第2部 各地球観測の実施方針 第1章 基盤的事項

 この章においては、複数の分野及び府省・機関に関係する基盤的事項である国際協力と基盤的技術開発に関する地球観測の実施方針を述べる。

1 国際協力

 現代の地球観測は、一国の観測のみによって十分な成果を得るものではない。地球温暖化、成層圏オゾン層の破壊、水資源の不足などの地球規模の課題や、地震・津波・洪水などの大規模な自然災害は、全球規模、地域規模の取組を必要としている。このため、全球気候観測システム(GCOS)、全球海洋観測システム(GOOS)などの国際観測計画や地球圏-生物圏国際共同研究計画(IGBP)、世界気候研究計画(WCRP)などの国際計画が進められている。
 我が国は、アジアモンスーン、エルニーニョ現象などの影響や、周囲を海洋に囲まれているため海洋からの影響を受けやすいなどの地理的特性がある。このため、我が国の環境問題や自然災害に対応する際にも、我が国の領域内で実施される観測や我が国の機関によって実施される観測だけでは、これらの問題等に十分に対応することができない。このため、今後も様々な国際計画に参加するとともに、周辺のアジア・オセアニア地域との連携を強化していくことが我が国にとって重要である。
 また、我が国は、地球観測に関する政府間会合(GEO)の執行委員国として、国際社会の中でリーダーシップを十分に発揮し、他のGEO加盟国及び国際機関と協調しながら国際的な観測協力の円滑化に努める必要がある。
 さらに、我が国は、開発途上国から大学等に地球観測分野の研究者等を受け入れて教育訓練を行うとともに、大学等から開発途上国に地球観測分野の専門家等を派遣することによって、地球観測に関する能力開発を支援している。今後は、このような大学等の機能を活用して、特に、アジア・オセアニア地域との連携協力を強化する観点から、人材育成・能力開発を通じた国際協力を更に推進することが重要である。
 このような状況と関係府省・期間の準備状況を踏まえて、平成19年度において、「分野間及び府省・機関間の連携」(第1部参照)で挙げた施策のほか、以下の新規又は拡充の施策を推進するとともに、「地球観測の推進戦略」分野別地球観測等事業一覧(別表)に掲げる継続の施策を着実に実施することが必要である。

事業番号 施策の概要 府省・機関名
5-3-1
6-2-2
7-2-5
7-5-3
アジア18か国44機関及び7国際機関と連携したアジア太平洋域の災害管理(森林火災、洪水、地震火山等)に資するための陸域観測技術衛星「だいち」の観測データを含む災害関連情報の共有活動(センチネルアジア計画)の実施 宇宙航空研究開発機構

2 基盤的技術開発

 全球規模、地域規模の地球観測には、観測衛星、航空機、レーダなどの広範囲にわたる観測が可能な機器、ブイ、フロート、陸域・海域における地震観測網などのように人間が現場で直接データを取り続けることが困難な場所で自動的に観測を行う機器、船舶・有人潜水船・無人探査機など場所を移動して現場観測を行う機器といった多種多様な手段が必要である。
 例えば、地球観測衛星、地上レーダ、ウィンドプロファイラなどの観測機器等は、最先端の科学技術と研究開発のための莫大な資源を投入しなければならないものである。しかし、これらの観測機器等は時間的・空間的な分解能が高く、効率的・効果的な観測を実現するものであることから、観測水準を向上させるための基盤的技術開発を不断に行うことが必要である。
 特に、基盤的技術開発においては、開発した観測機器等がもたらすデータの利用者が広範に及ぶとともに、最先端の観測技術に係る潜在的ニーズの把握が必要であることから、データ利用者との間で十分な情報共有と調整を行った上で、構成や仕様といった観測システムの内容を具体化することが重要である。例えば、防災のための次期地球観測衛星システムの開発において、内閣府及び文部科学省が関係府省・機関等の協力を得て、陸域観測技術衛星「だいち」を用いた防災のための利用実証実験計画と次期システム構築に向けた基本方針を取りまとめるなど、利用者の具体的なニーズの把握などに努めている。
 このような状況と関係府省・機関の準備状況を踏まえて、平成19年度において、「分野間及び府省・機関間の連携」(第1部参照)で挙げた施策のほか、以下の新規又は拡充の施策を推進するとともに、「地球観測の推進戦略」分野別地球観測等事業一覧(別表)に掲げる継続の施策を着実に実施することが必要である。

事業番号 施策の概要 府省・機関名
1-1-18
1-1-26
マイクロ波放射計、多波長放射計による地球表層の包括的な観測を行うことを目的とした、地球環境変動観測ミッション衛星(GCOM)のためのセンサーの開発研究の実施 宇宙航空研究開発機構
5-1-4
7-1-10
国際災害チャーターへの参加、防災関係機関等との協力を通じた、災害観測・監視における陸域観測技術衛星「だいち」の利用実証とその成果の災害監視衛星システムの構築検討への反映 宇宙航空研究開発機構
7-1-7
「次世代海洋探査技術」のうち、「ちきゅう」による世界最高の深海底ライザー掘削技術の開発において、深部掘削孔内計測技術の開発を実施 海洋研究開発機構
7-1-8
8-3-5
11-1-4
「次世代海洋探査技術」のうち、次世代型深海探査技術の開発において、海中、海底及び海底下の精密観測・探査機器の開発を実施 海洋研究開発機構
8-1-6
9-2-3
10-2-1
12-4-5
ハイパースペクトルセンサーより取得した地球観測データから有用な情報を抽出する技術の本格的な研究開発、スペクトルデータベースの構築 経済産業省
8-1-7
9-2-4
10-2-2
12-4-6
ハイパースペクトルセンサー等の研究開発 経済産業省

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