大強度陽子加速器施設評価作業部会(第12期)(第2回) 議事録

1.日時

令和5年11月24日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省内15階局1会議室及びオンラインのハイブリッド形式

3.議題

  1. 前回中間評価以降の主な成果
  2. 前回中間評価の主な指摘事項に対する対応(1)
  3. その他

4.出席者

委員

高原主査、飯沼委員、大竹委員、上村委員、中野委員

文部科学省

稲田研究環境課課長、内野研究環境課課長補佐、田邉研究環境課専門職、村松素粒子・原子核研究推進室室長

オブザーバー

小林J-PARCセンター長、脇本J-PARC副センター長、大友J-PARCセンター物質・生命科学ディビジョン長、金正J-PARCセンター加速器ディビジョン長、小松原J-PARC素粒子原子核ディビジョン長、前川J-PARC核変換ディビジョン長

5.議事録

【田邉専門職】  事務局、研究環境課の田邉でございます。
 本日、研究環境課長の稲田と課長補佐の内野が出席の予定だったのですけれども、用務のため少し遅れての参加となります。途中から参加いたしますので、御承知おきいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第2回大強度陽子加速器施設評価作業部会を開催いたします。
 本日は皆様、お忙しい中御出席いただきましてありがとうございます。
 本日はオンラインとのハイブリッド形式での会議を開催しておりますので、まずはオンライン会議の留意事項について御説明させていただきます。
 通信を安定させるため、御発言されるとき以外は可能な限りマイクをミュートにしていただき、御発言される際に解除いただければと思います。
 議事録の作成のため速記者を入れておりますので、お名前を言っていただいた後に御発言をお願いいたします。
 会議中、不具合などのトラブルが発生した場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお電話をお願いいたします。
 なお、本日は会議公開の原則に基づき、報道機関や一般傍聴者によるYouTubeでの傍聴を認めておりますので、御了承ください。
 次に、配付資料を確認いたします。説明の際、Zoom上に画面共有いたしますが、画面が見にくい方は、適宜、事前にお送りしている資料を御覧いただければと思います。配付資料につきましては、資料1から資料3、参考資料1から参考資料3を御用意しております。
 第1回作業部会の議論のまとめについては、参考資料1としてまとめておりますので、御参照いただければと思います。
 欠落等ございませんでしょうか。資料に不備等ございましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
 続きまして出欠につきましてですが、本日は委員全6名中5名の委員の皆様に御出席いただいておりまして、内訳といたしましては、対面による御参加として3名、オンラインで2名の御参加となっております。また、石切山委員が御欠席と伺っております。
 なお、J-PARCからは、小林センター長、脇本副センター長、金正加速器ディビジョン長、大友物質・生命科学ディビジョン長、小松原素粒子原子核ディビジョン長、前川核変換ディビジョン長にお越しいただいております。
 続きまして、文部科学省からは、事務局の研究環境課に加えまして、研究振興局基礎・基盤研究課素粒子・原子核研究推進室長の村松が出席しております。
 また、課長の稲田が参加いたしましたので、よろしくお願いします。
【稲田課長】  用務への対応が終わりましたので参加させていただきます。よろしくお願いします。
【田邉専門職】  それでは、以降の議事につきましては、高原主査に進行をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【高原主査】  では、本日の議事に入らせていただきます。
 まず、議題1として、前回中間評価以降の主な成果についてです。資料1に基づきまして、J-PARCセンターより説明をお願いいたします。
【小林センター長】  それでは、資料1、J-PARC中間評価、前回中間評価以降の主な成果について、J-PARCより御説明させていただきます。
 1枚めくっていただいて、今日のこの資料の目次ですけれども、このようになっております。それぞれ、今日は各担当ディビジョン長から説明をさせていただきたいと思います。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  MLFディビジョン長の大友です。よろしくお願いします。
 中性子利用の成果、中性子測定技術に関する成果、ミュオンビーム利用の成果について御紹介いたします。
 次のページをお願いします。このページは、センター長から第1回に紹介されたものですけれども、ここ5年の主なプレスリリースの成果をまとめております。今日御紹介するのは、成果例1、成果例2という形で書かれておりますテーマについて御紹介いたします。成果例5と成果例6については、時間の都合で最後に補足資料として添付させていただいております。
 それでは、最初に成果例1を御紹介いたします。次のページをお願いします。
 最初は、固体冷媒を用いた新しい冷却技術というものでして、2019年プレスリリースしまして、ネイチャー誌に投稿しています。
 著者は中国科学院となっていますけれども、ポスドクをJ-PARCでやられている間に研究されて、所属が移られた後、出版となっています。
 この論文はサイテーションが非常に高くて、トップ0.28%に入っております。インパクトファクターも非常に高い雑誌です。
 内容としては、環境負荷が少ない固体冷媒に期待ということで、従来の固体冷媒の10倍に及ぶ発熱・吸熱を生じるような柔粘性結晶における巨大圧力熱量効果のメカニズムを原子レベルで解明するというものです。
 左下にありますように、加圧すると非常に低温の状態になり、減圧すると高温状態になるというものが圧力熱量効果というものです。
 このネオペンチルグリコールという物質について、中性子準弾性散乱による測定を行ったところ、低圧ではネオペンチルグリコール分子の自由な回転状態によりまして、エントロピーが大きい状態になって、これが高温状態に相当すると。
 加圧すると、この分子の回転が止まって、低温状態に相当するような状態になるということで、これが大きな圧力熱量効果の原因であるということが分かりました。
 こうした基礎研究の結果、学術的な成果が新しい冷却技術の開発につながる、グリーンイノベーションにつながるという貢献になったと考えています。
 次のページをお願いします。次のページは、燃料電池のオペランド測定ということで、御存じのように、燃料電池はCO2を発生せずに発電させる電池として注目されておりまして、未来のカーボンニュートラルエネルギーとして期待されています。
 この電池について、実際稼働、つまり発電させながら中性子を照射して、内部の生成水の分布をリアルタイムで観察すると。水素と酸素を反応させることによって水が発生しますけれども、その水自体はなるべく早く排出されることが燃料電池の高出力化につながりますので、この水分布がどのようになっているかというのは非常に重要であると。
 この研究はNEDOのもとで行われたのですけれども、実際に市販されておりますMIRAIの自動車の中の燃料電池セル、300枚ほど使われていると聞いていますけれども、その1枚を取り出してきて、それを治具に入れまして、実際のビームラインに置いたというような形になります。
 厚みが大体1.5ミリぐらいのチタン製の金属なのですけれども、それに加圧した状態で水素ガスと酸素ガスを入れるということで稼働状態をつくり出していて、稼働状態をつくり出すのも自動車会社のノウハウが必要でしたが、右下にあるように、アンペア数に応じて水分布が様々異なっていることが分かりまして、高出力化に向けた指針が得られるというようなことになっています。
 なお、この研究は豊田中央研究所とのいろんな技術研究のもとに行われていまして、豊田中央研究所ではエックス線イメージングと合わせてマルチスケール観測へと発展させておりますし、また低エネルギー中性子領域で10倍の強度が得られるビームライン13番、ここは、今ビームラインが入ってないのですけれども、そこに産業利用新ビームラインをつくってはどうかということで提案が行われています。
 次のページをお願いします。次のテーマは、高強度マグネシウム合金の開発ということで、これはJAEAのスタッフが著者として発表したものです。
 熊本大学で開発されたマグネシウム合金、LPSO-Mg合金は、軽量でありながら、その密度当たりの強度が強いという非常に特徴のある材料で、押出加工圧によって強度が大きく向上するのですが、なぜその強度が変わるのかというメカニズムが分かりませんでした。
 右図にありますように、押し出しの速さが5.0の場合と12.5の場合について、中性子を使った残留応力測定というものをしました。
 それぞれの材料の組織を電子線後方散乱回折で見たのが真ん中のきれいな絵でして、押出速度によってできている組織が大きく異なるということが分かります。
 残留応力測定によりまして合金全体の強度と延性には、構成相それぞれの組織発達が大きく影響していることが分かりました。
 この結果を踏まえて、延性や剛性など目的に応じた性質を持つ軽量高強度マグネシウム合金材料の開発指針を提示したと考えていまして、今後、航空機や自動車の省エネルギー、安全性に貢献できるものと考えております。
 次のページをお願いします。次は、超高密度な磁気渦を示す二元合金物質の発見というものになります。これは、東大、理化学研究所が中心になって行った研究になります。
 電子スピンの渦巻構造である磁気スキルミオンというのがありまして、右のきれいな矢印が円形に並んでいるものなのですけれども、この状態のありなしで記録を保存するということが考えられております。
 ですので、この丸いスキルミオンがなるべく高密度で存在することが情報担体としては非常に重要な特性になります。
 この研究では、特殊な対称性の結晶構造を持つ物質中でのみ現れると考えられていた磁気スキルミオンが、二種類の合金から成るシンプルな材料で形成されることが報告されており、そのスキルミオンの状態についてエックス線及び偏極中性子で調べたものになります。
 結果としまして、磁場や温度によって磁気スキルミオンの並び方が変わるということが分かりまして、それは右の下の赤っぽい絵になりますけれども、磁場を上げていきますと、左から二つ目のひし形の格子に配置したものから、右の正方格子に配置したものに変わるということが分かりました。
 この結果を踏まえてシミュレーション等を行うことで、物質中を動き回る電子が媒介する磁気相互作用に由来しているということが分かりました。
 このような新しいスキルミオンができるということが分かって、しかもスキルミオンのサイズが3.5ナノということで、これまでの通常よりも大分小さいということが分かりまして、スキルミオンを使ったスピントロニクス材料開発への道筋が開けるということが期待されます。
 次のページをお願いします。次からはミュオンの研究になります。これもセンター長が紹介した資料かと思います。
 成果例1、2、3、4とありますが、1、2、3について御紹介させていただきます。
 ミュオンについては非破壊分析ということで、文理融合研究・地球惑星科学というところが非常に新しい研究として進みつつあるところです。
 次のページに行って成果例1ですけれども、二つの成果が一緒になっております。小惑星リュウグウの石の元素を非破壊で分析ということと、緒方洪庵が遺した、開かずの薬瓶を非破壊で解明ということになります。
 「はやぶさ2」が持ち帰りました小惑星リュウグウのサンプルを地球の大気に汚染させることなく、その元素をきちっと測るということで、これも持ち帰られるまでに相当な準備がされたのですけれども、無事に測定ができまして、0.1グラムの試料ということだったのですけれども、結果として、これまで最も原始的と言われていた隕石の組成と近いけれども、酸素の含有量が明確に少ないことが判明しております。
 この結果で太陽系の成り立ち、生命の起源に迫るような研究に展開できればと考えております。
 二つ目の文理融合ですけれども、緒方洪庵が遺した薬瓶というのがありまして、これが鉛ガラスの瓶の中に入っていまして、文化財的な貴重さというところで、これも大気曝露ができないので、非破壊で何とかしたいということで、ミュオンを使った元素分析ということが行われまして、文献にある、伝えられているようなものであったということが分かっています。
 こういう形で、歴史的遺産へ理学的なメスを入れるという文理融合研究がミュオンビーム、あるいは中性子ビームを使ってこれから展開されていくものと思います。
 次のページをお願いします。次のページは、次世代太陽電池が高効率性を発揮するメカニズムを解明と言われるもので、ヨウ化鉛の結晶の真ん中にメチルアンモニウムが入っているのですけれども、このメチルアンモニウムの側に、左の図で赤くミュオンと矢印が書いてありますけれども、この物質にミュオンを打ち込みますと、その場所にミュオンがとどまると。ミュオンは磁気スピンを持っているわけですけれども、メチルアンモニウムが核磁気モーメントを持っていまして、このメチルアンモニウムが非常に速く回転するとミュオンのスピンはそれに追随できないということ。
 それから、適当な速さで回転していると、ミュオンが追随できる速さで回転しているとミュオンの偏極は失われるということで、その失われ方をプロットしたのが左側の真ん中の絵なのですけれども、点線がミュオンの磁気スピンが失われる様子を表していまして、それに対して、黒丸で表したのが実際の電荷キャリア寿命、光ルミネセンス測定から求めた電荷キャリア寿命、これはミュオンとは関係ない手法で求められているわけですけれども、そのキャリア寿命が変化する様子がミュオンのスピン緩和と非常に一致しているということで、電荷キャリア寿命がメチルアンモニウムの回転運動と非常に密接に関係しているということを見いだしました。
 このような方法による分子回転の測定というのは、MLFで初めて行われたことでして、こういったμSR法の活用というものがこれから期待されます。
 今はメチルアンモニウムの回転運動でしたけれども、リチウムイオンとかナトリウムイオンとか、そういうものの拡散にも使えそうだということで、これから電池材料へのμSRの展開が非常に期待されているところです。
 長くなってすみません。最後、次のページになります。ミュオニウムを用いた微細構造精密測定におけるラビ振動分光の適用ということで、左上にあるように、核共鳴の共鳴周波数、ミュオニウム原子の共鳴周波数を求めるときには、通常は、共鳴周波数を掃引してスキャンしてこのピークを求めるわけですけれども、ラビ振動分光というのは、ある特定の振動数で強度がどのように変化するか時間変化を追っかけてやると、右の図のように、黒とか赤とか青とか緑というものになるのですけれども、この時間の変化に対して、ラビ振動のシミュレーションと比較して逆問題を解く形で解いてやると共鳴周波数が求まるという非常に新しい方法で、これまでの精度を2倍更新する結果がDラインにおいて得られました。
 今回はゼロ磁場だったのですけれども、将来的にはHラインで高磁場下でのミュオニウム微細構造の観測に用いられて、最終的には、g-2実験におけるミュオン質量の高精度決定に道筋をつけたと考えています。
 それからもう一つ、次のページをお願いします。技術のところですけれども、少し簡単に述べますけれども、ミュオンでのTESカロリメータというものがハドロン研究をベースに使われまして、これがミュオンの原子形成過程の解明、ミュオンプラスに電子が入ってくる様子を調べるとか、そういうことに使われて、左の少し薄いですけれども、黒と赤の線であるように、今回のカロリメータは非常に分解能が高い。かつ、分解能が高くて検出効率が高いということで、非常に優れたエックス線検出器になります。
 ですので、放射光でもXAFSとかに使われていると聞いておりまして、そういったいろんな分野の融合で新しい検出器がJ-PARCから生まれている。
 右のほうは、負ミュオンとして発生したものを、四方八方に出るようなもの、非常に広がりが大きいものを負ミュオンとして減速して、集めてから加速するという新しい原理を用いることで、負ミュオンの加速に成功したというものです。これもg-2/EDMの実験に使われる予定です。
 下の新たな測定技術、中性子ホログラフィーというのは、中性子が入ってきた平面波と原子によって散乱された球面波が定在波というものをつくるのですけれども、その定在波の強い部分にある元素から出るエックス線というのは強いわけです。
 ですが、入ってくる中性子の方向を変えると定在波の立つ方向が変わるので、それをぐるぐる回してやりますと、ガンマ線を発生する原子がどこにあるかというのが3次元空間的に分かるということで、微量元素周りの原子構造を元素選択的にミクロに解析する世界初の手法として開発されました。ということで、これも新しい方法になります。
 次のページはスタッフによる受賞歴ですが、時間の都合で割愛させていただきます。
 以上になります。
【小林センター長】  それでは、ハドロン実験施設、お願いします。
【小松原素粒子原子核ディビジョン長】  素粒子原子核ディビジョンの小松原と申します。
 まず、ハドロン実験施設における主な成果を御紹介させていただきます。
 めくっていただいて16ページです。ハドロン実験施設は、K中間子やミュオンを用いた原子核・素粒子実験を展開しております。このスライドにあります図で赤い四角形で示しているのが実験を行うビームラインということでして、複数の実験を同時に行うことができるというのがこの施設の特徴でもあります。
 左下にあります、岐阜大学の仲澤先生が仁科記念賞を受賞する研究もここから生まれております。
 次のページに行っていただいて、主な成果、まず左上で、ハドロン実験施設では、原子核の中に普通の陽子とか中性子だけでなく、ストレンジ核子と呼ばれている新しい粒子をつくりまして、そこでどういうことが起こっているかを見ているのですけれども、左上は、そのグザイ粒子と、陽子、中性子、いわゆる核子との間に働く力というのが引力であるということを確定すると。
 あるいは、右上で、これはK-の中間子を含むような新しい原子核の状態を発見するという研究。そして、下のほうで、ストレンジ核子の中のシグマ粒子という、非常に寿命が短くて、普通のやり方では測れないような粒子と陽子の散乱実験というのを行うこともできています。
 次のページに行っていただいて、先ほどもMLFのミュオンのところでちょっと出てきましたが、新しいエックス線測定器というので、ここにマイクロカロリメータ、TES、テスと呼んでいる検出器があるのですけれども、それをハドロン実験施設で、K中間子原子というものからのエックス線の測定というのに導入しまして、真ん中の図は、2007年とか2011年のほかの施設での実験に比べて、精度を10倍向上させ、非常にエラーバーを短くするということができているということです。
 右側にこの検出器の写真があるのですけれども、これがMLFでのミュオン原子からのエックス線の測定にも導入されて、産業応用につながるような分野横断的な検出器の開発、あるいは、J-PARCは1つのサイトで多様な実験を行うという独自なところがあるのですけれども、そこを生かした研究となっています。
 下のほうは素粒子の分野ですけど、中性K中間子の数百億回に1回ぐらいしか起こらないような非常に稀な現象を探すという、それで対称性の破れを見つけようという、そういう実験が進行しております。
 次のスライドに行っていただいて、続けて、ニュートリノ実験施設における主な成果を説明させていただきます。
 めくっていただいて、ニュートリノ実験施設は、ニュートリノという極めて質量が小さい粒子の性質をニュートリノ振動という現象で研究しているのですけれども、J-PARCで生成したニュートリノを295キロメーター離れた神岡のスーパーカミオカンデで検出して、ニュートリノ振動の測定を行う。
 2013年に世界で初めてミュー型から電子型ニュートリノへの変化を発見したのに続いて、この図ですと左の上にあります、ニュートリノのビームで測った振動と、反ニュートリノ、反粒子の反ニュートリノのビームで測った振動の違いから、いわゆる対称性の破れ、CP対称性の破れを研究しておりまして、これは世界で初めて、右の下になりますけれども、ニュートリノでのCP対称性の破れというものを表すのが角度、位相角と呼ばれているパラメーターなのですけれども、これを初めて測定することができて、ネイチャー誌に投稿しまして、2020年の10大発見の1つとして選ばれております。
 次のページに行っていただいて、以上のようなT2Kの実験の成果というのは非常に高く評価されておりまして、最近の例ですと、東北大学の市川先生が猿橋賞、そして今年度の仁科記念賞を受賞する、そういうことにつながっております。
 あと、この実験の検出器では、一番下にあります、半導体ベースのMPPCと呼ばれているセンサーを浜松フォトニクスと共同で開発して、かつ実験のために大量採用して、産業応用も含めた実用化に大きく貢献しているということもあります。
 私からは以上です。
【小林センター長】  それでは、核変換について。
【前川核変換ディビジョン長】  核変換ディビジョンの前川と申します。それでは、核変換実験施設に向けた主な成果について御説明いたします。
 次のページに行っていただいて、将来の大強度加速器の有力な応用として、原子力発電に伴い発生する放射性廃棄物を低減する核変換技術があります。
 上の図にありますが、超伝導陽子加速器で未臨界炉心を駆動するもので、英語名を略してADSと呼んでいます。
 30メガワットの陽子ビームを加速し、これを未臨界炉心中心の標的に入射して中性子を生成し、この中性子をトリガーとして標的周りに配置した有害元素を核変換します。
 標的及び炉心の冷却材として液体の鉛ビスマス合金を使います。
 また、ADS開発に当たっては、実際に陽子ビームを用いた試験が不可欠なため、左の図にありますように、J-PARCでは核変換実験施設計画を進めてきました。
 一番下の開発課題がありますが、こうしたADS及びJ-PARC実験施設の課題解決のため、J-PARCでは、大強度標的と加速器に関するR&Dを進めています。
 次のページで主な成果を御紹介します。まず、このページは鉛ビスマス技術になります。
 左側、J-PARCの実験施設では、鉛ビスマス標的に陽子ビームを入射します。標的システムはループ形状とし、液体鉛ビスマスを循環させることにより、熱交換器でビームによる発熱を除去します。
 そこで、高温液体金属に適用可能な機器や、標的の交換に必要な遠隔操作技術を開発し、モックアップループを作って長期連続運転に成功しました。これによって、実験施設に求められる標的システムの運転能力を実証しました。
 次、右に移りまして、高温液体鉛ビスマスは、鋼材を腐食させる性質があります。腐食抑制には鉛ビスマス中の酸素濃度制御が重要です。
 そこで、その制御技術を確立し、また先に述べたループの運転技術も合わせ、鋼材の腐食試験を開始し、腐食データを取得しているところです。
 次のページに行っていただいて、次はADS固有の高エネルギー核データに関する成果です。
 左は、材料の放射線損傷評価に係る実験データをJ-PARCの陽子ビームを用いて世界で初めて測定したもの。右は、京都大学の加速器を用い、鉛等の標的に100MeVの陽子を入射したときに生成する中性子の強度とエネルギースペクトルを測定したものです。
 これらは、ADS設計に必要な高エネルギー核データ高精度化に資するデータを充足したものになります。
 これらの実験はどちらも文科省からの外部資金をいただいて行ったもので、日本原子力学会の論文賞等を受賞しています。
 次のページ、最後ですが、加速器技術についてです。
 左は、大強度陽子ビームにレーザーを当て、レーザーを当てた瞬間だけビームを切り分ける技術を開発したもので、これは実験施設の成立性に係る重要な技術なのですが、これを、実際に加速器を使って実証したものです。
 また、右ですけれども、ADSに必要な超伝導加速器の空洞と呼ばれる部分を試作しています。
 ニオブの板を曲げ、電子ビーム溶接で複雑形状の空洞を製作しているところです。
 こうした取組により、ADS開発の枢要技術開発の見通しを得るとともに、J-PARCの将来計画にも貢献できるものと考えています。
 以上です。
【小林センター長】  それでは、まとめのページ、最後のページですけれども、時間もありますので、朗読は省略させていただきます。
 以上になります。
【高原主査】  ありがとうございました。それでは、ただいまのJ-PARCセンターからの御説明に対しまして御質問、御意見等ございましたらお願いします。
 質疑の時間は約30分程度取っておりますので、オンラインの方も含めまして御発言いただければと思います。
 では、中野先生、お願いします。
【中野委員】  ミュオンに関して三つほど質問があるのですが、まず緒方洪庵の開かずの薬箱の解析に代表される文理融合研究、非常にすばらしいと思うのですけれども、このような研究では、ふだん加速器を使った研究をされてない方、新しいユーザーというのも開拓していかないと今後広がりが出てこないと思うのですが、そういうことについて今までどのような工夫をされていて、今後どのような工夫をされる予定かということをお伺いしたいです。それがまず第一番目です。
 二番目は、ミュオンのRF加速、g-2実験につながるような進展が見られたということですが、今後の課題について説明していただけるでしょうか。再加速してさらなる新しい技術の開発が必要なのか、それとも原理、実証はできているので、あとは例えば陰電子の問題だけなのかという点をお伺いしたいです。
 最後、TES検出器についてです。これも非常にすばらしい技術なのですけど、多分これは、米国のNIST(米国標準技術研究所)製のものだと思います。
 今後、このTES検出器というのをいろいろな分野とか応用を広げていくためには、大面積化であったりダイナミックレンジを広げるであったり、いろいろなテーラーメイドの改良が必要になってくると思うのですが、そういったところの見通しというか、米国NISTとの関係、あるいはNISTに頼らずに国産化が可能であるなら、国産化というものの見通しについて御説明いただきたいと思います。
 以上です。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  大友です。文理融合のところからお答えします。
 これは、物構研が中心になって文理融合研究シンポジウムというのを毎年開催していまして、国立博物館でやっているのですけれども、そういうところに著名な研究者の方をお招きしたりして成果をお話ししていただくとともに、これから文理融合研究の中で使っていただけそうな方にもお話しいただいて、関係者で意見交換をするというような形で広げているということと、それから文理融合研究を進めるために、物構研のミュオングループでは、物構研の課題の中で文理融合研究課題というものを設けて、新しい可能性のある方をまずは施設側の主導で入っていただいて、どんなことができるかよく分かっていただくということを今進めようとしています。
 文理融合研究についてはそのような状況ですけれども、よろしいでしょうか。
【中野委員】  よく分かりました。ありがとうございます。
【小松原素粒子原子核ディビジョン長】  g-2については、次のお話でもスライドをお見せしようと思っているのですけれども、g-2実験そのものですか、それとも加速ということ、両方ですか。
【中野委員】  加速のほうです。ミュオン源としての準備状況、登山で例えれば何合目ぐらいにいて、今後、越えなければいけないハードルがあるのだったら、どういうものを越えなくてはいけないかということについて御教示ください。
【小松原素粒子原子核ディビジョン長】  今回、加速したミュオンということですけど、厳密に言うと実験に使うμ+というよりは、μと電子の束縛状態つまりミュオニウムにさらに電子が束縛された負ミュオニウムイオン、そちらのほうということで加速に成功しているということですけれども、次のステップとして、ミュオンとして加速してというところを示すというところを今年度のビームタイムで実現しようとしていると聞いています。
 ミュオンの加速という意味では、そこがマイルストーンだと思いますけれども、g-2の実験に向かっては、あと幾つかきちんと実証しなきゃいけない点があるとも聞いています。これでよろしいでしょうか。
【中野委員】  できれば、一番高いハードルというか、ここが技術的にネックになっている、あるいは一番の開発要素であるというものがあれば、それについて御説明いただけるとありがたいですが、分からなければそれでいいです。
【小松原素粒子原子核ディビジョン長】  ミュオンの加速ということに関しては、そういう点はクリアされていると聞いています。
【中野委員】  陰電子についても大丈夫なのでしょうか。
【小林センター長】  レーザーの強度というのは大きな課題、ハードルになっていると聞いています。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  止めて出たときに、低速ミュオンとして出たときには、小松原さんがおっしゃったように、μと電子が結合されているのですけれども、その電子をはぎ取るのに強力なレーザーが必要で、大出力レーザーを安定的に供給するところの技術開発、半導体の開発がまだできてなくて、ただ、毎年進歩しているので、そろそろ開発のめどが立ちそうというところと聞いています。
【中野委員】  分かりました。ありがとうございます。
【小林センター長】  TESの開発状況、ちょっと私のほうでは……。
【小松原素粒子原子核ディビジョン長】  今大面積化とか国産化という御質問がありました。いまここに答えを持っていないのですけど、この場で答えられるということでは、ハドロン実験施設、非常にビームがたくさん出ている、高いレートの環境下でこの検出器がきちんと動くかというところは懸念だったのですけれども、そちらはハドロン実験施設の実験ということできちんと測定できるということが分かって、それがMLFの環境下でのミュオンの実験というところにもつながったと聞いております。
【中野委員】  分かりました。非常に夢のある技術というか、今までの技術を完全に凌駕しておりますので、大変期待しております。ありがとうございます。
【高原主査】  中野先生に今回答できなかった分は、後日よろしくお願いいたします。
 では、上村先生。
【上村委員】  そうしましたら、私のほうから一つは、MLFの海外の水のエントロピーの高温と低温になるという、すばらしい御研究だと思うのですけど、海外からのビームタイムの振り分けというのは、XFELだと国内の人が共同研究者になっていないとビームタイムをあげないというふうに、貴重なものなので、そういうふうにSPring-8とかはしているのですけど、中性子の場合、J-PARCの場合は、例えば単独とかで申し込んでこられた場合とか、そういうのも受けられるような形になっているのか、お伺いしたいのが一つです。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  今のお答えに関しては、特に制限はないということですね。もちろん、該非判定とか、そういうことの判定はしますけれども、基本的には、課題申請書を見て、学術的に意義があれば、その意義の高いものから実施していて、その割合がたまたま海外からであっても、出し方というか、チームによって区別するということはしておりません。
【上村委員】  そのアッパーリミットというか、そういうのは特に設けてないということ……。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  設けてないのですけれども、海外からの申請は増える傾向にありまして、それによって国内が減っているということもない、それが原因で減るということはないと思うのですけれども、国内の方に使っていただくというのは非常に重要ですので、そのための工夫というのは、いろんなファクトに基づきながらやっていきたいとは思っています。
【脇本副センター長】  今の点に補足。申請で、要するに日本の誰かが共同申請者になっているという要件はないのですけれども、現実問題として、海外の方が勝手に来て勝手に実験して、こちらの施設の人間が何も関与しない形で帰っていくということは基本あり得ないです。
 なので、実際こういうふうなパブリケーションで論文になるようなケースでは、必ず共同研究者、共同著者として入ってきますし、そういう意味では、関与はしているという形にはなっています。あくまでも、申請受付の段階でそういうハードルは設定してないと。
【上村委員】  先ほど大友さんがおっしゃったように、国内の方の利用がディスターブされないのであれば、私としては、こういういい研究にどんどん使われていくということで、やっぱりJ-PARCの価値というか、KEKもそうだったじゃないですか。海外の有名な方が放射光を使いにいらして、それで日本のレベルが上がっていったというのもございますので、ですから、国内の方が全く使えなくなるというのは困るのですけど、どんどんいい研究は、XFELだと国内研究者がいないと駄目なのですけど、そういうのを取っ払って使っていただいて、どんどん役立てていただいて、いろんなもののアウトプットというか、それに使っていただけるというふうにやるのは、学問のオープン性を担保する上で非常に大事かなと思います。
 あともう一つは、ニュートリノのCP対称性の破れというのも、実験で検証したというのもすばらしいと思うのですね。こういうのも、これだけ有名な研究なのですけど、一般国民に対して、この間もちょっと申し上げたのですけど、プレスリリースは多分されているとは思うのですけれども、やっぱり見る人しか見ないという感じだと、国民への情報提供という意味ではまだまだ足りてないと思うのです。それに限らずすばらしい研究がXAFSとかにも関係するようなところにも非常にやられているところを、もうちょっと工夫して広報といいますか、一般紙にというのも必要かもしれないのですけれども、そういうふうな形で理解をされるような情報提供、それをやっていくと、この間の話にもつながるのですけど、今回、これだけ成果が出ているので、その辺を工夫していただけるとさらにいいかなと思いました。
【小林センター長】  ありがとうございます。広報は本当に重要だと捉えていまして、思いつく限りでいろいろあの手この手でやっているところだけれども、なかなかビューワーというかビジビリティーというのは広がっていかないというところで、いろいろ新しい試みをしていかないといけないとは思っているところです。
【上村委員】  日本はノーベル賞だけ特別視するところがあって、ノーベル賞を取ると皆さん一般の方も見るのですけど、そうじゃない賞というか、そこに関して、あまり変わらないと思うのですよね。ノーベル賞じゃなきゃだめ、意味のないということは絶対ないので、その辺をノーベル賞じゃなくても、もうちょっとやるとすごくいいかなと思ったのですけどね。
【小林センター長】  例えばJ-PARC講演会というのを東海村でやっていて、最近はオンラインの配信をやっているのですけれども、そういう行事があるという情報を届ける手段というのが多分重要なのだと思います。これからもインフルエンサーの活用とか、そういうことも考えていきたいと思います。
【上村委員】  そうですね。SNSも活用するとかして、ありますよみたいなところをやるとか。
【小林センター長】  ありがとうございます。
【高原主査】  広報関係はこれからまた、次回。
【小林センター長】  そうですね。
【大竹委員】  御紹介いただきました成果例2のプレスリリースのところで、企業さんを巻き込んで、またNEDOの課題でという形で非常にいい成果を出されていらっしゃると思いますが、そういう意味では、やはりJ-PARCの特徴で、海外の大型施設と比べて産業利用のパーセンテージは、ずっと当初から非常に多くて、しかもこういった学術にも応用できるような形での成果がきっちりと出てらして、しかもそれが新しいビームラインにつながっている、非常にすばらしいと思います。
 こういった結果を海外の施設の結果と比べたときに、実際に大手の様々な企業さん、これまで実は海外施設を使われている経験、豊富ですよね。それがやはりこうやってJ-PARCにビームラインをつくりましょうという決め手になったところというのは、おっしゃりにくいのかもしれないですけれども、そういったところを教えていただきますと、やはり今の情報発信もそうですけれども、研究機構だけでなく、やはり企業さんの発信の仕方は非常に大きいので、そういったところを上手に出していかれるといいのかなと思いまして、この②のこういった成果に関しては、何かその辺り教えていただけますか。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  この研究、プレスリリースのところに入ってない名前が大企業で入っていまして、そういう方は、やはり海外を使われたグループも結構多いのですけれども、都度海外に行かなければならないということもあり、また燃料電池というのは、治具の間に挟んで高圧をかけて、高圧というか、かしめてやるとか、非常にノウハウの塊なのですね。ただ水素と酸素を供給すればできるというものじゃなくて。
 だから、実は実験をする前には、ある程度の前乗りというか、早めに入り込んでいただいて、そこで動くようになったということをつくった上でビームに当てているということがありまして、実験をする上では、国内でいろんなノウハウを積み重ねていて、専用ビームラインがもしあれば、一々燃料電池用のセットアップを外して、また入れ込んでということがなくなるので、継続的にできるということがまず一つ。
 それと、13番というビームラインの中性子の強度を比べると、海外のイメージングの中性子の強度とかなり匹敵するようなところまでいきまして、ほかでやる理由がなくなってくるというようなところもあって、そこが実際に中性子を使っておられる企業の方にも、これは必要だというか、ぜひつくりたいというようなことになっていると理解しています。
【大竹委員】  ありがとうございました。あと一ついいですか。新しい測定技術のところで中性子ホログラフィー、こちらは何か具体的なニーズとか利用先とか、または産業界からの期待とか、そういったものはございますでしょうか。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  今のところは、顕著に企業からということはまだないですね。だから、どちらかというと基礎研究で、さらにホログラフィーとしての使い方についていろんな拡張をされているという段階と思います。
 あと、ここは中性子のホログラフィーは意味があるということを言っていますけれども、エックス線のホログラフィーはSPring-8等でやられていますので、そういう相互利用的な観点での拡大というのが今図られているところになります。
【高原主査】  飯沼先生、何かございますでしょうか。先日、実際に現場のほうを見られていましたけれども。
【飯沼委員】  飯沼からも質問が三件ほどあるのですけど、今発言させていただきます。
 今回、中性子のビームラインの成果とミュオンのビームラインの成果と多分整理されて順番で出てきたと思うのですけど、例えば中性子のほうというのは電池の中の水の動きに、水を引っかけやすいということで、そういう特徴があって、水の動きによって電池の特徴を出すと。
 ミュオンのほうは太陽光パネルだったかと思うのですけど、ミュオンのほうではちょっと違うタイプの電池だったと。
 せっかく1つの施設でミュオンだとか中性子だとかプローブがいっぱいあるので、それを相補的に利用したときに、何か一つこういう装置の全体像の、どこは中性子、どこはミュオンでという、コンプレックスの名にふさわしいような成果の見せ方もあると分かりやすいかもなと。
 私もミュオンのほうは多少分かるのですけど、中性子のほうはちょっと疎いので、プローブとしてどういう魅力があるのかというのを分かるようにすると、ほかの施設にはないJ-PARCの魅力が引き出せるのではないかなと、そういうプッシュの仕方があるかなと思いました。
 二つ目なのですけど、ゼロ磁場のミュオン、ハイパーファインスプリットの成果ですか、ミュオンのところの、次かな、成果3になるのかな。
 私、g-2実験をやっていまして、先ほどもg-2に特化した質問があってどきどきしながら聞いていたのですけど、これ、今、Hラインに磁石を移動させようという、まさにそういうときだと思うのですけど、今の段階で西川賞とか取って非常にアクティブなのはいいのですけど、磁石を入れたときにさらにどういう成果が期待されるのかというのを伺いたい。
 三番目なのですけど、私、スキルミオンというのを見ていて面白いなと思うのですけど、ミクロな領域でのスピンの状態が非常に美しい形になる。これは金属の中を中性子で見ていっているものなのですけど、これはスピンがこういう形になるということは、金属の中でローカルに磁場分布がこういう形になっているということなのですかね。
 例えばそういうのを、今のミュオンビームの大きさだと大変かもしれないのですけど、例えばミュオン顕微鏡とか、そういうのを使って実現すると、スキルミオンというのもミュオンの目で見られるようになるのかな、それが将来の量子コンピューター、量子ビットとかにどうつながっていくのかなとか、赤い四角で書いてあるのですけど、それをもう少し分かりやすいというか、一般的にアピールできるような、そういうストーリーがあればぜひ勉強したいので教えていただきたいなと。
 質問なのだかコメントなのだか分からないですけど、以上三点です。
【高原主査】  かなり複雑な質問になりましたけれども。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  最初の中性子とミュオンの特徴とかすみ分けを分かりやすく示してはどうかというのは、確かにおっしゃるとおりで、ちょっと口頭でも申し上げたのですけど、例えばミュオンでやっているリチウムイオン電池の中のリチウムイオンの拡散定数の測定とか、最近、ミュオンを使ってオペランドでやられたりして、また中性子のほうでも準弾性散乱等を使ってリチウムとかナトリウムの拡散定数を測る試みがされていまして、それぞれ頻度が違うのですけれども、それを用いることはお互いにやられてはいます。
 ただ、両方を持ち寄ってというところはまだまだこれからかなというところでして、例えば中性子でリチウムイオンの拡散を見るというのもMLFが初めてでしょうし、ミュオンのほうでイオンの拡散を捉えるというのもまだ始まったばかりというところで、ただ、やり始められていて、両方を同じ研究者というか同じグループがやろうとしているので、先ほど飯沼先生がおっしゃったような形での見せ方というのは、目指しているところでありますけれども、まだ十分にできてないかなと思います。
 太陽電池にしても、先ほどメチルアンモニウムの回転ということを申し上げましたけど、全体のフォノンの伝播というのは、この経緯で中性子でも測られています。
 ただ、まだそれも、これはこれ、あれはこれという感じになっているので、研究者の方々の興味をどういうふうに引きつけてMLFとしての成果を出していくのかというところはまたいろいろと考えなきゃいけませんけれども、かなり近いところまでは来ているので、飯沼先生がおっしゃるような見せ方は、これからも考えていきたいと思います。
 g-2の質問はどういう質問でしたっけ。
【飯沼委員】  g-2自体はあえて私からは触れてないのですけれども、これ、ゼロ磁場ですよね。これからHラインで磁石を突っ込んで、その中でまたデータを取ると思うのですけど、そこでどんな成果が、今2倍精度を更新したものが、磁場があるとこれが何倍更新するとか、そういう見通しがあれば教えてください。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  磁場をかけることで準位がまたスプリットして、ハイパーファインが厳密に求まるとは理解しているのですけれども、何倍というのがすぐに分からなくて、最近、何倍という数字があちこちいろいろ出ていて、どの数字がどれだか分からなくなって、すみません。また調べて回答させてください。
【飯沼委員】  私も知ってなきゃいけないのですけど、やっと磁石がHラインに入るという、結構遅れ気味だと思うのですけど、やっと整ってすごく期待していますので、引き続きよろしくお願いします。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  スキルミオンのミュオン顕微鏡での観測についても、これは本当にスピンの傾きみたいなものを透過してくるミュオンで測れるのかというのは全く私分からないので、また改めて専門家の方に聞いてお答えしたいと思います。
【飯沼委員】  私もよく分からないで聞いているので、ローカルな磁場に関わるのであれば、ミュオンも得意なはずなので、うまく参入できるといいな。ただ、金属の中だからどうなのだろうなと思ったのですけど。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  あと、透過してきたミュオンのスピンがどんなふうに回転しているかを見るのはとても難しそうなので、どのぐらいできるのかなというところですね。
【飯沼委員】  ビームの偏極率ということですか。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  そうですね。最初は偏極しているけど、そうですね。すみません、僕もほとんど知らないので、調べさせてください。
【飯沼委員】  そうですね。透過顕微鏡はあまり偏極率を、気にしてなかったかもしれないです。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  まずは、結像させることがメインというところですかね。
【飯沼委員】  では、将来的な話かもしれないのですけどね。分かりました。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  いずれにしても、意見を聞いてみます。
【飯沼委員】  よろしくお願いします。
【大竹委員】  ちょうど今ミュオンと中性子というお話が出たので、ミュオンのところで半導体ソフトエラーという項目があって、これ、中性子のほうでは取組はいかがでしょうか。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  中性子のほうでもビームライン10番とか、やはり取組をされていますので、両方で取り組んではいまして、僕自身が成果を全体として把握できていませんけれども、同じグループとして取り組んでいると聞いています。
【高原主査】  ほかにオンラインのほうからいかがですか。よろしいでしょうか。
 やっぱりダイナミクスがかなり測定できるようになっているというのが、しかもその場で、in-situというということで非常に著しい進歩に驚きましたけど、ペロブスカイト太陽電池は、今研究者は非常に多いですけれども、この辺り、企業さんはまだ興味を持っておられないのですか。こういうことが見えたら、材料革新にもつながっていくと思いますけれども。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  まだそこは……。持ち帰って、また課題申請の内容とか少し見てみますけれども、今のところは、大々的には少なくとも入ってきてない。
 おっしゃるとおり、これからの太陽電池材料として、高効率の太陽電池材料として重要なので、どういうことを貢献できるかアピールすると企業の方にもう少し興味を持っていただける可能性があると思います。
【高原主査】  ほかに何かございますか。大体時間どおりになりますけれども、この後でも一部重なっている内容というのがございますので、その時にまた改めて御質問をされてもいいかと思います。
 それでは、資料1に関してはここで一応打切りまして、続きまして議題2、前回中間評価の主な指摘事項に対する対応(1)に入ります。
 資料2に基づきまして、J-PARCセンターより説明をお願いいたします。
【小林センター長】  それでは、資料2で御説明いたします。
 めくっていただいて2ページ目。これは前回の中間評価の指摘事項の対応状況ということで、評価のまとめという前回の第1回目の資料2に当たりますが、それを箇条書きにしたものです。
 2ページ目と3ページ目で箇条書きしたものの中で、今回、第2回の作業部会でこのプレゼンで御説明させていただくのが白抜きになった部分であります。
 一番左の文字を読みます。施設整備の運用、将来に向けた高度化、その他指摘事項の中で、ミュオン、ハドロン、核変換の整備状況、その他指摘事項の既存施設の高度化、この辺りをまとめて御説明させていただきます。
 4ページ目、資料の見方です。先ほどの指摘事項、今回、御説明するアイテムだけ抜き出して書いてあります。
 資料がそれぞれの施設ごとになっていますので、この指摘事項に対応する部分というのが少し分かりにくくなってしまっているところがあるので、この指摘事項の対応ページが一番右に書いてあり、かつ各ページにはIDと書いてあるところ、運用、高度化、その他などが各ページの右上に書いてあります。
 ということで、目次に沿って順次、御説明させていただきます。
 6ページ目、7ページ目に行っていただきまして、まずは全体概要、施設整備の運用、将来に向けた高度化の全体概要です。まずLINAC、RCS、MLF、核変換に関して、現状については、設計強度はほぼ達成。それから、availability、運転効率というか、予定した運転時間に対して何%で運転できたかというのが90%達成、現在は毎年標的交換。ビームラインの設置状況はこのとおりと。
 今後どこを目指していっているかというと、一つは、現在のターゲットステーションでの成果の最大化、2030年頃までに実験効率の2倍を目指す。これは詳しく後で出てきます。その中では、高稼働率、それから標的の高度化などを進めていきます。それからさらに、その先の将来として、2030年代に第2ターゲットステーションの実現を目指していきたいと考えております。
 核変換に関しては、多様なニーズに対応可能な実験施設の検討、その実現に向けた取組を行っていきます。
 次のページがメインリング、素粒子・原子核ですけれども、加速器については、現状、初期の設計性能750キロワット、ワンショットですけれども、加速成功しております。
 それぞれの施設の今どこにいるかということで、ハドロン実験施設は64キロワットの定常運転で現行プログラムを着実に実施していっているところです。
 今後、ハドロン実験施設はどこを目指して行っているかというと、100キロワットの定常運転、さらに高度化されたターゲットの導入、大きいものとしてハドロン実験施設を拡張する。
 ニュートリノ実験施設は、540キロワットの定常運転を実現して、CP対称性の破れの測定を始めております。
 今後どこを目指すかといいますと、まずは750キロワットの定常運転を年度内に達成することを目指しております。
 T2K実験、現在のニュートリノ実験は2026年までに、現在示唆されている破れが最大の場合は3シグマを目指している。
 2027年からハイパーカミオカンデでCP非保存の発見を目指していきたいということが全体の概要になっております。
 以降は、それぞれ各施設のディビジョン長から説明させていただきます。
【金正加速器ディビジョン長】  金正です。加速器施設、LINAC、3GeVシンクロトロン、RCS、メインリング、MRの施設の運用と将来に向けた高度化に対して、加速器ディビジョンの金正が御報告をします。
 次をお願いします。
 まず、LINAC、RCSの性能向上ですが、この5年間は主にビーム出力の向上と安定性向上を行ってきました。
 左下に目標稼働率と書いていますが、2024年度内に1メガワットで90%以上、そして2028年度までに95%の稼働率を目指すということにしております。その後、ビーム出力の向上をまた行っていきたいというのが10ページ目の資料です。
 次お願いします。具体的にどういうことをしてきたかというのが次のページで、LINACとRCSに関しては、主にビームのロスの低減を行ってきました。ビームのロスがありますと、どうしても稼働率が落ち、機器が放射化して保守のときに作業者が被曝をするということがありますので、極力ロスを低減するということを行ってきました。
 左上がLINACの結果で、左下がRCSの結果です。LINACに関しては、設計時の40%の低減を達成しており、RCSでは、設計値は3%のビームロスに対して0.1%以下のビームロスを達成しております。
 これらの成果としまして、右側に2020年6月ですが、1メガワットで約38時間、この間の稼働率が94%で1メガワットのビーム試験を行っています。
 右下には、ここ五、六年の稼働率とビーム強度を書いていますが、稼働率は95%程度を5年以上連続して達成しております。これらの成果について、右下に書いてあるような賞をいただいております。
 次お願いします。安定化と大強度化、さらに省エネ化に向けた取組も実施しておりまして、具体的なもの、主なものを三つ書いていますが、一番上のRCSで使用する高周波加速空洞については、開発を終わっております。
 これまでの消費電力に対して4割の削減に成功していて、これが全台で12台ありまして、現在3台、新しいものに置き換わっています。12台全て置き換えますと、年間、現在の電力料金で約4億円の削減を見込んでいます。
 残りの二つに関しては現在実施しているところで、真ん中の高周波源に関しては、高周波の効率の向上と、あと半導体パワースイッチに関しては、真空管タイプというのは消耗品ですので、年間幾つも交換していますが、これはやはりもったいないので、半導体パワースイッチに替えてこういう消耗品をなくしていくという取組を行っています。
 次お願いします。LINAC、RCSの最後ですが、将来に向けてRCSで1.5メガワット相当のビーム加速の試験を行いました。
 2019年12月に初めて行ったのですが、RCSではどういうふうにしてパワーを上げるかというと、加速する粒子の数を増やすということでビームパワーの増強を行っています。
 これがそのときのグラフで、右下に赤、青、緑とかありますが、赤い線が1.26掛ける10の13乗個を加速した図で、これが3GeVまで25ヘルツで加速されると1.5メガワットのビーム出力が可能である。
 どうしてここでやめているかというと、高周波加速空洞のパワーが現状足りませんので、ここまでしか、0.8GeVまでしか加速できないのでここでやめています。
 先ほど申し上げた電力の高周波空洞12台が置き換えられますと、これは全て3GeVまで加速が可能になりますので、そういった意味でも、今開発している高周波空洞が入ってきますと、省エネだけではなくて、将来さらに1.5倍、2倍近いビームパワーの増強が見込まれるという成果です。
 次お願いします。最後にMRの成果ですが、MRは2020年度から将来のビーム増強に向けていろんなものをしています。
 右上にあるのが、この後のMRのビーム増強シナリオですが、2028年度に1.3メガワットの出力を目標にしています。特に2020年から22年の間に、電源の高繰り返し化、高度化を行いました。2022年から新しい電源で運転を開始しています。あとは、そのほかにもいろいろな開発を行っています。
 最後、次お願いします。これが現状ですが、新しい電源に関しては、これまで磁石が立ち下がったときの磁場のエネルギーを交流系統に戻していたのですが、これを繰り返すとなると、電力会社の許容範囲を超えるということと、全部返すのはもったいないということがありまして、新しい電源では、交流系統と磁石の間、電源の間にコンデンサーバンクという、たくさんコンデンサーが集まったものを用意しまして、磁場のエネルギーを系統に戻さずにここに貯める、それでまたこれを再利用するというような仕組みにしました。それに伴いまして、電力の効率が向上しました。
 先ほど話にありましたが、今年4月16日に、設計の所期性能であります750キロワット相当の陽子ビームの30GeVまでの加速に成功しました。そのときの制御画面が左下に書いてあります。
 このときに電力を実測した値が最後にありまして、2021年はビームパワーが512キロワット、このときには電力は約18.9メガワット必要だったのですが、この4月に750キロワット運転したときの必要電力は17.7メガワットということで、電力がほぼ同じであってビームパワーが1.5倍になっているので、効率が1.5倍になったかなとざっくり見積もっています。
 加速器からの報告は以上です。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  MLFの報告をします。
 次のページをお願いします。最初に、1メガワットに向けたMLF中性子源のビーム強度増強の実績ですけれども、左下のグラフ、青いところがMLFへのビーム出力になっていまして、2018年は500キロワットだったのが2023年には840キロワットで安定して運転できていると。
 先ほどの金正さんのお話にあったRCSの出口では、既に940キロワットというところまで行っていまして、これはMR、メインリングとMLFの振り分けによる違いのものです。
 右の図が海外のSNS、ISISの比較ですけれども、SNSは濃い青のところで2,000キロワットと書いてありまして、これは2026年ですか、予定と書いてありますけれども、パルス当たりの中性子強度で比べるとJ-PARCのほうが1メガワット、1,000キロワット運転でも2倍ぐらいSNSに対して優位性があるということを示しています。その1メガワット運転も安定的に動かせるめどが立ってきているということです。
 次のページをお願いします。1メガワットで運転するに当たっての懸念事項としましては、左側に中性子標的容器というのがあります。この中を水銀が濃い青のように、赤い矢印で示された流れをします。
 左側から、くちばしの先のところに陽子ビームが入るのですけれども、陽子ビームが入った容器の内側では、圧力波によってピッティングと言われるような損傷が起きて、そのピッティングによりまして容器が損傷していき、薄くなっていて、最終的には穴が空くというところで、このピッティングをいかに抑制するかが非常に重要で、MLFでは、水銀中にヘリウムの微小気泡を注入して圧力波を和らげるということをしています。
 圧力波を和らげるための気泡生成器の位置をいろいろ工夫していまして、基本的になるべくビームが照射される窓というか箇所になるべく近くして、泡が流れていく間に上に逃げていってしまわないように、ビームが当たったところに泡があるようにという工夫をしています。
 最近の結果では、写真にありますが、損傷がないので非常に分かりにくいのですけれども、最大でもえぐれは0.44ミリということで、これは、もともと5ミリの厚みがありますので、5ミリに対して0.44ミリということで、右下の黄色で書いてありますように、設計目標の1メガワット、5,000時間運転の耐久性は見込まれているということになります。
 次のページをお願いします。持続的な安定性を目指す高度化として、先ほど言いましたとおり、気泡生成器をなるべく前にずらすということをしていて、それによって1メガワット、2年運転、1万時間の運転を考えているところです。
 気泡については、水銀中の気泡ですので、なかなか実測なり観測が難しいのですけれども、機械学習を用いるとか、あるいは容器材料の照射後の機械的な特性の確認とか、そういうことを行います。
 左下にありますが、少し紅色で書いてある830、950とか950、1,000というのがターゲットの運用期間でして、現在と書いてあるところで、夏はビームが出てないので、そこでターゲットを交換して、交換後に950キロワットから始めて1,000キロに到達するというような計画が書いてあります。
 今年交換したものは来年の夏まで1年間運転をして、そこで損傷をチェックしましたら、来年の夏以降は2年間運転を目指す、そういう図になっております。
 次のページをお願いします。このほかにも持続的な安定運転を目指す上で必要なことがありまして、一つは使用済中性子標的容器の保管スペースの逼迫という問題があります。
 右の図で、濃い青、ひし形といいますか、ドットでずっと延びていっているものが現在のまま1年間運転をした場合でして、保管スペースとしては22基しか入りませんので、2034年くらいに保管スペースがなくなるということで、それに対する対策として、先ほどの2年間運転ということがまずあって、そのほかに標的容器の形、左下にありますけれども、水銀の経路に合わせてありますけど、フランジとかいろいろあって、このまま保管すると非常に大きな遮蔽容器が必要なので、これを分解して減容化するということも併せて進めております。
 それが進めば、2060年くらいまでは保管スペースはもつであろうということで、こういう持続性も留意して検討しているところです。
 次のページをお願いします。MLFの将来計画、短期・中期計画として、現行のターゲットステーションでいかに成果を出すかということ、成果を最大化するかということで、いろいろなキーワードで、MLFの内部で今検討を始めています。
 一々細かくは示しませんが、大きく言うと、2030年までにTS1での実効強度2倍を目指す。2030年というのは、例えば中国のCSNSが500キロワットに到達するのが前の年度だとか、2032年にSNSの第2ターゲットステーションが完成するとか、そういった節目でありまして、あとMLFの現在の人員構成を考えると、ここまでにきちんとTS1を使い尽くす、もしくはTS1、TS2を見越したR&Dを始めて詳細設計にも入るような、そういうフェーズでいきたいということです。
 次のページをお願いします。中・長期計画としては、第2ターゲットステーションというのがありまして、これは別な実験建屋を造って1メガワットと0.5メガワットを振り分けて、かつターゲットも固体タングステンにして、中性子減速材も工夫するなどして、中性子の輝度が20倍、ミュオンに関しては50倍、100倍を目指すということで検討しています。
 サイエンスについては、学会の方々とも相談していますけれども、下記に示したような新しいところを狙おうとしています。ここについては省略させていただきます。
 次のページをお願いします。少し戻りまして、TS1の成果の最大化のための高分解能化と大強度化の取組として、これもTS1の現行のターゲットステーションを使いこなすための努力なのですけれども、一つはヘリウムガス型2次元検出器の高分解能化でして、これによって下に示すような中性子反射率トモグラフィーで、横軸がミリで縦軸がミリのような2次元の不均一さを測定できるような新しい方法も検討していますし、それから中性子集光ミラーというものを使いまして、専門用語になっちゃいますけれども、斜入射中性子小角散乱(GISANS)ということで、反射率ですと、膜厚方向にどのような構造があるかということが分かるわけですけれども、面内のほうにもいろんな不均一性があるものが多くありますので、そういうことが測れるのがGISANSなのですけれども、GISANSをやるための集光ミラーというものをつくって、現状の20倍の強度を達成しています。
 こうした技術はTS1での成果の最大化にもなりますけれども、当然TS2でも適用可能なものです。
 次のページをお願いします。やはり偏極中性子というのは、中性子を利用する上では、ほかの手法との違い、差別化という意味でも非常に重要な技術になりまして、そのための技術開発として、ヘリウム3のスピンフィルターの開発が継続して行われていまして、真ん中の青と灰色の図にありますように、これだけの装置で偏極中性子が利用可能な状態になります。
 ユーザーに提供している装置はまだそんなに多くはないのですけれども、いろんな装置での偏極中性子の利用が検討されています。
 そのフラッグシップとしてBL23のPOLANOというところで、偏極中性子を使った非弾性散乱を計画しています。
 右側で、偏極スーパーミラーというのがありますけれども、低エネルギーの中性子ですと、こういったスーパーミラーと言われる金属多層膜を使って偏極をすることができて、大面積ミラーというものができてきています。それはBL06 VIN ROSEスピンエコー装置に実装されております。
 次のページに行っていただいて、偏極中性子ビームラインの整備ですけれども、これは左側のBL06 VIN ROSEスピンエコーというのは、先ほど申し上げました偏極スーパーミラーを導入しているところですけれども、こういったものを使って非常に集光に成功しているということと、左下は少し分かりにくいのですけれども、VIN ROSEということで反射率を測って、膜圧方向の構造を見ることができるということも確かめられていて、かつ、右は原子振動伝播が測れるということで、そういった新しい非弾性散乱手法とReflectivityのような面内方向の構造と合わせるスタティックな構造とダイナミクスを合わせるような全く新しいことも考えられています。
 それからBL23 POLANOですけれども、これは偏極中性子を使った非弾性散乱なのですけれども、中性子の経路を全て、偏極が壊れないような磁場環境をつくるということが今重要事項になっていまして、それについてもめどが立って偏極中性子非弾性散乱というものを間もなく始める予定になっています。
 次のページをお願いします。ミュオンのSラインですけれども、ここではミュオニウムの1S-2S準位の精密分光に用いられているS2エリアというものが稼働を開始していまして、これもミュオンg-2に必要なミュオン質量の測定を決定しようと、そういうふうに考えています。これが稼働開始したということです。
 次のページをお願いします。Hラインに関しては、H1エリアが2021年1月から稼働して、標準模型では禁止されているミュオン電子転換過程の探索実験、DeeMe実験が行われています。
 さらに、H1エリアの後方というか実験室の外側になりますけれども、延長してH2エリアというのを立ち上げて、そこではg-2/EDMとか透過型ミュオン顕微鏡というものが行われる予定になっています。
 次のページをお願いします。次のページがミュオン顕微鏡の計画なのですけれども、ここに書いてあるのは、基本的にはHラインで実装するミュオン顕微鏡の絵になっています。
 サーフェスミュオンというのが出て、ターゲットというところでミュオンを1回止めて、レーザー、赤い縦の矢印がありますけれども、そこでμを取り出して、ウルトラスローをつくって加速して、それを集光レンズに入れるというタイプなのですけれども、Hラインではサブミリの厚さの試料は可能で、空間分解能、それから電磁場分解能が見えるということになります。
 例は少し省かせていただきますけれども、荷電粒子のミュオンは、サブミリ厚試料内部の電場と磁場の両方を高分解能で可視化できて、これによって25ミリボルト/1マイクロ厚というような電位感度を観測できるということで、神経電位の電荷の変化が見えるのではないか、そういうことを期待しています。
 次のページをお願いします。このミュオン顕微鏡に関してはHラインでいきなり始めるのではなくて、Uラインで、現在プロトタイプの検証をしていまして、そこでは先ほどの線形加速器じゃなくて、サイクロトロンを使った加速で5meVと低いエネルギーまでなのですけれども、ここで透過ミュオンが結像するかということをきちんと見ようと。高原先生から現地視察のときに質問があったのですけれども、ミュオンの検出はCMOS画像センサー、デジカメのセンサーでできるそうです。
 それで、上村委員からも、こういったミュオン顕微鏡、生物にも非常に期待されるのだけれども、本当にそういうものに使えるような形で開発が進んでいるのかという御質問がありまして、現状として、KEKの物構研の構造生物センターの千田さんとか、生理研の村田さん、藤田医大の臼田さんと連携して、どのように使えばいいか、どのようにフィージビリティースタディーを行うべきかということを検討しております。
 MLFは以上です。
【小松原素粒子原子核ディビジョン長】  まず、ハドロン実験施設のところから、施設の整備・運用、高度化について御説明させていただきます。
 次のスライドで、実験施設の図ですけれども、まず既存のAラインというビームラインで二次粒子を生成する標的に関しては更新を行っておりまして、さらに大強度化に向けた開発というのも進めています。
 そして、施設としては新たにBライン、Cラインと書いているビームラインを整備いたしました。
 この実験施設そのものよりもずっと上流側で一次陽子を分岐しまして、それをそのままピンク色のラインに沿ってホールの中まで持ってくるのがBラインと呼ばれているところで、それからさらに、その陽子のビームを実験ホールの隣にあります南実験棟というところまで持ってきて、そこでミュオンの実験を行うというのがCラインと呼ばれているところです。
 次のページに行っていただいて、Bライン、Cラインを少し御説明しますけれども、左側がBラインで、日本で一番高いエネルギーの陽子ビームになります。30GeVを直接用いる実験ということで、こちらは2020年に運用を開始しています。
 それから、右側、Cラインではミュオンがニュートリノを伴わないで電子に転換するというμ-e転換事象というのを世界最高感度で探索して大発見を目指すという実験です。
 こちらについては、一番下にあります、2022年にビームラインが完成して、今年2月と3月に最初のビームを供給することができました。
 次のページに行っていただいて、こちらはハドロン実験施設の将来に向けた高度化で、細かく書いてありますけれども、既存の施設、それから既存のホールを下流のほうにさらに拡張いたしまして、そこに新しい粒子生成の標的を置いて新しいビームラインを設置するという計画です。
 既存の施設においても実験を進めておりまして、加速器の強度が上がってきておりますので、そちらで非常に稀な現象の感度であるとか測定精度が高い実験を引き続き行っていく。
 さらに、拡張後の新しい標的からの新しいビームラインでも、分解能であるとか統計精度を向上した実験を行うということで、世界最高の分解能、統計精度あるいは感度を目指した実験を行うというのが目的です。
 次のページに行っていただいて、第1回目のセンター長のスライドにもあったのですけれども、左側の図で赤い点線で囲まれている部分が既存のホールから下流に拡張するホールの部分で、そちらで緑の四角で書いてあるようなビームラインを順次整備していって、左側にあります、例えば先ほども言いましたストレンジ核子の実験であるとか、あるいは中性K中間子の稀な崩壊の測定というような実験を進めていきたいと計画しております。
 次のスライドへ行っていただいて、こちらはニュートリノ実験施設についてで、次のページに行きます。
 ニュートリノ実験施設、加速器のビームパワーに合わせて実験施設も1.3メガワットを目指した大強度対応というのを進めております。
 今日、細かくは説明できませんけれども、ニュートリノビームの生成装置であるとか、あるいは東海でニュートリノを測定する前置検出器であるとか、あるいは放射線の対応というところで、ここにありますようないろいろな整備を年次計画に沿って順次進めて運用を始めているという状況になります。
 次のページに行っていただいて、将来に向けた高度化というのは現在進行中のハイパーカミオカンデプロジェクトというところで、神岡の測定器も巨大になるわけですけれども、東海でもビームを1.3メガワットに大強度化して、さらに前置検出器の増強を行うという形で、右上になりますけれども、ニュートリノビームの振動の測定、それから反ニュートリノビームでの測定というところをこれだけ精度、統計量を上げてというところで、CP対称性の破れというところを5シグマでの発見、そういうところに向けて今進めているということになります。
 最後に、先ほども議論になりました、新しい素粒子の実験を行うためにMLFのミュオンの施設を高度化するというところで、ミュオンg-2、異常磁気能率の測定、さらにEDMというのは電気双極子能率ですけれども、そちらを同じ装置で測ることができるという新しい実験を始めようとしています。
 真ん中ぐらいにあるのですけども、ここ何年も、これまでの実験の値と素粒子の標準理論の値がずれているというところで、新しい物理がここで見えているのだろうというようなことが議論されているわけです。これを検証するために、これまでの実験とは異なる新しい手法で測定をする実験をやろうと、そういうことを始めようとしています。
 以上です。
【前川核変換ディビジョン長】  それでは、核変換、御説明いたします。
 40ページですが、前回の中間評価での御指摘は、計算科学や国際協力を活用し、より合理的かつ効率的に研究開発を進めなさいというものでした。
 そこで、原子力機構では、ページの下に示しますように、計算科学や国際協力の取組をより強化し、多くのリソースが必要な実験の負担を減らす取組、我々はPSi計画と呼んでいるのですが、これを進めています。
 右上にざっくりした絵がありますが、ピンク色の部分がPSi計画で、実験の負担を減らして計算を活用しましょうというものです。
 この取組につきましては、令和3年に文科省の群分離・核変換技術評価タスクフォースが開催され、左の緑の字のところなのですが、原子力機構が提案しているPSi計画を進めることは妥当であるとの評価をいただいています。
 こうした中で、J-PARCで実施すべき真に実験が必要な課題を見極めて、核変換実験施設を発展させた陽子照射施設として現在検討を進めています。
 次のページをお願いします。右上の図は、以前に検討した核変換実験施設になります。二つの施設があって、左が小型の原子炉である核変換物理実験施設TEF-P、右が鉛ビスマス標的に大強度陽子ビームを入射して、主に材料照射試験を行うADSターゲット試験施設TEF-Tです。ともに2017年までに基本設計を終えています。
 先ほどのタスクフォースでは、この実験施設計画についても議論されて、その結果が下半分の四角に書かれています。
 大事なところは赤字の部分でして、一つがTEF-Tの機能を優先すること、もう一つが、ADSに加えて、多様なニーズに対応可能な施設を検討すること、この2点の方針をいただいています。
 次のページをお願いします。現在はこの方針を受けまして、我々は陽子照射施設として施設の見直しを行っています。
 先ほどのTEF-Tという施設がこの施設の中核をなします。これに加えまして、多様なニーズということで、黄色い四角4つ、様々な分野の材料照射、半導体ソフトエラー試験、RI製造、その他の陽子ビーム利用、こういったニーズに応えられるような施設を今検討しているところです。
 最後に、昨年、将来のポテンシャルユーザーを集めたユーザーコミュニティーを設立して、ユーザーからの意見を聞きながら検討を進めています。
 以上です。
【小林センター長】  それでは、最後のページ、まとめですけれども、文字でのまとめというのは最初に既にお話ししている、7ページ、8ページで御説明させていただいているのですけど、それを1つの年次計画表にまとめたものがこれになります。
 第1回目でも委員の方から、JAEA、KEKでせっかく一緒にしているのだから、将来計画等も一緒に検討したらどうかというようなコメントもありましたけれども、それに関して第3回目でも少し述べさせていただきますが、JAEA、KEKに関わらず、J-PARC全体で将来計画を検討する研究会なども開催してきておりまして、そういうのでこういう将来計画を全体で議論してきております。
 上から既にプレゼンされたものばかりですけれども、例えばニュートリノ実験施設は、現在のビームをアップグレードしつつ、ハイパーカミオカンデで実験すると。
 ハドロン実験施設では、ハドロン実験を遂行しつつ、COMET実験、ミュオンの電子転換、それからハドロン実験施設の拡張。
 それから、MLFでは、MLF-doubleを目指しつつ、2030年代でTS2の実現を目指していきたいと。
 それから、ミュオンの実験では、先ほども出ましたけれども、ミュオン顕微鏡、それからg-2。
 ADSでは、先ほどの陽子ビーム照射施設の実現を目指していくということになっております。
 以上です。
【高原主査】  ありがとうございました。先日のサイトビジットでいろいろな施設を訪問させていただいて、スケール感も含めていろいろなことが頭の中に少しは入ったつもりなのですけれども、ただいまのJ-PARCセンターから御説明のあった内容に対して、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
 質疑の時間は30分程度確保しております。どなたからでも結構ですので、よろしくお願いいたします。オンラインもオーケーですので、よろしくお願いいたします。
 中野先生、お願いします。
【中野委員】  現場の雰囲気は分からないので最初に発言します。最初に御質問してよろしいでしょうか。
【高原主査】  お願いいたします。
【中野委員】  加速器部分について質問なのですけど、常に高度化を続けていらっしゃるというところに感銘を受けまして、特に真空管を半導体パワースイッチに替えることによって長もちもするし、効率もよくなるというようなことを続けられていらっしゃいます。
 それで、質問なのですが、第3回で老朽化についての議論が行われると思いますけれども、こういったアップグレードを不断に行う。小まめにいろんなところをアップグレードするということは老朽化対策にもなっているんじゃないかなと思うのですが、そのような認識は正しいでしょうか。正しかった場合、予算の中に大きな高度化ではないのですけど、ふだんの高度化に充てる割合というのは、そのほかの運転とか維持管理と比べてどれぐらいの割合を充てられていらっしゃるのかということをお伺いしたいです。
 以上です。
【小林センター長】  では、小林から少し回答させていただきます。
 まさにおっしゃるとおりで、大きなアップグレードではなくても、少しずつ高度化していくというのは老朽化対策にもなっているというのはおっしゃるとおりだと思います。
 それが高度化にどれくらいの割合予算が充てられているかという質問に関しては、今すぐ正確な数字は出てこないのですけれども、第1回の概要でも御説明したとおり、運転維持費というのがずっとフラットで来ている中で、電気代の高騰や、そもそも放射化が高くなってメンテナンス費自身が上がっていくというようないろんなことが相まって、高度化に充てられる予算が十分あるかと言われると、なかなかそこは十分に充てられてない状況かなと思います。ちょっと定量的ではないのですけれども。
【中野委員】  分かりました。ただ、現場でもいろんな工夫ですよね。新しいアイデアを入れていくということが老朽化対策になっているという、これは非常に大きなヒントになると思います。
 老朽化対策というのは、分かってから手を入れるので非常に高くつくということがありますので、大変厳しい財政状況の中でいろんな工夫をされていると思いますけれども、今ある性能をただ維持するだけじゃなくて、大きなアップグレードを待つだけじゃなくて、ふだんからそういう小まめなアップグレードにも力を割いていただけたらなと思います。
 以上です。
【高原主査】  ほかいかがでしょうか。上村先生、お願いします。
【上村委員】  どうもありがとうございました。三つぐらいあるのですけど、まず12ページで、年間4億円の電力削減とおっしゃっていたのですけど、全体でどのぐらい電気代がかかっているのですか。
 この頃、電気代が上がっていると思うのですけど、全体の割合の4億円というのがちょっと私、勉強不足で、全体でどのぐらいかかっているかというのが分かってないのですけど、どのぐらいのコントリビューションになるのでしょうか。
【脇本副センター長】  4億円は、今の電気代が高騰している中での割合でいうと1割ぐらいに相当するところに、今現時点の電力価格からいうとなっています。
 一方で、この効果というのは、RCSというのは、基本加速器の構成の中では一番電力を必要とする加速器なのですね。この中で、RCSが4割下げられるというのは、効率としては非常に大きいものになっています。
【上村委員】  分かりました。
 その次は、MLFのほう、AIを使うとおっしゃっていたのですけど、水銀中のピッティングのお話なのですけど、これの教師データは何になるのですか。多分、水銀の中の気泡はすごく測定するのが難しいと思うのですけど、教師データになるデータベースというのは何かお持ちなのでしょうか。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  正確なところは分かりませんが、ある程度、水を使ってシミュレーションができていると聞いているので、そういうところを活用しているのかなと思いますけれども。
【上村委員】  そうですね。そのところが、水銀の中の教師データはどうやって測るのかというのが素朴な疑問ですね。
 水で代用できるのであれば、どのぐらいの、でも、完全には、多分コンパラブルじゃないので、どういうふうな計算をしているのかというのは具体的に分からなかったので、そこのところの情報をいただけるといいかなと思いました。
 それから、22ページで2030年に中性子の強度が20倍になるとおっしゃって。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  TS2で。
【上村委員】  はい。輝度が20倍になるとおっしゃってすごいなと思ったのですけど、これは単純計算して、例えば今たんぱくの結晶を5日間で120時間かかっているとなると、それが数時間で済むという感じで考えてよろしいのですか。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  全中性子の波長の領域で20倍になるわけではなくて、どちらかというと、長波長側でゲインがあるので、構造解析でよく使われるような1Åとかだとあまり変わらないのではないかなと思います。
【上村委員】  やっぱり企業が使えない理由として日数がかかるというのが、たんぱくの場合すごく大きいのですよ。
 それはもちろん、ディテクターとのシナジー効果というのはあると思うのですけど、そこで例えば数時間で取れるようになるとアプリケーションのフィージビリティーが上がってくると思うので、その辺はディテクターとのシナジーだと思うのですけど、やっぱりちょっとでも計測にかかる日数が少なくするような形でできるといいかなと思います。
 あと、例えば今0.1ミリ立方ないと駄目だという結晶のところ、そこが律速なんですよね。企業がやるときに結晶を大きくしている時間がないので。アカデミックだったら、欲しかったら死ぬ気でやろうと思えば大きくできるのですけど、そこのところが産業利用とかに関して、全波長とおっしゃったのですけど、ディテクターも含めて、少なくする、小さくても測れるようにするというのは本当に命題なので、そこをディテクターと一緒にディベロッピングしていくという感じですよね。それをぜひやっていただきたいなと思います。
 以上です。
【高原主査】  それでは、大竹先生。
【大竹委員】  一つは、中性子の水銀ターゲット、こういった経験はまさにTS2のほう、回転タングステンでまた標的材料とか変わっていくのですけれども、例えば最後の将来計画のところで、TS2デザインというのが、そこはかとなく薄く始まっているのが2026年のおしまいあたりからですけれども、多分2030年のTS1での倍化をしていくところがまさにTS2につながるような御計画だと思いますので、そういう意味では、この矢印をもうちょっと前倒しにしながら、予算措置も含めて、これ、第3回の作業部会になっちゃうと思うんですが、若い方が希望を持って、人材育成しながら、今、上村先生、20倍ですばらしいとおっしゃった。私は実はここ、100倍にしませんかと本当は言いたい気分なのですよね。
 やっぱり次の世代をつくっていくには、そういったところで、今具体的に機械学習も入れながら取り組んでいらっしゃるところは、発信もしながら具体化していく、そういうような種とかアイデアとか何かお持ちでしたら、教えていただければと思います。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  まだ具体的に実行できるかどうかというか、どのぐらい効果的か分からないのですけれども、先ほどMLF-doubleで示したような、MLFとして目指すべき開発項目というものをコミュニティーの皆さんに提示して、これはどう思われますかというのは常に意見をいただくような形で、むしろそういうところに大学の方とか他機関の研究機関の方が面白いねと言って参画していただけるようなところで、その勢いをつけられればなとは思っています。
 今MLFのほうは、ビームタイムを年間きちっとやって成果を出すというところで、かなりのスタッフの労力を使っていますので、そこがもう少し違うところに目が向くようなことをするということは、外部の先生方のお力をお借りすることは必要だと思います。
 そういう形で、とにかくMLFから皆さんに問いかけていくというか、そういうことが一つの方策かなと思っています。
【大竹委員】  そういう意味では、当然ターゲットそのもののところもですけれども、先ほどの20倍のところ、まさにそうなのですけど、冷中性子源、それから反射材、そういった新しい材料の開発というところでの国際協力であるとか、また若手の育成で今手いっぱいのところでも、あえて海外での経験とかを受け入れてというところを進めていかれるような仕組みづくりというのも考えていらっしゃるのかなとは思うのですけれども、今日お話しいただいた中ですと、その辺りがなかったので、冷中性子源とか反射材というところに関して、これまでのJ-PARCの成果がもとになって海外の施設が注目したものなども含めて、少し御紹介いただければと思いますが、現状の取組として将来に向けた。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  まず、海外との交流ですけれども、やはりコロナでしばらく中断してしまったというのが現実にあったのですけれども、昨年くらいからESSとかSNSとの人の交流が始まっていまして、国際協力とかで少し停滞した部分がまた活発化してきているというところはあります。
 ESSとかヨーロッパの研究所とか、そういうところでの実例については、また次回に資料を用意しているので、そこでお話ししたいと思っております。
【大竹委員】  冷中性子源とか反射材の開発とかで何か。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  反射材の開発は、理研の小型中性子源も使わせていただいて今進んでいます。
 やっぱりいろんなアイデアが出てきているところで、それをどんなふうに、TS2でもTS1でも取り込んでいくかというところの議論がもう少し必要だと思っていまして、そういうこともMLFのみならず、共通の話題として、つまりTS1を2倍にするとしたらどういうことができるかということも、TS2で何倍にできるかということとつながっていると考えているので、そこから着実にTS2につなげたいと考えているところです。
 冷中性子源については、MLFの中でのアクティビティーは、僕、よく分かっていません。
【小林センター長】  補足しますと、夢のある将来計画をちゃんと持つということは若い人の人材育成に非常に重要だと思っていまして、それぞれMLFのほうでそういうコミュニティーと議論をしながら進めてこられていますし、それを大友さんも言ったように、コミュニティーと一緒にやっていくという雰囲気をつくっていくのも重要だと思います。
あとそういう目的のもとに、一つの例ですけれども、そういう将来計画を内外に向けてアピールするJ-PARCシンポジウムというのを5年に1回ぐらいやっているのですけれども、来年10月に予定していて、大体これまで五、六百人集まっているのですけれども、そういうところでも機会を捉えてアピールしていきたいと思っています。
【高原主査】  ありがとうございます。それでは、飯沼先生、いかがでしょうか。
【飯沼委員】  いっぱいあるのですけど、四つほどありまして、最初の二つから質問させていただきます。
 一つ目は、12ページの加速器に関わるところなのですけれども、電子銃の高効率高周波源の開発ということで、プレゼントとニューの比較があって、efficiencyが66%以上になりましたということなのですけど、ビームダイナミクスの観点からいうと、ビームのエミッタンスとかビームサイズとか位相空間というのが1割近く小さくなったという理解なのでしょうかというのと、pulse widthが長くなることによって、それがどういいのでしたっけという質問がまず一つ目なのですけど。
【高原主査】  一つずついきましょうか。
【金正加速器ディビジョン長】  では、金正がお答えします。
 これは加速器ではなくて、加速器に、特にLINACにRFのパワーを供給するクライストロンの開発なのですね。
 効率というのは、高周波に変える効率が今は大体55%ぐらいなのですが、66%以上の効率で電力を出力の高周波に変えるということを今目指しております。これは今設計段階です。
 あと、発生させるパルスの長さも、今650マイクロ秒なのですが、将来LINACのパルス幅を延ばすことによって、RCSに貯めるプロトンの量を増やそうと思っていますので、パルス幅を750ミリ秒以上の高周波を発生させるクライストロンの開発を行っていると、そういうことです。すみません、私の説明が不足していまして。
【飯沼委員】  勉強不足で申し訳ありませんでした。
 あと、さっき中野先生からのコメントにもあったのですけど、小まめなアップグレードというのはとても大事だというのは私も非常に合意していまして、例えばこのページの下のほうにある半導体スイッチ、この半導体スイッチ、大電力スイッチなのですけど、これ、実はg-2/EDM実験でどんなボトルネックがありますかという質問と絡むのですけど、大電力キッカーというのがうまくいかないと、どんなにいい低エミッタンスのビームをつくってもまともに蓄積できないという、そういうボトルネックを今私、抱えておりまして、大変な思いをしているのですけど、そこら辺と技術提携ができるので、加速器自体の大きなアップグレードにはつながらないかもしれないのですけど、実験チームとコラボすることでJ-PARCを利用するチームとしてのアップグレードにはつながるので、ぜひ御教示いただきたくお願いします。
 以上、一つ目で、二つ目なのですけど、次、偏極中性子が複数のビームラインでアベイラブルだという話なのですけど、偏極度は測っているというか、偏極度はどうやってコントロールしているのですか。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  偏極度は、今のところ、今のタイプのSEOPというのは、実験ビームラインとは違うところで偏極させているのですね。
 そこで、NMRで偏極度を測って、それが80%とか、そういうところになったところで、それをビームラインに持ち込んで偏極実験しているということで、偏極がビームラインによっては、ちゃんと周りの磁場が遮蔽されていれば200時間とかそのぐらいもちますので、中性子の実験は十分にできるという、そういう形になっていまして、オフラインで偏極率をチェックしています。
 ほかにオンビームSEOPというタイプもあって、それはビームライン上で偏極を続けるというタイプなのですけど、それはまだPOLANOとか限られたところでしか使えない形になっています。
【飯沼委員】  今偏極中性子は生まれたままの運動量で運転していると思うのですけど、これは加速をしたりとか、そういう可能性はあるのですか。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  どうなのでしょう。加速というのは……。
【飯沼委員】  中性子加速、そのままじゃできないので、電子と結合させて電荷を乗せてとか。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  とても難しそうです。
【飯沼委員】  アメリカのブルックヘブンとか、あっちのほうではそういう研究もちょっとあるみたいで、それは高エネルギー実験用でちょっと違うのかもしれないのですけど。
【大竹委員】  エネルギーの高いほうだと、多分そういったところの効率もありますけれども、ミリエレクトロンボルトとか、1回減速材を通っている中性子ではそれはあまりできないと思います。
【飯沼委員】  あまり意味のある話じゃないのですね。分かりました。ありがとうございました。
 次、またネタが変わって三つ目なのですけど、ハドロンとかT2KとかMLFの物理成果に関してなんですけど、今日改めてスライドを一気に見ることによってなるほどと思ったことが、ハドロン施設で中性子星ですとかCPの破れとか、レプトンフレーバーバイオレーションとか、そういう物理目標があって、MLFでもCPの破れとかやりたいという、MLFの素粒子実験関係ですけど。EDMもMLFで測ると言っているし、CPの破れそのものだし、T2KもCPの破れ。
 素粒子・原子核領域の物理のトピックスとして面白いものが全てJ-PARCに含まれていて、そういう見せ方ができると、J-PARCに来れば何でも一度にできるのですよという、そういうパッケージ化された、素粒子・原子核のメッカみたいな、そんなアピールの仕方。
 高エネルギーにすればいいというものじゃないのだよ、高インテンシティーでできるすごく幅広い包括的な素粒子・原子核の物理ネタをJ-PARCで一気に解決するみたいな、今まさにそういうのが育ってきて、今刈取りの時期だと思うので、そういう方向でもアピールすると、私なんかは学生を連れてきやすくなるので、やりたかったら取りあえずJ-PARCに来れば何かできるという、そういう言い方ができるので、そういうアピールの仕方があるといいかなと思うのですけど、いかがでしょうか。
【小松原素粒子原子核ディビジョン長】  小松原です。たいへん的確な御指摘と思うのですけれども、CP対称性というか対称性の破れというのは、素粒子物理ではずっと主要なテーマで来ているので、しかも、今、何か特定の粒子を使ってあるところだけを測ればというところよりは、いろいろなところを、いろいろな粒子、いろいろなチャンネルを測ってみて、例えばここでは大きく見えるけれども、こちらのほうでは、例えば標準理論と同じぐらいというところが一つ一つ分かってくると全体像を確立していくのに非常に役に立つというところもあって、そういう意味では、J-PARCだけでなくて、つくばのスーパーBファクトリーであるとか、いろんなところでも実験をやっていますけれども、J-PARCの東海のサイトでこれだけのものがほぼ同時というか並行的にやれるというところは、大きな我々のメリットでもあり、我々の見せ方という意味でも重要かと思います。
 あと、素粒子物理では常にエネルギーフロンティアという言い方とインテンシティーフロンティアという言い方があって、本当にエネルギーの高いところでとにかく衝突を起こして直接的に見えるかどうか、あるいは非常に強度の高いところで精密に測って効果が見えるかというところ、両輪で動いているところもありますので、ただエネルギーフロンティアは、今のところはヨーロッパのCERNの研究所がメインですけれども、インテンシティーフロンティアという意味では日本が非常に高い強度の加速器でリードしているところもありますので、そこのところを総合的に見せていくということは大事だと思っています。どうもありがとうございます。
【飯沼委員】  ありがとうございます。
 最後になるのですけど、私、かなり勉強不足ですごくとんちんかんなことを言っている可能性もあるのですが、ADSですね。
 これは資料を見ますと、核廃棄物に陽子ビームを当ててそれを何とかするという問題なのですけど、例えばJ-PARCの水銀の標的で、高濃度の放射化してしまったものとかあるんですけど、身近なところにあるそういうものを、本当に分からないのですけど、核変換じゃないのかもしれないのですけど、そういうのを何とかするという取組とつながるものなのですか。
 それとも、私、すごくとんちんかんなことを言っていたら失礼なのですけど、こういう取組もとても重要でいいと思う一方で、MLFで2060年までは大丈夫と言っていましたけど、2060年以降どうするのだろうなと、2060年、私は生きていないかもしれないですけど、どうするのかなと思ったとき、こういう施設がJ-PARCを存続させるためにどうワークしていくのかなとか、そんな見通しというのはあるのでしょうかというのが質問です。
【前川核変換ディビジョン長】  お答えになっているかどうか分からないのですが、J-PARCで、水銀標的などで発生している放射化物を減らしたり、水銀標的容器を何とかできないか、そういった趣旨の御質問かと思ったのですが。
【飯沼委員】  そうです。全然目的が違うのかもしれないのですけど、そういう方面でも……。
【前川核変換ディビジョン長】  ちょっと違っていると思っていまして、陽子ビームを標的に当てるとどんどん放射化物が増えていくのですが、それを減らそうと思えば、放射性の元素だけ集めてきて、別のところで標的にまたつくり直して、そこに陽子ビームを当てるようなことは可能なのですが、とてもコストメリットがないというか、集めるのも難しいでしょうし、そういったことはできないのかなと私は思っています。
【小林センター長】  ADS自身が実現されたときのスコープとして、例えば高レベルの水銀とか放射性廃棄物を分解しようというのは、スコープには入ってないというのがまず……。
【前川核変換ディビジョン長】  高レベルの水銀といいましても、ほとんどが安定な水銀なので、そこに陽子ビームを当てると高レベルのものが増える一方なんですね。なので、ADSというのは、放射性廃棄物だけを集めてきて、安定な元素を排除した上で、そこに陽子ビームを当ててやる、そういった技術になります。
【小林センター長】  ただ、ADS自身はそうかもしれないですけど、例えば将来、42ページにあるような構想をしている施設では、例えばホットラボみたいなものがあって、水銀標的の容器の照射後試験はこういうところでできることにすることによって、例えば標的の長寿命化の研究ができるとか、そういうことはあり得ると思いますけれども、ADSの技術自身が我々J-PARCの水銀標的の何かに直接役立つかというとちょっと。
【高原主査】  飯沼先生、また何か、大体時間が来ておりますので、追加の質問等あれば、またメールのほうでいただければと思います。
 私のほうから一つだけ、今まで出てこなかった分野で、やっぱり検出器とかミラーというのは、放射光と比べるとビーム径も大きく、検出器もまだ大面積化できないということで、この辺りは海外の施設との連携というのはどういうふうになっているのでしょうか。そちらの技術に関して、現在のJ-PARCが世界で一番なのかというのも含めて。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  いろんな検出器があって、それぞれの施設でいろんな開発が行われていて、それに関しては定期的に国際的なミーティング、ワークショップでどういう開発が行われているかというのは、情報共有はしている状況なのですけれども、一時期ヘリウム3ガスが非常に高騰したので、それに代替する検出器をつくりましょうというのが一つ国際的な動きになったのですけれども、なかなかそこは代替器としてこれだというところまではいかなくて、それぞれの施設で事情に合わせた検出器が使われているという状況ですね。
 これから中性子も高輝度化に向かっていくのは間違いないので、高輝度になったときにどういう検出器が必要かという議論は、これからしていかなければいけないなと思いますけれども、検出器の一つの難しいところは、原理実証をするのはまだ研究者ができるのですけど、装置で実際入れてそれが安定的に動くというのは、またちょっと違う開発になるので、そこをいかにつなぐかというのが、J-PARCをつくるときも非常に高性能な検出器がぱっとできるんだけど、長い間使っていると壊れちゃうというところで、なかなか研究と実用化というのはギャップがあるのかなというのは感じていますけど、これからそこは埋めていく必要があるかなと思います。
【高原主査】  その辺りは国際連携でもいろいろなことができるように思いますし、エックス線も検出器は海外の技術が多いですよね。それで最近、放射光の検出器は日本の理研の技術が非常に優れていて、それが使われ始めたという状況になっています。
 ただ、ユーザー数が放射光に比べて少ないので装置開発が遅れますね。放射光の場合はコマーシャルな検出器はかなり出てきていますけれども、中性子はユーザー数の点で特殊事情があるので、国際連携も駆使して、ユーザー側としての装置の高性能化と、ビーム径の絞られた強度の高いビームというのを期待しています。
 時間、超過してしまいましたけれども、どうしてもという発言があれば。また次回も、今御説明、最初の資料、中間評価に対する対応の(1)でできなかったこと、それから12月11日に(2)を議題にとりあげますけれども、その後でも時間があれば御質問をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 大体時間が来ましたので、本日最後の議題に移ります。本作業部会の今後の進め方について、事務局より説明願います。よろしくお願いします。
【稲田課長】  資料3が次回以降の予定でございます。2回目の議論、今日で終わりましたが、あと2回予定してございまして、本日の積み残しに関して12月11日に行うとともに、今度は評価指標の検討についての御議論をいただきます。
 最後の4回目としては、25日に報告書案及び中間評価票案について御議論いただくことにいたしておりますので、皆さん、御参集方よろしくお願いいたします。
 以上です。
【高原主査】  ありがとうございます。何か御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
 委員の先生方、何か今日言い足りないことがあれば、メール等でまた御意見を共有できればと思いますので、よろしくお願いいたします。
 本日の議題は以上です。事務局から何かほかの追加の連絡事項はございますでしょうか。
【稲田課長】  ございません。
【高原主査】  以上をもちまして、第2回の大強度陽子加速器施設評価作業部会を閉会いたします。本日は活発な意見をいただきましてどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究環境課

(科学技術・学術政策局 研究環境課)