令和6年12月20日(金曜日)10時00分~11時56分
WEB会議
中釜主査、伊藤主査代理、岡田委員、川﨑委員、小崎委員、斉藤委員、澤田委員、高橋委員、武林委員、玉腰委員、二宮委員、桃沢委員
荻島東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授、辻国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー、松田東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
塩見研究振興局長、松浦研究振興局審議官、釜井ライフサイエンス課長、小野ゲノム研究企画調整官
【小野ゲノム研究企画調整官】 それでは、定刻に少しだけ早いんですけれども、委員の皆様もおそろいですので、ただいまより、第2回次世代医療実現のための基盤形成に関する作業部会を開会させていただきます。
委員の皆様におかれましては、御多忙のところをお集まりいただき、大変ありがとうございます。文科省ライフサイエンス課、ゲノム研究企画調整官の小野でございます。よろしくお願いいたします。
本日は、Web会議システムによる開催とさせていただいております。委員の皆様、御発表者の皆様には、御配慮、御協力いただき、誠にありがとうございます。本作業部会の模様は、関係省庁、AMED及び一般の方にも傍聴いただいております。
委員の御出欠ですけれども、本日は、櫻井先生、横野先生より御欠席の御連絡をいただいておりまして、出席委員数が総委員数14名の過半数に達しておりますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。
会議の円滑な運営のため、ZoomによるWeb会議システムで御参加いただいております皆様にお願いしたいことがございます。委員の先生方におかれましては、表示名は、本名、日本語表記、フルネームとしていただきますよう、お願いいたします。また、回線への負担軽減のため、通常はマイクとビデオをオフにしていただき、御発言を希望する場合はビデオをオンにしてください。また、発言される際のみマイクをオンにしていただきますよう、お願いいたします。発言が終わられましたら、両方を再度オフにしてください。その他、システムの不備等が発生しましたら、随時、お知らせいただきますよう、よろしくお願いいたします。Web会議システムの音声が切れてしまった場合には、事務局より事前にいただいておりますお電話番号に御連絡させていただきます。表示名や音声・映像については、事務局により操作させていただく場合がありますこと、御承知いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、文科省の出席者ですけれども、研究振興局、局長の塩見ほか、幹部が出席しております。
それでは、以降の進行は中釜主査にお願いいたします。
【中釜主査】 中釜です。委員の先生方、本日もよろしくお願いいたします。
早速、議事に入ります。まず、本日の議事と配付資料について、事務局から確認をお願いいたします。
【小野ゲノム研究企画調整官】 ありがとうございます。議事次第を御覧ください。本日の議題は2点でございます。
議題(1)は、海外のバイオバンクなどの状況及び国内のバイオバンクのデータ利活用の促進について、東北大学の荻島先生、また、JST(科学技術振興機構)CRDSの辻フェローに御発表をいただきます。
議題(2)は、疾患バイオバンクの今までの取組及び今後の在り方について、東大医科学研究所の松田先生に御発表をいただきます。
各議題において、御発表の後に質疑応答の時間を設けさせていただきます。また、委員の皆様におかれましては、御質問などされなかった場合にも、全体を通して、最後に一言ずつ御意見をいただければと考えております。
配付資料は、議事次第に記載されているとおりです。資料は、委員の皆様に事前にメールにて送らせていただいております。不足等ございましたら、議事の途中でも構いませんので、事務局にお声がけください。
事務局からの説明は、以上です。
【中釜主査】 ありがとうございました。
では、早速、議事に入りたいと思います。まず、一つ目の議題は、海外のバイオバンク等の状況及び国内のバイオバンクのデータ利活用の促進であります。荻島先生、辻先生から御説明いただき、合わせて質疑応答をお願いいたします。
最初に、荻島先生、よろしいでしょうか。
【荻島教授】 荻島でございます。中釜先生、委員の先生方、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
私のほうから、我が国のバイオバンク・ネットワークの状況と海外(欧米)のバイオバンクの状況について、御説明申し上げます。私、今回はAMEDゲノム研究プラットフォーム利活用システム研究班の研究代表の立場としてお話しさせていただくというふうに認識してございますけども、所属としては東北大学でございます。
今日は三つの構成で、最初に、私ども研究班の取組、日本国内のバイオバンク・ネットワークの取組、2ポツが海外のバイオバンクの利活用の調査ということで、3ポツがゲノム医療の実装に向けたバイオバンクの役割ということで、御説明申し上げます。
私どもの研究班ですけれども、ゲノム医療研究のプラットフォーム利活用システムを構築するんだということで、AMEDのファンドを受けて進めてございます。このバイオバンクのネットワーク、主要なバイオバンクのネットワークを構築して、横断検索システムの運用を行って、利用者のニーズ、製薬協の方々からいろいろとニーズを伺いながら、システムの高度化を行ってきてございます。また、バイオバンクの利活用を進める上で、研究開発計画の立案であるとか、あるいは倫理審査等の手続の支援が非常に重要であるということで、こういったものをトータルで利活用支援という形でシステムを構築するということを行ってきています。現在、バイオバンク・ジャパン、東北メディカル・メガバンク計画、ナショナルセンターバイオバンクネットワークを中核として、日本国内の14のバイオバンクをつないだネットワークができておりまして、60万人の協力者の方々の試料・解析情報を横断して閲覧して検索をして、そして、利用申請システムというのを用意しておりますので、こちらで利用申請できるような仕組みをつくってきてございます。
目指しているところはワンストップでの支援・コーディネートというところでございまして、提供者の方々からの信頼・同意の下でお預かりしているバイオバンクの試料・情報をいかにアカデミア・産業界の利活用につなげるかということで、研究支援・コーディネートということを行ってきています。横断検索で見られるようにしていることももちろんですけども、やはり、利活用支援をするということに力を注いできてございます。
研究体制は、こういった形で進めているということでございます。二つ、大きなサービスがありまして、一つは横断検索システムということで、我々が保管している試料や情報に関して、提供者、試料、そして解析情報にして、こういった情報で横断して検索できるようにしてございます。これはどういうことかといいますと、言い方を変えますと標準化しているということでございまして、標準化することでバイオバンクを横断した検索が可能になっています。特に最近ですと臨床情報の拡充というところに御要望が多くなっていますので、ここの対応を今進めているところです。また、利活用支援という、もう一つの枠組みがありまして、こちらは利用申請システムというものをつくってございますけれども、同時に利活用コーディネートを行うということで倫理支援等を行う、あるいは、ハンドブックというものをつくって、バイオバンクの利活用について、より皆さんにお使いいただけるような形のものを目指して、取り組んでいます。
現在、保有試料・情報はこういった数になっています。非常に多岐にわたる疾患の試料が保管されていることはお分かりいただけると思うんですが、日本国内のバイオバンクは、これまでの先生方の御尽力で様々な病気の試料・情報が非常に品質高く保管されているということで、バイオバンク・ジャパン、東北メディカル・メガバンク計画、ナショナルセンターバイオバンクネットワークのような大規模バイオバンクもそうですけども、診療機関併設型のバイオバンクの試料・情報も、我々は今、活用できる状況になっています。
こちらは、バイオバンク横断検索システム、Webベースのシステムで、個票まで見ていただきますのでログインしていただくことをお願いしていますけども、日本国内のアカデミア・産業界のユーザーの方が御登録いただけるようになっているというところで、1番目が横断検索で、2番目がその後に、実際どうやって利用するのかというところの事前の相談、3番目が実際に研究計画を立てるところの支援や倫理支援、4番目がバイオバンクを利用するに当たって、申請書はそれぞれのバイオバンクの形式になっていますが、共通のWebフォームで利用申請できるようなフローになっています。このような利用申請システムを立ち上げて、こういった形で利用申請までに至る手続を明確化して、それぞれどれぐらいの時間かかるかということをお互いにキャッチボールしながら進められるような、こういう仕組みをつくっています。後ほど御紹介しますけども、ヨーロッパでも同じようなものが今出来上がってきている状況でございます。
おかげさまで利用者・アクセス数も増えてきているということで、5年前、6年前から比べるとバイオバンクの認知度は非常に上がっていて、基礎の研究者の方々にも大分知られるようになってきているかなと思いますけども、さらにこれを広げていって様々な研究に利活用いただくということが重要かなというふうに思います。
また、高木先生のほうで、海外へ提供する場合にどういった問題があるのか、そもそも海外へ提供すべきかどうかといったような、こういった検討委員会も進めてございまして、報告書もAMEDのWebサイトのほうに掲載させていただいております。
さて、今日の大きなところは、海外のバイオバンクの利活用調査の部分です。昨年度から、御依頼いただきまして、こういったバイオバンクを対象に調べてまいりました。主には、国として、いかに患者・市民の理解を得て、こういったバイオバンクを戦略的に整備して、さらにゲノム医療の実装に役立てるのかという部分を調査してほしいということで、調査してまいりました。これについて、これから御紹介をしたいというふうに思います。
まず、海外、特に欧米、アジアに関しては後ほど辻フェローのほうからございますので、海外(欧米)の主要なバイオバンクとデータ収集の動向についてサマライズしたものをお示しいたします。こちらでは、UK Biobank、Genomics England、All of Usのみ出させていただいていますが、先生方、御存じのとおり、UK Biobankは50万人の住民のバイオバンクということで、やはり、世界中からアクセスされるリソースをつくってきたということが大きな功績だろうと思います。全ゲノム、アレイ情報、MRIに加えて、他にこのスライドにある情報を収集しているということで、特に、この後、UK Biobankは個別に御説明しますけども、今後の戦略という意味では、シングルセルRNAだったり、プロテオームだったり、メタボローム、MRI情報の収集を予定しているというところが大きなところかというふうに思います。
また、Genomics Englandのほうは、UK Biobankはいわゆる住民バイオバンクであるとして、患者のバイオバンクといいますか、データリソースになってございますけども、この10万人の患者バンクがございます。NHSのゲノム医療の臨床実装の一環として行っていて、また、産業界と緊密な連携をしていることが特徴であろうというふうに思います。がん、希少疾患の全ゲノム情報の優先的収集に加えて、他にこのスライドにある情報を集めていますけれども、こちらも、今後という意味ですと、長鎖シーケンス、メチル化、新生児のゲノムデータの収集等を予定しているというところが、大きな特徴というところでございました。
また、All of Usのほうは、100万人を目標とした住民のバイオバンクということで、米国で行っていることもありまして、多様性を重視したもの、また、全ての人々が恩恵を受けられるような精密医療を実現するんだということで、ダイバーシティー・アンド・インクルージョンを非常に大きな特徴としているプロジェクトですけども、ここに挙げられていますように、全ゲノム情報も収集が進んでいたり、EHRのリンケージというものが行われています。他にこのスライドにあるものも集めて、後ほど御説明しますが、今後は、長鎖シーケンス、メチル化、プロテオーム情報等の収集を予定しているというところで、このスライドの下のまとめにあるようなものが今後の収集予定のものになっているというところが、大きな特徴として共通に見えてきたところかと思います。
ここから、先生方、御存じかと思いますけれども、最近のアップデートも含めて、UK Biobank等について、御紹介申し上げます。
UK Biobankは、イギリスで、特に40歳以上の住民の方々の協力をいただいているというのが特徴かと思います。40歳未満の方々のデータは特にないというものになります。こちらは、Wellcome Trust, Medical Research Councilの推進体制の下で、右図あるようなイギリス国内のアセスメントセンターでいろんな調査をしているというものになります。イニシャルのアセスメントが2006年から始まって、50万人。ファーストリピートアセスメントは、2010年から2013年で2万人というものになっています。さらに、その後、イメージングビジットというのを2014年にやっています。これは5万人分です。MRIだけではなくて、DXAまで行っているというところになります。リピートイメージングビジットに関しては、2019年から始まっているのですが、途中、COVID-19のパンデミックがあったということもありまして、ファーストリピートイメージングは3,000人規模で、パンデミックの対応で2,000人ですけども、また仕切り直しをしまして、これから2028年まで6万人を目標にイメージングを取るんだということで、世界最大規模のイメージングのリソースを目指しているところもございます。また、このスライドの下にありますようにオンラインも活用が進んでいて、この中で、特に身体活動のデバイス、リストバンド型のいわゆるウェラブルデバイスを使った調査というのも行っているという状況になります。
試料に関しましては、血液、尿、唾液ところで、こちらは住民コホート・バイオバンク共通のものかなと思います。データに関しては、今、30ペタバイト程度になっていまして、全ゲノム、SNP、エクソーム、そして、UK Biobankを最初に充実させたものにしたアレイ情報、あるいは、画像、バイオマーカー、身体、調査票、身体測定、医療情報に関しては、診断名、検査、処置といった、いわゆる構造化されている医療情報ですね、日本で言えば、SS₋MIXの標準化ストレージに入っているような構造化された医療情報、そして日本で言うとDPCに近いのかなと思いますけど、入院・退院時の診断・手術コード、さらにがん登録、死亡といった情報とのリンケージの情報を得ています。産業界からの利用に関しては10%程度、後ほど申し上げますけども、コンソーシアムの形で新しいデータ収集を行うことを行っていまして、その結果、投資に対して9か月の優先データ利用を認めています。海外への提供に関しては、かなり早くから海外への提供を行なっていたこともあって、80%が海外からで、最近、中国からのアクセスが非常に増えています。
Genomics Englandに関しては、こちらはナショナル・ジェノミック・メディシン・サービスの一環として行われていて、9万人規模のものになります。英国保健社会福祉省が出資して設立した企業としての実施になっていまして、血液、尿、唾液に加えて、腫瘍組織等を集めているということです。やはり、65ペタバイトということでゲノム情報が際立っていますが、EHRへのリンケージ、こういったものも集めています。産業界からの利用に関しては、ディスカバリーフォーラムを形成して、29社がここに入って、有償でのデータアクセスをしているということでございます。国外からの利用は、今回、詳細に調べたんですけども、42か国からということで、イギリスと、いわゆる欧州経済領域の国々ですね。アメリカ、カナダ、オーストラリア、スイス、日本、韓国、ニュージーランド、カタール、ブラジル、インド、アルゼンチンという国からのアクセスが許可されている状況になってございます。
こちらはGenomics Englandの最新のデータのリリースですけども、こういった形でデータのリリースということで、時期ごとにデータのリリースを作って提供している形になりますが、左下にあるように、先生方、御存じとおり、がんあるいは希少疾患でこういった規模の全ゲノム解析がなされています。
最後にAll of Usですけども、こちらは、米国の一般住民の方々、いわゆるアプリの登録がある方が84.9万人、実際のデータがある方は、今、40万人強の方々のデータが収集されていて、右上の絵にありますように、多様な祖先をもつ方々が参加していることが特徴のものになります。やはり、アプリでのオンライン調査、あるいは身体測定/試料収集、EHRへのリンケージというものを特徴にしています。
住民コホート・バイオバンクですので、集めている試料は血液、尿、唾液なんですが、情報については、右上の図にありますように、2024年12月時点のデータのフリーズがなされていて、41万人程度の方々のデータがあります。この表からサーベイレスポンスが41万3,000人で、ほかのデータが重なるとどれぐらいの人数なのか、見てとることができます。基本的には、EHRへのリンケージによりまず医療情報を収集しています。こちらを見ていただくとOMOP CDMの形式になっていますが、患者基本情報、受診、診断、処方、測定、処置など、構造化されているほとんどの医療情報になります。また、このスライドには書かなかったんですが、医師が書いたテキストとかの非構造化医療情報に関しては、今後、利活用を検討するというふうになっています。ゲノムは、全ゲノムあるいはアレイです。あと、調査票に関しては、ソーシャルデモグラフィックファクター、エスニックグループであるとか、こういったものを聞いているものになります。身体測定は、EHRベースないしは自己申告、ないしは訪問で測っているというものになります。特徴的なのはウェラブルデバイスでして、Fitbitを使った形で、身体活動、睡眠等を取っているということです。産業界からの利用は、当初はアカデミアのみでしたけども、2024年7月から開始をしている状況で、現在、様々な企業が利用しています。また、アドオンも実施していまして、参加者の一部を対象とした、このコホートの追加調査というものを行っています。Nutrition for Precision Healthということで、1万人の18歳以上の方々に、食事評価だけではなくて、メタボロミクス、クリニカルなアッセイ、マイクロバイオーム等の研究を組み合わせた形で新しい形の栄養研究をするんだというのが特徴で、見てみますと、上のほうの調査票には食事関係は一切入っていないので、こういった形での調査を行うということです。国外からの利用に関しては35か国ということで、こちらは全てリストが出てございますので、国をちょっと調べました。こちらは、イギリス、EU各国、スイス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドというふうにありまして、日、韓、シンガポール、台湾、香港、セルビア、イスラエル、インド、メキシコ、エジプト、南アフリカからのアクセスが許可されています。
試料に関しては、UK BiobankとAll of Usについては今申し上げた通りになりますけども、デンマークとフィンランドは、いわゆるそれぞれの国の病院のバイオバンクのネットワークを構築しており、そこでは、病院でのいわゆる組織検体などを集めていることが特徴になろうかなというふうに思います。
出生三世代コホートのほうのバンキングですけども、こちらは近年非常にニーズが高まってきている状況になるかと思います。オランダのLifelinesとGeneration Rはこの分野において非常に有名な欧州における取組ですけども、Lifelinesのほうは健康長寿の要因の解明として、25歳から50歳までの住民とその家族のリクルートによる三世代コホート、7万人規模のものを行って、今は、Lifelines NEXTということで、追加出生コホートによる四世代形成を目指しています。
また、Generation Rのほうは、小児から青年までの健康と遺伝・環境要因の解明を目的とした形で、こちらは妊婦1万人のリクルートによる出生児の出生コホートというものになります。さらに、今、Generation R Nextということで、妊娠前のお母さんの健康と遺伝・環境要因がどのように子供の成長とその後の発達に影響を与えるかということで、こちらも進んでいるところです。
さらに、All of Usが、現在、生涯にわたる健康・疾病の進行の解明を目的とした、二世代のコホートというものをつくっています。こちらは始まったばかりでして、15万人を目標に、まず第1段階として、既に参加されている親子のお子さん、ゼロ歳から4歳までのお子さんの登録を開始して、それを、6歳、10歳、12歳、さらに成人まで広げていくという形で、今、調査を計画されていて、子供から大人まで、生涯にわたる健康と、疾患の遺伝因子・環境因子相互作用による発症と進行を解明するために、こういったコホートの重要性が高まっているという状況になってございます。
また、データの利活用ですけれども、現在、それぞれのバイオバンクでは、研究者がデータをダウンロードするのではなくて、データが置かれているデータセンターのほうで解析をするという、データビジティングのモデルが広がっています。UK BiobankはAWSをベースにしたDNANexusの仕組みで、Trusted Research Environmentを提供しており、こちらはデータの持ち出しに制限がかかったような環境で安全に解析できる環境ということになりますけど、ここでの活用が進んでいまして、AWSとUK Biobankのマッチングでこういったストレージクレジットを用意しながら進んでいる状況になります。今年途中から完全なビジティングスタイルにUK Biobankは切り替わりました。こちらのほうは切り替わったばかりですので、使い勝手などのユーザーのフィードバックはそれほどないかもしれません。また、Genomics Englandのほうは、AWSベースでLifebitのTrusted Research Environmentになっています。All of Usは、Google Cloud Platform(GCP)をベースにしたResearcher WorkbenchというTrusted Research Environmentを使った形の利活用になっています。欧州においてはオンプレミスの環境を使われている例もありまして、バイオバンクではないんですけども、National Genome Centerに、Trusted Research Environmentの一つの商用ソフトウエアのLifebitのCloud OSを使ってオンプレミスにこういったTrusted Research Environmentをつくるということも進められてございます。いずれにしましても、こういった現状になっているところでございます。
さて、こういった形でバイオバンクの整備が進んでいる中で、疾患のバイオバンクと住民のバイオバンクの連携というのは非常に重要であるというふうに捉えられています。欧州ではBBMRI-ERICがEUのファンドで欧州の25の国の400以上のバイオバンクをつなぐネットワークをつくっていまして、こういった連携をしています。この次のスライドでまた御説明申し上げますが、右の絵にあるように幅広い国々が参画しています。イギリスにおいては、UK BiobankとGenomics Englandが住民と疾患のバイオバンクの関係になるわけですけれども、がんと認知症の原因を探るために戦略的なパートナーシップによる連携というのが先月から始まっています。これによって、ゲノムデータ、臨床データ、画像データのリンクを確立して、これらの課題に取り組むんだということが始まっています。さらに、Nanopore社が入って、UK Biobankのサンプルを分析して、エピジェネティックな解析を進めていくということも、こちらのプロジェクトの中で出てきています。また、シンガポールは、こちらは後ほどあるかと思いますけども、現在のPRECISEのプロジェクトのほうで進んでいますが、一般住民10万人と患者5万人のゲノム解析をするということと、EHRへのリンケージの確立による連携をするんだということで、今、フェーズIIですけど、フェーズIIIでは人口の10%の100万人に拡大するということになっています。いずれにしましても、やはり疾患のバイオバンクと住民バイオバンクの両方が重要で、各国が戦略的にこれらの整備と連携に取り組んでいるという状況になってきてございます。
こちらは欧州の例ですけども、BBMRI-ERICのほうは、こういった形でバイオバンクネットを形成していまして、先ほど私のほうからAMEDのゲノム研究プラットフォーム利活用システムを御紹介しましたが、同じように、横断検索システム、Locatorと言っていますけども、もう一つはNegotiatorということで利用申請システムというのをつくって、検索して利用申請までできるような仕組みをつくっているということになります。私どもの横断検索の仕組みとこのヨーロッパのLocatorの仕組みを共通化しようということで、今現在、共通規格に関してISOのTC276で国際標準化を進めていまして、今、プレリミナリーワークアイテムに承認見込みということで、恐らくこれは標準化になされると思いますので、現状、つなぐということにはなりませんけども、同じ規格になるかと思います。
また、産業界からの利活用ですが、今回、UK Biobankを例に取り上げさせていただいてございます。こちらは、産業界の利用は全体の10%前後でございます。この10%のうち90%は、海外からの利用ということになります。2012年からの新規承認件数のグラフで、アカデミアと企業の承認件数を見ていただけるかと思います。特筆すべきことは、右下のグラフにありますけども、利用申請を出される研究者の方々の研究機関について調べたところ、創設5年以内の企業が37%程度で、一般的に5年以内がスタートアップの定義なんですが、7年以内が50%ということで、創設からそれほど年数がたってない企業の利用が非常に多いということが分かります。こちらは分析がなかなか難しいんですけど、UK Biobankに関して言うと、アカデミアやアカデミア発のスタートアップ企業の利用による研究成果創出の重要性があるのかなというふうに私どもは認識しておりまして、一方で、先ほども申し上げたとおり、大企業とのコンソーシアムを推進することで大規模データ取得を戦略的に行うこともなされているので、両方の利活用があるのかなというふうに理解してございます。
さて、バイオバンクの利活用と社会実装の戦略ですけれども、UK Biobank、All of Us、デンマーク、それぞれの国に、どういう形でこういったバイオバンクの整備をしているのかということをお伺いする中で、例えば特許の件数はどれぐらいあるんですかと、いろいろお伺いしてきたのですが、実際の特許の件数等は、彼らは把握してないのが現状でした。つまり、それぞれのバイオバンクは、アカデミアや企業、特にスタートアップ企業かもしれませんけど、研究コミュニティーにリソースを提供することがミッションであって、下のほうにまとめてありますが、多様な研究成果を生み出すためにバイオバンクが存在していて、そこからさらに社会実装への支援の部分はバイオバンクが注力すべき領域を超えているという立場を取っていらっしゃいます。一方で、先ほどのコンソーシアムみたいなものも組んでいますので、必ずしもこういった部分だけではないのかなというふうに思います。
最後に、ちょっと時間がなくなってまいりましたが、ゲノム医療の実装に向けたバイオバンクの役割ということで、お話しさせていただければと思います。
こちらはFrancis Collins先生の「2030年のゲノム医療」いう論文なりますけども、この中で、2030年までにゲノム医療により医療を変革させる七つの方法という中の一つにHuge, longitudinal cohortsというのがございまして、巨大で縦断的なコホート・バイオバンクというものは重要であるということを述べられています。その中で、UK BiobankやMillion Veteran Programとか、FinnGen、All of Usといったナショナルコホートがいかに連携するかが重要であるということが述べられております。
また、今、各国で、ゲノム医療の実装のフェーズ、研究だけではなくて、実装をどうするかということが大きな議論になっているフェーズと認識しています。こちらはGA4GHの会の様子ですけども、9月のメルボルンの会にも参加してまいりましたが、グローバルに研究開発をするためにいかにデータシェアをするかということが今までの話題でした。しかしながら、これからはローカルにどうやって医療実装をするのかというフェーズに今は移ってきています。医療実装といった意味では、それぞれ保険制度も違いますし、それぞれの国の事情もあります。必ずしもあるモデルだけが成立するわけではないということで、イギリスはイギリス、オーストラリアはオーストラリア、米国は米国で、それぞれローカルな医療実装をどうするかということについて、今、熱心な取組がなされている状況と理解しています。
例えば、NHSの場合には、こういったレポート、Accelerating genomic medicine in the NHSというものが出ていて、人材育成も含めた形での戦略が出されています。これは2022年10月だったんですけども、さらにその2か月後の12月に、Genome UKという、先ほどのは割と大きな概要的なものですが、このGenome UKのほうは具体的なものが書かれておりまして、どうやってNHSにゲノム医療の導入拡大するのかというようなことが述べられています。2025年までのプランですね。この中で、UK BiobankとGenomics Englandが共に重要な役割を果たしていくことが重要であると。大規模なゲノム情報、臨床情報の提供と研究の促進をする必要があるということが述べられていて、さらに、Our Future Healthプロジェクトというのを立ち上げて、500万人のリコンタクト可能なゲノムコホートを構築することが非常に重要であるということが考えられている状況かというふうに思います。
こういった形でゲノム医療のラーニングヘルスシステムをどうやって構築していくかということが、世界各国の議論になっているというふうに理解しています。こちらの絵にありますように、医療機関において患者がゲノム医療を受けていくわけですけども、このデータをバイオバンクがインフラとなって研究者につないでいくということが極めて重要なのかなと理解をしてございます。
最後、まとめでございますけども、まず、私どものゲノム研究プラットフォーム利活用システムのほうでは、日本国内のバイオバンク・ネットワークを構築してございます。次に、海外の調査から、海外のバイオバンクでの特徴ある品質の高いデータの集積が進んでおりまして、研究リソースとして利活用することはもちろんなんですけども、その次のゲノム医療の実装においても必須のラーニングヘルスシステムを支える基盤として、このバイオバンクの重要性が飛躍的に高まっているというふうに認識してございます。なかでも、住民バイオバンクにおいては、全ゲノム情報と医療情報をベースにして、長鎖シーケンス、プロテオーム等のオミックス情報の収集が開始されるトレンドになってございます。また、出生三世代コホートにおいては、小児期から生涯にわたる健康と疾患発症・進行への遺伝子因子・環境因子の相互作用を解明するために、ニーズが高まっています。また、ゲノム医療実装のために、住民のバイオバンクと疾患のバイオバンクが連携することの重要性、BBMRI-ERICでのバイオバンク・ネットワークもこの一つであろうかというふうに思います。また、企業での利活用に関しては、スタートアップ企業の利用が多く、大企業に関しては、新たなデータ取得のために出資するコンソーシアム形式が目立ってきていると認識でございます。最後ですけれども、バイオバンクを活用した医療・創薬・予防医療等の社会実装につながる論文が発表されて、それぞれの国では、こういった研究リソースを提供することこそがバイオバンクの役割であるというふうに認識されていると理解してございます。
早口で申し訳ございませんでしたけど、私のほうからは、以上でございます。
【中釜主査】 荻島先生、大変丁寧な説明、ありがとうございました。
続きまして、辻先生より、御説明をお願いいたします。
【辻フェロー】 JST研究開発戦略センター ライフサイエンス・臨床医学ユニットの辻から、15分ほどでお話しさせていただきたいと思います。
まず、私は、先ほどの荻島先生や、この後の松田先生のように、バイオバンクを推進・運用する立場ではございません。国内外の様々なライフサイエンス研究を幅広く俯瞰的に調査いたしまして、その動向を分析して、日本はこうするべき、といったことも申し上げる、そのような活動を進めてございます。今日、事務局の皆様から、主にアジアのバイオバンク、世界の産業界の動向、ゲノム創薬やゲノム医療などについて話すようにと仰せつかっておりますので、お示しする目次でお話しさせていただきたいと思います。
まず、全体的な俯瞰図を簡単に整理させていただきました。出口としては様々なモダリティが今注目されております。もう一つ、モダリティを上手に使うという意味で、いかに賢く診断していくか、精密医療という方向性があります。もう一つは、医療機器、特に最近はプログラム医療機器が注目されてございます。これら出口から、だんだん上流のほうに遡りますと、基礎医学研究があります。その基本的な根っこのところを支えるのが、バイオバンクや医療データであると思います。さらに遡ると、ヒト以外のいろいろな生き物を比較する基礎研究があるのかなと思いますけど、今日は、そこまで申し上げると行き過ぎかなと思いましたので、省略致します。
まずは、アジア地域の主なバイオバンクとして、特に大きなものを整理して、お話したいと思っております。
中国は、China Kadoorie Biobankが大きく、50万人規模で、最初は北京大学とイギリスのオックスフォード大学が一緒に始めたと聞いております。ベースライン調査をやりながら、その後も追跡調査を時折やっておられるようです。全員に対する追跡ではないようですけれども、第3回追跡調査までやられております。追跡のたびにいろいろな情報が増えております。取得しているデータについては、特殊な項目などは見当たりません。遺伝データについては、アレイを使って10万人規模の解析が実施済みです。詳しい内容まで掘り下げ切れなかったのですが、国民ID番号を使って、死因データや医療データ全般と接続した解析を実施できる、と公開情報で述べられておりました。ただ、どれくらい使い勝手がいいのかとか、どれくらい質の高いデータがあるのか、までは分かりません。中国のKadoorieもUK Biobankと同じで、収集したデータを最初はKadoorieバンクの関係者、すなわちイギリスと中国の関係者が独占的に扱うことができ、その次に中国国内の研究者が使えて、その6か月後ぐらいに世界中の研究者も使える、となってございました。全ゲノムについては、どこまで解析が進んでいるのかはっきりとしませんが、一部の論文において、官民パートナーシップで50万人分の全ゲノムをやりたい、あるいは、計画中だ、といった趣旨の文言が書かれてはございましたが、実際のところは不明です。海外からのデータ利用について、2015年からデータアクセスが可能になっておりますが、遺伝子データにつきましてはChina Kadoorie Biobankの関係者との共同研究という形での利用となっているようです。国別の利活用者を調べたところ、中国国内が半分以上、Kadoorie Biobankを共同運営しているイギリスもそれなりに多く、日本からは阪大とバイオバンク・ジャパンの2件がございます。企業利用は3件ございました。
続きまして、台湾のTaiwan Biobankは、20万人規模でかなり大きく、2012年に設立されております。設立に当たっては、前後する年代にバイオバンクの基本法の制定や個人情報保護法の改正など、法整備も一緒に進められている印象でございました。全ゲノムについては、私が調べた範囲ですと、今のところ2,000人分ぐらいされているように見受けられました。また、国民健康保険データ、医療データと連動した分析も可能となっておりますが、海外からのアクセスはなかなか難しく、国内限定で使えるようでございました。企業との連携は、特にありませんでした。Taiwan Biobankをどういった方々が利活用しているかを見ますと、台湾国内からの利用がほぼ大半でした。企業さんからの利用としては、大規模な製薬企業ではない、少し小さな新しい企業、スタートアップ的なところの利活用が散見されたところでございます。
続きまして、韓国のNational Biobank of Koreaでございます。バンクの規模は45万人ですが、幾つかの国内の大規模コホート/バイオバンクを一つに束ねた形になっておりますので、UK Biobankとか、東北メディカル・メガバンク、バイオバンク・ジャパンのような一つの固まりではありません。2008年頃にスタートしまして、今、第4期となっており、引き続き強化が進められております。論文や公開情報などでお調べした範囲で詳しい情報を得ることができませんでしたが、Korean Genome Projectという国家プロジェクトで、目標としては全ての韓国人の全ゲノムをやりたい、と掲げられております。ただ、関連していそうなプロジェクトを見ても、現段階ではそこまで大規模なものにはなっていません。Korean Genome Projectは、韓国においてこれから注目すべきプロジェクトなのかなと思います。
続きまして、シンガポールのPRECISEでございます。こちらは、2017年にシンガポール版のプレシジョンメディスンの国家プロジェクトの中の一環で進められているもので、今、第2期で10万人規模のゲノム解析を実施することになっております。ホームページを見ますと、第2期の完了予定時期が2025なのか2026なのか曖昧ですが、第2期が一段落したところで、第3期ではシンガポール人口の10%のゲノムを解析するよと掲げておられます。これまでに、全ゲノムデータにつきましては、4万1,000人分を解析完了しております。また、TRUSTプラットフォームという、臨床データの利活用を加速するような公的プラットフォームがシンガポールにありまして、こちらとPRECISEの巨大ゲノムコホートが接続することで新たな価値を生み出していきたいと、果敢に打ち出されてございました。実際にそれがどの程度稼働しているかは、分かりません。企業との提携という意味では、Boehringer Ingelheimとパートナーシップを組んでおられるようです。また、利活用プロジェクトとしては、様々な疾患の層別化や、創薬研究などのプロジェクトが複数進められているという印象はございました。今のところ、まだシンガポールの中の研究プロジェクトなのかなという印象で、世界中に門戸を開放してはいない印象はございました。ただ、PRECISE自体は、世界の企業とのパートナーシップが大事だとかなり仰っておられますので、今後開かれていくのかもしれないと思いました。
続きまして、アジアに限定せず、世界中の主なバイオバンクの論文数の推移をお示しします。UK Biobankの論文数が非常に多くなっております。ただ、先ほど荻島先生からのお話にもございましたとおり、論文の大半、8割ぐらいはアメリカとか中国となっておりまして、国内の論文はあまり多くないです。バイオバンクを国外にどこまで開放すべきか、については様々な考え方があるのかなと思いますので、なかなか難しい問題と思うんですけれども、一応、エビデンスデータとしてはお示しする通りです。
続きまして、世界の産業界とバイオバンクの関係を見てまいりますと、まず、アジア地域の事例を探しましたがあまり見かけられず、やはり欧州が中心になってしまいます。UK Biobankは、2017年ぐらいから、エクソーム解析、全ゲノム、プロテオーム、あるいは、画像データの再取得、エピゲノムなどを、政府の資金をベースとしつつも、プロジェクトの前倒しや加速といった観点から、イギリスのメガファーマだけでなくて、世界中のメガファーマがリソースを提供している点が特徴的かと思います。また、UK Biobankは、2026年に新たな場所へ引っ越すと同時に、インフラも大幅に強化される見込みです。
続きまして、フィンランドのFinnGenです。フィンランドの政府資金で構築されてきたコホート/バイオバンクについて、FinnGenというプロジェクトでサンプルの計測/解析が大規模に進められております。FinnGenは2017年に始まったプロジェクトで、これまでの総予算は1.5億ユーロで、予算の大半を世界中のメガファーマ共同で拠出することで進められております。ただし、フィンランドという国は、そういう進め方をしているよということでして、日本も同じように進めましょう、と一概に言えるものではないとも思います。あくまで、海外にはこういう国もあるというご紹介です。
消費者向けの遺伝子検査サービスの23andMeがGWASの論文とかも出していたのを拝見しておりましたので、そういう民間サービスが、意外とゲノム基盤として存在感を大きくするのかと思いウォッチしておりました。しかし、最近、かなり厳しい状況になっているようでして、株価も数セントとか、大変なことになっているようです。1回検査したら終わりというビジネスモデルがそもそも厳しいのかなと。あと、GSKがそれなりに創薬絡みで23andMe社に資金を投入してはいるんですけど、その規模では企業としてもたないのかもしれず、民間のゲノムサービスがゲノム基盤となるのは簡単ではない印象も受けました。
続きまして、ゲノムを活用した創薬につきまして、スライド5枚ほどで申し上げたいと思っております。
ゲノムを活用した創薬と申し上げますけど、ゲノム創薬って何かという定義は結構難しいなとは思っております。と申しますのも、昨今、ゲノム創薬と呼ばれている研究開発事例も、何がしかのタンパクや基礎研究的な発見は、20世紀には既になされていることが多くあります。
ジェネティクス系の論文を見ますと、ヒトの遺伝学的なエビデンスがある場合、フェーズ1から上市に至る可能性が2倍~3倍上がると言われているようでございます。2021年にFDAが承認した医薬品の3分の2は適応症と遺伝子の関係が見いだされていたそうです。あと、世界的な核酸医薬のメーカーのAlnylam社の臨床試験は一般的な製薬企業よりも非常に成功率が高い。これはあくまで1社の話なので核酸医薬全般かどうかは不明ですが、いずれにせよ、標的となる配列がクリアに分かっていると開発成功率はかなり高くなるというのは、個人的には納得感があります。
ここから3枚ほど、ゲノム創薬の事例をお示しします。大変有名なところは、PCSK9やANGPTL3です。これらの臨床試験をClinical Trials.govなどで調べましたところ、PCSK9は既に薬になった抗体医薬や核酸医薬はありますし、開発段階のものも結構あります。また、アーリーなやつになると、核酸医薬とか、ゲノム編集治療とか、新しいモダリティも見えてくるのが印象的でございました。ANGPTL3でも同じ傾向があります。ANGPTL3につきましては、2002年に日本の研究者がマウスで遺伝子を見つけておりまして、日本の活躍も見てとれるところもございました。
このほか、遺伝学的な発見を機に創薬が盛り上がった遺伝子が多く見られまして、整理させていただいたところでございます。
2021年以降になってきますと、論文の冒頭にUK Biobankの全エクソームシーケンスで見つかった治療標的だと銘打たれているものもあり、かつUK Biobankのホームページにも成果だと書かれており、やっとUK Biobankとか大規模なゲノム解析の結果がこういった創薬につながり始めているところかなと思いました。
もう一つ注目すべきところは、先ほどUK Biobankはメガファーマがたくさん入ってどんどん計測・解析をやっていると申し上げましたけれども、実際に創薬を始めているのはどちらかといえばスタートアップが中心というところでございます。私の印象としましては、ゲノム基盤とか、プロテオーム基盤とか、そういったところは、国のお金と、あるいは将来的な受益者となる製薬企業が基盤をしっかり整備していくと。その上で、創薬については、スタートアップが立ち上がる形でどんどん進んでいく。開発が進展すれば、メガファーマに買収されて、製品化されていくのかなと思いまして、そういうエコシステムらしきものがだんだんできつつある印象を受けました。
続きまして、ゲノムを活用した創薬。これは細かい話が多いので参考資料に入れておりますけど、創薬モダリティが多様化しております。核酸医薬とか、RNA編集、エピゲノム編集、あるいは低分子も新しいタイプが結構出てきておりますし、ゲノム編集治療といった、かつてはなかったタイプがどんどん出てきていて、それら創薬モダリティが、ゲノム創薬で見つかってきたターゲットにどんどん適用されていっているというのは印象的かなと思っております。ゲノムによる層別化診断も重要ですし、2024年の11の重要な臨床試験の一つにはPCSK9が入っておりました。
今日、創薬モダリティについて詳しく申し上げるつもりはないんですけれども、核酸医薬、in vivo遺伝子治療、こういったものが新しいモダリティというところで、ゲノム創薬には結構適用され始めているのかなあという印象もございました。ただ、私の印象といたしましては、モダリティの種類はどんどん増えてきているんですけれども、増え方は飽和してきているのかなあという印象もございます。と申しますのは、核酸医薬、遺伝子治療、これまではかなり、基礎研究の話、あるいは実験的な医療だったのが、既に製品がたくさん出てきている。もちろん、まだ未成熟な技術なのでブラッシュアップは必要なんですけれども、それでも、どんどん製品化が進んでいる。となると、次に必要なのは、治療標的をきちんと探していくというのが結構大事になってくるんじゃないのかなと思っております。モダリティ技術は大事なんですけど、同時に、治療標的を探すって大事ですし、そのための基盤としてバイオバンク・ゲノムコホートといったようなものは、これから重要性は増していくんじゃないのかなという印象がございます。
国内には、そういうゲノムを活用した研究をされている方がたくさんおられますよという事例もお示ししておきます。
日本で重要と思われる方向性も述べよと事務局の方から先日いただきましたので、ちょっと考えました。一つは、B-cureのデータ基盤はそもそも、全然完成したものではなくて、まだまだ強化していかないといけないものだろうと。ロングリード、エピゲノム、プロテオーム等々、画像データなどは必要で、大前提です。その上で、もう少しバイオロジー的なところを考えてまいりますと、ゲノムと疾患の相関関係、GWASの間を埋めるバイオロジーが必要なのかなと思っております。例えばAMEDのCRESTですとか、基礎研究事業でもっとバイオバンクを活用して基礎研究を進めて、何か新しい発見をしていくという、そういう流れって大事なのかなあと思っております。もう一つは、これは海外でもまだそんなにいっぱい進んでいるというわけじゃないかなと思うんですけども、スタートアップによるゲノム創薬が海外でもそれなりに始まっているかなと思います。AMEDの様々なスタートアップ事業等でB-cureの基盤も活用されると良いな思うところでございました。
まとめに関しましては、先ほどスライドと重なりますので、以上でございます。
私からの発表は、以上でございます。失礼いたします。
【中釜主査】 辻先生、どうも、御発表、ありがとうございました。
それでは、ただいまの荻島先生、辻先生の御発表を踏まえまして、御質問がありましたら、挙手をお願いいたします。
玉腰委員、お願いいたします。
【玉腰委員】 御説明、ありがとうございました。
すごく基本的なところで教えていただきたいんですけれども、ゲノムで解析した結果になってしまっていればいいのですが、そうでない場合、生体試料を配布すれば、当然、それはなくなってしまうものだと思うのですが、減っていってしまうものについて、どういうふうに制御するという優先順位をつけているのかということと、それから、いろんなところに配布して測定をした結果というのを本体に戻してもらうような仕組みというのをどのように確立しているのか。あるいは、しないで、そのままになっているのか。たしか東北メディカル・メガバンクは一定されていると思ったんですけれども、その辺りのデータをうまく、みんなが解析したら、またそれを集めて使うような仕組みというところと、今の生体試料がなくなる問題と、2点教えていただければと思います。
【中釜主査】 今の御質問に関して、まず、荻島先生、いかがでしょう。
【荻島教授】 玉腰先生、御質問、ありがとうございます。
最初は試料の利用の部分の御質問だったかと思いますけども、そちらに関しては、先生も御存じかと思いますが、試料利用に関する委員会の審査の下で承認されて利用に進みます。ただ、UK Biobankにしても、All of Usにしても、試料の利用というよりは、データ化して利用を広げるという形が今増えているので、どちらかというとそちらの情報のほうがたくさん利用されているような状況かなというふうに思います。
二つ目の御質問に関しては、戻すところもやっていらっしゃるとは理解しているんですけども、基本的に先ほどのコンソーシアムのような形で大規模に、UK Biobankや、それぞれのバンクが入った形で解析をして利活用するという形になっていますので、個別のものを完全に全て収集し切っているかどうかというところに関しては、そこまでの情報は、私は持ってございません。申し訳ありません。大規模なものは、バンクが主導してやっているのかなというふうに思います。
以上です。
【中釜主査】 ありがとうございます。
この点について、辻先生は何か追加でコメントございますか。
【辻フェロー】 この辺は、例えば中国のKadoorie Biobankとかは、サンプルについては、恐らくあまり量がないからなのか、基本的にはサンプルの分譲はあまりしてないようなところが随所に書かれてございました。むしろ、データをたくさん取っているので、データを使ってほしいというふうにございましたし、それ以外の韓国、台湾、シンガポールにつきましても、サンプルをどんどん分譲するぞみたいな書かれ方あまりしておりませんでして、データをどんどん解析してほしいみたいな話がアジアのほうでも中心だったなと思っております。解析した結果がどれぐらい戻ってくるかにつきましては、私もうまく同定できずに、詳しくは分かりませんでした。
以上です。
【中釜主査】 ありがとうございます。
今のお答えでよろしいですか、玉腰委員。
【玉腰委員】 ありがとうございました。そうすると、多くの場合、生体試料の測定に関しては、バンクなり、そこを中心としたコンソーシアムでされていて、その結果を使えるようにしていると。外で測定した場合のものがどう戻ってくるかということについては、まだあまりはっきり分からないというか、それぞれのところでやっている。そういうふうな理解かと思いました。どうもありがとうございました。
【中釜主査】 ありがとうございます。
ほかに、では、川﨑委員、お願いいたします。
【川﨑委員】 先生方のお話で海外の様子がよく分かりました。そこで質問させていただきたいのは、辻先生の発表の中で、学術利用でUK Biobankの利活用がものすごく高いグラフがあり、次に日本がありました。利用数についてはUK Biobankがすごく多いということがわかりましたが、利用者数の利用国はどうだったのかということと、あと、バイオバンクの利活用による特許数というのはどうだったか、そして、その三つ(利用者数と利用国と特許数)はどういう関係にあるかということをお伺いしたかったことが一つ目です。
二つ目は、荻島先生のところで、フェーズが変わりつつあるというお話の中で、今は医療実装が注目を浴びているというところなんですけど、バイオバンクの利活用の先にある医療実装の課題というのは何だとお考えでしょうか。以上2点、教えてください。
【中釜主査】 荻島先生、よろしくお願いいたします。
【荻島教授】 川﨑先生、御質問、ありがとうございました。
最初のほうに質問に関しては、辻先生からもあるのかなと思いますけども、先ほど御説明したとおり、海外からの利用は米中が非常に多いというところは、今、数字までは持ってなくて、今、探せたら探そうかなと思っておりました。
二つ目の質問は特に私向けの質問なのかなと思いますけども、今後、医療実装に向かわなくちゃいけないという意味でお話をさせていただいて、当然、基礎研究、研究リソースとしてのバイオバンクももちろん重要であるということを前提として、御理解いただければなというふうに思います。そのうえで、医療実装の課題については、全国にゲノム医療を均てん化するためには共通の知識を共有していくことが非常に重要でして、病的なバリアントの解釈であるとか、レポートであるとか、そういったことをやるときに、共通の知識ベースを構築し充実させていくことが重要です。そのためにはやはり、知識ベースをつくるための研究、あるいは研究開発をするためのデータや試料を共有するためにバイオバンクは重要というふうに認識してございます。
私のほうからは、以上です。
【中釜主査】 辻先生、利活用に関する国際的な比較に関してはいかがでしょうか。
【辻フェロー】 私も、イギリスのUK Biobankの米中の割合というのは、ちょっと調べきれておりませんでした。ごめんなさい。そういうところです。
2点目につきまして、荻島先生のおっしゃるとおりかなと思いながら、今聞いておりました。
【川﨑委員】 あと、最後にお二人の先生に質問させてください。バイオバンクの利活用差について、世界のバイオバンクの利活用は学術がすごく多い、また実際にそれを実装化しようとベンチャー企業さんが参入しているという話もありました。日本のバイオバンクが最終的にゲノム医療とかゲノム創薬につなげていくための一つの課題というか、もっと力を入れなきゃいけないというところとして、基礎研究を最後に挙げられていたと思います。これは、医学系の基礎研究なのか、それとも、もっと異分野の研究者が入ってくる仕組みというのが必要なのか、それについて見解を最後にお伺いできたらと思います。
【中釜主査】 よろしいでしょうか。何かコメントはございますか。
【荻島教授】 では、荻島のほうから。
私の意見というよりは、UK Biobankのいろんな方々からインタビューをする中で、先ほど申し上げましたけど、特許はどれぐらいあるんですかと聞きましたところ、把握してないとおっしゃっていて、基本的にはバイオバンクがいかに豊かな研究成果を生み出すかということが非常に重要であるということをおっしゃっていたのが非常に印象的でした。ですので、特にこの分野とか、そういう話ではなく、とにかく、幅広い基礎研究であるとか、普通の臨床研究であるとか、あるいはアカデミア発創薬ベンチャーでもいいんですけども、たくさんの方にデータを利用してもらうということが非常に重要だということをおっしゃっていたというふうに認識しています。
ただ、私の私見を少しだけ足しますと、例えば、All of Usで精密栄養研究が始まっているように、必ずしも医学ではなくて、食生活であるとか、栄養であるとかというところにも広がってきているので、実は、広がる分野、産業分野はもっと幅広いのかなと思います。デジタルヘルスなどもありますし、非常に広いのかなというふうに認識してございます。
以上です。
【川﨑委員】 ありがとうございます。
【中釜主査】 よろしいでしょうか。
【川﨑委員】 はい。
【中釜主査】 関連して、私から1点。辻先生に御質問なのですが、先生の資料でバイオバンクを使った論文推移数の中で東北メディカル・メガバンクのデータがUK Biobankと比較して書いてありますが、日本の場合、例えば紹介されたBBJやNCBNのバイオバンクを使った論文の報告も数としては出ていると思うのですが、これは、まだ調べ切れてないのか、情報が不十分なのか、いかがですか。
【辻フェロー】 ちょっとまだ、あらゆるバンクを調べるところまでは行っておりませんでした。
【中釜主査】 分かりました。ありがとうございます。
続きまして、桃沢先生、いただけますか。
【桃沢委員】 ありがとうございます。お二人の先生に大変分かりやすくご説明いただき、ありがとうございました。
このように様々なバンクの情報が集まり統合が進んでくると、どのようなデータについては数が多くなっていけば研究成果がより大きくなっていき、一方でどのようなデータについては、データの品質がいまいちであるとか、バンク間でギャップが大き過ぎてまとめられないということがわかってくるのではと思いました。我々の分野ですと、ゲノムと疾患発症の関連については、統合してサンプル数が増えていけばよりよいと経験的に考えられているのですが、他の分野についてはわかりませんので、教えていただければと思います。 以上です。
【中釜主査】 ありがとうございます。
この点について、お二人から。
【荻島教授】 ありがとうございます。難しい御質問だなあと思うんですけども、おっしゃるとおり、今日御紹介したバイオバンクもナショナルバイオバンクというレベルのものかなと思っていまして、ある程度の規模のものをある程度品質を管理した形で扱っているバイオバンクがほとんどです。一方で、バイオバンク・ネットワークみたいなものもあって、割と症例数が少ないようなものとか、あるいは臨床研究のものはバイオバンク・ネットワークのところでいろんな症例を集めてくるというスタイルになってくる。一方で、大規模なデータで解析していく場合には、一定程度コントロールされた大規模なバイオバンクみたいなものを構築していかないと難しい部分あるのかなというふうに伺っておりました。
明快な答えではないんですけども、以上でお許しいただければと思います。
【中釜主査】 今の点について、辻先生、コメントございます。
【辻フェロー】 すみません。私からは特にございません。
【中釜主査】 ありがとうございます。
よろしいでしょうか。
【桃沢委員】 ありがとうございました。
【中釜主査】 続きまして、澤田委員、お願いいたします。
【澤田委員】 国立がん研究センターの澤田です。大変勉強になりました。
荻島先生に質問です。医療実装などについて、バイオバンクでは新たな研究に活用してもらうということがメインで、ちょっと切り分けられているというようなお話がありましたが、一方で医療実装などが大事というようなお話もあり、バイオバンクと、その外での取組、研究の組織や、国の機関や、ほかの大学とも動きや協働して実装につなげていこうというような動きが今ありましたら、少し教えていただければと思いましたが、いかがでしょうか。
【荻島教授】 ありがとうございます。その意味では、先ほど御紹介したUK BiobankとGenomics Englandの部分は、その一つの試みかなと思います。UK Biobankに関してはNHSのジェノミックメディシンサービスを通じた医療実務を進めようとしていますので、その中でGenomics EnglandとUK Biobankを組み合わせて、がんと認知症に関しては医療実装に向けたゲノム医療をやるために取り組むということで、まさに今始まろうとしているところかなと思ってございます。
以上です。
【中釜主査】 よろしいでしょうか。
【澤田委員】 ありがとうございます。
【中釜主査】 ほかに、御質問、御意見、ございますか。
よろしいですかね。
私から1点、荻島先生にです。バイオバンクの経時的な臨床情報・健康情報の収集は非常に重要だと思うのですが、先生が御紹介されたAll of Usの場合はスマホを使ってということで、そういう情報は、従来の例えば調査票のような精度の高い情報とスマホによる情報が混在することによるリスクみたいなものはあるのでしょうか。日本においてどのようにこれを、より安易な方法、簡便な方法で広げていくかということの視点からの質問です。
【荻島教授】 ありがとうございます。その辺りのバリデーションまで、私は存じ上げないんですけれども、ただ、一方で多くの、例えば、若い世代とか、20代、30代とかっていう世代の方々にこういった調査に参加していただいて継続的にフォローアップができるという意味で、スマートフォンの利活用というのが今は重要になってきているのかなと思っておりまして、直接的なお答えではないのですが、そういうところも留意して進めていく必要があるかなというふうに思います。
【中釜主査】 分かりました。
では、岡田委員、お願いできますか。
【岡田委員】 岡田です。手短にさせていただきます。
追跡調査の件なんですけど、恐らく、誰は追跡できていて、誰は追跡できなかったかという打切りがどうしても発生してきて、その二つの区別が結構、追跡情報を使った研究には来るんですね。特に最終的な健康アウトカムみたいので。100%は難しいので、スマホもよくなくちゃいますし、誰はどれぐらい追跡できて、誰はできていないのかというのをクリアにしていくかというのが今後課題かなと思われるんですが、先生の御経験で何か思われることはございますでしょうか。
【中釜主査】 荻島先生、お願いいたします。
【荻島教授】 私はコホートの担当ではないので難しいんですけども、先ほど申し上げたとおりで、年代に合わせた形でのものがあるのかなというふうに理解しておりまして、また、先生がおっしゃっているとおりで、測定してないからないのか、追跡できないからないのかというところの区別をきちんとしてデータを利活用していくことが非常に重要かなと思います。あと、今、国のレベルでデジタル庁等が様々な情報のデジタル化をされているので、いかにリンケージをさせていただいて、むしろそちらの情報から追跡させていただくという仕組みを、我々バイオバンクだけでは無理ですので、政府の方々にも御支援いただきながら、そういう仕組みをつくることは非常に重要だろうというふうに思ってございます。
【岡田委員】 ありがとうございました。
【荻島教授】 ありがとうございます。
【中釜主査】 ありがとうございます。
ほかに御意見ございますか。
よろしいでしょうか。
特にないようですので、次の議題に移ります。
議題(2)は、疾患バイオバンクの今までの取組及び今後の在り方についてです。松田先生に御説明いただいて、合わせて質疑応答をしたいと思います。
松田先生、お願いできますでしょうか。
【松田教授】 東京大学の松田です。よろしくお願いします。
では、主にバイオバンク・ジャパンと、あと、東北メディカル・メガバンクとの連携について、御説明させていただきたいと思います。
本日の内容このような形になっていますが、一つ目は、もう既に荻島先生と辻先生が御紹介されたので、簡単にと思います。
現在、国内及び海外に非常にたくさんのバイオバンクが構築されているという現状がありますし、その利活用とか、解析の状況については、先ほど詳細な説明がありました。このようにバイオバンクが非常にたくさんつくられている一つの背景としては、いわゆるGWAS研究の成果があるかと思います。2002年に我々の研究グループが世界で初めてゲノムワイド関連解析を行いましたが、現在、7,000を超える論文が報告されていて、70万近い様々な疾患等に関係するローカスが見つかっているような状況になっています。このような形で、疾患遺伝子研究においては、いわゆるゲノムワイド関連解析、SNPを使った解析というのがゴールデンスタンダードとなっております。
さらに、もう少し詳細な、レアなバリアントを対象としたものとしては、先ほども紹介ありましたが、海外ではUK BiobankやAll of Usで25万人から50万人規模のホールゲノムシークエンスが進んでいるという状況になります。また国内では、御存じのように、東北メディカル・メガバンクは10万人のホールゲノムシークエンスが完了しています。また、東北メディカル・メガバンク以外にも、国内の複数のコホートでは1万人規模の解析が進められており、それを使ったゲノム医療への実装というのは主にがん及び難病の領域を中心に進められております。また、我々の研究グループでは、これらの複数のコホートの連携によるジョイントコールの実施、つまりバイオバンク間の連携ということも現在進めている状況にはなっております。
このような中で、バイオバンク・ジャパンのこれまでの取組について、簡単に御紹介させていただきたいと思います。2003年にスタートして今で22年目になりますが、最初の5年間で20万人の方をリクルートして、第3期の5年間でさらに追加で7万人の方をリクルートして、27万人から成るコホートになります。特徴としては、かなり長期間のフォローアップデータがあるということと、DNA、血清、臨床情報等が収集されているというところです。海外のバイオバンクに比べると早い時期から立ち上がったということで、比較的初期の頃、特にアジア人を中心とした、ゲノムワイド関連解析を広く行ってきたという実績があります。現在、バイオバンク・ジャパンは第5期になっておりまして、これまで登録いただいた方の追跡調査であったり、臨床情報の追加収集であったり、また、収集された検体のオミックス解析を行うとともに、利活用をいかに進めるかというところを中心に事業を進めております。
こちらはバイオバンク・ジャパンで登録されている症例になりますが、第1期ではこちらに示すような20万人、また、第3期では第2コホートとして7万人の方に協力いただいて、これらの検体の保管を行っております。
こちらはBBJで保有する研究資源をまとめたものになりますが、協力いただいた方が27万人で、1人3本ずつ取りますので、大体80万本分のDNAと、血清が約200万本弱、また、ホールゲノムシーケンスは全体の5%ぐらいで1万4,000人、SNPアレイはほぼ全例という形で、現在、様々なオミックス解析を進めております。ホールゲノムシークエンスも追加で解析するとともに、プロテオームとしては1万2,000人、メタボロームが約半数の12万人となります。あと、シングルセルのマルチオミックス解析は、数は少ないですけが100例、クローン性造血を8万人規模で進めております。
我々、疾患バンクとして、このようなデータは積極的にNBDC等の公的データベースに公開を進めております。ホールゲノムシーケンスや、メタボローム、SNPアレイのデータが数十万人規模で公開されております。ホールゲノムシーケンスの場合はかなりデータが多いので、先ほど荻島先生からお話ありましたように、アクセス方式のほうが主流にはなっておりますが、比較的サイズが小さいメタボローム及びSNPアレイの場合は自施設で解析される方も非常に多く、NBDCからデータをダウンロードして、多くの研究者に使っていただいているという状況になっております。
また、このようなデータそのものよりも、統計値のデータがあれば研究に十分であるという場合も多いですので、理研のJengerとか、岡田先生中心に構築いただいているPheWebのサイトで、実際に統計値、例えば、ある特定のSNPと疾患との関連というのが簡便に検索できるようなサイトも構築しております。このようなサイトを通じてデータにアクセスして研究デザインを立てていただくということが可能になっております。
試料等の利用実績をこちらに示したいと思います。第4期以降の累計を示しておりますが、まず、新規問合せが五百数十件、実際に利用に至ったのが三百数十件になります。年間、大体50例前後の新規申請に対して承認が行われている状況になっております。
症例数をこちらに示していますが、第4期から利活用をできるだけ促進する事を目標に我々も取り組んできておりました。第1期から第3期に比べて、DNA、血清、そして、データのほうの利用がかなり増えているというふうな形になっております。先ほど荻島先生からUK Biobankでも企業の割合が全体の10%程度というお話ありましたが、BBJのほうでも、アカデミアに比べて企業の数は大体7分の1ぐらい、全体の12%程度となっております。UK Biobankと非常に近い割合で、主にアカデミア中心の利用になっております。この部分を少し克服するために、後で述べますが、データパッケージというのを開始しまして、企業の方々でも非常に使い枠組みというのを現在開始したところになります。
利活用に当たって、申請に時間かかるので使いにくいという御意見もいただいていたので、我々は第4期からオンライン審査を導入しまして、実際に審査登録から2週間程度で試料・情報が提供可能にできるという形になっております。審査はオンラインで行いますので、申請があれば、随時、審査員による審査が行われますので、申請から承認まで、そしてデータ提供までが非常に早く行えるというのがメリットになっております。
このような形でバンクとしての運用以外に、我々のほうでは解析したデータを使った研究成果のほうも発信しておりまして、こちらに示すような、BBJ単体で行ったものや、国際共同研究にも積極的に参加して、多くの成果が出ております。この中で臨床的に重要性が高いものについて、幾つか御紹介したいと思います。
こちらは薬剤の副作用に関係する解析になりますが、カルバマゼピンによって生じる薬疹についてゲノム解析をしたところ、HLA-A★31:01のキャリアの割合が薬疹発症群で非常に多く、オッズ比が10倍近くになるということが分かりました。このような結果が現在では薬剤の添付書に記載されており、薬の安全な使い分けにゲノム情報が利活用されていければというふうに思います。
こちらは、本日、委員として参加いただいている桃沢先生の成果になりますが、胃がん患者において遺伝性腫瘍関連の遺伝子の詳細な解析を行ったところ、相同組換え関連遺伝子の変異を持つことと、ヘリコバクター・ピロリ菌感染、これが相乗的に胃がんのリスクを高める事が明らかとなりました。変異のキャリアがピロリ菌に感染すると85歳時点で約半数近くが胃がんを発症するということが分かりました。現在、がんのゲノム医療ではこのように様々な遺伝子変異が明らかになっておりますので、例えば、BRCA1/2の変異キャリアに対しピロリ菌検査を実施し、感染者に対しては除菌を行うことによって胃がんの発症リスクを下げることが期待されます。
また、バイオバンク・ジャパンの特徴としては、経年的に血清を集めている点が挙げられます。多い方で最大10年間、毎年1回ずつ血液を採取しており、10年間集めている方は4,000人に上ります。例えば糖尿病の方だけでも1,000人弱いますので、糖尿病の場合は、経過中に腎症とか様々な合併症を発症しますので、このようなデータを使うことによって、病気の発症だけではなくて、重症化に関わるようなマーカーの同定につながるのではないかと期待できます。
血清のほうはなかなか利用が進んでいなかったのですが、現在、ナイチンゲールヘルスジャパンと共同研究を行うことによって、BBJの検体を使って大規模なメタボローム解析を進めております。解析に当たっては、実際にナイチンゲールで測定したメタボロームの結果と、同じ日に行った検査値、こちらの相関を見ると非常に高い相関があるということで、解析および検体のクオリティーや臨床情報に大きな問題はなさそうということが確認できました。その結果を踏まえ現在、大規模解析を進めております。これまで12万人ほどの解析が完了しておりますが、これらの成果はマイナイチンゲールという形で医療実装のほうにも貢献しているという形になっています。
もう一つ、最近進めているのはプロテオームの解析で、我々の研究グループで、UK Biobankでも導入されているOlinkのシステムを使って、ここ3年間ほど、3,000人から5,000人程度の検体の解析を進めてまいりました。これまでの研究によりゲノムと病気との関連は明らかになっているのですが、そのメカニズムについて示唆するようなデータが複数得られております。一例ですが、消化性潰瘍で見つかってきたPAX4の多型、これはホメオドメイン上にあるアミノ酸置換を伴うバリアントになるんですが、転写活性を抑制するということが知られています。実際にこのバリアントを持つ方では、胃酸分泌を促進するような、モチリン、グレリンの血中濃度が高くなるということ。また、胃酸分泌を抑制するようなセクレチンの血中濃度が下がるということで、このバリアントを持つことが消化管ホルモンの血中濃度に影響を与える。その結果、潰瘍のリスクを高めるということが、今回の結果から示唆されました。
さらに、追跡調査のほうも医療機関と連携する形で進めておりまして、現在、年に1回、電子カルテから、比較的収集されやすい、診断名、処方歴、検査値、最終来院日の情報等を収集しております。これまでに1億近いデータセットが既に収集されており、このようなデータを集めることによって、これまでBBJが主にターゲットとしていたコモンディジーズだけではなくて、例えば1万人に1例ぐらいしかいないようなレアな疾患についても情報を取得することが可能になります。今後、これらのデータを使って、BBJとしても多様な疾患に関するゲノム解析をぜひ進めていければと考えております。
こちらはBBJの利活用の促進を目指した取組になります。データパッケージという形で、3年間250万円で、企業の方に二十数万人のSNPアレイデータと、詳細な、100項目を超えるような臨床情報をライセンス制で提供して、利活用を進めるという取り組みも開始しています。現在、既に五つの企業が利用開始に向けた手続を行っておりますので、こういう形で企業の研究開発にも貢献できればと考えております。また、製薬企業以外に、情報系の企業からも利用について問合せがありますので、さらに研究の部分で裾野が広げていければというふうに考えています。
こちらは医療実装に向けた取組をまとめたスライドとなります。創薬に向けた研究や人間ドックへの実装、また桃沢先生の解析データは学会のガイドラインにも反映されているということで、このような形で医療にも貢献できればと考えております。
続きまして、ToMMoとの連携になりますが、現在、BBJとToMMoでは、定期的なミーティングを行っており、複数の共同研究を推進しております。また来年度実施に向けて幾つかの検討を進めております。その一つは、BBJやToMMoだけではなくて、CiRAや理化学研究所とも連携し、PRSの機能的な意義を解明をめざしてiPSの構築と、その機能解析を進めております。この研究では、循環器疾患を対象としてPRSを構築して、ToMMoの検体からPRSが高い人と低い人、つまり、遺伝的に病気のリスクが高い・低い人の検体を提供いただいて、そこからiPSを作成し、さらにiPS細胞を心筋細胞等に分化させて機能的な評価を行うことによって、PRSが高い・低いということが生理学的にどのような意義があるかというものを検討する研究になります。現在、まずは循環器疾患のほうを対象としていますが、今後、この取組をほかの疾患にもぜひ広げていきたいと考えています。こちらは鎌谷先生が代表として進めているものですが、脳血管のゲノム解析と血流解析の統合による脳血管障害発症に至る軌跡の解明と診療応用を目指す研究になります。こちらは、東北メディカル・メガバンク及びバイオバンク・ジャパンの関連病院で有する画像情報とゲノム情報を統合して、脳血管の血流におけるゲノムの影響を検討する取組になります。
また、BBJとToMMo、双方で持つような様々な量的形質、身長、体重とか、血液検査などを統合して解析する取組も現在進めております。
さらに、現在、メタボロームに関しては、BBJ、ToMMo、それぞれ10万人規模の解析が進んでおります。ただ、プラットフォームが異なるため、それぞれを統合して解析するというのは難しいのですが、相互に検体を提供することによって両プラットフォーム間の補正と統合解析を目指して現在協議を進めております。
最後に、BBJが今後目指すものについて、御紹介したいと思います。
こちらは、2022年3月、BBJが第5期に入る前にあり方に関する検討委員会が実施されまして、ここに示す11の項目について積極的に進めるということで合意が得られております。全てが実施できているわけではないのですが、現在、既存の研究基盤の維持と発展、医療機関連携によって様々な臨床情報の追跡調査、また、ゲノム・オミックス解析とデータ公開等が、第5期の中でも進められております。さらに、今進めているのは双方向性のバイオバンクとして、患者向けの情報発信と、スマホやウエアラブルデバイスを用いた健康調査の実施になります。
BBJはこれまでの広報の部分が比較的弱かった状況でしたが、新たに広報の経験がある方を2名雇用して、ウェブサイトの更新や、シンポジウム、広報誌等の作成などを通じて広報にも現在力を入れております。
このような取組の一つとして、双方向バイオバンクをご紹介します。これまでBBJとしては、参加者の情報は医療機関を通じてのみ提供されていたのですが、アプリを使ってBBJと患者の方が直接つながることによって、BBJからは研究成果や御自身の検体がどういうふうに使われているかというところの情報発信を行います。また、患者の方からはアプリを通じて健康に関する調査を行うという取組を現在行っております。現在、システムの開発中ですが、ほぼ医療機関の導入準備が進んでおりまして、今年度中にこの双方向バイオバンクというのがスタートする見込みになります。このプロジェクトの立ち上げに当たり、新たな取組として、PPIを強く意識して準備を行いました。実際に、説明文書やアプリの内容について、事業を立ち上げる前の段階で患者や一般の方に意見を伺って、そのコメントを反映した形で説明文書等を作成しました。その結果、患者の方にとっても分かりやすい資料やソフトウエアが構築できたと考えております。現在、来月開始に向けて、医療機関での準備を進めております。
もう一つは、解析技術の進歩に対応した新規生体試料収集です。BBJとして集めた検体は20年ぐらい前ということで、最新の解析技術に対応できるものが少ないのが現状です。BBJ関連医療機関である東京都の健康長寿医療センターで構築しているブレインバンクにBBJの登録者が約100名いるということが明らかとなりました。これらの方を対象に、現在、複数部位のマルチオミックス解析を進めております。この様に、バイオバンク間の連携を通じて新規の解析手法を用いたオミックス解析を行っております。また、日本医科大学等でもBBJ登録者から、再同意の上血液検体を提供頂き、シングルセルのマルチオミックス解析等を進めております。
このように集めた多層オミックスデータは、医科研のShirokane上にデータを格納して、多くの研究者がアクセスできるような体制を構築しております。
また、もう一つBBJとして目指すところとしては、バイオバンクや学会等の連携による大規模バイオバンク構築になります。多様なニーズに対応可能な生体試料及びフェノタイプデータの収集体制の整備、試料・情報のデジタル化と利活用促進、また個別化医療の推進に関する取り組みとして、解析データを患者さん本人に返すことによって、患者さん本人に役立つような情報を提供したいと考えています。さらに現在進めている双方向バイオバンクのシステムを通じて、データの利活用情報の開示による透明性の確保と社会的認知、信頼性の向上。さらに、国際連携・企業連携の推進と、持続可能な医療エコシステムの構築と100万人バイオバンクの構築を目指しております。
こちらは文献からの引用データになりますが、海外のバイオバンク中では、10万人、20万人というのは全然大きい数ではなくて、50万人から100万人、さらには500万人規模のバイオバンクが構築されております。これらのバンクの多くはSNPアレイのデータを使ったゲノム情報の取得行われています。さらにBBJもなかなか十分に進められていませんが、RNAシーケンス、プロテオミクスが実施されているところが複数あります。このような状況下で、あり方検討委員会では、100万人レベルの大規模コホートの構築というところの提言もいただいております。しかしながら、予算的にいきなり100万人を達成するのは難しいので、まずは国内のバイオバンクの連携を進めることによって、海外のバイオバンクと遜色がないような試料・研究体制を構築し、研究成果のほうも発信していければというふうに考えております。
こちらは最後のスライドになりますが、将来的には双方向性バイオバンクをベースにした、参加者への還元、行政データとの連携、Fitbit等を使ったライフログの取得、そして、これらのデータを適切な形で研究機関・アカデミア・企業に使っていただくことによって、オーダーメイド医療、ゲノム創薬に貢献できればというふうに考えております。
以上になります。
【中釜主査】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの松田先生の御発表に関して、何か、御質問、御意見ございましたら、お願いいたします。
では、高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】 松田先生、どうも、御説明いただき、ありがとうございました。私から、2点コメントと、1点質問がございます。
質問に関しましてですけれども、スライド46枚目になります。4ポツ目に「患者や市民が研究提案やデータ収集にも関与する「市民科学」モデルの実現」とあるのですが、ここに関して実現可能な取組例などありましたら教えていただきたいという点と、あと、6ポツ目の「企業健保との連携などによる収益モデルの構築」につきましても、具体的な計画があれば教えていただきたいと思っております。
【松田教授】 御質問、ありがとうございます。
まず、一つ目の質問に関してなんですけども、今回、双方向のシステムをつくる上で、研究デザインのところ、実際の説明資料等にはいろいろ御意見をいただいた形になります。さらに、患者会の方にも参加いただいたのですが、できれば、どういう研究をしてほしいか、こういう研究試料を使ってどういうところを明らかにしてほしい、患者のためにどういうふうなものを希望されるかというところも反映できるような仕組みをつくりたいかなというふうに考えておりまして、それは双方向性のシステム等を通じて研究に対する要望とかをぜひ進めていければというところになります。
二つ目の質問ですが、今、100万人のバイオバンク構築というところで、日本としてもその様な規模のものを連携を通じて作っていかなければいけないと考えております。一つは、ToMMoであったり、NCBNであったり、あと、エコチル等が10万人を超えるようなコホートとして知られていますが、一方で、医療機関併設型のバンクや、企業健保を対象とした数万人規模のデータ収集されている企業が幾つかあります。それらの企業は逆に、こういうゲノムデータから、企業の職員にデータを返却することによって参加者の健康管理に役立てたいという意向もあります。例えばバイオバンク・ジャパンの研究成果に基づきオーソライズしたPRSを構築し、そちらを企業側に提供することによって企業側にとってもメリットがあるような形での連携が可能になると期待されます。また企業の場合は毎年1回の健診のデータ等も蓄積されていますので、それらのデータと連携することによって研究にも利活用できればと考えております。
以上になります。
【高橋委員】 ありがとうございます。
続いて、コメントも2点あるんですけれども、まず、1点目はバイオバンクの連携につきましてでございます。東北メディカル・メガバンクの三世代コホート、また、BBJでは非常に経時的な長い追跡調査をやっていただいているのと、オミックス解析いただいて、特徴的な取組をされていると認識しております。日本にはそのほかにも医療機関併設型のバイオバンクが複数存在し、それぞれのバイオバンクにそれぞれのよさがあるというふうに認識しております。ですので、今後も省庁の事業の枠を超えてそれらを連携していただくと、国内のバイオバンクがあたかも一つのバイオバンクとして認識され、利活用の幅も拡大すると考えておりますので、今後もそのような取組を続けていただきたく存じます。
あともう1点ですけれども、アカデミアでの利用促進についてでございます。医薬品の研究開発の源泉はアカデミアのライフサイエンスの研究にあると思っております。薬剤の分子標的はアカデミアの生体試料を用いた研究から見いだされることが多く、バイオバンクの試料・情報を活用したアカデミアの研究の進展がとても重要と考えております。医学系の研究者はヒトの試料や医療情報の取扱いになじみがあると思うんですけれども、一方で理工学の研究者につきましては、ヒト試料を用いた研究に縁遠いため、利活用のニーズはあるものの、データ解析が不十分な機関に対してバイオバンクがサポートする仕組みがあれば有用と考えます。本日紹介いただいたToMMoとBBJの連携による病態解明の研究例のように、バイオバンクの試料を用いてアカデミアの基礎研究が広く進展していただくことを期待しております。
【松田教授】 コメント、ありがとうございます。今回、データパッケージのほうは比較的安い金額で利用できると思いますので、若手の研究者とか、分野が違う方でも比較的導入しやすいかなと考えておりまして、もっと裾野が広がっていけばというふうに考えております。ありがとうございます。
【高橋委員】 ありがとうございました。
【中釜主査】 ありがとうございます。
続きまして、二宮委員、お願いします。
【二宮委員】 九州大学の二宮です。松田先生、いつもお世話なっています。
若干批判的になっちゃうかもしれないですけど、BBJの成功、CiRAのGWASとかで成功された一番の要因の一つとして、ほかと違って臨床情報をしっかり集められてきている。そのデータの集め方が、当時つくられた久保充明先生とも話をよくしていますけど、臨床情報、コホート的な、しっかりとした追跡をしていきながらサンプルも集めていくということでこれだけの成果が生み出されていると私は思うのですが、それがBBJの一番の特徴だと思うんですけど、それで例えば100万人コホートでつくっていく、いろんなところとデータベースをくっつけていくという中で、結局、臨床情報をしっかり集めていくというシステムはどんなふうになっていくのかなというのが一番疑問なんですが、その辺は、先生、どうお考えなんでしょう。
【松田教授】 恐らく、そこをある程度標準化、どういうふうにしていくかというところは、コホート間で整理しなければいけないかなと思っています。診断名に関しても、BBJは医師がオーソライズされた疾患を登録するという形でこれまで行ってきたのですが、今回、電子カルテから一括で集めるということで、処方や検査のためについているような病名も一定数含まれると思われます。その点に関しては、診断名と処方や検査値の組み合わせでクリーニング出来る可能性はあります。1例ですが、例えば双極性障害の場合は、専門家に相談したところ、診断名とリチウム薬の処方情報を組み合わせることによって精度がより高くなると伺っております。どの様なクリーニングを行うべきか、ドクターのレビューが必要かというところは疾患毎に変わってくるかなと思いますので、研究デザインごとに行うというのが現実的かと思います。最初からハードルを高く上げ過ぎると、参加が難しくなる部分はありますので、まずは比較的集めやすいデータでデータベースをつくりつつ精度を高める方法も検討していきたいと考えております。この辺り、今後、バイオバンク間の連携を進めていく上で、いろんな先生方の意見を伺いながら、また、疾患ごとの専門家の先生の意見を伺いながら、決めていければと思います。
【二宮委員】 個人的には、ある程度コンセプトがあると思うので、そのコンセプトをどうやってつくっていくのかというのを初めに決めておかないと、後から決めるというのは難しいと思ったので、コメントです。ありがとうございます。
【松田教授】 ありがとうございます。
【中釜主査】 ありがとうございます。
ほかに御質問ございますか。
伊藤委員、お願いいたします。
【伊藤主査代理】 どうも、松田先生、すばらしい成果を御紹介いただきまして、誠にありがとうございました。
これは、先ほどの、桃沢先生の御質問ともちょっと関わるんですけれども、いわゆる核酸を扱う技術というのはかなり成熟していると思うんですが、プロテオーム、メタボロームになると、プラットフォーム間の違い、あるいはサンプルの前処理の違いというところが非常に気になってはいます。今、ToMMoと相互に、クロスバリデーションではないですが、補正方法をつくろうということをやっておられるというスライドが33枚目にあったと思います。これは非常にすばらしいなあと思っているんですけども、うまくいきそうな見込みはありますかというのが1点と、海外でもこういうことは盛んに行われているんでしょうか。この2点、ちょっと伺わせてください。
【松田教授】 以前BBJのメタボロームデータと採血日に行った検査値を比較したところ、かなり高い相関でしたので、検体のqualityや解析手法については安定であると考えております。ToMMoも同じようにNMRのメタボロームをされているというふうに伺っているので、恐らく高い相関が得られると期待しております。但し機器や実施施設、検体の処理・保管状況などの違いというのはあるので、今回は100ないし200検体ぐらいを相互に提供して比較することによって、少なくとも、この項目はかなり高い相関がある、これについては相関が低いということを検証したいと思います。さらに相関が低いものについては別の手法でバリデートをして、どちらの信頼性が高いとかというところを検証できればと考えております。
一方、プロテオームに関しては、世界中で行われている大きなものとしては二つプラットフォームがあって、我々の検体で見たところ、そんなに相関は高くなかったというところでした。同様の内容の論文も複数出ていますし、そこは解析手法が異なると一定しないデータが出てくるのかなという状況ではあります。とはいえ、近年、代謝物やタンパク質を網羅的にかつ安定して測れるような解析手法が複数出てきておりますし、企業も創薬の観点からタンパク質はかなり注目しているところですので、BBJも可能な範囲でこのようなデータを蓄積できればというふうに考えております。
以上になります。
【伊藤主査代理】 ありがとうございました。
あと、データパッケージ、非常に面白いなと注目しているんですけども、これは、アカデミアのほうからの利用に向けた周知活動みたいなことはかなりなさっているのでしょうか。
【松田教授】 企業をメインで広報を行っていたので、これまでの申請は企業中心ですが、アカデミアのほうもこれから周知を進めていきたいと思っています。まだ立ち上げたばかりで、ゲノム情報についても、SNPアレイのどの様なデータが欲しいとかというのも個別にやり取りが必要な状況でもあるので、まずはBBJとして基本となるデータセットを作っておき、依頼があれば同じものをどんどんお渡しできるという体制を今つくっているところです。来年度早々、もしくは来年の早い時期に、アカデミア向けへの広報活動もぜひ進めていきたいと思っております。コメント、ありがとうございます。
【伊藤主査代理】 ぜひ若い研究者の方々に活用していただけるように、期待をしております。
以上です。ありがとうございました。
【中釜主査】 よろしいでしょうか。
ほかに御質問ございますか。
私から2点ほど、質問というか、教えていただきたいです。資料15ページの試料の利活用のところです。アカデミアと企業で使う試料に少し特徴があるのかなと思って見ていたのですけど、例えば、企業さんのほうだと血清の利用が非常に多くて、DNAとかゲノム情報・臨床情報は圧倒的に学術機関が多いのですが、これは何か特徴があるのでしょうか。あるいは、先ほどの高橋委員の質問と関係する、その辺りの分析は何かされていますか。
【松田教授】 企業は正直、DNAにはあまり興味ないというところが多い状況です。以前より、血液からバイオマーカー探索・創薬ターゲットの探索というのが多く、例えば、がんなどを対象とした利用が非常に多かった状況です。血清の場合は、大体100検体ぐらいとかで解析されるパターンが多かったので、現在、そこの部分をデータパッケージの様な形でデータ利活用のほうにシフトしていければと考えております。かなり興味を持っていただいている企業も複数あるのでは、一番右側のデータ利用の部分が今後は増えていくのではないかなと期待しております。
【中釜主査】 分かりました。
2番目の質問は、追跡調査というか、医療機関との協力についてです。これは非常にすばらしいと思うのですが、一方で医療機関側の負担感というのはどうなのでしょうか。自動的にやられているのか。その辺はいかがですか。
【松田教授】 その辺り、私も心配していたのですが、実は電子カルテからデータを切り出してお渡しするだけだと負担はかなり少なくて、初年度はやり取りに手間取った部分も結構あったんですけど、2年目からはかなりスムーズに実施できていて、そんなに負担はなくて、本当に少額の予算配分で御対応いただいているという状況です。
【中釜主査】 なるほど。関連した質問で、双方向性のプロジェクトの話をされていましたが、参加者からの同意を得ているというお話で、その中で、いろんなアプリを使った情報収集もすばらしいと思いました。一方で、情報を集めるときには、集めるデータの解析目的みたいなものもある程度関係するのかなと思うのですが、その辺りはどういうふうなバランスを取られているのでしょうか。例えば、集めてもなかなか使えない情報というのも、恐らく研究によってはあるかと思います。その辺りはどのように説明するのですか。
【松田教授】 まず、健康調査に関しては、一般的な病気の、どういう病気にかかっていますとか、血圧とか、生活習慣という情報を集めております。Fitbitの場合は、今、立ち上げ中なんですけども、Fitbitは基本的にほぼ全部のデータがサーバのほうに送られてくる形になりますので、例えば、歩数とか、心拍数、睡眠時間みたいな情報は全部使わせていただくというふうな、ちょっと広めの同意をさせていただく予定です。実際にそれをどういうふうに解析するかというところはデータが収集されてからの検討にはなりますが、ある意味、かなり大きなデータが利用できる形にはなるのかなと思います。Fitbitに関しては、我々のほうで取捨選択するというよりは、自動的に取れるデータを集めさせていただくというところになります。我々としては、第一に生存調査ができればというところがありますので、将来的にマイナポータルと連携して、その方が存命されているかどうかというところと、亡くなられていた場合は死因の情報までひもづけられればというところを考えております。
【中釜主査】 分かりました。ありがとうございます。
ほかに御質問ございますか。
荻島先生、お願いします。
【荻島教授】 すみません、ちょっとだけ発言の機会をいただければと思いまして、手を挙げさせていただきました。
先ほど製薬協の高橋委員のほうから御質問ありましたけども、国内のバイオバンクをつないだ形で一つに使いたいとおっしゃっていただいて、今、高橋委員が入っていらっしゃる製薬協の研究開発委員会で御相談しているところですが、我々のAMEDのゲノム研究プラットフォーム利活用システムのプロジェクトも、まさにそこの部分を目指しているかなと思っております。このプロジェクトも6年ほどやっておりまして、各バイオバンク、かなりお互い顔が見える関係になって、本当の意味の連携が今進んでおります。本当に、松田先生、バイオバンク・ジャパンをはじめとして進んでおりますので、今後も、ぜひ製薬協さんからそういった御意見いただきながら進められればなと思ってございます。
また、二宮委員から臨床情報についてございましたけども、AMEDのゲノム研究プラットフォーム利活用システムのほうでも、できるだけ臨床情報を共通化した形で、それぞれのバイオバンクを共通化して、普通に持てるようにしようということを今進めていますので、その上で、どうやって処方と病名を組み合わせて病型分類するのかとか、どこまでケースレポートフォームに近いものにするのかというところはもちろん検討をしなくてはいけない部分かなと思いますが、少なくとも、そういった基盤を共有化するというところに今取り組んでいるところでございます。松田先生と一緒に取り組んでございますので、引き続き、よろしくお願いいたします。
【中釜主査】 ありがとうございました。
ほかに、委員の先生方から、御発言ございますでしょうか。
高橋委員。
【高橋委員】 荻島先生、いつもお世話になっております。ありがとうございます。追加でコメントさせていただきます。
バイオバンク横断検索システム、大変有用だと考えております。利用者目線で修正が重ねられており、利用者としても大変ありがたく思っております。申請手続も、一括利用申請システムを導入するなど、ユーザーフレンドリーに整備されて、大変有益です。ただし、利用許可の判断が各バイオバンクで実施されておりまして、各バイオバンクでの審査の基準が違うと、こちらとしても困ることがございますので、できれば審査基準を統一化していただくとより使いやすくなるというふうに考えております。
また、バイオバンク・ジャパン様も、東北メディカル・メガバンク様も、英語版のWebページがありまして、関連情報も、英語と日本語、両方で紹介されて、これも大変有用と感じております。ただ、バイオバンク検索システムは、一部英語になっているんですけど、一部日本語になっていて、あそこも英語版ができるとより広範囲に周知されると思いますので、できたら、よろしくお願いいたします。
【荻島教授】 御指摘、ありがとうございました。今おっしゃっていただいたこと、ぜひ改善していきたいと思います。英語の部分は、国外へのという話は、日本国内の英語というのもありますけども、そういうところとセットで取り組んでいきたいと思ってございます。大変貴重な御意見、ありがとうございました。
【高橋委員】 ありがとうございました。
【中釜主査】 ありがとうございます。
ほかに御意見ございますか。
よろしいでしょうか。ありがとうございます。
では、続きまして、議題(3)その他に移りますが、本日予定しておりました議事は以上となります。本日御発言いただいていない委員の先生方から、全体を通して一言いただければと思いますが、よろしいでしょうか。
名簿順で恐縮ですけど、慶應の小崎先生、何か一言ございますか。
お声が通じないかな。
癌研究所の斉藤先生、何か御発言ございますでしょうか。
【斉藤委員】 ありがとうございます。全体を通して、大変よく勉強をさせていただきました。特に最後の先生のバイオバンク・ジャパンとToMMoとの連携で、より大きな組織のデータも充実させるというような取組はとてもいいなと思いました。大変印象的でした。
あと、最後に少し気になったのは、ゲノムの情報は充実していて、恐らくマルチオミックスのほうにも発展はしそうだけれども、RNAの情報がなかなか集められないというところが少し気になりました。ゲノムの配列だけでは分からないことが一気に分かるようなこともあるかと思うので、いろんなサンプルの調整の仕方、どの細胞を見たらいいのかとか、いろんな問題があるかと思いますが、RNAの配列、トランスクリプトームとの連携というのも取組を始められたらありがたいなと、少し思いました。
以上です。
【中釜主査】 ありがとうございました。
続きまして、慶應大学の武林委員、いらっしゃいますでしょうか。
【武林委員】 本日はありがとうございました。全体としては非常によく、私も勉強になりました。私のほうはどちらかというとコホートをやっている側ですけども、今日の話で、疾患側のコホート・バイオバンクと地域の健康の人を扱ったコホートをつなげていくということは、これからも大事だと思います。前にも少しお話ししたかもしれませんが、我々のようなそんなに大きくないコホートをうまく使っていただくためにも、途中まで実は荻島先生ともやってきたんですけども、我々のデータを使っていただくためにはデータベース側の設計にうまく収まるようにデータを出さなければいけませんので、そういった標準的なデータベースを我々のような小さなコホートでも使いやすく・出しやすくなるような取組を進めていただけると、日本の場合、比較的小さなコホートはまだまだ多くあると思いますので、それを束ねていくためにも、データベースの標準化みたいなことも含めて大きな枠組みで考えていただけると非常にデータが集まりやすくなるのかというふうに思っております。
以上です。
【中釜主査】 ありがとうございます。
重要な指摘ですが、荻島先生、何かコメントございますか。
【荻島教授】 武林先生、御指摘ありがとうございます。まさに武林先生の鶴岡のコホートのデータのほうは、私どものデータベースと一緒にやるというところは、今、途中まで進んでいて、まだ最後まで終わってないので進めたいと思っておりますけど、そういった部分に関して、コーディングであるとか、あるいは項目の部分、生活習慣であるとか、そういったところのデータのインターオペラビリティも含めて取り組んでいく必要があるかなと思います。実際、以前、PRISMの予算を頂いてコホート連携というのを寶澤先生がリーダーで進めたことがございまして、各コホートの拠点のデータカタログを集めて来て並べていくという作業を途中までしてございます。予算が終わってしまったので途中で止まっている部分はあるんですけども、継続して取り組んでいきたいなと思いますので、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
【中釜主査】 よろしいでしょうか。
今の点は非常に重要だと思いますので、荻島先生、よろしくお願いいたします。
慶應大学の小崎先生、お願いいたします。
【小崎委員】 ちょっと体調が悪くて、申し訳ありませんでした。
今日、海外のバイオバンクのレビューをたくさん拝聴しましたが、実はマギル大学で海外のバイオバンクに直接関わっている日本人の若手の研究者と会う機会がこの間の日韓合同の人類遺伝学会であったのですが、海外で実際に向こうのデータベースを使っている人から直接の情報を得るようなことがないと、ウェブサイトから調べているだけではなかなか実態が分からないというようなことがあるので、少しそういう手段も用いて、本当の中身がどうなっているかということも調べるといいのかなと感じました。フォーカスが少しずれていたら申し訳ありませんが、発言させていただきました。
以上です。
【中釜主査】 ありがとうございます。
今の点について、辻先生、何か御発言ございますか。
【辻フェロー】 我々もいろんな分野のいろんな調査をしておりまして、バイオバンクにつきましてはそんなに深い調査はまだやってなかったというところもありまして、今回はホームページだけになってしまったんですけれども、今後また、海外のエコシステム調査とかをしたいなと思っておりますので、そのときに集められる情報があれば、ちょっと見ていきたいなと思いました。ありがとうございます。
【小崎委員】 よろしくお願いします。
【中釜主査】 ありがとうございます。
【荻島教授】 中釜先生、一言だけ。
小崎先生にマギル大の先生を御紹介いただきましたので、来週お会いしますので、いろいろとお話を伺いたいと思います。ありがとうございます。
【中釜主査】 ありがとうございます。
以上ですが、ほかに追加で御発言ございますでしょうか、委員の先生方。
よろしいでしょうか。
最後に私からも一言ですが、今日、二つの大きな日本のバイオバンクの話をお伺いして、私も非常に参考になりました。それから、海外への取組ももう少し進化できるとよろしいかなというふうに思いました。
一方で、課題としては、情報の発信の仕方であるとか、利活用をより使いやすくする、その情報収集の在り方などで、日本国内にある、トータルで60万以上になるようなバイオバンクのネットワークをよりうまく利活用できるような仕組みというものをさらにつくっていけると、データ基盤としての、あるいはリソースとしての基盤がより有用に活用されて、日本としても大きな成果を発信できるのではないかと思いました。グローバルに認知してもらうということも非常に重要で、そういった意味では英語面での共有は重要です。
一方で、ゲノム情報を含めた、昨今問題になっている安全保障上の問題をどのように意識しながら、利活用進めていくかというところもまた大きな問題かなと思った次第です。引き続き、日本におけるバイオバンクの連携、さらに、それを通した日本の科学、バイオサイエンスの推進にぜひ御貢献いただければと、改めて思いました。
私からは、以上です。
では、事務局から連絡事項等ありましたら、お願いいたします。
【小野ゲノム研究企画調整官】 本日は、プレゼンターの皆様に大変示唆に富む御説明をいただいて、また、委員の方々も大変有益な御議論、本当にありがとうございました。
本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成して、委員の皆様にお諮りして、主査の御確認を得た後に、弊社のホームページで公開いたします。
次回の作業部会は、年が明けた令和7年2月3日の月曜日、14時~16時を予定しております。次回は、バイオバンクの利用者側として、民間企業の視点から見たバイオバンクの利活用について、また、今後のゲノム研究の在り方について、個別の研究者の方々に御発表いただいて、御議論いただく予定でございます。
また、第4回の日程調整を始めさせていただいておりますので、そちらも、御協力、よろしくお願いいたします。
以上です。
【中釜主査】 それでは、本日の次世代医療実現のための基盤形成に関する作業部会はこれにて閉会させていただきます。どうも、委員の先生方、御協力ありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局ライフサイエンス課