに、広範で多様な研究領域・応用分野を支える基盤であり、その横串的な性格から、異分野融合・技術融合により不連続なイノベーションをもたらす鍵として広範な社会的課題の解決に資すると共に、未来の社会における新たな価値創出のコアとなる基盤技術である。また、革新的な技術の実現や新たな科学の創出に向けては社会実装に向けた開発と基礎研究が相互に刺激し合いスパイラル的に研究開発を進めることが重要である。
   これらを踏まえ、中長期的視点での基礎的な研究の推進や社会ニーズを踏まえた技術シーズの展開等に取り組むことにより、本分野の強化を図る。

●中目標2達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  ◆未来社会における新たな価値創出に向けた研究開発の推進
        我が国の強みであるナノテクノロジー・材料科学技術を生かしながら未来社会を実現していくことが求められており、その為に必要となる機能性材料、構造材料分野の研究やデータ駆動型の材料設計等の新たな研究手法の開発等を推進する。

  ◆広範な社会的課題の解決に資する研究開発の推進
        エネルギーの一層の効率的利用や医療分野への応用、社会インフラの老朽化対策等、近年顕在化している社会的課題解決の鍵となるナノテクノロジー・材料科学技術分野の研究開発を推進する。


量子科学技術委員会 検討項目(案)

 半導体やレーザーなど、量子論を応用した科学技術や光科学技術の進展はこれまでも産業や社会に大きなインパクトを与えてきたが、近年、先端レーザーによる量子状態制御や、量子情報処理を可能とする物理素子の要素技術等が生み出されはじめ、サイエンスの進展のみならず、超スマート社会における産業応用を視野に入れた新しい技術体系が急速に発展する兆し。
  さらに、欧米政府や世界的企業が投資を拡大する中で、第5期科学技術基本計画の策定(「新たな価値創出のコアとなる強みを有する基盤技術の強化」)を踏まえ、21世紀のあらゆる分野のサイエンス進展と我が国の競争力強化の根源となり得る量子科学技術を、どのように推進していくべきか。
  以下の○の項目毎に、複数の有識者からの発表を得て議論。

(1)「量子」及び「光」
    ○量子情報処理・通信
       (量子コンピューティング、量子シミュレーション、量子メモリ、量子中継、量子通信・暗号等)
       技術要素例:超伝導量子ビット、スピン量子ビット、イオン・トラップ、トポロジカル量子ビット、冷却原子・分子系、量子テレポーテーション
       問題意識:出口が明確化してきており、欧米の投資も盛んなところ、我が国の強み等を踏まえ、如何なる推進方策を講じるべきか。


    ○量子計測・センシング・イメージング
       技術要素例:光格子時計、重力ポテンシャル計、原子波干渉計、ダイヤモンドNVセンタ、光量子イメージング(生体機能イメージング含む)、
       量子もつれ光問題意識:出口の具体化とともに、我が国の強み等を踏まえ、如何なる推進方策を講じるべきか。


    ○最先端フォトニクス・レーザー
       (1)光源の先鋭化、新たな光機能の発現・制御
         技術要素例:極短パルスレーザー(高出力化を含む)、光周波数コム、フォトニック結晶レーザー、プラズモニック結晶、メタマテリアル
         問題意識:これまでの資源投入により、最先端の光源等の研究開発が進んでいるが、どのような出口(光源等の利用によるサイエンスの進展を含む)を見据えた如何なる推進方策を講じるべきか。

       (2)産業応用の高度化
         技術要素例:量子リソグラフィ、精密レーザー加工、レーザー計測、レーザー顕微鏡
         問題意識:これまでの資源投入により、最先端の光源等の研究開発が進んでいるが、産業応用の進展を見据えた如何なる推進方策を講じるべきか。


     ○パワーレーザー(※議論の場は改めて検討)
         問題意識:欧米が大型施設の計画を進める中、我が国の強み等を踏まえ、どのような出口(サイエンスや産業応用の進展)を見据えた如何なる推進方策を講じるべきか。


(2)「量子ビーム」(※量子ビーム利用推進小委員会にて議論)
    ○放射光、X線自由電子レーザー、中性子・ミュオンビーム、イオンビーム
         問題意識:量子ビーム施設・設備の利用成果の最大化のため、量子ビームの相補利用、ユーザーフレンドリーな利用環境、施設・設備環境の高度化といった課題を踏まえた如何なる推進方策を講じるべきか。

      ※各項目毎に、以下の観点からの考察を含み得る有識者発表を得る。
          ・これまでの研究動向、現状分析(例:日本の強み、看過できない弱み)
          ・今後の方向性(例:何に注力すべきか)
          ・推進上の課題・隘路・留意点

      ※また、各項目毎の議論と並行して、成果の進展が特筆される技術要素等についてトピックス的に随時議論を行うこともあり得る。

      ※委員会は、当面、1~2ヶ月に1回程度の開催を予定。


お問合せ先

科学技術・学術政策局 企画評価課

(科学技術・学術政策局 企画評価課)

-- 登録:平成28年08月 --