研究計画・評価分科会(第73回)議事録

1.日時

令和2年7月16日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 研究開発課題の評価について
  2. 研究開発プログラム評価の試行的実施に関する議論のまとめと新たな取組について
  3. その他

4.出席者

委員

栗原分科会長、小池分科会長代理、青木委員、春日委員、辻委員、雨宮委員、五十嵐委員、伊地知委員、長我部委員、髙村委員、寶委員、田中委員、土井委員、長谷山委員、林委員、水澤委員、山口委員、李家委員

文部科学省

梶原審議官(科学技術・学術政策局担当)、横井企画評価課長、山下科学技術・学術戦略官、橋爪参事官(情報担当)、奥量子研究推進室長、新地企画評価課課長補佐、ほか関係官

5.議事録

【新地企画評価課課長補佐】 会議開催前ですけれども、事務局からお知らせいたします。本日は、前回同様、ZoomによるWeb会議でございますので、表示される氏名につきましては、御所属、御指名が表示されているか、いま一度確認くださるよう、お願いいたします。
以上でございます。

【山下科学技術・学術戦略官】 栗原先生、事務局の山下でございます。御予定されていらっしゃる先生方、皆さん、お入りいただいたようですので、大変恐縮でございますが、始めていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【栗原分科会長】
ただいまから、第73回科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会を開催いたします。
それでは、議事に入る前に、配付資料等について、事務局から説明をお願いいたします。

【新地企画評価課課長補佐】 本日は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、傍聴者なしのWeb会議により、開催しております。また、本日の会議の模様は、ライブ配信が組めませんでしたので、YouTubeの文部科学省チャンネルにて、7月21日頃から録画の配信を行う予定でございます。
本日は、研究計画・評価分科会の委員・臨時委員24名のうち、現時点で18名に御出席いただいておりまして、科学技術・学術審議会令第8条第1項に定める定足数の過半数を満たすことを御報告いたします。
なお、伊地知委員につきましては14時30分までの御出席、高梨委員につきましては14時30分以降からの御出席となってございます。
ZoomによるWeb会議の開催に当たりまして、事前にお伝えしておりますとおり、委員の先生方にお願いがございます。
御発言の際は、「手を挙げる」を押すよう、お願いいたします。
御発言後は、「手をおろす」を押して、挙手を取り消してください。
御発言時以外はミュートにしていただき、御発言時のみ「ミュートを解除」を御選択いただくよう、お願いいたします。
録画配信を円滑に行う観点から、ネットでも聞き取りやすいように、御発言の都度、お名前をおっしゃっていただくよう、お願いいたします。
御発言の際、資料を参照する際には、資料番号、ページ番号又はページ内の該当箇所などを分かりやすくお示しいただきますよう、御配慮をお願いいたします。
最後に、議題(1)での研究開発課題評価の審議案件の説明時間を適切に管理するため、予定説明時間の終了1分前と終了時点で事務局よりお声掛けさせていただきますので、時間厳守でお願いいたします。
以上でございます。

【栗原分科会長】 それでは、議事に入ります。議事(1)の研究開発課題の評価についてです。本日は、中間評価2件と事後評価1件の計3件を審議いたします。各委員会において取りまとめられた評価結果を資料1-1-1から1-3-3として配付しておりますので、これを基に御審議いただきます。まず、委員会ごとに説明していただき、それぞれについて質疑の時間を取りたいと思います。なお、説明の際は、評価票の必要な部分のみを簡潔にお願いいたします。
それでは、防災科学技術委員会から、説明をお願いいたします。寶先生、お願いします。

【寶委員】 皆さん、こんにちは。寶でございます。防災の分野は、今回のテーマは首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクトの活動状況ということであります。時間が5分と限られておりますから、補足の図、通し番号12ページのポンチ絵を御覧ください。このプロジェクトは、首都圏で直下地震が起こりますと、経済被害は100兆円とか、死者は2万人とか、首都機能に大変な被害があって日本中がマヒする可能性もあるわけですが、そういった首都圏の大きな地震災害について、レジリエンスといいますか、災害があっても被害が少ない、被害を受けても早期に回復するというような、レジリエントな社会を目指すということでありまして、文理融合の面白いプロジェクトになっています。
三つのグループで、緑色のところがsub aの社会科学分野で、対応力の向上を目指すということで、これは、地震の強度が与えられたらどれぐらいの被害になるかというような関数を作って、それを検証すると。それから、戦略的な被害対応のための対象数把握技術、何軒被災しているのかとか、何か所やられているのかとか、何人危ないとか、そういうものを早期に把握して緊急対応を行うようなツールです。それから、企業・組織が事業継続するための手順を確立するような研究であります。sub bは、ベーシックな理学的な研究で、従来のMeSO-net、K-NET、KiK-net、Hi-netといったような地震観測網のデータと、それから、今回の特徴は民間データを使うものです。民間会社が様々な観測データを持っているということで、それも活用してマルチデータインテグレーションシステムを開発するということで、当面、プロトタイプを構築していくものです。あとは、無線でデータの伝送技術の開発です。それから、地表で地震観測をして推定していくとか、そういうことで、地震の震度の分布や、そういったものを求めていきます。これは、理学的な、予測力の向上を目指すものです。sub cは、工学分野で、対策ですが、E-ディフェンスを使って実大の家屋で耐震の余裕度みたいなものを計量していくということです。この三つ、対応力、予測力、予防力を強化して、レジリエントな社会を作っていくと。そのときに民間の活力あるいはデータをしっかり活用していくということで、右端の方に、データ利活用協議会、「デ活」と呼んでいますが、分科会を作って、その分科会がボトムアップ的に、あるいは産学連携的に活動していくということで、ここでは60企業・団体と書いてありますが、もう少し増えていると思います。
それでは、本文の方へ参りまして、13ページから簡単に御説明したいと思います。中目標のところに、予測力・予防力・対応力の向上ということで、今御説明したようなことが書いてあります。重点的に推進すべき研究開発の取組で、官民の地震観測データを活用すると。それから、政府・地方公共団体のみならず、民間企業等を含めて総合的な災害対応や事業継続能力の向上をするということで、正に社会実装を目指している研究プロジェクトであります。
14ページの評価結果に入りますが、予測力・予防力の向上、これはsub bとsub cの分野ですが、理学分野はsub bで、既存の観測網のデータを一般公開して、それが多くのユーザーに研究活用されていると。それから、民間企業等が保有する地震動データも統合して、従来よりも一桁高い空間解像度、一桁高いというのは10キロオーダーから1キロオーダーというようなことですが、揺れの分布を把握できるような手法が開発されたと。それから、スマートフォン地震計ネットワークとか、先ほど申しましたマルチデータインテグレーションシステムの技術開発も順調に進捗しております。工学分野では、E-ディフェンスを用いて様々な種類の建物について実験を計画・実施しておりまして、構造体等に与える損傷をセンサーによって定量把握する手法の開発も順調に進捗していると。今年は3年目ですが、2年目(昨年度)には、木造住宅について、免震住宅と通常の木造住宅の比較も行ったということで、そういうデータを使って、かつ、過去にE-ディフェンスで行われたデータとも総合して、より良いデータベースにしていくということであります。
それから、sub cの対応力の向上では、先ほど申しましたフラジリティ関数のような関係式を明らかにするとか、事業継続能力向上のために、災害対応要素を収集し、強震動を経験した企業にBCPに関するアンケート調査を行って、企業がいかに災害に対応するかというようなことの分析を行っております。それから、先ほど申しました「デ活(データ利活用協議会)」で、ワーキンググループを作っています。そのうちの一つの例として、早期被害把握分科会では北海道胆振東部地震において保険会社の顧客対応に対する資源配置計画の策定手法を試行的に実装したということで、もう一つ、生活再建分科会というのがあるのですが、そちらの方は被災者の生活再建の質の向上を目的としてドローンによる屋根被害の確認等の技術導入を行ったということで、合計六つの分科会が活動しております。
ということで、本研究プロジェクトは文理融合で社会科学・理学・工学ということでやっておりまして、18ページに飛びますが、(3)の科学技術基本計画等への貢献状況は、「自然災害に対して、国民の安全・安心を確保してレジリエントな社会を構築する。」という目標に対してきちんと取り組んでいるプロジェクトとして順調に進んでいると、判断しております。ということで、次のページの冒頭に書いてありますように、この研究開発は継続していくのが適当であると考えております。「企業も強くなる 首都圏も強くなる」というコンセプトを掲げている本プロジェクトでありますから、この中間年度において既に社会ニーズへの対応を求められる民間企業等の外部機関のリソースの導入を拡大し、また先行プロジェクトの成果も踏まえた研究体制が構築されておりまして、効率的にプロジェクトが運営されていると存じております。
以上です。

【栗原分科会長】 ありがとうございました。
ただいまの説明について、御意見、御質問等、ありますでしょうか。もし手をお挙げになっていても気が付かない場合には、声をお出しいただければと思います。よろしくお願いします。
土井先生。

【土井委員】 土井です。どうも、御説明ありがとうございます。今御説明いただいた内容と少し異なる視点かもしれないのですが、近年の線状降水帯での激甚災害とか、今までとは異なる気象によって災害の質も変わってきていると思うのですが、そういうものに対して目標の見直しを計画の途中で行うとか、そういうようなことはこの防災の中ではなされるのでしょうか。それとも、決まっているもの以外は期が変わったときに見直すということなのでしょうか。

【寶委員】 本プロジェクトは、首都圏の直下地震を対象としているのですね。気象災害については、ほかにもSIPでやっているようなプロジェクトがありまして、そちらの方でやっておりますから、防災の研究開発全体を見渡しまして、これは地震に特化してやっております。そのほかにも様々なプロジェクトがありますから、今起こっているような豪雨災害・洪水災害等については、そちらの方で対処されると思います。

【栗原分科会長】 よろしいでしょうか。
それでは、小池先生。

【小池委員】 大変すばらしいプロジェクトだと思いますが、特にこのプロジェクトは、先ほど寶先生が御説明になった、対応力の向上を文理融合でやっておられるところはすばらしい。「デ活」というのですか、そこの成果としても、保険のものとか、り災証明の早期発行とか、すばらしい成果を上げておられると思います。
そこで二つ質問をさせていただきたいのですが、資料では12ページ(通し番号16ページ)の(2)のところの評価内容の二つ目の黒丸に「「デ活」参加企業から提供された地震動データ以外のビッグデータについても、情報の秘匿性を担保しつつ、防災のために共有できる仕組みを構築しつつある。」と書いてあって、これは非常に重要なところだと思うのですが、なかなかこういうものが集まらないこと、それを活用できてないことは大きな問題だと思うのですが、具体的には地震動データ以外でどういう種類のデータがどういう秘匿性を担保しながら共有されているのかということを教えていただけると大変有り難いというのが一つ目で、二つ目は、毎回聞いているのですが、若手の研究者はこの中でどういう役割をしておられるのかということを教えていただければと思います。
以上です。

【寶委員】 ありがとうございます。一つ目の御質問ですが、具体的にはどういうデータかというところについて詳しく存じ上げないのですが。

【防災科学技術委員会事務局】 事務局から、お答えさせていただきます。
地震・防災研究課の石山と申します。防災科学技術委員会の事務局をしております。よろしくお願いいたします。
今御質問いただきました地震動以外のデータについてはどういったものがあるかということですが、地震動については、ガスとか、そういった企業さんから御提供いただいてございます。また、それ以外のデータとなりますと、例えば、人流、人がどういうふうに動いたかというような、最近、テレビにも出ているようなものですが、こういったものを、提供企業さんがデータ利活用協議会に御参加いただいておりますので、御提供いただいてございます。また、インフラ企業の東京電力さんとかいらっしゃいまして、そういうところでは、停電の状況とか、昨年も台風15号で停電が広がりましたが、こういったときのデータの情報というのも御提供いただいて、研究に利用させていただいてございます。
また、若手については、sub a、b、cで研究者は全部で100名ぐらい参加しているのですが、研究統括の下、各研究のチームの中でそれぞれのテーマにおいて研究を進めているところでございます。
事務局からは、以上でございます。

【栗原分科会長】 ありがとうございます。よろしいでしょうか。

【寶委員】 寶です。地震に伴って、様々な複合災害も出てくる可能性があります。ですから、地震のデータだけではなくて、先ほどおっしゃった気象関係のデータも入ってくれば、地震が起こっているときに水害が起こるとか、そういったところも連動できる可能性があるのですが、今のところはまだそこまでいっていません。
以上であります。

【栗原分科会長】 それでは、あと二人、御質問があるので、春日先生、五十嵐先生の順番で、少し時間が押していますので、簡潔にお願いします。
では、春日先生、お願いします。

【春日委員】 春日です。先ほどの土井先生の御質問と共通するのですが、このタイトルを見ますと首都圏のレジリエンス全体のことに関わるように見えますし、大目標、中目標も自然災害と首都圏のレジリエンスということで、地震に特化しているということは、タイトルから中目標までを見る限りは、はっきり分からないのですね。この点、今後、タイトルをもう少し焦点を当てる形に考え直す可能性があるのか、あるいは、地震を研究して、そこで得られたことをより幅広い防災に応用することを目指してこのタイトルにされているのか、このあたりについて少し伺えれば有り難いと思います。

【寶委員】 基本的には、これは首都直下地震を対象としておりますが、ここでの成果は、南海トラフとか、ほかのところにも使えるということは考えておりまして、そのときには津波も大きな現象になって出てきますから、首都圏の地震が中心ですが、先ほど複合災害と申しましたが、地震が起こった直後に台風が来るとか、そういうことも当然あり得るわけでして、その辺は含めていかないといけないかとは思いますが、当面、この5年間は地震中心で、そのほかのデータも集められるようであれば集めるし、対策についてもやっていくということになろうかと思います。

【栗原分科会長】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
それでは、五十嵐先生、お願いします。

【五十嵐委員】 五十嵐です。質問は、土井先生、春日先生がおっしゃったこととほぼ同様で、今、寶先生にもお答えいただいたのですが、災害というのは独立で起こるものではなくて、今回も複合的にコロナも同時に起こったりしているので、是非、その辺は融合していっていただきたいということが、一つありました。
もう一つは、今、コロナの状況で、ニューノーマルというのですか、新しい様式というようなことが出てきたときに、この研究においても何かここから変わっていかれることがあるのならば教えていただきたいということを、お尋ねしたいと思いました。

【寶委員】 ありがとうございます。気象データも、気象庁がリアルタイムのすばらしいデータ収集システムを作っておりますし、それもデータベース化されていますから、ここでの「デ活」のデータもうまく統合していけるといいと思いますし、マルチデータインテグレーションシステムは、取りあえずは地震中心でプロトタイプを作りますが、総合的なインテグレーションシステムになっていくといいのではないかなと思います。
社会科学分野で対応のところに、当然、コロナは入ってくると思います。中間評価の書類作りの段階では入ってなかったと思いますが、今、皆さん、議論されていると思いますが、私たちの方も、学会の方では、コロナの状況のときに水災害が起こったら、あるいは地震災害が起こったら、どのように避難所で対処するかというようなことは既に提言しておりまして、そういったところをくみ取って、sub aは、コロナ中、コロナ後、あるいはニューノーマルな場合の社会の対応というのは当然入ってくるように指導していきたいと思っています。

【栗原分科会長】 ありがとうございます。
簡単にお答えいただきたいのですが、1点質問させていただければと思うのですが、今後の研究開発の方向性のところに「民間企業等の外部機関のリソースの導入を拡大し」と書いてあることと、その他のところに「プロジェクト終了後も自立・継続して活動できる仕組みを構築する」と書いていらっしゃるのですが、せっかくの活動が継続するということは非常に重要だと思うので、この点に関しては今後どう具体的に進めていかれる計画があるのかを伺えればと思います。

【寶委員】 「デ活」の協議会に何十という企業が参加しているわけですね。そういう企業は、自分たちの役に立つようにと思って、データも出してくれているわけですね。自社のデータだけではなくて他社のデータだって使える可能性もあるということで、通常、民間はあまりデータを出したがらないのですが、ここに参加しているのは積極的にデータを出し合って自分たちの事業継続をしっかりやっていきたいということでして、5年間のプロジェクトは予算が付きますが、それが終わっても、この活動の価値を各企業が認めて、それぞれが少しずつでもお金を出し合ってこういう活動を継続していくということになるように持っていきたいと思います。

【栗原分科会長】 是非、そうなるといいと思います。ありがとうございました。

【寶委員】 ありがとうございました。

【栗原分科会長】 それでは、次に、情報委員会から、説明をお願いいたします。

【山下科学技術・学術戦略官】 栗原先生、事務局の山下ですが、時間が12分ほど押していますので、少し早めていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【新地企画評価課課長補佐】 事務局です。今、ホストのパソコンが落ちてしまいまして、画面がこの状態から変わらないのですが、進めていただければと思います。

【栗原分科会長】 ページを言って、見ていただければと思います。電子媒体なり、紙なり、皆さん持っておられると思うので、大丈夫だと思います。

【橋爪参事官】 情報担当の橋爪でございますが、説明を開始させていただいてもよろしゅうございますでしょうか。

【栗原分科会長】 よろしくお願いします。

【橋爪参事官】 恐縮でございますが、お手元の資料で説明させていただきます。情報分野に関しましては、今回、AIPプロジェクトのうち、理化学研究所のAIPセンター、革新知能統合研究センター分の中間評価を行っておりますので、その点、説明させていただきます。通し番号でいくと、23ページから始まっております。
24ページに、中間評価の体制について、書かせていただいております。情報委員会の方で中間評価を頂いております。主査は西尾阪大総長。それから、この分科会の会長の栗原先生、辻委員、長谷山委員にも、お入りいただいている状況でございます。
このプロジェクトの概要については、次の25ページに書かせていただいております。AIPプロジェクトということで、人工知能に関する革新的な基盤技術の研究開発を推進するものでありますが、今、全体としては二つのプロジェクトを実施しております。一つは今回の中間評価の対象であります理研のAIPセンターという拠点を構築するというもの、もう一つはJSTの戦略事業を活用してAIPネットワークラボによる全国の大学・研究機関における人工知能関係の研究開発の支援でございます。今回は、このうち、理研AIPセンターの分を中間評価いただきました。
続きまして、26ページの方に参ります。26ページは、本プロジェクトが含まれている関連の施策目標等ですので、説明は割愛させていただきます。
27ページから、課題の進捗状況になってございます。本プロジェクトにつきましては平成28年度から始まっておりますが、理研AIPセンターにつきましては平成29年1月に開始をしております。そこから体制を整備してきてございますが、上の方に書いてありますように、五つの柱ということで、人工知能の次世代基盤技術の開発に向けた基礎研究の推進、サイエンスの強化、社会的課題の解決、倫理的・社会的課題への対応、人材育成、これを五つの柱として取り組んでございます。そのために三つの研究グループを設置しておりまして、一つ目は、汎用基盤技術研究グループということで、主に理論の研究。二つ目は、目的指向基盤技術研究グループということで、課題から遡って研究を行うところ。三つ目は、社会における人工知能研究グループということで、主に倫理的・社会的課題を担当するところ。そういったグループの体制になっております。
運営・研究体制といたしましては、開所してから研究者の確保を進めてまいりまして、現在では一定の分野的広がりを有する拠点形成が進展している状況でございます。また、理研の拠点と全国の大学・研究機関をサブ拠点として結ぶ取組も行ってございますし、海外人材の獲得等にも取り組んでございます。
続きまして、4ページ(通し番号28ページ)です。事業の進捗状況といたしまして、政府方針との関係について書かせていただいております。昨年6月に政府としましては「AI戦略2019」というのを策定しておりますが、その中でこのセンターは国内の研究開発の中核機関の一つとして位置付けられておりまして、主に理論研究を中心とした革新的な基盤技術の研究開発で世界トップを狙い、また、その研究成果を社会に活用させることを目的としてございます。研究成果の状況でございますが、三つのグループにおいて着実に進展してございまして、例えば、理論の部分でありますと、不完全なデータ、限定されたデータからでもしっかりと学習できるような技術の開発。それから、目的指向でありますと、医師の診断情報が付いていない画像から、がんの特徴とかを発見する技術の開発。それから、社会グループの方でありますと、5ページ(通し番号29ページ)の方に行っていただきますが、内閣府の「人間中心のAI社会原則」、こういった議論にも参画しているということで、着実に取り組んでいる状況でございます。それから、マル3で産業界との連携についても状況を書かせていただきますとともに、マル4で国内外の大学・研究機関あるいは理研の中での連携の状況、マル5の人材育成につきましても、学生、企業の方、海外の方を対象に行っている状況を書かせていただいております。それから、6ページ(通し番号30ページ)に行っていただきますと、国際的な外部評価も行っていることをマル6で書かせていただいております。
6ページ(通し番号30ページ)の下、(2)各観点の再評価でございます。まず、必要性に関しましては、AI研究の社会的・科学的インパクトの大きさ、それから、次の戦略にもしっかりと位置付けられているということで、必要性は高いという評価を頂いてございます。一方で、31ページでございますが、今後の発展に向けての助言ということにつきまして、AIの分野は非常に状況変化の速い分野でありますので、状況変化を見据えつつ、将来ビジョンあるいは戦略を明確化して、研究人材育成を戦略的に進めていくことの重要性を指摘していただいてございます。
続きまして、有効性の部分であります。31ページの下の方ですが、短期間に体制作りをやってきた点が評価できるという点。それから、32ページに行っていただきまして、先ほど申し上げましたように、研究人材育成の点でも成果が着実に出始めているという点から、有効性は高いという評価を頂いております。また、今後の更なる発展に向けた助言といたしましては、32ページから33ページにかけて幾つか頂いておりますが、一つは、多様な分野あるいは産業界との連携を更に強化していくべきだとか、そのために情報発信や広報に取り組んでいくべきだとか、あるいは、データマネジメントの重要性、多様な人材の更なる巻き込み、こういった点について更に取り組んでいくべきだということで、助言を頂いております。
それから、33ページの効率性につきましては、センターの体制につきまして、サブ拠点の活用なども含めまして、整備が進んでいるということ。それから、国際外部評価を受けるなどの点で、効率性は高いという評価を頂いております。また、今後に向けた助言点としても幾つか頂いておりまして、一つは、先ほどビジョン・戦略をしっかり見直していくという点がございましたが、そういったビジョン・戦略に沿って、目標、グループ構成、資源配分も柔軟に見直していくことの重要性を指摘いただいております。それから、34ページに行っていただきまして、サブ拠点との連携を更に組織間連携に強化していくことなどの重要性を指摘していただいております。
最後に、(3)今後の研究開発の方向性でございますが、本課題については継続という判定を頂いております。そして、全体としてのコメントといたしまして、これまでの立ち上げ期間の実績は高く評価できるとしていただいた上で、今後、理研AIPセンターが、次のフェーズに早期に移行し、世界のAI研究をリードする存在に発展することを強く期待するということで、先ほど御説明させていただいたような様々な助言を頂いたところでございます。
その上で、(4)その他でございます。これは、理研に対する希望というよりは、文科省を含めて評価を行う方に対するコメントでございますが、本プロジェクトのように新しい潮流を生み出していくようなプロジェクトに対して、従来の評価指標というものは限界があるのではないかということで、新しい評価のためのマイルストーンやエビデンスについて引き続き検討をしていく必要があろういうコメントも頂いておりますので、最後にその他として記載してございます。この点につきましては、計評分科会での御議論も参考にしながら、取り組んでいきたいと思っております。
ちょっと長くなりましたが、以上でございます。

【栗原分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、御質問、御意見等ありましたら、お願いします。土井先生。

【土井委員】 御説明、ありがとうございます。土井です。
今御説明いただいた中で、書きぶりが気になるので教えていただきたいのですが、34ページの(3)の下から2番目の段落のところで「ビジョンの早急な明確化・具体化を図り」というふうに書かれていて、まだビジョンが明確になっていないまま、走り続けなさいと言っているようにも聞こえるので、このあたりの書きぶりは、どうしてこういう書きぶりになっているのかなというのが気になるのですが。

【橋爪参事官】 御質問、ありがとうございます。AIにつきましては、この先の潮流を見いだしていくという点に関しましては、かなり、世界の動き、変化が激しいところでございます。そういうわけで、今後10年を見据えたビジョンというのを今の時点でコロナの状況も踏まえまして明確化をして、しっかりと打ち出していくべきだと。これによって、日本のAI研究自体の進んでいく方向性をしっかりこの拠点が示していくことを更に取り組んでいくべきだと。今のものというのは、実際には冒頭申し上げましたように五つの柱を掲げて取り組んでおりますが、更に戦略的に具体化をして取り組んでいくべきだと。その際には変化する潮流をしっかりと見据えてこの先も不断に見直しをしていくべきだということで御指摘を頂いているところでございまして、この点につきましては、文科省も理研も御指摘を真摯に受け止めて検討をしていくということを考えてございます。

【土井委員】 そうだとすれば、「コロナ禍の中でビジョンの早急な明確化・具体化を図り」とした方がいいのではないでしょうか。今のままの書き方だと、今御説明があったような、ニューノーマル、withコロナということに対して状況変化を考えて見直せというお話のように受け取ったのですが、書きぶりはそうではないと思いますが、いかがでしょうか。

【橋爪参事官】 そういう意味では、私の説明に若干足らないところがあったのですが、柱としては、五つの柱を掲げて今までやってきたわけですが、それが具体的なビジョンかというと、この評価に当たりましては、まだまだその具体性というのが足らないというところも、御議論としてはございました。従いまして、そういうことも踏まえましてこのような記載になってございますが、先生がおっしゃったコロナの状況とか今の動きもちゃんと見据えていくべきだというところについては、「このような、今後想定される変化を踏まえ」ということで、その前の段落のところ、(3)の下から三つ目の段落のところにそういう背景も記載をさせていただいているところでございます。

【栗原分科会長】 私も委員なので、ちょっと補足させていただくと、このビジョンというのは、今、基盤から応用、社会的なAIの応用まで、そういう意味では非常に幅広く明確な研究は推進されているのですが、世界トップとか、日本がAIの世界でリードするためにはというところから、更にもっとビジョンをはっきりしてくださいという委員の注文でして、多分、普通のレベルのビジョンでは、十分にビジョンはできていると思います。ただ、世界トップとか、日本がこういう中でプレゼンスを持っていくためにはというところに、非常に期待が大きくて、是非、担当の皆様にもセンターとともにそういう活動を応援していただきたいと思うところです。土井先生、委員として、少し補足させていただきます。

【土井委員】 その点が理研AIPセンターにきちんと伝わっているのであれば、このままでいいかと思います。ありがとうございます。

【栗原分科会長】 簡単な質問がありましたら、お受けしたいと思います。
なければ、時間が押しておりますので、どうもありがとうございました。

【橋爪参事官】 ありがとうございました。

【山下科学技術・学術戦略官】 栗原先生、山下でございますが、2点だけ。
今、現時点で17分押しでございますというのが1点です。もう1点は、我が省のパソコンが完全にダウンしていまして、Zoomによる資料の共有が全くできないのです。今、我が省の情報セキュリティと相談しましたら、一度、全部落とし直して、先生方にもう一回ログアウトしてもらうとできるそうなのですが、それは混乱が起きるので、資料が画面上では共有できない形で議事運営させていただきたいのですが、その方向でよろしいでしょうか。

【栗原分科会長】 大体の先生は電子媒体で見られる状態になっているのではないかと思うので、そういう状態でなくて、画面に映していただかないと大変不都合という方がいたら、ちょっと声を上げていただけないでしょうか。
皆さん、ページをきちんと言っていただければ資料を見ることができるのであれば、このまま進めたいと思いますが、よろしいでしょうか。
特にないようなので、このまま進められると思います。よろしくお願いします。

【山下科学技術・学術戦略官】 ありがとうございます。

【栗原分科会長】 それでは、次に、量子科学技術委員会から、説明をお願いします。

【奥室長】 文科省量子研究推進室の奥と申します。私の方から、次世代加速器要素技術開発プログラムの事後評価について、御説明をさせていただきます。資料1-3-1、通し番号で36ページを御覧いただけますでしょうか。
36ページに緑囲いになっているところがありますが、次世代加速器要素技術開発プログラムは、平成28年度から30年度まで、3か年で実施したプログラムになります。
続けて、37ページの資料1-3-2から、評価結果になります。38ページ目が量子科学技術委員会の委員の名簿、39ページ目がその下に置かれている量子ビーム利用推進小委員会の名簿になります。
40ページ目から、次世代加速器要素技術開発プログラムの概要について、簡単に御説明をいたします。先ほど申し上げたように、このプログラムは平成28年度から30年度までの3か年で実施しました。その結果を受けて、令和元年度に事後評価を行ったものです。2ポツの研究開発概要・目的にありますように、光・量子ビーム技術は、放射光、中性子、レーザー等の技術を総称したものですが、このうち特に次世代の加速器については、高エネルギー物理学、放射光光源、医療応用等、幅広い分野への応用が期待されるものです。このうち、今回のプログラムでは、次世代の放射光をターゲットとして、高性能化のボトルネックになっているビーム入射、一番初めの入射スキームに関する基盤技術を開発することを目的にしたものです。
40ページ目の下のところ、必要性についてです。最後の段落ですが、この基盤技術につきましては、基礎科学から産業応用に至るまで、幅広い応用が期待されるキーテクノロジーであり、このため、先導的な技術開発や利用研究を推進することで、我が国の優位性を確保する必要性があるということを書かせていただいています。
続けて、41ページ目、有効性についてです。このプログラムは、これとは別に平成20年度から実施している、「光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発」で得られた課題あるいは成果というのを反映して、実施しているものであります。これをさらに、最終的には実装まで結び付けることを目的にした研究開発プログラムでして、現在、東北大学の中に次世代放射光施設の整備をしていますが、ここの加速器に応用するのと、播磨にありますSPring-8の加速器の高度化につなげることを目的としていて、有効性は極めて高いと評価いただいています。
効率性については、2段落目にあるように、SPring-8、SACLAといった大型の加速器開発の実績を有する理化学研究所が中心になって研究開発を実施し、POのプロジェクトマネジメントによる連携強化体制をきちんと構築しているとなっています。
予算については、3か年でおおむね1.5億円程度。実施体制については、先ほど申し上げたとおりです。
42ページ目から、事後評価票になります。研究開発計画との関係等については、ここに記載のとおりです。
下段から、評価結果になります。まず、評価基準として、この研究開発の中身というのが先導的な技術開発や利用研究として行われているのかどうか、更に、幅広い波及効果があったのかどうかということを設定していただいています。先ほど申し上げたように、この加速器技術については、東北大に整備している次世代放射光施設に順次活用が図られるなど、有効に機能していると評価をしていただいています。さらに、この研究開発に当たっては、43ページ目の上にあるように、民間企業2社にも参画を頂いて、緊密な連携協力体制の下に進めているということになっています。
43ページ目半ば、有効性です。評価基準として、分野融合や境界領域を開拓したか、あるいは研究開発の質の向上に貢献したかどうかということに対して、先ほど来申し上げているように、現在整備中の、次世代放射光施設に実装されるなど、有効に活用されているということ、企業の参画も得ているということで、有効性は高いと評価を頂いています。
さらに、効率性の点は、POによるマネジメントの妥当性であるとか、連携・協力体制を構築できたかということですが、POが現地訪問あるいは進捗評価等のコミュニケーションを実施する体制を敷いた上で、その結果を資金配分にきちんと反映をしていると、高く評価を頂いているところです。
44ページ目、総合評価になります。ここの1段落目にあるように、国費投入に見合う成果がきちんと出されて、目標は十分に達成されたと、評価を頂いています。
(3)今後の展望です。放射光、中性子、レーザー等の光・量子ビーム施設については、今や研究開発にとってなくてはならない研究基盤となっております。このため、きちんとこれを更に発展させていくとともに、次世代放射光施設への導入、さらには他の放射光施設の高度化等に適切に反映していくことが重要だということで、評価を頂いているところです。
私からの説明は以上ですが、本委員会の主査の雨宮先生に御参加いただいているので、雨宮先生から一言あれば、よろしくお願いします。

【雨宮委員】 雨宮です。今、室長から説明していただいたとおりで、特に私から補足することはありません。よろしくお願いします。

【奥量子研究推進室長】 ありがとうございます。以上です。

【栗原分科会長】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明について、御意見、御質問等ありましたら、お願いします。小池先生、どうぞ。

【小池委員】 このプログラムの場合は、通し番号42ページの2のところの下から二つ目にアウトプット指標が二つ書かれているのですが、そのアウトプット指標に対する評価はいかがだったのでしょうか。

【栗原分科会長】 どちらがお答えになりますか。

【雨宮委員】 奥室長、お願いできますか。

【奥量子研究推進室長】 論文数と若手の関連事業参画数というのを、アウトプット指標として書かせていただいています。これについて定量的なものが手元にないので恐縮なのですが、ここで開発された加速器の要素技術そのものにつきましては、先日、論文として1件発表されているのと、次世代放射光施設の加速器部分にきちんと導入されるので、この3年間という短い期間ですとアウトプットの指標としてはそれほど定量的なものは出てこないかもしれませんが、いずれ次世代放射光施設が軌道に乗った暁には多数の論文等が出てくることを期待したいと思っています。

【小池委員】 ただ、プロジェクトのアウトプット指標を定義しておられるので、何らか評価には書かれた方がいいと思います。

【奥量子研究推進室長】 雨宮先生とともに、検討させていただきます。

【雨宮委員】 事務局と連絡をとって、検討いたします。どうもありがとうございます。

【栗原分科会長】 ほかにありますでしょうか。山口先生。

【山口委員】 山口です。ありがとうございます。これは日本にとって非常に重要な研究であって、立派な成果を上げられているということは、大変喜ばしいことだと思います。一つは、研究の最初の方でしたか、世界を先導する次世代加速器を実現するというキーワードがありまして、そういう観点で世界的な技術開発の状況と比べて、どう評価されていたのか。もう一つは、国際協力という観点で、この技術の広がりといいますか、それをどういうふうに見ておられるのか。この二つについて、お聞きしたいと思います。

【雨宮委員】 雨宮です。次世代加速器は、多くのユーザーが安定して使うという意味で、性能のみならず、きっちりと安定して運転できるかというところが重要なところで、そこが優れていると受け止めています。
それから、国際協力ですが、この分野はもともと、加速器、放射光、非常に国際連携.協力が活発で、見方によればコンペティションなのですが、情報共有はよくされています。あと、何をもって次世代と言うかの定義は切り口によって違うのですが、ここでの次世代というのは、軟X線領域における高輝度放射光源のことです。日本において、そこはすっぽり穴が開いていました。ここでは軟X線領域における高輝度放射光源ということを明示していなかったので、ちょっと分かりにくかったかもしれません。
以上、お答えしたつもりですが、いかがでしょうか。

【山口委員】 分かりました。そういう意味では、技術開発の中身そのものもそうなのですが、世界的な技術開発状況の中でのこのプログラムの位置付けとか、発展性とか、そういう面で少し書いていただければ、アピールするところも多いかなあと思いました。ありがとうございました。

【雨宮委員】 了解いたしました。

【栗原分科会長】 私も拝見していまして、これは加速器の要素技術開発ということでかなり明確なのに、具体的な技術内容をほとんど書いてないので、何か書かれた方が良いのではないかと思いました。山口先生の御質問にも共通すると思います。
いかがでしょうか。質問があれば、お受けします。
それでは、最初の2件に対しては、評価案については今の形で決定したいと思います。3番目の加速器要素技術に関しましては、コメントのあったところについて修正いただいて、その委員会の主査と私で確認した上で本分科会の決定としたいと思いますが、よろしいでしょうか。特に何かなければ、そのように進めさせていただきます。
(「異議なし」の声あり)

【栗原分科会長】 ありがとうございます。Webだと、皆さんがどういう御意見か分からないので、反対のときには声を大きく上げてください。よろしくお願いします。
どうもありがとうございました。それでは、このように分科会として評価案を決定したいと思います。
次に、議題(2)に入ります。研究開発プログラム評価の試行的実施に関する議論のまとめと、新たな取組についてです。先ほどから山下さんが気にしておられるように、ちょっと時間が押していまして、本日は議論の時間がかなりあるはずだったのですが、20分ぐらい押していますので、山下戦略官におかれましても、少し簡略に御説明いただければと思います。
まず、議題(2)の内容について、事務局から説明をお願いいたします。

【山下科学技術・学術戦略官】 栗原分科会長、ありがとうございます。資料の方は、基本的に使いません。口頭で御説明申し上げますので、もしお手元に資料を置いていただくのであれば、通し番号64ページ、資料3だけを御覧いただければと思います。ただ、冒頭の御説明は資料3の説明でもないので、まず、私の説明を聞いていただければと思います。
今回、試行的な実施に関しましては、資料2-1に書いているのですが、口頭で御説明申し上げますので資料を御覧いただく必要はございませんが、各分野別委員会におきまして、昨年度1年間実施していただいた結果をまとめさせていただいているという形でございます。平成31年4月17日の計評分科会で1年間かけて試行的にやりましょうということをお決めいただいて、実際やらせていただき、コロナが起こりまして少し猶予がありましたのでこのタイミングになりましたが、様々な御意見を頂戴いたしましたし、評価をまとめていただきました。参考資料3というのは正に分野別委員会でそれぞれやっていただいた結果をまとめているのですが、それを我々事務局の方でコンパクトにまとめさせていただいた資料が、資料2-1になります。
中身についてですが、率直に申しまして、そもそも評価をする対象になっている研究開発計画についての御意見が様々ございました。一番多かったかなあというのは、平成28年度に研究開発計画を策定しているのですが、その後に参加された方もいらっしゃるので一概に難しいのですが、これは使ったのかと、後付けの評価みたいなものを今のタイミングでやるのかという、そもそもの御意見も結構ございました。ということで、基本的に余り使われていないという御意見が実は多かったというのが、全体の印象でございます。また、この策定のプロセスに当たって、平成28年から29年にかけて、一回改訂してございますが、相当、分野別委員会だとか当時の計評分科会の事務局が力を入れて作成いただいているものではありましたので、理念としては大変きちんとまとまって、すばらしいものであるという御意見も、一方で頂いてございます。ただ、研究開発プログラムという、各分野を俯瞰(ふかん)して、それを評価するとなるとなかなか、研究開発計画との関係で、例えばアウトプット指標・アウトカム指標も書いてございますが、突貫的に作った印象もややあって、取扱いはどうするのかというところで相当いろいろ御苦労いただいたというのが、頂いた文書でもございましたし、各分野別委員会、私も少し参加させていただいて御議論を聞かせていただいた中でもそういう御意見が多かったかなというのが、率直なところでございます。そういう意味で、まず、参考資料3をまとめるに当たりまして、各分野別委員会の主査あるいは事務局の方で相当御苦労いただいてまとめさせていただいているものであることについて、分科会の事務局として、冒頭、感謝申し上げたいと思ってございます。ただ、この結果をこのまま終わらせてはいけないので、次のことにつなげていかなければならないのですが、この研究開発計画というのはそもそも科学技術基本計画と連動する形で10年先を見通した5か年計画として定めているというものもございますので、今正に次期科学技術基本計画の策定を文科省としては総政特(総合政策特別委員会)という場でやらせていただいて、今、CSTIの方で御議論いただいて、来年度には策定される見込みでございますが、これはちょうど、研究計画・評価分科会の新たな第11期、次の期が始まるタイミングと同じになるということもございますので、これをどう生かしていくのかということを、本日は事務局なりに考えさせていただいたものを少し御紹介させていただければと思ってございます。これが先ほど申しました64ページに該当する資料3という部分でございますので、ここから、資料3を御覧いただければと思います。
資料3の中で、2ポツに新たな仕組み(案)の概要というのを書かせていただいてございます。ポイントは三つでございます。一つは、現行の研究開発計画は非常に御苦労の下に意味のある形で作ったのですが、一旦、これは廃止した方がいいのではないかというのが一つ目です。二つ目は、これを廃止するだけではなくて、これをよりよいものにつなげていく観点から、2行目、3行目にございますが、「文部科学省○○分野における研究開発戦略・計画(仮称)」、略称は「分野別戦略・計画」と呼ぶと書かせていただいていますが、こういったものにデザインし直してはどうかというのが二つ目です。三つ目は、それに加えて、プログラム評価というのを今回やらせていただいた結果、「文部科学省○○分野における研究開発プログラム」、「分野別プログラム」と略称を書かせていただいてございますが、これは全部、仮称・略称でございますが、こういったものに変遷していってはどうかというのが三つ目の論点です。それぞれ、中身を御説明したいと思います。
まず、分野別戦略・計画というものをどう位置付けるか、どう考えるかでございます。資料に書かせていただいてございますとおり、まず、従来もそうだったのですが、各分野における固有の事情・特性、様々ございます。また、新型コロナによって、研究の進め方、評価の進め方も変わりつつあるのかなという状況なので、そういったものに応じて柔軟な形で策定することを可能としてはどうかと、書かせていただいてございます。具体的には、相当いろんなところの委員会の御意見を伺って、これは事務局で感じているものですが、少なくとも先ほどの橋爪参事官の御説明とか奥室長の御説明の中にありましたが、統合イノベーション戦略というものが政府全体の中で定められている分野は、バイオだとか、AIだとか、量子技術だとか、近いうちにはマテリアル(材料)もそういった形になっていくという流れが、今、政府全体の中でございます。これは非常に、各省連携とか、あるいは民間の関わり方とか、政府全体の計画ではあるのですが、文科省の役割もかなりきちんと書かれている形になってございますので、こういったものを最大限活用して、同じような作業を繰り返すということはやめてはどうかというのが1点目です。
もう1点は、分野を俯瞰(ふかん)する戦略・計画として最低限のポイントは記載した文書としてまとめることは意味があるのではないかと。最低限まとめるポイントというのは、二つ目の丸に書いてございます。重点的・戦略的に取り組むべき研究開発領域やそれに基づく計画、これは今までの計画にももちろんあった部分です。プラス、各分野に共通する横断的事項。これは、人材育成だとか、国際だとか、そういう横断的な話でございますが、これも実は研究開発計画に書いている部分でございます。だから、こういった基本的な骨格は維持しても、少なくともほかで作っているものをできるだけ引用して定めるような形をとるのが適切ではないかと。実は、使われてない一番の理由は、平成28年、29年に定めても、その後の変化、経済情勢、社会情勢、あるいは健康・医療戦略室ができたりとか、時の情勢でいろんな形で屋上屋を作るような計画ができたり、あるいは政府全体のビジョンができたり、分野別委員会の別の計画の策定がなされたりということが同時並行で起こっていますので、なかなか難しいのですが、基本的にはここで屋上屋を重ねて整合的な計画をここだけのために作るということは、結局は使われないことをもう一回繰り返すのではないかというのが問題意識です。ただ、大切な視点で書き切れてないのですが、文部科学省でございますので、人材育成とか、国際とか、研究基盤とか、研究環境の整備とか、いわゆる研究の裾野からボトムアップして、イノベーションあるいは社会の実装を、いろんな視点であると思いますが、起こすような部分の正に境界領域の部分については充実した記述が必要だと思ってございますし、もう1点大切なのは、各分野で閉じこもって議論をしてはいけないと。分野全体あるいは科学技術イノベーション政策全体を俯瞰(ふかん)した視点の発想も必要で、ここをどうするかというのはまだ、正確に言うと、解決できる課題というか、手立てがないのですが、ここも考えていかなければならない。その視点で考えたときに大切なのが分野融合で、分野融合というのをどう捉えていくのかというのも、それぞれの分野で考えていただくものと、全体の中での分野融合をどうするかという視点も、例えば、DX(デジタルトランスフォーメーション)がこれだけ進むと、デジタル化が進んで研究の進め方が変わりますので、このインパクトを全体としてどう捉えるかというのは大きな機軸としてあるのかなというのが、この分野別戦略・計画というものでございます。
次の視点は分野別プログラムですが、今回、評価という名前に皆さんすごく悩まれて、研究開発課題の評価をやり、あるいは、CSTIだとか、いろんなところで独法評価も受けているような、例えば現下の立場ではそうなりますし、先生方もいろんな評価に関わっていただいていることもあって、屋上屋を重ねる評価を何でもう一回やる必要があるのだという、本質的な議論を相当いただいたと思っています。したがって、今回ここで書かせていただいた分野別プログラムというのは、評価のためのものだけではなくて、EBPM推進の基盤としてのいわゆる客観的なエビデンスを集めた、いわばエビデンス集のようなものと捉えていただく方がむしろ適切かなと思います。ただ、このエビデンス集なるものは、分野を俯瞰(ふかん)して把握できるものではあるのですが、当然のごとく、分野別戦略・計画、これはどうなるかによるのですが、こういったものを把握したり、見直しをする視点を、気付きを得たり、改訂をしていく材料として使うということは非常に大切だと思ってございます。また、これも当然ですが、プログラム全体の評価にも使っていくと。ただ、この際に、分野別プログラムの二つ目の丸でございますが、どちらかというと研究開発課題の評価というのは、大綱的指針とか文科省の評価指針の中に書いてございますが、いわゆるエバリュエーションだとかレーティングと言われるような、課題とか、事業のアカウンタビリティとか、めり張り付けを意識した評価という視点ではなくて、むしろアセスメント、これはいろんな解釈があるのですが、ここで書かせていただいていますのは、研究開発課題間の関係性の把握とか、プログラム全体に関する気付きや改善点を得るといった、いわゆる分野別委員会で御共有いただいて、組織的に学習いただけるもの。事務局にとっても、それはきちんと把握をするという。今日の議論の中でもございましたが、例えば、スタートした時点あるいは途中の経過で、人材がどういう年齢層で、どういう構成であるのかというのは、エビデンスとしてはなかなか研究現場からは把握しづらい面があったりするのですが、一方、今日お示ししている資料7に幾つか事例的に、こんなエビデンスが取れるのですというものを載せてございますが、実は、統計調査を使って、各分野の人材のプロファイルとか、男女構成比率とかというのはかなり分かるようになっていますし、あるいは、研究機関間のネットワークの構造がどうなっているかというのを経年で追うことも、頭脳循環という視点でも、国際共同・協力という視点でも、ネットワーク関係を随分分析できるような、エビデンスというか、データとか、そういうことが社会科学的にできるような知見というのが、実はかなりできている。欧米はこういうものを随分使っているのですが、なかなか我が省はまだ使えていないので、こういったものを強化していくというところを分野別プログラムの大切な視点として位置付けさせていただきたいというのが、資料3の内容でございます。
これで資料の説明は終わりますが、補足であと2分ぐらい頂ければと思います。資料8という、もう御退席いただいているかもしれませんが、伊地知先生よりあらかじめ提出された資料がございます。少々ややこしいのですが、資料2-1、2-2、2-3と、資料4-1、4-2、4-3というのがございますが、資料2-1に対して、伊地知先生から頂いたコメントを事務局なりに反映させていただいて、見え消しにしているものが資料2-2で、更にその資料2-2の見え消しを反映したものが資料2-3になってございます。したがって、伊地知先生の御意見だけを何とか取り入れていって現在のたたき台にしているのが資料2-3というもので、資料2-1というのは、新たな仕組みの、先ほど申し上げましたポンチ絵を文章にしたものですが、資料4-1に伊地知先生の意見を反映したものが資料4-3と、そういう構成になってございまして、これは資料の補足として御説明申し上げます。
あと、もう1点だけ補足いたします。本日、机上配付資料の扱いでお配りさせていただいてございます資料がございます。これは何を言いたい資料なのかといいますと、今回、様々な分野別委員会の御議論とかを拝聴させていただき、あるいは様々な御意見を賜った上で、その背景にある事務局としての考え方・捉え方というのを、私、事務局の担当課長でもございますので、受け止めをまとめさせていただいた資料でございます。あらかじめお配りさせていただいたので、説明はいたしませんが、最もお伝えしたい点というのは、下線を引いているところの一番最後の部分でございまして、特に分野別プログラムと言われている部分の客観的なエビデンスというのは、あたかも専門外の人はエビデンスを俯瞰(ふかん)的に捉えるというものでどうしても皆さん捉えがちなのですが、そういうことではないと思っています。これは、そういうものも一材料ですが、むしろ研究現場において取り組まれている様々な工夫とか課題といったものも大切なエビデンスでございますし、あるいは、これまで先生方に御議論いただいているような、御経験とか御知見に基づいたナレッジといったものも、全て大切なエビデンスだと思っています。こういうエビデンスをきちんとテーブルの上にのせて、御議論・熟議いただいた上で、戦略・計画作りだとか、あるいは改訂作業、若しくは評価といったことを行っていくというのは、EBPMを指向した政策形成のPDCAサイクルにとって大切な視点だと思っていまして、実は、この取組はすぐにできることではなくて、随分時間が掛かると思ってございます。したがって、これも資料にお示ししてございますとおり、5年ぐらい掛けて着実にじっくりきちんと作り上げていくとともに、先生方とも、どうやって使っていけるのか、どうやってこれは意味のあるものにしていけるのかということを試行錯誤していくことが大切かなと思ってございまして、そういう意味で今日は議論のスタートポイントかなと、我々は考えてございます。
今日お示しさせていただいている資料は、事前に分野別委員会の事務局と十分調整をして作らせていただいているのですが、やや突貫工事で作ったところもあるので、十分、先生方の御意見を拾い切れてないという反省はもちろんございますので、我々としては、研究開発プログラム評価の試行的な実施はもう1サイクル回しますというのを去年4月に一度御議論いただいているのですが、計評分科会の残された半年間、次期基本計画がスタートするタイミングでもあり、次の計評分科会のスタートのタイミングまで半年間ございますが、この半年間の間、分野別委員会と分野別委員会の事務局の間でも、先ほど私が御説明させていただいているもの、あるいは資料も、もう一度きちんと委員会の中で御紹介なり御議論いただくように我々はお願いしたいと思ってございまして、是非、そういった議論の中から前向きで建設的な御意見をお伺いするプロセスを計評分科会としても設けていただければ大変有り難いと思ってございます。そういう意味で、今日は正に、このとおりに決めていきたいということではなくて、議論のスタートポイント、あるいは、この半年ぐらいで分野別委員会の方でも、皆さん、どういう受け止めで、どうやっていくことが本当に意味のある、政策形成とか、評価とか、あるいは現場にとっての大切な気付きをきちんと生かしていくのかということにつながるのかという視点で、御意見を賜りたいと思っています。今日は、そういう観点では、ざっくばらんに先生方に御意見を賜りたいと事務局としては考えてございますので、よろしくお願いしたいと思います。
私の説明は、以上でございます。

【栗原分科会長】 丁寧に御説明いただきまして、どうもありがとうございました。これから残りの時間を自由な意見交換ということで進めたいと思います。時間は、40分ぐらいになります。
キーワードとしては、エビデンスベースでのエバリュエーションや研究分野の俯瞰(ふかん)、計画を立てるというようなことと、今回、新たな仕組みとして御提案になっている分野別戦略・計画、分野別プログラム、根底にある考え方は、今御説明いただいたように、エビデンスベースでいろいろな計画や評価を得たいという、ある意味、非常にシンプルだけれども、とても難しい課題でもあると思いますが、そういうようなところに関して自由な御意見を頂ければと思いますので、よろしくお願いします。いかがでしょうか。
土井先生、どうぞ。

【土井委員】 土井です。どうも、御説明いただきまして、ありがとうございます。エビデンスベースドという話と分野別という話があったかと思うのですが、後者の分野別の方に関しまして、私、ほかの委員の先生も参加されていましたが、総政特のところで研究現場のデジタルトランスフォーメーションというのを申し上げました。まさかコロナ禍の状況になって実験に行けないというようなことになるとは思わなかったのですが、やはり何らかの意味で研究現場も少しずつデジタルトランスフォーメーションを考えていかなければいけない場面だと思います。一方、スパコン「富岳」が早速、コロナウイルスの解析に使われていますが、情報インフラ、いろいろなものがコネクテッドになるわけで、そうなっていったときに、「富岳」もそうですし、いろいろな研究基盤もそうなのですが、分野を横断して見ていかなければいけないものというのがあると思います。そういうところの基盤がきちんとできているかという評価は分野別の委員会ではできないので、今、「富岳」とか、そういうものもそれぞれの分野別委員会で見ていますが、でも、実際に行われている研究は分野横断の研究なので、そういうものはこの計評分科会で見ていかないといけないかなと思うというのが1点目であります。
また、冒頭の防災のところでも御質問させていただいて、春日先生、五十嵐先生からも同じような御指摘を頂きましたが、ここで見ているもの、例えば地震といっても、避難場所を考えれば、コロナ感染症のことも考えないといけないし、気候変動も考えないといけないというように、一つの要素だけではカバーし切れないところが出てきているので、そういうところの連携ができているか、ブラックホールができていないかという俯瞰(ふかん)ができるのも、この計評分科会だけなのかなあと思います。ですから、そういうところをもう少し幅広く俯瞰(ふかん)して議論できるような形というのを考えていくことも、もう1点考えていただければいいのかなと思います。
以上です。

【栗原分科会長】 ありがとうございます。分野連携とかは非常に大事なところですし、基盤も大事だと思います。ありがとうございました。
小池先生、お願いします。

【小池委員】 分野別という言葉が気になるのですが、今、土井先生がおっしゃったことと多少関わるかもしれませんが、分野別に関するものについては、今日、御提案ありましたように、エビデンスベースドな手法を導入して、研究体制がきちっと維持でき、かつ前進していくものを作ることが望ましいと思って、先ほど御説明のあったとおりで結構ではないかなと思っております。
その中で分野別を超えたものというのは多分二つあると思うのですが、一つは分野クロスカッティングでやらなければならない。先ほど山下さんもおっしゃった、国際とか、人材とか、我が国の科学技術を進めていく上で、全てとは言わないまでも、いろんな分野で是非これはきちっと進めてくださいという部分はあって、これは恐らく、どちらかいうとトップダウン的な議論ではないかと思います。もう一つは、分野別の新たな領域というのはもちろんあるわけですが、分野を超えた融合的・統合的なものを考えるのは、トップダウンでは必ずしもなくて、本来、そういう芽というのはボトムアップ的に伸びるべきものなのですが、それをきちっと認識して、それが発展していく道を作るというのが全体を見渡す部分の役割ではないかと思っております。ということで、分野別の進め方というのと、共通して我が国として進めるべきものと、分野を超えて統合しながら進めていくものと、そういう三つの進め方がきちっと担保できるような枠組みが必要かなと思っております。
それからもう1点、社会と科学の関係が今いろいろ議論されているところでありまして、トランスサイエンスというものを私たちはどう考えるのかということは非常に重要なことだと思うのですが、日本学術会議の中では、そういうことを過去ずっと議論してきて、三つのカテゴリーを作りました。認識科学と設計科学と社会的期待発見研究という三つの枠組みを作って整理して、これからそういうものをどうドライブするかというところだと思いますが、その一番典型例が春日先生のやっておられるフューチャー・アースであると思います。それから、寶先生が今日お話になったような防災関係ではないかと思うのですが、そういう科学の在り方のカテゴリーも頭に置いて、先ほどの三つの枠組みをどう進めるかという議論が必要ではないかと思います。
以上です。

【栗原分科会長】 ありがとうございました。非常に今の分野別というところから広がった御意見を頂いて、大変、今後の議論に有効だと思います。
次、長我部先生。

【長我部委員】 ありがとうございます。エビデンスベースということで、今までチャレンジしようとしていて、なかなかはっきりした形で使い方あるいは効用が見えてこなかったところに切り込んでいこうという、大変アグレッシブな考え方かと思います。私は、是非こういうことをやってみるべきだと思っております。分野に特有の話と、共通に議論できる事の区別は大事だと思います。私は、人材と基盤、両方の委員会に所属しておりますが、なるべくエビデンスベースで議論をしようということで、いろいろな努力をしてきました。人材委員会ですと、若手研究者というところにハイライトを置いて、学生の時代から、その後どうなっていくかというトラックレコードを統計的に追って見ていくと。それで政策の反映状況を見るということをやるのですが、これまた分野別にいろいろ特徴がありまして、それぞれの分野のアカデミアのストラクチャー、産業界のストラクチャー、それぞれが違った形で見えていますので、全部平均して見てしまうとなかなか難しい形になってしまいます。正に机上配付のディスカッションペーパーで山下さんも書かれていましたが、各分野の中でどういう思いを持ってそのプログラムを回しているか、そこを深く議論して、その結果に基づいて、どうやってエビデンスを収集して、それをトレースしていくのかという事が重要かと思います。デジタルに乗るようなものもありますしょうし、いろいろ議論してコンセプトをまとめてデジタルに乗らなければいけないようにしていくものもありましょうし、素材の扱い方も含めてかなりチャレンジングなことにはなると思いますが、是非、こういった試みはやるべきだと思っております。
最後に、これをやろうとすると、多分、一律に全部の分野をトップダウンでやりなさいというとなかなか難しいのではないかと思います。5年くらい掛けて仕上げていくことを考えておられるということなので、可能かどうか分かりませんが、志のあるといいますか、こういうことをしっかりやってみようというところでやっていかないと、形骸化してしまうと余り意味がなくなってしまうのではないかと思います。パイロットスタディーではないですが、幾つかの分野を選んで試行してみるというアプローチもあるかなと思いました。
以上です。

【栗原分科会長】 ありがとうございました。人材委員会ではいろいろな経年的なフォローをされているとお話、そういうデータはまた何かのときに教えていただければと思います。また、いろいろなエビデンスの中に意見を入れるというのは文科省の様々なペーパーに山下さんが書いていただいているのですが、数値的な統計的なものだけではなくて、皆さんがどう考えているのかもデータに入れていくというのは、文科省の研究開発では大事なのではないかと思います。
次、辻委員、お願いします。

【辻委員】 私の方からは、先ほど土井委員からもありましたように、分野融合になってきたというところ、あるいは研究現場のデジタルトランスフォーメーションが進んできたというようなお話があったわけですが、特に、今回御提案いただきました中で、分野別戦略とか計画とかを考えていくときに、文科省としては人材あるいは研究環境についてしっかり考えていく必要があるという御説明があったわけですが、それを踏まえますと、結局、横断的な研究領域を考えたときの、例えば、データの共有・利活用とか、コンピューティングリソースをどう使っていくかといった「富岳」の話とか、あるいは、ネットワークのリソース、SINET等をどう活用していくかといったような、これこそ、データの価値がこれまで以上に高まっていく中で、どうやって、データ、コンピューティングリソース、ネットワークリソースというものを最大限にそれぞれの研究領域で使いながら国際的な競争力を高めていくかというところかと思っておりますので、そういった研究環境的な側面というところを研究評価の観点からはしっかり横断的に見ていけるといいのではないかなと感じました。
以上でございます。

【栗原分科会長】 ありがとうございます。
皆さん、新しい視点をいろいろ言っていただいて、大変、今後の議論に有効だと思います。
次、髙村先生、お願いします。

【髙村委員】 髙村でございます。既に多くの委員がおっしゃっていたことを繰り返すような形になって恐縮ですが、さらに、事務局の山下さんから御提案いただいたのは極めて適切だと思って、提案について受け止めております。もともと、研究計画も、評価も、我々のそれぞれの分野の、そして融合的な日本の研究をどうやって進めるかという観点から行うものだと理解していまして、そういう意味で、今回試行してみて改めて総括した上で見直されての提案で、今回御提案いただいているものも、私はこの原案に賛成ですが、分野別に試行しながら、改めて総括をしながら良いものにしていくということで、そのサイクルを回してみてはどうかと思います。
具体的なところは、私で言えば環境エネルギー科学技術委員会の方に持ち帰って、委員からのインプットももらって、改めて議論に貢献をしたいと思います。
具体的なところは、先ほど既に小池委員ほかが大変的確におっしゃってしまいましたので、繰り返しになってしまいますが、一つは、分野別にやっていくということであるとすると、分野別で計画を立て評価を行う際の共通に共有すべき視点というものをきちんと教育することが必要ではないかと思います。恐らく、これも既に言われておりますが、関連する分野を見ながら、我々自身の分野が更に発展をするために、あるいは融合することで更に高みに向かう研究開発ができるために、隣の、あるいは関連する分野を見ながらの研究計画であるべきだと思いますし、逆に、野心的にそうした分野との連携、あるいはリクエストを出していくような、そういう研究計画の設定、あるいは評価というのが必要ではないかと。
もう一つ、分野別の観点でいくと、これも既に御意見ありましたが、社会のニーズにどう応えていくかという観点は、それぞれの分野ごとに考える必要があると思っています。これは小池先生が三つの枠組みとおっしゃった二つ目だと思いますが、共通基盤的な研究計画、人材育成とか国際といったようなものは、それぞれの分野から出てきたものを統合しながら、この分科会できちんと議論をすべきだろうと思います。
最後は、三つ目の枠組みということになると思いますが、先ほど言いました、分野別で作るときにも、関連する分野、あるいは連携をすることで、より高度な研究開発が可能になるという、そうした具体的な分野が見えているところについては、もちろん研究計画・評価分科会の役割は重要ですが、より密接な連携というものを、中間レベルといいましょうか、もう一つのレイヤーとして考えてもいいのではないと思います。
デジタルについては、多くの先生からありましたが、例えば環境エネルギー科学技術分野でいけば、当然、デジタル化に期待をする、例えば研究開発に対してのリクエストというのはあり得ると思いますし、同時に、環境エネルギー分野からいきますと、気候変動予測とか、影響予測、観測といったようなものが、防災とか、ほかの分野に貢献できる。あるいは、そういう課題設定をしていかなければならないという意識が恐らく必要だと思っております。そういう意味で、既におっしゃったことの繰り返しになりますが、幾つかの次元があると思いますので、その課題について、どこの場でどういう形で連携をし、進めていくかということについて、更にこれから議論できればいいかなと思います。
以上でございます。

【栗原分科会長】 ありがとうございました。分科会の中での議論も、今のように、あるいはその立場としてというものもあれば、是非、この場でお伝えいただければと思います。
次、春日先生、お願いします。

【春日委員】 ありがとうございます。私はこの分科会にしばらく関わらせていただいているわけですが、戦略官の御説明にもありましたように、その時代、その時代で、事務局の皆様も、また分科会の委員も、大変苦労して工夫を重ねてきたのですね。それでもまだかなり大胆な改革が必要ということは、この分科会の持っている難しさを改めて認識するきっかけになりました。
それから、ずっと関わっている中でなかなかはっきりしなかったのは、この分科会が対象とする研究です。決して、研究全体を考えることがミッションではなくて、また、文科省の扱う研究全体でもないのですね。この分科会が扱う枠があって、その枠の中でどういうふうに計画を動かしていって評価をしたらいいかという、その位置付けをもう一度確認した上で議論をすることが必要ではないかと思います。
今日を議論のスタートというふうに位置付けていただいていますので、今後の議論をより円滑に進めるために事務局にお願いしたいのですが、もう一度改めてこの分科会の担うべきミッションと範囲をできれば模式化していただいて、しかも、先ほど山下さんの御説明にありましたように、その範囲の中であっても内閣府とかAMEDに関連する研究がある。あるいは、この分科会が扱うものの中でも、実施はAMEDに委託する部分がある。そういうものもありますので、ほかの省庁との関連性も一度整理して、分かりやすく説明していただけると有り難いと思います。
その上で改めて、分野別という議論ですが、この分科会が扱う中での分野というものは何なのか。その中には、かなり基礎研究的な分野、脳科学とか、そういうものと、情報や材料や航空などのような、産業基盤として応用・実践を明らかに目指しているような分野、それから、地球規模課題とか社会問題を解決するための問題解決型の環境やエネルギーなどの分野があると思うのです。ですので、関連の分野ごとに情報を共有するという評価の方法を考えるという御意見がありましたが、関連というのはそういうタイプ別のグループに分けて整理することも一つのアイデアではないかなと思います。
そして最後に、エビデンスベースドというのはいろいろなところで強調されているわけですし、これまでのこの分科会による評価にもいろいろなエビデンスを実際使っていました。でも、更に必要なエビデンスは何なのかということをもう一度考え直して議論をするべきかなあと思います。
以上です。

【栗原分科会長】 ありがとうございました。最初のところの分科会の範囲というようなことに関しては、山下さん、何かコメントはおありですか。

【山下科学技術・学術戦略官】 ありがとうございます。正にそこも御議論いただきたいと思っていますし、今後考えていかなきゃいけない論点ですが、今、少なくとも言えますのは、例えば文科省の中で、これは形式論ですが、独法の評価をしている部分については、計評分科会の評価の際には入っていないのです。ただ、分野を考える際に、個別分野のことを言うと大変申し訳ないですが、例えば、材料を考えるのにNIMS(物質・材料研究機構)を考えない計画は意味がないですし、量子技術を考えるのにQST(量子科学技術研究開発機構)を考えない分野の位置付けは意味がないわけです。したがって、計画を俯瞰(ふかん)する際に、少なくとも分野を超えた融合だとか全体の話は本日たくさん頂いたので、宿題だと思っていますし、今後、皆さんと議論の際に整理する必要はあるのですが、独法を念頭に置いた上でそれぞれのプログラムだとか課題がどういうふうに構造としてあるのかというのは考えていく必要があるかなというのは、多分、根本論としてはっきりさせておかなきゃいけない点だと思っています。
あと、春日先生の御指摘の中で、正に基礎の部分だとか、あるいは、やや産業との接点が強いだとか、地球環境のような社会課題というお話を頂いたのですが、これすらも分野別委員会とか人によって違うのではないかなと、私は思っています。例えば情報は、グローバル・パーパス・テクノロジーとして産業にももちろん役立つのですが、研究の進展だとかにも随分貢献もあるし、関係性があるので、一概にラベルは張れないのかなという印象を私は持っていまして、ここの捉え方をどうするのかということとか、あるいは、今日幾つか御議論いただいた、次元の置き方をどうするかというところは、正に全体の制度を考えていく上で大切な根幹な気がしてございますので、ここはむしろ、今日決めるということでもないし、引き続き、御議論、御相談させていただきながら、この分科会の中でどういうふうに計画とか戦略を考え、評価というサイクルを回していくのかということをきちんと御相談・御議論させていただきたい。そのためにも、分野別委員会でも一度いろんな御意見を賜った上で、改めて先生方のお知恵を借りて、我々、あるべき形を、一番外せないのは文科省ですから、人材とか、国際交流とか、研究環境、基盤といったところは各分野横串で共通でございますので、ここはほかの省庁はややウイングに入っていないので、我々としては一番大切な部分の一つとして捉えると。このあたりまでが今日お伝えすることができる点かなと思いますが、今後きちんと整理していく点については、どの先生の御指摘も正におっしゃるとおりだなと受け止めてございます。
以上です。

【栗原分科会長】 春日先生が、材料、産業とおっしゃったので、私は広い意味では材料科学の研究者なので、物質科学と材料科学、使われて材料、使われなければ物質という言葉もあるのですが、同じものが対象なので、基盤的なものと応用的なものは、すごくつながっているのですね。その点を、文科省の例えば研究開発としては、どう位置付けて進めるかが今後大事なのではないかと思っています。それが分野俯瞰(ふかん)とか分野別プログラムの一つの役割で、そういうときにエビデンスといったものを使うともう少し分かりやすく言えるようになるのではとおもいます。分野が違う人は受け取り方がいろいろ多面的なのだということを正に示していただいたと思います。

【春日委員】 提案の意図が伝わらなくて、申し訳ありません。ちょっと単純化しすぎて話してしまって申し訳なかったと思うのですが、一つの分野の中にもいろいろなタイプがあるということはもちろん十分承知しておりまして、分野をぽつぽつと区切ってしまっていいのかなという疑問が背景なのですね。そうではなくて、どの分野にも複合的に含まれるだろうタイプの中にも、分野ごとに濃淡があると思うのです。タイプごとのグループ化ということを、例えば、1対1ではなくて、1対多対応のように、一つ一つの分野の中で幾つかのグループの性格付けを持っているというような、そういう別の横串を導入してもいいのかなと思った次第です。決して、一つのタイプの中にパキパキっと入ってくるというイメージで申し上げたのではなかったのですが、失礼いたしました。

【栗原分科会長】 分野別プログラムは、今の施策マップをもう少し整理するというようなイメージだったら、先生が言われたような位置付けをもう少し明確化していくというようなことも一つの形かなと思って、資料4-1を拝見していました。ただ、広い議論と具体的な活動をどう整理するかということと両方あると思うので、今回はなるだけ広く意見を頂けると大変有り難いと思います。
先生、どうもありがとうございました。そういう意味では、両側からが必要だと思いますので。
それでは、山口先生、お願いします。

【山口委員】 山口です。私の方からは、基本的にこの提案というのは賛成なのですが、効率化という話と、効果、実効性という話と、説明性という話と、発展性という話で、意見を申し上げます。まず、効率化という意味では、御提案のように、既にいろいろなレベルで科学技術・学術の政策に関する方針なり出ているわけで、例えば、私の原子力分野でもエネルギー基本計画といったようなものがあるわけです。従いまして、そういうものと整合した科学技術政策をやるということは非常に大切なことでありますし、それに沿った計画を立てて評価していくというのは、効率を上げていくという意味で意義あることだと思います。
2点目ですが、効果をどう上げていくか、実効性をどう上げていくかということですが、私が今考えているのは分野別戦略・計画というところですが、これは、戦略という話と、分野という話と、クロスカッティングという話と、三つの軸があるのだろうと。一つ目の戦略というのは、今の分野にまたがるような問題。例えば、原子力も総合工学と言われるそうですし、防災とか、それから、今、栗原先生がお話になった材料みたいな話というのもまた違った視点であると思います。戦略以外、分野独自にどのように効果を上げていくか。あとは、インフラ、人材みたいなものは多分、クロスカッティングという評価軸がもう一個ある。その三つぐらいの軸をうまく組み合わせる、その組み合わせるやり方を考えるところがポイントだろうと思います。
それから、3番目の説明性ということですが、エビデンスベースというのは大変大切なことです。私なりの理解では、エビデンスというのは、データと、ナレッジと、オピニオンがあるのだと思います。オピニオンとは専門家の判断や主観的な意見をも含みます。往々にして我々はデータの方に目が行ってしまいがちなのですが、戦略とかを考えるときには、ナレッジ、オピニオンというところが大変大切なことで、その三つをエビデンスとしてどう位置付けて、どう使っていくかという、その方策を是非一回議論したいところだと思います。エビデンスベースということをやることによって政策の説明性というのが出てきますし、それから、評価を行うときにも、今までの評価は分野によって難しいところがあったのですが、整合性・一貫性ある評価ということにちゃんとつながっていくのだろうと思います。
それから、最後の発展性というところで、ここは分野融合の連携によってどれだけ新しい価値を生み出せるかというところだと思います。ちょっと思っていたところは、原子力というのは実は、今のスパコンもそうですし、材料もそうですし、防災のようなところとも関係していますし、非常に連携の効果が上がる分野だと思っています。ですから、少し関係ある分野でグルーピングを組むというプロトタイプみたいなものを作って、例えば、いろんな分野のものをネットワーク図のようなものに描いてみて、それの連携・関係性のようなものを描いてみるというのは、一つ、頭のトレーニングとしていいと思いますし、それによって、こことここの分野が融合することによってこういう新しいものが生まれてくるというイメージもつかみやすいだろうと思いました。
以上、感じたところです。是非進めていただいて、良い評価あるいは良い計画になるように進めていただきたいと思います。ありがとうございました。
以上です。

【栗原分科会長】 ありがとうございました。明確に意見を言っていただいて、大変、議論の参考になると思います。
林先生、お願いします。

【林委員】 林でございます。私は事前に山下さんともいろいろ議論はしていますが、今日山下さんの方から出てきた提案は、本日の委員会の前半では個別の研究課題の評価をしていたわけですが、個別の研究課題ではなくて、それを束ねた一つ上位のレベルについて、それをプログラムと呼んで、そこをちゃんとエビデンスを持って戦略を作るようなマネジメントに変えていこうと、戦略の作り方あるいは検証の仕方を変えていこうと、そういう提案だと理解しています。
その上で三つあるのですが、一つ目は、先ほどから分野横断という話があったのですが、結局、プログラムって何かということですが、文科省ですと、今、たしか政策というのが13個あって、初・中等から高等教育とか、全部含めると13個あって、その政策の9番目がこの委員会で我々が議論をしているようなところで、未来社会に向けた価値創出というやつなのですが、例えば、環境エネルギーだったり、ライフサイクルだったり、そういう分野に分かれている。そのそれぞれの中で今日議論していたような個別の課題が行われているという、そういう階層構造になっているわけですね。プログラムというのをどう組むのかというのは文科省の政策の作り方であって、今はプログラムイコール分野として、施策も分野ごとに作り、委員会も分野ごとにやるという、それがやりやすかったからという形でたまたまそうしているわけであって、先ほどから議論に出てきていますように、分野を超えたところが重要になってくるということであれば、エビデンスを持ってということを議論していく中で、プログラムの作り方も分野ごとではない形にするべきかもしれませんし、あるいは、分野を基本にしながらも、先ほどクロスカッティングという話もありましたが、そういうものを積極的に入れていくようなマネジメントに変えていくという方法かもしれませんし、プログラムというものをどう考えるかから、この取組の中で論点としてあげていくべきなのだろうと思います。それが一つ目です。
二つ目は、先ほど山下さんの話にもあったのですが、これはある種、ほかの府省と比べて文科省として何をしていくことが有効なのかをエビデンスではっきりさせていくという取組でもあるのだと思うのですね。正直言って、個別課題の必要性のところで基本計画等との関係は書いてあるのですが、どうしても関連性があることを述べる程度の説明にしかなっていないのですが、ただ、今、内閣府の方でも、6期基本計画を作っていく中で、ちゃんとその進捗をモニタリングしていこうという議論があって、そうすると必然的に、各計画の中で各府省が一体何をやっていて、限られた予算の中でどこにお金を付けるのがいいのかと、そういう議論に内閣府の中はなっていくでしょう。そうしたときに、文科省は各府省と横並びでそれぞれの政策の実施主体ですので、文科省がやっている取組は、例えばAIだったら、経産省がやっている取組とどう違う、あるいは、今日議論したようなものは、科研費でやっていたり、JSTの戦略でやっていたりするものとどう違うという、そういうポジショニングをはっきりさせて、その中でどういうふうに有効であるのかということをエビデンスを持って説明していく。そういうことをしていくことによって、恐らく内閣府の方が上からトップダウンで見ていくものとある種連携をして政策が有効的になっていくという形だと思います。文科省の取組を、相対的にというか、全体の中で位置付けていくということを意識することが必要なのだろうと思います。
三つ目は、今、一つ目、二つ目を申し上げましたが、どれもそんな簡単な話ではなくて、山下さんは5年掛けてとおっしゃいましたが、正にそのとおりで、まずはある一つの対象に対して試してみるという、そういうのを何とか積み重ねてやっていくしかないと思いますので、まずはできるところからやっていくということを意識してやっていくのが必要なのだと思います。
以上です。

【栗原分科会長】 どうもありがとうございました。非常にプラクティスベースで分かりやすい御意見を頂いて、参考になったと思います。
李家先生。

【李家委員】 李家です。私からは1点だけですが、先ほど山下さんから御説明があったときに、研究開発計画が平成28年に作られて、その後、4年たって、背景等、いろいろなことが変わってしまって、古くなってしまったと、そのようなコメントがありました。お話を聞いていて思ったのは、今回の分野別戦略・計画に関しても、これから5年ぐらい掛けてトライ・アンド・エラーしていいものを作っていくというお話でしたが、長い間議論したものをまとめていくと、今回同様に古くなってしまうおそれがあるので、年度ごとに柔軟に改訂できるような、そういったルーチンも残していただければよいかなと思いました。
以上です。

【栗原分科会長】 ありがとうございました。
何か言い残したことがあれば、頂きたいと思います。あるいは、御意見を頂けてない先生がいらっしゃれば、是非。
雨宮先生、いかがですか。

【雨宮委員】 私は特にありません。それぞれの先生のおっしゃることは納得することが多く、非常にいい議論ができているのを聞かせていただいています。ありがとうございます。

【栗原分科会長】 ほかにいかがでしょうか。
なければ、大体時間なので、この意見交換はここで閉じさせていただきたいと思います。どうも、いろいろ多面的な御意見いただいて、ありがとうございました。もともとの分野別戦略・計画や分野別プログラムにとどまらず、この枠から外れたものをどう取り扱うのかということや、それぞれの分野別で考えていただきたいような視点と、あるいは文科省の中での位置付けと、多面的な意見を頂いて、今後の議論のスタートとしては大変いい視点をたくさん頂いたと思って、感謝しております。
本日の御意見を踏まえ、研究開発プログラム評価の新たな仕組みに向けて、各分野の特徴や特性を踏まえて、各分野別委員会の皆さんと一緒に取り組んでまいりたいと考えています。冒頭、事務局より説明がありましたとおり、各分野別委員会におかれましては、本分科会及び各分野別委員会における審議を活性化して、なるたけ本質的な議論を行っていただけるよう、資料案に対して御議論や御審議を頂いて、できるだけ前向きで建設的な御意見の取りまとめをお願いしたいと思います。今のお話からすると、それぞれの分野別委員会でどういうことが取り組めるかというような御意見と同時に、そこを超えたところでどんな取組をやってほしいかというような御意見も頂けると、大変、今後の議論に助かると思っています。この分科会は2月で今期が終了しますので、それまでに何らかのまとめができるといいと思っておりますので、できれば年末をめどに分野別委員会事務局を通じて分科会事務局まで提出いただければと思います。これは、分野別委員会の事務局の皆様も、どうぞよろしくお願いいたします。それぞれの分野別委員会で今回いろいろ御議論いただいたと思うのですが、それに加えて、今回のここでの意見交換、非常に大きなフレームについてはほとんどカバーされたような意見が出ていると思いますので、それに対して御意見を頂ければと思います。是非今後やってみたいという建設的な御意見も、大変有り難いと思います。そういうことで今年度中に何とか意見をまとめて次の分科会に引き継げればと思いますので、委員の皆様には、どうぞよろしく、御協力をお願いいたします。
本日の議題は以上となりますが、そのほか、皆様から何かございますでしょうか。

【山下科学技術・学術戦略官】 栗原先生、山下ですが、1点だけ補足させていただいてもよろしいでしょうか。

【栗原分科会長】 どうぞ、お願いします。

【山下科学技術・学術戦略官】 林先生が論点提起いただいたCSTIの御議論ですけれども、実は、本日お配りしている資料4-1の「はじめに」の3パラでそのことも触れさせていただいてございます。ただ、さらっと書いているだけなので、なかなかそこまで皆様が腑落ちできる状況になってなかったかもしれませんが、次回の計評分科会、非公開なので取扱いも含めて御相談ですが、今、CSTIが何を考えて、どういう評価のフレームを導入あるいは検討しようとしているのかを、今の計評分科会の、今日頂いた御議論も踏まえた、これまでの現状と今後の見通しがあることに対して少し整理をしたものを先生方に次回御提供申し上げたいということで準備をしてございますので、この点については補足したいと思います。階層構造の我が省を超えた部分との関係も大切な視点だと思ってございますので、そこをきちんと皆様に御共有させていただきたいと思ってございますので、補足申し上げます。

【栗原分科会長】 次回もあると思うのですが、分野別委員会で議論をする場合に、今回の資料のどの部分を分野別委員会の委員に伝えて、あるいは今回の計評分科会の議論をどういうふうに伝えられるかもあると思うので、そのあたりは事務局で御検討いただければ、持ち帰る委員の方もいらっしゃると思うのですが、あるいは文部科学省の担当部署の方々も参考にしていただければと思いますので、よろしくお願いします。

【山下科学技術・学術戦略官】 承知いたしました。整理いたします。

【栗原分科会長】 続きまして、議題(3)はその他ですが、事務局から何かあれば、説明をお願いします。
特にないということなので、本日の議題は以上となります。
それでは、事務局から、次の予定等について、お願いします。

【新地企画評価課課長補佐】 次回の分科会につきましては、既に御案内させていただいておりますとおり、9月24日、木曜日、14時から18時で、Web会議にて開催させていただきます。議題としては、研究開発課題の事前評価等について御審議いただくこととしておりますが、課題数によっては会議の時間が短縮されることがございます。御出席いただける委員におかれましては、よろしくお願いいたします。
また、本日の議事録は、後日、事務局よりメールで送付させていただきますので、御確認いただけますよう、お願い申し上げます。最終的に、栗原分科会長に御了承いただいて、文部科学省のウエブサイトに掲載いたします。御協力の方、よろしくお願いいたします。
以上でございます。

【栗原分科会長】 それでは、これで科学技術・学術審議会第73回研究計画・評価分科会を終了いたします。委員の皆様方には、大変活発な御意見、本当にありがとうございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局企画評価課

(科学技術・学術政策局企画評価課)