令和6年11月15日(金曜日)14時00分~16時02分
WEB会議
中釜主査、伊藤主査代理、川﨑委員、小崎委員、斉藤委員、櫻井委員、高橋委員、武林委員、玉腰委員、二宮委員、桃沢委員、横野委員
山本東北メディカル・メガバンク機構長、佐々木いわて東北メディカル・メガバンク機構長
塩見研究振興局長、松浦研究振興局審議官、釜井ライフサイエンス課長、小野ゲノム研究企画調整官
【小野ゲノム研究企画調整官】 これより、本作業部会の模様は一般の方にも傍聴いただきます。傍聴の皆様におかれましては、マイクとビデオを常にオフにしていただけていただければと思います。
それでは、中釜主査から一言いただき、進行をお願いしたいと思います。
中釜先生、よろしくお願いいたします。
【中釜主査】 先ほど主査に示されました、中釜です。本日は、冒頭に塩見局長から御説明がありましたけど、文部科学省を中心に進められている東北メディカル・メガバンク等を中心とした検体及び情報のバンキング事業、さらに、それをいかに科学の発展に役立てるかという利活用の問題、その辺りを十分に議論しながらこの事業進めてきたわけですけど、この事業があと1年を残す段階を迎えた段階で、今後、どういうふうにして進めていくか、進めていけるかということを、現状を踏まえながら皆さんと協議できればというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、早速議事に入りたいと思います。本日は本作業部会の第1回となりますので、作業部会の設置について、事務局から説明をお願いいたします。
【小野ゲノム研究企画調整官】 それでは、資料1を御覧ください。令和3年度より開始いたしましたゲノム医療実現バイオバンク活用プログラム(B-cure)は、来年度で5年目と、一旦の区切りを迎えます。次期の事業を見据えて、ゲノム医療分野に関する研究開発の推進方策について調査・審議するため、ライフサイエンス委員会の下に本作業部会を設置いたしました。本作業部会については、参考資料2のとおり、ライフサイエンス委員会の運営規則に則って運営させていただきたいと考えております。
事務局からの説明は、以上になります。
【中釜主査】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明の内容につきまして、御意見、御質問がありましたら、お願いいたします。御質問ある方は、挙手ボタンを押して、お願いいたします。
よろしいですね、特に私のほうでは気がつきませんが。
それでは、御意見がないようですので、次の議題に移らせていただきます。
次の議題は、議題(2)文部科学省のゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム(B-cure)の取組についてです。この事業について、まず、事務局から説明をお願いいたします。
【小野ゲノム研究企画調整官】 資料2を御覧いただければと思います。
まず、2ページ目をお願いいたします。文科省のゲノムの関係の事業、B-cureですけれども、政府全体の取組の中では、「健康・医療戦略」に基づいて実施をしております。御案内かと思いますけれども、「健康・医療戦略」は六つの統合プロジェクトに基づいて各省が連携する形で進めていますけれども、B-cureは、四つ目のプロジェクト、ゲノム・データ基盤プロジェクトに位置づけられております。
3ページ、お願いいたします。具体的には、ゲノム・データ基盤の整備・利活用を促進して、疾患の発症や予防、診断などに資する研究開発を推進するというプログラムで、病態解明を含めた、ゲノム医療、個別化医療の実現を目指すというふうにしております。
4ページをお願いいたします。現行の「健康・医療戦略」は今年度までということになっておりまして、今、内閣府で次期の戦略の検討が進んでいるところです。
5ページを御覧ください。文科省のゲノムの事業が引き続き、5個目のプロジェクトになりますが、データ利活用・ライフコースプロジェクトという中に位置づけられて、各省が連携しながら進めていくことになっております。
6ページ目を御覧いただければと思います。令和5年にゲノム基本法が成立したところでございまして、こちらの中には、ゲノム医療の研究開発の推進ですとか、得られた情報の蓄積や活用といったことが記載されておりますけれども、当然ながら、文科省の事業もこの基本法に則って事業を進めていくことになっております。
7ページを御覧いただければと思います。これが具体的なB-cureの事業になっております。先ほども御説明ありましたけれども、文科省のゲノムの関係の事業、R3年度から束ねる形でB-cureとして事業を推進しております。事業の中心になるのは、右側のマル1と書いてあるところですけれども、東北メディカル・メガバンク計画、一般住民のバイオバンクと、マル2と書いてありますけれども、東大の医科研にやっていただいているバイオバンク・ジャパンの疾患のバイオバンクと、両者の利活用の促進。また、マル3になりますけれども、GRIFINと呼ばれる、個別のゲノムの変異や、その機能を解明するような研究開発、それを疾患の発症や予防などにつなげていくといったような形になっております。
次、9ページを御覧いただければと思います。こういった形で始まったB-cureの事業ですけれども、いろいろな事業を束ねたということもございまして、今、AMEDにおいてPDや各事業担当のPSに参加いただいてB-cure連絡会というものを定期的に開催しておりまして、それぞれの事業の情報交換ですとか、いかに連携をして相乗効果を出していくかという議論を進めております。具体的には、例えば東北メディカル・メガバンクとバイオバンク・ジャパンでの共同研究をどうやっていくかといった意見交換ですとか、合同シンポジウムの開催といったものを進めながら、事業を進めているといった形になっております。
10ページ以降は、個別の事業と、その成果になっております。本日以降、各研究者の方々から具体に御説明あるかと思いますので、我々からあまり詳細に御説明をするつもりはありませんけれども、御参考に御覧いただければと思っております。
まず、10ページ目は、東北のメディカル・メガバンク、15万人の試料と健康情報を有する、一般住民を対象としたバイオバンクになっております。
11ページ目を御覧ください。先生方の御努力もありまして、企業はもちろん、アカデミアはもちろん、論文でも、いろいろ創薬開発にもデータが使われるようになっておりますし、難病の診断に利用されるとか、がんゲノムの診断にも活用されるようになっている状態でございます。
12ページ目は、バイオバンク・ジャパンです。疾患のバイオバンクで、2003年から情報を蓄積されているものになっております。
13ページを御覧いただければと思いますけれども、こちらも、アカデミアはもちろん、企業の方にもたくさん使っていただいていて、研究成果はたくさん出ておりますし、例えば学会のガイドラインに反映されていたというような成果もございます。
14ページ目は、これらの利活用を促進するという取組になっております。三大バイオバンク、バイオバンク・ジャパン、東北メディカル・メガバンク、ナショセン(ナショナルセンター・バイオバンク:NCBN)のバイオバンクのネットワークを中心として、バイオバンク横断的な試料・情報の検索システムを構築するものになっておりますけれども、15ページを御覧いただければと思いますが、アクセス数もどんどん増えておりますし、利活用も進んでいるといった形になっております。
次は、17ページを御覧いただければと思います。こういったバイオバンクの運営、維持、利活用というものに加えて、個別の研究開発の事業もやっております。大きく分けると、二つです。一つは、GRIFINと呼んでおりますけれども、多因子疾患を対象として、疾患関連遺伝子の機能的な意義づけを行って、それを、診断法ですとか、治療法ですとか、予防といったところにつなげていくという、研究開発の事業。また、ゲノム・オミックス解析と呼んでいますけれども、ゲノム・オミックス解析に係るSOP(標準作業手順書)を確立して、得られた解析データは皆さんで共有できるように公的なデータベースに登録・公開をしていくといった事業がございます。
こちらの主な成果は、21ページを御覧いただければと思うんですけれども、例えば、心不全の患者さんへの治療用のガイドラインに反映されるとか、糖尿病の合併症のリスクに応じた治療法を選択する可能性を示唆したような研究成果というのが出ているような形になっております。
24ページを御覧いただければと思います。こういった事業をやっているんですけれども、今年度で4年目、また、来年度が最終年度ということで、こちらの部会では今後の方向性を御議論いただきたいというふうに思っております。特にバイオバンクについては、どういったバイオバンクを目指すべきか、また、本日も後半で先生方にプレゼンいただけると思いますけれども、データシェアや利活用といったものもかなり進んでいるのではないかと思っておりますが、それをさらに一層進めていくには、また、創薬などにどうつなげていくかといった御議論をいただければというふうに思っております。また、バイオバンクのデータなどを活用して、個別の研究をどう進めていくか、それを医療にどうつなげていくかといった御議論も、していただければと考えております。
25ページは今後の部会のイメージですけれども、半年程度をかけて、4回程度で報告書にまとめさせていただいて、その結果は、我々の予算要求などの政策に反映させていきたいと考えております。
事務局からの説明は、以上でございます。
【中釜主査】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御意見、御質問がありましたら、お願いいたします。
高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】 製薬協の高橋でございます。御説明、ありがとうございました。質問は2点ございます。
1点目ですけれども、スライド17につきまして、SOPの共有ということが書かれてありました。これは、標準作業手順書(SOP)が事業内の課題で共有されて、ブラッシュアップする。ブラッシュアップされて、それを収束するような動きがあることを意味しているのでしょうか。それとも、標準作業手順書が確立したら、事業内だけではなく、事業間でも共有して、より連携を進めてよりよい手順書を集約していくということを望んでいるんですけど、そのような動きがあるということで理解してよろしいのでしょうか。
【中釜主査】 今の質問に対して、事務局、いかがでしょうか。
【小野ゲノム研究企画調整官】 ありがとうございます。17ページのSOPのところですけれども、事業の設計としては、SOPの確立を求めるとしたのは、R5年度からになっておりまして、まだ、具体的な成果が出て、それを共有するといったフェーズまでは進んでいないというのが現状でございます。ただ、今後進める場合に、そういうSOPを確立した場合は共有していくべきとか、そういった御意見はぜひ、御指摘いただければと思っております。
【高橋委員】 ありがとうございます。
2点目なんですけれども、スライド9にB-cureの成果を示していただきました。B-cureでは、2020年以降、各バイオバンクやゲノム基盤統合を運用開始されて、相乗効果発揮に向けて意見交換などされているということでございますけれども、この連携によって得られた、知見、成果、改善点、課題等があれば、教えていただきたく存じます。例えば、大規模バイオバンクが持つ試料・情報の取扱いの運用に関するノウハウをほかのバイオバンクに伝えるとか、試料の取扱いを統一化するとか、あと、運用の効率化、品質確保に関する連携など、そのようなこともなされているのか、御教示いただければと思います。
【中釜主査】 今の御質問に対して、お願いします。
【小野ゲノム研究企画調整官】 ありがとうございます。B-cureとして取りまとめてR3年から意見交換を始めて、共同研究をしようといった話が出てきたくらいのところで、具体的にこういった成果にはまだ至っておりません。ですので、こちらも、もっと相乗効果を出していくべきだ、もっと具体的に連携をしていくべきだという御指摘はぜひ、いただければというふうに思っております。
御指摘の中のバイオバンク間での運営のノウハウですとか、そういったものに関しては、14ページで少し御説明を差し上げましたが、利活用のシステム、バイオバンク横断的な試料・情報の利活用の検索システムの構築というのを進めておりまして、BBJと東北メディカル・メガバンクとナショセンのネットワークを中心に、大学のバイオバンクにも入っていただいて意見交換をしながらというところはあり、こちらで今まさに進めているところというふうに認識しております。こちらは第2回で実施者である東北大の荻島先生からプレゼンいただけると思っておりますので、そこでまたお話をお聞きいただいて、さらにとか、そういった御意見もぜひいただければと思います。
【釜井ライフサイエンス課長】 補足いたします。ライフサイエンス課長の釜井です。本日は、高橋先生含め、委員の皆様、本当にありがとうございます。
1点目のSOPのところにつきましては、我々のほうでやり始めたというのが現状でございますけれども、今回の作業部会のほうの目的にもありますとおり、バンク間で連携しながらオールジャパンで、内閣府や厚労省と連携しながらやっていますので、ぜひそういった建設的なところにつなげていきたいというのが、1点目でございます。
それから、2点目の、つなげた上での効果がどれぐらい上がっているのかということですが、まさにそこが今回の作業部会で意見交換していただくところの趣旨だと思います。今日につきましても、この後、山本先生、佐々木先生からそれぞれ御発表のほうがあるとは思うんですけれども、例えば、データの使い勝手のよさとか、そういったものは改善のほうはされつつある中で、中途の段階ではございますので、ぜひそういう段階の中で建設的な意見を賜ればと思います。
以上でございます。
【高橋委員】 ありがとうございます。
【中釜主査】 ありがとうございます。今の回答でよろしいでしょうか。
一言、私からも追加で発言すると、恐らく、検体のやり取りというよりは、各バンクを使った研究事業の中で、例えば疾患と関連するバリアントアレルの頻度など、を東北メディカル・メガバンクのデータベースで検索する、あるいは逆もあるかと思いますが、そういう形の個々の研究ベースの連携というのは着実に進んでいるのではないかなと私自身も感じて、具体的な数や事例というのは共有できる枠組みと思いました。よろしくお願いします。
ほかに、何か御質問ございますでしょうか。
よろしいですかね。特に手が挙がっていないようですので、続きまして、次の議題(3)に移ります。
議題(3)は、東北メディカル・メガバンク計画の今までの取組と今後の方向性についてであります。B-cureの中で実施している東北メディカル・メガバンク計画のこれまでの取組や今後の方向性として検討している内容を、東北メディカル・メガバンク機構の山本機構長、いわて東北メディカル・メガバンク機構の佐々木機構長より御説明いただきたいと思います。両方のお話をお伺いした後で、合わせて質疑応答を受けたいと思います。
では、最初に、山本機構長、お願いできますでしょうか。
【山本機構長】 このような機会をいただいて、ありがとうございます。今から共有をさせていただきます。資料、見えておりますでしょうか。
【中釜主査】 見えていますが、スライドショーになってないですね。大丈夫です。
【山本機構長】 ありがとうございます。それでは、今からお時間いただいて、私ども東北メディカル・メガバンク機構の今までの取組と今後の方向性について、御説明をさせていただきます。よろしくお願いします。
大体、ここにあるような内容で、私どもの概要・目的・実施体制、それから、第3段階の取組や成果の概要とその小括、さらに、今後への主な課題、さらに10年先を見据えた今後の方向性、最後に、今後5年間における取組の概要について、御説明をさせていただきます。
計画の概要として、東日本大震災からの復興を目的に始めたということ、これが出発点になります。遺伝的な背景、いわゆる体質、と生活習慣が健康上の問題を引き起こすメカニズムを解明するために、一般住民に対して縦断的な、これは追跡を実施するという意味ですが、そのようなコホート調査を実施する、また、15万人の試料・情報を提供する複合バイオバンクをつくるということを目的にしています。さらに、ゲノム情報等を活用した大規模統合解析を行い、これによって創薬標的の探索などの促進に貢献したいと思っています。ここにございますように、複合バイオバンクの情報を活用した大規模統合解析に向かってコホートやバイオバンクを整備するということで、この出発に当たって、私どもが心に描いていたというか、目標にしていたことを簡単に申し上げると、複合バイオバンクという形で、非常に価値の高い、1人の参加者について非常に厚みのあるデータを持ったバイオバンクを作ろうということに心を砕きました。一つは、追跡をやる、縦に追いかけていくということを重要視してきました。さらにもう一つは、自分たちがインハウスで大きなゲノム・マルチオミックス解析をやるということも重要視してきました。先ほどSOPの話もありましたけども、しっかりとしたSOPで粒度のそろったデータを提供していくことが大切だろうと考えて、大規模統合解析を実施してきました。これが創薬で働かれる方たちに役に立つことになるだろうということを考えて事業を始めたという、いきさつがあります。
今、第3段階の最後の4年目をやっていて、来年が最終年度になるのですけども、実際には、第1段階では、コホートをつくるということに注力いたしました。地域住民と三世代、二つのコホートをつくり上げたということが、第1段階の成果です。第2段階では、先ほど申し上げましたようなバイオバンクをきちっとつくり上げるということ、特に複合バイオバンクで、生体試料、ゲノム、健康調査情報等の網羅的な基盤をつくるということに注力してまいりました。第3段階では、複合バイバンクの基盤を皆さんに使っていただく上で、どうやったら使いやすいものになるかというところに注力してきました。
実施体制ですけれども、私どもと岩手医科大学が密接に協力して、二つの大学によってメディカル・メガバンク機構を運営してきました。
第3段階の取組や成果の概要について今から御説明をさしあげたいのですけども、まず、コホート調査について、それから複合バイオバンクの整備・発展について、さらに、成果創出のために、バイオバンクというものができたら、これを使ってこんなにいい成果が出たのだということの実証につながるような、そういう試料・情報の利活用促進に心を砕いてきたということがあります。それから、その他のところで、遺伝情報の回付に取り組んでまいりましたので、それについても簡単に御説明をいたします。
まず、コホート調査ですけれども、地域住民コホート調査という、一般住民の方たちのコホートをつくり上げたわけですが、一番大切なところは、縦断的な、繰り返しフォローアップをする調査を行ってきたことになります。それから、遺伝子を決めておりますので、遺伝的なリスクをまとめてきたのですけども、これについて、こんなことをやったら良いのではということが見えてきましたので、それを少しだけお話しします。
追跡をしていますので、追跡数の目標を立てているのですけども、目標の達成率は順調です。これは次の三世代コホートでも同じことになります。ところで、遺伝的リスク(ポリジェニックリスクスコア:PRS)と生活習慣を組み合わせると、普通のGWASで決めるポリジェニックリスクスコアよりも非常に良いものができるということを私たちの機構の中で実証してまいりました。資料を見ていただきますと、遺伝的なリスクが非常に高い人の中でも、ライフスタイルの方で十分に気をつけていると、PRS(遺伝的なリスク)の低い人と変わらないような生活ができる。明らかに、生活習慣に対して介入していくことの重要性がこのPRSのデータから見えてくると思います。それから、公的情報を非常に一生懸命取っています。これをリンケージと呼んでいるのですけれども、公的情報を取ることによって私たちの参加者の情報に厚みが出てきます。
それから、三世代コホート調査ですけれども、これは、皆さん御存じだと思いますが、世界初の大規模出生三世代ゲノムコホートを構築いたしました。多くの表現型の解析に対して、家系情報が使える。特に、トリオの情報が使えるということが遺伝継承性の活用につながるので、このトリオをつくることが大切だと考えています。これも、先ほどのように、追跡調査については順調に進んでいるといます。それから、公的情報、リンケージのデータも取っています。さらにここでは、母親世代や父親世代というのは、スマホ等のSNSに卓越した人たちですので、アプリを利用して、スマホを利用して双方向性の情報交換をしているということで、ここにありますように、対象になる人の中では、63%ぐらい、8,900人、9,000人近い人たちに私どものアプリに参加していただいている、スマホで双方向に事業をしていることになります。それから、トリオ解析の律速段階を乗り越えるというような意味で、少し足りないピースのところ、例えば父親が足りないので、そういうところを埋めるような努力をしています。
コホート調査で、MRI調査を一生懸命やっております。これは1日余計に来ていただかなければいけないのでボランティアベースでやっているのですけれども、大体、1回目で1万2,000人、2回目、3回目は、それぞれの6割から7割ぐらいの人たちに参加していただいているのですが、これは世界有数のライフコースのMRIデータが取れているということになります。このMRI調査の目標として私たちが考えているのは、認知症や精神疾患への早期介入、超早期介入が行えるようなデータが取れないかということで、認知機能検査、心理機能検査とも併せて、実施しております。
データのお話をさせていただくと、私どもはゲノムを決めておりますので、APOE4のホモの方、APOE4のヘテロの方は分かるんですけども、これと認知機能検査のスコアの低下を併せてプロットすると、APOE4のホモの方は年齢が行くと明らかに認知機能低下が厳しくなってくる。それから、脳の海馬の体積についても、この緑の線ですが、APOE4のホモの方で減少が厳しく見えます。このようなことで、私どもはこの研究が将来の認知症研究に大きく貢献できるだろうと考えています。後ほど、第4段階でこんなことをやりたいということをお話しさせていただきます。
それから、私どもは、様々な企業・アカデミアの方と連携して、アドオン調査を実施しています。アドオンというのは、私たちが最初に始めたレセピには入ってなかったものですけれども、これがあると利用者の方々の研究に非常に役立つというものを、企業もしくは学術界の方たちに御提案いただいて、できる範囲で対応しているものです。ここで御覧いただけますように、産学連携で9件、学術界との連携の方では8件のアドオン調査をやっています。少し御紹介すると、例えば住友ファーマさんとは覚醒時脳波の検査を一緒にやりました。豊田中研とは、嗅覚の検査で、匂いが分からなくなるとアクセルとブレーキの踏み間違いが起きるのではないのかという仮説の検証に資するデータをとりました。オムロンさんとは、ナトカリ比の測定を実施しました。その他、たくさんのアドオン調査をやってきました。
バイオバンクのことについて、少し申し上げます。私どもは、15万人の参加者の方々から、1回来ると大体15本の試料が提供していただけます。そうすると、15万人が1回来ると200万本、2回目来ていただくと400万本ということで、大きなバイオバンクをつくりあげることができました。そして、それらからDNAを抽出したり、不死化細胞を作ったりしているのですけれども、特に、私どもの機構内で大規模解析をすることで粒度のそろった高品質なゲノム・オミックスデータを作出しています。ここが、冒頭申し上げましたように、私どもが厚みのあるバイオバンクをつくっているというところにつながっています。今は、延べ31万9,000人分、460万本の保冷・保管をしていて、非常に充実したバイオバンクをつくり上げたと考えています。新たにISO20387というバイオバンク用のISOができたのですが、私どもが我が国で最初にこの認定資格をいただきました。
統合データベースがやっぱり必要です。私どものデータベースには何が入っているのだろうかということで、統合データベースを利用して、入っているものの内容を確かめて、それに基づいて研究計画を立てるという流れになっていると思います。私どもは、複合バイオバンクの生命線に当たるところが統合データベースだと考えています。この統合データベースの中に、オミックスの情報も、ベースラインでいろんな調査をしたリアルワールドの情報も、入っています。この統合データベースには、私どもは宮城県内で12万人追いかけているのですが、その中で東北大学病院にかかった方については名寄せをさせていただくことで、その結果も入っています。これは後ほど申し上げます。
さらに、試料と情報の利活用を促進しなければいけないことに取り組んできました。バイオバンクの価値を認識していただいて、みんなに使ってもらうためにはどんなことが必要かと考えて、第3段階に入ってから、バイオバンク利活用・産学連携推進センターを設置しました。分譲・共同研究のサポートを拡大したのです。これに至ったいきさつを簡単にお話しすると、企業ではアカデミアと異なるニーズや慣習があって、契約に至るときに、企業の方から見て、大学の制度、アカデミアの制度が障害になるようなことがあるのではないかと気付きました。例えば、私どもは研究計画書を作ります。科研費等で生きている私たちにとっては研究計画書を書くのは当たり前のことですが、企業の方はどちらかというとビジネスペーパーを書く方に優れておられるので、研究計画書を作ることには慣れていません。こういうことをしっかりと支援するのがこのセンターの仕事です。企業向け窓口をつくることによって大きな利用の促進につながっているということを申し上げたいと思います。
複合バイオバンクをつくって、みんなにデータを使ってもらっているということに関連して、一つ申し上げます。私どもがバイオバンクを始めた頃、こういう分譲とか共同研究利用でバイオバンクを使うことに必須の、試料・情報分譲審査委員会、いわゆるデータアクセスコミッティィーというものの文化はありませんでした。私どもは、2015年からDAC(データアクセスコミッティー)をつくって、今日、主査をしていただいている中釜先生に10年にわたってこの委員会の委員長を務めていただきました。改めてお礼を申し上げます。私どもは試料や情報の利用について心を砕いていました。利用件数に関して、資料にいろいろ書いてあります。これを見ていただくと、私どものバイオバンクを使って書かれた論文は1,600本以上になります。これは、届けてくれる人もいますが、届けないでひっそりとマテメソなんかに書いてあることはよくありますので、グーグルのテクノロジーを使って私ども自身が探し出してきたものです。
利活用促進ということで、多層オミックス解析を実施してきました。多層オミックスでゲノムを決めてきましたが、本年度、ウエットではもう10万人が終わりになって、今、計算処理をして、リファレンスパネルをつくるというところに一生懸命取り組んでいます。さらに、メタボロームやトランスクリプトームやメチロームに取り組んでいます。メチロームについては岩手医大からお話があると思います。こういうデータを一生懸命取っているということで、私どもは厚みのあるバイオバンクになっていると申し上げています。そのポイントがここにあります。
さて、私どもは全ゲノムリファレンスパネルをつくっているのですが、これはどんな形で活用されているのかをご説明します。一つは、未診断疾患イニシアチブで、対象となる疾患の原因遺伝子を絞り込む際に、一般住民に高頻度に存在するバリアントを除外する形で、疾患の原因遺伝子のキャンディデートを絞り込むということに大きく役だっています。それから、国立がん研究センターのC-CATにおいて、がんパネル検査のデータを全て統合していますが、そこでも、生殖細胞系列のバリアントが見つかります。このバリアントが実際に見つかったときに、それがどんな頻度で存在するかということについて、C-CATからの報告書は、全て私どもの一般住民リファレンスパネルの頻度をつけて報告書を作っています。さらに、臨床検査企業等が結果レポートに私たちのデータをたくさん使っていますが、10件以上、これらの企業が私たちのデータを利用することに商用利用許諾を与えています。
私どもは、B-cure事業を通じて、大規模なデータを使えるスパコンの運用を支援していただいています。これは本事業に対して大きな力になっています。このスパコンを使って私どものデータを見て頂くのに際して、最初は、一般住民の方のデータですので、非常にセキュリティーを気にして取り組んできました。即ち、特定のVPN回線で、しかも私どもが提供した端末でデータを見ていただいていました。私たちを訪問する形でつながるという意味で、「データビジティング」と呼ぶ形で見ていただいたのですけれども、この4月から、インターネット経由でも、利用者の端末からでもオーケーとしました。また、そのような形で、Unit Bが使えるように、使い勝手を向上させてまいりました。
もう一つ、私どもが一生懸命取り組んできたのは、遺伝情報の回付事業です。全ゲノムを決めていくと、全ゲノム解析の中では、単一の変異で大きな遺伝的リスクのあるものが見つかってくることがあります。こういう方たちに対して、私たちは遺伝的リスクの情報をお伝えしていこうと決めました。将来、そういうことが普通の医療として一般の社会に広まっていく、そのパイロット研究を私たちがやろうと決めた次第です。私たちが、2013年にこの事業の倫理申請をしたときに、最初から遺伝情報を回付することがありますということを倫理委員会に認めていただいています。そこで、最初の頃は、家族性高コレステロール血症、ファーマコゲノミクス、さらに、令和2年からは、遺伝性の乳がん卵巣がん症候群(HBOC)を回付し始めました。5万人の全ゲノム解析が終わったところで、HBOCとリンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん)の病的バリアントが230人ほど見つかりました。そこで、慎重に、健康に関する遺伝子のリスクをお知りになりたいですかというアンケートを差し上げたところ、112人の方が研究に参加されましたので、この方たちに遺伝情報を回付しました。私たちは、我が国において前例のない挑戦的な実証研究、個別化ゲノム先制医療の社会実装を大きく加速する研究を実施したと考えています。
東北大学病院と密接に連携して、精密検査を受けていただいています。HBOCとリンチ症候群で、合わせて71人が東北大学病院を、また、7人が他医療機関で早期の検診を受け始めました。HBOCでは、6人の方がアンジェリーナ・ジョリーさんと同じようにリスク低減手術を受けられ、3人はこのサーベランスのときに早期がんが見つかりました。
その後、一般住民の全ゲノム解析を10万人分やろうということになったのですけれども、なかなか予算的に難しいところがありました。そこで、ここにありますような製薬企業5社と協力して、私どもを入れて6者でコンソーシアムをつくって、公的資金も頂いて10万人の解析を完了しました。多くの成果がすでに出ています。参画企業からは、このコンソーシアムに参加できたことは非常によかった、ゲノム解析はゴールでなく通過点だ、人類共通の知見であるのでもっと頑張れ、ということを言われながら、進めています。
プレリサーチについて少し御説明しようと思います。研究計画を立案する段階で、私どもの統合データベースを閲覧できれば非常に良いのですが、私たちにしてみると、まだ研究計画もない方に統合データベースを開くというのはなかなか制度的に大変でした。しかし、もうそういうことを言っている時代ではないと考えて、統合データベースdbTMMを研究計画の立案段階から自室のパソコンで見ていただけるように、プレリサーチ制度をつくりました。これは人気が高くて、どんどんと申請・応募が来ています。
さらに、企業の方で、普通にメガバンクを利用したいのだが、先ほど申し上げたような事情もあり、メガバンクはなかなかハードル高いということを言われた方々もおられましたので、統合データベース利用支援事業者登録制度をつくりました。この支援事業者の方たちは私どものデータベースのことをよく知っているので、利用者の方と支援委託契約を結んで、利用者の方々が私どもを利用するときに大きな支援をするという制度です。これは去年の4月からですが、大きな可能性を感じさせるのです。すでに、タカラバイオとスタージェンがそれぞれ支援事業者として登録され、さらに2社が登録準備中です。この支援事業者登録制度を使って、私たちの利活用がさらに進むだろうと考えています。
論文の成果に関してですが、プレスリリースは56件、当機構の試料や情報を利用した約1,600件の論文のほかに、私どもが書いた論文がおおよそ635件でした。当機構から、特許も6件出しています。バイオバンクというのはこんなに役に立つものだということを皆さんに分かってもらえるような、そんな研究を私どももやろうと考えています。
それから、バイオバンク事業を実施・推進していくためには、専門性のあるスタッフがかなり必要です。私どもは、ここにあるような方たちを育てながら、バイオバンクをやっています。育てていくと、うれしいことに、広島の放影研のバイオサンプル研究センター長、京都女子大のデータサイエンス学部の教授、これは新しい学部設立の教授です。また、国がん、成育、JSTなどにも私どもの人材がリクルートをされて行きました。喜ぶべきことだと思うのですが、機構長としてはつらい部分もあるということを申し上げたいと思います。
外部資金についてです。これは累計ですけれども、大体、100件を超える共同研究をやっています。金額にしてみると35億円ほどの外部資金を獲得しながら、共同研究や受託研究を実施していることになります。
私どもがバイオバンクをつくることで蓄積してきた、いろんなノウハウが注目されています。もちろんバイオバンク・ジャパンと密接にやっていますが、それに加えて、ここにありますような多くの研究所としっかりとした共同研究を進めていたり、御支援をさしあげたりしています。
第3段階の成果の小括と今後への主な課題を申し上げます。コホート調査では、ニーズの高い縦断的な追跡をする調査、また、家系情報、リンケージの情報も取れています。さらに、アドオン調査をやりたいとか、こういうデータがあると助かるんだけどな、というようなお話に対応できる体制を整備してきたと思います。それから、複雑化するデータをより使いやすく整備していく必要があるということで、利活用の促進。さらには、全国のモデルになるような研究を進めていくということに注力をしてきています。
10年後を見据えた今後の方向性について、少しだけ申し上げたいと思います。私どもは、世界で存在感を発揮する、アジア随一の情報を有するバイオバンクであると自負をしています。公共性と厚みのある複合バイオバンクを構築し、それを運用していくことが、私たちの目指す方向性ではないかと考えます。先ほども申し上げましたように、私たちはパブリックでありたいと思っています。どこかの企業の傘下に入るということはしない。また、厚みのあるデータを提供できるバイオバンクになりたいと思っています。
そこで、次の10年間で何をやりたいかということですけれども、一つは、ゲノムコホート・バイオバンクを発展させ、持続性と発展性を備えたコホート・バイオバンクに進化していきたいと考えています。もう一つの方向性ですけれども、利活用の拡大や先導的なモデル研究で、バイオバンクはこんなに役立つもんなんだと、これはいいものなんだということを皆さんに分かってもらえるような、そういうバイオバンクの活動を展開していきたいと思っています。
具体的には、細かくなりますけども、効率的かつ発展的なコホート・バイオバンクの運用体制を確立していこうと考えています。また、新たなニーズに対応する調査をやろうと考えています。後ほど申し上げますが、調査の谷間みたいなところを埋めていくことができればとよいと思います。それから、利活用の拡大、先導的モデル研究による成果創出の最大化をやっていきたいと考えています。ここで非常に大切なことは、疾患バイオバンクとの連携だと考えています。私どもは、決して健常人のバイオバンクではありません。一般住民の皆様をリクルートしたので、この方達が10年たち15年たって、病気になってきているわけです。そういう病気になる前に最初から追いかけている人のデータと、病院で患者さんを集めたバイオバンクで出てくるデータと、しっかり連携をしていくことが大切であるというふうに考えています。
今後やりたいことですけれども、バイオバンクの充実とともに、そこから見えてくる利用者のニーズというのは非常に進化していると、ひしひしと感じています。医療情報の充実やアドオン、リコンタクトなど、コホート調査の可能性を広げていくことが大切ではないか。最初は健常対照というところが強かったですが、今はバイオバンクの多様な情報の統合というのが重要になってきていると考えています。医療情報の収集やリンケージについては33ページの辺りで、それから、次のページでコホートの利活用の可能性ということについて、少し申し上げたいと思います。
私どものコホートですが、始めたときは三世代の父母と祖父母の世代がこんな形だったのですが、彼らはだんだん年を取ってきています。生まれた子供が思春期世代になってきています。思春期世代もしっかりと調査しよう、それから、この辺の少し足りないところも増やしていこうということで、新しいコホートの展開を考えていく必要があるだろうと考えています。それから、新しい時代の研究基盤として、バイオバンクへの要望を聞いて、また、私たちのアドオン調査も充実させて、私たちからいろんなものを使っていただこうとを考えています。
MRI調査ですが、今は、レカネマブにしても、PETがゴールデンスタンダードになっているのですが、私たちとしては、特に鉄を測るようなQSMというMRI調査を使って、認知症の早期発見につながるようなデータを取りたいと思っています。さらには、子供、未成年の脳のデータも取ってみたらどうかとも考えています。それから、成人の体幹部のデータも興味深いです。これは、4,000人ほど取ったのですけれども、もうデータも充実させていこうと考えています。私たちの調査は世界的に非常にユニークですので、こういう形で進めていきたいと思っています。
参加者への遺伝情報の回付ということでは、モノジェニックのものを返したお話をしました。ポリジェニックのほうもしっかり返していくような、そういう遺伝情報の回付のパイロット研究をやっていきたいと考えています。
複合バイオバンクですけれども、情報と同時にニーズで、どういう試料が有用なのか、また、どういう試料はもうそろそろいいのかということを、不断に見直しをしながら、第4段階の複合バイオバンクをつくり上げていきたいというふうに考えています。
ところで、非常に大切な点は、メガバンク参加者は宮城県内に12万人ほどおられるのですが、大学病院に毎年かかられる方の中に、その参加者の方々が大体7,000人おられて、この方達の名寄せをしました。この数の名寄せが完了しているので、即ち、12万人の一般住民の中で、7,000人ほど病気になった方のデータを私どもが持っていることになります。来年以降、宮城県内の基幹病院とも同じことをやって名寄せをさせていただいて、数万人レベルの一般住民コホートからどんな病気が出たかということを明らかにしていきたいと考えています。
多様なユーザーの育成、また、バイオバンクにリテラシーの高いユーザーを育成していくことが大切だと考えています。そのようなユーザーをリクルートしていくためには、私ども自身も戦略的な研究開発プロジェクトを持つことが必要だと考えます。それから、全国のバイオバンクデータの横断的な計算や解析基盤として、私たちが貢献していくことも重要ではないかと考えています。
バイオバンクはいろんなところにあるわけですけれども、これらをつなぐハブ機能というのが非常に重要で、ユーザーとバイオバンクをつなぐような機能や、ハブ機能の整備をやっていくことが重要です。そのハブ機能の整備に私どもも貢献していこうということを考えている次第です。
多様なステークホルダーの方との関係を気付くことも重要です。バイオバンクの利用の仕方にも多様性があります。バイオバンクにデータを下さる方たち、また、バイオバンクのデータを使う人たち、多くの方たちと対話や協働を通じて、バイオバンクの文化を日本の中に定着させていきたいと思います。バイオバンクは、役に立つ社会のインフラストラクチャーです。また、先進国にはなくてはならないものなのだということの理解を開拓していきたいと考えています。ベンチャーキャピタルとの交流協定や研究協力も結んで、ベンチャー企業の支援にも取り組んでいます。
まとめです。第3段階のコホート調査・バイオバンク充実の取り組みを通じて、私どもは、複合バンクの試料・情報の充実、また、成果創出のための利活用を一生懸命推進してまいりました。それから、今後を見据えて、今後10年間を見据えた課題の抽出を行い、公共性と厚みのある複合バイオバンクを目指して進んでいこうと考えています。今後5年間にわたるコホート調査の計画等を、コホート・バイオバンク利活用促進の計画を立てて、今、皆さんの意見を伺い、いろんな方の意見を伺いながら、整備をしているというようなところになります。
日頃からの御支援、誠にありがとうございます。私たちも頑張ろうと思っています。どうぞ、引き続き、御支援をよろしくお願いします。
私からの御説明は、以上です。
【中釜主査】 山本機構長、丁寧な御説明、ありがとうございました。
続きまして、いわて東北メディカル・メガバンク機構の佐々木機構長からの説明をお願いいたします。
【佐々木機構長】 ただいま御紹介いただきました、岩手医科大学、いわて東北メディカル・メガバンク機構の佐々木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、早速、スライドのほうを共有させていただきます。
スライドのほう、見えておりますでしょうか。
【中釜主査】 大丈夫です。スライドショーにしてください。
【佐々木機構長】 申し訳ございません。それでは、始めさせていただきます。
【中釜主査】 お願いします。
【佐々木機構長】 それでは、東北メディカル・メガバンク計画における、当機構の今までの取組と今後の方向性について、お話し申し上げたいと思います。
まず、当機構の今までの取組と成果についてです。私ども、今まで、文部科学省様、AMED様、PS・POの先生方、外部会議及びワーキンググループの様々な先生方から、御助言、御指導を賜り、また、東北大学の山本機構長先生ほか、東北大学の先生方と密に、様々な形で連携をさせていただきながら、種々の事業を分担あるいは協働して進めさせていただいております。
まず、地域住民コホート調査についてでございますが、私ども、第1段階、第2段階、第3段階と、3回の詳細調査をさせていただくとともに、多角的な追跡調査を実施させていただきました。詳細調査ですが、一次調査では、県内沿岸を中心とした3万2,000人の住民の皆様の御協力をいただきますとともに、最長で270キロメートルという長距離の検体搬送に関するロジスティックスを確立させていただきました。詳細二次調査では2.4万人、詳細三次調査では、1万人を目標に、現在、順調に調査が進んでいるところでございます。
追跡調査については、詳細な調査票による郵送調査はもちろんのこと、医療・行政情報につきましては、独自の匿名化情報照合システム、いわゆる名寄せシステムを各市町村に個別に導入させていただき、住民基本台帳情報、国保レセプト情報、健診情報、介護保険情報等を一括して取得させていただいています。疾患発症情報につきましては、地域発症登録事業と連携をさせていただき、事業データベースと照合の後、カルテ採録調査を行わせていただき、脳卒中や心疾患の発症について、高い精度での情報取得に努めております。
参加者・自治体への成果還元も様々させていただいております。参加者への健康調査結果の回付はもちろんのこと、地方自治体への結果の報告、そして、岩手県の沿岸にあります二つの地域医療情報ネットワークに健康調査結果を提供するなど、好評をいただいているところです。
また、コホート調査データを用いた研究も行わせていただいております。東日本大震災に伴う健康影響や、岩手県の県民病でもあります循環器疾患のリスクマーカーの検討等をさせていただいているところです。
続きまして、ゲノム・オミックス解析研究ですが、当機構ではエピゲノム(DNAメチル化)解析を主に担当させていただいております。ゲノム、メチローム、トランスクリプトームの3層オミックス参照パネル(iMETHYL)の公開、そして、その拡充を今まで続けてまいりました。当初は血液細胞3種3層でしたが、それを順次拡大させていただき、第3段階では、東北大学の先生方の御理解もいただき、週数別の臍帯血、臍帯血の有核赤血球、さらには腎がんのデータなども追加させていただいております。おかげさまでiMETHYLは、アクセス数については国内外から4万件近いアクセスをいただいており、また、iMETHYLを用いた論文も他施設から多く報告していただいております。このデータにつきましては、随時、東北大学さんのjMorpのほうに登録・統合させていただいております。また、当機構では、マイクロアレイではなく、キャプチャ法による効率的なDNAメチル化の解析法の開発を行わせていただき、それによるEWASも実施させていただいています。また、DNAメチル化多様性による生物学的年齢、エピゲノム年齢推定法の確立、そして、腎細胞がんなどの疾患発症予測マーカーの確立等にも取り組ませていただいており、これらの成果を受け、大学発ベンチャーも設立しております。
この中でエピゲノム年齢推定法でございますが、こちらは、当機構で開発しましたターゲットシークエンシングス法の情報を用いて、スパースモデリングによって、KDDIさんと連携いたしまして、生物学的年齢を高精度に推定する手法を開発させていただきました。さらに、慶應義塾大学の白寿総合研究センターの先生方と連携させていただきまして白寿者の解析をさせていただきましたが、下のグラフにございますように、白寿者のエピゲノム年齢が歴年齢よりも若いこと、そして、白寿者の方々は特徴的なエピゲノム状態にあることを報告させていただいております。
また、ゲノム関係では、私どもは高精度な多因子疾患の発症リスク予測法の研究開発に取り組んでまいりました。当機構独自のポリジェニックモデルを開発し、国内のゲノムコホートの先生方の温かい御協力をいただきながら、脳梗塞の発症リスク予測法の確立を試み、脳梗塞の病型によらず遺伝的リスクを検出できること、そして、高血圧、糖尿病、喫煙といった古典的リスクと同等かつ独立した危険因子であることを報告させていただきました。また、これの発展型として、国際共同研究であるGIGASTROKEに参画させていただき、当機構の八谷が中心となりまして高精度予測モデルを確立させていただいております。また、ポリジェニックモデルの横展開として、そのほかの多因子疾患や中間形質についても様々な試みを行っており、例えば、肥満のリスクスコアの開発、そして、その層別化解析を実施させていただいております。
この中でGIGASTROKEでの取組について少しお話しさせていただきますが、ここでは250万人の多民族の遺伝情報を用いた最大規模の脳梗塞GWASが実施されておりますが、当機構の八谷が中心となりまして、脳梗塞のみならず、血圧、BMI、心房細動などの遺伝的影響も統合した、ポリジェニックリスクスコアでありますiPGSを開発させていただいております。このモデルは臨床的な危険因子とは独立しており、また、これまでの研究に比し、各民族における脳梗塞発症を高精度に予測可能であることを報告させていただいているところです。
遺伝リテラシーと遺伝情報回付についてでございます。私ども、従前より、遺伝リテラシーの啓発活動、そして種々のツールの開発・公開等をさせていただいておりますが、中でも医療者入力型の家系図ソフトウエア「f-tree」は国内外で1万5,000ダウンロードに迫る御利用をいただいており、大変うれしく思っているところです。また、遺伝情報回付パイロット研究につきましては、東北大学の先生方と協働あるいは分担して行わせていただきました。家族性高コレステロール血症の遺伝情報の回付、それから、家族歴と健康情報による発症リスク評価、ステークホルダーの意識調査等を第1・第2段階で行わせていただきましたが、第3段階では、いよいよ多因子疾患の遺伝情報の回付コホート調査を一昨年度より始めさせていただいております。
これは脳梗塞等発症リスク回避の社会実装調査でございまして、県内の事業所の従業員2,000人を対象に、先ほどお話し申し上げましたGIGASTROKEのコンソーシアムを通して開発いたしました、脳梗塞の高精度なリスクを回付し、その後の健康調査、そして行動・意識変容調査を行うというものでございます。昨年度、リクルートを行いまして目標を超える方々に御参加いただき、本年度は既に半数の方々にリスクを回付しております。来年度、残り半数の方にもリスク回付を行い、その後4年間の追跡調査を実施したいと考えております。
試料・情報利活用促進についてでございますが、山本機構長先生の御理解をいただきまして、東北大学さんの産学連携推進センターと連携した活動もさせていただいておりますが、当機構独自のものとして、当機構での詳細調査と追跡調査のデータの非常に分かりやすい解説書を作成させていただき、順次、Web公開させていただいております。また、リアルワールドデータの利活用促進として、私どものレセプト情報の要約統計量の整備を鋭意進めているところです。レセプトデータを用いることでアンケート調査では得られにくい既往歴や服薬情報を正確に把握可能であること、そして、レセプト情報を用いたゲノム解析ではアンケート情報を用いることよりも解析性能は向上することなどを今確認しているところです。
ゲノムコホート連携についてでございます。こちらは、当機構の清水副機構長がお声かけをさせていただき、山本先生、武林先生をはじめ、国内の主要ゲノムコホートの重鎮の先生方の温かい御理解と御協力を賜り、東北メディカル・メガバンク、J-MICC、JPHC、鶴岡メタボロームコホート、愛知県がんセンター病院疫学研究の37万人規模のバーチャルゲノムコホートを構成し、そして、現在、AMED様のスーパーコンピューターに各コホートのデータの集約が終了し、IPDメタ解析が可能となっている状況でございます。今まで様々な会議・部会等を通して準備が進められ、現在、九つの個別課題の実施が進んでいるというふうに伺っております。
そのほかでございますが、国内外の機関との共同研究、複数の企業さんとの産学連携も進めさせていただいておりますし、また、人材育成として、GMRC、認定遺伝カウンセラー、生命情報科学者の育成にも力を入れさせていただいております。
以上のように、私どもは東北大学の先生方と連携させていただきながら、バイオバンクの充実と利活用推進、そして個別化予防につながる一連の研究開発、さらには国内ゲノムコホート連携などの活動を行ってまいりました。ここからは、以上の経緯を踏まえまして、今後の私どもの方向性について、御説明申し上げたいと思います。
まず、地域住民コホート調査ですけれども、従来の追跡調査、データ整備をしっかりと継続させていただき、バイオバンクの充実に努めることはもちろんでございますが、地域住民コホート調査は開始から12年経過して、かなり高齢化しているわけですが、逆に高齢化といった特徴を生かしまして、ベースラインの段階で中年期であった方たちを対象に、新規に、フレイル、サルコペニア調査を実施させていただき、中年期におけるリスク要因等を調査できればというふうに考えております。
続いて、ゲノム・オミックス解析研究ですが、エピゲノム関連では、エピゲノムデータの拡充・整備につきまして、東北大学の先生方の御高配を賜りながら、三世代ヘプタファミリーのDNAメチル化解析、そして、双胎児の臍帯血のDNAメチル化解析等を進め、随時、リファレンスパネルの作成、そして、iMETHYL、JMorpでの公開を進めていきたいと思います。また、外部資金を用いまして、こちらも東北大学の先生方の御協力をいただきまして、幼少児の唾液のエピゲノムのリファレンスパネルの作成と公開、そして、DNAメチル化年齢と生活習慣との関連解析や社会実装の推進、こういったことも進めさせていただきたいと考えております。
また、ゲノム研究関係では、全ゲノムシークエンスデータを用いたリスクモデルの開発、ポリジェニックリスクスコアとエピゲノムマーカーによる複合的なリスクモデルの開発、さらに、長鎖シークエンサーデータデータの活用なども取り組んでいきたいと考えています。
遺伝情報回付関係では、多因子疾患の個別化予防に向けた取組をさらに進めていきたいと考えております。現在行っております脳梗塞リスク回付コホートの追跡調査をしっかりさせていただくのはもちろんですが、そのほかの多因子疾患が関与する疾患あるいは体質のポリジェニックリスクスコアの回付や、エピゲノム年齢、エピゲノム疾患リスクの回付などを検討していきたいと考えております。
試料・情報利活用促進につきましては、東北大学の先生方と連携させていただくのはもちろんのこと、リアルワールドデータの利活用の推進として、レセプト情報からのデータ抽出と要約統計量の拡充・公開、それから、疾患発症情報、レセプト情報とジェノタイプ情報との関連解析、医療DX(デジタルフォーメーション)としては、FHIRの積極利用として医療機関からのカルテ情報の取得や、それから、当機構に簡易的なFHIRサーバを構築して情報の提供、そういったことも検討をしていきたいと考えているところです。
日本ゲノムコホート連携につきましても、さらに活動をさせていただき、大規模な横断解析が実施予定と聞いておりますし、さらに要約統計量の公開や外部研究機関との共同研究なども現在検討中というふうに伺っているところです。
以上のように、今後、私どもは東北大学の先生方と連携させていただきながら、従来の活動を引き続きしっかりと継続させていただくほか、高齢者コホート調査、リアルワールドデータやエピゲノムデータの充実、そして、ポリジェニックリスクスコアやエピゲノムマーカーの拡充と回付研究などを通して、バイオバンクのさらなる充実と利活用促進、個別化予防等につながる基盤構築などを進めさせていただきたいと考えておりますので、ぜひ御指導をいただければ幸いでございます。
以上で、私からの説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
【中釜主査】 ありがとうございました。
東北、いわて、両バイオバンクの機構長からの御説明でしたが、ただいまの説明内容につきまして、御意見、御質問がありましたら、お願いいたします。挙手ボタンを押していただけると、私のほうから指名させていただきますが。
よろしいですかね。
ちょっと、私から両機構長に御質問なんですけど……。
失礼、高橋委員から手が挙がっていました。高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】 ありがとうございます。製薬協の高橋でございます。東北のスライド26から37につきまして、質問させていただきます。
今後の10年間を見据えた方向性として、公共性と厚みのある複合バンク、特に厚みに関しましては、高品質なゲノム・オミックスということを挙げていただきました。非常に多くの取組を御紹介いただきまして、今後のバイオバンク事業でとても重要なこともたくさん盛り込まれていると思っております。今後5年間での優先度または重要度、課題などがありましたら、ぜひお教えていただきたいと思います。それがまず1点目でございます。
【山本機構長】 中釜先生、よろしいでしょうか。
【中釜主査】 お願いいたします。
【山本機構長】 御質問、ありがとうございます。次の5年ですけれども、バイオバンクなので、多角的に取り組んでいくということで、コホートも、バンク事業も、さらには利活用に向かった事業も、しっかりやっていこうと思っています。一つ一つについてそれぞれ目標があるわけですが、コホートは、だんだんにコホート参加者の層が変わってきて、私どもが最初にリクルートしたときは、お母さんのおなかの中にいた子供たちがもう15歳になる、思春期世代になってくるということなので、一つは子供の追跡をしっかりやろうということを考えております。ただ、大人もやりたいので、コホートの追跡を全体的にしっかりやりたいと思っています。
バイオバンクについては、利活用に向かってどういうバイオバンクをつくっていくか。みんなが欲しがっている試料と、集めてみたのだけれども、そろそろこれくらいでいいかというような試料とかをよく見極めて、バイオバンクの現代化・効率化を図っていきたいと考えています。
利用についてのところが一番力を入れてやりたいところです。私どもが、バイオバンクを始めたときに、バイオバンクって何なの? 役に立つの? という話から、今は、バイオバンクにはこんなものがあるといいなあというところに進化してきたところもあると思います。高橋委員の会社からも一つ頼まれてアドオン調査を実施しました。こういうふうに使ったらバイオバンクってすごくパワフルで力が出るのだよということを、私たちが社会のインフラとして役に立つんだよということを、実証していくような、そういう利活用研究を私たち自身もやってみたいと思います。こんなの、あんなのをやってみたらうまくいくかもしれないぞというものを、自分たちでもやってみたいと考えています。今後5年間という話だったのですが、盛りだくさんで申し訳ないのですけれども、それくらいやってみたいなと考えています。ありがとうございました。
【高橋委員】 ありがとうございます。
続いて、あと一つ、よろしいでしょうか。
【中釜主査】 お願いいたします。
【高橋委員】 先ほど言っていただいた5年間の重要度というところももちろんなんですが、製薬企業としては、今後、健常人から疾患に罹患する方が増えてくるというふうに思っております。そのような方々、資料の中にもあったんですけども、リコンタクトができると非常に有用なバンクになると考えております。また、医療情報、臨床情報、試料、オミックス、情報と連携するリンケージというところも重要と考えておりまして、バイオバンクがより充実するような取組をぜひ進めていただきたいと思っております。今回、山本機構長のほうから製薬協のほうにもいろいろ御紹介いただいていまして、内容もとても充実していて、特に臨床情報とリンケージしていくところの取組も画期的だと思うので、そういう取組を日本のほかのバンクにもやっていただけるような、そういうハブとなっていただくことをぜひ期待したいと思いますし、また、継続というところを強調されていましたが、継続は私たちとしてもとても重要だと思っておりますので、引き続き、この取組を継続していただきたいと思っております。
最後はコメントになりましたけれども、以上です。
【山本機構長】 すみません、一言だけ。
【中釜主査】 お願いします。
【山本機構長】 お話のとおりです。私どももしっかり事業をやっていくことは大切だと思います。最初、私たちは健常人コホートと言っていたこともあるのですが、今は一般住民コホートというように名前を改めています。一般住民は病気になるのです。重い病気の人は大きな病院に行きます。幸い、私どもは近くの大きな病院と良いネットワークができていますので、名寄せをすることが可能です。名寄せしてみると、東北大学病院には、参加者12万人のうち7,000人が来ていることが解りました。7,000人の方々がいろんな病気で来ているのだと思います。がんになった人もいれば、糖尿病の人も来られています。その方々のデータを、病気になる前のデータから提供することによって、研究のスタイルが変わることもあると思います。製薬協の皆さんは重い病気に対する薬を作るのは得意みたいですけども、企業の方が早期介入して、井村先生流に言えば先制医療、黒岩県知事ふうに言えば未病というようなところ辺りを狙っていく、そういう創薬モデルに挑戦できるような、そんな基盤を私たちも提供できたらいいなと考えています。
いろいろ温かいコメント、ありがとうございました。
【高橋委員】 ありがとうございます。
最後に、いわての方にも少しコメントしたいんですけども、スライド18で高齢者コホートを紹介いただきました。高齢者コホートは、私たち製薬企業として期待しているものの一つでございます。対象患者が2013年の開始時は2.3万人だったものが、現在、1万から数千人と減っているにもかかわらず続けていただいていることに対しては、大変感謝しております。参加者の高齢化もあって難しいと思うんですけれども、ぜひ継続していただきたいと思います。経年的に情報を収集するということはとても重要で、継続してこそ価値のある事業だと思っておりますので、引き続き、よろしくお願いいたします。
【佐々木機構長】 いわての佐々木でございます。中釜先生、よろしいでしょうか。
【中釜主査】 お願いいたします。
【佐々木機構長】 高橋先生、非常に温かい、そして貴重な御助言、どうもありがとうございます。もうベースラインから12年が経過しているわけですが、おかげさまで、地域住民の皆様の御理解をいただきながら、何とかしっかりと継続をさせていただいているところです。特に高齢者コホートならではの、長期間、前向きに観察しているという、その利点を生かしてしっかりした調査をさせていただき、そのデータを集積・整理して、できるだけ早くそれを公開させていただくといったことをしっかり進めさせていただきたいと思っております。どうもありがとうございました。
【高橋委員】 ありがとうございます。
【中釜主査】 よろしいでしょうか。
ほかに、御質問ございますか。
私からまず、東北の山本機構長に質問です。先ほどの高橋委員からの質問と関係するのですが、機構長もおっしゃっているように、データの利活用は非常に重要かと思います。そういった意味で、今後の方向性にもありますリンケージのデータを拡充していくというのは、恐らく、疾患や様々な病態への対応として厚みが出てくると思うのですが、その辺り、現状では、疾患という観点からはどの辺のアプローチが可能なのかということと、リンケージの問題ですね。お願いいたします。
【山本機構長】 中釜先生、ありがとうございます。時間の制約もあるので十分説明できなかったのですけれども、リンケージは物すごく一生懸命やっています。佐々木機構長の方からもお話あったのですが、国保連からは3万人を超えるレセプト情報をもらっています。これにより、私たちの参加者、一般住民の方がどういう病気にかかって病院にかかっているかをレセプトのほうから追いかけられるということになっています。それから、がん登録のデータもしっかりいただいています。ただ、がん登録は非常に利用が厳しくて、私どもバイオバンクから二次利用の形で配るということを禁じられています。がん登録でがんの結果を見たい人は、私たちと一緒にがん登録に申請してもらわなきゃいけないということで、手続は大変です。
それ以外にも、疾患登録ももちろん使っています。力があったなと思うのは、母子健康手帳です。皆さん御存じのように、母子健康手帳って紙なのです。アナログです。なので、母子健康手帳を全てコピーさせていただいて、自分たちでデジタル化をして使っているのです。私も実家に行って、母が書いていた母子健康手帳をもらってきたのですが、涙が出るようなものでした。日本の公的な資料として物すごく充実しているのです。これが全くデジタルになってないので、デジタル庁もできたんだし、医学研究の活性化、創薬研究の活性化のためにも、ここら辺りを改善していってくれたらいいなあと思っています。
リンケージに関しては、いろんな役所に行ったり、教育委員会に行ったりして、私たちが頭を下げればこれだけ取れるのだということを示して、日本国の財産にしてくれたらいいなと考えている次第です。
【中釜主査】 分かりました。
続けて、もう一つよろしいですかね。資料の9ページに、様々な企業・アカデミアとのアドオン調査をされていて、私も資料を拝見して、この10年間に随分たくさんやられているのだなと思いました。アドオン調査をすることのバンクとしての負荷はどうなんですかね。大変かなと思って聞いていたのですけど。
【山本機構長】 中釜先生、そこは本当にお話の通りです。アドオン調査を御提案いただくときに、ルールをつくってあって、20分を超えるものは駄目ですと話しています。
【中釜主査】 なるほど。
【山本機構長】 私どもの参加者の方が来られて、2時間半から3時間、午前中いっぱい使ってとか、午後いっぱい使って健康調査をされていくわけです。そのときに1時間もかかるような調査をアドオンするのは参加者の方の負荷になるので、それはちょっとやめてくださいと話しています。大体20分で、いろいろ言われて、ついつい妥協して30分ぐらいになるものもないわけではないのですが、これが限界です。例えば、豊田中研の匂い系、これは面白くて、匂いが出る箱が三つ準備してあります。それで、これは何の匂いですかって聞かれて、三つとも外すと、次から運転しないでくださいみたいなことを言われます。私は最後の3個目が当たったのでいまだに運転をしています。そういうような話で、いろんな会社の方が、これがあるといいなというのをやっていただいています。実は今、第4段階の準備をしていて、1年半後から始まるものについては、事前にアドオンで当初の計画段階から盛り込んでもいいですよというような、アドオン募集をやろうかなと考えているところです。
【中釜主査】 分かりました。了解です。
寳澤先生から手が挙がっていますけど、よろしいですかね。
【TMM(寳澤)】 傍聴しています、寳澤でございます。山本先生に補足で、先ほどの負担という観点で、時間のところもそうなんですけれど、アドオン調査をやるときは必ず、人件費が必要な分につきましてはこちらのほうで算定させていただいて、実現可能な形で契約を結ばせていただいているということを申し添えさせていただきます。
【中釜主査】 分かりました。ありがとうございます。
続いて、佐々木機構長への質問です。いろいろ検討されていて、私の理解不足なんですが、一つは、多因子疾患の個別化予防、結構チャレンジングなトライアルかと思いました。まだ研究ベースだと思いますが、協力者に回付されているということで、どういう形で返されていて、どういうふうにそれを実装に向けて取り組まれているか、少し簡単に教えていただけますか。
【佐々木機構長】 中釜先生、御質問、ありがとうございます。現在、私どもは2,000人の方々に対して、脳梗塞に対するポリジェニックリスクスコアのほうを既にお返ししております。こちらにつきまして、その後の健康調査、行動変容、意識変容について調査をさせていただくといったことを進めさせていただきたいというふうに思っているところです。
【中釜主査】 その実装に向けて、検証のための研究を行っていたということですかね。
【佐々木機構長】 おっしゃるとおりです。
【中釜主査】 分かりました。二つ目の質問は、データ利活用に関して、基本的には共同研究ベースでやれているのか、分譲という形もされているのか、その辺りはどうですか。
【山本機構長】 どちらにも対応させていただいているというふうに考えております。
【中釜主査】 なるほど。分譲のほうも順調に進まれているという理解でよろしいですか。
【佐々木機構長】 分譲につきましては、窓口は一括して東北大学の先生方のほうにお願いしているところです。共同研究については、当然、私どものほうで直接、他の研究施設の先生方と共同研究もさせていただいております。
【中釜主査】 分かりました。
ほかに、委員の先生方から、御質問ございますか。
それでは、武林委員、お願いいたします。
【武林委員】 ありがとうございます。コホート部分について、2点、質問をさせていただきたいと思います。
1点目は、今後、東北大学のほうは思春期へのアプローチを強化するという話だったと思いますが、恐らく最もリクルートしにくい世代かと思いますが、実際に、どのようなアプローチをして、どの程度のリクルートを見込んでいらっしゃるのかというのが、1点目です。
2点目は、先ほどから議論が既にありましたが、健康アウトカムをいかにきちんと把握をしていくかということが今後ますます重要になるかと思いますが、本日の御説明では、かなりの部分は病院の情報とのリンケージでというお話だったと思いますが、これだけで十分行けそうなようなパイロット的なものがあるのか、あるいは、今後も通常のコホートがやるような、罹患を把握するような取組とセットで進めていくのか、その辺、具体的に何か計画があれば、教えていただきたいと思います。
私から2点、以上です。
【中釜主査】 お願いいたします。
【山本機構長】 武林先生、ありがとうございます。思春期世代、AYA世代、これが難しいというのは、先生の御指摘のとおりだと思います。私どもの利点としては、いきなりAYA世代を集めると、中学生、高校生は来てくれないと思うのですけれども、おなかの中にいる頃からうちに来た経験のある子供たちなので、それから、私どもの支援センターに来ると楽しいこともあるぞということを知っている子供たちなので、それなりの歩留りが望めるのじゃないのかなというのが、こちらの期待になります。それから、もう一つは、この子たちは、ある年齢を超えればスマホの達人ですので、スマホの活用ということも考えているといます。武林先生、確かに難しいんですけれども、これを集めないとこの世代の情報がないということなので、チャレンジする価値はあるかなと考えています。
2点目の健康指標ですが、私どもとしては、公的情報をリンケージで取るのはもちろんですけれども、もう一つ重要なのは、継続して精密検査を5年に1回やっていくことではないかと思います。私、今年は2回ほど国際的なコホート・バイオバンクの会議に呼ばれて話を聞いてきたのですが、UKバイオバンクも、50万人なんて数では追跡ができない様子です。NIHのAll of Us、アメリカの方は、追跡はスマホでやるということですが、実際には参加者が100万人もいるので、ベースラインのデータは深く集めていない様子です。要はスマホで取れるデータしか持ってないのです。このような意味では、日本の伝統のある疫学研究の上にのった私どものバイオバンク・コホートは、ベースラインもしっかりやる、追跡もしっかりやる、ということを追求しています。これを力にして私たちの国のバイオバンクの文化をつくり上げていくということが大切ではないかと考えます。健康のデータについては、もちろんリンケージで一生懸命やろうと思うのですけれども、もう一つは、自分たちのところでしっかりとした追跡調査もやっていきたいと考えているところです。
【武林委員】 ありがとうございます。
【中釜主査】 佐々木機構長、今の御質問に関して、何か御発言はございますかね。
【佐々木機構長】 佐々木でございます。私のほうからは特にございません。山本先生のおっしゃったとおりだと思います。
【中釜主査】 ありがとうございます。
関連する点で、寳澤先生から手が挙がっています。よろしくお願いします。
【TMM(寳澤)】 今、山本機構長から申し上げたとおりなんですが、三世代コホートも、確かに難しい世代ではあるのですが、非常にコアな協力的な方々がいて、全ての郵送追跡調査に協力して、全ての詳細調査に参加しているという方々がいて、この方々に対して調査の機会を提供すれば必ずや協力いただけるという方、全てではないんですけれど、かなりの数、3割ぐらいの方がいらっしゃいますので、数千人のAYA世代の子供たちが血液調査込みで来てくれて、しかも赤ちゃんのときからの情報があるというのは、非常に貴重な情報だと思っています。ぜひここのところは難しさにチャレンジして、先生方にも応援いただきながら進めていきたいと思っています。簡単ですが、補足でした。
【中釜主査】 ありがとうございます。
櫻井委員、お願いいたします。
【櫻井委員】 ありがとうございます。札幌医科大学の櫻井でございます。山本先生、佐々木先生、ありがとうございました。いつもお世話になって、大変感謝しております。
今御説明いただいた山本先生のほうに代表のような形でお伺いしたいと思うんですけれども、先ほどのスライドの36枚目のところに、多様なステークホルダーとの共創ということで輪になった絵を描いていただいておりまして、下のほうに一般市民・患者団体とありまして、東北メディカル・メガバンクさんではいろんな形で市民団体・患者団体への啓発をされているということは、私もよく存じ上げておりますし、微力ながらお手伝いもさせていただいているのですが、この全体の研究の運営に関して市民の方々の参加というのはどのような形になっているのか、あるいは、そこに何か課題があれば、ぜひ教えていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【山本機構長】 櫻井先生、いつお世話になって、ありがとうございます。
今のところですけれども、最初に遺伝情報の回付をやろうと考えたときに、遺伝情報回付の委員会をつくって、その委員会に臨床遺伝専門医、ゲノム研究者、ELSI専門家、認定遺伝カウンセラーに来ていただいて、いろんな意見や情報をいただいています。それから別の機会には、患者団体の方と交流をさせていただく機会もあり、その御意見も伺ったりというようなことがあります。非常に率直に申し上げると、利用者の側、特に製薬企業の方とか経団連の方からは、もっと使い勝手をよくしなさいというプレッシャーが私たちに来る。一方では、市民団体や患者団体の方とお話をしていると、一般住民のデータをこれだけ手厚く持っているのだったら、セキュリティーにも気をつけなさいというお話を伺います。それから、利用に当たっては、確かに二次利用を可にするという同意は持っているのですけれども、例えば、オプトアウトをきちんと使うとか、そういうことを通して、個人の情報を守る、権利を守るというところにもしっかり取り組みなさいというような意見をいただいています。両方の御意見をいただくことは非常に重要で、そのバランスの中でこのバイオバンク事業をやっていくことが、双方向から理解されることではないかと考えています。私は、先ほど高橋委員からお話をいただいたときに、トライアルユースという形で私どもに非常にいろんな情報が蓄積した一般住民の集団があると申し上げました。そうすると、治験、クリニカルトライアルに入る一歩手前の調査を私どもの参加者の方にお願いして、ボランティアベースでやってみるのはできないかと考えます。私は、実にこれをやりたいと思っているのですが、そういうときに、私が暴走しないように、いろんな方の意見を聞きながら慎重に進めていくことが重要ではないかなと考えています。
先生、お答えになったのか不安ですけども、市民の方の意見をいただきながら、患者団体の方には委員会に出ていただきながら、こういう仕事をやっているということをお答えさせていただきます。
【櫻井委員】 ありがとうございます。ゲノム医療推進法でも、人を守りつつ、情報を適切に扱って研究を推進しやすいように体制をつくっていくことが非常に大事だと思っていますので、引き続き、よろしくお願いいたします。
【山本機構長】 どうもありがとうございます。
【中釜主査】 よろしいでしょうか。
続きまして、伊藤委員、お願いいたします。
【伊藤主査代理】 九州大学の伊藤でございます。山本先生、佐々木先生、大変すばらしいプレゼンをありがとうございました。
山本先生にお伺いしたいのですが、今、ちょうどスライドが出ておりますが、統合データベースの利用支援というようなことが書かれております。私もJSTのほうでデータベースの事業の面倒を見ておりまして、この手のデータベースの統合的な利用環境をどのように提供するか、ユーザーをどう拡大していくかというところにいつも心を砕いているんですけれども、今日、先生のお話を伺って、非常に感心して質問をさせていただいているところになります。そのときに、私たちも時々考えるんですけども、この統合データベースがいかにすばらしい使いでのあるものであるかということを、ある程度、自らが示していく必要があるのかなというようなことがよく議論になります。先生もそのようなことを述べられていたなと思いました。なので、非常に意識を共有できたかなというふうに考えております。
特に、ToMMoの場合、非常に複雑で、膨大なデータがあると思うんですね。そういったときの利活用、それから、ユーザーの開拓というときに、一つは、機械学習といいますか、AIでこれだけ膨大なもの学習させる、そういったことで何かすばらしい成果は示せないかというようなことを我々はよく議論するんですが、これはそちらのほうではどのような形になっているかということで、先生のお考えをお聞かせいただきたいというのが、1点でございます。
それから、2点目は、これまでどうしてもデータベースというと生の人間のユーザーを考えていたところがあると思うのですが、これからはもしかすると間にAIが挟まるのではないかということを我々はよく議論しています。AIが間に挟まることによって、実際のヒューマンユーザーがより使いやすくなり、ハードルが下がりという、そういう議論をよくするんですけれども、ここのデータは、データの性質上、いろいろ取扱いの難しいところもあろうかと思いますが、その辺り、先生のお考えをちょっとお聞かせいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
【山本機構長】 伊藤先生、ありがとうございます。私どもと理研のAIPセンターを兼務していた田宮元教授もいたりして、バイオバンクとAIというところの距離を縮めていくということは重要だということは痛いほど分かります。具体的に、私たちが集めている、どちらかというと泥臭いデータをどういうふうにAIに載せていくかということが、非常に重要なところかなと思っています。AIに関して、一つだけ先生に申し上げたいのは、バイオバンクに入ってくるデータは、こちらの研究所で100人やったとか、こちらの大学で500人分やったとかっていうものが集まってくる。私たちも、試料を差し上げると、解析してからバイオバンクに入れてくださいとお願いして、小規模なデータは頂きます。そのようにして、小規模なデータを頂いてバンクに入れてみると、SOPが違うので、必ずしもAIに学習させるのに最適な試料・情報にはなってないと気がつきます。そういう点では、最先端の解析をバイオバンクで大規模にやって、粒度をそろえて、それを社会のAI研究者に提供していくということが、私たちがAIに対して貢献していくことかなと思うのですけれども、先生も御存じの木下教授がしゃべりたいと言っておられるので、ちょっとだけ……。
【TMM(木下)】 それではちょっとだけ補足させていただきます。
御質問、どうもありがとうございます。本当に非常に重要なテクノロジーで、私たちもちゃんとキャッチアップしながらやっているつもりです。例えば、ゲノムに関しては、インピュテーションなんかでは既にAIのテクノロジーを使ったようなものをさせていただいていますし、企業名までは言えませんけども、海外の企業がこのデータに非常に興味を持って、AIの活用という観点で二、三個、ディスカッションはやらせていただきます。そのときに一つのハードルになるのは、山本先生もおっしゃったようにデータの複雑なというところがあるのと、もう一つは、海外からのデータ利用というところのハードルがあるんですね。国内ではデータビジティングで随分と使っていただいていますし、特に企業なんかにも使っていただいていますけども、AIに強い最先端の企業と話をしたときに、ぜひ使いたい、どうやったら使えるんだといったときに、現在のやり方だと国内限定なのでそこで二の足を踏むような状況になっているのが現状だと思います。丁寧にいろんな方とお話をしながらになると思いますけども、海外からのデータアクセスということで、ぜひAIの分野できちんと利活用を進めていきたいなというふうに思っています。本当に重要な御質問、ありがとうございました。
【伊藤主査代理】 どうも、山本先生、木下先生、ありがとうございました。期待をいたしております。
以上でございます。
【中釜主査】 ありがとうございます。
続きまして、小崎委員、お願いいたします。
【小崎委員】 慶應大学の小崎でございます。いつも、未診断疾患イニシアチブで、先生方のリファレンスパネルでお世話になっております。
今、木下先生がいらっしゃって、海外、ゲノムというキーワードが続いたので御質問をさしあげたいと思うんですが、ゲノムのデータを国際的に使用するという意味では、gnomADのような標準的なフォーマットがあると思います。ブロード・インスティチュートにToMMoのデータを投げるわけにはいかないのですが、生データからのデータ処理の方法について、gnomADが使っているような国際的な標準をリージョナルなところに分析させて、それを統合するという計画が進んでいるというふうに聞き及んでおります。そういう形でToMMoのデータの国際的なビジビリティが上がっていくのかなと思っておりましたが、今日頂いた資料の中にはそういう戦略が含まれていなかったかに思われますが、コメントをToMMoのほうからいただければ幸いです。それが1点です。お願いします。
【中釜主査】 この点について、山本機構長。
【山本機構長】 小崎先生、ありがとうございます。私がちょっと答えたら、木下先生にも答えてもらおうと思います。まず、小崎先生、gnomADのデータとToMMoのデータを比較すると、エスニックディファレンスが非常にきれいに分かります。日本国内の人はこれができるのですが、これはすばらしくて、私たちもgnomADのデータとToMMoのデータ比べて、違うねとか、同じだねとかいうのを楽しみにやっています。ちょっと考えてみると、それでいいのかと。外国のデータは私らは自由に見て、日本人のデータは外国には見せないという、こういう独裁国家みたいなことをしていていいのかということについては、先生のお話のとおり、私たちもデータを開いていく必要があると思います。ただ、ここと経済安全保障の考え方をどういうふうにマッチングさせていくかということが論点であると思います。一つの考え方ですが、私は、ホワイト国を非常に厳しく選別をして、規則で縛るような形で、それから、データビジティングだけで、データは渡さない、ダウンロードさせないというような形で、こういうところを乗り切っていけるんじゃないか、もうやらなきゃいけない時期に来ているんじゃないのかと思っているんですけども、木下教授が何かしゃべりたそうにしているので、中釜先生、ちょっとだけ木下教授に。
【中釜主査】 お願いします。
【TMM(木下)】 小崎先生、重要な御質問、ありがとうございます。多分、2点、我々の取組が今日の資料に全然反映できてなかった点を御指摘いただいたので、本当にありがたかったと思っております。
1点目は、国際標準として、ブロードとか、ああいうところが中心でやっているようなパイプラインは常に確認していて、基本、同じ手法でやるようにしています。だから、そういう意味で比較可能だというふうに思っております。ただ、その一方で、All of Usとか、UKバイオバンクとか、Genomics Englandもそうだと思いますし、シンガポールもそうですが、イルミナのDRAGENのパイプラインに全て移行しているんですね。だから、そことのハーモニーをどう取るのかというのが非常に悩ましいなというふうに思っています。というのは、DRAGENは費用的な問題があって、物すごくハードルが高いというふうに思っています。つまり、10万人をDRAGENで全部再解析するということに関しては、ちょっとハードルが高いかなと思っています。ただ、少しずつDRAGENでの再解析はやらせていただいていて、今、1万サンプルまではめどが立っています。だから、そういう辺りを、UKバイオバンクなどのデータと比較可能な形で出すということも重要だと思っています。端的には、国際標準を常に見ながら、きちんとToMMoがガラパゴスにならないように解析を進めていくようにしております。
以上です。
【小崎委員】 山本先生もおっしゃったように、データを出せという話ではなくて、gnomADなどの国際的なコンソーシアムがデータをそろえて1か所から出すような動きには合わせていくべきであって、それがDRAGENなのかJTKなのか分かりませんが、ぜひそういう視点で、国際的な舞台の中でToMMoの存在がもっと目に見えるようになるとかなりすばらしいのだろうと思いました。
それともう1点は、長鎖シークエンサーでメチル化の解析ができるようになっているので、宮城と岩手の区別というようなことをどういうふうに今後考えていかれるのかというのを簡潔に教えていただけば幸いです。
【山本機構長】 一番簡単には、大協力してやっていこうということになります。先生御存じのように、私どもnanoporeを使って111家系・333人の調査をやって、構造多型リファレンスパネルを公開したということがあります。今度は、少し予算を頂いたので、それを1,000人にまで広げようと。今回はnanoporeじゃなくてPac Bio Revioを使って600人ほどやってみようというふうに考えていて、両方の構造多型リファレンスパネルを日本国民のものとして公開できたら、これはパワーがあるぞと考えています。それで、これにメチル化を加えているのです。特に、佐々木機構長のほうからお話いただいたのですけれども、臍帯血のメチル化解析には非常に興味あります。受精で一度リセットされたメチル化が、子供が育っていく過程でどういうふうに拡大していくのかということについては、早くやってくれないかな、僕はこのデータを見たいんだけどなと、非常に首を長くして待っています。しっかりやっていると思いますので、楽しみに待っているところです。
以上です。
【小崎委員】 ありがとうございます。
【中釜主査】 よろしいでしょうか。
ほかに、御質問ございますか。
桃沢委員、お願いいたします。
【桃沢委員】 理化学研究所の桃沢です。壮大なプロジェクトの進捗について、ご発表を聞かせていただき、ありがとうございます。このようなバイオバンクは、公共性や多角性などを考えてやらなくてはいけないので、非常に難しいということは分かっております。ただ、海外でも様々なバイオバンクが増えてきて、スピードがとても速いです。そのような状況で、もちろん日本のために日本人のデータは大事ですが、研究の世界では、日本人ではこうだったというデータだけだと少し残念なところがあります。もし更にデータを取るのであれば、いいタイミングだと思いますので、世界をリードするような研究に繋がる、データの取り方についてお考えがあったら、教えていただけないでしょうか。
【中釜主査】 今の御質問に対して、まず、山本機構長、お願いいたします。
【山本機構長】 桃沢先生、非常に貴重な指摘、ありがとうございます。一つは、中でも少し申し上げましたけども、世界で、NIHも失敗した、MRCも失敗した、出生三世代コホートは私たちしか持ってない。それがだんだん育ってきて、今、思春期世代のところまで来ている。そうすると、登校障害とか、子供のひきこもりとか、いろんなものに対するアプローチが、遺伝的背景に対するアプローチもできるのではないのか。実は、私どもは追跡ができる出生三世代なので、1歳児のときのスクリーンタイム、スマホを見せて、「機関車トーマス」を観ていなさい、おまえはうるさいなんて言っているお母さんの下でのスクリーンタイムと、2歳児、4歳児の発達に関する指標を比べてみたら、やっぱりスクリーンタイムと逆比例するんですね。それをJAMA Pediatricsに論文として出したら、ニューヨーク・タイムズとか、ABCテレビとか、CNNとかが非常に大きな特集を組んでいる。これはアメリカではできないので、私たちのデータを見たということになると思うのです。
そういうようなことで、一つは出生三世代コホートもそうですけど、岩手医大さんと一緒に私たちがやっているのは、1人の人の全ゲノムがあるだけじゃなくて、それにのっかっている健康データやオミックスデータは非常に厚みのあるデータを取っている、この利点を生かしていきたいと考えています。
お答えになりましたでしょうか。
【桃沢委員】 ありがとうございます。
【中釜主査】 追加で、佐々木機構長、何かございますか。
【佐々木機構長】 佐々木でございます。非常に貴重な御意見、どうもありがとうございます。民族差というのは非常に大きなハードルというふうには理解しております。例えば、私ども、エピゲノム年齢推定法について非常に精度の高いものを出させていただきましたが、これは恐らく他民族では大きく結果が異なってしまうというふうに思っております。一つの試みとしてポリジェニックリスクスコアにつきましては、国際共同研究の枠組みで他民族でもリスクが算出できるような手法について当機構で今回試みさせていただきましたので、そういった形で、日本人だけのみならず、他の民族でも応用可能な、そういった基盤技術とかについても挑戦していければなというふうに思っております。どうもありがとうございました。
【桃沢委員】 ありがとうございます。
【中釜主査】 関連して、寳澤先生から手が挙がっています。
【TMM(寳澤)】 寳澤でございます。日本の一つの特徴は、やはり健康寿命の延伸がすごく進んできておりまして、恐らく、脳卒中、悪性新生物を越えた先の、認知症予防であったり、感覚器予防であったり、フレイル予防というところに世界に先駆けて直面することにあると思っています。いわてでも重点化されると思いますけど、こういった世代について、そういったいわゆる生活習慣病乗り越えた先に何があるかというのは我が国しか出せないものになりますので、世界をリードするような形で詳細調査を続けていられるとこういったことができますので、そういった強みを生かしていきたいなあというふうに考えております。
補足でございました。
【中釜主査】 ありがとうございます。
ほかに、御質問ございますか。
よろしいでしょうか。今日の予定された時間が近づいてきましたけど、次の議題として、その他です。本日、御発言いただいていない先生方に、時間は限られていますけど、簡単に一言ずついただければと思いますが、よろしいですかね。コメントでも構いません。
まず、川﨑委員、御参加いただいていますでしょうか。
【川﨑委員】 川﨑です。今日は、山本先生、佐々木先生、どうもありがとうございました。先生方の議論も聞いておりまして、時間もない中、今後検討していただきたいなと思ったところは、今後10年を見据えたところで、ニーズを聞きながらとかいうお話があったので、できれば、あと1年残っているので、次の5年間に向けて、どこに集中とか、新たな追加の情報はどういったものがあるのかというところを前倒しでやられるとなおいいんじゃないかなと思ったことと、あと、産学連携のセンターが設置されたことで利活用が進んだという、そういう仕組みのところにも大変興味を持ちましたので、そういったところも強化していただきたいなというふうに思った次第です。
今日はありがとうございました。
【中釜主査】 ありがとうございます。今御指摘の点は、今後の議論の中でまたコメントをいただきたいと思います。
続きまして、斉藤委員、コメントございますでしょうか。
【斉藤委員】 斉藤です。今日はありがとうございました。私のほうは時間の関係で途中からしか参加できなかったので、全ての議論をお伺いしたわけではなくて大変申し訳ないのですけれども、それにしても、三世代にわたるデータが積み上がって、健康データともつながっているというところで、ますますの利活用が進むことを期待しております。よろしくお願いいたします。
【中釜主査】 ありがとうございました。
続きまして、二宮委員、一言ございますでしょうか。
【二宮委員】 今日は、参加させていただいて、どうもありがとうございました。バイオバンクの価値は重厚な追跡の臨床情報だと私も思っておりますので、そこをやるのが非常に大変だということもよく分かります。寳澤先生、苦労されていると思いますけど、頑張っていただければと思います。よろしくお願いします。
【中釜主査】 ありがとうございます。
続きまして、玉腰委員、御出席いただいていますかね。簡単に、コメントありましたら、お願いします。
【玉腰委員】 ありがとうございます。私も今日は遅れての参加で、全体を把握できてないところがあります。申し訳ありません。
追跡をしていく大変さというのはよく分かりますので、そこのところの価値を皆さん十分に受け止めていただいて大事にしていただきたいということと、それから、いろんな調査を繰り返しやっていく中で新しい情報というのをどんどん入れていると思うんですけれども、そのままコホートをかけていると世代はどんどん古くなっていきますので、新しい人たちが入ってくる新しいツールというのが把握できなくなるとか、できていない可能性があるなと思っています。東北の場合には三世代コホートがあるにはあると思うんですけれども、少しその辺の観点を入れて、スマホだって、若い人には入ってきているけど、高齢者にはまだ入ってない世代もあるとか、いろいろ違うものがあると思いますので、その辺も意識した上での追跡調査ができるとよりよいのではないかなと思っております。本当に大変な作業だと思います。よろしくお願いいたします。
【中釜主査】 ありがとうございました。
続きまして、最後に、横野委員は御参加いただいていますかね。
【横野委員】 早稲田大学の横野と申します。私も途中からの参加になってしまったんですけれども、今日のお話を伺っていて感じたこととしましては、これまで多大な御尽力によってたくさんのサンプルやデータが集まっている中で、特に国際的な連携に関してはデータ・試料の共有に関する制度的な課題に直面をしているところというのがあるように思いました。これまでの蓄積の中で、具体的にこういったところで障壁がある、そういったところの制度見直し等を図っていかなければならないということも把握されてきているかというふうに思いますので、そういうことに関しても発信をしていく機会になればというふうに思っております。
【中釜主査】 ありがとうございました。
ほかに、改めて御発言したいという方はいらっしゃいますかね。
よろしいでしょうか。
ありがとうございます。本日は、限られた時間の中、本当に貴重な御意見いただき、ありがとうございました。
最後に私から一言ということを求められているのですが、多くの委員の先生方から御意見がありましたように、今後、非常にすばらしいバンクを維持されていって利活用を進める中で、委員の先生方からもありましたように、ニーズをしっかり把握してデータの厚み・粒度を増すための健康情報を含めたデータの充実が必要だと思いますし、新しい技術による解析データの付加も重要だと思うのですが、ニーズを踏まえた上でどういう付加的な情報がより効果的かということをこれからの議論の中で詰めていくのが大事かなと、私も感じました。私から、最後の一言です。
ほかはよろしいでしょうか。
それでは、最後に事務局からの連絡事項をお願いいたします。
【小野ゲノム研究企画調整官】 本日は、大変有益な御議論をいただきまして、ありがとうございました。また、最後に中釜先生がまとめていただいて、本当にありがとうございます。今後の方向性の議論にどんどん反映させていきたいと思っております。
事務的なお話ですけれども、本日の議事録は、事務局にて案を作成して、委員の皆様に御確認いただいて、主査に御確認をいただいた後、文科省のホームページにて公開いたします。
また、次回の作業部会ですけれども、12月20日の金曜日、10時から12時を予定しております。次回は、海外のバイオバンクの状況、利活用の促進、また、疾患バイオバンクについて、現状と今後の方向性について議論をさせていただければと思っております。
以上でございます。
【中釜主査】 ありがとうございました。
それでは、本日の次世代医療実現のための基盤形成に関する作業部会、これにて閉会させていただきます。本日は、御協力、ありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局ライフサイエンス課