ライフサイエンス委員会(第109回)議事録

1.日時

令和5年11月20日(月曜日)10時00分~11時57分

2.場所

WEB会議

3.出席者

委員

宮園主査、畠主査代理、有田委員、大津委員、岡田委員、鎌谷委員、上村委員、木下委員、熊ノ郷委員、桜井委員、鹿野委員、杉本委員、鈴木委員、武部委員、辻委員、豊島委員、西田委員、坂内委員、山本委員

外部有識者

岩崎教授(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

文部科学省

釜井ライフサイエンス課長、廣瀨ライフサイエンス課課長補佐

4.議事録

【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】  それでは、定刻になりましたので、ただいまより、第109回ライフサイエンス委員会を開会いたします。
 本日は、Web会議システムによる開催とさせていただいております。本審議会は、報道関係者と一般の方にも傍聴いただいております。
 本日は、大曲委員、加藤委員、金倉委員、金田委員、澤田委員、宮田委員より御欠席の連絡をいただいておりますが、出席委員数は総委員数25名の過半数13名に達しており、定足数を満たしていることを御報告いたします。
 会議の円滑な運営のため、ZoomによるWeb会議システムで御参加いただいております皆様にお願いしたいことがございます。委員の先生方、傍聴の皆様におかれましては、表示名は、本名、日本語表記、フルネームとしていただきますよう、お願いします。傍聴の皆様は、表示名冒頭に「傍聴」と御入力ください。傍聴の皆様におかれては、マイクとビデオを常にオフにしてください。委員の先生方におかれましては、回線への負荷軽減のため、通常はマイクとビデオをオフにしていただき、御発言を希望する場合はビデオをオンにしてください。また、発言される際のみマイクをオンにしてくださいますよう、お願いいたします。発言が終わられましたら、両方を再度オフにしてください。その他、システムの不備等が発生しましたら、随時お知らせいただきますよう、よろしくお願いいたします。Web会議システムの音声が切れてしまった場合には、事務局より事前にいただいております電話番号に御連絡させていただきます。表示名や音声・映像については、事務局により操作させていただく場合がありますこと、御承知おきください。御不便をおかけすることがあるかもしれませんが、何とぞ御理解いただけますと幸いでございます。
 それでは、以降の進行は宮園主査にお願いいたします。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、本日の議事と配付資料について、事務局から確認をお願いいたします。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】  議事次第を御覧ください。本日の議題は2点ございます。
 議題(1)は、委員等からのプレゼン1、今後のライフサイエンスの潮流です。今回は、今後のライフサイエンスの潮流を議論するに当たり、ライフサイエンス委員会委員で若手でいらっしゃる、岡田委員、鎌谷委員と、日本学術会議若手アカデミー代表の東京大学、岩崎教授から、御発表いただきます。お三方からの発表後、質疑応答及び議論に移りたく考えております。なお、資料2として、前回の第108回ライフサイエンス委員会にて委員の皆様からいただきました御意見や、委員会後にメールにて頂戴した意見をまとめたものを御用意しております。御議論の際には、こちらも参考していただけたらと思います。
 配付資料は、議事次第に記載されているとおりです。委員の皆様には、事前にメールにてお送りさせていただいております。資料番号は議事に対応しております。不足等ございましたら、議事の途中でも構いませんので、事務局にお声がけいただきますよう、お願いいたします。
 事務局からの説明は、以上でございます。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、これより議事に入らせていただきます。今回は、先ほど事務局からも話がありましたとおり、委員の皆様等からのプレゼンテーションをしていただきまして、今後のライフサイエンスの潮流ということで議論をさせていただきたいと思います。今日は3名の方からの御発表をお願いいたしておりますが、御発表いただきました後、質疑応答をお願いいたしたいと思います。
 それでは、まず、岡田委員から御発表いただきます。質疑応答は、お三方からの御発表をいただいた後にまとめて行いますので、よろしくお願いいたします。
 では、岡田委員、よろしくお願いいたします。
【岡田委員】  皆様、岡田でございます。このような貴重な機会を賜り、心より感謝申し上げます。
 それでは、早速、発表を進めさせていただこうと思います。一応、15分と伺っていたかと思いますので、その旨で進めております。よろしくお願いいたします。
 今後の展開ということですが、私はゲノムを中心にしておりますので、それを中心に本日はお話をさせていただこうかと考えております。よろしくお願いいたします。
 自己紹介はなるべく飛ばしてということですが、私は、遺伝情報と形質情報の関わりを中心に、病態解明、創薬、個別化医療といったことに対して、研究活動を進めさせていただいてございます。
 最初は、スライド何枚かで、私がゲノム研究をやりながら考えている、ざっくりとしたお話をさせていただこうと思います。我々ゲノム研究者のプライマリーなクエスチョンは何かといいますと、やはり、30億の塩基対の配列の意味を、解釈を理解するということにあります。もちろん、今、6万円ぐらいで全ゲノムシーケンスはできるんですが、配列を読むということと意味を読むことは違うわけですね。これを完全に解釈すると皆様自身が再構成できるんですが、現在は氷山の一角ということで、どうやって奥底に到達するか、これが研究のモチベーションであります。
 研究を進める際に気をつけていることといいますのは、これは最新解析技術がどんどん出てくる分野なんですね。常に私たちの予想を上回るスピードで技術が出てきますので、それを先進的に導入し、適切にその原理を理解することで新しい知見が得られるということになります。特に、ヒトゲノム、オミクスの研究というのは、基本的にこれをずーっと繰り返してきた分野かと考えております。過去15年間でDNA・RNA関連解析がどう変わったかということですが、もうTaqManアッセイというのは過去のものになりましたけれども、しかし、今後15年するとまた変わるということで、これをキャッチアップしていくということは、個人の研究者としても、そして、もちろん国家の取組としても、非常に重要な因子と考えております。
 まずは、イニシアティブですね。これはどういうファンディングで実施するかとかによるかとは思いますが、一応、私、三つの要素、基礎研究においてはCuriosity、やっぱり、探究心、楽しいよねという話。それから、やはりMethodologyですね。技術をきちっと理解するということ。あと、どうしても医学にひもづくこと。また、国家的な研究の国際収支ということを考えると、黒字にするためにはMission-orientedなイニシアティブも大事ということで、これはどれが一番偉いという話ではなく、どれも大事であり、そのバランスをその都度変えながら進めていくということが、戦略として重要じゃないかと考えております。
 さて、このようなことを受けまして、四つぐらいお話しさせていただこうと思います。まずは、疾患ゲノム研究が今どうなっているかというお話でございます。これは、一言で言うと、物すごく大規模化しております。とにかく大きいですね。特にUKバイオバンクというものが50万人のゲノムと表現型をオープンにして、ある意味、ゲームのやり方が変わったということであります。イギリスという国は、そこら辺は非常に賢くやるなあというふうに考えております。誰でも50万人のデータから解析できる時代が到来しまして、みんな、かじ取りが少し変わったというところがあると思います。1,000以上のフェノタイプに対してゲノム研究ということで、大体一通り、あっという間に関連形質に対する研究は一回りしてしまった。そういう状況に現在ございます。
 今回、あまり自分の研究はということですが、私は、本邦が誇る疾患バイオバンクとしてのバイオバンク・ジャパン、それから、イギリスのUKバイオバンク、フィンランドのFinnGen、また、東北メディカル・メガバンクのオミクスデータ等を使用させていただきながら、国際バイオバンク連携における研究を進めております。一つ一つの形質に対してというよりは、200以上の形質に対して並行して行っていることで、こういうリソースをつくってオープンにしていき、使っていただくことで国際的な知名度を高めていくということが重要かと考えております。
 私たちは、この結果についてはオープンにしております。PheWeb.jpというところで、様々なGWASの結果、ビジュアライゼーション、インタラクティブな関連結果の閲覧に加えて、全てオープンにするということもやっております。こういうことをして、二次的に活用されることによる国際的認知度の上昇というのは非常に重要かと考えているところであります。
 こんな感じで非常に大規模化して、いろいろやって、いろいろオープンという時代になってきてはいるわけですが、これ、一言で言うとどういうことか。大規模疾患ゲノム研究というのは、20年前、例えば、それこそバイオバンク・ジャパンで中村祐輔先生がゲノムワイド関連解析を始めるときは、これは、リスクを伴う冒険であり、挑戦であったわけですね。でも、今、全てが商業化され、解析ツールもどんどん整い、これは冒険とはちょっと変わってきているんですね。これは公共事業だと思います。誰もが参加できて、データに触れて、皆の研究。みんなが前に進むための道を整備する、サイエンスの公共事業としての疾患ゲノム研究を整備していくということが重要かなあというふうに考えております。
 そんな形で公共事業になってしまった疾患ゲノム研究の現在で、私たちはどのようなことをしたらいいかという話であります。一つは、個別化医療ということ、これはどうしても切り離せない面であります。このようなゲノム解析、今は誰でもできる時代になったときに、病態解明とか、創薬とか、個別化医療に、左から右にどうトランスレーショナルを行っていくかということが、現在、多くの研究者が一番エネルギーを割いているところではないかと思うわけであります。
 これは具体的にどう変わったかというのを記しています。これは、私も大学院生の頃からやっておりました、関節リウマチという病気におけるGWASであります。見てのとおり、いろんなスタディーが集まっては統合されということを繰り返しているんですが、時代が進み感受性遺伝子による機能解析がどんどん150と増えるに従って、これはトピックです。皆さん、分かりますように、10年くらい前はどうやって疾患ゲノム解析をしたらいいのかとか、その精度はどうかとか、そういうメソドロジーの議論をずっと行っておりました。しばらくするうちに、ファンクショナルゲノミクス、バイオロジーを知りたいからゲノムを見ようとか、創薬に役に立つのではないかとか、そういう面が進みました。最近はどうかというと、関連解析から疾患発症予測へと、アソシエーションからプリディクションへと変わっております。この二つは、似たようなことをやっているのですが、その目的は非常に違いまして、つまり、どうやってこの知見をもって発症予測をするかという方向に、今、疾患ゲノム研究はだんだん変遷しているということが分かるかと思われます。
 というわけで、こんな感じですね。生まれたときのゲノムで大体のことは決まりますので、そういうことを基にサンプルを層別化して、特に、一定の割合のサンプルが加齢に伴い発症する疾患へというのは、こういうことが非常に、予防医療、予防治療、もしくは疫学的なことも含めて重要な時代になっているかと考えているわけです。多分、皆さん、これはアグリーするところだと思うんですね。ただ、これだけではなかなか分からないこともあります。ゲノムだけで分かることには限界があるんですね。
 というわけで、大事になってくるのはオミクス解析です。ゲノム以外の情報とオミクス情報をどう統合するかという話になります。これは、大阪大学で熊ノ郷先生と一緒にさせていただきました、血液のシングルセルです。とにかくサンプルを集めて、ひたすらシングルセルをやるということです。これも、非常に大事な、ゲノムと突き合わせる解析をしているわけですね。これによって病気の原因となる細胞が分かったり、もしくは遺伝子変異とオミクス情報のつながりなどが解明されたりということになります。こういう面に関しましては、まだまだやられていないこと、やらなくてはいけないことが非常に多く、解析法もまだ、冒険であり、挑戦である、そういうフェーズであるかと思っております。シングルセル解析は非常に有用なツールであると思っております。
 あとは、血液中のタンパク質やメタボロームや遺伝子発現、こういったものを統合する研究も進んでおります。これは新型コロナウイルス感染症のコロナ制圧タスクフォースの枠組みでやっているものでありますが、血清のプロテオームとゲノムを突き合わせていくことで標的の候補の絞り込みなどが重要になってきております。つまり、非常に大規模になったゲノム解析結果を活用しようと思うとすると、こういうオミクス情報をどんどんつくっていくということは、今、非常に大事なフェーズとなっているわけであります。
 というわけで、こんなイメージですね。ゲノムでもちろん予測するんですけど、これだけではやはり限界がありますので、その後、後天的に進んでいく様々なオミクス情報をどう統合していくことにおいて、個別化予防、個別化医療を進めていくかということが、現在、非常に重要なフェーズになってきているのではないかと思っております。
 そして、もう一つ大事なこと、予測はもうできるんですね。Near way to predict, Long way to returnということで、実は、予測はだんだんできるんですが、これを社会実装して産業化しようと思うと、まだまだ道のりが遠いですね。特に、個人の研究者や個人の医師の力では及ばないところですので、医療機関、アカデミア、ベンチャー、様々な連携を通じた推進というものが重要になってくるのではないかと考えております。
 あとは、技術を間違った方向に使うことに対する警鐘というのも大事であります。既にアメリカのコマーシャルカンパニーの中では出生前診断におけるPRSを推定しということがあって、これは様々な問題点があります。倫理的な面以上に技術的に非常に意味のないことをしてしまっているということも問題なわけですが、技術が出てきて、産業応用、社会実装しようというものに関してはこういう話が必ず付きまといますので、研究者というのも、研究するだけではなく、これはよい、こうあるべきである、これは違うのでないかと、しっかりと声を上げていくことが大事であります。特に国際的な声を上げることが大事でありまして、例えば、このテーマに関しては、日本から英語で書かれた意思表明というのは、私はまだ見たことがないですね。こういうことは、皆のワーキンググループとして、学会としてしていく必要があるんじゃないかと思って、今、僕らも若手でこういう動きをしているところであります。
 あとは、創薬の話になってきます。創薬はいろいろございますけれども、とにかく創薬コスト増大と成功率低下の打破にはゲノム創薬が不可欠で、疾患ゲノム情報が非常に重要でありということで、特に、UKバイオバンクがプロテオームをつくるなど、中間形質QTLデータベース、とにかくゲノム情報を使うことが創薬に対しては大事であるということは、コンセンサスが取れつつあるわけです。
 私どももこういったことに関しては研究をしておりまして、疾患関連遺伝子とシーズのつながりですとか、それに始まったわけですが、リポジショニングの自動化、国際提言、発現変化ダイナミクスの反映など、いろいろな方法で、どうやって疾患ゲノム情報から創薬のスクリーニングを推進していくかということが非常に重要なテーマとなってきております。
 ただ、恐らくコンピューターを使った化合物のプライオリタイゼーションというのがある程度できるようにできるようになってきておりまして、こちらもどう実装して知的財産に結び付けていくかというフェーズになってきております。これに関してはやはり実証実験が必要でありますので、例えば、本邦が強みとする患者由来iPS細胞、これは特にゲノム情報があらかじめ判明しているということが非常に重要であるわけですが、それに対する化合物の実証実験など、こういったところまで進めて、単にコンピューター上であったらいいなではなく、知的財産創出まで結び付けるような枠組みをつくっていくことが必要であります。
 というわけで、ゲノム創薬って多分、大体こういうステップを通じていくと思うんですね。ゲノム解析で標的遺伝子を同定する。これは大体できているわけです。ただし、ここからの、in silicoの化合物スクリーニング、さらにin vitroのスクリーニング、そして実証実験、この1、2、3、4がシームレスにつながらないとゲノム創薬というのは先に行かないんですね。1から2ぐらいまでは大体行くんですけど、例えば、2から3の間、3から4の間みたいのはまだまだできてないところがありまして、恐らく、1から4までちゃんと段階を追って進めていきますよということを国家戦略としてもサポートしていかないと、2ですごくいい成果が出ても、そこで止まってしまったりとか、4の物すごくいい技術があるけど、なかなかここまで来ないといったような状況が生じてしまったりしているんじゃないかというふうにも感じております。
 最後は国際戦略。国際戦略ってなかなか難しいんですけど、これは主に私が個人的に考えていることでございますが、今、日本の実情ってどうだろうと。過去20年間、僕らは結構うまいことやってきたんですね。その一つには、アジア人集団の大規模ゲノムがなかったということの貴重性に乗っかって勝負をしてきたということがあります。しかし、世界各国が複数のバイオバンクを持つ今、新たなかじ取りが求められていまして、どうしても国際コンソーシアム運営とかガイドライン策定における存在感は低下してきてしまっていると思うんですね。そして、よりもっと難しいのは、解析技術の格差が開きつつあることです。ゲノムシーケンスというのは実は、ある意味、値段の問題だけでありまして、まだキャッチアップできていたのですが、実施規模にゼロの数が一つとか二つぐらい違うのが出てきてしまっているところであります。また、お金で解決できない最先端のスペシャルオミクス、こういう技術に関しては開発から導入までのタイムラグが延長して、私は基本的にディベロッパーではなくユーザーとなってしまっている。これは非常に問題があるんですね。一方で、僕らは、導入した機器をすごく器用に使いこなすノウハウというのは、歴史的にも非常にたけているところであります。いかにこれを生かしてユーザーからディベロッパーになるかということが大事かなと思っております。遺伝統計学の専門家も、何だかんだいって大分増えてきたところじゃないか。特にお医者さん出身の人は、ある意味、24時間働く人も多くて、割と増えてきて、ここは非常にいいんですね。ですので、オミクス解析の融合研究は成果が出てきている。しかし、私もですけど、お医者さん出身というのは、いろいろなところで、根本的なところで、数理、情報、統計に関する限界がありまして、やはりこの分野の専門家がもっと入ってきてくれるようにする必要があると。これは、彼らが入ってこないことに問題あるんじゃなく、私たちは入ってくることに対する適切な環境、公平、トリアドを準備できていないと。もっとほかに新しい分野があるから彼らはそっちに行ってしまうわけで、いかに来ていただけるような環境を準備するかということが大事かと考えております。また、ゲノム・オミクスデータはたくさんあるんですが、公開、共有、もしくは特定の組織における属人化が進んでしまって、どうもみんなちゃんとフェアに使えないという状況がよく散見されます。その機会が喪失されると参入障壁となり、より人材不足を招くということで、公開、共有、非属人化をどう進めるかということは非常に重要なところではないかと考えております。
 これは別件の会合で話をしたものなんですけど、バイオバンク、どうしたらいいか。大体、1、2、3、4、5、まずは全検体をGWASタイピングして、そのうち価値のあるサンプルを全ゲノムシーケンスする。エクソソームは全ゲノムシーケンスをして、オミクスデータをつくる。血清からつくれるもの、細胞からつくれるもの、臨床情報からつくれるものを集めていく。価値を高めるために相補性のバイオバンクをつくり、また、各国にバイオバンクが複数ある状況ですので、バイオバンク間の連携をつなげ、また、グローバルバイオバンクネットワークにおけるイニシアティブを獲得していくということが大事。多分、どのバイオバンクもこれを1から5に向ってやっていますので、これをどうちゃんと育てていくかということも大事かと考えております。
 世界に勝つための戦略と言いますけど、私が属している医学系・生命科学系の分野においては、とにかくキャリア早期にインフォマティクスと。学部生のときにコンピューターを一通りできますということを当たり前の技術として導入することが大事かと思っています。そして、若手研究者はどんどん海外留学ですね。残念ながら国際的大学ランキングで我々はトップではございませんので、ポスドク、博士課程、場合によっては学部生をきちっと送り込む制度・財政をしっかりそろえるということが大事かと思っております。現実的には、アジアの雄を真剣に目指すというのは大事だと。つまり、いきなり世界1位を目指すといっても、ちょっと現実味がない時代なわけですね。せめてアジアにおいては雄となる。それをどうしたらいいか。例えば、現時点でシンガポールに負けているみたいな時代で、それは英語化が推進されてないという、そういうところにも影響するわけですね。ここでは記しております。ウェット・ドライはコアファシリティ化として、業務としての非属人化したオミクス解析、知的財産出願のサポート、こういったものを進めていく必要がありますね。数理、情報、統計の人に、待遇面の改善も含めて、ぜひ来ていただきたい。あと、三つのイニシアティブに関しては、どれが一番偉いかという議論をよく見る気がしますが、これはどれも大事ですので、バランスの再認識とその都度の再調整が大事かと思っています。大規模ゲノムデータの公開、共有、非属人化というのは、非常に重要なところではないかと考えております。
 私たちの分野に特化いたしますけど、誰でも世界最高峰のデータにアクセスできる時代になりましたから、勝負のやり方が変わってしまったということを認識していく必要が重要となっております。様々なバックグラウンドを持つ専門家チームでやっていくと。また、解明から予測になり、恐らく予測の次は制御ですね。それを科学する学問に変革していく必要があります。そして、その制御においては、ライフイベントの揺らぎとかを経時的に制御、こういうことが含まれるわけですね。また、ドライ、in vivo実証実験、これはお互いに両方を行き来するような逆還元も大事でしょうかね。予算配分に関しては、データ解析の様々な、単に金額だけに伴わないコストというものに対する認識も必要かと思っております。あとは、楽しく奥深い基礎研究、つまり、規模とスケールだけで私たちはもう勝てませんので、ここをどうしても忘れないということが非常に大事かなと考えております。
 大阪大学におきましては、夏の学校をずっとやりまして、これは医学部のカリキュラムとしても導入いたしまして、それ自体は結構よかったのではないかなあと思っております。多分、こういうことが誰でも当たり前にできるような、そういうふうにしていくことが大事かと思っております。
 私の発表は、以上でございます。どうも、御清聴、ありがとうございました。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、最初に申し上げましたとおり、質疑応答はお三方の発表が終わってからということで、次に進ませていただきまして、次は鎌谷委員からの御発表をお願いいたします。
 よろしくお願いいたします。
【鎌谷委員】  よろしくお願いいたします。東京大学の鎌谷です。釜井様からライフサイエンスの潮流について話をするようにと言われまして、私は少し戸惑ったと。今日、お話しされる岡田先生ですとか岩崎先生というような天才と違いまして、私、凡人なんですけれども、凡人がたまたま、立場上、いろいろなプロジェクトに参加して、様々な国際的なことも見るということによって、何を感じたかと。同じようなものを実際見ているんですね。結構同じようなこともかなり言うと思うんですけれども、それを私の立場からどういうふうに感じたか、感じているのかというところをちょっとお話したいと思いました。
 そういったときに、潮流、今後のことを考えろということなんですけれども、私は今後のことなんて考えられないわけですが、ビスマルクか何かが、賢者は歴史に学ぶのだということですので、歴史をちょっと振り返ってみようと思いました。そうすると、みんなは今、UKバイオバンク、UKバイオバンクと言っていますけれども、実際には、このところで最初にびっくりしたのは何だったっけと思い出すと、deCODEだったわけですね。アイスランドが、法律をつくって、国民全体のゲノムを取ろうというようなことを言っていました。その後、理研が世界で最初のGWASを報告してから、その次、UKバイオバンクがこのときにできていて、ここを見ていろいろ思うところはあるわけです。日本としては世界で最初のGWASをやったんだと言っていまして、イギリスは、成果としては何もなかったけれども、UKバイオバンクを設立して、20年後に世界を取っていたのはUKバイオバンクだったと。そこの違いは何だったんだろうなというふうに考えたりしました。2003年にヒトゲノムが解読されて、それから、ここも思い出してみると「はあ?」っていう感じなんですけれども、実は、UKバイオバンク、バイオバンク・ジャパン、China Kadoorie Biobank、このとき1年ごとにそれぞれ設立されているんですね。そうやって見ると、アジアから二つバイオバンクができているのに、なぜか、今、世界のゲノムデータのほとんどはヨーロッパ人だという議論をみんなしているということになっています。その後、2007年にWTCCCの論文が出まして、GWASはここから始まったと言われています。2002年に理研が世界で最初のGWASをやったんじゃないかというのですけれども、いろいろな理由で世界最初のGWASは2007年から始まったことになっている。ここもいろいろと、何でなんだろうなと思うところですけれども、そのままぐんぐんと来ました。
 多分、2010年ぐらいにはゲノム解析はGWASでいいんじゃないかという流れが出てきていたことによるものなのか、2012年にイギリスは、キャメロン首相が10万人ゲノムプロジェクトをやりますと言って、始めましたということ。それから、2015年には、アメリカのオバマ大統領が“Precision Medicine Initiative”を始めましょうということで、イギリスとアメリカは国家的に人々のゲノムデータとオミクスデータを取るということをやっているということになります。その一方で、2012年にはENCODE、2014年のFANTOMは、ヘッドは日本ということです。それから、2015年のGTEx、Roadmapというふうに、ゲノムから、その後は、エピゲノム、RNAといったところのつながりを解析することも国際コンソーシアムができていて、日本はFANTOM以外のはそんなに参加できていないかもしれないんですけれども、こういったことをやることでゲノム解析の生物学的な意義というのも分かるようになってきた。そんなような流れを受けて、2017年にシンガポールでSG10Kというのが始まっていて、始まった段階というのを私はほとんど認識してなかったんですけれども、今や世界の非ヨーロッパ系のゲノム研究の中では一番有名なのがシンガポールというぐらい、育ってきていると。それが始まったのは2017年だったわけですね。一方、日本では2002年からやっていたはずなんですけれども、いつの間にか徐々に追い……。まだまだバイオバンク・ジャパンは有名だと思います。それで、2018年にはUKバイオバンクが論文として報告されましたけれども、このとき既に立場は確立していたと思います。同じ年に、有名な、Kheraさんというんですか、私は直接知らないですけれども、2018年に、ポリジェニックスコアは、単一遺伝子疾患と同じ、遺伝病と同等の予測能を持つという論文が発表されてから急激に、ポリジェニックスコアというものはどういうものかと、いいんじゃないかというふうに、みんな考え始めたというところでした。それで、2020年にはgnomADデータベース。2021年には、バイオバンク1個ということにこだわるのではなくて、様々なバイオバンクが合わさったらいいだろうということで国際バイオバンク連携というのが始まって、これは日本から岡田先生が率いて参加されているということです。そして、2022年には、身長のGWASですけれども、これまで世界最大という540万人のゲノム解析が発表されて、ここに至っては全ゲノム1万か所、遺伝的背景があるということでした。今年のトピックとしては恐らくUKB-PPPで、先ほどもあったプロテオームGWASによって、結構、創薬に使うという方向性が示されたのと、UKBの50万人の全ゲノムシーケンスというのが公開されるということです。恐らく、今月と聞いているので、もしかすると私の知らないうちに始まっているかもしれないですけど、50万人の全ゲノムシーケンスデータを全世界に対して公開するという動きになっているということです。
 左側の表に出ているものに対して、私たちの研究分野では、右側にある手法や理論の進みがあって、それが大きく左側をドライブしていたというふうに感じているわけです。ゲノム解析の手法や理論の歴史を遡ってみると、どこからだっただろうかというのは、恐らくほぼ衆目が一致するのは1919年の論文ということになっていて、フィッシャーがポリジェニックモデルを提案したということですね。つまり、フィッシャーはこのとき100年先を見通していたということはすごいですし、サイエンスとしての深みといいますか、先進国としてのサイエンス、今後の潮流ということをもし本気で考えるのであれば、私たちは何を考えるべきかというと、フィッシャーを生み出すべきだと。日本はどこを目指すべきなのか。いろいろ最先端でやっていくのは当然大事ですし、そこで勝負していかなきゃいけない、勝たなきゃいけないというのはもちろんあるんですけれども、フィッシャーを生んだイギリスはすごいなというふうに思っております。結局、このときに提案されたモデルとほとんど変わらない、ちょっとずつ違いますし、ちょっとずつモディファイは必要だというところはありますけれども、原則として大枠においてフィッシャーが予想したとおりのモデルが採用されているというところに私はイギリスのすごみというのを感じるところであります。
 その後もずっと手法や理論が発展してきたんですけれども、先ほど岡田先生の御説明にもありましたが、ここにおいて日本が大きく貢献しているというわけではございません。じゃあ、全部、ヨーロッパ系、アメリカ系で進んでいるかというと、例えば、ここに幾つか挙がっている、データ解析を非常に大きく進めたようなものを、私の記憶にあるものをぽんぽんぽんと入れた感じですけれども、EMMAXというのはたしかHyun Min Kangさんという韓国系の方だったと思いますし、GEMMAは中国系の方だったと思います。GCTAというのは中国系のオーストラリアの留学生の方だったと思いますし、進んでいって、当然のことなんですけれども、国の間、人種の間で頭のよさに違いなんていうものがあるわけはありません。やはり、アメリカに行った中国系の研究者、韓国系の研究者が結構活躍しているということも割とある分野ではあるんですけれども、2017年のFUMAというのは渡辺さんという日本人の方で、ヨーロッパに行った方だったと思いますが、そういったふうに全然活躍できているんですけれども、それが日本から出たわけではないと。向こうに留学したアジア系の人が出しているということからは、どういうふうに動けばいいんだろう、今後の潮流ってどうすればいいんだろうなということを凡人なりに考えたりしたというところであります。
 結局、そこまでゲノム解析をやって何が分かったかというのは、さっきも御説明ありましたし、そっちのほうがすごかったので、ここは軽くいきたいと思いますけれども、ここに書いてあることは2023年の“15 years of GWAS discovery”という論文から基本的にはまとめてきました。ここに“15 years“と書いてあることからも分かるように、やはり2002年の理研のGWASは無視されています。それで何が分かったかというと、たくさんGWASやったら、たくさん遺伝子が見つかりますよというのが分かったということです。
 次に、このGWAS結果、結構、当初の頃は何を出しているのか分からないみたいに言われたこともありましたが、現在まで広がってきた結果を見ると、どうやらちゃんと分かっている医学的・生物学的知見を反映した結果になっていますし、さらに新しいことまでリーチするような結果になっているというふうに評価は可能だということです。
 3番目は、疾患発症を予測できると。しかも、その手法は既に成熟していますよと。ただし、例えば日本人を予測するというときにどうかと。ヨーロッパ人で予測するにはうまくいっているんだけれども、日本人はどうか、アフリカ系の方だったらどうかといったところは、まだ検討事項であるということが分かっています。
 それから、今、全ゲノムシーケンスというのができるようになってくると、これまでのエクソソームというシーケンスというのがあって、レアバリアント、非常にまれなバリアントというのが新たに得られるようになりましたが、これも意味があるんじゃないのということを書いているということです。
 それから、メンデルランダム化という手法が進歩したので、因果推論ができるようになってきました。これはよく創薬、創薬と言っているところで世界的に使われている手法の一つだと思いますけれども、創薬という方向なども含めて因果推論ができるようになってきましたよと。で、そこから進んで、ドラッグ・リパーパシングというのもできますし、これはちょっと無理やりかもしれないですが、今、CRISPR治療薬が出ていますね。すごい話題といいますか、すごい最先端だと思いますけれども、この薬のターゲットって実はPCSK9ですので、それってゲノムから分かった薬です。つまり、最先端の様々な新薬創薬においてもゲノムの知見を生かす方向性というのがやっぱりいいですよと、ちょっと無理やりですけれども、つけていたりしました。
 最後に、ポリジェニックスコアの臨床試験が複数始まっているということで、私としましては、今、最新の、偉い人が書いたレビューをちょっと紹介したいなと思ったところです。
 そういうわけで、要するに、先ほども話がありましたように、バイオバンクを使ったらいいこと起こりますよと。これは別に研究の話ではないと。組織をつくって進めていく話だということです。そこで、イギリスはもちろん、最初にそれをやって先駆的に有効性を示している国ですけれども、WTCCCをやった後、10万人ゲノムプロジェクトをやって、それから、それより前に始まっていたUKバイオバンクの50万人もちゃんとまとめ上げて、今何やっているかというと、イギリスは500万人のゲノムデータを取得するという、Our Future Healthプロジェクトを進めているということです。500万人というのは、つまりイギリスの人口の10%をカバーするものだということだそうです。それから、アメリカのほうでは、All of Usの100万人、MVPも100万人。アメリカはつまり、100万人規模が何個かあるというような形で、イギリスと競っているということです。シンガポールは、PRECISEというプロジェクトで10万人やったと。さっきも話がありましたとおり、イギリスはキャメロン首相が始めましたし、アメリカもオバマ大統領が進めましたが、シンガポールは何かというと、トップの人はパトリック・タンという方ですけれども、この方はシンガポール前大統領の息子さんだということで、こういったことを進めるには当然ですが、研究者がどうこう言って進むものではないので、政治主導が必要だというところがございます。それだけではなくて、シンガポールくらいだったら世界最先端だって私たちも諦めがつくかもしれませんが、カタールも10万人のバイオバンクをやっていますし、南アフリカも11万人のバイオバンクを計画しているということで、これは本当に世界中の動きだというふうに見ることができると思います。
 そういったことで、何をしていこうかということは、ヒトをデジタル化したいということに尽きると思います。じゃあ、ヒトをデジタル化してどう解析するかということも、統計学の発展とAI解析ができてきたことで割とできるということが分かって、どうやってやるかというところが研究者の腕の見せどころ、あるいは天才的なアイデアが必要なところということで、例えば、シングルセルの解析とかですとバリエーショナル・オートエンコーダーが非常に有効なんだそうですけれども、最初にそれを喝破するところの力というのが研究者に必要で、それを生かして解析することができるので、その解析をするためのデータを用意しようと。データを用意するためにどんどん計測していくということですけれども、ここで後からついていく国にならないためには新たな計測技術を開発する必要がありますし、解析手法についても、後から同じことをやって成果を出すというだけにならないためには新たな解析手法を開発する。これを様々な研究者と共同でと、さっきと同じことを言っています。最終的には、この分野の目標というのは、コンピューター空間でデジタルヒトデータを再構築することで、そのために必要なデータの整備は政治の主導がいいんじゃないかなというふうに思っています。その後、患者さんにデータを返却しながらデータを取って研究をしてというサイクルが恐らく必要じゃないかということ。この段階には、法律、倫理、教育の専門家とも連携することで、今の新しいビッグデータによる医療の変革ということをメディカルサービスプロバイダーにきちんと理解していただいて、学生にも理解していただいて、患者さんである一般の方にも敷衍して理解していただいていく必要があると思っています。最後に、そうやってデータ解析だけライフサイエンスがやればいいのかというと、全くそんなことはなくて、当然ですけれども、マウスや細胞の実験によって証明していかないといけません。ただし、この分野は日本の得意分野だったと思うんですけれども、これをデータ解析と組み合わせていくということをすることで、今、日本はこれだけサイエンスの基盤があって優秀な先生方がいるのになぜか日本の論文が出なくなっているという報道が非常に多いと。何でかというと、データ解析と仲よくしっかりと手を取り合って進めていくというところに必要性があるのかなということを、若手ながら思ったりしているということになります。
 時間も時間なので最後はぱっぱっぱっと行きますと、短期的には何をすべきか、考える必要があります。ヒトの全ビッグデータ解析を進めるのか。アメリカ、中国にかなわないからやめるということは、当然考えられると思います。もしやるんだとしたら、SNPアレイをやるのか、全ゲノムシーケンスをするのか、あるいは、ゲノムデータを取るよりも、既にゲノムを取った人についてオミクスを、これも広く取るのか。プロテオーム、メタボロームのような広い取り方をするのか、それとも、狭く狭く取るのか。シングルセル解析だけではなくて、リボソームはもう古いのかもしれないですけれども、新しく出てくるようなオミクス解析をどんどん深く取っていくのかということを判断して進めていく必要があるのかなと思います。
 それをすることで、中期的目標なんですけれども、今言ったようにメリットというのは出ているので、だからこそ、がんと希少難病については厚労省が主導で進めるということになっていて、そこでのデータ活用というのもやっているわけですが、これは、がんや希少難病だけではなくて、ほぼ、ありとあらゆる疾患に対してできるはずだというふうに思っています。そのときに患者さんに返却可能なデータはポリジェニックスコアということになって、それも、今現在、海外でやってないんですけれども、やってない理由は証明ができていないからということで、左下にあるように、アメリカの有名な臨床病院で物すごい規模でゲノムデータを取り始めていて、今、臨床的に有用かというのを証明しようとしている段階です。真ん中のデータは、今度はPRSで層別化健診をすると。つまり、ゲノムをはかると病気が起こりやすいというのが分かるということですので、起こりやすい人には早めに精密検査を行っていくということをすると、実際、どうなりますかというのをシミュレーションすると、大腸がんの人が年間200人ぐらい減るはずだということで、亡くなる人が確実に減るということで、今、これは可能な技術ですから、やっていないことで200人の方を過剰に死なせてしまっているという状況であって、私は、これは結構急いで活用を考えてもいいのではないかと思っている方向性になります。そういったことで出てきたデータを活用していく、研究していくということがいいのかなと思っているということ。
 あと、長期的なんですけれども、最初に申し上げたとおり、いろいろあるんですが、100年先を見通す研究者は天才です。我々の分野はフィッシャーだったのですが、物理学の分野だったらきっとアインシュタインなんでしょうし、ほかにもいろいろあると思うので、そういう超天才が生まれてほしいなというときに、当然、日本でも山中先生がいらっしゃるのですけれども、ゲノム解析とかデータサイエンスからも生まれたらいいなと思っているということになります。今より先に来るものは、ゲノムの話ばっかりしていましたが、それから、メタボローム、プロテオームと分かってきていますけれども、だんだん、細胞、全身、炎症、代謝、脳など、その全てをデータ統合してデジタル空間に投影していくということになったらいいのかなというふうに思っているというところになります。
 それから、最後、国際展開について一つだけ申し上げさせてください。私は5年前に、バイオバンク・ジャパンのDNAをシーケンスしたいというアメリカの会社、リジェネロン社とお話を持ったことがあって、そのとき彼らは、27万人の全エクソームシーケンスをただでやりますということを言ってきました。で、そのデータを返すと。1年半後になったら研究者コミュニティ全体に開放するということをしていいという提案です。これは別におかしなものではなくて、世界中、どこのバイオバンクにも彼らはそういうことを言っている。実際、UKバイオバンクもそれに対応しています。日本としては、海外にDNAを出してはいけないので、その提案を受け入れられないということになりましたので、我々としては断念したんですけれども、今、4年たってどうだっただろうと。4年前にその話を受けていれば、多分、2年ぐらい前には日本中の研究者がバイオバンク・ジャパンの27万人のエクソームシーケンスを使っていました。それだけじゃなくて、当然、世界中の人も使っていたと。それは、世界から見て、日本の貢献といいますか、サイエンスに対する貢献と見られたのではないかなと思っています。それも含めて、今、日本のゲノムデータは全く海外に出さないというふうに私たちは言われているんですけれども、今後、それをどうしたらいいのかなと。別に向こうに言われて無理やり出させられるという形ではなくて、日本が出したい、こういう目的で出すのだということによってオープンサイエンスしていくということを皆さんで相談していけるといいのかなというふうに思っているところになります。
 以上です。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、岩崎教授からの御発表をお願いいたします。
 よろしくお願いいたします。
【岩崎教授】  よろしくお願いいたします。東京大学の岩崎です。今日は、お呼びいただきまして、ありがとうございます。
 まず、前半では、ライフサイエンスの展望ということで、私も、岡田先生、鎌谷先生と、ライフサイエンスの中では割と近い分野だと思いますけれども、どちらかというと、情報科学とか、そういった寄りの立場から、少し考えていることをお話しさせていただきたいと思います。それから、後半では、私、日本学術会議の若手アカデミーの代表を3年間務めてまいりまして、人文・社会学、理工学、生命科学の各分野にわたる若手研究者の声というものをまとめてまいりましたので、特に人材育成の文脈等で、今、どういうことを若手研究者が望んでいるか、どういうところに研究のやりづらさを感じているか、そういったことを御紹介させていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、ライフサイエンスの展望についてなんですけれども、最近、ライフサイエンスに大きな影響を与えたということで、2021年のAlphaFoldは非常に、当然、これまで配列から構造が決まるということはアンフィンセンのドグマと言われていたわけですが、そういったことは可能なんだということで、大きな衝撃を与えたということになろうかと思います。タンパク質の構造が予測できるということであれば、それは一つのツールということで終わったのかもしれませんが、このディープラーニングはほかに、エピゲノムの予測であるとか、いろんなところでさらに力を発揮してまいりまして、今年、AlphaMissenseということで、疾患の表現型の変化につながるようなアミノ酸の変化というのをゲノム全体のコンテキストから予測する、そういったこともディープラーニングによって可能になってきました。
 私は、こういった最近の、特にAIを中心としたライフサイエンスの変化で感じていることは、「ゲノムは設計図」というフレーズが再生してきたんじゃないかということを、一言で言うと感じています。1993年のヒトゲノム計画のパンフレットをここに持ってきましたけれども、皆様、ヒトとゲノムの間に中点があるというのは懐かしく思い出される方もいらっしゃるんじゃないかと思うんですけれども、当時は、ヒトゲノムを読めば、ゲノムは設計図なんだから、ゲノムを基にいろんな研究が進むということで、ヒトゲノムプロジェクトが進んだということになります。ただ、実際にヒトゲノムが読まれてみると、ゲノムを読んでもよく分からないということで、ポストゲノムにつながっていることになります。しかし、これだけディープラーニングによって、配列から、構造であるとか、表現型であるとか、あるいはエピゲノム、そういったものが予測できるということになっていると、やっぱりゲノムは設計図だったんじゃないかと。皆様、例えば、学生への講義等で「ゲノムは設計図」という言葉を使われると思うのですが、そのときはもちろん、受精卵のゲノムから生物が発生してくるわけですから、ゲノムが設計図だというのは生物学的には間違いないんですけれども、設計図とはいってもゲノムから全部は分からないよねという気持ちで「ゲノムは設計図」というフレーズを使われている・いたと思うんですね。ですけれども、これだけ人工知能が進歩してきますと、「ゲノムは設計図」という、よく使われるフレーズの意味がまた、本来の意味を取り戻すというか、ルネサンスというか、「ゲノムは設計図」ということはゲノムにはいろいろ書いてあるんだということを改めて信じていいんじゃないかと、もちろんディープラーニングは工学的なものなんですが、そういった哲学的な影響が生物学にあるんじゃないかなというふうに感じています。
 結構いろんな分野で性能をすごくたたき出していますので、AIの有効性というのは、たまたま特殊なときに使われるだけじゃなくて、本質的なものに私には見えています。このAIの進歩というのを流行技術と思わずに、生物学の本質に変化として取り組んでいく必要があるんじゃないかなということが、私が今感じていることです。
 これをもう少し大きな枠組みで図式化してみますと、物理学、化学、生物学ということを考えたときに、それぞれ、理論物理学、実験物理学、理論化学、実験化学というのがあります。特に、物理学、化学は、理論で何か予測して、それを実験で検証するといった形。特に理論はすぐにやることができますので、理論が先に行って実験で検証するという形で学問がどんどん進んできたということはあろうかと思います。生物学においても、当然、理論生物学と実験生物学というのがあるんですけれども、生物は非常に複雑で、なかなか理論で予測したものを実験で検証するという形にはならなくて、どっちかというと逆、あくまでも実験生物学で出た結果を後で説明するという意味で理論生物学が扱われる。ちょっと逆向きで進んできた部分が大きいんじゃないかなと思っております。これは、先生方、いろいろ御異論もあるかもしれませんが、私としてはそういうふうに感じております。
 これがAI生物学に変わりますと、物理学とか化学のように予測をして実験するという、物理学とか化学では理論が果たしてきた役割を生物学ではAIが果たすというふうに学問の枠組みというのが変わってくるんじゃないかなということが、今、私が感じていることです。
 具体例として、一つは、環境中にいる微生物は、99%は培養されていなくて、これまで全く何をやっているか分からなかったんですけれども、99%の未知の微生物、地球環境あるいは私たちの体の代謝を支えている微生物のゲノム情報というのが得られるようになりました。そういった未知のゲノムを解読すると、機能が分からない遺伝子、例えば、BLASTをかけても何もヒットしない、あるいはBLASTをかけてもハイポセティカルプロテインにしかヒットしない、そうした遺伝子が大体半分ぐらいあります。微生物のゲノムを読んだときに遺伝子の機能が分からないというのは、別にその機能が大事じゃないわけではなくて、その遺伝子自体は、その生物が何億年、何十億年の進化の果てに獲得した、きっとすごい重要な役割を持っている遺伝子がたくさんあるはずです。だけど、人類にはまだ分からないということですね。でも、配列データから構造を予測して、機能を予測してということがこれからすぐに可能になっていくというふうに考えています。そういった配列を使って、AIを使って、機能未知遺伝子の機能を解明していくこと、活用していくということが重要になると思っています。機能未知遺伝子は非常に潜在的なインパクトは大きくて、それこそ大村先生の抗生物質のような、一つ特許を確保するとものすごい経済的価値を生むということがあります。私が恐れているのは、AIをうまく活用して戦略的に特許をどんどん取ってしまうというところが出てきたときに、全て囲い込まれてしまうんじゃないかということをかなり心配しております。やはり、機能未知遺伝子、有用な機能を持つ遺伝子というのをどんどん見つけていって知的財産を確保していくということをかなり国家的にやらないと富の流出につながるんじゃないかということが、今感じていることです。
 それから、まだまだ私たち、未知の生物のゲノムを読んでも、そのゲノムがどんな生き物かということを理解したりすることができていません。それこそ私が、例えば、ゲノムらしい、一見、ゲノムっぽく見えるゲノム配列を作って、本当のゲノム配列と、二つを生物学者に見せて、どっちが本当のゲノムでしょうと言っても、多くの生物学者は、どっちが作られたゲノムで、どっちが本当のゲノムか、分からないと思うんですね。だけど、ゲノムから生物、どんな生物かというのを理解するということが、どっちが本当のゲノムか、それとも、このゲノムは起動するゲノムか、起動しないゲノムかということを理解するといったことも必要になるかなと思います。それから、ゲノムを改変していって有用な生物を作っていくといったことも可能になっていくと。疾患ゲノムの特定の遺伝子のターゲットというだけじゃなくて、やはりコンテキストですね。先ほど、岡田先生、鎌谷先生の話にもありましたけども、たくさんの遺伝子の組合せのときに、どういった治療法が必要かということを選択していくということも重要だと思います。そうすると、これからAIを使った生物学を考えていく上で、AIには何ができて、何ができないのかということを理解していくことが重要だというふうにも思っています。
 AIには何ができて、何ができないかということなんですけども、最近のトレンドからはっきりしてくるのは、活動が高度かどうか、高度なことをAIができないというわけではないということだと思うんですね。例えば、ゲームにしても、将棋とか、そういったものも、普通の人間から見れば相当高度で、誰でもできないようなものをAIで、もちろん、将棋みたいなゲームはフレーム問題がないので、そういった意味では限られた問題なんですけども、非常に高度なこともAIはできると。知的かどうかとか、そういうことじゃなくて、よりシンプルに、データがどれだけあるかどうかでAIができるかどうかが決まってくるというところが重要だと思っています。データがあれば、それだけ性能が上がるということですね。
 余談で、英語論文執筆とありますけれども、英語の論文も、ものすごいデータがありますので、それこそPIが手直ししなくてもかなりいい論文を初めてでも書けるような、そういったサービスはそのうち出てくるだろうというふうに感じています。
 さて、AI生物学をどうやって進めていくかということなんですけども、この五つの段階というのは、これまでの生物学とあまり変わらないと思います。ただ、そこにAIが入ってくるというだけで、何を解かせたいかの検討。これは専門的なドメイン知識を使って検討する。それに対して、どういったデータがあればAIが学習できるかということの戦略を立てる。大規模なデータを取得する。これはチーム戦になると思います。その後、データを使ってAIを学習・チューニングして、最後に予測結果を実験的に検証する。これはやはりドメインの研究者がやることになります。
 こういった流れというのは多分、特に産業界ではいち早く取り入れています。これはたまたま中外製薬のホームページから取ってきたんですけども、再現性の問題とかもあるのですが、なるべく実験はロボットに任せて、大規模に行う。そうすると、その上流と下流ですね。もちろん、ドメイン知識を持って、何を解くべきかということを考える研究者、それから、最後に検証する研究者も大事ですし、どういった実験、どういった大規模データを出せばいいかということをデザインすることも必要ですし、そこからAIを開発していく、そういった研究者も必要ということになります。
 そういった人材をアカデミアとしては供給していく必要があるだろうと思います。もちろんアカデミアの機能は革新的な基礎研究を行うことなんだけれども、人材を社会に供給するということも非常に大事な役割だと思います。そうすると、最初の何をやるかを決める人とか、最後の検証する人は当然大事なんですけれども、相対的に見ると、データ取得の戦略をつくったり、AIの学習やチューニングができる、AI生物学人材というのをもう少し進めないと、全体がうまく流れないということだろうと思います。
 AIは一過的なブームではないというふうに感じておりまして、生物学に本質的な変化があると。それから、生物学なんかもAIの社会から見るとすごい小さい領域で、生物学とかの状況をおかまいなしに、ある意味暴力的に、社会の要請でコンピューターとかAIというのはこれから10年、20年、さらに進歩していくことは確実だと思います。実際、過去を振り返っても、10年前、20年前のコンピューターと今のコンピューターは全然違いますので、コンピューターが変わらなければ、1回勉強すれば、その知識でずっとやっていけるということはあると思うんですけれども、実際にはそうじゃなくて、どんどん継続的に学び続けられる人材を育成しないとその進歩についていけないということになろうかと思います。なので、一過的なブームなんだから別に育成しなくていいんじゃないではなくて、これからコンピューターもAIも生物学の事情なんかはお構いなしに進歩していくのは確実なんだから、AI生物学の人材を育成しておかないといけないということを感じています。
 前半のまとめですけれども、AIによる生物学の本質的な変化があって、「ゲノムは設計図」というフレーズの意味のルネサンスがあると思っています。理学、工学、農学、医学、いろいろな分野に実質的な影響があり、AIの性能というのはデータで、産業界の動向も注視する必要があると思います。AI生物学人材は、やや我田引水的ですけれども、包括的に見ても、育成していくことが必要だと思っています。
 後半なんですけども、分野横断的な若手研究者の声ということで、私、2020年から2023年に日本学術会議の若手アカデミーの代表を務めてまいりました。日本学術会議は、先生方も御存じだと思うんですけれども、その中で45歳未満のメンバーを構成員とする若手アカデミーというものが一部門として設けられています。研究分野としては、先ほども申し上げましたが、人文・社会科学、生命科学、理工学の幅広い分野にまたがった45歳未満の研究者、それから、ジェンダーバランス、地域のバランス、そういったものも考慮して選ばれています。この3年間は、この51名で活動をしてまいりました。
 何でこの若手アカデミーが立ち上がったかということですと、もともとヨーロッパで若手研究者の声というのを分野横断的にまとめるということは国の研究戦略を考える上で重要だという声が高まって立ち上がったということが背景にあります。特にヨーロッパ、ドイツとか、オランダとか、こういった国で始まったのですが、若手研究者の声というのを分野ごとにいろんな学会で吸い上げるということはこれまで行われてきたわけですけれども、そうじゃなくて、若手研究者が分野を超えて、これからどういったことが必要かということをまとめてワンボイスとして伝えるということを、政府としても、あるいは産業界としても求めていたと。で、こういった若手アカデミーの立ち上げというのはヨーロッパで先行してきました。実際、経済界からも、サマーダボス会議等で若手研究者に、そういった声をまとめて、分野を超えて産業界に声を届けてほしいと。ばらばらに持ってくるんじゃなくて、まとめて持ってきてほしいということで、こういった声の重要性というのが認識されてきたということになります。日本でも、9年前に立ち上がったということになります。
 どんな活動をしているかということなんですけれども、ふだんはいろんなトピックに分かれて議論を行っています。一つは地域活性化ということで、特にこれから、大学、アカデミアには、各地域社会、日本の地域社会、結構、少子化に苦しんでいるような地域社会、産業のまちおこしをしたい地域社会、いろんなところがありますけれども、各地域で社会のハブとして大学というものを活用していく、あるいは地域の課題から研究課題を見つけていく、そういった観点から地域との連携を議論する。あるいは、学術界でワーク・ライフ・バランスが非常に悪いというところを改善するための議論を行う分科会、産学連携を行っていくための分科会。それから、これからの学生、大学院生の進学等は減っているわけですけれども、そういった、さらに若い世代の人材育成を行う分科会。それから、先ほどもございましたけれども、分野を超えて研究をするような、分野横断的、分野越境的な研究を行う課題を考えるような分科会。そういったものに分かれて、活動を行ってきています。それから、世界に若手アカデミーがありますので、そういった世界の若手アカデミーと連絡を取る、国際分科会というのもあります。
 私たち、いろんな分野の若手研究者を集めているんですけれども、そうはいっても51人というのは非常に限られた人数です。それから、任期付の研究者ももちろんいるのですが、大多数は任期がついてない研究者ですので、任期付の研究者の声も集めるということで、これも日本史上ではあんまり例がないと思いますけれども、8,000人程度の若手研究者にアンケートを行いまして、今、どういったところで研究のやりづらさを感じるかということを定量的に把握するということを行いました。
 それから、いろんな地域に出かけていって、例えば、今、NHKで「シチズンラボ」という、市民の皆さんに研究をやってもらおう、科学に親しんでもらおうという番組が始まっておりますけれども、NHKの方ともコラボしてイベントを行って、皆さん、どういった研究というものに興味を持っているか、そういったことを産業界の方も入れて議論を行うと。
 それから、例えば、これは千葉県の柏市ですけれども、まちづくりですね。市役所と、例えば、治水の研究者、生態学の研究者、まちづくりの研究者、そういったものが一緒に組んで、まちの価値というのは何なのかということを定量化するような実践的な研究、こういったものも行ってきています。
 それから、国際的な若手研究者の団体とも連携しています。
 そういった、私たち分野を超えた若手の議論のまとめということで、「2040年の科学・学術と社会を見据えていま取り組むべき10の課題」という文書を先々月に発出しました。この下にURLがあるんですけれども、ポイントは五つありまして、一つは現場の若手研究者のニーズをきちんと明文化した公的な文書であるということです。それから、分野横断的、生命科学だけではなくて、理工学や人文・社会系も含めて、どういったところに問題があるかということを多角的に議論しています。今、若手研究が感じる研究環境の問題点とかをかなり網羅していますけれども、あんまり網羅するとポイントが何か分かりにくいので、10点に絞っています。それから、公式文書ですし、あと、中にかなり引用文献やデータもありまして、研究環境の改善というものを訴える上でどういった文献やデータを引けばいいのかということも、こちらの見解をリファレンスとして引けるという形になっています。ライフサイエンス分野もいろんな研究環境の問題はあると思うんですけれども、それがライフサイエンス分野に限らない問題の場合には、ライフサイエンス分野に限らずに、研究者全体の総意として持っていったほうが事態は動きやすいということはあろうかと思います。そういうときに、どういった問題をライフサイエンス以外の若手研究者も感じているかということを理解していただくのに非常に最適な文書ではないかと思っています。
 こちらは英語版でも発信しておりまして、国際的にもいろんな新聞等で取り上げていただいてもいます。それから、Yahooニュースにも載りましたが、先月の『nature』にも、こちらは文部科学省の科学技術指標の記事ですけれども、こちらでも私たち若手アカデミーの見解を引用していただいています。こちらの『nature』のニュースも、かなり話題になりました。
 この中で分野を超えて若手研究者の皆さんが話し合ったことは、2040年の科学・学術と社会を考えようということです。私たち若手アカデミーは45歳未満の研究者ですので、2040年頃に、シニアというか、60代に差しかかるということになります。そうすると、2040年の科学・学術と社会について、責任を取るというか、実際に私たちはそこで活動をしなければいけないので、ここをどうするかということを考えようということを当事者として発出したということになります。
 ここにいろいろ書いてありますけれども、人口の問題、労働力不足や医療・介護需要の増大、地方の過疎化等々を考えると、イノベーションを創出しないといけないと。ただし、今、若手研究者から見てイノベーションの創出を阻むような要因がたくさんあるので、イノベーションが起こるのには時間がかかるので、今すぐ改善に取り組む必要があるということが骨子になっています。そこには、地域連携、越境研究、国際連携という三つが実際にもっと必要なこととしてまとめられておりまして、その背後には人材の育成、そのさらに背後には、研究環境や業界体質、ワーク・ライフ・バランスが悪いということが本質的な問題としてあるということを分析して、解決案を提示しています。
 こちらは、かなり網羅的に、何が私たちアカデミアの研究活動を妨げているかということを模式的に分析した結果になります。多分、ここに書いてあるようなことをいろいろ御覧いただくと、皆様、ポイントとして共感いただけることもあるんじゃないかと思うんですけれども、研究時間が少ないということは非常に重要なポイントですが、いろんな問題がございます。ここに書いた内容は、ライフサイエンス分野に限らない、いろんな分野の研究者が感じていることですので、こういった問題については分野を超えて改善を働きかけていくということが大事だと思います。
 10のポイントは、伝統的分野の研究が大事だとか、越境研究が大事、それから、コアファシリティ、産官学民を超えたプラットフォームが必要であるとか、基盤的経費、特に、競争的資金を活用するためにこそ、フォローアップとか、競争的資金の運営をする事務、あるいは技術員とか、そういったものが必要だということを書いてあります。それから、科学技術外交、最近ですと処理水の問題とかもありましたが、そういったところにちゃんと研究者が関わっていくようなキャリアパスが整備される必要があると。それから、経営的視点や前例踏襲主義からの脱却。マクロには、教育費が大きいことが進学率の低下を招いていることは確実ですので、教育費の家計負担の低減。それから、例えば、誰も読まないような報告書を書くとか、アカデミア自身でも業界体質を改善していく必要があると。それから、博士号取得者のセクターを超えて活用して、ジョブ型雇用を推進していくということが、10点としてまとめられています。これは、分野横断的な議論によるまとめになります。
 先生方はいろんなところで、ヒアリング等、あるいは意見を述べられる機会があると思うんですけれども、そういうときにこちらの見解を引用していただくと、これは特定の分野とか個人的な意見ではなくて分野横断的に若手研究者が求めているものだというふうに、かなり力強いサポートができると感じております。こちらをいろんなところで話題にしていただくことで物事が研究環境をよりよくする方向に動いていくんじゃないかと思っておりますので、ぜひ御活用いただけますと大変幸いです。
 以上、私からのお話になります。ありがとうございました。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 お三方から、御発表をいただきました。私も大変印象深いところがありました。それでは、質疑応答に移りたいと思います。委員の方々から、3人の先生方の御発表に関する御質問、もしくは今後のライフサイエンスの潮流に関する御意見がございましたら、ぜひ積極的に御意見を述べていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 いかがでしょうか。
 それでは、坂内委員、お願いいたします。
【坂内委員】  御指名、ありがとうございます。大変重要な3件の話題提供、先生方、どうもありがとうございました。
 最初の2件の話題でとても印象的であったのは、各国ではゲノムのデータベースを物すごい数で整備しているということと、日本のデータベースはあまり活用されていないということです。お伺いしたいのは、日本のデータベースがこんなに活用されてない、取れないというのはどうしてなのかについて、原因があって、それを克服するにはどうしたらいいのかというのを教えていただきたいなと思います。
【宮園主査】  いかがでしょうか、岡田委員、もしくは鎌谷委員。
【鎌谷委員】  ここは岡田先生から。
【岡田委員】  御指摘、ありがとうございます。誤解がないようにすると、全く使えないということは全然ないんですね。日本には、バイオバンク・ジャパンですとか東北メディカル・メガバンクをはじめ、数十万人規模のゲノムデータがありまして、もちろんそれは活用されておりますし、国際的な評価も得られております。ただ一方で、UKバイオバンクの例に見るように、よりオープンにし、コミュニティのシェアを取るというような戦略が出てきている中で比べると、少し、アクセスとか供用に関しては使い勝手という面では負けているところがありまして、そういうことに関してユーザーが流れてしまっているところにあるんじゃないかということになります。というわけで、全くされてないというわけじゃないんですね。
 あと、海外の人へのオープンということに関しては、各バイオバンクの努力というよりは、国家のポリシーで決まっておりますので、例えば、海外の製薬企業からファンディングが取れるかという話になると、多分、現状では難しいと思うところがまだ多いと思うんですね。でも、UKバイオバンクって日本の政府もお金を出していますので、逆に向こうは取ってくるような仕組みがありますから、そういったところを安全保障とかも含めて整備していくということが大事じゃないかと感じております。
 僕が思ったことはそんなところですけど、鎌谷先生はいかがでしょうか。
【鎌谷委員】  先に岡田先生のお話ししていただきたかったのは、私たち、特にバイオバンク・ジャパンにおいて岡田先生に使っていただいて非常にすごい成果が出たというところがあるのですけれども、それを今後どうしていくかというのがポイントであるというところなどがありますが、シンガポールはどうやら非常に評価が高いようで、バイオバンク・ジャパンは頑張ってきたのにというのもありますし、China Kadoorieも、私たち先にやっていたのにみたいな気もするのですが、そこで一つ出てくるのは恐らく、岡田先生もおっしゃっていた、シンガポールは英語ですごく発信をしているので、世界の中でシンガポールはこのようにできていて、このように貢献するんだということが一つあるかと思います。もう一つは、バイオバンク・ジャパンと、ここは東北メディカル・メガバンクさんもそうなんですけれども、私たち、10年前、20年前からできているんですが、がんや難病ではなくて、その他の病気の範囲で言いますと、ここ5年ぐらいで実際に患者さんにメリットがあるかもしれないなという空気が出たところで出てきたシンガポールは、実際に国民の健康をかなり強く押し出しています。国民の健康をよくするためのプロジェクトだというところで注目を浴びている。つまり、日本で、BBJ、東北メディカル・メガバンク、それから、ナショナルセンターさんのバイオバンクの次の段階として、日本国の健康をよくするためのバイオバンクが今のところはまだそのように鮮明にしていないなというところは感じております。
 以上です。
【坂内委員】  ありがとうございました。法令とか、多分、個人情報とかの問題もあるというふうにある場所で伺ったりもしますので、今後、ライフサイエンスだけでなく、全体的に国家安全保障とかも含めて考えていかなければいけない問題であると理解しました。ありがとうございます。
【岡田委員】  すみません、1個だけ追加させてください。シンガポールですけれども、研究者の条件は物すごくいいです。いわゆるお給料は日本よりずっといいですし、例えば、ASTARとかだと、引っ張ってきたPIにはスタートアップの研究費が1億分ぐらいつくことが前提ですね。そうなってくると、日本で生まれた人はともかく、海外の優秀な人は日本よりシンガポールでPIをやるという選択肢になっちゃいますので、そういう例も見てきたこともありますから、そんなところもございます。
【坂内委員】  人材をちゃんと、できる人が海外に行かないという作戦も必要ということですね。ありがとうございます。
【宮園主査】  どうもありがとうございます。
 たくさん手が挙がっていますので、順番に行かせていただきます。木下委員、お願いいたします。
【木下委員】  最初は全体についてお話ししようかなと思ったんですけど、その前に、先ほど個別に議論があった、海外にデータをというところに関して、立場上、東北メディカル・メガバンクに関わっているので、一言だけ申し上げてから、全体のお話をさせてください。
 海外へのデータ出しに関しては、まず、日本としてきちんとしたポリシーが欲しいなというのが正直なところです。ToMMoとしては、データを出せればいいなということを常々議論して、特に最近は海外からも非常に引きは強いですので、出せればなあというふうに思っています。そんな中、いろんな法制度も込みで制度が十分整ってない中、出せるとしたら、GWASの統計量みたいなことを、それこそ岡田先生の御尽力で国際コンソーシアムなんかにも加えていただいて使っていただいているというところまでは来ましたけど、個別のデータまで踏み込んだ形での利用ということを製薬会社なんかにやろうと思うと、まだまだ、法的な面、あるいは、いろんな制度面も含めてですが、ハードルがあるというのは、実は現場ですごく困っているというか、何とかなるといいなあと思っている話が、ちょうど今、議論されましたので、一言申し添えてから、全体のお話をもう一言だけ申し上げさせてください。
 全体の話は、3人の先生方、本当にすばらしい御発表をいただいたと思っております。その中で一番重要なコンセプトとして共有すべきだなあというふうに思ったのは、多分、日本はもう先進国じゃないということをそろそろ明確に受け入れるべきなんだと思うんですね。だからといって後進国で全然駄目駄目というわけではない中の、ぎりぎりの瀬戸際のところをいかに日本が今後もプレゼンスを保ちながらやっていくのかというよりは、ライフサイエンス委員会がこれまで、いろんな評価等、ある意味、ルーチンを回していた中に、今の課長になってからこういう議論をする場をつくっていただいているのはすごく時宜にかなっていいと思うんですけれども、まさに今議論をして、そろそろアクションとして何かを変えていかないといけないぐらいの危機感を共有すべきだろうというふうに一つ思いました。
 そのときに、多分、より具体的にもっと身につまされていることとして、ユーザーに落ちちゃっているのが物すごく大きいなと思っています。ディベロッパーの地位を日本のいろんな分野で失いつつあって、特に今日のお話だとゲノム・オミクスが多かったですけれども、オミクスでも、空間のオミクスの話とか、あるいは、トランスクリプトームだけじゃなくて、もうちょっと別の階層のオミクスなんかの話に関しても、基本、ユーザーですよね。だから、非常に高価な機器を買ってきてセットアップして、ようやく使えるようになったと思ったら、1年後には、それは1年前の古い機械ですねと。また来年、新しいのを買ってくださいということをやるという、後進国以外の何物でもない状態で、今、我々は戦わないといけない状態になっているということをまず現状認識としてきっちりした上で、じゃあ次はどういうふうにやるんだということを議論すべきタイミングにあるんだと思います。
 そうしたときに、もう一つ重要だなあと思ってお伺いしたのは、後進国って、あまり卑下する必要もないのかもしれませんけれども、海外に人を出すというのをきっちりシステマチックにやるべき時期に来ているんだろうというふうに思います。昔、ある意味、日本がまだまだ伸び盛りだった頃というのは、人を外に派遣して、その人たちが帰ってきて、新たなラボを立てて、あるいは分野を立ててみたいなことを最先端の世界とのつながりを保ちながらやれていたことが、ある意味、日本がある程度成熟化してしまうと、日本の中で閉じて成立してしまっているっぽい雰囲気を醸し出せちゃっているんですね。だから、もっとシステマチックに海外に人を送り込んで世界的な意味での人的なネットワークをつくりながらやるということにもう一度真剣に向き合ってやっておくことを、実装としてやるべき時期にまた来ているんだろうなというふうなことを強く感じました。
 あまりいっぱいしゃべってもしようがないので、特に印象深かった2点と、それを踏まえて、お三方の先生には非常にいいインプットをいただいて、本当にありがとうございました。コメントです。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 続けて委員の方からのコメントを聞きたいので、山本委員、どうぞお願いいたします。
【山本委員】  どうも、3人の先生方、ありがとうございました。大変示唆に富む、非常に濃い内容のお話、ありがとうございました。
 私は、岩崎先生が最後に御紹介された、若手アカデミーでまとめられたイノベーション創出のための10の課題というところでコメントと質問をさせていただきたいのですが、資料2の前回のライフサイエンス委員会の意見を事務局がまとめられたものにはない視点として、6番目に科学技術外交に関わるキャリアパスの整備というのが挙がっているんですけれども、私自身、ここ数年、国際会議に幾つか参加するようになりまして、非常に自分自身が慣れてないなと。要は、学会とか、そういう仲間内というか、自分の業界みたいなところの中での話ではなくて、ちょっと違うところで、もう少し外交的な会議で、いかに日本が自分たちの成果を強調しつつ、要は存在意義をどうやって強調するかというのって、こういう会議に参加している委員の一人一人のしゃべり方というか、それにすごく依存しているんじゃないかというふうにちょっと感じたものですから、私自身はそういうことをトレーニングされたことがあまりなくて、この年になって急にそういうところに出てもあまりうまくはファンクションしないということを非常に感じまして、なので、この6番に挙げられている内容について、少し岩崎先生に追加で御紹介いただけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。
【岩崎教授】  ありがとうございます。私たちの中には、いろんな分野で国際的な会合に出て、日本を代表して意見を発するというところに貢献するメンバーがおります。例えば、生態学とか、気候変動とか、そういった面の研究者もおります。もちろんライフサイエンスでもあると思うんですけれど、今、日本はどういう状況かというと、まず、交渉を担う政府の方が、大体二、三年でローテーションして、毎回、そのたびに引継ぎをして交渉に当たると。専門家は、特に研究者が、私たちぐらいの、40代ぐらいの研究者が多いんですけど、ボランティアで意見を述べたりとか、いろんなコメントをしたりして、専門的なところをバックアップするという体制で交渉しているということが相対的に多いということが分かりました。各国はそうじゃなくて、その専門分野に知見を持った人がずっとそれに関わって取り組んできていると。そうすると、交渉しようといっても、日本は後手に回ってしまうということがいろんな分野で起きているということになります。
 最近、外務省でもアタッシェというのがありまして、それは何かというと、各国の大使館に科学技術の専門家を置くということも行われつつあるんですが、そういったところも実際には科学技術的なところをちゃんとそこで研究者がサポートできているかというと、まだその枠組み自体もできていないということもあったりとか、それから、外交と科学技術の両方をできるような人材を目指しても、キャリアパスが全く日本では整備されていないので、本当に不安定な、大学に行っても、遊んでいたんですねみたいに言われたりとか、外交の場でも、あなたのためのポジションはありませんという感じで、せっかく科学技術、今、日本が相対的に強いものを使って、別の観点から日本のために、日本がよりよい条件で国際的な枠組みをつくるところに貢献したいという人がいても、なかなか活躍できないという問題があります。これは、研究者は国に対して役割を果たすという意味で、また一つ、別の大きな、研究そのものに加えて、交渉の場で日本にとって有利なような枠組みをちゃんとつくっていくということは非常に重要なことだと思いますので、それをもっと、日本としても枠組みを戦略的につくりましょうということで、議論の結果、入れたものになります。
 以上になります。
【山本委員】  ありがとうございました。要は、資源の少ない国なので、しかもコストもなかなか払えなくなってきているところで、海外に対して技術的に出していくというところをもっと磨く必要があるんじゃないかなと思いましたので、この指摘、大変大事だと思いました。ありがとうございました。
 以上でございます。
【宮園主査】  それでは、有田委員、お願いいたします。
【有田委員】  遺伝研の有田です。お三方の説明、すごくよかったのがまず一つというのと、若手人材の育成という点では意見が一致していると思うんです。今日話されたような話を例えば全国の大学生とか大学院生が聞ければいいんですけれども、現実にはそれができない状況にあるわけです。実際の教育というのは、地方の大学であるとか、私立の大学とかで行われるのが圧倒的多数なんですね。つい最近、大学の設置基準も変更されましたけれども、今の設置基準の変更だと、そうした一般的な大学において教育をする人がどんどん高齢化している。だから、今話されたような最先端の技術からどんどん遠ざかる方向に移行しかねないと思っています。ですので、文科省ができることとして、高校に始まる高大、それから大学院の連携という観点から、どういうふうに教育を設計していけばいいか、どうしたら先端の技術が地方も含めた現場に入っていけるのかを考えていただきたいです。
 以上です。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、桜井委員、お願いいたします。
【桜井委員】  3人の先生方、とってもためになるお話、ありがとうございました。私はふだん、前回から申し上げていますように、実装化というか、若手研究者のスタートアップ支援ですとか、いわゆるシーズを種にどういうふうに実装化していこうかところをサポートしています。今回の先生方の取組って、ふだん知ることができない分野ですので、すごく勉強になったのですが、ビジネスの世界では、今、クローズドイノベーションからオープンイノベーションという流れが定石で、なるべくいろんな力を借りながらイノベーションを起こしていこうという流れになるのですが、アカデミアの世界でオープンイノベーションに対する取組みたいなところとか、すごくざっくりとしたお話なんですけれども、その課題感みたいなところがあったら教えていただきたいなというところで、岩崎先生、AIの、若手の先生方と横軸でいろいろ取り組みされている中で、ちょっとお話を聞かせてください。
【岩崎教授】  私なんですか。どちらかというと岡田先生が……。
【桜井委員】  そうですね。岡田先生も。
【岩崎教授】  オープンサイエンスはいろんな分野で取り組まれていまして、特にライフサイエンス分野は、プライバシーやいろんな問題がありますので、慎重にしなければいけない。例えば、倫理教育を受けてない人が入ってくるといろんな問題が起こる可能性もあるということで慎重にしているところはあると思いますけども、全体としてはオープンイノベーションを目指していくという方針が大事で、そのことは、私たちの見解、2040年の見解の中でも、市民であるとか、産業界を巻き込んでいかなければいけない。そのためには場が必要だということで、提言として入れさせていただいています。
【桜井委員】  ありがとうございます。
 岡田先生も、お願いします。
【岡田委員】  岡田でございます。オープンイノベーションが分からなくて、今、Wikipediaで調べていたところなんですけど、例えば、異分野連携とかの研究という面では、今、結構オープンになってきていると思うんです。特に、今、20代の学生さんって連絡の取り方が僕らと違って、すごく早く物事の決定が進んできますので、それは進んでいるかと思うんですね。ただ、会社も進めたり、知的財産を結んだり、知的財産を含めた秘密保持契約を結んだりして、契約が関わってくることになると、とたんに進まなくなってしまう。それは、個人でやるのではなく、施設でやるということになると、そこのマンパワーもありますし、そういう契約とか出てくると、もういいかなと、むしろ引いちゃうみたいな形があって、今、すごく交流はあるんだけれども、産業という意味ではなかなか進んでないところにあって、海外の研究施設ではそこにマンパワーがすごくあって、一言、契約をお願いしますと担当部署に言ったら、後は全部やってくれるみたいなところが多い中で、文言の修正から自分でやりなさいとなると大変なので、そういったところに対する大学・研究施設側からのサポートが厚くなると、より実体とか実装に近づいたオープンイノベーションが進むんじゃないのかなって思っております。
【桜井委員】  ありがとうございました。割と実務的なところでのハードルがすごく高そうだなと感じました。ありがとうございます。
【宮園主査】  どうもありがとうございます。
 それでは、杉本委員、お願いいたします。
【杉本委員】  杉本です。お三方のトークは、大変、最近の状況が網羅されていて、すばらしかったと思います。特に、岩崎先生の若手アカデミーからの提案で、人材育成に関して、コメントと質問があります。
 岩崎先生の示された10個の課題のうち、1番が基盤的・伝統的分野における知識や技術の蓄積、2番が越境研究の推進ということなんですが、二つとも重要だと思っておりまして、今回のお三方の話にからめますと、今、バイオインフォマティクスとか、遺伝統計学、AI生物学の人材育成が急務だということに加えて、そこで出てきたデータを実験的に検証できる人材というのが絶対に必要で、日本はすばらしい蓄積があるけれども、そこが廃れかねないということをちょっと懸念しております。ですので、人材育成を考えたときに、実験生物学と理論系の生物学の、完全分業制ではなく、両方を行き来できる人材を育成するということが必要だと思うんですけれども、現在の大学・大学院のシステムですと、そこがすごく縦割りで、新しい分野を取り入れた教育がしにくい状況になっていると思うんですが、その点について、今後どうすべきかというアイデアとか実践例があったら、教えていただけますか。
【岩崎教授】  ありがとうございます。こちらのチャットに貼った見解の本文のほうにも書いてあるんですけれども、まさに教育については、専門分野だけじゃなく、いろんな分野のことを勉強してもらうという意味では、研究所とか大学の間で教育者をシェアして、より多くの分野に触れるような体制づくり、あるいは、そういったことを奨励するようなインセンティブ、学生にとっていろんな分野を勉強するようなインセンティブというのを与えることが有効じゃないかというふうに書いてあります。ただ、一つの分野に特化したスペシャリストの育成も大事なことは間違いがないところでして、それも大事です。ただ、いろんな分野の若手研究者の声を聞いていると、もう少し、若手あるいは学生がいろんな分野の勉強をしやすいような、したらうれしいような、そういったような方向にバランスを揺らすことが必要じゃないかということが、議論していて出てきたコンセンサスになります。
 それから、1番と2番で掲げた基盤的・伝統的分野の推進と越境・地域課題の解決とかは、実はちょっと方向性が違っておりまして、でも、どっちも大事だということで両方とも書きました。基盤的・伝統的な分野がしっかりしているからこそ、その上にいろんな応用分野が出てくるということは当然ありますし、それから、基盤的な分野の強みこそが研究の体力になるということもありますので、それはやはりすごく大事だと。ただ、これもやはり、いろんな分野の若手と話していると、数値評価で評価されるということが若手は非常に多くて、チャレンジングな研究はなかなかしにくいと。あるいは、地域への貢献、地域社会との話合いとかをしても全くアカデミアでは評価されないというのが地域と連携をするというモチベーションを損なっているという意見が結構強くて、そういった、いわゆる数値に出にくいような活動もきちんと評価していくということは必要だということで、バランスを、1は大事なんですけども、2にもう少し寄せたほうがいいんじゃないかということは、コンセンサスとしてはありました。ただ、多様な評価を使用すると今度は評価のオーバーヘッドが生じて、その評価がより大変になると。研究者の評価で、数値データだけではなくて、多様な活動を全部評価するという、評価自体のコストもかかってくるので、それはワーク・ライフ・バランスを損ねる方向に行くので、そこも注意が必要であると、そういったような内容になっております。
【杉本委員】  ありがとうございました。評価が困難であって、多様な軸の評価が必要だというのは、私も感じております。ありがとうございました。
【宮園主査】  ありがとうございます。
 それでは、鹿野委員、お願いいたします。
【鹿野委員】  ありがとうございます。お三方の先生方、今日は大変貴重なお話を聞くことができて、ありがとうございました。
 私からは、まず、細かい点が一つです。ゲノムを海外に出せないというお話があったと思うんですが、私は医薬品の承認審査をやっていた経験があって、そのときに、いわゆるコンパニオン診断薬といって、ある遺伝子変異、特定の遺伝子変異があるかどうかで薬を使うかどうかを決めるというケースで、その検査薬は大体海外のもので、検査をするために日本人の検体を海外に全部持っていかれて、そちらでデータ解析をされるというケースがほとんどでして、ある意味、ゲノムのデータというのは宝の山なので、これをそのまま海外に持っていかれて日本で使えないというのは非常に不利だなあと思っていました。厚労省の人も言ったんですけれども、あんまり問題意識は持たれてなかったなというのがありました。りました。それと最近、あなたはがんにかかりやすいか、遺伝子を調べるので、あなたの血液だったか何だったかを送ってくださいという広告を見ますが、検体を送って海外で解析して、あなたは何のがんにかかりやすい可能性がありますというのが返ってくるというのが一般に何の規制もなく行われているので、実は日本人のデータは海外にどんどん出て蓄積されて使われているという状況をちょっと危惧しておりました。ですので、この機会にゲノムのデータの取扱いについて包括的な法的な整備も必要ではないかなあというのは以前から思っていたので、今日のお話を聞いて改めて思いました。
 2点目ですけれども、統計とか、AIの統計あるいは数理とかの専門家がさらに必要ということですが、もともと、医薬品の場合でも、臨床試験とか、あるいは、それ以外にも、医薬品の製造管理ですね。実は製造については、医薬品だけではないんですけど、いろんなものの製造管理は、今、統計的な解析でいろんな工程パラメーターを決めて最善の工程を決めていくというのが当たり前になっています。先ほど中外の写真なんかも出しておられましたけど、開発についても、場合によっては、これまで蓄積したヒトのデータを使って臨床試験をしないで承認するというケースも出てきていたりしているんですね。ヒトの体の反応を数値的なモデルとして組んでしまって、どこにどういう投薬をすると、どういうふうにその反応が流れて、どういう効果が出るかとか、そういうこともやられるようになってきて、物すごくこの分野の専門家というのが必要になっているのですが、昔から日本は、人が少ない、専門家が少ないというのをずっと言われてきていたんですね。なぜかというと、一つは、中高生のときに、コンピューターとか、そういうのを好きな学生はいるんですけど、将来、それがどう役に立って、どういう面白い発見につながるかということを知る機会が割と少ないまま、大学受験のときに、将来、就職にいいかなみたいな薬学部とか、自分は薬学なんですが、そういうほうに行くのかなと思うんですね。ですので、中学生、高校生ぐらいから、数理とか、統計とか、そういうものをやることで、どんな面白いことを自分たちは将来できるようになるのかというのを教育のところに入れていただきたいなあというのが2点目です。
 それから、全体的な話、岩崎先生の御提言というのはすごくすばらしい内容ですが、幾つかは随分昔から言われている点を明確にピックアップされていると思うんですね。一つは、やはり役割分担ですね。サポート的な役割の人をきちんと置いて研究者は研究に専念できるようにするとか、さっきの知財の話もそうですし、あと、海外との交渉とかも含めて、誰が何をやるという専門性を持った人たちを配置して、そして、もう一つ大事なのは、そういう人たちの評価ですね。研究者が海外へ行って交渉しても、そこは研究者として評価されないですし、逆を言うと、研究をサポートするような人員はただの事務員的に扱われるけど、専門的な知識を持ってサポートする人は必要なはずですので、そういう人材のポストの確保と評価、そういうことが必要だなあというのは改めて思いました。
 最後の質問なんですが、今日、大変大事なお話をたくさんされたのですけれども、これを政策にどう落とし込んで実現をしていくのかと、そこで大体止まっちゃうような気がしているのですが、今日のお話の中には、文科省だけでは対応できない、厚労だったり、経産だったりとか、いろんな場面で、いろんな人たち、いろんな省庁で協力をしていかなくてはできないことだと思うんですけれども、文科省さんからこれをやるんだとほかの省庁に言うのは難しいと思うのですが、これを実現していくためにどういうふうにしていけばいいのかというのを、できれば可能な範囲で文科省の皆さんに御意見いただければと思います。
 以上です。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 手が挙がっている方は以上ですが……。
【岩崎教授】  今の、少しコメントさせていただければ……。
【宮園主査】  岩崎先生、どうぞ。
【岩崎教授】  ありがとうございます。若手アカデミーの提言を発出する過程でも、それをどうやって実装するんだということは、かなり議論になりました。例えば、課題を10個並べたんですけれども、どれからやっていけばいいのかということは、かなり多くの方に聞かれます。ただ、私たちとしては、結局、いろいろ分析していると、どれかをよくすれば全部よくなるということはあり得ないと。これを全部よくしていくことが必要なんだということで、むしろ、これを網羅して出しておいて、政策というのは時に急に動くことがあります。最近もいろいろ政治的な動きで政策が動いたりとか、あるいは、過去には一気に中等教育の無償化が進んだりとか、そういったタイミングがありました。なるべく、若手研究者が何に困っているかということを「例の見解」と言われるようになるまでいろんな方に認識していただいて、たまたま、この政策が動きそう、例えば、人材が動きそうということもあると思いますし、あるいは産学連携が動きそうとか、いろんなことが動きやすいタイミングというのがどうしても政策決定の場であると思いますので、そのときに常にこの見解のことを思い出していただけるようにしておくと。その場でいろいろヒアリングをして急に考えるというのではなくて、若手研究者は今これが困っているというのをまとめた文書がちゃんとありますので、そこを参照して若手研究者の声を聞いていただいて動かしていく。そういう何か動きそうなときに引用していただくものを作ることがこれからの日本のために一番重要じゃないかということで、こういう形にしたという経緯がございます。なので、この見解を皆様に知っていただいて、その場で場当たり的な議論をするんじゃなくて、若手研究者のニーズを見ていただくと。政策を動かすときはお金とルールをつくるというのがすごい大事な二つの柱になると思うんですけども、若手研究者が困っているのは常に実装なんですね。お金をつけていただいたり、ルールをつくっていただいたりということは、多分、ちゃんとうまく進んでいるんですけれども、それが実装になってくると若手研究にとってやりにくくなってしまうと。その実装をどうするかというところでちゃんと現場の研究者の意見を聞いていただくような、そういったことをしていただくのが大事かなと思っております。
 以上です。
【鹿野委員】  ありがとうございます。
【宮園主査】  では、ライフサイエンス委員会事務局から手が挙がっていますので、お願いいたします。
【釜井ライフサイエンス課長】  ライフサイエンス課長の釜井でございます。先生方は一通り、多分、挙手の方は発言のほうをされたと思いますので、先ほどの鹿野先生の御指摘も含めて、お答えできる範囲でお答えいたします。
 まず最初に、今日、こうした議論のほうをいただいたこともそうですけど、前回いただいた指摘事項も含めて、文科省のライフ課だけで対応し切れないところがあるというのは、おっしゃるとおりでございます。ただし、我々文科省として、そのままでいいのかと言われれば、多分、決してそういうことではなくて、今日、実際にライフサイエンス委員会、こうした議論を開催するに当たって、例えば、人材の関係で言えば科政局の人材政策課にも共有しておりますし、あと、医学教育課とか、それから、内閣府の健康・医療室とかAMEDのほうも、今日も多数、傍聴で参加してくださっているというふうに理解しています。そういったところも含めて、我々としては、よろしければなんですけれども、来年に向けてということで、論点のほうをしっかり出して、それをちゃんと政策全体のほうを担うようなところにつなげていくというふうな視点でやっていければなと思っております。
 文科省というか、政府向けのほうへの指摘事項として、まず最初の、オープン・クローズというか、特にバイオバンクの件なんですけれども、おっしゃるように、これは非常に微妙な問題をはらんでおりまして、例えば、安全保障の関係とか、より経済安全保障的な観点というのも出てきているとは思うんですね。ただ、問題意識として今回の点というのは非常に認識いたしましたので、全体のゲノム医療の政策を担う健康・医療戦略推進事務局とか、厚労省もそうなんですけれども、そういったところにしっかりつないでいければというふうに思っております。
 それから、AIのことなんですけど、今日改めて感じましたのは、岡田先生、岩崎先生のほうからのプレゼンでもあったように、AIのほうとどういうふうに向き合っていくかというのが課せられている課題なんだと思うんですね。そういったところで言いますと、AIとか数理とかに関して御専門の方を例えばライフサイエンス分野のほうにどういうふうに引きつけていくかと。それに当たっては、恐らく、研究の対象もさることながら、処遇とか、そういったところも非常に重要になってくるんじゃないかなというふうに思っております。
 それから、学術会議の若手の御提言も含めた人材のところなんですけど、これ、非常におっしゃるとおりのところでございまして、かつ、鹿野先生がおっしゃるように、多分、解決できない課題として長く認識されている課題というのも中にはあると思うんですね。それに対してどういうふうにしていくかというのがあるとは思いますので、こちらにつきましては、繰り返しなんですけど、高等局とか、人材政策全般を担う部署のほうとも連携しながらやっていければなというふうに思っております。
 それから、科技外交の話、高大接続、大学院連携の話などについても、しっかり論点として認識した上で、対応のほうをしていきたいと思っております。
 事務局からは、以上でございます。
【宮園主査】  どうもありがとうございます。
 今日は、もう少し時間がありますから、もし御発言があれば、よろしくお願いいたします。
 辻委員、お願いいたします。
【辻委員】  辻です。今日のご発表、本当にありがとうございました。大変勉強になりました。一般的な感想になりますが、何点か申し上げたいと思います。
 今おっしゃったように、長く認識されている課題、おそらく今世紀に入ったあたりからずっと言われていた課題がなかなか克服できずに今日に至り、待ったなしの状況になったというふうに感じています。AIの専門家、数理、情報の専門家との連携の必要性も繰り返し言われていますが、これも前から言われていたことで、なぜうまくいかなかったのか、過去の課題を洗い出して、これからを考えることが必要ではないかと思っています。
 AIに関して言えば、日本は決して世界のトップランナーではなくなってきていて、そういった中でどう戦っていくかが課題になっています。海外のプラットフォームに乗ると日本のデータが全部流れてしまうということにもなりかねないので、うまく連携してし、日本として研究分野のAIをどう進めていくか、考える必要がありそうです。
 科学技術外交の話がありましたが、これは、ポイントにも出てきた博士課程のキャリアパスの問題とも関わっていると思います。キャリアパスの多様化が以前から言われるなかで博士課程への進学者が減っている現状があり、多様な働き方を見せることで進む人も増えるだろうし、全体として日本の科学力を高めることにもつながっていくのだろうと思います。
 さらに一言付け加えると、日本は政治家の決断がどうも違うということが出てきました。ご参考までに、日本工学アカデミーでは、アメリカやイギリスなどで行われている政治家と科学者の交流プログラムにならって、主に理系出身の若手政治家たちと意見交換の機会を持っています。先日はAIに関する専門家と議員との意見交換会があり、また、若手の研究者が政治家を訪ねて議論するといった試みも行われています。科学と政治、互いの理解をもっと進める必要があるのではと思っております。
 以上です。ありがとうございます。
【宮園主査】  大変貴重な御意見、ありがとうございます。
 それでは、お三方から手が挙がっていますので、順番にお願いいたします。
 まず、木下委員、お願いいたします。
【木下委員】  先ほどの事務局のまとめに、1点、ぜひ付け加えておきたいので、発言させていただきます。
 今、私は情報科学研究科で学生なんかと接していて、実は、彼らはこういうデータをあまり触りたがりません。それはなぜかというと、非常に手間がかかるんですね。このデータは誰々先生にお話を通して使うとか、そういうイメージを学生さんは強く持つ場合もあって、今、倫理審査のところで、もちろん倫理はすごく重要ですけども、侵襲性を持って新たなデータを取るというところはすごくきっちりとやるべきだと思いますが、既に取得済みのデータに関しての利活用のハードルを下げるだけで、恐らく興味は持つんですね。ただ、非常に手間が煩雑で時間がかかってというところがクリアされないと、興味を持っても、それが持続して利用まではつながりませんので、ぜひそこも論点として加えていただければと思います。具体的には、倫理審査の仕組みをちょっと見直すだけで劇的に状況は変わると。
 以上です。
【宮園主査】  ありがとうございます。
 それでは、鎌谷委員、お願いいたします。
【鎌谷委員】  私、今日は発表者だったんですけども、ちょっとコメントをさせていただこうかなと思いましたのは、今回、シンガポールを特に取り上げましたが、実際には、世界でああいったことをやっているのは、イギリスだけではなくて、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、オランダ、エストニア、アメリカ、カナダ、台湾、韓国といった国々です。研究の最先端で競っているような国ではない国々もこういったゲノムバイオバンクをつくっているというところに特殊性があるかなという点が一つ目です。
 二つ目は、日本人だからゲノムを海外に出せないというのは間違いでございます。これについては、法律で禁じられているから駄目なのであるという判断ではなかったということについて、申し上げたいと思います。先ほど釜井さんからも発言があったような辺りのところで止められたという辺りで、この点についても、東北メディカル・メガバンクのICが古いからとか、そういう問題でもないというふうに、個人的には認識しております。
 以上です。
【宮園主査】  それでは、大津委員、お願いいたします。
【大津委員】  ありがとうございます。途中で別会議に抜けていたので、ちょっと的外れな格好になるかもしれませんけど、その点は御容赦ください。
 我々のところは実装に近いほうで絡んでいますので、純粋な基礎のほうと価値観が若干違う部分があるかと思うんですけれども、こちらは出口に近いところで見ていて、要はグローバルで、アメリカが強いところもあれば、中国が強いところもあれば、イギリスが強いところもあれば、日本が強いところもあると思いますし、グローバルな視点で、海外で先行しているのであれば、そういった技術をできるだけ早く取り入れるということを我々のところは比較的心がけております。
 それから、ゲノムの国際的なデータ統合というのも、単に、我々のところから、日本から出すということだけではなくて、幾つか、小規模ですけど、アメリカ、ヨーロッパとの国際的なデータ統合をやった経験もありますし、今、国際がんゲノムコンソーシアムのところの臨床側の中心に我々のメンバーが結構入り出していますので、その中でグローバルの臨床とゲノム・オミクスのデータ共有ということを進めつつあるんですが、やはり、いろんな法的なガイドラインとか、特にヨーロッパのほうは個人情報保護が結構厳しいところもあって難渋はしていますけれども、それぞれの思いというのは、米国、欧州とアジアの3極で取りあえずデータをそれぞれの地域ごとに共有した上でグローバルのデータ統合というのを進めようという考えもありまして、この辺は、それぞれの規制はあると思いますが、グローバルにデータ共有というのを進めていって、そのデータを基礎研究や創薬に提供できるようにしていければと考えておりますので、決してデータは日本から出されているだけではないということを一応御理解いただければと思います。
【宮園主査】  大津先生、どうもありがとうございました。
 時間が大分迫ってまいりましたので、議論が尽きないところでありますが、今日の議論はこの辺りまでとさせていただければと思います。
 1点だけ、私から追加させていただきますと、AIの人材がライフサイエンスの分野でなかなか育たないということは、いろんなところで言われているところであります。私も東大におりましたときに情報系の方々から、アカデミアでは給料がある程度フィックスされているので、どうしても海外のほうに行ってしまうと。日本でそういう人材を育てるのはなかなか難しいのは、特に大学や国立の研究所の給与体制等、限界があるんじゃないかということも議論されているところであります。では、そういった方々が海外でどんどん育っていけば日本としてはいいんじゃないかということも発想の転換であり得ますし、そういったことも含めて、日本でどうやってAI人材を育成していって、ライフサイエンス、実験の生物学者とどのように連携していくかというのは、これからもう少し議論をさせていただければなと思っているところであります。
 それでは、釜井課長にお返ししますので、よろしくお願いいたします。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】  ありえとうございます。事務局でございます。
 若手研究者を含めた御発表につきましては、次回以降、ライフサイエンス委員会ではもう1回程度予定されております。皆様からいただいた御意見を踏まえまして、ライフサイエンス研究の今後について、本委員会で引き続き議論を深めていきたいと考えておりますので、今後とも何とぞよろしくお願いいたします。
【宮園主査】  それでは、今日はこれでよろしいでしょうか。
 ほかに意見がないようでしたら、本日のライフサイエンス委員会はここまでといたしますので、事務局から連絡事項をお願いいたします。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】  再び、事務局でございます。本日は、大変有意義な御議論いただき、誠にありがとうございました。
 議事録につきましては、事務局作成の案を皆様にお諮りし、主査の御確認を経た後、弊省ホームページ、「ライフサイエンスの広場」にて公開いたします。
 次回のライフサイエンス委員会は、12月8日、金曜日、10時から12時を予定しております。既に出欠はお伺いしておりますけれども、もし御変更がございましたら、事務局まで御連絡ください。詳細なことにつきましては、追って御連絡させていただきます。
 事務局からは、以上です。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 本日は、本当に皆様、ありがとうございました。今日のライフサイエンス委員会をこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

研究振興局ライフサイエンス課

(研究振興局ライフサイエンス課)