資料2-1 「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」改定に向けての基本的方向性

平成25年4月22日
科学技術・学術審議会決定

1.指針改定に当たっての時代認識・課題等

(a)経済の再生を図り、国際競争力を強化するには、科学技術を基盤としてイノベーションの実現を強力に推進していくことが必要不可欠

(b)科学技術イノベーション創出の源泉となる科学技術・学術の進歩に資する基礎研究・学術研究の推進は重要であり、最新の科学技術・学術の知見をもとに既存の学理の再体系化を促すことも意識しながら基礎研究を推進することで、研究成果を効果的に創出していく必要性

(c)東日本大震災で顕在化した科学技術の課題への対応を図るため、研究者自身が社会の要請を的確に把握し、多様な専門知の結集などによる課題解決を可能としていく研究開発システムに改革していく必要性

(d)厳しい社会経済情勢、財政事情の中、限られた貴重な資源・財源を用いて研究開発を行わなければならない実情を踏まえ、科学者コミュニティ自らが研究開発活動の意義・在り方等について考え、改善・行動し、説明していく姿勢を示す必要性があることが国際的にも広く認識されている

(e)目的に即した評価を的確に実施し、評価結果の適切なフォロー等により評価結果を効果的に反映させる仕組み、評価の頻度・負担の増大による弊害の回避の必要性

 ⇒このような我が国の研究開発の諸課題、時代背景、社会経済事情、国際情勢等に鑑み、国、資金配分機関、大学、研究開発機関、研究者、評価者等が一体となり、以下の項目等を踏まえた研究開発評価を実施する。また、評価の結果が次の研究開発活動の活性化につながっているか、その効果を検証する。

2.科学技術イノベーション創出、課題解決のためのシステムの推進

(a)知の探求の段階にとどまることなく、社会ニーズに応え成果の実用化を含む社会実装に至る全段階を通じた研究開発を推進する

(b)論文発表数、論文被引用度は客観的な指標であるが、その数値だけに頼り安易に目的化することがないように留意し、それを補う客観的な指標を開拓する

(c)研究開発活動の費用対効果を的確に把握し、例えば、全てを加点方式により評価し処遇や資金配分に反映する。また、必要な改善措置等を講ずる(学術の展開に対する影響力など、研究の質及び新規性に関する新たな指標の導入を検討)

(d)研究開発基盤強化の観点から、ベンチャー企業のような、実績は少ないが技術力や実用化へ向けての熱意がある研究開発組織・機関とも連携・協力して研究開発を推進する

(e)研究開発機関等の研究者は、当該組織のミッション達成のために研究開発を行う

3.インパクトの大きなハイリスク研究、学際・融合領域・分野間連携研究等 の推進

(a)研究開発目標の達成には高いリスクがあるが、成果が出た場合には社会的・経済的・学術的に非常に大きなインパクトを与える可能性が高いハイリスク研究や、学際・融合領域・分野間連携研究が積極的に推進されるよう、事前評価や事後評価の方法・評価基準、マネジメントの仕組みを、施策やプログラム・制度の目的を踏まえて導入する(プロジェクトのリーダー等に裁量の権限と責任が委ねられることが許容される仕組みも重要)

(b)ハイリスク研究の事前評価においては、研究開発成果が技術的課題その他に大きなインパクトをもたらす可能性があるものであるか、その研究開発を実現するマネジメント能力を有しているか等について確認する

(c)ハイリスク研究の研究開発実施段階においては、適時、研究開発の進捗、諸情勢の変化等を踏まえ、研究開発の中止も含め、適切な形で目標・計画を見直すとともに、事後評価においては、挑戦的な研究開発課題(プロジェクト)が当初の目標達成に失敗しても、予期せざる波及効果に大きい意味がある場合等には、次につながる有意義なものとして評定することを許容するような評価基準を設定する

(d)学際・融合領域・分野間連携研究については、既存の新しい研究領域の開拓を目標とする施策やプログラム・制度以外の審査においても不利にならないよう扱い方を明記するなど、研究の芽を適切に拾い上げるとともに、研究の進展に応じて、評価の基準、方法等を適切に見直す

4.次代を担う若手研究者の育成・支援の推進

(a)若手研究者が励まされ、創造性を発揮しやすくなるような取組を推進する

(b)ポストドクターや博士課程学生の適切な処遇、研究環境の醸成、若手研究者が自立した研究者へ育ち、多様なキャリアへ進むことを支援するような活動等を促進する

(c)若手研究者の経歴・年齢・国籍などの属性が多様化している状況を踏まえ、それらの人材が不当に不利益を被ることのないようにする

(d)女性のキャリアパスの多様化と研究開発に携わる女性研究者の育成のための研究環境の促進

5.評価の形式化・形骸化、評価負担増大の改善

(a)評価は、最も評価目的・評価事項等に理解・精通している者が行う評価、すなわち「自己評価」が基本かつ重要であり、高い倫理観に基づく質の高い自己評価を基盤とした評価システムを再構築することが必要。質の高い自己評価をベースとした第三者評価、外部評価については、合理化、簡略化する。

(b)評価を導入・システム化してきた結果として、逆に責任・権限関係が不明確化する事態も生じており、意思決定の主体が適切な判断等を行うために評価が活用されるべきとの観点から、評価の在り方を再構築する

(c)「基礎研究、応用研究、開発研究」、「学術研究、戦略研究(イノベーション志向研究等)、要請研究(課題解決型研究等)」、「個人研究、組織研究、組織間共同研究、社会総がかり研究、国際共同研究」等のそれぞれの研究の位置付け、研究方法、研究機関の特性を踏まえ、資金配分や評価の手法を最適なものとし、成果の最大化を図る

(d)評価に関する専門的能力を有する人材の育成、評価の設計を担当できる人材の育成、評価に関わる人材の能力アップを図り、キャリア展開を推進する

(e)PD(PO)への責任・権限の付与、明確化、強化及び評価システムの合理化、柔軟化を図る

6.研究開発プログラム評価
(a)政策的に推進すべき具体的な科学技術イノベーション創出へ向けてのゴール(目的)を明確に設定出来る場合等については、今回初めて本格的に導入される「研究開発プログラム」レベルで時間軸を設定し達成度目標を基にした評価が、研究開発施策の評価に際して効果的に機能していくことが期待される

(b)研究開発プログラム評価の導入にあたっては、既存の評価体系(政策評価、大学評価、独法評価、競争的資金制度の取組等)と整合性をとりながら、合理的かつ実効的な形で試行的、段階的に進める

(c)基礎研究、学術研究等については、画一的・短期的な観点から性急に成果を期待するような評価に陥ることのないよう留意することが必要であり、研究開発プログラム評価においても、その特性を十分考慮する

お問合せ先

科学技術・学術政策局企画評価課

(科学技術・学術政策局企画評価課)