資料2
平成19年1月19日(金曜日)10時〜12時10分
学術総合センター 中会議場4
井上(明)主査、家委員、井上(信)委員、大野委員、長我部委員、金子委員、川上委員、駒宮委員、酒井委員、荘司委員、西村委員、福山委員、横山委員、和気委員
永宮J-PARCセンター長、大山J-PARCセンター副センター長、山崎J-PARCセンター副センター長、大野委員(財団法人高輝度光科学研究センター専務理事)
【委員】
J-PARCセンターは独立の組織ではないため、J-PARCセンターの構成員(メンバー)は人事的な観点からは必ずどちらかの機関(JAEA,KEK)に所属しているということですが、例えば永宮センター長はどちらの所属になるのですか。
【説明者】
公式には両方に正式な身分を持つことになっています。両機関の合意としては、センター長がKEK出身の人の場合は給料をKEKで手当てし、JAEA出身の人の場合はJAEAが給料を手当てする。このように給与面ではいずれかの機関からということはあるのですけれども、公式な身分として両機関に正式に位置付けられています。
【委員】
J-PARCセンターはJAEAおよびKEKの各々の組織表の中にはどのように記述されるのですか。先ほどのご説明だと、JAEAでは組織の中に研究拠点というのを独立に作られているということで、組織表に見ることができますが、KEKの組織が不明なのですが。
【説明者】
この点は図を持って説明すれば良かったのですけれども、KEKの場合には他の研究所や施設と同等の組織になっています。
【委員】
それは別個に記述されるのですか。
【説明者】
別個に記述します。
【委員】
メンバーが各々機関からは独立してセンターに入るのではないのですか。
【説明者】
KEKとJAEAの違いは、KEKの場合、センター長以外は全員、本籍はKEKの研究所ないし施設になります。だから、Aという人が素粒子原子核研究所(素核研)から来たとしたら本籍は素核研、しかし、J-PARCセンターの業務を行うという任務を持ってJ-PARCセンターに属するのです。
【委員】
組織表としては、個々の人がセンターに兼務するということですか。
【説明者】
そのとおりです。
【委員】
KEKの組織表ではJ-PARCセンターが見えるようになっていない、公式には見えないようになっているのですね。
【説明者】
公式には見えます。しかし、センターの所属者は全員兼任だということです。
【委員】
KEKの組織表の中にセンターがあるのですね。
【説明者】
そのとおりです。例えば、KEKの加速器研究施設所属のAさんというセンター員がいた場合、このセンター員は兼任となるので、J-PARCセンターの名簿にも名前があるし、KEKにも名前がある。名簿としては両方に名前が出てくるわけです。J-PARCセンターの業務をする時にはセンター長の指揮命令系統に入るのです。
【委員】
センター長がこれからいろいろリーダーシップをとって事業を効率的に進めるためには、資料にもありますけれども指揮系統がはっきりしなければいけない。その観点でセンター長は先ほどの資料では、運営会議に対してどういう位置関係を持つのですか。
【説明者】
運営会議で規定された業務に対してセンター長は責任を持って行うこととなっています。
【委員】
それは、運営会議からセンター長へ一方通行で指示が出るということですか。
【説明者】
指示については、公式には運営会議から両機関の長に行き、両機関の長がそれをセンター長に命令する系統になっています。
【委員】
その時のセンター長の意思表示はどこで、どういう形でされますか。
【説明者】
センター長の意思表示は、まずは両機関に対して行うのが通常です。
【委員】
それは運営会議とは別な場面に行うのですか。
【説明者】
運営会議で最終的には決定されるのですけれども、運営会議を行う前に両機関に合意を得てから運営会議に持っていくわけです。公式には直接運営会議で議論していただいて良いことになっていますから、両機関に合意を得るといったことは省いても良い場合もあります。センター長は運営会議のメンバーの1人ですから。しかし、このようなケースは稀です。
【委員】
センター長が意思表示をするスキームははっきり確立していると思ってよろしいでしょうか。
【説明者】
事と次第によりますが、そうする方向に持って行きたいと思っています。
【委員】
少し先のことかもしれませんが、説明のあったJASRIとの関連で非常に気になったのですが、J-PARCセンターの研究活動に関する業務内容は、サービス業務に関わる研究活動といった表現になっている。一方、JASRIは運営組織である。双方の状況は全然違うと思うのですが、J-PARCセンターは固有の研究活動をやるような仕組みを組織内に持たない、つまりサービス的な活動が基本で、それに関わる研究活動は含まれているけれども、独自の研究活動もこの業務内容の中に入っていると思ってよろしいですか。
【説明者】
この点はかなり長く議論していることでありまして、逆にこの評価部会の皆さんのご意見を大いに参考にしたいところであります。個人的には、センターが世界的に機能するためには、研究はほとんど外部の方がされるものの、J-PARCセンターの中にも研究業務がないと非常にいびつなものになるので、研究活動を入れ込むべきだと主張しております。ただ、あまりJ-PARCセンター側の人の利用が過ぎますと、両機関は何をするのかということになりますので、そのバランスを取るため、現在は装置開発に関わる研究開発という業務のみということに規定されています。例えばKEKの素核研や物構研でも、J-PARCを全面的にサポートするために研究活動を行いたい、それはJ-PARCセンターだけに任せるのではなくて、両研究所の主要な役割として置きたい。JAEAにも同じような量子研究部門というのがございますから、そこできちんと研究活動をサポートしていきたいと思っているわけです。バランスはいつも重要になってきますが、J-PARCのようなトップレベルの施設の維持運営には、研究する心がないと不可能だと思います。これは、大学共同利用機関そのもののあり方の根底にもある精神だと思います。大学共同利用機関側は、大学等の研究者が来るためのサポート機関ですけれども、その研究の内容を知っていないと正常なサポートはできないと思います。
【委員】
最後のSPring-8のところでご説明いただいたのですが、登録施設利用促進機関というのは、原理的にはJASRIとは別の組織が名乗りを上げて、そこが交付金を受けて運営をするということなのでしょうか。
【事務局】
ご存じの方もおられると思うのですが、SPring-8は歴史的な経緯がありまして、今はこういう形で落ちついているのですが、最初SPring-8は共用を前提として整備しようということで10年以上前にスタートしました。ただ、行政上の条件から、今のJ-PARCも同じなのですが、国が新しい機関を作って行うということができない状態が過去20年続いておりましたので、当時の原研と理研のジョイントベンチャーでスタートしました。
ただし、原研も理研もみずから研究を行う機関でありまして、日本全体に施設を共用することは専らとしていなかったため、今後共用していくにはどうしたらいいかということで、当時、特別立法を整備しまして、両法人とは別に共用利用支援を行う指定法人というのを指定してその業務に当たらせることとなりました。そうしなければ、原研と理研では共用の仕事を主としてできなかったという事情がありました。
また、運営費を出しているのだから自分たちが専ら使いたいと言われると困るということも踏まえて、その利用部分は両機関の業務外に出しました。そういうことがあって、JASRIというのが民法上の公益法人としてできたのですが、その後、財政改革とか行政改革とかで紆余曲折を経て現在に来ています。
ですから、JASRIという法人は本来、国の機関もしくは特殊法人として作れなかった放射光を高度に利用できるようなノウハウを持つ法人として作りたかったのですが、その後の公益法人改革などで特定なことができなくなる外的条件が整ってしまいました。現在、元々の理念に合致している点というのは、SPring-8に関するほとんど大部分の運営費は公金で用意しようと考えていたことです。当初、運営費を指定機関に交付していろいろな運転業務までやろうと思っていましたが、これが橋本内閣の時、補助金の一律削減で交付金を毎年10パーセント減らすと言われて、そうすると運営が立ち行かなくなるということで一時期これを理研の出資金に戻しました。ところが、理研が独立行政法人化して出資金の制度がなくなり運営費交付金となり、さらに、運営費交付金も一律削減で毎年1パーセントずつ削減されていくこととなりました。運営費交付金というのは経営者の自由裁量で使えるので、理研にもたくさんの研究所があるため、1パーセント削減の中でSPring-8の運営費も1パーセント、もしくはそれ以上の削減を受けるということで、共用補助金という形へ持っていったわけです。そういう意味では当初、国がきっちりSPring-8を安定的に運転しようというところは共用補助金の中で賄われるようになったのです。
一方、不合致な点というのが登録法人という制度であります。これは、公益法人改革の観点から特定の公益法人に業務を集中するということが起こり得るので公益法人にも競争原理を入れるべきという話になりまして、登録法人という制度になりました。
したがいまして、本来の放射光の専門機関たるべきJASRIに対して、国は特別な扱いができなくなってしまいました。今、登録法人はご自身の努力によって能力を開発して専門性の進化を求めるといった形になっています。それでご質問にお答えしますと、登録法人というのはある要件を満たせばだれでも手を挙げられます。かなり専門性が高い要件にはなっているのですが。ただ、現時点では登録法人に名乗りを上げているのはJASRIだけなのですが、将来、能力がある法人が登録法人に手を挙げられた場合、国側としてはしかるべきプロセスを経て、単に値段だけでなく専門性も評価した結果、JASRI以外を登録法人にするということを排除できない可能性が出てきてしまったという状況です。
【委員】
そういう事態になった場合に、その選定はどこが行うのですか。
【事務局】
これは国がしっかりと行わなければならないことから、文部科学大臣が行うことになっております。
【主査】
できればJ-PARCに関する質問をお願いします。
【委員】
私が質問したかったのは、J-PARCについても共用法が適用されるのかということです。
【事務局】
J-PARCに共用法を適用するかどうかというのは、すぐにそうなるとは限りません。共用法の適用というのは、非常に幅広く利用される、これは全日本的な利用、分野の広がり、基礎学術のみならず産業応用利用ということでニーズが広いことが必要です。また、日本に2つ以上はないような特定性、これはJ-PARCには規定できると思います。それから、設置者の利用より他の機関、研究者による利用も大きく想定されるものであることが要件であり、現在、共用法で特定していますのはSPring-8とスパコンのみです。SPring-8は、御覧いただいたように48本のビームラインの内、設置者である理研が持っておりますのは8本ぐらいです。スパコンの利用は基本的に公募という形態ですから、そういうスペックに果たしてJ-PARCが適合するかというと、そう簡単にはそのような議論にならないのではないかと思っています。
【委員】
制度設計上の問題ですけれども、ニュートリノから始まって原子核、中性子とかミュオン、物性とか物質科学とか構造生物学、非破壊試験、産業利用まで含めると非常に広い範囲のユーザーがいまして、その下に大きなユーザーコミュニティーというのがぶら下がっているわけです。ですから、JASRIは比較的均一なユーザーですが、これが全く違う、例えば、ニュートリノと産業利用も同じように扱ったらおかしいので、一体的運営とおっしゃいますが、そこのところはかなり弾力的な運用というのがきちんと入らないと非常におかしくなると思います。
それが1つと、一体そういう利害関係があった場合、それをどこで話し合うのか、おそらくは利用者協議会なのでしょうけれども、現在の利用者協議会でそれがしっかりと機能するかということです。それから、運営費はKEKとJAEAから支出されるので、センターは独立王国ではなく、きちんとそのマネジメントの話を聞いてやるということです。さらに、国際化をするとおっしゃいましたが、例えばニュートリノでしたらフェルミラボとかCERNとかそういう競争相手がいるわけです。中性子ではISISとかSNS、それらと競争しなければいけないわけです。そのためにはユーザーというものをきちんと把握できるようにしないといけない。例えば、外国から来た人のユーザーズオフィスみたいなものを作るとか、そういうこともやっていただくことが非常に重要ではないかと思います。
さらに加えて、組織に対して強力なレビューというのを行っていただきたい。特に加速器に関するレビューというのは、現在はもう設計が終わって作っている段階ですけれども、設計の段階からもうちょっときちんとしたレビューというものをやっておくべきだったと思います。大強度なのですから、大強度が出なかったらこれはただの陽子加速器になってしまいますので、大強度ということを重視してきちんとした国際的な加速器専門家によるレビューを行っていただくということです。最後に、将来的には成果のレビューとか組織的なレビューもきちんと行っていただきたいということです。
【説明者】
国際化に関しては、また別の機会にこの部会で報告したいと思いますが、問題点が非常にあるということを十分理解しております。ユーザーズオフィスというのもそろそろ立ち上げることにしております。
多くのご指摘がありましたが、強力なレビューに関して一言。我々は、ATAC(アクセレーター・テクニカル・アドバイザリー・コミッティー)という会議を毎年行っているのですけれども、これを強化する、また、国際的な施設にするために、国際アドバイザリーコミッティーを強化する。今のご発言は、そういうことに対してご意見をいただいたというように受け取っております。
【委員】
ユーザーの間でのいろいろな利害関係やビームのシェアを最終的にはセンター長がご判断になるのでしょうけれども、どういうところでその議論をやっていくとお考えですか。
【説明者】
まず内部的にはディビジョンリーダー会議というのをやることにしていますので、その中でお互いの意見を聞きながら内部の調整をするというのが第一段階だと思います。このバランスの問題というのは、次回以降に説明した方が良いということもありまして、資料には明確には書きませんでしたけれども、素粒子・原子核物理学と物質・生命科学のバランスをどうするかというのは重要なことだと認識しています。
【委員】
まず、このJ-PARC計画の意義というところに関してですけれども、中性子科学という面においては創薬をやっている人間から見ますと、ライフサイエンスの分野でこれまでX線結晶構造解析というものの成果が上がってきているので、それを踏まえて今後、特に水素とか陽子とかプロトンと言われるものを構造解析に用いて、ピンポイントな医薬品の分子設計に利用できるのではないかということで、中性子解析というものに対する期待というのが非常に大きくなってきています。実際、まだ研究そのものが進んでいないので、具体的にどこまで応用できるかというものはわからないのですが、むしろそういう研究を発展させるということで、J-PARCというのは意義が深いものと思っております。
次に茨城県のサイエンスフロンティア21というお話が出ていたのですけれども、J-PARCを運営していくに当たって、茨城県との協力体制、特にインフラその他のところはどういう形で具体的に考えられているのかということを伺えればと思います。
【説明者】
現在、県のビームラインの使い方と、その他のビームラインの使い方とは若干違った形になっていて、我々としてはそれをどのようにきちんと制度化するかを検討しております。具体的な話については次回以降にさせていただけたらありがたい。
【委員】
そういう具体的なビームラインとかの話ではなくて、例えば、海外からの研究者とか国内の研究者を茨城県の方ではある意味、地域活性化とかそういう面からも支援するという話が出ていたと思うのですけれども、そういったことに関して具体的に何かアクションを起こす計画があるかということです。
【説明者】
それに関しまして、まず茨城県からは大いにサポートしていただいています。これは我々としては非常にありがたいことで、茨城県だけでなく、東海村も随分サポートしていただいています。ビームライン2本は我々との話し合いの中で作っていただくこととなったので、これも非常に役に立つよう最大限利用していただけるような主体にしたいと思います。
さらに茨城県では研究環境の充実のために研究室の部屋であるとか、いろいろなインフラストラクチャーについてもサポートしていただけるよう検討していただいておりますし、そういうことで、県や村との関係というのは、我々にとって非常に大切にしたいと思っています。
外国からも中性子のビームラインを導入したいという動きが多くありますので、そういうことは非常に積極的に取り組んでいきたいと思います。一方で、無制限にそれを審査しないで受けるということは避けて、きちんとした審査体制の下で、その受け入れを決めながらやっていくことが基本姿勢であります。
【委員】
基本的な考え方ですが、組織論に関してですけれども、実際にやりたいことは何かというのをしっかりと出すべきだと私は思います。例えば、原子核や高エネルギーにおいては、以前はなかった大学附置の共同利用研究所という仕組みを作った訳です。その後、大学附置では収まらなくなって、KEKのような直轄研である大学共同利用機関を作った訳です。必要に応じてその都度、一番あるべきものを法律まで変えてやるということを行ってきた訳だから、今の仕組みがこうだから、それに合わせるためにこうすべきというような話は今はやるべきだけれども、ビジョンとしてはこうありたいというものをまず出しておいて、例えば、J-PARCセンターは将来独立した法人の方が良いのだというのだったら、そういうものをビジョンとして持っておいて、今の段階ではこうやろうという筋書きで話をしなければいけないだろうと思います。
【主査】
まだいろいろご意見があるかと思いますが時間の都合もありますので、この課題に関しまして、来週の金曜日までにご意見を事務局までお寄せいただければと思います。
【委員】
2点ございまして、まず非常に重要なのは課金制度です。成果公開の場合は無償というのは、原則というか、はっきりと守っていただきたいということ、それからここに一元化とか一本化とか、そういう言葉がたくさん記述されていますが、窓口は一本化されていても、採択されるいろいろなレビュー委員会とかは別々の分野でやるのですから、それをしっかり作っていただいて、そこにきちんと専門家が入って、ピアレビューをやって、それで採択するような仕組みを作っていただきたい。
【主査】
先ほどのご説明では無償の方向で文科省と今後検討するというようなご発言がありましたが、文科省側としてはいかがでしょうか。
【事務局】
基本的には国際的な各施設の動向、あるいはSPring-8で現在行われている課金制度を参考にしながら何が適切なのかは考えていきたいと思います。
【委員】
運転維持管理についてJ-PARCセンターがすべて責任を持つというSNSのような方式を採用するのかどうか。私自身はそのように責任をとった方が利用者もいいのではないかと思います。例えば、科学技術というのはどんどん進歩しますので、5年後に同じビームラインで同じものをやるかどうかというのは分からない訳です。また新たに作り直すとか、そういう長期的な視点からもJ-PARCセンターが責任を持つという方がユーザーにとってもいいのではないかと思うのですけれども、その考えはいかがでしょうか。
【説明者】
ビームラインの帰属とかいうことに関しては、まだ大きな議論があるところであります。たとえば、どこかの国やどこかの団体が作った場合、施設の維持とかはその国やその団体の方に行っていただくのが自然ではないかという考え方があります。茨城県などは、その方向で考えておられます。J-PARCセンターの中に作られるであろう実験課題審査委員会とか、あるいはサイエンティフィック・アドバイザリー・コミッティーとか、そういうところが研究の方向性を決めるということについては仰る通りだと思いますけれども、具体的に所属とか帰属とかということになった時には、もう少し立ち入った議論が必要ではないかと思います。
【委員】
利用ポリシーと運営体制は、組になっていると思うのですが、単純に見ると2つの機関、1と1を足して2以上にするというのは大変結構に見えるのですが、一体的運営というのを実現しようとすると、問題になるのは予算獲得と人事になると思います。それ自体がそれぞれ親元の機関を通してしかできないという事態というのは、やはり外から見たときに本当に運営されるのだろうかという疑念をもたれる。例えば、予算を考えたら、ある部分の予算はKEKに話をして運営会議で決めていく。それで話を上げるのだと思うのですが、もう少々広い視野で見たら、結局、最後は文科省まで行くのだから、中間を外してしまった方がずっとすっきりするし、誰が見てもその方がうまくいくというのは当たり前だと思います。そうすると、今、センター長が行うのはその調整ばかりになってしまって、本当にうまく機能するのだろうかという不安があります。そういったビジョンがあって、初めて利用ポリシーもうまく機能するのだろうと思います。
【委員】
今の意見と私は違いまして、KEKとJAEAにそれぞれ1つのディビジョンを作ったということですが、KEKの場合はいろいろな他の事業も行っているわけです。その中でJ-PARCを行っているので、加速器の専門家などはいろいろなことをやらないといけない。例えば、キャビティーだったらBファクトリーもやっているし、J-PARCもやる。そういう組織面の境界線をきちんと考えると、やはり親の機関と話さないといけない訳で、独立王国を作るというのはもちろん理想で、いくらおっしゃっても構いませんが、本当にどうすればきちんと円滑な方向でできるかというのを考えるべきだと思います。
【委員】
私はこのJ-PARCセンターをKEKとJAEAの両機関が扱っているということは非常に重要だと思っています。例えば、原子炉はたくさんありますが、いろいろな事故が起きたりして、基本的にはネガティブなイメージが社会に植え付けられていて、そこで働く人のプライドなどにものすごく影響しているのだと思います。これだけのお金をかけてここを作っていく訳ですから、働く人がその職場に対してプライドを持って働いて、例えば、KEKから兼務でやるにしても、そこへ行くということがある意味では名誉であってすばらしいことであるようにしていかないと、運営においては、組織の運営もあるけれども、心も伴うことが大事だと思っています。ですから、最終的なビジョンとしてはそういうものを目指すべきだと思います。
【委員】
利用の話ですが、加速器は限られた人員をほとんどKEKに集めるようなやり方をして作ったという事情がありますし、新しいプロジェクトが進めば、それに応じて流動的に人員を配置していかなければならない。そういうポリシーをどこかがヘッドクオーターとして持っている方がいいと思います。全くの独立王国を作れというようなことを言っているのではないが、仕組みとして両機関とJ-PARCセンターのどちらの言うことを聞いているのかわからないのでは困る訳です。J-PARCに携わっている期間は専念してやっていかないとおかしいだろうとは思いますけれども、利用に関しては現状で良いのではないかと思います。先ほど言われたように無償というのはしっかりと維持しなければいけないと思います。そうでないと研究者はどこかで競争的資金を取ってくるしかない訳です。最終的には税金なのだから、それは先ほど言われたようなピアレビューで評価する方が、科研費の評価で予算を取るよりはうまくいくだろうと思います。
また、産業界の方の問題がいろいろあったと思いますけれども、前回の議論ではすぐにどう使って良いかどうか分からないというようなご発言もあったと思います。トライアルユースというのは確かに、今も3号炉でやっておられるのでしょうけれども、定常ビームとパルスビームもまた違うのでセンター側のサポートが要ります。そのサポートしている人を評価するという仕組みもしっかりとやっていかないと成り立たないでしょうから、5年になるか10年になるかわかりませんが、最初のうちは、産業利用といえども私は無償にすべきだろうと思っています。もちろん、成果を非公開にして自分でビームラインを使うという人は有償にしたらいいのですけれども、おそらくその数は少ないだろうと思いますし、放射光より少ないだろうと思います。放射光はX線ビームですから、自前で施設を持っているところも結構あるだろうけど、中性子については、自分のところで原子炉があるということはそういない訳ですから、最初のうちはむしろ普及ということを考えなければいけない。数年間は産業利用であっても無償にするということが必要だと思います。
【主査】
産業界の方からのご意見は何かございませんでしょうか。
【委員】
X線に関しましては、私たちにとって、特に私は創薬に長く関わっておりましたのでこの施設のインパクトを挙げますと、G蛋白質共役型受容体(GPCR)の構造が一応決まったということが創薬にとって非常に意味の深いことだと思うのです。けれども、それがすぐ実用に結びつくかと言われると非常に難しいところがあるのです。特に中性子線の場合は水素が見える。そういうことを勘案すると、また違った展開があると思います。資料にも実用性の面が少し記述されているのですけれども、それよりも特に税金で行う研究ですので、もっと専門化した形での学問の進歩に大きく役に立つような書き方をした方が良いのではないかという気がしながら理念のところを読ませていただきました。確かに新しい手法ですし、期待するところは大きいのですけれども、前回も申しましたようにどのぐらい産業界にとっていいデータが出るのだろうかというのは、やってみないとわからないというところです。SPring-8で創薬にとって非常に意味の深いGPCRの構造が目に見えてきたということは非常に大きなインパクトだったと思いますし、そういう意味合いで、この中性子線の解析に関しましても、基礎的な成果を早急に出していくのが使命ではないかと感じます。
【委員】
産業界の利用とも絡むのですけれども、これまで我が社を例にとりますと、KEKの先生方と共同研究させていただいたりしていて、実際にサポートされる方とかがその研究の中で重要な役割を果たした場合に、例えば、論文に一緒に名前を書くとかということも考えられると思うのです。ここの支援体制といった時の研究員の方というのが、共同研究の時のような形で一緒にメンバーの1人としてやったというような形がとれるのかどうかというところをお聞きしたい。
【説明者】
支援体制はいろいろな体制があると思うのですけれども、例えば、コンピューターであるとかデータ解析であるとか、そういうことは科学者が主導ですから、論文に名前を載せることができるような方が入ると思います。逆に、血液のいろいろな組成をどこかで調べるように、何か資料を送ってきていただいたら分析センターのようなところで中性子散乱の結果をお教えするとか、そういうサポートの仕方も検討の視野に入れております。その場合には、定常的な仕事になりますので、必ずしも、一緒にメンバーの1人としてやったという形がとれるものではないと思います。
【委員】
国際公共財という言葉があちらこちらに出てまいりますが、J-PARCを経済の枠組みではどのように捉えているかというと、日本のこれからの経済競争力、産業競争力が先進の技術に根づいた科学技術立国的な発想でいきますと、実は科学的な知見も国際公共財ではなくて競争財になる訳です。さらにこのJ-PARCを産業界への普及という視点でいきますと、日本の産業競争力とかなり密接に関係した運営ということになっております。それを国際公共財という枠組みで、例えば極端な言い方をすると、他の国々の産業界からの要請に対してもそのままJ-PARCを全く無差別に利用可能とするかというのも考えなければいけないと思います。また、国際公共財という視点で議論する時は、もう少し基礎科学的な範囲は考えておかないと、単純に国際公共財という枠組みでこのポリシーを一くくりにできないのではないかと思いますので、その辺も検討課題ではないだろうかと思います。
【主査】
どうもありがとうございました。非常に重要な課題に対していろいろなご意見をいただきました。ただ、予定の時間をオーバーしておりまして、まだいろいろご意見があるかと思いますので、先ほども申し上げましたが、先の議題と同様、この課題に関しましても併せて、来週の金曜日までにご意見を事務局までお寄せいただければと思っております。委員のご意見等、非常に重要だと思われますのでよろしくお願いいたします。
─了─