参考資料2
平成19年4月16日(月曜日)14時〜17時
学術総合センター 中会議室4
井上(明)主査、家委員、井上(信)委員、小川委員、大野委員、長我部委員、金子委員、川上委員、駒宮委員、酒井委員、荘司委員、西村委員、福山委員
鈴木高エネルギー加速器研究機構長、野田日本原子力研究開発機構理事
木村量子放射線研究推進室長、他関係官
【井上(信)委員】
鈴木機構長は、人員が全然つかなかったと説明されましたが、KEKサイドからの動機というのは、東大の原子核研究所時代の大型ハドロン計画であったわけです。その計画実現のために、核物理コミュニティーとしては、一番大切な全国共同利用研究所の原子核研究所をKEKに吸収させるという決断をしてこの計画の推進を図ろうとした経緯があるわけです。そのことは理解しておいていただきたいと思います。この作業部会ではなくて別の場所で議論することだとは思うのですが、KEKとしては、5ページに記述のある種々のプロジェクトやKEKBの後のことだとか、リニアコライダー等の国際的なプロジェクトとの関係とか、そういうことを考えておられると思うのです。不確定な要素もあるかと思いますが、各プロジェクトの優先順位などのシナリオがあるかと思います。そのシナリオの中でJ-PARCをどのように位置付けしているのかお伺いします。
【鈴木KEK機構長】
最初に原子核研究所を潰してKEKと一緒になったというところについてですが、現在のJ-PARCは、ニュートリノを含めたこともあり原子核研究所の計画よりもっと大きくなりまして、必ずしも原子核研究所の大型ハドロン計画だけを取り込んだものではありません。
【井上(信)委員】
それはわかっています。
【鈴木KEK機構長】
そのような経緯を考慮して人員配置をしております。先ほどの将来計画のお話でございますけれども、KEKはJ-PARCについて、2009年にニュートリノビームを出すところまでを第期の計画と考えております。そこから先は、J-PARCの運転と電子・陽電子の実験とを調整しながら、文科省と話し合いJ-PARCの第期計画をどのように進めるかということを詰めていきたいと考えております。
KEKBについては積分ルミノシティーが1,000fb-1に達した時点で次の計画へ移行することを含めて検討しております。この数値は、2008年末から2009年に達成されると考えておりますので2009年が1つの節目だと思っております。
リニアコライダーについては、レファレンスデザインレポートが出ましたけれども、今後3年間程度で超伝導加速器の空洞のR&Dがうまくいけば、プロジェクトが進むでしょうし、反対にうまくいかなければ、また先に延びることが考えられます。ですから、2009年、2010年がターニングポイントだと思っています。
LHCが、おそらく2009年ぐらいに結果を出すだろうと思います。ヒッグス粒子や超対称性粒子が発見されるかどうかで、リニアコライダー計画も変わってきます。もし、それらの粒子が発見されなかったらリニアコライダー計画は先延ばしになると思います。以上のことを考慮し、現在KEKでは、J-PARC、KEKB、放射光、LHCについて2009年以降どのプロジェクトを推進するかの検討をしております。
【酒井委員】
加速器を造ることだけがKEKのミッションではないはずですよね。原子核コミュニティーは、KEKがどのように第期計画に取り組まれるかを心配しています。J-PARCはワン・オブ・ゼムではないと言っていただければ安心をします。
原子核コミュニティーは、最低限の成果をあげるために人員配置と各種支援をKEKに要求してきました。しかし、その要求が到底満たされているとは思えません。
【鈴木KEK機構長】
第期という意味が酒井委員と私では違っております。私は今考えている第期計画をどうするかということでもって第期と言いました。私どもとしてはとりあえず実験をやって成果を出してもらいたい。成果なしにすぐに第期を進めることは考えていません。第期でもって実験成果を出した上で、他のプロジェクトと文科省全体の予算を見ながら第期計画を進めていくものと考えております。
ワン・オブ・ゼムということですけれども、現在KEKでは複数のプロジェクトを行っています。もちろん、放射光や高エネルギー物理など、すべてのプロジェクトを一本化することはできません。全体の運営状況を見ながらやっていきます。
井上(信)委員から今後の計画や体制について御質問がございましたが、いつまでもKEKが現在の体制のまま運営されることはないと思います。今後、ますますプロジェクトが巨大化し多額の予算が必要になります。そうなりますと、恐らくKEKは発展的に分かれていくこともあろうかと思います。先ほど私が申し上げましたのは、現在はこのような体制でやっているということでございます。それから、人員配置と各種支援に関して原子核コミュニティーの要求が満たされていないという話ですね。
【酒井委員】
原子核コミュニティーにはハドロン物理とか幾つかのブランチがありますが、50GeV(ギガ電子ボルト)で成果を上げるということが一番の目標です。我々は、日本として成果を上げたいという意思を持っています。しかし、十分な人員配置と各種支援を頂かないと世界的な成果を上げていくのがなかなか難しいと思います。だから人員配置や各種支援について再調整が検討されていると思うのです。KEKがJ-PARCと他のプロジェクトを同時に2009年に向けて考えていると言われると、若干違うのではないかという印象を持ちます。
【鈴木KEK機構長】
J-PARCからいい成果が出ることが第一であると考えています。J-PARCセンターの中に成果を出す優秀な人材を確保することよりも、全体が協力し合っていかにしていい成果を出すかを目指すべきだと思っています。
【酒井委員】
原子核コミュニティーは、ニュートリノの部分も含めてJ-PARCに責任を持っていると思っています。成果を上げるためには、難しいことですが異なった立場にある各大学等を組織していく必要があります。その点をKEKに主体的にやって頂きたいとお願いしているだけです。
【鈴木KEK機構長】
J-PARCをいかにして成功させるかということを考えております。その辺の人員配置と、原子核コミュニティーから出された要求に関してもチェックしてみます。
【酒井委員】
J-PARCセンター長は、両機関においてどのように位置付けをしているのでしょうか。その位置付けによって両機関がどのようにJ-PARCを扱っているか分かると思います。J-PARCセンターが、素粒子原子核研究所、物質構造科学研究所と同格であるならば、J-PARCセンター長は普通に考えれば理事であるはずですよね。そのように扱っているのか両機関にお伺いします。
【鈴木KEK機構長】
現在KEKでは、研究所長と研究施設長が理事を務めています。KEKには理事が出席する所長会議がございますが、J-PARCセンター長も理事と同格として所長会議に出席しています。
【酒井委員】
理事ではないのですね。
【鈴木KEK機構長】
理事は数が決まっているのでJ-PARCセンター長は理事ではございません。
【野田JAEA理事】
JAEAでは、研究拠点として東海研究開発センターや核融合をやっております那珂核融合研究所があります。これらはJ-PARCセンターと同格でございます。しかし、JAEAの場合は理事の人数が少ないため、研究拠点の所長またはセンター長は理事ではございません。
【鈴木KEK機構長】
先ほど酒井委員からJ-PARCセンターの位置付けについて御質問がございましたけれども、J-PARCセンターはKEKとJAEAに共通するところを見ています。外部から見た場合には、J-PARCセンターのみが見え、JAEAやKEKは見えません。すべての意見は、J-PARCセンターを通して入ってきます。J-PARCセンターでもって物事が判断されて、そしてKEKに関するものはKEKに、JAEAに関係するものはJAEAに振り分けます。そして両機関に関係する意見はJ-PARC運営会議が決定してそれを尊重するという立場に立っております。
KEKは、研究に関してどのような状況においても課題採択委員や開発採択等に提出することは全く妨げておりませんで、是非どんどんそういうものはやってもらいたいと思っています。
加速器あるいは装置開発という研究もございます。それに関しましてもJ-PARCセンターで案をつくってもらって、J-PARC運営会議で予算について討議します。あるいはKEKの機構長やJAEAの理事長が研究をサポートします。ただし、JAEAにも全体の計画や予算もございます。研究に関しても十分JAEAと相談した上でやっていきたいと思います。
【川上委員】
J-PARCセンターの勤務者の資料で、KEKがかなり力を入れてJ-PARCを建設しているということはよく理解できました。現状の人員の中からJ-PARCに人を割り当てるということで対応されていると受け取りましたが、今後建設が進んでいくにつれて、特に中性子科学では研究面でユーザーへのサポート等が必要になるかと思うのです。そういったことに対する将来を見通した計画がこの資料からは見えないのですけれども、そこを説明していただけますでしょうか。
【鈴木KEK機構長】
加速器については、概要ですけれども計画を出しております。今後、中性子に関してどう対応するかということは、検討しなければいけないと考えております。現在、放射光が中性子と全く同じ状況でございます。放射光のビームラインが増えることでユーザーが多くなります。現在、放射光では1人が3本程度のぐらいビームラインを担当している状況です。恐らくJ-PARCのニュートリノに関しましても同じような状況になると思います。現在具体的なアイデアはありませんが、将来計画において人員配置をする際には、事務職および技術職も含めて体制を考えたいと思います。
【川上委員】
2年後、3年後の具体的な予算や人員配置について、これから考えるということですか。
【鈴木KEK機構長】
今は、いかにして来年からJ-PARCを運転する経費を出すかという非常に難しい問題がございます。その先を見ながら文科省等も含めて今後検討していきたいと思っております。
【金子委員】
J-PARCを使う側からすると、KEKとJAEAの区別なしに使うことになるわけです。ですから、KEKとJAEAの足並みの悪さはできる限りなくしてJ-PARCセンターとして統一感をもっていただきたいと思います。ユーザーが装置利用をしやすい申請方法にしていただきたいと思います。
【大野委員】
確認をさせていただきますけれども、この作業部会で議論するのは建設体制ではなく運営体制だと理解してよろしいですね。
【鈴木KEK機構長】
はい、私の理解では運営体制と思っております。
【駒宮委員】
J-PARCというのは非常に難しい加速器で、そんなに簡単に定常状態にはならないという認識を持っています。ですから、ここからここまでは建設でここからここまでが定常的な運転というのが放射光の場合と随分違うと思います。放射光の場合は、加速器がある程度定常的になったら通常の運営ができるのですが、J-PARCは最初から非常に難しいマシンで、一番いいビームが出るまで時間がかかります。KEKもかなりパッチを当てるなどをやっていかないと定常状態にならないと思うのです。ですから、現時点で定常状態を前提に議論することはできないと思います。それから、第期計画は、そもそも第期計画できちんとした成果が出てからやるもので、最初から第期計画ありきのものではもちろんないわけです。その点についてもきちんと議論していかないといけないと思います。
【酒井委員】
そこは駒宮委員といつも認識が違うのですが、原子核コミュニティーとしては、第期、第期と分けたつもりはありません。しかしながら、予算の制約があるため、第期では主に加速器を整備することにしました。原子核コミュニティーとしては、新しい原子核の実験装置を1台も製造せずに、現在保有している実験装置を移設するだけで実験する条件で始めたわけです。第期と言われていますが、第期に行かなかったら何のためにやっていたか分からないとまでは言いませんが、第期は当然やるものだと思ってこの作業部会があるのだと認識しております。しかしながら、KEKはものすごく一生懸命やっているということも分かりますし、加速器はどうなるかわからないということも重々認識しています。KEKが、腰が引けた言い方でなくて、責任持ってやり通しますと言ってくれたら済む話なのだと思います。そうすればここにいる委員の方も非常に安心できるということを言っているだけです。原子核コミュニティーとしてはものすごくKEKに頭が下がる思いです。
【鈴木KEK機構長】
我々は、J-PARCセンターの人たちも含めて、もっと自信を持ってやった方がいいと思うのです。やはりこれだけのことを皆さん一生懸命やっているのであって、あまり悲観的になるのではなくて自信を持ってやってほしいというのが私の意見です。
【福山委員】
今の問題とも関係すると思うのですけれども、鈴木機構長からの御説明で、歴史的にKEKが加速器に関して種々の計画をお持ちなのは分かりました。しかし、KEKBなどの計画とJ-PARC計画の位置付けは同じなのですか。J-PARCは、国としてコミットしていて、KEKはかなり重いミッションを引き受けられたように理解するのです。他のKEKの計画は、KEK内部のプロジェクトであって、J-PARCはナショナルプロジェクトなのではないでしょうか。両機関の内部プロジェクトとは重要度や位置付けが違うのではないかと思うのです。KEKでは、J-PARCはKEKBなどの内部プロジェクトと同じ列にあるものなのでしょうか。意識の上ではどういう位置付けになるのでしょうか。
【鈴木KEK機構長】
個人的には、KEKの素粒子関係や電子・陽電子関係はいずれも世界的なプロジェクトだと思っております。例えばB−Factory実験は、世界でSLACと、KEKの2つしかなかったので、それ以外では実験ができません。ですから、KEKに来ている共同研究者約400名のうち外国の方が半分以上です。J-PARCも全く同じように、世界で2つあるいは3つしかないプロジェクトです。だから、私はJ-PARCも電子・陽電子の衝突実験も、これも世界的な規模の実験だと位置付けております。どちらが軽い、重いというようなことは考えておりません。
【福山委員】
このことについて国はどのように認識しているのですか。
【木村量子放射線研究推進室長】
J-PARCのプロジェクトは、御案内のとおり立ち上げる前平成12年度に、当時の学術審議会と原子力委員会がいわゆる大型プロジェクトの第三者評価を初めてやった、まさにさきがけでした。それをやることになったきっかけは、当時文部省と科学技術庁の統合という機会であり、非常に象徴的なプロジェクトでした。現在に至るまで、JAEA、あるいはKEKの中でJ-PARCの建設予算をとにかく最優先で配分し最優先のプロジェクトとして進めてきたわけです。今後我々は、運用がスムーズにいくようにサポートしたいと考えております。
ただ残念なことに、独立行政法人あるいは国立大学法人等のシステムが変わる中で、例えば運営費交付金の人件費の額などに一定の制約がかけられるようになってしまいました。この枠の中で両法人とも、どのように資源や人員を効率的に回していくかということに意を割かれていることは重々承知しております。相対的なプライオリティーという問題もあると思います。現在建設中の施設を今後どのように運用していくかについては、我々もよく両機関と相談をしながらやっていきたいと思っています。
このシステムを研究開発法人に一律に当てはめるのが本当にいいのかということについて、現在他のところでも議論がされていると聞いています。これはもうKEKとかJAEA個別の法人の問題ではなくて、国から派生した研究開発を行う機関全体の運営のあり方にかかわる問題であります。我々もそういったところに今何が困っているのかということをインプットしながら議論の行方を見守っているというのが現状でございます。
【西村委員】
いまだに、J-PARCセンターの組織が一体どうなっているのか分かりません。先ほど、KEKの鈴木機構長から御説明がありましたけれども、それは少なくともKEKの機構長が最終的に責任をとるのだというお話でしたし、逆にいえば、JAEAの話が全くないように思います。やはり私は、J-PARCをやらないといけないなという感じを抱いています。しかし、組織的なところをもっときっちりさせて、国民に対して明快に説明をする必要があると思います。
【井上(明)主査】
それにつきまして、特にJAEA側ではいかがでしょうか。
【野田JAEA理事】
このJ-PARCセンターができたのは1年以上前ですけれども、それまでは基本的に両機関が共同して建設してきました。施設を安全面やユーザーのことも考えた上で一体的に動かすため、さらに国際公共財として使うために両機関が運営協定を結びJ-PARCセンターを設置しました。今後とも、予算面でなかなか難しいこともありますが、J-PARCセンターではKEKと協力して一体的にやっていきたいと思っております。
【鈴木KEK機構長】
私も国民に対して明確に説明するということは、非常に大切だと考えております。J-PARCセンターのミッションを含めて議論しなければいけないと感じております。
【西村委員】
鈴木機構長のお話は分かりましたが、JAEAの野田理事の御説明はもうひとつ分からないところがあります。だれがJ-PARCの責任者なのですか。2人の責任者がいるということなら、これは組織としては重大な問題だと思います。そのあたりのところがわからないなというのが私の正直な印象です。
【小川委員】
J-PARCは、国家プロジェクトで始まったと思います。しかし、KEKでの1つのセンターという位置付けや、JAEAでの11研究開発拠点の1つという位置付けでは、縮小されたように感じるわけです。外から見てJ-PARCセンターが1つ打ち出されて、J-PARCセンター長が責任を負うこととした方が、国民に理解されると思うのです。やはりこれだけ巨額な予算を1つの共同利用研究所が取ることは異例なことです。それで、J-PARCに多額の予算が行くことを阻止しようとする議論もあるわけですから、やはりそこを納得させるのは、J-PARCセンターが独立したプロジェクトであるということを打ち出した方がいいのではないかという気がするのですけれども、共同利用研究機関とやったほうがよろしいのですか。
【木村量子放射線研究推進室長】
国の立場からすると、当時、J-PARCを立ち上げたときは、これぐらいしか国家的な大型プロジェクトがなかったと思うのです。最近、第3期科学技術基本計画の中で国家基幹技術という考え方が出てきました。国として相当大型のプロジェクトを資源や人事的なリソースを最優先に配分し責任を持って進めていこうというのが国家基幹技術です。国家基幹技術を各研究開発法人に担っていただく上で大事なのは、組織が格上なのか格下なのかということよりも、責任ある体制でプロジェクトを進めていただくことなのだと思っています。例えばJAEAの中で考えてみますと、今のITER(イーター)を含む核融合あるいは核燃料サイクルの研究開発は、いずれもJ-PARCセンターと同格の組織のもとでやっていただいているわけです。それは国として是非これを最優先で進めてほしいというナショナルプロジェクトでやっていただいているわけですから、今いただいた御指摘が必ずしも当たるかということについては、そこはいかに責任のラインを明確にして仕事をきちんと管理して進めていただけるかというところにかかってくるのではないかと思います。
【小川委員】
私は、やはりJ-PARCセンターのセンター長が全責任を負うという独立した機関であった方が、国民は納得すると思います。
【駒宮委員】
その方が国民は納得できるかもしれませんが、加速器は動かないかもしれません。KEKにはJ-PARC以外にも種々の重要なミッションがあるわけです。そのなかでJ-PARCをやっていかなければいけないわけです。現在KEKの職員は約700人で、そのうち加速器関係の職員は約200人です。その中の半分ぐらいの職員がJ-PARCにかかわっているのですから、相当大きな比重をかけているわけです。J-PARCセンターは前の推進室を母体としてつくられました。推進室とは、ミニ研究所みたいな組織でして、KEKの加速器のラインや機構長を中心にしたラインの関与することが低かったわけです。しかし、推進室のような小さい組織ではやっていけないということ、さらにはKEKの加速器の専門家がJ-PARCに関与が必要になったために仕方なく現在の組織になったと思います。本来であったら、J-PARCセンター長が責任を負うとした方がよろしいのかもしれません。しかし、今までの実験的な事実から、それではうまくいきませんでした。それで現在のような組織になったのではないかと思います。
【井上(明)主査】
将来的には、今の御意見も報告の中には盛り込むと思いますけれども、当面の間はJ-PARCセンターが実際に運用開始するにおいては、KEK、JAEAの協力なしでは立ち行かないということの方向で議論していただいていると思います。
【駒宮委員】
やはり先ほど申し上げたように、それは将来どうなるかわからないわけです。この加速器はだんだん性能が上がっていくものですから、かなり長い間KEKとJAEAの協力がないと運転できないと思います。どこかの時点で両機関の協力が打ち切られたら加速器自体がきちんと動かないと思います。
【井上(明)主査】
将来の検討事項として残すという報告案になるのだと思います。
【鈴木KEK機構長】
組織を外部から見えるようにしなさいとの御意見でございますが、まさしくその通りだと思います。そのために研究所を独立させるということもあると思います。しかし、J-PARCはKEKとJAEAという、これまでのミッションが全く異なる機関が共同でやるという初めてのケースです。今までの事例では、研究所や大学の中に新たに研究所を設置していたわけです。この場合は、外部から見たとき研究所の役割が見やすいと思います。我々は、J-PARCを試金石だと思っています。これから、KEKとJAEAがJ-PARCをうまく運営すれば、逆に新しいコラボレーションのシステムとして国民に提案できると思います。現在は、新しい取り組みを模索している段階です。そのため、今までに経験したことがないことなどが発生し、外部から見ると組織が不透明になっているという点が一部にあると思います。
【井上(明)主査】
ここで運営の取り組みや位置付けなのですが、ユーザーあるいは科学技術の視点からJ-PARCが順調に立ち上がり、施設が非常に有効に使用され、成果を上げることがすべてにおいて最優先だと思います。さらに、組織は国民から見て納得しやすい形であるべきだと思います。本来であれば、両機関が一本化した形が理想だと思いますが、過去の経緯から現在の体制に至ったようです。これは今後の検討事項という方向にしたいと思います。本作業部会としては、順調にこの大型プロジェクトが立ち上がって研究成果が上がるという点に絞って報告を出すことができればと思っております。
【家委員】
取りまとめの方向性として、できるだけポジティブなトーンでやるということにはもちろん賛成ですけれども、私にはいまだに、本当のところがなかなかわからないという気持ちがあります。先ほどの組織の問題についても、バックグラウンドを知っている人には判断がつくのだろうけれども、知らない者にとってはなかなか判断がつかないということがありました。
この評価の基本的な方向性についても、こういう取りまとめをすることがその後どういう影響を持つのかというのが私どもにちょっとわからないところがあります。例えば1つの例をお聞きしますけれども、「3.中間評価に対する指摘事項等の対応」を読みますと、まずリニアックの性能回復が最優先事項であるという書き方になっています。その後に、第期計画は各当該分野におけるプライオリティーづけを行うことが望まれる、と書かれているのですけれども、最初のリニアックの性能回復をなぜやるかというのがよくわかりません。ここに書いてあるような、短時間で実験ができるのでより多くの人が利用できる、または、性能アップ、ということは結構なことなのですけれども、それだけだと納得しにくいと思います。財政的に余裕があれば全部やればよいし、国がやりますから大丈夫ですと言ってくだされば私たちはそれ以上何も言わないのですけれども、もし本当にぎりぎりの選択をしなければいけないのだとしたら、私にはここまでの情報だけでリニアックの性能回復が第期計画よりも優先であるという判断はできないのではないかという気もします。あるいは専門に近い方にもう少し説明していただければ、私も納得できると思うのですが。むしろユーザーの方がそういうふうに納得されているなら、私はそれでいいのですけれども。
【井上(明)主査】
専門的なユーザーの立場から御意見お願いします。
【川上委員】
中性子に関して言えば、創薬に関係する1つの重要な技術になると思っているのですけれども、やはりリニアックが性能回復してかなりの高性能を発揮して初めて見えてくるものも出てくるのではないかという期待もあります。一方、期計画では、中性子関連で何か特別にあるかというと、そういうものもないので、私とすれば、まずリニアックの性能回復に全力を割いていただくということはよいと思っております。
【福山委員】
このリニアックの性能回復については、最初400MeV(メガ電子ボルト)が目標だったところ今は181MeV(メガ電子ボルト)を目標とすることになり、もちろんそこまで達成できたのは大変評価されるべきかもしれませんが、400MeV(メガ電子ボルト)はそれを達成しないと最終的な計画の一番根幹のところが実現できないという位置付けのファクターだと理解していますので、これはJ-PARCをやる以上はやらなきゃいけないことではないのでしょうか。むしろ当事者のほうから何かコメントはありませんか。
【永宮J-PARCセンター長】
我々はこれはマストと考えおります。そして第期計画が後ろ倒しになってよいという意味ではなく、むしろ第期計画はきちっとやっていかなきゃいけないと考えております。若干実際的なことを言いますと、建設計画で決めていた予算の所掌では、リニアックのエネルギー回復はJAEAのものがほとんどでありますし、第期計画はJAEAが主となる核変換を除いてかなりのところがKEKの所掌になっております。KEKとしてはこちらに全力を注いでいただく一方で、JAEAとしてはまず最優先にリニアックの性能回復をお願いしたいと我々としては考えております。
【福山委員】
わかりました。比較して選択しろという話でないなら結構です。
【酒井委員】
我々原子核のグループでこういうことを議論したわけではないのですが、このJ-PARCの加速器自体は、強度フロンティア、すなわち、加速器として全く新しい領域を開拓しようとしているので、それにとってもリニアックの性能回復は必要なのだと私は認識しております。
【小川委員】
この評価の基本的な方向性というところに書いてある作文があまりにもありきたりに思えます。インパクトがありません。だからこういう疑問が生じてくるので、そこの作文をもう少し考えられたらいかがでしょうか。
【木村量子放射線研究推進室長】
今はとりあえず最低限の内容だけを書いていますが、実際に報告書をつくるときには、なぜこれが必要になったかというバックグラウンドおよび緊急性の説明等を含めて、それぞれの評価の項目がインパクトを持った形になるようにさせていただきたいと思います。そこは是非ともどんどん御意見を出していただければと思います。
【小川委員】
やはり研究とか開発というのは、将来の時期と、そこに向けて今何が非常に必要か、どこまでは可能性があるか、そしてさらに発展性として何が考えられるか、ということがきちっと書かれてないと評価のしようがなくなります。そこをきちっと書くことがこういう基本的な方向性というのを示すときには一番必要な気がします。
【井上(信)委員】
細かいことですが、フライホイールのプライオリティーはあまり議論したとも言えないような気がします。結論は別にこだわらないのですけれども、これも次回以降議論する運転経費も考えて議論する必要があると思いますので、しばらくはこれでいいけれどもずっとそのままなら損になるというような勘定も出せるのでしたら出していただきたいと思います。
【駒宮委員】
今のリニアックの回復を含めた話なのですけれども、世界的な競争に打ち勝つためということが非常に重要なポイントなのではないかと思うのです。だから、その点を強調していただきたいと思います。
それからもう1つ、第期計画で出た成果をもとに、数年すればそれまでと全く違う新しいいろいろな計画もサイエンスの側から出てくる可能性はもちろんあるので、そういうものも含めてきちんとした議論をして、それで第期計画というのを策定するほうがよろしいかと思います。
【井上(明)主査】
本件は、ずっと意見の出しっ放しだと次に進まないということで、文部科学省が中間的に整理したという位置付けのものです。決してこの文章そのものが最後の報告書に入っていくのではなく、一応ここで中間的に整理させていただいて、それに基づいて少し次に進みましょうという位置付けだということで御理解いただきたいと思います。
【木村量子放射線研究推進室長】
そのとおりです。大方の御意見はこういう方向で整理できるのではないかということです。
【井上(明)主査】
それで、今日御議論いただくと同時に、文部科学省としては今日の御意見も踏まえてこの評価の基本的な方向性についてもさらに修正していただくということですね。
【木村量子放射線研究推進室長】
はい、そうです。
【井上(明)主査】
ということで、このままでは特に問題ありという点についても、何もこれは決まったわけではありません。今はとりあえずは仮整理しておきましょうということですので、どうぞ意見をお願いします。
【川上委員】
私も企業から参加した委員ですので、多分産業利用等の観点から意見を求められていると思っているのですけれども、やはり評価事項として産業利用の促進のためといったところを別に挙げていただいた方がよいと思います。文部科学省の方ではあまり産業というのはなじみがないかもしれませんが、例えば茨城県では産業利用用のビームラインを2本つくり、産業利用に非常に積極的になっているという背景もありますので、そこは別に項目を起こしていただいて、まとめていただきたいと思います。
さらに中身についてですけれども、この前は、話の流れで利用料金の話になりましたが、実際、ユーザーとして中性子を利用する場合に一番の問題は何かと言いますと、施設設備ができたのですぐに使えるというものではなく、かなりの数の専門家、KEKなりJAEAの専門家の方と一緒になってやっていくということが大事になるということだと思います。そのときに、今の仕組みでは決して十分ではありません。トライアルユースというのはありますけれども、トライアルユースではぱっと使うというわけにはいかないので、その1つ前に、例えば共同研究などの形で一緒にやれる仕組みが必要だと思います。そういった議論がこれまでなされてなかったと思います。そこについて、今、J-PARCサイドはどのようにお考えでしょうか。そこの部分も含めて方向性を考える必要があると思います。
【永宮J-PARCセンター長】
前に分析センターなどのお話をしたと思うのですが、我々もそういう必要性を感じていまして、例えば、トライアルユースの前にサンプルだけを持ってきていただいてJ-PARCのほうでデータをお渡しして、中性子の有効性をわかっていただくというような仕組みを作らなければいけないと考えております。産業利用に関しては、そういうことやインストラクションブックの整備など、いろいろ課題としてあるので、我々は今後そういうこともきちっとやっていかなければいけないと思っているのですけれども、多少遅れていることも事実です。トライアルユースの以前にあることといえば、やはりそういうことではないかなと強く思っているのですけれども、そのためにもやはり人の配置なども必要ですので、いろいろ検討は進めております。
【大山J-PARC副センター長】
また、初期の段階では、一緒になって実験装置を使っていく中でいろいろな新しい使い方などに発展していく可能性は非常に高いと思います。例えばそのような初期の段階にパワーユーザーの組織を作り、そこに産業界の人も入ってもらって、その中で産業界としての使い方を模索していく仕組みも必要ではないかと思っております。
【川上委員】
確かにそういう分析センターその他の考え方というのも必要だと思うのですけれども、せっかくこの中にコーディネーターという言葉があるのですから、まず一体どういう研究分野があるかということを理解していただくことが重要だと思います。おそらくここに集まられているアカデミアの方は、産業利用といっても何のことかわからないのではないでしょうか。そういったところをコーディネートする人間がいるかいないかというのは非常に重要な課題ですけれども、その話がこれまで出てきてないと思います。そういう方がいるということがおそらく将来的な人員その他研究の方向性にも発展すると思いますので、そこをきちんと考えていただくよう、是非お願いします。
【長我部委員】
今の話題と関連するのですけれども、既にJRR−3とかJRR−4でトライアルユースが始まっているわけですから、PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルといいますか、そこで出てきた課題や成功例をもっと活発に盛り上げていったらよいのではないかと思います。本格的には装置が稼働してからということになるのかもしれませんが、その辺のアクションが今の段階からもう既にある程度始まっていて、できたら報告書にもアクションにつながるような形で文言を盛り込んでいただくとよいのではないかと思います。現在から原子炉を使って始まっているトライアルユースの結果をフィードバックして、J-PARCが稼働したときに少しでもスムーズに動けるように考えていただければありがたいと思います。
【金子委員】
本当に同感で、皆さんのおっしゃるとおりだと思います。我々が過去、先生方とおつき合いさせていただいた中で、担当してくださる方たちは本当に親身になって相談に乗ってくださいますし、そういう装置に付いていらっしゃる研究所の方たちとのやりとりは順調にいっているとは思います。しかし、逆に言うと、組織の壁等のためにそういう先生方が動きにくいということがないかが心配と思っています。茨城県とKEKとJAEAという3つの組織の中で、我々としては横のつながりをいかにうまくとっていただけるかというところに非常に期待をしております。ある装置では人が投入できなくて、この装置はもっと使えるはずなのになかなか稼働率が上がらない、もしくは使える人しか使えないとかいうようなことにならないようにしていただきたいと思います。
【荘司委員】
評価の方向性として、人を育てるという視点も欲しいと思っています。こういう大きなプロジェクトですので、当然、産業利用のコーディネーターの育成という面もありますでしょうし、これからの若手の研究者を育てるという意味では非常にいいプロジェクトだと思いますので、是非そのような視点も取り入れていただきたいと思います。
【西村委員】
最初の鈴木機構長のお話では、加速器自体を使っての物理の話に重きがあったように思います。私は、先ほどの川上委員と同じように、創薬とかタンパク質などとの融合がすごく大事だと思います。特に中性子に関してこれからバイオロジーのところでどのような可能性があるのか、X線とどれだけ違うのか、X線と違うデータが出るのか、などが非常に興味があります。私は、今は機器メーカー、それから以前は製薬メーカーにおりましたが、日本の機器をつくる能力は、加速器も含めて非常にハイレベルだと思うのですけれども、結構ひとりよがりのように思えます。これをどう使うのか、例えばバイオロジーの方向へどのように有効に使っていったらいいのか考えていくことが国民への還元になると思います。だから、そこの接点をバイオロジーの先生方を入れて建設的なよい方向へきちっと方向づけて欲しいというのが正直な気持ちです。
【小川委員】
2ページに「5.利用料金の考え方は適切か」というところがありますが、意見として、「研究は評価されても技術支援は評価されないことが考えられ、技術支援が評価されるような仕組みを考えることが必要」と書いてありますけれども、評価の基本点な方向性ではそれに対して何も触れていません。私はこの意見はすごく大事だと思います。というのは、例えば会社からサンプルを請け負って測定する場合に、技術者が非常に優秀である場合は論文に載るのか、あるいは特許にどうかかわってくるのか、などということも関係してきます。研究所では、研究のサポートをする技術者も昇給もしてポジションも上がっていくシステムがあってよいはずなのですけれども、技術者の評価はいつも違うところに置かれて、研究者とは別だということがベースにあると思います。そうではなくて、J-PARCというのは、マシンのメンテナンスが一番大きな役割を果たすので、そこはやはりきちっと考えたほうがよいのではないでしょうか。ここには利用料金しか書いてありませんが、そこが私は一番大切なことと思います。
【福山委員】
2点あります。1つは、研究の方向性の問題と産学連携の両方が関係しているのですけれども、X線・放射光と中性子の連携についてです。我が国はSPring-8というすばらしいマシンがあり、一方でJ-PARCができてきます。X線と中性子が違うのは当然ですが、その違う各々の特長を生かして各々ですばらしい成果を上げると同時に、両方がコラボレートするというのは非常に重要な視点だと思います。先ほどお話に出ました生物学を対象にするときにも、水について調べるのなら水素を見るのに適した中性子がよいけれども構造を調べるのだったらX線のほうがよい、というようなコラボレーションをこれから追求する必要があります。そういう観点で、今の時点から中性子、J-PARCを利用しようとする方が、エックス線、SPring-8も利用することができるように考えるべきだと思います。また、SPring-8は、産学連携に関してすばらしい経験を積んでおられるので、今の時点から交流して意見交換して積極的に取り込むというスタンスが非常に大事だと思います。それはお互いにプラスになると思います。ここでは、X線の利用は普及しているが中性子とは違うという言い方になっているのは、ちょっともったいなくて、違うのは当然ですが、その違いを意識して両方のよいところを取り込むようなスタンスの連携を今から模索するべきです。産学連携に関しては、X線と中性子は違いますから、実際のオペレーションが違うのは当然なのですけれども、仕組みという観点では、SPring-8は随分工夫されてすばらしい仕組みができており、窓口がはっきりしている。それをできるだけ早くJ-PARCとしても参考にされるのが効率的だと思います。
もう1つは、この作業部会で結局一番大事なところではないかと思うのですが、J-PARCセンターの位置付けについてです。つまり、2つの大きな巨人の中でできた子供であるJ-PARCセンターがどうなっていくかをきちっと検討しなければこれから先はないと思います。J-PARCセンターができて1年経って、既にいろいろ経験されたことの中で、よいところとまずいことがあるのだろうと思います。当事者であるKEK、JAEA、それからJ-PARCセンターから、今の時点での問題点などについて何か率直な意見が出てきて、それをこの作業部会で伺って、こういうことを考えたらどうかなどと議論する状況が作れると、この作業部会は非常に成果が上がるのではないかと期待します。当事者の率直なお気持ちを聞かせていただけると、随分議論が進むと思います。
【木村量子放射線研究推進室長】
1点目の放射光と中性子の相補的利用については、これは非常に重要な問題でして、産業界の利用をより高いレベルにもっていくためにも必要ですし、当然アカデミックな利用をする部分でも必要だと思っております。この作業部会でどこまで議論するかというのは別にして、そこの部分は大事という方向性を出していただくのは貴重な御意見だと思います。具体的にどうしていくのかということについては、実はこの作業部会とは別に量子ビームの研究開発及び利用を議論している部会がございまして、4月末ぐらいから始めようかと思っております。具体的な方策については、そちらのほうで議論したいと思っています。
あと2つ目の、もっと言いたいことをお聞かせくださいというのは、センター側はいかがでしょうか。
【永宮J-PARCセンター長】
今思いつくこととしましては、なぜJ-PARCセンターをつくったかという動機に関してです。建設体制を作った時期に、どういうフィロソフィーで進んだかというと、両機関が責任を持つということでスタートしました。今もそのような建設体制で進めております。そちらがそれをきちっとやるならそれに全責任を持ちなさい、こちらのほうはこれをするのだったらこれに全責任を持ちます、そういう観点で建設体制はスタートしたのです。それは1つのきちっとしたやり方なのですけれども、その間に我々が何を問題に感じたかというと、原研は原研のルールでやり、KEKはKEKのルールでやることです。これは両機関が責任を持ってやるためにそうしなければいけないのですが、運用体制になったときに、果たしてそういうことをずっと続けていて、利用者は大丈夫だろうか。何回目かの作業部会で私は言いましたが、利用者本意の体制でないと、運営体制になったときには立ち行かない。したがってJ-PARCとしては、1つのルール、1つの一体的な運営体制の中で運転しないと、やっていけない。我々は現場では、日々、原研のルールとKEKのルールが違うことに非常に苦い、つらい思いもしているので、そういうことをきちっとするということもあるのですが、むしろ、外部の利用者から見たときにちぐはぐにならないようにしたいということが1つあります。
それからもう1つは、多目的施設であるJ-PARC内での調整です。50GeV(ギガ電子ボルト)は主にKEKが運転をやっていまして、3GeV(ギガ電子ボルト)と物質・生命科学実験施設はほとんどJAEAが担当しています。そうすると、その間の調整などについては、両機関が責任を持っているだけでは動かないわけです。例えば3GeV(ギガ電子ボルト)で非常に優先的な、50GeV(ギガ電子ボルト)の運転は控えてもらって今ここに全リソースを集中しなければいけないようなことが起こったとします。あるいは逆の場合もあるかもしれません。そういう柔軟な対応をとりたいときに、センターとして、両機関に相談をしながら進めるにしても、何らかの融通性が自分たちに欲しいと思います。
それから3番目は、法律的なことですが、安全のことです。これは2者申請というのでやっていますが、2者申請をやったときにどこが責任を持つのかと言われて、文部科学省の担当部署にはJ-PARCセンターが責任を持つと一応記述して出しました。しかし、本当に責任が持てるのかということを文書で提出するように言われています。そういうことで、これまでJ-PARCセンターができて1年余りの中で、我々が非常に苦心して、両機関も認めてくださって進歩したことは、J-PARCセンターで放射線安全の取り扱いがきちっと対応できる体制となったことです。それから、利用料金は両機関では全然ルールが違いますが、それを1つのルールにしてIUPAP的なルールで無償にする、あるいは実験審査体制を一緒にして、合同でJ-PARCセンターの中に置くなど、そういうことはJ-PARCセンターができた後合意して進んでいっているポジティブな面だと思います。
ただ、人の配置でも両機関が責任を持っていたら両機関に最終的な法律的責任はあるのですけれども、我々がこのときにはこれが欲しいということを両機関の人事や予算体制に反映するメカニズムがまだ十分ではないと感じます。かなり時間がかかり、じわじわとやっていかなければならないことですが、そういうところがまだこれからの課題として残っていると思います。
【福山委員】
短期的なことではいろいろ困難はあったかもしれないですけれども、かなりクリアして実体化できている。でも、長期的に考えたときに、今おっしゃったような問題があるということですね。それはKEK、JAEAの問題ではなくて、むしろ何かの制度や枠組みの行政の問題ですか。
【鈴木KEK機構長】
永宮センター長は間に挟まれていろいろな制度面で苦労されておられるので、その苦労話だったのかと思いますけれども、私の見解では、現場はちょっと違うと思います。例えばリニアックと3GeV(ギガ電子ボルト)はJAEA、50GeV(ギガ電子ボルト)はKEKといっておりますけれども、実際は全部が一体になってやっています。リニアックはもちろんJAEAがやっておりますけれども、KEKでいろいろな開発をやっていて、それを持っていってセットしています。3GeV(ギガ電子ボルト)もJAEAが中心ですけれども、相当な人たちがKEKから入ってやっています。そういう意味では、現場サイドはもうほとんど、特に若い人たちはJAEAとKEKの差がないくらい一体になってやっております。確かに組織面で先生は非常に苦労されていることと思います。今、組織の縛りが非常に硬くなりまして、センター長は非常に苦労されているのですけれども、建設と運用の現場では、私は今非常によい方向に向かっていると考えております。
【井上(明)主査】
まだ御意見等がおありかと思いますが、一応時間になりましたので、本日はここで終了させていただきます。ここでの議論の中で抜けている点はないかどうか、評価の基本的方向性の適切性、妥当性については是非御意見を事務局にお寄せいただくということでお願いしたいと思います。これに関してはもう少し、4月一杯ぐらいに御意見をいただいて、また次の機会にこの方向性の妥当性について何度か重ねて議論させていただきたいと思います。
【酒井委員】
今回は機構長が出ておられて、大変ありがたかったと思うのですが、出席はもうこれで終わりになるのでしょうか。
【井上(明)主査】
はい。ただ、この会議の進め方におきまして、機構長はお忙しいかもしれませんが、両機構の理事については、できるだけ機構側の意見を伺うということで御出席をお願いしようということにはなっております。
【酒井委員】
それで、今日は来ていただいて非常にありがたかったと思う点は、この井上(信)委員のコメントにもある加速器建設体制について、機構長が、最終的には私の責任だとおっしゃられたことです。やはりそう言っていただけますと、聞いている人はみんな安心します。しかし逆に言うと、外から見たらJ-PARCセンターなのでクレジットはJ-PARCセンターとなるわけですから、責任はKEKがとるとおっしゃるとKEKは損をしませんか。加速器建設の責任はKEKがとるとおっしゃったように聞こえたのですが。
【鈴木KEK機構長】
J-PARCセンターというのはJAEAの一部でありますし、KEKの一部でありますから、損かどうかということではなく、J-PARCセンターではちゃんと物が動くということを願っています。
【井上(明)主査】
J-PARCセンターの運営会議が最高決議機関だと思いますが、そこには機構長と理事長も出席されるのですか。
【永宮J-PARCセンター長】
運営会議は、機構長と理事長は別途の決定機関ですから、出席しておりません。
【鈴木KEK機構長】
一応、出席してもよいことになっています。ですから、私はそれにずっと出席していたのですが、出て、あまりいろいろなことを言うとまずいと思って、前回からはやめています。
【井上(明)主査】
それで、最終責任は両機構長にあるが、そこで決まったことの執行の責任者はJ-PARCセンター長という理解でよろしいですね。運営会議には機構長と理事長は出席してもよいということですが、機構長と理事長が出席しないと決まらないような議題も多々あるのだと思われます。法人化後は特にこういう予算問題、人事などのトップマネジメントはそのように思われます。この作業部会としては、両機構の思惑も含めて御議論していただいて、実のある報告を出すことができればよいと思っております。
それでは、本日、非常に活発な御意見等いただきましてありがとうございました。これで閉会させていただきます。
―了―