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資料2

ITプログラムのプロジェクト中間評価報告概要(案)

平成16年8月24日
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
情報科学技術委員会

1. ITプログラムについて
 ITプログラムは、我が国が5年以内に世界最先端のIT国家となることを目的に掲げる「e-Japan戦略」及び「e-Japan重点計画」を推進するため、国が重点的に取り組むべき研究開発を実施し、得られた成果の実用化・企業化までを目指すものであり、平成14年度から開始された。

2. 中間評価結果
(1) ITプログラム全体に対する評価
 通信に適した波長帯における単一光子発生素子を世界で初めて実現するなど、世界トップレベルの成果が計画を前倒しして実現されている事例があり、ITプログラムの顔とも言える成果が生み出されていることは高く評価できる。また、研究開発成果の普及から事業化までを展望した体制を産学の連携により構築するなど、実施体制についても、今後の産学官連携プロジェクトにおいて参考になるものと評価できる。
 当初設定された達成目標は、現在の社会ニーズや研究開発の国際的な進展状況との関係でも、概ね適切であると認められるが、一部の研究開発課題については達成目標の修正が必要となっている。
 特に、達成目標の実現に見通しが得られない、等の問題点が指摘された研究開発課題もあり、今後は抜本的に見直すことが必要とされた。その際、何故計画通り進捗しなかったのか原因の把握に努めることが重要である。
 今後は、本評価結果を十分に考慮し、今後の研究開発に反映させることを期待する。

 ITプログラムの各研究開発課題の実施にあたっては、これまで研究開発に参画する大学を中心にして人材を育成してきた(平成15年度末において、修士課程学生228名、博士課程学生117名、ポスドク111名)。また、産学連携体制の下、企業に在籍する研究者の育成にも貢献している。
 研究開発の実施にあたっては、産学官の連携によって研究開発を一体として進めること等により、産業界のニーズに適応した人材や融合領域研究の促進に寄与する人材の養成・確保の視点を重視して推進することが重要であり、ITプログラムにおいてもより一層の人材育成に対する取り組みを期待する。

(2) 世界最先端IT国家実現重点研究開発プロジェクト
【光・電子デバイス技術の開発】
 次世代のフォトニックネットワークを実現するためのキーデバイスの開発という、社会的ニーズを捉えた目標の達成に向け、産業界と強固かつ適切に連携した実施体制を築き、通信波長帯における単一光子発生器の実現に世界で始めて成功するなど、国際的にも優位な成果を実用化への道筋をつけつつ当初計画の前倒しで実現しており、非常に高く評価できる。今後とも、インパクトのある成果が生み出されるよう、研究開発の更なる加速を期待する。

【高機能・超低消費電力メモリの開発】
 国内外の研究開発動向等から、1ギガビット級のスピンメモリの実現を目指すという達成目標は適切であると判断できる。目標達成に不可欠ないくつかの開発項目において、世界に先駆けた成果を達成しており、高く評価できる。今後は、1ギガビット級スピンメモリの実現に向けて、産業界との連携をより強めつつ、製品化を視野に入れた研究開発を進めることを期待する。

【超小型大容量ハードディスクの開発】
 製品となるハードディスクの記録密度の向上の速さが、プロジェクト開始当初と比べて鈍ってきており、本プロジェクトの成果の重要性がますます高まる中、世界最高の記録密度を実現する要素技術の実現に目処をつけ、現在試作に取り掛かっていることは、高く評価できる。今後は、記録密度1テラビット毎平方インチを目指した要素技術開発の努力を継続しつつ、記録密度500ギガビット毎平方インチの確実な実証を期待する。

【次世代モバイルインターネット端末の開発】
 達成目標及び中間目標は、学会における無線LANの標準化の動向に沿っており適切である。無線端末用LSIを開発試作するなど、研究開発は着実に進捗している。LSIの設計を進めつつ、中間目標である通信速度300メガビット毎秒の無線端末の試作機を実現したことは、評価できる。今後は、達成すべき目標をより明確化し、特許や標準化のための活動に注力すべきである。
 なお、参加企業との間で、知的財産権の取り扱いについて適切に整理することが不可欠である。

【戦略的基盤ソフトウェアの開発】
 開発するシミュレーションソフトウェアは、産業界からのニーズがあり、ソフトウェア開発から普及までを見据えて、強固な産学連携体制を構築していること、すでに公開したソフトウェアが数多くダウンロードされ、量子化学分野等の実証計算において世界的に注目される成果が得られていることは、高く評価できる。今後は、産業界等との連携をより強化して成果の普及を促進するとともに、特に実用性が見込まれるソフトウェアの開発へより重点化させ、インパクトのある成果を生み出すことを期待する。

(3) 「eサイエンス」実現プロジェクト
【スーパーコンピュータネットワークの構築】
 生命科学の研究では分散した研究資源をネットワーク経由で利用することは必要不可欠であり、地域の特性を活かし、産業界への成果普及のためにNPOを設立するなど、優れた実施体制により、セキュアグリッド基盤、マルチスケール生体シミュレーション、タンパク質化合物相互作用検索などの成果が達成できていることは高く評価できる。今後は、製薬などの産業界における実用化を実現する観点から、他のグリッド研究や応用ソフト分野プロジェクトとの連携を強めて、重複を排除しつつ研究開発内容を重点化することが望ましい。

【スーパーコンピュータネットワーク上でのリアル実験環境の実現】
 マルチストリーミング通信技術やボリューム検索技術などの要素技術についての成果は評価できるが、現在のネットワーク性能等を踏まえると、目標達成の見通しは未だ明らかになっていない。今後は、研究開発内容を有望な要素技術に重点化するとともに、それらの製品化や標準化に取り組むべきである。

【ITを活用した大規模システムの運用支援システムの構築】
 大規模システムの安全性・信頼性の向上は一般的には重要なテーマであるが、ロケット打上げ時の実運用を題材にしているにもかかわらず、適用現場とのすり合わせが不十分で、実施体制として適切とはいえない。また、不具合原因特定推論技術等の、中間時点での達成度が適切に説明されていないため、達成目標である運用システムの実現性に疑問がある。人材育成に対する取り組みも不足している。今後は、これまでの研究開発の成果を適切にとりまとめた上で、抜本的に達成目標や実施体制等を見直すべきである。


 
表:中間評価対象の研究開発課題と実施機関
研究開発課題名 機関名 研究代表者
(1)世界最先端IT国家実現重点研究開発プロジェクト    
  1光・電子デバイス技術の開発 東京大学生産技術研究所 荒川 泰彦
  2高機能・超低消費電力メモリの開発 東北大学電気通信研究所 大野 英男
  3超小型大容量ハードディスクの開発 東北大学電気通信研究所 中村 慶久
  4次世代モバイルインターネット端末の開発 東北大学電気通信研究所 坪内 和夫
  5戦略的基盤ソフトウェアの開発 東京大学生産技術研究所 加藤 千幸
(2)「eサイエンス」実現プロジェクト    
  1スーパーコンピュータネットワークの構築 大阪大学サイバーメディアセンター 下條 真司
  2スーパーコンピュータネットワーク上でのリアル実験環境の実現 北陸先端科学技術大学院大学 松澤 照男
  3ITを活用した大規模システムの運用支援システムの構築 (株)ギャラクシーエクスプレス 永野 進


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